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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-14
(45)【発行日】2024-06-24
(54)【発明の名称】電気的駆動弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/06 20060101AFI20240617BHJP
   H01F 7/16 20060101ALI20240617BHJP
【FI】
F16K31/06 305H
F16K31/06 305J
F16K31/06 305G
F16K31/06 305E
H01F7/16 H
H01F7/16 R
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2021007835
(22)【出願日】2021-01-21
(65)【公開番号】P2022112146
(43)【公開日】2022-08-02
【審査請求日】2023-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】391002166
【氏名又は名称】株式会社不二工機
(74)【代理人】
【識別番号】110002608
【氏名又は名称】弁理士法人オーパス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡利 大介
(72)【発明者】
【氏名】加藤 大貴
【審査官】大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】実開昭63-89477(JP,U)
【文献】特開平8-167520(JP,A)
【文献】特開2006-123027(JP,A)
【文献】特開2014-156921(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0054851(US,A1)
【文献】特開平9-100933(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/06-31/11
H01F 7/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒形状のケースと、前記ケースの内側に配置されたプランジャと、前記ケースの外側に配置された電磁コイルと、前記プランジャに接続された弁体と、を有する電気的駆動弁であって、
前記ケースが、周壁部と、前記周壁部の一端を塞ぐ端壁部と、を有し、
前記端壁部が、前記プランジャと接することにより当該プランジャの移動を規制
前記プランジャが、一端が開口した筒形状を有し
前記プランジャの内側空間には、弾性変形可能な合成樹脂製の緩衝部材が配置され、
前記緩衝部材が、一端および他端が開口した筒形状を有し、
前記プランジャと前記端壁部とが離れているとき、前記緩衝部材の一端が前記プランジャの内側空間から前記端壁部に向けて突出しており、
前記プランジャが前記端壁部に向かって移動すると、前記緩衝部材の一端が前記端壁部に接するとともに前記プランジャの内側空間に押し込まれ、前記プランジャが前記端壁部に接し、
前記緩衝部材の他端の周縁のみが、前記プランジャの内側にありかつ前記プランジャの一端から離れるにしたがって径が小さくなる内向きのテーパー面に接しており、
前記緩衝部材の他端の面が、前記テーパー面と間隔をあけて配置されていることを特徴とする電気的駆動弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気的駆動弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電気的駆動弁の一例であるパイロット式の電磁弁が特許文献1に開示されている。特許文献1の電磁弁は、弁本体を有している。弁本体には、流入口と、流出口と、主弁体収容空間と、が設けられている。主弁体収容空間には、主弁体が収容されている。主弁体収容空間は、主弁体によって上下に区画されている。主弁体収容空間の下部は主弁室である。主弁体収容空間の上部はパイロット弁室である。流入口は、主弁室に接続されている。主弁室は、主弁座を介して流出口に接続されている。主弁体は、上下に移動して、主弁座を開閉する。主弁体は、パイロット弁口と、パイロット弁座と、均圧通路と、を有している。パイロット弁口は、主弁体を上下に貫通している。パイロット弁座は、パイロット通路の上端を囲むように配置されている。均圧通路は、主弁室とパイロット弁室とを接続している。
【0003】
特許文献1の電磁弁は、パイロット弁を有している。パイロット弁は、円筒形状のプランジャに固定されている。プランジャは、パイプの内側に上下方向に移動可能に配置されている。プランジャの下方には、固定鉄心が配置されている。プランジャと固定鉄心との間には、開弁ばねが配置されている。開弁ばねはプランジャを上方に押している。パイプの外側には、電磁コイルが配置されている。
【0004】
電磁コイルに通電すると、プランジャと固定鉄心とが磁化され、プランジャがパイロット弁体とともに下方に移動する。パイロット弁体が、パイロット弁座を閉じるとともに主弁体を下方に押す。そして、主弁体が、下方に移動して主弁座を閉じ、電磁弁は閉弁状態となる。
【0005】
電磁コイルの通電を止めると、開弁ばねによってプランジャがパイロット弁体とともに上方に移動し、パイロット弁座が開く。主弁室とパイロット弁室との差圧で主弁体が上方に移動して主弁座が開き、電磁弁は開弁状態となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2019-7572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した電磁弁では、プランジャおよびパイプが金属製である。そして、電磁コイルの通電を止めたときに、プランジャが上方に移動してパイプの上端壁部に突き当たる。そのため、プランジャとパイプとの衝突音が生じることがあった。このような衝突音を抑制するため、電磁弁において、プランジャとパイプとの間に合成樹脂製の衝撃緩和部材を配置する構成を採用し得る。しかしながら、電磁弁を流れる冷媒や油などの影響によって衝撃緩和部材が劣化したり変形したりすることがある。これにより、開弁状態におけるパイロット弁体の位置(パイロット弁座からのリフト量)が変化することがある。そのため、電磁弁の性能が変化してしまうおそれがあった。
【0008】
そこで、本発明は、性能の変化がなく、プランジャの衝突音を効果的に抑制できる電気的駆動弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る電気的駆動弁は、筒形状のケースと、前記ケースの内側に配置されたプランジャと、前記ケースの外側に配置された電磁コイルと、前記プランジャに接続された弁体と、を有する電気的駆動弁であって、前記ケースには、前記プランジャと接することにより当該プランジャの移動を規制する移動規制部が設けられ、前記プランジャおよび前記移動規制部の一方を第1構成要素、他方を第2構成要素としたとき、前記第1構成要素には、収容穴が設けられ、前記収容穴には、弾性変形可能な合成樹脂製の緩衝部材が配置され、前記プランジャと前記移動規制部とが離れているとき、前記緩衝部材の一部が前記収容穴から前記第2構成要素に向けて突出しており、前記プランジャが前記移動規制部に向かって移動すると、前記緩衝部材の一部が前記第2構成要素に接するとともに前記収容穴に押し込まれ、前記プランジャが前記移動規制部に接することを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、プランジャおよび移動規制部の一方を第1構成要素、他方を第2構成要素としたとき、第1構成要素には、収容穴が設けられている。収容穴には、弾性変形可能な合成樹脂製の緩衝部材が配置されている。プランジャと移動規制部とが離れているとき、緩衝部材の一部が収容穴から第2構成要素に向けて突出している。そして、プランジャが移動規制部に向かって移動すると、緩衝部材の一部が第2構成要素に接するとともに収容穴に押し込まれ、プランジャが移動規制部に接する。このようにしたことから、プランジャが移動規制部に向かって移動したとき、プランジャおよび移動規制部の一方(第1構成要素)の収容穴に配置された緩衝部材が他方(第2構成要素)に接し、そのあと、プランジャと移動規制部とが接する。これにより、プランジャと移動規制部とが接する前に緩衝部材によってプランジャの移動速度を減少させることができる。また、緩衝部材が収容穴に押し込まれたあとにプランジャと移動規制部とが接するので、開弁状態でのプランジャおよび弁体の位置が変化することを回避できる。そのため、本発明の電気的駆動弁は、性能の変化がなく、プランジャの衝突音を効果的に抑制できる。
【0011】
本発明において、前記緩衝部材が、両端が開口した筒形状を有し、前記緩衝部材の一端が、前記収容穴から前記第2構成要素に向けて突出していることが好ましい。このようにすることで、緩衝部材が第2構成要素に張り付いてしまうことを抑制できる。そのため、プランジャの移動が妨げられることを抑制できる。
【0012】
本発明において、前記緩衝部材における前記第2構成要素に接する面に溝が設けられていることが好ましい。このようにすることで、緩衝部材が第2構成要素に張り付いてしまうことを抑制できる。そのため、プランジャの移動が妨げられることを抑制できる。
【0013】
本発明において、前記プランジャが前記第1構成要素でかつ前記移動規制部が前記第2構成要素であり、前記プランジャが、一端が開口した筒形状を有し、前記プランジャの内側空間が、前記収容穴であることが好ましい。このようにすることで、収容穴を別に設ける必要がなくなり、製造コストを抑えることができる。
【0014】
本発明において、前記ケースが、周壁部と、前記周壁部の一端を塞ぐように配置された端壁部と、を有し、前記移動規制部が、前記端壁部であることが好ましい。このようにすることで、移動規制部を比較的簡易な構成とすることができる。
【0015】
本発明において、前記ケースの一端には、固定鉄心が配置され、前記移動規制部が、前記固定鉄心であることが好ましい。このようにすることで、移動規制部を比較的簡易な構成とすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、性能の変化がなく、プランジャの衝突音を効果的に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1実施例に係る電磁弁の断面図である(閉弁状態)。
図2図1の電磁弁の断面図である(中間状態)。
図3図2の電磁弁の拡大断面図である。
図4図3の電磁弁の緩衝部材がプランジャの内側空間に押し込まれた状態を示す拡大断面図である。
図5図1の電磁弁の断面図である(開弁状態)。
図6】本発明の第2実施例に係る電磁弁の断面図である(閉弁状態)。
図7図6の電磁弁の断面図である(中間状態)。
図8図7の電磁弁の拡大断面図である。
図9図8の電磁弁の緩衝部材が固定鉄心の収容穴に押し込まれた状態を示す拡大断面図である。
図10図6の電磁弁の断面図である(開弁状態)。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1実施例)
以下、本発明の電気的駆動弁の第1実施例に係るパイロット式の電磁弁について、図1図5を参照して説明する。
【0019】
図1図2図5は、本発明の第1実施例に係る電磁弁の断面図である。図1は、閉弁状態の電磁弁を示す。図2は、閉弁状態と開弁状態との中間状態にある電磁弁を示す。図5は、開弁状態の電磁弁を示す。図3は、図2に示す中間状態の電磁弁の一部(プランジャおよびその近傍)を拡大した断面図である。図4は、図3の電磁弁の緩衝部材がプランジャの内側空間に押し込まれた状態を示す拡大断面図である。以下の説明において、「上下左右」との用語は、各図に記載の構成要素の相対的な位置関係を示している。
【0020】
図1図5に示すように、本実施例の電磁弁1は、弁本体10と、固定鉄心31と、ケース32と、可動鉄心であるプランジャ33と、電磁コイル34と、弁軸35と、パイロット弁体36と、主弁体40と、緩衝部材50と、を有している。
【0021】
弁本体10は、略直方体形状を有している。弁本体10は、流入口11と、流出口12と、主弁室14と、を有している。
【0022】
流入口11は、弁本体10の左側面10aに開口している。流出口12は、弁本体10の右側面10bに開口している。主弁室14は、流入口11と流出口12との間に配置されている。主弁室14には、主弁口15を囲む円形の主弁座16が設けられている。流入口11は、主弁室14に接続されている。主弁室14は、主弁座16および主弁口15を介して流出口12に接続されている。
【0023】
固定鉄心31は、大径円筒部31aと、大径円筒部31aの上端に連設された小径円筒部31bと、を一体的に有している。大径円筒部31aは、弁本体10にねじ構造で固定されている。小径円筒部31bは、弁本体10から上方に向けて延びるように配置されている。
【0024】
ケース32は、金属製である。ケース32は、下端が開口しかつ上端が塞がれた円筒形状を有している。ケース32は、周壁部32aと、上端壁部32bと、を一体的に有している。周壁部32aの下端には、固定鉄心31の小径円筒部31bが挿入されている。ケース32は、固定鉄心31に接合されている。
【0025】
プランジャ33は、上端33aが開口した円筒形状を有している。プランジャ33の外径は、ケース32の内径よりわずかに小さい。プランジャ33は、ケース32の内側に上下方向に移動可能に配置されている。プランジャ33と固定鉄心31の小径円筒部31bとの間には、パイロット弁体36用の開弁ばね38が配置されている。開弁ばね38は、圧縮コイルばねである。開弁ばね38は、プランジャ33を上方に向けて押している。プランジャ33は、開弁ばね38に押されて上方に移動すると、ケース32の上端壁部32bに突き当たる。上端壁部32bは、プランジャ33と接することによりプランジャ33の移動を規制する移動規制部である。プランジャ33は、第1構成要素であり、上端壁部32bは、第2構成要素である。
【0026】
電磁コイル34は、ケース32の外径よりわずかに大きい内径を有する円筒形状を有している。電磁コイル34の内側には、ケース32が挿入される。電磁コイル34は、ケース32の外側に配置されている。電磁コイル34は、固定鉄心31およびプランジャ33を磁化する。
【0027】
弁軸35は、細長い円筒形状を有している。弁軸35の上端は、プランジャ33の下端に固定されている。弁軸35は、固定鉄心31の小径円筒部31bに挿入されている。弁軸35は、小径円筒部31bによって上下方向に移動可能に支持されている。弁軸35には、上端から下端近傍まで延在する流体通路35aが設けられている。流体通路35aは、プランジャ33の内側空間33bに接続されている。
【0028】
パイロット弁体36は、弁軸35の下端に一体的に設けられている。パイロット弁体36は、弁軸35を介してプランジャ33に接続されている。パイロット弁体36の下面には、円板形状のパッキン36aが取り付けられている。パッキン36aは、合成樹脂製である。
【0029】
主弁体40は、胴部41と、上フランジ部42と、下フランジ部43と、を一体的に有している。胴部41は、円柱形状を有している。上フランジ部42は、胴部41の上部に連設されている。下フランジ部43は、胴部41の下部に連設されている。胴部41には、上端から下端まで貫通するパイロット弁口44が設けられている。胴部41の上端には、パイロット弁口44を囲むパイロット弁座45が設けられている。上フランジ部42は、固定鉄心31の大径円筒部31aの内側に上下方向に摺動可能に配置されている。上フランジ部42は、主弁室14と固定鉄心31の内側のパイロット弁室37とを区画している。上フランジ部42には、主弁室14とパイロット弁室37とを接続する均圧通路42aが設けられている。下フランジ部43の下面には、円環板形状のパッキン43aが取り付けられている。パッキン43aは、合成樹脂製である。下フランジ部43の外径は、上フランジ部42の外径より小さい。主弁体40の上フランジ部42と弁本体10との間には、主弁体40用の開弁ばね39が配置されている。開弁ばね39は、圧縮コイルばねである。開弁ばね39は、主弁体40を上方に向けて押している。
【0030】
緩衝部材50は、弾性変形可能な合成樹脂製である。緩衝部材50は、例えば、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)や水素化ニトリルゴム(HNBR)などの合成ゴムからなる。緩衝部材50は、両端が開口した円筒形状を有している。緩衝部材50の外径は、プランジャ33の内径と同じである。緩衝部材50は、プランジャ33の内側空間33bに挿入されている。プランジャ33の内側空間33bは、緩衝部材50を収容する収容穴である。緩衝部材50に対して外部から力が加わっていないとき、緩衝部材50の一部である上端50aは、内側空間33bから上方に向けて突出している。緩衝部材50の下端は、プランジャ33の内側にある内向きのテーパー面33cの上端に接している。緩衝部材50は、軸方向の長さが比較的大きい円筒形状を有することが好ましい。例えば、緩衝部材50の軸方向長さが、その外径の2~5倍程度であることが好ましい。このようにすることで、開弁状態時の緩衝部材50の変形率を小さくすることができ、長期間の使用による緩衝部材50の復元性の低下を抑制できる。なお、緩衝部材50は、合成樹脂製のコイルばねなどであってもよい。コイルばねを構成する合成樹脂は、例えば、ポリアミド(PA)等のプラスチック、ポリアセタール(POM)等のエンジニアリングプラスチック、または、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等のスーパーエンジニアリングプラスチックである。
【0031】
次に、電磁弁1の動作の一例について説明する。
【0032】
図1は、閉弁状態の電磁弁1を示している。閉弁状態の電磁弁1では、電磁コイル34が通電されており、プランジャ33が磁力によって固定鉄心31に引き寄せられている。パイロット弁体36(具体的にはパッキン36a)がパイロット弁座45に接しており、パイロット弁座45が閉じている。主弁体40(具体的にはパッキン43a)が主弁座16に接しており、主弁座16が閉じている。閉弁状態において、主弁室14およびパイロット弁室37から流出口12への冷媒の流れが遮断されており、流入口11から流れ込んだ冷媒は主弁室14およびパイロット弁室37に留まる。
【0033】
そして、電磁コイル34の通電を停止すると、プランジャ33が、開弁ばね38に押されて上方に移動する。そして、図2図3に示すように、緩衝部材50の上端50aがケース32の上端壁部32bに接したあと、図4に示すように、緩衝部材50が弾性変形して上端50aがプランジャ33の内側空間33bに押し込まれ、プランジャ33の上端33aが上端壁部32bに接する。
【0034】
プランジャ33の上方への移動に伴い、図5に示すように、パイロット弁体36がパイロット弁座45から離れ、パイロット弁座45が開く。パイロット弁室37の冷媒がパイロット弁座45およびパイロット弁口44を介して流出口12に流れて、冷媒による主弁体40を主弁座16に押し付ける力が弱まる。主弁体40が開弁ばね39によって上方に押され、主弁体40が、主弁座16から離れ、主弁座16が開く。これにより、電磁弁1は開弁状態となり、主弁室14の冷媒は、主弁座16および主弁口15を介して流出口12に流れる。
【0035】
そして、電磁コイル34に再び通電すると、プランジャ33が磁力によって固定鉄心31に引き寄せられ、パイロット弁体36が下方に移動する。そして、パイロット弁体36がパイロット弁座45に接して主弁体40を下方に押し、主弁体40が主弁座16に接する。パイロット弁体36がパイロット弁座45を閉じ、主弁体40が主弁座16を閉じる。これにより、電磁弁1は再び閉弁状態となり、主弁室14およびパイロット弁室37から流出口12への冷媒の流れが遮断される。
【0036】
以上説明したように、電磁弁1は、円筒形状のケース32と、ケース32の内側に配置されたプランジャ33と、ケース32の外側に配置された電磁コイル34と、プランジャ33と弁軸35を介して接続されたパイロット弁体36と、を有する。ケース32には、プランジャ33と接することにより当該プランジャ33の移動を規制する上端壁部32bが設けられている。プランジャ33の内側空間33bには、弾性変形可能な合成樹脂製の緩衝部材50が配置されている。プランジャ33と上端壁部32bとが離れているとき、緩衝部材50の上端50aが内側空間33bから上端壁部32bに向けて突出している。そして、プランジャ33が上端壁部32bに向かって移動すると、緩衝部材50の上端50aが上端壁部32bに接するとともに内側空間33bに押し込まれ、プランジャ33が上端壁部32bに接する。
【0037】
このようにしたことから、プランジャ33が上端壁部32bに向かって移動したとき、プランジャ33の内側空間33bに配置された緩衝部材50が上端壁部32bに接し、そのあと、プランジャ33と上端壁部32bとが接する。これにより、プランジャ33と上端壁部32bとが接する前に緩衝部材50によってプランジャ33の移動速度を減少させることができる。また、緩衝部材50が内側空間33bに押し込まれたあとにプランジャ33と上端壁部32bとが接するので、開弁状態でのプランジャ33およびパイロット弁体36の位置が変化することを回避できる。そのため、電磁弁1は、性能の変化がなく、プランジャ33の衝突音を効果的に抑制できる。
【0038】
また、緩衝部材50が、両端が開口した円筒形状を有している。緩衝部材50の上端50aが、プランジャ33の内側空間33bから上端壁部32bに向けて突出している。このようにすることで、緩衝部材50が上端壁部32bに張り付いてしまうことを抑制できる。そのため、プランジャ33の移動が妨げられることを抑制できる。
【0039】
なお、緩衝部材50の上端面に溝が設けられていてもよい。このようにすることで、緩衝部材50が上端壁部32bに張り付いてしまうことをさらに抑制できる。そのため、プランジャ33の移動が妨げられることを抑制できる。
【0040】
また、プランジャ33が、上端33aが開口した円筒形状を有している。そして、プランジャ33の内側空間33bが、緩衝部材50を収容する収容穴である。このようにすることで、収容穴を別に設ける必要がなくなり、製造コストを抑制できる。
【0041】
また、ケース32が、周壁部32aと、周壁部32aの上端を塞ぐように配置された上端壁部32bと、を有している。そして、上端壁部32bは、プランジャ33の移動を規制する移動規制部である。このようにすることで、移動規制部を比較的簡易な構成とすることができる。
【0042】
(第2実施例)
以下、本発明の電気的駆動弁の第2実施例に係るパイロット式の電磁弁について、図6図10を参照して説明する。
【0043】
図6図7図10は、本発明の第2実施例に係る電磁弁の断面図である。図6は、閉弁状態の電磁弁を示す。図7は、閉弁状態と開弁状態との中間状態にある電磁弁を示す。図10は、開弁状態の電磁弁を示す。図8は、図7に示す中間状態の電磁弁の一部(固定鉄心およびその近傍)を拡大した断面図である。図9は、図8の電磁弁の緩衝部材が固定鉄心の収容穴に押し込まれた状態を示す拡大断面図である。
【0044】
図6図10に示すように、本実施例の電磁弁2は、弁本体110と、円筒部材130と、固定鉄心131と、ケース132と、プランジャ133と、電磁コイル134と、パイロット弁体136と、主弁体140と、緩衝部材150と、を有している。
【0045】
弁本体110は、略直方体形状を有している。弁本体110は、流入口111と、流出口112と、主弁室114と、を有している。
【0046】
流入口111は、弁本体110の左側面110aに開口している。流出口112は、弁本体110の右側面110bに開口している。主弁室114は、流入口111と流出口112との間に配置されている。主弁室114には、主弁口115を囲む円形の主弁座116が設けられている。流入口111は、主弁室114に接続されている。主弁室114は、主弁座116および主弁口115を介して流出口112に接続されている。
【0047】
円筒部材130は、弁本体110にねじ構造で固定されている。
【0048】
ケース132は、金属製である。ケース132は、両端が開口した円筒形状を有している。ケース132の下端は、円筒部材130に挿入されている。ケース132は、円筒部材130に接合されている。
【0049】
固定鉄心131は、ケース132の上端に挿入されている。固定鉄心131は、ケース132に接合されている。固定鉄心131の下端面131aは、内向きのテーパー形状を有している。下端面131aの中央には、円形の収容穴131bが設けられている。収容穴131bには、緩衝部材150が配置される。
【0050】
プランジャ133は、円柱形状を有している。プランジャ133の外径は、ケース132の内径よりわずかに小さい。プランジャ133は、ケース132の内側に上下方向に移動可能に配置されている。プランジャ133の上端面133aは、外向きのテーパー形状を有している。上端面133aの中央には、円形の閉弁ばね穴133bが設けられている。閉弁ばね穴133bには、閉弁ばね138が収容されている。閉弁ばね138は、プランジャ133と緩衝部材150とに間に配置されている。閉弁ばね138は、圧縮コイルばねである。閉弁ばね138は、プランジャ133を下方に向けて押している。
【0051】
電磁コイル134は、ケース132の外径よりわずかに大きい内径を有する円筒形状を有している。電磁コイル134の内側には、ケース132が挿入される。電磁コイル134は、ケース132の外側に配置されている。電磁コイル134は、ねじによって固定鉄心131に固定されている。電磁コイル134は、固定鉄心131およびプランジャ133を磁化する。固定鉄心131およびプランジャ133が磁化されると、プランジャ133は上方に移動する。プランジャ133は、上方に移動すると、固定鉄心131に突き当たる。固定鉄心131は、プランジャ133と接することによりプランジャ133の移動を規制する移動規制部である。固定鉄心131は、第1構成要素であり、プランジャ133は、第2構成要素である。
【0052】
パイロット弁体136は、下方を向く円すい形状を有している。パイロット弁体136は、プランジャ133の下端に一体的に設けられている。すなわち、パイロット弁体136は、プランジャ133に直接的に接続されている。
【0053】
主弁体140は、枠部141と、パッキン部142と、を有している。枠部141は、円筒形状を有している。パッキン部142は、円柱形状を有している。パッキン部142は、枠部141と嵌合されている。パッキン部142には、上端から下端まで貫通するパイロット弁口144が設けられている。パッキン部142におけるパイロット弁口144の上端を囲む箇所は、パイロット弁座145である。主弁体140は、円筒部材130の内側に上下方向に摺動可能に配置されている。主弁体140は、主弁室114と円筒部材130の内側のパイロット弁室137とを区画している。主弁体140には、主弁室114とパイロット弁室137とを接続する均圧通路140aが設けられている。主弁体140と弁本体110との間には、主弁体140用の開弁ばね139が配置されている。開弁ばね139は、圧縮コイルばねである。開弁ばね139は、主弁体140を上方に向けて押している。
【0054】
緩衝部材150は、弾性変形可能な合成樹脂製である。緩衝部材150は、例えば、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)や水素化ニトリルゴム(HNBR)などの合成ゴムからなる。緩衝部材150は、被圧縮部151と、閉弁ばね支持部152と、を一体的に有している。被圧縮部151は、円板形状を有している。被圧縮部151に対して外部から力が加わっていないときの被圧縮部151の厚さは、固定鉄心131の収容穴131bの深さより大きい。閉弁ばね支持部152は、下方を向く円すい台形状を有している。閉弁ばね支持部152は、被圧縮部151の下面151aの中央に連設されている。閉弁ばね支持部152は、閉弁ばね138の上端に挿入されている。緩衝部材150の被圧縮部151は、固定鉄心131の収容穴131bに配置されている。緩衝部材150の一部である被圧縮部151の下面151aは、収容穴131bから下方に向けて突出している。
【0055】
次に、電磁弁2の動作の一例について説明する。
【0056】
図6は、閉弁状態の電磁弁2を示している。閉弁状態の電磁弁2では、電磁コイル134の通電が停止されており、プランジャ133が閉弁ばね138によって下方に押されている。パイロット弁体136がパイロット弁座145に接しており、パイロット弁座145が閉じている。主弁体140が主弁座116に接しており、主弁座116が閉じている。閉弁状態において、主弁室114およびパイロット弁室137から流出口112への冷媒の流れが遮断されており、流入口111から流れ込んだ冷媒は主弁室114およびパイロット弁室137に留まる。
【0057】
そして、電磁コイル134に通電すると、プランジャ133が、磁力によって固定鉄心131に引き寄せられて上方に移動する。そして、図7図8に示すように、プランジャ133の上端133cが緩衝部材150の被圧縮部151の下面151aに接したあと、図9に示すように、被圧縮部151が弾性変形して固定鉄心131の収容穴131bに押し込まれ、プランジャ133の上端面133aが固定鉄心131の下端面131aに接する。
【0058】
プランジャ133の上方への移動に伴い、図10に示すように、パイロット弁体136がパイロット弁座145から離れ、パイロット弁座145が開く。パイロット弁室137の冷媒がパイロット弁座145およびパイロット弁口144を介して流出口112に流れて、冷媒による主弁体140を主弁座116に押し付ける力が弱まる。主弁体140が開弁ばね139によって上方に押され、主弁体140が、主弁座116から離れ、主弁座116が開く。これにより、電磁弁2は開弁状態となり、主弁室114の冷媒は、主弁座116および主弁口115を介して流出口112に流れる。
【0059】
そして、電磁コイル134の通電を再び停止すると、プランジャ133が閉弁ばね138によって押されて、パイロット弁体136が下方に移動する。そして、パイロット弁体136がパイロット弁座145に接して主弁体140を下方に押し、主弁体140が主弁座116に接する。パイロット弁体136がパイロット弁座145を閉じ、主弁体140が主弁座116を閉じる。これにより、電磁弁2は再び閉弁状態となり、主弁室114およびパイロット弁室137から流出口112への冷媒の流れが遮断される。
【0060】
以上説明したように、電磁弁2は、円筒形状のケース132と、ケース132の内側に配置されたプランジャ133と、ケース132の外側に配置された電磁コイル134と、プランジャ133に接続されたパイロット弁体136と、を有する。ケース132には、固定鉄心131が設けられている。固定鉄心131は、プランジャ133と接することにより当該プランジャ133の移動を規制する移動規制部である。固定鉄心131には、収容穴131bが設けられている。収容穴131bには、弾性変形可能な合成樹脂製の緩衝部材150が配置されている。プランジャ133と固定鉄心131とが離れているとき、緩衝部材150の被圧縮部151の下面151aが収容穴131bからプランジャ133に向けて突出している。そして、プランジャ133が固定鉄心131に向かって移動すると、被圧縮部151の下面151aがプランジャ133に接するとともに収容穴131bに押し込まれ、プランジャ133が固定鉄心131に接する。
【0061】
このようにしたことから、プランジャ133が固定鉄心131に向かって移動したとき、固定鉄心131の収容穴131bに配置された緩衝部材150がプランジャ133に接し、そのあと、プランジャ133と固定鉄心131とが接する。これにより、プランジャ133と固定鉄心131とが接する前に緩衝部材150によってプランジャ133の移動速度を減少させることができる。また、緩衝部材150が収容穴131bに押し込まれたあとにプランジャ133と固定鉄心131とが接するので、開弁状態でのプランジャ133およびパイロット弁体136の位置が変化することを回避できる。そのため、電磁弁2は、性能の変化がなく、プランジャ133の衝突音を効果的に抑制できる。
【0062】
また、ケース132の上端には、固定鉄心131が配置されている。そして、固定鉄心131は、プランジャ133の移動を規制する移動規制部である。このようにすることで、移動規制部を比較的簡易な構成とすることができる。
【0063】
上記に本発明の実施例を説明したが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。前述の実施例に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、設計変更を行ったものや、実施例の特徴を適宜組み合わせたものも、本発明の趣旨に反しない限り、本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0064】
(第1実施例)
1…電磁弁、10…弁本体、10a…左側面、10b…右側面、11…流入口、12…流出口、14…主弁室、15…主弁口、16…主弁座、31…固定鉄心、31a…大径円筒部、31b…小径円筒部、32…ケース、32a…周壁部、32b…上端壁部、33…プランジャ、33a…上端、33b…内側空間、33c…テーパー面、34…電磁コイル、35…弁軸、35a…流体通路、36…パイロット弁体、36a…パッキン、37…パイロット弁室、38、39…開弁ばね、40…主弁体、41…胴部、42…上フランジ部、42a…均圧通路、43…下フランジ部、43a…パッキン、44…パイロット弁口、45…パイロット弁座、50…緩衝部材、50a…上端
(第2実施例)
2…電磁弁、110…弁本体、110a…左側面、110b…右側面、111…流入口、112…流出口、114…主弁室、115…主弁口、116…主弁座、130…円筒部材、131…固定鉄心、131a…下端面、131b…収容穴、132…ケース、133…プランジャ、133a…上端面、133b…閉弁ばね穴、133c…上端、134…電磁コイル、136…パイロット弁体、137…パイロット弁室、138…閉弁ばね、139…開弁ばね、140…主弁体、140a…均圧通路、141…枠部、142…パッキン部、144…パイロット弁口、145…パイロット弁座、150…緩衝部材、151…被圧縮部、151a…下面、152…閉弁ばね支持部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10