(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-14
(45)【発行日】2024-06-24
(54)【発明の名称】AAV形質導入と関連付けられる自然免疫応答の阻害のための方法および組成物
(51)【国際特許分類】
C12N 15/864 20060101AFI20240617BHJP
C12N 15/57 20060101ALI20240617BHJP
C12N 15/113 20100101ALI20240617BHJP
C12N 7/01 20060101ALI20240617BHJP
A61K 31/711 20060101ALI20240617BHJP
A61K 31/575 20060101ALI20240617BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240617BHJP
【FI】
C12N15/864 100Z
C12N15/57 ZNA
C12N15/113 Z
C12N7/01
A61K31/711
A61K31/575
A61P43/00 105
(21)【出願番号】P 2020539080
(86)(22)【出願日】2019-01-18
(86)【国際出願番号】 US2019014211
(87)【国際公開番号】W WO2019143950
(87)【国際公開日】2019-07-25
【審査請求日】2022-01-17
(32)【優先日】2018-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500093834
【氏名又は名称】ザ・ユニヴァーシティ・オヴ・ノース・キャロライナ・アト・チャペル・ヒル
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100180231
【氏名又は名称】水島 亜希子
(74)【代理人】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】リー,チェンウェン
(72)【発明者】
【氏名】サムルスキ,リチャード・ジュード
【審査官】小田 浩代
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/110518(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0070241(US,A1)
【文献】Shao W. et al.,Double-stranded RNA innate immune response activation from long-term adeno-associated virus vector transduction,JCI Insight,2018年07月21日,Vol. 3(12):e120474
【文献】Soulat D. et al.,Cytoplasmic Listeria monocytogenes stimulates IFN-beta synthesis without requiring the adapter protein MAVS,FEBS Lett,2006年,Vol. 580,pp. 2341-2346
【文献】Sugiyama T,. et al.,Mechanism of inhibition of lipopolysaccharide-induced interferon-β production by 2-aminopurine,Mol Immunol,2012年,Vol. 52,pp. 299-304
【文献】佐藤 文彦 ほか,一過的RNAi系の開発,化学と生物,2005年,Vol. 43,pp. 177-183
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N15/00-15/90
C12N 1/00- 7/08
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
AAVベクター形質導入における二本鎖RNAの生成を低減し、かつ/またはAAVベクター形質導入に起因し得る自然免疫応答の誘発を阻害するように設計された、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターゲノムであって、前記組換えrAAVベクターゲノムが、5’から3’への方向で、アデノ随伴ウイルス(AAV)の5’逆位末端反復(ITR)、プロモーターが作動可能に付随している目的のヌクレオチド配列(NOI)およびAAVの3’ITRを含み、
下記a)~m)から選択される1または複数のポリA(pA)配列:
a)3’から5’への方向で、前記5’ITRの下流かつ前記プロモーターの上流のポリA(pA)配列、および、3’から5’への方向で、前記3’ITRの上流かつ前記NOIの下流のpA配列;
b)3’から5’への方向で、前記3’ITRの上流かつ前記NOIの下流のpA配列;
c)3’から5’への方向で、前記3’ITRの上流かつ前記NOIの下流の第1のpA配列、および、5’から3’への方向で、前記第1のpA配列の下流かつ前記3’ITRの上流の第2のpA配列;
d)3’から5’への方向で、前記3’ITRの上流かつ前記NOIの下流の第1のpA配列、および、5’から3’への方向で、前記NOIの下流かつ前記第1のpAの上流の第2のpA配列;
e)3’から5’への方向で、前記3’ITRの上流かつ前記NOIの下流の第1のpA配列、および、5’から3’への方向で、前記5’ITRの下流かつ前記プロモーターの上流の第2のpA配列;
f)3’から5’への方向で、前記5’ITRの下流かつ前記プロモーターの上流の第1のpA配列、5’から3’への方向で、前記NOIの下流かつ第3のpA配列の上流の第2のpA配列、および、3’から5’への方向で、前記第2のpA配列の下流かつ前記3’ITRの上流の前記第3のpA配列;
g)5’から3’への方向で、前記5’ITRの下流かつ前記プロモーターの上流の第1のpA配列、3’から5’への方向で、前記NOIの下流かつ第3のpA配列の上流の第2のpA配列、および、5’から3’への方向で、前記第2のpA配列の下流かつ前記3’ITRの上流の前記第3のpA配列;
h)5’から3’への方向で、前記5’ITRの下流かつ前記プロモーターの上流の第1のpA配列、5’から3’への方向で、前記NOIの下流かつ第3のpA配列の上流の第2のpA配列、および、3’から5’への方向で、前記第2のpA配列の下流かつ前記3’ITRの上流の前記第3のpA配列;
i)5’から3’への方向で、前記5’ITRの下流かつ前記プロモーターの上流の第1のpA配列、3’から5’への方向で、前記NOIの下流かつ第3のpA配列の上流の第2のpA配列、および、5’から3’への方向で、前記第2のpA配列の下流かつ前記3’ITRの上流の前記第3のpA配列;
j)3’から5’への方向で、前記5’ITRの下流かつ第2のpA配列の上流の第1のpA配列、5’から3’への方向で、前記第1のpA配列の下流かつ前記プロモーターの上流の前記第2のpA配列;5’から3’への方向で、前記NOIの下流かつ第4のpA配列の上流の第3のpA配列、および、3’から5’への方向で、前記第3のpA配列の下流かつ前記3’ITRの上流の前記第4のpA配列;
k)3’から5’への方向で、前記5’ITRの下流かつ第2のpA配列の上流の第1のpA配列、5’から3’への方向で、前記第1のpA配列の下流かつ前記プロモーターの上流の前記第2のpA配列;3’から5’への方向で、前記NOIの下流かつ第4のpA配列の上流の第3のpA配列、および、5’から3’への方向で、前記第3のpA配列の下流かつ前記3’ITRの上流の前記第4のpA配列;
l)5’から3’への方向で、前記5’ITRの下流かつ第2のpA配列の上流の第1のpA配列、3’から5’への方向で、前記第1のpA配列の下流かつ前記プロモーターの上流の前記第2のpA配列;5’から3’への方向で、前記NOIの下流かつ第4のpA配列の上流の第3のpA配列、および、3’から5’への方向で、前記第3のpA配列の下流かつ前記3’ITRの上流の前記第4のpA配列;ならびに/または
m)5’から3’への方向で、前記5’ITRの下流かつ第2のpA配列の上流の第1のpA配列、3’から5’への方向で、前記第1のpA配列の下流かつ前記プロモーターの上流の前記第2のpA配列;3’から5’への方向で、前記NOIの下流かつ第4のpA配列の上流の第3のpA配列、および、5’から3’への方向で、前記第3のpA配列の下流かつ前記3’ITRの上流の前記第4のpA配列
をさらに含み、
前記組換えrAAVベクターゲノムが、3’から5’への方向のNOIおよび/または3’から5’への方向のプロモーターをさらに含まない、
組換えrAAVベクターゲノム。
【請求項2】
前記1または複数の
pA配列が、b)3’から5’への方向で、前記3’ITRの上流かつ前記NOIの下流のpA配列である、請求項1に記載のrAAVベクターゲノム。
【請求項3】
前記5’ITRおよび/または前記3’ITRが、前記5’ITRおよび/または前記3’ITRからプロモーター活性を減少させまたは除去するように改変されている、請求項1または2に記載のrAAVベクターゲノム。
【請求項4】
(a)低分子干渉RNA(siRNA)、短鎖ヘアピンRNA(shRNA)、マイクロRNA(miRNA)、長鎖二本鎖RNA(長鎖dsRNA)、アンチセンスRNAおよびリボザイムからなる群から選択される、細胞質dsRNAセンサーを標的化する干渉RNA(RNAi)または機能的なRNA、または
(b)C型肝炎ウイルスからのセリンプロテアーゼNS3-4A、A型肝炎ウイルスおよびGBウイルスBからのプロテアーゼ、B型肝炎ウイルス(HBV)Xタンパク質、ポリ(rC)結合タンパク質2、20SプロテアソームサブユニットPSMA7、マイトフュージン2、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるMAVSシグナル伝達阻害剤
をコードする1または複数の核酸分子をさらに含む、請求項1~
3のいずれか1項に記載のrAAVベクターゲノム。
【請求項5】
前記干渉RNA(RNAi)または機能的なRNAをコードする1または複数の核酸分子が第2のプロモーター
に作動可能に付随している、請求項
4に記載のrAAVベクターゲノム。
【請求項6】
前記1または複数の核酸分子が、MDA5を阻害するsiRNAまたはMAVSを阻害するsiRNAもしくはshRNAである、請求項
4または
5に記載のrAAVベクターゲノム。
【請求項7】
前記MDA5を阻害するsiRNAが配列番号1で示されるものであり、前記MAVSを阻害するsiRNAが配列番号2、配列番号3または配列番号4で示されるものであり、前記MAVSを阻害するshRNAが配列番号38で示されるものである、請求項
6に記載のrAAVベクターゲノム。
【請求項8】
AAVの5’ITR、第1のプロモーターが作動可能に付随している前記siRNA、第2のプロモーターが作動可能に付随しているNOI、3’から5’への方向のpA配列およびAAVの3’ITRを含む、請求項
6または
7に記載のrAAVベクターゲノム。
【請求項9】
AAVの5’ITR、両方ともにプロモーターが作動可能に付随しているNOIおよび前記siRNA、3’から5’への方向のpA配列、ならびにAAVの3’ITRをこの順序で含む、請求項
6または
7に記載のrAAVベクターゲノム。
【請求項10】
AAVの5’ITR、両方ともにプロモーターが作動可能に付随している前記siRNAおよびNOI、3’から5’への方向のpA配列、ならびにAAVの3’ITRをこの順序で含む、請求項
6または
7に記載のrAAVベクターゲノム。
【請求項11】
AAVの5’ITR、プロモーターが作動可能に付随している、NOI内に前記siRNAイントロン配列を含むNOI、3’から5’への方向のpA配列、およびAAVの3’ITRをこの順序で含む、請求項
6または
7に記載のrAAVベクターゲノム。
【請求項12】
請求項1~
11のいずれか1項に記載のrAAVベクターゲノムを含むrAAV粒子。
【請求項13】
前記rAAVベクターゲノムが請求項2に記載のrAAVベクターゲノムである、請求項
12に記載のrAAV粒子。
【請求項14】
請求項
12に記載のrAAVベクター粒子を含む組成物。
【請求項15】
対象の細胞中へのAAVベクターの形質導入を増進する
ための医薬組成物であって
、請求項1~
11のいずれか1項に記載のrAAVベクターゲノムを含む
、医薬組成物。
【請求項16】
前記rAAVベクターゲノムが請求項2に記載のrAAVベクターゲノムである、請求項
15に記載の
医薬組成物。
【請求項17】
前記対象の細胞におけるdsRNA活性化経路に干渉する剤を投与することをさらに含む、請求項
15または
16に記載の
医薬組成物。
【請求項18】
前記対象の細胞中でdsRNA活性化経路に干渉する前記剤がヒドロコルチゾンである、請求項
17に記載の
医薬組成物。
【請求項19】
前記AAVベクターおよび前記剤が前記対象に同時に投与されるか、別々の時点において投与される、請求項
17または
18に記載の
医薬組成物。
【請求項20】
プラスミド中に含まれたものである、請求項1~
11のいずれか1項に記載のrAAVベクターゲノム。
【請求項21】
前記rAAVベクターゲノムが請求項2に記載のrAAVベクターゲノムである、請求項
20に記載のrAAVベクターゲノム。
【請求項22】
細胞中に含まれている、請求項
20または
21に記載のrAAVベクターゲノム。
【請求項23】
rAAVベクター粒子が第1のAAV血清型であり、AAV 5’ITRおよび/またはAAV 3’ITRは、第1のAAV血清型とは異なる第2のAAV血清型からのものである、請求項
12に記載のrAAVベクター粒子。
【請求項24】
前記第1のAAV血清型がAAV2であり、前記第2のAAV血清型がAAV5である、請求項
23に記載のrAAVベクター粒子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[優先権の声明]
本出願は、2018年1月19日に出願された米国仮出願第62/619,468号の35 U.S.C. §119(e)の下での利益を主張し、該仮出願の全内容は参照により本明細書の一部をなすものとする。
【0002】
[政府の支援に関する声明]
本発明は、米国国立衛生研究所により授与された助成金番号AI117408、HL125749、AI072176およびAR064369の下での政府の支援により為された。政府は本発明においてある特定の権利を有する。
【0003】
[配列表の電子的提出に関する声明]
2019年1月18日に作成され、EFS-Webを介して提出される5470-819WO_ST25.txtというタイトルの7,205バイトのサイズの37 C.F.R. §1.821の下で提出されるASCIIテキスト形式の配列表が紙のコピーの代わりに提供される。この配列表は、本明細書において参照することによりその開示のために本明細書の一部をなすものとする。
【0004】
[発明の分野]
本発明は、AAV形質導入と関連付けられる自然免疫応答の阻害のための方法および組成物を対象とする。
【背景技術】
【0005】
アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターは、血友病および失明障害を有する患者における臨床試験において成功裡に応用されてきた。第IX因子(FIX)をコードするAAVベクターの送達後、血友病Bを有する一部の患者において、導入遺伝子発現は第6~10週時に肝臓酵素の上昇と共に減少した。プレドニゾンの投与は、血液中のFIXの減少を予防し、かつFIXを以前のレベルまで増加させた。この現象は、齧歯動物および大型動物における前臨床試験においては観察されなかった。キャプシド特異的な細胞傷害性Tリンパ球(CTL)がこれらの患者において検出され、したがって、治療的失敗は、キャプシド特異的CTLにより媒介されるAAV形質導入肝細胞のクリアランスの結果としてもたらされることが示唆されている。この推定は本発明により完全には支持されない。
【0006】
まず第1に、AAVキャプシド抗原提示の速度論研究は、効率的な抗原提示はAAV投与の直後に起こり、AAV形質導入後の後期の時点において検出されないレベルまで徐々に減少することを示した。これは、キャプシド特異的CTLは早期の時点においてほとんどのAAV形質導入細胞を殺傷するはずであるが、後期の時点において導入遺伝子発現に影響し得ないことを暗に示す。第2に、AAV形質導入標的細胞のCTL媒介性の除去があったのであれば、プレドニゾンの投与は導入遺伝子発現を以前のレベルまで回復させないであろう。第3に、キャプシド特異的CTL応答が一部の患者において観察されたがFIX発現は阻害されなかった。したがって、他の機序がAAV遺伝子送達後のFIXの減少において役割を果たす可能性がある。自然免疫応答はTLR9およびTLR2認識を介してAAV投与後に直ちに活性化されることが実証されているが、AAV投与後の後期の時点における自然免疫応答誘導または導入遺伝子発現におけるその役割についての研究はない。
【0007】
AAVは一本鎖DNAウイルスである。そのゲノムは、2つの逆位末端反復(ITR)が隣接したrepおよびcap配列を含む。治療カセット(プロモーターと、1つまたは複数の治療用導入遺伝子と、ポリ(A)(「pA」)テイルとを含む)によるrepおよびcap遺伝子の置換はAAVベクター構築物を結果としてもたらす。AAVのITRはプロモーター機能を有することが示されており、これは、5’ITRから転写されるプラス鎖RNAおよび3’ITRから転写されるマイナス鎖RNAがAAV形質導入細胞中で生成され得ることを暗に示す。この仮定は、本明細書に記載の発見により支持され、該発見では、トランスフェクション解析により、3’-ITRを有するプラスミドを欠失させた場合に導入遺伝子発現が増加した(
図9)。3’-ITRプロモーターにより転写されるRNAのマイナス鎖は、アンチセンスRNAとして働いて導入遺伝子発現をノックダウンする可能性がある。両方の末端上でAAVのITRプロモーターから生成されるプラス鎖RNAおよびマイナス鎖RNAは、AAV形質導入細胞の細胞質中でアニールしてdsRNAを形成することができる。追加的に、遺伝子送達用の一部のプロモーターは2方向性転写機能を有しマイナス鎖RNAを生成し、それによりdsRNAを形成することもできることが示された。遺伝子送達からのdsRNAを形成する第3の可能性は、導入遺伝子cDNA配列の改変に起因する導入遺伝子カセットからのmRNAの二次構造形成である。このdsRNA形成は自然免疫応答を潜在的に活性化させる。
【0008】
MDA5およびRIG-Iは、ウイルス感染後にI型インターフェロンシグナル伝達経路を活性化させることができる細胞質ウイルスRNAセンサーであるため、それらは抗ウイルス自然免疫において不可欠な役割を果たす。MDA5およびRIG-Iは高い配列類似性および共通のシグナル伝達アダプター、ミトコンドリア抗ウイルスシグナル伝達(MAVS)を共有するが、それらは異なるウイルスまたはウイルスRNAを認識することにより抗ウイルス免疫において重複しない機能を果たす。RIG-Iは、多くの場合に様々なポジティブ鎖およびネガティブ鎖ウイルス中に存在する5’-三リン酸化(PPP)平滑末端二本鎖RNA(dsRNA)または一本鎖RNAヘアピンを認識する。MDA5は、dsRNAウイルスのゲノム中の比較的長いdsRNAまたは脳心筋炎ウイルス(EMCV)およびポリオウイルスなどのポジティブ鎖ウイルスのdsRNA複製中間体を認識する。
【0009】
本発明は、対象におけるAAV形質導入と関連付けられる自然免疫応答の阻害における組成物およびその使用方法を提供することにより当該技術分野における以前の短所を克服する。
【発明の概要】
【0010】
この概要は、本明細書に開示される主題のいくつかの実施形態を列記し、多くの場合にこれらの実施形態のバリエーションおよびパーミュテーションを列記する。この概要は、多数の変更される実施形態の単なる例示である。所与の実施形態の1つまたは複数の代表的な特徴の記載は同様に例示的なものである。そのような実施形態は、典型的には、記載される特徴ありまたはなしで存在することができ、同様に、それらの特徴は、この概要に列記されていようといまいと、本明細書に開示される主題の他の実施形態に適用することができる。過度の反復を回避するために、この概要はそのような特徴の全ての可能な組合せを列記も示唆もしない。
【0011】
一実施形態では、本発明は、アデノ随伴ウイルス(AAV)の5’逆位末端反復(ITR)、プロモーターが作動可能に付随している目的のヌクレオチド配列(NOI)およびAAVの3’ITRを含む組換え核酸分子であって、a)3’から5’への方向で、5’ITRの下流かつプロモーターの上流のポリ(A)(pA)配列、および、3’から5’への方向で、3’ITRの上流かつNOIの下流のpA配列;b)3’から5’への方向で、3’ITRの上流かつNOIの下流のpA配列;c)3’から5’への方向で、3’ITRの上流かつNOIの下流の第1のpA配列、および、5’から3’への方向で、第1のpA配列の下流かつ3’ITRの上流の第2のpA配列;d)3’から5’への方向で、3’ITRの上流かつNOIの下流の第1のpA配列、および、5’から3’への方向で、NOIの下流かつ第1のpAの上流の第2のpA配列;e)3’から5’への方向で、3’ITRの上流かつNOIの下流の第1のpA配列、および、5’から3’への方向で、5’ITRの下流かつプロモーターの上流の第2のpA配列;f)3’から5’への方向で、5’ITRの下流かつプロモーターの上流の第1のpA配列、5’から3’への方向で、NOIの下流かつ第3のpA配列の上流の第2のpA配列、および、3’から5’への方向で、第2のpA配列の下流かつ3’ITRの上流の第3のpA配列;g)5’から3’への方向で、5’ITRの下流かつプロモーターの上流の第1のpA配列、3’から5’への方向で、NOIの下流かつ第3のpA配列の上流の第2のpA配列、および、5’から3’への方向で、第2のpA配列の下流かつ3’ITRの上流の第3のpA配列;h)5’から3’への方向で、5’ITRの下流かつプロモーターの上流の第1のpA配列、5’から3’への方向で、NOIの下流かつ第3のpA配列の上流の第2のpA配列、および、3’から5’への方向で、第2のpA配列の下流かつ3’ITRの上流の第3のpA配列;i)5’から3’への方向で、5’ITRの下流かつプロモーターの上流の第1のpA配列、3’から5’への方向で、NOIの下流かつ第3のpA配列の上流の第2のpA配列、および、5’から3’への方向で、第2のpA配列の下流かつ3’ITRの上流の第3のpA配列;j)3’から5’への方向で、5’ITRの下流かつ第2のpA配列の上流の第1のpA配列、5’から3’への方向で、第1のpA配列の下流かつプロモーターの上流の第2のpA配列;5’から3’への方向で、NOIの下流かつ第4のpA配列の上流の第3のpA配列、および、3’から5’への方向で、第3のpA配列の下流かつ3’ITRの上流の第4のpA配列;k)3’から5’への方向で、5’ITRの下流かつ第2のpA配列の上流の第1のpA配列、5’から3’への方向で、第1のpA配列の下流かつプロモーターの上流の第2のpA配列;3’から5’への方向で、NOIの下流かつ第4のpA配列の上流の第3のpA配列、および、5’から3’への方向で、第3のpA配列の下流かつ3’ITRの上流の第4のpA配列;l)5’から3’への方向で、5’ITRの下流かつ第2のpA配列の上流の第1のpA配列、3’から5’への方向で、第1のpA配列の下流かつプロモーターの上流の第2のpA配列;5’から3’への方向で、NOIの下流かつ第4のpA配列の上流の第3のpA配列、および、3’から5’への方向で、第3のpA配列の下流かつ3’ITRの上流の第4のpA配列;ならびに/または、m)5’から3’への方向で、5’ITRの下流かつ第2のpA配列の上流の第1のpA配列、3’から5’への方向で、第1のpA配列の下流かつプロモーターの上流の第2のpA配列;3’から5’への方向で、NOIの下流かつ第4のpA配列の上流の第3のpA配列、および、5’から3’への方向で、第3のpA配列の下流かつ3’ITRの上流の第4のpA配列をさらに含む、組換え核酸分子を提供する。
【0012】
別の実施形態では、本発明は、アデノ随伴ウイルス(AAV)の5’逆位末端反復(ITR)、プロモーターが作動可能に付随している目的のヌクレオチド配列(NOI)およびAAVの3’ITRを含む第1のAAV血清型のAAVベクターカセットを含む組換え核酸分子であって、組換え核酸分子が、第1のAAV血清型の5’ITRおよび/または3’ITRを置換する、第1のAAV血清型とは異なる第2のAAV血清型からのAAV-5’ITRおよび/またはAAV-3’ITRを含み、かつ、特定の実施形態では、第2のAAV血清型のITRが、プロモーター機能を有さず、または第1のAAV血清型のITRのプロモーター機能と比較して低減したプロモーター機能を有する、組換え核酸分子を提供する。この実施形態では、第1のAAV血清型は、現在公知のまたは今後見出される任意のAAV血清型であり得、かつ、第1のAAV血清型とは異なる第2のAAV血清型は、現在公知のまたは今後見出される任意のAAV血清型であり得る。一部の実施形態では、第1のAAV血清型はAAV2であり、かつ、第2のAAV血清型のITRはAAV5である。例えば、組換え核酸分子は、AAV2のAAVベクターカセットを含み得、AAV2の前記カセットはAAV5の5’および/または3’ITRを含み得る。
【0013】
さらなる実施形態では、本発明は、アデノ随伴ウイルス(AAV)の5’逆位末端反復(ITR)、プロモーターが作動可能に付随している目的のヌクレオチド配列(NOI)およびAAVの3’ITRを含む組換え核酸分子であって、5’ITRおよび/または3’ITRが、5’ITRおよび/または3’ITRからプロモーター活性を減少させまたは除去するように(例えば、置換、挿入および/または欠失により)改変されている、組換え核酸分子を提供する。
【0014】
別の実施形態では、本発明は、AAVの5’ITR、プロモーターが作動可能に付随しているNOI、3’から5’への方向のpA配列およびAAVの3’ITRを含む、組換え核酸分子であって、NOI配列が、1つまたは1つより多くの細胞質dsRNAセンサーを標的化する干渉RNA配列をコードする1つまたは1つより多くのヌクレオチド配列と融合している(例えば、それとインフレーム;その上流および/または下流)、組換え核酸分子を提供する。
【0015】
一部の実施形態では、本発明は、A)AAVの5’ITR、第1のプロモーターが作動可能に付随しているNOI、3’から5’への方向の第1のpA配列、第2のプロモーターが作動可能に付随している、細胞質dsRNAセンサーを標的化する干渉RNA配列をコードするヌクレオチド配列、第2のpA配列およびAAVの3’ITRを含む、組換え核酸分子;B)AAVの5’ITR、第1のプロモーターが作動可能に付随しているNOI、3’から5’への方向のpA配列、第2のプロモーターが作動可能に付随している、細胞質dsRNAセンサーを標的化する短鎖ヘアピンRNA(shRNA)配列、およびAAVの3’ITRを含む、組換え核酸分子;C)AAVの5’ITR、第1のプロモーターが作動可能に付随している、細胞質dsRNAセンサーを標的化するshRNA、第2のプロモーターが作動可能に付随しているNOI、3’から5’への方向のpA配列およびAAVの3’ITRを含む、組換え核酸分子;D)AAVの5’ITR、両方ともプロモーターが作動可能に付随しているNOIおよび細胞質dsRNAセンサーを標的化するマイクロRNA(miRNA)配列、3’から5’への方向のpA配列、およびAAVの3’ITRをこの順序で含む、組換え核酸分子;E)AAVの5’ITR、両方ともプロモーターが作動可能に付随している、細胞質dsRNAセンサーを標的化するmiRNAおよびNOI、3’から5’への方向のpA配列、およびAAVの3’ITRをこの順序で含む、組換え核酸分子;ならびに/または、E)AAVの5’ITR、プロモーターが作動可能に付随している、NOI内にmiRNAイントロン配列を含むNOI、3’から5’への方向のpA配列、およびAAVの3’ITRをこの順序で含む、組換え核酸分子を提供する。
【0016】
本発明の別の態様は、上記の組換え核酸分子を含むrAAVベクターゲノムに関する。本発明の別の態様は、上記の核酸分子を含むrAAVゲノムを含むAAV粒子に関する。本発明の別の態様は、rAAV粒子を含む組成物に関する。
【0017】
AAVの5’ITR、プロモーターが作動可能に付随しているNOI、3’から5’への方向のpA配列、およびAAVの3’ITRを含む、第1の組換え核酸分子、ならびに、細胞質dsRNAセンサーを標的化する干渉RNA配列を含む、第2の組換え核酸分子を含む組成物が本明細書においてさらに提供される。
【0018】
本発明の細胞質dsRNAの非限定的な例としては、本発明の組換え核酸分子中での任意の組合せおよび順序の、MDA5、MAVS、RIG-1、TRAF6、TRAF5、RIP1、FADD、IRF、TRAF3、NAP1、TBK1、IKK、IκB、TANKおよびMAVS下流シグナル伝達に関与する任意の他の分子が挙げられる。
【0019】
本発明の干渉RNA(RNAi)の非限定的な例としては、当該技術分野において公知のような、低分子干渉RNA(siRNA)、短鎖ヘアピンRNA(shRNA)、マイクロRNA(miRNA)、長鎖二本鎖RNA(長鎖dsRNA)、アンチセンスRNA、リボザイムなどの他に、現在公知のまたは今後見出される任意の他の干渉RNAまたは阻害RNAが挙げられる。
【0020】
本発明はさらに、AAVの5’ITR、両方ともプロモーターが作動可能に付随しているNOIおよびMAVSシグナル伝達の阻害剤、3’から5’への方向のpA配列ならびにAAVの3’ITRを含む、組換え核酸分子を提供する。
【0021】
AAVの5’ITR、第1のプロモーターが作動可能に付随しているNOI、3’から5’への方向で第1のpA配列、第2のプロモーターが作動可能に付随しているMAVSシグナル伝達の阻害剤、3’から5’への方向で第2のpA配列およびAAVの3’ITRを含む、組換え核酸分子もまた本明細書において提供される。
【0022】
追加の実施形態では、本発明は、AAVの5’ITR、プロモーターが作動可能に付随しているNOI、3’から5’への方向のpA配列、およびAAVの3’ITRを含む、第1の組換え核酸分子、ならびに、MAVSシグナル伝達の阻害剤および3’から5’への方向のpA配列を含む、第2の組換え核酸分子を含む組成物を提供する。
【0023】
MAVSシグナル伝達の阻害剤の非限定的な例としては、C型肝炎ウイルスからのセリンプロテアーゼNS3-4A、A型肝炎ウイルスおよびGBウイルスBからのプロテアーゼ、ならびにB型肝炎ウイルス(HBV)Xタンパク質、ポリ(rC)結合タンパク質2、20SプロテアソームサブユニットPSMA7、ならびにマイトフュージン2の他に、現在公知のまたは今後見出されるMAVSシグナル伝達の任意の他の阻害剤が挙げられる。
【0024】
対象の細胞中へのAAVベクターの形質導入を増進する方法であって、対象にAAVベクターおよび対象の細胞中でdsRNA活性化経路に干渉する剤を投与することを含む方法もまた本明細書において提供される。
【0025】
dsRNA活性化経路に干渉する剤の非限定的な例としては、2-アミノプリン、ステロイド(例えば、
図28および
図29に示すようなヒドロコルチゾン)、ならびに現在公知のまたは今後見出される細胞中でdsRNA活性化経路に干渉する任意の他の剤が挙げられる。
【0026】
一部の実施形態では、本発明のAAVベクターおよび剤は、対象に同時におよび/または引き続いて、任意の順序および任意の時間間隔(例えば、時間、日、週など)で投与され得る。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】IFN-βがHeLa細胞株においてAAV導入遺伝子発現を阻害したことを示す図である。HeLa細胞に細胞当たり5×10
3個のAAV2/ルシフェラーゼの粒子を形質導入した。(1A)24h後、組換えヒトIFN-βを異なる用量において培地に加えた。IFN-βの添加後1、2、4および6日目に、ルシフェラーゼアッセイにより導入遺伝子発現を検出した。(1B)組換えヒトIFN-βを0.5ng/mLにおいて毎日培地に加えた。導入遺伝子発現を1、2、4および6日目にルシフェラーゼアッセイにより検出した。IFN-β処理なしと比較した場合に、*** p<0.001。
【
図2】ポリ(I:C)が細胞株においてAAV導入遺伝子発現を阻害したことを示す図である。HeLaまたはHuh7細胞に細胞当たり5×10
3個のAAV2/ルシフェラーゼの粒子を形質導入した。2μg/mLのポリ(I:C)を、AAV形質導入の18h前、0日目または3日目の異なる時点において加えた。ルシフェラーゼ発現をポリ(I:C)トランスフェクションの3日後に検出した。
【
図3A】dsRNA免疫応答はAAV形質導入後の後期の時点において活性化されることを示す図である。HeLa細胞に細胞当たり5×10
3個のdsAAV2/GFPの粒子を形質導入した。HeLa細胞におけるMDA5の発現を形質導入後の異なる時点においてQ-PCRにより検出した。PBS群と比較した場合に、*p<0.05、**p<0.01。データは3つの実験からの平均および標準偏差を表す。各実験について、PBSまたはAAV感染群は2または3ウェルの細胞を含有する。Q-PCRデータ解析のために、各実験の各時点において、PBS群からの1つの試料を1に正規化した。
【
図3B】dsRNA免疫応答はAAV形質導入後の後期の時点において活性化されることを示す図である。HeLa細胞に細胞当たり5×10
3個のdsAAV2/GFPの粒子を形質導入した。HeLa細胞におけるRIG-Iの発現を形質導入後の異なる時点においてQ-PCRにより検出した。PBS群と比較した場合に、*p<0.05、**p<0.01。データは3つの実験からの平均および標準偏差を表す。各実験について、PBSまたはAAV感染群は2または3ウェルの細胞を含有する。Q-PCRデータ解析のために、各実験の各時点において、PBS群からの1つの試料を1に正規化した。
【
図3C】dsRNA免疫応答はAAV形質導入後の後期の時点において活性化されることを示す図である。HeLa細胞に細胞当たり5×10
3個のdsAAV2/GFPの粒子を形質導入した。HeLa細胞におけるIFN-βの発現を形質導入後の異なる時点においてQ-PCRにより検出した。PBS群と比較した場合に、*p<0.05、**p<0.01。データは3つの実験からの平均および標準偏差を表す。各実験について、PBSまたはAAV感染群は2または3ウェルの細胞を含有する。Q-PCRデータ解析のために、各実験の各時点において、PBS群からの1つの試料を1に正規化した。
【
図3D】dsRNA免疫応答はAAV形質導入後の後期の時点において活性化されることを示す図である。HeLa細胞に細胞当たり5×10
3個のdsAAV2/GFPの粒子を形質導入した。各群のHeLa細胞におけるMDA5発現をdsAAV2/GFP形質導入の8日後にウエスタンブロットにより検出した。
【
図3E】dsRNA免疫応答はAAV形質導入後の後期の時点において活性化されることを示す図である。HeLa細胞に細胞当たり5×10
3個のdsAAV2/GFPの粒子を形質導入した。MDA5発現の相対的なレベルをβ-アクチンタンパク質の強度に基づいて算出した。PBS群と比較した場合に、*** p<0.001。
【
図4A】異なる細胞株におけるdsRNA応答プロファイルを示す図である。Huh7、HEK293およびHepG2細胞に細胞当たり5×10
3個のAAV2/GFPの粒子を形質導入した。MDA5、RIG-IおよびIFN-βの発現を7日目にQ-PCRにより検出した。PBS群と比較した場合に、*p<0.05、**p<0.01。Q-PCRデータ解析のために、各実験においてPBS群からの試料を1に正規化した。
【
図4B】異なる細胞株におけるdsRNA応答プロファイルを示す図である。異なる導入遺伝子を有するAAV2を細胞当たり5×10
3個の粒子を用いてHeLa細胞に加えた。MDA5、RIG-IおよびIFN-βの発現をAAV形質導入後7日目にQ-PCRにより検出した。Q-PCRデータ解析のために、各実験においてPBS群からの試料を1に正規化した。
【
図5A】dsAAV2/GFP形質導入後のヒト初代肝細胞におけるdsRNA自然免疫応答を示す図である。12の個体からの新鮮なヒト初代肝細胞に細胞当たり5×10
3個の粒子を用いてAAV2/GFPにより形質導入を行った。MDA5、RIG-IおよびIFN-βの発現をAAV形質導入後の異なる時点においてQ-PCRにより検出した。相対的な遺伝子発現の算出のために、各時点におけるPBS群の遺伝子発現を1に正規化し、それはグラフ中に示さなかった。
【
図5B】dsAAV2/GFP形質導入後のヒト初代肝細胞におけるdsRNA自然免疫応答を示す図である。12個体からの新鮮なヒト初代肝細胞に細胞当たり5×10
3個の粒子を用いてAAV2/GFPにより形質導入を行った。MDA5、RIG-IおよびIFN-βの発現をAAV形質導入後の異なる時点においてQ-PCRにより検出した。相対的な遺伝子発現の算出のために、各時点におけるPBS群の遺伝子発現を1に正規化し、それはグラフ中に示さなかった。
【
図6A】dsAAV2/hFIX-opt形質導入後のヒト初代肝細胞におけるdsRNA自然免疫応答を示す図である。10の個体からの新鮮なヒト初代肝細胞に細胞当たり5×10
3個の粒子を用いてdsAAV8/hFIX-optにより形質導入を行った。MDA5、RIG-IおよびIFN-βの発現をAAV形質導入後の異なる時点においてQ-PCRにより検出した。相対的な遺伝子発現の算出のために、各時点におけるPBS群の遺伝子発現を1に正規化し、それはグラフ中に示さなかった。
【
図6B】dsAAV2/hFIX-opt形質導入後のヒト初代肝細胞におけるdsRNA自然免疫応答を示す図である。10の個体からの新鮮なヒト初代肝細胞に細胞当たり5×10
3個の粒子を用いてdsAAV8/hFIX-optにより形質導入を行った。MDA5、RIG-IおよびIFN-βの発現をAAV形質導入後の異なる時点においてQ-PCRにより検出した。相対的な遺伝子発現の算出のために、各時点におけるPBS群の遺伝子発現を1に正規化し、それはグラフ中に示さなかった。
【
図7A】dsAAV8/hFIX-opt形質導入後の異種移植マウスからのヒト肝細胞におけるdsRNA応答を示す図である。異種移植マウスからの2つのヒト肝細胞に3×10
11個のAAV8/hFIX-optの粒子を注入した。マウスにおけるヒト肝細胞のMDA5、RIG-IおよびIFN-βの発現をAAV形質導入の8週後にQ-PCRにより検出した。マウス肝臓におけるMDA5タンパク質を8週後にウエスタンブロットにより検出し、バンド強度を測定してβ-アクチンに基づく相対的なMDA5発現を示し、それにおいてデータは3つの別々の実験からであった。対照群と比較した場合に、**p<0.01。
【
図7B】dsAAV8/hFIX-opt形質導入後の異種移植マウスからのヒト肝細胞におけるdsRNA応答を示す図である。別のドナーからのヒト肝細胞を有する2匹の異種移植マウスにdsAAV8/hFIX-optの用量を注射した。マウスにおけるヒト肝細胞のMDA5、RIG-IおよびIFN-βの発現をAAV形質導入の4および8週後にQ-PCRにより検出した。
【
図7C】dsAAV8/hFIX-opt形質導入後の異種移植マウスからのヒト肝細胞におけるdsRNA応答を示す図である。マウス肝臓におけるMDA5タンパク質を4または8週後にウエスタンブロットにより検出し、MDA5の相対発現レベルをβ-アクチン強度に基づいて算出した。対照群と比較した場合に、*p<0.05。
【
図8A】dsRNA活性化経路のノックダウンはAAV導入遺伝子発現を増加させたことを示す図である。HeLa細胞にsi対照、siMDA5またはsiMAVSをトランスフェクトした。ノックダウン効率をウエスタンブロットおよびQ-PCRにより検出した。
【
図8B】dsRNA活性化経路のノックダウンはAAV導入遺伝子発現を増加させたことを示す図である。0日目に、HeLa細胞に細胞当たり5×10
3個のAAV2/ルシフェラーゼの粒子を形質導入した。siRNAを4日目にHeLa細胞にトランスフェクトし、ルシフェラーゼ発現を48hまたは72h後に検出した。対照として、2μg/mLのポリ(I:C)を3日目に加え、siRNAを4日目にHeLa細胞にトランスフェクトした。PBS群と比較した場合に、*p<0.05、**p<0.01、**p<0.001。
【
図8C】dsRNA活性化経路のノックダウンはAAV導入遺伝子発現を増加させたことを示す図である。AAV形質導入の4日後に、siRNAをHeLa細胞にトランスフェクトし、IFN-β発現をsiRNAトランスフェクションの48h後にQ-PCRにより検出した。PBS群と比較した場合に、**p<0.01。
【
図8D】dsRNA活性化経路のノックダウンはAAV導入遺伝子発現を増加させたことを示す図である。AAV形質導入の4日後に、siRNAおよびIFN-βプロモーターレポータープラスミドをHeLa細胞に共トランスフェクトし、72h後にルシフェラーゼ活性を測定した。
【
図8E】dsRNA活性化経路のノックダウンはAAV導入遺伝子発現を増加させたことを示す図である。siRNAトランスフェクションの48h後にMDA5発現をQ-PCRにより検出した。
【
図9】導入遺伝子発現に対する3’-ITRの効果を示す図である。ウェル当たり1×10
5個の293細胞を24ウェルプレートにプレーティングした。24時間後、2つのAAV ITR(2TR)が隣接した、または3’ITR欠失(up/TR)を有するまたは導入遺伝子と3’-ITRとの間に逆方向においてポリ(A)(2TR/down-ポリA-R)を有する0.5upのヒトアルファ-1アンチトリプシン(AAT)発現プラスミドをlipofectamine 2000を使用して293細胞にトランスフェクトした。トランスフェクションの48時間後に、上清中のAATレベルをELISAを使用して検出した。2TRプラスミドと比較した場合に、*p<0.05、**p<0.01。
【
図10A】単一のポリ(A)遮断を有するカセットのダイアグラムを示す図である。
【
図10B】複数のポリ(A)遮断を有するカセットのダイアグラムを示す図である。
【
図11】AAV2およびAAV5からのITRのダイアグラムを示す図である。
【
図12】AAVのITRプロモーターからのGFP発現を示す図である。5ugのpTR/GFPを6ウェルプレート中の293細胞に1ugのpCMV/lacZと共トランスフェクトした。2日後に、293細胞を蛍光顕微鏡下で可視化し、LacZ発現について染色した。
【
図13】AAVのITRプロモーターからのAAT発現を示す図である。2ugのpTR/AATを12ウェルプレート中の異なる細胞にトランスフェクトした。2日後に、上清をELISAを使用するAAT検出のために回収した。
【
図14】AAV/ITR-AATベクターからのAAT発現を示す図である。AAV/ITR/AATベクターの1×10e9個の粒子を48ウェルプレート中の1×10e5個の293細胞に加えた。2日後に、上清をAAT発現について調べるために回収した。
【
図15】AAV/ITR/AATベクターの1×10e11個の粒子をC57BLマウスにおいて筋肉注射を介して投与したことを示す図である。4週後に、血液を回収し、AAT発現をELISAにより検出した。
【
図16】shRNAまたはmiRNAについての位置のダイアグラムA~Fを示す図である。
【
図17】阻害剤発現用のカセットのダイアグラムA~Cを示す図である。
【
図18】後期の時点におけるAAV形質導入に対するヒドロコルチゾンの効果を示す図である。Hela細胞にAAV2/lucを形質導入し、10ugのヒドロコルチゾンをAAV形質導入後5日目に培養に加えた。ヒドロコルチゾンの添加の24時間または48時間後に、細胞溶解液からのルシフェラーゼ活性を測定した。
【
図19】後期の時点におけるAAV形質導入からの自然免疫応答に対するヒドロコルチゾンの効果を示す図である。Hela細胞にAAV2/lucを形質導入し、10ugのヒドロコルチゾンをAAV形質導入後5日目に培養に加えた。ヒドロコルチゾンの添加の24時間後に、定量的RT-PCRによる転写レベルにおけるMDA5(上パネル)およびIFN-β(下パネル)発現の解析のために細胞を回収した。
【
図20A】AAV形質導入細胞における鎖転写物生成を示す図である。プラス鎖またはマイナス鎖の転写物を検出するための遺伝子特異的逆転写の概要。HeLa細胞をAAV2/ルシフェラーゼ形質導入後8日目に回収した。RNAを抽出し、デオキシリボヌクレアーゼを用いて処理した。プラス鎖またはマイナス鎖のルシフェラーゼのための特定のプライマーを使用して、cDNAの異なる方向を合成した。プライマーペア1(F1およびR1)ならびにプライマーペア2(F2およびR2)を使用してPCRを行って、cDNAの異なる方向の転写物を検出した。
【
図20B】AAV形質導入細胞における鎖転写物生成を示す図である。PCR生成物を示す。PBSをAAVウイルスなしの陰性対照として使用した。pTR/ルシフェラーゼプラスミドはPCR用の陽性対照として働いた。RNAを鋳型として使用して、抽出されたRNAにおけるAAVゲノムDNAの夾雑の可能性を除去した。転写物の収率を測定するために、異なる方向のcDNAをPCR鋳型として20、200、または2,000倍に希釈した。
【
図21】MAVS欠損を有するヒト肝細胞における高いAAV形質導入を示す図である。MAVSノックダウンを伴うヒト肝細胞株PH5CH8およびPH5CH8に細胞当たり異なる用量のAAV2/lucベクターを形質導入した。上パネル:200vg/細胞の用量;中央パネル:5000vg/細胞の用量;下パネル:5000vg/細胞の用量。指し示した時点において導入遺伝子発現を解析した。
【
図22】使用したshRNAおよびMAVS-shRNAノックダウン効率についてのウエスタンブロットを示す図である。5つの異なるMAVS shRNAをHela細胞にトランスフェクトし、48時間後に、細胞を細胞溶解液の調製のために収集した。細胞溶解液をSDS-PAGEゲルに流した後、ニトロセルロース膜に転写し、MAVS抗体およびGAPDH抗体を用いて染色した。ECL Western Blotting Detection Reagent(GE)を使用してシグナルを検出した。(22A)MAVS shRNAの配列。MAVS shRNA #29:配列番号:36;MAVS shRNA #30:配列番号:37;MAVS shRNA #31:配列番号:38;MAVS shRNA #32:配列番号:39;MAVS shRNA #68:配列番号:40。(22B)MAVSおよびGAPDHのウエスタンブロット。
【
図23】shRNAを用いるMAVSのノックダウンはAAV形質導入を増加させることを示す図である。Hela細胞に-1日目にMAVS shRNA #31をトランスフェクトした後、5000個/細胞の用量のAAV2/lucベクターを0日目に加えた。AAV感染後1日目および4日目に、導入遺伝子発現をアッセイした。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の好ましい実施形態が示される添付の図面および明細書を参照して以下において本発明をより十分に記載する。本発明は、しかしながら、異なる形態において具現化されてもよく、本明細書に記載の実施形態に限定されるものと解釈されるべきではない。
【0029】
他に定義されなければ、本明細書において使用される全ての科学技術用語は、本発明が属する技術分野の当業者により一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本発明の記載において使用される学術用語は、特定の実施形態を記載する目的のものに過ぎず、本発明を限定することは意図されない。
【0030】
本明細書において参照される全ての刊行物、特許出願、特許および他の参照文献およびアクセッション番号は、参照することにより参照が提示される文および/または段落に関連する教示のために全体が組み込まれる。
【0031】
本明細書において使用される場合、「a」、「an」または「the」は、1つまたは1つより多くを意味することができる。例えば、細胞(「a」 cell)は、単一の細胞または複数の細胞を意味することができる。
【0032】
また、本明細書において使用される場合、「および/または」は、関連付けられて列記される項目のうちの1つまたは複数の任意のおよび全ての可能な組合せの他に、選択肢(「または」)として解釈された場合に組合せの欠如を指しかつそれを包含する。
【0033】
「約」という用語は、用量(例えば、非ウイルスベクターの量)などの量などの測定可能な値を指す場合に本明細書において使用される場合、指定される量の±20%、±10%、±5%、±1%、±0.5%、またはさらには±0.1%の変動を包含することが意図される。
【0034】
本明細書において使用される場合、「から本質的になる」という移行句は、請求項の範囲が、請求項に記載の指定された材料またはステップ、「および請求項の発明の基本的かつ新規の特徴に実質的に影響しないもの」を包含するように解釈される。In re Herz, 537 F.2d 549, 551-52, 190 USPQ 461, 463 (CCPA 1976)を参照(強調は原文のまま);MPEP §2111.03も参照。したがって、本発明の請求項において使用される場合の「から本質的になる」という用語は、「含む」と同等であるように解釈されることは意図されない。
【0035】
本発明の態様は、AAV投与が、長期のAAV形質導入の結果もたらされる対象における自然免疫応答を誘導するという発見に関する。この自然免疫応答は感染ステージの後期である。理論により縛られるものではないが、自然免疫応答は、少なくとも部分的に、ウイルス感染および/または複製の結果としてもたらされる二本鎖RNAの存在により細胞質dsRNA認識経路が誘発されることにより誘発されると考えられる。そのため、自然免疫応答は、多量のマイナス鎖RNAが(例えば、AAV形質導入の後期相において)AAVにより合成される場合に活性化される。これは、形質導入の6週辺りにそのピークとなることがある。この自然免疫応答は、少なくとも部分的に、レシピエント細胞または対象におけるI型IFN-βの産生の増加、ならびに/またはdsRNAセンサー(例えば、MDA5およびMAVS)の増加を伴う。dsRNAセンサーの発現および/または活性の阻害などによる、AAV形質導入後の後期相における自然免疫応答の阻害は、細胞または対象におけるAAV導入遺伝子発現を増加させる。
【0036】
本発明の一態様は、AAV形質導入におけるdsRNAの生成を低減し、それにより、自然免疫応答の誘発を低減するように、および/または(例えば、MDA5および/またはMAVSなどの応答のメディエーターを特異的に標的化するsiRNAなどのRNAiを発現させることにより)生成され得る自然免疫応答を阻害するように設計された核酸分子カセットに関する。様々な形態のこれらのカセットが本明細書に記載される(例えば、
図10Aおよび/または
図10Bおよび/または
図16および/または
図17に示される)。本発明の別の態様は、本明細書に記載されるような核酸分子カセットを含むrAAVベクターゲノムに関する(例えば、
図10Aおよび/または
図10Bおよび/または
図16および/または
図17に示される)。核酸分子カセットを含有するAAVゲノムは、ウイルスキャプシドにさらにパッケージングされてrAAV粒子を形成してもよい。本発明の別の態様は、本明細書に記載されるような核酸分子カセットを含むrAAVベクターゲノムまたはAAV粒子を含む医薬配合物に関する。
【0037】
一実施形態では、核酸分子カセットを含むrAAVウイルス粒子による感染は、本明細書に記載のカセットエレメントを欠いたそれ以外は同一のrAAVウイルス粒子と比較して、ウイルス形質導入の後期相において、レシピエント細胞または対象における自然免疫応答の有意な低減を結果としてもたらす。一実施形態では、核酸分子カセットを含むrAAVウイルス粒子による感染は、本明細書に記載のカセットエレメントを欠いたそれ以外は同一の対照rAAVウイルス粒子と比較して、ウイルス形質導入の後期相において、レシピエント細胞または対象における導入遺伝子の発現の有意な増加を結果としてもたらす。有意な増加は、本明細書の実施例セクションにおいて使用される方法などによる、任意の再現性のある、統計的に有意な増加(例えば、対照に対して5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、50%、60%、75%、90%、100%、2X、3X、4X、5X、10X、またはより大きい増加)である。
【0038】
一実施形態では、本発明は、アデノ随伴ウイルス(AAV)の5’逆位末端反復(ITR)、プロモーターが作動可能に付随している目的のヌクレオチド配列(NOI)およびAAVの3’ITRを含む、組換え核酸分子であって、a)3’から5’への方向で、5’ITRの下流かつプロモーターの上流のポリ(A)(pA)配列、および、3’から5’への方向で、3’ITRの上流かつNOIの下流のpA配列;b)3’から5’への方向で、3’ITRの上流かつNOIの下流のpA配列;c)3’から5’への方向で、3’ITRの上流かつNOIの下流の第1のpA配列、および、5’から3’への方向で、第1のpA配列の下流かつ3’ITRの上流の第2のpA配列;d)3’から5’への方向で、3’ITRの上流かつNOIの下流の第1のpA配列、および、5’から3’への方向で、NOIの下流かつ第1のpAの上流の第2のpA配列;e)3’から5’への方向で、3’ITRの上流かつNOIの下流の第1のpA配列、および、5’から3’への方向で、5’ITRの下流かつプロモーターの上流の第2のpA配列;f)3’から5’への方向で、5’ITRの下流かつプロモーターの上流の第1のpA配列、5’から3’への方向で、NOIの下流かつ第3のpA配列の上流の第2のpA配列、および、3’から5’への方向で、第2のpA配列の下流かつ3’ITRの上流の第3のpA配列;g)5’から3’への方向で、5’ITRの下流かつプロモーターの上流の第1のpA配列、3’から5’への方向で、NOIの下流かつ第3のpA配列の上流の第2のpA配列、および、5’から3’への方向で、第2のpA配列の下流かつ3’ITRの上流の第3のpA配列;h)5’から3’への方向で、5’ITRの下流かつプロモーターの上流の第1のpA配列、5’から3’への方向で、NOIの下流かつ第3のpA配列の上流の第2のpA配列、および、3’から5’への方向で、第2のpA配列の下流かつ3’ITRの上流の第3のpA配列;i)5’から3’への方向で、5’ITRの下流かつプロモーターの上流の第1のpA配列、3’から5’への方向で、NOIの下流かつ第3のpA配列の上流の第2のpA配列、および、5’から3’への方向で、第2のpA配列の下流かつ3’ITRの上流の第3のpA配列;j)3’から5’への方向で、5’ITRの下流かつ第2のpA配列の上流の第1のpA配列、5’から3’への方向で、第1のpA配列の下流かつプロモーターの上流の第2のpA配列;5’から3’への方向で、NOIの下流かつ第4のpA配列の上流の第3のpA配列、および、3’から5’への方向で、第3のpA配列の下流かつ3’ITRの上流の第4のpA配列;k)3’から5’への方向で、5’ITRの下流かつ第2のpA配列の上流の第1のpA配列、5’から3’への方向で、第1のpA配列の下流かつプロモーターの上流の第2のpA配列;3’から5’への方向で、NOIの下流かつ第4のpA配列の上流の第3のpA配列、および、5’から3’への方向で、第3のpA配列の下流かつ3’ITRの上流の第4のpA配列;l)5’から3’への方向で、5’ITRの下流かつ第2のpA配列の上流の第1のpA配列、3’から5’への方向で、第1のpA配列の下流かつプロモーターの上流の第2のpA配列;5’から3’への方向で、NOIの下流かつ第4のpA配列の上流の第3のpA配列、および、3’から5’への方向で、第3のpA配列の下流かつ3’ITRの上流の第4のpA配列;ならびに/またはm)5’から3’への方向で、5’ITRの下流かつ第2のpA配列の上流の第1のpA配列、3’から5’への方向で、第1のpA配列の下流かつプロモーターの上流の第2のpA配列;3’から5’への方向で、NOIの下流かつ第4のpA配列の上流の第3のpA配列、および、5’から3’への方向で、第3のpA配列の下流かつ3’ITRの上流の第4のpA配列をさらに含む、組換え核酸分子を提供する。
【0039】
一実施形態では、アデノ随伴ウイルス(AAV)の5’逆位末端反復(ITR)、プロモーターが作動可能に付随している目的のヌクレオチド配列(NOI)およびAAVの3’ITRを含む、組換え核酸分子は、a)3’から5’への方向で、5’ITRの下流かつプロモーターの上流のポリA(pA)配列、および、3’から5’への方向で、3’ITRの上流かつNOIの下流のpA配列;b)3’から5’への方向で、3’ITRの上流かつNOIの下流のpA配列;c)3’から5’への方向で、3’ITRの上流かつNOIの下流の第1のpA配列、および、5’から3’への方向で、第1のpA配列の下流かつ3’ITRの上流の第2のpA配列;d)3’から5’への方向で、3’ITRの上流かつNOIの下流の第1のpA配列、および、5’から3’への方向で、NOIの下流かつ第1のpAの上流の第2のpA配列;e)3’から5’への方向で、3’ITRの上流かつNOIの下流の第1のpA配列、および、5’から3’への方向で、5’ITRの下流かつプロモーターの上流の第2のpA配列;f)3’から5’への方向で、5’ITRの下流かつプロモーターの上流の第1のpA配列、5’から3’への方向で、NOIの下流かつ第3のpA配列の上流の第2のpA配列、および、3’から5’への方向で、第2のpA配列の下流かつ3’ITRの上流の第3のpA配列;g)5’から3’への方向で、5’ITRの下流かつプロモーターの上流の第1のpA配列、3’から5’への方向で、NOIの下流かつ第3のpA配列の上流の第2のpA配列、および、5’から3’への方向で、第2のpA配列の下流かつ3’ITRの上流の第3のpA配列;h)5’から3’への方向で、5’ITRの下流かつプロモーターの上流の第1のpA配列、5’から3’への方向で、NOIの下流かつ第3のpA配列の上流の第2のpA配列、および、3’から5’への方向で、第2のpA配列の下流かつ3’ITRの上流の第3のpA配列;i)5’から3’への方向で、5’ITRの下流かつプロモーターの上流の第1のpA配列、3’から5’への方向で、NOIの下流かつ第3のpA配列の上流の第2のpA配列、および、5’から3’への方向で、第2のpA配列の下流かつ3’ITRの上流の第3のpA配列;j)3’から5’への方向で、5’ITRの下流かつ第2のpA配列の上流の第1のpA配列、5’から3’への方向で、第1のpA配列の下流かつプロモーターの上流の第2のpA配列;5’から3’への方向で、NOIの下流かつ第4のpA配列の上流の第3のpA配列、および、3’から5’への方向で、第3のpA配列の下流かつ3’ITRの上流の第4のpA配列;k)3’から5’への方向で、5’ITRの下流かつ第2のpA配列の上流の第1のpA配列、5’から3’への方向で、第1のpA配列の下流かつプロモーターの上流の第2のpA配列;3’から5’への方向で、NOIの下流かつ第4のpA配列の上流の第3のpA配列、および、5’から3’への方向で、第3のpA配列の下流かつ3’ITRの上流の第4のpA配列;l)5’から3’への方向で、5’ITRの下流かつ第2のpA配列の上流の第1のpA配列、3’から5’への方向で、第1のpA配列の下流かつプロモーターの上流の第2のpA配列;5’から3’への方向で、NOIの下流かつ第4のpA配列の上流の第3のpA配列、および、3’から5’への方向で、第3のpA配列の下流かつ3’ITRの上流の第4のpA配列;またはm)5’から3’への方向で、5’ITRの下流かつ第2のpA配列の上流の第1のpA配列、3’から5’への方向で、第1のpA配列の下流かつプロモーターの上流の第2のpA配列;3’から5’への方向で、NOIの下流かつ第4のpA配列の上流の第3のpA配列、および、5’から3’への方向で、第3のpA配列の下流かつ3’ITRの上流の第4のpA配列をさらに含む。
【0040】
代替的な実施形態では、本発明は、アデノ随伴ウイルス(AAV)の5’逆位末端反復(ITR)、プロモーターが作動可能に付随している目的のヌクレオチド配列(NOI)およびAAVの3’ITRを含む、組換え核酸分子であって、a)3’から5’への方向で、5’ITRの下流かつプロモーターの上流のポリA(pA)配列、および、3’から5’への方向で、3’ITRの上流かつNOIの下流のpA配列;b)3’から5’への方向で、3’ITRの上流かつNOIの下流のpA配列;c)3’から5’への方向で、3’ITRの上流かつNOIの下流の第1のpA配列、および、5’から3’への方向で、第1のpA配列の下流かつ3’ITRの上流の第2のpA配列;d)3’から5’への方向で、3’ITRの上流かつNOIの下流の第1のpA配列、および、5’から3’への方向で、NOIの下流かつ第1のpAの上流の第2のpA配列;e)3’から5’への方向で、3’ITRの上流かつNOIの下流の第1のpA配列、および、5’から3’への方向で、5’ITRの下流かつプロモーターの上流の第2のpA配列;f)3’から5’への方向で、5’ITRの下流かつプロモーターの上流の第1のpA配列、5’から3’への方向で、NOIの下流かつ第3のpA配列の上流の第2のpA配列、および、3’から5’への方向で、第2のpA配列の下流かつ3’ITRの上流の第3のpA配列;g)5’から3’への方向で、5’ITRの下流かつプロモーターの上流の第1のpA配列、3’から5’への方向で、NOIの下流かつ第3のpA配列の上流の第2のpA配列、および、5’から3’への方向で、第2のpA配列の下流かつ3’ITRの上流の第3のpA配列;h)5’から3’への方向で、5’ITRの下流かつプロモーターの上流の第1のpA配列、5’から3’への方向で、NOIの下流かつ第3のpA配列の上流の第2のpA配列、および、3’から5’への方向で、第2のpA配列の下流かつ3’ITRの上流の第3のpA配列;i)5’から3’への方向で、5’ITRの下流かつプロモーターの上流の第1のpA配列、3’から5’への方向で、NOIの下流かつ第3のpA配列の上流の第2のpA配列、および、5’から3’への方向で、第2のpA配列の下流かつ3’ITRの上流の第3のpA配列;j)3’から5’への方向で、5’ITRの下流かつ第2のpA配列の上流の第1のpA配列、5’から3’への方向で、第1のpA配列の下流かつプロモーターの上流の第2のpA配列;5’から3’への方向で、NOIの下流かつ第4のpA配列の上流の第3のpA配列、および、3’から5’への方向で、第3のpA配列の下流かつ3’ITRの上流の第4のpA配列;k)3’から5’への方向で、5’ITRの下流かつ第2のpA配列の上流の第1のpA配列、5’から3’への方向で、第1のpA配列の下流かつプロモーターの上流の第2のpA配列;3’から5’への方向で、NOIの下流かつ第4のpA配列の上流の第3のpA配列、および、5’から3’への方向で、第3のpA配列の下流かつ3’ITRの上流の第4のpA配列;l)5’から3’への方向で、5’ITRの下流かつ第2のpA配列の上流の第1のpA配列、3’から5’への方向で、第1のpA配列の下流かつプロモーターの上流の第2のpA配列;5’から3’への方向で、NOIの下流かつ第4のpA配列の上流の第3のpA配列、および、3’から5’への方向で、第3のpA配列の下流かつ3’ITRの上流の第4のpA配列;またはm)5’から3’への方向で、5’ITRの下流かつ第2のpA配列の上流の第1のpA配列、3’から5’への方向で、第1のpA配列の下流かつプロモーターの上流の第2のpA配列;3’から5’への方向で、NOIの下流かつ第4のpA配列の上流の第3のpA配列、および、5’から3’への方向で、第3のpA配列の下流かつ3’ITRの上流の第4のpA配列のうちの1つまたは複数をさらに含む、組換え核酸分子を提供する。
【0041】
代替的な実施形態では、本発明は、アデノ随伴ウイルス(AAV)の5’逆位末端反復(ITR)、プロモーターが作動可能に付随している目的のヌクレオチド配列(NOI)およびAAVの3’ITRを含む、組換え核酸分子であって、a)3’から5’への方向で、5’ITRの下流かつプロモーターの上流のポリA(pA)配列、および、3’から5’への方向で、3’ITRの上流かつNOIの下流のpA配列;b)3’から5’への方向で、3’ITRの上流かつNOIの下流のpA配列;c)3’から5’への方向で、3’ITRの上流かつNOIの下流の第1のpA配列、および、5’から3’への方向で、第1のpA配列の下流かつ3’ITRの上流の第2のpA配列;d)3’から5’への方向で、3’ITRの上流かつNOIの下流の第1のpA配列、および、5’から3’への方向で、NOIの下流かつ第1のpAの上流の第2のpA配列;e)3’から5’への方向で、3’ITRの上流かつNOIの下流の第1のpA配列、および、5’から3’への方向で、5’ITRの下流かつプロモーターの上流の第2のpA配列;f)3’から5’への方向で、5’ITRの下流かつプロモーターの上流の第1のpA配列、5’から3’への方向で、NOIの下流かつ第3のpA配列の上流の第2のpA配列、および、3’から5’への方向で、第2のpA配列の下流かつ3’ITRの上流の第3のpA配列;g)5’から3’への方向で、5’ITRの下流かつプロモーターの上流の第1のpA配列、3’から5’への方向で、NOIの下流かつ第3のpA配列の上流の第2のpA配列、および、5’から3’への方向で、第2のpA配列の下流かつ3’ITRの上流の第3のpA配列;h)5’から3’への方向で、5’ITRの下流かつプロモーターの上流の第1のpA配列、5’から3’への方向で、NOIの下流かつ第3のpA配列の上流の第2のpA配列、および、3’から5’への方向で、第2のpA配列の下流かつ3’ITRの上流の第3のpA配列;i)5’から3’への方向で、5’ITRの下流かつプロモーターの上流の第1のpA配列、3’から5’への方向で、NOIの下流かつ第3のpA配列の上流の第2のpA配列、および、5’から3’への方向で、第2のpA配列の下流かつ3’ITRの上流の第3のpA配列;j)3’から5’への方向で、5’ITRの下流かつ第2のpA配列の上流の第1のpA配列、5’から3’への方向で、第1のpA配列の下流かつプロモーターの上流の第2のpA配列;5’から3’への方向で、NOIの下流かつ第4のpA配列の上流の第3のpA配列、および、3’から5’への方向で、第3のpA配列の下流かつ3’ITRの上流の第4のpA配列;k)3’から5’への方向で、5’ITRの下流かつ第2のpA配列の上流の第1のpA配列、5’から3’への方向で、第1のpA配列の下流かつプロモーターの上流の第2のpA配列;3’から5’への方向で、NOIの下流かつ第4のpA配列の上流の第3のpA配列、および、5’から3’への方向で、第3のpA配列の下流かつ3’ITRの上流の第4のpA配列;l)5’から3’への方向で、5’ITRの下流かつ第2のpA配列の上流の第1のpA配列、3’から5’への方向で、第1のpA配列の下流かつプロモーターの上流の第2のpA配列;5’から3’への方向で、NOIの下流かつ第4のpA配列の上流の第3のpA配列、および、3’から5’への方向で、第3のpA配列の下流かつ3’ITRの上流の第4のpA配列;またはm)5’から3’への方向で、5’ITRの下流かつ第2のpA配列の上流の第1のpA配列、3’から5’への方向で、第1のpA配列の下流かつプロモーターの上流の第2のpA配列;3’から5’への方向で、NOIの下流かつ第4のpA配列の上流の第3のpA配列、および、5’から3’への方向で、第3のpA配列の下流かつ3’ITRの上流の第4のpA配列のうちの少なくとも1つをさらに含む、組換え核酸分子を提供する。
【0042】
本発明の実施形態の非限定的な例としては、
図10A、
図10B、
図16および
図17に示すような個々のカセット(すなわち、組換え核酸分子)の他に、各々のカセットに示すような、エレメント(例えば、ポリ(A)配列)の任意の組合せおよび/または方向の任意の組合せを有する任意のカセットが挙げられる。本発明において利用され得るポリ(A)配列は当該技術分野において公知であり、当業者により決定され得る。これらのカセットおよび組換え核酸分子は、単独でまたは任意の組合せおよび/もしくは任意の比で組成物または集団中に存在し得る。本発明の組成物または集団はまた、本発明の単一のカセットまたは組換え核酸分子を含む、それから本質的になる、またはそれからなるものであり得る。
【0043】
別の実施形態では、本発明は、アデノ随伴ウイルス(AAV)の5’逆位末端反復(ITR)、プロモーターが作動可能に付随している目的のヌクレオチド配列(NOI)およびAAVの3’ITRを含む、第1のAAV血清型のAAVベクターカセットを含み、AAV 5’ITRおよび/またはAAV 3’ITRは、第1のAAV血清型とは異なる第2のAAV血清型からのものである、組換え核酸分子を提供する。例えば、第1のAAV血清型の5’ITRおよび/または3’ITRは、第2のAAV血清型からの5’ITRおよび/または3’ITRにより置換され得る。
【0044】
本発明の組換え核酸分子のさらなる実施形態では、第2のAAV血清型のITRは、プロモーター機能を有さず、または第1のAAV血清型のITRのプロモーター機能と比較して低減したプロモーター機能を有する。そのような実施形態では、第1のAAV血清型は、現在公知のまたは今後見出される任意のAAV血清型であり得、かつ、第1のAAV血清型とは異なる第2のAAV血清型は、現在公知のまたは今後見出される任意のAAV血清型であり得る。一部の実施形態では、第1のAAV血清型はAAV2であり、かつ、第2のAAV血清型のITRはAAV5である。例えば、組換え核酸分子はAAV2のAAVベクターカセットを含み得、AAV2の前記カセットはAAV5の5’ITRおよび/または3’ITRを含み得る。
【0045】
さらなる実施形態では、本発明は、アデノ随伴ウイルス(AAV)の5’逆位末端反復(ITR)、プロモーターが作動可能に付随している目的のヌクレオチド配列(NOI)およびAAVの3’ITRを含む、組換え核酸分子であって、5’ITRおよび/または3’ITRが、5’ITRおよび/または3’ITRからプロモーター活性を減少させまたは除去するように(例えば、置換、挿入および/または欠失により)改変されている、組換え核酸分子を提供する。
【0046】
別の実施形態では、本発明は、AAVの5’ITR、プロモーターが作動可能に付随しているNOI、3’から5’への方向のpA配列およびAAVの3’ITRを含む、組換え核酸分子であって、NOI配列が、1つまたは1つより多くの細胞質dsRNAセンサーを標的化する干渉RNA配列をコードする1つまたは1つより多くのヌクレオチド配列と融合している(例えば、それとインフレーム;その上流および/または下流)、組換え核酸分子を提供する。
【0047】
一部の実施形態では、本発明は、A)AAVの5’ITR、第1のプロモーターが作動可能に付随しているNOI、3’から5’への方向で第1のpA配列、第2のプロモーターが作動可能に付随している、細胞質dsRNAセンサーを標的化する干渉RNA配列をコードするヌクレオチド配列、第2のpA配列およびAAVの3’ITRを含む、組換え核酸分子;B)AAVの5’ITR、第1のプロモーターが作動可能に付随しているNOI、3’から5’への方向のpA配列、第2のプロモーターが作動可能に付随している、細胞質dsRNAセンサーを標的化する短鎖ヘアピンRNA(shRNA)配列、およびAAVの3’ITRを含む、組換え核酸分子;C)AAVの5’ITR、第1のプロモーターが作動可能に付随している、細胞質dsRNAセンサーを標的化するshRNA、第2のプロモーターが作動可能に付随しているNOI、3’から5’への方向のpA配列およびAAVの3’ITRを含む、組換え核酸分子;D)AAVの5’ITR、両方ともプロモーターが作動可能に付随しているNOIおよび細胞質dsRNAセンサーを標的化するマイクロRNA(miRNA)配列、3’から5’への方向のpA配列、およびAAVの3’ITRをこの順序で含む、組換え核酸分子;E)AAVの5’ITR、両方ともプロモーターが作動可能に付随している、細胞質dsRNAセンサーを標的化するmiRNAおよびNOI、3’から5’への方向のpA配列、およびAAVの3’ITRをこの順序で含む、組換え核酸分子;ならびに/またはE)AAVの5’ITR、プロモーターが作動可能に付随している、NOI内にmiRNAイントロン配列を含むNOI、3’から5’への方向のpA配列、およびAAVの3’ITRをこの順序で含む、組換え核酸分子を提供する。
【0048】
AAVの5’ITR、プロモーターが作動可能に付随しているNOI、3’から5’への方向のpA配列、およびAAVの3’ITRを含む、第1の組換え核酸分子、ならびに、細胞質dsRNAセンサーを標的化する干渉RNA配列を含む、第2の組換え核酸分子を含む組成物が本明細書においてさらに提供される。
【0049】
本発明の細胞質dsRNAの非限定的な例としては、本発明の組換え核酸分子中での任意の組合せおよび順序の、MDA5、MAVS、RIG-1、TRAF6、TRAF5、RIP1、FADD、IRF、TRAF3、NAP1、TBK1、IKK、IκB、TANKおよびMAVS下流シグナル伝達に関与する任意の他の分子が挙げられる。
【0050】
本発明の干渉RNA(RNAi)の非限定的な例としては、当該技術分野において公知のような、低分子干渉RNA(siRNA)、短鎖ヘアピンRNA(shRNA)、マイクロRNA(miRNA)、長鎖二本鎖RNA(長鎖dsRNA)、アンチセンスRNA、リボザイムなどの他に、現在公知のまたは今後見出される任意の他の干渉RNAまたは阻害RNAが挙げられる。
【0051】
本発明はさらに、AAV 5’ITR、両方ともプロモーターが作動可能に付随しているNOIおよびMAVSシグナル伝達の阻害剤、3’から5’への方向のpA配列ならびにAAVの3’ITRを含む、組換え核酸分子を提供する。
【0052】
AAV 5’ITR、第1のプロモーターが作動可能に付随しているNOI、3’から5’への方向で第1のpA配列、第2のプロモーターが作動可能に付随しているMAVSシグナル伝達の阻害剤、3’から5’への方向で第2のpA配列およびAAVの3’ITRを含む、組換え核酸分子もまた本明細書において提供される。
【0053】
追加の実施形態では、本発明は、AAV 5’ITR、プロモーターが作動可能に付随しているNOI、3’から5’への方向のpA配列、およびAAVの3’ITRを含む、第1の組換え核酸分子、ならびに、MAVSシグナル伝達の阻害剤および3’から5’への方向のpA配列を含む、第2の組換え核酸分子を含む組成物を提供する。
【0054】
MAVSシグナル伝達の阻害剤の非限定的な例としては、C型肝炎ウイルスからのセリンプロテアーゼNS3-4A、A型肝炎ウイルスおよびGBウイルスBからのプロテアーゼ、B型肝炎ウイルス(HBV)Xタンパク質、ポリ(rC)結合タンパク質2、20SプロテアソームサブユニットPSMA7、および/またはマイトフュージン2の他に、現在公知のまたは今後見出されるMAVSシグナル伝達の任意の他の阻害剤が挙げられる。
【0055】
対象の細胞中へのAAVベクターの形質導入を増進する方法であって、対象にAAVベクターおよび対象の細胞中でdsRNA活性化経路に干渉する剤を投与することを含む方法もまた本明細書において提供される。
【0056】
dsRNA活性化経路に干渉する剤の非限定的な例としては、2-アミノプリン、ステロイド(例えば、ヒドロコルチゾン)、および現在公知のまたは今後見出される細胞中でdsRNA活性化経路に干渉する任意の他の剤が挙げられる。
【0057】
一部の実施形態では、本発明のAAVベクターおよび剤は、対象に同時におよび/または引き続いて、任意の順序および任意の時間間隔(例えば、時間、日、週など)で投与され得る。一実施形態では、AAVベクターは最初に投与され、かつ、剤はその後に投与される。一実施形態では、剤は最初に投与され、かつ、AAVベクターはその後に投与される。一実施形態では、剤は、1つまたは複数の間隔において投与される。一実施形態では、剤は、AAVベクターの投与後に間隔(例えば、1、2、3、4、5、6日毎などの日、または1、2、3、4、5、6週毎などの週またはより長い間隔)をおいて投与される。
【0058】
[定義]
文脈が他に指し示さなければ、本明細書に記載の発明の様々な特徴は任意の組合せにおいて使用され得ることが特に意図される。
【0059】
さらに、本発明はまた、本発明の一部の実施形態では、本明細書に記載の任意の特徴または特徴の組合せが除外または省略され得ることを想定する。
【0060】
さらに説明すると、例えば、本明細書が、特定のアミノ酸がA、G、I、Lおよび/またはVから選択され得ることを指し示す場合、この表現はまた、各以下のような部分的組合せが本明細書に明示的に記載されているかのように、アミノ酸がこれらのアミノ酸の任意のサブセット、例えば、A、G、IまたはL;A、G、IまたはV;AまたはG;Lのみ;などから選択され得ることを指し示す。さらに、そのような表現はまた、指定されたアミノ酸のうちの1つまたは複数が(例えば、否定的但し書きにより)権利除外(disclaimed)され得ることを指し示す。例えば、特定の実施形態では、アミノ酸は、各以下のような可能な権利除外が明示的に本明細書に記載されているかのように、A、GおよびIのいずれでもなく;Aではなく;GおよびVのいずれでもない;などである。
【0061】
本発明のAAVベクターおよび組換えAAV核酸分子におけるAAVキャプシドタンパク質中の全てのアミノ酸位置の指定は、VP1キャプシドサブユニットのナンバリングに関する(天然AAV2-VP1キャプシドタンパク質:GenBankアクセッション番号AAC03780またはYP680426)。AAVのcap遺伝子中に挿入される場合の本明細書に記載されるような改変は、VP1、VP2および/またはVP3キャプシドサブユニット中の改変を結果としてもたらしてもよいことが当業者により理解される。代替的に、キャプシドサブユニットのうちの1つまたは2つにおいてのみ(VP1、VP2、VP3、VP1+VP2、VP1+VP3、またはVP2+VP3)改変を達成するために、キャプシドサブユニットを、独立して発現されることができる。
【0062】
本明細書において使用される場合、「低減する」(reduce)、「低減する」(reduces)、「低減」、「減少させる」、「阻害する」および類似の用語は、少なくとも約5%、10%、15%;20%、25%、35%、50%、75%、80%、85%、90%、95%、97%またはより大きい減少を意味する。
【0063】
本明細書において使用される場合、「増進する」(enhance)、「増進する」(enhances)、「増進」および類似の用語は、少なくとも約25%、50%、75%、100%、150%、200%、300%、400%、500%またはより大きい増加を指し示す。
【0064】
本明細書において使用される「パルボウイルス」という用語は、自律複製パルボウイルスおよびディペンドウイルスを含む、パルボウイルス科(family Parvoviridae)を包含する。自律性パルボウイルスとしては、パルボウイルス(Parvovirus)属、エリスロウイルス(Erythrovirus)属、デンソウイルス(Densovirus)属、イテラウイルス(Iteravirus)属、およびコントラウイルス(Contravirus)属のメンバーが挙げられる。例示的な自律性パルボウイルスとしては、マウス微小ウイルス、ウシパルボウイルス、イヌパルボウイルス、ニワトリパルボウイルス、ネコ汎白血球減少症ウイルス、ネコパルボウイルス、グースパルボウイルス、H1パルボウイルス、バリケンパルボウイルス、B19ウイルス、および現在公知のまたは後に発見される任意の他の自律性パルボウイルスが挙げられるがそれに限定されない。他の自律性パルボウイルスは当業者に公知である。例えば、BERNARD N.FIELDS et al.,VIROLOGY,Volume 2,Chapter 69(4th ed., Lippincott-Raven Publishers)を参照。
【0065】
本明細書において使用される場合、「アデノ随伴ウイルス」(AAV)という用語は、1型AAV、2型AAV、3型AAV(3A型および3B型を含む)、4型AAV、5型AAV、6型AAV、7型AAV、8型AAV、9型AAV、10型AAV、11型AAV、鳥類AAV、ウシAAV、イヌAAV、ウマAAV、ヒツジAAV、および現在公知のまたは後に発見される任意の他のAAVを含むがそれに限定されない。例えば、BERNARD N.FIELDS et al.,VIROLOGY,volume 2,chapter 69(4th ed., Lippincott-Raven Publishers)を参照。多数の追加のAAV血清型およびクレードが同定されている(例えば、Gao et al.,(2004)J. Virology 78:6381-6388; Moris et al.,(2004)Virology 33-:375-383;および表3を参照)。
【0066】
AAVおよび自律性パルボウイルスの様々な血清型のゲノム配列の他に、天然の末端反復(TR)、Repタンパク質、およびキャプシドサブユニットの配列は当該技術分野において公知である。そのような配列は、文献中またはGenBankなどの公的データベース中に見出すことができる。例えば、GenBankアクセッション番号NC_002077、NC_001401、NC_001729、NC_001863、NC_001829、NC_001862、NC_000883、NC_001701、NC_001510、NC_006152、NC_006261、AF063497、U89790、AF043303、AF028705、AF028704、J02275、J01901、J02275、X01457、AF288061、AH009962、AY028226、AY028223、NC_001358、NC_001540、AF513851、AF513852、AY530579を参照(これらの開示は、参照することによりパルボウイルスおよびAAV核酸およびアミノ酸配列の教示のために本明細書に組み込まれる)。例えば、Srivistava et al.(1983)J.Virology 45:555; Chiorini et al.,(1998 J.Virology 71:6823; Chiorini et al.,(1999 J.Virology 73:1309; Bantel-Schaal et al.,(1999 J.Virology 73:939; Xiao et al.,(1999)J.Virology 73:3994; Muramatsu et al.,(1996)Virology 221:208; Shade et al.,(1986)J.Virol. 58:921; Gao et al.,(2002 Proc.Nat.Acad.Sci.USA 99:11854; Moris et al.,(2004)Virology 33-:375-383;国際公開WO00/28061、WO99/61601、WO98/11244;および米国特許第6,156,303号明細書も参照(これらの開示は、参照することによりパルボウイルスおよびAAV核酸およびアミノ酸配列の教示のために本明細書の一部をなすものとする)。表3も参照。
【0067】
自律性パルボウイルスおよびAAVのキャプシド構造は、BERNARD N FIELDS et al.,VIROLOGY,volume 2,chapters 69&70(4th ed.,Lippincott-Raven Publishers)においてより詳細に記載されている。AAV2(Xie et al.,(2002)Proc.Nat.Acad.Sci.99:10405-10)、AAV4(Padron et al.,(2005 J.Virol.79:5047-58)、AAV5(Walters et al.,(2004)J.Virol.78: 3361-71)ならびにCPV(Xie et al.,(1996)J.Mol.Biol.6:497-520およびTsao et al.,(1991)Science 251:1456-64)の結晶構造の記載も参照。
【0068】
本明細書において使用される「トロピズム」という用語は、ある特定の細胞または組織へのウイルスの優先的な進入、および任意選択でその後の、細胞中でのウイルスゲノムにより運ばれた配列の発現(例えば、転写、および任意で翻訳)、例えば、組換えウイルスについて、目的の異種核酸の発現を指す。
【0069】
他に指し示さなければ、「効率的な形質導入」または「効率的なトロピズム」または類似の用語は、好適な対照を参照することにより決定され得る(例えば、対照の、少なくとも約50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、100%、125%、150%、175%、200%、250%、300%、350%、400%、500%またはより高いそれぞれ形質導入またはトロピズム)。特定の実施形態では、ウイルスベクターは、神経細胞および心筋細胞について効率的に形質導入を行いまたは効率的なトロピズムを有する。好適な対照は、所望のトロピズムおよび/または形質導入プロファイルを含む様々な要因に依存する。
【0070】
同様に、好適な対照を参照することにより、ウイルスが標的組織について「効率的に形質導入しない」もしくは「効率的なトロピズムを有しない」かどうか、または類似の用語を決定することができる。特定の実施形態では、ウイルスベクターは、肝臓、腎臓、性腺および/または生殖細胞について効率的に形質導入しない(すなわち、効率的なトロピズムを有さしない)。特定の実施形態では、組織(例えば、肝臓)の形質導入(例えば、望ましくない形質導入)は、20%またはより低い、10%またはより低い、5%またはより低い、1%またはより低い、0.1%またはより低いレベルの所望の標的組織(例えば、骨格筋、横隔膜筋、心筋および/または中枢神経系の細胞)への形質導入である。
【0071】
本明細書において使用される場合、「ポリペプチド」という用語は、他に指し示さなければ、ペプチドおよびタンパク質の両方を包含する。
【0072】
「ポリヌクレオチド」はヌクレオチド塩基の配列であり、RNA、DNAまたはDNA-RNAハイブリッド配列(天然に存在するヌクレオチドおよび天然に存在しないヌクレオチドの両方を含む)であってもよいが、代表的な実施形態では、一本鎖または二本鎖のいずれかのDNA配列である。
【0073】
本明細書において使用される場合、「単離された」ポリヌクレオチド(例えば、「単離されたDNA」または「単離されたRNA」)は、該ポリヌクレオチドと付随して一般的に見出される天然に存在する生物またはウイルスの他の成分、例えば、細胞またはウイルス構造成分または他のポリペプチドもしくは核酸の少なくとも一部から少なくとも部分的に分離されたポリヌクレオチドを意味する。代表的な実施形態では、「単離された」ヌクレオチドは、出発材料と比較して少なくとも約10倍、100倍、1000倍、10,000倍またはより高く濃縮されている。
【0074】
同様に、「単離された」ポリペプチドは、該ポリペプチドと付随して一般的に見出される天然に存在する生物またはウイルスの他の成分、例えば、細胞またはウイルス構造成分または他のポリペプチドもしくは核酸の少なくとも一部から少なくとも部分的に分離されたポリペプチドを意味する。代表的な実施形態では、「単離された」ポリペプチドは、出発材料と比較して少なくとも約10倍、100倍、1000倍、10,000倍またはより高く濃縮されている。
【0075】
「単離された細胞」は、その天然の状態においてそれが通常付随する他の成分から分離された細胞を指す。例えば、単離された細胞は、培養培地中の細胞および/または本発明の薬学的に許容される担体中の細胞であり得る。したがって、単離された細胞は、対象に送達および/または導入され得る。一部の実施形態では、単離された細胞は、対象から除去され、エクスビボで本明細書に記載されるようにマニピュレートされた後に対象に戻される細胞であり得る。
【0076】
本明細書において使用される場合、ウイルスベクターまたはウイルス粒子またはウイルス粒子の集団を「単離する」または「精製する」(または文法的均等物)は、ウイルスベクターまたはウイルス粒子またはウイルス粒子の集団が出発材料中の他の成分の少なくとも一部から少なくとも部分的に分離されることを意味する。代表的な実施形態では、「単離された」または「精製された」ウイルスベクターまたはウイルス粒子またはウイルス粒子の集団は、出発材料と比較して少なくとも約10倍、100倍、1000倍、10,000倍またはより高く濃縮される。
【0077】
「治療用ポリペプチド」は、細胞または対象においてタンパク質の非存在または欠陥の結果としてもたらされる症状を軽減、低減、予防、遅延および/もしくは安定化し得るポリペプチドならびに/または対象に対する利益、例えば、抗がん効果もしくは移植片の生存能力もしくは免疫応答の誘導の向上をそれ以外の形で付与するポリペプチドである。
【0078】
「治療する」、「治療すること」または「治療」という用語(およびその文法的変形)は、対象の状態の重篤度を低減、少なくとも部分的に改善もしくは安定化させることおよび/または少なくとも1つの臨床症状における何らかの緩和、軽減、減少もしくは安定化が達成されることおよび/または疾患もしくは障害の進行において遅延があることを意味する。
【0079】
「予防する」、「予防すること」および「予防」という用語(およびその文法的変形)は、対象における疾患、障害および/もしくは臨床症状の発症の予防および/もしくは遅延ならびに/または本発明の方法の非存在下で起こるものと比べた疾患、障害および/もしくは臨床症状の発症の重篤度の低減を指す。予防は完全であり得、例えば、疾患、障害および/または臨床症状の完全な非存在であり得る。予防はまた部分的であり得、これは、対象における疾患、障害および/もしくは臨床症状の出現ならびに/または発症の重篤度は本発明の非存在下で起こるであろうものよりも実質的に低いようなものである。
【0080】
本明細書において使用される「治療有効」量は、何らかの改善または利益を対象に提供するために十分な量である。代替的に記載すると、「治療有効」量は、対象における少なくとも1つの臨床症状において何らかの緩和、軽減、減少または安定化を提供する量である。何らかの利益が対象に提供される限り、治療効果は完全または治癒的なものである必要はないことを当業者は理解する。
【0081】
本明細書において使用される「予防有効」量は、本発明の方法の非存在下で起こるであろうものと比べて、対象において疾患、障害および/もしくは臨床症状の発症を予防しおよび/もしくは遅延させならびに/または対象における疾患、障害および/もしくは臨床症状の発症の重篤度を低減しおよび/もしくは遅延させる十分な量である。何らかの予防的利益が対象に提供される限り、予防のレベルは完全である必要はないことを当業者は理解する。
【0082】
「目的のヌクレオチド配列(NOI)」、「異種ヌクレオチド配列」および「異種核酸分子」という用語は本明細書において交換可能に使用され、ウイルス中に天然に存在しない核酸配列を指す。概しては、NOI、異種核酸分子または異種ヌクレオチド配列は、目的のポリペプチドおよび/または翻訳されないRNA(例えば、細胞および/または対象への送達用)をコードするオープンリーディングフレームを含む。
【0083】
本明細書において使用される場合、「ウイルスベクター」、「ベクター」または「遺伝子送達ベクター」という用語は、核酸送達ビヒクルとして機能し、かつビリオン内にパッケージングされたベクターゲノム(例えば、ウイルスDNA[vDNA])を含むウイルス(例えば、AAV)粒子を指す。代替的に、一部の文脈では、「ベクター」という用語は、単独でのベクターゲノム/vDNAを指すために使用され得る。
【0084】
「組換えヌクレオチド配列」、「組換え核酸分子」、「rAAVベクターゲノム」または「rAAVゲノム」は、1つまたは複数の異種核酸配列を含むAAVゲノム(すなわち、vDNA)である。
【0085】
「末端反復」または「TR」または「逆位末端反復(ITR)」という用語は、ヘアピン構造を形成しかつ逆位末端反復として機能する(すなわち、複製、ウイルスパッケージング、組込みおよび/またはプロウイルスレスキューなどの所望の機能を媒介する)任意のウイルス末端反復または合成配列を含む。TRは、AAV-TRまたは非AAV-TRであり得る。例えば、他のパルボウイルス(例えば、イヌパルボウイルス(CPV)、マウスパルボウイルス(MVM)、ヒトパルボウイルスB-19)のものまたは任意の他の好適なウイルス配列(例えば、SV40複製起点として働くSV40ヘアピン)などの非AAV-TR配列をTRとして使用することができ、これは切断、置換、欠失、挿入および/または付加によりさらに改変され得る。さらに、TRは、Samulski et al.の米国特許第5,478,745号明細書において記載されるような「ダブルD配列」などの、部分的にまたは完全に合成のものであり得る。
【0086】
「AAV末端反復」または「AAV-TR」は、血清型1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12または現在公知のもしくは後に発見される任意の他のAAVが挙げられるがそれに限定されない任意のAAVからのものであってもよい(例えば、表3を参照)。末端反復が所望の機能、例えば、複製、ウイルスパッケージング、組込み、および/またはプロウイルスレスキューなどを媒介する限り、AAV末端反復は、天然の末端反復配列を有する必要はない(例えば、天然のAAV-TR配列は、挿入、欠失、切断および/またはミスセンス突然変異により変更されてもよい)。
【0087】
AAVタンパク質VP1、VP2およびVP3は、相互作用して一緒になって正二十面体対称性のAAVキャプシドを形成するキャプシドタンパク質である。VP1.5は、米国出願公開第2014/0037585号明細書において記載されるAAVキャプシドタンパク質である。
【0088】
本発明のウイルスベクターはさらに、国際公開WO00/28004号パンフレットおよびChao et al.,(2000)Molecular Therapy 2:619において記載されるような「標的化された」ウイルスベクター(例えば、方向付けられたトロピズムを有する)ならびに/または「ハイブリッド」パルボウイルス(すなわち、ウイルスTRおよびウイルスキャプシドが異なるパルボウイルスからのものである)であり得る。
【0089】
本発明のウイルスベクターはさらに、国際公開WO01/92551号パンフレット(その開示は参照することにより全体が本明細書に組み込まれる)において記載されるようなデュプレックス化パルボウイルス粒子であり得る。したがって、一部の実施形態では、二本鎖(デュプレックス)ゲノムは、本発明のウイルスキャプシドにパッケージングされ得る。
【0090】
さらに、ウイルスキャプシドまたはゲノムエレメントは、挿入、欠失および/または置換を含む、他の改変を含有し得る。
【0091】
本明細書において使用される「キメラ」キャプシドタンパク質は、野生型と比べてキャプシドタンパク質のアミノ酸配列における1つまたは複数(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10など)のアミノ酸残基の置換の他に、野生型と比べてアミノ酸配列における1つまたは複数(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10など)のアミノ酸残基の挿入および/または欠失により改変されているAAVキャプシドタンパク質を意味する。一部の実施形態では、1つのAAV血清型からの完全なまたは部分的なドメイン、機能的な領域、エピトープなどは、本発明のキメラキャプシドタンパク質を製造するために、任意の組合せで異なるAAV血清型の対応する野生型ドメイン、機能的な領域、エピトープなどに取って代わることができる。キメラキャプシドタンパク質の製造は、当該技術分野において周知のプロトコールにしたがって実行することができ、本発明のキャプシド中に含まれ得る多数のキメラキャプシドタンパク質が文献の他に本明細書において記載されている。
【0092】
本明細書において使用される場合、「アミノ酸」または「アミノ酸残基」という用語は、任意の天然に存在するアミノ酸、その修飾形態、および合成アミノ酸を包含する。
【0093】
天然に存在する左旋性(L-)アミノ酸を表4に示す。
【0094】
代替的に、アミノ酸は、修飾アミノ酸残基(非限定的な例を表6に示す)であり得、かつ/または、翻訳後修飾(例えば、アセチル化、アミド化、ホルミル化、ヒドロキシル化、メチル化、リン酸化もしくは硫酸化)により修飾されたアミノ酸であり得る。
【0095】
さらに、天然に存在しないアミノ酸は、Wang et al.,Annu Rev Biophys Biomol Struct.35:225-49(2006)により記載されるような「非天然」アミノ酸であり得る。これらの非天然アミノ酸は、有利には、目的の分子をAAVキャプシドタンパク質に化学的に連結するために使用され得る。
【0096】
一部の実施形態では、本発明のAAVベクターは、異なるインビトロおよびインビボ応用のために好適な広範な望ましい表現型を示すように設計された合成ウイルスベクターであり得る。したがって、一実施形態では、本発明は、アデノ随伴ウイルス(AAV)キャプシドを含むAAV粒子であって、キャプシドが、1つまたは1つより多くの第1のAAV血清型からのものであるキャプシドタンパク質VP1、および、1つまたは1つより多くの第2のAAV血清型からのものでありかつ前記第1のAAV血清型の少なくとも1つが前記第2のAAV血清型の少なくとも1つとは異なるキャプシドタンパク質VP3を任意の組合せで含む、AAV粒子を提供する。
【0097】
一部の実施形態では、AAV粒子は、キャプシドタンパク質VP2を任意の組合せで含むキャプシドを含み得、前記キャプシドタンパク質VP2は1つまたは1つより多くの第3のAAV血清型からのものであり、前記1つまたは1つより多くの第3のAAV血清型の少なくとも1つは、前記第1のAAV血清型および/または前記第2のAAV血清型とは異なる。一部の実施形態では、本明細書に記載のAAVキャプシドはキャプシドタンパク質VP1.5を含み得る。VP1.5は米国特許出願公開第20140037585号明細書において記載されており、VP1.5のアミノ酸配列は本明細書において提供される。
【0098】
一部の実施形態では、本発明のAAV粒子は、キャプシドタンパク質VP1.5を任意の組合せで含むキャプシドを含み得、前記キャプシドタンパク質VP1.5は1つまたは1つより多くの第4のAAV血清型からのものであり、前記1つまたは1つより多くの第4のAAV血清型の少なくとも1つは、前記第1のAAV血清型および/または前記第2のAAV血清型とは異なる。一部の実施形態では、本明細書に記載のAAVキャプシドタンパク質はキャプシドタンパク質VP2を含み得る。
【0099】
本発明はまた、AAVキャプシドを含む本発明のAAVベクターであって、キャプシドが、1つまたは1つより多くの第1のAAV血清型からのものであるキャプシドタンパク質VP1、および、1つまたは1つより多くの第2のAAV血清型からのものでありかつ前記第1のAAV血清型の少なくとも1つが前記第2のAAV血清型の少なくとも1つとは異なるキャプシドタンパク質VP2を任意の組合せで含む、AAVベクターを提供する。
【0100】
一部の実施形態では、本発明のAAVベクターは、キャプシドタンパク質VP3を任意の組合せで含むキャプシドを含み得、前記キャプシドタンパク質VP3は、1つまたは1つより多くの第3のAAV血清型からのものであり、前記1つまたは1つより多くの第3のAAV血清型の少なくとも1つは、前記第1のAAV血清型および/または前記第2のAAV血清型とは異なる。一部の実施形態では、本明細書に記載のAAVキャプシドはキャプシドタンパク質VP1.5を含み得る。
【0101】
本発明はさらに、アデノ随伴ウイルス(AAV)キャプシドを含むAAVベクターであって、キャプシドが、1つまたは1つより多くの第1のAAV血清型からのものであるキャプシドタンパク質VP1、および、1つまたは1つより多くの第2のAAV血清型からのものでありかつ前記第1のAAV血清型の少なくとも1つが前記第2のAAV血清型の少なくとも1つとは異なるキャプシドタンパク質VP1.5を任意の組合せで含む、AAVベクターを提供する。
【0102】
一部の実施形態では、本発明のAAVベクターは、キャプシドタンパク質VP3を任意の組合せで含むキャプシドを含み得、前記キャプシドタンパク質VP3は、1つまたは1つより多くの第3のAAV血清型からのものであり、前記1つまたは1つより多くの第3のAAV血清型の少なくとも1つは、前記第1のAAV血清型および/または前記第2のAAV血清型とは異なる。一部の実施形態では、本明細書に記載のAAVキャプシドタンパク質はキャプシドタンパク質VP2を含み得る。
【0103】
本明細書に記載のAAVベクターのキャプシドの一部の実施形態では、前記1つまたは1つより多くの第1のAAV血清型、前記1つまたは1つより多くの第2のAAV血清型、前記1つまたは1つより多くの第3のAAV血清型および前記1つまたは1つより多くの第4のAAV血清型は、任意の組合せで、表3に列記されるAAV血清型からなる群から選択される。
【0104】
本発明のAAVベクターの一部の実施形態では、本明細書に記載のAAVキャプシドはキャプシドタンパク質VP2を欠いている。
【0105】
本発明のAAVベクターの一部の実施形態では、キャプシドは、キメラキャプシドVP1タンパク質、キメラキャプシドVP2タンパク質、キメラキャプシドVP3タンパク質および/またはキメラキャプシドVP1.5タンパク質を含み得る。
【0106】
本発明はさらに、本発明のウイルスベクターまたはAAV粒子および薬学的に許容される担体を含む医薬配合物であり得る、組成物を提供する。
【0107】
本発明の実施形態では、細胞の本発明のAAV粒子による形質導入は、本明細書に記載されるようなdsRNA媒介性免疫応答を誘導するAAV粒子による形質導入レベルより少なくとも約5倍、10倍、50倍、100倍、1000倍またはより大きく高い。
【0108】
異種分子(例えば、核酸、タンパク質、ペプチドなど)は、AAV感染において天然に見出されないもの、例えば、野生型AAVゲノムによりコードされないものとして定義される。さらに、治療的に有用な分子は、宿主標的細胞への分子の移入のために導入遺伝子と関連し得る。そのような関連する分子は、DNAおよび/またはRNAを含み得る。
【0109】
改変キャプシドタンパク質およびキャプシドは、現在公知のまたは今後見出される任意の他の改変をさらに含み得る。対応するアミノ酸位置がウイルス中に部分的にもしくは完全に存在するか、あるいは完全に存在しないかどうかによって、一部のAAVキャプシドタンパク質について対応する修飾は挿入および/または置換であることを当業者は理解する。同様に、AAV2以外のAAVを改変する場合、特定のアミノ酸位置はAAV2における位置とは異なっていてもよい(例えば、表5を参照)。本明細書の別の箇所において議論されるように、対応するアミノ酸位置は、周知の技術を使用して当業者に容易に明らかとなる。多数の他のAAVにおける対応する位置の非限定的な例を表5(位置2)に示す。
【0110】
代表的な実施形態では、本発明のウイルスベクターは、目的のポリペプチドおよび/または機能的なRNAをコードする異種核酸を含む組換えウイルスベクターである。組換えウイルスベクターは、以下においてより詳細に記載される。
【0111】
ある特定の実施形態では、本発明のキャプシドタンパク質、ウイルスキャプシド、ウイルスベクターおよびAAV粒子は、天然の状態において存在しまたは見出されるようなキャプシドタンパク質、キャプシド、ウイルスベクターおよびAAV粒子を除外することが当業者により理解される。
【0112】
[ウイルスベクターの製造方法]
本発明はさらに、本発明のAAV粒子およびベクターを製造する方法を提供する。したがって、本発明は、AAV粒子を製造する方法であって、a)AAV粒子を集合させるために必要とされる全ての機能および遺伝子を組合せで提供する1つもしくは複数のプラスミドを宿主細胞にトランスフェクトするステップと;b)AAV粒子を集合させるために必要とされる全ての機能および遺伝子を組合せで提供するために、1つもしくは複数の核酸構築物をパッケージング細胞株もしくはプロデューサー細胞株に導入するステップと、;c)AAV粒子を集合させるために必要とされる全ての機能および遺伝子を組合せで提供する1つもしくは複数の組換えバキュロウイルスベクターを宿主細胞に導入するステップと;ならびに/またはd)AAV粒子を集合させるために必要とされる全ての機能および遺伝子を組合せで提供する1つもしくは複数の組換えヘルペスウイルスベクターを宿主細胞に導入するステップとを含む方法を提供する。本発明のウイルスベクターを製造する様々な方法の非限定的な例は、Clement and Greiger(“Manufacturing of recombinant adeno-associated viral vectors for clinical trials” Mol. Ther. Methods Clin Dev. 3:16002 (2016))およびGreiger et al.(“Production of recombinant adeno-associated virus vectors using suspension HEK293 cells and continuous harvest of vector from the culture media for GMP FIX and FLT1 clinical vector” Mol Ther 24(2):287-297 (2016))(これらの全内容は参照することにより本明細書の一部をなすものとする)において記載されている。
【0113】
1つの代表的な実施形態では、本発明は、AAV粒子を製造する方法であって、(a)少なくとも1つのTR配列(例えば、AAV-TR配列)を含む核酸鋳型、ならびに(b)核酸鋳型の複製およびAAVキャプシドへのキャプシド化のために十分なAAV配列(例えば、本発明のAAVキャプシドをコードするAAV-rep配列およびAAV-cap配列)を細胞に提供することを含む方法を提供する。任意選択的に、核酸鋳型は少なくとも1つの異種核酸配列をさらに含む。特定の実施形態では、核酸鋳型は2つのAAV-ITR配列を含み、該配列は、異種核酸配列(存在する場合)の5’および3’に位置するが、それらはそれに直接的に連続する必要はない。
【0114】
核酸鋳型ならびにAAVのrepおよびcap配列は、AAVキャプシド内にパッケージングされた核酸鋳型を含むウイルスベクターが細胞中で産生されるような条件下で提供される。方法は、細胞からウイルスベクターを収集するステップをさらに含み得る。ウイルスベクターは、培地からおよび/または細胞を溶解することにより収集され得る。
【0115】
細胞は、AAVウイルス複製を許容する細胞であり得る。当該技術分野において公知の任意の好適な細胞を用いることができる。特定の実施形態では、細胞は哺乳動物細胞である。別のオプションとして、細胞は、複製欠陥ヘルパーウイルスから欠失した機能を提供するトランス補完性パッケージング細胞株、例えば、293細胞または他のE1aトランス補完性細胞であり得る。
【0116】
AAV複製およびキャプシド配列は、当該技術分野において公知の任意の方法により提供されてもよい。現行のプロトコールは、典型的には、単一のプラスミド上にAAV-rep/cap遺伝子を発現する。AAV複製およびパッケージング配列は一緒に提供される必要はないが、そうすることが簡便なことがある。AAVのrepおよび/またはcap配列は、任意のウイルスまたは非ウイルスベクターにより提供されてもよい。例えば、rep/cap配列は、ハイブリッドアデノウイルスまたはヘルペスウイルスベクターにより提供されてもよい(例えば、欠失アデノウイルスベクターのE1aまたはE3領域に挿入される)。エプスタインバーウイルス(EBV)ベクターもまた、AAVのcapおよびrep遺伝子を発現するために用いられてもよい。この方法の1つの利点は、EBVベクターはエピソーム性であるが、細胞分裂を繰り返しても高いコピー数を維持することである(すなわち、「EBVベースの核内エピソーム」と称される染色体外エレメントとして細胞に安定的に組み込まれる;Margolski (1992 Curr.Top.Microbiol.Immun. 158:67)を参照)。
【0117】
さらなる代替として、rep/cap配列は細胞に安定的に組み込まれてもよい。
【0118】
典型的には、AAV-rep/cap配列は、これらの配列のレスキューおよび/またはパッケージングを予防するために、TRが隣接していない。
【0119】
核酸鋳型は、当該技術分野において公知の任意の方法を使用して細胞に提供され得る。例えば、鋳型は、非ウイルス(例えば、プラスミド)またはウイルスベクターにより供給され得る。特定の実施形態では、核酸鋳型は、ヘルペスウイルスまたはアデノウイルスベクターにより供給される(例えば、欠失アデノウイルスのE1aまたはE3領域に挿入される)。別の実例として、Palombo et al.,J.Virology 72:5025(1998)は、AAV-TRが隣接したレポーター遺伝子を有するバキュロウイルスベクターを記載する。EBVベクターはまた、rep/cap遺伝子に関して上記したように、鋳型を送達するために用いられてもよい。
【0120】
別の代表的な実施形態では、核酸鋳型は、rAAVウイルスを複製することにより提供される。さらに他の実施形態では、核酸鋳型を含むAAVプロウイルスは、細胞の染色体に安定的に組み込まれる。
【0121】
ウイルス力価を増進するために、産生性AAV感染を促進するヘルパーウイルス機能(例えば、アデノウイルスまたはヘルペスウイルス)が細胞に提供され得る。AAV複製のために必要なヘルパーウイルス配列は当該技術分野において公知である。典型的には、これらの配列は、ヘルパーアデノウイルスまたはヘルペスウイルスベクターにより提供される。あるいは、アデノウイルスまたはヘルペスウイルス配列は、別の非ウイルスベクターまたはウイルスベクターにより、例えば、Ferrari et al.,(1997)Nature Med. 3:1295、ならびに米国特許第6,040,183号明細書および同第6,093,570号明細書に記載されるような効率的なAAV製造を促進するヘルパー遺伝子の全てを有する非感染性アデノウイルスミニプラスミドとして、提供され得る。
【0122】
さらに、ヘルパーウイルス機能は、染色体中に埋め込まれたまたは安定な染色体外エレメントとして維持されるヘルパー配列を有するパッケージング細胞により提供されてもよい。概しては、ヘルパーウイルス配列はAAVビリオンにパッケージングされることができず、例えば、TRは隣接していない。
【0123】
単一のヘルパー構築物上にAAV複製およびキャプシド配列ならびにヘルパーウイルス配列(例えば、アデノウイルス配列)を提供することが有利であり得ることを当業者は理解する。このヘルパー構築物は、非ウイルスまたはウイルス構築物であってもよい。1つの非限定的な実例として、ヘルパー構築物は、AAV-rep/cap遺伝子を含むハイブリッドアデノウイルスまたはハイブリッドヘルペスウイルスであり得る。
【0124】
一実施形態では、AAV-rep/cap配列およびアデノウイルスヘルパー配列は、単一のアデノウイルスヘルパーベクターにより供給される。このベクターは核酸鋳型をさらに含み得る。AAV-rep/cap配列および/またはrAAV鋳型は、アデノウイルスの欠失領域(例えば、E1aまたはE3領域)に挿入され得る。
【0125】
さらなる実施形態では、AAV-rep/cap配列およびアデノウイルスヘルパー配列は、単一のアデノウイルスヘルパーベクターにより供給される。この実施形態によれば、rAAV鋳型はプラスミド鋳型として提供され得る。
【0126】
別の実例的な実施形態では、AAV-rep/cap配列およびアデノウイルスヘルパー配列は単一のアデノウイルスヘルパーベクターにより提供され、かつ、rAAV鋳型はプロウイルスとして細胞に組み込まれる。代替的に、rAAV鋳型は、染色体外エレメント(例えば、EBVベースの核内エピソーム)として細胞内に維持されるEBVベクターにより提供される。
【0127】
さらなる例示的な実施形態では、AAV-rep/cap配列およびアデノウイルスヘルパー配列は、単一のアデノウイルスヘルパーにより提供される。rAAV鋳型は、別々の複製ウイルスベクターとして提供され得る。例えば、rAAV鋳型は、rAAV粒子または第2の組換えアデノウイルス粒子により提供され得る。
【0128】
以上の方法によれば、ハイブリッドアデノウイルスベクターは、典型的には、アデノウイルスの複製およびパッケージングのために十分なアデノウイルス5’および3’シス配列(すなわち、アデノウイルス末端反復およびPAC配列)を含む。AAV-rep/cap配列および存在する場合にはrAAV鋳型はアデノウイルス骨格中に埋め込まれ、5’および3’シス配列が隣接しており、それにより、これらの配列はアデノウイルスキャプシドにパッケージングされ得る。上記のように、アデノウイルスヘルパー配列およびAAV-rep/cap配列は、概しては、TRが隣接しておらず、それにより、これらの配列はAAVビリオンにパッケージングされない。
【0129】
Zhang et al.,((2001)Gene Ther 18:704-12)は、アデノウイルスおよびAAVの両方のrepおよびcap遺伝子を含むキメラヘルパーを記載する。
【0130】
ヘルペスウイルスはまた、AAVパッケージング方法においてヘルパーウイルスとして使用されてもよい。AAV-Repタンパク質をコードするハイブリッドヘルペスウイルスは、有利には、拡張可能なAAVベクター製造スキームを促進してもよい。AAV-2のrepおよびcap遺伝子を発現するハイブリッド単純ヘルペスウイルスI型(HSV-1)ベクターが記載されている(Conway et al.,(1999)Gene Therapy 6:986およびWO00/17377)。
【0131】
さらなる代替として、本発明のウイルスベクターは、例えば、Urabe et al.,(2002)Human Gene Therapy 13:1935-43により記載されるようにrep/cap遺伝子およびrAAV鋳型を送達するためにバキュロウイルスベクターを使用して昆虫細胞中で製造され得る。
【0132】
夾雑性ヘルパーウイルスを含まないAAVベクターストックは、当該技術分野において公知の任意の方法により得られ得る。例えば、AAVおよびヘルパーウイルスは、サイズに基づいて容易に区別され得る。AAVはまた、ヘパリン基質に対する親和性に基づいてヘルパーウイルスから分離されてもよい(Zolotukhin et al.(1999)Gene Therapy 6:973)。いかなる夾雑性ヘルパーウイルスも複製コンピテントでないように、欠失性複製欠陥ヘルパーウイルスが使用され得る。さらなる代替として、AAVウイルスのパッケージングを媒介するためにアデノウイルス初期遺伝子発現のみが必要とされるので、後期遺伝子発現を欠いたアデノウイルスヘルパーが用いられてもよい。後期遺伝子発現について欠陥のあるアデノウイルス突然変異体は当該技術分野において公知である(例えば、ts100Kおよびts149アデノウイルス突然変異体)。
【0133】
[組換えウイルスベクター]
本発明は、細胞に核酸分子を投与する方法であって、細胞を本発明のウイルスベクター、AAV粒子、組成物および/または医薬配合物と接触させることを含む方法を提供する。
【0134】
本発明はさらに、対象に核酸を送達する方法であって、対象に本発明のウイルスベクター、AAV粒子、組成物および/または医薬配合物を投与することを含む方法を提供する。
【0135】
本発明の対象は任意の動物であり得、一部の実施形態では、対象は哺乳動物であり、一部の実施形態では、対象はヒトである。一部の実施形態では、対象は、免疫療法および/または遺伝子療法プロトコールにより治療され得る障害を有しまたはそのリスクがある。そのような障害の非限定的な例としては、デュシェンヌ型またはベッカー型筋ジストロフィーを含む筋ジストロフィー、血友病A、血友病B、多発性硬化症、糖尿病、ゴーシェ病、ファブリー病、ポンペ病、がん、関節炎、筋肉消耗、鬱血性心不全または末梢動脈疾患を含む心臓疾患、内膜過形成、癲癇、ハンチントン病、パーキンソン病またはアルツハイマー病を含む神経学的障害、自己免疫疾患、嚢胞性線維症、サラセミア、ハーラー症候群、スライ症候群、シャイエ症候群、ハーラー-シャイエ症候群、ハンター症候群、サンフィリポ症候群A、B、C、D、モルキオ症候群、マロトー-ラミー症候群、クラッベ病、フェニルケトン尿症、バッテン病、脊髄脳性運動失調症、LDL受容体欠損症、高アンモニア血症、貧血、関節炎、黄斑変性症を含む網膜変性障害、アデノシンデアミナーゼ欠損症、代謝障害、および腫瘍形成がんを含むがんが挙げられる。
【0136】
本明細書に記載の方法において、本発明のウイルスベクター、AAV粒子および/または組成物または医薬配合物は、全身性の経路(例えば、静脈内、動脈内、腹腔内など)および/または局所的な直接注射(例えば、筋肉内注射、直接的な脳内注射、CSFへの注射、目への注射など)を介して本発明の対象に投与/送達され得る。一部の実施形態では、ウイルスベクターおよび/または組成物は、脳室内(intracerebroventrical)、大槽内、実質内、頭蓋内および/または髄腔内経路を介して対象に投与され得る。
【0137】
本発明のウイルスベクターは、インビトロ、エクスビボ、およびインビボでの細胞への核酸分子の送達のために有用である。特に、ウイルスベクターは、有利には、哺乳動物細胞を含む動物細胞に核酸分子を送達または移入するために用いられ得る。
【0138】
任意の目的の異種核酸配列は、本発明のウイルスベクター中で送達されてもよい。目的の核酸分子としては、治療用(例えば、医学的もしくは獣医学的使用のため)および/または免疫原性(例えば、ワクチンのため)ポリペプチドを含むポリペプチドをコードする核酸分子が挙げられる。
【0139】
治療用ポリペプチドとしては、嚢胞性線維症膜貫通調節タンパク質(CFTR)、ジストロフィン(ミニおよびマイクロジストロフィンを含む;例えば、Vincent et al.,(1993)Nature Genetics 5:130;米国特許出願公開第2003/017131号明細書;国際公開WO/2008/088895号パンフレット、Wang et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 97:13714-13719(2000);およびGregorevic et al.,Mol.Ther.16:657-64(2008)を参照)、ミオスタチンプロペプチド、フォリスタチン、アクチビンII型可溶性受容体、IGF-1、抗炎症性ポリペプチド、例えば、Ikappa B優性突然変異体、サルコスパン、ユートロフィン(Tinsley et al.,(1996)Nature 384:349)、ミニユートロフィン、凝固因子(例えば、第VIII因子、第IX因子、第X因子など)、エリスロポエチン、アンジオスタチン、エンドスタチン、カタラーゼ、チロシンヒドロキシラーゼ、スーパーオキシドディスムターゼ、レプチン、LDL受容体、リポタンパク質リパーゼ、オルニチントランスカルバミラーゼ、β-グロビン、α-グロビン、スペクトリン、α1-アンチトリプシン、アデノシンデアミナーゼ、ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ、β-グルコセレブロシダーゼ、スフィンゴミエリナーゼ、リソソームヘキソサミニダーゼA、分岐鎖ケト酸デヒドロゲナーゼ、RP65タンパク質、サイトカイン(例えば、α-インターフェロン、β-インターフェロン、インターフェロン-γ、インターロイキン-2、インターロイキン-4、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、およびリンホトキシンなど)、ペプチド成長因子、神経栄養因子およびホルモン(例えば、ソマトトロピン、インスリン、インスリン様成長因子1および2、血小板由来成長因子、表皮成長因子、線維芽細胞増殖因子、神経成長因子、神経栄養因子-3および-4、脳由来神経栄養因子、骨形成タンパク質[RANKLおよびVEGFを含む]、グリア由来成長因子、トランスフォーミング増殖因子-αおよび-βなど)、リソソーム酸α-グルコシダーゼ、α-ガラクトシダーゼA、受容体(例えば、腫瘍壊死成長因子α可溶性受容体)、S100A1、パルブアルブミン、アデニリルシクラーゼ6型、カルシウム処理をモジュレートする分子(例えば、PP1のSERCA2A阻害剤1およびその断片[例えば、WO2006/029319およびWO2007/100465])、Gタンパク質共役型受容体キナーゼ2型のノックダウンをもたらす分子、例えば、切断型構成的活性bARKct、抗炎症性因子、例えば、IRAP、抗ミオスタチンタンパク質、アスパルトアシラーゼ、モノクローナル抗体(単鎖モノクローナル抗体を含む;例示的なMabはハーセプチン(登録商標)Mabである)、神経ペプチドおよびその断片(例えば、ガラニン、ニューロペプチドY(U.S. 7,071,172を参照)、血管新生阻害剤、例えば、バソヒビンおよび他のVEGF阻害剤(例えば、バソヒビン2[WOJP2006/073052を参照])が挙げられるがそれに限定されない。他の実例的な異種核酸配列は、自殺遺伝子産物(例えば、チミジンキナーゼ、シトシンデアミナーゼ、ジフテリア毒素、および腫瘍壊死因子)、がん療法において使用される薬物への抵抗性を付与するタンパク質、腫瘍抑制因子遺伝子産物(例えば、p53、Rb、Wt-1)、TRAIL、FASリガンド、ならびにそれを必要とする対象において治療効果を有する任意の他のポリペプチドをコードする。AAVベクターはまた、モノクローナル抗体および抗体断片、例えば、ミオスタチンを対象とする抗体または抗体断片を送達するために使用され得る(例えば、Fang et al.,Nature Biotechnology 23:584-590(2005)を参照)。
【0140】
ポリペプチドをコードする異種核酸配列としては、レポーターポリペプチド(例えば、酵素)をコードするものが挙げられる。レポーターポリペプチドは当該技術分野において公知であり、緑色蛍光タンパク質(GFP)、ルシフェラーゼ、β-ガラクトシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ルシフェラーゼ、およびクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ遺伝子が挙げられるがそれに限定されない。
【0141】
任意選択的に、異種核酸分子は、分泌されるポリペプチド(例えば、その天然の状態において分泌されるポリペプチドであるか、または、例えば、当該技術分野において公知のように分泌シグナル配列を作動可能に付随させることにより、分泌されるように操作されているポリペプチド)をコードする。
【0142】
あるいは、本発明の特定の実施形態では、異種核酸分子は、アンチセンス核酸分子、リボザイム(例えば、米国特許第5,877,022号明細書において記載されるようなもの)、スプライセオソーム媒介性のトランススプライシングをもたらすRNA(Puttaraju et al.,(1999)Nature Biotech.17:246;米国特許第6,013,487号明細書;米国特許第6,083,702号明細書を参照)、遺伝子サイレンシングを媒介するsiRNA、shRNAまたはmiRNAを含む干渉RNA(RNAi)(Sharp et al.,(2000)Science 287:2431を参照)、ならびに他の翻訳されないRNA、例えば、「ガイド」RNA(Gorman et al.,(1998)Proc.Nat.Acad.Sci.USA 95:4929;Yuan et al.の米国特許第5,869,248号明細書)などをコードしてもよい。例示的な翻訳されないRNAとしては、多薬物耐性(MDR)遺伝子産物に対するRNAi(例えば、腫瘍を治療および/もしくは予防するためおよび/または化学療法による損傷を予防するために心臓に投与するため)、ミオスタチンに対するRNAi(例えば、デュシェンヌ型筋ジストロフィーのため)、VEGFに対するRNAi(例えば、腫瘍を治療および/または予防するため)、ホスホランバンに対するRNAi(例えば、心臓血管疾患を治療するため;例えば、Andino et al.,J.Gene Med.10:132-142(2008)およびLi et al.,Acta Pharmacol Sin.26:51-55(2005)を参照);ホスホランバン阻害またはドミナントネガティブ分子、例えば、ホスホランバンS16E(例えば、心臓血管疾患を治療するため;例えば、Hoshijima et al.Nat.Med.8:864-871(2002)を参照)、アデノシンキナーゼに対するRNAi(例えば、癲癇のため)、ならびに病原性生物およびウイルス(例えば、B型および/またはC型肝炎ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、CMV、単純ヘルペスウイルス、ヒトパピローマウイルスなど)を対象とするRNAiが挙げられる。
【0143】
さらに、選択的スプライシングを指令する核酸配列が送達され得る。実例を挙げると、ジストロフィンエクソン51の5’および/または3’スプライス部位に相補的なアンチセンス配列(または他の阻害配列)は、このエクソンのスキッピングを誘導するためにU1またはU7核内低分子(sn)RNAプロモーターと組み合わせて送達され得る。例えば、アンチセンス/阻害配列の5’に位置するU1またはU7-snRNAプロモーターを含むDNA配列は、本発明の改変キャプシド中にパッケージングされて送達され得る。
【0144】
ウイルスベクターはまた、宿主細胞染色体上の遺伝子座と相同性を共有しかつそれと組換えを起こす異種核酸分子を含んでもよい。このアプローチは、例えば、宿主細胞中の遺伝的欠陥を訂正するために利用され得る。
【0145】
本発明はまた、例えば、ワクチン接種用の、免疫原性ポリペプチド、ペプチドおよび/またはエピトープを発現するウイルスベクターを提供する。核酸分子は、当該技術分野において公知の任意の目的の免疫原をコードしてもよく、該免疫原としては、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、類人猿免疫不全ウイルス(SIV)、インフルエンザウイルス、HIVまたはSIV gagタンパク質、腫瘍抗原、がん抗原、細菌抗原、およびウイルス抗原などからの免疫原が挙げられるがそれに限定されない。
【0146】
ワクチンベクターとしてのパルボウイルスの使用は当該技術分野において公知である(例えば、Miyamura et al.,(1994)Proc.Nat.Acad.Sci USA 91:8507;Young et al.の米国特許第5,916,563号明細書、Mazzara et al.の米国特許第5,905,040号明細書、米国特許第5,882,652号明細書、Samulski et al.の米国特許第5,863,541号明細書を参照)。抗原は、パルボウイルスキャプシド中に提示されてもよい。代替的に、免疫原または抗原は、組換えベクターゲノムに導入された異種核酸分子から発現されてもよい。本明細書に記載されるようなおよび/または当該技術分野において公知のような任意の目的の免疫原または抗原は、本発明のウイルスベクターにより提供され得る。
【0147】
免疫原性ポリペプチドは、免疫応答を誘発するためならびに/または感染症および/もしくは疾患から対象を保護するために好適な任意のポリペプチド、ペプチド、および/またはエピトープであり得、該感染症および/または疾患としては、微生物、細菌、原生動物、寄生虫、真菌および/またはウイルスによる感染症および疾患が挙げられるがそれに限定されない。例えば、免疫原性ポリペプチドは、オルトミクソウイルス免疫原(例えば、インフルエンザウイルス免疫原、例えば、インフルエンザウイルスヘマグルチニン(HA)表面タンパク質もしくはインフルエンザウイルス核タンパク質、もしくはウマインフルエンザウイルス免疫原)またはレンチウイルス免疫原(例えば、ウマ伝染性貧血ウイルス免疫原、類人猿免疫不全ウイルス(SIV)免疫原、もしくはヒト免疫不全ウイルス(HIV)免疫原、例えば、HIVもしくはSIVエンベロープGP160タンパク質、HIVもしくはSIVマトリックス/キャプシドタンパク質、ならびにHIVもしくはSIVのgag、polおよびenv遺伝子産物)であり得る。免疫原性ポリペプチドはまた、アレナウイルス免疫原(例えば、ラッサ熱ウイルス免疫原、例えば、ラッサ熱ウイルスヌクレオキャプシドタンパク質およびラッサ熱エンベロープ糖タンパク質)、ポックスウイルス免疫原(例えば、ワクシニアウイルス免疫原、例えば、ワクシニアL1もしくはL8遺伝子産物)、フラビウイルス免疫原(例えば、黄熱病ウイルス免疫原もしくは日本脳炎ウイルス免疫原)、フィロウイルス免疫原(例えば、エボラウイルス免疫原、もしくはマールブルクウイルス免疫原、例えば、NPおよびGP遺伝子産物)、ブニヤウイルス免疫原(例えば、RVFV、CCHF、および/もしくはSFSウイルス免疫原)、またはコロナウイルス免疫原(例えば、感染性ヒトコロナウイルス免疫原、例えば、ヒトコロナウイルスエンベロープ糖タンパク質、もしくは豚伝染性胃腸炎ウイルス免疫原、もしくは鶏伝染性気管支炎ウイルス免疫原)であり得る。免疫原性ポリペプチドはさらに、ポリオ免疫原、ヘルペス免疫原(例えば、CMV、EBV、HSV免疫原)おたふく風邪免疫原、麻疹免疫原、風疹免疫原、ジフテリア毒素もしくは他のジフテリア免疫原、百日咳抗原、肝炎(例えば、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎など)免疫原、および/または当該技術分野において現在公知のもしくは免疫原として今後見出される任意の他のワクチン免疫原であり得る。
【0148】
あるいは、免疫原性ポリペプチドは任意の腫瘍またはがん細胞抗原であり得る。任意選択的に、腫瘍またはがん抗原はがん細胞の表面上に発現される。例示的ながんおよび腫瘍細胞抗原はS.A.Rosenberg(Immunity 10:281(1991))において記載されている。他の実例的ながんおよび腫瘍抗原としては、BRCA1遺伝子産物、BRCA2遺伝子産物、gp100、チロシナーゼ、GAGE-1/2、BAGE、RAGE、LAGE、NY-ESO-1、CDK-4、β-カテニン、MUM-1、カスパーゼ-8、KIAA0205、HPVE、SART-1、PRAME、p15、黒色腫腫瘍抗原(Kawakami et al.,(1994 Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:3515; Kawakami et al.,(1994)J.Exp.Med.,180:347; Kawakami et al.,(1994)Cancer Res.54:3124)、MART-1、gp100 MAGE-1、MAGE-2、MAGE-3、CEA、TRP-1、TRP-2、P-15、チロシナーゼ(Brichard et al.,(1993 J.Exp.Med.178:489);HER-2/neu遺伝子産物(米国特許第4,968,603号明細書)、CA 125、LK26、FB5(エンドシアリン)、TAG 72、AFP、CA19-9、NSE、DU-PAN-2、CA50、SPan-1、CA72-4、HCG、STN(シアリルTn抗原)、c-erbB-2タンパク質、PSA、L-CanAg、エストロゲン受容体、ミルクファットグロブリン(milk fat globulin)、p53腫瘍抑制タンパク質(Levine,(1993)Ann.Rev.Biochem.62:623);ムチン抗原(国際公開WO90/05142号パンフレット);テロメラーゼ;核マトリックスタンパク質;前立腺酸ホスファターゼ;パピローマウイルス抗原;ならびに/または、黒色腫、腺がん、胸腺腫、リンパ腫(例えば、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫)、肉腫、肺がん、肝臓がん、結腸がん、白血病、子宮がん、乳がん、前立腺がん、卵巣がん、子宮頸がん、膀胱がん、腎臓がん、膵臓がん、脳のがんおよび現在公知であるもしくは今後見出される任意の他のがんもしくは悪性状態と関連付けられることが現在公知のもしくは後に発見される抗原(例えば、Rosenberg,(1996)Ann.Rev.Med.47:481-91を参照)が挙げられるがそれに限定されない。
【0149】
さらなる代替として、異種核酸分子は、望ましくは、インビトロ、エクスビボ、またはインビボで細胞中で産生される任意のポリペプチド、ペプチドおよび/またはエピトープをコードし得る。例えば、ウイルスベクターが培養細胞中に導入されて、発現された遺伝子産物がそこから単離されてもよい。
【0150】
目的の異種核酸分子に、適切な制御配列が作動可能に付随していてもよいことが当業者により理解される。例えば、異種核酸分子に、発現制御エレメント、例えば、転写/翻訳制御シグナル、複製起点、ポリアデニル化シグナル、内部リボソーム進入部位(IRES)、プロモーター、および/またはエンハンサーなどが作動可能に付随していてもよい。
【0151】
さらに、目的の異種核酸分子の調節された発現は、例えば、(例えば、WO2006/119137において記載されるように)特定の部位においてスプライシング活性を選択的に遮断するオリゴヌクレオチド、小分子および/または他の化合物の存在または非存在により異なるイントロンの選択的スプライシングを調節することにより、転写後レベルにおいて達成され得る。
【0152】
所望のレベルおよび組織特異的な発現に依存して様々なプロモーター/エンハンサーエレメントが使用され得ることを当業者は理解する。プロモーター/エンハンサーは、所望の発現のパターンに依存して構成的または誘導性であり得る。プロモーター/エンハンサーは、天然または外来のものであり得、天然または合成配列であり得る。外来は、転写開始領域が該転写開始領域が導入される野生型宿主においては見出されないことを意図する。
【0153】
特定の実施形態では、プロモーター/エンハンサーエレメントは、標的細胞または治療される対象にとって天然であり得る。代表的な実施形態では、プロモーター/エンハンサーエレメントは、異種核酸配列にとって天然であり得る。プロモーター/エンハンサーエレメントは、概しては、目的の標的細胞中で機能するように選択される。さらに、特定の実施形態では、プロモーター/エンハンサーエレメントは哺乳動物のプロモーター/エンハンサーエレメントである。プロモーター/エンハンサーエレメントは、構成的または誘導性であってもよい。
【0154】
誘導性発現制御エレメントは、典型的には、異種核酸配列の発現に対する調節を提供することが望ましい応用において有利である。遺伝子送達のための誘導性プロモーター/エンハンサーエレメントは、組織特異的または選好的プロモーター/エンハンサーエレメントであり得、筋肉特異的または選好的(心筋、骨格筋および/または平滑筋特異的または選好的を含む)、神経組織特異的または選好的(脳特異的または選好的を含む)、目特異的または選好的(網膜特異的および角膜特異的を含む)、肝臓特異的または選好的、骨髄特異的または選好的、膵臓特異的または選好的、脾臓特異的または選好的、ならびに肺特異的または選好的なプロモーター/エンハンサーエレメントが挙げられる。他の誘導性プロモーター/エンハンサーエレメントとしては、ホルモン誘導性および金属誘導性エレメントが挙げられる。例示的な誘導性プロモーター/エンハンサーエレメントとしては、Tetオン/オフエレメント、RU486誘導性プロモーター、エクジソン誘導性プロモーター、ラパマイシン誘導性プロモーター、およびメタロチオネインプロモーターが挙げられるがそれに限定されない。
【0155】
異種核酸配列が標的細胞中で転写された後に翻訳される実施形態では、挿入されたタンパク質コーディング配列の効率的な翻訳のために、特定の開始シグナルが概しては含まれる。これらの外因性翻訳制御配列は、ATG開始コドンおよび隣接配列を含んでもよく、天然および合成の両方の、様々な起源のものであり得る。
【0156】
本発明によるウイルスベクターは、分裂および非分裂細胞を含む広範な細胞に異種核酸分子を送達するための手段を提供する。ウイルスベクターは、例えば、インビトロでポリペプチドを製造するために、インビトロで細胞に目的の核酸分子を送達するためまたはエクスビボもしくはインビボ遺伝子療法のために用いられ得る。ウイルスベクターは追加的に、例えば、免疫原性もしくは治療用ポリペプチドまたは機能的なRNAを発現させるために、それを必要とする対象に核酸を送達する方法において有用である。このようにして、ポリペプチドまたは機能的なRNAは、対象においてインビボで産生され得る。対象は、ポリペプチドの欠損を有するという理由から該ポリペプチドを必要とし得る。さらに、対象におけるポリペプチドまたは機能的なRNAの産生は何らかの有益な効果を付与し得るという理由から方法が実施され得る。
【0157】
ウイルスベクターはまた、(例えば、ポリペプチドを製造するためのバイオリアクターとして対象を使用して、または、例えばスクリーニング方法との関連において、対象に対する機能的なRNAの効果を観察するために)培養細胞または対象において目的のポリペプチドまたは機能的なRNAを産生させるために使用され得る。
【0158】
一般に、本発明のウイルスベクターは、治療用ポリペプチドまたは機能的なRNAを送達することが有益な任意の障害または病態を治療および/または予防するためにポリペプチドまたは機能的なRNAをコードする異種核酸分子を送達するために用いられ得る。実例的な病態としては、嚢胞性線維症(嚢胞性線維症膜貫通調節タンパク質)および肺の他の疾患、血友病A(第VIII因子)、血友病B(第IX因子)、サラセミア(β-グロビン)、貧血(エリスロポエチン)および他の血液障害、アルツハイマー病(GDF;ネプリライシン)、多発性硬化症(β-インターフェロン)、パーキンソン病(グリア細胞株由来神経栄養因子[GDNF])、ハンチントン病(反復を除去するためのRNAi)、筋萎縮性側索硬化症、癲癇(ガラニン、神経栄養因子)、および他の神経学的障害、がん(エンドスタチン、アンジオスタチン、TRAIL、FASリガンド、インターフェロンを含むサイトカイン;VEGFまたは多薬物耐性遺伝子産物に対するRNAiを含むRNAi、mir-26a[例えば、肝細胞癌のため])、糖尿病(インスリン)、デュシェンヌ型(ジストロフィン、ミニジストロフィン、インスリン様成長因子I、サルコグリカン[例えば、α、β、γ]、ミオスタチンに対するRNAi、ミオスタチンプロペプチド、フォリスタチン、アクチビンII型可溶性受容体、抗炎症性ポリペプチド、例えば、Ikappa B優性突然変異体、サルコスパン、ユートロフィン、ミニユートロフィン、エクソンスキッピングを誘導するためのジストロフィン遺伝子中のスプライスジャンクションに対するアンチセンスまたはRNAi[例えば、WO/2003/095647を参照]、エクソンスキッピングを誘導するためのU7-snRNAに対するアンチセンス[例えば、WO/2006/021724を参照]、およびミオスタチンまたはミオスタチンプロペプチドに対する抗体または抗体断片)およびベッカー型を含む筋ジストロフィー、ゴーシェ病(グルコセレブロシダーゼ)、ハーラー病(α-L-イズロニダーゼ)、アデノシンデアミナーゼ欠損症(アデノシンデアミナーゼ)、グリコーゲン貯蔵病(例えば、ファブリー病[α-ガラクトシダーゼ]およびポンペ病[リソソーム酸α-グルコシダーゼ])および他の代謝障害、先天性気腫(α1-アンチトリプシン)、レッシュ-ナイハン症候群(ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ)、ニーマン-ピック病(スフィンゴミエリナーゼ)、テイ-サックス病(リソソームヘキソサミニダーゼA)、メープルシロップ尿症(分岐鎖ケト酸デヒドロゲナーゼ)、網膜変性疾患(および目および網膜の他の疾患;例えば、黄斑変性症のためのPDGFおよび/またはバソヒビンまたはVEGFの他の阻害剤または、例えばI型糖尿病における、網膜障害を治療/予防するための他の血管新生阻害剤)、固形臓器、例えば、脳(パーキンソン病[GDNF]、星状細胞腫[エンドスタチン、アンジオスタチンおよび/またはVEGFに対するRNAi]、膠芽腫[エンドスタチン、アンジオスタチンおよび/またはVEGFに対するRNAi]を含む)、肝臓、腎臓、鬱血性心不全または末梢動脈疾患(PAD)を含む心臓(例えば、プロテインホスファターゼ阻害剤I(I-1)およびその断片(例えば、I1C)、serca2a、ホスホランバン遺伝子を調節するジンクフィンガータンパク質、Barkct、β2-アドレナリン作動性受容体、β2-アドレナリン作動性受容体キナーゼ(BARK)、ホスホイノシチド-3キナーゼ(PI3キナーゼ)、S100A1、パルブアルブミン、アデニリルシクラーゼ6型、Gタンパク質共役型受容体キナーゼ2型のノックダウンをもたらす分子、例えば、切断型構成的活性bARKct;カルサルシン、ホスホランバンに対するRNAi;ホスホランバン阻害またはドミナントネガティブ分子、例えば、ホスホランバンS16Eなどを送達することによる)の疾患、関節炎(インスリン様成長因子)、関節障害(インスリン様成長因子1および/または2)、内膜過形成(例えば、enos、inosを送達することによる)、心臓移植片の生存の向上(スーパーオキシドディスムターゼ)、AIDS(可溶性CD4)、筋肉消耗(インスリン様成長因子I)、腎臓不全(エリスロポエチン)、貧血(エリスロポエチン)、関節炎(抗炎症性因子、例えば、IRAPおよびTNFα可溶性受容体)、肝炎(α-インターフェロン)、LDL受容体欠損症(LDL受容体)、高アンモニア血症(オルニチントランスカルバミラーゼ)、クラッベ病(ガラクトセレブロシダーゼ)、バッテン病、SCA1、SCA2およびSCA3を含む脊髄脳性運動失調症、フェニルケトン尿症(フェニルアラニンヒドロキシラーゼ)、ならびに自己免疫疾患などが挙げられるがそれに限定されない。本発明はさらに、移植の成功を増加させるためおよび/または臓器移植もしくは補助療法の負の副作用を低減するために臓器移植後に使用され得る(例えば、免疫抑制剤または阻害核酸を投与してサイトカイン産生を遮断することによる)。別の例として、例えば、骨形成タンパク質(BNP 2、7など、RANKLおよび/またはVEGFを含む)が、骨折またはがん患者における外科的除去後に骨同種移植片と共に投与され得る。
【0159】
本発明はまた、人工多能性幹細胞(iPS)を製造するために使用され得る。例えば、本発明のウイルスベクターは、幹細胞関連核酸を非多能性細胞、例えば、成体線維芽細胞、皮膚細胞、肝細胞、腎臓細胞、脂肪細胞、心臓細胞、神経細胞、上皮細胞、および内皮細胞などに送達するために使用され得る。幹細胞と関連付けられる因子をコードする核酸は当該技術分野において公知である。幹細胞および多能性と関連付けられるそのような因子の非限定的な例としては、Oct-3/4、SOXファミリー(例えば、SOX1、SOX2、SOX3および/もしくはSOX15)、Klfファミリー(例えば、Klf1、Klf2、Klf4および/もしくはKlf5)、Mycファミリー(例えば、C-myc、L-mycおよび/もしくはN-myc)、NANOGならびに/またはLIN28が挙げられる。
【0160】
本発明はまた、代謝障害、例えば、糖尿病(例えば、インスリン)、血友病(例えば、第IX因子または第VIII因子)、リソソーム貯蔵障害、例えば、ムコ多糖症障害(例えば、スライ症候群[β-グルクロニダーゼ]、ハーラー症候群[α-L-イズロニダーゼ]、シャイエ症候群[α-L-イズロニダーゼ]、ハーラー-シャイエ症候群[α-L-イズロニダーゼ]、ハンター症候群[イズロン酸スルファターゼ]、サンフィリポ症候群A[ヘパランスルファミダーゼ]、B[N-アセチルグルコサミニダーゼ]、C[アセチル-CoA:α-グルコサミニドアセチルトランスフェラーゼ]、D[N-アセチルグルコサミン6-スルファターゼ]、モルキオ症候群A[ガラクトース-6-硫酸スルファターゼ]、B[β-ガラクトシダーゼ]、マロトー-ラミー症候群[N-アセチルガラクトサミン-4-スルファターゼ]など)、ファブリー病(α-ガラクトシダーゼ)、ゴーシェ病(グルコセレブロシダーゼ)、またはグリコーゲン貯蔵障害(例えば、ポンペ病;リソソーム酸α-グルコシダーゼ)を治療および/または予防するために実施され得る。
【0161】
遺伝子移入は、病態に対する療法を理解および提供するための実質的な潜在的用途を有する。欠陥遺伝子が公知でありかつクローニングされている多数の遺伝性疾患がある。一般に、上記の病態は、概しては劣勢方式で遺伝する、通常は酵素の、欠損状態、および、調節または構造タンパク質を伴うことがあり、典型的には優性方式で遺伝する、不均衡状態という2つのクラスに入る。欠損状態の疾患のために、遺伝子移入は、置換療法のために罹患した組織に正常な遺伝子を運ぶための他に、アンチセンス突然変異を使用して疾患の動物モデルを作製するために使用され得る。不均衡病態のために、遺伝子移入は、モデルシステムにおいて病態を作製するために使用され得、該モデルシステムは次に、病態に対抗するための努力において使用され得る。したがって、本発明によるウイルスベクターは、遺伝病の治療および/または予防を可能とする。
【0162】
本発明によるウイルスベクターはまた、インビトロまたはインビボで細胞に機能的なRNAを提供するために用いられてもよい。例えば、細胞中での機能的なRNAの発現は、細胞による特定の標的タンパク質の発現を減少させ得る。したがって、機能的なRNAは、それを必要とする対象において特定のタンパク質の発現を減少させるために投与され得る。機能的なRNAはまた、遺伝子発現および/もしくは細胞生理機能を調節して、例えば、細胞もしくは組織培養系を最適化するためまたはスクリーニング方法においてインビトロで細胞に投与され得る。
【0163】
加えて、本発明によるウイルスベクターは、診断およびスクリーニング方法において用途を有し、それにより、目的の核酸は、細胞培養システム、または代替的に、トランスジェニック動物モデルにおいて一過的にまたは安定的に発現される。
【0164】
本発明のウイルスベクターはまた、様々な非治療目的のために使用され得、該目的としては、当業者に明らかなように、遺伝子標的化、クリアランス、転写、翻訳などを評価するためのプロトコールにおける使用が挙げられるがそれに限定されない。ウイルスベクターはまた、安全性(拡大、毒性、免疫原性など)を評価する目的のために使用され得る。例えば、そのようなデータは、臨床的有効性の評価の前の規制当局の承認プロセスの部分として米国食品医薬品局により考慮される。
【0165】
さらなる態様として、本発明のウイルスベクターは、対象において免疫応答を生じさせるために使用されてもよい。この実施形態によれば、免疫原性ポリペプチドをコードする異種核酸配列を含むウイルスベクターが対象に投与され得、能動免疫応答が免疫原性ポリペプチドに対して対象により起動される。免疫原性ポリペプチドは、本明細書において上記した通りである。一部の実施形態では、保護免疫応答が誘発される。
【0166】
「能動免疫応答」または「能動免疫」は、免疫原との遭遇後の宿主組織および細胞の「関与により特徴付けられる。それは、リンパ細網組織中の免疫適格細胞の分化および増殖を伴い、それは、抗体の合成または細胞媒介性の反応性の発生、または両方に繋がる。Herbert B.Herscowitz,Immunophysiology: Cell Function and Cellular Interactions in Antibody Formation,in IMMUNOLOGY: BASIC PROCESSES 117(Joseph A. Bellanti ed.,1985)。代替的に記載すれば、能動免疫応答は、感染またはワクチン接種による免疫原への曝露後に宿主により起動される。能動免疫は、「予め形成された物質(抗体、移入因子、胸腺移植片、インターロイキン-2)の能動免疫化宿主から非免疫宿主への移入」を通じて獲得される受動免疫と対比され得る(上記の文献)。
【0167】
本明細書において使用される「保護」免疫応答または「保護」免疫は、免疫応答が、疾患の発生を予防または低減するという点で対象に何らかの利益を付与することを指し示す。代替的に、保護免疫応答または保護免疫は、疾患、特に、がんまたは腫瘍の治療および/または予防において有用であり得る(例えば、がんもしくは腫瘍形成を予防すること、がんもしくは腫瘍の退縮を引き起こすことおよび/または転移を予防することおよび/または転移性小結節の成長を予防することによる)。治療の利益がその任意の欠点を凌ぐ限り、保護効果は完全または部分的なものであってもよい。
【0168】
特定の実施形態では、異種核酸分子を含むウイルスベクターまたは細胞は、以下に記載されるように、免疫原性的に効果的な量で投与され得る。
【0169】
本発明のウイルスベクターはまた、1つもしくは複数のがん細胞抗原(もしくは免疫学的に類似の分子)またはがん細胞に対する免疫応答を生じさせる任意の他の免疫原を発現するウイルスベクターの投与によりがん免疫療法のために投与され得る。実例を挙げると、例えば、がんを有する患者を治療するためおよび/または対象においてがんが発生することを予防するために、がん細胞抗原をコードする異種核酸を含むウイルスベクターを投与することにより対象において免疫応答ががん細胞抗原に対して生じ得る。ウイルスベクターは、本明細書に記載されるように、インビボでまたはエクスビボの方法を使用することにより対象に投与されてもよい。代替的に、がん抗原は、ウイルスキャプシドの部分として発現させても、または(例えば、上記のように)それ以外にウイルスキャプシドと会合させてもよい。
【0170】
別の代替として、当該技術分野において公知の任意の他の治療用核酸(例えば、RNAi)またはポリペプチド(例えば、サイトカイン)は、がんを治療および/または予防するために投与され得る。
【0171】
本明細書において使用される場合、「がん」という用語は腫瘍形成がんを包含する。同様に、「がん性組織」という用語は腫瘍を包含する。「がん細胞抗原」は腫瘍抗原を包含する。
【0172】
「がん」という用語は、当該技術分野においてそれが理解される意味を有し、例えば、身体の遠位部位に広がる(すなわち、転移する)可能性を有する組織の制御されない成長を意味する。例示的ながんとしては、黒色腫、腺がん、胸腺腫、リンパ腫(例えば、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫)、肉腫、肺がん、肝臓がん、結腸がん、白血病、子宮がん、乳がん、前立腺がん、卵巣がん、子宮頸がん、膀胱がん、腎臓がん、膵臓がん、脳のがんおよび現在公知のまたは今後見出される任意の他のがんまたは悪性状態が挙げられるがそれに限定されない。代表的な実施形態では、本発明は、腫瘍形成がんを治療および/または予防する方法を提供する。
【0173】
「腫瘍」という用語もまた、例えば、多細胞生物内の未分化細胞の異常な塊として、当該技術分野において理解される。腫瘍は悪性または良性であり得る。代表的な実施形態では、本明細書に開示される方法は、悪性腫瘍を予防および治療するために使用される。
【0174】
「がんを治療する」、「がんの治療」という用語および同等の用語により、がんの重篤度が低減もしくは少なくとも部分的に除去されることならびに/または疾患の進行が緩慢化および/もしくは制御されることならびに/または疾患が安定化されることが意図される。特定の実施形態では、これらの用語は、がんの転移が予防もしくは低減もしくは少なくとも部分的に除去されることおよび/または転移性小結節の成長が予防もしくは低減もしくは少なくとも部分的に除去されることを指し示す。
【0175】
「がんの予防」または「がんを予防する」という用語および同等の用語により、方法は、がんの発症の発生率および/または重篤度を少なくとも部分的に除去または低減しおよび/または遅延させることが意図される。代替的に記載すると、対象におけるがんの発症は、可能性もしくは確率において低減されかつ/または遅延されてもよい。
【0176】
免疫応答は、免疫調節性サイトカイン(例えば、α-インターフェロン、β-インターフェロン、γ-インターフェロン、ω-インターフェロン、τ-インターフェロン、インターロイキン-1α、インターロイキン-1β、インターロイキン-2、インターロイキン-3、インターロイキン-4、インターロイキン5、インターロイキン-6、インターロイキン-7、インターロイキン-8、インターロイキン-9、インターロイキン-10、インターロイキン-11、インターロイキン12、インターロイキン-13、インターロイキン-14、インターロイキン-18、B細胞増殖因子、CD40リガンド、腫瘍壊死因子-α、腫瘍壊死因子-β、単球化学誘引タンパク質-1、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、およびリンホトキシン)により増進され得ることが当該技術分野において公知である。したがって、免疫調節性サイトカイン(好ましくは、CTL誘導性サイトカイン)がウイルスベクターと組み合わせて対象に投与されてもよい。
【0177】
サイトカインは、当該技術分野において公知の任意の方法により投与されてもよい。外因性のサイトカインが対象に投与されてもよく、または代替的に、サイトカインをコードする核酸が好適なベクターを使用して対象に送達されてもよく、サイトカインがインビボで産生される。
【0178】
[対象、医薬配合物、および投与の様式]
本発明によるウイルスベクターおよびAAV粒子は、獣医学的応用および医学的応用の両方において用途を有する。好適な対象としては、鳥類および哺乳動物の両方が挙げられる。本明細書において使用される「鳥類」という用語は、ニワトリ、カモ、ガン、ウズラ、シチメンチョウ、キジ、オウム、およびインコなどを含むがそれに限定されない。本明細書において使用される「哺乳動物」という用語は、ヒト、非ヒト霊長動物、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ネコ、イヌ、ウサギ目動物などを含むがそれに限定されない。ヒト対象としては、新生児、乳児、若年者、成人および老年対象が挙げられる。
【0179】
代表的な実施形態では、対象は、本発明の方法を「必要としている」。
【0180】
特定の実施形態では、本発明は、薬学的に許容される担体中の本発明のウイルスベクターおよび/またはキャプシドおよび/またはAAV粒子ならびに、任意選択的に、他の薬剤、医薬物質、安定化剤、緩衝剤、担体、佐剤、希釈剤などを含む、医薬組成物を提供する。注射のために、担体は典型的には液体である。他の投与方法のために、担体は固体または液体のいずれであってもよい。吸入投与のために、担体は呼吸用のものであり、任意選択で、固体または液体粒子状であり得る。対象への投与または他の医薬的使用のために、担体は無菌かつ/または生理学的に適合性である。
【0181】
「薬学的に許容される」は、毒性であることも、代わりに望ましくないものであることもない材料を意味し、すなわち、材料は、いかなる望ましくない生物学的効果も引き起こすことなく対象に投与され得る。
【0182】
本発明の一態様は、インビトロで核酸分子を細胞に移入する方法である。ウイルスベクターは、特定の標的細胞のために好適な標準的な形質導入方法にしたがって適切な多重感染度において細胞に導入されてもよい。投与すべきウイルスベクターの力価は、標的細胞の種類および数、ならびに特定のウイルスベクターに依存して変動することができ、過度の実験なしに当業者により決定され得る。代表的な実施形態では、少なくとも約103感染単位、任意選択で少なくとも約105感染単位が細胞に導入される。
【0183】
ウイルスベクターが導入される細胞は任意の種類であり得、該種類としては、神経細胞(末梢および中枢神経系の細胞、特に、ニューロンおよびオリゴデンドロサイトなどの脳細胞を含む)、肺細胞、目の細胞(網膜細胞、網膜色素上皮、および角膜細胞を含む)、上皮細胞(例えば、腸および呼吸器系上皮細胞)、筋肉細胞(例えば、骨格筋細胞、心筋細胞、平滑筋細胞および/または横隔膜筋細胞)、樹状細胞、膵臓細胞(膵島細胞を含む)、肝細胞、心筋細胞、骨細胞(例えば、骨髄幹細胞)、造血幹細胞、脾臓細胞、ケラチノサイト、線維芽細胞、内皮細胞、前立腺細胞、ならびに生殖細胞などが挙げられるがそれに限定されない。代表的な実施形態では、細胞は任意の前駆細胞であり得る。さらなる可能性として、細胞は幹細胞(例えば、神経幹細胞、肝臓幹細胞)であり得る。いっそうさらなる代替として、細胞はがんまたは腫瘍細胞であり得る。さらに、細胞は、上記に指し示したような起源の任意の種からのものであり得る。
【0184】
ウイルスベクターは、対象に改変細胞を投与する目的のためにインビトロで細胞に導入され得る。特定の実施形態では、細胞が対象から除去され、ウイルスベクターがそこに導入された後、細胞が再び該対象に投与される。エクスビボでのマニピュレーションのために対象から細胞を除去した後、対象に再び導入する方法は当該技術分野において公知である(例えば、米国特許第5,399,346号明細書を参照)。代替的に、組換えウイルスベクターは、ドナー対象からの細胞、培養細胞、または任意の他の好適な供給源からの細胞に導入され得、かつ該細胞がそれを必要とする対象(すなわち、「レシピエント」対象)に投与される。
【0185】
エクスビボでの核酸送達のために好適な細胞は上記の通りである。対象に投与すべき細胞の投与量は、対象の年齢、状態および種、細胞の種類、細胞により発現されている核酸、ならびに投与の様式などにより変動する。典型的には、薬学的に許容される担体中の用量当たり少なくとも約102~約108個の細胞または少なくとも約103~約106個の細胞が投与される。特定の実施形態では、ウイルスベクターを形質導入された細胞は、薬学的担体と組み合わせて治療有効量または予防有効量において対象に投与される。
【0186】
一部の実施形態では、ウイルスベクターは細胞に導入され、かつ、該細胞は、送達されたポリペプチドに対する免疫原性応答を誘発する(例えば、導入遺伝子としてまたはキャプシド中で発現される)ために対象に投与され得る。典型的には、薬学的に許容される担体と組み合わせて免疫原性的に効果的な量のポリペプチドを発現する細胞が投与される。「免疫原性的に効果的な量」は、医薬配合物が投与される対象においてポリペプチドに対する能動免疫応答を誘発するために十分な発現されるポリペプチドの量である。特定の実施形態では、投与量は、(上記に定義されるような)保護免疫応答を生じさせるために十分なものである。免疫原性ポリペプチドの投与の利益がその任意の欠点を凌ぐ限り、付与される保護の程度は完全または永久的なものである必要はない。
【0187】
本発明のさらなる態様は、ウイルスベクターおよび/またはウイルスキャプシドを対象に投与する方法である。それを必要とするヒト対象または動物への本発明によるウイルスベクターおよび/またはキャプシドの投与は、当該技術分野において公知の任意の手段により為され得る。任意選択で、ウイルスベクターおよび/またはキャプシドは、薬学的に許容される担体中で治療有効用量または予防有効用量において送達される。
【0188】
本発明のウイルスベクターおよび/またはキャプシドはさらに、免疫原性応答を誘発する(例えば、ワクチンとして)ために投与され得る。典型的には、本発明の免疫原性組成物は、薬学的に許容される担体と組み合わせて免疫原性的に効果的な量のウイルスベクターおよび/またはキャプシドを含む。任意選択で、投与量は、(上記に定義されるような)保護免疫応答を生じさせるために十分なものである。免疫原性ポリペプチドの投与の利益がその任意の欠点を凌ぐ限り、付与される保護の程度は完全または永久的なものである必要はない。対象および免疫原は上記の通りである。
【0189】
対象に投与されるウイルスベクターおよび/またはキャプシドの投与量は、投与の様式、治療および/または予防される疾患または状態、個々の対象の状態、特定のウイルスベクターまたはキャプシド、ならびに送達される核酸などに依存し、ルーチンの方式において決定され得る。治療効果を達成するための例示的な用量は、少なくとも約105、106、107、108、109、1010、1011、1012、103、1014、1015導入単位、任意選択で約108~約1013導入単位の力価である。
【0190】
特定の実施形態では、1回より多くの投与(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10回などまたはより多くの投与)が、様々な間隔、例えば、時間毎、日毎に、週毎、月毎、年毎などの期間にわたり所望のレベルの遺伝子発現を達成するために用いられてもよい。
【0191】
例示的な投与の様式としては、経口、直腸、経粘膜、鼻腔内、吸入(例えば、エアロゾルを介して)、頬側(例えば、舌下)、膣、髄腔内、眼内、経皮、子宮内(または卵子内)、非経口(例えば、静脈内、皮下、皮内、筋肉内[骨格筋、横隔膜筋および/または心筋への投与を含む]、皮内、胸膜内、脳内、および関節内)、局所的(例えば、気道表面を含む、皮膚および粘膜表面の両方、および経皮投与)ならびにリンパ内などの他に、直接的な組織または臓器注射(例えば、肝臓、骨格筋、心筋、横隔膜筋または脳への注射)が挙げられる。投与はまた、腫瘍(例えば、腫瘍またはリンパ節の中またはその近く)に対して為され得る。任意の所与の症例における最も好適な経路は、治療および/または予防されている状態の性質および重篤度ならびに使用されている特定のベクターの性質に依存する。
【0192】
ウイルスベクターおよび/またはキャプシドは、静脈内投与、動脈内投与、腹腔内投与、四肢灌流(任意選択で、脚および/もしくは腕の分離式肢灌流;例えば、Arruda et al.,(2005)Blood 105: 3458-3464)を参照)、ならびに/または直接的な筋肉内注射により送達され得る。特定の実施形態では、ウイルスベクターおよび/またはキャプシドは、四肢灌流、任意選択で分離式肢灌流(例えば、静脈内または関節内投与による)により、対象(例えば、DMDなどの筋ジストロフィーを有する対象)の肢(腕および/または脚)に投与される。本発明の実施形態では、本発明のウイルスベクターおよび/またはキャプシドは、有利には、「ハイドロダイナミック」技術を用いることなく投与され得る。先行技術のベクターの(例えば、筋肉への)組織送達は、多くの場合にハイドロダイナミック技術(例えば、静脈内投与/大容量での静脈内投与)により増進され、該技術は、脈管系における圧力を増加させ、かつ内皮細胞障壁を越えるベクターの能力を促進する。特定の実施形態では、本発明のウイルスベクターおよび/またはキャプシドは、高容量注入および/または上昇した脈管内圧力(例えば、正常な収縮期圧力より高い、例えば、正常な収縮期圧力に対して脈管内圧力の5%未満またはそれに等しい、10%未満またはそれに等しい、15%未満またはそれに等しい、20%未満またはそれに等しい、25%未満またはそれに等しい増加)などのハイドロダイナミック技術の非存在下で投与され得る。そのような方法は、浮腫、神経損傷および/またはコンパートメント症候群などのハイドロダイナミック技術と関連付けられる副作用を低減または回避し得る。
【0193】
本発明はまた、全身性の送達のためのアンチセンスRNA、RNAiまたは他の機能的なRNA(例えば、リボザイム)を製造するために実施され得る。
【0194】
注射可能液は、液体溶液もしくは懸濁液、注射前の液体中への溶解もしくは懸濁のために好適な固体形態、またはエマルションのいずれかとして、従来の形態において調製され得る。代替的に、全身性ではなく、例えばデポーまたは持続放出配合物中の、局所的な方式において本発明のウイルスベクターおよび/またはウイルスキャプシドを投与することができる。さらに、ウイルスベクターおよび/またはウイルスキャプシドは、外科的に移植可能なマトリックス(例えば、米国特許出願公開第US-2004-0013645-A1号明細書に記載されるようなもの)に接着して送達され得る。
【0195】
特定の実施形態では、本発明の送達ベクターは、遺伝性障害、神経変性障害、精神医学的障害および腫瘍を含む、CNSの疾患を治療するために投与されてもよい。CNSの実例的な疾患としては、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、カナバン病、リー病、レフサム病、トゥレット症候群、原発性側索硬化症、筋萎縮性側索硬化症、進行性筋萎縮、ピック病、筋ジストロフィー、多発性硬化症、重症筋無力症、ビンスワンガー病、脊髄または頭部傷害に起因する外傷、テイ・サックス病、レッシュ-ナイハン病(Lesch-Nyan disease)、癲癇、脳梗塞、気分障害(例えば、鬱病、双極性感情障害、持続性感情障害、二次性気分障害)、統合失調症、薬物依存症(例えば、アルコール依存症および他の物質依存症)、ノイローゼ(例えば、不安、強迫障害、身体表現性障害、解離性障害、悲嘆、分娩後鬱病)、精神病(例えば、幻覚および妄想)、認知症、パラノイア、注意欠陥障害、精神性的障害、睡眠障害、疼痛障害、摂食または体重障害(例えば、肥満症、悪液質、神経性食欲不振症、および過食症(bulemia))を含む精神医学的障害ならびにCNSのがんおよび腫瘍(例えば、下垂体腫瘍)が挙げられるがそれに限定されない。
【0196】
CNSの障害としては、網膜、後方路(posterior tract)、および視神経を伴う眼障害(例えば、網膜色素変性症、糖尿病網膜症および他の網膜変性疾患、ぶどう膜炎、加齢黄斑変性症、緑内障)が挙げられる。
【0197】
全てではないとしてもほとんどの眼疾患および障害は、(1)血管新生、(2)炎症、および(3)変性の3種類の徴候のうちの1つまたは複数と関連付けられる。本発明の送達ベクターは、抗血管新生因子;抗炎症性因子;細胞変性を遅延させ、細胞温存を促進し、または細胞成長を促進する因子および以上の組合せを送達するために用いられ得る。
【0198】
例えば、糖尿病網膜症は血管新生により特徴付けられる。糖尿病網膜症は、眼内(例えば、硝子体内)または眼周囲(例えば、テノン嚢下の領域内)のいずれかに1つまたは複数の抗血管新生因子を送達することにより治療され得る。1つまたは複数の神経栄養因子はまた、眼内(例えば、硝子体内)または眼周囲のいずれかに、共送達されてもよい。
【0199】
ぶどう膜炎は炎症を伴う。1つまたは複数の抗炎症性因子は、本発明の送達ベクターの眼内(例えば、硝子体内または前眼房内)投与により投与され得る。
【0200】
比較により、網膜色素変性症は網膜変性により特徴付けられる。代表的な実施形態では、網膜色素変性症は、1つまたは複数の神経栄養因子をコードする送達ベクターの眼内(例えば、硝子体内)投与により治療され得る。
【0201】
加齢黄斑変性症は、血管新生および網膜変性の両方を伴う。この障害は、1つもしくは複数の神経栄養因子をコードする本発明の送達ベクター(deliver vector)を眼内(例えば、硝子体内)におよび/または1つもしくは複数の抗血管新生因子を眼内もしくは眼周囲内(例えば、テノン嚢下の領域内)に投与することにより治療され得る。
【0202】
緑内障は、眼圧の増加および網膜神経節細胞の喪失により特徴付けられる。緑内障の治療は、本発明の送達ベクターを使用して興奮毒性損傷から細胞を保護する1つまたは複数の神経保護剤を投与することを含む。そのような剤としては、眼内に、任意選択で硝子体内に送達される、N-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)アンタゴニスト、サイトカイン、および神経栄養因子が挙げられる。
【0203】
他の実施形態では、本発明は、発作を治療するため、例えば、発作の発症、発生率または重篤度を低減するために使用されてもよい。発作の治療的処置の有効性は、行動(例えば、震え、目もしくは口のチック)および/または電位記録手段(ほとんどの発作は特徴的な電位記録的異常を有する)により評価され得る。したがって、本発明はまた、経時的な複数の発作により特徴付けられる癲癇を治療するために使用され得る。
【0204】
1つの代表的な実施形態では、ソマトスタチン(またはその活性断片)が、下垂体腫瘍を治療するために本発明の送達ベクターを使用して脳に投与される。この実施形態によれば、ソマトスタチン(またはその活性断片)をコードする送達ベクターは、微量注入により下垂体に投与される。同様に、そのような治療は、先端巨大症(下垂体からの異常な成長ホルモン分泌)を治療するために使用され得る。ソマトスタチンの核酸(例えば、GenBankアクセッション番号J00306)およびアミノ酸(例えば、GenBankアクセッション番号P01166;プロセシングされた活性ペプチドソマトスタチン-28およびソマトスタチン-14を含有する)配列は当該技術分野において公知である。
【0205】
特定の実施形態では、ベクターは、米国特許第7,071,172号明細書において記載されるような分泌シグナルを含み得る。
【0206】
本発明の代表的な実施形態では、ウイルスベクターおよび/またはウイルスキャプシドは、全身投与後にCNS(例えば、脳または目)に送達される。ウイルスベクターおよび/またはキャプシドは、脊髄、脳幹(延髄、脳橋)、中脳(視床下部、視床、視床上部、下垂体、黒質、松果体腺)、小脳、終脳(線条体、後頭葉、側頭葉、頭頂葉および前頭葉を含む大脳、皮質、大脳基底核、海馬および扁桃体(portaamygdala))、辺縁系、新皮質、線条体、大脳、および下丘に導入されてもよい。ウイルスベクターおよび/またはキャプシドはまた、末梢投与後に網膜、角膜および/または視神経などの目の異なる領域に送達されてもよい。
【0207】
ウイルスベクターおよび/またはキャプシドは、送達ベクターのより分散した投与のために脳脊髄液に送達(例えば、腰椎穿刺による)されてもよい。ウイルスベクターおよび/またはキャプシドはさらに、血液脳関門が乱れている状況(例えば、脳腫瘍または脳梗塞)においてCNSに血管内投与されてもよい。
【0208】
ウイルスベクターおよび/またはキャプシドは、当該技術分野において公知の任意の経路により身体の所望の領域に投与することができ、該経路としては、髄腔内、眼内、脳内、心室内、静脈内(例えば、マンニトールなどの糖の存在下で)、鼻腔内、耳内、眼内(例えば、硝子体内、網膜下、前眼房)および眼周囲(例えば、テノン嚢下の領域)送達の他に、運動ニューロンへの逆行性送達を用いる筋肉内送達が挙げられるがそれに限定されない。
【0209】
特定の実施形態では、ウイルスベクターは、CNS中の所望の領域または区画への直接注射(例えば、定位注射)により液体配合物中で投与される。他の実施形態では、ウイルスベクターおよび/またはキャプシドは、所望の領域への局所的適用によりまたはエアロゾル配合物の鼻内投与により提供されてもよい。目への投与は、液体小滴の局所的適用により為されてもよい。さらなる代替として、ウイルスベクターおよび/またはキャプシドは、固体の徐放性配合物として投与されてもよい(例えば、米国特許第7,201,898号明細書を参照)。
【0210】
さらに追加の実施形態では、ウイルスベクターは、運動ニューロンを伴う疾患および障害(例えば、筋萎縮性側索硬化症(ALS);脊髄性筋萎縮症(SMA)など)を治療および/または予防するための逆行性輸送のために使用され得る。例えば、ウイルスベクターは、筋肉組織に送達されてそこからニューロンに移行し得る。
【0211】
本発明は、以下の番号付けされた段落のいずれか1つにおいて定義される通りであり得る。
1.アデノ随伴ウイルス(AAV)の5’逆位末端反復(ITR)、プロモーターが作動可能に付随している目的のヌクレオチド配列(NOI)およびAAVの3’ITRを含む、組換え核酸分子であって、
a)3’から5’への方向で、前記5’ITRの下流かつ前記プロモーターの上流のポリA(pA)配列、および、3’から5’への方向で、前記3’ITRの上流かつ前記NOIの下流のpA配列;
b)3’から5’への方向で、前記3’ITRの上流かつ前記NOIの下流のpA配列;
c)3’から5’への方向で、前記3’ITRの上流かつ前記NOIの下流の第1のpA配列、および、5’から3’への方向で、前記第1のpA配列の下流かつ前記3’ITRの上流の第2のpA配列;
d)3’から5’への方向で、前記3’ITRの上流かつ前記NOIの下流の第1のpA配列、および、5’から3’への方向で、前記NOIの下流かつ前記第1のpAの上流の第2のpA配列;
e)3’から5’への方向で、前記3’ITRの上流かつ前記NOIの下流の第1のpA配列、および、5’から3’への方向で、前記5’ITRの下流かつ前記プロモーターの上流の第2のpA配列;
f)3’から5’への方向で、前記5’ITRの下流かつ前記プロモーターの上流の第1のpA配列、5’から3’への方向で、前記NOIの下流かつ第3のpA配列の上流の第2のpA配列、および、3’から5’への方向で、前記第2のpA配列の下流かつ前記3’ITRの上流の前記第3のpA配列;
g)5’から3’への方向で、前記5’ITRの下流かつ前記プロモーターの上流の第1のpA配列、3’から5’への方向で、前記NOIの下流かつ第3のpA配列の上流の第2のpA配列、および、5’から3’への方向で、前記第2のpA配列の下流かつ前記3’ITRの上流の前記第3のpA配列;
h)5’から3’への方向で、前記5’ITRの下流かつ前記プロモーターの上流の第1のpA配列、5’から3’への方向で、前記NOIの下流かつ第3のpA配列の上流の第2のpA配列、および、3’から5’への方向で、前記第2のpA配列の下流かつ前記3’ITRの上流の前記第3のpA配列;
i)5’から3’への方向で、前記5’ITRの下流かつ前記プロモーターの上流の第1のpA配列、3’から5’への方向で、前記NOIの下流かつ第3のpA配列の上流の第2のpA配列、および、5’から3’への方向で、前記第2のpA配列の下流かつ前記3’ITRの上流の前記第3のpA配列;
j)3’から5’への方向で、前記5’ITRの下流かつ第2のpA配列の上流の第1のpA配列、5’から3’への方向で、前記第1のpA配列の下流かつ前記プロモーターの上流の前記第2のpA配列;5’から3’への方向で、前記NOIの下流かつ第4のpA配列の上流の第3のpA配列、および、3’から5’への方向で、前記第3のpA配列の下流かつ前記3’ITRの上流の前記第4のpA配列;
k)3’から5’への方向で、前記5’ITRの下流かつ第2のpA配列の上流の第1のpA配列、5’から3’への方向で、前記第1のpA配列の下流かつ前記プロモーターの上流の前記第2のpA配列;3’から5’への方向で、前記NOIの下流かつ第4のpA配列の上流の第3のpA配列、および、5’から3’への方向で、前記第3のpA配列の下流かつ前記3’ITRの上流の前記第4のpA配列;
l)5’から3’への方向で、前記5’ITRの下流かつ第2のpA配列の上流の第1のpA配列、3’から5’への方向で、前記第1のpA配列の下流かつ前記プロモーターの上流の前記第2のpA配列;5’から3’への方向で、前記NOIの下流かつ第4のpA配列の上流の第3のpA配列、および、3’から5’への方向で、前記第3のpA配列の下流かつ前記3’ITRの上流の前記第4のpA配列;ならびに/または
m)5’から3’への方向で、前記5’ITRの下流かつ第2のpA配列の上流の第1のpA配列、3’から5’への方向で、前記第1のpA配列の下流かつ前記プロモーターの上流の前記第2のpA配列;3’から5’への方向で、前記NOIの下流かつ第4のpA配列の上流の第3のpA配列、および、5’から3’への方向で、前記第3のpA配列の下流かつ前記3’ITRの上流の前記第4のpA配列
をさらに含む、組換え核酸分子。
2.アデノ随伴ウイルス(AAV)の5’逆位末端反復(ITR)、プロモーターが作動可能に付随している目的のヌクレオチド配列(NOI)およびAAVの3’ITRを含む、第1のAAV血清型のAAVベクターカセットを含む、組換え核酸分子であって、前記AAV 5’ITRおよび/または前記AAV 3’ITRが、前記第1のAAV血清型とは異なる第2のAAV血清型からのものである、組換え核酸分子。
3.前記第1のAAV血清型がAAV2であり、かつ、前記第2のAAV血清型がAAV5である、段落2の組換え核酸分子。
4.アデノ随伴ウイルス(AAV)の5’逆位末端反復(ITR)、プロモーターが作動可能に付随している目的のヌクレオチド配列(NOI)およびAAVの3’ITRを含む、組換え核酸分子であって、前記5’ITRおよび/または前記3’ITRが、前記5’ITRおよび/または前記3’ITRからプロモーター活性を減少させまたは除去するように改変されている、組換え核酸分子。
5.AAV 5’ITR、プロモーターが作動可能に付随しているNOI、3’から5’への方向のpA配列およびAAVの3’ITRを含む、組換え核酸分子であって、前記NOI配列が、細胞質dsRNAセンサーを標的化する干渉RNA配列をコードする1つまたは1つより多くのヌクレオチド配列と融合している、組換え核酸分子。
6.AAV 5’ITR、第1のプロモーターが作動可能に付随しているNOI、3’から5’への方向で第1のpA配列、第2のプロモーターが作動可能に付随している、細胞質dsRNAセンサーを標的化する干渉RNA配列をコードするヌクレオチド配列、第2のpA配列およびAAVの3’ITRを含む、組換え核酸分子。
7.AAV 5’ITR、第1のプロモーターが作動可能に付随しているNOI、3’から5’への方向のpA配列、第2のプロモーターが作動可能に付随している、細胞質dsRNAセンサーを標的化する短鎖ヘアピンRNA(shRNA)配列、およびAAVの3’ITRを含む、組換え核酸分子。
8.AAV 5’ITR、第1のプロモーターが作動可能に付随している、細胞質dsRNAセンサーを標的化するshRNA、第2のプロモーターが作動可能に付随しているNOI、3’から5’への方向のpA配列およびAAVの3’ITRを含む、組換え核酸分子。
9.AAV 5’ITR、両方ともプロモーターが作動可能に付随しているNOIおよび細胞質dsRNAセンサーを標的化するマイクロRNA(miRNA)配列、3’から5’への方向のpA配列、ならびにAAV 3’ITRをこの順序で含む、組換え核酸分子。
10.AAV 5’ITR、両方ともプロモーターが作動可能に付随している、細胞質dsRNAセンサーを標的化するmiRNAおよびNOI、3’から5’への方向のpA配列、ならびにAAV 3’ITRをこの順序で含む、組換え核酸分子。
11.AAV 5’ITR、プロモーターが作動可能に付随している、NOI内にmiRNAイントロン配列を含む前記NOI、3’から5’への方向のpA配列、およびAAV 3’ITRをこの順序で含む、組換え核酸分子。
12.AAV 5’ITR、プロモーターが作動可能に付随しているNOI、3’から5’への方向のpA配列、およびAAVの3’ITRを含む、第1の組換え核酸分子、ならびに、細胞質dsRNAセンサーを標的化する干渉RNA配列を含む、第2の組換え核酸分子を含む組成物。
13.前記干渉RNA配列がshRNAである、段落12の組成物。
14.
AAV 5’ITR;
両方ともプロモーターが作動可能に付随しているNOIおよびMAVSシグナル伝達の阻害剤;
3’から5’への方向のpA配列;ならびに
AAV 3’ITR
を含む、組換え核酸分子。
15.MAVSシグナル伝達の前記阻害剤が、C型肝炎ウイルスからのセリンプロテアーゼNS3-4A、A型肝炎ウイルスからのプロテアーゼ、GBウイルスBからのプロテアーゼ、B型肝炎ウイルス(HBV)Xタンパク質、ポリ(rC)結合タンパク質2、20SプロテアソームサブユニットPSMA7、マイトフュージン2、およびその任意の組合せからなる群から選択される、段落14の組換え核酸分子。
16.
AAV 5’ITR;
第1のプロモーターが作動可能に付随しているNOI;
3’から5’への方向で第1のpA配列;
第2のプロモーターが作動可能に付随しているMAVSシグナル伝達の阻害剤;
3’から5’への方向で第2のpA配列;および
AAV 3’ITR
を含む、組換え核酸分子。
17.段落1~12および13~16のいずれか1つの組換え核酸分子を含むrAAVベクターゲノム。
18.段落17のrAAVゲノムを含むrAAV粒子。
19.段落18のrAAV粒子を含む組成物。
20.AAV 5’ITR、プロモーターが作動可能に付随しているNOI、3’から5’への方向のpA配列、およびAAVの3’ITRを含む、第1の組換え核酸分子、ならびに、MAVSシグナル伝達の阻害剤および3’から5’への方向のpA配列を含む、第2の組換え核酸分子を含む組成物。
21.対象の細胞中へのAAVベクターの形質導入を増進する方法であって、前記対象にAAVベクターおよび前記対象の細胞中でdsRNA活性化経路に干渉する剤を投与することを含む方法。
22.前記対象の細胞中でdsRNA活性化経路に干渉する前記剤が2-アミノプリンである、段落21の方法。
23.前記AAVベクターおよび前記剤が前記対象に同時に投与される、段落21~22の方法。
24.前記AAVベクターおよび前記剤が別々の時点において投与される、段落21~22の方法。
【0212】
本開示の主題の代表的な実施形態が示される添付の実施例を参照して以下において本発明の主題をより十分に記載する。本開示の主題は、しかしながら、異なる形態において具現化することができ、本明細書に記載の実施形態に限定されるものと解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が徹底的かつ完全なものとなり、かつ本開示の主題の範囲が当業者に十分に伝わるように提供される。
【実施例】
【0213】
以下の実施例は実例的な実施形態を提供する。以下の実施例のある特定の態様は、実施形態の実施において良好に機能することが本発明者らにより見出されたまたは想定された技術および手順に関して開示される。本開示および当業者の一般的レベルに照らして、以下の実施例は例示的なものに過ぎないことが意図されることおよび多数の変化、改変、および変更が本出願の請求項の主題の範囲から離れることなく用いられ得ることを当業者は理解する。
【0214】
[実施例1]
細胞。HeLa細胞、293細胞、Huh7細胞およびHepG2細胞を5%のCO2中37℃で10%のFBSおよび1%のペニシリン-ストレプトマイシンを含むダルベッコ改変イーグル培地中で生育させた。ヒト初代肝細胞はTriangle Research Labsから購入した。新鮮なヒト初代肝細胞に関する情報を表1に列記する。初代肝細胞をHepatocyte Thawing and Plating Supplement Pack(Thermo Fisher Scientific)を含むウィリアムE培地にプレーティングし、Hepatocyte Maintenance Supplement PackおよびHepExtend(商標) Supplement(Thermo Fisher Scientific)を含むウィリアムE培地中に維持した。
【0215】
AAVウイルスの製造。トリプルプラスミドトランスフェクションを使用するAAVウイルスの製造は以前に記載されている。簡潔に述べれば、HEK-293細胞にAAV導入遺伝子プラスミド(一本鎖(ss)pTR-CBA-ルシフェラーゼ、二本鎖(ds)pTR-CBh-GFP、sspTR-CMV-GFP、sspTR-CBA-AAT、dspTR-shRNA-スクランブルおよびdspTR-TTR-FΙX-opt)、RepおよびCap AAVヘルパープラスミド、ならびにアデノウイルスヘルパープラスミドpXX6-80をトランスフェクトした。トランスフェクションの48時間後に細胞を回収した。HEK-293細胞の溶解後に、AAVウイルスを塩化セシウム(CsCl)勾配密度遠心分離により精製した。ウイルス力価をQ-PCRにより決定した。
【0216】
マウス。70%のヒト肝細胞再増殖を伴うヒト異種移植マウスはYecuris companyから購入した。マウスをノースカロライナ大学チャペルヒル校の特定の病原体が存在しない施設において維持した。ノースカロライナ大学動物実験委員会により全ての手順は承認された。
【0217】
インビトロ形質導入。HeLa、Huh7、293またはHepG2細胞に細胞当たり5×103個のAAVベクターの粒子により形質導入を行った。形質導入された細胞を異なる時点において回収した。長期のAAV形質導入研究のために、1×105個のHeLa細胞に6ウェルプレート中で細胞当たり5×103個のAAVの粒子により形質導入を行った。形質導入後3日目に、細胞を1:5に継代した後、毎日の培地の交換と共に細胞を最長5日間培養した。AAV形質導入細胞を指し示した時点において回収し、細胞溶解液を使用してルシフェラーゼ活性を測定した。
【0218】
ヒト初代肝細胞の形質導入。懸濁した肝細胞をコラーゲンIをコーティングしたプレートにプレーティングし、AAVベクター(AAV2/GFPまたはAAV2/FIΧ-opt)を細胞当たり5×103個の粒子の用量で加えた。1日後に、プレーティング培地を維持培地に変更した。培地を毎日交換しながら初代肝細胞を10日間培養した。肝細胞をMDA-5、RIG-1およびIFN-βの検出のために異なる時点において回収した。
【0219】
マウス実験。異種移植マウスからのヒト肝細胞に後眼窩注射を介して3×1011個のAAV8/FIX-optの粒子を投与した。AAV注射後4または8週目に、マウスを屠殺し、RNA抽出およびウエスタンブロットを用いるタンパク質分析のために肝臓を回収した。
【0220】
ルシフェラーゼアッセイ。AAV2/ルシフェラーゼにより形質導入された細胞をpassive lysis buffer(Promega)を用いて20分間処理した。製造者の指示にしたがってLuciferase Assay Reagent(Promega)を用いてルシフェラーゼ活性を測定した。ルシフェラーゼ活性はWallac 1420 Victor3プレートリーダーを用いて測定した。
【0221】
トランスフェクションアッセイ。ポリ(I:C)トランスフェクションのために、AAV形質導入の18h前、AAV形質導入と同時または3日後の異なる時点において12ウェルプレート中でLipofectamin 3000(Thermo Fisher Scientific)により細胞に2μgのポリ(I:C)をトランスフェクトした。siRNAトランスフェクションのために、AAVベクターの形質導入後3日目にHeLa細胞を継代し、24h後に、細胞に1μgのsiRNA(siMDA5:CUGAAUCUGCUCCUUCACC(配列番号:1)、siMAVS:AUACAACUGACCCUGUGGG(配列番号:2)、siMAVS-2:UAGUUGAUCUCGCGGACGA(配列番号:3)およびCCGUUUGCUGAAGACAAGA(配列番号:4)、si対照:UGUGAUCAAGGACGCUAUG、配列番号:5)をトランスフェクトした。トランスフェクションの48または72時間後に、細胞をルシフェラーゼアッセイまたはRNA抽出のために回収した。
【0222】
RNA単離およびリアルタイムPCR。培養細胞またはマウス肝臓組織からのRNAをTRIzol Reagent(Invitrogen)を使用して単離した。RNA鋳型からの第1鎖cDNAの合成はRevertAid First Strand cDNA Synthesis Kit(Thermo Fisher Scientific)を使用して行った。リアルタイムPCRをLightCycler 480機器(Roche)により行った。リアルタイムPCRにおいて使用したプライマーを表2に列記する。
【0223】
ウエスタンブロット。細胞または組織をRIPA緩衝液を用いて処理した。レーン当たり60μgのタンパク質をSDS-PAGEゲルに流した。タンパク質をNC膜に転写した後、膜をウサギモノクローナルMDA5抗体(Thermo Fisher Scientific)またはβ-アクチン抗体(Thermo Fisher Scientific)を用いて染色した。ECL Western Blotting Detection Reagent(GE)を使用してシグナルを検出した。ImageJソフトウェアを使用してデータ解析を行った。
【0224】
IFN-βプロモーターレポーターアッセイ。6ウェルプレート中で1×105個のHeLa細胞に細胞当たり5×103個のAAV2/GFPの粒子により形質導入を行った。形質導入後3日目に細胞を1:5に継代し、24h後に細胞にIFN-βプロモーターレポータープラスミドおよびsiRNAを共トランスフェクトした。次にトランスフェクションの72h後にルシフェラーゼ活性を測定した。
【0225】
統計解析。全ての統計計算は統計ソフトウェア(GraphPad Prism 7.0ソフトウェア)を使用して行った。Studentのt検定により評価した異なる群間の差異は、P値が<0.05である場合に統計的に有意であると考えた。
【0226】
<IFN-βはAAV形質導入細胞からの導入遺伝子発現を阻害する>
I型IFN-β発現は、自然免疫活性化の特徴である。導入遺伝子発現に対する自然免疫応答活性化の効果を研究するために、インビトロでのAAV形質導入後の導入遺伝子発現に対するIFN-βの効果を調べた。HeLa細胞をホタルルシフェラーゼ導入遺伝子をコードするAAV2/lucベクターに感染させ、24時間後に異なる用量のIFN-βを加えた。IFN-βの添加後の異なる時点において、ルシフェラーゼ活性を測定した。PBS(無IFN)群と比較して、ルシフェラーゼ導入遺伝子発現は劇的に減少した。阻害は用量依存的であった(
図1A)。AAV形質導入後1日目から毎日IFN-βを加えた場合、ルシフェラーゼ発現のはるかにより強い阻害が長期培養物から観察された(
図1B)。この結果は、自然免疫応答活性化はAAV形質導入を阻害し得ることを示唆する。
【0227】
<ポリ(I:C)はAAV形質導入を阻害する>
血友病を有する患者における臨床試験において、導入遺伝子発現の減少がAAV投与後6~10週において観察された。その時点において、ほとんどのAAVビリオンは効果的な導入遺伝子発現のために核に既に入っていた。自然免疫応答がエンドソーム中のパターン認識受容体(PRP)または細胞質中のDNAのセンサーから誘発されている可能性は低いようである。dsRNAはAAVベクター媒介性の導入遺伝子送達から生成されて自然免疫応答を活性化させ得ると仮定する。dsRNAからの自然免疫がAAV形質導入からの導入遺伝子発現に影響するかどうかを決定するために、AAV2形質導入の18時間前またはAAV2形質導入と同時または3日後のいずれかの異なる時点において、dsRNAの合成アナログであるポリイノシン酸-ポリシチジル酸(ポリ(I:C))のトランスフェクションと共に細胞にAAV2/lucを形質導入した。ポリ(I:C)トランスフェクションの72時間後に、細胞溶解液をルシフェラーゼ活性分析のために回収した。時点にかかわらず、ポリ(I:C)のトランスフェクションはHeLa細胞およびHuh7細胞の両方において導入遺伝子発現を阻害した(
図2)。データは、dsRNAから誘発される自然免疫応答はAAV形質導入に影響することを指し示す。
【0228】
<二本鎖RNA自然免疫応答はHeLa細胞において後期AAV形質導入から誘発される>
AAV形質導入がdsRNAにより誘発される自然免疫応答を活性化させるかどうかを研究するために、転写レベルにおいてdsRNAセンサーであるMDA5およびRIG1の発現速度論を調べた。
図3に示すように、MDA5の上方調節がHeLa細胞においてscAAV/GFPベクター形質導入後6日目に観察された。形質導入の5日目の前にはMDA5の活性化はなかった(
図3A)。RIG1発現はHeLa細胞においてAAV形質導入の間に増加しなかった(
図3B)。IFN-βは3~6日目に増加しなかったが、高いIFN-β発現が8日目に得られた(
図3C)。MDA-5の発現を翻訳レベルにおいても調べた。AAV形質導入後8日目に、細胞溶解液中のMDA-5発現はウエスタンブロット結果の強度に基づいてより高いことが見出された(
図3Dおよび
図3E)。この研究は、AAV形質導入はdsRNA媒介性の自然免疫応答を活性化できることを暗に示す。
【0229】
<AAV形質導入媒介性のdsRNA自然免疫応答活性化は細胞特異的かつ導入遺伝子依存的である>
血友病Bを有する患者における臨床試験において、導入遺伝子FIXを肝臓特異的プロモーターにより駆動し、主に肝細胞中で発現させた。上記の研究からの結果は、dsRNA免疫応答は非肝細胞株であるHeLa細胞においてAAV形質導入後の後期の時点において誘発されることを実証した。次に、dsRNA自然免疫応答は、肝細胞に由来する細胞株を含む他のヒト細胞株においても誘発されるか否かに関心を持った。AAV2/GFPベクターの感染後、異なる時点においてdsRNA応答を評価した。MDA5およびIFN-βの上方調節はヒト肝細胞Huh7細胞およびHepG2細胞においてのみ観察され、293においては観察されなかった(
図4A)。
【0230】
異なる導入遺伝子からのdsRNA媒介性の自然免疫応答の活性化を研究するために、ルシフェラーゼ、shRNA-スクランブル、およびアンチトリプシンを含む異なる導入遺伝子をコードするAAV2をHeLa細胞に形質導入した。AAV形質導入後8日目に、MDA5の転写を検出した。対照群と比較して、ssAAV/GFP、AAV2/luc、AAV2/shRNA-スクランブルを形質導入したHeLa細胞においてMDA-5のより高い発現が観察されたが、AAV2/AATを形質導入したHeLa細胞においては観察されなかった(
図4B)。しかしながら、IFN-β発現は、導入遺伝子にかかわらず全てのAAV2ベクター形質導入細胞において上方調節された。
【0231】
<dsRNA自然免疫応答はAAV/GFP形質導入初代ヒト肝細胞において誘導される>
AAV形質導入はヒト肝細胞株であるHuh7細胞においてdsRNA自然免疫応答を誘発することが示されており、上記のように、この発見はヒト初代肝細胞に適用可能であるか否かに関心を持った。AAV2はインビトロで初代ヒト肝細胞に効率的に形質導入できることが実証されている。scAAV2/GFPベクターを使用して6人の異なる対象からの初代ヒト肝細胞に形質導入を行った。AAV2形質導入後の異なる時点において、MDA5、RIG1およびIFN-βの転写発現について調べるためにヒト肝細胞からのRNAを回収した。AAV形質導入後5日目を超えてMDA5は12人の対象のうちの6人において上方調節されており(
図5A)、RIG1のより高い発現は3人の対象においてのみ観察された(対象1、5および12)。別の6人の対象はMDA5およびRIG-Iのいずれの発現変化も示さなかった(
図5B)。しかしながら、IFN-βのより高い発現がAAV形質導入後に全ての対象において検出された(
図5)。MDA5発現はAAV形質導入後5日目またはその後にピークに達した後、ベースラインまで減少した。IFN-βの高い発現について特定のパターンはなく、ほとんどの場合に、IFN-β発現の増加はAAV形質導入後の後期の時点(≧5日)においてMDA5発現を伴った。一部の対象において、高いIFN-β発現がAAV形質導入後の非常に早い時点(1日以内)において検出されたが(対象1、3、7および9)、dsRNAセンサーについて変化はなかった。この結果は、他の研究において報告されたようなdsDNA-TLR9経路を介する自然免疫応答活性化を支持する可能性がある。
【0232】
<dsRNA自然免疫応答はAAV/FIX-opt形質導入初代ヒト肝細胞において誘導される>
次に、治療用導入遺伝子FIXを送達するためのAAVベクターもまたdsRNA自然免疫応答を誘発するかどうかを試験した。凝固活性の増進のためにR338Lにおいて突然変異を有する臨床的に使用されるFIXカセット-最適化ヒトFIX(hFIX-R338L-opt)を送達するためのAAVベクターを10人の対象からのヒト初代肝細胞に形質導入した。AAV2/hFIX-R338L-optを用いた形質導入後に、MDA5およびIFN-βはAAV感染後5日目またはそれを超えて10人の対象のうちの5人において上方調節され(
図6A)、他の5人の対象はIFN-βの高い発現のみを示すに過ぎなかった(
図6B)。RIG-IはAAV形質導入後7日目に対象8および12において上方調節された(
図6A)。この結果は、dsRNA自然免疫応答は、臨床治療用導入遺伝子をコードするAAVベクターを形質導入されたヒト初代肝細胞において活性化されることを指し示す(
図6)。
【0233】
<ヒト化マウスにおけるAAV形質導入からのヒト肝細胞におけるdsRNA自然免疫応答の活性化>
上記の全ての結果は、ヒト細胞におけるサイトゾルdsRNA自然免疫応答が、インビトロでのAAV形質導入後の後期の時点において活性化されることを支持する。次に、ヒトキメラマウスモデルを使用して、インビボでヒト肝細胞におけるdsRNA自然免疫応答を調べた。これらのマウスにおいて、ヒト肝細胞を70%の再増殖と共にマウス肝臓中に移植した。第1セットの実験において、臨床ベクターAAV8/hFIX-optを2匹のマウスに注射し、8週時にマウス肝臓をRNA抽出のために回収した。次に、転写レベルでのMDA5およびRIG1発現をヒト肝細胞において検出した。
図7Aに示すように、MDA5およびRIG1の両方の発現は増加していた。また、IFN-β発現は処置なしのマウスにおけるものよりもAAV8/hFIX-opt処置マウスにおいてより高かった。第2の実験において、AAV8/hFIX-opt注射後、4および8週時にマウス肝臓をdsRNA免疫応答の解析のために回収した。MDAおよびRIG-1の両方についてmRNAレベルは4週時に増加しており、AAV8投与後8週時に対照レベルまで減少した(
図7B)。MDA5のより高い発現がタンパク質レベルにおいて確認された(
図7C)。AAV処置マウスは、4週時だけでなく8週時に高いIFN-β発現を有した(
図7)。
【0234】
<dsRNA活性化経路の遮断は導入遺伝子発現を増加させかつAAV形質導入細胞からのIFN-β発現を阻害する>
上記の実験において、自然免疫応答の誘導およびIFN-βの添加はAAV形質導入を減少させた。次に、dsRNA自然免疫応答の遮断はAAV形質導入後の後期の時点において導入遺伝子発現に影響するか否かに関心を持った。MAD5はAAV形質導入を伴うHeLa細胞における主要なdsRNAセンサーであるので、MDA5、ならびにMDA5およびRIG1の共通のアダプターであるMAVSに特異的なsiRNAを使用してそれらの発現をノックダウンし、導入遺伝子発現およびIFN-β発現を研究した。siRNAのトランスフェクションはMDA5およびMAVSの転写発現を効率的に阻害することができた(
図8A)。最初に、AAV導入遺伝子発現に対するポリ(I:C)の阻害に関するsiRNAの効果を調べた。AAV2/luc形質導入後3日目にポリ(I:C)を加えた。4日目にsiRNAをトランスフェクトした。siRNAの48または72時間後に、導入遺伝子発現を測定した。MDA5またはMAVSに対するsiRNAを使用した場合に48および72時間の両方においてルシフェラーゼ発現は有意に増加した。次に、AAV形質導入後4日目に、siRNAをトランスフェクトし、IFN-β発現を48および72時間後に測定した。ポリ(I:C)の適用からの発見に類似して、siRNAの投与と共により高いルシフェラーゼ発現が達成された。最後に、AAV形質導入後のIFN-β発現に対するsiRNAの効果を研究した。上記の研究に一貫して、si対照RNAトランスフェクションと共に高いIFN-β発現が示された(
図8B)。予期したように、MDA5またはMAVSに対するsiRNAを使用した場合に転写レベルおよび翻訳レベルの両方においてIFN-β発現はほぼ完全に阻害された(
図8Cおよび
図8D)。siMAVSを使用した場合にMDA5の上方調節はレスキューされたことに留意することは興味深い(
図8E)。これらの結果は、dsRNA活性化経路の遮断はAAV形質導入後の後期相において自然免疫応答を減弱することができ、より高い導入遺伝子発現に繋がることを指し示す。
【0235】
自然免疫応答系は、病原体に対する防御の第一線であり、AAV形質導入におけるその活性化が研究されている。他の病原性ウイルスと比較して、アデノ随伴ウイルス(AAV)感染またはその組換えベクター形質導入は、AAV形質導入後に一過性かつ低い自然免疫のみを誘導する。また、ウイルスに対する自然免疫応答についての全ての研究は、ウイルス感染後の早期の時点に集中してきた。この研究では、自然免疫応答が長期AAV形質導入後の後期の時点において誘発されることを初めて実証した。後期の自然免疫応答活性化は異なる細胞株およびヒト初代肝細胞において起こった。最も重要なことに、後期の自然免疫応答はまた、AAV形質導入後のヒト異種移植マウスの肝臓からのヒト肝細胞において検出された。後期の自然免疫応答はdsRNA活性化経路を介して媒介された。dsRNAセンサーまたはアダプターの遮断は、自然免疫応答を減弱してAAV形質導入を増加させることができた。
【0236】
自然免疫応答活性化のために、概してパターン認識受容体(PRR)による病原体関連分子パターン(PAMP)の認識は、共刺激分子および炎症性サイトカインの産生を上方調節する。PRRは、Toll様受容体(TLR)、RIG-I様受容体(RLR)、NOD様受容体(NLR)、C型レクチン受容体(CLR)、AIM2様受容体(ALR)、およびサイトゾルDNAセンサーといういくつかのファミリーに分けられてきた。先行する研究は、自然免疫応答が、形質細胞性DCにおいてはTLR9-MyD88経路を通じて、ヒト非実質肝細胞においてはTLR2を通じて、AAV感染から誘導されることを実証した。別の研究は、AAVベクターを全身投与を介してマウスに投与した場合にTLR9シグナル伝達の増加が肝臓において観察されることを示した。これらの研究から、自然免疫応答は24時間以内に検出された。
【0237】
さらなる研究において、pDCをAAV形質導入により感染させた18時間後に強いIFN-α分泌が達成されることが見出された。自然免疫応答の活性化は、非実質肝細胞(NPC)において24時間以内に誘発された。AAVベクターの全身投与は、マウスにおいてAAV注射の6h後にベースラインに戻る炎症性サイトカインの急速な誘導に繋がることが実証された。自然免疫応答のこの早期活性化は、AAV形質導入後の長期に安定な導入遺伝子発現に影響する。しかしながら、自然免疫応答の早期活性化は、AAVベクター肝臓標的化後に血友病Bを有する一部の患者において6週後の導入遺伝子発現の低下に寄与しない可能性がある。
【0238】
この研究において、IFN-β発現の上方調節がAAV形質導入後のHeLa細胞において6日目に観察された。初代ヒト肝細胞において、IFN-β発現のパターンは一貫していなかった。概して、IFN-βの高い発現が全ての試料において5日目の後に達成された。最後にまた、AAV投与後4週から8週までのヒト化マウスからのヒト肝細胞においてIFN-βの上方調節が検出された。これらの結果は、自然免疫応答の活性化は長期AAV形質導入から誘発されるという概念を強く支持する。これは、血友病を有する一部の患者における臨床試験において現れるように、後の導入遺伝子発現を阻害し得る。
【0239】
一部の初代ヒト肝細胞におけるAAV形質導入の1日目のIFN-βの高い発現は、初期研究から示唆されるように、TLR2経路からではなくTLR9媒介性の自然免疫応答の結果としてもたらされ得る。AAV形質導入後の後期の時点におけるIFN-β上方調節の機序は調べられていない。後期相における自然免疫応答の活性化がAAV形質導入後の初期相におけるものと同じ機序により誘発されることはありそうもない。早期AAV感染において、dsAAVゲノムのTLR9認識またはAAVキャプシドのTLR2認識は自然免疫応答の活性化のためにそれぞれpDCまたは非実質肝細胞において大きな役割を果たす。TLRは、細胞表面上またはエンドソーム中に局在するPRRのみを感知する。長期AAV形質導入後に、AAVベクターからのPRR(dsDNA-AAVゲノムまたはAAVキャプシドタンパク質)がエンドソーム中に依然として存在する場合、TLRはこれらのPRRを認識して持続的なIFN-β発現を誘導し続けるはずである。この仮定は、IFN-β発現はHeLa細胞においてAAV形質導入後2~4日目にベースラインレベルであるというこの研究において本発明者らが観察したものとは正反対である。したがって、何らかの他の機序がAAV形質導入後の後期相における自然免疫応答の活性化に関与するはずである。膜貫通TLRに加えて、細胞質PRRもまたウイルス感染からのウイルス核酸またはタンパク質を検出し得る。概しては、RIG-IおよびMDA5は、RNAウイルスからのサイトゾルdsRNAを感知することができ、細胞質中のいくつかのDNAセンサーが同定されている。NLRタンパク質もまたウイルス感染に対する自然免疫応答に関与する。
【0240】
AAV-ITRはプロモーター機能を有し、3’ITRはマイナス鎖RNAを転写することができ、マイナス鎖RNAはアンチセンスとして働いて導入遺伝子発現を阻害することが実証された(
図9)。このアンチセンスRNAは、細胞質中でのアニーリングを介してセンスRNAに結合してdsRNAを形成し得る。AAVベクター形質導入から生成されるdsRNAは、RIG-1およびMDA5発現のモジュレーションによりdsRNA自然免疫応答を誘発する潜在能力を有する。MDA-5およびRIG-1は共通のアダプターであるMAVSに結合して、インターフェロン調節因子(IRF)およびNF-κBを含む少数の必須の転写因子の活性化を介して多くの遺伝子の直接的または間接的な転写誘導を促進してIFN-βおよび炎症性サイトカインを産生させる。実際、AAV形質導入後の後期の時点で、ヒト化マウスからのHeLa細胞、初代ヒト肝細胞および肝細胞においてMDA5の活性化が観察された。
【0241】
RIG-1ではなくMDA5の上方調節は、MDA5は長鎖dsRNAを感知するのでdsRNAはAAV-3’ITRからマイナス鎖RNAから形成され得るという本発明者らの仮説をさらに支持する。この結果は、自然免疫応答のdsRNA媒介性の活性化が長期AAV形質導入後に誘発されることを示唆する。siRNAを使用してdsRNAセンサーMDA5、またはアダプターMAVSを遮断することで、IFN-β発現が阻害され、導入遺伝子発現がAAV感染の後期の時点において増加した。これらの結果は、dsRNAにより活性化された自然免疫応答はAAV遺伝子療法を受けている血友病Bを有する患者において後期の時点において治療的FIXの減少に寄与することをさらに支持する。自然免疫応答のdsRNA媒介性の活性化がどのようにAAV形質導入の後期相においてのみ検出されるのかに関して、あり得る機序の1つは、AAV-ITRのプロモーターは非常に弱いということである。したがって、AAV-3’ITRから十分なアンチセンスRNAを生成して閾値に達しかつdsRNAを形成するために比較的長い時間がかかる。また、AAVベクター形質導入の生物学は、AAV形質導入の後期相におけるdsRNA形成において役割を果たし得る。アデノウイルスベクターとは異なり、導入遺伝子発現は前臨床および臨床試験において6週時にそのピークに達し、AAVベクター投与後に長期にわたり持続性のままである。したがって、多量のマイナス鎖RNAはAAV形質導入の後期相においてのみ合成され得る。
【0242】
要約すると、本発明者らの研究は、長期AAV形質導入が形質導入細胞において細胞質dsRNA認識経路を通じて自然免疫応答を活性化させ、それがI型IFN-βの産生に繋がる新規の機序を明らかにする。dsRNA経路の一次的な遮断は、AAV形質導入細胞においてIFN-β発現を減少させかつ導入遺伝子発現を増加させる。これらの結果は、AAV形質導入の向上のためにdsRNA経路に干渉するための効果的なアプローチを設計することを助ける価値のある情報を提供する。
【0243】
[実施例2]
<AAV-ITRプロモーター機能の遮断>
AAV形質導入からのdsRNA誘導性の自然免疫応答の正確な機序は分かっていない。可能性の1つは、ITRのプロモーター機能および導入遺伝子発現用のプロモーターの潜在的な2方向性機能である。3’-ITRまたはプロモーターから転写されるマイナス鎖RNA、およびプロモーターまたは5’-ITRからのプラス鎖RNAは、自然免疫応答を誘発する二本鎖RNAを形成し得る。ITRにより開始される転写を予防するために、5’-ITRの下流またはプロモーターおよび3’-ITRの上流にポリ(A)を加えて長いRNA転写物を遮断する。ポリ(A)は、単一のストレッチ(
図10A)としてまたは異なる位置における組合せ(
図10B)において配置され得る。
【0244】
<プロモーター機能を減少させるためのAAV-ITRの改変または異なる血清型からのプロモーター機能を有しない代替的なITRの使用>
最近までに、13のAAV血清型および100を超える変種が単離されている。これらのAAV血清型および突然変異体は、ウイルスの複製およびパッケージングのために異なるITRを使用する。詳細には、AAV5のITRとAAV2のITRとの間に何らかの差異があるのでAAV5のITRからのプロモーター機能を研究した(
図11および表7)。AAV5-ITRはRBEについて5つの反復およびRBEとtrsとの間により長いスペーサーを有する(
図11および表7)。異なるITRからのプロモーター機能を比較するために、最初に、GFP導入遺伝子を駆動するための異なるITRを有するカセットを作製した。293細胞への内部対照としてCMV/Lazを有するプラスミドの共トランスフェクションの2日後に、293細胞を蛍光顕微鏡下で可視化し、LacZを用いて染色した(
図12)。
【0245】
ITR2/GFPのものと比較した場合にITR5/GFPのトランスフェクションからGFP陽性細胞はほとんど見られなかった。GFP発現からの結果をさらに確認するために、ヒトアルファ-1アンチトリプシン導入遺伝子(AAT)を駆動するためにITRを使用する他のカセットを作製した。異なる細胞へのトランスフェクション後に、上清中のAATレベルは、全ての試験した細胞株においてITR2コホートにおけるよりもITR5コホートにおいてはるかに低かった(
図13)。ITR5/AATまたはITR2/AATをAAV2またはAAV5キャプシドにパッケージングした。293細胞の形質導入後に、プラスミドトランスフェクションからの結果と一貫して、異なるキャプシドにかかわらずより低いAAT発現がAAV/ITR5/AAT形質導入から観察された(
図14)。これらのベクターの筋肉注射後に、血液中のAAT発現をAAV投与後4週時に測定した。インビトロでの形質導入データに類似して、ITR5はAAV2よりはるかに低いAAT発現を誘導した(
図15)。合わせると、これらの結果は、AAV5-ITRはAAV2-ITRより弱いプロモーター機能を有することを暗に示す。他の血清型または変種からのITRはプロモーター機能を有しない可能性があり得る。プロモーター機能を有しないこれらのITRは、AAVカセットを生成するために使用される。
【0246】
<dsRNAセンサーのノックダウン>
MDA5およびRIG-Iならびにプロテインキナーゼ(PKR)は細胞質dsRNAセンサーである。これらの分子のサイレンシングは、細胞質dsRNAにより誘発される自然免疫応答を遮断することができる。特定のセンサー用のsiRNAを異なる時点においてAAV形質導入後に使用することができる。特定のセンサーの導入遺伝子発現のためにRNAポリメラーゼIIIにより駆動されるshRNAまたは同じRNAポリメラーゼIIにより駆動されるmiRNAは、別々のベクター(
図16、ダイアグラムA)を使用してまたは導入遺伝子カセットと連結された単一のベクターとして適用され得る。単一のベクターが使用される場合、shRNAまたはmiRNAは異なる位置に配置され得る。
1.shRNAについて、ポリ(A)と3’AAV-ITRとの間(
図16、ダイアグラムB)
2.shRNAについて、5’AAV-ITRとプロモーターとの間(
図16、ダイアグラムC)
3.miRNAについて、導入遺伝子と3’AAV-ITRとの間(
図16、ダイアグラムD)
4.miRNAについて、プロモーターと導入遺伝子との間(
図16、ダイアグラムE)
5.導入遺伝子イントロンへのmiRNAの挿入(
図16、ダイアグラムF)
【0247】
<dsRNA自然免疫応答活性化経路に関与する分子のサイレンシング>
サイトゾルウイルスRNAは、カスパーゼ動員ドメイン(CARD)-CARD相互作用を通じてミトコンドリア抗ウイルスシグナル伝達タンパク質(MAVS)を活性化させる受容体RIG-IおよびMDA5により認識される。MAVSは様々なシグナル伝達分子を動員して、TNF受容体結合因子6(TRAF6)およびTRAF5などの下流のシグナル伝達を誘発する。他の細胞内タンパク質と共にTRAF6は、受容体相互作用タンパク質1(RIP1)およびFAS関連デスドメインタンパク質(FADD)を介してNF-κBシグナル伝達を活性化させる。NF-κBシグナル伝達はNF-κB阻害因子-α(IκBα)をリン酸化して炎症促進性サイトカインの遺伝子発現を開始させる。MAVSはまたインターフェロン調節因子(IRF)シグナル伝達を活性化させる。MAVSまたはMAVS下流シグナル伝達に関与する分子をノックダウンするための上記と同じ戦略の利用はdsRNA自然免疫応答を遮断する。
【0248】
MAVSシグナル伝達はまた、ウイルス感染からの様々な分子により阻害され得る。例えば、C型肝炎ウイルスからのセリンプロテアーゼNS3-4A、A型肝炎ウイルスおよびGBウイルスBからのプロテアーゼ、ならびにB型肝炎ウイルス(HBV)Xタンパク質などである。ウイルス感染の間に、ポリ(rC)結合タンパク質2、20SプロテアソームサブユニットPSMA7、およびマイトフュージン2などの一部の内因性タンパク質はMAVSシグナル伝達を阻害し得る。これらのタンパク質(阻害因子)は、異なるベクターを用いて(
図17、ダイアグラムA)もしくは導入遺伝子に融合した単一のベクター中(
図17、ダイアグラムB)で発現または異なるプロモーターにより駆動(
図17、ダイアグラムC)して、治療用導入遺伝子発現の間にdsRNA免疫応答を遮断し得る。
【0249】
<dsRNA自然免疫応答活性化経路の遮断>
dsRNA自然免疫応答を遮断する遺伝学的アプローチとは別に、化学物質もまたdsRNA活性化経路に干渉するために使用され得る。PKRはdsRNAによりリン酸化および活性化されて、IFN-βなどのI型インターフェロンの誘導に寄与し、それがその発現をさらに増加させ得る。2-アミノプリン(2-AP)は、二本鎖RNA(dsRNA)活性化プロテインキナーゼ(PKR)の強力な阻害因子である。ヒドロコルチゾンなどのステロイドもまた使用され得る(
図18および
図19)。
【0250】
[実施例3]
<AAV形質導入後のAAVの3’-ITRからのマイナス鎖RNA生成>
マイナス鎖RNAがAAVの3’-ITRプロモーターから生成され得るかどうかを調べるために、HeLa細胞をAAV2/ルシフェラーゼベクターに感染させ、RNA抽出のために8日後に回収した。ルシフェラーゼ導入遺伝子のセンスまたはアンチセンスプライマーを使用してcDNA合成を行った(表2)。2ペアのルシフェラーゼ特異的PCRプライマーを使用してプラスまたはマイナス鎖転写物を検出した(
図20A)。プラス鎖転写物およびマイナス鎖転写物の両方がAAV形質導入後に検出され、RNAを鋳型として使用した場合にPCR生成物はなかった(
図20B)。マイナス鎖転写物は、cDNA鋳型を200倍に希釈した場合にのみ検出された。しかしながら、cDNA鋳型の2,000倍の希釈においてさえ、依然としてプラス鎖転写物を検出することができた(
図20B)。この結果は、逆方向の転写物がAAV形質導入から生成され得ることおよびマイナス鎖RNA形成の効率はプラス鎖RNAよりはるかに低いことを指し示す。それはまた、異なる方向から生成されるプラス鎖RNAおよびマイナス鎖RNAがAAV形質導入細胞中でdsRNAを形成できるという可能性を支持する。
【0251】
<MAVSノックダウンを用いる細胞中のAAV形質導入の増加>
siRNAオリゴを用いるMAVS発現の阻害はAAV形質導入を増加させることが示された。MAVS欠損を伴う細胞における形質導入効率を調べた。AAV2/lucベクターの形質導入後に、PH5CH8細胞におけるよりもMAVSノックダウンを伴うヒト肝細胞株(PH5CH8-MAVS-KO)において一貫してより高い導入遺伝子発現が達成された(
図21)。形質導入の増加は、ベクター用量および形質導入の継続期間とは独立していた。
【0252】
<MAVS-shRNAを用いる効率的なノックダウン>
ヒトMAVSをサイレンシングする潜在能力を有するU6プロモーターにより駆動される5つのshRNAを設計した(
図22A)。Hela細胞へのshRNAプラスミドのトランスフェクション後に、MAVSの発現を調べ、#31は最も強いMAVSノックダウン能力を誘導することを見出した(
図22B)。したがって、MAVS-shRNA #31を後の研究のために選択した。
【0253】
<MAVSのshRNAサイレンシングを用いる細胞におけるAAV形質導入の増進>
shRNAを用いるMAVSのノックダウンがAAV形質導入を増加させるかどうかを研究するために、最初にHela細胞にMAVS shRNA #31をトランスフェクトした。AAV2/lucベクターを翌日に加えた。導入遺伝子発現がAAV形質導入後1日目および4日目に検出された。
図23に示すように、より高いAAV形質導入がMAVSサイレンシングを伴う細胞において観察された。
【0254】
要約すると、標的細胞がMAVSを欠損している場合にAAV形質導入の増加を達成することができる。この結果は、AAVカセットへのMAVS-shRNAの組込みは、自然免疫応答のdsRNA媒介性の活性化を遮断することにより、より高いAAV形質導入を誘導できることを指し示す。
【0255】
本発明の特定の実施形態を示して記載してきたが、本発明はそれに限定されず、以下の請求項の範囲内でそれ以外に様々に具現化および実施されてもよいことが理解されるべきである。本発明の多数の改変および代替的な実施形態は当業者に容易に明らかであるので、この記載は実例的なものに過ぎないと解釈されるべきであり、本発明を実行するための最良の形態を当業者に教示する目的のためのものである。したがって、全ての好適な改変および均等物は、以下の請求項の範囲内に含まれると考えることができる。
【0256】
【0257】
【0258】
【0259】
【0260】
【0261】
【0262】
【配列表】