(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-14
(45)【発行日】2024-06-24
(54)【発明の名称】通気性扉
(51)【国際特許分類】
E06B 7/02 20060101AFI20240617BHJP
E06B 3/82 20060101ALI20240617BHJP
E06B 5/20 20060101ALI20240617BHJP
【FI】
E06B7/02
E06B3/82
E06B5/20
(21)【出願番号】P 2018244399
(22)【出願日】2018-12-27
【審査請求日】2021-09-29
【審判番号】
【審判請求日】2023-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】506209422
【氏名又は名称】地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター
(74)【代理人】
【識別番号】100095337
【氏名又は名称】福田 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100174425
【氏名又は名称】水崎 慎
(74)【代理人】
【識別番号】100203932
【氏名又は名称】高橋 克宗
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 茂幸
(72)【発明者】
【氏名】宮入 徹
【合議体】
【審判長】居島 一仁
【審判官】古屋野 浩志
【審判官】佐藤 史彬
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-26236(JP,A)
【文献】特開平8-28153(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第1710239(CN,A)
【文献】実開昭48-84547(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 7/00- 7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1空間と第2空間とを隔てる区画体へ開閉可能に設けられ、前記第1空間と前記第2空間との間で空気の移動を可能にする通気性を備えた通気性扉において、
前記通気性扉は、
前記第1空間に外面が臨み、4つの隅部が生じる矩形で、四隅部の何れかに寄せて第1通気領域を形成した第1面部と、
前記第2空間に外面が臨み、前記第1面部と同一形状で、前記第1通気領域と対向しない何れかの隅部に寄せて第2通気領域を形成した第2面部と、
前記第1面部と前記第2面部を離隔させて、前記第1面部の前記第1通気領域と前記第2面部の前記第2通気領域が連通する扉内空部を形成する側壁部と、
から成り、
前記扉内空部には、前記第1通気領域と前記第2通気領域を繋ぐ流路が、折り返しながら向きを変える蛇行流路となるように、前記第1面部の内面と前記第2面部の内面に固定されて前記扉内空部を仕切る仕切体を設け、
前記蛇行流路は、前記仕切体に沿うように音の伝搬方向を誘導する複数の伝搬誘導路と、隣接する2つの伝搬誘導路を合流させる折返し部と、を含み、
前記蛇行流路の前記折返し部
のみに、前記伝搬誘導路による音の伝搬方向を塞ぎ、伝搬音を垂直入射させる
向きの長さである厚さが所要厚さの吸音材を配置した、
ことを特徴とする通気性扉。
【請求項2】
前記吸音材は、厚さ50〔mm〕以上のロックウールとしたことを特徴とする請求項1に記載の通気性扉。
【請求項3】
前記仕切体の端部と前記折返し部に配置される前記吸音材の端部との間が132〔mm〕以上となるように前記仕切体の長さおよび前記吸音材の厚さを設定し、前記折返し部における流路が狭まり過ぎることによる減音効果の低下を抑制するようにしたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の通気性扉
。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1空間と第2空間とを隔てる区画体へ開閉可能に設けられ、第1空間と第2空間との間で空気の移動を可能にする通気性を備えた通気性扉に関するものである。
【背景技術】
【0002】
部屋と部屋を仕切る壁や部屋と廊下を仕切る壁などの扉(ドア)には、通気性を保ちつつ2つの空間を隔てるために、通気性扉が用いられることがある。このような通気性扉には、ルーバ付きの通気口などを用いた通気領域が扉の両面に設けられているため、通気口を介した音洩れが発生し易く、遮音性能が低いという欠点があった。特に、船舶用扉の騒音規制コードは、国際海事機関が定める船舶に関する国際的規制で定められた遮音性能基準値を満たさなければならないため、求められる遮音性能がシビアである。
【0003】
船舶の居住区に使用する壁、扉などの部材に対する遮音性能基準(重み付き音響透過損失:以下Rwという)は、通路と居室間に対してRw=30dB、居室と居室間に対してRw=35dBを満たすことが必要である。ここで、重み付き音響透過損失の算出方法につき、
図14に基づいて説明する。評価対象範囲を1/3オクターブバンド100Hz~3150Hzとし、評価対象の扉における音響透過損失の結果を得る(
図14中、結果例として示す)。この結果例に対して、基準曲線を1dBステップで上下させ、16個の1/3オクターブバンドにおいて、基準曲線の値を下回る範囲内で、基準曲線と結果との差の総和が32.0dBを上回らない範囲で、できるたけ大きくなるところまで移動させる。この手順で移動した基準曲線の500Hzにおける値(dB)を重み付き音響透過損失の値とするのである。
図14の例では、Rw=34dBとなる。
【0004】
一般的な鋼板製の通気性扉の外観を
図15(1)に示す。通気性扉101は、壁120に開閉可能に設けられ、ルーバ付き通気孔を集約状に設けた通気領域102を備える。現状の扉は、
図15(2A)に示す通気性扉101Aのように、第1空間に臨む第1通気領域102aと第2空間に臨む第2通気領域102bが対向状に設けられ、扉内空部103を介して第1通気領域102aから第2通気領域102bへ空気が通り抜ける。通気性扉101Aは通気性が良いものの、遮音性能は低くなってしまう。
図16に示す音響透過損失特性から、現状の通気性扉101Aでは、重み付き音響透過損失Rw=15〔dB〕程度である。
【0005】
現状の扉(通気性扉101A)よりも遮音性を向上させるために、
図15(2B)に示す通気性扉101Bは、扉内空部103に吸音材104(例えば、ロックウールやグラスウールなどの多孔質材)を詰めたものである。通気性扉101Bでは、第1通気領域102aから第2通気領域102bへ至る扉内空部に吸音材104を充填していないので、通気性を阻害されることは無いが、空気の振動として伝わる音も通し易い。
図16に示す音響透過損失特性から、吸音材104を挿入した通気性扉101Bでは、重み付き音響透過損失Rw=16〔dB〕程度である。
【0006】
また、現状の扉(通気性扉101A)よりも遮音性を向上させるために、
図15(2C)に示す通気性扉101Cは、第1空間に臨む第1通気領域102aと第2空間に臨む第2通気領域102bの開設位置を上下に変更したものである。通気性扉101Cでは、第1通気領域102aから第2通気領域102bへ至るまでに、扉内空部103で反射が生じ、音の減衰による遮音性の向上が望める。とはいえ、
図16に示す音響透過損失特性から、第1通気領域102aと第2通気領域102bを上下にずらした(ルーバ位置を変更した)通気性扉101Cでも、重み付き音響透過損失Rw=18〔dB〕程度である。
【0007】
このように、通気性扉の遮音性能を高めるためには、通気領域を対向状に設けないで、通気領域の開設位置をずらすことが有効と考えられるものの、それだけで飛躍的に遮音性能を高めることはできず、さらなる工夫が必要である。例えば、ドアの一方の面には最上部に換気口を設け、ドアの他方の面には最下部に換気口を設けて、両換気口をつなぐ空洞の側壁に吸音材を設けて防音機能を高めた防音換気建具が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1に記載されたドアは、構造が複雑となり、吸音材の設置に手間がかかる。しかも、扉の厚さから考えると、設置されている吸音材の厚みが薄いため、十分な遮音性能を発揮できないと考えられる。吸音材が薄いと、高音域でしか吸音効果を発揮できないからである。
【0010】
そこで、本発明は、簡易な内部構造で高い遮音性能を発揮できる通気性扉の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、第1空間と第2空間とを隔てる区画体へ開閉可能に設けられ、第1空間と第2空間との間で空気の移動を可能にする通気性を備えた通気性扉において、前記通気性扉は、前記第1空間に外面が臨み、4つの隅部が生じる矩形で、四隅部の何れかに寄せて第1通気領域を形成した第1面部と、前記第2空間に外面が臨み、前記第1面部と同一形状で、前記第1通気領域と対向しない何れかの隅部に寄せて第2通気領域を形成した第2面部と、前記第1面部と前記第2面部を離隔させて、第1面部の第1通気領域と第2面部の第2通気領域が連通する扉内空部を形成する側壁部と、から成り、前記扉内空部には、前記第1通気領域と前記第2通気領域を繋ぐ流路が、折り返しながら向きを変える蛇行流路となるように、前記第1面部の内面と前記第2面部の内面に固定されて前記扉内空部を仕切る仕切体を設けた、ことを特徴とする。
【0012】
また、上記構成において、前記蛇行流路は、前記仕切体に沿うように音の伝搬方向を誘導する複数の伝搬誘導路と、隣接する2つの伝搬誘導路を合流させる折返し部と、を含むことを特徴とする。
【0013】
また、上記構成において、前記蛇行流路の折返し部には、前記伝搬誘導路による音の伝搬方向を塞ぐように吸音材を配置したことを特徴とする。
【0014】
また、上記構成において、前記蛇行流路における前記第1通気領域側の端部となる側壁部と前記第1通気領域との間に生ずる第1流路端空部、および/または、前記蛇行流路における前記第2通気領域側の端部となる側壁部と前記第2通気領域との間に生ずる第2流路端空部に、吸音材を配置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る通気性扉によれば、第1面部の内面と前記第2面部の内面の両方に固定されて扉内空部を仕切る仕切体を設けることで、第1面部と第2面部との間で伝達される振動を抑制し、遮音性を高めることができる。加えて、第1通気領域と第2通気領域は、仕切体によって仕切られた蛇行流路により接続されるので、扉内空部を伝わる伝搬音の距離減衰が大きくなり、高い遮音性能を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第1実施形態に係る通気性扉の概略構成図である。
【
図2】(A)は第1実施形態に係る通気性扉を開閉可能に取り付ける区画壁の取り付けイメージ図である。(B)は第1実施形態に係る通気性扉を第1面板側からみた内部透視図である。
【
図3】(A)は第1実施形態に係る通気性扉の内部に設ける仕切材の配置状態を示す内部写真である。(B)は第1実施形態に係る通気性扉の振動計測面に計測点を示した外観写真である。
【
図4】仕切材の長さを異ならせた扉(通気領域なし)の一方の面板から音を入射したときに他方の面板で計測される振動速度の周波数特性図である。
【
図5】仕切材の長さを異ならせた扉(通気領域なし)の一方の面板から音を入射して他方の面板で計測される振動速度の132.5〔Hz〕における周波数特性を示す。(A)は仕切材を設けない通気性扉のコンター図である。(B)はL=1.0〔m〕の仕切材を設けた通気性扉のコンター図である。(C)はL=1.2〔m〕の仕切材を設けた通気性扉のコンター図である。(D)はL=1.4〔m〕の仕切材を設けた通気性扉のコンター図である。(E)はL=1.6〔m〕の仕切材を設けた通気性扉のコンター図である。(F)は
図5(A)~(E)に示す各コンター図の基準となる等値スケールである。
【
図6】仕切材の長さを異ならせた通気性扉においてそれぞれ得られた1/3オクターブバンド中心周波数に対する音響透過損失を示す特性図である。
【
図7】第1実施形態の通気性扉において仕切体の配置を換えた改変例を示す。(A)は上下に位置する第1隅部と第2隅部に第1通気領域と第2通気領域を設けて第1~第3仕切材にて蛇行流路を形成した第1改変例の概略説明図である。(B)は上下に位置する第1隅部と第2隅部に第1通気領域と第2通気領域を設けて第1~第5仕切材にて蛇行流路を形成した第2改変例の概略説明図である。(C)は斜めに位置する第1隅部と第3隅部第1通気領域と第2通気領域を設けて第1~第4仕切材にて蛇行流路を形成した第3改変例の概略説明図である。
【
図8】各折返し部に吸音材を設置した第2実施形態に係る通気性扉の内部写真である。
【
図9】吸音材として用いるロックウール80〔kg/m
3〕において厚さを異ならせたときにそれぞれ得られた1/3オクターブバンド中心周波数に対する垂直入射吸音率を示す特性図である。
【
図10】厚さ50mmの吸音材を備える通気性扉において仕切材の長さを異ならせたときにそれぞれ得られた1/3オクターブバンド中心周波数に対する音響透過損失を示す特性図である。
【
図11】L=1.0〔m〕の仕切材を備える第2実施形態の通気性扉において吸音材の厚さを異ならせたときにそれぞれ得られた1/3オクターブバンド中心周波数に対する音響透過損失を示す特性図である。
【
図12】各折返し部と2つの流路端空部に吸音材を設置した第3実施形態に係る通気性扉の内部写真である。
【
図13】L=1.0〔m〕の仕切材を備える第3実施形態の通気性扉においてロックウール80〔kg/m
3〕の吸音材を適用して得られた1/3オクターブバンド中心周波数に対する音響透過損失を示す特性図である。
【
図14】重み付き音響透過損失の算出方法を説明するために例示した1/3オクターブバンド中心周波数に対する音響透過損失を示す特性図である。
【
図15】(1)は一般的な現状の通気性扉を示す外観写真である。(2A)は対向状にルーバを設けた通気性扉の概略断面図である。(2B)は対向状にルーバを設けて吸音材を挿入した通気性扉の概略断面図である。(2C)はルーバ位置を上下にずらした通気性扉の概略断面図である。
【
図16】
図15(2A)~(2C)に示した3種類の通気性扉における1/3オクターブバンド中心周波数に対する音響透過損失を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、添付図面に基づいて、本発明に係る通気性扉の実施形態につき説明する。
【0018】
図1および
図2は、本発明に係る通気性扉の第1実施形態を示す。この通気性扉10は、第1空間Sp1と第2空間Sp2とを隔てる区画体(例えば、区画壁に設けられる扉枠20)へ開閉可能に設けられ、第1空間Sp1と第2空間Sp2との間で空気の移動を可能にする通気性を備える。この通気性扉10の外観は、第1面板1と第2面板2と四角枠状の枠体3より成り、例えば、枠体3の第1開口3a側を第1面板1にて閉塞し、枠第3の第2開口3b側を第2面板2にて閉塞する。
【0019】
第1面板1は、区画壁によって隔てられる一方の空間(例えば、第1空間Sp1)に外面1aが臨み、枠体3の第1開口3aに内面1bが臨む矩形の板材である。例えば、0.8〔mm〕圧のSPCC(冷間圧延鋼板)を1732〔mm〕×634〔mm〕に切り出し、板金加工によってルーバ付きの通気孔を集約状に設けた第1通気領域41を形成する。また、矩形の第1面板1における四側縁は、便宜上、短尺の底縁である第1縁部11、長尺で第1通気領域41の形成側にあたる第2縁部12、短尺の上縁で第1縁部11と対向する第3縁部13、長尺の側縁で第2縁部12と対向する第4縁部14とよぶ。同じく、第1面板1の四隅は、第1縁部11と第2縁部12の交接箇所に臨む第1隅部15a、第2縁部12と第3縁部13の交接箇所に臨む第2隅部15b、第3縁部13と第4縁部14の交接箇所に臨む第3隅部15c、第4縁部14と第1縁部11の交接箇所に臨む第4隅部15dとよぶ。第1面板1においては、第2縁部12に沿って縦長となる第1通気領域41を第1隅部15aに寄せて設けてある。
【0020】
第2面板2は、区画壁によって隔てられる他方の空間(例えば、第2空間Sp2)に外面2aが臨み、枠体3の第1開口3bに内面2bが臨む矩形の板材である。第1面板1と同様、例えば、0.8〔mm〕圧の冷間圧延鋼板(SPCC)を1732〔mm〕×634〔mm〕に切り出し、板金加工によってルーバ付きの通気孔を集約状に設けた第2通気領域42を形成する。また、矩形の第2面板2における四側縁は、便宜上、短尺の底縁である第1縁部21、長尺で第2通気領域42の形成側にあたる第2縁部22、短尺の上縁で第1縁部21と対向する第3縁部23、長尺の側縁で第2縁部22と対向する第4縁部24とよぶ。同じく、第2面板2の四隅は、第1縁部21と第2縁部22の交接箇所に臨む第1隅部25a、第2縁部22と第3縁部23の交接箇所に臨む第2隅部25b、第3縁部23と第4縁部24の交接箇所に臨む第3隅部25c、第4縁部24と第1縁部21の交接箇所に臨む第4隅部25dとよぶ。第2面板2においては、第4縁部24に沿って縦長となる第2通気領域42を第4隅部25dに寄せて設けてある。
【0021】
枠体3は、第1面板1と第2面板2の各四側縁に対応する4つの側壁部として、底部の横材である第1側壁部31、一側の縦材である第2側壁部32、上部の横材である第3側壁部33、他側の縦材である第4側壁部34から成る厚さ約30〔mm〕の四角枠状である。第1~第4側壁部31~34として、断面コ字状のチャンネル鋼を用いれば、軽量化しつつ十分な強度を得ることができる。また、同様のチャンネル鋼を用いた第1仕切材51、第2仕切材52、第3仕切材53を使うことで、通気性扉10内に形成される扉内空部6を任意の流路に仕切ることができる。なお、仕切体としての第1~第3仕切材51~53は、第1,第2面板1,2と枠体3に固定して、流路を仕切ることができれば良いので、I型鋼やH型鋼を用いても良い。
【0022】
第1側壁部31は、第1開口3a側が第1面板1の第1縁部11に、第2開口3b側が第2面板2の第1縁部21にそれぞれ対応して固定される。第2側壁部32は、第1開口3a側が第1面板1の第2縁部12に、第2開口3b側が第2面板2の第2縁部22にそれぞれ対応して固定される。第3側壁部33は、第1開口3a側が第1面板1の第3縁部13に、第2開口3b側が第2面板2の第3縁部23にそれぞれ対応して固定される。第4側壁部34は、第1開口3a側が第1面板1の第4縁部14に、第2開口3b側が第2面板2の第4縁部24にそれぞれ対応して固定される。
【0023】
上述した第1面板1は、「第1空間に外面が臨み、4つの隅部が生じる矩形で、四隅部の何れかに寄せて第1通気領域を形成した第1面部」として機能する。第2面板2は、「第2空間に外面が臨み、第1面板と同一形状で、前記第1通気領域と対向しない何れかの隅部に寄せて第2通気領域を形成した第2面部」として機能する。枠体3は、「第1面部と第2面部を離隔させて、第1面部の第1通気領域と第2面部の第2通気領域が連通する扉内空部を形成する側壁部」として機能する。このように、本実施形態の通気性扉10は、第1面板1と第2面板2と枠体3から構成するものとしたが、これに限定されず、第1面部と第2面部の間に適宜な厚さの扉内空部が形成されていれば良い。例えば、面板となる板材の側縁を折り曲げて側壁部を形成し、側壁部付きの面板を対向状に接合して通気性扉を作ることも可能である。
【0024】
枠体3の四隅は、第1側壁部31と第2側壁部32の交接箇所に臨む第1隅部35a、第2壁部32と第3壁部33の交接箇所に臨む第2隅部35b、第3壁部33と第4壁部34の交接箇所に臨む第3隅部35c、第4壁部34と第1壁部31の交接箇所に臨む第4隅部35dとよぶ。枠体3の第1開口3a側を第1面板1で、第2開口3b側を第2面板2で閉塞したとき、第1面板1に形成した第1通気領域41は第1隅部35aに寄せて設けられ、第2面板に形成した第2通気領域42は第4隅部35dに寄せて設けられた状態となる。すなわち、通気性扉1としては、第1通気領域41から第2通気領域42へ至る流路が扉内空部6に形成されている必要があり、その通気路を第1~第3仕切材51~53によって形成するのである。
【0025】
第1仕切材51は、枠体3の第1側壁部31における第1隅部35a寄りの位置から第2側壁部32とほぼ平行に設ける。このとき、第1仕切材51は第1通気領域41を塞ぐこと無く、ちょうど第2側壁部32と第1仕切材51との間に第1通気領域41が位置する状態が望ましい。第2仕切材52は、枠体3の第3側壁部31におけるほぼ中央から第2,第4側壁部32,34とほぼ平行に設ける。第3仕切材53は、枠体3の第1側壁部31における第4隅部35d寄りの位置から第4側壁部34とほぼ平行に設ける。このとき、第3仕切材53は第2通気領域42を塞ぐこと無く、ちょうど第4側壁部34と第3仕切材53との間に第2通気領域42が位置する状態が望ましい。このように第1~第3仕切材51~53を設けると、扉内空部6には、第1通気領域41と第2通気領域42を繋ぐ流路として、折り返しながら向きを変える蛇行流路が形成される。
【0026】
この蛇行流路の概要を、
図2(B)に示す。蛇行流路は、第1~第3仕切材51~53に沿うように音の伝搬方向を誘導する4つの伝搬誘導路(第1~第4伝搬誘導路61a~61d)と、隣接する2つの伝搬誘導路を合流させる3つの折返し部(第1~第3折返し部62a~62c)とで構成する。空気中を伝搬する音は、その直進性により、第1通気領域41から進入すると、第2側壁部32と第1仕切材51とで形成される第1伝搬誘導路61aを介して第3側壁部33へ向かって伝搬する。しかし、第3側壁部33側は、第2側壁部32と第2仕切材52によって袋小路状の第1折返し部62aとなっているため、第2側壁部32と第2仕切材52に沿って第1側壁部31側へ折り返される。
【0027】
第1折返し部62aにて伝搬方向を変えられた伝搬音は、再び第1伝搬誘導路61aへ戻るか、第1仕切材51と第2仕切材52との間に形成される第2伝搬誘導路61bへ至る。第2伝搬誘導路61bへ進入した伝搬音は第1側壁部31へ向かって伝搬するが、第1側壁部31側は第1仕切材51と第3仕切材53によって袋小路状の第2折返し部62bとなっているため、第1仕切材51と第2仕切材52に沿って第3側壁部33側へ折り返される。
【0028】
第2折返し部62bにて伝搬方向を変えられた伝搬音は、再び第2伝搬誘導路61bへ戻るか、第2仕切材52と第3仕切材53との間に形成される第3伝搬誘導路61cへ至る。第3伝搬誘導路61cへ進入した伝搬音は第3側壁部33へ向かって伝搬するが、第3側壁部33側は第2仕切材52と第4仕切材54によって袋小路状の第3折返し部62cとなっているため、第2仕切材52と第3側壁部34に沿って第1側壁部31側へ折り返される。
【0029】
第3折返し部62cにて伝搬方向を変えられた伝搬音は、再び第3伝搬誘導路61cへ戻るか、第3仕切材53と第4側壁部34との間に形成される第4伝搬誘導路61dへ至る。第4伝搬誘導路61dへ進入した伝搬音は第2面板2に形成された第2通気領域42から外部へ伝搬することとなる。すなわち、第1隅部35aに寄せて設けた第1通気領域41と第4隅部35dに寄せて設けた第2通気領域42は比較的近い位置にあるものの、最短距離では伝搬できず、扉内空部6に形成した蛇行流路に沿って伝搬するので、伝搬音は効果的に減衰される。
【0030】
第2通気領域42から進入した伝搬音も同様に、扉内空部6に形成した蛇行流路(第4伝搬誘導路61d→第3折返し部62c→第3伝搬誘導路61c→第2折返し部62b→第2伝搬誘導路61b→第2折返し部62a→第1伝搬誘導路61a)を経なければ第1通気領域41へ到達できない。よって、第1面板1と第2面板2のどちら側に騒音源がある場合でも、効果的に伝搬音を抑制できる。
【0031】
なお、第1面板1に形成した第1通気領域41の下部は、枠体3の第1側壁部31よりも適宜上方になっているため、蛇行流路の第1通気領域41側端部には、第1側壁部31と第1通気領域41との間に第1流路端空部63aが生じる。このため、第1通気領域41から扉内空部6へ進入した伝搬音の一部は、第1流路端空部63a側へ伝搬して第1伝搬誘導路61a側へ折り返される。同様に、第2面板2に形成した第2通気領域42の下部も、枠体3の第1側壁部31より適宜上方になっているため、蛇行流路の第2通気領域42側端部には、第1側壁部31と第2通気領域42との間に第2流路端空部63bが生じる。同様に、第2通気領域42から扉内空部6へ進入した伝搬音の一部は、第2流路端空部63b側へ伝搬して第4伝搬誘導路61d側へ折り返される。これら第1,第2流路端空部63a,63bが生ずることによって、伝搬音の一部を下方(第1側壁部31側)へ一旦拡散させるので、若干の減衰効果が期待できる。
【0032】
上述したように、第1~第3仕切材51~53によって蛇行流路を形成すると、第1通気領域41と第2通気領域42との伝搬距離が長くなり、空気中を伝搬する音は伝搬距離の二乗に反比例して減衰することから、大きな消音効果を期待できる。しかし、第1~第3仕切材51~53を設けた効果は、距離減衰だけでは無い。第1面板1と第2面板2との共振による音伝搬抑制による極めて高い効果を発揮するのである。以下、第1~第3仕切材51~53による消音効果について、
図3~
図5に基づき詳述する。
【0033】
図3(A)に示すように、通気性扉10に設ける第1~第3仕切材51~53の長さLを全て共通とし、通気性扉10の一方の面板から音を入射し、他方の面板では、
図3(B)に示すような計測点P(例えば、縦25点×横8点の計200点)で振動速度を計測する。その測定結果を
図4に示す。なお、本試験では、第1~第3仕切材51~53による振動抑制効果のみを検証するため、第1,第2面板1,2ではなく、通気領域が形成されていない鋼板である表面板を使用した。
【0034】
仕切材がない場合(第1~第3仕切材51~53の長さL=0の場合)、表面板は107.5Hz、132.5Hzで共振を生じる。特に速度が大きい132.5Hzでの速度分布を
図5(A)のコンター図に示す。仕切材なしの場合、表面板の左右中心の縦方向に共振のモードが生じているので、この共振モードの速度が大きい箇所に仕切材を設ければ、効果的に振動を抑制できると考えられる。すなわち、本実施形態の通気性扉10のように、第1~第3仕切材51~53を縦方向(枠体3における第2,第4側壁部32,34と平行な向き)に設けることは、第1面板1と第2面板2との共振抑制に有効な構造である。
【0035】
第1~第3仕切材51~53を設けた箇所は、
図5(A)のコンター図から分かるように、共振モードの速度が大きい箇所である。また、
図4の測定結果から分かるように、第1~第3仕切材51~53を設けることで、107.5Hz、123.5Hz、172.5Hz付近の振動が抑制されている。さらに、第1~第3仕切り材51~53の長さLを1.0〔m〕、1.2〔m〕、1.4〔m〕、1.6〔m〕に変化させた結果から、第1~第3仕切り材51~53が長いほど振動の抑制効果が高いことが分かる。
【0036】
しかしながら、仕切体を長くすると、それだけ仕切体の端部が枠体の側壁部に近接するため、隣接する2つの伝搬誘導路を合流させる折返し部が小さくなる。折り返し部が小さくなると、扉内部での風速が速くなり、風切り音などの騒音を新たに発生させることが懸念される。また、扉で仕切っている外側の空間、例えば二つの部屋を扉が仕切っている場合、二つの部屋の気圧差が大きくなって、扉の開閉が困難になる可能性がある。さらに、仕切り材を短くして折返し部の領域を広く確保できれば、後述するように、吸音材(多孔質材など)を多く挿入できるという利点がある。よって、振動抑制のために仕切体を設ける通気性扉の設計においては、そのメリットとデメリットを勘案しつつ、適切な長さの仕切体を適切な位置へ適数配置することが肝要である。
【0037】
上述した試験では、第1~第3仕切材51~53による表面板の振動抑制効果を検証するため、各表面板には通気領域を設けなかった。そこで、第1通気領域41を設けた第1面板1と第2通気領域42を設けた第2面板2を用いた通気性扉10において、第1~第3仕切材51~53の長さを変化させたときの音響透過損失の向上効果を
図6に示す。ただし、
図6の結果は、通気性扉10の内部構造による遮音性のみを対象とするべく、通気性扉10と扉枠20の隙間から音漏れが生じないよう、隙間を粘土で閉塞処理した。
【0038】
このように、第1~第3仕切材51~53を扉内空部6内に設ければ、第1,第2面板1,2の振動抑制効果に加え、通気経路を増長させた蛇行流路による減音効果を発揮できるので、現状の扉よりも遮音性能が向上している(例えば、Rwが13dB~14dB程度向上)。また、第1~第3仕切材51~53の長さL=1.2mの場合を除き、第1~第3仕切材51~53の長さLが長いほど重み付き音響透過損失は向上する傾向にある。これは、第1~第3仕切材51~53が長いほど、第1,第2面板1,2における振動の高い箇所を十分にカバーできるためと考えられる。
【0039】
本実施形態の通気性扉10は、第1面板1の第1通気領域41を第1隅部15aに寄せて設け、第2面板2の第2通気領域42を第4隅部25dに寄せて設けたので、枠体3における第1隅部35aと第4隅部35dに跨がる第1側壁部31に直交するよう第1~第3仕切材51~53を配置して、蛇行流路を形成した。しかしながら、第1面板1の第1通気領域41と第2面板2の第2通気領域42の配置は特に限定されず、任意の隅部に寄せて設けても構わない。
【0040】
たとえば、
図7(A)に示す第1改変例の通気性扉10Aでは、第1面板1の第1通気領域41を第2隅部15bに寄せて設け、第2面板2の第2通気領域42を第1隅部25aに寄せて設けた。そこで、枠体3における第1隅部35aと第2隅部35bに跨がる第2側壁部32に直交するよう第1~第3仕切材51~53を配置すれば、蛇行流路を形成することができる。通気性扉10Aにおける蛇行流路は、第1~第3仕切材51~53に沿うように音の伝搬方向を誘導する4つの伝搬誘導路(第1~第4伝搬誘導路61a~61d)と、隣接する2つの伝搬誘導路を合流させる3つの折返し部(第1~第3折返し部62a~62c)とで構成される。また、蛇行流路の第1通気領域41側端部には、第2側壁部32と第1通気領域41との間に第1流路端空部63aが生じ、蛇行流路の第2通気領域42側端部には、第2側壁部32と第2通気領域42との間に第2流路端空部63bが生じる。この通気性扉10Aにおいても、第1~第3仕切材51~53による振動抑制効果と蛇行流路による減音効果がある。
【0041】
扉内空部6に設ける仕切体の数には特に制限は無く、4つ以上の仕切体を設けても構わない。例えば、
図7(B)に示す第2改変例の通気性扉10Bでは、第1面板1の第1通気領域41を第2隅部15bに寄せて設け、第2面板2の第2通気領域42を第1隅部25aに寄せて設ける。そして、枠体3における第1隅部35aと第2隅部35bに跨がる第2側壁部32に直交するよう奇数の仕切体(第1~第5仕切材51~55)を配置し、蛇行流路を形成する。すなわち、枠体3の第2側壁部32から第4側壁部34へ向けて第1,第3,第5仕切材51,53,55を設け、枠体3の第4側壁部34から第2側壁部32へ向けて第2,第4仕切材52,54を設ける。かく構成した通気性扉10Bにおける蛇行流路は、6つの伝搬誘導路(第1~第6伝搬誘導路61a~61f)と、5つの折返し部(第1~第5折返し部62a~62e)とで構成される。また、蛇行流路の第1通気領域41側端部には、第2側壁部32と第1通気領域41との間に第1流路端空部63aが生じ、蛇行流路の第2通気領域42側端部には、第2側壁部32と第2通気領域42との間に第2流路端空部63bが生じる。この通気性扉10Bにおいても、第1~第5仕切材51~55による振動抑制効果と蛇行流路による減音効果がある。なお、仕切体の配設数を増やすと、それだけ制震効果を高めることができる反面、蛇行流路全体の流路長が長くなり過ぎて通気性が損なわれる可能性もある。1732〔mm〕×634〔mm〕サイズの扉では、3つの仕切体で程良いバランスとなる。
【0042】
第1面板1の第1通気領域41と第2面板2の第2通気領域42が最も離れた位置、すなわち対角線上の各隅部に寄せて設けられた場合でも、仕切体による蛇行流路形性は可能である。例えば、例えば、
図7(C)に示す第3改変例の通気性扉10Cでは、第1面板1の第1通気領域41を第1隅部15aに寄せて設け、第2面板2の第2通気領域42を第3隅部25cに寄せて設けてある。本例において、第1通気領域41は枠体3の第2側壁部32に沿う方向に長く設けられ、第2通気領域42は枠体3の第4側壁部34に沿う方向に長く設けられているので、第2,第4側壁部32,34と平行に伝搬誘導路を形成した方が長い蛇行流路を形成できる。そこで、枠体3の第1側壁部31から第3側壁部33へ向けて第1,第3仕切材51,53を設け、枠体3の第3側壁部33から第1側壁部31へ向けて第2,第4仕切材52,54を設ける。かく構成した通気性扉10Cにおける蛇行流路は、5つの伝搬誘導路(第1~第5伝搬誘導路61a~61e)と、4つの折返し部(第1~第4折返し部62a~62d)とで構成される。また、蛇行流路の第1通気領域41側端部には、第2側壁部32と第1通気領域41との間に第1流路端空部63aが生じ、蛇行流路の第2通気領域42側端部には、第2側壁部32と第2通気領域42との間に第2流路端空部63bが生じる。この通気性扉10Cにおいても、第1~第4仕切材51~54による振動抑制効果と蛇行流路による減音効果がある。
【0043】
上述した通気性扉10では、第1~第3仕切体51~53による振動抑制効果と蛇行流路による減音効果で遮音性能を高めるものとしたが、より高い遮音性能を実現するために、吸音材を用いても良い。例えば、
図8に示す第2実施形態の通気性扉10′(第2面板2を取り外して内部を見せた状態)においては、前述した第1実施形態の通気性扉10における第1~第3折返し部62a~62cに対して、それぞれ吸音材7(例えば、多孔質性のロックウール80〔kg/m
3〕)を配置した。
【0044】
通気性扉10′において、第1折返し部62aに設けた吸音材7は、第1仕切材51と第2側壁部32とで形成された第1伝搬誘導路61aから第1折返し部62aへ向かう音の伝搬方向を塞ぐように配置される。また、第1折返し部62aに設けた吸音材7は、第1仕切材51と第2仕切材52とで形成した第2伝搬誘導路61aによる音の伝搬方向を塞ぐように配置される。このように、第1電波誘導路61aあるいは第2伝搬誘導路61bから第1折返し部62aへ誘導された伝搬音は、吸音材7へ垂直入射することとなる。以下では、伝搬音が吸音材7へ垂直入射する向きの長さを吸音材7の厚さとよぶ。
【0045】
第2折返し部62bに設けた吸音材7は、第1仕切材51と第2仕切材52とで形成された第2伝搬誘導路61bから第2折返し部62bへ向かう音の伝搬方向を塞ぐように配置される。同様に、第2折返し部62bに設けた吸音材7は、第3仕切材53と第2仕切材52とで形成された第3伝搬誘導路61cから第2折返し部62bへ向かう音の伝搬方向を塞ぐように配置される。さらに、第3折返し部62cに設けた吸音材7は、第3仕切材53と第2仕切材52とで形成された第3伝搬誘導路61cから第3折返し部62cへ向かう音の伝搬方向を塞ぐように配置される。同様に、第3折返し部62cに設けた吸音材7は、第3仕切材53と第4側壁部34とで形成された第4伝搬誘導路61dから第3折返し部62cへ向かう音の伝搬方向を塞ぐように配置される。
【0046】
吸音材7として用いるロックウール80〔kg/m
3〕の吸音特性を
図9に示す。本特性図より、吸音材7の厚さを厚くすることで、吸音率が高まることが分かる。そこで、吸音材7として厚さ50〔mm〕のロックウール80〔kg/m
3〕を用い、第1~第3仕切材51~53の長さを変化させたときの遮音特性を
図10に示す。50〔mm〕厚の吸音材7を設置した第2実施形態の通気性扉10′は、吸音材7を用いない第1実施形態の通気性扉10と比べてRwが3dB向上する。なお、
図10の結果からすると、第1~第3仕切材51~53の長さに大きく影響されること無く、ほぼ同様の遮音特性になる。
【0047】
そこで、第1~第3仕切材51~53の長さLを一定(L=1.0〔m〕)として、吸音材7の厚さを変化させたときの遮音特性を
図11に示す。吸音材7(ロックウール80〔kg/m
3〕)の厚さを厚くするほど遮音性能に向上が見られる。特に、315Hz付近で顕著にみられる。これは、吸音材7の厚さが増すほど、低音域の吸音率が大きくなるためと考えられる。
【0048】
上述した第2実施形態の通気性扉10′では、第1~第3折返し部62a~62cに対してのみ吸音材7を配置したが、それ以外の部位であっても、通気性を損なわなければ、適宜に吸音材7を配置して構わない。例えば、
図12に示す第3実施形態の通気性扉10″(第2面板2を取り外して内部を見せた状態)においては、前述した第2実施形態の通気性扉10′における第1流路端空部63aと第2流路端空部63bに対して、それぞれ吸音材7(ロックウール80〔kg/m
3〕、厚さ50〔mm〕)を配置した。
図13に、通気性扉10″の遮音特性を示す。
【0049】
図13には、対比のために、同条件(第1~第3仕切材51~53の長さL=1.0〔m〕、第1~第3折返し部62a~62cに配置する吸音材7の厚さ600〔mm〕)の第2実施形態に係る通気性扉10′と現状の扉の遮音特性を併せて示す。
図13の遮音特性から、第1,第2流路端空部63a,63bにも吸音材7を設置した第3実施形態の通気性扉10″の方が、第1,第2流路端空部63a,63bに吸音材7を設置しない第2実施形態の通気性扉10′よりも、遮音性能が向上する。特に、400Hzでの遮音性能向上が良好である。これは、吸音材7を蛇行流路の両端部に設置することで、音の伝搬経路となる蛇行流路内の共鳴が緩和されたためと考えられる。
【0050】
表1に、第1~第3仕切材51~53の長さや吸音材7の厚さ・密度を変えて行った試験結果(重み付き音響透過損失Rw)の一覧を示す。
【0051】
【0052】
表1の結果より、吸音材7を用いない第1実施形態の通気性扉10においても、第1~第3仕切材51~53の振動抑制および扉内空部6に形成された蛇行流路での減音効果により遮音性能は向上し、Rw=28~29〔dB〕を実現可能である。更に、第1~第3折返し部62a~62cに吸音材7を設置した第2実施形態の通気性扉10′においては、吸音材7の厚さを厚くするほど遮音性能を向上させることができ、Rw=31~33〔dB〕を実現可能である。加えて、蛇行流路の両端にある第1,第2流路端空部63a,63bにも吸音材7を設置した第3実施形態の通気性扉10″においては、端部反射によるによる共鳴を緩和して遮音性能を向上させることができ、Rw=33~34〔dB〕を実現できる。なお、表1の試験結果では、吸音材7の密度の違いによる遮音性能の顕著な違いは見られなかった。
【0053】
以上、本発明に係る通気性扉をいくつかの実施形態に基づき説明したが、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の構成を変更しない限りにおいて実現可能な全ての通気性扉(例えば、船舶のほかにも、住宅や店舗、工場、倉庫などの家屋(建屋)等で使用される扉)を権利範囲として包摂するものである。
【符号の説明】
【0054】
10 通気性扉(第1実施形態)
1 第1面板
2 第2面板
3 枠体
41 第1通気領域
42 第2通気領域
51 第1仕切材
52 第2仕切材
53 第3仕切材
6 扉内空部