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特許7504424車両近接報知システム、車両および車両近接報知方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-14
(45)【発行日】2024-06-24
(54)【発明の名称】車両近接報知システム、車両および車両近接報知方法
(51)【国際特許分類】
   B60Q 5/00 20060101AFI20240617BHJP
【FI】
B60Q5/00 650D
B60Q5/00 620A
B60Q5/00 630B
B60Q5/00 650C
B60Q5/00 650B
B60Q5/00 680A
B60Q5/00 680B
B60Q5/00 670Z
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020055537
(22)【出願日】2020-03-26
(65)【公開番号】P2021154807
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】322003857
【氏名又は名称】パナソニックオートモーティブシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】今野 文靖
【審査官】當間 庸裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-075895(JP,A)
【文献】特開2004-136831(JP,A)
【文献】特開2014-028587(JP,A)
【文献】国際公開第2019/030952(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/138349(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の接近を報知するための車両近接報知システムであって、
つのスピーカ筺体内に隣接して設けられた第1スピーカおよび第2スピーカからなり、前記車両に搭載される1つのスピーカシステムと、
前記車両の接近を報知する音に対応する音信号であって、前記第1スピーカおよび前記第2スピーカに入力される音信号を出力する音源と、
前記第1スピーカおよび前記第2スピーカから出力される音の前記車両の左方および右方の音圧が前記車両の前後方向軸上の音圧よりも高くなるように、前記第1スピーカに入力される音信号および前記第2スピーカに入力される音信号のうちの少なくとも一方の音信号の位相を制御する位相制御部と、を備え、
前記第1スピーカおよび前記第2スピーカは、一方が前記車両の右前方を向き、他方が前記車両の左前方を向くように配置され、
前記第1スピーカのバッフル面と前記第2スピーカのバッフル面とのなす角は、略90度であり、
前記スピーカ筺体は、前記車両の前後方向の中心軸上に搭載される
車両近接報知システム。
【請求項2】
300Hzから5kHz以下の周波数帯域において、前記第1スピーカおよび前記第2スピーカから出力される音の、前記車両の左方および右方の音圧を、車室内における音圧よりも高くする
請求項1に記載の車両近接報知システム。
【請求項3】
前記第1スピーカは、前記第2スピーカよりも前記車両の左側に配置され、
前記第1スピーカおよび前記第2スピーカは、前記第1スピーカのバッフル面が前記車両の左前方を向き、前記第2スピーカのバッフル面が前記車両の右前方を向くように配置される
請求項1に記載の車両近接報知システム。
【請求項4】
300Hzから3kHz以下の周波数帯域において、前記第1スピーカおよび前記第2スピーカから出力される音の、前記車両の左方および右方の音圧を、車室内における音圧よりも高くする
請求項3に記載の車両近接報知システム。
【請求項5】
前記第1スピーカは、前記第2スピーカよりも前記車両の左側に配置され、
前記第1スピーカおよび前記第2スピーカは、前記第1スピーカのバッフル面が前記車両の右前方を向き、前記第2スピーカのバッフル面が前記車両の左前方を向くように配置される
請求項1に記載の車両近接報知システム。
【請求項6】
1.5kHzから5kHz以下の周波数帯域において、前記第1スピーカおよび前記第2スピーカから出力される音の、前記車両の左方および右方の音圧を、車室内における音圧よりも高くする
請求項5に記載の車両近接報知システム。
【請求項7】
前記車両近接報知システムは、さらに、前記第1スピーカおよび前記第2スピーカを回動させる回動部を備える
請求項1~6のいずれか1項に記載の車両近接報知システム。
【請求項8】
前記位相制御部は、前記第1スピーカに入力される音信号の位相と前記第2スピーカに入力される音信号の位相とが逆相になるように、前記少なくとも一方の音信号の位相を制御する
請求項1~のいずれか1項に記載の車両近接報知システム。
【請求項9】
前記位相制御部は、前記車両の速度に応じて前記少なくとも一方の音信号の位相を制御する
請求項1~のいずれか1項に記載の車両近接報知システム。
【請求項10】
前記車両の速度が所定の速度以上の場合、前記第1スピーカおよび前記第2スピーカから音が出力されない
請求項1~のいずれか1項に記載の車両近接報知システム。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の車両近接報知システムを備える
車両。
【請求項12】
つのスピーカ筺体内に隣接して設けられた第1スピーカおよび第2スピーカからなり、車両に搭載される1つのスピーカシステムを用いた、前記車両の接近を報知するための車両近接報知方法であって、
前記車両の接近を報知する音に対応する音信号であって、前記第1スピーカおよび前記第2スピーカに入力される音信号を出力し、
前記第1スピーカおよび前記第2スピーカから出力される音の前記車両の左方および右方の音圧が前記車両の前後方向軸上の音圧よりも高くなるように、前記第1スピーカに入力される音信号および前記第2スピーカに入力される音信号のうちの少なくとも一方の音信号の位相を制御し、
前記第1スピーカおよび前記第2スピーカは、一方が前記車両の右前方を向き、他方が前記車両の左前方を向くように配置され、
前記第1スピーカのバッフル面と前記第2スピーカのバッフル面とのなす角は、略90度であり、
前記スピーカ筺体は、前記車両の前後方向の中心軸上に搭載される
車両近接報知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両の接近を報知するための車両近接報知システム、車両近接報知システムを搭載した車両および車両近接報知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車およびハイブリッド自動車は低騒音であるため、自車ロードノイズが小さい低速走行時には歩行者等が車両の接近に気づき難いという問題がある。このため、電気自動車およびハイブリッド自動車等の低騒音車には、走行時に車両の走行状態を想起させる音(報知音とも呼ぶ)を出力することで車両の接近を歩行者等に警告する装置が備えられている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2012/023170号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、車外に対して報知音を出力すると、報知音は車室内にも入り込み、車室内の搭乗者へ不快感を与えることがある。
【0005】
そこで、本開示は、車外に対して効果的に報知音を出力しつつ、搭乗者へ与える不快感を低減できる車両近接報知システム等を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る車両近接報知システムは、車両の接近を報知するための車両近接報知システムであって、前記車両に搭載された1つのスピーカ筺体内に設けられた第1スピーカおよび第2スピーカと、前記車両の接近を報知する音に対応する音信号であって、前記第1スピーカおよび前記第2スピーカに入力される音信号を出力する音源と、前記第1スピーカおよび前記第2スピーカから出力される音の前記車両の左方および右方の音圧が前記車両の前後方向軸上の音圧よりも高くなるように、前記第1スピーカに入力される音信号および前記第2スピーカに入力される音信号のうちの少なくとも一方の音信号の位相を制御する位相制御部と、を備える。
【0007】
本開示の一態様に係る車両は、上記の車両近接報知システムを備える。
【0008】
本開示の一態様に係る車両近接報知方法は、車両の接近を報知するための車両近接報知方法であって、前記車両の接近を報知する音に対応する音信号であって、前記車両に搭載された1つのスピーカ筺体内に設けられた第1スピーカおよび第2スピーカに入力される音信号を出力し、前記第1スピーカおよび前記第2スピーカから出力される音の前記車両の左方および右方の音圧が前記車両の前後方向軸上の音圧よりも高くなるように、前記第1スピーカに入力される音信号および前記第2スピーカに入力される音信号のうちの少なくとも一方の音信号の位相を制御する。
【0009】
なお、これらの包括的または具体的な態様は、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラムまたはコンピュータ読み取り可能なCD-ROMなどの記録媒体で実現されてもよく、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラムおよび記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。また、記録媒体は、非一時的な記録媒体であってもよい。
【発明の効果】
【0010】
本開示の一態様に係る車両近接報知装置等は、車外に対して効果的に報知音を出力しつつ、搭乗者へ与える不快感を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、1つのスピーカから出力された音の音圧の周波数特性を示すグラフである。
図2図2は、実施の形態に係る車両近接報知システムにおける、背中合わせになるように配置された第1スピーカおよび第2スピーカからなるスピーカシステムを搭載した車両の一例を示す図である。
図3図3は、実施の形態に係る車両近接報知システムの構成を示すブロック図である。
図4図4は、スピーカシステムと各マイクとの位置関係を示す図である。
図5図5は、背中合わせになるように配置された第1スピーカおよび第2スピーカから出力された音の音圧の周波数特性を示すグラフである。
図6図6は、実施の形態に係る車両近接報知システムにおける、バッフル面が車両の左前方を向く第1スピーカおよびバッフル面が車両の右前方を向く第2スピーカからなるスピーカシステムを搭載した車両の一例を示す図である。
図7図7は、バッフル面が車両の左前方を向く第1スピーカおよびバッフル面が車両の右前方を向く第2スピーカから出力された音の音圧の周波数特性を示すグラフである。
図8図8は、実施の形態に係る車両近接報知システムにおける、バッフル面が車両の右前方を向く第1スピーカおよびバッフル面が車両の左前方を向く第2スピーカからなるスピーカシステムを搭載した車両の一例を示す図である。
図9図9は、バッフル面が車両の右前方を向く第1スピーカおよびバッフル面が車両の左前方を向く第2スピーカから出力された音の音圧の周波数特性を示すグラフである。
図10図10は、実施の形態に係る車両近接報知システムにおける、それぞれのバッフル面が共に車両の前方を向くように配置された第1スピーカおよび第2スピーカからなるスピーカシステムを搭載した車両の一例を示す図である。
図11図11は、それぞれのバッフル面が共に車両の前方を向くように配置された第1スピーカおよび第2スピーカから出力された音の音圧の周波数特性を示すグラフである。
図12図12は、その他の実施の形態に係る車両近接報知方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(本開示の基礎となった知見)
電気自動車およびハイブリッド自動車等の低騒音車から出力される報知音に関しては、北米NHTSA(National Highway Traffic Safety Administration)による法規において、最小音圧値の規定が検討されている。例えば、1/3オクターブの8周波数バンドに対して最小音圧値が規定され、所定の計測方法で計測した場合に最小音圧値以上の報知音が出力される必要がある。例えば、車両の走行時には2つのマイクロフォンによって、2つのマイクロフォンの間を車両が通過するときに、報知音の音圧が計測され、車両の左方および右方における報知音の音圧が最小音圧値以上であることが要求されている。
【0013】
図1は、1つのスピーカから出力された音の音圧の周波数特性を示すグラフである。図1において、実線はスピーカから左方に1m離れた位置に配置されたマイクによって収音された音の音圧の周波数特性を示し、破線はスピーカから右方に1m離れた位置に配置されたマイクによって収音された音の音圧の周波数特性を示し、一点鎖線はスピーカから前方に1m離れた位置に配置されたマイクによって収音された音の音圧の周波数特性を示し、二点鎖線はスピーカから後方に1m離れた位置に配置されたマイクによって収音された音の音圧の周波数特性を示す。
【0014】
例えば、車両のボンネット部分に配置されたスピーカから報知音を出力することが想定されており、スピーカの後方のマイクが位置する場所が車室内に対応する。また、スピーカの前方、左方および右方のマイクが車両の前方、左方および右方に対応する。車室内にも入り込んだ報知音によって車室内の搭乗者へ与える不快感を低減するためには、スピーカの後方のマイクによって収音される音の音圧が低くなっている必要がある。一方で、車両の走行時に車外に対して効果的に報知音を出力するためには、スピーカの左方および右方のマイクによって収音される音の音圧が高くなっている必要がある。
【0015】
図1では、例えば、スピーカのバッフル面は前方のマイク側に向いているため、スピーカの前方のマイクが収音する音の音圧(車両の前方における音圧に対応)は、広い周波数帯域にわたって高くなっている。一方で、スピーカの左方および右方のマイクが収音する音の音圧(車両の左方および右方における音圧に対応)は、それぞれ約1.5kHzまでは前方のマイクと同程度の音圧となっているが、約1.5kHz(特に約5kHz)よりも高い周波数帯域では前方のマイクよりも音圧が低くなっている。さらに、スピーカの後方のマイクが収音する音の音圧(車室内の音圧に対応)は、スピーカの左方および右方のマイクが収音する音の音圧と同程度の音圧となっている。すなわち、1つのスピーカから報知音を出力した場合、車両の左方および右方では十分な音圧を得られないおそれがあり、かつ、車両の左方および右方における報知音の音圧と同程度の報知音が車室内に漏れるおそれがある。よって、1つのスピーカから報知音を出力する場合には、車外に対して効果的に報知音を出力できず、搭乗者へは不快感を与えるおそれがある。
【0016】
本発明者らは、このような知見を基礎として、車外に対して効果的に報知音を出力しつつ、搭乗者へ与える不快感を低減できる車両近接報知システム等を検討した。
【0017】
本開示の一態様に係る車両近接報知システムは、車両の接近を報知するための車両近接報知システムであって、前記車両に搭載された1つのスピーカ筺体内に設けられた第1スピーカおよび第2スピーカと、前記車両の接近を報知する音に対応する音信号であって、前記第1スピーカおよび前記第2スピーカに入力される音信号を出力する音源と、前記第1スピーカおよび前記第2スピーカから出力される音の前記車両の左方および右方の音圧が前記車両の前後方向軸上の音圧よりも高くなるように、前記第1スピーカに入力される音信号および前記第2スピーカに入力される音信号のうちの少なくとも一方の音信号の位相を制御する位相制御部と、を備える。
【0018】
例えば、少なくとも2つのスピーカから出力される報知音のそれぞれの間で位相差を与えることで、少なくとも2つのスピーカから出力される音の指向性を制御することができる。したがって、1つのスピーカ筺体内に設けられた第1スピーカおよび第2スピーカに入力される音信号の位相を制御することで、車両の左方および右方の音圧を車両の前後方向軸上の音圧よりも高くすることができる。すなわち、車両の走行時に、車両の左方および右方における報知音の音圧を高くし、かつ、車両の前後方向軸上に位置する車室内に漏れる報知音の音圧を低くすることができる。よって、車外に対して効果的に報知音を出力しつつ、搭乗者へ与える不快感を低減できる。
【0019】
例えば、前記第1スピーカおよび前記第2スピーカは、前記第1スピーカのバッフル面が前記車両の左方を向き、前記第2スピーカのバッフル面が前記車両の右方を向き、背中合わせになるように配置されてもよい。
【0020】
これによれば、約300Hzから約12kHz以下の周波数帯域において、車両の左方および右方における報知音の音圧を高くし、かつ、車室内に漏れる報知音の音圧を低くすることができる。
【0021】
例えば、前記第1スピーカは、前記第2スピーカよりも前記車両の左側に配置され、前記第1スピーカおよび前記第2スピーカは、前記第1スピーカのバッフル面が前記車両の左前方を向き、前記第2スピーカのバッフル面が前記車両の右前方を向くように配置されてもよい。
【0022】
これによれば、約300Hzから約3kHz以下の周波数帯域において、車両の左方および右方における報知音の音圧を高くし、かつ、車室内に漏れる報知音の音圧を低くすることができる。
【0023】
例えば、前記第1スピーカは、前記第2スピーカよりも前記車両の左側に配置され、前記第1スピーカおよび前記第2スピーカは、前記第1スピーカのバッフル面が前記車両の右前方を向き、前記第2スピーカのバッフル面が前記車両の左前方を向くように配置されてもよい。
【0024】
これによれば、約1.5kHzから約5kHz以下の周波数帯域において、車両の左方および右方における報知音の音圧を高くし、かつ、車室内に漏れる報知音の音圧を低くすることができる。
【0025】
例えば、前記第1スピーカのバッフル面と前記第2スピーカのバッフル面とのなす角は、略90度であってもよい。
【0026】
例えば、前記第1スピーカおよび前記第2スピーカは、それぞれのバッフル面が共に前記車両の前方または後方を向くように配置されてもよい。
【0027】
これによれば、約300Hzから約3kHz以下の周波数帯域において、車両の左方および右方における報知音の音圧を高くし、かつ、車室内に漏れる報知音の音圧を低くすることができる。
【0028】
例えば、前記車両近接報知システムは、さらに、前記第1スピーカおよび前記第2スピーカを回動させる回動部を備えていてもよい。
【0029】
これによれば、第1スピーカおよび第2スピーカの向きを制御することができる。
【0030】
例えば、前記位相制御部は、前記第1スピーカに入力される音信号の位相と前記第2スピーカに入力される音信号の位相とが逆相になるように、前記少なくとも一方の音信号の位相を制御してもよい。
【0031】
これによれば、第1スピーカおよび第2スピーカから出力される報知音について、音響放射の少ない方向が車室内に向くようなダイポール指向性(八の字の指向性)を実現できる。
【0032】
例えば、前記位相制御部は、前記車両の速度に応じて前記少なくとも一方の音信号の位相を制御してもよい。
【0033】
例えば、北米NHTSAによる法規で規定されているように、車両の停車時には車両の正面において報知音が一定の音圧値以上であることが要求されるが、車両の走行時には車両の正面において報知音が一定の音圧値以上であることが要求されない。このため、車両の速度に応じて例えば車両の停車時には、上記少なくとも一方の信号の位相を変化させないようにする。また、車両の速度に応じて例えば車両の走行時には、上記少なくとも一方の信号の位相を変化させて音響放射の少ない方向が車両の正面および車室内に向くようなダイポール指向性を実現する。これにより、車両の停車時には、車両の正面を含む車両の周囲に十分に報知音を出力でき、車両の走行時には、報知音が一定音圧以上であることを要求されない車両の正面を除いて、車両の周囲に十分に報知音を出力しつつ、搭乗者へ与える報知音による不快感を低減できる。
【0034】
例えば、前記車両の速度が所定の速度以上の場合、前記第1スピーカおよび前記第2スピーカから音が出力されなくてもよい。
【0035】
例えば、車両の速度が一定以上になると、車両から発生するロードノイズ等が大きくなり、報知音を出力しなくても歩行者等が車両の接近に気づきやすくなるため、報知音を出力しなくてもよくなる。したがって、車両の速度が所定の速度以上の場合には、報知音による不快感を搭乗者へ与えないようにすることができる。
【0036】
本開示の一態様に係る車両は、上記の車両近接報知システムを備える。
【0037】
これによれば、車外に対して効果的に報知音を出力しつつ、搭乗者へ与える不快感を低減できる車両を提供できる。
【0038】
本開示の一態様に係る車両近接報知方法は、車両の接近を報知するための車両近接報知方法であって、前記車両の接近を報知する音に対応する音信号であって、前記車両に搭載された1つのスピーカ筺体内に設けられた第1スピーカおよび第2スピーカに入力される音信号を出力し、前記第1スピーカおよび前記第2スピーカから出力される音の前記車両の左方および右方の音圧が前記車両の前後方向軸上の音圧よりも高くなるように、前記第1スピーカに入力される音信号および前記第2スピーカに入力される音信号のうちの少なくとも一方の音信号の位相を制御する。
【0039】
これによれば、車外に対して効果的に報知音を出力しつつ、搭乗者へ与える不快感を低減できる車両近接報知方法を提供できる。
【0040】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0041】
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置および接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。
【0042】
(実施の形態)
実施の形態に係る車両近接報知システムについて図2から図11を用いて説明する。
【0043】
図2は、実施の形態に係る車両近接報知システムにおける、背中合わせになるように配置された第1スピーカ51および第2スピーカ52からなるスピーカシステム50を搭載した車両200の一例を示す図である。
【0044】
車両200は、後述する図3で説明する車両近接報知システム1におけるスピーカシステム50を搭載している。車両200では、第1スピーカ51および第2スピーカ52から出力される報知音を車外にいる歩行者等に向けて発生する。例えば、図2に示される例では、第1スピーカ51は、第2スピーカ52よりも車両200の左側に配置され、第1スピーカ51および第2スピーカ52は、第1スピーカ51のバッフル面51aが車両200の左方を向き、第2スピーカ52のバッフル面52aが車両200の右方を向き、背中合わせになるように配置される。なお、これは一例であり、第1スピーカ51および第2スピーカ52の向きはこれに限定されない。第1スピーカ51および第2スピーカ52は、1つのスピーカ筺体53内に設けられる。スピーカシステム50は、例えば、車両200のボンネット部分におけるナンバープレートの後方に設置される。なお、車両200は、第1スピーカ51および第2スピーカ52の他にも、報知音を出力するスピーカを備えていてもよい。つまり、車両200に報知音を出力する3つ以上のスピーカが搭載されていてもよい。
【0045】
次に、本実施の形態に係る車両近接報知システム100の構成を説明する。
【0046】
図3は、本実施の形態に係る車両近接報知システム100の構成を示すブロック図である。
【0047】
図3に示されるように、車両近接報知システム100は、情報処理部10と、音源20と、位相制御部30と、第1アンプ41と、第2アンプ42と、スピーカシステム50と、回動部60とを備える。
【0048】
車両近接報知システム100は、車両200に搭載された第1スピーカ51および第2スピーカ52を用いて車両200の接近を報知するためのシステムである。車両近接報知システム100は、第1スピーカ51および第2スピーカ52に、車外にいる歩行者等に向けて報知音(例えば警告音)を出力させることで、車両200の接近を報知する。
【0049】
音源20は、車両200の接近を報知する音に対応する音信号(電気信号)であって、第1スピーカ51および第2スピーカ52に入力される音信号を出力する。車両200の接近を報知する音とは、例えば、エンジン音である。この場合、音源20は、疑似エンジン音または電子音を使用してもよい。また、車両200の接近を報知する音は、単純な正弦波信号音等であってもよい。音源20は、例えば、図示しない記憶装置によって実現されてもよい。例えば、車両200の速度が所定の速度以上の場合、音源20から音信号を出力しないようにして、第1スピーカ51および第2スピーカ52から音が出力されなくてもよい。
【0050】
位相制御部30は、第1スピーカ51および第2スピーカ52から出力される音の車両200の左方および右方の音圧が車両200の前後方向軸上の音圧よりも高くなるように、第1スピーカ51に入力される音信号(具体的には第1アンプ41を介して第1スピーカ51に入力される音信号)および第2スピーカ52に入力される音信号(具体的には第2アンプ42を介して第2スピーカ52に入力される音信号)のうちの少なくとも一方の音信号の位相を制御する。位相制御部30は、例えば、位相器であり、第1スピーカ51に入力される音信号および第2スピーカ52に入力される音信号のうちの少なくとも一方の音信号の位相を調整する。例えば、位相制御部30は、第1スピーカ51に入力される音信号の位相と第2スピーカ52に入力される音信号の位相とが逆相になるように、上記少なくとも一方の音信号の位相を制御してもよい。なお、逆相には、位相差が完全に180度となっていない場合も含む意図がある。つまり、第1スピーカ51に入力される音信号の位相と第2スピーカ52に入力される音信号の位相との位相差が180度からある程度ずれている場合にも、第1スピーカ51に入力される音信号が第2スピーカ52に入力される音信号に対して逆相の信号であるという場合がある。また、位相制御部30は、車両200の速度に応じて上記少なくとも一方の音信号の位相を制御してもよい。
【0051】
第1アンプ41は、位相制御部30と第1スピーカ51との間に接続される。第1アンプ41は、音源20から出力される音信号を、所定の増幅度で増幅して第1スピーカ51に出力する。
【0052】
第2アンプ42は、位相制御部30と第2スピーカ52との間に接続される。第2アンプ42は、音源20から出力される信号を、所定の増幅度で増幅して第2スピーカ52に出力する。このときの増幅度は、第1アンプ41の増幅度と同一であってもよいし異なっていてもよい。
【0053】
なお、第1アンプ41および第2アンプ42は、アナログアンプであってもよいし、デジタルアンプであってもよい。
【0054】
第1スピーカ51および第2スピーカ52は、車両200の接近を報知する報知音を、外部に出力する。第1スピーカ51および第2スピーカ52は、電気信号を機械振動に変換する機能を有し、電気信号に基づいた音圧の報知音を出力する。第1スピーカ51および第2スピーカ52は、音源20から出力された音信号に対応する音を出力する。なお、第1スピーカ51に入力される音信号および第2スピーカ52に入力される音信号のうちの少なくとも一方の音信号の位相は位相制御部30によって制御される。また、第1スピーカ51および第2スピーカ52は、1つのスピーカ筺体53内に設けられる(ワンパッケージ化されている)。第1スピーカ51と第2スピーカ52とが1つのスピーカ筺体53内に設けられず、離れて設けられる場合、第1スピーカ51と第2スピーカ52との距離によっては、予期しない場所で各スピーカからの報知音が打ち消しあったり、音圧を強め合ったりすることがある。これに対して、第1スピーカ51と第2スピーカ52とが1つのスピーカ筺体53内に設けられることで、予期しない場所で各スピーカからの報知音が打ち消しあったり、音圧を強め合ったりすることを抑制できる。また、第1スピーカ51と第2スピーカ52とが1つのスピーカ筺体53内に設けられることで、車両200への第1スピーカ51および第2スピーカ52の取り付けが一度で済む等、コストダウンが可能となる。
【0055】
回動部60は、第1スピーカ51および第2スピーカ52を回動(例えば自転)させる。例えば、回動部60は、モータ等によって実現される。
【0056】
情報処理部10は、例えば、マイコン(マイクロコントローラ)により実現される。マイコンは、プログラムが格納されたROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、プログラムを実行するプロセッサ(CPU:Central Processing Unit)等を有する半導体集積回路等である。また、例えば、情報処理部10は、車両200の速度を、例えばECU(Electronic Control Unit)等から取得する機能を有する。例えば、情報処理部10は、プロセッサが上記プログラムを実行することにより、車両200の速度が所定の速度以上の場合に、音源20に音信号を出力させないようにしたり、位相制御部30に上記少なくとも一方の音信号の位相を制御させたり(例えば、車両200の速度に応じて上記少なくとも一方の音信号の位相を制御させたり)、回動部60に第1スピーカ51および第2スピーカ52を回動させたりする。
【0057】
例えば、情報処理部10は、車両200が停車している場合には、位相制御部30に上記少なくとも一方の音信号の位相を制御しないようにして、第1スピーカ51に入力される音信号の位相と、第2スピーカ52に入力される音信号の位相とが同位相となるようにしてもよい。例えば、情報処理部10は、車両200の速度が上昇するにつれて、第1スピーカ51に入力される音信号の位相と、第2スピーカ52に入力される音信号の位相とが逆相に近づくようにしてもよい。そして、例えば、情報処理部10は、車両200の速度が所定の速度(例えば40km/h等)以上となった場合、音源20に音信号を出力させないようにすることで、第1スピーカ51および第2スピーカ52から音が出力されないようにしてもよい。なお、情報処理部10は、車両200の速度が所定の速度以上の場合に、第1アンプ41および第2アンプ42に音信号を増幅させないようにすることで、第1スピーカ51および第2スピーカ52から音が出力されないようにしてもよい。
【0058】
例えば、少なくとも2つのスピーカから出力される報知音のそれぞれの間で位相差を与えることで、少なくとも2つのスピーカから出力される音の指向性を制御することができる。したがって、1つのスピーカ筺体53内に設けられた第1スピーカ51および第2スピーカ52に入力される音信号の位相を制御することで、車両200の左方および右方の音圧を車両の前後方向軸上の音圧よりも高くすることができる。すなわち、車両200の走行時に、車両の左方および右方における報知音の音圧を高くし、かつ、車両200の前後方向軸上に位置する車室内に漏れる報知音の音圧を低くすることができる。よって、車外に対して効果的に報知音を出力しつつ、搭乗者へ与える不快感を低減できる。
【0059】
次に、スピーカシステム50から報知音を出力したときの周囲の音圧の具体例について説明する。
【0060】
図4は、スピーカシステム50と各マイクとの位置関係を示す図である。
【0061】
図4に示されるように、スピーカシステム50の左方に1m離れた位置にマイク301が配置され、スピーカシステム50の右方に1m離れた位置にマイク302が配置され、スピーカシステム50の前方に1m離れた位置にマイク303が配置され、スピーカシステム50の後方に1m離れた位置にマイク304が配置されている。例えば、車両200のボンネット部分にスピーカシステム50が配置されるため、スピーカシステム50の後方のマイク304が位置する場所が車室内に対応する。また、スピーカシステム50の前方のマイク303が位置する場所が車両の前方に対応し、スピーカシステム50の左方のマイク301が位置する場所が車両の左方に対応し、スピーカシステム50の右方のマイク302が位置する場所が車両の右方に対応する。
【0062】
図5は、図2に示されるように、背中合わせになるように配置された第1スピーカ51および第2スピーカ52から出力された音の音圧の周波数特性を示すグラフである。なお、第1スピーカ51に入力される音信号の位相と第2スピーカ52に入力される音信号の位相とは逆相になっている。図5において、実線はマイク301によって収音された音の音圧の周波数特性を示し、破線はマイク302によって収音された音の音圧の周波数特性を示し、一点鎖線はマイク303によって収音された音の音圧の周波数特性を示し、二点鎖線はマイク304によって収音された音の音圧の周波数特性を示す。なお、後述する図7図9および図11についても、各線種とマイクとの関係は同じである。
【0063】
図5に示されるように、第1スピーカ51および第2スピーカ52を背中合わせになるように配置することで、約300Hzから約12kHz以下の周波数帯域において、マイク301および302で収音される音の音圧(すなわち車両200の左方および右方における報知音の音圧)を高くし、かつ、マイク304で収音される音の音圧(すなわち車室内に漏れる報知音の音圧)を低くすることができることがわかる。よって、車外に対して効果的に報知音を出力しつつ、搭乗者へ与える不快感を低減できる。
【0064】
なお、第1スピーカ51および第2スピーカ52は、背中合わせになるように配置されなくてもよい。例えば、図6図8または図10に示されるように配置されてもよい。
【0065】
図6は、実施の形態に係る車両近接報知システム100における、バッフル面51aが車両200の左前方を向く第1スピーカ51およびバッフル面52aが車両200の右前方を向く第2スピーカ52からなるスピーカシステム50を搭載した車両200の一例を示す図である。
【0066】
図6に示されるように、第1スピーカ51は、第2スピーカ52よりも車両200の左側に配置され、第1スピーカ51および第2スピーカ52は、第1スピーカ51のバッフル面51aが車両200の左前方を向き、第2スピーカ52のバッフル面52aが車両200の右前方を向くように配置されてもよい。例えば、第1スピーカ51のバッフル面51aと第2スピーカ52のバッフル面52aとのなす角は、略90度であってもよい。なお、略90度とは、80度から100度であってもよい。
【0067】
図7は、図6に示されるように、バッフル面51aが車両200の左前方を向く第1スピーカ51およびバッフル面52aが車両200の右前方を向く第2スピーカ52から出力された音の音圧の周波数特性を示すグラフである。なお、第1スピーカ51に入力される音信号の位相と第2スピーカ52に入力される音信号の位相とは逆相になっている。
【0068】
図7に示されるように、第1スピーカ51のバッフル面51aが車両200の左前方を向き、第2スピーカ52のバッフル面52aが車両200の右前方を向くように第1スピーカ51および第2スピーカ52を配置することで、約300Hzから約3kHz以下の周波数帯域において、マイク301および302で収音される音の音圧(すなわち車両200の左方および右方における報知音の音圧)を高くし、かつ、マイク304で収音される音の音圧(すなわち車室内に漏れる報知音の音圧)を低くすることができることがわかる。よって、車外に対して効果的に報知音を出力しつつ、搭乗者へ与える不快感を低減できる。
【0069】
図8は、実施の形態に係る車両近接報知システム100における、バッフル面51aが車両200の右前方を向く第1スピーカ51およびバッフル面52aが車両200の左前方を向く第2スピーカ52からなるスピーカシステム50を搭載した車両200の一例を示す図である。
【0070】
図8に示されるように、第1スピーカ51は、第2スピーカ52よりも車両200の左側に配置され、第1スピーカ51および第2スピーカ52は、第1スピーカ51のバッフル面51aが車両200の右前方を向き、第2スピーカ52のバッフル面52aが車両200の左前方を向くように配置されてもよい。例えば、第1スピーカ51のバッフル面51aと第2スピーカ52のバッフル面52aとのなす角は、略90度であってもよい。なお、略90度とは、80度から100度であってもよい。
【0071】
図9は、図8に示されるように、バッフル面51aが車両200の右前方を向く第1スピーカ51およびバッフル面52aが車両200の左前方を向く第2スピーカ52から出力された音の音圧の周波数特性を示すグラフである。なお、第1スピーカ51に入力される音信号の位相と第2スピーカ52に入力される音信号の位相とは逆相になっている。
【0072】
図9に示されるように、第1スピーカ51のバッフル面51aが車両200の右前方を向き、第2スピーカ52のバッフル面52aが車両200の左前方を向くように第1スピーカ51および第2スピーカ52を配置することで、約1.5kHzから約5kHz以下の周波数帯域において、マイク301および302で収音される音の音圧(すなわち車両200の左方および右方における報知音の音圧)を高くし、かつ、マイク304で収音される音の音圧(すなわち車室内に漏れる報知音の音圧)を低くすることができることがわかる。よって、車外に対して効果的に報知音を出力しつつ、搭乗者へ与える不快感を低減できる。
【0073】
図10は、実施の形態に係る車両近接報知システム100における、それぞれのバッフル面51aおよび52aが共に車両200の前方を向くように配置された第1スピーカ51および第2スピーカ52からなるスピーカシステム50を搭載した車両200の一例を示す図である。
【0074】
図10に示されるように、第1スピーカ51および第2スピーカ52は、それぞれのバッフル面51aおよび52aが共に車両200の前方を向くように配置されてもよい。
【0075】
図11は、図10に示されるように、それぞれのバッフル面51aおよび52aが共に車両200の前方を向くように配置された第1スピーカ51および第2スピーカ52から出力された音の音圧の周波数特性を示すグラフである。なお、第1スピーカ51に入力される音信号の位相と第2スピーカ52に入力される音信号の位相とは逆相になっている。
【0076】
図11に示されるように、それぞれのバッフル面51aおよび52aが共に車両200の前方を向くように第1スピーカ51および第2スピーカ52を配置することで、約300Hzから約3kHz以下の周波数帯域において、マイク301および302で収音される音の音圧(すなわち車両200の左方および右方における報知音の音圧)を高くし、かつ、マイク304で収音される音の音圧(すなわち車室内に漏れる報知音の音圧)を低くすることができることがわかる。よって、車外に対して効果的に報知音を出力しつつ、搭乗者へ与える不快感を低減できる。
【0077】
なお、図示していないが、それぞれのバッフル面51aおよび52aが共に車両200の後方を向くように第1スピーカ51および第2スピーカ52を配置してもよい。この場合、図11において、実線はマイク301によって収音された音の音圧の周波数特性を示し、破線はマイク302によって収音された音の音圧の周波数特性を示し、一点鎖線はマイク304によって収音された音の音圧の周波数特性を示し、二点鎖線はマイク303によって収音された音の音圧の周波数特性を示す。すなわち、それぞれのバッフル面51aおよび52aが共に車両200の後方を向くように第1スピーカ51および第2スピーカ52を配置することで、約300Hzから約3kHz以下の周波数帯域において、マイク301および302で収音される音の音圧(すなわち車両200の左方および右方における報知音の音圧)を高くし、かつ、マイク303で収音される音の音圧(すなわち車室内に漏れる報知音の音圧)を低くすることができる。よって、車外に対して効果的に報知音を出力しつつ、搭乗者へ与える不快感を低減できる。
【0078】
(その他の実施の形態)
以上、一つまたは複数の態様に係る車両近接報知システム100および車両近接報知システム100を搭載した車両200について説明したが、本開示は、この実施の形態に限定されるものではない。本開示の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものや、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本開示の範囲内に含まれてもよい。
【0079】
例えば、上記実施の形態では、スピーカシステム50が車両200のボンネット部分におけるナンバープレートの後方に設置される例について説明したが、これに限らない。例えば、スピーカシステム50は、車両の後方のナンバープレート付近に設置されてもよい。
【0080】
例えば、上記実施の形態では、車両近接報知システム100が、回動部60を備える例について説明したが、回動部60を備えていなくてもよい。この場合、手動で第1スピーカ51および第2スピーカ52の向きが変えられてもよい。
【0081】
なお、本開示は、車両近接報知システム100として実現できるだけでなく、車両近接報知システム100を構成する各構成要素が行うステップ(処理)を含む車両近接報知方法として実現できる。
【0082】
図12は、その他の実施の形態に係る車両近接報知方法の一例を示すフローチャートである。
【0083】
車両近接報知方法は、車両の接近を報知するための車両近接報知方法である。車両近接報知方法は、車両の接近を報知する音に対応する音信号であって、車両に搭載された1つのスピーカ筺体内に設けられた第1スピーカおよび第2スピーカに入力される音信号を出力し(ステップS11)、第1スピーカおよび第2スピーカから出力される音の車両の左方および右方の音圧が車両の前後方向軸上の音圧よりも高くなるように、第1スピーカに入力される音信号および第2スピーカに入力される音信号のうちの少なくとも一方の音信号の位相を制御する(ステップS12)処理を含む。
【0084】
例えば、車両近接報知方法におけるステップは、コンピュータ(コンピュータシステム)によって実行されてもよい。そして、本開示は、車両近接報知方法に含まれるステップを、コンピュータに実行させるためのプログラムとして実現できる。
【0085】
さらに、本開示は、そのプログラムを記録したCD-ROM等である非一時的なコンピュータ読み取り可能な記録媒体として実現できる。
【0086】
例えば、本開示が、プログラム(ソフトウェア)で実現される場合には、コンピュータのCPU、メモリおよび入出力回路等のハードウェア資源を利用してプログラムが実行されることによって、各ステップが実行される。つまり、CPUがデータをメモリまたは入出力回路等から取得して演算したり、演算結果をメモリまたは入出力回路等に出力したりすることによって、各ステップが実行される。
【0087】
また、上記実施の形態の車両近接報知システム100に含まれる各構成要素は、専用または汎用の回路として実現されてもよい。
【0088】
また、上記実施の形態の車両近接報知システム100に含まれる各構成要素は、集積回路(IC:Integrated Circuit)であるLSI(Large Scale Integration)として実現されてもよい。
【0089】
また、集積回路はLSIに限られず、専用回路または汎用プロセッサで実現されてもよい。プログラム可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)、または、LSI内部の回路セルの接続および設定が再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサが、利用されてもよい。
【0090】
さらに、半導体技術の進歩または派生する別技術によりLSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて、車両近接報知システム100に含まれる各構成要素の集積回路化が行われてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本開示は、電気自動車およびハイブリッド自動車等の低騒音車等に搭載される車両近接報知システムに適用できる。
【符号の説明】
【0092】
10 情報処理部
20 音源
30 位相制御部
41 第1アンプ
42 第2アンプ
50 スピーカシステム
51 第1スピーカ
51a、52a バッフル面
52 第2スピーカ
53 スピーカ筺体
60 回動部
100 車両近接報知システム
200 車両
301、302、303、304 マイク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12