(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-14
(45)【発行日】2024-06-24
(54)【発明の名称】二値情報を読み取る読取方法、コンピュータ、及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
G06K 7/14 20060101AFI20240617BHJP
G06K 19/06 20060101ALI20240617BHJP
G06K 7/10 20060101ALI20240617BHJP
【FI】
G06K7/14 039
G06K19/06 159
G06K19/06 037
G06K7/10 372
G06K7/14 017
(21)【出願番号】P 2023107536
(22)【出願日】2023-06-29
(62)【分割の表示】P 2018213236の分割
【原出願日】2018-11-13
【審査請求日】2023-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】593006630
【氏名又は名称】学校法人立命館
(74)【代理人】
【識別番号】100111567
【氏名又は名称】坂本 寛
(72)【発明者】
【氏名】道関 隆国
(72)【発明者】
【氏名】福水 洋平
(72)【発明者】
【氏名】大橋 あすか
(72)【発明者】
【氏名】木村 健太郎
【審査官】小林 紀和
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-049615(JP,A)
【文献】特表2005-533303(JP,A)
【文献】特開2014-199510(JP,A)
【文献】特開平09-044620(JP,A)
【文献】特開2014-157519(JP,A)
【文献】特開2013-037559(JP,A)
【文献】特開2015-052839(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 19/06
G06K 7/10
G06K 7/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に二値情報が記録された情報記録媒体から、前記二値情報を読み取る読取方法であって、
前記情報記録媒体の表面は、前記二値情報を面状に表すコードのうちの一方の値を示す第1の区間を表した、前記表面に対して異なる外観となるように表面加工が施された第1の部分及び前記表面加工が施されていない第2の部分を有する第1の領域と、前記コードのうちの他方の値を示す第2の区間を表した、前記表面に対して前記表面加工が施されていない第2の領域と、を有し、
前記読取方法は、前記情報記録媒体の表面の撮影画像においてエッジ抽出をすることで、色の変化の大きい箇所を抽出したエッジ画像を得て、前記エッジ画像に基づいて前記第1の領域及び前記第2の領域の領域ごとに色を統一する
ことを備える、読取方法。
【請求項2】
前記エッジ画像に基づいて前記第1の領域及び前記第2の領域の領域ごとに色を統一することは、前記エッジ画像を二値化した二値画像に対して、前記第1の領域及び前記第2の領域の領域ごとに色を統一する処理を施すことを備える
請求項1に記載の読取方法。
【請求項3】
前記第1の領域及び前記第2の領域の領域ごとに色を統一する前記処理は、前記第1の領域及び前記第2の領域の領域ごとに色が統一されるように、前記二値画像に対して施される膨張収縮処理である
請求項2に記載の読取方法。
【請求項4】
前記第1の領域及び前記第2の領域の領域ごとに色を統一した画像を平滑化処理した平滑化画像を得ることを更に備える
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の読取方法。
【請求項5】
前記平滑化画像に対して白黒反転処理を施すことを更に備える
請求項4に記載の読取方法。
【請求項6】
表面に二値情報が記録された情報記録媒体から、前記二値情報を読み取るコンピュータであって、
前記情報記録媒体の表面は、前記二値情報を面状に表すコードのうちの一方の値を示す第1の区間を表した、前記表面に対して異なる外観となるように表面加工が施された第1の部分及び前記表面加工が施されていない第2の部分を有する第1の領域と、前記コードのうちの他方の値を示す第2の区間を表した、前記表面に対して前記表面加工が施されていない第2の領域と、を有し、
前記情報記録媒体の表面の撮影画像においてエッジ抽出をすることで、色の変化の大きい箇所を抽出したエッジ画像を得て、前記エッジ画像に基づいて前記第1の領域及び前記第2の領域の領域ごとに色を統一する、よう構成されたコンピュータ。
【請求項7】
表面に二値情報が記録された情報記録媒体から、前記二値情報を読み取ることをコンピュータに実行させるコンピュータプログラムであって、
前記情報記録媒体の表面は、前記二値情報を面状に表すコードのうちの一方の値を示す第1の区間を表した、前記表面に対して異なる外観となるように表面加工が施された第1の部分及び前記表面加工が施されていない第2の部分を有する第1の領域と、前記コードのうちの他方の値を示す第2の区間を表した、前記表面に対して前記表面加工が施されていない第2の領域と、を有し、
前記情報記録媒体の表面の撮影画像においてエッジ抽出をすることで、色の変化の大きい箇所を抽出したエッジ画像を得て、前記エッジ画像に基づいて前記第1の領域及び前記第2の領域の領域ごとに色を統一する、ことをコンピュータに実行させるコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、情報記録媒体、転写板、製造装置、及び読取方法に関する。
【背景技術】
【0002】
紙や、コンクリート、木片、金属板などの物体の表面を情報記録媒体として二値情報を記録する一般的な方法として、QR(Quick Response)コード(登録商標)などの二次元コードを印刷する方法が挙げられる。また、例えば、特開平11-96278号公報は、2値データを図形化した情報データに対応し凹凸パターンを成形した板材を物体の表面に貼着する方法を開示している。また、実用新案登録第3203889号公報は、2次元コードを硬質のプレートに形成し、物体に止着して使用する方法を開示している。
【0003】
この方法の場合、例えば、特開平6-139393号公報に開示された方法を利用して、物体の表面に配されたプレートを光学的に読み取ることで情報を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-96278号公報
【文献】実用新案登録第3203889号公報
【文献】特開平6-139393号公報
【発明の概要】
【0005】
しかしながら、上記のような方法では二値情報の2つの値それぞれを表す2つ領域のうちの少なくとも一方の領域が、領域全体に黒色に彩色されたり凸状に加工されたりして、領域全体で異なる態様で表される。そのため、情報記録媒体とする表面の外観が二次元コードがないときの外観から大きく変化する。これにより、情報記録媒体とする表面を見たユーザに違和感を与えたり、表面の美観を損なったりする場合がある。そのため、二値情報が記録されていない場合の外観から大きく変化することなく二値情報を記録することが望まれる。
【0006】
ある実施の形態に従うと、情報記録媒体は表面に二値情報が記録された情報記録媒体であって、二値情報を面状に表すコードのうちの一方の値を示す第1の区間を、表面の領域であって、表面に対して異なる外観となるように表面加工が施された第1の部分及び表面加工が施されていない第2の部分を有する第1の領域で表し、コードのうちの他方の値を示す第2の区間を、表面に対して表面加工を施されていない第2の領域で表す。
【0007】
他の実施の形態に従うと、転写板は、情報記録媒体の表面に二値情報を面状に表すコードを示す形状を転写するための転写板であって、コードのうちの一方の値を示す第1の区間を表す、凹凸が形成された第1の部分及び凹凸が形成されていない第2の部分を有する第1の領域と、コードのうちの他方の値を示す第2の区間を表す、凹凸が形成されていない第2の領域と、を備える。
【0008】
他の実施の形態に従うと、製造装置は、情報記録媒体の表面に二値情報を面状に表すコードを示す形状を転写するための転写板を製造する製造装置であって、コードのうちの一方の値を示す第1の区間に対応した転写板表面の第1の領域の一方の値に対応して予め規定された凹凸を含む第1の部分に凹凸を含む表面加工を施し、第1の領域の凹凸を含まない第2の部分、及び、コードのうちの他方の値を示す第2の区間に対応した転写板表面の第2の領域には表面加工を施さない。
【0009】
他の実施の形態に従うと、読取方法は、表面に二値情報が記録された情報記録媒体から二値情報を読み取る読取方法であって、情報記録媒体の表面は、二値情報を面状に表すコードのうちの一方の値を示す第1の区間を表した、表面に対して異なる外観となるように表面加工が施された第1の部分及び表面加工が施されていない第2の部分を有する第1の領域と、コードのうちの他方の値を示す第2の区間を表した、表面に対して表面加工が施されていない第2の領域と、を有し、情報記録媒体の表面の撮影画像を得るステップと、表面加工による撮影画像における表面の色及び/又は明度の違いに基づいて、撮影画像から第1の領域と第2の領域とを抽出するステップと、撮影画像から抽出された第1の領域の第1の部分と第2の部分とを第1の領域に対応する値に応じた第1の色とするとともに、第2の領域の色を対応する値に応じた第2の色とすることで、撮影画像からコードを表す画像を得るステップと、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施の形態に係る情報記録媒体を正面から撮影した撮影画像を表した図である。
【
図2】
図2は、情報記録媒体に記憶される二値情報を表す平面コードの一例を表した図である。
【
図3】
図3は、情報記録媒体の第1の領域に施される表面加工の一例として、穴が形成された例(
図3A)、突起が形成された例(
図3B)、を表した図である。
【
図6】
図6は、情報記録媒体から二値情報を読み取る読取方法を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、
図6の読取方法における画像の遷移を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[1.情報記録媒体、転写板、製造装置、及び読取方法の概要]
【0012】
(1)本実施の形態に含まれる情報記録媒体は、表面に二値情報が記録された情報記録媒体であって、二値情報を面状に表すコードのうちの一方の値を示す第1の区間を、表面の領域であって、表面に対して異なる外観となるように表面加工が施された第1の部分及び表面加工が施されていない第2の部分を有する第1の領域で表し、コードのうちの他方の値を示す第2の区間を、表面に対して表面加工を施されていない第2の領域で表す。
【0013】
情報記録媒体は、例えば、紙、コンクリート、木片、金属板、などである。二値情報は、第1の値と第2の値との2つの値で表される情報であって、例えば、0と1とで表されるデジタル情報などであって、建築物の壁面や、橋梁等の構造物や、道路などに埋め込まれ一体化されたものを含む。二値情報は、例えば、第1の値を黒、第2の値を白とすることによって、面状のコードで表される。面状のコードは、例えば、QR(Quick Response)コード(登録商標)などの二次元コード、バーコードなどの一次元コードであって、平面状のコードに限定されず、曲面などの非平面状のコードも含む。面状のコードは、第1の値を示す第1の区間と、第2の値を示す第2の区間とからなり、これら区間の配置によって二値情報が表されている。
【0014】
第1の領域が第1の部分と第2の部分とを有するため、第1の領域のうちの第2の部分は、第2の領域と同じ表面形態となる。そのため、第1の領域と第2の領域との外観上の差異を小さくすることができる。その結果、表面に二値情報が記録されることによって表面の外観の変化が抑えられる。そのため、美観が大きく損なわれない。また、与える違和感も抑えられる。
【0015】
(2)好ましくは、表面加工は、表面に凹凸を形成して陰影を生じさせる加工である。この表面加工によって、表面に陰影がある第1の部分及び陰影がない第2の部分を含む領域が第1の領域となり、陰影がない領域が第2の領域となる。これにより、二値情報を記録することによる表面の外観の変化が、第1の部分に陰影が現れることに抑えられる。
【0016】
(3)好ましくは、表面加工は、表面に穴を形成して陰影を生じさせる加工である。この表面加工によって、表面に陰影がある第1の部分及び陰影がない第2の部分を含む領域が第1の領域となり、陰影がない領域が第2の領域となる。これにより、二値情報を記録することによる表面の外観の変化が、第1の部分に陰影が現れることに抑えられる。また、この表面加工によって、表面を光学的に読み取る際に、外乱光などの環境の影響をより受けることなく穴の陰を読み取ることができる。そのため、二値情報の読み取り精度の低下を抑えることができる。
【0017】
(4)好ましくは、二値情報を面状に表すコードは二次元コードである。
【0018】
(5)好ましくは、表面加工は、第1の領域内の複数位置に対して施されている。これにより、外観の変化を抑えつつ、第1の領域を検出しやすくできる。
【0019】
(6)好ましくは、上記複数位置は、第1の領域の中心に対して点対称に位置している。これにより情報記録媒体を光学的に読み取る際の向きが限定されない。
【0020】
(7)好ましくは、情報記録媒体は、第1の領域と第2の領域との境界全体に対応した表面形状を有さない。これにより、外観の変化がより抑えられる。
【0021】
(8)本実施の形態に含まれる転写板は情報記録媒体の表面に、二値情報を面状に表すコードを示す形状を転写するための転写板であって、コードのうちの一方の値を示す第1の区間を表す、凹凸が形成された第1の部分及び凹凸が形成されていない第2の部分を有する第1の領域と、コードのうちの他方の値を示す第2の区間を表す、凹凸が形成されていない第2の領域と、を備える。これにより、(1)~(7)の情報記録媒体の表面に容易に二値情報を記録させることができる。
【0022】
(9)本実施の形態に含まれる製造装置は、情報記録媒体の表面に、二値情報を面状に表すコードを示す形状を転写するための転写板を製造する製造装置であって、コードのうちの一方の値を示す第1の区間に対応した転写板表面の第1の領域の一方の値に対応して予め規定された凹凸を含む第1の部分に凹凸を含む表面加工を施し、第1の領域の凹凸を含まない第2の部分、及び、コードのうちの他方の値を示す第2の区間に対応した転写板表面の第2の領域には表面加工を施さない。これにより、(8)の転写板を容易に製造することができる。
【0023】
(10)本実施の形態に含まれる読取方法は、表面に二値情報が記録された情報記録媒体から、二値情報を読み取る読取方法であって、情報記録媒体の表面は、二値情報を面状に表すコードのうちの一方の値を示す第1の区間を表した、前記表面に対して異なる外観となるように表面加工が施された第1の部分及び表面加工が施されていない第2の部分を有する第1の領域と、コードのうちの他方の値を示す第2の区間を表した、表面に対して表面加工が施されていない第2の領域と、を有し、情報記録媒体の表面の撮影画像を得るステップと、表面加工による撮影画像における表面の色及び/又は明度の違いに基づいて、撮影画像から第1の領域と第2の領域とを抽出するステップと、撮影画像から抽出された第1の領域の第1の部分と第2の部分とを第1の領域に対応する値に応じた第1の色とするとともに、第2の領域の色を対応する値に応じた第2の色とすることで、撮影画像からコードを表す画像を得るステップと、を備える。これにより、(1)~(7)の情報記録媒体から二値情報を読み取ることができる。
【0024】
[2.情報記録媒体、転写板、製造装置、及び読取方法の例]
【0025】
[2.1 情報記録媒体の詳細]
【0026】
図1に示された本実施の形態にかかる情報記録媒体1は、表面1Aに二値情報を示す表面形状を有する領域10を含む。情報記録媒体1は、例えば、紙、コンクリート、木片、金属板、などであって、建築物の壁面や、橋梁等の構造物や、道路などに埋め込まれ一体化されたものを含む。
【0027】
情報記録媒体1は、表面1Aに二値情報を記録可能である。二値情報は、第1の値と第2の値との2つの値で表される情報であって、例えば、0と1とで表されるデジタル情報などである。二値情報は、例えば、第1の値を黒、第2の値を白とすることによって、面状のコード(以下、平面コードと称する)で表される。面状のコードは、平面状のコードに限定されず、曲面などの非平面状のコードも含む。平面コードは、例えば、1次元コード又は2次元コードである。1次元コードは、例えば、バーコードである。2次元コードは、例えば、マトリックス式やスタック式のコードである。マトリックス式2次元コードは、例えば、
図2に示されるような、QR(Quick Response)コード(登録商標)である。
【0028】
平面コードが表された情報記録媒体の表面は曲面であってもよい。円筒や球体の表面に表面加工を施して平面コードを形成することもできる。情報記録媒体は、平面コードが埋め込まれ一体化された建築物の壁面や、橋梁等の構造物や、道路なども含む。
【0029】
図1に示された情報記録媒体1は、一例として
図2に示された平面コードCOで表される二値情報と同様の二値情報を記録している。
図2では、平面コードCOの一部エリアであるエリアBが拡大されている。
図2を参照して、平面コードCOは、第1の値としての「1」を示す第1の区間(セル)C1と、第2の値としての「0」を示す第2の区間(セル)C2とからなり、これら区間C1,C2の配置によって二値情報が表されている。
【0030】
図1において、
図2に示された平面コードCOのエリアBに対応するエリアAが拡大して示されている。
図1を参照して、情報記録媒体1の表面1Aの領域10は、平面コードCOの第1の区間C1を表す第1の領域11と、第2の区間C2を表す第2の領域12とが、平面コードCOにおける第1の区間C1及び第2の区間C2の配置に応じて配置された表面形状を有する。第1の領域11は、情報記録媒体1の表面1Aに対して表面加工が施された第1の部分13と、表面加工がされていない第2の部分14とを有する。第2の領域12は、情報記録媒体1の表面1Aに対して上記表面加工が施されていない領域である。第1の領域11及び第2の領域12は、いずれも、領域の境界15のすべての面積に施された表面形状を有さない。
【0031】
第1の領域11に施された表面加工は、第1の領域11全面よりも少ない範囲に施されるものであって、その表面加工がなされていない第2の部分14の表面1Aとは異なる外観となるような加工である。第2の部分14と第2の領域12とは、いずれも表面加工が施されていないために同じ外観であり、情報記録媒体1の元の表面(本地)を維持している。これにより、第1の領域11と第2の領域12との外観上の差異が小さくなる。その結果、第1の部分が存在することによる外観によって表面1Aを光学的に読み取った画像(撮影画像)から第1の領域11と第2の領域12とを識別可能であるとともに、領域10に平面コードCOを記録させたためことによる表面1Aの外観が大きく変化しない。表面加工が施された第1の部分13の第1の領域11に占める面積の割合が小さいほど与える違和感は小さくなる。そのため、情報記録媒体1の美観を大きく損なったり、違和感を与えたりすることが抑えられる。
【0032】
表面加工は、一例として、
図3Aに示されたように、表面1Aの第1の部分13に穴(凹部)13Aを形成する加工である。この表面加工によって、第1の部分13に陰(陰影)を生じさせる。これにより、表面加工がなされていない第2の部分14及び第2の領域12と異なる外観となる。つまり、表面1Aに穴13Aによる陰がある第1の部分13を含む領域が第1の領域11、陰がない領域が第2の領域12と、表面1Aの外観から識別することができる。また、第1の領域11及び第2の領域12は領域の境界15を示す外観を有さなくても、陰の有無によって第1の領域11と第2の領域12とを識別することができる。
【0033】
また、表面1Aに穴13Aが形成されることで、後述する表面1Aの撮影画像を取得する(光学的に読み取る)際に、外乱光などの環境の影響を受けることなく表面1Aに穴13Aによる陰が生じる。そのため、後述する読取方法の読み取り精度の低下を抑えることができる。つまり、第1の領域を検出しやすくできる。
【0034】
好ましくは、穴13Aの表面1Aからの深さは1mm程度とする。好ましくは、情報記録媒体1が金属プレートなどの表面1Aの反射率が高い素材である場合には、穴13Aの表面1Aからの深さは1mm以上とする。なお、この場合、より好ましくは、表面1A全体の色彩の濃度を濃く、例えば、黒色に着色する。これにより、後述する読取方法の読み取り精度を向上させることができる。
【0035】
また、好ましくは、穴13Aの形状は円形とする。読み取り時の穴13Aに対するカメラの位置の影響が抑えられるためである。また、好ましくは、穴13Aの側面は、所定の表面粗さ以上とする。側面が表面粗さを有している方が乱反射による陰影が生じやすく、表面1Aの撮影画像から識別しやすくなるためである。
【0036】
表面加工は表面1Aに穴13Aを形成する加工のみに限定されない。表面加工がなされていない領域の表面1Aとは異なる外観となるような表面加工であれば他の表面加工であってもよい。表面加工の他の例として、
図3Bに示されたように、表面1Aに第1の領域11全面よりも断面積が小さい突起(凸部)13Bを形成する加工であってもよい。この表面加工によっても、表面加工がなされていない表面1Aと異なる外観として、表面1Aに影(陰影)16を生じさせる。つまり、表面1Aに影16がある第1の部分13を含む領域が第1の領域11、影16がない領域が第2の領域12と、表面1Aの撮影画像から識別することができる。また、第1の領域11及び第2の領域12は領域の境界15を示す外観を有さなくても、影16の有無によって第1の領域11と第2の領域12とを識別することができる。
【0037】
表面1Aに突起13Bが形成されることでも、後述する表面1Aの撮影画像を取得する(光学的に読み取る)際に、外乱光などの環境の影響を大きく受けることなく表面1Aに突起13Bの影が生じる。そのため、後述する読取方法の読み取り精度の低下を抑えることができる。つまり、第1の領域11を検出しやすくできる。
【0038】
表面加工は、
図3Aの穴(凹部)13A又は
図3Bの突起(凸部)13Bのいずれかの加工(凹加工又は凸加工)であってもよいし、これらの組み合わせ(凹凸加工)であってもよい。また、表面加工のさらに他の例として、凹部又は凸部に替わる模様の印刷であってもよい。模様であっても、外観の変化を抑えつつ、第1の領域を検出しやすくできる。
【0039】
図1に示されたように、表面加工である穴13Aは、第1の領域11内に、少なくとも2か所以上、設けられている。すなわち、表面加工は、第1の領域11内の複数位置に対して施されている。言い換えると、第1の部分13は第1の領域11内の複数位置に配置されている。これにより、外観の変化を抑えつつ、第1の領域11を検出しやすくできる。
【0040】
好ましくは、複数の位置に形成されている各々の表面加工の面積の合計は、第1の領域11の面積の1/2以下である。表面加工の面積の合計が小さいほど、外観の変化が抑えられる。一方で、表面加工の面積の合計が小さくなると第1の領域11の検出が困難になる。そのため、より好ましくは、表面加工それぞれの面積を抑えつつ、表面加工の面積の合計が第1の領域11の面積の1/2以下を満たす範囲で表面加工の施されている位置を増加させる。これにより、外観の変化を抑えつつ、検出精度も確保できる。
【0041】
好ましくは、穴13Aは、第1の領域11内の中心に対して点対称に設けられている。言い換えると、第1の部分13は第1の領域11内の中心に対して点対称に配置されている。
図1の例では、穴13Aは第1の領域11内に5個設けられ、それらが、矩形の第1の領域11の中心、及び、中心と各頂点とを結ぶ線分上の中心からの長さの等しい位置に配置されている。これにより領域10を光学的に読み取る際の向きに関わらず第1の領域11を識別することができる。
【0042】
[2.2 転写板の説明]
【0043】
情報記録媒体1の領域10の表面1Aに平面コードCOで表される二値情報を記録させるために、平面コードCOに対応した表面形状を情報記録媒体1の表面1Aの領域10に転写する。一例として、情報記録媒体1の表面1Aに上記表面形状を転写するために転写板を用いる。
【0044】
図4を参照して、転写板5は、台座54表面に、情報記録媒体1の第1の領域11の第1の部分13の表面加工に対応した表面加工が施された第1の部分及び表面加工が施されていない第2の部分14に対応した第2の部分を含む第1の領域51と、情報記録媒体1の第2の領域12の表面加工に対応した、上記表面加工が施されていない第2の領域52と、を有する。
【0045】
転写板5の表面加工は、例えば、穴13Aに対応した突起53である。転写板5の第1の領域51には、一例として、情報記録媒体1の第1の領域11の第1の部分13に対応する部分に穴13Aを形成するための突起53が形成され、第2の部分14に対応する部分及び第2の領域52には突起53が形成されていない。
【0046】
情報記録媒体1の領域10の表面1Aには、転写板5の表面加工がなされた側の面が押し付けられることで、平面コードCOに対応した表面加工が施される。そのため、転写板5の台座54表面には、反転させた平面コードCOに対応させて第1の領域51及び第2の領域52が配置される。第1の領域51に突起53が形成され、第1の領域51が情報記録媒体1の表面1Aに押し付けられることで、第1の領域51のうちの第1の部分が押し付けられた領域に突起53に対応した穴13Aが形成され、その領域が第1の領域11の第1の部分13となる。これにより、容易に情報記録媒体1の表面1Aに二値情報を記録させることができる。
【0047】
[2.3 転写板の説明]
【0048】
図5に示されたように、転写板5は製造装置7によって材料5Aから製造される。製造装置7は、材料5Aから転写板5を製造する製造部74を有する。製造部74は、例えば、3Dプリンタである。
【0049】
製造装置7は、製造部74を制御する、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサを含んだ制御部70と、メモリを有する記憶部71と、を有する。記憶部71には、プロセッサの実行するプログラム711が記憶されている。制御部70からの制御信号は、通信インタフェース(I/F)73を介して製造部74に渡される。また、情報記録媒体1の表面1Aに記録する平面コードCOが、入力部72から入力される。入力部72は、例えば、スキャン、カメラなどである。
【0050】
プロセッサがプログラム711を実行することで、制御部70は変換部701及び生成部702として機能する。変換部701は、入力された平面コードCOを台座54の表面形状に変換する。すなわち、変換部701は、入力された平面コードCOを反転させた上で、第1の区間C1と第2の区間C2とのそれぞれに対応した第1の領域51と第2の領域52とを台座54表面に配置し、各領域の表面形状を決定する。そのため、変換部701は、平面コードCOの値と表面形状との対応関係Cを予め記憶している。
図5の例では、「1」の値に対応した第1の領域51の表面形状が突起53あり、「0」の値に対応した第2の領域52の表面形状が突起53なし、である対応関係Cが記憶されている。これにより、変換部701は、入力された平面コードCOを転写板5の表面形状に変換できる。
【0051】
生成部702は、変換部701での変換結果から製造部74での製造を制御するための制御信号を生成し、通信I/F73を介して製造部74に出力する。この制御信号に従って製造部74の駆動が制御されることで、材料5Aから転写板5が製造される。これにより、転写板5を容易に製造することができる。
【0052】
転写板5の台座54の表面には、平面コードCOを反転させた上で「1」の値に対応した第1の領域51に突起53が形成され、「0」の値に対応した第2の領域52には突起53が形成されていない。そのため、台座54表面側を情報記録媒体1の表面1Aに押し付けることで、穴13Aが形成された第1の領域11の第1の部分13と、穴13Aが形成されていない第2の部分14及び第2の領域12とからなる領域10が形成される。つまり、転写板5を情報記録媒体1の表面1Aに押し付けるだけで、平面コードCOを表す二値情報を情報記録媒体1の表面1Aに記録させることができる。
【0053】
なお、情報記録媒体1の表面1Aに上記表面形状を転写する方法は、転写板5を用いる上記の方法のみに限定されない。他の例として、ドリル、レーザ加工機、ウォータージェット加工機などの加工機を用いて情報記録媒体1の表面1Aに穴13A等の上記表面形状を加工してもよい。情報記録媒体1が既存の建築物の壁面や、橋梁等の構造物や、道路などに埋め込まれ一体化された、コンクリート等のものである場合、一体化された状態でもこのような加工機によって加工することで平面コードCOを表す二値情報を情報記録媒体1の表面1Aに記録させることができる。
【0054】
[2.4 読取方法]
【0055】
情報記録媒体1の表面1Aに記録された平面コードCOを表す二値情報は、コンピュータによって
図6に示された読取方法で読み取られる。すなわち、初めに、二値情報を読み取るコンピュータは、情報記録媒体1の表面1Aの領域10の撮影画像を取得する(ステップS101)。撮影画像は、例えば、カメラによって表面1Aのカラー撮影するなどによって取得される。ステップS101では、
図1の撮影画像が取得される。
【0056】
次に、取得したカラー画像をグレースケール変換する(ステップS103)。情報記録媒体1の第1の領域11の第1の部分13には穴13Aが形成されているため、撮影画像においては、第1の部分13には黒色の陰が存在し、第2の部分14及び第2の領域12は情報記録媒体1の表面1Aの色となる。ステップS103の処理によって、第1の部分13は陰によってグレーのブロックとなり、第2の部分14及び第2の領域12は陰が含まれない分、第1の部分13より薄い色となる。一例として、
図1の画像は、
図7のステップS103で示されたグレースケール画像となる。
【0057】
次に、得られたグレースケール画像からエッジを検出する(ステップS105)。エッジは、第1の部分13と、第2の部分14及び第2の領域12との境界に相当する。ステップS105では、色の変化の大きい箇所(高周波成分)をエッジとして抽出するために、ステップS103で得られたグレースケール画像に微分フィルタを適用する。微分フィルタは、例えば、ソーベルフィルタである。ステップS105の処理によって、
図7のステップS103で示されたグレースケール画像がステップS105で示されたエッジ画像となる。
【0058】
次に、得られたエッジ画像を二値化処理する(ステップS107)。ステップS107では、一例として、高周波部分を白ブロックに、色の変化の小さい低周波部分を黒ブロックに変換する。これにより、概ね第1の領域11が白ブロックに、第2の領域12が黒ブロックに変換される。ステップS107の処理によって、
図7のステップS105で示されたエッジ画像がステップS107で示された二値画像となる。
【0059】
次に、得られた二値画像に対して膨張及び収縮処理を施す(ステップS109)。ステップS109では、ステップS107で得られた二値画像に対して膨張及び収縮処理が施されることで高周波ブロックが生成される。ステップS109での膨張処理及び縮小処理は、領域ごとに色を統一する処理の一例であって、各領域を全体で黒又は白とする処理の一例である。これにより、第1の領域11全体が白ブロックになるとともに、第2の領域12全体が黒ブロックとなる。ステップS109の処理によって、
図7のステップS107で示された二値画像がステップS109で示された画像となる。
図7に示されたように、ステップS109の処理によって、高周波の小さな点線のパターンが平面コードの実線のパターンに変換される。
【0060】
次に、ステップS109で得られた画像を平滑化処理することで、ステップS109で得られた画像からノイズを除去する(ステップS111)。ステップS111では、一例としてメディアンフィルタが適用される。ステップS111の処理によって、
図7のステップS109で示された膨張及び収縮処理後の画像が、ステップS111で示された平滑化画像となる。
図7に示されたように、ステップS111の処理によって、膨張及び収縮処理後の画像からデコードの障害となるノイズが除去される。
【0061】
次に、ステップS111で得られた平滑化画像に対して白黒反転処理が施される(ステップS113)。上記ステップS107では高周波部分が白、低周波部分が黒に変換されたため、第1の領域11で表される「1」の区間C1を示す領域を黒、「0」の区間C1を示す領域を白と、予め規定された平面コードCOと同じ方法で表現するためには、白黒の反転が必要となるためである。ステップS113では、白又は黒の色の違いに基づいて第1の領域11と第2の領域12とが抽出される。又は、ステップS113で、明度の違い(明暗コントラスト)に基づいて第1の領域11と第2の領域12とが抽出されてもよい。又は、色の違いと明度の違いとの組み合せに基づいて第1の領域11と第2の領域12とが抽出されてもよい。ステップS113の処理によって、
図7のステップS111で示された、二値画像である平滑化画像が、ステップS113で示されたように白黒反転された画像となる。
【0062】
図7のステップS113で示された画像は、従来のQRコード(登録商標)である二次元コードを示す画像である。つまり、以上の処理によって、情報記録媒体1の表面1Aに第1の領域11及び第2の領域12を配置することで記録された情報は読み取られ、元の平面コードCOに復号される。そこで、ステップS113の画像が得られると、一般的な平面コードの読み取り処理を実行することで(ステップS115)、平面コードCOで示された二値情報が得られる。すなわち、上記のステップS101~S113の処理をコンピュータによって行っておくことで、情報記録媒体1の表面1Aから、一般的な平面コードの読み取り処理によって二値情報が得られる。
【0063】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【符号の説明】
【0064】
1 :情報記録媒体
1A :表面
5 :転写板
5A :材料
7 :製造装置
10 :領域
11 :第1の領域
12 :第2の領域
13 :第1の部分
13A :穴
13B :突起
14 :第2の部分
15 :境界線
16 :影
51 :第1の領域
52 :第2の領域
53 :突起
54 :台座
70 :制御部
71 :記憶部
72 :入力部
73 :通信I/F
74 :製造部
701 :変換部
702 :生成部
711 :プログラム
A :エリア
B :エリア
C :対応関係
C1 :第1の区間
C2 :第2の区間
CO :平面コード