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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-14
(45)【発行日】2024-06-24
(54)【発明の名称】支持装置
(51)【国際特許分類】
   F24F 1/0317 20190101AFI20240617BHJP
   E04B 9/18 20060101ALI20240617BHJP
   E04B 9/00 20060101ALI20240617BHJP
   F24F 13/32 20060101ALI20240617BHJP
   F16F 15/08 20060101ALI20240617BHJP
【FI】
F24F1/0317
E04B9/18 G
E04B9/00 K
F24F13/32
F16F15/08 M
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020068091
(22)【出願日】2020-04-06
(65)【公開番号】P2021165594
(43)【公開日】2021-10-14
【審査請求日】2022-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】398034319
【氏名又は名称】エヌパット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117651
【弁理士】
【氏名又は名称】高垣 泰志
(72)【発明者】
【氏名】生野 真
(72)【発明者】
【氏名】石川 将司
【審査官】奈須 リサ
(56)【参考文献】
【文献】実開昭55-046118(JP,U)
【文献】特開2017-172746(JP,A)
【文献】特開2020-012344(JP,A)
【文献】特開2019-207095(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 1/0047、1/0317、13/32
E04B 9/00、9/18
F16F 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気調和機本体の前後方向の端部に吹出ユニットと吸気ユニットとが接続され、前記空気調和機本体の平行な左右両側面に第1の取付片が設けられ、前記吹出ユニットの前面側及び前記吸気ユニットの後面側に第2の取付片が設けられた空気調和機を、天井空間に吊り下げた状態で支持する支持装置であって、
前記空気調和機本体の上面側を左右方向に沿って互いに平行に配置され、両端部が前記第1の取付片の上方まで延設される複数の第1フレーム部材と、前記第1フレーム部材に接合するように前記第1フレーム部材の上側に配置されると共に前記第1フレーム部材に対して直交する状態で前後方向に配置され、両端部が前記第2の取付片の上方まで延設される複数の第2フレーム部材と、を井桁状に組み付けて構成されるフレーム枠体と、
前記第1の取付片及び前記第2の取付片のそれぞれに取り付けられる防振部材と、
上端部が前記第1フレーム部材の端部に接続され、前記第1フレーム部材から垂下する下端部が前記防振部材に接続され、前記防振部材を介して前記第1の取付片を支持する第1の支持ボルトと、
上端部が前記第2フレーム部材の端部に接続され、前記第2フレーム部材から垂下する下端部が前記防振部材に接続され、前記防振部材を介して前記第2の取付片を支持する第2の支持ボルトと、
下端部が前記第2フレーム部材に接続され、上端部が天井構造に接続される吊り部材と、
を備えることを特徴とする支持装置。
【請求項2】
前記第1フレーム部材及び前記第2フレーム部材のそれぞれは、互いに直交する縦板部と横板部とを有するL型のアングル鋼材によって構成され、
前記フレーム枠体は、前記第1フレーム部材の横板部と前記第2フレーム部材の横板部とを互いに接合させた状態で井桁状に組み付けられることを特徴とする請求項1に記載の支持装置。
【請求項3】
前記吊り部材の上端部には、前記天井構造に取り付けられたボルトに固定するための天井取付金具が予め取り付けられることを特徴とする請求項1又は2に記載の支持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和機などの天井吊り下げ物を天井空間に吊り下げた状態で支持する支持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、隠蔽式空気調和機などの天井吊り下げ物を天井空間に吊り下げた状態で支持する支持装置として、上段フレーム材と下段フレーム材とを井桁状に組み付けて構成されるフレーム枠体を備えるものが知られている(例えば特許文献1)。この従来の支持装置は、フレーム枠体から垂下する支持部材によって、空気調和機本体と、空気調和機本体に接続される吹出ユニットとを支持する構成である。
【0003】
この種の支持装置は、例えば大規模地震発生時においても、天井吊り下げ物が大きく振動しないように耐震性能を備えたものであることが望まれる。上述した従来の支持装置は、フレーム枠体から垂下する支持部材として短尺のボルト部材を用いており、フレーム枠体の下方近傍位置で天井吊り下げ物を支持している。ボルト部材が短尺であるため、支持装置は天井吊り下げ物と一体物とみなすことができる。このような構成では、大規模地震が発生した場合であっても、ボルト部材の振れ幅が小さく、フレーム枠体と天井吊り下げ物とが一体となって振動するため、フレーム枠体の振動を抑制することができれば、天井吊り下げ物の振動も抑制することができる。
【0004】
その一方、天井空間に設置される空気調和機は、内部にファンやモーターなどの機械的動作機構を備えているため、運転稼働中に振動を発生させる。この振動は、地震発生時の振動に比べると極めて小さいが、フレーム枠体を天井構造に接続する吊りボルトに伝わると、上のフロアに振動が伝播し、騒音問題を発生させる要因となる。これを未然に防止するため、空気調和機などの天井吊り下げ物を天井空間に設置する際には、吊りボルトに対して天井吊り下げ物の振動が伝わらない構造とすることが求められる。上述した従来の支持装置においても、吊りボルトに対してファンなどの振動が吊りボルトに伝わることを低減するため、フレーム枠体の上部に防振ハンガーが取り付けられ、その防振ハンガーに吊りボルトが接続される構造が採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-207095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の支持装置は、吊りボルトとフレーム枠体との間に防振ハンガーを取り付けているため、防振ハンガーによって耐震性能が低下するという問題がある。つまり、防振ハンガーは、天井吊り下物の運転稼働中に発生する僅かな振動をスプリングバネなどで構成される弾性部材の弾性変形によって吸収するができるものの、大規模地震発生時のように天井構造が激しく振動し、それによって吊りボルトが大きく振れる場合には弾性部材の弾性変形だけでは振動を吸収しきれない。その結果、大規模地震発生時には、吊りボルトの振動が防振ハンガーによって増幅され、フレーム枠体と天井吊り下物の一体物が大きく振動することになる。
【0007】
特に、従来の支持装置のように、防振ハンガーを吊りボルトとフレーム枠体との間に介在させている場合には、大規模地震発生時に作用する大きな振動によって防振ハンガーが破壊されてしまうことも起こり得る。そのような事態が発生すると、地震が収まった後に天井吊り下げ物を再稼働させることができなくなるという問題もある。
【0008】
そこで本発明は、上記従来の問題点を解決するためになされたものであり、従来の支持装置よりも耐震性能を向上させた支持装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、第1に、本発明は、空気調和機本体の前後方向の端部に吹出ユニットと吸気ユニットとが接続され、前記空気調和機本体の平行な左右両側面に第1の取付片が設けられ、前記吹出ユニットの前面側及び前記吸気ユニットの後面側に第2の取付片が設けられた空気調和機を、天井空間に吊り下げた状態で支持する支持装置であって、前記空気調和機本体の上面側を左右方向に沿って互いに平行に配置され、両端部が前記第1の取付片の上方まで延設される複数の第1フレーム部材と、前記第1フレーム部材に接合するように前記第1フレーム部材の上側に配置されると共に前記第1フレーム部材に対して直交する状態で前後方向に配置され、両端部が前記第2の取付片の上方まで延設される複数の第2フレーム部材と、を井桁状に組み付けて構成されるフレーム枠体と、前記第1の取付片及び前記第2の取付片のそれぞれに取り付けられる防振部材と、上端部が前記第1フレーム部材の端部に接続され、前記第1フレーム部材から垂下する下端部が前記防振部材に接続され、前記防振部材を介して前記第1の取付片を支持する第1の支持ボルトと、上端部が前記第2フレーム部材の端部に接続され、前記第2フレーム部材から垂下する下端部が前記防振部材に接続され、前記防振部材を介して前記第2の取付片を支持する第2の支持ボルトと、下端部が前記第2フレーム部材に接続され、上端部が天井構造に接続される吊り部材と、を備えることを特徴とする構成である。
【0010】
第2に、本発明は、上記第1の構成を有する支持装置において、前記第1フレーム部材及び前記第2フレーム部材のそれぞれは、互いに直交する縦板部と横板部とを有するL型のアングル鋼材によって構成され、前記フレーム枠体は、前記第1フレーム部材の横板部と前記第2フレーム部材の横板部とを互いに接合させた状態で井桁状に組み付けられることを特徴とする構成である。
【0013】
に、本発明は、上記第1又は第2の構成を有する支持装置において、前記吊り部材の上端部には、前記天井構造に取り付けられたボルトに固定するための天井取付金具が予め取り付けられることを特徴とする構成である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、従来の支持装置よりも耐震性能を向上させた支持装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】支持装置を用いた天井吊り下げ物の支持構造を示す斜視図である。
図2】支持装置を用いた天井吊り下げ物の支持構造を示す側面図である。
図3】天井吊り下げ物に対する支持装置の取付態様の一例を示す斜視図である。
図4】支持装置の各構成部材を分解して示す斜視図である。
図5】吊りボルトの補強部材としてブレースボルトを取り付けた支持装置を示す斜視図である。
図6】吊りボルトにブレースボルトを取り付けた支持装置の側面図である。
図7】吊りボルトの上端部に取り付けられる天井取付金具の一構成例を示す図である。
図8】昇降装置を用いた支持装置の施行例を示す側面図である。
図9】デッキプレートが設けられた天井構造に支持装置を取り付けた状態を示す図である。
図10】第1フレーム部材に吊りボルトが取り付けた支持装置を示す斜視図である。
図11】従来の支持装置を用いて振動実験を行った結果を示す図である。
図12】本実施形態の支持装置を用いて振動実験を行った結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。尚、以下において参照する各図面では互いに共通する部材に同一符号を付しており、それらについての重複する説明は省略する。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態である支持装置1を用いた天井吊り下げ物100の支持構造を示す斜視図であり、図2は、その側面図である。また、図3は、天井吊り下げ物100に対する支持装置1の取付態様の一例を示す斜視図であり、図4は、支持装置1の各構成部材を分解して示す斜視図である。これらの図に示すXYZ三次元座標系は、XY平面を水平面とし、Z方向を鉛直方向とする座標系であり、各図において互いに共通する座標系である。
【0018】
本実施形態の支持装置1は、天井吊り下げ物100を天井空間に吊り下げた状態で支持する装置である。本実施形態では、天井吊り下げ物100として、隠蔽式の空気調和機110を例示する。隠蔽式の空気調和機110は、天井スラブやデッキプレートなどの天井構造と天井パネルとの間の天井空間に隠蔽された状態で設置される空気調和機である。尚、空気調和機110の左右方向とは、XYZ三次元座標系におけるX方向であり、前後方向とは、同座標系におけるY方向である。
【0019】
空気調和機110は、平面視略矩形状の箱形ユニットであり、空気調和機本体120と、吹出ユニット130と、吸気ユニット140とが前後方向(Y方向)に沿って直列に一体的に組み付けられる装置である。空気調和機本体120は、内部に熱交換機やファンなどの機械的動作機構を備えており、他のユニットに比べると重量が大きい。空気調和機本体120の吸気側(後方側)には、吸気ユニット140が接続される。また、空気調和機本体120の吹出側(前方側)には、吹出ユニット130が接続される。つまり、この空気調和機110は、後方側に設けられている吸気ユニット140から空気を吸い込み、空気調和機本体120の内部の熱交換機で熱交換を行ってから前方側に設けられている吹出ユニット130から熱交換された空気を吹き出すように構成される。ただし、空気調和機本体120の吸気側には、吸気ユニット140が接続されないこともある。その場合、空気調和機110は、空気調和機本体120の吸気側に設けられるフィルタ部から天井空間の空気を吸い込み、空気調和機本体120の内部の熱交換機で熱交換を行ってから前方側に設けられている吹出ユニット130から熱交換された空気を吹き出す。尚、吹出ユニット130に設けられる複数の吹出口には、図示を省略する送風ダクトなどが接続され、熱交換された空気を室内へ導くように配管される。
【0020】
空気調和機本体120の左右方向(X方向)の両側面には、吊りボルトなどのボルト部材を接続するための取付片121が設けられている。取付片121は、図3に示すように、空気調和機本体120の左右両側面から更に側方に突出する平板部を備えて構成され、その平板部に吊りボルトなどのボルト部材を挿通する挿通部121aが設けられている。この挿通部121aは、例えばU字状の切欠として形成されるものであっても良いし、丸孔又は長孔として形成されるものであっても良い。空気調和機本体120は、左右両側面それぞれの上面近傍2箇所の位置に取付片121が設けられている。空気調和機本体120の左側面の2箇所に設けられる取付片121と、右側面の2箇所に設けられる取付片121とは、空気調和機本体120の前後方向においてそれぞれ同じ位置に設けられる。そのため、空気調和機本体120の左右両側面に設けられる4つの取付片121は、平面視において長方形(正方形を含む)の頂点に設けられる。
【0021】
また、吹出ユニット130の前面側には、空気調和機本体120の側面と同様に、上面近傍2箇所の位置に取付片131が設けられている。これら取付片131は、例えば吹出ユニット130の前面の左右両端近傍位置に設けられる。これら取付片131にも、取付片121と同様に、ボルト部材を挿通するための挿通部131aが設けられている。
【0022】
更に、吸気ユニット140の後面側にも、空気調和機本体120の側面と同様に、上面近傍2箇所の位置に取付片141が設けられている。これら取付片141は、例えば吸気ユニット140の後面の左右両端近傍位置に設けられる。これら取付片141にも、取付片121,131と同様に、ボルト部材を挿通するための挿通部141aが設けられている。
【0023】
本実施形態の支持装置1は、上記のような概略箱形形状を成す空気調和機110の取付片121,131,141を支持するように構成される。以下、支持装置1の詳細について説明する。
【0024】
図1に示すように、支持装置1は、フレーム枠体2と、支持ボルト30,31,32と、防振部材40と、吊りボルト50と、天井取付金具60とを備えて構成される。ここで、支持ボルト30は空気調和機本体120を支持するボルトであり、支持ボルト31は吹出ユニット130を支持するボルトであり、支持ボルト32は吸気ユニット140を支持するボルトである。これら支持ボルト30,31,32は、いずれも同一径のボルト部材によって構成される。尚、本実施形態では、吊りボルト50の直径も、支持ボルト30,31,32の直径と同じである。
【0025】
フレーム枠体2は、空気調和機110の左右方向に沿って互いに平行に配置される複数の第1フレーム部材10,10と、第1フレーム部材10,10に対して直交する状態に配置される複数の第2フレーム部材20,20と、を井桁状に組み付けて構成される。第1フレーム部材10は、例えば断面L型のアングル鋼材(山形鋼)によって構成され、互いに直角を成す縦板部11と横板部12とを有している。また、第2フレーム部材20も、例えば断面L型のアングル鋼材によって構成され、互いに直角を成す縦板部21と横板部22とを有している。第1フレーム部材10は、横板部12が縦板部11の上端に位置し、空気調和機110の上面と平行な略水平となる状態に配置される。第2フレーム部材20は、横板部22が縦板部21の下端に位置し、空気調和機110の上面と平行な略水平となる状態に配置される。また、第1フレーム部材10は、空気調和機110の上面から所定高さの位置で空気調和機110を左右方向に横断するように配置され、第2フレーム部材20は、その第1フレーム部材10の横板部12に対して横板部22を接合させた状態で空気調和機110の上方を前後方向に縦断するように配置される。
【0026】
第1フレーム部材10は、空気調和機本体120の左右両側面に設けられている取付片121の上方位置に配置される。第1フレーム部材10は、空気調和機本体120の左右方向の長さよりも長尺であり、その両端が取付片121の上方位置まで延設される。一方、第2フレーム部材20は、図1に示すように、空気調和機本体120の左右両側面のそれぞれに設けられている2つの取付片121の上方を縦断するように配置される。第2フレーム部材20は、空気調和機110の前後方向(Y方向)の長さよりも長尺であり、その両端が吹出ユニット130及び吸気ユニット140のそれぞれに設けられている取付片131,141の上方位置まで延設される。
【0027】
図4に示すように、第1フレーム部材10の横板部12の両端部には、支持ボルト30を挿通するための孔13が形成されている。この孔13は、空気調和機本体120の取付片121に設けられている挿通部121aの直上に位置するように形成される。孔13は、工場出荷時に第1フレーム部材10に対して予め形成しておいても良いし、空気調和機本体120のサイズに適合するように施工現場で形成するようにしても良い。例えば、工場出荷時に孔13を予め形成しておく場合には、第1フレーム部材10の長手方向に沿って複数の孔13を所定間隔で形成しておくことにより、空気調和機本体120のサイズに適合する孔13を選択して支持ボルト30を装着することができる。尚、孔13は、丸孔に限られるものではなく、第1フレーム部材10の長手方向に沿って形成される長孔であっても良い。孔13を長孔とすることにより、支持ボルト30を取り付ける位置を調整しやすいという利点がある。
【0028】
また、図4に示すように、第2フレーム部材20の横板部22には、長手方向の複数箇所に、支持ボルト30,31,32と吊りボルト50とを挿通するための孔23が形成されている。例えば、支持ボルト31,32を挿通するための孔23は、第2フレーム部材20の両端部において取付片131,141に設けられている挿通部131a,141aの直上の位置に設けられる。また支持ボルト30を挿通するための孔23は、第2フレーム部材20の中央において取付片121に設けられている挿通部121aの直上の位置に設けられる。更に吊りボルト50を挿通する孔23は、第2フレーム部材20の長手方向において天井構造に取り付ける位置に応じて吊りボルト50を取り付ける位置に形成される。このような孔23は、工場出荷時に第2フレーム部材20に対して予め形成しておいても良いし、空気調和機110のサイズに適合するように施工現場で形成するようにしても良い。例えば、工場出荷時に孔23を予め形成しておく場合には、第2フレーム部材20の長手方向に沿って複数の孔23を所定間隔で形成しておくことにより、空気調和機110のサイズに適合する孔23を選択して支持ボルト30,31,32を装着することができると共に、吊りボルト50を装着する孔23も複数の孔23の中から選択することができる。尚、孔23についても、丸孔に限られるものではなく、第2フレーム部材20の長手方向に沿って形成される長孔であっても良い。孔23を長孔とすることにより、支持ボルト30,31,32や吊りボルト50を取り付ける位置を調整しやすいという利点がある。
【0029】
尚、第2フレーム部材20に設けられる孔23は、電動の穿孔具を用いれば、施工現場でも簡単に形成することが可能であるため、必ずしも工場出荷時に孔23を予め形成しておく必要はない。この点は、第1フレーム部材10に形成される孔13についても同様である。
【0030】
フレーム枠体2は、第1フレーム部材10と第2フレーム部材20とが交差する位置に支持ボルト30を挿通し、第2フレーム部材20の上面側で支持ボルト30に装着したナット33と、第1フレーム部材10の下面側で支持ボルト30に装着したナット34との2つのナット33,34で第1フレーム部材10と第2フレーム部材20とを挟み込んで締着することにより、第1フレーム部材10と第2フレーム部材20とを互いに直交させた状態に固定する。このような支持ボルト30が第1フレーム部材10と第2フレーム部材20との4つの交点に配置されることにより、フレーム枠体2は、第1フレーム部材10と第2フレーム部材20とを井桁状に組み付けた枠体として形成される。また、本実施形態のフレーム枠体2では、第1フレーム部材10と第2フレーム部材20の交点に配置される4本の支持ボルト30の下部が、フレーム枠体2から更に下方に延設され、空気調和機本体120の取付片121に接続され、空気調和機本体120を支持するように構成される。
【0031】
また、第2フレーム部材20の両端部に設けられた孔23に挿通される支持ボルト31,32は、2つのナット33,34で第2フレーム部材20の横板部22を挟み込むことによって第2フレーム部材20に固定される。これら支持ボルト31,32は、フレーム枠体2から更に下方に延設され、吹出ユニット130及び吸気ユニット140のそれぞれの取付片131,141に接続され、空気調和機110の前後方向両端部を支持するように構成される。
【0032】
更に吊りボルト50は、その下部が第2フレーム部材20に設けられた孔23に挿通され、2つのナット36,37で第2フレーム部材20の横板部22を挟み込むことによって第2フレーム部材20に固定される。吊りボルト50は、フレーム枠体2から更に上方に延設され、その上端部に天井取付金具60が取り付けられる。
【0033】
支持装置1は、空気調和機110の取付片121,131,141に取り付けられる防振部材40を備えている。防振部材40は、例えばゴムなどの弾性材料で形成された円柱状若しくは円錐状の部材であり、中心に支持ボルト30,31,32を挿通する孔が貫通形成されている。この防振部材40は、取付片121,131,141の下面側に配置される。そして支持ボルト30,31,32の下端部は、取付片121,131,141の下面側に配置された防振部材40の孔に挿通され、先端にナット35が装着される。つまり、支持ボルト30,31,32は、フレーム枠体2から垂下する下端部が取付片121,131,141の下面側に取り付けられた防振部材40に接続され、その防振部材40を介して取付片121,131,141を支持するように装着される。
【0034】
支持装置1は、図1及び図2に示すように、空気調和機110を吊り下げた状態に支持する。支持ボルト30,31,32は、取付片121,131,141に対して直接接続されるのではなく、図2に示すように、防振部材40を介して取付片121,131,141に対して間接的に接続されている。そのため、空気調和機110の稼働中に空気調和機本体120が振動すると、防振部材40は、その振動を吸収し、支持ボルト30,31,32に振動が伝わることを抑制することができる。つまり、本実施形態の支持装置1は、空気調和機110の運転稼働中に発生する振動が支持装置1のフレーム枠体2に伝わらない構造である。
【0035】
フレーム枠体2に取り付けられる吊りボルト50は、天井スラブやデッキプレートなどの天井構造を基準に、空気調和機110を設置する高さ位置に応じた長さのボルト部材で構成される。吊りボルト50の長さが所定長さ(例えば25cm)以下であれば、大規模地震発生時における吊りボルト50の振れ幅はそれ程大きくない。そのため、吊りボルト50の長さが所定長さ以下であれば、吊りボルト50に対して補強部材を設ける必要がない。
【0036】
これに対し、吊りボルト50の長さが所定長さを超える場合には、大規模地震発生時における吊りボルト50の振れ幅が大きくなるため、吊りボルト50に対して補強部材を設けることが必要である。図5は、吊りボルト50の補強部材としてブレースボルト57を取り付けた支持装置1を示す斜視図である。また、図6は、吊りボルト50にブレースボルト57を取り付けた支持装置1の側面図である。ブレースボルト57は、2本の吊りボルト50,50間に、所定角度範囲(例えば30゜~60゜の範囲)内で斜め方向に配設される斜め補強部材である。ブレースボルト57の一端は、一方の吊りボルト50の上端近傍位置に取り付けられたブレース連結金具55に接続され、他端は、他方の吊りボルト50の下端近傍位置に取り付けられたブレース連結金具55に接続される。2本の吊りボルト50,50間には、2本のブレースボルト57が互いに交差するように配置される。図5に示すように、4本の吊りボルト50には合計8本のブレースボルト57が接続され、4本の吊りボルト50の上端近傍位置及び下端近傍位置が8本のブレースボルト57によって固定される。そのため、吊りボルト50が所定長さを超える場合であっても、大規模地震の発生時に吊りボルト50が大きく振れることを抑制でき、支持装置1の耐震強度を高めることができる。
【0037】
次に、吊りボルト50の上端部に取り付けられる天井取付金具60について説明する。図7は、吊りボルト50の上端部に取り付けられる天井取付金具60の一構成例を示す図である。図7に示すように、天井取付金具60は、吊りボルト50の上端部に装着される金属製部材であり、概略コ字状の形態を有している。すなわち、天井取付金具60は、平板部61と、平板部61の両側において互いに平行な状態で立設する一対の側板部62とを有する。例えば、平板部61は長方形状に形成される。また、平板部61には、円形状の第1の孔64と、その第1の孔64に隣接し、平板部61の長手方向に沿って形成される長孔状の第2の孔65とが形成される。第1の孔64は、例えば吊りボルト50の上端部を挿通する孔であり、吊りボルト50の外径よりも若干大きい内径の孔である。第2の孔65は、天井構造に取り付けられるアンカーボルトやインサートに装着されるボルトなどのボルト部材を挿通するための孔であり、それらボルト部材の直径よりも若干大きい内幅の長孔である。
【0038】
尚、上記とは反対に、第1の孔64に対して天井構造に取り付けられるアンカーボルトやインサートに装着されるボルトなどを挿通し、第2の孔65に対して吊りボルト50の上端部を挿通するようにしても良い。また、第1の孔64と第2の孔65は、必ずしも区分けした状態に形成する必要はないため、第1の孔64と第2の孔65とを連通させた長孔状の1つの取付孔を形成し、その1つの取付孔に対し、天井構造に取り付けられるボルト部材と吊りボルト50との双方を挿通するようにしても良い。
【0039】
一対の側板部62は、平板部61の長手方向において中央部よりも両端部の高さが高くなっており、この両端部が天井スラブやデッキプレートなどの天井構造に対して当接する接合部63として形成される。側板部62の長手方向中央部が両端部の接合部63よりも低くなることにより、接合部63が天井構造に当接した状態であっても高さの低い中央部を窓として天井取付金具60の内側の状態を目視で確認することが可能であるという利点がある。また、デッキプレートが山部と谷部とを有する波形形状であり、且つ、山部の中央にインサート装着用の溝部が形成されている場合、側板部62の中央に高さの低い部分を設けておくことで、天井取付金具60をデッキプレートの突起部に干渉させることなく、接合部63をデッキプレートの下面に当接させた状態に設置することができるという利点もある。
【0040】
このような天井取付金具60は、ロングナット68とナット69とを用いて吊りボルト50の上端部に取り付けられる。すなわち、吊りボルト50の上端部にまずロングナット68を装着し、ロングナット68の上端から吊りボルト50の先端を突出させた状態とし、その突出した先端を、天井取付金具60の第1の孔64に挿通してナット69を装着する。これにより、天井取付金具60が吊りボルト50の上端部に仮止めされた状態となる。ここで、一対の側板部62に設けられる接合部63の高さHは、少なくともナット69の高さ寸法以上であれば良い。ただし、天井取付金具60がインサートに装着されるボルトに取り付けられることを想定すれば、接合部63の高さHは、天井構造から下方に突出した状態となるインサートの高さ寸法よりも高くなるように予め設計しておくことが好ましい。
【0041】
ロングナット68は、軸方向(鉛直方向)に所定長さを有しており、吊りボルト50の雄螺子と螺合する雌螺子を有している。天井取付金具60は、ロングナット68が吊りボルト50に取り付けられた状態で平板部61の下面がロングナット56の上面に支持される。天井取付金具60において吊りボルト50が挿通される第1の孔64は吊りボルト50の外径よりも若干大きいため、天井取付金具60は、第1の孔64に対して吊りボルト50が挿通された状態になると、吊りボルト50の軸回りに回動可能な状態となる。そして天井取付金具60が吊りボルト50から抜け落ちてしまうことを防止するために、吊りボルト50の先端にはナット69が取り付けられる。尚、ナット69は、吊りボルト50の先端から抜け落ちないようにするための緩み止め機能や抜け止め機能を有するものを用いることが好ましい。
【0042】
上記のように天井取付金具60は、吊りボルト50の上端部に対し、ロングナット68とナット69とで平板部61が挟み込まれることによって取り付けられる。ロングナット68が天井取付金具60の下面に対してきつく締着されていない状態のとき、上述したように天井取付金具60は、吊りボルト50の軸回りに回動可能である。つまり、天井取付金具60は仮止め状態のとき、吊りボルト50の軸周りに回動する。これに対し、ロングナット68が天井取付金具60の下面に対してきつく締着された状態になると、天井取付金具60はロングナット68とナット69とに挟まれた状態で固定されるため、吊りボルト50の軸回りに回動しない状態となる。
【0043】
この支持装置1は、4本の吊りボルト7の上端部に、上記のような天井取付金具60が予め取り付けられることにより、空気調和機110に対する組み付け作業を床面作業として行うことができるという利点がある。上記のように構成される支持装置1は、各構成部材を分解した状態で施行現場に搬入可能であり、天井構造に設置する高所作業を行う前に予め床面上で空気調和機110に対する組み付け作業を行うことができる。すなわち、空気調和機110に対して支持装置1を組み付ける作業は、床面上に空気調和機110を設置した状態で行うことが可能であるため、作業者にとって作業しやすく、効率的に支持装置1を組み付けることができる。
【0044】
空気調和機110に支持装置1が組み付けられると、空気調和機110は、図8に示すように、昇降装置250に載置される。そして昇降装置250が矢印F1で示すように上昇駆動されることにより、支持装置1が組み付けられた空気調和機110が天井スラブなどの天井構造200の近傍位置まで持ち上げられる。天井構造200には、予めアンカーボルトなのボルト部材210が取り付けられている。作業者は、天井構造200から垂下するボルト部材210の位置と、支持装置1の上端に装着される天井取付金具60の位置とが合致するように昇降装置250を床面上で位置合わせし、昇降装置250を上昇駆動する。ただし、天井取付金具60は、吊りボルト50の軸周りに回動可能であり、ボルト部材210の位置が多少ずれていても天井取付金具60の第2の孔65にボルト部材210を取り付けることが可能であるため、作業者は、ボルト部材210の位置と、天井取付金具60の位置とを厳密に位置合わせする必要はない。
【0045】
そして支持装置1の天井取付金具60の第2の孔65にボルト部材210を挿入し、ボルト部材210の先端にナットを装着して締着することにより、天井取付金具60が支持装置1及び空気調和機110を支持した状態で天井構造200に取り付けられる。その後、天井取付金具60の下部に装着されているロングナット68が天井取付金具60の下面に対して締着されることにより、天井取付金具60と吊りボルト50とが相互に固定され、支持装置1は、空気調和機110を支持した状態で天井構造200に設置される。その後、昇降装置250を下降させれば、天井空間に対する空気調和機110の設置が完了する。
【0046】
図9は、デッキプレート201が設けられた天井構造200に支持装置1を取り付けた状態を示す図である。デッキプレート201は、山部202と谷部203とが所定間隔で形成された波形形状を有している。このようなデッキプレート201に支持装置1を取り付ける場合、吊りボルト50は、デッキプレート201の山部202に取り付けることが必要である。本実施形態の支持装置1は、第2フレーム部材20に対する吊りボルト50の取り付け位置を第2フレーム部材20の長手方向(Y方向)に沿って調整可能である。すなわち、第2フレーム部材20の横板部22に形成する孔23の位置を調整することにより、吊りボルト50の取り付け位置を第2フレーム部材20の長手方向に調整できる。そのため、空気調和機110を設計上予め定められた位置に設置したとき、空気調和機本体120の側面に設けられている取付片121の上方位置にデッキプレート201の山部202が存在していない場合であっても、第2フレーム部材20に対して吊りボルト50を取り付ける際に、デッキプレート201の山部202の下方位置に吊りボルト50を予め取り付けておくことにより、図9に示すように吊りボルト50の上端部をデッキプレート201の山部202に設けられたボルト部材210に対して固定することができる。それ故、作業者にとっては、高所作業が軽減され、作業効率に優れているという利点がある。
【0047】
図9では、デッキプレート201の山部202と谷部203がY方向に沿って連続している場合を例示している。一方、デッキプレート201の山部202と谷部203が空気調和機110のX方向に沿って連続していることもある。そのような場合、支持装置1は、吊りボルト50は、フレーム枠体2の第1フレーム部材10に対して吊りボルト50を取り付けるようにすれば良い。
【0048】
図10は、第1フレーム部材10に吊りボルト50が取り付けた支持装置1を示す斜視図である。図10に示す支持装置1は、吊りボルト50が第2フレーム部材20ではなく、第1フレーム部材10に取り付けられている。すなわち、第1フレーム部材10の横板部12には、支持ボルト30を挿通する孔13に加えて、吊りボルト50を挿通する孔13も形成され、その孔13に対して吊りボルト50の下端部が固定される。吊りボルト50を固定するための孔13は、第1フレーム部材10の長手方向(X方向)に沿って任意の位置に形成可能である。そのため、第1フレーム部材10に対して吊りボルト50の取付位置Pは、第1フレーム部材10の長手方向に沿って調整可能である。尚、吊りボルト50を取り付けるための孔13は、第1フレーム部材10の長手方向にそって形成される長孔であっても良いし、また第1フレーム部材10の長手方向に沿って複数の丸孔が形成されたものであっても良い。
【0049】
図10に示す支持装置1は、X方向における吊りボルト50の位置を、デッキプレート201の山部202の位置に適合させることが可能であるため、吊りボルト50の上端部をデッキプレート201の山部202に設けられたボルト部材210に対して固定することができる。それ故、作業者にとっては、高所作業が軽減され、作業効率に優れているという利点がある。
【0050】
上記のように本実施形態の支持装置1は、フレーム枠体2に対する吊りボルト50の取付位置をX方向及びY方向の2方向に対して調整することが可能である。そのため、空気調和機本体120の側面に設けられている取付片121の上方に障害物が存在する場合であっても、そのような障害物を避けることができる位置に吊りボルト50を設けることが可能であり、天井空間に障害物が存在する場合であっても、空気調和機110を適切に天井空間に設置することができる。また、上述したように、支持装置1は、空気調和機本体120の取付片121の上方位置にデッキプレート201の山部202が存在しない場合であっても吊りボルト50の取付位置をY方向又はX方向に調整することにより、デッキプレート201の山部202に対して吊りボルト50の上端部を固定することが可能である。
【0051】
次に上記のような構成を有する支持装置1の耐震性能について説明する。本実施形態の支持装置1は、吊りボルト50の下端部に連結されるフレーム枠体2と、空気調和機110との間に防振部材40を介在させている。そのため、フレーム枠体2は、吊りボルト50を介して天井構造200に一体的に接続されており、大規模地震が発生したときには吊りボルト50が振動することに伴い、フレーム枠体2が吊りボルト50と同様に振動する。例えば、吊りボルト50の長さが所定長さ以下である場合、地震発生時における吊りボルト50の振れ幅はそれ程大きくないため、フレーム枠体2の振れ幅もそれ程大きくならない。また、吊りボルト50の長さが所定長さを超える場合には、上述のようにブレースボルト57を取り付けることによって吊りボルト50の振動を抑制することができるため、大規模地震発生時でも吊りボルト50の振れ幅がそれ程大きくならず、フレーム枠体2の振れ幅も抑制することができる。つまり、フレーム枠体2は、吊りボルト50の下端部の振れ幅と同程度の振れ幅で振動することになる。
【0052】
また、フレーム枠体2から下方に延びる支持ボルト30,31,32は、所定長さよりも短い短尺のボルト部材であるため、フレーム枠体2と一体物とみなすことができる。つまり、地震発生時において、支持ボルト30,31,32は、フレーム枠体2の振れ幅と同程度の振れ幅で振動する。
【0053】
一方、空気調和機110は、支持ボルト30,31,32の下端部に防振部材40を介して支持されている。防振部材40は、空気調和機110の運転稼働中に発生する僅かな振動を吸収するのに対し、地震発生時のような大きな振動を吸収することができない。そのため、大規模地震発生時において空気調和機110は、フレーム枠体2の振動とは別に、防振部材40を基点に振動する。ただし、防振部材40を基点とする振動は、防振部材40と空気調和機110との距離が極めて小さいため、それ程大きくなることはない。そのため、本実施形態の支持装置1は、吊りボルト50の下端部に連結されるフレーム枠体2と、空気調和機110との間に防振部材40を介在させ、防振部材40を空気調和機110に近接した位置に設けているため、従来よりも空気調和機110の振れ幅を抑制することが可能であり、耐震性能を従来よりも向上させることができるのである。
【0054】
また、本実施形態の支持装置1は、支持ボルト30,31,32の先端を取付片121,131,141の挿通部に挿通し、取付片121,131,141の下部で防振部材40の底面を支持する構造である。このような構造の場合、支持ボルト30,31,32の下端部は、取付片121,131,141の挿通部の周縁部によって横揺れが規制されていると言える。そのため、地震発生時に支持ボルト30,31,32の下端部の振動をある程度は抑制することが可能であり、この振動抑制効果によっても空気調和機110の振れ幅を抑制することができる。
【0055】
図11及び図12は、従来の支持装置と本実施形態の支持装置1とを用いて振動実験を行った結果を示す図である。この振動実験は、株式会社MTI(神奈川県横浜市)の環境再現試験装置、及び、京都大学防災研究所の強震応答実験装置を利用して行った実験であり、従来の支持装置及び本実施形態の支持装置1のそれぞれを用いて隠蔽式の空気調和機110を吊り下げた状態で東日本大震災の芳賀波を再現した実験である。またこの振動実験においては、空気調和機110のX方向、Y方向及びZ方向のそれぞれの加速度を測定した。加速度が大きいほど、空気調和機110の振動(振れ幅)が大きいことになる。
【0056】
まず図11は、従来品(従来の支持装置)の実験結果を示しており、(a)がX方向の加速度を、(b)がY方向の加速度を、(c)がZ方向の加速度を示している。従来のように、吊りボルトとフレーム枠体との間に防振ハンガーを取り付けた構造の場合、実験開始から65秒が経過した後の大きな振動で空気調和機110がX方向とZ方向に大きく振動している。
【0057】
次に図12は、本発明品(本実施形態の支持装置1)の実験結果を示しており、(a)がX方向の加速度を、(b)がY方向の加速度を、(c)がZ方向の加速度を示している。従来のように、吊りボルトとフレーム枠体との間に防振ハンガーを取り付けた構造の場合、実験開始から65秒が経過した後の大きな振動で空気調和機110がX方向とZ方向に大きく振動している。図12の実験結果を、図11の実験結果と対比して分かるように、空気調和機110のY方向とZ方向の振動は本実施形態の支持装置1の方が小さい。つまり、本実施形態の支持装置1は、空気調和機110の振動を抑制するという点で優れているのである。
【0058】
以上のように本実施形態の支持装置1は、天井吊り下げ物100である空気調和機110の左右方向に沿って互いに平行に配置される複数の第1フレーム部材10、及び、第1フレーム部材10に対して直交する状態に配置される複数の第2フレーム部材20を井桁状に組み付けて構成されるフレーム枠体2と、空気調和機110の取付片121,131,141に取り付けられる防振部材40と、上端部がフレーム枠体2に接続され、フレーム枠体2から垂下する下端部が防振部材40に接続され、防振部材40を介して取付片121,131,141を支持する支持ボルト30,31,32と、下端部がフレーム枠体2に接続され、上端部が天井構造に接続される吊りボルト50と、を備えている。このような構成の支持装置1は、複数の吊りボルト50の下端部を剛性の高いフレーム枠体2に接続しており、複数の吊りボルト50の下端部の位置が相対変化しないように固定できる。また、支持装置1は、空気調和機110を支持する複数の支持ボルト30,31,32の上端部もフレーム枠体2に接続しており、複数の支持ボルト30,31,32の上端部の位置も相対変位しないように固定できる。そのため、支持ボルト30,31,32によって支持する空気調和機110の振動を抑制することができ、支持装置1は耐震機能を備えている。
【0059】
また、支持装置1は、防振部材40による防振機能を兼ね備えた装置である。そして支持装置1においては、複数の支持ボルト30,31,32が防振部材40を介して取付片121,131,141を支持する構成であるため、耐震性能を低下させることのない防振機能となっている。つまり、本実施形態の支持装置1は、従来よりも優れた耐震性を発揮するのである。特に大規模地震発生時には、空気調和機110の振動を抑制することができると共に、防振部材40の破損を防ぐことも可能である。したがって、地震が収まった後には、速やかに空気調和機110を再稼働させることができるという利点もある。
【0060】
また、本実施形態の支持装置1は、第1フレーム部材10及び第2フレーム部材20として互いに直交する縦板部11,21と横板部12,22とを有するL型のアングル鋼材を利用している。そしてフレーム枠体2は、第1フレーム部材10の横板部12と第2フレーム部材20の横板部22とを互いに接合させた状態で井桁状に組み付けた構成である。このような構成によれば、安価に、且つ、シンプルな構成で強度の高いフレーム枠体2を構成することができる。
【0061】
また、本実施形態の支持装置1は、防振部材40を空気調和機110の取付片121,131,141の下面側に配置し、支持ボルト30,31,32を取付片121,131,141の挿通部に挿通し、支持ボルト30,31,32の下端部が取付片121,131,141の下面側に配置された防振部材40の下面を支持するように構成される。このような構成によれば、地震発生時における支持ボルト30,31,32の横振れを小さく抑えることが可能であり、耐震性能をより一層向上させることができる。
【0062】
また、本実施形態の支持装置1において、支持ボルト30は、上端部が第1フレーム部材10と第2フレーム部材20との交点に設けられ、第1フレーム部材10と第2フレーム部材20を互いに接合させた状態で固定する。このような構成によれば、第1フレーム部材10と第2フレーム部材20とを井桁状に組み付けるための部材を別途用意する必要がないため、部品点数を削減することができ、作業効率を向上させることができる。
【0063】
更に、本実施形態の支持装置1は、吊りボルト50の上端部に、天井構造200に取り付けられたボルトに固定するための天井取付金具60が予め取り付けられる。そのため、空気調和機110に対する支持装置1の組み付け作業を床面上で行うことが可能であり、作業者の高所作業負担を軽減することができる。
【0064】
以上、本発明に関する好ましい実施形態を説明したが、本発明は、上記実施形態において説明したものに限定されるものではない。すなわち、本発明には、上記各実施形態において説明したものに種々の変形例を適用したものの含まれる。
【0065】
例えば、上記実施形態では、天井吊り下げ物100として、空気調和機110を例示し、空気調和機110が空気調和機本体120に対して吹出ユニット130と吸気ユニット140とが装着された構成である場合を例示した。しかし、本実施形態の支持装置1が支持する対象は、空気調和機本体120のみであっても良いし、空気調和機本体120に対して吹出ユニット130のみが組み付けられた空気調和機110であっても良い。
【0066】
また、上記実施形態では、天井吊り下げ物100の一例として隠蔽式の空気調和機110を例示した。しかし、上述した支持装置1を使用して吊り下げ可能な物体は、必ずしも隠蔽式の空気調和機110に限られない。例えば、上述した支持装置1は、パッケージエアコンなどのように一部が天井パネルの開口部から室内側に露出した状態に配置される空気調和機に適用することも可能である。すなわち、上述した支持装置1は、概略箱形形状を有する天井吊り下げ物100を天井構造200に吊り下げた状態で良好に支持することができる装置である。
【0067】
また、上記実施形態では、防振部材40がゴムなどの弾性材料で形成されたものである場合を例示した。しかし、防振部材40を構成する弾性部材は、ゴムに限られるものではなく、スプリングバネなどであっても構わない。
【0068】
また、上記実施形態では、防振部材40が取付片121,131,141の下面側に配置される場合を例示した。しかし、防振部材40は必ずしも取付片121,131,141の下面側に配置されるものに限られず、取付片121,131,141の上面側に配置されるものであっても構わない。また、防振部材40は、取付片121,131,141に対して直接的又は間接的に取り付けられるものであれば良く、必ずしも取付片121,131,141に接触した状態に取り付けられるものに限られない。
【0069】
また、上記実施形態では、フレーム枠体2を天井構造200に接続する吊り部材が吊りボルト50である場合を例示した。しかし、フレーム部材2を天井構造200に接続する吊り部材は、必ずしも吊りボルト50に限られない。例えば、フレーム部材2を天井構造200に接続する吊り部材は、L型のアングル鋼材であっても良いし、角柱状の鋼材であっても構わない。そのため、フレーム枠体2には、吊りボルト50とは異なる吊り部材を取り付けた構成であっても構わない。
【符号の説明】
【0070】
1…支持装置、2…フレーム枠体、10…第1フレーム部材、20…第2フレーム部材、30,31,32…支持ボルト、40…防振部材、50…吊りボルト(吊り部材)、60…天井取付金具、100…天井吊り下げ物、110…空気調和機。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12