(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-14
(45)【発行日】2024-06-24
(54)【発明の名称】ガス吸収材料、ガス吸収体、ガス分離材、フィルターおよびガス分離装置
(51)【国際特許分類】
B01J 20/26 20060101AFI20240617BHJP
B01D 53/62 20060101ALI20240617BHJP
B01D 53/14 20060101ALI20240617BHJP
B01J 20/28 20060101ALI20240617BHJP
B01J 20/30 20060101ALI20240617BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20240617BHJP
C08L 27/12 20060101ALI20240617BHJP
C08L 33/26 20060101ALI20240617BHJP
【FI】
B01J20/26 A ZAB
B01D53/62
B01D53/14 100
B01J20/28 Z
B01J20/30
C08K3/04
C08L27/12
C08L33/26
(21)【出願番号】P 2021520838
(86)(22)【出願日】2020-05-21
(86)【国際出願番号】 JP2020020080
(87)【国際公開番号】W WO2020235623
(87)【国際公開日】2020-11-26
【審査請求日】2023-05-12
(31)【優先権主張番号】P 2019095511
(32)【優先日】2019-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)2018年9月4日 ウェブサイトを通じて発表 http://www3.scej.org/meeting/50f/pages/jp_appl-intellectual.html (2)2018年9月18日 化学工学会 第50回秋季大会にて発表 (3)January 31,2019(2019年1月31日) 2019 I▲2▼CNER Annual Symposiumにて発表 (4)2019年2月27日 ウェブサイトを通じて発表(E223) http://www3.scej.org/meeting/84a/pages/jp_appl-intellectual.html (5)2019年2月27日 ウェブサイトを通じて発表(PD347) http://www3.scej.org/meeting/84a/pages/jp_appl-intellectual.html (6)2019年3月14日 化学工学会 第84年会にて発表 (7)2019年3月15日 化学工学会 第84年会にて発表 (8)2019年5月14日 ウェブサイトを通じて発表 https://member.spsj.or.jp/convention/spsj2019/
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業「相転移型ナノゲル塗布膜の作成および評価、研究全体の総括」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受けるもの
(73)【特許権者】
【識別番号】523089623
【氏名又は名称】株式会社JCCL
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】星野 友
(72)【発明者】
【氏名】寺山 友規
(72)【発明者】
【氏名】片渕 航汰
(72)【発明者】
【氏名】山下 知恵
(72)【発明者】
【氏名】藤原 智美
【審査官】河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-509744(JP,A)
【文献】国際公開第2016/024633(WO,A1)
【文献】特表2017-507011(JP,A)
【文献】特開平11-276857(JP,A)
【文献】国際公開第2017/183447(WO,A1)
【文献】特開2013-133399(JP,A)
【文献】特表2014-533195(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/00 - 20/34
B01D 53/02 - 53/12
B01D 53/14
B01D 53/62
C08L 27/12
C08L 33/26
C08K 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノ基を有する高分子化合物粒子と
、前記アミノ基を有する高分子化合物粒子とは別の粒子であって、一次粒子径1000nm以下の微粒子(ただし、前記アミノ基を有する高分子化合物粒子を除く)を含
み、
前記微粒子の平均一次粒子径が、前記アミノ基を有する高分子化合物粒子の乾燥状態でのメディアン径よりも小さく、且つ、
前記アミノ基を有する高分子化合物粒子の乾燥状態でのメディアン径が10μm以下であるとき、アミノ基を有する高分子化合物粒子と微粒子の固形分での重量比(アミノ基を有する高分子化合物粒子:微粒子)が95:5~5:95であり、前記アミノ基を有する高分子化合物粒子の乾燥状態でのメディアン径が10μm超であるとき、前記アミノ基を有する高分子化合物粒子を水でゲル化したゲルと前記微粒子のそのもの自体での容量比(ゲル:微粒子)が99.9:0.1~95:5である、ガス吸収材料。
【請求項2】
前記微粒子がシリカまたはカーボンを含む粒子である、請求項1に記載のガス吸収材料。
【請求項3】
前記微粒子の水接触角が70°以上である、請求項1または2に記載のガス吸収材料。
【請求項4】
前記微粒子が、カーボンブラックまたはフッ素樹脂を含む微粒子である、請求項1~3のいずれか1項に記載のガス吸収材料。
【請求項5】
前記微粒子が、基材粒子と、該基材粒子の表面に形成された撥水性被膜を有するものである、請求項1~4のいずれか1項に記載のガス吸収材料。
【請求項6】
前記撥水性被膜がジアルキルポリシロキサンを含む、請求項5に記載のガス吸収材料。
【請求項7】
前記微粒子が、基材粒子に撥水性を付与する表面修飾を施したものである、請求項1~4のいずれか1項に記載のガス吸収材料。
【請求項8】
前記表面修飾が、基材粒子にアルキル基を導入する表面修飾である、請求項7に記載のガス吸収材料。
【請求項9】
前記基材粒子が無機微粒子である、請求項5~8のいずれか1項に記載のガス吸収材料。
【請求項10】
前記基材粒子
は撥水性微粒子である、請求項5~9のいずれか1項に記載のガス吸収材料。
【請求項11】
前記微粒子の平均一次粒子径が、
0.1nm~1000nmである、請求項1~10のいずれか1項に記載のガス吸収材料。
【請求項12】
前記アミノ基を有する高分子化合物粒子が、アミノ基を有する置換(メタ)アクリルアミドモノマーを含むモノマー成分の重合体を含む、請求項1~11のいずれか1項に記載のガス吸収材料。
【請求項13】
前記アミノ基を有する置換(メタ)アクリルアミドモノマーがN-(アミノアルキル)(メタ)アクリルアミドである、請求項12に記載のガス吸収材料。
【請求項14】
前記アミノ基を有する高分子化合物粒子の乾燥状態でのメディアン径が、2~10μmである、請求項1~13のいずれか1項に記載のガス吸収材料。
【請求項15】
固形分量で、前記アミノ基を有する高分子化合物粒子の含有量が、前記微粒子の含有量よりも大きい、請求項1~
14のいずれか1項に記載のガス吸収材料。
【請求項16】
請求項1~
15のいずれか1項に記載のガス吸収材料の造粒粒子を含むガス吸収体。
【請求項17】
ガス吸収材料と熱可塑性樹脂を含む混合物の成形体からなる
ガス吸収体であって、
前記ガス吸収材料は、アミノ基を有する高分子化合物粒子と一次粒子径1000nm以下の微粒子(ただし、前記アミノ基を有する高分子化合物粒子を除く)を含み、
前記微粒子の平均一次粒子径が、前記アミノ基を有する高分子化合物粒子の乾燥状態でのメディアン径よりも小さく、且つ、
前記アミノ基を有する高分子化合物粒子の乾燥状態でのメディアン径が10μm以下であるとき、アミノ基を有する高分子化合物粒子と微粒子の固形分での重量比(アミノ基を有する高分子化合物粒子:微粒子)が95:5~5:95であり、前記アミノ基を有する高分子化合物粒子の乾燥状態でのメディアン径が10μm超であるとき、前記アミノ基を有する高分子化合物粒子を水でゲル化したゲルと前記微粒子のそのもの自体での容量比(ゲル:微粒子)が99.9:0.1~95:5である、ガス吸収体。
【請求項18】
前記ガス吸収材料として、該ガス吸収材料の造粒粒子を含む、請求項
17に記載のガス吸収体。
【請求項19】
ガス吸収材料の圧粉成形体を含む
ガス吸収体であって、
前記ガス吸収材料は、アミノ基を有する高分子化合物粒子と一次粒子径1000nm以下の微粒子(ただし、前記アミノ基を有する高分子化合物粒子を除く)を含み、
前記微粒子の平均一次粒子径が、前記アミノ基を有する高分子化合物粒子の乾燥状態でのメディアン径よりも小さく、且つ、
前記アミノ基を有する高分子化合物粒子の乾燥状態でのメディアン径が10μm以下であるとき、アミノ基を有する高分子化合物粒子と微粒子の固形分での重量比(アミノ基を有する高分子化合物粒子:微粒子)が95:5~5:95であり、前記アミノ基を有する高分子化合物粒子の乾燥状態でのメディアン径が10μm超であるとき、前記アミノ基を有する高分子化合物粒子を水でゲル化したゲルと前記微粒子のそのもの自体での容量比(ゲル:微粒子)が99.9:0.1~95:5である、ガス吸収体。
【請求項20】
さらにフィラーを含む、請求項
16~19のいずれか1項に記載のガス吸収体。
【請求項21】
前記フィラーが活性炭またはゼオライトである、請求項
20に記載のガス吸収体。
【請求項22】
アミノ基を有する高分子化合物粒子と一次粒子径1000nm以下の微粒子を乾式混合して得た複合材料を成形型に入れ、加圧成形する工程を有
し、
前記微粒子の平均一次粒子径が、前記アミノ基を有する高分子化合物粒子の乾燥状態でのメディアン径よりも小さく、且つ、
前記アミノ基を有する高分子化合物粒子の乾燥状態でのメディアン径が10μm以下であるとき、アミノ基を有する高分子化合物粒子と微粒子の固形分での重量比(アミノ基を有する高分子化合物粒子:微粒子)が95:5~5:95であり、前記アミノ基を有する高分子化合物粒子の乾燥状態でのメディアン径が10μm超であるとき、前記アミノ基を有する高分子化合物粒子を水でゲル化したゲルと前記微粒子のそのもの自体での容量比(ゲル:微粒子)が99.9:0.1~95:5である、ガス吸収体の製造方法。
【請求項23】
請求項1~
15のいずれか1項に記載のガス吸収材料を含むガス分離材。
【請求項24】
混合ガスから酸性ガスを選択的に分離する、請求項
23に記載のガス分離材。
【請求項25】
前記酸性ガスが二酸化炭素である、請求項
24に記載のガス分離材。
【請求項26】
請求項
23~25のいずれか1項に記載のガス分離材を有するフィルター。
【請求項27】
請求項
23~25のいずれか1項に記載のガス分離材を有するガス分離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素等のガスの可逆吸収性能に優れたガス吸収材料、そのガス吸収材料を用いたガス吸収体、ガス分離材、フィルターおよびガス分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、火力発電所や製鉄所、セメント工場等の大規模施設から排出された二酸化炭素による地球温暖化、硫化水素等による環境汚染が問題になっている。こうした気候変動や環境汚染の抑制および低炭素社会の実現のために、これらの大規模施設から排出された水蒸気を多分に含む排ガスから二酸化炭素や硫化水素等の酸性ガスを分離・回収して、地中や海底下に封じ込める方法(CCS;Carbon dioxide Capture and Storage)の研究が進められている。しかし、現状の技術ではCCSにかかるエネルギーコストが非常に高くなっており、エネルギーコストの大幅な削減が求められている。特に、CCSでのエネルギーコストの約60%を二酸化炭素の分離回収プロセスが占めているため、CCSでのエネルギーコストの削減のためには二酸化炭素の分離回収プロセスの高効率化および大幅な省エネルギー化が必要不可欠である。また、エネルギー供給の分野においても、二酸化炭素濃度が高い天然ガスや石炭ガス化複合発電(IGCC)で生成される石炭ガス、燃料電池に用いられる水素等の燃料ガスから二酸化炭素や硫化水素等の酸性ガスや水蒸気を分離回収するプロセスが行われており、二酸化炭素等の分離回収プロセスの高効率化および省エネルギー化は、こうした分野でのエネルギーコストを削減する上でも重要になる。
ここで、ガスの分離回収は、具体的には、分離回収の対象ガスを一旦吸収した後、放散するガス可逆吸収プロセスを用いて行われる。そのため、上記のエネルギーコストの削減を図るべく、二酸化炭素等の酸性ガスを、低いコストで効率よく吸収・放散できるガス吸収材料の開発が盛んに進められている。
【0003】
例えば、特許文献1および2には、アミノ基を有する高分子化合物のゲル粒子をガス吸収材料として用いることが提案されている。このゲル粒子は、30℃程度の温度では塩基性が高く、二酸化炭素を吸収するが、75℃程度まで加熱すると、塩基性が低くなって二酸化炭素を放出するという、ガス吸収・放出性能を示す。こうした性能を利用することで、安価でガス可逆吸収性能に優れたガス吸収材料を提供できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2016/024633号
【文献】国際公開第2017/146231号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、アミノ基を有する高分子化合物のゲル粒子が優れたガス吸収・放出性能を有することが知られている。本発明者らが、このゲル粒子の実用性を評価したところ、ゲル粒子を、実際にフィルム状にしたり、カラムに充填したりすることにより、優れたガス吸収・放出性能が得られることが確認された。その一方で、さらにいっそうガス吸収・放出性能を高めようとすると、単にフィルム状にしたりカラムに充填したりするだけでは限界があり、新たな観点から工夫をする必要があることが判明した。
【0006】
そこで本発明者らは、このような従来技術の課題を解決するために、アミノ基を有する高分子化合物粒子を用いて、ガスの吸収・放散速度が一段と速いガス吸収材料を提供することを目的として検討を進めた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、本発明者らは、アミノ基を有する高分子化合物粒子を用いたガス吸収材料に一次粒子径1000nm以下の微粒子を添加すると、ガスの吸収速度および放散速度が著しく改善されるとの知見を得た。本発明はこうした知見に基づいて提案されたものであり、具体的に、以下の構成を有する。
【0008】
[1] アミノ基を有する高分子化合物粒子と一次粒子径1000nm以下の微粒子(ただし、前記アミノ基を有する高分子化合物粒子を除く)を含むガス吸収材料。
[2] 前記微粒子がシリカまたはカーボンを含む粒子である、[1]に記載のガス吸収材料。
[3] 前記微粒子の水接触角が70°以上である、[1]または[2]に記載のガス吸収材料。
[4] 前記微粒子が、カーボンブラックまたはフッ素樹脂を含む粒子である、[1]~[3]のいずれか1項に記載のガス吸収材料。
[5] 前記微粒子が、基材粒子と、該基材粒子の表面に形成された撥水性被膜を有するものである、[1]~[4]のいずれか1項に記載のガス吸収材料。
[6] 前記撥水性被膜がジアルキルポリシロキサンを含む、[5]に記載のガス吸収材料。
[7] 前記微粒子が、基材粒子に撥水性を付与する表面修飾を施したものである、[1]~[4]のいずれか1項に記載のガス吸収材料。
[8] 前記表面修飾が、基材粒子にアルキル基を導入する表面修飾である、[7]に記載のガス吸収材料。
[9] 前記基材粒子が無機微粒子である、[5]~[8]のいずれか1項に記載のガス吸収材料。
[10] 前記基材粒子の水接触角が70°以上である、[5]~[9]のいずれか1項に記載のガス吸収材料。
[11] 前記微粒子の平均一次粒子径が、5~200nmである、[1]~[10]のいずれか1項に記載のガス吸収材料。
[12] 前記アミノ基を有する高分子化合物粒子が、アミノ基を有する置換(メタ)アクリルアミドモノマーを含むモノマー成分の重合体を含む、[1]~[11]のいずれか1項に記載のガス吸収材料。
[13] 前記アミノ基を有する置換(メタ)アクリルアミドモノマーがN-(アミノアルキル)(メタ)アクリルアミドである、[12]に記載のガス吸収材料。
[14] 前記アミノ基を有する高分子化合物粒子の乾燥状態でのメディアン径が、1~50μmである、[1]~[13]のいずれか1項に記載のガス吸収材料。
[15] 前記微粒子の平均一次粒子径が、前記アミノ基を有する高分子化合物粒子の乾燥状態でのメディアン径よりも小さい、[1]~[14]のいずれか1項に記載のガス吸収材料。
[16] 固形分量で、前記アミノ基を有する高分子化合物粒子の含有量が、前記微粒子の含有量よりも大きい、[1]~[15]のいずれか1項に記載のガス吸収材料。
[17] [1]~[16]のいずれか1項に記載のガス吸収材料の造粒粒子を含むガス吸収体。
[18] [1]~[16]のいずれか1項に記載のガス吸収材料と熱可塑性樹脂を含む混合物の成形体からなるガス吸収体。
[19] 前記混合物が、前記ガス吸収材料として該ガス吸収材料の造粒粒子を含む、[16]に記載のガス吸収体。
[20] [1]~[16]のいずれか1項に記載のガス吸収材料の圧粉成形体を含むガス吸収体。
[21] さらにフィラーを含む、[17]~[20]のいずれか1項に記載のガス吸収体。
[22] 前記フィラーが活性炭またはゼオライトである、[21]に記載のガス吸収体。
[23] アミノ基を有する高分子化合物粒子と一次粒子径1000nm以下の微粒子を乾式混合して得た複合材料を成形型に入れ、加圧成形する工程を有する、ガス吸収体の製造方法。
[24] [1]~[16]のいずれか1項に記載のガス吸収材料を含むガス分離材。
[25] 混合ガスから酸性ガスを選択的に分離する、[24]に記載のガス分離材。
[26] 前記酸性ガスが二酸化炭素である、[25]に記載のガス分離材。
[27] [24]~[26]のいずれか1項に記載のガス分離材を有するフィルター。
[28] [24]~[26]のいずれか1項に記載のガス分離材を有するガス分離装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明のガス吸収材料およびガス吸収体は、ガスの吸収速度および放散速度が速く、優れたガス可逆吸収性能を示す。そのため、本発明のガス吸収材料、ガス吸収体をガス分離材に用いることにより、ガスの分離回収プロセスの時間効率が向上し、そのプロセスにかかるコストを削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施例で用いた粒子の走査型電子顕微鏡写真(SEM写真)であり、(a)はアミノ基含有高分子粒子1のSEM写真であり、(b)はアミノ基含有高分子粒子1とカーボンブラックの複合材料のSEM写真である。
【
図2】複合材料を膜状に圧粉成形した成形体(ガス吸収体1)の内部構造を示すSEM写真である。
【
図3】ガス吸収体1の透過型電子顕微鏡写真(TEM写真)であり、(a)はガス吸収体1から切り出した薄片のTEM写真であり、(b)はエネルギー分散型X線分光分析(EDX)で放出された窒素および炭素の特性X線のTEM像である。
【
図4】アミノ基含有高分子粒子1とカーボンブラックを含むガス吸収体1、アミノ基含有高分子粒子1と撥水化カーボンブラックを含むガス吸収体2およびアミノ基含有高分子粒子1のみを含む比較ガス吸収体1の吸収過程におけるCO
2吸収量を示すグラフである。
【
図5】アミノ基含有高分子粒子1とカーボンブラックを含むガス吸収体1、アミノ基含有高分子粒子1と撥水化カーボンブラックを含むガス吸収体2およびアミノ基含有高分子粒子1のみを含む比較ガス吸収体1の放散過程におけるCO
2放散量を示すグラフである。
【
図6】アミノ基含有高分子粒子1と、カーボンブラック、RY200、R805、PTFE粒子または親水性シリカ200を含むガス吸収体1、3~6の吸収過程におけるCO
2吸収量を示すグラフである。
【
図7】アミノ基含有高分子粒子1と、カーボンブラック、RY200、R805、PTFE粒子または親水性シリカ200を含むガス吸収体1、3~6の放散過程におけるCO
2放散量を示すグラフである。
【
図8】アミノ基含有高分子粒子1と、RY200または200を含むガス吸収体3、6およびアミノ基含有高分子粒子1のみを含む比較ガス吸収体1について、温度スウィング吸収法で測定した吸収過程におけるCO
2吸収量を示すグラフである。
【
図9】アミノ基含有高分子粒子1と、RY200または200を含むガス吸収体3、6およびアミノ基含有高分子粒子1のみを含む比較ガス吸収体1について、温度スウィング吸収法で測定した放散過程におけるCO
2放散量を示すグラフである。
【
図10】アミノ基含有高分子粒子1と、RY200または200を含むガス吸収体3、6およびアミノ基含有高分子粒子1のみを含む比較ガス吸収体1について、温度スウィング吸収法で測定した放散-吸収サイクル特性を示すグラフである。
【
図11】アミノ基含有高分子粒子1およびカーボンブラックの複合材料(ガス吸収材料)とポリエチレンを混合した混合物のペレット(ガス吸収体7)、並びにアミノ基含有高分子粒子1とポリエチレンを混合した混合物のペレット(比較ガス吸収体2)のSEM写真である。
【
図12】アミノ基含有高分子粒子1およびカーボンブラックの複合材料(ガス吸収材料)とポリエチレンを混合した混合物のペレット(ガス吸収体7)、並びにアミノ基含有高分子粒子1とポリエチレンを混合した混合物のペレット(比較ガス吸収体2)の吸収過程におけるCO
2吸収量および放散過程におけるCO
2放散量を示すグラフである。
【
図13】各種アミノ基含有高分子粉砕物とRY300の混合物の粒度分布である。
【
図14】7厘目で粉砕したアミノ基含有高分子粉砕物とRY300を含むガス吸収材料8、および7厘目で粉砕したアミノ基含有高分子粉砕物のみを含む比較ガス吸収材料3の吸収過程におけるCO
2吸収量および放散過程におけるCO
2放散量を示すグラフである。
【
図15】7厘目で粉砕したアミノ基含有高分子粉砕物とRY300を含むガス吸収材料8、および1.5分目で粉砕したアミノ基含有高分子粉砕物とRY300の混合物をビーズミルで粉砕した粉砕物(ガス吸収材料9)の吸収過程におけるCO
2吸収量を示すグラフである。
【
図16】7厘目で粉砕したアミノ基含有高分子粉砕物とRY300の混合物にバインダーを噴霧しながら造粒を行う過程での粒子径変化を示す図であり、(a)は造粒前の粒度分布であり、(b)は造粒後の粒度分布である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は「~」前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。また、本明細書において「(メタ)アクリルアミド」とは、「アクリルアミド」および「メタクリルアミド」を意味するものとする。また、室温とは20℃を意味する。
【0012】
<ガス吸収材料>
本発明のガス吸収材料は、アミノ基を有する高分子化合物粒子と一次粒子径1000nm以下の微粒子(ただし、「アミノ基を有する高分子化合物粒子」を除く)を含むものである。
本発明における「一次粒子径1000nm以下の微粒子(ただし、「アミノ基を有する高分子化合物粒子」を除く)を含む」とは、アミノ基を有する高分子化合物粒子とは別に、さらに一次粒子径1000nm以下の微粒子を含むことを意味する。以下の説明では、「一次粒子径1000nm以下の微粒子(ただし、「アミノ基を有する高分子化合物粒子」を除く)」を、単に「微粒子」ということがある。
このガス吸収材料は、ガスの吸収速度および放散速度が速く、またガスの吸収・放散量が大きく、優れたガス可逆吸収性能を示す。これは以下のメカニズムによるものと推測される。
すなわち、後掲の実施例で示すように、アミノ基を有する高分子化合物粒子と一次粒子径1000nm以下の微粒子を含むガス吸収材料を成形すると、その内部に、微粒子無添加のガス吸収材料には見られない連続した細孔が形成される。この連続した細孔は、ガス拡散相として効果的に機能すると考えられる。そのため、このガス吸収材料では、導入したガスが内部まで容易に浸透し、高分子化合物粒子のアミノ基と効率よく反応する結果、短時間に、ガスが十分に吸収された状態になる。また、温度変化やガス分圧変化などの条件変化に応じて、高分子化合物粒子からガスが放出されたときには、その放出されたガスが、上記のガス拡散相を通じて容易に外部に放散する。こうしたメカニズムにより、本発明のガス吸収材料は、大きなガス吸収速度とガス放散速度を示し、優れたガス可逆吸収性能を示すものと推測される。
特に、微粒子が撥水性微粒子である場合には、その連続した細孔内が撥水性となり、細孔内に水が存在し難くなる。その結果、細孔がガス拡散相としてより効果的に機能して、より優れたガス可逆吸収性能が発揮される。ここで、「撥水性微粒子」の意義については、下記の[一次粒子径1000以下の微粒子]の欄の記載を参照することができる。
以下において、本発明のガス吸収材料が含むアミノ基を有する高分子化合物粒子、一次粒子径1000nm以下の微粒子および、必要に応じて添加されるその他の材料について説明する。
【0013】
[アミノ基を有する高分子化合物粒子]
本発明で用いる「アミノ基を有する高分子化合物粒子」は、アミノ基を有する高分子化合物からなる粒子であり、アミノ基を有する高分子化合物のみから構成されていることが好ましいが、粒子を調製する際に使用する材料、例えば界面活性剤等の粒径調整用成分や、(メタ)アクリルアミド誘導体の重合物、架橋剤、未反応モノマー等を含んでいてもよい。
【0014】
(アミノ基を有する高分子化合物)
アミノ基を有する高分子化合物のアミノ基は、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基のいずれであってもよいが、共役酸の酸解離定数が設計されていることが好ましい。特に、二酸化炭素を溶解するために、アミノ基の酸解離定数が炭酸の酸解離定数と同等かあるいはそれより大きいことが好ましい。中でも、2級あるいは3級アミノ基であることが好ましく、3級アミノ基であることがさらに好ましい。ジメチルアミノ基などのジアルキルアミノ基であることがより好ましい。また、高分子化合物のアミノ基は、主鎖に結合していてもよいし、側鎖に結合していてもよいが、側鎖に結合していることが好ましい。
【0015】
また、アミノ基を有する高分子化合物は、疎水性基を有することが好ましい。高分子化合物に導入する疎水性基としては、CXH2XあるいはCXH2X+1で表される炭化水素基を挙げることができ、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基等であることが好ましい。中でもイソブチル基、tert-ブチル基であることがさらに好ましい。或いは、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基のように上記疎水性基に水酸基が結合したものであってもよい。
【0016】
粒子に用いるアミノ基を有する高分子化合物は、特に限定されないが、(メタ)アクリルアミド系高分子、およびその誘導体、ポリエチレンイミン、およびその誘導体、ポリビニルアミン、およびその誘導体、ポリビニルアルコール、およびその誘導体、ポリアリルアミン、およびその誘導体、等を挙げることができ、(メタ)アクリルアミド系高分子であることが好ましく、アクリルアミド系高分子であることがより好ましい。アミノ基を導入するための具体的な構成モノマーとして、N,N-ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、N,N-ジエチルアミノプロピルメタクリルアミド、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリルアミド、N,N-ジエチルアミノエチルメタクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピルメタクリレート、N,N-ジエチルアミノプロピルメタクリレート、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N-ジエチルアミノエチルメタクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N-ジエチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N-ジメチルアミノエチルアクリルアミド、N,N-ジエチルアミノエチルアクリルアミド、3-アミノプロピルメタクリルアミド塩酸塩、3-アミノプロピルアクリルアミド塩酸塩、N,N-ジメチルアミノプロピルアクリレート、N,N-ジエチルアミノプロピルアクリレート、N,N-ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N-ジエチルアミノエチルアクリレート、3-アミノプロピルメタクリレート塩酸塩、3-アミノプロピルアクリレート塩酸塩等を挙げることができる。
アミノ基を有する高分子化合物は、高分子化合物粒子を水中で膨潤させた後の分散状態での粒子内の高分子密度が、0.3~90%であることが好ましく、1~80%であることがより好ましい。
【0017】
(アミノ基を有する高分子化合物粒子のゲル化性)
本発明で用いるアミノ基を有する高分子化合物粒子は、アミノ基を有するゲル化性高分子粒子であることが好ましい。ここで、「ゲル化性高分子粒子」とは、水中または極性溶媒中にて膨潤してゲル状の微粒子となる性質を有する高分子粒子を意味する。好ましいゲル化性高分子粒子は、30℃の水中に分散して十分に膨潤した後に粒子内の水分量が20~99.7%となる粒子である。また、別の好ましいゲル化性高分子粒子は、30℃の水中に分散して十分に膨潤した後に流体力学直径が20nm~1000μm(例えば20~2000nm)となる粒子である。また、ゲル化性高分子粒子は、水中または極性溶媒中で膨潤してゲル化した後に、水や極性溶媒を除去し乾燥した後に、水や極性溶媒を加えることにより元のゲル状態に戻る可逆性を有するものであることが好ましい。
【0018】
(アミノ基を有する高分子化合物粒子の粒径)
本発明で用いる、アミノ基を有する高分子化合物粒子は、乾燥状態におけるメディアン径が5nm~500μm(例えば5nm~50μm)であることが好ましく、1~200μm(例えば1~20μm)であることがより好ましい。アミノ基を有する高分子化合物粒子の乾燥状態におけるメディアン径は、乾式レーザー回折式粒子径分布測定装置により測定することができる。母数は20以上であることが好ましく、50以上であることがより好ましい。
アミノ基を有する高分子化合物粒子を水中で膨潤させた後の流体力学粒径は、動的光散乱法により測定される水中での流体力学直径で10nm~1000μm(例えば10nm~100μm)であることが好ましく、50nm~500μm(例えば50nm~50μm)であることがより好ましく、100nm~200μm(例えば100nm~20μm)であることがさらに好ましく、200nm~100μm(例えば200nm~10μm)であることがさらにより好ましい。高分子化合物粒子の「水中で膨潤させた後の粒径」とは、乾燥させた高分子化合物粒子を30℃の水中に24時間浸漬した後の粒径であって、動的光散乱法により測定した平均粒径のことをいう。
アミノ基を有する高分子化合物粒子の粒径が上記の範囲であることにより、そのゲル粒子における分子(ガス分子やガス分子由来のイオン)の拡散距離が適切な範囲になると考えられ、ガスの吸収速度および放散速度がより向上する傾向がある。
【0019】
(アミノ基を有する高分子化合物粒子の調製)
アミノ基を有する高分子化合物粒子は、モノマー成分を含有する溶液(以下、これらを「粒子調製液」という)を用いて調製することができる。本明細書中において「モノマー成分」とは、アミノ基を有する高分子化合物粒子の高分子の合成に供される全てのモノマーのことをいう。高分子化合物粒子の作製方法としては、特に制限されず、沈殿重合法、擬沈殿重合法、乳化重合法、分散重合法、懸濁重合法、シード重合法、バルク重合法、塊状重合法等の従来公知の方法を用いることができる。
粒子の調製に用いるモノマー成分は、アミノ基を有するモノマーを少なくとも含み、アミノ基を有するモノマーとアミノ基を有しないモノマーを含むことが好ましい。すなわち、アミノ基を有する高分子化合物は、アミノ基を有するモノマーの単独重合体または共重合体であってもよいし、アミノ基を有するモノマーとアミノ基を有しないモノマーの共重合体であってもよい。これにより、これらモノマーの割合を制御することで、高分子化合物粒子のアミノ基の密度を適正な範囲に調整することができる。アミノ基を有するモノマーおよび必要に応じて用いられるアミノ基を有しないモノマーは、置換(メタ)アクリルアミドモノマーであることが好ましく、置換メタクリルアミドモノマーであることがより好ましい。
アミノ基を有するモノマーのアミノ基の説明と好ましい範囲については、(アミノ基を有する高分子化合物)の欄の記載を参照することができる。モノマーが有するアミノ基の数は、特に限定されず、1つであってもよいし、2つ以上であってもよい。モノマーが2つ以上のアミノ基を有する場合、各アミノ基は同じであってもよいし、異なっていてもよい。
アミノ基を有するモノマーとしては、特に限定されないが、N-(アミノアルキル)アクリルアミド、N-(アミノアルキル)メタクリルアミド等を挙げることができ、N-(アミノアルキル)メタクリルアミドであることが好ましい。アミノ基を有するモノマーの具体例については、(アミノ基を有する高分子化合物)の欄の「具体的な構成モノマー」についての記載を参照することができる。
【0020】
モノマー成分は、アミノ基を有するモノマーとともに疎水性基を有するモノマーを含むことが好ましい。疎水性基を有するモノマーの疎水性基の説明と好ましい範囲については、(アミノ基を有する高分子化合物)の欄の記載を参照することができる。疎水性基は側鎖に存在していることが好ましい。疎水性基を有するモノマーは、さらに、アミノ基を有していてもよく、有していなくてもよい。疎水性基を有するモノマーを導入することでアミノ基の周囲の環境を疎水性にしてアミノ基の共役酸の酸性度を適度に調節することが可能になる。
疎水性基を有するモノマーとしては、特に限定されないが、N-アルキルアクリルアミド、N-アルキルメタクリルアミド、N-アルキルアクリレート、N-アルキルメタクリレート、N,N-ジアルキルアクリルアミド、N-(ヒドロキシアルキル)メタクリルアミド、N,N-ジアルキルアクリレート、N-(ヒドロキシアルキル)メタクリレート、N,N-ジアルキルメタクリルアミド、N-(ヒドロキシアルキル)アクリルアミド、N,N-ジアルキルメタクリレート、N-(ヒドロキシアルキル)アクリレート等を挙げることができ、N-アルキルアクリルアミドであることが好ましい。
アミノ基を有するモノマーと疎水性基を有するモノマーの好ましい組合せとして、N-(アミノアルキル)(メタ)アクリルアミドとN-アルキル(メタ)アクリルアミドの組合せを挙げることができ、N-(アミノアルキル)メタクリルアミドとN-アルキルアクリルアミドの組合せであることが好ましい。N-(アミノアルキル)(メタ)アクリルアミドとN-アルキル(メタ)アクリルアミドの共重合体からなる粒子は、疎水性のアルキル基と水素結合性のアミドが分子内にバランス良く均一に分布している。
【0021】
モノマー成分におけるアミノ基を有するモノマーの割合は、モノマー成分の全モル数に対して1~95モル%であることが好ましく、5~95モル%であることがより好ましく、30~85モル%であることがさらに好ましく、例えば30~60モル%とすることができる。また、モノマー成分が、疎水性基を有するモノマーを含む場合、アミノ基を有するモノマーと疎水性基を有するモノマーとのモル比は、95:5~5:95であることが好ましく、2:1~1:2であることがより好ましい。なお、アミノ基と疎水性基をともに有するモノマーについては、アミノ基を有するモノマーに分類する。
また、モノマー成分は、アミノ基を有しないモノマーを含まない組成(アミノ基を有するモノマーが100モル%の組成)としてもよいし、アミノ基を有しないモノマーの配合量を微量(例えば5モル%未満)としてもよい。これらの場合には、架橋密度を上昇させる、あるいは重合時のモノマー濃度を上昇させることにより、アミノ基の共役酸の酸解離定数を適度に調節することができる。
【0022】
粒子調製液は、モノマー成分のみを含んでいてもよいし、その他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、界面活性剤や架橋剤、重合開始剤、pKa調整剤等を挙げることができる。粒子調製液に添加する界面活性剤の種類や濃度を調節することにより、得られる高分子化合物粒子の粒径を制御することができる。また、架橋剤を用いることにより、粒子内で高分子化合物に架橋構造を形成して過度に膨潤しないように粒子の膨潤性を制御することができる。また、架橋剤を比較的多めに用いた場合あるいは重合時のモノマー濃度を比較的高めに設定した場合には、粒子同士の間にも架橋構造を形成することができる。これにより、架橋構造により連結した複合粒子同士の間に、比較的大きな連続空隙構造を形成することができる。また、pKa調整剤は、得られる高分子化合物粒子のpKaを所望の値に調整するためのものであり、これにより、目的の分圧域の酸性ガスの吸収量を温度や分圧の変化により大きく変化させることができる。
界面活性剤としては、セチルトリメチルアンモニウムブロマイド等の陽イオン性界面活性剤等を用いることができる。
架橋剤は、用いるモノマー同士の間に架橋構造を形成しうるであればよく、N,N’-アルキレンビスアクリルアミドを好ましく用いることができる。N,N’-アルキレンビスアクリルアミドのアルキレン基の炭素数は、特に限定されないが、1~12であることが好ましく、1~4であることがより好ましく、1~2であることがさらに好ましい。アルキレン基の代わりに、オリゴエチレンイミンやオリゴエチレングリコールが架橋剤鎖として機能する架橋剤であってもよい。
pKa調整剤としては、モノマーのアミノ基をプロトン化または脱プロトン化しうるものを用いることができ、塩酸等の酸や水酸化ナトリウム等の塩基を、所望のpKaに応じて適宜濃度を調整して用いることができる。また、架橋剤による架橋率によっても、高分子化合物粒子のPKaを制御することができるため、上記の架橋剤をpKa調整剤として兼用してもよい。
粒子調製液の溶媒は、特に限定されないが、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の極性溶媒を挙げることができ、これら極性溶媒を2種以上組み合わせた混合溶媒であってもよい。中でも、水、または水と他の極性溶媒を混合した混合溶媒を用いることが好ましい。
アミノ基を有する高分子化合物粒子は、乾燥粒子(固体粒子)としてガス吸収材料の製造に供してもよく、液体で膨潤させたゲル粒子としてガス吸収材料の製造に供してもよいが、乾燥粒子としてガス吸収材料の製造に供することが好ましい。乾燥粒子は、例えばアミノ基を有する高分子化合物粒子を含む懸濁液を、スプレードライ法等を用いて乾燥することにより得ることができる。また、ゲル粒子の集合体としてのゲルを粉砕して得た粉砕物も、アミノ基を有する高分子化合物粒子として好ましく用いることができる。ゲルの粉砕は、例えばミートチョッパーを用いて行うことができる。
【0023】
[一次粒子径1000nm以下の微粒子]
本発明では、アミノ基を有する高分子化合物粒子と組み合わせて、一次粒子径1000nm以下の微粒子(ただし、「アミノ基を有する高分子化合物粒子」を除く)を使用する。
本発明で用いる「一次粒子径1000nm以下の微粒子」における「一次粒子径」とは、透過型電子顕微鏡観察によって測定することができる。本発明で用いる「一次粒子径1000nm以下の微粒子」は、一次粒子径が1000nm以下の微粒子のみからなるものであることが好ましい。
【0024】
本発明で用いる微粒子の粒径は、平均一次粒子径で0.1nm~1000nmであることが好ましく、0.3nm~500nmであることがより好ましく、0.5nm~300nmであることがさらに好ましく、1nm~200nmであることがさらにより好ましく、1.5nm~100nmであることが特に好ましく、2nm~50nmであることが特により好ましく、2.5nm~25nmであることが最も好ましい。これにより、ガス吸収材料の成形体にガス拡散相がより確実に形成され、ガスの吸収速度および放散速度がより向上する傾向がある。微粒子は、1次粒子が凝集しているものであってもよい。凝集体は100nm~200μmであることが好ましく、500nm~100μmであることがより好ましく、2.5μm~50μmであることが最も好ましい。
微粒子は、無機材料で構成されていても、有機材料で構成されていてもよいし、有機材料と無機材料を組み合わせて構成されていてもよい。シリカあるいはカーボンを含むものであってもよく、例えばカーボンブラックあるいはフュームドシリカであってもよい。また、微粒子は、撥水性微粒子であっても、親水性微粒子であってもよい。水蒸気が凝縮あるいは結露しやすい環境で使用する場合等は、特に撥水性微粒子であることが好ましい。上記のように、微粒子が撥水性微粒子であることにより、微粒子により形成される細孔が、ガス拡散相としてより効果的に機能するようになる。
ここで、「撥水性微粒子」とは、一次粒子径が1000nm以下であって、水接触角が70°以上の微粒子のことを意味する。微粒子の「水接触角」とは、その微粒子で形成した微粒子堆積膜の表面について測定される水との接触角のことをいう。その微粒子堆積膜表面の水接触角は対水静的接触角測定により測定することができる。
撥水性微粒子の水接触角は、80°以上であることが好ましく、100°以上であることがより好ましく、110°以上であることがさらに好ましく、120°以上であることがさらにより好ましく、130°以上であることが特に好ましく、140°以上であることが最も好ましい。
以下において、ガス吸収材料の微粒子として用いうる撥水性微粒子およびその他の微粒子の構成材料について説明する。
【0025】
(撥水性微粒子)
撥水性微粒子は、それ自体が撥水性を有する微粒子であってもよいし、基材となる粒子(基材粒子)の表面に撥水性を付与したものであってもよい。基材粒子の表面に撥水性を付与した微粒子として、基材表面に撥水性被膜を形成した被膜付き微粒子や基材粒子に撥水性を付与するための表面修飾を施した表面修飾微粒子を挙げることができる。
まず、それ自体が撥水性を有する微粒子として、カーボンブラックを挙げることができる。カーボンブラックとして、例えばアセチレンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルブラック、ランプブラック、ケッチェンブラック等を挙げることができ、中でもアセチレンブラックが好ましい。
その他の撥水性微粒子として、クノーベル(多孔質炭素、東洋炭素株式会社製)、酸化チタン、メソポーラスシリカ等からなる微粒子も挙げることができる。
また、それ自体が撥水性を有する微粒子として、撥水性有機材料により形成された微粒子も用いることができる。粒子の形成に用いうる撥水性有機材料としては、-(CA1A2-CA3A4)-で表される構成単位を含むフッ素樹脂を挙げることができる(ただし、A1~A4は水素原子、フッ素原子、塩素原子またはパーフルオロアルキル基を示し、A1~A4の少なくとも1つはフッ素原子である)。フッ素樹脂の具体例として、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレンと他のモノマーとの共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、クロロトリフルオロエチレンと他のモノマーとの共重合体、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリビニルフルオライド(PVF)、ポリテトラフルオロプロピレン(HEP)等を挙げることができる。テトラフルオロエチレンと他のモノマーとの共重合体として、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA:テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、パーフルオロエチレンプロペンコポリマー(FEP:テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレン共重合体)、エチレン-テトラフルオロエチレンコポリマー(ETFE)、テトラフルオロエチレン-パーフルオロジオキソールコポリマー(TFE/PDD)等を挙げることができる。また、クロロトリフルオロエチレンと他のモノマーとの共重合体としては、エチレン-クロロトリフルオロエチレンコポリマー(ECTFE)を挙げることができる。
これらの撥水性有機材料は、1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0026】
被膜付き微粒子および表面修飾微粒子の基材粒子は、無機粒子であっても有機粒子であってもよいが、無機粒子であることが好ましい。また、それ自体が撥水性を有する微粒子を基材粒子に用い、その微粒子に撥水性被膜や撥水性を付与する表面修飾を施すと、ガスの吸収速度および放散速度とともに、ガス吸収・放散量も向上させることができる。
無機粒子としては、公知のものを用いることができ、アセチレンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルブラック、ランプブラック、ケッチェンブラック等のカーボンブラック、金属元素または半金属元素の酸化物、水酸化物、窒化物、ハロゲン化物、炭酸塩、硫酸塩、酢酸塩、燐酸塩等の無機化合物からなる粒子、天然鉱物粒子等が挙げられる。金属元素または半金属元素の無機化合物として、フッ化リチウム、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、フッ化カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン(チタニア)、二酸化ジルコニア(ジルコニア)、酸化アルミニウム(アルミナ)、アルミナシリケート(ケイ酸アルミナ、カオリン、カオリナイト)、酸化ケイ素(シリカ、シリカゲル)等が挙げられ、天然鉱物としてタルク、クレー等が挙げられる。これらの中でもカーボンブラック、酸化ケイ素からなる粒子が好ましい。
有機粒子としては、公知のものを用いることができ、スチレン系、アクリル系、メラミン系、ベンゾグアナミン系、シリコーン系の高分子からなる粒子を挙げることができる。このとき、フィラーを併用してもよく、例えば活性炭やゼオライトをフィラーとして好ましく用いることができる。
【0027】
基材粒子に形成する撥水性被膜には、微粒子の形成に用いうる撥水性材料として例示した、上記の撥水性有機材料の他、オルガノポリシロキサンやオルガノハイドロジェンポリシロキサンの被膜を用いることができる。オルガノポリシロキサンとして、ジアルキルポリシロキサン、アルキルフェニルポリシロキサンを挙げることができ、オルガノハイドロジェンポリシロキサンとして、アルキルハイドロジェンポリシロキサンを挙げることができる。ジアルキルポリシロキサン、アルキルフェニルポリシロキサンおよびアルキルハイドロジェンポリシロキサンにおけるアルキル基は直鎖状、分枝状、環状のいずれであってもよいが、直鎖状であることが好ましい。アルキル基の炭素数は、1~20であることが好ましく、1~10であることがより好ましく、1~6であることがさらに好ましい。ここで、ケイ素原子に結合する2つのアルキル基は、互いに同一であっても異なっていてもよい。オルガノポリシロキサンの具体例として、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等を挙げることができ、オルガノハイドロジェンポリシロキサンの具体例としてメチルハイドロジェンポリシロキサン等を挙げることができる。
【0028】
基材粒子に行う表面修飾法としては、基材粒子の表面に、アルキル基やフッ化アルキル基等の撥水性基を導入する方法を挙げることができる。基材粒子に導入するアルキル基、フッ化アルキル基は直鎖状、分枝状、環状のいずれであってもよいが、直鎖状であることが好ましい。アルキル基、フッ化アルキル基の炭素数は、1~20であることが好ましく、1~15であることがより好ましく、1~10であることがさらに好ましい。また、フッ化アルキル基は、アルキル基の水素原子の一部がフッ素原子で置換された部分フッ化アルキル基であってもよいし、水素原子の全部がフッ素原子で置換されたパーフルオロアルキル基であってもよい。
【0029】
これらの撥水性基を基材粒子に導入する表面修飾は、シランカップリング剤やシラザン等のシラン化合物を用いて行うことができる。シランカップリング剤としては、下記一般式(1)で表される化合物を挙げることができる。
一般式(1)
R1
nSiX(4-n)
(一般式(1)において、Xは加水分解によりシラノール基を生成する加水分解基を表し、R1は撥水性基を含む基を表す。nは1~3の整数である。)
一般式(1)で表されるシランカップリング剤は、Xの加水分解にて生成されたシラノール基やシリル基が、基材粒子表面の官能基と反応することにより、該基材粒子に撥水性基を導入する。
一般式において、Xが表す「シラノール基を生成する加水分解基」としては、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、ハロゲン基等を挙げることができる。
R1における撥水性基として、アルキル基、フッ化アルキル基、ジメチルシロキサン等を挙げることができる。アルキル基およびフッ化アルキル基の説明と好ましい範囲は、基材粒子の表面に導入しうる撥水性基の説明と好ましい範囲を参照することができる。撥水性基はSiに直接結合していてもよいし、連結基を介して結合していてもよい。
nは1~3の整数であり、1または2であることが好ましい。nが2以上であるとき、複数のR1は互いに同一であっても異なっていてもよい。nが2以下であるとき、複数のXは互いに同一であっても異なっていてもよい。
一般式(1)で表されるシラン系カップリング剤の例として、トリエトキシアルキルシラン、ジエトキシジアルキルシラン、エトキシトリアルキルシラン、トリメトキシアルキルシラン、ジメトキシジアルキルシラン、メトキシトリアルキルシラン、トリクロロアルキルシラン等を挙げることができる。また、シラン系カップリング剤の具体例として、トリエトキシカプリリルシラン(トリエトキシ-n-オクチルシラン)、オクタデシルトリクロロシラン等を挙げることができる。
以上の基材粒子への撥水性被膜の形成や表面修飾処理は、常法に従って行うことができる。
【0030】
撥水性微粒子の市販品としては、Microdispers-200(テクノケミカル社製)、AEROSIL RY200、AEROSIL RY300、AEROSIL R805(いずれもエボニック社製)、ケッチェンブラック(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製)等を挙げることができる。
以上の撥水性微粒子は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
(その他の微粒子)
本発明で用いる一次粒子径1000nm以下の微粒子は、撥水性微粒子に限定されるものではなく、撥水性微粒子以外の微粒子、すなわち水接触角が70°未満の微粒子であってもよい。また、撥水性微粒子と、水接触角が70°未満の微粒子を組み合わせて用いてもよい。水接触角が70°未満の微粒子は、水接触角が50°以下であってもよいし、30℃以下であってもよいし、10°以下であってもよい。微粒子の水接触角の下限値は0°である。
撥水性微粒子以外の微粒子として、上記の(撥水性微粒子)の欄において、被膜付き微粒子および表面修飾微粒子の基材粒子の例として記載した、金属元素および半金属元素の無機化合物からなる粒子や有機粒子を挙げることができ、酸化ケイ素の粒子を用いることが好ましい。また、これらの無機粒子および有機粒子は、その表面に有機化合物の被膜が形成されていてもよいし、有機官能基が導入されていてもよい。
撥水性微粒子以外の微粒子の市販品として、AEROSIL 200(エボニック社製)を挙げることができる。
【0032】
(微粒子の比表面積)
本発明で用いる微粒子の比表面積は、1~3000m2/gであることが好ましく、2.5~2750m2/gであることがより好ましく、5~2500m2/gであることがさらに好ましい。これにより、ガス吸収材料の成形体にガス拡散相がより確実に形成され、ガスの吸収速度および放散速度がより向上する傾向がある。
微粒子の比表面積はBET法により測定することができる。
【0033】
[アミノ基を有する高分子化合物粒子と一次粒子径1000nm以下の微粒子の粒径比および量比]
一次粒子径1000nm以下の微粒子の平均一次粒子径は、アミノ基を有する高分子化合物粒子の乾燥状態でのメディアン径よりも小さいことが好ましい。具体的には、微粒子の平均一次粒子径は、アミノ基を有する高分子化合物粒子の乾燥状態でのメディアン径の1/3~1/100000であることが好ましく、1/10~1/100000であることがより好ましく、1/20~1/50000であることがさらに好ましく、1/25~1/1000であることがさらにより好ましく、1/50~1/900であることが特に好ましく、1/100~1/800であることが最も好ましい。
ガスの拡散相を効果的に形成するために微粒子がアミノ基を有する高分子微粒子の表面を覆うのに十分な量であることが好ましい。また、ガス吸収材料の重量あたりのガス吸収量を低下させないために微粒子の配合比はできるだけ少ないほうが良い。すなわちできる限り薄く表面を覆うために必要最小限の微粒子を添加することが好ましい。アミノ基を有する高分子化合物粒子は粒子径が大きいほど重量あたりの表面積は小さくなる。そのため、好適な微粒子の配合量はアミノ基を有する高分子化合物粒子の粒子径によって大きく異なる。アミノ基を有する高分子化合物粒子の粒子径が10μm以下であれば、アミノ基を有する高分子化合物粒子と微粒子の固形分の重量での配合比(アミノ基を有する高分子化合物粒子:微粒子)は、95:5~5:95であることが好ましく、90:10~30:70であることがより好ましく、80:20~50:50であることがさらに好ましい。また、ガス吸収材料におけるアミノ基を有する高分子化合物粒子の含有量は、固形分量で、撥水性粒子の含有量よりも大きいことが好ましい。また、アミノ基を有する高分子化合物粒子がゲル粒子である場合、そのゲル粒子の集合体としてのゲルや、そのゲル粉砕物に微粒子を添加すると、添加しない場合に比べて嵩が小さく(充填量が大きく)なって、ガス可逆吸収性能が向上する。このような作用を効果的に得る際のアミノ基を有する高分子化合物粒子の粒子径は比較的大きく、例えば10μm以上であることから、必要な微粒子の配合比は比較的少なく、ゲルまたはゲル粉砕物と微粒子の容量比(ゲルまたはゲル粉砕物:微粒子)は、99.9:0.1~95:5であることが好ましく、99.75:0.25~98:2であることがより好ましく、99.5:0.5~98.5:1. 5であることがさらに好ましい。
アミノ基を有する高分子化合物粒子と微粒子の粒径比および量比を上記の範囲とすることにより、ガスの吸収速度および放散速度がより高くなる傾向がある。
【0034】
[その他の成分]
ガス吸収材料は、アミノ基を有する高分子化合物粒子および一次粒子径1000nmの微粒子のみで構成されていてもよいし、その他の成分を含んでいてもよい。その他の成分として、アミノ基を有する高分子化合物粒子以外の高分子化合物や添加剤を挙げることができる。
【0035】
(アミノ基を有する高分子化合物粒子以外の高分子化合物)
本明細書中において「アミノ基を有する高分子化合物粒子以外の高分子化合物」には、アミノ基を有しない高分子化合物粒子、粒子を形成していないアミノ基を有する高分子化合物、粒子を形成していないアミノ基を有しない高分子化合物を含む。
アミノ基を有する高分子化合物粒子以外の高分子化合物は、特に制限されないが、温度変化等の刺激に対して反応する高分子化合物であることが好ましい。刺激に対する反応としては、官能基の酸解離定数の変化、立体構造の変化、膨潤度の変化、親水性の変化、水含量の変化、吸水性の変化、重炭酸イオン溶解量の変化、硫化水素イオン溶解量の変化等を挙げることができる。あるいは、共役酸の酸解離定数が設計されているアミノ基を有することが好ましい。特に、二酸化炭素を溶解する為にアミノ基の酸解離定数が炭酸の酸解離定数と同等かあるいはそれより大きいことが好ましい。中でも、2級あるいは3級アミノ基であることが好ましく、3級アミノ基であることがさらに好ましい。ジメチルアミノ基などのジアルキルアミノ基であることがより好ましい。また、高分子化合物のアミノ基は、主鎖に結合していてもよいし、側鎖に結合していてもよいが、側鎖に結合していることが好ましい。
【0036】
(添加剤)
添加剤としては、膜安定化剤、吸収促進剤、放散促進剤、吸湿剤、酸化防止剤等を挙げることができる。
【0037】
膜安定化剤としては、高分子化合物、重合可能な分子(重合性化合物)、チタン架橋剤等の架橋剤、1級アミン、2級アミン、3級アミン等を挙げることができる。このうち高分子化合物としては、ポリビニルアミン等の1級アミノ基を有する高分子化合物、2級アミノ基を有する高分子化合物、3級アミノ基を有する高分子化合物、4級アンモニウム基を有する化合物、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、4級アンモニウム基を複数種類有する高分子化合物、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリビニルアルコール/ポリエチレン共重合体等を好ましく用いることができる。
また、膜安定化剤として重合可能な分子を用いた場合には、この分子が膜内で重合反応することで生成した高分子化合物も膜安定化剤として機能する。これにより、膜形成後の水添加後やガス吸収放散後においても、過度に膨潤することなく均一な膜状を維持しやすくなる。重合可能な分子としては、重合性基を有するモノマーを挙げることができ、例えば(メタ)アクリルモノマーを例示することができる。なかでも、(メタ)アクリルアミドまたは(メタ)アクリルアミド誘導体を好ましく用いることができる。例えば、アルキルアクリルアミド、置換または無置換のアミノアルキル(メタ)アクリルアミド、重合性基を2個有するアクリルアミド誘導体等を挙げることができ、これらの中では、置換アミノアルキルアクリルアミド、重合性基を2個有するアクリルアミド誘導体を好ましく用いることができる。置換アミノアルキルアクリルアミドと重合性基を2個有するアクリルアミド誘導体は組み合わせて用いることが好ましく、そのモル分率は60~99:40~1であることが好ましく、80~99:20~1であることがより好ましく、90~99:10~1であることがさらに好ましい。重合性基を有するモノマーの具体例としては、N-イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)、tert-ブチルアクリルアミド(TBAM)、N,N-ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド(DMAPM)、N,N'-メチレンビスアクリルアミド(BIS)、アクリルアミド等を挙げることができる。これらの重合可能な化合物は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。2種以上を組み合わせて用いる場合は、例えば、N,N-ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド(DMAPM)とN,N'-メチレンビスアクリルアミド(BIS)の組み合わせを好ましい例として挙げることができる。
本発明のガス吸収材料における膜安定化剤の含有量は、ガス吸収材料全量に対して1~89質量%であることが好ましい。
【0038】
吸収促進剤は、本発明のガス吸収材料への酸性ガスの吸収を促進する機能を有する化合物である。放散促進剤は、酸性ガスのガス吸収材料からの放散を促進する機能を有する化合物である。本発明では、吸収促進剤と放散促進剤の両方の機能を有する吸収放散促進剤を用いてもよい。これらの吸収促進剤、放散促進剤、吸収放散促進剤は、それぞれ膜安定化剤としての機能を兼ね備えているものであってもよい。本発明のガス吸収材料における吸収促進剤、放散促進剤、吸収放散促進剤の合計含有量は、固形分1gあたり0.05mL以上であることが好ましく、0.1mL以上であることがより好ましい。また、本発明のガス吸収材料における吸収促進剤の含有量は、アミン濃度換算で0.1~12Nであることが好ましく、1~10Nであることがより好ましく、3~9Nであることがさらに好ましい。
吸収促進剤、放散促進剤、吸収放散促進剤として、低分子のアミンを好ましく用いることができる。低分子のアミンの分子量は、61~10000であるものが好ましく、75~1000であるものがより好ましく、90~500であるものがさらに好ましい。低分子のアミンの沸点は、長期利用できて実用的であることから、80℃以上であることが好ましく、120℃以上であることがより好ましく、150℃以上であることがさらに好ましい。沸点上昇のためにイオン液体のように対イオンと塩を形成する部位を有し、且つ液体となるアミン含有化合物を用いてもよい。
低分子のアミンには、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、アンモニウム基、イミダゾリウム基のいずれが含まれていてもよく、アミノ基、アンモニウム基、イミダゾリウム基は複数含まれていてもよく、1~3個含まれていることが好ましい。また、2級アミノ基や3級アミノ基は環状アミノ基であってもよい。さらに、低分子のアミンには、アミノ基、アンモニウム基、イミダゾリウム基以外の官能基が含まれていてもよく、例えばヒドロキシル基が含まれていてもよい。低分子のアミンに含まれているヒドロキシル基は0~2個であることが好ましい。好ましい低分子のアミンとして、アミノ基とヒドロキシル基を有するアミンや、アミノ基を3つ有するアミン等を例示することができ、より好ましい低分子のアミンとして、2級アミノ基とヒドロキシル基を有するアミン等を例示することができる。高い濃度領域において特に飛躍的に酸性ガスの放散量を高めることができ、繰り返し利用に適している点で、沸点が150℃以上の2級アミノ基とヒドロキシル基を有するアミンが特に好ましい。
低分子のアミンとしては、下記式で表される具体的な化合物を挙げることができる。
【0039】
【0040】
これらのうちで、特に、酸性ガスの放散量を多くできることから、DMAE、IPAE,Bis(2DMAE)ER、1-2HE-PRLD、1-2HE-PP、TM-1,4-DAB、TMHAD、PMDETAを用いることが好ましく、中でも、沸点が比較的高く、蒸発しにくいことから、IPAE、Bis(2DMAE)ER、1-2HE-PP、TM-1,4-DAB、TMHAD、PMDETAを用いることがより好ましく、その濃度を高めることで酸性ガスの放散量を顕著に増大できることから、IPAE、TM-1,4-DAB、TMHAD、PMDETAを用いることがさらに好ましく、入手が容易であることから、IPAE、TMHAD、PMDETAを用いることが特に好ましい。
【0041】
添加剤として用いることができる吸湿剤は、飽和水溶液としたときに25℃での相対湿度が90%以下となるものを用いることが好ましい。そのような吸湿剤として、臭化物イオン、塩化物イオン、酢酸イオン、炭酸イオン、重炭酸イオン、リチウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、ナトリウムイオン等のイオンを挙げることができる。また、そのような吸湿剤として、臭化リチウム、塩化リチウム、塩化カルシウム、酢酸カリウム、塩化マグネシウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等の塩も挙げることができる。吸湿剤を添加する場合、その添加量はガス吸収材料全量に対して0.01~10質量%とすることが好ましい。
【0042】
添加剤として用いることができる酸化防止剤は、添加することにより酸化を抑制ないし防止することができるものである。そのような酸化防止剤として、ビタミンC(アスコルビン酸)、ビタミンE(トコフェロール)、BHT(ジブチルヒドロキシトルエン)、BHA(ブチルヒドロキシアニソール)、エリソルビン酸ナトリウム、没食子酸プロピル、亜硫酸ナトリウム二酸化硫黄、ヒドロキノンおよびその誘導体を挙げることができる。酸化防止剤を添加する場合、その添加量はガス吸収材料全量に対して0.01~10質量%とすることが好ましい。
以上に説明した添加剤は、1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0043】
[ガス吸収材料の使用態様]
本発明のガス吸収材料は、カラム等の容器に充填して使用してもよいし、圧粉成形、造粒成形、混練成形等により所望の形状に成形して使用してもよい。圧粉成形、造粒成形、混錬成形についての説明は、下記の<ガス吸収体>の対応する記載を参照することができる。
また、本発明のガス吸収材料は、液体を含侵させて使用することができる。これにより、アミノ基を有する高分子化合物粒子が膨潤してゲル化し、酸性ガスを吸収し易い状態になる。液体の含侵方法は特に限定されず、カラムに充填したガス吸収材料に液体を注入することで含侵させてもよいし、含侵させる目的物質を揮発させた雰囲気中に、ガス吸収材料またはその成形体を置くことで含侵させてもよい。例えば、含侵させる目的物質が水である場合には、高湿度環境下に、ガス吸収材料またはその成形体を置くことで水を含侵させることができる。
ガス吸収材料に含侵させる液体は、特に限定されないが、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の極性溶媒を挙げることができ、これら極性溶媒を2種以上組み合わせた混合溶媒であってもよい。中でも、水、または水と他の極性溶媒を混合した混合溶媒を用いることが好ましい。これにより、アミノ基を含有する高分子化合物粒子がヒドロゲル粒子になる。
ヒドロゲル粒子における水の含有量は、固形分1gあたり0.05mL以上であることが好ましく、0.1mL以上であることがより好ましい。また、ヒドロゲル粒子における水の含有量は、固形分1gあたり20mL以下であることが好ましく、10mL以下であることがより好ましい。
本発明のガス吸収材料に吸収させる対象ガスは、その対象ガスや対象ガスに由来するイオンがアミノ基と相互作用するものであればよく、例えば二酸化炭素、硫化水素等の酸性ガスが挙げられる。二酸化炭素では、水酸化物イオンとの反応により生成した重炭酸イオンがアミノ基と反応することで高分子化合物粒子に吸収される。
ガス吸収材料におけるガスの吸収過程と放散過程の切り替えは、温度変化や対象ガスの分圧変化により行うことができる。例えば、水で膨潤させたガス吸収材料は、30~50℃では、塩基性が高く二酸化炭素を吸収し易い状態にある。この温度で二酸化炭素を吸収させた後、60~90℃に加熱すると、塩基性が低くなり、吸収した二酸化炭素を放散する。あるいは、5~50℃で二酸化炭素を吸収させた後、二酸化炭素を含まない窒素ガスを導入することによっても、二酸化炭素を放散させることができる。
【0044】
<ガス吸収材料の製造方法>
本発明のガス吸収材料は、アミノ基を有する高分子化合物粒子と、一次粒子径1000nm以下の微粒子と、必要に応じて添加するその他の成分とを混合することにより製造することができる。これらの材料の混合は、乾燥状態の材料を混合する乾式混合により行うことが好ましい。これにより、ガス拡散相を十分に形成しうるガス吸収材料を得ることができる。
乾式混合は、例えば楕円ローター型攪拌装置、流動造粒装置、遊星型ミリング装置、ボールミルや撹拌造粒装置を用いて行うことができる。
【0045】
<ガス吸収体>
次に、本発明のガス吸収体について説明する。
本発明のガス吸収体は、本発明のガス吸収材料の圧粉成形体を含むものである。また、本発明のガス吸収体は、本発明のガス吸収材料の造粒粒子を含むものである。さらに、また、本発明のガス吸収体は、本発明のガス吸収材料と熱可塑性樹脂を含む混合物の成形体からなるものである。以下の説明では、これらのガス吸収体を、上記で挙げた順に、第1のガス吸収体、第2のガス吸収体、第3のガス吸収体という。 第1~第3のガス吸収体において、本発明のガス吸収材料の説明については、<ガス吸収材料>の欄の記載を参照することができる。
以下において、第1~第3のガス吸収体について順に説明する。
【0046】
[第1のガス吸収体]
第1のガス吸収体は、本発明のガス吸収材料の圧粉成形体を含むものである。
このガス吸収材料の圧粉成形体は、アミノ基を有する高分子化合物粒子を高密度に含み、また、高分子化合物粒子同士の間に、一次粒子径1000nm以下の微粒子による細孔構造が形成されて、この細孔構造がガス拡散相として効果的に機能する。そのため、ガスの吸収速度および放散速度が速く、優れたガス可逆吸収性能を示す。
ガス吸収材料の圧粉成形体は、アミノ基を有する高分子化合物粒子と微粒子を乾式混合して得た複合材料を成形型に入れ、加圧成形する工程を用いて製造することが好ましい。
ガス吸収体を圧粉成形するための、圧力は、0.1~2000kg/cm2であることが好ましく、1~1500kg/cm2であることがより好ましく、10~1000kg/cm2であることがさらに好ましい。
【0047】
ガス吸収材料の圧粉成形体の形態、特性
ガス吸収材料を構成する圧粉成形体は、以下の形態および特性を有することが好ましい。
【0048】
(圧粉成形体の密度)
圧粉成形体の密度は、0.01~10.0g/cm3であることが好ましく、0.05~7.5g/cm3であることがより好ましく、0.1~5.0g/cm3であることがさらに好ましい。密度が上記の範囲の圧粉成形体は、細孔が適切な占有率で形成されていると推測され、ガスの吸収速度および放散速度をより向上させることができる。
圧粉成形体の密度は、乾式自動密度計により測定することができる。
【0049】
(圧粉成形体の厚さ)
圧粉成形体の圧縮方向での長さ(厚さ)は、1μm~10000μmであることが好ましく、5μm~5000μmであることがより好ましく、10μm~1000μmであることがさらに好ましい。
圧粉成形体の厚さは、マイクロノギス、レーザーマイクロスコープ、走査型電子顕微鏡観察により測定することができる。
【0050】
(圧粉成形体の形状)
圧粉成形体の形状は特に制限されず、用途に応じて適宜選択することができる。例えば、使用し易い形状として、膜状や筒状を挙げることができる。また、圧粉成形体が膜状である場合、単層構造であってもよいし、複数の膜を積層した多層構造を構成していてもよい。多層構造である場合、少なくとも互いに接する膜同士は、材料、配合比、厚さ等の条件が異なることが好ましい。なお、多層構造を構成する各膜は、それぞれが上記の適切な厚さ範囲であることが好ましい。
【0051】
(圧粉成形体の窒素透過流速)
圧粉成形体は、その窒素透過流束が40℃で100GPU以下であることが好ましく、10GPU以下であるがより好ましい。また、圧粉成形体は、その二酸化炭素透過流束が40℃で10GPU以上であることが好ましく、100GPU以上であることがより好ましい。窒素透過流束および二酸化炭素流束が上記の範囲である圧粉成形体は、窒素に対して二酸化炭素を選択的に透過することができるため、後述のガス分離材に用いたとき、窒素と二酸化炭素を含む空気等の混合ガスから、二酸化炭素を選択的に分離して効率よく回収することができる。
本明細書における「透過流束」は下記式(1)で求められる値である。
Q=L/A×ΔP ・・・(1)
式(1)において、Qは透過流束、Lは単位時間あたりの透過流量、Aは膜面積、ΔPは単層膜の両側での分圧差を表す。透過流量Lは、ガスクロマトグラフィー等により単位時間あたりに膜を透過したガスの量として測定することができ、透過流束Lの単位はGPUである(1 GPU は 1.0 × 10 -6 (cm3(STP) /(s・cm2・cmHg))。分圧差ΔPは、圧力計とガスクロマトグラフィー等によりガス供給面側のガス分圧と透過面側のガス分圧を測定し、その差として求めることができる。
また、本明細書における「選択率」は、選択的に透過するガスの透過流束QSを分子とし、他のガスの透過流束QOを分母とした比の値QS/QOである。
【0052】
[第2のガス吸収体]
第2のガス吸収体は、本発明のガス吸収材料の造粒粒子を含むものである。
ここで、「ガス吸収材料の造粒粒子」とは、本発明のガス吸収材料を造粒機で粒子状に成形して得たものであることを意味する。
ガス吸収材料の造粒は、乾式造粒であっても湿式造粒であってもよいが、乾式造粒であることが好ましい。
また、造粒を行う対象は、ガス吸収材料のみであってもよいし、ガス吸収材料と他の材料の混合物であってもよい。他の材料としてはフィラーを例示することができる。フィラーとしては、公知のものを用いることができる。例えば、活性炭、ゼオライト、シリカ、フュームドシリカ、疎水化シリカ、疎水化フュームドシリカ、撥水性シリカ、アルミナ、疎水化アルミナ、撥水性アルミナ、ベーマイト、ケイ藻土、酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、金属フェライト等の酸化物、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の水酸化物、炭酸カルシウム(軽質、重質)、炭酸マグネシウム、ドロマイト、ドーソナイト等の炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸アンモニウム、亜硫酸カルシウム等の硫酸塩または亜硫酸塩、タルク、マイカ、クレー、ガラス繊維、ケイ酸カルシウム、モンモリロナイト、ベントナイト等のケイ酸塩、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸ナトリウム等のホウ酸塩、カーボンブラック、疎水化カーボンブラック、撥水化カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維等の炭素、その他鉄粉、銅粉、アルミニウム粉、亜鉛華、硫化モリブデン、ボロン繊維、チタン酸カリウム、チタン酸ジルコン酸鉛、フッ素化樹脂粉体、テフロン(登録商標)パウダー等が挙げられる。中でも撥水性フィラーを用いることが好ましい。他の材料として、カーボンブラック、シリカ粒子、メソポーラスシリカ、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)粒子、金属・無機酸化物粒子、ゼオライト、活性炭、低分子アミン化合物、アミン含有ポリマー等の撥水性材料を挙げることができる。特に低分子アミンやアミン含有ポリマーを用いれば性能が向上するため好ましい。
また、ガス吸収材料の造粒粒子は、バインダーを含んでいてもよい。バインダーは、ガス吸収材料を造粒する際に、ガス吸収材料にスプレー噴霧されたものであることが好ましい。これにより、ガス吸収材料の飛散性が低下して取り扱い性を向上させることができる。バインダーとしては、造粒用に通常用いられるバインダーのほか、アミノ基を有する高分子の溶液を用いることができる。
造粒機としては、攪拌混合造粒機、押出造粒機、パン型造粒機等を用いることができる。
ガス吸収材料の造粒粒子の平均一次粒子径は、0.1μm~10mmであることが好ましく、0.25μm~7.5mmであることがより好ましく、0.5μm~5.0mmであることがさらに好ましい。
造粒粒子の平均一次粒子径は、レーザー回折式粒子径分布測定装置あるいは光学顕微鏡により測定することができる。
【0053】
[第3のガス吸収体]
第3のガス吸収体は、本発明のガス吸収材料と熱可塑性樹脂を含む混合物の成形体からなるものである。
ここで、混合物が含む熱可塑性樹脂は特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリアミド、ポリスチレン、ポリイミド、アクリル樹脂、熱可塑性ポリウレタン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキシド等を挙げることができる。
混合物における熱可塑性樹脂の含有量は、1vol%~99vol%であることが好ましく、5vol%~95vol%であることがより好ましく、10vol%~90vol%であることがさらに好ましい。
混合物は、ガス吸収材料と熱可塑性樹脂を混錬機で混錬することにより得られる。このとき、ガス吸収材料は、そのまま混錬に供してもよいし、造粒粒子として混錬に供してもよい。
「造粒粒子」の説明については、上記の[第2のガス吸収体]の欄の記載を参照することができる。
混合物は、本発明のガス吸収材料と熱可塑性樹脂のみを含んでいてもよいし、その他の材料を含んでいてもよい。他の材料としてはフィラーを例示することができ、中でも撥水性フィラーを用いることが好ましい。他の材料として、カーボンブラック、シリカ粒子、メソポーラスシリカ、PTFE粒子、金属・無機酸化物粒子、ゼオライト、活性炭、低分子アミン化合物、アミン含有ポリマー等の撥水性材料を挙げることができる。特に低分子アミンやアミン含有ポリマーを用いれば性能が向上するため好ましい。
混合物を混錬する混錬機としては、2軸混錬機、ニーダー押出機、単軸押出機等を用いることができる。
成形体の厚さおよび形状の説明については、上記の(圧粉成形体の厚さ)および(圧粉成形体の形状)の欄の記載を参照することができる。また、成形体はペレットであってもよい。ペレットの平均粒径は0.5~10mmであることが好ましく、1~4.5mmであることがより好ましく、1.5~3mmであることがさらに好ましい。ペレットの平均粒径は、100個以上の各ペレットの最大径を測定して、測定個数で割った値である。
【0054】
[ガス吸収体の全細孔容積および平均細孔直径]
第1のガス吸収体および第3のガス吸収体は、その全細孔容積が0.01~10cm3/gであることが好ましく、0.01~5cm3/gであることがより好ましく、0.01~2.5cm3/gであることがさらに好ましい。
また、第1のガス吸収体および第3のガス吸収体は、その平均細孔直径が0.1~500nmであることが好ましく、0.1~300nmであることがより好ましく、0.1~150nmであることがさらに好ましい。
ガス吸収体の全細孔容積はBET法により測定することができ、平均細孔直径はKelvin式による解析により求めることができる。
ガス吸収体の全細孔容積および平均細孔直径が上記の範囲であることにより、ガス吸収体の内部において、ガス拡散が効率よく行われ、ガスの吸収・放散を効率よく行うことができる。
【0055】
[ガス吸収体のその他の部材]
本発明のガス吸収体は、ガス吸収材料の圧粉成形体のみから構成されていてもよいし、その他の部材を有していてもよい。
その他の部材として、圧粉成形体を担持する担体を挙げることができる。担体には、薄板や多孔質体を用いることができる。担体となる薄板として、樹脂フィルム、金属箔、炭素材料からなるシート、カーボンシート等を用いることができ、多孔質体として、樹脂、金属、カーボンにより形成された多孔質体や繊維集合体等を用いることができる。
【0056】
<ガス分離材>
次に、本発明のガス分離材について説明する。
本発明のガス分離材は、本発明のガス吸収材料を含むことを特徴とする。ガス分離材が含むガス吸収材料は、本発明のガス吸収体を構成していてもよい。
本発明のガス吸収材料およびガス吸収体の説明については、<ガス吸収材料>、<ガス吸収体>の欄の記載を参照することができる。
本発明のガス分離材でガス分離を行う混合ガスとして、天然ガス、バイオガス、ランドフィルガス、燃焼後ガス、燃料ガス、水蒸気改質後のガスを挙げることができる。本発明のガス分離材によれば、これらの混合ガスから例えば二酸化炭素を選択性よく短時間に分離して、混合ガスにおける二酸化炭素の濃度を顕著に低下させることができる。
また、本発明のガス分離材は、ガスに限らず、水あるいは水蒸気を透過させてもよい。これにより、例えばガスを含む水あるいは水蒸気から水または水蒸気を分離すること、言い換えれば水あるいは水蒸気からガスを除去することができる。
【0057】
ガス分離を行う際の条件は、ガス分離材に用いるガス吸収材料、ガス分離を行う混合ガスの組成、混合ガスから分離する分離対象ガス等の条件によっても異なるが、0~130℃であることが好ましく、0~95℃であることがより好ましく、10~60℃の温度でガス分離を行うことが好ましい。また、ガス分離時のガス吸収材料の水分量は乾燥膜重量の1質量%~1000質量%であることが好ましい。
【0058】
<フィルターおよびガス分離装置>
本発明のフィルターおよびガス分離装置は、本発明のガス分離材を有することを特徴とする。
本発明のガス分離材の説明と好ましい範囲、具体例については、<ガス分離材>の欄に記載した内容を参照することができる。
本発明のフィルターおよびガス分離装置は、本発明のガス分離材を用いていることにより、混合ガスから特定のガスを効率よく分離して回収することができる。
【実施例】
【0059】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。なお、各粒子の水接触角および平均一次粒子径は、[一次粒子径1000nm以下の微粒子]に記載した方法で測定した。また、下記表2に示す比表面積および全細孔容積はBET法により測定し、平均細孔直径は、Kelvin式により求めた。
【0060】
(合成例1)アミノ基含有高分子粒子1の合成
本実施例で使用したアミノ基含有高分子粒子1は以下のようにして合成した。
【0061】
【化2】
2リットルの三口フラスコに1リットルの純水を加え、70℃に加温した後、2mMの界面活性剤(セチルトリメチルアンモニウムブロマイド)と3種類のモノマーを総モノマー濃度が312mMになるように溶解した。3種類のモノマーの組成は、N-(ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミドが55mol%、N-tert-ブチルアクリルアミドが43mol%、N,N’-メチレンビスアクリルアミドが2mol%である。N-(ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミドはアルミナカラムで重合禁止剤を取り除いたものを用いた。N-tert-ブチルアクリルアミドは予め少量のメタノールに溶解し、0.68g/mLの溶液としたものを添加した。この混合物を70℃に保持したまま、メカニカルスターラーで撹拌し、窒素を1時間バブリングルして系内の酸素を取り除いた。こうして得たモノマー溶液に、700mgの2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩を5mLの純水に溶解した溶液を添加し、窒素雰囲気下、70℃で3時間反応させた。反応後、沈殿物をろ取し、透析膜(MWCO12-14.000, width:75mm, vol/length:18mL/mL) [スペクトラムラボラトリーズ社製]で3日間透析を行うことにより未反応のモノマーや界面活性剤を取り除いた後、強塩基性のイオン交換樹脂を用いて対アニオンを取り除いた。以上の工程で得られたゲル粒子の懸濁液を、スプレードライ法を用いて乾燥することにより、アミノ基を有する高分子化合物粒子(アミノ基含有高分子粒子1)を得た。アミノ基含有高分子粒子1の乾燥状態での粒径は、レーザー回折式粒子径分布測定装置を用いて測定したメディアン径で4μmであった。また、アミノ基含有高分子粒子の水接触角は、66.2°であった。
【0062】
(合成例2)アミノ基含有高分子粒子2の合成
ジメチルアミノプロピルアクリルアミド(DMAPAAm:85モル%)およびBIS(15モル%)を60℃のMilliQ水に溶解して全量30mLの水溶液とし、さらにエタノールを添加して、後工程で反応を行う反応混合物の総モノマー濃度が2.3モル/Lとなるように、混合物を調製した。この混合物を70℃まで昇温した後、撹拌しながら窒素バブリングを30~60分間行った。この混合物に、AIBNの溶液(反応混合物中でのAIBN濃度:2.58mM、溶媒:アセトンと水の混合溶媒)を加えて反応混合物とし、窒素気流下、70℃で3時間塊状重合させることにより、一塊のゲルを得た。これをミートチョッパー(1.5分目)で粉砕し、水で洗浄して濾過により洗浄液を除去してアミノ基含有高分子粒子2を得た。このアミノ基含有高分子粒子2の水分量は73.7重量%であった。
【0063】
【0064】
(本実施例で使用した一次粒子径1000nm以下の微粒子)
本実施例で使用した微粒子、その微粒子の構成、水接触角および平均一次粒子径は表1に示す通りである。
【表1】
【0065】
[1]CO2可逆吸収性能の評価
本実施例におけるCO2可逆吸収性能の評価は、圧力スウィング吸収法(Pressure Swing Absorption法:PSA法)と温度スウィング吸収法(Temperature Swing Absorption:TSA法)を用いて行った。
【0066】
(圧力スウィング吸収法によるCO2可逆吸収性能の評価)
圧力スウィング吸収法によるCO2可逆吸収性能の評価は次の手順で行った。
まず、反応器に収容した測定対象サンプルを、温度40℃、相対湿度98%超の恒温槽に入れて十分に加湿した後、温度を30℃に調整した。続いて、加湿したCO2とN2の混合ガス(CO2濃度:10.03容量%)を、200mL/分の流速で測定対象サンプルに導入するとともに、測定対象サンプルから排出されてくるガスのCO2濃度(A)をマルチガス分析計(堀場製作所社製:VA-3000)にて測定した(吸収過程)。次に、測定対象サンプルに導入するガスを、加湿したN2ガスに切り替えて200mL/分の流速で測定対象サンプルに導入し、測定対象サンプルから排出されてくるガスのCO2濃度(B)を測定した(放散過程)。導入した混合ガスのCO2濃度と吸収過程で測定されたCO2濃度(A)の差の積算値をCO2吸収量とし、放散過程で測定されたCO2濃度(B)の積算値をCO2放散量として測定対象サンプルのCO2可逆吸収性能を評価した。なお、ここで測定されるCO2吸収量をグラフに示すとき、CO2放散量と区別するため、その値Aに「-」の符号を付して縦軸におけるマイナス側に示すことがある。
【0067】
(実施例1)アミノ基含有高分子粒子1とカーボンブラックを用いたガス吸収体1の製造
アミノ基含有高分子粒子1と表1に示すカーボンブラックを、室温においてアミノ基含有高分子粒子1:カーボンブラック=7:3の容量比で混ぜ合わせ、2mmのジルコニアビーズ入の遊星型ミリング装置にて、300rpmで10分間混合することにより、アミノ基含有高分子粒子1とカーボンブラックの複合材料(ガス吸収材料1)を得た。
カーボンブラックを添加する前のアミノ基含有高分子粒子1のSEM写真(倍率:3700倍)を
図1(a)に示し、アミノ基含有高分子粒子1とカーボンブラックを混合して得た複合材料(ガス吸収材料1)のSEM写真(倍率:3700倍)を
図1(b)に示す。
図1(b)の複合材料のSEM写真から、アミノ基含有高分子粒子1の表面が、小さい粒子(カーボンブラック)で覆われている様子が確認された。
次に、このガス吸収材料1を反応器(幅×奥行×高さ:15cm×8cm×0.2cm)に入れ、室温下、5000kg/120cm
2で圧粉することにより、膜厚300μmの膜状のガス吸収体1を得た。
ガス吸収体1の内部構造を撮影したSEM写真(倍率:20000倍)を
図2に示す。また、ガス吸収体1から切り出した薄片のTEM写真(倍率:50000倍)を
図3(a)に示し、その薄片についてエネルギー分散型X線分光分析(EDX)を行い、窒素および炭素の特性X線を撮影したTEM写真を
図3(b)に示す。
図2、3に示す顕微鏡写真から、ガス吸収体1の膜内部に細孔様の構造が形成されていることが確認された。
また、カーボンブラック、ガス吸収材料1(圧粉成形前のガス吸収材料1)およびガス吸収体1について、比表面積、全細孔容積および平均細孔直径を測定した。その結果を表2に示す。圧粉後もカーボンブラックによるガスが拡散可能な細孔が維持されいることが確認された。ガス吸収体1の容量比(アミノ基含有高分子粒子1:カーボンブラック:細孔)は、0.433:0.429:0.138であった。
【0068】
【0069】
(実施例2~6)アミノ基含有高分子粒子1と、撥水化カーボンブラック、撥水性シリカRY200、撥水性シリカR805、PTFE粒子または親水性シリカ200を用いたガス吸収体の製造
カーボンブラックの代わりに表3に示す微粒子を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてガス吸収体2~6を製造した。
【0070】
(比較例1)アミノ基含有高分子粒子1からなる比較ガス吸収体1の製造
アミノ基含有高分子粒子1とカーボンブラックの複合材料の代わりに、アミノ基含有高分子粒子1のみを膜状に圧粉成形したこと以外は、実施例1と同様にしてガス吸収体(比較ガス吸収体1)を製造した。
【0071】
【0072】
ガス吸収体1、2および比較ガス吸収体1について測定した吸収過程でのCO
2吸収量を
図4に示し、放散過程でのCO
2放散量を
図5に示す。また、ガス吸収体1、3~6について測定した吸収過程でのCO
2吸収量を
図6に示し、放散過程でのCO
2放散量を
図7に示す。図において、「GP」はアミノ基含有高分子粒子1、「CB」はカーボンブラック、「撥水CB」は撥水化カーボンブラック、「RY200」は撥水性シリカRY200、「R805」は撥水性シリカR805、「PTFE」はPTFE粒子、「200」は親水性シリカ200をそれぞれ表す。この表記は、
図8~10、12においても同じである。また、「mL/g-GPs」、「mL/g」の単位で示されたCO
2吸収量またはCO
2放散量は、アミノ基含有高分子粒子1g当たりのCO
2吸収量またはCO
2放散量を示す。
図4~7に示すように、一次粒子径1000nm以下の微粒子を含むガス吸収体1~6は、微粒子を含まない比較ガス吸収体1に比べて短時間でCO
2吸収量が飽和し、吸収が終了した。また、
図6、7に示すように、その吸収速度および放散速度は、平均一次粒子径が12nmの微粒子(撥水性シリカRY200、R805および親水性シリカ200)を用いたガス吸収体3、4、6、平均一次粒子径が30nmの微粒子(カーボンブラックCB)を用いたガス吸収体1、平均一次粒子径が200nmの微粒子(PTFE粒子)を用いたガス吸収体5の順に速く、微粒子の平均一次粒子径が小さくなる程、吸収速度および放散速度が改善されることがわかった。さらに、
図4に示すように、撥水化カーボンブラック(撥水CB)を用いたガス吸収体2は、カーボンブラック(CB)を撥水化していないガス吸収体1よりも大きなCO
2吸収・放散量を示した。
これらの結果から、アミノ基を有する高分子化合物粒子と一次粒子径1000nm以下の微粒子を併用することにより、ガスの吸収速度および放散速度が速くなること、また、微粒子の撥水性をより高くすると、ガス可逆吸収性能が向上することを確認することができた。
さらに、アミノ基を有する高分子化合物粒子を、メディアン径を2~10μmの範囲で変化させて作製し、その粒子を用いて同様にガス吸収体を作製したところ、いずれも各実施例のガス吸収体と同等のガス可逆吸収性能を得ることができた。
【0073】
(温度スウィング吸収法によるCO2可逆吸収性能の評価)
温度スウィング吸収法によるCO2可逆吸収性能の評価は次の手順で行った。
まず、測定対象サンプルを収容した反応器を、30℃に調整した水浴中に入れ、60℃で加湿したCO2とN2の混合ガス(CO2濃度:10.0容量%)を100mL/分の流速で反応器に導入し、測定対象サンプルを十分に加湿した(加湿過程)。続いて、75℃に調整した水浴中に、反応器を素早く移し変え、測定対象サンプルから排出されてくるガスを除湿した後、そのCO2濃度(B)をマルチガス分析計(堀場製作所社製:VA-3000)にて測定した(放散過程)。測定対象サンプルからCO2を十分に放散させた後、30℃の水浴中に反応器を素早く移し変え、上記の加湿したCO2とN2の混合ガスを100mL/分の流速で反応器に導入するとともに、測定対象サンプルから排出されてくるガスを除湿した後、そのCO2濃度(A)をマルチガス分析計にて測定した(吸収過程)。ここで、放散過程は300秒間行い、吸収過程は500秒間行った。また、導入した混合ガスのCO2濃度と吸収過程で測定されたCO2濃度(A)の差の積算値をCO2吸収量とし、放散過程で測定されたCO2濃度(B)の積算値をCO2放散量とした。また、以上の放散過程と吸収過程を交互に繰り返す放散-吸収サイクルを行ってサイクル性能を評価した。なお、ここで測定されるCO2吸収量をグラフに示すとき、CO2放散量と区別するため、その値Aに「-」の符号を付して縦軸におけるマイナス側に示すことがある。
【0074】
上記の各実施例で製造したガス吸収体3、6および比較ガス吸収体1について、温度スウィング吸収法により測定した吸収過程でのCO
2吸収量を
図8に示し、放散過程でのCO
2放散量を
図9に示す。また、放散-吸収サイクルを5サイクル行ったときのCO
2放散量およびCO
2吸収量を
図10に示す。
図8~10に示すように、微粒子を含むガス吸収体3、6は、微粒子を含まない比較ガス吸収体1よりも、大きなCO
2吸収・放散量を示した。特に、撥水性シリカRY200を用いたガス吸収体3は、親水性シリカ200を用いたガス吸収体6と比較してCO
2吸収・放散量が大きく、安定な放散-吸収サイクルを示した。これは、高い湿度で測定を行う温度スウィング吸収法では、膜の細孔内で凝縮する水分がガス拡散に大きく影響するところ、ガス吸収体3では、アミノ基含有高分子粒子を覆う撥水性シリカRY200の撥水性により、凝縮水が細孔を閉塞するのが抑えられてガス拡散相として効果的に機能したためであると考えられる。このことから、撥水性の微粒子を含むガス吸収体は、高湿度下で短時間にCO
2を分離するフィルム等として効果的に利用できることがわかった。
【0075】
[2]ガス吸収材料のペレット化の検討
(実施例7)ガス吸収材料とポリエチレンの混合物のペレットからなるガス吸収体7の製造
実施例1のガス吸収材料1の調製手順と同様にして、アミノ基含有高分子粒子1とカーボンブラックCBの複合材料(ガス吸収材料)を得た。この複合材料とポリエチレン(LDPE:旭化成 サンテックLD M6520)を、複合材料:ポリエチレン=2:1の重量比で二軸スクリュー混錬押出機(Xplore Instruments社製:卓上型混錬機MC6)にて混錬し、平均粒径3mmのペレットからなるガス吸収体7を得た。
【0076】
(比較例2)アミノ基含有高分子粒子1とポリエチレンの混合物のペレットからなる比較ガス吸収体2の製造
アミノ基含有高分子粒子1とポリエチレン(LDPE:旭化成 サンテックLD M6520)を、アミノ基含有高分子粒子1:ポリエチレン=4:1の重量比で混錬した混錬物を用いること以外は、実施例7と同様にしてペレット(比較ガス吸収体2)を製造した。
【0077】
ガス吸収体7および比較ガス吸収体2を撮影したSEM写真を
図11に示す。
図11において、上段の写真はガス吸収体7のSEM写真であり、左側から順に、ペレットの外観を撮影したSEM写真、ペレットの内部構造を35倍の拡大率で撮影したSEM写真、ペレットの内部構造を5000倍の拡大率で撮影したSEM写真である。
図11において、下段の写真は比較ガス吸収体2のSEM写真であり、左側から順に、ペレットの外観を撮影したSEM写真、ペレットの内部構造を35倍の拡大率で撮影したSEM写真、ペレットの内部構造を5000倍の拡大率で撮影したSEM写真である。
また、ガス吸収体7および比較ガス吸収体2について、温度スウィング吸収法で測定した吸収過程でのCO
2吸収量および放散過程でのCO
2放散量を
図12に示す。吸収、放散いずれの過程においても初期の30分程度の吸収、放散速度がカーボンブラックCBの添加により加速されていることが確認された。
【0078】
[3]ガス吸収材料の充填量の検討
合成例2で合成したアミノ基含有高分子粒子2からなるゲル(ゲル粒子の集合体)を、ミートチョッパーにて1.5分目(ホール径4.8mm)、1.3分目(ホール径4.0mm)、1分目(ホール径3.2mm)、7厘目(ホール径2.4mm)および3厘目(ホール径1.1mm)で順次粉砕することにより、粉砕度が異なる各種アミノ基含有高分子粉砕物(ゲル粉砕物)を得た。各粉砕物に、表4に示す配合比で撥水性シリカRY300を添加して混合物を調製し、この混合物を、250mLのプラスチック容器に入れて振り混ぜた後、表面を平らにならして高さを計測した。その結果を表4の太枠内に示す。また、これらの混合物のうち、撥水性シリカRY300の割合を0.50容量%とした混合物の粒度分布を
図13に示し、7厘目で粉砕したアミノ基含有高分子粉砕物に撥水性シリカRY300(0.50容量%)を添加した混合物(ガス吸収材料8)と、7厘目で粉砕したアミノ基含有高分子粉砕物(比較ガス吸収材料3)について、圧力スウィング吸収法で測定した吸収過程でのCO
2吸収量と放散過程でのCO
2放散量を
図14に示す。なお、ここでは10Lのガス吸収材料を測定対象サンプルとして用い、CO
2とN
2の混合ガスおよびN
2ガスの流速を1000mL/分として測定を行った。
図13、14において、「3厘目GP」~「1.5分目GP」は、それぞれ3厘目~1.5分目で粉砕したアミノ基含有高分子粉砕物、「RY300」は撥水性シリカRY300をそれぞれ表す。
【0079】
【0080】
表4に示すように、撥水性シリカRY300の含有率を変えることで混合物の嵩(充填量)が変化し、その配合率を0.50容量%としたときに最も嵩が小さく(充填量が大きく)なった。また、
図14に示すように、この充填量が大きな複合材料(ガス吸収材料8)は、撥水性シリカRY300を含まない比較ガス吸収材料3に比べて、単位質量当たりのCO
2可逆吸収量およびCO
2吸収・放散速度が大きく向上していた。
このことから、微粒子を添加することにより、ガス吸収材料の充填量を上げてCO
2可逆吸収量およびCO
2吸収・放散速度を向上できることがわかった。
なお、以下の実施例9、10で用いるアミノ基含有高分子粉砕物も、この項で作製した各アミノ基含有高分子粉砕物と同様の手順で作製したアミノ基含有高分子粉砕物である。
【0081】
[4]ガス吸収材料の粉砕による効果の検討
(実施例9)アミノ基含有高分子粉砕物と撥水性シリカRY300の混合物をさらに細かく粉砕した粉砕物からなるガス吸収材料9の製造
ミートチョッパーの1.5分目で粉砕したアミノ基含有高分子粉砕物と撥水性シリカRY300を、アミノ基含有高分子粉砕物:撥水性シリカRY300=99.5:0.5の容量比で混合して混合物を得た。この混合物を、遊星型ボールミル装置(フリッチュ社製:P-5)にて直径5mmのジルコニア製ビーズを用い、230rpmで粉砕することにより、粉砕物からなるガス吸収材料9を得た。粉砕物の粒度分布を測定したところ、高分子粒子の大半が100μm未満の粒径であることが確認された。また、粉砕物の水分量は72.45%、そのアミノ基含有高分子粉砕物の水分量は73.17重量%であり、材料に用いたアミノ基含有高分子粒子2の水分量(73.7%)よりも若干減少していた。
【0082】
ガス吸収材料9と、上記のガス吸収材料8について、圧力スウィング吸収法で測定した吸収過程でのCO
2吸収量を
図15に示す。ここでは、10Lのガス吸収材料を測定対象サンプルとして用い、CO
2とN
2の混合ガスおよびN
2ガスの流速を3000mL/分として測定を行った。
図15から、ビーズミルで粉砕したガス吸収材料9は、ビーズミルによる粉砕を行っていないガス吸収材料8に比べてCO
2吸収速度が飛躍的に向上していることがわかる。このことから、ガス吸収材料の粉砕度を上げることにより、そのCO
2可逆吸収性能をより高くできることがわかった。
【0083】
[5]ガス吸収材料へのバインダー噴霧と造粒による効果の検討
(実施例10)アミノ基含有高分子粉砕物と撥水性シリカRY300の混合物を、バインダーを用いて造粒した造粒粒子からなるガス吸収体10の製造
ミートチョッパーの7厘目で粉砕したアミノ基含有高分子粉砕物と、撥水性シリカRY300を、アミノ基含有高分子粉砕物:撥水性シリカRY300=99.8:0.2の容量比(全量1Kg)でパン型造粒機(アズワン社製:DPZ-01R)に投入して混合した。アミノ基含有高分子粒子1を20g/mLの割合で水に溶解して調製したナノ粒子水溶液(400mL)を、造粒機内の混合物にスプレー噴霧しながら加温撹拌することにより造粒を行い、造粒粒子からなるガス吸収体10を得た。
造粒前の混合物の粒子径分布を
図16(a)に示し、造粒粒子(ガス吸収材料11)の粒子径分布を
図16(b)に示す。
図16(a)と(b)の比較から、造粒により粒子径が大きくなり、ガス吸収材料の飛散性が低減することがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明のガス吸収材料は、二酸化炭素等の酸性ガスを高速で吸収・放散することができ、優れたガス可逆吸収性能を示す。そのため、本発明のガス吸収材料を用いることにより、ガスの分離回収プロセスの時間効率が向上し、コストを削減することができる。そのため、本発明は産業上の利用可能性が高い。