(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-14
(45)【発行日】2024-06-24
(54)【発明の名称】毛髪化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/73 20060101AFI20240617BHJP
A61K 8/365 20060101ALI20240617BHJP
A61Q 5/00 20060101ALI20240617BHJP
A61Q 5/02 20060101ALI20240617BHJP
A61Q 5/06 20060101ALI20240617BHJP
A61Q 5/12 20060101ALI20240617BHJP
A61Q 7/00 20060101ALI20240617BHJP
【FI】
A61K8/73
A61K8/365
A61Q5/00
A61Q5/02
A61Q5/06
A61Q5/12
A61Q7/00
(21)【出願番号】P 2017033749
(22)【出願日】2017-02-24
【審査請求日】2020-02-21
【審判番号】
【審判請求日】2022-05-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000162021
【氏名又は名称】共栄化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】愛水 哲史
(72)【発明者】
【氏名】古村 仁
(72)【発明者】
【氏名】道善 聡
(72)【発明者】
【氏名】澤木 茂
(72)【発明者】
【氏名】澤木 茂豊
【合議体】
【審判長】井上 典之
【審判官】赤澤 高之
【審判官】関 美祝
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-036221(JP,A)
【文献】特開2009-167121(JP,A)
【文献】国際公開第2017/019713(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0054087(KR,A)
【文献】特開2008-100943(JP,A)
【文献】tenki.jp、抗酸化作用のあるポリフェノールがたっぷり!「ごぼう」で健康生活!,食物繊維に抗酸化作用のポリフェノールとは鬼に金棒!?風邪予防と老化予防に!,[online],2017年1月18日,[2021年11月18日検索],インターネット<URL:https://tenki.jp/suppl/yamamoto_komo/2017/01/18/19201.html>
【文献】王 蓉他、ゴボウ中のクロロゲン酸関連成分含量の品種間差異、日本食品科学工学会誌、2001年、48巻、11号、857~862頁
【文献】加藤陽治他,貯蔵および加熱処理に伴うゴボウのイヌリンの変化,弘前大学教育学部紀要,1993年3月、第69号,131~135頁
【文献】髪がどんどん生える?!薄毛女の「育毛、目指せ!」挑戦記,[online],2014年10月30日,Ameba人気のブログ,<URL:https://ameblo.jp/ikumoumezase/entry-11945787516.html>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
A61K 36/00-36/9068
A61K 31/33-33/44
A61P 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イヌリンと、キナ酸、コーヒー酸又はクロロゲン酸とを有効成分とする育毛・養毛剤であって、イヌリンを1μg/mL以上含有し、キナ酸、コーヒー酸又はクロロゲン酸を100μM以上含有することを特徴とする育毛・養毛剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然物由来の生体安全性にすぐれた新規の機能性素材を含み、特に、育毛及び養毛効果を有する毛髪化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、加齢、ストレス又は紫外線等の様々な要因により、頭皮がダメージを受け、男性だけでなく女性も毛髪のトラブルを抱える人が増加しており、これに対応して様々な毛髪化粧料が提案されている。従来、毛髪のトラブルとして、男性型脱毛症(壮年性脱毛症)や女性型脱毛症(女性に生じた男性型脱毛症)の研究が行われ、これらの脱毛症に男性ホルモンが関与していることが明らかとなり、毛髪トラブルの改善剤として様々な抗男性ホルモン剤や女性ホルモン様作用剤等が提案されている。
【0003】
以上のような頭皮の老化、不健全化を防ぎ、かつ、若々しい状態に保持するため、さらには、上述した頭皮ダメージや抜け毛のメカニズムの研究に基づいて、様々な育毛・養毛剤、脱毛抑制剤(育毛剤等と称する)が提案されている。育毛・養毛の効果を発揮する有効成分として、例えば、ミノキシジルやアデノシンが知られており、これらの成分を配合した育毛剤等が提案されている。しかし、従来の育毛剤等に配合される有効成分は、頭皮の刺激等の副作用を引き起こすことがあり、十分に効果がありかつ安全性の高い機能性素材が求められている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上の従来技術の課題を鋭意検討した結果、本発明者らは、イヌリン、キナ酸又はカフェ酸(コーヒー酸)若しくはその誘導体、或いはイヌリン、キナ酸、コーヒー酸及びその誘導体のうちの少なくとも1以上を含む植物の抽出物が、XVII型コラーゲン合成促進作用を有すること、さらに、すぐれた育毛・養毛の効果を有し、それらが毛髪化粧料の有効成分として有用であることを新たに見出して本発明を完成させるに至った。
【0005】
従来、イヌリン又はコーヒー酸又はその誘導体を化粧料の有効成分とする技術は、例えば、特許文献1~3により公知である。しかし、イヌリン、キナ酸、イヌリン及びコーヒー酸又はその誘導体、並びにイヌリン、キナ酸、コーヒー酸及びその誘導体の少なくとも1以上を含む植物の抽出物が育毛・養毛の効果を発揮する毛髪化粧料の有効成分として利用できることについては知られていなかった。
【0006】
【文献】特開平07-238037号
【文献】特表2004-501175号
【文献】特開2004-501176号
【0007】
以上の従来技術の課題を鋭意検討した結果、本発明者らは、イヌリン、キナ酸又はコーヒー酸若しくはその誘導体、或いはイヌリン、キナ酸、コーヒー酸及びその誘導体のうちの少なくとも1以上を含む植物抽出物が、XVII型コラーゲン合成促進作用を有すること、さらに、すぐれた育毛・養毛の効果を有し、これが毛髪化粧料用の組成物として有用であることを新たに見出して本発明を完成させるに至った。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、イヌリン又はそれを含む植物若しくはその抽出物を有効成分とする毛髪化粧料である。
本発明は、イヌリンと、キナ酸又はコーヒー酸若しくはその誘導体とを有効成分とする毛髪化粧料である。
本発明は、イヌリンと、キナ酸又はコーヒー酸若しくはその誘導体とを含む植物又はその抽出物を有効成分とする毛髪化粧料である。
本発明は、イヌリン、キナ酸又はコーヒー酸若しくはその誘導体、或いはイヌリン、キナ酸、コーヒー酸及びその誘導体のうちの少なくとも1つ以上を含む植物又はその抽出物を有効成分とするXVII型コラーゲン産生促進剤である。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、イヌリン、キナ酸又はコーヒー酸若しくはその誘導体、或いはイヌリン、キナ酸、コーヒー酸及びその誘導体のうちの少なくとも1つ以上を含む植物又はその抽出物を有効成分とする毛髪化粧料であって、XVII型コラーゲン合成促進作用を有し、さらに、すぐれた育毛・養毛の効果を有する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明において、イヌリンとは、D-フルクトフラノースがβ-2→1結合を繰り返し、末端に1モルのD-グルコースが結合した多糖類である。
【0011】
本発明において、コーヒー酸とは3,4-ジヒドロキシケイヒ酸である。コーヒー酸の誘導体としては、例えば、クロロゲン酸(3-カフェオイルキナ酸)が挙げられる。クロロゲン酸とは、コーヒー酸のカルボキシル基がキナ酸3位のヒドロキシ基と脱水縮合した構造を持つ化合物である。その他のコーヒー酸誘導体としては、例えば、4-カフェオイルキナ酸や3,4-ジカフェオイルキナ酸、カフェオイルグルコース等が挙げられる。キナ酸とは、1,3,4,5-テトラヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸であり、上述したクロロゲン酸等の構成成分として植物中に含まれることが知られている。
【0012】
本発明において、イヌリン、キナ酸、コーヒー酸及びその誘導体は、市販品であっても、植物等の天然物から抽出処理により得られた抽出物でもよい。また、その植物抽出物は分離、精製、濃縮等の処理を施して、イヌリン、キナ酸、コーヒー酸及び/又はその誘導体の濃度を高めたものでもよい。
【0013】
本発明において使用可能な植物としては、以下のものが挙げられる。すなわち、イヌリンを含む植物としては、菊芋、葛芋、アザミ、チコリー、リュウゼツラン、ダーリア、アーティチョーク、タマネギ、ニンニク、ニラ等が挙げられる。また、キナ酸を含む植物としては、キナ樹皮、コーヒー、リンゴ、モモ等が挙げられる。また、コーヒー酸又はその誘導体を含む植物としては、ナス科・セリ科・キク科の植物や、リンゴ、かぼちゃ、さつまいも、コーヒー等が挙げられる。本発明においては、イヌリンとキナ酸、コーヒー酸及び/又はその誘導体とを含む植物がより好ましく、例えば、キク科植物のゴボウが挙げられる。イヌリン及びコーヒー酸誘導体(クロロゲン酸)を多く含むゴボウとしては、例えば、宇多金ゴボウが挙げられる。
【0014】
抽出物の調製は、抽出対象物である植物を、必要ならば予め水洗して異物を除いた後、これをそのままもしくは乾燥し、さらに必要ならば細切或いは粉砕した上、浸漬法、向流抽出法、水蒸気蒸留法等の常法に従って抽出溶媒と接触させることによって行うことができる。また、本発明において、超臨界抽出法を採用してもよい。
【0015】
抽出物処理に使用する抽出溶媒としては、水;メタノール、エタノール、プロパノールなどの低級アルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、グリセリンなどの多価アルコール類;酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチルなどのエステル類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;エチルエーテル、イソプロピルエーテルなどのエーテル類;n-ヘキサン、トルエン、クロロホルムなどの炭化水素系溶媒などが挙げられ、それらは単独でもしくは二種以上混合して用いられる。本発明においては、イヌリン及びコーヒー酸又はその誘導体を高濃度に得られるという点から、極性の異なる二種の混合溶媒を使用することがより好ましい。
【0016】
抽出物の調製に当たって、抽出液のpHに特に制限はないが、一般にはpH3~9の範囲とすることが好ましい。pHの調整は、前記した抽出溶媒中に、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ性調整剤や、クエン酸、塩酸、リン酸、硫酸などの酸性調整剤等を配合することによって行うことができる。
【0017】
抽出温度、時間等の抽出条件は、用いる溶媒の種類やpH、或いは植物素材の大きさ等によっても異なるが、例えばメタノール又はエタノール、或いは水と低級アルコール又は多価アルコールとの混合溶媒を抽出溶媒とする浸漬法の場合であれば、抽出温度は0~80℃の範囲である。抽出時間は、4℃の冷温抽出の場合で1時間~7日間の範囲とするのがよく、また、40℃付近の中温抽出では、1時間~3日間の範囲とするのがよく、70~80℃の高温抽出の場合は、1時間~24時間の範囲とするのがよい。浸漬法の場合、浴比は重量比で、植物素材に対して溶媒が一般に1~200倍量、好ましくは1~100倍量の範囲となるようにするのがよい。
【0018】
以上のようにして調製される植物抽出物は、さらに、活性炭処理、イオン交換樹脂処理、合成吸着剤、シリカゲル、及び再結晶処理のいずれか1種又は2種以上を組み合わせて、イヌリン、キナ酸、コーヒー酸及びその誘導体の少なくとも1以上を高濃度に含む抽出物に調製することでもよい。活性炭としては、松等の木、竹、椰子殻、胡桃殻等の植物質のほか、石炭質、石油質等を原材料として、それらの原材料に水蒸気や二酸化炭素、空気等のガスを使う高温炭化法等の物理的な方法や塩化亜鉛等の化学薬品を使って処理した上で加熱し、多孔質にする化学的な方法による活性化処理を施して得られる活性炭等何れを用いても良い。また、合成吸着剤としては、スチレン/ジビニルベンゼン共重合体、メタクリル酸エステル重合体等の非イオン性樹脂が挙げられる。
【0019】
以上のようにして得られる抽出物に含まれるイヌリン、キナ酸、コーヒー酸又はその誘導体の重量%は、以下の量が好ましい。本発明において、抽出物に含まれるイヌリンの固形分量は、固形分重量20~90重量%が好ましい。また、抽出物に含まれるキナ酸、コーヒー酸又はその誘導体の固形分量は、固形分重量0.001~5.0重量%が好ましい。また、当該抽出物を配合した毛髪化粧料中のイヌリンの量は、固形分重量0.1~1.0重量%が好ましく、キナ酸、コーヒー酸又はその誘導体の固形分量は、固形分重量0.00001~0.02重量%が好ましい。
【0020】
本発明において、イヌリンとキナ酸又はコーヒー酸若しくはその誘導体とを含む場合は、毛髪化粧用中のイヌリンとキナ酸又はコーヒー酸若しくはその誘導体との相対比(重量比)は、10:1~99:1である。
【0021】
イヌリン又はその誘導体、キナ酸又はコーヒー酸若しくはその誘導体、及び本発明に係る植物抽出物は、後述するように、XVII型コラーゲン合成促進作用を有し、また、毛包幹細胞のマーカータンパク質の合成を促進することが示唆される。これらの作用により、加齢により減少する毛包幹細胞を健全な状態に維持し、毛髪サイクルの開始を促すことができる。
【0022】
本発明に係る抽出物を毛髪化粧料(医薬部外品も含む)に配合する場合、例えば、育毛・養毛用化粧料であれば、一般的には0.00001~5.0重量%(固形分重量%、以下同じ)であり、好ましくは、0.001~3.0重量%である。また、シャンプー等の洗髪用化粧料であれば、一般的には0.00001~5.0重量%(固形分重量%、以下同じ)であり、好ましくは、0.0001~1.0重量%である。また、リンスやコンディショナーであれば、一般的には0.00001~5.0重量%(固形分重量%、以下同じ)であり、好ましくは、0.001~1.0重量%である。
【0023】
本発明に係るイヌリン、キナ酸、コーヒー酸又はそれらの誘導体、或いはそれらの少なくとも1以上の植物の抽出物を毛髪化粧料(医薬部外品も含む)に配合する際に、毛髪化粧料に用いられる他の活性成分(毛母細胞賦活剤、抗男性ホルモン剤、血行促進剤、皮脂分泌抑制剤、抗炎症剤、毛髪保護剤、毛周期の成長維持剤等)を組み合わせて配合するようにしてもよく、これによって、相乗的な育毛・養毛効果、髪質の改善効果及び頭皮の炎症予防:改善効果等を期待することもできる。
【0024】
例えば、育毛・養毛効果の相乗効果が期待できる成分としては、ミノキシジル、シプロテロンアセテート、ペンタデカン酸グリセリド、6-アミノベンジルプリン(サイトプリン)、アデノシン、トランス-3,4'-ジメチル3-ヒドロキシフラバノン(t-フラバノン)、センブリエキス、ヒノキチオール、感光素、パントテン酸及びその誘導体、ビタミンE及びその誘導体、ニコチン酸誘導体(ニコチン酸アミド等)、塩化カルプロニウム、女性ホルモン類(エチニルエストラジオール、エストロン等)、サリチル酸、グリチルリチン酸ジカリウム、ヒノキチオール、塩化ベンザルコニウム、イソプロピルメチルフェノール、l-メントール、塩酸ピリドキシン(ビタミンB6)、チオキソロン、カンファー、レゾルシン、タマサキツヅラフジ根の抽出物、タマサキツヅラフジから得られるビス型アルカロイド、甘草エキス、センブリエキス、マイマイ花エキス、カミツレエキス、ローヤルゼリー発酵物、ハスの種子発酵物、イチョウエキス、パルダルコ樹皮エキス、ゲンチアナエキス、オタネニンジンエキス、豆乳発酵液、黒大豆加水分解エキス、アッケシソウエキス、タケノコエキス、葛根エキス、ミツイシコンブエキス、チョウジエキス、コラーゲン、アミノ酸類、及びビタミン類等が挙げられ、それらのいずれか1種又は2種以上を配合してもよい。
【0025】
特に、頭皮の炎症を抑える「グリチルリチン酸ジカリウム、甘草エキス、パルダルコ樹皮エキス又はゲンチアナエキス」、頭皮の炎症を抑える効果及び殺菌効果を有する「イソプロピルメチルフェノール」、血流促進効果を有する「タマサキツヅラフジ根エキス又はそれから得られるビス型アルカロイド」、血流促進効果及び皮脂分泌抑制効果を有する「オタネニンジンエキス」、血行促進効果を有する「センブリエキス」、皮脂の酸化抑制効果を有する「豆乳発酵液」、頭皮のバリア機能を回復させる「アッケシソウエキス」、毛髪の成長期への移行を促進する「タケノコエキス又は葛根エキス」、脱毛を抑制する「ミツイシコンブエキス」及び頭皮の乾燥を抑制する「コラーゲン」の少なくとも1以上と併用することが好ましい。
【0026】
また、本発明に係る抽出物を含む毛髪化粧料(医薬部外品も含む)には、上述の成分のほかに、通常、毛髪化粧料(医薬部外品も含む)に用いられる成分、例えば油性成分、界面活性剤(合成系、天然物系)、保湿剤、増粘剤、防腐・殺菌剤、粉体成分、紫外線吸収剤、抗酸化剤、キレート剤、ph調整剤、色素、香料等を必要に応じて適宜配合することができる。また、本発明に係る有効成分の有効性、特長を損なわない限り、他の生理活性成分を組み合わせて配合することも何ら差し支えない。
【0027】
ここで、油性成分としては、例えばオリーブ油、ホホバ油、ヒマシ油、大豆油、米油、米胚芽油、ヤシ油、パーム油、カカオ油、メドウフォーム油、シアーバター、ティーツリー油、アボガド油、マカデミアナッツ油、ニンジン油、オタネニンジン油、ベルガモット油、植物由来スクワラン等の植物由来の油脂類;ミンク油、タートル油等の動物由来の油脂類;ミツロウ、カルナウバロウ、ライスワックス、ラノリン等のロウ類;流動パラフィン、ワセリン、パラフィンワックス、スクワラン等の炭化水素類;ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、イソステアリン酸、エイコセン酸等の脂肪酸類;ラウリルアルコール、セタノール、ステアリルアルコール等の高級アルコール類;ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、オレイン酸ブチル、2-エチルヘキシルグリセライド、高級脂肪酸オクチルドデシル(ステアリン酸オクチルドデシル等)等の合成エステル類及び合成トリグリセライド類等が挙げられる。
【0028】
界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル等の非イオン界面活性剤;脂肪酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレン脂肪アミン硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸塩、α-スルホン化脂肪酸アルキルエステル塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル燐酸塩等のアニオン界面活性剤;第四級アンモニウム塩、第一級~第三級脂肪アミン塩、トリアルキルベンジルアンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、2-アルキル-1-アルキル-1-ヒドロキシエチルイミダゾリニウム塩、N,N-ジアルキルモルフォルニウム塩、ポリエチレンポリアミン脂肪酸アミド塩等のカチオン界面活性剤;N,N-ジメチル-N-アルキル-N-カルボキシメチルアンモニオベタイン、N,N,N-トリアルキル-N-アルキレンアンモニオカルボキシベタイン、N-アシルアミドプロピル-N′,N′-ジメチル-N′-β-ヒドロキシプロピルアンモニオスルホベタイン等の両性界面活性剤等を使用することができる。
【0029】
乳化剤又は乳化助剤としては、酵素処理ステビア等のステビア誘導体、サポニン又はその誘導体、カゼイン又はその塩(ナトリウム等)、糖と蛋白質の複合体、ショ糖又はそのエステル、ラクトース、大豆由来の水溶性多糖、大豆由来蛋白質と多糖の複合体、ラノリン又はその誘導体、コレステロール、ステビア誘導体(ステビア酵素処理物等)、ケイ酸塩(アルミニウム、マグネシウム等)、炭酸塩(カルシウム、ナトリウム等)、サポニン及びその誘導体、レシチン及びその誘導体(水素添加レシチン等)、乳酸菌醗酵米、乳酸菌醗酵発芽米、乳酸菌醗酵穀類(麦類、豆類、雑穀等)等を配合することもできる。
【0030】
保湿剤としては、例えばグリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、ソルビトール、キシリトール、ピロリドンカルボン酸ナトリウム等があり、さらにトレハロース等の糖類、ムコ多糖類(例えば、ヒアルロン酸及びその誘導体、コンドロイチン及びその誘導体、ヘパリン及びその誘導体等)、エラスチン及びその誘導体、コラーゲン加水分解物、NMF関連物質、乳酸、尿素、高級脂肪酸オクチルドデシル、海藻抽出物、シラン根(白及)抽出物、各種アミノ酸及びそれらの誘導体が挙げられる。
【0031】
増粘剤としては、例えばアルギン酸、寒天、カラギーナン、フコイダン等の褐藻、緑藻又は紅藻由来成分;シラン根(白及)抽出物;ペクチン、ローカストビーンガム、アロエ多糖体、アルカリゲネス産生多糖体等の多糖類;キサンタンガム、トラガントガム、グアーガム等のガム類;カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、アクリル酸・メタクリル酸共重合体等の合成高分子類;ヒアルロン酸及びその誘導体;ポリグルタミン酸及びその誘導体等が挙げられる。
【0032】
防腐・殺菌剤としては、例えば尿素;パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル等のパラオキシ安息香酸エステル類;フェノキシエタノール、ジクロロフェン、ヘキサクロロフェン、塩酸クロルヘキシジン、塩化ベンザルコニウム、サリチル酸、エタノール、ウンデシレン酸、フェノール類、ジャマール(イミダゾデイニールウレア)、プロパンジオール、1,2-ペンタンジオール、各種精油類、樹皮乾留物、大根発酵液、サトウキビ等の植物由来のエタノール又は1,3-ブチレングリコール等がある。
【0033】
粉体成分としては、例えばセリサイト、酸化チタン、タルク、カオリン、ベントナイト、酸化亜鉛、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、無水ケイ酸、雲母、ナイロンパウダー、ポリエチレンパウダー、シルクパウダー、セルロース系パウダー、穀類(米、麦、トウモロコシ、キビ等)のパウダー、豆類(大豆、小豆等)のパウダー等がある。
【0034】
紫外線吸収剤としては、例えばパラアミノ安息香酸エチル、パラジメチルアミノ安息香酸エチルヘキシル、サリチル酸アミル及びその誘導体、パラメトキシ桂皮酸2-エチルヘキシル、桂皮酸オクチル、オキシベンゾン、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸塩、4-ターシャリーブチル-4-メトキシベンゾイルメタン、2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、ウロカニン酸、ウロカニン酸エチル、アロエ抽出物等がある。
【0035】
抗酸化剤としては、例えばブチルヒドロキシアニソール、ブチルヒドロキシトルエン、没食子酸プロピル、ビタミンE及びその誘導体(例えば、ビタミンEニコチネート、ビタミンEリノレート等)等がある。
【0036】
キレート剤としては、例えばエチレンジアミンヒドロキシエチル三酢酸三ナトリウム、エデト酸又はその塩類、グルコン酸、フィチン酸、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、ヒドロキシエタンジホスホン酸四ナトリウムなどがある。
【0037】
pH調整剤としては、例えばクエン酸又はその塩類、乳酸又はその塩類、グリコール酸、コハク酸、塩酸、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどがある。
【0038】
生理活性成分としては、例えば、胎盤抽出液、ソウハクヒ抽出物、ユキノシタ抽出物、シソ抽出物、米糠抽出物又はその加水分解物、白芥子抽出物又はその加水分解物、白芥子の発酵物、シャクヤク抽出物又はその加水分解物、ムラサキシキブ抽出物、ハス種子抽出物又はその加水分解物、党参抽出物又はその加水分解物、ハトムギ加水分解物、ハトムギ種子発酵物、酒粕抽出物又はそれに含まれるセラミド、酒粕発酵物、パンダヌス・アマリリフォリウス(Pandanus amaryllifolius Roxb.)抽出物、アルカンジェリシア・フラバ(Arcangelicia flava Merrilli)抽出物、イネの葉の抽出物又はその加水分解物、ナス(ベルガモット、長ナス、賀茂ナス、米ナス等)抽出物又はその加水分解物、アンズ果実の抽出物、カタメンキリンサイ等の海藻の抽出物、クラゲ水、米抽出物又はその加水分解物、米醗酵エキス、発芽米抽出物又はその加水分解物、発芽米発酵物、ダマスクバラの花の抽出物、リノール酸及びその誘導体もしくは抽出物(例えばリポソーム化リノール酸等)、動物又は魚由来のコラーゲン及びその誘導体、エラスチン及びその誘導体、グリチルレチン酸及びその誘導体、t-シクロアミノ酸誘導体、ビタミンA及びその誘導体、アラントイン、ジイソプロピルアミンジクロロアセテート、γ-アミノ-β-ヒドロキシ酪酸、ニンジン抽出物、紅参抽出物、ヘチマ抽出物、アナアオサ抽出物、モモ抽出物、桃仁抽出物、キウイ抽出物、ヒマワリ種子又は芽の抽出物、ジュアゼイロ(Zizyphus joazeiro)抽出物、萱草(デイリリー)抽出物または発酵物、ハイビスカスの花抽出物または発酵物、ハゴロモグサ抽出物、チェリモヤ抽出物、マンゴー抽出物、マンゴスチン抽出物、フノリ抽出物、烏龍茶抽出物、紅富貴抽出物、紫蘭抽出物、山椒果皮又は種皮の抽出物または加水分解物、ベニバナ花抽出物、カサブランカ抽出物、甘藷抽出物又はその発酵物、グアバ葉抽出物、ドクダミ抽出物、晩白柚抽出物、アロエ抽出物、イチジク花抽出物、リンゴ抽出物等がある。
【0039】
次に、製造例、処方例及び試験例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。なお、以下において、部はすべて重量部を、また%はすべて重量%を意味する。
【0040】
イヌリン又はその誘導体、及びコーヒー酸の誘導体(クロロゲン酸)を含む植物抽出物として、キク科ゴボウ属に属するゴボウの抽出物の製造例を以下に示す。
【0041】
製造例1.ゴボウの抽出物の調製(1)
ゴボウの根の乾燥物10gに精製水を50gとエタノール50gとを添加し、50℃で浸漬した。これをろ過し、褐色透明のゴボウ根抽出物溶液90g得た(固形分濃度1.54%)。得られた抽出物溶液を濃縮して、濃縮液13.5gを得た。
【0042】
製造例2.ゴボウの抽出物の調製(2)
ゴボウの根の乾燥物10gに精製水50gと1,3-ブチレングリコール50gを添加し、40℃で浸漬した。これをろ過し、褐色透明のゴボウ根抽出物90gを得た(固形分濃度1.62g)。得られた抽出物溶液を濃縮して、濃縮液13.5gを得た。
【0043】
製造例3.ゴボウの抽出物の調製(3)
ゴボウの根の乾燥物10gに精製水50gと1,2-ペンタンジオール50gを添加し、40℃で浸漬した。これをろ過し、褐色透明のゴボウ根抽出物90gを得た(固形分濃度1.59g)。得られた抽出物溶液を濃縮して、濃縮液13.5gを得た。
【0044】
製造例1~3の抽出物に、イヌリン及びクロロゲン酸が含まれることを、常法により確認した。すなわち、クロロゲン酸の検出についてはフォーリン・チオカルト法(比色法)を用いて確認し、イヌリンについては、還元糖を検出するDNS法(比色法)を用いて確認した。
【0045】
なお、本発明に係る植物抽出物は、上記製造例に限るものではなく、イヌリン、キナ酸或いはコーヒー酸又はその誘導体をそれぞれ含む植物の抽出物を組み合わせることでもよい。例えば、ゴボウに代えて、製造例1~3に記載のゴボウに代えて、菊芋、コーヒー種子、アーティチョーク、リンゴ果実等を用いて、抽出操作を行い、それら抽出物を併用することでもよい。
【0046】
試験例1.XVII型コラーゲン産生促進の評価
正常ヒト表皮細胞 (NHEK) をHumedia-KG2培地[クラボウ社製]を添加した96穴マイクロプレートに8×103個/穴播種し、37℃,5.0%CO2の条件下に1日間プレ培養した後、表1に示す試料溶液1~7を所定の濃度で含むように調整したHumedeia-KG2培地を添加し、同条件でさらに2日間培養した。ここで、試料溶液6,7に係る抽出物の濃度は、培地の量に対して溶液として終濃度が0.5%,1.0%となるように調整した。その後、XVII型コラーゲン抗体を用いた免疫的検出を行った。すなわち、PBS(-)洗浄後、15%中性緩衝ホルマリン液を用いて細胞を30分間処理して固定し、その後、0.5%Triton X-100溶液で1時間浸透処理と、5倍希釈ブロッキングワンP(ナカライテスク社)溶液で2時間処理によるブロッキングを行った後、XVII型コラーゲン抗体を添加し、室温で2時間静置した。その後、PBS(-)で洗浄し、蛍光ラベルした二次抗体を添加してさらに暗所で一定時間静置した。PBS(-)洗浄後、蛍光強度の測定を行った。まず、二次抗体の蛍光ラベル(Alexa Fluor594)をEx=544nm、Em=590nmで測定し(蛍光マイクロプレートリーダー[フルオロスキャンアセント、Thermo Fisher Scientific社製])、その後、Hoechst33342によるDNA染色を行い、Ex=355nm、Em=460nmの測定を行った。それぞれの試験区のAlexa Fluor594の蛍光強度をHoechst33342の蛍光強度で割ることで、XVII型コラーゲンの生成度合いを求めた。また、試料溶液に代えて50%1,3-ブチレングリコール溶液(50%BG溶液)又はPBS、DMSOを添加した試料無添加(対照)のコントロール区についても上記と同様の操作を行い、コントロール区で得られたXVII型コラーゲン生成度合いに対する各試料添加時のXVII型コラーゲン生成度合いの相対値を求め、XVII型コラーゲン生成率(%)とした。
【0047】
[表1]
本発明の評価試験で用いる試料溶液を表1に示す。
【0048】
【0049】
表2に示すように、本発明に係る有効成分(試料溶液1~7)は、表皮細胞におけるXVII型コラーゲン産生促進効果を有することが確認された。XVII型コラーゲンは、毛髪サイクルの開始に重要な役割を果たす毛包幹細胞をバルジ領域に保持するものであることから、本発明によれば、当該コラーゲンの産生を促進することで、毛髪サイクルを健全な状態に維持して、薄毛、脱毛を予防、改善することができる。
【0050】
試験例2.XVII型コラーゲン遺伝子発現促進効果の評価
正常ヒト表皮細胞 (NHEK) をHumedia-KG2培地[クラボウ社製]を添加した6穴プレートに6×105個/穴播種し、5.0%CO2、飽和水蒸気下、37℃で培養した。24時間培養後、表1に示す試料溶液1~7を添加して培養した。ここで、試料溶液6,7に係る抽出物の濃度は、培地量に対する溶液としての終濃度が0.5%,1.0%となるように調整した。また、比較対照として、試料溶液に代えて、50%BG溶液(1.0%) を添加したコントロール区を設定した。24時間培養後、それぞれの試験区及びコントロール区の細胞をTrizol試薬(Invitrogen社製)1mLで回収した。回収した細胞に対してクロロホルム(和光純薬工業社製)200μL添加して撹拌混合し遠心分離機(TOMY社製/MX-160)で15,000rpm、4℃の条件下で15分間遠心分離した後、水層のみを400μL分取した。回収した水層にイソプロパノール(和光純薬工業社製)500μLを添加して撹拌混合し、15,000rpm、4℃の条件下で15分間遠心分離してtotalRNAの沈殿物を得た。totalRNAに75%エタノールを1mL添加して撹拌して洗浄し、15,000rpm、4℃条件下で15分間遠心分離して沈殿を回収した。回収したtotal RNAを所定のキット(PrimeScript RT reagent Kit with gDNA Eraser (Perfect Real Time)[タカラバイオ社製])を用いて逆転写反応し、cDNAを合成した。合成したcDNAをサンプルとして、Thermal Cycler Dice(登録商標)Real Time System Single(タカラバイオ社製)、及びSYBR(登録商標)Premix Ex TaqTM II(Perfect Real Time)[タカラバイオ社製]を用いて、XVII型コラーゲン遺伝子の発現と、内部標準物質β-actin遺伝子の発現の検出を行った。ここで、β-actinは、ハウスキーピング遺伝子(多くの組織や細胞中に共通して一定量発現する遺伝子であって、常に発現され,細胞の維持,増殖に不可欠な遺伝子である)の一つであり、発現量が常に一定とされていることから、PCRの実験では内部標準として用いられるものである。試験結果は、β-actin遺伝子の発現量を一定とした場合の、それぞれの試験区での各遺伝子の発現量を比較した。本試験系においては、コントロール区のXVII型コラーゲンの遺伝子の発現量を100としたときの他の試験区でのXVII型コラーゲンの遺伝子の発現量の相対値を求めた。
【0051】
【0052】
表3に示すように、本発明に係る有効成分(試料溶液1~7)は、表皮細胞におけるXVII型コラーゲン遺伝子の発現を亢進する効果を有することが確認された。
【0053】
試験例3.毛包外毛根鞘細胞におけるXVII型コラーゲン遺伝子発現促進効果の評価
ヒト毛包外毛根鞘細胞(HHORSC)を、MSCM培地[ScienCell Research Laboratories社製]を添加した穴プレートに3×105個/穴播種し、5.0%CO2、飽和水蒸気下、37℃で培養した。24時間培養後、表1に示す試料溶液5,7を添加して培養した。ここで、試料溶液7に係る抽出物の濃度は、培地量に対する溶液としての終濃度が1.0%となるように調整した。また、比較対照として、試料溶液に代えて、50%BG溶液 (1.0%) を添加したコントロール区を設定した。24時間培養後、それぞれの試験区及びコントロール区の細胞をTrizol試薬(Invitrogen社製)1mLで回収した。回収した細胞に対してクロロホルム(和光純薬工業社製)200μL添加して撹拌混合し遠心分離機(TOMY社製/MX-160)で15,000rpm、4℃の条件下で15分間遠心分離した後、水層のみを400μL分取した。回収した水層にイソプロパノール(和光純薬工業社製)500μLを添加して撹拌混合し、15,000rpm、4℃の条件下で15分間遠心分離してtotalRNAの沈殿物を得た。totalRNAに75%エタノールを1mL添加して撹拌して洗浄し、15,000rpm、4℃条件下で15分間遠心分離して沈殿を回収した。回収したtotal RNAを所定のキット(PrimeScript RT reagent Kit with gDNA Eraser (Perfect Real Time)[タカラバイオ社製])を用いて逆転写反応し、cDNAを合成した。合成したcDNAをサンプルとして、Thermal Cycler Dice(登録商標)Real Time System Single[タカラバイオ社製]、及びSYBR(登録商標)Premix Ex TaqTM II(Perfect Real Time)[タカラバイオ社製]を用いて、XVII型コラーゲン遺伝子の発現と、内部標準物質β-actin遺伝子の発現の検出を行った。試験結果は、β‐actin遺伝子の発現量を一定とした場合の、それぞれの試験区でのXVII型コラーゲン遺伝子の発現量を比較した。本試験系においては、コントロール区のXVII型コラーゲン遺伝子の発現量を100としたときの他の試験区でのXVII型コラーゲン遺伝子の発現量の相対値を求めた。
【0054】
【0055】
表4に示すように、本発明に係る有効成分(試料溶液5,7)は、毛包外毛根鞘細胞におけるXVII型コラーゲン遺伝子の発現を亢進する効果を有することが確認された。
【0056】
試験例4.毛包幹細胞増殖促進効果の評価
頭皮より抜毛した毛包の毛乳頭細胞(Dermal sheath)を除去し、トリプシン処理した後、トリプシン阻害剤で反応を停止し、コラーゲンコーティングを行った培養皿に移し、Humedia -KG2を用いて培養した。培養1日後、表1に示す試料溶液5,7を含むHumedeia-KG2培地を添加し、同条件でさらに3日間培養した。ここで、試料溶液7に係る抽出物の濃度は、培地量に対する溶液としての終濃度が1.0%となるように調整した。3日培養後、毛包幹細胞マーカータンパク質である「CD34タンパク質」の抗体を用いた免疫的検出を行った。すなわち、PBS(-)洗浄後、15%中性緩衝ホルマリン液を用いて培養細胞を30分処理することで固定し、0.5%Triton X-100溶液で1時間浸透処理、5倍希釈ブロッキングワンP(ナカライテスク社)溶液で2時間処理することでブロッキングを行った後、CD34抗体を添加し、冷温暗室で一晩静置した。一晩静置後、PBS(-)で洗浄し、蛍光ラベルした二次抗体を添加してさらに暗所で一定時間静置した。一定時間静置後、PBS(-)で洗浄し、蛍光観察を行った。蛍光観察で得られた画像をCS Analyzer ver 3.0 (ATTO社) を用いて輝度値を測定した。試料溶液に代えて50%BG溶液を添加した試料無添加(対照)のコントロール区についても上記と同様の操作を行い、コントロール区の輝度値に対する各試料添加時の輝度値の相対値を求め、CD34生成率(%)とした。
【0057】
【0058】
表5に示す通り、本発明に係る有効成分(試料溶液5,7)は、毛包幹細胞の増殖を促進することが示唆された。
【0059】
試験例5.毛髪サイクルの正常化の評価試験
被験者20人を10人毎のグループに分け、各被験者の両側頭部1cm×1cmの髪を刈り取り、それぞれを試験部位としてマイクロスコープ(Dino-Lite:サンコー株式会社)にて写真を撮影した。3日後、各試験部位について写真を撮影し、休止期の毛髪の数を画像解析によって確認した。その後、側頭部の試験部位の一方に表1に示す試料溶液5,7を3ヵ月間、1日2回塗布し、他方にコントロール溶液である「PBS(-)溶液」を同様に塗布した。3ヵ月後、試験部位の写真をマイクロスコープにて撮影し、試料溶液の塗布前と塗布後の休止期の毛髪を計測した。
【0060】
試験の結果を以下のとおり評価した。
(1)++:休止期の毛髪の数が減少した。
(2)+ :休止期の毛髪の数に変化がなかった。
(3)- :休止期の毛髪の数が増加した。
【0061】
【0062】
表6に示す通り、本発明に係る有効成分(試料溶液5,7)の塗布により、被験者における休止期の毛髪の数が減少した。これにより、本発明は毛髪サイクルを正常化することが確認された。
【0063】
試験例6.育毛・養毛効果に関するモニターテスト
表7,8に示す処方例1~8及び比較例1の育毛料を用いて、モニター試験を行った。脱毛症患者である被験者(30~65歳の男性)を5名毎のグループを分け、当該被験者を対象として、処方例1~8及び比較例1の各育毛料を頭部に1日2回連続3か月間塗布した後、毛髪の増加について、以下の判定基準に基づき評価を行った。毛髪の増加度は、頭皮及び毛髪の状態を写真撮影したものを用いて評価した。
【0064】
【0065】
【0066】
[評価基準]
++:試験開始前と比較して毛髪の増加が確認された。
+ :試験開始前と比較して変化は確認されなかった。
- :試験開始前より毛髪の減少が確認された。
【0067】
【0068】
表9に示す通り、本発明によれば、すぐれた育毛・養毛効果を有する育毛料を提供することができる。
【0069】
表1に示す処方例以外の処方例も以下に示す。
処方例9.育毛料
[成分] 部
l-メントール 0.8
アデノシン 1.0
製造例1の抽出物 2.0
1,3-ブチレングリコール 10.0
フェノキシエタノール 0.2
エタノール 20.0
精製水 全量が100部となる量
上記の成分を十分攪拌混合して育毛料を得た。
【0070】
処方例10.育毛料
処方例9の成分中、アデノシンに代えて、ミノキシジルを用いるほかは処方例9と同様にして育毛料を得た。
【0071】
処方例11.育毛料
処方例9の成分中、アデノシンに代えて6-ベンジルアミノプリンを用いるほかは処方例9と同様にして育毛料を得た。
【0072】
処方例12.育毛料
[成分] 部
グリチルリチン酸ジカリウム 0.1
l-メントール 0.1
製造例1の抽出物 1.0
大豆レシチン 0.2
1,3-ブチレングリコール 10.0
エタノール 20.0
タケノコ皮エキス 3.0
褐藻エキス 3.0
アッケシソウエキス 3.0
ゲンチアナエキス 3.0
アマモエキス 3.0
精製水 全量が100部となる量
【0073】
処方例13.育毛料
処方例10において、タケノコエキスに代えて葛根エキスを用い、ゲンチアナエキスに代えてパウダルコ樹皮エキスを用いる他は、処方例10と同様にして育毛料を得た。
【0074】
処方例14.育毛料
処方例10において、アマモエキスに代えて黒大豆加水分解エキスを用い、アッケシソウエキスに代えて豆乳発酵液を用いる他は、処方例10と同様にして育毛料を得た。
【0075】
処方例15.ヘアークリーム
[成分] 部
流動パラフィン 15.0
ワセリン 15.0
サラシミツロウ 2.0
製造例1の抽出物 1.0
褐藻エキス 0.3
カルボキシビニルポリマー 0.1
キサンタンガム 0.1
グリセリン 5.0
1、3-ブチレングリコール 2.0
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 3.0
キレート剤 0.1
防腐剤 0.1
香料 0.1
色素 0.01
精製水 全量が100部となる量
【0076】
処方例16.ヘアシャンプー
[成分] 部
N-ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウム 10.0
ポリオキシエチレン(3)アルキルエーテル硫酸ナトリウム 20.0
ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン 10.0
ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド 4.0
メチルパラベン 0.1
クエン酸 0.1
製造例1の抽出物 2.0
コラーゲン 5.0
アマモエキス 5.0
黒大豆加水分解液 5.0
アッケシソウエキス 5.0
パウダルコ樹皮エキス 5.0
葛根エキス 5.0
1,3-ブチレングリコール 2.0
精製水 全量が100部となる量
【0077】
処方例17.ヘアシャンプー
処方例16の成分中、製造例1の抽出物に代えて製造例2の抽出物を用いるほかは処方例16と同様にしてヘアシャンプーを得た。
【0078】
処方例18.ヘアシャンプー
処方例16の成分中、製造例1の抽出物に代えて製造例3の抽出物を用いるほかは処方例16と同様にしてヘアシャンプーを得た。
【0079】
実施例19.ヘアリンス
[A成分] 部
ポリオキシエチレン(10)硬化ヒマシ油 1.0
塩化ジステアリルジメチルアンモニウム 1.5
塩化ステアリルトリメチルアンモニウム 2.0
2-エチルヘキサン酸グリセリル 1.0
セタノール 3.2
ステアリルアルコール 1.0
メチルパラベン 0.1
製造例1の抽出物 2.0
1,3-ブチレングリコール 5.0
精製水 全量が100部となる量