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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-14
(45)【発行日】2024-06-24
(54)【発明の名称】積分球及び分光透過率測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01J 3/02 20060101AFI20240617BHJP
   G01N 21/27 20060101ALI20240617BHJP
   G01J 1/02 20060101ALI20240617BHJP
【FI】
G01J3/02 Z
G01N21/27 Z
G01J1/02 F
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020108617
(22)【出願日】2020-06-24
(65)【公開番号】P2022006411
(43)【公開日】2022-01-13
【審査請求日】2023-06-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000219738
【氏名又は名称】東海光学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099047
【弁理士】
【氏名又は名称】柴田 淳一
(72)【発明者】
【氏名】東海林 秀典
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 直也
【審査官】横尾 雅一
(56)【参考文献】
【文献】特開昭56-096226(JP,A)
【文献】特開平11-142241(JP,A)
【文献】実開昭59-049934(JP,U)
【文献】特開昭63-300923(JP,A)
【文献】特開2000-221112(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 3/00 - G01J 3/52
G01J 1/00 - G01J 1/60
G01N 21/00 - G01N 21/74
G01N 21/84 - G01N 21/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分光透過率測定装置に使用される光束を拡散反射させ光強度を一定にする手段である積分球であって、球状の内壁面を構成する壁部の一部に外部から光束を入射するための入射口を形成するとともに、前記入射口とは異なる位置に外部に連通する出射通路を設けるようにし、前記出射通路は前記壁部の外部へ連通する開口部位置に取り付けた遮光性の筒状部材の内側部分であって、前記筒状部材の内面前記光束を吸収するとともに、前記筒状部材は前記内壁面から内側方向に突起するように取り付けられていることを特徴とする積分球。
【請求項2】
前記出射路の内面色を黒色系の色としたことを特徴とする請求項1に記載の積分球。
【請求項3】
前記出射通路の光軸は入射口の光軸と直交する位置にあることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の積分球。
【請求項4】
前記出射通路の横断面形状は円形に構成されていることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の積分球。
【請求項5】
出射通路の開口面積Sと通路全長Tの2乗の比率であるT /Sは5~32であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の積分球。
【請求項6】
前記筒状部材の少なくとも前記内壁面から内側方向に突起した外面の色は白色系又は金属色系で構成されていることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の積分球。
【請求項7】
2つのブロック部材の対向する面に半球状の凹部を形成し、前記ブロック部材の前記対向する面を付き合わせて固定部材で固定することによって2つの前記凹部の組み合わせからなる球状の前記内壁面を形成するようにしたことを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の積分球。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかの前記積分球に形成された入射口から前記積分球内に光束を射出する光源部と、
前記積分球の前記入射口とはずれた位置にある前記出射通路の出口から射出された射出光束を分光する分光手段と、
前記分光手段によって分光された光束を受光して異なる波長毎に受光量を検出する検出手段と、
を備えたことを特徴とする分光透過率測定装置
【請求項9】
前記検出手段は射出光束を集光する光学系を伴っていることを特徴とする請求項8に記載の分光透過率測定装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は積分球及びその積分球を備えた分光透過率測定装置等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光を透過する物体の分光透過率を測定する方法として、光源から照射された光束を被検物に入射させ、透過した光束を分光して検出器で検出する方法がある。しかし、レンズのように光束を屈折させる物体を測定する際には、屈折された透過光が検出器に入射しないことがあるため、この場合には正確に測定することができない可能性がある。
そのため、レンズの分光透過率を測定するために積分球を利用して測定する方法がある。積分球とは、入射した光を内部で多重に拡散反射させ、入射光の入射角に依存しないで一定強度の光を出射する中空の球体である。この積分球をレンズ等の被検物の後方に配置して、被検物を透過した光束を積分球に入射させることで、被検物での屈折の有無に関わらずに積分球から一定強度の出射光を得ることができる光学デバイスである。積分球を用いた光透過率測定装置の例として特許文献1を挙げる。特許文献1では例えばその図1に示すように、光源からの光束を入射窓40Aから積分球40内に取り込んで内面で反射させ、出射窓40Bから出射させ、光学系を介して光束を分光させる平面グレーティング50で分光させ、センサであるラインCCD32に送って検出するという分光透過率測定装置である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-142241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら当該従来技術では、出射窓40Bから出射される出射光は広がりを持つため、平面グレーティング50に至るまでにコリメート光学系20によって平行光束とする必要がある。そのため、当該光学系20のスペースを確保する必要があるため、それが分光透過率測定装置の小型化の妨げになっていた。また、当該光学系20を備える製造コストが発生してしまっていた。
また、特許文献1に限らず従来では積分球からの出射光をラインCCD等のセンサで検出する場合、出射光は拡がってしまうため、グレーティングがないところまで出射光が及んでしまい、すべての出射光をグレーティングで分光できないケースが生じるおそれがあり、その場合グレーティングから漏れた一部の出射光がいわゆる迷光としてセンサの測定のノイズとなってしまうことがあった。
本発明は、これらのような問題点に鑑み、出射光が拡がらない積分球及びそのような積分球を備えた分光透過率測定装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために第1の手段では、分光透過率測定装置に使用される光束を拡散反射させ光強度を一定にする手段である積分球であって、球状の内壁面を構成する壁部の一部に外部から光束を入射するための入射口を形成するとともに、前記入射口とは異なる位置に外部に連通する出射通路を設けるようにし、前記出射通路の内面が前記光束を吸収するようにした。
これによって、積分球内部で拡散反射した光が出射光として出射される際には、出射通路を通り、拡散する光は出射通路の内壁面に衝突して吸収されるため射出されにくくなり、結果として出射光は出射通路の出口から平行に近い角度で出射されることとなる。これによって、分光透過率測定装置におけるコリメート光学系を不要とすることができる。
「出射通路」は、例えば円形断面の通路を想定した場合に、少なくとも直径よりも長い全長となる通路を構成し、より好ましくは、それよりも2倍以上の通路の長さであるとよい。開口面積に対してさらに出射通路を長くすると、より平行に近い光を出射することができる反面、十分な出射光が得られなくなったり、他の構成部材と干渉する可能性がある。またトンネル状に出射通路を構成する場合では出射通路を長くする場合では強度とは関係なく壁の厚みが必要となり、積分球が大型化してしまう。また、開口面積に対して全長が短すぎると出射光は平行に近い角度とはなりにくい。このようなことから、例えば出射通路の開口面積Sと通路全長Tの2乗の比率T /S=5~32程度であることがよい。上記の例の円形断面の通路のT /Sは約5.09となり、妥当な比率である。
また、第2の手段として、前記出射路の内面色は黒色系の色とした。
内面を一様に黒色系の色とすることで、幅広い波長の光源に対して、当該積分球の利用が可能となる。
「黒色系の色」は純粋な黒色だけではなく、一般に黒色と解釈される黒色度の色や本発明の目的から使用可能な黒色に近い濃色を含む。また可視光線に限らず、近紫外線や近赤外線といった波長の光も含まれる。黒色度としては反射率は低ければ低いほどよく、理想的には光の反射率が0で、かつ全ての波長の光を吸収することができるともっともよい。本発明の分光透過率測定装置で要求される分光透過率の測定レベルに対するノイズとなる出射光を抑制できるレベルであれば、理想的な黒色が要求されるものではなく黒色とみなせる程度であればよく、更に黒に近い濃色であって光の吸収率が十分高い色であれば黒でなくとも例えば濃紺や濃茶でもよい。また、出射通路の内壁面のテクスチャーは反射を極力抑制するためにつややかな面ではなくつや消し状であることがよい。
「近紫外線」の波長域は200400nmであり、UVAやUVB、UVCを含む。「近赤外線」の波長域は7002000nmまで含まれる。
【0006】
また、第3の手段として、前記出射通路の光軸は入射口の光軸と直交する位置にあるようにした。
これによって拡散反射光を選択的に出射することができる。一般的に入射光が直接出射されるのを防ぐためには、積分球の内壁面に遮光板を取り付ける必要がある。本発明では、例えばこの手段のように出射通路の光軸を入射口の光軸と直交する位置とすることで、出射通路に対して斜めから侵入する入射光に対して、内壁面に衝突して吸収されるため、出射されにくくなり、拡散反射光を選択的に出射することが可能となる。
また、この手段の裏返しとして出射通路の光軸は入射口の光軸と直交しない場合であっても第1の手段に含まれる
また、第4の手段として、前記出射通路の横断面形状は円形に構成されているようにした。
出射通路の横断面形状が円形であると中心から常に光の及ぶ位置までが等距離となるため、出射通路内に拡散する光の吸収・反射のバランスがよいからである。
また、この手段の裏返しとして出射通路の横断面形状は必ずしも円形である必要はなく、例えば方形であっても第1の手段に含まれる
【0007】
また、第5の手段として、出射通路の開口面積Sと通路全長Tの比率であるT /Sは532であるようにした。
このような比率であると、出射光は出射通路の出口から十分平行に近い角度で出射されることとなり、また、開口面積に対して通路全長が長すぎて分光透過率測定装置が設計しにくくなるということもないからである。
また、第6の手段として、前記出射通路は、前記壁部の外部へ連通する開口部位置に取り付けた遮光性の筒状部材の内側部分であるようにした。
出射通路の具体的な態様である。筒状部材は取り替え可能であり積分球の壁部に形成した取り付け孔に嵌挿することで簡単にセットできる。出射通路をこのような遮光性のある筒状部材とすることで、筒状部材の内側開口端のみが内部で拡散反射した光が出射されるための入り口となる。筒状部材内部に至った拡散反射した光は筒状部材内壁に衝突して吸収される。そして、最終的に筒状部材の外側開口端から積分球の外に平行に近い角度で出射光が出射される。
「筒状部材」は管・チューブ状の内部が中空の部材であり、本発明では横断面円形以外の外周面を有する管も含める。
また、第7の手段として、前記筒状部材は前記内壁面から内側方向に突起するように取り付けられているようにした。
これによって筒状部材が積分球の外部に大きく張り出すことがないため、積分球を小型化することができ、外部の設計に支障が生じない。
また、第8の手段として、前記筒状部材の少なくとも前記内壁面から内側方向に突起した外面の色は白色系又は金属色系で構成されているようにした。
これによって、入射口から積分球に入射した光が筒状部材に当たり、そこで吸収される割合を減らすこと(=拡散反射する割合が増やすこと)ができる。そのため、結果として分光手段に入る光量を増やすことができる。
また、第9の手段として、前記出射通路は、前記壁部をトンネル状に貫通して形成されているようにした。
出射通路の具体的な態様である。筒状部材は不要となる。また、任意に出射通路の大きさや形状を設計することができる。出射通路をこのようなトンネル状とすることで、出射通路の内側開口端が内部で拡散反射した光が出射されるための入り口となる。筒状部材内部(つまりトンネル内)に至った拡散反射した光は筒状部材内壁(トンネル内壁)に衝突して吸収される。そして、最終的に出射通路の外側開口端から積分球の外に平行に近い角度で出射光が出射される。
「トンネル状」とは本発明では厚みのある壁を貫いて形成される通路をいう。
【0008】
また、第10の手段として、2つのブロック部材の対向する面に半球状の凹部を形成し、前記ブロック部材の前記対向する面を付き合わせて固定部材で固定することによって2つの前記凹部の組み合わせからなる球状の前記内壁面を形成するようにした。
これによって内部に球状の内壁面を形成した積分球の構造体を作成することができる。ブロック部材の材質や色は問わない。白色の材質であれば球状の内壁面を有する積分球がブロック部材を組み合わせるだけで構成されるが、内部に白色材料を塗布することで素材の色を隠すことが可能である。
また、第11の手段として、分光透過率測定装置として、第1~第10のいずれかの前記積分球に形成された入射口から前記積分球内に光束を射出する光源部と、前記積分球の前記入射口とはずれた位置にある前記出射通路の出口から射出された射出光束を分光する分光手段と、前記分光手段によって分光された光束を受光して異なる波長毎に受光量を検出する検出手段と、を備えるようにした。
これによって、積分球内部で拡散反射した光が出射光として出射される際には、出射通路を通り、拡散する光は内壁面に衝突して吸収されるため射出されにくくなり、結果として出射光は出射通路の出口から平行に近い角度で出射されることとなる。これによって、分光透過率測定装置におけるコリメート光学系を経由せずに分光手段に出射光を導くことができ、分光透過率測定装置のコンパクト化、低コスト化に寄与する。
また、第12の手段として、前記検出手段は射出光束を集光する光学系を伴っているようにした。
これによって出射光を集光させて妥当な光幅で検出手段に導くことができ、正確な測定に寄与する。
上述した第1~第12の手段の各発明は、任意に組み合わせることができる。特に、第1の手段の構成を備えて、第2~第12の手段の各発明の少なくともいずれか1つの構成と組み合わせを備えると良い。第1~第12の手段の各発明の任意の構成要素を抽出し、他の構成要素と組み合わせてもよい。
【発明の効果】
【0009】
上記発明では、積分球からの出射光が出射通路の出口から平行に近い角度で出射されることとなるため、分光透過率測定装置におけるコリメート光学系を不要とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1の実施の形態において分光透過率測定装置の主要な構造部分を説明する模式図。
図2】第2の実施の形態において分光透過率測定装置の主要な構造部分を説明する模式図。
図3】第3の実施の形態において分光透過率測定装置の主要な構造部分を説明する模式図。
図4】(a)は第1のブロック部材の斜視図、(b)は第2のブロック部材の斜視図、(c)は第1のブロック部材と第2のブロック部材からなる積分球の分解図。
図5】(a)は遮光筒の斜視図、(b)は同じ遮光筒の中心で破断して部分断面図。
図6】遮光筒の取り付け状態を説明する拡大説明図。
図7】(a)は第4の実施の形態の分光透過率測定装置の平面図、(b)は同じ分光透過率測定装置の正面図。
図8】(a)は第5の実施の形態の積分球の正面図、(b)は遮光通路を説明する拡大説明図。
図9】分光透過率を測定した結果の一例のグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の具体的な実施の形態と実施例について図面に基づいて説明する。
(第1の実施の形態)
図1は本発明の第1の実施の形態の分光透過率測定装置1の主要な構造部分の模式的な図である。この光透過率測定装置1は積分球2と分光手段としての平面グレーティング3と集光レンズ4と検出手段としてのラインCCD5を備えている。積分球2は球面に構成された内周面6を備え、一部分に図示しない光源からの光を入射させる入射口7を備えている。積分球2には入射口7とは異なる位置に筒状部材としての遮光筒8が配設されている。遮光筒8は積分球2の内外に連通する孔に嵌挿されており、遮光筒8内部が出射通路を構成している。遮光筒8は積分球2の壁面から内側に向かって突起するように取り付けられている。遮光筒8内面は黒色に着色され、突起して積分球2内に露出した外側面は白色に着色されている。出射通路の光軸L2は入射口7の光軸L1に対して直交する。
平面グレーティング3は遮光筒8の出射側前方に配置されている。平面グレーティング3の反射側前方にはラインCCD5が配置され、集光レンズ4は平面グレーティング3とラインCCD5の間に配置されている。
【0012】
このような構成の分光透過率測定装置1においては、積分球2内部で多重に拡散反射された光は遮光筒8内に至り、光の出口である遮光筒8先端から出射される。その際に、図1で示すように、出射光は大きく拡がることなく、概ね平行に近い角度で出射されることとなり、出射光はすべて平面グレーティング3に受け止められることとなる。平面グレーティング3は回折格子を備えており、平面グレーティング3に導かれた出射光(光束)は波長に応じて反射角度が異なる光に分光される。分光された光束は集光レンズ4を通過してラインCCD5の幅に対応した幅に集光され、ラインCCD5に至る。
【0013】
(第2の実施の形態)
図2は本発明の第2の実施の形態の分光透過率測定装置11の主要な構造部分の模式的な図である。この光透過率測定装置11は積分球12と分光手段としての平面グレーティング13と集光レンズ14と検出手段としてのラインCCD15を備えている。積分球12は球面に構成された内周面16を備え、内周面16を構成する壁部は肉厚に構成されている。積分球12はその一部分に図示しない光源からの光を入射させる入射口17を備えている。入射口17とは異なる位置に出射通路としての遮光通路18が形成されている。遮光通路18の内面は黒色に着色されている。遮光通路18の光軸L2は入射口17の光軸L1に対して直交する。
平面グレーティング13、集光レンズ14、ラインCCD15はそれぞれ第1の実施の形態の分光透過率測定装置1の平面グレーティング3、集光レンズ4、ラインCCD5と同じ構成・機能である。
このような構成の分光透過率測定装置11においては、積分球12内部で多重に拡散反射された光は遮光通路18内に至り、光の出口である遮光通路18先端から出射される。その際に、図2で示すように、出射光は大きく拡がることなく、概ね平行に近い角度で出射されることとなり、出射光はすべて平面グレーティング13に受け止められることとなる。平面グレーティング13は回折格子を備えており、平面グレーティング13に導かれた出射光(光束)は波長に応じて反射角度が異なる光に分光される。分光された光束は集光レンズ14を通過してラインCCD15の幅に対応した幅に集光され、ラインCCD15に至る。
【0014】
(第3の実施の形態)
図3は本発明の第3の実施の形態の分光透過率測定装置21の主要な構造部分の模式的な図である。この光透過率測定装置21は積分球2と分光手段としての凹面グレーティング23と検出手段としてのラインCCD25を備えている。積分球2は第1の実施の形態と同じである。第1の実施の形態と同じ構成については説明を省略する。凹面グレーティング23は遮光筒8の出射側前方に配置されている。凹面グレーティング23の反射側前方にはラインCCD25が配置されている。第3の実施の形態では第1の実施の形態と異なり集光レンズ4はない。ラインCCD25はラインCCD5と同じ機能である。
このような構成の分光透過率測定装置21においては、積分球2内部で多重に拡散反射された光は遮光筒8内に至り、光の出口である遮光筒8先端から出射される。その際に、図3で示すように、出射光は大きく拡がることなく、概ね平行に近い角度で出射されることとなり、出射光はすべて凹面グレーティング3に受け止められることとなる。凹面グレーティング23は回折格子を備えており、凹面グレーティング23に導かれた出射光(光束)は波長に応じて反射角度が異なる光に分光される。また、光は凹面で集光方向に屈曲されるため、集光レンズ4がなくともラインCCD25の幅に対応した幅に集光される。 第1~第3の実施の形態のような構成であれば、積分球2(12)と平面グレーティング3(13、凹面グレーティング23)の間にコリメート光学系を配置する必要がないため、光学系においてコンパクト化に貢献する。また、積分球2から出射光が出射された後に出射光は大きく拡がることがないため周囲に漏れた一部の出射光がいわゆる迷光となってラインCCD5の検出に影響を与えてしまうこともなくなる。
【0015】
(第4の実施の形態)
第4の実施の形態は第1の実施の形態又は第3の実施の形態をベースとしたより具体的な分光透過率測定装置31である。
図4(a)(b)に示すように、積分球2は2つのプラスチック製のブロック部材32、33を組み合わせることでその内周面に形成される。つまり、第1~第3の実施の形態で模式的表現された積分球2(12)は、一般に実際の形状としては、例えば第4の実施の形態のように外観としては必ずしも「球体」ではなく、内部に球状の空洞を備えたブロック体として構成されることになる。
第1のブロック部材32は縦横が同尺で高さがそれらの半分となる平たい直方体形状の中実体の外観とされ、正方形形状の上面32aに半球面形状の第1の凹面35が第1のブロック部材32をあたかもくり抜いたように形成されている。第1の凹面35の最も奥位置、つまり第1の凹面35の底の中央部分には円形の透孔36が形成されている。第1のブロック部材32の四方の壁面32bの1つと第1の凹面35との間の壁部分には半円形状に切り欠かれた第1の半円部37が形成されている。上面32aにおいて四方の壁面32bが交差する4つの角隅部近傍には第1のブロック部材32を上下に連通する連通路38がそれぞれ形成されている。
【0016】
第2のブロック部材33は第1のブロック部材32と同様、縦横が同尺で高さがそれらの半分となる平たい直方体形状の中実体の外観とされ、正方形形状の上面33aに半球面形状の第2の凹面39が第2のブロック部材33をあたかもくり抜いたように形成されている。第2の凹面39は第1の凹面35と同じ球面形状に構成されている。第2のブロック部材33の四方の壁面33bの1つと第2の凹面39との間の壁部分には半円形状に切り欠かれた第2の半円部40が形成されている。第2の半円部40は第1の半円部37と同じ形状である。上面33aにおいて四方の壁面33bが交差する4つの角隅部近傍には第2のブロック部材33を上下に連通する連通路41がそれぞれ形成されている。
積分球2を構成するブロック部材32、33はプラスチック成形品であるため、光沢がありすぎる。そのため、硫酸バリウムのコート液を第1の凹面35と第2の凹面39に重ね塗りして内周面6に白色つや消しの硫酸バリウム層を形成させて光を乱反射する白色の球面形状を形成させる。
このような第1のブロック部材32と第2のブロック部材33を、図4(c)のようにそれぞれの上面32a、33aが対向し、かつ第1の半円部37と第2の半円部40が対向するように組合わせ、照合される連通路38、41にワッシャ42を介してボルト43とナット44とによって連結固定する。連結した段階で積分球2の内部には第1の凹面35と第2の凹面39からなる球状の内周面6が形成される。第1の半円部37と第2の半円部40とによって円形の入射口45が構成される。第4の実施の形態の積分球2の内周面6の内径は30mmとされている。そして、第1のブロック部材32の透孔36に対して外方から遮光筒8を嵌挿して取り付ける。
【0017】
図5(a)(b)に示すように、遮光筒8は横断面円形形状のアルミ合金からなる円筒部材である。遮光筒8は本体9の上縁全周にフランジ10が本体9と一体的に成形されている。第4の実施の形態の遮光筒8は全長6mm、内径3mmとされている。遮光筒8の内周面11はつや消しの黒色顔料で着色されており、本体9の外周と先端端面はつや消しの白色で着色されている。遮光筒8は第1のブロック部材32の透孔36よりもわずかに大きな外径で構成されている。この遮光筒8では遮光筒8の開口面積Sと通路全長Tの比率T /Sは四捨五入して5.0930となった。
遮光筒8を第1のブロック部材32に取り付ける際には、第1のブロック部材32の透孔36に対して本体9の先端から無理嵌め状に押し込むようにして挿入していく。遮光筒8のフランジ10裏面が第1のブロック部材32の外面上に押し当てられた図6の状態で遮光筒8の固定完了とされる。この状態で遮光筒8の光軸方向と入射口45の光軸方向は直交する。
【0018】
次に、分光透過率測定装置31全体のより詳しい構成について説明する。
図7に示すように、分光透過率測定装置31は積分球2が収納された前方筐体部51と光源52が収納された後方筐体部53を有している。前方筐体部51と後方筐体部53はベースプレート54上に所定の間隔を空けて配設されている。この間隔は測定対象となるレンズを配置するための配置スペース55となる。前方筐体部51の側方には測定のための入力装置が収容された側方筐体部56が配設されている。
積分球2は前方筐体部51内において配置スペース55寄りに配置されている。積分球2は入射口45の光軸が光源52の光軸と一致するようにセットされる。積分球2の遮光筒8側、つまり出射方向には凸レンズが収容された分光ユニット57が配設されている。分光ユニット57内には図1の模式図で示す平面グレーティング3と凸レンズ4が配設されている。分光ユニット57に隣接する位置には分光透過率測定用の制御基板58が配設されている。制御基板58には図1におけるラインCCD5が配設されている。ラインCCD5は分光ユニット57の出射側の前方位置に配置され、分光ユニット57内で分光された光束がちょうどラインCCD5の幅に対して過不足なく照射されるように設置されている。
制御基板58は図示しないコントローラを備えている。コントローラは分光されてラインCCD5で波長毎に測定した光量を記憶部に記憶させる。また、コントローラはキャリブレーションデータとして取得した波長毎に測定した光量を、測定対象のレンズを通して得た波長毎に測定した光量と比較計算を実行してその値を記憶部に記憶させる。また、コントローラは比較計算を実行して得た数値を出力する。
このような構成の分光透過率測定装置31の使用方法の概要について説明する。
まず、レンズのない状態で側方筐体部56上部の第1のボタンスイッチ59を押す。すると光源52から一定時間光が照射されて波長毎の光量が測定される。これはキャリブレーションデータとなる。次いで分光透過率を測定したい対象レンズを配置スペース55内に配置して側方筐体部56上部の第2のボタンスイッチ60を押す。すると再び光源52から一定時間光が照射されて波長毎の光量が測定される。これによって2つの光量データが得られる。するとコントローラはキャリブレーションデータと対象レンズを通した光量データを比較し、波長毎の減衰量の比が数値として計算されて出力される。本実施の形態では分光透過率測定装置31は図示しないコンピュータ装置と接続されており、コンピュータ装置に附属する出力手段、例えばモニターやプリンタ装置による印刷によって測定対象のレンズの分光透過率が出力される。出力された一例として図9に示す。図9は横軸が波長であり、縦軸が透過率である。
上記のように構成することで、第4の実施の形態では次のような効果が奏される。
(1)積分球2とラインCCDを備えた制御基板58との間にコリメート光学系を配置する必要がないため分光透過率測定装置31のコンパクト化に貢献する。
(2)遮光筒8は積分球2側に突起しているため、分光ユニット57側と干渉することがなく、分光透過率測定装置31のコンパクト化に貢献する。
(3)積分球2から出射される光束が分光ユニット57内で拡散することがないため、ラインCCD5に測定対象以外の光が影響を与えることがなく、測定結果の精度が上がる。
【0019】
(第5の実施の形態)
第5の実施の形態として、図8に基づいて第2の実施の形態をベースとしたより具体的な積分球12を説明する。
図8(a)(b)に示すように、積分球12は2つのプラスチック製のブロック部材62、63を組み合わせることでその内周面に形成される。第5の実施の形態でも第4の実施の形態と同様に第1のブロック部材62と第2のブロック部材63の内面に第1の凹面65と第2の凹面66が形成され、組み合わされることで内部に球面に構成された内周面16が形成される。第4の実施の形態と同様に図示しない連通孔に対してワッシャ42、ボルト43、ナット44等の締結部材を使用して連結固定する。第1のブロック部材62側に形成された遮光通路18の内面は黒色顔料で着色されている。
このような積分球12は上記第4の実施の形態の分光透過率測定装置31において積分球2の代わりに使用することができる。
【0020】
上記実施の形態は本発明の原理およびその概念を例示するための具体的な実施の形態として記載したにすぎない。つまり、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。本発明は、例えば次のように変更した態様で具体化することも可能である。
・上記第1~第4の実施の形態の積分球2(12)の外観形態やサイズは一例であって、他の形態で実施することも自由である。
・上記第1~第3の実施の形態における図1図3は模式的な図である。そのため、これら図に記載された構成以外の構成については省略したり簡略化して説明されている可能性がある。そのため図1図3の構成に限定されることはない。
・上記第4の実施の形態の具体的な分光透過率測定装置31の形態は一例であって、他の態様で実施することも自由である。例えば、上記では第4の実施の形態における分光ユニット57内に第1の実施の形態の平面グレーティング3と凸レンズ4を配設する例を挙げたが、これらの代わりに第3の実施の形態の凹面グレーティング23を配設するようにしてもよい。また、例えば制御基板58に配設したラインCCD5を分光ユニット57内に配設するようにしてもよい。
第4の実施の形態や第5の実施の形態では積分球2(12)は2つのプラスチック製のブロック部材32、33(62、63)を組み合わせた直方体形状の外観として実施されていたが、必ずしも直方体形状でなくともよい。例えば内周面の球面形状と相似となる球面の外周を有するような形態でもよい。
・第4の実施の形態や第5の実施の形態では内周面6に硫酸バリウム層を形成させるようにしていた。これは当初からフッ素樹脂のように乱反射するような白色の内周面6に成形することで硫酸バリウム層を省略するようにしてもよい。また、硫酸バリウム以外の白色つや消しとなる層を形成できる素材、例えば硫酸カルシウムや塩化カルシウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛等を使用して白色のつや消しとなる層を形成するようにしてもよい。
・着色されたプラスチック素材を使用して実施の形態のようなブロック部材を構成し、内周面を白色に着色するようにしてもよい。
・上記第1の実施の形態における遮光筒8の構成は一例である。例えば、他の金属でもよく、金属以外の木材、セラミック等の素材で構成してもよい。また、上記では遮光筒8の内周面11を着色したがセラミックであれば焼結段階で内面を黒色の外観となるようにすればその必要はない。また、上記では遮光筒8の本体9の外周と先端端面を白色で着色したが、白色で着色するのはより本発明の目的に沿うために積分球2(12)内をなるべく乱反射させたいという趣旨であり、遮光筒8は金属光沢を有して反射するため白色の着色はなくともよい。
・遮光筒8の開口面積と通路全長の比は上記以外でもよい。
・遮光筒8の横断面形状は円形でなくともよい。フランジ10の形状を変更してもよく、フランジ10をなくすような構成でもよい。
本願発明は上述した実施の形態に記載の構成に限定されない。上述した各実施の形態や変形例の構成要素は任意に選択して組み合わせて構成するとよい。また各実施の形態や変形例の任意の構成要素と、発明を解決するための手段に記載の任意の構成要素または発明を解決するための手段に記載の任意の構成要素を具体化した構成要素とは任意に組み合わせて構成するとよい。これらについても本願の補正または分割出願等において権利取得する意思を有する。
また、意匠出願への変更出願により、全体意匠または部分意匠について権利取得する意思を有する。図面は本装置の全体を実線で描画しているが、全体意匠のみならず当該装置の一部の部分に対して請求する部分意匠も包含した図面である。例えば当該装置の一部の部材を部分意匠とすることはもちろんのこと、部材と関係なく当該装置の一部の部分を部分意匠として包含した図面である。当該装置の一部の部分としては、装置の一部の部材としてもよいし、その部材の部分としてもよい。
【符号の説明】
【0021】
1、11、21、31…分光透過率測定装置、2、12…積分球、6、16…内壁面、7、17…入射口、8…出射通路を構成する遮光筒、18…出射通路を構成する遮光通路。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9