(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-14
(45)【発行日】2024-06-24
(54)【発明の名称】足指乾燥機
(51)【国際特許分類】
A61H 35/00 20060101AFI20240617BHJP
A47K 10/48 20060101ALI20240617BHJP
A61H 7/00 20060101ALI20240617BHJP
【FI】
A61H35/00 K
A47K10/48 A
A61H35/00 Z
A61H7/00 300H
(21)【出願番号】P 2019234359
(22)【出願日】2019-12-25
【審査請求日】2022-10-31
(73)【特許権者】
【識別番号】501376958
【氏名又は名称】松宝産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081673
【氏名又は名称】河野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100141483
【氏名又は名称】河野 生吾
(72)【発明者】
【氏名】平野 勝己
【審査官】瀧本 絢奈
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-028608(JP,A)
【文献】特開2006-204474(JP,A)
【文献】実開平02-136629(JP,U)
【文献】実開平06-068595(JP,U)
【文献】特開2006-068028(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 35/00
A61H 7/00
A61H 39/04
A47K 7/04
A47K 10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能に軸支され乾燥させる足指(F
1)の指先方向に回転する左右のロール(3)の周面に凹凸(16)を設け、前記凹凸(16)が左右で外向きのらせん状に配置又は形成され、前記ロール(3)の周面に接触する足指(F
1)の裏側から足指(F
1)に向って乾燥用エア(E)を供給するエア供給部(12)を設け、回転中のロール(3)に足指(F
1)
の裏側を接触させることにより、
足指(F
1
)の裏側の皺(W)を爪先方向に押し広げて伸展させるとともに足指間を左右に押し開き、上記皺(W)と指裏の凹部に付着した水分(D)を拭い取り且つ前記乾燥
用エア(E)により足指(F
1)の乾燥を行う機構とした足指乾燥機。
【請求項2】
凹凸(16)がロール(3)の外周に線状材を巻装固着し又は波形断面の凹凸条を形成してなる請求項1に記載の足指乾燥機。
【請求項3】
凹凸(16)を構成する突起が吸水性の材料又はブラシ状材料からなる請求項1に記載の足指乾燥機。
【請求項4】
ロール(3)の周壁を通風可能に構成しロール内部から乾燥
用エア(E)を供給する機構とした請求項1~3のいずれかに記載の足指乾燥機。
【請求項5】
ロール(3)の外周位置に、ロール(3)に紫外線を照射する紫外線ランプ(9)を設置してなる請求項1~4のいずれかに記載の足指乾燥機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は温泉や介護施設、家庭等で主として入浴後に人の足指を乾燥させる足指乾燥機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来水虫やあかぎれその他の皮膚疾患予防用の足指乾燥装置としては、特許文献1に示すように足指間に挿入される中空突起(ノズル)周面に設けられた多数の小孔(ノズル孔)から、乾燥エアを噴出させるものや、特許文献2に示す着座式の身体乾燥機の一部として、着座した自然な姿勢で足を載せるペダル状の中空足載せ台表面の多数の小孔(ノズル孔)から温風を噴出させるものが公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開平6-68595号公報
【文献】特開2013-252336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1,2の足指乾燥機は、いずれも定置した足の指間や足裏面と密着するノズルや足載せ台の多数の小孔から乾燥エアを噴出させるものである。
【0005】
しかも特許文献1の装置では足指の裏面と裏面の関節部に出来る皺の内面が、同文献2の装置では足指間と前記皺内面がそれぞれ乾燥できないほか、元来ノズル周面や足台上面に足指が密着して接触しノズル孔自体を塞いでいるので、ノズル孔から噴出するエアでは十分な乾燥ができず、これを改善するには相当高圧でエア供給を行う必要がある。そして上記装置はいずれも乾燥時に足を静止姿勢で乾燥することを前提としたものであるため生じる問題である。
【0006】
他方、足指は運動や立ち仕事,通常の歩行,要介護者の歩行のリハビリテーション,靴の形状等によってストレスが蓄積されると、外反母趾や関節障害等によって痛みを伴う疾患になることが多いほか、運動不足の高齢者や障害者では足指の硬直化の例も多く見られる。これらのケースでは足指の血行不良を改善することで対処できる場合があることも知られている。しかし特に足指の血行不良を改善する機器類は提案の例が見られない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明の足指乾燥機は、第1に回転可能に軸支され乾燥させる足指F1の指先方向に回転する左右のロール3の周面に凹凸16を設け、前記凹凸16が左右で外向きのらせん状に配置又は形成され、前記ロール3の周面に接触する足指F1の裏側から足指F1に向って乾燥用エアEを供給するエア供給部12を設け、回転中のロール3に足指F1
の裏側を接触させることにより、足指F
1
の裏側の皺Wを爪先方向に押し広げて伸展させるとともに足指間を左右に押し開き、上記皺Wと指裏の凹部に付着した水分Dを拭い取り且つ前記乾燥用エアEにより足指F1の乾燥を行う機構としたことを特徴としている。
【0008】
第2に、凹凸16がロール3の外周に線状材を巻装固着し又は波形断面の凹凸条を形成してなることを特徴としている。
【0009】
第3に、凹凸16を構成する突起が吸水性の材料又はブラシ状材料からなることを特徴としている。
【0010】
第4に、ロール3の周壁を通風可能に構成し、ロール内部から乾燥用エアEを供給する機構としたことを特徴としている。
【0011】
第5に、ロール3の外周位置に、ロール3に紫外線を照射する紫外線ランプ9を設置してなることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
以上のように構成される本発明によれば、以下に示すような効果を奏する。
(1)足指間,足指関節の皺内面を回転ロール周面の凹凸によって押し開き又は足指を振動(姿勢変動)させることにより、回転ロール周面と足指裏面との間に空間を繰り返し形成するので、足指周りが十分に乾燥させられるほか、足指のマッサージ効果も得られるため血行改善にもなる。足指の裏側から乾燥エアを供給することにより、上記乾燥はさらに短時間で行われる。
【0013】
(2)凹凸がロール周面でらせん状に配置又は形成されることにより、ロール回転により足指間が横方向に順次押広げられ、このらせんを左右の足毎に逆向きにすることにより、足指の押開きを左右対称にさせ、足首の運動を伴いながら左右の足の位置バランスを保つことができる。
【0014】
(3)ロール周面の凹凸を吸水性材料又はブラシ状材料にすることにより、凹凸自体で足指裏の水分を除去し易くなり、乾燥が短時間でさらに確実になる。
【0015】
(4)回転ロール周壁をメッシュ素材や多孔板等の通風性材料で形成することにより、ロール周面の水分の付着が減少し且つ水分がロール周面から内部下方に落下し、足指の水分除去がさらに容易になり、ロール内から乾燥エアの供給もできる利点がある。
その他足指に紫外線を照射する紫外線ランプを設けることにより、乾燥機内で足指周りの殺菌消毒も可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】足指裏に乾燥エアを吹付ける状態を表す側面図である。
【
図2】周面に線状材をらせん状に取付けた本発明の乾燥機を示す斜視図である。
【
図3】乾燥機に足指を載せた乾燥時の状態を示す平面図である。
【
図5】足指の裏面側から乾燥エアを吹付けている状態を示す乾燥機の側面図である。
【
図6】着座用の椅子と乾燥エアの発生装置及び供給機構を設けた装置の全体側面図である。
【
図7】(A)~(C)はロールの凹凸(突起部)の異なる実施形態を示す断面図である。
【
図8】本発明のロールを洗浄水中に設け、さらにエア供給(エアレーション)機構を設けた足指洗浄への転用例を示す全体側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下図示する本発明の実施形態につき説明すると、
図1は人の足Fの足首以下の部分を示し、足指F
1の裏側には第1,第2の関節部に対応してそれぞれ皺部Wが形成され、入浴後等には皺部Wの内面と底面の逆V字形凹部に水分Dが残存付着する。
【0018】
健常者にとっては上記水分は容易に払拭等により除去できるが、肢体障害のある要介助者にとっては簡単に除去できず、既述のように単に下側から乾燥空気Eを吹きつけるだけでは除去できない。また付着水分を放置すると水虫その他の皮膚疾患になる等不衛生の原因となるため、これらの予防のため足指裏の短時間の乾燥が求められる。
【0019】
図2以下はこれらの水分除去のための乾燥を行うための乾燥機の例を示し、
図2は利用者Hが着座した状態で使用する足指乾燥装置の側面概要図である。この例では背もたれ付の椅子1の前方に水平方向の足載せ用のデッキ2を設け、該デッキ2の前方に、上面が露出し利用者Hが着座姿勢で左右の足Fの前方の足指F
1の裏面を載せて接触させることが可能な左右一対のロール3が、左右水平方向に回転可能に軸支されている。
【0020】
上記ロール3は乾燥機4の主要部を構成し、底板6を有する装置本体7の前方にロール軸5によって両端が軸支され、ロール3の左右両側と前方及び上部はカバー部8に覆われており、カバー部8の内面にはロール表面を含むカバー部の内部に紫外線を照射させて消毒する紫外線ランプ9が取付けられている。
【0021】
またデッキ2と底板6との間には左右方向の隙間からなる通風路11が形成され、後方の椅子1の下方の空間に設置された乾燥用のエアEを予め加温して送風する送風機12(エア供給部)が設置されており、加温エアEは前方のカバー部8内におけるデッキ前端側の開口部13に横設された上記ロール3の下方より足指F1の裏面側に向って噴出供給される。
【0022】
図3は本発明の足指乾燥機の主要部を示す全体斜視図で、ロール3の材料はプラスチック,ゴム,金属又は耐水加工を施した木材等のいずれでも良く、ロール軸5の端部はモーター14が連結され、
図4~
図6の矢印で示すように指先方向に緩速回転する機構になっている。
【0023】
また各ロール3の表面には互に逆向きのらせん状の凹凸を形成する突条16が外装又は形成されており、この例では半円形(蒲鉾形)断面の線状材を巻装固着して形成されている。そして
図4~
図6に示すように、指先方向に回転中のロール3上面に足Fの足指F
1を爪先を前方向きにした状態で載せて接触(押接)させると、前述した指裏の皺Wが上面の回転方向(爪先方向)に押広げられて伸展し、皺Wの内面と指裏の凹部に付着した水分Dが上記凹凸(突条16)により繰り返し拭い去られるとともに指裏がマッサージされる。
【0024】
この時左右の足指はらせん状の突条16によって左右逆向き(図示する例では共に外向き)に押し開かれ、これとともに指間も開かれて間隙Sが繰返し形成されて足指間の水分も蒸散し、さらに足指F1間の周面及び裏面と、皺Wの内面の付着水分Dは、凹凸自体の変動とともに乾燥用エア(温風)Eに晒されて乾燥される。
【0025】
図7(A)~(C)は本発明のロール3の異なる実施形態を示し、(A)はロール3の外周に対して円形断面の線(ワイヤ)状の材料からなる突条16をらせん状に巻装固着したものを示し、突条16とロール3の固着は両者の材料に応じて溶着,ろう付,接着,融着等のいずれでも良い。
【0026】
図7(B)は周面にサインカーブ状の凹凸条16をらせん状に一体形成したもので、プラスチック成形,切削形成等のいずれによって形成しても良い。同図(C)はロール3の周面にタオル地等の吸水性材料からなる突条16をらせん状に巻装固着したもので、この例では足指F
1のマッサージと共に突条16自体が水分を吸収除去できる。
【0027】
これらの他、突条16はブラシ状の突条16をロール3の外周にらせん状に巻装固着することにより、足指マッサージと水分除去を行うことも可能であり、いずれの場合も使用の前後に既述の紫外線ランプ9により、回転中のロール3に紫外線照射する等の殺菌消毒を施すことが望ましい。
【0028】
図8は本発明の乾燥機を足指の洗浄機として転用する場合の概要図を示し、この例では洗浄水21を収容した箱状の洗浄槽17内に突条16付のロール3を浸漬させて軸支し、ロール3の前後にバブリング用のエアE´を放出する開口部18を形成したエア供給ダクト19を設置した例を示し、この例では、洗浄水21を洗浄槽17より排出すれば、そのまま乾燥機として利用できる利点がある。この例での洗浄水は殺菌消毒剤を添加したもの又はオゾン水等で足りる。
【0029】
尚、図示する例では、ロール3の周面の凹凸を連続したらせん状の突条16として示したが、例えば突条16を間欠的な線状のらせんとして配置し又はらせん状に限らず多数の凹凸をロール周面に突設し、ロール回転による指裏の伸展とマッサージ及び指間の開閉等の姿勢変動を行わせて足乾燥及びマッサージを行わせることも可能である。
【0030】
またロール3は上述のように円柱状のものの他、必ずしも厳密に「ロール」である必要はなく、例えば左右方向の棒状材からなる格子を篭状に組合わせたもので周面を凹凸にし、又は周壁自体を金網やプラスチック成形によるメッシュ材等からなる通風可能な構造とすることにより、上下方向の通風性を向上させ若しくは通風性をもたせたロール内部からエア供給する構造にすることもでき、その他ロール自体を棒状ブラシ材にすることも可能である。
【符号の説明】
【0031】
1 椅子
2 デッキ
3 ロール
9 紫外線ランプ
12 エア供給部
16 突条(凹凸)
D 水分
F 足
足指 F1