(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-14
(45)【発行日】2024-06-24
(54)【発明の名称】基板処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20240617BHJP
H01L 21/677 20060101ALI20240617BHJP
【FI】
H01L21/304 644F
H01L21/304 648A
H01L21/304 648G
H01L21/304 644B
H01L21/68 A
(21)【出願番号】P 2020034356
(22)【出願日】2020-02-28
【審査請求日】2022-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】弁理士法人あい特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100168583
【氏名又は名称】前井 宏之
(72)【発明者】
【氏名】沖田 展彬
【審査官】平野 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-177541(JP,A)
【文献】特開平08-071878(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
H01L 21/677
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の裏面の中央部を吸引して保持する吸引保持機構と、
前記基板の周縁部を保持する周縁保持機構と、
前記基板の裏面をスクラブ処理するスクラブ処理部と、
前記基板が前記周縁保持機構に保持された状態において前記基板の裏面が前記スクラブ処理部によりスクラブ処理されているときに、前記吸引保持機構を覆うカバー部材と、
前記カバー部材を待機位置から前記吸引保持機構まで搬送して前記吸引保持機構の上面に載置する搬送機構と
を備える、基板処理装置。
【請求項2】
前記吸引保持機構は、前記基板の前記裏面を吸引する吸引面を有し、
前記カバー部材は、前記吸引保持機構の前記吸引面を覆う、請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記吸引保持機構の前記吸引面には、凸部および凹部の少なくとも一方を含む吸引係合部が設けられており、
前記カバー部材には、前記吸引保持機構の前記吸引係合部と係合するカバー係合部が設けられる、請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記カバー部材は、前記吸引保持機構の前記吸引面に対して傾斜する、請求項2または3に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記カバー部材は、前記吸引保持機構の前記吸引面および前記吸引面から延びた側面を覆う、請求項3または4に記載の基板処理装置。
【請求項6】
基板の裏面の中央部を吸引して保持する吸引保持機構と、
前記基板の裏面をスクラブ処理するスクラブ処理部と、
前記吸引保持機構を覆うカバー部材と、
前記カバー部材を待機位置から前記吸引保持機構まで搬送して前記吸引保持機構の上面に載置する搬送機構と
を備え、
前記スクラブ処理部は、ブラシと、前記ブラシを搬送する搬送部を含み、
前記搬送部は、前記ブラシを保持するブラシ保持機構と、前記カバー部材を保持するカバー部材保持機構とを備える
、基板処理装置。
【請求項7】
前記スクラブ処理部は、前記吸引保持機構によって保持されない前記基板をスクラブ処理する場合、前記吸引保持機構は、前記カバー部材を吸引する、請求項1から6のいずれかに記載の基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
基板を処理する基板処理装置が知られている。典型的には、基板処理装置は、半導体基板の処理に好適に用いられる。基板処理装置では、処理液等で基板を処理した後に基板をブラシで洗浄することがある。さらに、基板は、表面だけでなく裏面をブラシで洗浄することがある。
【0003】
基板の端面または裏面を保持しつつ基板の裏面の全面をブラシで洗浄するためには、保持部材とブラシとの干渉が問題となるため、基板を二種類の保持部材で持ち替えることがある(特許文献1参照)。
【0004】
ここで、一方の保持部材で基板を保持している間に、他方の保持部材に基板から飛散した洗浄液が付着するという問題が生じうる。付着した洗浄液が基板に転写した場合、基板の汚染が生じる。特許文献1に記載の基板処理装置では、保持部材の上方を覆うためのカバー部材を保持部材の上方へと移動する。移動はカバー部材を支持する支持部を移動させることにより行う。これにより保持部材の汚染が防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の手法では、保持部材の上方を覆うためにカバー部材を基板の裏面に移動させた後に、カバー部材だけでなく、カバー部材を支持する支持部材などについても基板裏面に待機させる必要がある。基板処理装置の設計上、基板の裏面における保持機構周辺には余剰空間は限られており、現実的にはカバー部材および支持部材、ひいてはその移動機構の待機空間を基板裏面に確保することは困難である。また、それだけではなく、カバー部材を支持する支持部材が基板裏面に待機した状態で基板処理することにより、基板から支持部材に飛散する処理液が逆に基板に転移するリスクが高まる。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、保持部材の処理液汚染を簡易な構成で効果的に抑制可能な基板処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一局面によれば、基板処理装置は、吸引保持機構と、周縁保持機構と、スクラブ処理部と、カバー部材と、搬送機構とを備える。前記吸引保持機構は、基板の裏面の中央部を吸引して保持する。前記周縁保持機構は、前記基板の周縁部を保持する。前記スクラブ処理部は、前記基板の裏面をスクラブ処理する。前記カバー部材は、前記基板が前記周縁保持機構に保持された状態において前記基板の裏面が前記スクラブ処理部によりスクラブ処理されているときに、前記吸引保持機構を覆う。前記搬送機構は、前記カバー部材を待機位置から前記吸引保持機構まで搬送して前記吸引保持機構の上面に載置する。
【0009】
ある実施形態において、前記吸引保持機構は、前記基板の前記裏面を吸引する吸引面を有し、前記カバー部材は、前記吸引保持機構の前記吸引面を覆う。
【0010】
ある実施形態において、前記吸引保持機構の前記吸引面には、凸部および凹部の少なくとも一方を含む吸引係合部が設けられており、前記カバー部材には、前記吸引保持機構の前記吸引係合部と係合するカバー係合部が設けられる。
【0011】
ある実施形態において、前記カバー部材は、前記吸引保持機構の前記吸引面に対して傾斜する。
【0012】
ある実施形態において、前記カバー部材は、前記吸引保持機構の前記吸引面および前記吸引面から延びた側面を覆う。
【0013】
本発明の別の局面によれば、基板処理装置は、吸引保持機構と、スクラブ処理部と、カバー部材と、搬送機構とを備える。前記吸引保持機構は、基板の裏面の中央部を吸引して保持する。前記スクラブ処理部は、前記基板の裏面をスクラブ処理する。前記カバー部材は、前記吸引保持機構を覆う。前記搬送機構は、前記カバー部材を待機位置から前記吸引保持機構まで搬送して前記吸引保持機構の上面に載置する。前記スクラブ処理部は、ブラシと、前記ブラシを搬送する搬送部を含み、前記搬送部は、前記ブラシを保持するブラシ保持機構と、前記カバー部材を保持するカバー部材保持機構とを備える。
【0014】
ある実施形態において、前記スクラブ処理部は、前記吸引保持機構によって保持されない前記基板をスクラブ処理する場合、前記吸引保持機構は、前記カバー部材を吸引する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、吸引保持部材の汚染を防止し、ひいては基板に汚れが付着することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本実施形態の基板処理装置を備えた基板処理システムの模式図である。
【
図3】本実施形態の基板処理装置を備えた基板処理システムのブロック図である。
【
図4】(a)および(b)は、本実施形態の基板処理装置の模式図である。
【
図5】本実施形態の基板処理装置における基板処理のフロー図である。
【
図6】(a)~(i)は、本実施形態の基板処理装置の模式図である。
【
図8】(a)および(b)は、本実施形態の基板処理装置の模式図である。
【
図9】本実施形態の基板処理装置におけるカバー部材および搬送機構の模式図である。
【
図10】本実施形態の基板処理装置の模式的な斜視図である。
【
図11】本実施形態の基板処理装置の模式的な一部拡大図である。
【
図12】本実施形態の基板処理装置の模式的な側面図である。
【
図13】本実施形態の基板処理装置の模式的な平面図である。
【
図14】本実施形態の基板処理装置の模式的な平面図である。
【
図15】本実施形態の基板処理装置の模式的な平面図である。
【
図16】本実施形態の基板処理装置による基板の裏面スクラブ処理のフロー図である。
【
図17】本実施形態の基板処理装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明による基板処理装置の実施形態を説明する。なお、図中、同一または相当部分については同一の参照符号を付して説明を繰り返さない。なお、本願明細書では、発明の理解を容易にするため、互いに直交するX軸、Y軸およびZ軸を記載することがある。典型的には、X軸およびY軸は水平方向に平行であり、Z軸は鉛直方向に平行である。
【0018】
まず、
図1を参照して、本実施形態の基板処理装置100を備えた基板処理システム10を説明する。
図1は、本実施形態の基板処理システム10の模式的な平面図である。
【0019】
基板処理システム10は、基板Wを処理する。基板処理システム10は、複数の基板処理装置100を備える。基板処理装置100は、基板Wに対して、エッチング、表面処理、特性付与、処理膜形成、膜の少なくとも一部の除去および洗浄のうちの少なくとも1つを行うように基板Wを処理する。
【0020】
基板Wとしては、例えば、半導体ウエハ、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板などの各種基板を適用可能である。以下では主として円盤状の半導体ウエハの処理に用いられる基板処理装置を例に採って図面を参照して説明するが、上に例示した各種の基板の処理にも同様に適用可能である。また基板の形状についても各種のものを適用可能である。
【0021】
図1に示すように、基板処理システム10は、複数の基板処理装置100に加えて、流体キャビネット12と、流体ボックス14と、吸引機構16と、複数のロードポートLPと、インデクサーロボットIRと、センターロボットCRと、制御装置11とを備える。制御装置11は、ロードポートLP、インデクサーロボットIRおよびセンターロボットCRを制御する。
【0022】
ロードポートLPの各々は、複数枚の基板Wを積層して収容する。インデクサーロボットIRは、ロードポートLPとセンターロボットCRとの間で基板Wを搬送する。センターロボットCRは、インデクサーロボットIRと基板処理装置100との間で基板Wを搬送する。なお、インデクサーロボットIRとセンターロボットCRとの間に、基板Wを一時的に載置する設置台(パス)を設けて、インデクサーロボットIRとセンターロボットCRとの間で設置台を介して間接的に基板Wを受け渡しする装置構成としてもよい。基板処理装置100の各々は、基板Wに処理液を吐出して、基板Wを処理する。処理液は、リンス液および/または薬液を含む。または、処理液は、他の液体を含んでもよい。流体キャビネット12は、処理液を収容する。なお、流体キャビネット12は、気体を収容してもよい。吸引機構16は、基板処理装置100の少なくとも一部を吸引するために利用される。例えば、吸引機構16は、外部の真空装置と基板処理装置100とを接続する。なお、吸引機構16自体が、真空ポンプを含んでもよい。
【0023】
具体的には、複数の基板処理装置100は、平面視においてセンターロボットCRを取り囲むように配置された複数のタワーTW(
図1では4つのタワーTW)を形成している。各タワーTWは、上下に積層された複数の基板処理装置100(
図1では3つの基板処理装置100)を含む。流体ボックス14は、それぞれ、複数のタワーTWに対応している。
【0024】
流体キャビネット12内の処理液は、いずれかの流体ボックス14を介して、流体ボックス14に対応するタワーTWに含まれる全ての基板処理装置100に供給される。また、流体キャビネット12内の気体は、いずれかの流体ボックス14を介して、流体ボックス14に対応するタワーTWに含まれる全ての基板処理装置100に供給される。吸引機構16は、流体ボックス14を介して流体ボックス14に対応するタワーTWに含まれる全ての基板処理装置100を吸引できる。
【0025】
制御装置11は、基板処理システム10の各種動作を制御する。制御装置11は、制御部11aおよび記憶部11bを含む。制御部11aは、プロセッサーを有する。制御部11aは、例えば、中央処理演算機(Central Processing Unit:CPU)を有する。または、制御部11aは、汎用演算機を有してもよい。
【0026】
記憶部11bは、データおよびコンピュータプログラムを記憶する。データは、レシピデータを含む。レシピデータは、複数のレシピを示す情報を含む。複数のレシピの各々は、基板Wの処理内容および処理手順を規定する。
【0027】
記憶部11bは、主記憶装置と、補助記憶装置とを含む。主記憶装置は、例えば、半導体メモリである。補助記憶装置は、例えば、半導体メモリおよび/またはハードディスクドライブである。記憶部11bはリムーバブルメディアを含んでいてもよい。制御部11aは、記憶部11bの記憶しているコンピュータプログラムを実行して、基板処理動作を実行する。
【0028】
次に、
図1および
図2を参照して、本実施形態の基板処理装置100を説明する。
図2は、基板処理装置100の模式図である。
【0029】
基板処理装置100は、チャンバー110と、吸引保持機構120と、周縁保持機構130と、処理液供給部140と、スクラブ処理部150と、カバー部材160と、搬送機構170とを備える。チャンバー110は、基板Wを収容する。吸引保持機構120は、基板Wを保持する。
【0030】
チャンバー110は、内部空間を有する略箱形状の筐体であり、チャンバー110の内部と外部とが区画される。チャンバー110には、図示しないシャッターおよびその開閉機構が設けられる。通常、シャッターは閉じてチャンバー110内外の雰囲気は遮断される。センターロボットCRにより基板Wがチャンバー110内部に搬入される際または基板Wがチャンバー110内部から搬出される際には、シャッターが開放される。チャンバー110の上部には図示しないFFUユニット(ファンフィルタユニット)が設置され、チャンバー110の上部から下方に向けてダウンフローで塵埃の除去されたエアーまたは不活性ガスが供給される。
【0031】
基板処理装置100は、基板Wを水平に保持して1枚ずつ処理する、いわゆる枚葉型であり、基板処理装置100には基板Wが1枚ずつ収容される。基板Wは、チャンバー110内に収容され、チャンバー110内で処理される。チャンバー110には、吸引保持機構120、周縁保持機構130、処理液供給部140、スクラブ処理部150、カバー部材160および搬送機構170のそれぞれの少なくとも一部が収容される。
【0032】
吸引保持機構120は、基板Wの裏面Wbの中央部を吸引することによって基板Wを保持する、いわゆるバキュームチャックである。
【0033】
周縁保持機構130は、基板Wの裏面Wbの周縁部に当接して基板Wを吸引することにより、基板Wを保持する。例えば、周縁保持機構130は、バキューム式である。典型的には、周縁保持機構130は、基板Wの裏面Wbの周縁部の一部と当接して基板Wの裏面Wbを吸引して保持する。この場合、周縁保持機構130は、非デバイス形成面である基板Wの裏面Wbを上面に吸着させることにより基板Wを水平に保持する。なお、基板Wの上面Waの周縁部または側面Wcの一部が吸引されてもよい。
【0034】
周縁保持機構130は、吸引口の設けられた吸引面sfを有する。基板Wの裏面Wbは、吸引面sfに対向して配置される。
【0035】
ここでは、周縁保持機構130は、それぞれが基板Wを吸引することによって基板Wを保持する複数の吸引部を含む。複数の吸引部は、それぞれ吸引口の設けられた吸引面sfを有する。
【0036】
なお、
図2では、図面が過度に複雑になることを避けるために、周縁保持機構130の吸引機構を省略して示している。
【0037】
吸引保持機構120は、基板Wを保持した状態で基板Wを回転させる。吸引保持機構120は、基板Wを保持したまま基板Wを回転させる。
【0038】
吸引保持機構120は、基板Wの裏面Wbの中央部と当接して基板Wの裏面Wbの中央部を吸引して保持する。この場合、吸引保持機構120は、非デバイス形成面である基板Wの裏面Wbの中央部を上面に吸着させることにより基板Wを水平に保持する。
【0039】
吸引保持機構120は、スピンベース121と、シャフト122と、電動モーター123とを含む。シャフト122は、中空軸である。シャフト122は回転軸AXに沿って鉛直方向に延びている。シャフト122の上端には、スピンベース121が結合されている。基板Wの裏面Wbは、スピンベース121に接触し、基板Wは、スピンベース121の上方に載置される。
【0040】
スピンベース121は、円板状であり、水平な姿勢で基板Wを支持する。基板Wは、スピンベース121の上方に載置され、基板Wの裏面Wbは、スピンベース121と当接する。スピンベース121は、水平方向に沿った円盤状である。スピンベース121の上面の直径は、基板Wの直径よりも小さい。
【0041】
シャフト122は、スピンベース121の中央部から下方に延びる。電動モーター123は、シャフト122に回転力を与える。電動モーター123は、シャフト122を回転方向に回転させることにより、回転軸AXを中心に基板Wおよびスピンベース121を回転させる。スピンベース121およびシャフト122の内部には、吸引経路124が通過する。
【0042】
スピンベース121およびシャフト122には、吸引経路124が挿通する。吸引経路124は、スピンベース121の上面の中心から露出する吸引口124pを有する。吸引経路124は、チャンバー110の外部の吸引配管Sp1に連結される。吸引配管Sp1には、その経路を開閉するためのバルブSp2が配置される。これにより、スピンベース121の上面に配置された基板Wは吸引され、基板Wはスピンベース121に保持される。
【0043】
ここでは、シャフト122は、スピンベース121の位置を鉛直方向に沿って移動可能できる。例えば、シャフト122は、基部122aと、基部122aに対して伸縮可能な伸縮部122bとを有する。スピンベース121は、伸縮部122bの先端に配置される。
【0044】
基部122aに対して露出する伸縮部122bの長さが長くなることにより、スピンベース121は、鉛直方向上方に配置される。また、基部122aに対して露出する伸縮部122bの長さが短くなることにより、スピンベース121は、鉛直方向下方に配置される。
【0045】
上述したように、周縁保持機構130は、バキューム式のチャックであってもよい。ただし、周縁保持機構130は、バキューム式のチャックに限定されない。周縁保持機構130は、基板Wを裏面Wbから保持する任意の機構を有してもよい。例えば、周縁保持機構130は、複数のチャックピンを基板Wの周端面に接触させる挟持式のチャックと組み合わせて用いられてもよい。
【0046】
周縁保持機構130は、吸引保持機構120とは別に基板Wを吸引して基板Wを保持する。このため、基板Wは、ある場合には、吸引保持機構120によって吸引されて吸引保持機構120に保持され、別の場合には、周縁保持機構130によって吸引されて周縁保持機構130に保持される。
【0047】
周縁保持機構130は、基板Wの裏面Wbの周端と当接可能である。周縁保持機構130が基板Wの裏面Wbの周端と当接した状態で周縁保持機構130が基板Wの裏面Wbを吸引することにより、吸引保持機構120による基板Wの吸引を停止しても基板Wは周縁保持機構130によって保持される。
【0048】
周縁保持機構130は、互いに分離された複数の吸引素子を含んでもよい。複数の吸引素子は、それぞれ基板Wの裏面Wbを吸引する。複数の吸引素子の間の距離は、基板Wの直径よりも小さい。一例では、基板処理装置100では、周縁保持機構130に含まれる少なくとも2つの吸引素子が基板Wの裏面Wbを吸引することにより、基板Wを保持する。
【0049】
基板Wは、吸引保持機構120および周縁保持機構130のいずれかによって吸引されて保持される。また、基板Wは、吸引保持機構120および周縁保持機構130の一方によって吸引されて保持された状態から、吸引保持機構120および周縁保持機構130の他方によって吸引されて保持された状態に変更できる。
【0050】
例えば、吸引保持機構120が吸引する基板Wを周縁保持機構130に受け渡す場合、基板Wは、吸引保持機構120によって吸引されたまま周縁保持機構130まで移動してもよい。例えば、基板Wを保持する吸引保持機構120が周縁保持機構130よりも鉛直上方に位置する場合、吸引保持機構120は、基板Wを保持したまま鉛直下方に移動してもよい。
【0051】
または、吸引保持機構120によって吸引された基板Wに対して周縁保持機構130が移動してもよい。例えば、周縁保持機構130は、吸引保持機構120によって保持された基板Wに向かって鉛直上方に移動してもよい。あるいは、吸引保持機構120および周縁保持機構130のそれぞれが相対的に近づくように移動してもよい。
【0052】
同様に、周縁保持機構130が吸引する基板Wを吸引保持機構120に受け渡す場合、基板Wは、周縁保持機構130によって吸引されたまま吸引保持機構120まで移動してもよい。または、周縁保持機構130によって吸引された基板Wに対して吸引保持機構120が移動してもよい。あるいは、吸引保持機構120および周縁保持機構130のそれぞれが相対的に近づくように移動してもよい。
【0053】
処理液供給部140は、基板Wに処理液を供給する。例えば、処理液供給部140は、基板Wにリンス液を供給する。典型的には、処理液供給部140は、基板Wの上面Waにリンス液を供給する。リンス液を用いたリンス処理により、基板Wの上面Waに付着した薬液および不純物等を洗い流すことができる。処理液供給部140から供給されるリンス液は、脱イオン水(Deionized Water:DIW)、炭酸水、電解イオン水、オゾン水、アンモニア水、希釈濃度(例えば、10ppm~100ppm程度)の塩酸水、または、還元水(水素水)のいずれかを含んでもよい。
【0054】
処理液供給部140は、ノズル141と、配管142と、バルブ143とを含む。ノズル141は、基板Wの上面Waに処理液を吐出する。ノズル141は、配管142に接続される。配管142には、処理液供給源から処理液が供給される。配管142には、バルブ143が配置される。バルブ143は、配管142内の流路を開閉する。バルブ143が開くと、処理液は、ノズル141から基板Wに供給される。基板Wは、処理液によって処理される。なお、ノズル141は、基板Wに対して移動可能に構成されていることが好ましい。
【0055】
スクラブ処理部150は、基板Wの裏面Wbにブラシを当接させて基板Wの裏面Wbをブラシで洗浄する。これにより、スクラブ処理部150は、基板Wの裏面Wbをスクラブ処理する。典型的には、スクラブ処理部150は、基板Wの裏面Wbにリンス液を供給してブラシで処理する。
【0056】
スクラブ処理部150は、基板Wの裏面Wbを領域ごとに分けてスクラブ処理してもよい。例えば、スクラブ処理部150は、基板Wの裏面Wbの中央を先にスクラブ処理し、その後、基板Wの裏面Wbの周縁をスクラブ処理してもよい。あるいは、スクラブ処理部150は、基板Wの裏面Wbの周縁を先にスクラブ処理し、その後、基板Wの裏面Wbの中央をスクラブ処理してもよい。
【0057】
スクラブ処理部150は、基板Wの裏面Wbのうち吸引保持機構120によって保持されていない部分をスクラブ処理する。例えば、吸引保持機構120が基板Wの裏面Wbのある部分に当接して吸引する場合、スクラブ処理部150は、基板Wの裏面Wbのうち吸引保持機構120によって当接されていない部分をスクラブ処理する。あるいは、周縁保持機構130が基板Wの裏面Wbのある部分に当接して吸引する場合、スクラブ処理部150は、基板Wの裏面Wbのうち周縁保持機構130によって当接されていない部分をスクラブ処理する。
【0058】
スクラブ処理部150は、ブラシ152と、リンス液供給部154と、筐体156とを含む。ブラシ152およびリンス液供給部154は、筐体156に取り付けられる。
【0059】
ブラシ152は、基板Wを洗浄する。ここでは、ブラシ152は、基板Wの裏面Wbを洗浄する。例えば、ブラシ152は、多孔質物質から構成される。ブラシ152は、スポンジ状であってもよい。また、ブラシ152は、比較的固い樹脂から構成されてもよい。一例では、ブラシ152は、ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol:PVA)から構成される。または、ブラシ152は、複数の部材を組み合わせて構成されてもよい。あるいは、ブラシ152は、複数の毛を備えてもよい。
【0060】
例えば、ブラシ152は、疎水性であってもよい。または、ブラシ152は、半疎水性であってもよい。あるいは、ブラシ152は、親水性であってもよい。なお、ブラシ152が疎水性または半疎水性であることにより、ブラシ処理をリンス液の供給とともに行っても、ブラシ152が大きく変形することを抑制できる。
【0061】
ブラシ152の全体形状は、任意の形状であってもよい。例えば、ブラシ152は、円柱形状であってもよい。または、ブラシ152は、円筒形状であってもよい。あるいは、ブラシ152は、薄型の十字形状であってもよい。
【0062】
スクラブ処理部150は、基板Wをブラシ152で洗浄する。スクラブ処理部150のブラシ152によって行われる洗浄処理は、スクラブ処理とも呼ばれる。スクラブ処理部150は、基板Wの裏面Wbに当接して基板Wをブラシでスクラブ処理する。典型的には、スクラブ処理部150が基板Wをブラシでスクラブ処理する期間において、リンス液供給部154が基板Wの裏面Wbにリンス液を供給する。
【0063】
カバー部材160は、吸引保持機構120をカバーする。ここでは、カバー部材160は、薄板形状である。
【0064】
なお、カバー部材160が吸引保持機構120をカバーする場合、吸引保持機構120はカバー部材160を吸引する。これにより、吸引保持機構120が基板Wを吸引しない場合でも、吸引保持機構120は、吸引するカバー部材160によってカバーされるため、基板Wのスクラブ処理時に吸引保持機構120にリンス液等が付着することを抑制できる。
【0065】
なお、カバー部材160は、使用されない場合、待機位置で待機する。カバー部材160は、吸引保持機構120をカバーする場合、待機位置から吸引保持機構120まで搬送される。
【0066】
搬送機構170は、カバー部材160を搬送する。搬送機構170は、カバー部材160を使用する際に、待機位置のカバー部材160を待機位置から吸引保持機構120まで搬送する。また、基板Wの裏面Wbのスクラブ処理が完了した後、搬送機構170は、カバー部材160を吸引保持機構120から待機位置まで搬送する。
【0067】
なお、カバー部材160は、待機位置において、搬送機構170によって保持されてもよい。あるいは、カバー部材160は、待機位置において、搬送機構170とは異なる部材に保持されてもよい。この場合、搬送機構170は、カバー部材160とは別の部材を搬送するために使用できる。
【0068】
基板処理装置100は、カップ190をさらに備える。カップ190は、基板Wから飛散した処理液を回収する。カップ190は昇降する。例えば、カップ190は、処理液供給部140が基板Wに処理液を供給する期間にわたって基板Wの側方まで鉛直上方に上昇する。この場合、カップ190は、基板Wの回転によって基板Wから飛散する処理液を回収する。
【0069】
また、カップ190は、処理液供給部140が基板Wに処理液を供給する期間が終了すると、基板Wの側方から鉛直下方に下降する。あるいは、カップ190は、処理液供給部140が基板Wに処理液を供給した後のスピンドライの期間が終了すると、基板Wの側方から鉛直下方に下降する。
【0070】
制御装置11(
図1)の制御部11aは、吸引保持機構120、周縁保持機構130、処理液供給部140、スクラブ処理部150、搬送機構170および/またはカップ190を制御する。一例では、制御部11aは、シャフト122、電動モーター123、バルブ143、バルブSp2、搬送機構170およびカップ190を制御する。
【0071】
なお、処理液供給部140のノズル141は移動可能であってもよい。ノズル141は、制御部11aによって制御される移動機構にしたがって水平方向および/または鉛直方向に移動できる。なお、本明細書において、図面が過度に複雑になることを避けるために移動機構を省略することがあることに留意されたい。
【0072】
本実施形態の基板処理装置100は、半導体の設けられた半導体装置の作製に好適に用いられる。基板処理装置100は、半導体装置の製造時に、半導体装置の洗浄および/または加工(例えば、エッチング、特性変化等)に好適に用いられる。
【0073】
次に、
図1~
図3を参照して、本実施形態の基板処理システム10を説明する。
図3は、基板処理システム10のブロック図である。
【0074】
図3に示すように、制御装置11は、基板処理装置100の各種動作を制御する。制御装置11は、インデクサーロボットIR、センターロボットCR、吸引保持機構120、周縁保持機構130、処理液供給部140、スクラブ処理部150、搬送機構170およびカップ190を制御する。具体的には、制御装置11は、インデクサーロボットIR、センターロボットCR、吸引保持機構120、周縁保持機構130、処理液供給部140、スクラブ処理部150および搬送機構170に制御信号を送信することによって、インデクサーロボットIR、センターロボットCR、吸引保持機構120、周縁保持機構130、処理液供給部140、スクラブ処理部150、搬送機構170およびカップ190を制御する。
【0075】
具体的には、制御部11aは、インデクサーロボットIRを制御して、インデクサーロボットIRによって基板Wを受け渡しする。詳細には、インデクサーロボットIRは、ロードポートLPから処理前の基板Wを受け取り、センターロボットCRへと受け渡す。逆に、センターロボットCRから処理済の基板Wを受け取り、ロードポートLPへと受け渡す。インデクサーロボットIRとセンターロボットCRとの間に基板Wの載置部(パス)を設ける装置構成とした場合においては、当該載置部を介してインデクサーロボットIRとセンターロボットCRとが間接的に基板Wの受け渡しを行う。
【0076】
制御部11aは、センターロボットCRを制御して、センターロボットCRによって基板Wを受け渡しする。例えば、センターロボットCRは、未処理の基板Wを受け取って、複数のチャンバー110のうちのいずれかに基板Wを搬入する。また、センターロボットCRは、処理された基板Wをチャンバー110から受け取って、基板Wを搬出する。処理後の基板Wは、センターロボットCRが基板WをインデクサーロボットIRへと受け渡すことで行われる。インデクサーロボットIRとセンターロボットCRとの間に基板Wの載置部(パス)を設ける装置構成とした場合においては、当該載置部を介して、センターロボットCRからインデクサーロボットIRへと処理後の基板Wが受け渡される。
【0077】
制御部11aは、吸引保持機構120を制御して、吸引保持機構120および周縁保持機構130の位置および移動を制御する。これにより、制御部11aは、基板Wの受渡しおよび基板Wの吸引を制御する。
【0078】
また、制御部11aは、吸引保持機構120を制御して、基板Wの回転の開始、回転速度の変更および基板Wの回転の停止を制御する。例えば、制御部11aは、吸引保持機構120を制御して、吸引保持機構120の回転数を変更することができる。具体的には、制御部11aは、吸引保持機構120の電動モーター123の回転数を変更することによって、基板Wの回転数を変更できる。
【0079】
制御部11aは、処理液供給部140のバルブ143を制御して、バルブ143の状態を開状態と閉状態とに切り替えることができる。具体的には、制御部11aは、処理液供給部140のバルブ143を制御して、バルブ143を開状態にすることによって、ノズル141に向かって配管142内を流れるリンス液を通過させることができる。また、制御部11aは、処理液供給部140のバルブ143を制御して、バルブ143を閉状態にすることによって、ノズル141に向かって配管142内を流れるリンス液の供給を停止させることができる。
【0080】
また、制御部11aは、カップ190を移動できる。具体的には、制御部11aは、カップ190を制御して、カップ190を鉛直方向に上昇させることによって、カップ190の位置を吸引保持機構120の側方に移動できる。一方、制御部11aは、カップ190を制御して、カップ190を鉛直方向に下降させることによって、カップ190の位置を退避位置に移動することができる。
【0081】
本実施形態の基板処理装置100は、半導体装置を作製するために好適に用いられる。例えば、基板処理装置100は、半導体装置として用いられる基板Wを処理するために好適に利用される。
【0082】
次に、
図1~
図4を参照して本実施形態の基板処理装置100における基板Wの裏面Wbのスクラブ処理について説明する。
図4(a)は、基板Wの裏面Wbの周縁をスクラブ処理する場合の基板処理装置100の模式図であり、
図4(b)は、基板Wの裏面Wbの中央をスクラブ処理する場合の基板処理装置100の模式図である。
【0083】
図4(a)に示すように、基板Wは、吸引保持機構120によって保持される。吸引保持機構120は、基板Wの裏面Wbを吸引して基板Wを保持する。ここでは、周縁保持機構130は、吸引保持機構120によって支持される基板Wに対して鉛直下方に離れて位置する。
【0084】
スピンベース121の幅(水平方向の長さ)は、基板Wの幅(水平方向の長さ)よりも短い。このため、基板Wの裏面Wbには、スピンベース121と対向しない領域がある。したがって、基板Wの裏面Wbの一部は、吸引保持機構120に覆われる一方で、基板Wの裏面Wbの別の一部は、吸引保持機構120に覆われない。
【0085】
スクラブ処理部150は、基板Wのうち吸引保持機構120によって覆われない領域の下方に移動できる。このため、スクラブ処理部150は、基板Wの裏面Wbの周縁をスクラブ処理できる。このようにして、スクラブ処理部150は、吸引保持機構120が基板Wを支持する場合に基板Wの裏面Wbの周縁をスクラブ処理できる。
【0086】
なお、基板Wの裏面Wbは、周辺だけでなく中央もスクラブ処理される。
【0087】
図4(b)に示すように、基板Wは、周縁保持機構130によって保持される。周縁保持機構130は、基板Wの裏面Wbを吸引して基板Wを保持する。ここでは、吸引保持機構120が鉛直方向に下降することにより、吸引保持機構120によって支持された基板Wは、周縁保持機構130に支持されるように移動できる。あるいは、周縁保持機構130が鉛直方向に上昇することにより、吸引保持機構120によって支持された基板Wは、周縁保持機構130に支持されるように移動してもよい。
【0088】
吸引保持機構120はカバー部材160によって覆われる。ここでは、カバー部材160は、吸引保持機構120の上面を覆う。この状態で、スクラブ処理部150は、基板Wの裏面Wbをスクラブ処理する。
【0089】
次に、
図1~
図5を参照して本実施形態の基板処理装置100による基板Wの裏面スクラブ処理のフローを説明する。
【0090】
ステップS102において、基板Wの裏面Wbの中央をスクラブ処理する。例えば、周縁保持機構130が基板Wの裏面Wbの周縁と当接して基板Wの裏面Wbを保持する。この場合、基板Wの裏面Wbの中央は、露出されている。スクラブ処理部150は、基板Wの裏面Wbの中央をスクラブ処理する。
【0091】
ステップS104において、基板Wの裏面Wbの周縁をスクラブ処理する。例えば、吸引保持機構120が基板Wの裏面Wbの中央と当接して基板Wの裏面Wbを保持する。この場合、基板Wの裏面Wbの周縁は、露出されている。スクラブ処理部150は、基板Wの裏面Wbの周縁をスクラブ処理する。
【0092】
基板Wの裏面Wbの周縁をスクラブ処理する際に、吸引保持機構120は、カバー部材160によってカバーされる。これにより、基板Wの裏面Wbを吸引していない吸引保持機構120にリンス液が付着することを抑制できるため、吸引保持機構120が次に基板Wを保持する際に基板Wが汚れることを抑制できる。
【0093】
次に、
図6を参照して本実施形態の基板処理装置100による基板Wの裏面スクラブ処理について説明する。
図6(a)~
図6(i)は、基板処理装置100の模式的な一部拡大図である。
【0094】
図6(a)に示すように、基板Wは、吸引保持機構120によって吸着されて保持される。
【0095】
図6(b)に示すように、基板Wは、吸引保持機構120から周縁保持機構130に受け渡される。吸引保持機構120は、周縁保持機構130によって支持される基板Wから離れて、基板Wの下方に位置する。
【0096】
例えば、スピンベース121が下降して吸引保持機構120が下方に移動する。これにより、基板Wは、吸引保持機構120から周縁保持機構130に受け渡される。
【0097】
図6(c)に示すように、搬送機構170がカバー部材160を吸引保持機構120まで搬送する。その後、搬送機構170はカバー部材160を吸引保持機構120の上に載置し、搬送機構170は吸引保持機構120から離れる。
【0098】
図6(d)に示すように、吸引保持機構120は、カバー部材160によってカバーされる。ここでは、吸引保持機構120の上端が、カバー部材160によってカバーされる。吸引保持機構120は、カバー部材160を吸引する。
【0099】
図6(e)に示すように、スクラブ処理部150が吸引保持機構120と基板Wとの間まで移動し、基板Wの裏面Wbの中央をスクラブ処理する。
【0100】
図6(f)に示すように、搬送機構170は吸引保持機構120まで移動して、カバー部材160を持ち去る。例えば、搬送機構170は、吸引保持機構120の上部まで移動して、カバー部材160を保持する。
【0101】
図6(g)に示すように、搬送機構170は、カバー部材160を保持してカバー部材160とともに、吸引保持機構120から離れる。
【0102】
図6(h)に示すように、スピンベース121が上昇し、吸引保持機構120が長くなる。これにより、基板Wは、周縁保持機構130から吸引保持機構120に受け渡される。吸引保持機構120は、周縁保持機構130によって支持された基板Wを引き取り、基板Wを周縁保持機構130の上方まで移動させる。
【0103】
図6(i)に示すように、周縁保持機構130が平面視において基板Wの下方から退避する。スクラブ処理部150が基板Wのうちの吸引保持機構120によって覆われていない領域の下方まで移動し、基板Wの裏面Wbの周縁をスクラブ処理する。
【0104】
以上のようにして、基板Wの裏面Wbを充分にスクラブ処理できる。また、基板Wの裏面Wbの中央をスクラブ処理する際に、吸引保持機構120はカバー部材160によってカバーされるため、吸引保持機構120がスクラブ処理時にリンス液で汚れることを抑制できる。
【0105】
なお、
図6を参照した説明では、基板Wの裏面Wbの中央をスクラブ処理した後で、基板Wの裏面Wbの周縁をスクラブ処理したが、本実施形態はこれに限定されない。基板Wの裏面Wbの周縁をスクラブ処理した後で、基板Wの裏面Wbの中央をスクラブ処理してもよい。
【0106】
また、
図6を参照した説明では、基板Wの裏面Wbの中央をスクラブ処理した後で、すぐに、基板Wの裏面Wbの周縁をスクラブ処理したが、本実施形態はこれに限定されない。基板Wの裏面Wbの中央をスクラブ処理した後に別の処理を行い、その後で基板Wの裏面Wbの周縁をスクラブ処理してもよい。例えば、基板Wの裏面Wbの中央をスクラブ処理した後、処理液で基板Wの上面Waを処理し、その後、基板Wの裏面Wbの周縁をスクラブ処理してもよい。
【0107】
なお、
図1~
図6では、カバー部材160は薄板形状であったが、本実施形態はこれに限定されない。カバー部材160およびカバー部材160で覆われる吸引保持機構120は凹部および凸部を有してもよい。
【0108】
次に、
図7を参照して本実施形態の基板処理装置100における吸引保持機構120およびカバー部材160を説明する。
図7は、基板処理装置100における吸引保持機構120およびカバー部材160の模式図である。
【0109】
図7に示すように、カバー部材160は、本体部160pと、カバー係合部160qとを有する。本体部160pは、薄板形状であり、カバー係合部160qは、本体部160pのうちの吸引保持機構120と対向する面に設けられる。ここでは、カバー係合部160qは、凸部である。カバー係合部160qは、本体部160pの鉛直方向下方側の面から鉛直方向に円柱状に突出する。
【0110】
また、吸引保持機構120は、本体部120pと、吸引係合部120qとを有する。本体部120pは、薄型の略直方体形状であり、吸引係合部120qは、本体部120pのうちのカバー部材160と対向する面に設けられる。ここでは、吸引係合部120qは、凹部である。吸引係合部120qは、本体部120pの鉛直方向上方側の面から鉛直方向に窪む。吸引係合部120qのXY平面のサイズは、カバー係合部160qのXY平面の長さとほぼ同じか、若干大きい。
【0111】
この場合、カバー部材160が吸引保持機構120を覆うと、カバー部材160は吸引保持機構120と係合する。このため、カバー部材160を吸引保持機構120に対して配置する際に、カバー部材160を厳密に配置しなくても、吸引保持機構120に対してカバー部材160を適切な位置に装着できる。
【0112】
なお、
図7では、吸引係合部120qは凹部であり、カバー係合部160qは凸部であったが、本実施形態はこれに限定されない。吸引係合部120qは凸部であり、カバー係合部160qは凹部であってもよい。
【0113】
なお、
図1~
図7に示したカバー部材160は、吸引保持機構120の上面を覆ったが、本実施形態はこれに限定されない。カバー部材160は、吸引保持機構120の側部を覆ってもよい。
【0114】
次に、
図8を参照して本実施形態の基板処理装置100における吸引保持機構120およびカバー部材160を説明する。
図8(a)および
図8(b)は、基板処理装置100における吸引保持機構120およびカバー部材160の模式図である。
【0115】
図8(a)に示すように、吸引保持機構120の上面には吸引面sfが設けられる。吸引面sfは、XY平面に広がる。
【0116】
カバー部材160は、本体部160pと、突起部160rとを含む。本体部160pは、薄板形状であり、突起部160rは、本体部160pの外周端部から鉛直下方に延びる。このように、カバー部材160は、吸引保持機構120の上面および側面を覆ってもよい。
【0117】
あるいは、
図8(b)に示すように、吸引保持機構120の上面には吸引面sfが設けられる。吸引面sfは、XY平面に広がる。
【0118】
カバー部材160は、吸引面sfに対して傾斜した面を有する。例えば、カバー部材160は、略円錐形状の面を有する。この場合、カバー部材160に液体が付着しても、液体は滑らかに下方に流れる。したがって、吸引保持機構120だけでなくカバー部材160にリンス液が付着し続けることを抑制できる。
【0119】
なお、
図1~
図8を参照した説明では、スクラブ処理部150およびカバー部材160は、別個に移動されたが、本実施形態はこれに限定されない。カバー部材160は、スクラブ処理部150とともに搬送されてもよい。
【0120】
次に、
図9を参照して本実施形態の基板処理装置100を説明する。
図9の基板処理装置100は、スクラブ処理部150が搬送部158を含むとともに搬送部158によってカバー部材160が搬送される点を除いて、
図2を参照して上述した基板処理装置100と同様の構成を有しており、冗長を避けるために重複する記載を省略する。
【0121】
スクラブ処理部150は、ブラシ152、リンス液供給部154および筐体156に加えて、搬送部158をさらに含む。搬送部158は、ブラシ152およびリンス液供給部154の設けられた筐体156を搬送する。搬送部158は、水平方向および/または鉛直方向に移動する。
【0122】
搬送部158は、筐体156を搬送するとともにカバー部材160を搬送する。例えば、搬送部158は、鉛直上方側で筐体156を保持するための保持機構158Aと、鉛直下方側でカバー部材160を保持するための保持機構158Bとを有する。このため、搬送部158は、搬送機構170としても機能することができる。
【0123】
例えば、搬送部158における保持機構158Bは、磁力によってカバー部材160を保持する。搬送部158は、カバー部材160を待機位置から吸引保持機構120まで搬送し、吸引保持機構120において磁力の強度を切り換えて、吸引保持機構120上にカバー部材160を載置する。以上のようにして、カバー部材160を搬送してもよい。
【0124】
なお、
図1~
図9に示した基板処理装置では、カバー部材160は、搬送機構170と別個に移動可能であったが、本実施形態はこれに限定されない。カバー部材160は、搬送機構170と一体的に形成されてもよい。
【0125】
なお、基板Wの裏面Wbの中央をスクラブ処理する場合、周縁保持機構130は、吸引保持機構120に保持されていた基板Wをスクラブ処理部150側に引き出すことが好ましい。
【0126】
次に、
図10~
図15を参照して本実施形態の基板処理装置100を説明する。まず、
図10~
図13を参照して本実施形態の基板処理装置100の構成を説明する。
図10は、基板処理装置100の模式的な斜視図であり、
図11は、
図10の一部拡大斜視図である。また、
図12は、基板処理装置100の模式的な側面図であり、
図13は、基板処理装置100の模式的な上面図である。なお、ここでは、図面が過度に複雑になることを避ける目的で、処理液供給部を省略して示している。
【0127】
図10に示すように、周縁保持機構130は、吸引部130pと、吸引部130qとを含む。吸引部130p、130qの各々は、アーム132および1対の吸着パッド134を含む。各吸着パッド134の中央部には、吸引孔が形成されている。それにより、2対の吸着パッド134は、気体の吸引力により基板Wの下面周縁部の互いに対向する領域を吸着保持できる。吸引部130pおよび吸引部130qは、Y方向に沿って平行移動可能である。
【0128】
図10において、カバー部材160は、待機位置に配置される。カバー部材160の待機位置は、平面視において、吸引保持機構120とは異なる位置である。
【0129】
スクラブ処理部150は、ブラシ152と、リンス液供給部154と、筐体156と、搬送部158とを有する。搬送部158は、搬送アーム158aおよび移動機構159を有する。搬送アーム158aは、水平方向に延びる。搬送アーム158aの先端には、ブラシ152、リンス液供給部154の設けられた筐体156が取り付けられる。搬送アーム158aは、移動機構159によって移動する。
【0130】
移動機構159は、基部159aと、回転部159bとを含む。回転部159bは、基部159aに対して鉛直方向の回転軸RCの周りで回転可能および鉛直方向に上下動可能に設けられる。搬送アーム158aは、回転部159bから水平方向に突出するように形成される。搬送アーム158aは、回転部159bとともに水平面内で旋回可能かつ上下動可能である。
【0131】
搬送アーム158aの先端部の上面には、ブラシ152が鉛直方向の回転軸の周りで回転可能(自転可能)に設けられる。搬送アーム158aの先端部でかつブラシ152の両側に1対のリンス液供給部154が設けられる。本実施の形態では、1対のリンス液供給部154は、鉛直方向に延びる。
【0132】
図10~
図13に示すように、搬送アーム158aの先端部がX方向に沿って向く位置を待機位置と呼ぶ。基板Wは、周縁保持機構130に吸引される。このとき、吸引保持機構120は、カバー部材160によってカバーされてもよい。
【0133】
次に、
図14を参照して本実施形態の基板処理装置100を説明する。
図14は、基板処理装置100の模式的な平面図である。ここでは、基板Wの裏面Wbの中央がスクラブ処理される。基板Wは、吸引部130pおよび吸引部130qの移動に伴って移動する。
【0134】
図14に示すように、基板Wは、吸引部130pおよび吸引部130qに吸引される。このとき、吸引保持機構120は、カバー部材160によってカバーされる。ここでは、スクラブ処理部150は、待機位置からスクラブ処理位置に移動する。移動機構159により、スクラブ処理部150のブラシ152が基板Wの裏面Wbに当接するまで移動する。
【0135】
図14に示すように、基板Wは、吸引部130pおよび吸引部130qに吸引されたたまま吸引部130pおよび吸引部130qの移動に伴って移動する。吸引部130pおよび吸引部130qがY方向に移動することに伴い、吸引部130pおよび吸引部130qによって支持された基板WもY方向に移動する。このとき、スクラブ処理部150は、移動機構159が時計回りおよび/または反時計回りに回転することにより、所定の角度範囲で回動する。これにより、基板Wの裏面Wbの中心を含む中央がスクラブ処理部150によってスクラブ処理される。
【0136】
その後、基板Wの裏面Wb中央のスクラブ処理が終了すると、搬送機構170は、吸引保持機構120を覆うカバー部材160を持ち去り、基板Wは、吸引部130pおよび吸引部130qから吸引保持機構120に受け渡される。
【0137】
次に、
図15を参照して本実施形態の基板処理装置100を説明する。
図15は、基板処理装置100の模式的な平面図である。ここでは、基板Wの裏面Wbの周縁がスクラブ処理される。
【0138】
図15に示すように、吸引保持機構120は、基板Wの裏面Wbを吸引して基板Wとともに回転する。スクラブ処理部150は、基板Wの裏面Wbの周縁に当接しており、基板Wの裏面Wbの周縁をスクラブ処理する。このとき、搬送機構170は、カバー部材160を保持する。
【0139】
以上、
図10~
図15を参照して上述したように、本実施形態の基板処理装置100によれば、基板Wの裏面Wb全体を充分にスクラブ処理できる。
【0140】
次に、
図1から
図16を参照して、本実施形態の基板処理装置100による基板Wの裏面スクラブ処理について説明する。
図16は、基板処理装置100による基板Wの裏面スクラブ処理のフロー図である。
図16には、吸引保持機構120、周縁保持機構130、スクラブ処理部150、カバー部材160および搬送機構170の動作の変化を併せて示す。
【0141】
ここでは、基板Wの裏面スクラブ処理を開始する時点において、基板Wは、吸引保持機構120によって吸引されて保持される。また、周縁保持機構130の吸引は駆動しておらず、スクラブ処理部150、カバー部材160および搬送機構170はそれぞれ待機位置に位置する。
【0142】
ステップS202において、基板Wの移動を開始する。例えば、吸引保持機構120は基板Wを吸引したまま周縁保持機構130に向かって移動する。一例では、吸引保持機構120のスピンベース121は、下方に移動する。
【0143】
ステップS204において、基板Wを吸引保持機構120から周縁保持機構130に受け渡す。基板Wの受け渡しの前後において、吸引保持機構120の吸引は停止し、周縁保持機構130の吸引を開始する。
【0144】
ステップS206において、カバー部材160の搬送を開始する。搬送機構170は、カバー部材160を待機位置から吸引保持機構120に搬送する。
【0145】
ステップS208において、カバー部材160を吸引保持機構120に装着する。カバー部材160の装着の前後において、吸引保持機構120は吸引を開始する。その後、搬送機構170は、カバー部材160を吸引保持機構120に残したまま待機位置に戻る。
【0146】
ステップS210において、スクラブ処理部150は、基板Wの裏面Wbの中央をスクラブ処理する。詳細には、スクラブ処理部150は、基板Wの裏面Wbの中央の下方位置まで移動して、基板Wの裏面Wbの中央をスクラブ処理する。このとき、周縁保持機構130は、Y方向に移動してもよい。
【0147】
ステップS212において、カバー部材160を吸引保持機構120から脱離する。搬送機構170は、吸引保持機構120まで移動して、カバー部材160を吸引保持機構120から脱離する。その後、搬送機構170は、カバー部材160を保持したまま待機位置に戻る。なお、カバー部材160の脱離の前後において、吸引保持機構120の吸引を停止する。
【0148】
ステップS214において、基板Wの移動を開始する。例えば、吸引保持機構120は基板Wを吸引する周縁保持機構130に向かって移動する。一例では、吸引保持機構120のスピンベース121は、上方に移動する。
【0149】
ステップS216において、基板Wを周縁保持機構130から吸引保持機構120に受け渡す。基板Wの受け渡しの前後において、周縁保持機構130の吸引は停止し、吸引保持機構120の吸引を開始する。その後、周縁保持機構130は、退避位置に移動してもよい。
【0150】
ステップS218において、スクラブ処理部150は、基板Wの裏面Wbの周縁をスクラブ処理する。詳細には、スクラブ処理部150は、基板Wの裏面Wbの周縁の下方位置に移動して、基板Wの裏面Wbの周縁をスクラブ処理する。
【0151】
以上のようにして、基板Wの裏面Wbをスクラブ処理する。本実施形態により、基板Wの裏面Wb全体を充分にスクラブ処理できる。
【0152】
なお、
図1~
図16を参照した説明では、基板Wは、吸引保持機構120および周縁保持機構130のいずれかかによって保持されたが、本実施形態はこれに限定されない。基板Wは、周縁保持機構130とは別の部材に保持されてもよい。
【0153】
次に、
図17を参照して、本実施形態の基板処理装置100を説明する。
図17は、基板処理装置100の模式図である。
図17の基板処理装置100は、周縁保持機構130の代わりに遮蔽部材180をさらに備える点を除いて
図2を参照して上述した基板処理装置100と同様の構成を有しており、冗長を避けるために重複する記載を省略する。
【0154】
基板処理装置100は、遮蔽部材180をさらに備える。遮蔽部材180は、鉛直方向に移動可能である。遮蔽部材180は、基板Wを保持する。例えば、遮蔽部材180は、基板Wの側面Wcを保持する。
【0155】
遮蔽部材180は、遮蔽板182と、支軸184と、ノズル186と、チャック部188とを含む。例えば、遮蔽板182は、略円板状である。支軸184は、シャフト122の回転軸AXの線上に位置する。遮蔽板182は、支軸184から水平方向に延びる。ここでは、遮蔽板182は、水平方向に延びた形状を有している。
【0156】
ノズル186は、基板Wに向けて不活性ガス吐出する。チャック部188は、遮蔽板182の外周端部から鉛直下方に延びている。チャック部188は、基板Wの側面Wcを保持する。
【0157】
本実施形態の基板処理装置100でも、遮蔽部材180が基板Wを保持する際に、カバー部材160は、吸引保持機構120を覆う。これにより、遮蔽部材180によって保持された基板Wをスクラブ処理する際に、吸引保持機構120にリンス液が付着することを抑制できる。
【0158】
以上、図面を参照して本発明の実施形態を説明した。ただし、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施することが可能である。また、上記の実施形態に開示される複数の構成要素を適宜組み合わせることによって、種々の発明の形成が可能である。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。図面は、理解しやすくするために、それぞれの構成要素を主体に模式的に示しており、図示された各構成要素の厚み、長さ、個数、間隔等は、図面作成の都合上から実際とは異なる場合もある。また、上記の実施形態で示す各構成要素の材質、形状、寸法等は一例であって、特に限定されるものではなく、本発明の効果から実質的に逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0159】
本発明は、基板処理装置に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0160】
10 基板処理システム
100 基板処理装置
110 チャンバー
120 吸引保持機構
130 周縁保持機構
140 処理液供給部
150 スクラブ処理部
160 カバー部材
170 搬送機構