(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-14
(45)【発行日】2024-06-24
(54)【発明の名称】改良型ダクトを備えるファン
(51)【国際特許分類】
F04D 29/52 20060101AFI20240617BHJP
F04D 29/16 20060101ALI20240617BHJP
F04D 29/38 20060101ALI20240617BHJP
【FI】
F04D29/52 E
F04D29/16
F04D29/38 D
(21)【出願番号】P 2021571695
(86)(22)【出願日】2020-05-07
(86)【国際出願番号】 IB2020054312
(87)【国際公開番号】W WO2020245674
(87)【国際公開日】2020-12-10
【審査請求日】2023-03-27
(31)【優先権主張番号】102019000007935
(32)【優先日】2019-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】518169587
【氏名又は名称】アール.イー.エム. ホールディング ソチエタ ア レスポンサビリタ リミタータ
【氏名又は名称原語表記】R.E.M. HOLDING S.R.L.
【住所又は居所原語表記】Piazzale Luigi Cadorna 4,20123 Milano,Italy
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【氏名又は名称】徳山 英浩
(72)【発明者】
【氏名】モシェヴィチ,ロベルト エドゥアルド
【審査官】大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0068028(US,A1)
【文献】特開平08-133192(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/52
F04D 29/16
F04D 29/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダクテッド軸流ファン(20)であって、
軸Xの周りに回転可能であり、複数のブレード(24)を有するロータ(22)と、
前記ロータ(22)の周囲において軸方向に延びている円形断面の流路(28)を規定するのに適したダクト(26)と、を備え、
前記ダクト(26)は、前記ロータ(22)の周囲において周方向に延在する環状座部(30)を有し、
前記複数のブレード(24)の先端部は、少なくとも部分的に前記ダクト(26)の環状座部(30)に収容されており、
1以上の前記ブレード(24)は、先端ウィングレット(32)を有し、
前記先端ウィングレット(32)は、軸方向に延在する調節装置(34)を有
し、
前記調節装置(34)は、前記環状座部(30)に収容されている、ファン(20)。
【請求項2】
前記環状座部(30)に対応するように、前記ロータ(22)の外径Drは、前記環状座部(30)の内径Dsよりも大きい、請求項1に記載のファン(20)。
【請求項3】
前記環状座部(30)は、空力的平滑面(36)を有する、請求項1または2に記載のファン(20)。
【請求項4】
前記環状座部(30)は、前記ロータ(22)のすぐ上流側に配置された、収束する空力的平滑面(36c)を有する、請求項1~3のいずれか1つに記載のファン(20)。
【請求項5】
前記環状座部(30)は、前記ロータ(22)のすぐ下流側に配置された、発散する空力的平滑面(36d)を有する、請求項1~4のいずれか1つに記載のファン(20)。
【請求項6】
前記空力的平滑面(36)は、前記ダクト(26)によって規定される前記流路(28)の狭さを特定する、請求項3~5のいずれか1つに記載のファン(20)。
【請求項7】
前記狭さは、前記ダクト(26)の内径Ddと前記環状座部(30)の内径Dsとの間の差を有し、当該差は、Ddの5%未
満である、請求項6に記載のファン(20)。
【請求項8】
前記狭さは、前記ダクト(26)の内径Ddと前記環状座部(30)の内径Dsとの間の差を有し、当該差は、Ddの2%未満である、請求項6に記載のファン(20)。
【請求項9】
前記環状座部(30)は、軸方向の下流側に開口している、請求項1~
8のいずれか1つに記載のファン(20)。
【請求項10】
前記調節装置(34)は、軸方向の上流側に延びていて且つ前記環状座部(30)に収容されている、請求項4に従属する場合の請求項
9に記載のファン(20)。
【請求項11】
発動機及び/又は構造体を更に備える、請求項1~
10のいずれか1つに記載のファン(20)。
【請求項12】
前記ロータ(22)は、可変ピッチタイプである、請求項1~
11のいずれか1つに記載のファン(20)。
【請求項13】
前記ファン(20)は、ヘリコプター(40)のテールロータである、請求項
12に記載のファン(20)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダクテッド軸流ファンに関する。この表現は、以下において、直径Drが0.5mより大きい、好ましくは、1mより大きい軸流ファンのことを指す。
【背景技術】
【0002】
産業分野では、大量の熱を放散する必要がある埋没材(implants)において、特殊な放熱面の周囲に適切な空気の流れを確保するために、軸流ファンを使用することが知られている。
【0003】
産業用などの軸流ファンは、通常、回転軸を規定する中央ハブを備え、そこに複数のブレードが取り付けられている。当該ハブの回転は、ブレードを回転させ、当業者なら理解できるように、各ブレードの異なる部分に異なる接線速度を与える。実際、各ブレードの接線速度は、角速度(全ての部分で同じ)と、回転軸に対する径方向の距離(回転軸から離れるほど大きくなる)との積である。
【0004】
このため、当業者に知られているように、軸流ファンのブレードは、ブレードの径方向の翼長全体に沿って効果的に動作させることができない。ブレードの径方向の最内部の接線速度は、しばしば、空気流に対する効果的な相対運動を実現するには低すぎる。このため、実際のファンの動作は、主に、軸流ファンによって生成される全空気流量のほぼ全てを保証する径方向の外側の部分に委ねられている。
【0005】
当業者なら理解できるように、そのような流れの分布は、軸流ファンの全体をあまり効率的なものにしていない。ブレードの径方向の内側部分をよりよく利用するための技術的な解決策がいくつか提案されているが、径方向の外側部分の効率を向上させる必要もある。実際、それ自体既知の方法では、外周部は、その効率を制限する先端効果の影響を受ける。既に述べたように、流れの大部分は、径方向の外側部分によって発生するため、この領域における割合的にわずかな非効率がファン全体における決定的に大きな非効率をもたらす。
【0006】
翼であろうと、又はこの場合のようにファンブレードであろうと、空力表面の中間部において、高圧の空気領域と低圧の空気領域とは、ブレードそのものの存在によって物理的に互いに分離されている。ブレードの先端部では、この分離がなくなるため、高圧の領域から低圧の領域へ移動しようとする気流が自然に発生する。このようにして、ブレードが空気中を進むことに対する重大な抵抗を誘発する先端渦が発生する。
【0007】
この種の問題に対して最初に提案された解決策は、ファンをダクト化し、ファン自体の外径よりわずかに大きい直径の覆いの内部に閉じ込めることであった。この覆いを、以下では、ダクトと呼ぶ。
【0008】
ダクトの追加により、先端渦の寸法が大幅に縮小され、その結果、渦によって移動する空気の量、つまり、誘導抵抗が減少する。
【0009】
しかしながら、当業者であればよく理解できるように、ブレードの先端部とダクトの内径との距離を0にすることは、不可能であるだけでなく、そのような距離をある限界以上に縮めることさえできない。実際、ダクトとブレードの先端との接触は、最も確かな方法で避けなければならず、このために安全な距離を確保しなければならない。ブレードは、その大きさと維持に必要なコストとのために、精密な公差で作ることができない。更に、ブレードは、振動現象にさらされ、運転中に変形する可能性がある。そのため、最適なダクトがあっても、先端渦を除去することができない。
【0010】
もう一つの解決策は、航空学から借用したもので、各ブレードの先端に翼端装置又はウィングレットと呼ばれる付属の面を設けることである。まず、ウィングレットは、空気の動きに対抗する調節装置を構成する機能を持つため、先端渦の形成を抑制する。更に、採用する形状によって、ウィングレットは、残留する先端渦に影響を与え、それを最適化することで騒音の発生を抑制することができる。
【0011】
これらの解決策は広く評価されているが、欠点がないわけではない。
【0012】
実際、ダクト及びウィングレットを配置しても、互いを追加したとしても、先端渦の形成は、ある程度避けられないままである。そのため、軸流ファンの効率は、制限されたままである。
【発明の概要】
【0013】
従って、本発明の目的は、先行技術に関する上述において強調した欠点を克服することにある。
【0014】
特に、本発明の課題は、効率が改善されたダクテッド軸流ファンを提供することにある。
【0015】
更に、本発明の課題は、既知のタイプのファンよりも先端渦の発生を抑制するダクテッド軸流ファンを提供することにある。
【0016】
更に、本発明の課題は、更なる利点を導入することに加えて、既知のタイプのファンから既に得られている利点も維持するダクテッド軸流ファンを提供することにある。
【0017】
そのような目的及び課題は、請求項1に係るダクテッド軸流ファンを用いて達成される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本発明をより良く理解し、その利点を理解するために、その例示的且つ非限定的な実施形態のいくつかを、添付の図面を参照して以下に説明する。
【
図1】本発明に係るファンを模式的に示す平面図である。
【
図2】
図1においてIIと表記されている部分を模式的に示す詳細拡大図である。
【
図3】
図2のIII-III線に沿った断面図を模式的に示す図である。
【
図4.a】
図3のIV-IV線に沿った断面図を模式的に示す図である。
【
図4.b】
図4.aに類似する代替部分を模式的に示す図である。
【
図4.c】
図4.aに類似する代替部分を模式的に示す図である。
【
図4.d】
図4.aに類似する代替部分を模式的に示す図である。
【
図4.e】
図4.aに類似する代替部分を模式的に示す図である。
【
図4.f】
図4.aに類似する代替部分を模式的に示す図である。
【
図4.g】
図4.aに類似する代替部分を模式的に示す図である。
【
図4.h】
図4.aに類似する代替部分を模式的に示す図である。
【
図4.i】
図4.aに類似する代替部分を模式的に示す図である。
【
図4.j】
図4.aに類似する代替部分を模式的に示す図である。
【
図4.k】
図4.aに類似する代替部分を模式的に示す図である。
【
図4.l】
図4.aに類似する代替部分を模式的に示す図である。
【
図4.m】
図4.aに類似する代替部分を模式的に示す図である。
【
図4.n】
図4.aに類似する代替部分を模式的に示す図である。
【
図5】本発明に係るファンの斜視図であり、部分的に底部を示す図である。
【
図6】本発明に係るファンの斜視図であり、より明確にするためにダクトを部分的に取り除いて示す図である。
【
図7】本発明に係る他のファンを示す平面図である。
【
図8】
図7のVIII-VIII線に沿った断面図を示す図である。
【
図9】
図7のIX-IX線に沿った断面図を示す図である。
【
図10】本発明に係るファンのダクトの一部を示す透視図である。
【
図11】
図10においてXIと表記されている部分を示す詳細拡大図である。
【
図12】本発明に係るダクテッドロータを備える航空機を示す図である。
【
図13】
図12においてのXIIIと表記されている部分を示す詳細拡大図である。
【
図14】
図13においてXIVと表記されている部分を模式的に示す詳細拡大図である。
【
図15.a】
図14のXV-XV線に沿った断面における異なる構成を示す断面図である。
【
図15.b】
図14のXV-XV線に沿った断面における異なる構成を示す断面図である。
【
図15.c】
図14のXV-XV線に沿った断面における異なる構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本検討の文脈においては、読みやすさ及びスムーズさを追求するために、いくつかの用語上の取り決めを採用した。これらの用語上の取り決めは、添付の図を参照しながら、以下で明らかにされる。
【0020】
以下、「ダクト」という用語は、ダクテッドファンを取り囲む側壁又は覆い(通常は円筒形)のことを言い、その中に空気の流れが制約される流路が形成される。
【0021】
本発明によるファンは、吸気領域(添付図面では下)から出力領域(添付図面では上)へ向けられた空気流を作り出すことを目的としている。従って、流れ方向(図面では符号aで示されている)に関連して、「下流側」、「次の」などの用語に対して、「上流側」、「前の」などの用語が明確に定義されていることが理解される。
【0022】
「収束」及び「発散」という用語も、流れ方向aとの関係で解釈する必要がある。
【0023】
本発明に係るファンは、回転軸Xを一義的に規定するので、この軸に関連して、「軸方向」、「径方向」、「接線方向」、及び「周方向」の用語が定義される。
【0024】
以下、「わずかに」異なる量について説明する。副詞「わずかに」は、両者の高い方の量の10%以内、好ましくは、両者の高い方の量の5%以内の差異を示すことを意図している。
【0025】
本発明は、以下に全体を符号20で示す、ダクテッド軸流ファンに関する。ファン20は、
軸Xの周りに回転可能であり、複数のブレード24を有するロータ22と、
ロータ22の周囲において軸方向に延びている円形断面の流路28を規定するのに適したダクト26と、を備える。
【0026】
本発明に係るファン20において、ダクト26は、ロータ22の周囲において周方向に延在する環状座部30を有し、複数のブレード24の先端部は、少なくとも部分的にダクト26の環状座部30に収容されている。
【0027】
すなわち、環状座部30において、ロータ22の外径Drは、環状座部30の内径Dsよりも大きい(例えば、
図9参照)。
【0028】
例えば、ロータ22の外径Drは、0.5mを超え、好ましくは、1mを超える。
【0029】
好ましくは、ファン20のロータ22は、回転軸Xを規定するハブ23を有する。ハブ23には、複数のブレード24が取り付けられている。好ましくは、複数のブレード24は、ハブ23から構造的に独立するように作られ、その後、特定の設計要求に従ってピッチを変化させることができるようにハブ23に取り付けられる。好ましくは、複数のブレード24は、ボルトによってハブ23に取り付けられている(例えば、
図6参照)。
【0030】
好ましくは、ファン20の1以上のブレード24は、単にウィングレット32とも呼ばれる先端ウィングレット32を有する。ウィングレット32は、ブレード24の先端部に配置され、ブレードの騒音を低減し、先端渦の形成により誘発される抵抗を低減する、それ自体既知の装置である。好ましくは、ウィングレット32は、少なくとも部分的に軸方向に延在する調節装置34を有する。有利には、ウィングレット32の調節装置34の主な形成部は、軸方向と円周方向又は接線方向とによって規定される面に沿う。
【0031】
既知のタイプのダクトは、少なくともロータを有する軸方向の部分において、円筒形状を有する。更に、それ自体既知の態様において、ダクトは、関連するロータの外径よりもわずかに大きい内径を有している。
【0032】
本発明に係るダクト26、特に、その環状座部30は、実施形態に応じて異なる構成をとり得る。
【0033】
いくつかの実施形態によれば、ダクト26は、ロータ22を有する軸方向の部分において円筒形状を有し、ロータ22の外径Drよりわずかに大きい内径Ddを有する。
【0034】
他の実施形態によれば、ダクト26は、円筒形状を有し、ロータ22のすぐ上流の部分において、ロータ22の外径Drよりわずかに小さい内径を有する。これらの実施形態では、ダクト26は、環状座部30が配置されるロータ22の近くで途切れている。この場合、ロータ22の上流において、ダクト26の内径は、環状座部30の内径Dsと一致する。いくつかの実施形態では、ロータ22の下流において、ダクト26は、ロータ22の外径よりわずかに大きい内径Ddとし、他の実施形態では、ダクト26は、再びロータ22の外径よりわずかに小さい内径Dsとする。
【0035】
いくつかの実施形態によれば、ダクト26は、円筒形状を有し、ロータ22のすぐ上流でロータ22に対応する部分(すなわち、環状座部30が配置される場所)において、ロータ22の外径Drよりわずかに大きい内径Ddを有する。特定のそのような実施形態において、ダクト26は、ロータ22の外径よりもわずかに小さい内径を伴ってロータ22の下流側に続いている。この場合、ロータ22の下流側において、ダクト26の内径は、環状座部30の内径Dsと一致する。
【0036】
いくつかの実施形態によれば、環状座部30は、空力的平滑面36を有する。例えば、好ましくは、環状座部30は、ロータ22のすぐ上流側に配置された収束空力的平滑面36cを有してもよい。代替的に又は追加的に、好ましくは、環状座部30は、ロータ22のすぐ下流側に配置された発散空力的平滑面36dを有してもよい。
【0037】
いくつかの実施形態によれば、空力的平滑面36(収束空力的平滑面36c及び/又は発散空力的平滑面36d)は、ダクト26によって規定される流路28の狭さを特定する。
【0038】
いくつかの実施形態によれば、環状座部30は、軸方向に開口している。例えば、環状座部30は、上流側の(すなわち、吸気領域に向かって)又は下流側の(すなわち、出力領域に向かって)軸方向に開口し得る。
【0039】
いくつかの実施形態によれば、環状座部30は、径方向においてダクト26の内側に向かって開口している。好ましくは、環状座部30は、軸方向の上流側及び/又は下流側に展開する。
【0040】
いくつかの実施形態によれば、環状座部30は、全体的にダクト26の外側に延び、他の実施形態では、環状座部30は、全体的にダクト26の内側に延びる。
【0041】
いくつかの実施形態によれば、ファン20の1以上のブレード24は、軸方向に延在する調節装置34が設けられた先端ウィングレット32を有する。例えば、ウィングレット32の調節装置34は、軸方向の上流側、下流側、又はその両方に延在してもよい。好ましくは、各ブレード24は、ウィングレット32を有する。
【0042】
ウィングレット32は、異なる形状をとり得る。例えば、
図6は、調節装置34が軸方向にかなり小さく延在するように設けられた既知のタイプのウィングレット32を有するロータ22を示す。ウィングレット32の他の形態は、
図3及び
図8に示されている。これらの場合、ウィングレット32の上流側における軸方向の延びは大きく、接線方向において(すなわち、ブレード24の翼の弦に沿って)広くなっていることが注目される。本発明に係るファン20では、このような軸方向の延びがより大きいウィングレット32と環状座部30とをより一層係合させることができる。
【0043】
特定の実施形態では、本発明によるファン20のダクト26は、収束口38を有する。収束口38は、それ自体既知の態様で、ダクト26の上流端部に規定され、吸気領域への空気流を受け取り、それをロータ22に緩やかに搬送する機能を提供する。
図5、
図6、及び
図8から
図11の実施形態では、収束口38は、ダクト26の壁自体によるそれ自体既知の態様で規定される。他の概略的な実施形態、例えば、
図4.k及び
図4.lによれば、収束口38は、空力的平滑面36、特に、収束空力的平滑面36cの上流側の突出部によって規定される。
【0044】
図4.aに模式的に示された実施形態では、ダクト26は、ロータ22を有する軸方向の部分において円筒形状を有し、ロータ22の外径Drよりわずかに大きい内径Ddを有する。このような実施形態では、環状座部30は、空力的平滑面36を追加することによって従来のダクト26から得られる。特に、ロータ22のすぐ上流側には、収束空力的平滑面36cが配置される。従って、収束空力的平滑面36cは、環状座部30の内径Dsがロータ22の外径Drよりもわずかに小さくなるようにして、ダクト26が有する流路28に狭さを生じさせる。収束空力的平滑面36cの形状により、環状座部30は、軸方向の下流側に開口している。ブレード24は、上流側の軸方向に延びていて且つ環状座部30に収容されている調節装置34が設けられた先端ウィングレット32を有する。
【0045】
図4.bに模式的に示された実施形態では、ダクト26は、円筒形状を有し、ロータ22のすぐ上流側の部分において、ロータ22の外径Drよりわずかに小さい内径を有する。この場合、ロータ22の上流側では、ダクト26の内径は、環状座部30の内径Dsと一致する。ダクト26は、環状座部30が配置されたロータ22の近傍で途切れ、ロータ22の外径Drよりもわずかに大きい内径Ddでロータ22に対応するようにして、下流側に続いている。ダクト26の形状により、環状座部30は、軸方向の下流側に開口している。ブレード24は、上流側の軸方向に延びていて且つ環状座部30に収容されている調節装置34が設けられた先端ウィングレット32を有する。
【0046】
図4.cに模式的に示された実施形態は、
図4.aの実施形態とよく類似しており、その説明が参照される。加えて、この実施形態では、ロータ22のすぐ下流側に、発散空力的平滑面36dが配置される。その結果、環状座部30は、ダクト26の流路28内で全体的に延びる。そのような環状座部30は、径方向の内側に向かって開口しており、軸方向の下流側及び上流側に延在している。ブレード24は、調節装置34が設けられた先端ウィングレット32を有する。ブレード24の先端部は、径方向において環状座部30に収容され、ウィングレット32の調節装置34は、環状座部30の内側で軸方向の下流側及び上流側に延びている。
【0047】
図4.dに模式的に示された実施形態では、ダクト26は、ロータ22を有する軸方向の部分において円筒形状を有し、ロータ22の外径Drよりもわずかに大きい内径Dを有する。このような実施形態では、環状座部30は、空力的平滑面36を追加することによって従来のダクト26から得られる。特に、ロータ22のすぐ下流側には、発散空力的平滑面36dが配置される。従って、発散空力的平滑面36dは、環状座部30の内径Dsがロータ22の外径Drよりもわずかに小さくなるようにして、ダクト26が有する流路28の狭さを規定する。発散空力的平滑面36dの形状により、環状座部30は、軸方向の上流側に開口している。ブレード24は、下流側の軸方向に延びていて且つ環状座部30に収容されている調節装置34が設けられた先端ウィングレット32を有する。
【0048】
図4.eに模式的に描かれた実施形態では、ダクト26は、円筒形状を有し、ロータ22のすぐ上流側及びすぐ下流側の部分において、ロータ22の外径Drよりもわずかに小さい内径を有する。この場合、ダクト26の内径は、環状座部30の内径Dsと一致する。ダクト26は、環状座部30が配置されるロータ22の近傍で途切れている。その結果、環状座部30は、ダクト26の流路28の外側で全体的に延びする。そのような環状座部30は、径方向において内側に向かって開口しており、軸方向の下流側及び上流側に延在している。ブレード24は、調節装置34が設けられた先端ウィングレット32を有する。ブレード24の先端部は、径方向において環状座部30に収容され、ウィングレット32の調節装置34は、環状座部30の内側で軸方向の下流側及び上流側に延びている。
【0049】
図4.fに模式的に描かれた実施形態では、ダクト26は、
図4.bのダクト26を逆にして得られるものと同様の形状をとる。ダクト26は、円筒形状を有し、環状座部30が配置されるロータ22のすぐ上流側と対応する部分において、ロータ22の外径Drよりわずかに大きな内径Ddを有している。ダクト26は、ロータ22の外径よりもわずかに小さい内径でロータ22の下流側に続いている。この場合、ロータ22の下流側において、ダクト26の内径は、環状座部30の内径Dsと一致する。ダクト26の形状により、環状座部30は、軸方向の上流側に開口している。ブレード24は、下流側の軸方向に延びていて且つ環状座部30に収容されている調節装置34が設けられた先端ウィングレット32を有する。
【0050】
図4.gに模式的に示された実施形態は、
図4.fの実施形態とよく類似しており、その説明が参照される。加えて、この実施形態では、ロータ22のすぐ上流側に、収束空力的平滑面36cが配置されている。その結果、環状座部30は、径方向の内側に向かって開口しており、軸方向の下流側及び上流側に延在している。ブレード24は、調節装置34が設けられた先端ウィングレット32を有する。ブレード24の先端部は、径方向において環状座部30に収容され、ウィングレット32の調節装置34は、環状座部30の内側で径方向の下流側及び上流側に延びている。
【0051】
図4.hに模式的に示された実施形態は、
図4.bの実施形態とよく類似しており、その説明が参照される。加えて、この実施形態では、ロータ22のすぐ下流側に、発散空力的平滑面36dが配置されている。その結果、環状座部30は、径方向の内側に向かって開口しており、軸方向の下流側及び上流側に延在している。ブレード24は、調節装置34が設けられた先端ウィングレット32を有する。ブレード24の先端部は、径方向において環状座部30に収容され、ウィングレット32の調節装置34は、環状座部30の内側で下流側及び上流側に軸方向に延びている。
【0052】
図4.iに模式的に示された実施形態は、
図4.cの実施形態とよく類似しており、その説明が参照される。しかしながら、この実施形態では、ブレード24は、いかなる先端ウィングレット32も有していない。ブレード24の先端部は、径方向において環状座部30に収容される。
【0053】
図4.jに模式的に示された実施形態は、
図4.eの実施形態とよく類似しており、その説明が参照される。しかしながら、この実施形態では、ブレード24は、いかなる先端ウィングレット32も有していない。ブレード24の先端部は、径方向において環状座部30に収容される。
【0054】
図4.kに模式的に示された実施形態では、ダクト26は、ロータ22を有する軸方向の部分において円筒形状を有し、ロータ22の外径Drよりわずかに大きい内径Ddを有する。このような実施形態では、環状座部30は、空力的平滑面36を追加することによって従来のダクト26から得られる。特に、ロータ22のすぐ上流側には、収束空力的平滑面36cが配置される。更に、空力的平滑面は、上流側に突出して、収束口38を形成する。
図4.aに関連して上述したものと同様の方法で、収束空力的平滑面36cは、流路28に狭さをもたらし、環状座部30の内径Dsは、ロータ22の外径Drよりわずかに小さく、環状座部30は、軸方向の下流側に開口している。ブレード24は、上流側の軸方向に延びていて且つ環状座部30に収容されている調節装置34が設けられた先端ウィングレット32を有する。
【0055】
図4.lに模式的に示された実施形態は、
図4.eの実施形態と類似しており、その説明が参照される。しかしながら、この実施形態では、ダクト26の壁部は、ロータ22の上流側に、収束口38を形成するように作られている。
【0056】
図4.mに模式的に示された実施形態は、
図4.aの実施形態とよく類似しており、その説明が参照される。しかしながら、この実施形態では、収束空力的平滑面36cは、流路28に関してなめらかに且つ連続的に狭さを規定するような形状ではなく、急なステップで狭さをもたらす鋭い角の外形を有する形状である。
【0057】
図4.nに概略的に示された実施形態は、
図4.cの実施形態とよく類似しており、その説明が参照される。しかしながら、この実施形態では、収束空力的平滑面36c及び発散空力的平滑面36dは、流路28に関してなめらかな且つ連続的な変化を規定するような形状ではなく、急なステップで変化をもたらす鋭い角の外形を有する形状である。
【0058】
図4.mと
図4.nとに示されたこれらの実施形態は、空気力学的に最適ではないが、特定の条件下では、より簡単に実施できるため有利になり得る。
【0059】
図4を参照して上述したダクト26及び環状座部30の構成は、一例として示したものである。当業者にはよく理解されるように、環状座部30は、特定の要求を満たすために、本明細書で詳細に説明したものとは異なる形状をとり得る。
【0060】
当業者が
図4を観察すれば分かるように、本発明に係る環状座部30及びブレード24の先端部の構成は、一種のラビリンスシールを得ることを可能にする。ラビリンスシールは、それ自体既知の方法で、高圧領域から低圧領域への流体の自然な通過を著しく減少させる蛇行した経路を規定する。具体的な事例では、環状座部30及びブレード24の先端部(ウィングレット32があってもなくてもよい)の構成が、高圧領域(ブレード24の上方)から低圧領域(ブレード24の下方)へ自然に流れる傾向のある空気のための蛇行した経路を規定する。ブレード24の先端部で一方の領域から他方の領域へ通過する空気の量を減らすことで、先端渦の大きさを減少させ、その結果、誘導抵抗を減少させる。
【0061】
図5から
図11の実施形態は、
図4.aに模式的に示された実施形態と類似している。より詳しくは、
図5及び
図6は、ロータ22の一実施形態を示しており、
図7、
図8、及び
図9は、ロータ22の異なる実施形態を示す。2つの実施形態間の主な違いは、ウィングレット32の調節装置34の形状及び延長で構成される。
図6は、
図8で見られるものよりも小さいウィングレット32を示す。ダクト26及び環状座部30は、両方の実施形態に共通であり、
図10及び
図11において更に詳細に描かれている。
【0062】
図5から
図11の実施形態では、ダクト26は、ロータ22を有する軸方向の部分において円筒形状を有し、ロータ22の外径Drよりわずかに大きい内径Ddを有する(
図9参照)。このように、環状座部30は、従来のダクト26に空力的平滑面36を追加することによって得られる。特に、ロータ22のすぐ上流側には、収束空力的平滑面36cが配置されている。従って、収束空力的平滑面36cは、環状座部30の内径Dsがロータ22の外径Drよりわずかに小さくなるように、ダクト26が有する流路28の狭さを特定する(再び
図9を参照)。収束空力的平滑面36cの形状により、環状座部30は、軸方向の下流側に開口している。ブレード24は、上流側の軸方向に延びていて且つ環状座部30に収容されている調節装置34が設けられたが、各々が異なる形状をとる先端ウィングレット32を有する。
【0063】
上記の各変形は、いくつかの特定の利点を得ることを可能にし、そのうちのいくつかは、例として以下に説明される。
【0064】
空力的平滑面36が追加された従来のダクト26を有する実施形態では、既存のファン20を本発明に沿うように変更することが可能である。そのような実施形態は、例えば、
図4.a、
図4.c、
図4.d、
図4.i、
図4.k、
図4.m、及び
図4.nに示されている。
【0065】
環状座部30における流路28の狭さを有する実施形態は、空気流の局所的な加速を可能にする。この点に関して、ダクト26の内径Ddと環状座部の内径Dsとの間の差は、場合によっては、ダクト26の内径Ddの5%まで達する可能性があることに留意されたい。しかし、ほとんどの場合、この差は、Ddの2%未満である。この減少は、流速がより大きい径方向の外周部に位置するため、狭さによる流速への局所的な影響は、更に顕著である。そのような実施形態は、例えば、
図4.a、
図4.c、
図4.d、
図4.f、
図4.g、
図4.i、
図4.m、及び
図4.nに示されている。
【0066】
環状座部30における流路28の広さを有する実施形態は、ダクト26から完全に排出する際に発散する出口を必要とする用途のために、空気流を最適に配置することを可能にする。そのような実施形態は、例えば、
図4.b、
図4.h、及び
図4.kに示されている。
【0067】
好ましくは、本発明に係るファン20は、ロータ22を設計速度で回転させるのに適した発動機(図示せず)も有する。更に、好ましくは、本発明に係るファン20は、全ての動作状態においてダクト26、ロータ22、及び場合によっては発動機をしっかりと支持するのに適した構造(図示せず)を有する。
【0068】
図14及び
図15に概略的に描かれているいくつかの実施形態によれば、ロータ22は、可変ピッチタイプである。これらの実施形態によれば、個々のブレード24は、実質的に径方向に設けられた軸pを中心に回転させることができる。各ブレード24が軸pを中心に同時に回転することで空気に対するその入射を変更することを可能にする(
図15参照)ので、ダクテッドファン20自体の流量を変化させることができる。このように、可変ピッチ式ダクテッドファン20は、異なる動作条件に適応することができるので、様々な分野で広く使用されている。
【0069】
可変ピッチ式ダクテッドファン20が特に評価される分野は、航空分野である。様々な種類の航空機が、例えば、航空機の推進及び/又は制御のために、可変ピッチ式ダクテッドファン20を採用している。
【0070】
可変ピッチ式ダクテッドファン20の具体例としては、ヘリコプター40のダクテッドテールロータが挙げられる(例えば、
図12を参照)。この解決策は、一般にフェネストロン(FENESTRON:登録商標)とも呼ばれ、広く評価されているが、産業用のダクテッドファンについて上記で既に確認したのと同じ欠点がある。
【0071】
この場合であっても、ロータ22の周囲において周方向に延在する環状座部30をダクト26に配置し、ブレード24の先端部が少なくとも部分的に環状座部30に収容されるようにすると、特に有利である。
【0072】
この種の用途では、
図4.c、
図4.e、
図4.i、及び
図4.jに模式的に描かれた実施形態が特に適しているが、他の実施形態も有用に採用することが可能である。
【0073】
上記の説明は、本発明を先行技術の解決策と区別する技術的特徴に留まるものである。先行技術と本発明とに共通する他のすべての特徴については、先行技術について説明し、コメントした序文を参照され得る。
【0074】
当業者が容易に理解できるように、本発明は、従来技術を参照して先に強調した欠点を克服することを可能にする。
【0075】
特に、本発明は、効率を向上させたダクテッド軸流ファンを提供する。
【0076】
更に、本発明は、既知のタイプのファンよりも先端渦の形成を抑制するダクテッド軸流ファンを提供する。
【0077】
更に、本発明は、更なる利点を導入することに加え、既知のタイプのファンによってすでに得られている利点も維持するダクテッド軸流ファンを提供する。
【0078】
具体的な特徴は、非限定的な例によって、本発明の異なる実施形態に関連して説明されていることが理解される。明らかに、当業者は、偶発的且つ特定の要求を満たすために、本発明に対して更なる修正及び変形を行うことができるであろう。例えば、本発明の実施形態に関連して説明された技術的特徴は、そこから外挿され、本発明の他の実施形態に適用されてもよい。このような修正及び変形も、以下の請求項によって定義される本発明の範囲に含まれる。