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特許7504521電動弁制御装置および電動弁装置、ならびに、電動弁の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-14
(45)【発行日】2024-06-24
(54)【発明の名称】電動弁制御装置および電動弁装置、ならびに、電動弁の制御方法
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/04 20060101AFI20240617BHJP
   F25B 41/35 20210101ALI20240617BHJP
【FI】
F16K31/04 A
F16K31/04 Z
F25B41/35
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2023551337
(86)(22)【出願日】2022-09-20
(86)【国際出願番号】 JP2022034932
(87)【国際公開番号】W WO2023054050
(87)【国際公開日】2023-04-06
【審査請求日】2023-09-12
(31)【優先権主張番号】P 2021162138
(32)【優先日】2021-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】391002166
【氏名又は名称】株式会社不二工機
(74)【代理人】
【識別番号】110002608
【氏名又は名称】弁理士法人オーパス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】萩元 大志
(72)【発明者】
【氏名】石塚 勇介
【審査官】西山 智宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-016247(JP,A)
【文献】特開昭58-116096(JP,A)
【文献】特開2005-027370(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/04
F25B 41/35
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁座を有する弁本体と、前記弁本体に対して回転可能なローターと、複数のコイルを有しかつ前記ローターとともにステッピングモーターを構成するステーターと、前記弁座と向かい合い、前記ローターが第一方向に回転すると前記弁座に向けて押される弁体と、前記ローターが基準位置にあるときに前記ローターの前記第一方向への回転を規制するストッパ機構と、を有する電動弁を制御する電動弁制御装置であって、
前記複数のコイルのそれぞれに駆動電流を供給して前記ローターを前記第一方向に回転させる回転制御部と、
前記ローターの回転によって前記複数のコイルのそれぞれに生じる電圧を取得する電圧取得部と、
(i)1つの前記コイルに生じる前記電圧の波形において周期的に観測される波の振幅、および(ii)1つの前記コイルに生じる前記電圧の波形において周期的に観測される波とは異なる新たな波の周期的な出現、のうちの少なくとも1つに基づいて、前記電動弁が前記ストッパ機構によって前記ローターの前記第一方向への回転が規制される回転規制状態であるか否かを判定する状態判定部と、を有することを特徴とする電動弁制御装置。
【請求項3】
前記ステーターが、A相ステーターとB相ステーターとを有し、
前記A相ステーターが前記複数のコイルのうちの1つを有し、
前記B相ステーターが前記複数のコイルのうちの他の1つを有し、
前記電圧取得部が、前記回転制御部がA相ステーターの前記コイルおよびB相ステーターの前記コイルの一方のみに駆動電流を供給したときに他方に生じる前記電圧を取得する、請求項1に記載の電動弁制御装置。
【請求項4】
前記基準位置が、前記ローターが前記弁座に前記弁体が接する閉弁位置よりさらに前記第一方向に回転した位置にあり、
前記状態判定部が、前記電圧の波形において周期的に観測される波の振幅が漸減したとき、前記電動弁が前記ローターが前記閉弁位置と前記基準位置との間にある中間状態であると判定する、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の電動弁制御装置。
【請求項5】
弁座を有する弁本体と、前記弁本体に対して回転可能なローターと、複数のコイルを有しかつ前記ローターとともにステッピングモーターを構成するステーターと、前記弁座と向かい合い、前記ローターが第一方向に回転すると前記弁座に向けて押される弁体と、前記ローターが基準位置にあるときに前記ローターの前記第一方向への回転を規制するストッパ機構と、を有する電動弁を制御する電動弁制御装置であって、
前記複数のコイルのそれぞれに駆動電流を供給して前記ローターを前記第一方向に回転させる回転制御部と、
前記ローターの回転によって前記複数のコイルのそれぞれに生じる電流を取得する電流取得部と、
(i)1つの前記コイルに生じる前記電流の波形において周期的に観測される波の振幅、および(ii)1つの前記コイルに生じる前記電流の波形において周期的に観測される波とは異なる新たな波の周期的な出現、のうちの少なくとも1つに基づいて、前記電動弁が前記ストッパ機構によって前記ローターの前記第一方向への回転が規制される回転規制状態であるか否かを判定する状態判定部と、を有することを特徴とする電動弁制御装置。
【請求項6】
前記電動弁と、請求項1または請求項5に記載の電動弁制御装置と、を有する電動弁装置であって、
前記弁体が、前記弁座と向かい合い、前記ローターが前記第一方向に回転するとコイルばねを介して前記弁座に向けて押され、
前記基準位置が、前記ローターが前記弁座に前記弁体が接する閉弁位置よりさらに前記第一方向に回転した位置にある、電動弁装置。
【請求項7】
弁座を有する弁本体と、前記弁本体に対して回転可能なローターと、複数のコイルを有しかつ前記ローターとともにステッピングモーターを構成するステーターと、前記弁座と向かい合い、前記ローターが第一方向に回転すると前記弁座に向けて押される弁体と、前記ローターが基準位置にあるときに前記ローターの前記第一方向への回転を規制するストッパ機構と、を有する電動弁の制御方法であって、
前記複数のコイルのそれぞれに駆動電流を供給して前記ローターを前記第一方向に回転させ、
前記ローターの回転によって前記複数のコイルのそれぞれに生じる電圧を取得し、
(i)1つの前記コイルに生じる前記電圧の波形において周期的に観測される波の振幅、および(ii)1つの前記コイルに生じる前記電圧の波形において周期的に観測される波とは異なる新たな波の周期的な出現、のうちの少なくとも1つに基づいて、前記電動弁が前記ストッパ機構によって前記ローターの前記第一方向への回転が規制される回転規制状態であるか否かを判定する、ことを特徴とする電動弁の制御方法。
【請求項8】
弁座を有する弁本体と、前記弁本体に対して回転可能なローターと、複数のコイルを有しかつ前記ローターとともにステッピングモーターを構成するステーターと、前記弁座と向かい合い、前記ローターが第一方向に回転すると前記弁座に向けて押される弁体と、前記ローターが基準位置にあるときに前記ローターの前記第一方向への回転を規制するストッパ機構と、を有する電動弁の制御方法であって、
前記複数のコイルのそれぞれに駆動電流を供給して前記ローターを前記第一方向に回転させ、
前記ローターの回転によって前記複数のコイルのそれぞれに生じる電流を取得し、
(i)1つの前記コイルに生じる前記電流の波形において周期的に観測される波の振幅、および(ii)1つの前記コイルに生じる前記電流の波形において周期的に観測される波とは異なる新たな波の周期的な出現、のうちの少なくとも1つに基づいて、前記電動弁が前記ストッパ機構によって前記ローターの前記第一方向への回転が規制される回転規制状態であるか否かを判定する、ことを特徴とする電動弁の制御方法。
【請求項9】
前記弁体が、前記弁座と向かい合い、前記ローターが前記第一方向に回転するとコイルばねを介して前記弁座に向けて押され、
前記基準位置が、前記ローターが前記弁座に前記弁体が接する閉弁位置よりさらに前記第一方向に回転した位置にある、請求項7または請求項8に記載の電動弁の制御方法。
【請求項10】
弁座を有する弁本体と、前記弁本体に対して回転可能なローターと、前記ローターとともにステッピングモーターを構成するステーターと、前記弁座と向かい合い、前記ローターが第一方向に回転すると前記弁座に向けて押される弁体と、前記ローターが基準位置にあるときに前記ローターの前記第一方向への回転を規制するストッパ機構と、を有する電動弁を制御する電動弁制御装置であって、
前記ステーターには、モータードライバが接続されており、
前記モータードライバに順番を有する複数のパルスを前記順番で循環的に入力することにより前記ステーターに駆動電流を供給して前記ローターを前記第一方向に回転させる回転制御部と、
前記ローターの回転によって前記ステーターに生じる電圧を取得する電圧取得部と、
(i)循環的に入力される前記複数のパルスのうちの1つに対応する区間における前記電圧の波形の面積に基づいて、前記電動弁が前記ストッパ機構によって前記ローターの前記第一方向への回転が規制される回転規制状態であるか否かを判定する状態判定部と、を有することを特徴とする電動弁制御装置。
【請求項11】
弁座を有する弁本体と、前記弁本体に対して回転可能なローターと、前記ローターとともにステッピングモーターを構成するステーターと、前記弁座と向かい合い、前記ローターが第一方向に回転すると前記弁座に向けて押される弁体と、前記ローターが基準位置にあるときに前記ローターの前記第一方向への回転を規制するストッパ機構と、を有する電動弁を制御する電動弁制御装置であって、
前記ステーターには、モータードライバが接続されており、
前記モータードライバに順番を有する複数のパルスを前記順番で循環的に入力することにより前記ステーターに駆動電流を供給して前記ローターを前記第一方向に回転させる回転制御部と、
前記ローターの回転によって前記ステーターに生じる電圧を取得する電圧取得部と、
(ii)循環的に入力される前記複数のパルスのうちの1つに対応して前記電圧の波形において周期的に観測される波の振幅に基づいて、前記電動弁が前記ストッパ機構によって前記ローターの前記第一方向への回転が規制される回転規制状態であるか否かを判定する状態判定部と、を有することを特徴とする電動弁制御装置。
【請求項12】
弁座を有する弁本体と、前記弁本体に対して回転可能なローターと、前記ローターとともにステッピングモーターを構成するステーターと、前記弁座と向かい合い、前記ローターが第一方向に回転すると前記弁座に向けて押される弁体と、前記ローターが基準位置にあるときに前記ローターの前記第一方向への回転を規制するストッパ機構と、を有する電動弁を制御する電動弁制御装置であって、
前記ステーターには、モータードライバが接続されており、
前記モータードライバに順番を有する複数のパルスを前記順番で循環的に入力することにより前記ステーターに駆動電流を供給して前記ローターを前記第一方向に回転させる回転制御部と、
前記ローターの回転によって前記ステーターに生じる電圧を取得する電圧取得部と、
(iii)循環的に入力される前記複数のパルスのうちの1つに対応して前記電圧の波形において周期的に観測される波とは異なる新たな波の周期的な出現に基づいて、前記電動弁が前記ストッパ機構によって前記ローターの前記第一方向への回転が規制される回転規制状態であるか否かを判定する状態判定部と、を有することを特徴とする電動弁制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動弁制御装置および電動弁制御装置を有する電動弁装置、ならびに、電動弁の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、従来の電動弁の一例を開示している。このような電動弁は、エアコンの冷凍サイクルに組み込まれる。電動弁は、弁本体と、弁体と、弁体を移動させるためのステッピングモーターと、を有している。ステッピングモーターは、ローターとステーターとを有している。ステッピングモーターにパルスが入力されるとローターが回転する。ローターの回転に応じて弁体が移動する。ローターが基準位置にあるとき、ローターとともに回転する可動ストッパが弁本体に固定された固定ストッパに当接して、ローターの第一方向への回転が規制される。
【0003】
電動弁は、電動弁制御装置によって制御される。電動弁制御装置は、初期化動作において、ステッピングモーターにパルスを入力してローターを第一方向に回転させ、ローターを基準位置に位置付ける。ステッピングモーターに入力するパルスの数は、可動ストッパが固定ストッパに当接するために十分な数(以下、「初期化数」という。)である。ローターが第一方向に回転して可動ストッパが固定ストッパに当接すると、ローターが基準位置に位置付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2019/130928号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電動弁制御装置は、ステッピングモーターに入力したパルス数が初期化数に達するまで、ステッピングモーターにパルスを入力する。そのため、電動弁制御装置は、ローターが基準位置に位置付けられた後もパルスを入力することがあり、初期化動作に長い時間がかかる。また、ローターが基準位置に位置付けられた後にステッピングモーターにパルスが入力されると、可動ストッパが固定ストッパに繰り返し衝突して騒音が発生する。特に、初期化動作直前のローターの位置が基準位置に近い場合、騒音が長い時間発生する。
【0006】
そこで、本発明は、電動弁の初期化動作にかかる時間を短くして騒音を抑制することができる電動弁制御装置および電動弁制御装置を有する電動弁装置、ならびに、電動弁の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、複数の電動弁を用いて、初期化動作においてローターの回転によってステーターに生じる電圧(ステーターに電磁誘導される電圧)を測定して、測定結果について鋭意検討した。その結果、本発明者らは、ストッパ機構によってローターの回転が規制される前の電圧の波形と、ストッパ機構によってローターの回転が規制された後の電圧の波形と、の違いを見出し、本発明に至った。
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る電動弁制御装置は、弁座を有する弁本体と、前記弁本体に対して回転可能なローターと、前記ローターとともにステッピングモーターを構成するステーターと、前記弁座と向かい合い、前記ローターが第一方向に回転すると前記弁座に向けて押される弁体と、前記ローターが基準位置にあるときに前記ローターの前記第一方向への回転を規制するストッパ機構と、を有する電動弁を制御する電動弁制御装置であって、前記ステーターに駆動電流を供給して前記ローターを前記第一方向に回転させる回転制御部と、前記ローターの回転によって前記ステーターに生じる電圧を取得する電圧取得部と、(i)前記電圧の波形の面積、(ii)前記電圧の波形において周期的に観測される波の振幅、および(iii)前記電圧の波形において周期的に観測される波とは異なる新たな波の周期的な出現、のうちの少なくとも1つに基づいて、前記電動弁が前記ストッパ機構によって前記ローターの前記第一方向への回転が規制される回転規制状態であるか否かを判定する状態判定部と、を有することを特徴とする。
【0009】
本発明において、前記回転制御部が、前記状態判定部によって前記電動弁が前記回転規制状態であると判定されたとき、前記ステーターへの駆動電流の供給を停止することが好ましい。
【0010】
本発明において、前記ステーターが、A相ステーターとB相ステーターとを有し、前記電圧取得部が、前記回転制御部がA相ステーターおよびB相ステーターの一方のみに駆動電流を供給したときに他方に生じる前記電圧を取得する、ことが好ましい。
【0011】
本発明において、前記弁体が、前記弁座と向かい合い、前記ローターが前記第一方向に回転するとコイルばねを介して前記弁座に向けて押され、前記基準位置が、前記ローターが前記弁座に前記弁体が接する閉弁位置よりさらに前記第一方向に回転した位置にあり、前記状態判定部が、前記電圧の波形において周期的に観測される波の振幅が漸減したとき、前記電動弁が前記ローターが前記閉弁位置と前記基準位置との間にある中間状態であると判定する、ことが好ましい。
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の他の一態様に係る電動弁制御装置は、弁座を有する弁本体と、前記弁本体に対して回転可能なローターと、前記ローターとともにステッピングモーターを構成するステーターと、前記弁座と向かい合い、前記ローターが第一方向に回転すると前記弁座に向けて押される弁体と、前記ローターが基準位置にあるときに前記ローターの前記第一方向への回転を規制するストッパ機構と、を有する電動弁を制御する電動弁制御装置であって、前記ステーターに駆動電流を供給して前記ローターを前記第一方向に回転させる回転制御部と、前記ローターの回転によって前記ステーターに生じる電流を取得する電流取得部と、(i)前記電流の波形の面積、(ii)前記電流の波形において周期的に観測される波の振幅、および(iii)前記電流の波形において周期的に観測される波とは異なる新たな波の周期的な出現、のうちの少なくとも1つに基づいて、前記電動弁が前記ストッパ機構によって前記ローターの前記第一方向への回転が規制される回転規制状態であるか否かを判定する状態判定部と、を有することを特徴とする。
【0013】
上記目的を達成するために、本発明の他の一態様にかかる電動弁装置は、前記電動弁と、前記電動弁制御装置と、を有する。
【0014】
上記目的を達成するために、本発明の他の一態様にかかる電動弁の制御方法は、弁座を有する弁本体と、前記弁本体に対して回転可能なローターと、前記ローターとともにステッピングモーターを構成するステーターと、前記弁座と向かい合い、前記ローターが第一方向に回転すると前記弁座に向けて押される弁体と、前記ローターが基準位置にあるときに前記ローターの前記第一方向への回転を規制するストッパ機構と、を有する電動弁の制御方法であって、前記ステーターに駆動電流を供給して前記ローターを前記第一方向に回転させ、前記ローターの回転によって前記ステーターに生じる電圧を取得し、(i)前記電圧の波形の面積、(ii)前記電圧の波形において周期的に観測される波の振幅、および(iii)前記電圧の波形において周期的に観測される波とは異なる新たな波の周期的な出現、のうちの少なくとも1つに基づいて、前記電動弁が前記ストッパ機構によって前記ローターの前記第一方向への回転が規制される回転規制状態であるか否かを判定する、ことを特徴とする。
【0015】
上記目的を達成するために、本発明の他の一態様にかかる電動弁の制御方法は、弁座を有する弁本体と、前記弁本体に対して回転可能なローターと、前記ローターとともにステッピングモーターを構成するステーターと、前記弁座と向かい合い、前記ローターが第一方向に回転すると前記弁座に向けて押される弁体と、前記ローターが基準位置にあるときに前記ローターの前記第一方向への回転を規制するストッパ機構と、を有する電動弁の制御方法であって、前記ステーターに駆動電流を供給して前記ローターを前記第一方向に回転させ、前記ローターの回転によって前記ステーターに生じる電流を取得し、(i)前記電流の波形の面積、(ii)前記電流の波形において周期的に観測される波の振幅、および(iii)前記電流の波形において周期的に観測される波とは異なる新たな波の周期的な出現、のうちの少なくとも1つに基づいて、前記電動弁が前記ストッパ機構によって前記ローターの前記第一方向への回転が規制される回転規制状態であるか否かを判定する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一態様によれば、ステーターに駆動電流を供給してローターを第一方向に回転させる。ローターの回転によってステーターに生じる電圧を取得する。そして、(i)電圧の波形の面積、(ii)電圧の波形において周期的に観測される波の振幅、および(iii)電圧の波形において周期的に観測される波とは異なる新たな波の周期的な出現、のうちの少なくとも1つに基づいて、電動弁がストッパ機構によってローターの第一方向への回転が規制される回転規制状態であるか否かを判定する。
【0017】
本発明の他の一態様によれば、ステーターに駆動電流を供給してローターを第一方向に回転させる。ローターの回転によってステーターに生じる電流を取得する。そして、(i)電流の波形の面積、(ii)電流の波形において周期的に観測される波の振幅、および(iii)電流の波形において周期的に観測される波とは異なる新たな波の周期的な出現、のうちの少なくとも1つに基づいて、電動弁がストッパ機構によってローターの第一方向への回転が規制される回転規制状態であるか否かを判定する。
【0018】
このようにしたことから、電動弁が回転規制状態であると判定したときにローターが基準位置にある。そのため、電動弁が回転規制状態であると判定したときに、ローターの第一方向への回転を停止することで、初期化動作にかかる時間を短くすることができる。また、ローターが基準位置に位置付けられたあとに、騒音が長い時間発生することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施例に係る電動弁装置を有するエアコンシステムのブロック図である。
図2図1の電動弁装置の断面図である。
図3図2の電動弁装置が有する弁軸ホルダーを示す図である。
図4図2の電動弁装置が有するガイドブッシュの側面図である。
図5図2の電動弁装置が有するストッパ部材を示す図である。
図6図2の電動弁装置が有する弁軸ホルダー、ストッパ部材、ローターおよびステーターの平面図である。
図7図2の電動弁装置が有するコンピュータ、モータードライバおよびステッピングモーターを説明する図である。
図8】ローターの磁極とステーターの極歯との位置関係を模式的に示す図である(パルスP[1]入力時)。
図9】ローターの磁極とステーターの極歯との位置関係を模式的に示す図である(パルスP[2]入力時)。
図10】ローターの磁極とステーターの極歯との位置関係を模式的に示す図である(パルスP[3]入力時)。
図11】ローターの磁極とステーターの極歯との位置関係を模式的に示す図である(パルスP[4]入力時)。
図12】ローターの磁極とステーターの極歯との位置関係を模式的に示す図である(パルスP[5]入力時)。
図13】ローターの磁極とステーターの極歯との位置関係を模式的に示す図である(パルスP[6]入力時)。
図14】ローターの磁極とステーターの極歯との位置関係を模式的に示す図である(パルスP[7]入力時)。
図15】ローターの磁極とステーターの極歯との位置関係を模式的に示す図である(パルスP[8]入力時)。
図16】電動弁装置の初期化動作において、ローターの回転によってステーターに生じた電圧の波形の一例を示す図である。
図17図16の電圧の波形の一部を拡大した図である。
図18図16の電圧の波形の他の一部を拡大した図である。
図19図2の電動弁装置が有するコンピュータが実行する初期化動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施例に係る電動弁装置について、図1図19を参照して説明する。本実施例に係る電動弁装置1は、例えば、エアコンの冷凍サイクルにおいて冷媒流量を制御する流量制御弁として使用される。
【0021】
図1は、本発明の一実施例に係る電動弁装置を有するエアコンシステムのブロック図である。図2は、図1の電動弁装置の断面図である。図2において、ステーターおよび電動弁制御装置を模式的に示している。図3は、図2の電動弁装置が有する弁軸ホルダーを示す図である。図3Aは、弁軸ホルダーの斜視図であり、図3Bは、弁軸ホルダーの平面図である。図4は、図2の電動弁装置が有するガイドブッシュの側面図である。図5は、図2の電動弁装置が有するストッパ部材を示す図である。図5Aは、ストッパ部材の斜視図であり、図5Bは、ストッパ部材の平面図である。図6は、図2の電動弁装置が有する弁軸ホルダー、ストッパ部材、ローターおよびステーターの平面図である。図6において、ステーターを模式的に示している。また、図6において、ローターの磁極を模式的に示している。図7は、図2の電動弁装置が有するコンピュータ、モータードライバおよびステッピングモーターを説明する図である。図7Aは、電動弁制御装置が有するコンピュータとモータードライバとステッピングモーターとの接続を模式的に示す。図7Bは、パルスとモータードライバがステーターに供給する駆動電流との対応の一例を示す。図8図15は、ローターの磁極とステーターの極歯との位置関係を模式的に示す図である。図8図15は、パルスP[1]~P[8]入力時に対応している。図8図15において、ステーターを模式的に示している。また、図8図15において、ローターの磁極を模式的に示している。図16は、電動弁装置の初期化動作において、ローターの回転によってステーターに生じた電圧の波形の一例を示す図である。図17は、図16の電圧の波形の一部(期間T1)を拡大した図である。図18は、図16の電圧の波形の他の一部(期間T7)を拡大した図である。図19は、図2の電動弁装置が有するコンピュータが実行する初期化動作の一例を示すフローチャートである。
【0022】
図1に、車両に搭載されるエアコンシステム100の一例を示す。このエアコンシステム100は、配管105を介して順に接続された圧縮機101、凝縮器102、電動弁装置1(電動弁5)および蒸発器103を有している。電動弁装置1は、膨張弁である。エアコンシステム100は、エアコン制御装置110を有している。エアコン制御装置110は、電動弁装置1と通信可能に接続されている。エアコン制御装置110は、電動弁装置1を用いて配管105を流れる冷媒の流量を制御する。
【0023】
図2に示すように、電動弁装置1は、電動弁5と、電動弁制御装置70と、を有している。
【0024】
電動弁5は、弁本体10と、キャン20と、弁体30と、駆動機構40と、ステーター60と、を有している。
【0025】
弁本体10は、本体部材11と、接続部材13と、を有している。本体部材11は、円柱形状を有している。本体部材11は、弁室14を有している。本体部材11には、第1導管15および第2導管16が接合されている。第1導管15は、軸線Lと直交する方向(図2の左右方向)に沿って配置され、弁室14に接続されている。第2導管16は、軸線L方向(図2の上下方向)に沿って配置され、弁口17を介して弁室14に接続されている。弁口17は、弁室14において円環形状の弁座18に囲まれている。本体部材11は、円形の嵌合穴11aを有している。嵌合穴11aは、本体部材11の上端面に配置されている。嵌合穴11aの内周面は、図2において左方を向く平面11dを有している。嵌合穴11aの底面には、弁室14に通じる貫通孔11bが設けられている。接続部材13は、円環板形状を有している。接続部材13の内周縁は、本体部材11の上端部に接合されている。本体部材11および接続部材13は、アルミニウム合金、ステンレス、真ちゅうなどの金属製である。
【0026】
キャン20は、ステンレスなどの金属製である。キャン20は、円筒形状を有している。キャン20は、下端部が開口しかつ上端部が塞がれている。キャン20の下端部は、接続部材13の外周縁に接合されている。
【0027】
弁体30は、第1軸部31と、第2軸部32と、弁部33と、を有している。第1軸部31は、円柱形状を有している。第2軸部32は、円柱形状を有している。第2軸部32の径は、第1軸部31の径より小さい。第2軸部32は、第1軸部31の上端部に同軸に連設されている。弁体30は、上方を向く円環状の平面である段部34を有している。段部34は、第1軸部31と第2軸部32との連設部分に配置されている。弁部33は、上方から下方に向かうにしたがって径が小さくなる略円錐形状を有している。弁部33は、第1軸部31の下端部に同軸に連設されている。弁部33は、弁口17に配置される。弁部33と弁口17との間に可変絞り部が形成される。弁部33は、弁座18と向かい合って配置される。弁部33が弁座18に接すると、弁口17が閉じる。
【0028】
駆動機構40は、弁体30を上下方向(軸線L方向)に移動させる。弁体30の移動によって弁口17が開閉する。駆動機構40は、ローター41と、弁軸ホルダー42と、ガイドブッシュ43と、ストッパ部材44と、固定具45と、を有している。
【0029】
ローター41は、円筒形状を有している。ローター41の外径は、キャン20の内径より若干小さい。ローター41は、キャン20の内側に配置される。ローター41は、弁本体10に対して回転可能である。ローター41は、複数のN極および複数のS極を有している。複数のN極および複数のS極は、ローター41の外周面に配置されている。複数のN極および複数のS極は、上下方向に延在している。複数のN極および複数のS極は、周方向に等角度間隔で交互に配置されている。電動弁装置1において、ローター41は、例えば、N極を12個有し、S極を12個有している。互いに隣り合うN極とS極との間の角度は、15度である。
【0030】
図3は弁軸ホルダー42を示す。弁軸ホルダー42は、円筒形状を有している。弁軸ホルダー42は、下端部が開口しかつ上端部が塞がれている。弁軸ホルダー42はローター41の嵌合孔41aに嵌合されている。弁軸ホルダー42は、ローター41と共に回転する。弁軸ホルダー42の外周面の下端部には、径方向外方に突出する突部である可動ストッパ42sが配置されている。弁軸ホルダー42の上壁部42aには、軸孔42bが形成されている。軸孔42bには、弁体30の第2軸部32が軸線L方向に移動可能に配置される。弁軸ホルダー42の上壁部42aの下面にはワッシャー46が配置される。ワッシャー46と弁体30の段部34との間には閉弁ばね47が配置される。閉弁ばね47は、コイルばねであり、弁体30を弁座18に向けて押す。弁軸ホルダー42の内周面には、雌ねじ42cが形成されている。可動ストッパ42sは、ローター41に対して固定されている。
【0031】
図4はガイドブッシュ43を示す。ガイドブッシュ43は、基部43aと、支持部43bと、を有している。基部43aは、円筒形状を有している。支持部43bは、円筒形状を有している。基部43aの外周面は、平面43dを有している。基部43aは本体部材11の嵌合穴11aに圧入され、平面43dが嵌合穴11aの平面11dと接する。これにより、本体部材11の中心軸とガイドブッシュ43の中心軸とが軸線L上で一致するとともに、ガイドブッシュ43が本体部材11に対して軸線L周りに正しく位置付けられる。支持部43bの外径は、基部43aの外径より小さい。支持部43bの内径は、基部43aの内径と同じである。支持部43bは、基部43aの上端部に同軸に連設されている。支持部43bの外周面には、雄ねじ43cが形成されている。雄ねじ43cは、弁軸ホルダー42の雌ねじ42cと螺合される。ガイドブッシュ43の内側には、弁体30の第1軸部31が配置される。ガイドブッシュ43は、弁体30を軸線L方向に移動可能に支持する。
【0032】
図5はストッパ部材44を示す。ストッパ部材44は、ストッパ本体44aを有している。ストッパ本体44aは、円筒形状を有している。ストッパ本体44aの内周面には、雌ねじ44cが形成されている。ストッパ本体44aの外周面には、径方向外方に突出する突部である固定ストッパ44sが配置されている。雌ねじ44cは、ストッパ本体44aがガイドブッシュ43の基部43aに当接するまで雄ねじ43cに螺合されている。これにより、ストッパ部材44は、ガイドブッシュ43に固定される。固定ストッパ44sは、弁本体10に対して固定されている。
【0033】
固定具45は、固定部45aと、フランジ部45bと、を有している。固定部45aは、段付きの円筒形状を有している。固定部45aの内側には、弁体30の第2軸部32が配置される。固定部45aは、第2軸部32に接合される。フランジ部45bは、固定部45aの下端部に連設されている。固定具45の外側には、復帰ばね48が配置される。復帰ばね48は、コイルばねである。
【0034】
ステーター60は、円筒形状を有している。ステーター60は、A相ステーター61と、B相ステーター62と、を有している。
【0035】
A相ステーター61は、複数のクローポール型の極歯61a、61bを内周に有している。極歯61aの先端は下方に向いており、極歯61bの先端は上方に向いている。極歯61aと極歯61bとは、周方向に等角度間隔で交互に配置されている。電動弁装置1において、A相ステーター61は、例えば、極歯61aを12個有し、極歯61bを12個有している。互いに隣り合う極歯61aと極歯61bとの間の角度は、15度である。A相ステーター61のコイル61cが通電されると、極歯61aと極歯61bとは互いに異なる極性の磁極となる。
【0036】
B相ステーター62は、複数のクローポール型の極歯62a、62bを内周に有している。極歯62aの先端は下方に向いており、極歯62bの先端は上方に向いている。極歯62aと極歯62bとは、周方向に等角度間隔で交互に配置されている。電動弁装置1において、B相ステーター62は、例えば、極歯62aを12個有し、極歯62bを12個有している。互いに隣り合う極歯62aと極歯62bとの間の角度は、15度である。B相ステーター62のコイル62cが通電されると、極歯62aと極歯62bとは互いに異なる極性の磁極となる。
【0037】
A相ステーター61とB相ステーター62とは、同軸に配置されている。A相ステーター61は、B相ステーター62と接している。軸線L方向から見たときに互いに隣り合うA相ステーター61の極歯61aとB相ステーター62の極歯62aとの間の角度は、7.5度である。つまり、B相ステーター62は、極歯61aと極歯62aとが軸線L方向に並ぶ位置からA相ステーター61に対して軸線L周りに7.5度回転した位置にある。図7Aに示すように、A相ステーター61のコイル61cの端子A1、A2およびB相ステーター62のコイル62cの端子B1、B2は、電動弁制御装置70(モータードライバ77)に接続されている。
【0038】
ステーター60の内側には、キャン20が配置される。キャン20の内側には、ローター41が配置される。ステーター60とローター41とは、ステッピングモーター66を構成する。
【0039】
ステッピングモーター66にパルスP(P[1]~P[8])が入力されることによりローター41が回転する。具体的には、ステッピングモーター66のステーター60にパルスPに応じた駆動電流が供給されることによりローター41が回転する。本明細書において、「ステッピングモーター66にパルスPが入力されること」は、「ステッピングモーター66のステーター60にパルスPに応じた駆動電流が供給されること」と同義である。
【0040】
ステッピングモーター66には、図7Bに示すパルスP[1]~P[8]が順番に入力される。A相ステーター61に供給される駆動電流とB相ステーター62に供給される駆動電流との組み合わせは、パルスP毎に異なる。組み合わせの数は、8であり、パルスPのパターンの数という。「パターン」は「スイッチングモード」ともいわれる。パルスP[1]~P[8]の数字(1~8)は、パルスP[1]~P[8]を特定するためのパターン番号である。図8図15に、パルスP[1]~P[8]が入力されたときのローター41とステーター60との位置関係の例を示す。図8図15において、ローター41とステーター60(A相ステーター61、B相ステーター62)との位置関係を把握しやすくするため、基準となる極歯61aおよび基準となるローター41の磁極(S極)に黒丸を付している。
【0041】
ローター41を第一方向(図8図15において時計方向)に回転させる場合、ステッピングモーター66にパルスPを昇順(パルスP[1]~P[8]の順番)で循環的に入力する。ローター41が第一方向に回転すると、弁軸ホルダー42の雌ねじ42cとガイドブッシュ43の雄ねじ43cとのねじ送り作用によってローター41および弁軸ホルダー42が下方に移動する。ローター41(弁軸ホルダー42)が、閉弁ばね47を介して弁体30を下方に押す。弁体30が下方に移動して弁部33が弁座18に接する。このときのローター41の位置は、閉弁位置Rcである。この状態からローター41を第一方向にさらに回転させると、閉弁ばね47が圧縮されてローター41が下方にさらに移動する。弁体30は下方に移動しない。そして、弁軸ホルダー42の可動ストッパ42sがストッパ部材44の固定ストッパ44sに接すると、ローター41の第一方向への回転が規制される。このときのローター41の位置は、基準位置Rxである。
【0042】
ローター41を第一方向と反対の第二方向(図8図15において反時計方向)に回転させる場合、ステッピングモーター66にパルスPを降順(パルスP[8]~P[1]の順番)で循環的に入力する。ローター41が第二方向に回転すると、弁軸ホルダー42の雌ねじ42cとガイドブッシュ43の雄ねじ43cとのねじ送り作用によってローター41および弁軸ホルダー42が上方に移動する。ローター41(弁軸ホルダー42)が固定具45を上方に押す。固定具45とともに弁体30が上方に移動して、弁体30が弁座18から離れる。所定の流量測定環境において弁口17における流体の流量(弁口17の開度)が所定の設定値であるときのローター41の位置を開弁位置Roとする。設定値は、電動弁装置1の構成や用途などに応じて適宜設定される。
【0043】
電動弁5において、弁口17、弁座18、キャン20、弁体30、ローター41、弁軸ホルダー42、ガイドブッシュ43、ステーター60(A相ステーター61、B相ステーター62)は、それぞれの中心軸が軸線Lに一致する。
【0044】
電動弁制御装置70は、複数の電子部品(図示なし)が実装された基板71を有している。電動弁制御装置70は、図1に示すように、不揮発性メモリ75と、通信装置76と、モータードライバ77と、コンピュータ80と、を有している。電動弁制御装置70は、エアコン制御装置110からの命令に基づいて、電動弁5を制御する。
【0045】
不揮発性メモリ75は、電源が切断された場合でも保持する必要があるデータを記憶する。不揮発性メモリ75は、例えば、EEPROMやフラッシュメモリである。
【0046】
通信装置76は、有線通信バス120を介してエアコン制御装置110と通信可能に接続されている。エアコンシステム100は、例えば、Local Interconnect Network(LIN)やController Area Network(CAN)などの通信方式を採用している。なお、通信装置76は、エアコン制御装置110と無線通信可能に接続されていてもよい。
【0047】
モータードライバ77は、コンピュータ80から入力されるパルスPに基づいてステッピングモーター66に駆動電流を供給する。図7Aに示すように、モータードライバ77は、A相ステーター61のコイル61cの端子A1、A2およびB相ステーター62のコイル62cの端子B1、B2と接続されている。図7Bに、パルスPとモータードライバ77が供給する駆動電流との対応の一例を示す。図7Bにおいて、(+)は、端子A1から端子A2への駆動電流、または、端子B1から端子B2への駆動電流を供給することを示し、(-)は、端子A2から端子A1への駆動電流、または、端子B2から端子B1への駆動電流を供給することを示し、(0)は、駆動電流を供給しないことを示す。
【0048】
モータードライバ77は、コンピュータ80からパルスP[1]が入力されると、コイル61cに端子A1から端子A2への駆動電流を供給し(+)、コイル62cに駆動電流を供給しない(0)。
【0049】
モータードライバ77は、コンピュータ80からパルスP[2]が入力されると、コイル61cに端子A1から端子A2への駆動電流を供給し(+)、コイル62cに端子B1から端子B2への駆動電流を供給する(+)。
【0050】
モータードライバ77は、コンピュータ80からパルスP[3]が入力されると、コイル61cに駆動電流を供給せず(0)、コイル62cに端子B1から端子B2への駆動電流を供給する(+)。
【0051】
モータードライバ77は、コンピュータ80からパルスP[4]が入力されると、コイル61cに端子A2から端子A1への駆動電流を供給し(-)、コイル62cに端子B1から端子B2への駆動電流を供給する(+)。
【0052】
モータードライバ77は、コンピュータ80からパルスP[5]が入力されると、コイル61cに端子A2から端子A1への駆動電流を供給し(-)、コイル62cに駆動電流を供給しない(0)。
【0053】
モータードライバ77は、コンピュータ80からパルスP[6]が入力されると、コイル61cに端子A2から端子A1への駆動電流を供給し(-)、コイル62cに端子B2から端子B1への駆動電流を供給する(-)。
【0054】
モータードライバ77は、コンピュータ80からパルスP[7]が入力されると、コイル61cに駆動電流を供給せず(0)、コイル62cに端子B2から端子B1への駆動電流を供給する(-)。
【0055】
モータードライバ77は、コンピュータ80からパルスP[8]が入力されると、コイル61cに端子A1から端子A2への駆動電流を供給し(+)、コイル62cに端子B2から端子B1への駆動電流を供給する(-)。
【0056】
コンピュータ80は、CPU、ROM、RAM、入出力インタフェースおよびA/D変換器などが1つのパッケージに組み込まれた組込機器用のマイクロコンピュータである。コンピュータ80は、不揮発性メモリ75、通信装置76およびモータードライバ77を含んでいてもよい。コンピュータ80は、CPUがROMに格納されたプログラムを実行することにより、回転制御部81、電圧取得部82および状態判定部83として機能する。
【0057】
回転制御部81は、ステッピングモーター66にパルスPを入力してローター41を第一方向または第二方向に回転させる。具体的には、回転制御部81は、エアコン制御装置110から受信した命令に基づいて、モータードライバ77にパルスP[1]~P[8]を入力する。モータードライバ77は、入力されたパルスP[1]~P[8]に応じて、A相ステーター61のコイル61cおよびB相ステーター62のコイル62cに駆動電流を供給する。
【0058】
電圧取得部82は、ローター41の回転によってステーター60に生じる電圧(ステーター60に電磁誘導される電圧)を取得する。具体的には、電圧取得部82は、回転制御部81がパルスP[1]およびP[5]に応じてA相ステーター61のコイル61cのみに駆動電流を供給したときに、B相ステーター62のコイル62cの端子B1、B2間に生じる電圧VBを時系列的に取得する。電圧取得部82は、回転制御部81がパルスP[3]およびP[7]に応じてB相ステーター62のコイル62cのみに駆動電流を供給したときに、A相ステーター61のコイル61cの端子A1、A2間に生じる電圧VAを時系列的に取得する。電圧取得部82は、回転制御部81がパルスP[2]、P[4]、P[6]およびP[8]に応じてコイル61cおよびコイル62cに駆動電流を供給したとき、電圧VAおよび電圧VBを取得しない。なお、電圧取得部82は、回転制御部81がパルスP[1]~P[8]に応じてコイル61cおよびコイル62cに駆動電流を供給したときに、電圧VAおよび電圧VBを時系列的に取得してもよい。この場合、電圧取得部82は、端子A1、A2間に生じる電圧から電磁誘導に係る電圧成分を分離して、当該電圧成分を電圧VAとする。電圧取得部82は、端子B1、B2間に生じる電圧から電磁誘導に係る電圧成分を分離して、当該電圧成分を電圧VBとする。時系列的に取得した電圧VAは、電圧VAの波形である。時系列的に取得した電圧VBは、電圧VBの波形である。
【0059】
状態判定部83は、ローター41を基準位置Rxに位置付ける動作(以下、「初期化動作」という。)において、電圧取得部82によって取得された電圧VAの波形および電圧VBの波形に基づいて、電動弁5の状態を判定する。電動弁5は、回転許容状態Spと回転規制状態Srとを有している。回転許容状態Spは、ローター41が基準位置Rxに到達しておらず、ローター41の第一方向への回転が許容される状態である。回転規制状態Srは、ローター41が基準位置Rxに到達し、可動ストッパ42sが固定ストッパ44sに当接してローター41の第一方向への回転が規制される状態である。可動ストッパ42sおよび固定ストッパ44sは、ストッパ機構49を構成する。
【0060】
本明細書において、「波形」とは、1定点における物理量(電圧)の時間的変化である。「波形」を可視化する場合は、物理量を縦軸とし、時間を横軸とした座標面に表現される。また、コンピュータ80のRAMや不揮発性メモリ75において物理量データと時間データとが関連付けられて記憶されたデータテーブルなどの不可視のものも「波形」に含まれる。また、「波形の面積」とは、当該波形を、物理量を縦軸とし時間を物理量0に対応する横軸とする座標面に表現したときに、当該波形と横軸とによって囲まれる領域の面積である。
【0061】
図16図18は、初期化動作において測定した電圧VAの波形および電圧VBの波形の一例を示す。期間T1~T9のそれぞれにおいて、パルスP[1]~P[8]が昇順でステッピングモーター66に入力される。図16には記載されていないが、期間T1より前の電圧VAの波形および電圧VBの波形は、期間T1における電圧VAの波形および電圧VBの波形と同じ(実質的に同じを含む)である。電動弁装置1において、例えば、パルスPの周期は8msであり、1つの期間Tは64msである。時刻tcにおいて、弁体30が弁座18に接し、ローター41が閉弁位置Rcに位置付けられる。時刻txにおいて、可動ストッパ42sが固定ストッパ44sに当接し、ローター41が基準位置Rxに位置付けられる。ローター41の第一方向への回転は、時刻tx前は許容され、時刻tx後は規制される。
【0062】
電圧VAの波形は、A波(a1~a9)と、B波(b1~b9)と、C波(c1~c9)と、D波(d1~d9)と、E波(e7~e9)と、を含む。A波およびB波は、全ての期間Tにわたって周期的に観測される負の電圧(-V)の波である。C波およびD波は、全ての期間Tにわたって周期的に観測される正の電圧(+V)の波である。E波は、時刻tx後に周期的に観測される正の電圧(+V)の波である。なお、各波は、所定の大きさ以上の振幅を有する。
【0063】
期間T1~T9におけるパルスP[7]に対応する区間の波形(C波およびD波を含む波形)の面積をSA1~SA9とすると、時刻tx後の期間T6~T9における面積SA6~SA9は、時刻tx前の期間T1~T5における面積SA1~SA5より小さい。
【0064】
また、D波は、時刻tx前には比較的振幅が大きい正の電圧の波であり(d1~d5)、時刻tx後に比較的振幅が小さい正の電圧の波になる(d6~d9)。
【0065】
また、E波は、時刻tx前には観測されず、時刻tx後に周期的に観測される(e7~e9)。つまり、E波は、全ての期間Tにわたって周期的に観測される波とは異なる新しい波であり、時刻tx後に周期的に出現する。
【0066】
電圧VBの波形は、F波(f1~f9)と、G波(g1~g9)と、H波(h1~h9)と、J波(j1~j9)と、K波(k1~k9)と、M波(m7~m9)と、を含む。F波およびG波は、全ての期間Tにわたって周期的に観測される正の電圧(+V)の波である。H波、J波およびK波は、全ての期間Tにわたって周期的に観測される負の電圧(-V)の波である。M波は、時刻tx後に周期的に観測される正の電圧(+V)の波である。なお、各波は、所定の大きさ以上の振幅を有する。
【0067】
期間T1~T9におけるパルスP[1]に対応する区間の波形(F波、G波およびH波を含む波形)の面積をSB1~SB9とすると、時刻tx後の期間T7~T9における面積SB7~SB9は、時刻tx前の期間T1~T6における面積SB1~SB6より小さい。
【0068】
また、G波は、時刻tx前には比較的振幅が大きい正の電圧の波であり(g1~g6)、時刻tx後に比較的振幅が小さい負の電圧の波になる(g7~g9)。なお、G波は、時刻tx後にH波と合わさり1つの波になる(g7~g9)。
【0069】
また、K波は、時刻tx前には比較的振幅が小さい負の電圧の波であり(k1~k5)、時刻tx後に比較的振幅が大きい負の電圧の波になる(k7~k9)。
【0070】
また、M波は、時刻tx前には観測されず、時刻tx後に周期的に観測される(m7~m9)。つまり、M波は、全ての期間Tにわたって周期的に観測される波とは異なる新しい波であり、時刻tx後に周期的に出現する。
【0071】
このことから、電圧VAの波形および電圧VBの波形は、時刻txの前後で以下の違いがある。
(i)時刻tx後の期間Tにおける波形の面積が、時刻tx前の期間Tにおける波形の面積より小さくなる。
(ii)時刻tx後の波の振幅が、時刻tx前の波の振幅と異なる。
(iii)時刻tx前に観測された波とは異なる波が時刻tx後に周期的に出現する。
【0072】
したがって、電圧VAの波形または電圧VBの波形において、上記(i)~(iii)に示す現象のうちの少なくとも1つを検出することによって、時刻txを過ぎたこと、すなわち、ローター41が基準位置Rxに到達して電動弁5が回転規制状態Srになったことを判定できる。
【0073】
状態判定部83は、初期化動作中に、電圧取得部82が取得した電圧VAの波形および電圧VBの波形において上記(i)~(iii)に示す現象のうちのいずれも検出していないとき、電動弁5が回転許容状態Spであると判定する。状態判定部83は、上記(i)~(iii)に示す現象のうちの少なくとも1つを検出したとき、電動弁5が回転規制状態Srであると判定する。そして、状態判定部83が回転規制状態Srであると判定すると、回転制御部81が、ステッピングモーター66へのパルスP[1]~P[8]の入力を停止して、初期化動作を終了する。
【0074】
なお、状態判定部83は、上記(i)~(iii)に示す現象のうちの2つ以上を検出したとき、電動弁5が回転規制状態Srであると判定してもよい。この場合、状態判定部83は、電動弁5が回転規制状態Srであると判定しなかったとき、電動弁5が回転許容状態Spであると判定する。
【0075】
次に、電動弁制御装置70の動作の一例を、図19を参照して説明する。
【0076】
電動弁制御装置70(具体的にはコンピュータ80)は、エアコン制御装置110から初期化命令を受信すると(S110)、ステッピングモーター66への昇順でのパルスP[1]~P[8]の入力を開始する(S120)。これにより、初期化動作が開始され、パルスP[1]~P[8]に応じた駆動電流がステーター60に供給され、ローター41が第一方向に回転する。
【0077】
電動弁制御装置70は、ローター41が第一方向に回転しているとき、A相ステーター61のコイル61cの端子A1、A2間に生じる電圧VAおよびB相ステーター62のコイル62cの端子B1、B2間に生じる電圧VBを時系列的に取得する(S130)。すなわち、電動弁制御装置70は、電圧VAの波形および電圧VBの波形を取得する。具体的には、電動弁制御装置70は、パルスP[1]およびP[5]に応じてA相ステーター61のコイル61cのみに駆動電流を供給したときに、B相ステーター62のコイル62cの端子B1、B2間に生じる電圧VBを取得する。また、電動弁制御装置70は、パルスP[3]およびP[7]に応じてB相ステーター62のコイル62cのみに駆動電流を供給したときに、A相ステーター61のコイル61cの端子A1、A2間に生じる電圧VAを取得する。電動弁制御装置70は、パルスP[2]、P[4]、P[6]およびP[8]を入力したときは、電圧VAおよび電圧VBを取得しない。
【0078】
電動弁制御装置70は、パルスP[1]~P[8]が入力される現在の期間Tが終了したタイミングで、電動弁5の状態を判定する(S140)。具体的には、電動弁制御装置70は、以下の(1)~(8)を行う。
【0079】
(1)電動弁制御装置70は、電圧VAの波形に関して、現在の期間T(k)におけるパルスP[7]に対応する区間の波形の面積SA(k)を算出する。そして、電動弁制御装置70は、当該面積SA(k)が、1つ前の期間T(k-1)におけるパルスP[7]に対応する区間の波形の面積SA(k-1)よりも小さくかつ面積SA(k)と面積SA(k-1)との差が所定の第1面積判定値以上であることを検出すると、電動弁5が回転規制状態Srであると判定する。なお、面積SA(k)は、期間T(k)の一部区間における波形の面積であってもよく、期間T(k)の全区間における波形の面積であってもよい。
【0080】
(2)電動弁制御装置70は、電圧VAの波形に関して、現在の期間T(k)におけるD波の振幅WA(k)を取得する。そして、電動弁制御装置70は、当該振幅WA(k)が、直前の期間T(k-1)におけるD波の振幅WA(k-1)よりも小さくかつ振幅WA(k)と振幅WA(k-1)との差が所定の第1振幅判定値以上であることを検出すると、電動弁5が回転規制状態Srであると判定する。
【0081】
(3)電動弁制御装置70は、電圧VAの波形に関して、全ての期間Tにわたって観測されるA波、B波、C波、D波とは異なる新しいE波が連続する複数の期間T(例えば3つの期間)にわたって周期的に出現したことを検出すると、電動弁5が回転規制状態Srであると判定する。
【0082】
(4)電動弁制御装置70は、電圧VBの波形に関して、現在の期間T(k)におけるパルスP[1]に対応する区間の波形の面積SB(k)を算出する。そして、電動弁制御装置70は、当該面積SB(k)が、1つ前の期間T(k-1)におけるパルスP[1]に対応する区間の波形の面積SB(k-1)よりも小さくかつ面積SB(k)と面積SB(k-1)との差が所定の第2面積判定値以上であることを検出すると、電動弁5が回転規制状態Srであると判定する。なお、面積SB(k)は、期間T(k)の一部区間における波形の面積であってもよく、期間T(k)の全区間における波形の面積であってもよい。
【0083】
(5)電動弁制御装置70は、電圧VBの波形に関して、現在の期間T(k)におけるG波の振幅WB1(k)を取得する。そして、電動弁制御装置70は、当該振幅WB1(k)が、直前の期間T(k-1)におけるG波の振幅WB1(k-1)よりも小さくかつ振幅WB1(k)と振幅WB1(k-1)との差が所定の第2振幅判定値以上であることを検出すると、電動弁5が回転規制状態Srであると判定する。
【0084】
(6)電動弁制御装置70は、電圧VBの波形に関して、現在の期間T(k)におけるK波の振幅WB2(k)を取得する。そして、電動弁制御装置70は、当該振幅WB2(k)が、直前の期間T(k-1)におけるK波の振幅WB2(k-1)よりも大きくかつ振幅WB2(k)と振幅WB2(k-1)との差が所定の第3振幅判定値以上であることを検出すると、電動弁5が回転規制状態Srであると判定する。
【0085】
(7)電動弁制御装置70は、電圧VBの波形に関して、全ての期間Tにわたって観測されるF波、G波、H波、J波、K波とは異なる新しいM波が連続する複数の期間T(例えば3つの期間)にわたって周期的に出現したことを検出すると、電動弁5が回転規制状態Srであると判定する。
【0086】
なお、上記(1)、(2)、(4)~(6)で用いる面積および振幅は、連続する複数の期間Tにおける移動平均値であってもよい。また、電動弁制御装置70は、上記(1)~(7)のうちの一部のみ行ってもよい。
【0087】
(8)電動弁制御装置70は、上記(1)~(7)において、電動弁5が回転規制状態Srであると判定されなかったとき、電動弁5が回転許容状態Spであると判定する。
【0088】
なお、電動弁制御装置70は、上記(1)~(7)を仮判定としてもよい。この場合、電動弁制御装置70は、電動弁5が回転規制状態Srであると複数回(例えば2回以上)仮判定した場合に、電動弁5が回転規制状態Srであると正式に判定する。電動弁制御装置70は、回転規制状態Srであると正式に判定しなかった場合に、電動弁5が回転許容状態Spであると判定する。
【0089】
電動弁制御装置70は、電動弁5が回転規制状態Srであるとき(S150でY)、ステッピングモーター66へのパルスP[1]~P[8]の入力を終了し、エアコン制御装置110に初期化動作の完了を通知する(S170)。
【0090】
電動弁制御装置70は、電動弁5が回転許容状態Spであり(S150でN)、ステッピングモーター66に入力したパルスPの数が初期化数Xを超えたとき(S160でY)、ステッピングモーター66へのパルスPの入力を終了し、エアコン制御装置110に初期化動作の完了を通知する(S170)。初期化数Xは、弁口17の最大開度に対応するローター41の位置(全開位置Rz)から基準位置Rxまでローター41を回転させるために必要なパルスPの数である。例えば、初期化数Xは500である。
【0091】
電動弁制御装置70は、ステッピングモーター66に入力したパルスPの数が初期化数X以下であるとき(S160でN)、再び電圧VAおよび電圧VBを取得して(S130)、上記動作(S130~S160)を繰り返す。
【0092】
以上説明したように、本実施例に係る電動弁装置1は、電動弁5と電動弁制御装置70とを有している。電動弁5は、弁座18を有する弁本体10と、弁本体10に対して回転可能なローター41と、ローター41とともにステッピングモーター66を構成するステーター60と、弁座18と向かい合い、ローター41が第一方向に回転すると閉弁ばね47を介して弁座18に向けて押される弁体30と、ローター41が基準位置Rxにあるときにローター41の第一方向への回転を規制するストッパ機構49と、を有する。電動弁制御装置70は、ステーター60に駆動電流を供給してローター41を第一方向に回転させる。電動弁制御装置70は、ローター41の回転によってステーター60に生じる電圧VAおよび電圧VBを取得する。そして、電動弁制御装置70は、(i)電圧VAおよび電圧VBの波形の面積、(ii)電圧VAおよび電圧VBの波形において周期的に観測される波の振幅、および(iii)電圧VAおよび電圧VBの波形において周期的に観測される波とは異なる新たな波の周期的な出現、のうちの少なくとも1つに基づいて、電動弁5がストッパ機構49によってローター41の第一方向への回転が規制される回転規制状態Srであるか否かを判定する。
【0093】
このようにしたことから、電動弁制御装置70が電動弁5が回転規制状態Srであると判定したとき、ローター41が基準位置Rxにある。そのため、電動弁制御装置70が電動弁5が回転規制状態Srであると判定したときに、ローター41の第一方向への回転を停止することで、初期化動作にかかる時間を短くすることができる。また、ローター41が基準位置Rxに位置付けられたあとに、可動ストッパ42sが固定ストッパ44sに繰り返し衝突する回数を低減できる。そのため、電動弁制御装置70は、騒音が長い時間発生してしまうことを抑制できるとともに、可動ストッパ42sと固定ストッパ44sとの摩耗および疲労を抑制できる。電動弁制御装置70は、騒音を抑制し、電動弁5の寿命をのばすことができる。
【0094】
また、電動弁制御装置70は、電圧VAの波形の面積SAおよび電圧VBの波形の面積SBに基づいて、電動弁5が回転規制状態Srであるか否かを判定する。電動弁制御装置70は、電圧VAの波形において周期的に観測されるD波の振幅WA、ならびに、電圧VBの波形において周期的に観測されるG波の振幅WB1およびK波の振幅WB2、に基づいて、電動弁5が回転規制状態Srであるか否かを判定する。電動弁制御装置70は、電圧VAの波形において周期的に観測されるA波、B波、C波、D波とは異なる新たなE波の周期的な出現、および、電圧VBの波形において周期的に観測されるF波、G波、H波、J波、K波とは異なる新たなM波の周期的な出現、に基づいて、電動弁5が回転規制状態Srであるか否かを判定する。このようにすることで、電圧VAおよび電圧VBについて比較的簡易な処理を行うことで電動弁5が回転規制状態Srであるか否かを判定することができる。
【0095】
また、電動弁制御装置70は、電動弁5が回転規制状態Srであると判定したとき、ステッピングモーター66へのパルスPの入力を停止し、ステーター60への駆動電流の供給を停止する。このようにすることで、例えば、電動弁5が回転規制状態Srであることをエアコン制御装置110に通知し、エアコン制御装置110から停止命令を受信して、初期化動作を停止する構成に比べて、簡易かつ迅速にローター41の第一方向への回転を停止することができる。
【0096】
また、ステーター60が、A相ステーター61とB相ステーター62とを有する。電動弁制御装置70が、A相ステーター61のみに駆動電流を供給したときにB相ステーター62に生じる電圧VBを取得し、B相ステーター62のみに駆動電流を供給したときにA相ステーター61に生じる電圧VAを取得する。このようにすることで、電動弁制御装置70において、A相ステーター61に生じる電圧から電磁誘導に係る電圧成分を分離する必要がなく、B相ステーター62に生じる電圧から電磁誘導に係る電圧成分を分離する必要がない。そのため、比較的簡易な構成によって電圧VAおよび電圧VBを取得することができる。
【0097】
電動弁制御装置70は、電動弁5が回転許容状態Spまたは回転規制状態Srであるかを判定する。電動弁制御装置70は、回転許容状態Spまたは回転規制状態Sr以外の電動弁5の状態を判定してもよい。
【0098】
図16によれば、電圧VAの波形において、D波は、時刻tc前の各期間Tにおいて振幅が一定の正の電圧の波であり(d1、d2)、時刻tcから時刻txまでの間で振幅が漸減している(d3~d5)。また、電圧VBの波形において、K波は、時刻tc前の各期間において振幅が一定の負の電圧の波であり(k1、k2)、時刻tcから時刻txまでの間で振幅が漸減している(k3~k5)。これらは、ローター41が閉弁位置Rcを過ぎて閉弁ばね47が徐々に圧縮されることにより、ローター41の回転速度が徐々に低下することに起因すると推測される。そのため、電圧VAの波形または電圧VBの波形における波の振幅の漸減を検出することで、ローター41が閉弁位置Rcと基準位置Rxとの間の位置にあると判定することができる。
【0099】
そこで、電動弁制御装置70は、電圧VAの波形において周期的に観測されるD波の振幅が漸減したとき、および/または、電圧VBの波形において周期的に観測されるK波の振幅が漸減したとき、電動弁5がローター41が閉弁位置Rcと基準位置Rxとの間にある中間状態Sqであると判定してもよい。中間状態Sqは、回転許容状態Spと回転規制状態Srとの間の状態である。例えば、回転規制状態Srの判定条件に電動弁5が中間状態Sqであると判定したことを含めることで、回転規制状態Srの判定の精度をより高めることができる。
【0100】
また、電動弁5は、ローター41が第一方向に回転すると、ローター41と嵌合された弁軸ホルダー42が閉弁ばね47を介して弁体30を下方に押す構成である。電動弁5は、ローター41が第一方向に回転すると、ローター41と嵌合された弁軸ホルダー42が直接的に弁体30を下方に押す構成でもよい。または、電動弁5は、ローター41(または弁軸ホルダー42)と弁体30とが固定されている構成でもよい。この構成において、弁体30が弁座18に接するとローター41の第一方向への回転が規制される。つまり、弁体30と弁座18とがストッパ機構を構成し、弁体30が弁座18に接したときのローター41の位置が、ローター41の第一方向への回転が規制される基準位置Rxである。
【0101】
また、電動弁制御装置70は、ローター41の回転によってステーター60に生じる電圧に基づいて、電動弁5が回転規制状態Srであるか否かを判定する。電流と電圧とは密接な関係を有することから、電動弁制御装置70は、ローター41の回転によってステーター60に生じる電流に基づいて、電動弁5が回転規制状態Srであるか否かを判定してもよい。この構成では、電動弁制御装置70は、電圧取得部に代えて、ローター41の回転によってステーター60に生じる電流(ステーター60に電磁誘導される電流)を取得する電流取得部を有する。そして、状態判定部が、(i)電流の波形の面積、(ii)電流の波形において周期的に観測される波の振幅、および(iii)電流の波形において周期的に観測される波とは異なる新たな波の周期的な出現、のうちの少なくとも1つに基づいて、電動弁5が回転規制状態Srであるか否かを判定する。
【0102】
電動弁5は、ローター41の回転を減速することなく用いる駆動機構40を有している。電動弁5は、駆動機構40に代えて、ローター41の回転を減速する減速機構を有する駆動機構を有していてもよい。
【0103】
本明細書において、「円筒」や「円柱」等の形状を示す各用語は、実質的にその用語の形状を有する部材や部材の部分にも用いられている。例えば、「円筒形状の部材」は、円筒形状の部材と実質的に円筒形状の部材とを含む。
【0104】
上記に本発明の実施例を説明したが、本発明は実施例に限定されるものではない。前述の実施例に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、設計変更を行ったものや、実施例の特徴を適宜組み合わせたものも、本発明の趣旨に反しない限り、本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0105】
1…電動弁装置、5…電動弁、10…弁本体、11…本体部材、11a…嵌合穴、11b…貫通孔、11d…平面、13…接続部材、14…弁室、15…第1導管、16…第2導管、17…弁口、18…弁座、20…キャン、30…弁体、31…第1軸部、32…第2軸部、33…弁部、34…段部、40…駆動機構、41…ローター、41a…嵌合孔、42…弁軸ホルダー、42a…上壁部、42b…軸孔、42c…雌ねじ、42s…可動ストッパ、43…ガイドブッシュ、43a…基部、43b…支持部、43c…雄ねじ、43d…平面、44…ストッパ部材、44a…ストッパ本体、44c…雌ねじ、44s…固定ストッパ、45…固定具、45a…固定部、45b…フランジ部、46…ワッシャー、47…閉弁ばね、48…復帰ばね、49…ストッパ機構、60…ステーター、61…A相ステーター、61a…極歯、61b…極歯、61c…コイル、62…B相ステーター、62a…極歯、62b…極歯、62c…コイル、66…ステッピングモーター、70…電動弁制御装置、71…基板、75…不揮発性メモリ、76…通信装置、77…モータードライバ、80…コンピュータ、81…回転制御部、82…電圧取得部、83…状態判定部、100…エアコンシステム、101…圧縮機、102…凝縮器、103…蒸発器、110…エアコン制御装置、120…有線通信バス、A1…端子、A2…端子、B1…端子、B2…端子、L…軸線、P…パルス、Rc…閉弁位置、Ro…開弁位置、Rx…基準位置、Sp…回転許容状態、Sq…中間状態、Sr…回転規制状態、T…期間、tc…時刻、tx…時刻、VA…電圧、VB…電圧

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
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