(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-14
(45)【発行日】2024-06-24
(54)【発明の名称】ジョウロ
(51)【国際特許分類】
A01G 25/14 20060101AFI20240617BHJP
【FI】
A01G25/14 D
A01G25/14 B
(21)【出願番号】P 2024515672
(86)(22)【出願日】2023-12-18
(86)【国際出願番号】 JP2023045178
【審査請求日】2024-03-11
(31)【優先権主張番号】P 2022206425
(32)【優先日】2022-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】399076633
【氏名又は名称】八幡化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137327
【氏名又は名称】松井 勝義
(72)【発明者】
【氏名】高垣 克朗
(72)【発明者】
【氏名】山内 哲也
【審査官】大澤 元成
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第213847568(CN,U)
【文献】特開2007-143442(JP,A)
【文献】特開2005-278984(JP,A)
【文献】登録実用新案第3133821(JP,U)
【文献】国際公開第2010/102407(WO,A1)
【文献】特表2010-524490(JP,A)
【文献】特開2017-113499(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 25/14
A47G 9/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底壁と側壁とを備えた有底筒状の貯水部と、
前記貯水部に連通し、該貯水部から水を流出させる注ぎ口と、
を備えるジョウロであって、
前記注ぎ口の流水路は、水が流れる方向に並列に延びる複数の凹状溝を有
し、
側面視で、前記流水路は、前記注ぎ口の基端部から先端部に向かって上方に傾斜すると共に上部外方に向かって凸状に湾曲して形成されていることを特徴とするジョウロ。
【請求項2】
更に、ハンドル部及び/又はグリップ部を備え、
前記ハンドル部は、対向する前記両側壁に架け渡され、
前記グリップ部は、前記側壁に設けられている請求項1に記載のジョウロ。
【請求項3】
前記凹状溝は、前記注ぎ口の先端部が若干幅狭になるように形成されている請求項1又は2に記載のジョウロ。
【請求項4】
前記凹状溝の底部内面は前記注ぎ口の先端部が若干盛り上がるように形成されている請求項1又は2に記載のジョウロ。
【請求項5】
前記底壁外面の外周端部付近に周設された凹設部を備えた請求項1又は2に記載のジョウロ。
【請求項6】
前記注ぎ口上端及び/又は前記側壁上端に、補強用のリブ部を備えた請求項1又は2に記載のジョウロ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジョウロに関する。更に詳しくは、簡易な構成で、散水量の調整がしやすいジョウロに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ジョウロは、家庭園芸等において植物の水遣り等に用いられ、通常、貯水部である容器の前面に注ぎ口があり、持ち運びのできる容器である。
ジョウロの注ぎ口は、通常、小さな孔が多く開けられた、キャップ状のハス口が取りつけられている。ハス口は水流を弱めてシャワー状にし、植物や土を傷めることを防ぐことができる。
しかしながら、ハス口からの水遣りは、水流が拡散して広範囲に散水されやすく、植物の葉や花などの散水を避けるべき箇所にまで散水されてしまいやすい。
一方、ハス口を取り外して、一本のパイプ状の注水口とすると、局所的な注水が可能であるが、植物の根元付近の土に勢いよく局所的に放水され、土が堀り起こされてしまう不具合が生ずるおそれがある。更に、取り外したハス口を紛失するおそれもある。
【0003】
ここで、散水量の調整が可能なジョウロの散水構造体が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。この特許文献1の散水構造体は、小径からなる多数のパイプを結束して、既存の水差しに連結して使用することができる。各パイプが適度な間隔で集束されているため、放水流同士が合流することがなく、正確な放水とその散水範囲を任意に選択することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、この特許文献1に記載の散水構造体は、小径から成る多数のパイプを弾性チューブによってその結束を行い、更にその弾性チューブの弾性ホースを接続して、水差しの送水管と連結する必要があり、その構成が複雑である。
本発明は、簡易な構成で、散水量の調整がしやすいジョウロを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための本発明は、以下の通りである。
1.底壁と側壁とを備えた有底筒状の貯水部と、
前記貯水部に連通し、該貯水部から水を流出させる注ぎ口と、
を備えるジョウロであって、
前記注ぎ口の流水路は、水が流れる方向に並列に延びる複数の凹状溝を有し、
側面視で、前記流水路は、前記注ぎ口の基端部から先端部に向かって上方に傾斜すると共に上部外方に向かって凸状に湾曲して形成されていることを特徴とするジョウロ。
2.更に、ハンドル部及び/又はグリップ部を備え、
前記ハンドル部は、対向する前記両側壁に架け渡され、
前記グリップ部は、前記側壁に設けられている前記1.に記載のジョウロ。
3.前記凹状溝は、前記注ぎ口の先端部が若干幅狭になるように形成されている前記1.又は2.に記載のジョウロ。
4.前記凹状溝の底部内面は前記注ぎ口の先端部が若干盛り上がるように形成されている前記1.又は2.に記載のジョウロ。
5.前記底壁外面の外周端部付近に周設された凹設部を備えた前記1.又は2.に記載のジョウロ。
6.前記注ぎ口上端及び/又は前記側壁上端に、補強用のリブ部を備えた前記1.又は2.に記載のジョウロ。
【発明の効果】
【0007】
1.本発明のジョウロは、底壁と側壁とを備えた有底筒状の貯水部と、貯水部に連通し、貯水部から水を流出させる注ぎ口とを備え、注ぎ口の流水路は、水が流れる方向に並列に延びる複数の凹状溝を有するため、簡易な構成で、散水量の調整がしやすい。
2.更に、ハンドル部及び/又はグリップ部を備え、ハンドル部は、対向する両側壁に架け渡され、グリップ部は、側壁に設けられている場合には、ハンドル部及び/又はグリップ部を把持することでジョウロを支えることができ、持ち運びに便利で、水遣りがしやすくなる。
3.凹状溝は、注ぎ口の先端部が若干幅狭になるように形成されている場合には、各凹状溝の水流が狭められて、隣接する凹状溝の水流が合流することなくそれぞれ別個の狭い水流となり、より散水量の調整がしやすい。
4.凹状溝の底部内面は注ぎ口の先端部が若干盛り上がるように形成されている場合には、注ぎ口から流出する水が、先端部を勢いよく乗り越えて放出されるため、注ぎ口先端から垂れ落ちるのを防ぐことができる。
5.底壁外面の外周端部付近に周設された凹設部を備えている場合には、凹設部に手を掛けることができ底部を支えやすく、水遣りをするのに便利である。
6.注ぎ口上端及び/又は側壁上端に、補強用のリブ部を備えている場合には、ジョウロの開口部が補強される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態1に係るジョウロの模式的な斜視図である。
【
図3】実施形態1に係るジョウロの模式的な正面図である。
【
図4】(a)は、
図3において一点鎖線で囲んだ流水路の拡大図、(b)は、(a)に相当する他例の流水路の拡大図である。(c)は、(a)に相当する更に他例の流水路の拡大図である。(d)は、(a)に相当する更に他例の流水路の拡大図である。
【
図5】実施形態1に係るジョウロの模式的な平面図である。
【
図6】
図5において一点鎖線で囲んだ部分の拡大図である。
【
図7】
図5におけるY-Y断面図及び、その拡大図である。
【
図8】実施形態2に係るジョウロの模式的な斜視図である。
【
図9】(a)は、
図8におけるU-U断面図であり、(b)は、
図8におけるV-V断面図である。
【
図10】
図8における、ハンドル部を省略したZ-Z断面図である。
【
図11】実施形態3に係るジョウロの模式的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を具体化した実施形態を示す
図1~11を参照しながら本発明を詳しく説明する。
なお、本発明は、かかる図に記載された具体例に示すものに限られず、目的、用途に応じて種々変更したものとすることができる。
【0010】
[実施形態1]
実施形態1に係るジョウロ1は、
図1に示すように、貯水部20と、注ぎ口10と、を備えている。
【0011】
貯水部20は、水遣りするための水を貯めておく部位であり、底壁21と側壁22とを備えた有底筒状に形成されている。
貯水部は、底壁と側壁とを備えた有底筒状に形成されていれば、特に限定はなく、側壁は、円筒状の他、角筒状、楕円筒状であってもよい。また、底壁と側壁との境界が明確である必要はなく、例えば、底壁と側壁とがなだらかに連続していてもよい。
【0012】
注ぎ口10は、貯水部20に連通し、貯水部20からの水を流出させる部位である。
図1及び
図2に示すように、注ぎ口10は、貯水部20に連通する基端部11と基端部11に連通する流水路15からなる。基端部11と流水路15の境界は明確である必要はないが、流水路15は、水が流れる方向に並行に延びる複数の凹状溝15gを有するように波形状である。
前記「凹状溝15g」は、
図3に示すように、断面凹状の溝である。
流水路15は、
図4(a)に示すように、板状の底部15bの両端に立設した一対の板状の側部15sと、水の流れる方向に5個の長尺板状の突設片15aとからなり、水が流れる6本の凹状溝15gを形成している。突設片15aの上端が断面半円形状である。また、凹状溝15gの下端が断面半円形状で、凹状溝15g全体が断面U字形をなしている。
【0013】
なお、
図4(b)に示す流水路16のように、底部16bの両端に立設した一対の板状の側部16sと、2個の突設片16aとからなり、水が流れる3本の凹状溝16gを形成してもよい。
すなわち、凹状溝の数は特に限定されず、通常3~5本であるが、2~8本であってもよく、9本以上であってもよい。
また、流水路は、水が流れる方向に並列に延びる複数の凹状溝を有するように形成されていれば、形状は特に限定されない。すなわち、流水路が貯水部から突出する長さは特に限定されず、用途に応じて適宜長さを設定することができる。更に、流水路の横幅も限定はなく、用途に応じて横幅の長さを設定することができる。
更に、流水路を構成する凹状溝の形状も特に限定はなく、例えば、
図4(c)に示す流水路17のように、底部17bの両端に立設した一対の板状の側部17sと、5個の断面長方形状の突設片17aとからなり、6本の四角波形の凹状溝17gを形成してもよい。更に、
図4(d)に示す流水路18のように、底部18bの両端に立設した一対の板状の側部18sと、5個の断面三角形状の突設片18aとからなり、6本の三角波形の凹状溝18gを形成してもよい。
【0014】
図5及び
図6に示すように、凹状溝15gは、注ぎ口10の先端部が若干幅狭になるように形成されていることが好ましい。すなわち、先端部の凹状溝15gの幅W1は、先端部へ至るまでの略同一幅の凹状溝15gの幅W2よりも幅狭に形成されている。こうすることで、先端部において、各凹状溝を通過する水流が狭められて、隣接する凹状溝の水流同士が合流することなくそれぞれ別個の狭い水流となり、より散水量の調整がしやすくなる。
【0015】
図7に示すように、凹状溝15gの底部15bの内面15bsは、注ぎ口10の先端部が若干盛り上がるように形成されていることが好ましい。
すなわち、底部15bの内面15bsは、先端部が若干盛り上がり、盛り上がり部15pを形成している。こうすることで、注ぎ口10から流出する水が盛り上がり部15pを勢いよく乗り越えて放出されるため、注ぎ口10の先端から水が垂れ落ちるのを防ぐことができる。
【0016】
ジョウロ1は、従来のハス口付きジョウロと比較して、凹状溝15gから水が流出するための水の抵抗が少ない。すなわち、多数の孔を有するハス口付きジョウロの場合には、孔が開けられた穿設面の水に対する抵抗が大きく、全体としての水量が低下しやすい。
一方、ジョウロ1は、水流の向きに対する抵抗面がないため、短時間で全体的な水量を多くすることができる。更に、複数の凹状溝15gを備えているため、それぞれの凹状溝15gから流出する水の量は少量ずつに分散させることができる。そのため、短時間で効率的に植物に優しい水遣りをすることができる。
更に、ジョウロ1は、ハス口のように広範囲に水流が分散されることがないため、例えば、植木鉢の植物に水遣りをする場合など、狭い散水範囲にとどめることができ、植木鉢から水がこぼれるのを防ぎやすい。そのため、室内や施設内などでも好適に使用できる。
また、ジョウロ1の貯水部20及び注ぎ口10は、上部が開口されていることで、水の流れを見て確かめながら水遣りを行うことができるため、散水量の調整がしやすい。
ただし、貯水部20又は注ぎ口10には、更に開口上部を覆う蓋を備えていてもよい。
【0017】
ジョウロ1の材質は特に限定されず、樹脂製、金属製、木製等であってもよい。これらの中でも、樹脂製であることが好ましい。樹脂製であれば、一体に形成することができる。樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル等が挙げられる。なお、注ぎ口と貯水部の材質が異なっていてもよい。
【0018】
[実施形態2]
実施形態2に係るジョウロ2は、
図8に示すように、貯水部30と、貯水部30に連通する注ぎ口10と、更に、ハンドル部50及びグリップ部60を備えている。注ぎ口10については、後述のリブ部10r、30rを除き、実施形態1に係る注ぎ口10がそのまま貯水部30に連通される。注ぎ口10についての構成及び作用効果については、実施形態1において説明した通りである。
【0019】
貯水部30は、底壁31と側壁32とを備えた有底筒状に形成されている。
ハンドル部50は、注ぎ口10の延びる前後方向に直交して、側壁32左右端に架け渡されている。ハンドル部50の両端に設けた軸部50sが、側壁32の左右端に設けた図示しない軸孔に挿着されて、ハンドル部50が側壁32に回動可能に取り付けられている。
ハンドル部50に穿設された孔部50hは、水道ホースを挿通固定して貯水部30に水を入れることができ、便利である。
なお、ハンドル部50は、側壁32左右端に固着されて回動不能に形成されていてもよい。
【0020】
グリップ部60は、側壁32の後端に設けられている。グリップ部60は、把手可能であれば、形状は特に限定されない。また、側壁32に設けられていれば特に限定はなく、後端以外の左右端に設けられていてもよい。
なお、グリップ部60は、側壁32に一体に形成されていてもよいが、別体に形成して、側壁32に取着してもよい。
【0021】
前記注ぎ口10の上端(側部15sの上端)及び側壁32の上端には、それぞれ補強用のリブ部10r、30rが備えられている。こうすることで、注ぎ口10及び側壁32の強度を増すことができる。リブ部10r、30rは、
図9に示すように、その断面が、それぞれ上端の外方に突出して更に下方に屈曲する形状で形成されている。ただし、リブ部はこの形状に限定されず、例えば、長尺の柱状体を上端周縁に備える形態であってもよい。
【0022】
図10に示すように、ジョウロ2は、底壁31外面の外周端部付近に周設された凹設部31gを備えている。凹設部31gは、底壁31外面に別体として備えることもできるが、一体成形により底壁31外面に凹設することが好ましい。この凹設部31gに手を掛けて底壁31を支えることができる。
【0023】
ジョウロ2に係るハンドル部50、グリップ部60、リブ部10r及び30rの材質も、ジョウロ1の材質と同様であり、前述した通りである。
ここで、注ぎ口10、貯水部30、グリップ部60、リブ部10r及び30rは、樹脂素材で射出成形により、一体に形成することが好ましい。
【0024】
なお、実施形態2に係るジョウロ2は、ハンドル部50及びグリップ部60を備えているが、ハンドル部50のみを備えた形態、グリップ部60のみを備えた形態であってもよい。
ジョウロ2の材質、その他の構成及び作用効果については実施形態1と同様であり、前述した通りである。
【0025】
[実施形態3]
実施形態3に係るジョウロ3は、
図11に示すように、貯水部40と、貯水部40に連通する注ぎ口10と、グリップ部70を備えている。注ぎ口10については、実施形態1に係る注ぎ口10がそのまま貯水部40に連通される。
注ぎ口10についての構成及び作用効果については、実施形態1において説明した通りである。
貯水部40は、底壁41と側壁42とを備えた有底筒状に形成されている。そして、上部に蓋部43を有し、蓋部43には円筒状の注水口44が設けられている。
ジョウロ3の材質、その他の構成及び作用効果については実施形態1及び2と同様であり、前述した通りである。
【符号の説明】
【0026】
1、2、3・・・・・・ジョウロ
10・・・・・・・・・注ぎ口
15・・・・・・・・・流水路
15g・・・・・・・・凹状溝
20、30、40・・・貯水部
21、31、41・・・底壁
22、32、42・・・側壁
31g・・・・・・・・凹設部
10r、30r・・・・リブ部
50・・・・・・・・・ハンドル部
60、70・・・・・・グリップ部
【要約】
【課題】簡易な構成で、散水量の調整がしやすいジョウロを提供する。
【解決手段】ジョウロ2は、底壁31と側壁32とを備えた有底筒状の貯水部30と、貯水部30に連通し、貯水部30から水を流出させる注ぎ口10と、を備える。注ぎ口10の流水路15は、水が流れる方向に並列に延びる複数の凹状溝15gを有する。ハンドル部50は、注ぎ口10の延びる前後方向に直交して、側壁32左右端に架け渡されている。ハンドル部50の両端に設けた軸部50sが、側壁32の左右端に設けた図示しない軸孔に挿着されて、ハンドル部50が側壁32に回動可能に取り付けられている。グリップ部60は、側壁32後端に設けられている。
【選択図】
図8