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特許7504479造形装置、液柱移動装置、造形方法、液柱移動方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-14
(45)【発行日】2024-06-24
(54)【発明の名称】造形装置、液柱移動装置、造形方法、液柱移動方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/135 20170101AFI20240617BHJP
   B29C 64/268 20170101ALI20240617BHJP
   B29C 64/336 20170101ALI20240617BHJP
   B29C 64/393 20170101ALI20240617BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20240617BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20240617BHJP
   B33Y 40/00 20200101ALI20240617BHJP
   B33Y 50/02 20150101ALI20240617BHJP
【FI】
B29C64/135
B29C64/268
B29C64/336
B29C64/393
B33Y10/00
B33Y30/00
B33Y40/00
B33Y50/02
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021558422
(86)(22)【出願日】2020-11-18
(86)【国際出願番号】 JP2020042987
(87)【国際公開番号】W WO2021100755
(87)【国際公開日】2021-05-27
【審査請求日】2023-09-13
(31)【優先権主張番号】P 2019208227
(32)【優先日】2019-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和元年度、国立研究開発法人科学技術振興機構「光駆動ドロプレット・プリンティングの開発と応用」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】504182255
【氏名又は名称】国立大学法人横浜国立大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丸尾 昭二
(72)【発明者】
【氏名】田所 寛進
(72)【発明者】
【氏名】平田 穂高
【審査官】岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-504016(JP,A)
【文献】国際公開第2019/156170(WO,A1)
【文献】特開2002-090662(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/135
B29C 64/268
B29C 64/336
B29C 64/393
B33Y 30/00
B33Y 10/00
B33Y 50/02
B33Y 40/00
B33Y 70/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの基板に挟まれた液柱を移動させる移動処理部と、
所定の造形領域内かつ前記液柱内で造形用ビームが焦点を結ぶように前記造形用ビームを照射して前記液柱を部分的に固体に変化させることで、2つの前記基板のうち前記造形用ビームの照射口から遠い側の基板に固形物が付着するように造形を行う造形部と、
前記造形部が造形を行うときに、前記固形物が付着する前記基板が前記造形用ビームの照射口から離れるように、前記基板の移動を制御する基板制御部と、
を備える造形装置。
【請求項2】
前記液柱に磁性粒子が混入されている
請求項1に記載の造形装置。
【請求項3】
前記移動処理部は、磁石を移動させることで前記液柱を移動させる
請求項1又は請求項2に記載の造形装置。
【請求項4】
前記移動処理部は、電磁波によるポイントヒータを用いて前記液柱に温度勾配を生じさせることで前記液柱を移動させる
請求項1に記載の造形装置。
【請求項9】
2つの基板に挟まれた液柱を移動させることと、
所定の造形領域内かつ前記液柱内で造形用ビームが焦点を結ぶように前記造形用ビームを照射して前記液柱を部分的に固体に変化させることで、2つの前記基板のうち前記造形用ビームの照射口から遠い側の基板に固形物が付着するように造形を行うことと、
前記造形を行うときに、前記固形物が付着する前記基板が前記造形用ビームの照射口から離れるように、前記基板の移動を制御することと、
を含む造形方法。
【請求項13】
コンピュータに、
2つの基板に挟まれた液柱を移動させることと、
所定の造形領域内かつ前記液柱内で造形用ビームが焦点を結ぶように前記造形用ビームを照射して前記液柱を部分的に固体に変化させることで、2つの前記基板のうち前記造形用ビームの照射口から遠い側の基板に固形物が付着するように造形を行うことと、
前記造形を行うときに、前記固形物が付着する前記基板が前記造形用ビームの照射口から離れるように、前記基板の移動を制御することと、
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、造形装置、液柱移動装置、造形方法、液柱移動方法およびプログラムに関する。
本願は、2019年11月18日に、日本に出願された特願2019-208227号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
3次元の目的物を造形可能な方法の1つに光造形(Stereolithography)がある。光造形では、液体の材料に紫外線レーザ光等の光を当てて材料を部分的に固体に変化させることで目的物を造形する。
光造形に関連して、非特許文献1には、光還元(Photoreduction)にて銀の微細構造を造形する方法が示されている。非特許文献1に記載の方法では、銀イオンを含む水溶液にレーザ光を照射して銀を目的の形状に凝縮させたのち、水溶液を除去する。
【0003】
また、非特許文献2には、複数の材料を組み合わせた光造形を行う実験例が示されている。非特許文献2に記載の実験例では、アクリル樹脂とメタクリル樹脂とをそれぞれ光重合(Photopolymerization)にて造形した後、磁性材料を無電解めっきしている。その結果、アクリル樹脂およびメタクリル樹脂のうち、アクリル樹脂のみが選択的にめっきされている。
【0004】
また、非特許文献3では、マイクロ流路を使って、アクリル樹脂などを造形部に導入し、バルブによって材料を切り替えて、複数の樹脂材料で造形を行う方法が用いられている。
このように、複数種類の材料を用いて光造形を行うことで、多様な特性を有する目的物を造形することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】Yao-Yu Cao, Nobuyuki Takeyasu, Takuo Tanaka, Xuan-Ming Duan, and Satoshi Kawata、"3D Metallic Nanostructure Fabrication by Surfactant-Assisted Multiphoton-Induced Reduction"、Small、2009年、第5巻、第10号、p.1144-1148
【文献】Tommaso Zandrini, Shuhei Taniguchi and Shoji Maruo、"Magnetically Driven Micromachines Created by Two-Photon Microfabrication and Selective Electroless Magnetite Plating for Lab-on-a-Chip Applications"、Micromachines、2017年、第8巻、第35号、p.1-8
【文献】Frederik Mayer, Stefan Richter, Johann Westhauser, Eva Blasco, Christopher Barner-Kowollik and Martin Wegener、"Multimaterial 3D laser microprinting using an integrated microfluidic system"、Science Advances、2019年2月、第5巻、第2号、p.1-7
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば2光子マイクロ光造形法などマイクロ光造形法の一部では、複数種類の樹脂(光硬化性樹脂)を用いて一体構造の物を生成する。
複数種類の樹脂を用いる方法の1つとして、使用する樹脂を交換する際に、一旦、ガラス基板を造形装置から取り外して洗浄する方法がある。例えば、作業者が造形装置を用いて、1つ目の樹脂をガラス基板上に滴下し、樹脂の液滴の内部に近赤外パルスレーザなどのレーザを集光及び走査して硬化させることで造形を行う。1つ目の樹脂を用いた造形を完了すると、作業者は、ガラス基板を造形装置から取り外して未硬化の樹脂を洗浄する。そして、作業者は、ガラス基板を造形装置に再びセットし、造形装置を用いて新たな2つ目の樹脂を滴下して造形を再開する。
しかしながらこの方法では、取り出したガラス基板を造形装置に再設置する際、1つ目の樹脂による造形物を高精度に位置決めする必要がある。造形物の位置が、例えばガラス基板取り外し前の造形物の位置など所定の位置からずれると、所望の物を生成することができなくなる。
これに対し、例えば非特許文献3に記載のマイクロ流路のように、基板に流路を設けておき、樹脂を順番に造形部に流し込むことで、ガラス基板を取り外す必要なしに樹脂を切り替えて造形を行うことが考えられる。造形後の未硬化の樹脂については、造形部の下に廃棄用のバルブを設けておき、バルブを開いて未硬化の樹脂を造形部から排出することが考えられる。
しかしながらこの方法では、樹脂の粘度が高い場合、樹脂の移動が困難なことが考えられる。また、この方法では、樹脂の交換の度に未硬化の樹脂を廃棄するので、同じ種類の樹脂を繰り返し使用する場合でも、造形後に未硬化だった樹脂を再利用することはできない。
【0007】
本発明の目的の一つは、材料を効率的に使用することができる造形装置、液柱移動装置、造形方法、液柱移動方法およびプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1態様によれば、造形装置は、2つの基板に挟まれた液柱を移動させる移動処理部と、所定の造形領域内かつ前記液柱内で造形用ビームが焦点を結ぶように前記造形用ビームを照射して前記液柱を部分的に固体に変化させることで、2つの前記基板のうち前記造形用ビームの照射口から遠い側の基板に固形物が付着するように造形を行う造形部と、前記造形部が造形を行うときに、前記固形物が付着する前記基板が前記造形用ビームの照射口から離れるように、前記基板の移動を制御する基板制御部と、を備える。
【0009】
前記液柱に磁性粒子が混入されていてもよい。
【0010】
前記移動処理部は、磁石を移動させることで前記液柱を移動させるようにしてもよい。
【0011】
前記移動処理部は、電磁波によるポイントヒータを用いて前記液柱に温度勾配を生じさせることで前記液柱を移動させるようにしてもよい。
【0016】
本発明の第2態様によれば、造形方法は、2つの基板に挟まれた液柱を移動させることと、所定の造形領域内かつ前記液柱内で造形用ビームが焦点を結ぶように前記造形用ビームを照射して前記液柱を部分的に固体に変化させることで、2つの前記基板のうち前記造形用ビームの照射口から遠い側の基板に固形物が付着するように造形を行うことと、前記造形を行うときに、前記固形物が付着する前記基板が前記造形用ビームの照射口から離れるように、前記基板の移動を制御することと、を含む。
【0020】
本発明の第3態様によれば、プログラムは、コンピュータに、2つの基板に挟まれた液柱を移動させることと、所定の造形領域内かつ前記液柱内で造形用ビームが焦点を結ぶように前記造形用ビームを照射して前記液柱を部分的に固体に変化させることで、2つの前記基板のうち前記造形用ビームの照射口から遠い側の基板に固形物が付着するように造形を行うことと、前記造形を行うときに、前記固形物が付着する前記基板が前記造形用ビームの照射口から離れるように、前記基板の移動を制御することと、を実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0024】
本発明の実施形態によれば、材料を効率的に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】第1の実施形態に係る造形システムの構成例を示す図である。
図2】第1の実施形態に係る造形部がレーザ光の焦点を結ばせる位置の例を示す図である。
図3】第1の実施形態に係る液柱の磁気駆動の例を示す図である。
図4】第1の実施形態に係る造形部のレーザ光発射部分と液柱との位置関係の例を示す図である。
図5】第1の実施形態に係る観察部の構成例を示す図である。
図6】第1の実施形態に係る造形システムの動作例を示すフローチャートである。
図7】第1の実施形態に係る造形用ビームの角度と焦点の位置との関係の例を示す図である。
図8】第1の実施形態に係る鉄粉の混入量と液柱の移動速度との関係の実験例を示す図である。
図9】第1の実施形態に係る造形システムを用いて造形した固形物の第一例を示す図である。
図10】第1の実施形態に係る造形システムを用いて造形した固形物の第二例を示す図である。
図11】第2の実施形態に係る移動処理部の例を示す図である。
図12】第2の実施形態に係る移動処理部が照射する加熱用ビームの形状の例を示す図である。
図13】第2の実施形態に係る加熱用ビームの照射によって生じる温度勾配の例を示す図である。
図14】第2の実施形態に係る液柱における力関係の第一例を示す図である。
図15】第2の実施形態に係る液柱における力関係の第二例を示す図である。
図16】第3の実施形態に係る造形システムの構成例を示す図である。
図17】第3の実施形態に係る造形部からのレーザ光の焦点の位置の例を示す図である。
図18】第4の実施形態に係る基板810と液滴との関係の例を示す図である。
図19】少なくとも1つの実施形態に係るコンピュータの構成例を示す概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を説明するが、以下の実施形態は請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0027】
〈第1の実施形態〉
(第1の実施形態における造形システムの構成)
図1は、第1の実施形態に係る造形システムの構成例を示す図である。
図1に示す構成で、造形システム1は、造形装置100と、制御装置200とを備える。造形装置100は、造形部110と、移動処理部120と、観察部150とを備える。制御装置200は、表示部210と、操作入力部220と、記憶部280と、処理部290とを備える。
【0028】
造形システム1は、液柱を部分的に固体に変化させて目的物を生成する。液柱の例として、液体が2つの基板により挟まれて柱の形状になったものが挙げられる。また、液柱は磁性を有している。例えば、磁性を有していない液体に鉄粉が混入された混合物が液柱の形状になっていてもよい。鉄粉は磁性粒子の例に該当する。
造形装置100は、制御装置200の制御に従って、目的物の生成を実行する装置である。特に、造形装置100は、1つ以上の材料それぞれの液柱を部分的に固体に変化させることで目的物を造形する。ここでいう造形は、形のあるものを作ることである。
【0029】
造形部110は、造形領域内で液柱を部分的に固体に変化させることで造形を行う。具体的には、液柱にレーザ光を照射し液柱内にレーザ光の焦点を結ばせることで、焦点の位置で液柱の一部を固体に変化させる。ここでいう造形領域は、造形部110が材料を固体に変化可能な領域である。具体的には、造形領域は、造形部110がレーザ光の焦点を結ばせることができる領域である。
レーザ光を単にレーザとも称する。
【0030】
以下では、液柱を成す材料が光硬化性樹脂であり、造形部110が、光造形にて光硬化性樹脂を液体から固体に硬化させる場合を例に説明する。
ただし、造形部110が造形を行う方法は、液柱を部分的に固体に変化させることができる方法であればよく、特定の方法に限定されない。例えば、造形部110が造形を行う方法は、光重合(Photopolymerization)、光架橋(Photocrosslink)、光還元(Photoreduction)、または、光凝集(Photo-induced aggregation)のいずれか、あるいはこれらの組み合わせであってもよい。
【0031】
また、造形に用いるレーザ光は、材料を硬化可能なレーザ光であればよく、特定の波長のレーザ光に限定されない。例えば、造形部110が紫外線レーザ光を用いるようにしてもよいし、青色レーザ光を用いるようにしてもよい。あるいは、造形部110が、近赤外フェムト秒パルスレーザ(Femtosecond-pulse Laser)光を用いて2光子吸収による2光子造形法にて造形を行うようにしてもよい。
【0032】
図2は、造形部110がレーザ光の焦点を結ばせる位置の例を示す図である。図2では、造形部110のレーザ光発射部分が示されている。基板810は、目的物造形用の基板として用いられているガラス板である。造形装置100は、基板810として、基板810Aと基板810Bとを備える。基板810Aと基板810Bは液柱820を挟んでいる。造形部110が照射するレーザ光を造形用ビームB1とも称する。
基板810が造形装置100の一部として構成されていてもよいし、造形装置100とは別の物として構成されていてもよい。
図2は、造形部110、移動処理部120、基板810および液柱820を横(水平方向)から見た例を示している。移動処理部120は、磁性体121を備える。磁性体121の例として、永久磁石、電磁石、または、ネオジム磁石等が挙げられる。磁性体を説明する場合に単に磁石とも称する。
【0033】
図2に示す造形部110は、造形用ビームB1を透過させる液柱820に対し、液柱820内に焦点を結ぶように造形用ビームB1を基板810Aの下から照射している。造形部110が照射した造形用ビームB1は、点P11で焦点を結んでいる。これにより、液柱820のうち点P11の部分が液体から固体に変化する。
【0034】
造形部110のレーザ光発射部分は図2の前後および左右に移動可能である。図2の前後および左右は、水平方向であってもよい。また、造形部110は、造形用ビームB1の焦点の位置を図2の上下に移動させることができる。図2の上下は、垂直方向であってもよい。したがって、造形部110は、造形用ビームB1の焦点の位置を図2の上下左右および前後へと、三次元的に移動させることができる。
造形部110が、液柱820内で造形用ビームB1の焦点位置を目的物の形状に沿って移動させることで、材料を目的物の形状に加工することができる。
【0035】
造形部110が、レーザ光発射部分を移動させることに加えて、あるいは代えて、ガルバノミラーを用いて造形用ビームB1の焦点位置を変化させるようにしてもよい。さらには、造形部110が、上記の方法に加えて、あるいは代えて、基板810を移動させること、または、レーザ光を集光させるレンズを光軸方向に移動させること、あるいはこれらの組み合わせにより、液柱820における造形用ビームB1の焦点位置を変化させるようにしてもよい。
【0036】
また、図2に示すように、造形部110が基板810の下側から造形用ビームB1を照射させることで、造形用ビームB1が焦点を結ぶ位置は、表面張力による液柱820の形状に応じた屈折の影響を受けない。この点で、造形システム1は、造形用ビームB1の焦点の位置合わせを高精度に行うことができる。
【0037】
鉄粉900は液柱820に混入され、磁性体121の磁力により磁性体121に近い位置に寄せられる。また、図2に示す例では、磁性体121の磁性によって複数の鉄粉900が集まり塊を形成している。鉄粉900の大きさおよび形状について、造形システム1を用いて造形しようとする物の大きさおよび形状に応じて、任意の大きさおよび形状の鉄粉900を用いることができる。また、鉄粉900の量について、液柱820を構成する液体の表面張力および粘性摩擦力などに応じて、任意の量の鉄粉900を用いることができる。
【0038】
図2の例では、造形部110が基板810Aの下に位置し、移動処理部120は基板810Bの上に位置するが、この位置関係に限定されない。例えば、造形部110を基板810Bの上に位置し、移動処理部120を基板810Aの下に位置するようにしてもよい。
また、造形部110及び移動処理部120を基板810Aの下に設けるようにしてもよい。この場合、鉄粉900に造形用ビームB1が当たらないように、造形部110と移動処理部120とを離れた位置に設けるようにしてもよい。
あるいは、造形部110及び移動処理部120を基板810Bの上に設けるようにしてもよい。この場合も、鉄粉900に造形用ビームB1が当たらないように、造形部110と移動処理部120とを離れた位置に設けるようにしてもよい。
【0039】
図3は、液柱820の磁気駆動の例を示す図である。
図3に示す例で、基板810Aと基板810Bに挟まれた樹脂の液柱820に、鉄粉900が混入されている。移動処理部120が、液柱820に磁性体121を近づけると、液柱820の内部の鉄粉900が磁性を帯びて磁性体121に引き寄せられる。
移動処理部120が磁性体121をA方向に移動させると、図3に示すように、鉄粉900が液柱820の側面を押し出して液柱820全体を力Fで引っ張る。力Fが、液柱820の粘性摩擦力であるFdrag1及びFdrag2と、表面張力であるγs1、γs2、γs3、および、γs4との合力よりも大きくなった場合、液柱820は、磁性体121の移動方向へ移動する。すなわち、FがFdrag1と、Fdrag2と、γs1と、γs2と、γs3と、γs4との合力より大きい場合、液柱820は、Fと同じ方向であるA方向に移動する。造形システム1は、上記のような駆動原理を用いることで、磁性体121を操作して液柱820を例えば水平方向に動かすことができる。
【0040】
図4は、造形部110のレーザ光発射部分と液柱820との位置関係の例を示す図である。図4は、造形部110のレーザ光発射部分を斜め上から見た例を示している。
図4の例で、基板810Aが造形部110のレーザ光発射部分の上に位置し、基板810Aと基板810Bに材料の異なる4つの液柱820が挟まれている。
ここでの4つの液柱820は、第1材料の液柱820-11と、第2材料の液柱820-12と、第3材料の液柱820-13と、第4材料の液柱820-14と、である。第1材料と、第2材料と、第3材料と、第4材料とは、同じ成分の材料であってもよいし、それぞれ異なる成分の材料であってもよい。
図4に示す例では、第1材料の液柱820-11と、第3材料の液柱820-13と、第4材料の液柱820-14は、光硬化性樹脂の液柱820であり、第2材料の液柱820-12は、洗浄液である。この洗浄液には、基板810Aと基板810Bとを洗浄できる成分が含まれている。
【0041】
液柱820-11には鉄粉900-11が混入されており、液柱820-12には鉄粉900-12が混入されている。また、液柱820-13には鉄粉900-13が混入されており、液柱820-14には鉄粉900-14が混入されている。
図4に示す状態では、鉄粉900-12と、鉄粉900-13と、鉄粉900-14とは、何れも磁性体121から遠い位置に存在し、磁性体121の磁力の影響が小さい。これにより、鉄粉900-12と、鉄粉900-13と、鉄粉900-14との何れも、重力により液柱820の下方(底面またはその付近)に沈殿している。
一方、鉄粉900-11は、磁性体121の磁力の影響を受けて、磁性体121に近い方向に寄せられている。
【0042】
磁性体121は、方向C1または方向C2、あるいはこれらの組み合わせの方向移動することで、磁力により鉄粉900を動かす。磁性体121は、鉄粉900を移動させることで、その鉄粉900が混入されている液柱820を移動させる。
【0043】
液柱820のうち第1材料の液柱820-11は、造形部110のレーザ光発射部分の上に位置している。造形部110が造形用ビームB1を照射して第1材料の液柱820-11内に焦点を結ばせることで、液柱820-11のうち焦点の部分が液体から固体に変化し、固形物840が生成される。
【0044】
次に、造形システム1の動作の例をについて説明する。
造形システム1は、磁性体121を用いて、液柱820-11をDの位置から造形領域である造形部110の上まで移動させている。そして、造形システム1は、造形領域で液柱820-11の一部を液体から固体に変化させ、3次元モデルの一部である固形物840を造形している。
造形システム1が、磁性体121をDの位置から造形部110の上まで動かすことで、液柱820-11に混入されている鉄粉900-11が、磁性体121の磁力によってDの位置から造形部110の上まで移動する。鉄粉900-11がDの位置から造形部110の上まで移動することで、鉄粉900-11が混入されている液柱820-11も、鉄粉900-11に引っ張られて位置Dから造形部110の上まで移動する。
【0045】
造形システム1は、固形物840を造形した後、残った未硬化の液柱820-11を造形領域である造形部110の上からDの位置まで、磁性体121を用いて移動させる。次に、造形システム1は、洗浄液の液柱820-12を造形領域である造形部110の上まで、磁性体121を用いて移動させる。この洗浄液の移動により、造形システム1は、固形物840に残留した液体の樹脂を洗浄する。液柱820-12にも鉄粉900-12が混入されているため、造形システム1は、磁性体121を用いて、液柱820-11の場合と同様に移動させることができる。
【0046】
上記により固形物840が洗浄された後、造形システム1は、磁性体121を用いて洗浄液の液柱820-12を他の場所に移動させる。例えば、造形システム1は、洗浄液の液柱820-12を図4に示される元の位置に移動させる。
その後、造形システム1は、新たな樹脂である液柱820-13を造形領域である造形部110の上まで磁性体121を用いて移動させ、固形物840の造形を再開する。
造形システム1は、上記の工程を繰り返すことで、3次元モデルの固形物840を複数の樹脂で一体造形する。
造形システム1によれば、途中で基板810を造形装置100から取外し、未効果の樹脂を洗浄し、新たな樹脂を滴下して造形を再開するような接触工程を実行する必要無しに、非接触で樹脂を置換できる。ここでいう非接触は、作業者である造形システム1のユーザが、基板810に直接触れないことである。これにより、造形システム1では、造形物である固形物840が位置ずれすることなく、未硬化樹脂を再利用しながらマルチマテリアル造形を行うことができる。
【0047】
造形システム1が、上記で説明した2光子造形法を用いる場合、造形物である固形物840が基板810の造形領域に留まる必要がある。一方、図4に示すように、造形システム1が複数の液柱820を用いる場合、複数の液柱820の混合を防ぐため、液柱820が基板810の造形領域に残留しないことが必要である。
そこで、基板810に対して、固形物840が造形領域に留まり、液柱820が基板810の造形領域に残留せずに移動するような、表面処理を施しておくようにしてもよい。その場合、基板810の表面上の位置に応じて複数種類の表面処理を使い分けるようにしてもよい。例えば、基板810Aの表面中央付近のうち、レーザ照射によって固形物840が形成される領域の近傍の表面には、液柱820の材料である光硬化性樹脂との接着性が高いメタクリレート基処理を施しておくようにしてもよい。一方、基板810Aの表面のうちその他の領域、および、磁性体121により液柱820を動かす基板810Bの表面には、光硬化性樹脂との接着性が低いフッ素コート処理を施しておくようにしてもよい。このように表面処理を行うことで、固形物840と基板810との接着と、液柱820の移動とを両立させることができる。
【0048】
観察部150は、目的物の画像を撮影する。
図5は、観察部150の構成例を示す図である。図5の例で、観察部150は、観察光光源151と、ビームスプリッタ152と、観察用レンズ153と、CCDカメラ154と、表示装置155とを備える。
観察光光源151は、目的物を撮影するための照明光B13を照射する。ここでの目的物は、造形途中のものであってもよい。照明光B13は、目的物に照射される。照明光B13の一部が反射または吸収された後、残りの光が造形部110のレーザ光発射部分を経由してビームスプリッタ152へ入射される。
【0049】
図5の例で、観察光光源151は、造形領域の上方に位置している。
ビームスプリッタ152は、ハーフミラーを備え、照明光B13を反射させる。ビームスプリッタ152は、照明光B13の入射だけでなく造形用ビームB1の入射も受ける。ビームスプリッタ152は、造形用ビームB1を通過させ、造形部110のレーザ光発射部分へ向けて進ませる。照明光B13の反射により、ビームスプリッタ152は、造形用ビームB1と同じ経路を造形用ビームB1と逆向きに通過してきた照明光B13を、造形用ビームB1の経路の向きと異なる向きに転向させる。
【0050】
観察用レンズ153は、照明光B13がCCDカメラ154の撮影素子の位置で像を結ぶように照明光B13を屈折させる。
CCDカメラ154は、照明光B13を受光して光電変換することで、目的物の画像データを生成する。
表示装置155は、例えば液晶パネルまたはLEDパネル等の表示画面を有し、目的物の画像を表示する。具体的には、表示装置155は、CCDカメラが生成した目的物の画像データの入力を受け、この画像データが示す画像を表示する。
ただし、観察部150の構成および配置は図5に示すものに限定されない。例えば、観察部150が、目的物を上方向から撮影するようにしてもよいし、斜め上方向または斜め下方向から撮影するようにしてもよい。
【0051】
制御装置200は、造形装置100を制御して目的物を生成させる。例えば、制御装置200は、造形部110が造形用ビームB1を照射するタイミング、および、造形用ビームB1の焦点の位置を制御する。また、制御装置200は、移動処理部120の位置を制御することにより、移動処理部120が備える磁性体121の位置を制御する。
また、制御装置200は、造形システム1のユーザインタフェースとして機能する。 制御装置200は、例えばパソコン(Personal Computer)またはワークステーション(Workstation)等のコンピュータを用いて構成される。
【0052】
表示部210は、例えば液晶パネルまたはLEDパネル等の表示画面を有し、各種画像を表示する。特に、表示部210は、造形システム1に関する情報をユーザに提示する。
表示部210は、表示装置155を用いて構成されていてもよいし、表示装置155とは別に構成されていてもよい。
操作入力部220は、例えばキーボードおよびマウス等の入力デバイスを備え、ユーザ操作を受ける。特に、操作入力部220は、造形システム1に関する設定を行うユーザ操作を受ける。
【0053】
記憶部280は、各種データを記憶する。記憶部280は、制御装置200が備える記憶デバイスを用いて構成される。
処理部290は、制御装置200の各部を制御して各種処理を実行する。処理部290の機能は、制御装置200が備えるCPU(Central Processing Unit、中央処理装置)が、記憶部280からプログラムを読み出して実行することで実行される。
【0054】
制御装置200が、予め設定されたプログラム等に基づいて自動的に造形装置100を制御するようにしてもよい。あるいは、ユーザがオンラインで制御装置200に指示を入力し、制御装置200がユーザの指示に従って造形装置100を制御するようにしてもよい。
図5において鉄粉900は図示しないが、鉄粉900は、液柱820に混入されている。
造形装置100と制御装置200とにおける、造形装置100の各部の制御のための処理の分担は、特定のものに限定されない。例えば、造形装置100の各部の制御を全て制御装置200が行うようにしてもよい。あるいは、造形装置100と制御装置200とが共同して造形装置100の各部の制御を行うようにしてもよい。例えば、造形装置100の各部の制御のうち、下位の制御を造形装置100自らが行い、上位の制御を制御装置200が行うようにしてもよい。あるいは、造形装置100と制御装置200とが一体的に構成されるなど、造形装置100自らが造形装置100の各部の制御を行うようにしてもよい。
【0055】
次に、図6を参照して造形システム1の動作について説明する。
図6は、造形システム1の動作例を示すフローチャートである。図6は、制御装置200が造形装置100を制御して目的物を生成させる処理手順の例を示す。
図6の処理で、制御装置200は、造形部110を制御して造形処理を行わせる(ステップS101)。造形部110は、制御装置200の制御に従って造形領域内の液柱820に造形用ビームB1を照射して樹脂の液柱820内で造形用ビームB1の焦点を結ばせる。焦点の位置で材料が液体から固体に変化する。
【0056】
次に、制御装置200は、移動処理部120を制御して樹脂の液柱820を造形領域外(退避領域)へ退避させる(ステップS102)。移動処理部120は、制御装置200の制御に従って造形領域内の液柱820を造形領域外へ移動させる。
【0057】
次に、制御装置200は、移動処理部120を制御して洗浄液の液柱820を移動させる(ステップS103)。これにより、造形システム1は、造形領域内にある固体の固形物840を洗浄する。
【0058】
次に、制御装置200は、移動処理部120を制御して洗浄液の液柱820を退避させる(ステップS104)。
次に、造形システム1のユーザは、目的物が完成したか否かを判定する(ステップS105)。目的物が完成したと判定した場合(ステップS105:YES)、図6の処理を終了させる。
【0059】
一方、目的物が完成していないと判定された場合(ステップS105:NO)、制御装置200は、移動処理部120を制御して、次に用いられる樹脂の液柱820を造形領域へ移動させる(ステップS106)。移動処理部120は、制御装置200の制御に従って次に用いられる樹脂の液柱820を造形領域外から造形領域内へ移動させる。
ステップS106の後、処理がステップS101へ戻る。
【0060】
造形部110のレーザ光発射部分が造形用ビームB1を発射する角度を変化させるようにしてもよい。
【0061】
図7は、造形用ビームB1の角度と焦点の位置との関係の例を示す。
図7の例で、造形部110のレーザ光発射部分は対物レンズとして機能し、液柱820と反対側(図7の下側)から入射した造形用ビームB1を屈折させて液柱820の側(図7の上側)へ照射する。
造形部110のレーザ光発射部分への造形用ビームB1の入射角をθで示す。造形部110のレーザ光発射部分からの造形用ビームB1の出射角をθで示す。出射角θは入射角θに応じて変化する。出射角θの変化に伴って造形用ビームB1が焦点を結ぶ点P11の位置も変化する。したがって、造形部110は、造形用ビームB1のレーザ光発射部分への入射角θを変化させることで、レーザ光発射部分の位置、基板810の位置の何れも変化させる必要なしに、造形用ビームB1が焦点を結ぶ位置を変化させることができる。
入射角θを変化させる方法として、例えば、造形用ビームB1の光源と造形部110のレーザ光発射部分との間にミラーを設け、ミラーの向きを変化させる方法を用いることができる。
【0062】
次に、異なる材料からなる液柱820についての、鉄粉900の混入量と液柱820の移動速度との関係の実験例について説明する。
図8は、鉄粉900の混入量と液柱820の移動速度との関係の例を示す図である。図8は、異なる材料からなる液柱820について、鉄粉900の混入量と液柱820が移動可能な上限速度との関係の実験例を示している。図8のグラフの横軸は、鉄粉900の混入量を示す。縦軸は、液柱820の移動速度を示す。
図8に示す実験例では、フッ素コート処理したカバーガラスを基板810Aおよび基板810Bとして使用した。液柱820の体積を6マイクロリットル(μL)とし、基板810Aと基板810Bとの距離を1ミリメートル(mm)とした。液柱820の体積は、液柱820に混入された鉄粉900の量を含む。
使用した液柱820の材料の種類は、純水と、エタノールと、低粘性の光硬化性樹脂と、高粘性の光硬化性樹脂との計4種類である。純水と、エタノールと、低粘性の光硬化性樹脂と、高粘性の光硬化性樹脂とを表す記号として、それぞれE、F、G、Hを用いる。
表面張力の比較用として純水EとエタノールFとを用いた。粘度の比較用として低粘性樹脂Gと高粘性樹脂Hとを用いた。また、磁性体121として磁束密度が280ミリテスラ(mT)のネオジム磁石を用いた。
【0063】
まず、液柱820への鉄粉900の混入量5グラム毎リットル(g/L)、10グラム毎リットル、20グラム毎リットル、30グラム毎リットルのそれぞれについて、液柱820から鉄粉900が分離しない程度で移動可能な上限速度を調べた。その結果、図8に示すように、いずれの材料も鉄粉900の混入量を増加させると、液柱820の移動可能な上限速度が大きくなることがわかった。
また、表面張力の違いに関して、鉄粉900の混入量が約24グラム毎リットル以下の場合は、エタノールFのほうが移動速度が大きく、それよりも多い場合は純水Eのほうが移動速度が大きい。鉄粉900の混入量が比較的少ない場合、純水EのほうがエタノールFよりも表面張力が大きく、液柱820の変形によって生じた後退角の表面張力γs1図3参照)が大きくなることで動きにくくなると考えられる。一方、鉄粉900の量が比較的多い場合、液柱820にかかる磁力に比べて表面張力γs1が小さいため、純水Eのほうが速く移動できると考えられる。
粘度の違いに関しては、鉄粉900の量にかかわらず高粘性樹脂Hのほうが低粘性樹脂Gよりも移動速度が小さい。これは、粘度が大きいため粘性抵抗が大きく動きにくいものと考えられる。
【0064】
以下、造形システム1を用いて造形した固形物840の例を説明する。以下に説明する図9図10に係る一例は、2種類の光硬化性樹脂(アクリレート系樹脂、メタクリレート系樹脂)の液柱820と、洗浄液の液柱820とを使用した液柱820の磁気駆動によるマルチマテリアル造形の実証である。移動に使用した樹脂の量は6マイクロリットルであり、鉄粉900の混入量は23グラム毎リットルである。
【0065】
図9は、造形システム1を用いて造形した固形物840の第一例を示す図である。
図9に示す例では、1行目のYNUモデルM1と3行目のYNUモデルM3とを無色のアクリレート系樹脂で造形し、2行目のYNUモデルM2を赤色に染色したメタクリレート系樹脂で造形した。この実験結果より、同一平面内で異なる樹脂材料を使用して造形できることを実証した。
【0066】
図10は、造形システム1を用いて造形した固形物840の第二例を示す図である。
図10に示す例では、3次元微小構造物として、4段のピラミッドモデルを造形した。樹脂の置換を3回行い、赤色に染色したメタクリレート系樹脂によるM4の部分と、無色のアクリレート系樹脂によるM5の部分とを、樹脂を交互に入れ換えて造形した。この実験結果から、本手法によって3D構造体でもマルチマテリアル造形が可能であることを実証した。
【0067】
上記の実施形態で説明した移動処理部120を備える造形装置100は、液柱移動装置の例に該当する。
【0068】
(第1の実施形態における効果)
第1の実施形態に係る造形装置100は、2つの基板810に挟まれた液柱820を移動させる移動処理部120と、所定の造形領域内で液柱820を部分的に固体に変化させることで造形を行う造形部110と、を備える。
【0069】
造形装置100は、2つの基板810に挟まれた液柱820を移動処理できる。これにより、造形装置100のユーザは、造形物の位置ずれや樹脂の廃棄、材料同士の混合が少なく、簡便に液柱820を移動でき、低コストで液柱820による固形物840を生成できる。
【0070】
また、液柱820に磁性粒子が混入されている。
これにより、造形装置100のユーザは、磁性を有する物を用いて、液柱に混入されている磁性粒子を移動させることができ、簡便に液柱820を移動させることができる。また、熱による移動ではないため、揮発しやすい材料の液柱820や水系の液柱820、生体高分子の液柱820についても移動させることができる。
【0071】
また、移動処理部120は、磁性体121を移動させることで液柱820を移動させる。
これにより、造形装置100のユーザは、磁性体121を用いて、簡便に液柱820を移動させることができる。
【0072】
〈第2の実施形態〉
(第2の実施形態における造形システムの構成)
移動処理部120が液柱820を移動させる方法は、上述した磁性体121を用いる方法に限定されない。第2の実施形態では、移動処理部120がポイントヒータを用いて液柱820を移動させる場合について説明する。
このように、第2の実施形態では、移動処理部120が液柱820を移動させる方法が第1の実施形態の場合と異なる。これに伴い、第2の実施形態では液柱820が磁性を有している必要は無い。第2実施形態では、液柱820に鉄粉が混入されていない場合を例に説明する。
それ以外の点では、第2の実施形態に係る造形システム1は、第1の実施形態に係る造形システム1と同様である。
【0073】
図11は、第2の実施形態に係る移動処理部120の例を示す図である。図11に示す例で、移動処理部120は、電磁波によるポイントヒータ130を備える。ポイントヒータ130は、遠赤外線、または、炭素ガスレーザによるレーザ光などの電磁波を用いて液柱820を加熱する。ポイントヒータ130の加熱により液柱820に温度勾配が生じ、液柱820が移動する。
【0074】
ポイントヒータ130は加熱用のレーザを、水平方向における液柱820の周囲を囲むように照射する。これにより、移動処理部120は、液柱820の水平方向の温度について、周辺側のほうが中心側よりも温度が高くなるように温度勾配を生じさせる。ここでいう周辺側は、液柱820の内部のうち、液柱820と外部との境界に、より近い側である。ここでいう中心側は、液柱820の内部のうち、液柱820と外部との境界から、より遠い側である。
この温度勾配により、液柱820の加熱時に、液柱820が水平方向に広がることを防止できる。
【0075】
以下では、水平方向における液柱820の位置関係を説明する場合に、水平方向である旨の記載を省略する場合がある。例えば、水平方向における液柱820の周囲を、単に液柱820の周囲とも称する。水平方向における液柱820の周辺側を、単に液柱820の周辺側とも称する。水平方向における液柱820の中心側を、単に液柱820の中心側とも称する。水平方向における液柱820の広がりを、単に液柱820の広がりとも称する。
また、ポイントヒータ130が照射する電磁波を加熱用ビームとも称する。
【0076】
図12は、移動処理部120が照射する加熱用ビームの形状の例を示す図である。図12の例で、基板810Aの上に液柱820が位置しており、ポイントヒータ130は、この液柱820に向けて加熱用ビームB12を照射している。
ただし、ポイントヒータ130は、加熱用ビームB12を液柱820に直接照射するのではなく、液柱820の周囲に照射している。加熱用ビームB12の内部に空洞(加熱用ビームB12が照射されない部分)が形成されており、この空洞の部分に液柱820が位置している。加熱用ビームB12の空洞は、ポイントヒータ130が照射する加熱用ビームB12の一部をマスク122が遮断することによって形成されている。
図12の例のように、ポイントヒータ130が液柱820の周囲に加熱用ビームB12を照射する場合も、ポイントヒータ130が液柱820に加熱用ビームB12を照射すると表記する。
【0077】
図13は、加熱用ビームB12の照射によって生じる温度勾配の例を示す図である。図13は、図12のようにポイントヒータ130の加熱用ビームB12で照射された液柱820の温度の分布を示す。
図13のグラフの縦軸は、温度を示す。横軸は、液柱820の中心付近を通って液柱820を垂直方向に切る仮想的な断面における水平方向の位置を示す。線Tは、断面における基板810Bおよび液柱820の温度分布を示している。すなわち、線Tは、横軸に示される位置と、基板810Bおよび液柱820の温度との関係を示している。
また、図13では、液柱820を図示することで液柱820の位置が示されている。図12に示されるように、ポイントヒータ130が液柱820の周囲に加熱用ビームB12を照射することで、線Tに示されるように、液柱820の周辺側のほうが中心側よりも温度が高い温度勾配が生じている。
【0078】
ポイントヒータ130は、加熱用ビームB12で液柱820の周囲を囲んだまま加熱用ビームB12を移動させる。これにより、ポイントヒータ130は、液柱820が広がることを防止しながら液柱820を移動させる。この点について図14および図15を参照して説明する。
【0079】
図14は、液柱820における力関係の第一例を示す図である。図14は、ポイントヒータ130が液柱820に加熱用ビームB12を照射しておらず、液柱820が常温の状態での、液柱820における力の関係の例を示す。図14の例で、γは、液柱820における表面張力を示す。γは、固体の表面張力(基板810における表面張力)を示す。γLSは、固液界面張力を示す。θは液柱820の基板810に対する接触角を示す。
【0080】
図14の場合、ヤングの式により、液柱820の内の力が釣り合っており、液柱820は移動しない。
また、ポイントヒータ130が図12の例のように、液柱820の周囲を囲むように加熱用ビームB12を照射して温度勾配を生じさせ、かつ、加熱用ビームB12を動かさない場合も、液柱820内の力が釣り合い、液柱820は移動しない。
この場合、加熱用ビームB12の照射によって液柱820の周辺側の温度が中心側の温度よりも上昇する。このため、液柱820の中心側の表面張力が周辺側の表面張力よりも大きくなり、液柱820には、液柱形状を維持する方向に力が働く。
【0081】
一方、加熱用ビームB12の照射によって、液柱820の全体の温度が上昇する。この温度上昇により、液柱820における表面張力(図14のγ)が小さくなり、液柱820の基板810に対する接触角(角θ)が小さくなり、液柱820が広がる方向に力が働く。この液柱820の温度上昇により液柱820が広がろうとする力と、先に述べた液柱820の中心側の表面張力の増加による液柱820の形状を維持しようとする力との釣り合いがとれたところで、液柱820は、それ以上広がらずに留まる。
【0082】
図15は、液柱820における力関係の第二例を示す図である。図15は、ポイントヒータ130が加熱用ビームB12を動かし、液柱820の端部に温度差が生じた場合の、液柱820における力の関係の例を示す。図15は、ポイントヒータ130が加熱用ビームB12を図15に向かって右側に移動させた場合の例を示しており、液柱820の左右の端部のうち、図15に向かって左側の端部のほうが、向かって右側の端部よりも温度が高くなっている。
比較的温度が低い側(図15に向かって右側)における力を、図14で用いた変数名に「’」を付した変数名で示す。具体的には、γ’は、液柱820における表面張力を示す。γ’は、固体の表面張力(基板810における表面張力)を示す。γ’LSは、固液界面張力を示す。θ’は液柱820の基板810に対する接触角を示す。
【0083】
一方、比較的温度が高い側(図15に向かって左側)における力については、変数名に「’’」を付して示す。具体的には、γ’’は、液柱820における表面張力を示す。γ’’は、固体の表面張力(基板810における表面張力)を示す。γ’’LSは、固液界面張力を示す。θ’’は液柱820の基板810に対する接触角を示す。
図15の例では、高温側の温度Tと低温側の温度T(T>T)との温度差が生じている。この温度差によって、高温側、低温側それぞれで接触角および表面張力が、ポイントヒータ130が加熱用ビームB12を移動させない場合から変化している。
低温側では、接触角θ’が、加熱用ビームB12を移動させない場合よりも大きくなり、液体と気体との間の表面張力γ’の水平方向成分は減少する。
【0084】
すなわち、図14では釣り合っていた力が変化し、固体の表面張力γ’の向きと同じく、図15に向かって右向き(液柱820の高温側の端部から低温側の端部への向き)の力が発生する。一方、高温側では、接触角θ’’が、加熱用ビームB12を移動させない場合よりも小さくなり、液体と気体との間の表面張力γ’’の水平方向成分は増加する。すなわち、図14では釣り合っていた力が変化し、固体の表面張力γ’’の向きと反対に、図15に向かって右向きの力が発生する。
【0085】
低温側と高温側で発生した力は、両方とも向かって右向きとなっているので、両方の力の合力も向かって右向きとなる。液柱820は、このような力を駆動力として図15に向かって右向き(移動処理部120が加熱用ビームB12を動かす向き)に移動する。具体的には、液柱820は、加熱用ビームB12の動きに応じて、加熱用ビームB12の内部の空洞に位置し続けるように移動する。
【0086】
上記の説明においては、液柱820の周囲を囲むように加熱して温度勾配を生じさせる方法を説明しているが、液柱820に対する加熱の態様は、液柱820の周囲を囲むような加熱の態様に限られるものではない。例えば、造形システム1が、炭素ガスレーザを用いて、基板810または液柱820の任意の箇所を加熱することにより、液柱820に温度勾配を生じさせ、液柱820を移動させるようにしてもよい。
【0087】
(第2の実施形態における効果)
第2の実施形態に係る造形装置100の移動処理部120は、電磁波によるポイントヒータ130を用いて液柱820に温度勾配を生じさせることで液柱820を移動させる。
これにより、造形装置100のユーザは、電磁波によるポイントヒータ130のレーザを用いて、液柱820を移動させることができる。
【0088】
〈第3の実施形態〉
(第3の実施形態における造形システムの構成)
以下、第3の実施形態について説明する。第3の実施形態に係る制御装置200は、第1の実施形態に係る制御装置200の構成に加えて、基板制御部230を備える。これにより、第3の実施形態に係る造形システム1は、基板810を上下に移動させることで、固形物840を造形する。
【0089】
図16は、第3の実施形態に係る造形システム1の構成例を示す概略ブロック図である。上記で説明したとおり、第3の実施形態では、制御装置200が基板制御部230を備える。それ以外の点では、第3の実施形態に係る造形システム1は、第1の実施形態に係る造形システム1と同様である。
基板制御部230は、例えば操作入力部220が受け付けるユーザ操作に基づいて、液柱820が基板810に挟まれた状態で、2つの基板810が離れるように制御し、また、2つの基板810が近づくように制御する。
【0090】
図17は、第3の実施形態に係る造形部110からのレーザ光の焦点の位置の例を示す図である。第1の実施形態に係る造形システム1は、基板810Aに固形物840を造形するが、第3の実施形態に係る造形システム1は、図17に示すように上側の基板810Bに固形物840を造形する。
【0091】
図17の例で、造形部110は、造形用ビームB1を基板810Aの側から液柱820内に照射している。この場合、基板810Aにはガラスなど透明な材質を用いる。
一方、基板810Bについては、光を透過させる必要が無い場合は不透明な材質を用いることができる。不透明な材質の例としてセラミックス基板、および、半導体基板を挙げることができるが、これらに限定されない。なお、光を透過させる必要がある場合の例として、図5を参照して説明した、観察部150の観察光光源151からの光を基板810Bの側から照射する場合が挙げられる。
第1の実施形態および第2の実施形態についても、同様である。第2の実施形態については、ポイントヒータ130からの加熱用ビームB12で、基板810Bの液柱820の側の面まで加熱できればよく、基板810Bが加熱用ビームB12を透過させる必要はない。
特に、図17の例のように基板810Bに固形物840を付着させる場合、光を透過させる必要がない点で、加工対象としての基板810Bの材質の選択肢が多様であり、造形システム1をいろいろな用途に用いることができる。例えば、基板810Bとして半導体基板を配置し、この半導体基板に部分的に樹脂を塗布するといった加工を行うことができる。
【0092】
基板制御部230は、基板810Bと接着されている支持台131のアクチュエータに電気信号を送ることにより、基板810Bを上下方向に移動させる。図17の例では、基板制御部230は、支持台131A及び支持台131Bのアクチュエータに、支持台131をZ方向に移動する旨の電気信号を送ることにより、支持台131A及び支持台131BをZ方向に移動させて、基板810BをZ方向に移動させる。図17で、Z方向は上方向を示している。図17の例でも、基板制御部230が、基板810Bを上方向だけでなく下方向にも移動させるようにしてもよい。
【0093】
基板810Bを上下方向に移動させる際、基板810Bと液柱820との粘性により、液柱820は基板810Bに接した状態を維持する。基板810Bを上方向に移動させる場合も、液柱820は基板810Bに接した状態を維持し、液柱820の高さがZ方向に高くなる。
【0094】
造形部110の造形用ビームB1は、作動距離が制限されるため、造形部110により造形できる固形物840の高さには制限がある。ここでいう造形用ビームB1の作動距離は、造形部110のレーザ光発射部分など造形部110の基準の位置から、造形用ビームB1の焦点までの距離である。
しかし、図17に示す第3の実施形態に係る造形システム1のような場合、基板810BをZ方向に動かしながら、造形を行うことができるため、造形システム1のユーザは、造形部110の作動距離の制限を超える高さに係る固形物840を造形することができる。
基板810Bを上方向に動かしながら造形を行う方式を、引き上げ方式とも称する。
【0095】
(第3の実施形態における効果)
第3の実施形態に係る造形装置100は、液柱820が基板810に挟まれた状態で、2つの基板810が離れるように制御する基板制御部230を備える。
これにより、造形システム1のユーザは、基板810Bを動かしながら、造形を行うことができるため、造形部110の作動距離による制約を超える高さの固形物840を造形することができる。
【0096】
第2の実施形態に第3実施形態を適用するようにしてもよい。具体的には、第3の実施形態で説明した引き上げ方式において、第2の実施形態で説明した遠赤外線のリング加熱による液柱移動方法を用いるようにしてもよい。この場合も、上述した第1の実施形態に第3の実施形態を適用する場合と同様の処理手順で、固形物840を造形することができる。第2の実施形態に第3実施形態を適用する場合、第3の実施形態に係る造形システム1は、制御装置200が基板制御部230を備える点以外は、第2の実施形態に係る造形システム1と同様である。
【0097】
〈第4の実施形態〉
(第4の実施形態における造形システムの構成)
造形システム1が、液柱820に代えて液滴の形状の液体を扱うようにしてもよい。第4の実施形態では、この点について説明する。
【0098】
図18は、第4の実施形態に係る基板810と液滴との関係の例を示す図である。図18に示す例では、液体の材料の液滴830が、基板810Aの上に位置している。ここでいう液滴は、表面張力でまとまっている液体のかたまりである。
液体の材料自体は磁性を有しておらず、鉄粉900が混入されている。鉄粉900の混入により、液滴830は磁性を有している。液滴830が磁性を有することで、移動処理部120は磁性体121を移動させることによって液滴830を移動させることができる。
【0099】
図18の例を図2の例と比較すると、図2では、基板810として、液柱820の下側の基板810Aと、液柱820の上側の基板810Bとが設けられている。これに対し、図18では、基板810として、基板810Aのみが設けられており、基板810Bに相当する基板は設けられていない。
【0100】
移動処理部120の位置について、図2の例では、上述したように、移動処理部120が基板810Aの下に位置していてもよいし、基板810Bの上に位置していてもよい。図18の例でも、移動処理部120が基板810Aの下に位置していてもよいし、液滴830よりも上側に位置していてもよい。「液滴830よりも上側」は、移動処理部120が、液滴830の真上に位置していることに限定されず、液滴830の斜め上に位置していてもよいことを意味する。
【0101】
このように、第4の実施形態では、基板810として基板810Aのみが設けられ、基板810Bに相当する基板は設けられない点、および、材料または洗浄剤等の液体が、液柱820ではなく液滴830として形成される点で、第1の実施形態の場合と異なる。
それ以外の点では、第4の実施形態に係る造形システム1は、第1の実施形態に係る造形システム1と同様である。
【0102】
造形部110の位置については、図18の例で、造形部110が基板810の下側から造形用ビームB1を照射させることで、造形用ビームB1は、焦点を結んだ後に液滴830の上面に到達する。したがって、造形用ビームB1が焦点を結ぶ位置は、表面張力による液滴830の形状に応じた屈折の影響を受けない。この点で、造形システム1は、造形用ビームB1の焦点の位置合わせを高精度に行うことができる。
【0103】
ただし、造形部110が液滴830の上側から造形用ビームB1を照射するようにしもよい。これにより、液滴830が不透明な基板810の上面に滴下されている場合など、液滴830が不透明な物の上に位置する場合でも、液滴830に造形用ビームB1を照射させて材料を部分的に固体に変化させることができる。
【0104】
あるいは、第3の実施形態の場合と同様、基板810Bが、基板810Aとの間隔を可変に設けられていてもよい。例えば、図17を参照して説明したのと同様に、支持台171が基板810Bを支持していてもよい。そして、基板制御部230が、支持台171を上下させることで、基板810Bを上下させるようにしてもよい。
【0105】
基板810Bが、基板810Aとの間隔を可変に設けられている場合、基板制御部230が、基板810Bの位置を液体に触れる位置にすることで、液体を液柱820として形成することができる。また、基板制御部230が、基板810Bが液体に触れないように、基板810Aと基板810Bとの間隔を広くとることで、
液体を液滴830として形成することができる。
【0106】
これにより、造形システム1が、液柱820と液滴830とを使い分けることができる。例えば、造形システム1が、液体を移動させるときは、液体を液滴830として形成し、液体の一部を個体にするときは、液体を液柱820として形成するようにしてもよい。
【0107】
(第4の実施形態における効果)
第4の実施形態に係る造形装置100は、磁性を有する液滴830を、磁性体121を移動させることで移動させる移動処理部120と、所定の造形領域内で液滴830を部分的に固体に変化させることで造形を行う造形部110と、を備える。
【0108】
造形装置100は、液滴830を移動処理できる。これにより、造形装置100のユーザは、造形物の位置ずれや樹脂の廃棄、材料同士の混合が少なく、簡便に液滴830を移動でき、低コストで液滴830による固形物840を生成できる。
【0109】
図19は、少なくとも1つの実施形態に係るコンピュータの構成例を示す概略ブロック図である。
図19に示す構成で、コンピュータ700は、CPU(Central Processing Unit)710と、主記憶装置720と、補助記憶装置730と、インタフェース740とを備える。
【0110】
上記の造形装置100、および、制御装置200のうち何れか1つ以上が、コンピュータ700に実装されてもよい。その場合、上述した各処理部の動作は、プログラムの形式で補助記憶装置730に記憶されている。CPU710は、プログラムを補助記憶装置730から読み出して主記憶装置720に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、CPU710は、プログラムに従って、上述した各記憶部に対応する記憶領域を主記憶装置720に確保する。
【0111】
造形装置100がコンピュータ700に実装される場合、造形部110と、移動処理部120と、観察部150との動作は、プログラムの形式で補助記憶装置730に記憶されている。CPU710は、プログラムを補助記憶装置730から読み出して主記憶装置720に展開し、当該プログラムに従って各部の動作を実行する。
また、CPU710は、プログラムに従って、造形装置100が行う処理のための記憶領域を主記憶装置720に確保する。造形装置100と他の装置との通信は、インタフェース740が通信機能を有し、CPU710の制御に従って動作することで実行される。
造形装置100とユーザとのインタラクションは、インタフェース740が入力デバイスおよび出力デバイスを有し、CPU710の制御に従って出力デバイスにて情報をユーザに提示し、入力デバイスにてユーザ操作を受け付けることで実行される。
【0112】
制御装置200がコンピュータ700に実装される場合、処理部290の動作は、プログラムの形式で補助記憶装置730に記憶されている。CPU710は、プログラムを補助記憶装置730から読み出して主記憶装置720に展開し、当該プログラムに従って各部の動作を実行する。
上述したように、制御装置200が基板制御部230を備えていてもよい。基板制御部230がコンピュータ700に実装される場合、基板制御部230の動作は、プログラムの形式で補助記憶装置730に記憶されている。CPU710は、プログラムを補助記憶装置730から読み出して主記憶装置720に展開し、当該プログラムに従って各部の動作を実行する。
また、CPU710は、プログラムに従って、制御装置200が行う処理のための記憶領域を主記憶装置720に確保する。制御装置200と他の装置との通信は、インタフェース740が通信機能を有し、CPU710の制御に従って動作することで実行される。
制御装置200とユーザとのインタラクションは、インタフェース740が入力デバイスおよび出力デバイスを有し、CPU710の制御に従って出力デバイスにて情報をユーザに提示し、入力デバイスにてユーザ操作を受け付けることで実行される。
【0113】
なお、造形装置100、および、制御装置200が行う処理の全部または一部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより各部の処理を行ってもよい。ここでいう「コンピュータシステム」とは、OS(オペレーティングシステム)や周辺機器等のハードウェアを含む。
「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM(Read Only Memory)、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。
【0114】
以上、本発明の実施形態を、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明の実施形態は、造形装置、液柱移動装置、造形方法、液柱移動方法およびプログラムに適用してもよい。
【符号の説明】
【0116】
1 造形システム
100 造形装置
110 造形部
120 移動処理部
121 磁性体
122 マスク
130 ポイントヒータ
131 支持台
150 観察部
151 観察光光源
152 ビームスプリッタ
153 観察用レンズ
154 CCDカメラ
155 表示装置
200 制御装置
210 表示部
220 操作入力部
230 基板制御部
280 記憶部
290 処理部
810 基板
820 液柱
840 固形物
900 鉄粉
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図14
図15
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図17
図18
図19