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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-14
(45)【発行日】2024-06-24
(54)【発明の名称】玉掛用器具
(51)【国際特許分類】
   B66C 1/14 20060101AFI20240617BHJP
【FI】
B66C1/14 B
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2023093080
(22)【出願日】2023-06-06
【審査請求日】2023-06-06
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519235999
【氏名又は名称】有限会社サエキ
(74)【代理人】
【識別番号】100134979
【弁理士】
【氏名又は名称】中井 博
(74)【代理人】
【識別番号】100167427
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 有三
【審査官】中島 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-052087(JP,A)
【文献】特開2014-201444(JP,A)
【文献】特開昭55-074988(JP,A)
【文献】特開平10-077192(JP,A)
【文献】特開2002-145573(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 1/00 - 3/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
玉掛け紐が挿通される貫通孔を有する本体部と、
該本体部に設けられた、玉掛け紐の輪状部分に係合可能に設けられた係合部と、を備えており、
前記本体部が、
互いに平行な一対の軸部を備えており、
該一対の軸部は、
両者間に前記貫通孔が形成され、かつ、該一対の軸部の周面によって玉掛け紐の表面が接触する互いに対向する一対の接触面が形成されるように設けられており、
前記本体部には、
前記貫通孔と連通された、該貫通孔に玉掛け紐を配置する際に玉掛け紐が通される開口が設けられており、
該本体部の開口は、
前記貫通孔に玉掛け紐が挿通される方向と交差する位置に設けられており、
前記一対の軸部のうち一方の軸部が前記本体部の開口に対して着脱可能に設けられている
ことを特徴とする玉掛用器具(一対の接触面が玉掛け紐の移動を固定する際に玉掛け紐の表面に食いこむ突起を有するものを除く)
【請求項2】
前記一方の軸部は、
先端部に雄ねじが形成されており、
前記本体部は、
前記開口を形成する、互いに対向する一対の開口形成部を有しており、
該一対の開口形成部は、
一方の開口形成部には前記一方の軸部を挿通する貫通孔が形成されており、
他方の開口形成部には前記一方の軸部の雄ねじが螺合する雌ねじ穴が形成されている
ことを特徴とする請求項1記載の玉掛用器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、玉掛用器具に関する。
【背景技術】
【0002】
木材の柱や鉄筋等の建築材料等を束ねて運搬する際には、玉掛け用の帯やスリングが使用される(例えば特許文献1、2参照)。玉掛け用の帯やスリング(以下では単に玉掛け紐という)には、通常、その両端に輪状になった部分(以下ではアイという)が設けられており、玉掛け紐を建築材料等の周囲に掛け回わした状態で一方のアイに他方のアイを通して締め付けることによって玉掛け紐に建築材料等が保持される。
【0003】
詳しく言えば、地面などに置かれている建築材料等の下方に一方のアイを通して玉掛け紐を建築材料等の下方に配置し、その状態で一方のアイを他方のアイに通す。すると、玉掛け紐が輪状になり、玉掛け紐が建築材料等の周囲に掛け回わされた状態となる。その後、他方のアイを玉掛け紐に沿って建築材料等に向かって移動させれば、玉掛け紐を建築材料等に密着させることができるので、建築材料等が玉掛け紐によって束ねられた状態で保持される。この状態で、一方のアイをクレーンのフックなどに引っ掛ければ、クレーンによって建築材料等を吊り上げることができ、吊り上げた建築材料等を所望の場所に移動させることができる。そして、所望の場所に移動した後、他方のアイから玉掛け紐を抜いて、玉掛け紐を建築材料等の下から引き抜けば、玉掛け紐を建築材料等から外すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-121856号公報
【文献】実公昭52-53575号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、建築材料等の搬送は複数回繰り返される場合がある。例えば、複数本の建築材料等を搬送する場合、いくつかの建築材料等は最初に搬送した場所で使用され、いくつかの建築材料等は次に搬送した場所で使用される場合がある。このような場合、搬送するたびに上述したような玉掛け作業、つまり、玉掛け紐によって建築材料等を束ねる作業と玉掛け紐を建築材料等から取り外す作業が行われる。玉掛け紐は長いものは8m以上のものもあり、建築材料等の周囲に玉掛け紐を掛け回わすたびに一方のアイを玉掛け紐に通したり、建築材料等から玉掛け紐を外すたびに他方のアイから玉掛け紐を抜いたりする作業は作業者にとって労力を要するし時間も要する作業になる。すると、建築材料等を搬送するたびにこれらの作業を行うことは、作業者の負担が大きくなるしまた作業効率も悪くなる。
【0006】
本発明は上記事情に鑑み、玉掛け作業における作業者の負担を軽減でき作業時間の短縮も可能になる玉掛用器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の玉掛用器具は、玉掛け紐が挿通される貫通孔を有する本体部と、該本体部に設けられた、玉掛け紐の輪状部分に係合可能に設けられた係合部と、を備えており、前記本体部の貫通孔は、玉掛け紐の表面が接触する、対向する一対の接触面を有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の玉掛用器具によれば、玉掛け紐による搬送部材の保持や開放を簡単にできるので、玉掛け作業を行う作業者の負担を軽減でき作業時間も短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態の玉掛用器具10の概略説明図であって、(A)は概略側面図であり、(B)は概略正面図である。
図2】本実施形態の玉掛用器具10の概略斜視図であって、(A)は軸部材13が取り付けられた状態であり、(B)は軸部材13が取り外された状態である。
図3】玉掛け紐SLに本実施形態の玉掛用器具10を取り付ける作業の概略説明図である。
図4】玉掛け紐SLに本実施形態の玉掛用器具10を取り付ける作業の概略説明図である。
図5】本実施形態の玉掛用器具10を使用して搬送部材Tを玉掛けする作業の概略説明図である。
図6】他の実施形態の玉掛用器具10B,10Cの概略説明図である。
図7】本実施形態の玉掛用器具10を使用して搬送部材Tを吊り下げる例を示した図であり、(A)はチョーク吊りの例であり、(B)はバスケット吊りの例である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本実施形態の玉掛用器具は、搬送部材を玉掛け紐によって束ねて搬送する際に使用される器具であり、玉掛け作業を行う作業者の負担を軽減できるようにしたことに特徴を有している。
【0011】
本実施形態の玉掛用器具1によって搬送される搬送部材は、とくに限定されない。例えば、鉄骨や木材などの建築資材や重量物等を搬送部材として挙げることができる。
【0012】
本実施形態の玉掛用器具1によって搬送部材を束ねる玉掛け紐は、玉掛けに一般的に使用される両端部に輪状部分を有するものであればよく、玉掛け紐を形成する素材やその形状はとくに限定されない。例えば、ワイヤーによって形成された玉掛けワイヤーや、帯状に形成された繊維スリング(いわゆるベルトスリング)によって形成された玉掛け紐などを本実施形態の玉掛用器具1によって搬送部材を束ねる玉掛け紐として挙げることができる。
【0013】
<本実施形態の玉掛用器具1>
図1および図2に示すように、本実施形態の玉掛用器具10は、本体部11と、本体部11に設けられた係合部15と、を備えている。
【0014】
<本体部11>
図1および図2に示すように、本体部11には、玉掛け紐SLが挿通される貫通孔10hを有している。この貫通孔10hは、本体部11に設けられた一対の軸部12,13の間に形成されている。なお、貫通孔10hは、その幅Lが玉掛け紐SLをスムースに挿通できる幅に形成されている。例えば、貫通孔10hの幅Lは、玉掛け紐SLがベルトスリングであれば玉掛け紐SLの厚さよりも若干長くなるように形成されており、玉掛け紐SLが玉掛けワイヤーであればその軸径よりも若干長くなるように形成されている。
【0015】
<一対の軸部12,13>
一対の軸部12,13は、その軸方向が互いに平行に設けられた断面が円形の軸状の部材であり、本体部11の互いに対向する一対の側方部14,14間をつなぐように設けられている。
【0016】
一対の軸部12,13のうち、軸部12は、本体部11の一対の側方部14,14においてその先端部(図1および図2では上端部、以下一対の開口形成部14a,14bという)よりも内方(図1および図2では下方)に位置する部分に設けられている。この軸部12は、その両端が本体部11の一対の側方部14,14にそれぞれ固定されている。なお、軸部12の側面が、貫通孔10hに玉掛け紐SLが配置されたときに玉掛け紐SLと接触する接触面12fとなる(図3参照)。
【0017】
一対の軸部12,13のうち、軸部13は、軸部12よりも一対の側方部14,14の先端側に設けられている。つまり、軸部13は、一対の側方部14,14の一対の開口形成部14a,14b間、言い換えれば、開口10aに設けられている。この軸部13は、一対の開口形成部14a,14bに対して着脱可能に設けられている。具体的には、一対の開口形成部14a,14bのうち、開口形成部14aには貫通孔14gが形成されており、開口形成部14bには雌ねじ穴14sが形成されている。軸部13は、先端部に雄ねじ13sが形成された部材であり、基端部には軸部13を回転させるための持ち手13mが設けられている。なお、軸部13の側面が、貫通孔10hに玉掛け紐SLが配置された状態で軸部13を一対の開口形成部14a,14bに取り付けた際に、玉掛け紐SLと接触する接触面13fとなる(図3参照)。
【0018】
<係合部15>
図1および図2に示すように、本体部11の一対の側方部14,14はその基端同士が連結されている。例えば、図1および図2に示すように、一対の側方部14,14が略U字状となるように、一対の側方部14,14はその基端同士が連結されている。この一対の側方部14,14の基端同士が連結されている部分には係合部15が設けられている。この係合部15は、先端部分が鉤状に形成された部材であり、玉掛け紐SLの輪状部分Aに引っ掛けることができる形状に形成されている。
【0019】
<本実施形態の玉掛用器具1の使用方法>
本実施形態の玉掛用器具1は以上のような構造を有しているので、玉掛け紐SLを使用した玉掛け作業や、玉掛け紐SLによる搬送部材Tの搬送作業を容易かつ短時間で行うことができる。以下では、玉掛け紐SLによる搬送部材Tの搬送作業に使用する場合を説明する。
【0020】
まず、玉掛け作業を行う前に、本体部11の貫通孔10hに玉掛け紐SLを配置する。具体的には、まず、軸部13が本体部11の一対の側方部14,14間に固定されている状態から(図2(A)参照)、開口形成部14bの雌ねじ穴14sと軸部13の雄ねじ13sとの螺合を解消し、軸部13を開口形成部14aの貫通孔14gから抜き出す(図2(B)参照)。すると、本体部11の貫通孔10hと外部との間が開口10aによって連通した状態とすることができる。
【0021】
本体部11の貫通孔10hと外部との間が開口10aによって連通した状態となると、玉掛け紐SLを本体部11の貫通孔10hに配置する(図3(A)、(B)、図4(A)参照)。玉掛け紐SLが本体部11の貫通孔10hに配置されると、軸部13をその先端から開口形成部14aの貫通孔14gに挿入し、その先端を開口形成部14bの雌ねじ穴14sに軸部13の雄ねじ13sを螺合する。すると、軸部13を一対の開口形成部14a,14b間(つまり一対の側方部14,14間)に固定することができ、玉掛け紐SLを本体部11の貫通孔10hに収容した状態とすることができる(図3(C)、図4(B)参照)。つまり、本体部11を玉掛け紐SLに取り付けることができる。
【0022】
なお、本体部11は、軸部13を開口形成部14aの貫通孔14gから抜き出せば、本体部11の貫通孔10hと外部との間が開口10aによって連通した状態とすることができるので、玉掛け紐SLをその一方の輪状部分Aをクレーンのフックなどに係合した状態でも、本体部11を玉掛け紐SLに取り付けることができる。以下の説明では、玉掛け紐SLの一方の輪状部分A(図4では図示されていない輪状部分A)がクレーンのフックなどに係合しており、そのクレーンのフックから玉掛け紐SLが垂れている状態であることを前提に説明する。
【0023】
このように、玉掛け紐SLを本体部11の貫通孔10hに収容した状態とすると、玉掛け紐SLの長手方向に沿って本体部11を移動させる。具体的には、本体部11を玉掛け紐SLの一方の輪状部分Aに向かって移動させる。このとき、本体部11の貫通孔10hの幅L(図1(B)参照)は玉掛け紐SLをスムースに挿通できる幅に形成されているので、玉掛け紐SLの長手方向に沿って本体部11をスムースに移動させることができる。例えば、本体部11における軸部材12と軸部材13とが並ぶ方向(図1では上下方向)が玉掛け紐SLの表面Sfに対してほぼ直交するようにする。すると、玉掛け紐SLの表面Sfは、一対の軸部12,13の接触面12f,13fのいずれとも接触しないか、一方のみと接触する状態とできるので、玉掛け紐SLの長手方向に沿って本体部11をスムースに移動させて、本体部11を玉掛け紐SLの一方の輪状部分Aに向かって移動させることができる。
【0024】
本体部11が玉掛け紐SLの所望の位置まで移動すると、本体部11を玉掛け紐SLの表面Sfに対して傾けて本体部11を玉掛け紐SLに固定する(図3(B)、図4(C)参照)。つまり、玉掛け紐SLにおいて、本体部11が固定されている位置から他方の輪状部分Aまでの長さが玉掛けに十分な長さになる位置に本体部11を固定する。具体的には、搬送部材Tの周囲に玉掛け紐SLを巻き付けることができるうえで十分な長さになる位置に本体部11を固定する。
【0025】
本体部11は以下の理由により本体部11を玉掛け紐SLに固定することができる。つまり、本体部11の貫通孔10hの幅Lは玉掛け紐SLをスムースに挿通できる幅に形成されているが、一対の軸部12,13の接触面12f,13fの両方に玉掛け紐SLの表面Sfが接触するように本体部11を傾けると、本体部11を玉掛け紐SLに固定できる。具体的には、玉掛け紐SLの表面Sfに対して本体部11を傾けると(例えば、玉掛け紐SLの表面Sf軸方向と本体部11の軸方向とが平行に近づくように傾けると)、一対の軸部12,13の接触面12f,13fの両方に玉掛け紐SLの表面Sfが接触する。すると、一対の軸部12,13の接触面12f,13fと玉掛け紐SLの表面Sfとの摩擦抵抗が大きくなり、また、玉掛け紐SLが湾曲するので、玉掛け紐SLの表面Sfの移動抵抗が大きくなり、本体部11は玉掛け紐SLの長手方向に沿って移動しないように固定される。しかも、本体部11を作業者が保持していなくても、本体部11は自重と一対の軸部12,13の接触面12f,13fと玉掛け紐SLの表面Sfとの摩擦によって玉掛け紐SLの表面Sfに対して傾くので、本体部11を玉掛け紐SLに安定して固定することができる。
【0026】
なお、玉掛け紐SLの両表面Sfが一対の軸部12,13の接触面12f,13fの両方と接触していても、その接触により発生する摩擦が小さい場合には(例えば、玉掛け紐SLの表面Sf軸方向と本体部11の軸方向とのなす角が90度に近い場合)、移動の抵抗はあるものの、本体部11を玉掛け紐SLの一方の輪状部分Aに向かって移動させることは可能である。
【0027】
本体部11を玉掛け紐SLに固定すると、玉掛け紐SLにおいて本体部11よりも他方の輪状部分A側の部分を搬送部材Tの下方に通す。そして、搬送部材Tの下方を通った他方の輪状部分A側の部分を係合部15に係合させる。すると、玉掛け紐SLにおいて本体部11よりも他方の輪状部分A側の部分が搬送部材Tに掛け回された状態とすることができる(図5(A))。
【0028】
玉掛け紐SLにおいて本体部11よりも他方の輪状部分A側の部分が搬送部材Tに掛け回された状態となると、本体部11を玉掛け紐SLの長手方向に沿って移動させる。すると、玉掛け紐SLの表面Sfを搬送部材Tの表面に密着した状態とすることができるので、玉掛け紐SLによって搬送部材Tをしっかりと束ねた状態とすることができる(図5(B))。
【0029】
また、係合部15に引っ掛けられている他方の輪状部分Aを外せば、搬送部材Tを玉掛け紐SLから解放することができる。つまり、従来のように、一方の輪状部分から玉掛け紐SLを抜き取る作業をしなくても、搬送部材Tを玉掛け紐SLから解放することができる。そして、搬送部材Tが玉掛け紐SLから解放されれば、搬送部材Tの下方から玉掛け紐SLを引き抜くことによって、玉掛け紐SLを搬送部材Tから取り外すことができる。
【0030】
以上のように、本実施形態の玉掛用器具10を使用すれば、これらの一連の作業は、玉掛け紐SLの一方の輪状部分Aはクレーンのフックなどに係合したままで作業ができる。つまり、本実施形態の玉掛用器具10を使用すれば、一方の輪状部分から玉掛け紐SLを抜き取る作業をしなくてもよい。すると、玉掛け紐SLの一方の輪状部分Aはクレーンのフックなどに係合したままで作業ができるので、作業者の作業負担を軽減でき、作業時間も短縮できる。
【0031】
また、玉掛け紐SLの一方の輪状部分Aはクレーンのフックなどに係合したままであるので、再度玉掛け紐SLによって搬送部材Tを束ねる作業も容易になる。つまり、搬送部材Tから取り外した玉掛け紐SLの一方の輪状部分Aはクレーンのフックなどに係合した状態である。すると、玉掛け紐SLにおいて本体部11よりも他方の輪状部分A側の部分を搬送部材Tの下を通し、他方の輪状部分A側を係合部15に引っ掛けて本体部11の位置を調整するだけで玉掛け紐SLによって搬送部材Tを束ねることができる。
【0032】
また、本実施形態の玉掛用器具10を取り付けた2本の玉掛け紐SLを使用すれば、チョーク吊りとバスケット吊りを容易に変更することができる。例えば、図7(A)に示すように、本実施形態の玉掛用器具10が取り付けられた2本の玉掛け紐SLをそれぞれ搬送部材Tに掛け回して、2本の玉掛け紐SLの一方の輪状部分Aを係合部15に引っ掛けて玉掛用器具10の本体部11の位置を調整すれば、各玉掛け紐SLによって搬送部材Tをチョーク吊りの状態にすることができる。この状態で、2本の玉掛け紐SLの他方の輪状部分Aを一つのクレーンのフックFに引っ掛ければ、2本の玉掛け紐SLによって搬送部材Tをチョーク吊りすることができる。また、チョーク吊りの状態から一方の輪状部分Aを係合部15から外し、その後、2本の玉掛け紐SLの一方の輪状部分AをクレーンのフックFに引っ掛ければ、2本の玉掛け紐SLによって搬送部材Tをバスケット吊りすることができる(図7(B))。つまり、チョーク吊りからバスケット吊りに容易に変更することができる。なお、バスケット吊りする際には、玉掛け紐SLに沿って玉掛用器具10を移動させて搬送の邪魔にならない位置に固定する。また、バスケット吊りの状態から一方の輪状部分AをクレーンのフックFから外し一方の輪状部分Aを係合部15に引っ掛けて玉掛用器具10の本体部11の位置を調整すれば、2本の玉掛け紐SLによって搬送部材Tをチョーク吊りの状態にすることができる(図7(A))。つまり、バスケット吊りからチョーク吊りに容易に変更することができる。
【0033】
<係合部15について>
上記例では、係合部15として、フックの先端が開放されている鉤状のフックの場合を説明したが、係合部15はフックの先端を閉じる部材が付いたカラビナのようなフックでもよい。また、係合部15は、玉掛け紐SLの輪状部分Aを引っ掛けて保持しておくことができる構造を有していればよく、必ずしも鉤状でなくてもよい。
【0034】
また、本体部11において係合部15が取り付けられる位置はとくに限定されない。例えば、図6(A)に示すように、上述した軸部材12に直接取り付けられていてもよい。つまり、軸部材12の側面に係合部15の基端が固定されていてもよい。
【0035】
また、係合部15の取り付けられる向きはとくに限定されないが、玉掛け紐SLの他方の輪状部分Aを引っ掛けた状態で玉掛け紐SLによって安定して搬送部材Tを束ねる上では、係合部15の基端と先端とを結ぶ線a(図1参照)が、軸部材13を本体部11に取り付けた状態において軸部材12と軸部材13とが並ぶ方向(図1では上下方向)と平行になるように設けられていることが望ましい。なお、ここでいう平行とは、線aと軸部材12と軸部材13とが並ぶ方向とに若干の傾きがある場合も含んでいる。
【0036】
<貫通孔10hについて>
上記例では、貫通孔10hに開口10aが設けられており、この開口10aが一対の側方部14,14の一対の開口形成部14a,14b間に形成されている場合を説明したが、貫通孔10hの開口10aを設ける位置はとくに限定されない。例えば、一対の側方部14,14のうち、一方の側方部14において一対の軸状部12,13間の位置に開口を設けてもよい。この場合も、開口に着脱可能に取り付けられる部材を設けて、開口を塞ぐ、つまり、貫通孔10hを閉じることができるようにしてもよい。
【0037】
また、貫通孔10hに開口を設けた場合、開口を閉じる部材は必ずしも設けなくてもよい。この場合には、開口を通して玉掛け紐SLを貫通孔10hに入れることができ、しかも、玉掛けしたのち搬送部材Tを吊り上げる等の作業をした際に、開口から玉掛け紐SLが簡単に抜け落ちないような大きさや形状に開口は形成されていればよい。例えば、軸状部13に、玉掛け紐SLの幅よりも狭いが玉掛け紐SLの厚さより広い(またはほぼ同じ)幅を有する開口を設ければ、開口を閉じる部材を設けなくてもよい。しかし、玉掛けして搬送部材Tを吊り上げる等の作業を安定して行う上では、開口を閉じる部材を設けることが望ましい。
【0038】
さらに、上記例では、貫通孔10hに開口10aを設けた場合を説明したが、必ずしも開口は設けなくてもよい。図6(B)に示すように、係合部15Cを有する本体部11Cに貫通孔11hを設けて玉掛用器具10Cとしてもよい。この場合には、貫通孔11hの大きさとして、玉掛け紐SLの輪状部分Aを挿通できる大きさに形成する必要がある。しかし、この構成では、貫通孔11hの幅L2がある程度大きくなるので、玉掛用器具10Cの本体部11Bを玉掛け紐SLに固定する力が弱くなる可能性がある。一方、上記例のように、貫通孔10hに開口10aを設ければ、貫通孔10hの幅(つまり軸部材12,13の距離)を狭くすることができるので、玉掛用器具10の本体部11を玉掛け紐SLに固定しやすくなるし、玉掛用器具10の本体部11を玉掛け紐SLに安定して固定しやすくなる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の玉掛用器具は、玉掛け紐によって木材の柱や鉄筋等の建築材料等を束ねて運搬する際に使用する器具として適している。
【符号の説明】
【0040】
10 玉掛用器具
11 本体部
11h 貫通孔
12 軸部
12f 接触面
13 軸部
14s 雌ねじ穴
13f 接触面
14 側方部
14a 開口形成部
14b 開口形成部
14g 挿通孔
14s 雌ねじ穴
15 係合部
SL 玉掛け紐
Sf 表面
A 輪状部分
T 搬送部材
【要約】
【課題】高所作業や柱の設置作業が容易になる玉掛用器具を提供する。
【解決手段】玉掛け紐SLが挿通される貫通孔11hを有する本体部11と、本体部11に設けられた、玉掛け紐SLの輪状部分Aに係合可能に設けられた係合部15と、を備えており、本体部11の貫通孔11hは、玉掛け紐SLの表面Sfが接触する、対向する一対の接触面12f,13fを有している。玉掛け紐SLによる搬送部材Tの保持や開放を簡単にできるので、玉掛け作業を行う作業者の負担を軽減でき作業時間も短縮できる。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7