(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-14
(45)【発行日】2024-06-24
(54)【発明の名称】歯科治療椅子および安頭台サポートクッション
(51)【国際特許分類】
A61G 15/12 20060101AFI20240617BHJP
【FI】
A61G15/12 510
(21)【出願番号】P 2020087518
(22)【出願日】2020-05-19
【審査請求日】2023-03-30
(73)【特許権者】
【識別番号】502080704
【氏名又は名称】長田電機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002343
【氏名又は名称】弁理士法人 東和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉本 清
【審査官】齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】実公昭49-033279(JP,Y1)
【文献】特開2001-238925(JP,A)
【文献】特開2006-314497(JP,A)
【文献】特開2008-272058(JP,A)
【文献】特開2011-36297(JP,A)
【文献】特開2005-177131(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 15/00-18
A47C 7/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
安頭台の患者頭部側に装着されるクッション部と前記安頭台の枕部の下方部分を収納する袋状部と前記クッション部の上部から延びてバックレストの背面側に着脱自在に固定されるベルトとを有する安頭台サポートクッションを、着脱自在に装着可能な歯科治療椅子であって、
前記安頭台が、前記安頭台サポートクッションの装着にともなって前記歯科治療椅子の動作速度低減機構を動作させるスイッチング部を備え、
前記スイッチング部が、前記安頭台サポートクッションを装着した際に前記袋状部によって押圧される前記枕部の下部に設けた押しボタンであることを特徴とする、歯科治療椅子。
【請求項2】
安頭台の患者頭部側に装着されるクッション部と該クッション部に設けて前記安頭台の枕部の下方部分を収納する袋状部と前記クッション部の上部から延びてバックレストの背面側に着脱自在に固定されるベルトとを有する安頭台サポートクッションを、着脱自在に装着可能な歯科治療椅子であって、
前記安頭台が、前記安頭台サポートクッションの装着にともなって前記歯科治療椅子の動作速度低減機構を動作させるスイッチング部を備え、
前記スイッチング部が、前記安頭台サポートクッションを装着した際に前記ベルトの固定による物理量の変化を検知する前記バックレストの背面側に設けたセンサであることを特徴とする、歯科治療椅子。
【請求項3】
歯科治療椅子の動作速度低減機構を動作させるスイッチング部を備えた前記歯科治療椅子の安頭台に対して着脱自在に装着可能な安頭台サポートクッションであって、
前記安頭台の患者頭部側に装着されるクッション部と前記安頭台の枕部の下方部分を収納する袋状部と前記クッション部の上部から延びてバックレストの背面側に着脱自在に固定されるベルトとを有し、
前記袋状部が、前記安頭台の枕部の下方部分に装着される際に前記安頭台のスイッチング部を構成する押しボタンを押圧して前記動作速度低減機構を動作させることを特徴とする安頭台サポートクッション。
【請求項4】
歯科治療椅子の動作速度低減機構を動作させるスイッチング部を備えた前記歯科治療椅子の安頭台に対して着脱自在に装着可能な安頭台サポートクッションであって、
前記安頭台の患者頭部側に装着されるクッション部と前記安頭台の枕部の下方部分を収納する袋状部と前記クッション部の上部から延びてバックレストの背面側に着脱自在に固定されるベルトとを有し、
前記ベルトが、前記バックレストの背面側に固定される際に前記バックレストの背面側に設けたスイッチング部を構成するセンサの物理量を変化させて前記動作速度低減機構を動作させることを特徴とする安頭台サポートクッション。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科治療椅子および安頭台サポートクッションに関し、詳しくは、背中が曲がっている患者に対しても、頭部を安定的に保持するとともに低速動作モードが自動的に選択される歯科治療椅子および安頭台サポートクッションに関する。
【背景技術】
【0002】
歯科治療を行う際に、背中の曲がった高齢者患者に対しては、歯科治療椅子の2軸式の安頭台を患者頭部側に傾けて、枕部分をバックレスト面よりも前方に出すことによって対応している。しかしながら、円背進行が進んだ患者の場合、上記の対応では、頭部の固定ができないケースが多い。このため、バックレストと後頭部との間にバスタオルやクッションを挟み込んで固定するなどの方法がとられている。
【0003】
また、特許文献1では、歯科治療椅子のシート面に、歯科用診療椅子のシート面と患者の身体の隙間を埋めるように、一体または着脱自在あるいは折りたたみ収納自在に配置したエアマットを備えるものが提案されている。
【0004】
一方、特許文献2では、患者が高齢の人,妊産婦,怪我をしている人,子供等の場合、動作速度を遅くし、患者に恐怖感を与えないようにした歯科治療ユニットが提案されている。この歯科治療ユニットでは、上下動,起倒動,傾斜動等の動作が可能で、かつ、これらの動作が操作ボタンによって制御される歯科治療椅子を具備している。また、歯科治療椅子の動作速度を規制するための動作速度規制スイッチを具備しており、このスイッチを操作した時は、操作ボタンによって操作される歯科治療椅子の動作速度が遅くなるようになっている。この動作速度規制スイッチは、通常、術者用テーブル操作パネルや歯科治療椅子、アシスタント操作パネルなどに設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-182949号公報
【文献】特開2001-238925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
バックレストと後頭部との間にバスタオルやクッションを挟み込んで固定する方法は、特別な装置を必要とせず簡便ではあるが、患者がうがい等で動くとバスタオルやクッションが落下して位置がずれてしまうため、診療を開始する際はそれを再セットする必要がある。また、特許文献1に開示されているエアマットでは、歯科用診療椅子のシート面と患者の身体の隙間を埋めるようにするために、エアマットを内外二層構造とし外層がボディーラインに合わせて自由に形状変形可能な素材で構成するとともに、内層を外部のエア供給源よりエア供給可能なエアバッグで構成する必要がある。このため、エアマットは、構造が複雑となり高価なものとなる。
【0007】
また、特許文献2に開示されているような、動作速度規制スイッチを具備した歯科治療ユニットを使用している場合であっても、高齢者の患者を診療する際に、歯科治療椅子の動作速度切り替えを忘れる場合がある。このような場合は、歯科治療椅子の動作が通常速度で行われるため、円背姿勢の強い高齢者等の患者に対して恐怖感を与えてしまうことがある。
【0008】
本発明は、これらの実情に鑑みてなされたものであり、円背姿勢が強い患者に対しても、頭部を安定的に保持するとともに低速動作モードが自動的に選択される歯科治療椅子および安頭台サポートクッションを提供すること、すなわち、円背姿勢が強い患者に対しても、頭部を安定的に保持するとともに安頭台サポートクッションの歯科治療椅子に対する装着動作にともなって歯科治療椅子の動作速度低減機構を動作させて低速動作モードが自動的に選択される歯科治療椅子および安頭台サポートクッションを提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、安頭台の患者頭部側に装着されるクッション部と前記安頭台の枕部の下方部分を収納する袋状部と前記クッション部の上部から延びてバックレストの背面側に着脱自在に固定されるベルトとを有する安頭台サポートクッションを、着脱自在に装着可能な歯科治療椅子であって、前記安頭台が、前記安頭台サポートクッションの装着にともなって前記歯科治療椅子の動作速度低減機構を動作させるスイッチング部を備え、前記スイッチング部が、前記安頭台サポートクッションを装着した際に前記袋状部によって押圧される前記枕部の下部に設けた押しボタンであることを特徴とする、歯科治療椅子。
【0010】
請求項2の発明は、安頭台の患者頭部側に装着されるクッション部と該クッション部に設けて前記安頭台の枕部の下方部分を収納する袋状部と前記クッション部の上部から延びてバックレストの背面側に着脱自在に固定されるベルトとを有する安頭台サポートクッションを、着脱自在に装着可能な歯科治療椅子であって、前記安頭台が、前記安頭台サポートクッションの装着にともなって前記歯科治療椅子の動作速度低減機構を動作させるスイッチング部を備え、前記スイッチング部が、前記安頭台サポートクッションを装着した際に前記ベルトの固定による物理量の変化を検知する前記バックレストの背面側に設けたセンサであることを特徴とするものである。
【0011】
請求項3の発明は、歯科治療椅子の動作速度低減機構を動作させるスイッチング部を備えた前記歯科治療椅子の安頭台に対して着脱自在に装着可能な安頭台サポートクッションであって、前記安頭台の患者頭部側に装着されるクッション部と前記安頭台の枕部の下方部分を収納する袋状部と前記クッション部の上部から延びてバックレストの背面側に着脱自在に固定されるベルトとを有し、前記袋状部が、前記安頭台の枕部の下方部分に装着される際に前記安頭台のスイッチング部を構成する押しボタンを押圧して前記動作速度低減機構を動作させることを特徴とするものである。
【0012】
請求項4の発明は、歯科治療椅子の動作速度低減機構を動作させるスイッチング部を備えた前記歯科治療椅子の安頭台に対して着脱自在に装着可能な安頭台サポートクッションであって、前記安頭台の患者頭部側に装着されるクッション部と前記安頭台の枕部の下方部分を収納する袋状部と前記クッション部の上部から延びてバックレストの背面側に着脱自在に固定されるベルトとを有し、前記ベルトが、前記バックレストの背面側に固定される際に前記バックレストの背面側に設けたスイッチング部を構成するセンサの物理量を変化させて前記動作速度低減機構を動作させることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
発明によれば、円背姿勢が強い患者に対しても、頭部を安定的に保持するとともに安頭台サポートクッションの歯科治療椅子に対する装着動作にともなって歯科治療椅子の動作速度低減機構を動作させて低速動作モードが自動的に選択される歯科治療椅子および安頭台サポートクッションを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係る歯科治療椅子の例であって、安頭台サポートクッションの装着前を示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る歯科治療椅子のバックレスト部分を背面から見た図であり、安頭台と安頭台サポートクッションとの関係を説明するための図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る歯科治療椅子のバックレスト部分を背面から見た図であり、安頭台サポートクッションの装着時を示す図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る歯科治療椅子であって、安頭台サポートクッションを装着した際の断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本発明の歯科治療椅子および安頭台サポートクッションに係る好適な実施形態について説明する。以下の説明において、異なる図面においても同じ符号を付した構成は同様のものであるとして、その説明を省略する場合がある。なお、本発明はこれらの実施形態での例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された事項の範囲内および均等の範囲内におけるすべての変更を含む。また、複数の実施形態について組み合わせが可能である限り、本発明は任意の実施形態を組み合わせたものを含む。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態に係る歯科治療椅子の例であって、安頭台サポートクッションの装着前を示す図である。
図1に示すように、歯科治療ユニットは歯科治療椅子1を備えており、歯科治療椅子1の側方には、歯科用スピットン9が配置されている。なお、図示は省略するが、歯科治療ユニットは、歯科治療椅子1の周辺に、無影灯や、種々の歯科用インスツルメントを保持するホルダを設けたワークテーブル、インスツルメント操作用のフットスイッチ等を備えている。
【0017】
歯科治療椅子1は、昇降部3によって上下動や傾斜動が可能に構成されている。昇降部3は、基台2上に例えば回転可能に設置され、コンターシート4の下側に連結されている。コンターシート4の後方には、バックレスト5や安頭台(ヘッドレスト)10が設けられている。バックレスト5の側方には、アームレスト6が設けられ、コンターシート4の前方には、レッグレスト7が設けられている。安頭台10は、枕部11および本体部12を備えており、支柱13に取り付けられている。なお、歯科治療椅子1に対する方向として、歯科治療椅子1に着座した際に、下方は患者の足の方向である基台2側を示し、上方は基台2と反対側の方向を示し、後方あるいは背面側は、患者の背中側の方向を示し、前方は患者の正面側の方向を示し、側方は左右の両手側の方向を示す。
【0018】
レッグレスト7の前方には、フットレスト8が設けられており、患者は、歯科治療椅子1が退出位置にある場合に、フットレスト8の上に乗った後、コンターシート4に腰掛けることができる。歯科治療椅子1は、図示しないコントローラを操作することによって、コンターシート4が基台2に対して上下方向に昇降でき、傾動(チルト)動作が可能である。バックレスト5はコンターシート4に対して起倒可能に構成されている。また、レッグレスト7はコンターシート4に対して傾動可能に構成されている。さらに、フットレスト8はレッグレスト7に対して傾動可能に構成されている。
【0019】
歯科治療椅子1は、動作速度低減機構を有しており、所定のスイッチング部を動作させることによって、コンターシート4の上下動作やチルト動作、バックレスト5の起倒動作、レッグレスト7やフットレスト8の傾動動作の動作速度を遅くすることが可能になっている。枕部11の下方には、例えば、左右の2か所に押しボタン14が設けられている。押しボタン14は、歯科治療椅子1の動作速度低減機構を動作させるスイッチ部の一例であり、押しボタン14の少なくともいずれか一方が押された状態にある際に、動作速度低減機構が動作するように構成されている。
【0020】
歯科治療椅子1のバックレスト5のバックレストカバー5aの背面側には、面ファスナ15が固着されている。面ファスナ15は、後述する安頭台サポートクッション20のベルト24に設けた面ファスナ25を着脱自在に固定するためのものであり、例えば、面ファスナ15にはループ部が形成されており、面ファスナ25にはフック部が形成されている。なお、ベルト24を歯科治療椅子1に対して着脱自在に固定可能であれば、面ファスナ以外の固定手段を用いてもよい。
【0021】
図2は、本発明の一実施形態に係る歯科治療椅子のバックレスト部分を背面から見た図であり、安頭台と安頭台サポートクッションとの関係を説明するための図である。また、
図3は、本発明の一実施形態に係る歯科治療椅子のバックレスト部分を背面から見た図であり、安頭台サポートクッションの装着時を示す図である。
図4は、本発明の一実施形態に係る歯科治療椅子であって、安頭台サポートクッションの装着した際の断面を示す図である。
【0022】
安頭台10は、本実施形態では、2軸式の支持機構を備えており、枕部11と本体部12とを結合する第1軸部11aと、本体部12と支柱13を結合する第2軸部13aを備えている。枕部11は第1軸部11aと第2軸部13aを回動させることにより、支柱13に対して種々の位置をとることができる。なお、第1軸部11aと第2軸部13aは、枕部11の位置の調整後、図示しない固定機構により調整後の位置を保持可能に構成されている。支柱13は、バックレスト5から上方に突出しており、図示しない可動部によって、バックレスト5に対して上下動が可能となっている。
【0023】
背中の曲がった高齢患者を診療する場合、2軸式の安頭台10を前方に傾け、枕部11をバックレスト5よりも前方に出すとともに、患者頭部の高さに合わせて支柱13の高さを調整する。しかしながら、円背進行が進んだ患者に対しては、さらに、安頭台サポートクッション20を歯科治療椅子1に装着することによって、対応可能である。
【0024】
安頭台サポートクッション20は、
図2~
図4に示すように、クッション部21、袋状部22、ベルト上部23、ベルト24、および、面ファスナ25を有している。クッション部21は、安頭台10の枕部11の患者頭部側の形状に一致する背面側形状と、患者頭部にフィットする前面側形状を有するウレタン材からなり、表面にはレザーあるいはPVC(ポリ塩化ビニル)からなる生地が張られている。クッション部21の下方側には、安頭台10の枕部11の下方部分を嵌め込み可能な袋状部22が形成されている。袋状部22は、レザーあるいはPVC(ポリ塩化ビニル)からなる生地から構成することができる。
【0025】
クッション部21の上方側には、例えば、クッション部21の上方面を覆うようにベルト24のベルト上部23が固着されている。ベルト24は、例えばポリプロピレンやナイロン素材を織った可撓性のベルトであり、ベルト上部23と反対側の端部には、先述した面ファスナ25が設けられている。このように、ベルト24は、クッション部21の上部から延びている。
【0026】
円背進行の進んだ患者を治療する場合、まず、歯科治療椅子1の安頭台10に安頭台サポートクッション20を装着する。装着に当たっては、安頭台サポートクッション20のベルト24をクッション部21の前方に来るように垂らした状態で、クッション部21の後方側上部を安頭台10の枕部11の前面側に押し当てた状態で、
図2の二点鎖線の矢印で示すように、クッション部21を上方に移動させる。これにより、安頭台10の枕部11の下方端部が安頭台サポートクッション20の袋状部22に嵌め込まれる。
【0027】
この状態で、ベルト24の端部をバックレスト5の背面側に移動させ、ベルト24に多少のゆとりをもたせた状態で、面ファスナ25を面ファスナ15に固定する。その後、支柱13の高さと、安頭台10の第1軸部11aと第2軸部13aの回転位置を調整し、枕部11の位置決めを行い、図示しない固定機構によって枕部11の位置を固定する。枕部11の位置決め固定を終えた後、ベルト24に若干の張力がかかる状態で、面ファスナ25を面ファスナ15に再固定する。これにより、安頭台サポートクッション20は安頭台10に着実に装着され、枕部11に対してずれることがない。
【0028】
以降、術者は、歯科治療椅子1のコンターシート4等を動作させて歯科治療を行うが、安頭台10の枕部11の下部に設けた押しボタン14は、安頭台サポートクッション20の袋状部22によって押圧されているため、歯科治療椅子1の動作速度低減機構が動作する。これにより、術者やアシスタントが図示しないコントローラによって歯科治療椅子1を動作させた際に、歯科治療椅子1の動作はゆっくりしたものとなり、患者に不安感や恐怖感を与えることがない。したがって、円背進行の進んだ患者を治療する場合に、安頭台サポートクッション20を使用すれば、自動的に動作速度低減機構が動作する。
【0029】
以上、安頭台サポートクッション20の安頭台10への装着にともなって、歯科治療椅子1の動作速度を低減させる動作速度低減機構のスイッチング部を動作させる例として、安頭台10の枕部11の下部に設けた押しボタン14を、安頭台サポートクッション20の袋状部22が押圧する構成のものを示したが、動作速度低減機構のスイッチング部を動作させる構成は、他の例でもよい。
【0030】
一例として、
図2に示すバックレストカバー5aに設けた面ファスナ15の上方部に、物理量を検出可能なセンサ16を設け、このセンサ16の出力に応じて動作速度低減機構を動作させるようにしてもよい。例えば、センサ16として、物理量の一つである入射光の大きさを測定する光センサを用い、安頭台サポートクッション20を安頭台10に装着した際に、光センサがベルト24で覆われるようにすることができる。これにより、安頭台サポートクッション20を安頭台10に装着すれば、センサ16の受光面側がベルト24によって覆われるため、センサ16に入射する入光量が減少する。そして、光センサへの入光量が減少したことに応じて、歯科治療椅子1の動作速度を低減させる動作速度低減機構のスイッチング部を動作させる。なお、バックレストカバー5aには、光センサの受光面に通じる穴を設けておく必要がある。
【0031】
また、センサ16としては、静電容量形近接センサを用いてもよい。この場合、ベルト24には、センサ16と対向する個所に導電体を設けておけば、安頭台サポートクッション20を安頭台10に装着した際に、センサ16がベルト24に設けた導電体に近接するため、センサ16を含む系の物理量である静電容量が変化する。そして、センサ16が検出する物理量の変化に応じて、歯科治療椅子1の動作速度を低減させる動作速度低減機構のスイッチング部を動作させる。
【0032】
さらに、センサ16としては、磁気センサを用いてもよい。この場合、ベルト24には、センサ16と対向する個所に、磁性体を設けておけば、安頭台サポートクッション20を安頭台10に装着した際に、センサ16がベルト24に設けた磁性体に近接するため、センサ16を設けた箇所の物理量である磁束密度が変化する。そして、センサ16が検出する物理量の変化に応じて、歯科治療椅子1の動作速度を低減させる動作速度低減機構のスイッチング部を動作させる。なお、静電容量形近接センサや磁気センサを用いる場合は、バックレストカバー5aに穴をあける必要はない。
【0033】
このように、安頭台サポートクッション20を安頭台10へ装着することにともなって、自動的に歯科治療椅子1の動作速度を低減させることが可能となる。なお、動作速度低減機構のスイッチング部を動作させるためには、押しボタン14やセンサ16のいずれか1つの手段を設けておけばよいが、安全を確保するために複数の手段を併用してもよい。さらに、センサ16の位置は、安頭台サポートクッション20を安頭台10に装着した際に、物理量の検出値が変化するものであれば種々のセンサを用いてもよく、歯科治療椅子1への取付位置も上記の実施形態に限定されない。
【符号の説明】
【0034】
1…歯科治療椅子、2…基台、3…昇降部、4…コンターシート、5…バックレスト、5a…バックレストカバー、6…アームレスト、7…レッグレスト、8…フットレスト、9…歯科用スピットン、10…安頭台、11…枕部、11a…第1軸部、12…本体部、13…支柱、13a…第2軸部、14…押しボタン、15…面ファスナ、16…センサ、20…安頭台サポートクッション、21…クッション部、22…袋状部、23…ベルト上部、24…ベルト、25…面ファスナ。