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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-14
(45)【発行日】2024-06-24
(54)【発明の名称】原料ガスから炭素材料を製造する方法
(51)【国際特許分類】
   C25B 1/135 20210101AFI20240617BHJP
   C25B 15/02 20210101ALI20240617BHJP
   C25B 15/08 20060101ALI20240617BHJP
【FI】
C25B1/135
C25B15/02
C25B15/08
【請求項の数】 5
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023223832
(22)【出願日】2023-12-30
【審査請求日】2024-02-06
(31)【優先権主張番号】2319842.7
(32)【優先日】2023-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522432077
【氏名又は名称】アップ カタリスト オウ
(74)【代理人】
【識別番号】100124349
【弁理士】
【氏名又は名称】米田 圭啓
(72)【発明者】
【氏名】エイナル カロ
(72)【発明者】
【氏名】ガリ ユール
【審査官】瀧口 博史
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-513911(JP,A)
【文献】特表2019-535906(JP,A)
【文献】特表2020-514542(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2022/0388847(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の炭素含有原料ガスから炭素材料を製造する方法であって、以下の工程を含む方法:
(a) 反応チャンバ内で1つ以上の電解質を溶融する工程、
(b) 溶融した前記電解質に触媒を添加する工程であって、下記(d)の工程前及び工程中に、前記電解質の全質量に対して0.03wt%から0.5wt%までの前記触媒を16.7ppm時-1から277.8ppm時-1までの投与速度で添加する工程、
(c) 少なくとも4.2標準cm3 min-1 A-1 質量当量CO2の流量で、前記1つ以上の炭素含有原料ガスを溶融した前記電解質に供給する工程、
(d) 溶融した前記電解質と接触している1つ以上のアノード及び1つ以上のカソードに、100 A m-2から 20000 A m-2までの範囲の直流電流密度を供給する工程。
但し、前記炭素材料が多層カーボンナノチューブであり、前記1つ以上の炭素含有原料ガスがCO 2 であり、前記電解質がLi 2 CO 3 を含み、前記触媒がFe 2 O 3 である。
【請求項2】
前記(a)の工程において、前記1つ以上の電解質を400℃から900℃までの温度に加熱する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1つ以上のカソードから前記炭素材料を除去する工程を前記(d)の工程後にさらに含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記(c)の工程において、前記1つ以上の炭素含有原料ガスが溶融した前記電解質中にバブリングされる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記(b)の工程において、前記投与速度が実質的に線形である、請求項1又は2に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に炭素材料の製造に関し、より具体的には、原料ガスから炭素材料を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
粉末や分散液など様々な形態の炭素材料は、その電気的及び機械的特性により、エネルギー貯蔵デバイス(例えば、スーパーキャパシタ、電池、燃料電池、その他のエネルギー貯蔵システム)の製造においてますます重要性を増している。グラファイト、グラフェン、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンナノスフェア又は他の炭素材料などの炭素材料を製造するための様々な方法及びシステムが知られている。既知の方法の一つは、例えば、化学気相成長法(CVD法)であり、これはカーボンナノチューブを製造するための現在の業界標準である。CVD法は、1トンのカーボンナノチューブを製造するのに800MWhのエネルギーを使用する。このように、炭素材料を製造するためのエネルギー使用量は膨大であり、これが製造コストを非常に高くしている。そのため、炭素材料の生産におけるエネルギー消費を削減する必要がある。さらに、CVD法は化石燃料に基づく原料を使用するので、環境に有害である。
【0003】
US20220388847にてLichtらは、反応容器の電極間に溶融炭酸塩電解質と炭素含有投入物を使用した電解反応により、螺旋状カーボンナノ構造物を合成する方法を提案している。
【0004】
LiuらによるCatalysts 2022, 12, 125 の"Controlled Growth of Unusual Nanocarbon Allotropes by Molten Electrolysis of CO2"は、上記と同様の技術に関するもので、得られるナノカーボンの形態に溶融電解質中の異なる添加剤が及ぼす影響をさらに開示している。
【0005】
Laasonenらは、"Insights into carbon production by CO2 reduction in molten salt electrolysis in coaxial-type reactor "の中で、CO2の溶融塩電解の電圧-電流特性を研究する目的で、触媒無しで様々な電解質を用いてCO2を炭素に還元するために使用される同軸型反応器を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許出願公開第2022/0388847号明細書
【非特許文献】
【0007】
【文献】Xinye Liu et al, "Controlled Growth of Unusual Nanocarbon Allotropes by Molten Electrolysis of CO2 ", Catalysts 2022, 12, 125
【文献】Emma Laasonen et al, "Insights into carbon production by CO2 reduction in molten salt electrolysis in coaxial-type reactor", Journal of Environmental Chemical Engineering 10 (2022) 106933
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本出願は、炭素含有原料ガスから炭素を製造するための改良された方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の目的は、炭素材料を製造するための効率的な解決策を提供することである。本開示の目的は、引用する添付の独立請求項に定義されるとおり、原料ガスから炭素材料を製造する方法によって達成される。有利な特徴は、添付の従属請求項に記載されている。
【0010】
本開示の好ましい実施形態によれば、炭素材料を製造する方法であって、次の工程を含む方法が提供される:反応チャンバ内で1つ以上の電解質を溶融する工程、前記電解質の全質量に対して0.03wt%から0.5wt%までの触媒を16.7ppm時-1から277.8ppm時-1までの投与速度で添加する工程、前記反応チャンバ内の溶融した前記電解質に、少なくとも4.2標準cm3-1 A-1 質量当量のCO2を含む流量で、1つ以上の原料ガスを供給する工程、1つ以上のアノード及び1つ以上のカソードに、100 A m-2から20000 A m-2までの範囲(好ましくは、最大6000 A m-2)の直流電流密度を供給する工程。本開示による方法の利点は、触媒がより効率的かつ制御された方法でカソードに到達し、カーボンナノチューブ成長核形成中心を提供し、より高品位のカーボンナノチューブ形態をもたらすことである。
【0011】
本方法により、炭素材料の年間生産量をトン単位で効率的に増加させることができ、同時に排出されるCO2 の量を削減することができる。加えて、本方法は、エネルギー貯蔵デバイスに適した形態を達成するために、制御された方法で炭素材料を製造することを可能にする。製造された材料は、炭素質粉末、炭素質分散体、酸化炭素粉末、ヘテロ原子富化粉末の製造に使用することができ、これらは電気自動車用電池、定置型エネルギー貯蔵(例えば、リチウムイオン電池、リン酸鉄リチウム電池、ナトリウムイオン電池、リチウムシリコン電池)に使用される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の詳細な説明は本開示の実施形態及びそれらが実施され得る方法を示す。
【0013】
本発明を実施するのに適した装置は、少なくとも1つのアルカリ電解質又は1つ以上のアルカリ土類電解質から選択される1つ以上の電解質を収容するように適合された反応チャンバと、三次元構造に配置された1つ以上のアノードと、1つ以上のカソードと、前記1つ以上のアノード及び前記1つ以上のカソードに電流を供給するための電源と、前記1つ以上の電解質を溶融するために前記反応チャンバを加熱するように構成された加熱ユニットと、1つ以上の原料ガスを前記反応チャンバ内の溶融電解質に供給するように構成されたガス供給ユニットと、を含む。
【0014】
しかしながら、当業者は任意の適切な従来の装置を使用し得ることを理解するであろう。
【0015】
装置は、1つ以上の原料ガスから炭素材料を製造するシステムで機能するように2つ以上の装置で構成されたモジュール式装置であってもよい。装置は、原料ガスを排出する工場又は生産ネットワークに接続することができる。
【0016】
装置の反応チャンバは、少なくとも1つのアルカリ電解質又は1つ以上のアルカリ土類電解質から選択される1つ以上の電解質を収容するように適合され、円形又は正方形の断面を有していてもよい。反応チャンバは、ニッケル合金製であり、NiCoCrAl[Ta, Hf, Si]Y、耐食性を向上させるためのアルミナ(Al2O3)コーティング、又はアルミナ(Al2O3)のようなセラミックタイルで任意に被覆されていてもよい。
【0017】
本開示の方法によれば、反応チャンバは、電解、精製及びヘテロ原子による官能基化に使用される。反応チャンバは、電解質媒体(リチウム、カリウム、炭酸ナトリウムもしくはハロゲン化物のうちの1つ又は組み合わせ、あるいはそれらの任意の混合物からなる)を収容するように適合された金属容器を含む。特に、反応チャンバは、少なくとも1つのアルカリ電解質又は1つ以上のアルカリ土類電解質を含む1つ以上の電解質を収容するように適合される。実施形態によれば、1つ以上の電解質は90%から100%までの炭酸塩電解質を含む。炭酸塩電解質は、Na2CO3、Li2CO3、K2CO3、BaCO3、CaCO3の少なくとも1つであるように選択される。
【0018】
本開示の実施形態によれば、1つ以上の電解質は、Fe2O3、Li2O、LiOH、NiO、ZnO、Cr2O3、Ni又はその他から選択される少なくとも1つである触媒をさらに含む。電解質中のFe2O3、Li2O、LiOH、NiO、ZnO、Cr2O3、Niの量は、0.03wt%から10wt%(好ましくは0.03wt%から0.5wt%)である。触媒により、炭素材料の粒子の構造を制御して得ることができる。例えば、Fe2O3は、直鎖状又は主に絡み合ったカーボンナノチューブを得ることを可能にする。金属酸化物、例えば、Fe2O3(好ましくは0.1wt%)を、合成プロセス全体を通して連続的に制御された線形の投与形態で電解質に添加することにより、核生成中心を生成することがさらに可能となる。任意に、反応チャンバはニッケル金属合金を含む。ニッケル金属合金を含む反応チャンバの利点は、低不純物レベルと均一な炭素形態を達成できることである。
【0019】
1つ以上のアノード及び1つ以上のカソードに電流を供給するための電源は、12000 - 24000アンペア(A)の電流を装置に供給するように適合される。例えば、4000 A。本開示の実施形態によれば、供給される直流電流密度は、100 A m-2 から 20000(好ましくは 6000)Am-2 までの範囲である。例えば、直流(DC)電源又は整流器を使用する場合、正極(+)端子は1つ以上のアノードに接続され、負極(-)端子は1つ以上のカソードに接続される。高電流密度と低電圧により、炭素材料の成長を遅くすることができ、したがって炭素材料の構造が改善される。電源としては、太陽光、風力、水力などの再生可能エネルギーを使用することができる。
【0020】
本開示の実施形態において、加熱ユニットは、反応チャンバ内の1つ以上の電解質を400℃から900℃までの温度に加熱するように構成される。炭酸リチウム電解質の場合、好ましい範囲は730℃から800℃までである。加熱ユニットは、反応チャンバを加熱するための1つ以上の断熱工業用オーブンであってもよい。加熱ユニットにより、反応チャンバ内で溶融塩を得ることができる。反応チャンバを例えば770℃まで加熱して、電解質(例えば、炭酸リチウム)を溶融させてもよい。
【0021】
反応チャンバ内の溶融電解質に1つ以上の原料ガスを供給するためのガス供給ユニットは、装置が作動している間、ガスを連続的に供給するように構成される。ガス供給ユニットは、原料ガスを電解質中に均一に拡散させる手段を備えていてもよい。原料ガスを拡散させるそのような手段は、反応チャンバ内に配置された原料ガスの配管であってもよい。任意に、ガス供給ユニットは、CO2ガスを電解質に均一に拡散させる電解質混合手段を備える。電解質混合手段により、ガスは電解質中に均一に溶解され分散され得る。その反応器中の物質輸送が遅いと、酸化物の濃度勾配が生じ、アノードの腐食が早まる。電解質混合手段は、孔を有するS字管であってもよく、反応チャンバの電解質内に配置されてもよい。原料ガスが電解質内のS字管を通って圧送されると、電解質中に原料ガスのバブリングが発生し、電解質の混合が可能となる。
【0022】
本開示の実施形態によれば、1つ以上の原料ガスは、CO、CO2もしくはCH4のうちの1つ以上を含む排ガス又は工業ガスのうちの少なくとも1つを含む。排ガス、工業排ガス、CO2を含むその他の廃ガスなどの原料ガスを使用することによって、環境破壊を低減することができる。例えば、CO2は、産業廃棄物CO2又は重工業排出源からの排気CO2であってもよく、本開示によれば、炭素材料を製造するための原料として使用される。
【0023】
本方法は、加熱ユニット(例えば、炉)、反応チャンバ、三次元構造に配置された1つ以上のアノード、ガス供給ユニット、及び電源を含む装置によって実施することができる。
【0024】
電極と電解質(例えば、炭酸リチウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、ハロゲン化リチウム、ハロゲン化カリウム、ハロゲン化ナトリウム、又はそれらの任意の混合物など)が反応チャンバに挿入される。電極は電源に接続され、電流が電極に供給されると、電解プロセスが開始される。電源は、電解質を固体炭素と溶解アルカリ金属酸化物に分割するために電極に電子を供給する。そのときの電流入力は12000 - 24000 Aの範囲で、直流電流密度は100 A m-2 から20000 A m-2 までの範囲である。電源のプラス(+)端子の直流電流はアノードに接続され、マイナス(-)端子は1つ以上のカソードに接続される。カソード表面積当たりに使用される比電流密度は、例えば0.08 A cm-3 - 0.16 A cm-3である。
【0025】
電極と電解質は、理想的には450℃から850℃までの温度で加熱される。電解質としては炭酸リチウムが好適に使用される。加熱ユニットを770℃に加熱して電解質を溶融し、酸化鉄(III) Fe2O3触媒(0.1 wt%にて)を電解質塩に添加して核生成中心を生成する。
【0026】
酸化物アニオンは1つ以上のアノードに移動し、そこで酸化されて気体酸素になる。同時に、電解質はCO2を容易に吸収する。電気化学プロセスは、溶融電解質と電極への加電位によって開始される。この過程でCO2分子はCとO2に分離される。酸素が発生し、任意で換気システムによって反応チャンバから排出される。同時に、炭素は電極の1つ以上のカソードに集められる。
【0027】
濃縮されたCO2は、反応チャンバの底部近くに設置され、かつチューブの底側に孔が空いたS字型のガス供給ユニットを介してバブリングされる。CO2の流量は、好ましくは少なくとも4.2標準cm3 min-1 A-1 とする必要がある。
【0028】
最大流量はバブリングによって制限され、バブリングが激しすぎると、電解質と電極との接触面積が減少する。電極に電流を供給すると、電解プロセスが始まる。炭素はLi2CO3から多層カーボンナノチューブ(MWCNT)のような炭素材料に変化し、カソード上に析出する。
【0029】
このプロセスは4電子還元である。この変換により、Li2OとO2ガスも生成され、溶融電解質から泡状で放出される。一方、生成されたLi2Oは、炭素捕獲の役割を果たすために、流入してくるCO2と即座に反応し、Li2CO3を生成する。したがって、このプロセスはCO2と電気エネルギに依存しており、これらがこのプロセスにおける唯一の消耗品である。
【0030】
プロセスの始めに、添加物を含む電解質は、反応チャンバが置かれた加熱ユニットによって溶融される。電解質が溶融状態になった後、マスフローコントローラー(MFC)によりCO2の流れがオンにされ、電極が溶融電解質中に下降される。その後、電源からの電流がオンにされ、電解電気化学変換プロセスが開始される。MWCNTが、カソード上で約0.12 g A-1 h-1 の速度で成長する。アノードとカソードとの間で起こる抵抗加熱は、溶融電解質に過度の熱を放出して溶融状態を維持する。したがって、加熱ユニットは、電解質塩を溶融させる最初と、電解電流がオフになっている間とだけ余分な加熱を必要とする。
【0031】
この方法は、電解質に添加剤、例えば、N、S、B、Fe、Mn、Co、Ni、Zn、P、Cu、Cr、Tiなどのドーパントヘテロ原子を含む電解質ドーパント添加剤を加える工程をさらに含んでいてもよい。このような添加剤を加えることで、電極からの不純物の代わりに触媒として作用する金属酸化物を制御された量にて電解質に含めることができる。
【0032】
一実施形態では、1つ以上の原料ガスは、反応チャンバ内の溶融電解質中にてバブリングされる。バブリングされたガスは、溶融電解質中で混合され、電極に導かれることが可能となる。
【0033】
したがって、本開示の実施形態による方法は、カーボンナノチューブ(CNT)、カーボンナノスパイラル、カーボンナノスフェア、カーボンナノファイバー(CNF)、カーボンナノフレーク、多層カーボンナノチューブ(MWCNT)、酸化多層カーボンナノチューブ(OMWCNT)などの炭素材料を製造する。
【0034】
本開示の追加的な態様、利点、特徴及び目的は、図面及び以下に続く添付の特許請求の範囲と関連して解釈される例示的な実施形態の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0035】
以下の例示的な実施形態の詳細な説明と同様に、上記の要約は、添付の図面と併せて読むとより良く理解される。本開示を説明する目的で、本開示の実施形態の例示的な構成を、以下の図を参照して、図面に示す:
図1図1は、本開示による1つ以上の原料ガスから炭素材料を製造するための装置の一実施形態を示すブロックスキームである;
図2図2は、本発明を実施するための装置の一実施形態を示す概略図である;そして、
図3図3A及び図3Bは、触媒をバルクで添加した場合と制御された添加形態で添加した場合とで比較した、形成されるカーボンナノ構造のSEM画像である。
【図面の詳細な説明】
【0036】
図1を参照すると、本開示による1つ以上の原料ガスから炭素材料を製造するための装置の一実施形態を示すブロックスキームが示されている。装置100は、反応チャンバ120と、電源160と、加熱ユニット170と、ガス供給ユニット180とを備える。
【0037】
図2を参照すると、本開示に係る装置の一実施形態の概略図が示されている。装置100は、排水口123を有する加熱ユニット170と、加熱ユニット170に挿入可能な反応チャンバ120とを備え、反応チャンバ120は排水路125及びガス供給ユニット180を備える。また装置100は、アノード取り付け用のソケットを有する第1のフレーム128及びカソード取り付け用のカソードソケットを有する第2のフレーム130を持つ電極インターフェースと、第1のフレーム128のソケットに取り付け可能に適合され、三次元構造に配置されたシートアノード140と、第2のフレーム130のソケットに取り付け可能に適合された複数のカソード150と、炉のカバー132とを備える。
【0038】
ガス供給ユニット180は反応チャンバ120内に配置される。第1のフレーム128に取り付けられ、三次元構造に配置されたアノード140は、1つ以上の電解質の容器に挿入可能であり、三次元構造に配置されたアノード140が反応チャンバ120に挿入されると、ガス供給ユニット180のパイプラインが反応チャンバ120内に配置される。第2のフレーム130に取り付けられた複数のカソード150は反応チャンバ120に挿入可能である。
【0039】
図3Aを参照すると、バルク触媒添加法によって得られ、カーボンブラックと混合されたカーボンナノチューブの形態のSEM画像が示されている。図3Bは、本発明の制御された触媒添加方法によって得られ、カーボンブラックと混合されたカーボンナノチューブの形態のSEM画像を示す。
【実施例
【0040】
カーボンナノ材料は、インコネル(Inconel)600容器内で合成され、ステンレス鋼製の安全容器内に確実に配置された。インコネル600容器は、0.1 wt%のFe2O3(純度 ≧96%, シグマ・アルドリッチ(Sigma Aldrich),ドイツ)を添加した高純度Li2CO3(>99%,)で満たされた。インコネル600のアノードとモネル(Monel)400のカソードは、反応器の底から約1 - 2 cm上に配置した。正確なカソード表面積測定により決定された直流電気プログラムを適用することによって電解が開始された。供給電流を経時的に調整するために、制御可能な電源を使用した。加圧されたCO2(>98%の純度)は、マスフローコントローラーによって維持された一定流量(4.2標準cm3 min-1 A-1 質量当量)で溶融塩の底に導かれた。合成時間は18時間に設定した。
【0041】
反応終了後、炭素生成物をカソードから除去した。回収した材料は、過剰な電解質及び金属不純物を除去するために、10 M HClを用いた洗浄工程を含む電解質脱塩に付した。その後の工程は、水洗浄による中和、真空ろ過、60℃で12時間のオーブン乾燥であった。
【0042】
結果を図3Aに示す。
【0043】
別の実験では、カーボンナノ材料がインコネル600容器内で合成され、ステンレス鋼製の安全容器内に確実に配置された。インコネル600容器は高純度Li2CO3(>99%)で満たされた。電解質を一晩かけて溶融させ、均一性と完全な水分除去を確保した。
【0044】
インコネル600のアノードとモネル400のカソードは、反応器の底から約1 - 2 cm上に配置した。正確なカソード表面積測定により決定された直流電気プログラムを適用することによって電解が開始された。供給電流を経時的に調整するために、制御可能な電源を使用した。加圧されたCO2(>98%の純度)は、マスフローコントローラーによって維持された一定流量(4.2標準cm3 min-1 A-1 質量当量)で溶融塩の底に導かれた。電解合成開始の1時間前に、Fe2O3の制御添加を、質量投与速度52.6ppm時間-1 の一定速度で開始し、合成終了までの全溶融電解質量の0.1wt%の全触媒量に達するまで行った。合成時間は18時間に設定した。
【0045】
反応終了後、炭素生成物をカソードから除去した。回収した材料は、過剰な電解質及び金属不純物を除去するために、10 M HClを用いた洗浄工程を含む電解質脱塩に付した。その後の工程は、水洗浄による中和、真空ろ過、60℃で12時間のオーブン乾燥であった。
【0046】
結果を図3Bに示す。
【0047】
第1の実験のSEM画像の結果(図3A)からわかるように、触媒をバルクで一度に添加した場合、最終的な炭素生成物の形態は明確な多層カーボンナノチューブ(MWCNT)ではない。むしろ、球状炭素(カーボンブラック[CB]/ナノオニオン)の混合物がわずかに成長し始めることとなり、結果的にCB/MWCNTの低グレード混合物となる。この理由は、Fe2O3触媒の大部分が反応容器の底に落ちるからである。このことは、アルミナ棒で溶融電解質混合物をわずかに攪拌しても検出可能であり、混合物の底部で粘度が高くなっていることがわかった。触媒が底に落ちると、Fe2O3が効率よくカソードに到達しなくなり、もはやカーボンナノチューブ成長の核生成中心として機能しなくなる。
【0048】
第2の実験の制御された添加方法によって、図3BのSEM像の結果は、Fe2O3触媒を合成プロセス全体を通して制御された一定の方法で添加することで、より明確なMWCNT形態を有する炭素生成物が得られることを実証している。
【0049】
18時間の合成終了までに反応容器中の全電解質質量から0.03 wt% - 0.5 wt%のFe2O3の添加総量に達するように決定された適切な範囲は、16.7ppm時-1から277.8ppm時-1である。Fe2O3触媒の濃度が高くなりすぎると、最終炭素製品の形態が再び低品位炭素に変化する。
【要約】      (修正有)
【課題】炭素含有原料ガスから炭素を製造するための改良された方法を提供する。
【解決手段】一つ以上の炭素含有原料ガスから炭素材料を製造する方法であって、反応チャンバー内で1つ以上の電解質を溶融し、前記電解質の全質量に対して0.03wt%から0.5wt%までの触媒を16.7ppm時間-1から277.8 ppm時-1までの投与速度で添加し、少なくとも4.2標準cm3-1A-1質量当量のCO2を含む流量で1つ以上の原料ガスを前記反応チャンバ内の溶融した前記電解質に供給し、そして、1つ以上のアノード及び1つ以上のカソードに100 A m-2から20000 A m-2までの範囲の直流電流密度を供給する方法。
【選択図】図3
図1
図2
図3