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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-14
(45)【発行日】2024-06-24
(54)【発明の名称】クランプ固定物
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/30 20060101AFI20240617BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20240617BHJP
   F16B 19/00 20060101ALI20240617BHJP
   F16B 2/08 20060101ALI20240617BHJP
   F16L 3/08 20060101ALI20240617BHJP
【FI】
H02G3/30
B60R16/02 621C
F16B19/00 Q
F16B2/08 U
F16L3/08 Z
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2021021423
(22)【出願日】2021-02-15
(65)【公開番号】P2022123945
(43)【公開日】2022-08-25
【審査請求日】2022-02-16
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105980
【弁理士】
【氏名又は名称】梁瀬 右司
(72)【発明者】
【氏名】百武 早織
【審査官】岩田 淳
(56)【参考文献】
【文献】実開平05-045216(JP,U)
【文献】特開2000-013969(JP,A)
【文献】特開2002-165341(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/30
B60R 16/02
F16B 19/00
F16B 2/08
F16L 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設けられ、車両構成物を保持するクランプが固定されるクランプ固定物であって、前記クランプは、所定形状の取付部と、前記車両構成物を保持する保持部と、前記クランプの前記取付部の側面の所定位置に設けられ上端部が外方に向かって突出する方向に付勢されたロック体とを備え、前記取付部が嵌め込まれる開口部を有するクランプ固定物において、
前記開口部の内側に、前記クランプの前記所定形状の取付部と異なる取付部の嵌め込みを阻害する阻害部を備え、
前記開口部は、
前記取付部を前記開口部に嵌め込む際に、前記ロック体を前記付勢力に抗して突出方向と反対向きに押し込む開口入口を有するとともに、前記取付部を前記開口部に嵌め込んだ後は、前記付勢力による前記ロック体の突出を許容して、前記ロック体の前記開口入口の内側周縁への係止により前記クランプを固定状態にロックさせる許容空間を有し、
前記阻害部は、
前記許容空間に設けられ、前記取付部の側面の前記所定位置とは異なる位置に設けられたロック体が当接することで当該ロック体の突出によるロックを規制して当該取付部の前記開口部への嵌め込みを阻害する一対のリブ状の規制体と、
前記開口部の奥部に位置する規制リブとを有し、
前記規制リブは、前記所定形状の前記取付部と異なる形状の取付部の前記開口部への嵌め込み側の端面への当接により、当該取付部の前記開口部への嵌め込みを阻害するものであり、
前記許容空間の一部が、前記クランプの嵌め込み方向と直交するとともに、前記取付部を前記開口部に嵌め込んだときの付勢力による前記ロック体の突出方向とほぼ直交する方向で外部に連通し、かつ、前記許容空間内に挿入した工具による前記取付部に対する操作を許容する作業用の空間を成
とを特徴とするクランプ固定物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ワイヤーハーネスなどの車両構成物の保持用クランプを固定するクランプ固定物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車等の車両には、車両構成物であるワイヤハーネスの端部のコネクタを収容するためのコネクタホルダが設けられ(例えば、特許文献1参照)、このコネクタホルダにワイヤハーネスを保持するクランプを固定し、コネクタホルダをクランプ固定物として利用することが行われている。また、コネクタホルダ以外にも、電気接続箱をクランプ固定物として利用することも行われている。
【0003】
通常、クランプは、所定形状の取付部と、該取付部に設けられワイヤハーネスを結束状態で保持するバンド状の保持部とを備えており、クランプの取付部を嵌め込むための開口部がクランプ固定物としてのコネクタホルダに形成され、取付部がコネクタホルダの開口部に嵌め込まれてクランプがコネクタホルダに固定され、ワイヤハーネスが車両の各部に配策される。このとき、ワイヤハーネスには多数の種類があって、配策される場所ごとに準備されるクランプによりワイヤハーネスが保持され、コネクタホルダにクランプが固定されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-091733号公報(段落0042~0091、図1図5参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、ワイヤハーネスの配策場所ごとに複数のクランプをコネクタホルダに固定する必要があるため、ワイヤハーネスの配策場所ごとにクランプの取付部の形状や寸法等を変えておき、取付部の寸法等に合致する寸法等の開口部をコネクタホルダに形成することによって、ワイヤハーネスの配策場所に対応するクランプをコネクタホルダに固定できるようになっている。
【0006】
しかし、樹脂製のコネクタホルダやクランプを製造する際に生じる公差によっては、クランプをコネクタホルダに固定して組み付ける際に、コネクタホルダの開口部とクランプの取付部の寸法が違っていても、本来嵌め込むべきではないクランプの取付部が寸法の異なる開口部に無理に嵌め込まれてしまうことがあり、このような誤組み付けを未然に防止する対策が望まれる。
【0007】
本発明は、本来嵌め込むべきではないクランプの取付部の嵌め込みを、簡単な構成で確実に防止できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的を達成するために、本発明のクランプ固定物は、車両に設けられ、車両構成物を保持するクランプが固定されるクランプ固定物であって、前記クランプは、所定形状の取付部と、前記車両構成物を保持する保持部と、前記クランプの前記取付部の側面の所定位置に設けられ上端部が外方に向かって突出する方向に付勢されたロック体とを備え、前記取付部が嵌め込まれる開口部を有するクランプ固定物において、前記開口部の内側に、前記クランプの前記所定形状の取付部と異なる取付部の嵌め込みを阻害する阻害部を備え、前記開口部は、前記取付部を前記開口部に嵌め込む際に、前記ロック体を前記付勢力に抗して突出方向と反対向きに押し込む開口入口を有するとともに、前記取付部を前記開口部に嵌め込んだ後は、前記付勢力による前記ロック体の突出を許容して、前記ロック体の前記開口入口の内側周縁への係止により前記クランプを固定状態にロックさせる許容空間を有し、前記阻害部は、前記許容空間に設けられ、前記取付部の側面の前記所定位置とは異なる位置に設けられたロック体が当接することで当該ロック体の突出によるロックを規制して当該取付部の前記開口部への嵌め込みを阻害する一対のリブ状の規制体と、前記開口部の奥部に位置する規制リブとを有し、前記規制リブは、前記所定形状の前記取付部と異なる形状の取付部の前記開口部への嵌め込み側の端面への当接により、当該取付部の前記開口部への嵌め込みを阻害するものであり、前記許容空間の一部が、前記クランプの嵌め込み方向と直交するとともに、前記取付部を前記開口部に嵌め込んだときの付勢力による前記ロック体の突出方向とほぼ直交する方向で外部に連通し、かつ、前記許容空間内に挿入した工具による前記取付部に対する操作を許容する作業用の空間を成すことを特徴としている。
【0009】
このような構成によれば、クランプ固定物の開口部の内側に、クランプの所定形状の取付部と異なる取付部の嵌め込みを阻害する阻害部を設け、この阻害部は、開口部の許容空間に設けられ、取付部の側面の所定位置のロック体とは異なる位置に設けられたロック体が当接することで当該ロック体の突出によるロックを規制して当該取付部の開口部への嵌め込みを阻害するリブ状の規制体と、開口部の奥部に位置する規制リブとを有するため、所定形状の取付部と異なる取付部の嵌め込みを阻害部により阻害することができ、本来嵌め込むべきではないクランプの取付部の嵌め込みを、簡単な構成で確実に防止することができ、クランプの誤組み付けを未然に防止することが可能になる。また、開口部内の許容空間の一部が、クランプの嵌め込み方向に直交するとともに取付部を開口部に嵌め込んだときの付勢力によるロック体の突出方向とほぼ直交する方向で外部に連通した作業用の空間を設けたため、外部から開口部の内部に工具を挿入してクランプの取付部を操作することが可能になり、例えば取付部のロック体の係止を容易に解除操作することができ、正常に嵌め込まれたクランプであってもこれを簡単に取り外すことが可能になり、ロック体の係止解除の作業を嵌め込み方向に直交する方向から行うことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、クランプ固定物の開口部の内側に設けた阻害部により、所定形状の取付部と異なる取付部の嵌め込みを阻害部により阻害することが可能になり、本来嵌め込むべきではないクランプの取付部の嵌め込みを、簡単な構成で確実に防止することができ、クランプの誤組み付けを未然に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係るクランプ固定物であるコネクタホルダの一実施形態の斜視図である。
図2図1のある状態の斜視図である。
図3図2の異なる状態の斜視図である。
図4】一実施形態の第1クランプの正面図である。
図5図4の第1クランプの側面図である。
図6】一実施形態の第2クランプの正面図である。
図7図6の第2クランプの側面図である。
図8】一実施形態の一部の正面図である。
図9図8のある状態の底面図である。
図10図8の一部の斜視図である。
図11】誤ったクランプの組み付け動作を説明するための側面図である。
図12】誤ったクランプの組み付け動作を説明するための底面図である。
図13】正しいクランプの組み付け動作を説明するための側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係るクランプ固定物の一実施形態について、図1ないし図13を参照して詳細に説明する。なお、本実施形態はコネクタホルダをクランプ固定物として使用したものである。
【0019】
図1に示すように、コネクタホルダ1は、上面カバー1aと下面カバー1bとが合体可能に構成され、両カバー1a,1bは樹脂成型により形成され、多種多様なワイヤハーネスWH1,WH2のコネクタがコネクタホルダ1内に収容された状態で、例えば図2図3に示すようにジャンクションボックス2の下面側に組み付けられる。
【0020】
このとき、コネクタホルダ1は、上面カバー1aの下端周縁部に設けられた複数個の係合爪1cが、下面カバー1bの上端周縁部に設けられた被係係合部1dに係合することにより、上面カバー1aと下面カバー1bとが合体され、係合爪1cの被係合部1dとの係合を解除することにより、上面カバー1aと下面カバー1bとを分離できる状態になる。
【0021】
また、コネクタホルダ1を、それぞれ所定の場所に向けて配索される車両構成物としてのワイヤハーネスWH1,WH2を固定する固定物として使用するために、コネクタホルダ1の周壁に開口部1e,1fが形成され、第1、第2ワイヤハーネスWH1,WH2それぞれを保持する樹脂製の第1、第2クランプ4,5が取り付けられるようになっている。
【0022】
ここで、開口部1e,1fは、第1、第2クランプ4,5それぞれの後述する取付部の上端部の断面形状より若干大きい長円形状の開口入口1e1,1f1をそれぞれ有するとともに、内側には第1、第2クランプ4,5それぞれの取付部の後述するロック体がその付勢力により突出することを許容する許容空間1e2,1f2をぞれぞれ有する。
【0023】
第1クランプ4は図4図5に示すように構成され、第2クランプ5は図6図7に示すように構成されている。基本的には、両クランプ4,5はともに、取付部41,51と、取付部41,51それぞれに設けられ第1、第2ワイヤハーネスWH1,WH2それぞれを結束状態で保持するバンド状の保持部45,55とを備えているが、以下に説明するように、取付部41,51の形状が異なっている。
【0024】
すなわち、図4図5に示すように、第1クランプ4の取付部41は、少なくとも下半部が断面横長の長円形でテーパ状に下窄まりの形状を有する基部42と、この基部42の周面の左右の両側つまり上半部の断面の長円形における両側の曲線の位置に、上端部がそれぞれ外方に向かって突出する方向に弾性力により付勢された状態で下端部が連結された正面視でほぼ矩形を有する一対のロック体43と、基部42の上部に設けられた基部42の開口部1eへの過剰な没入を防止するための傘状のストッパ体44とを備える。
【0025】
このような構成を有する第1クランプ4の取付部41の基部42が、コネクタホルダ1の開口部1eに嵌め込まれるが、第1クランプ4を嵌め込むために開口部1eは次のような構成を有する。
【0026】
開口部1eは、第1クランプ4の取付部41を開口部1eに嵌め込む際に、両ロック体43それぞれを付勢力に抗して突出方向と逆向きに押し込むように作用する長円形状の開口入口1e1を有するとともに、取付部41を開口部1eに嵌め込んだ後は、ロック体43の付勢力によるロック体43の突出を許容して、ロック体43が開口部1eの開口入口1e1の内面側周縁に係止することにより、第1クランプ4を固定状態にロックさせる許容空間1e2を開口部1eの内側であるコネクタホルダ1内部に有する。
【0027】
また、ストッパ体44の上面に保持部45が設けられており、この保持部45は周知の結束バンドと同様の構成を有し、バンド部分45aの一端がストッパ体44の上面に一体的に取り付けられるとともに、周知の結束バンドの係止爪を有するヘッド部に相当するヘッド部分45bがストッパ体44の上面に一体的に取り付けられて成る。
【0028】
そして、バンド部分45aによりワイヤハーネスWH1を結束した状態でバンド部分45aの他端側がヘッド部分の係止爪に係止されることにより、ワイヤハーネスWH1が結束状態で保持される。
【0029】
すなわち、第1クランプ4の取付部41を開口部1eに嵌め込む際に、開口部1eの開口入口1e1を両ロック体43が摺接するため、開口部1eの開口入口1e1が両ロック体43をその付勢力に抗して突出方向と逆向きに押し込むように作用し、取付部41を開口部1eに完全に嵌め込んだ後は、開口部1e内側の許容空間1e2において、両ロック体43の付勢力により両ロック体43の突出が許容される状態になる。
【0030】
そのため、両ロック体43が外方に突出して両ロック体43の上端が開口部1eの開口入口1e1の内側周縁に係止することにより取付部41の開口部1eからの抜けが阻止されて第1クランプ4が固定状態にロックされ、ワイヤハーネスWH1を保持した第1クランプ4がコネクタホルダ1の開口部1eに固定される。
【0031】
また、第2クランプ5も第1クランプと同様の構成を有する。すなわち、図6図7に示すように、第2クランプ5の取付部51は、下半部が断面縦長の長円形でテーパ状に下窄まりの形状を有する基部52と、この基部52の周面の前後の両側つまり上半部の断面の長円形における両側の直線の位置に上端部がそれぞれ外方に向かって突出する方向に弾性力により付勢された状態で下端部が連結された側面視で三角形を有する一対のロック体53と、基部51の上部に設けられた基部52の開口部1fへの過剰な没入を防止するための傘状のストッパ体54とを備える。なお、取付部51の基部52の嵌め込み側の端面である先端面には後述する規制リブが嵌挿する凹部52aが形成されており、第1クランプ4の取付部41の基部42先端面には凹部は形成されていない。
【0032】
ここで、第1クランプ4と第2クランプ5とでは、ロック体43,53それぞれが設けられている取付部41,51の断面の長円形に対する位置が異なり、詳細には、第1クランプ4の両ロック体43は基部42の断面の長円形における両側の曲線の位置に設けられているのに対し、第2クランプ5の両ロック体53は基部52の断面の長円形における両側の直線の位置に設けられている点が相違している。
【0033】
このような構成を有する第2クランプ5の取付部51の基部52が、コネクタホルダ1の開口部1fに嵌め込まれるが、第2クランプ5を嵌め込むために開口部1fは次のような構成を有する。
【0034】
開口部1fは、第2クランプ5の取付部51を開口部1fに嵌め込む際に、両ロック体53それぞれを付勢力に抗して突出方向と逆向きに押し込むように作用する長円形状の開口入口1f1を有するとともに、取付部51を開口部1fに嵌め込んだ後は、ロック体53の付勢力によるロック体53の突出を許容して、ロック体53が開口部1fの開口入口1f1の内面側周縁に係止することにより、第2クランプ5を固定状態にロックさせる許容空間1f2を開口部1fの内側であるコネクタホルダ1内部に有する。
【0035】
また、ストッパ体54の上面に保持部55が設けられており、この保持部55は、第1クランプ4と同じく周知の結束バンドと同様の構成を有し、バンド部分55aの一端がストッパ体54の上面に一体的に取り付けられるとともに、周知の結束バンドの係止爪を有するヘッド部に相当するヘッド部分55bがストッパ体54の上面に一体的に取り付けられて成る。
【0036】
そして、バンド部分55aによりワイヤハーネスWH2を結束した状態でバンド部分55aの他端側がヘッド部分の係止爪に係止されることにより、ワイヤハーネスWH2が結束状態で保持される。
【0037】
すなわち、第2クランプ5の取付部51を開口部1fに嵌め込む際に、開口部1fの開口入口1f1を両ロック体53が摺接するため、開口部1fの開口入口1f1が、両ロック体53をその付勢力に抗して突出方向と逆向きに押し込むように作用し、取付部51を開口部1fに完全に嵌め込んだ後は、開口部1f内側の許容空間1f2において、両ロック体53の付勢力により両ロック体53の突出が許容される状態になって突出する。
【0038】
そのため、両ロック体53が外方に突出して両ロック体53の上端が開口部1fの開口入口1f1の内側周縁に係止することにより取付部51の開口部1fからの抜けが阻止されて第2クランプ5が固定状態にロックされ、ワイヤハーネスWH2を保持した第2クランプ5がコネクタホルダ1の開口部1fに固定される。
【0039】
ところで、上記したように、第1クランプ4と第2クランプ5の取付部41,51の形状や寸法を異なるように設定し、さらに取付部41,51が嵌め込まれるコネクタホルダ1側の開口部1eと開口部1fの形状や寸法が異なるように設定しても、本来嵌め込むべきではない第1クランプ4の取付部41が、第2クランプ5を嵌め込むべき開口部1fに無理に嵌め込まれるという誤組み付けを未然に防止するために、開口部1f側に以下のような阻害部7が設けられている。
【0040】
図8図9に示すように、コネクタホルダ1の開口部1fの内側の許容空間1f2の奥部の壁面に、本来嵌め込まれるべきではない第1クランプ4の取付部41の開口部1fへの嵌め込みを阻害する一対のリブ状の規制体7aが形成されるとともに、第1クランプ4の取付部41の先端に当接して取付部41の嵌め込みを阻害する規制リブ7bが、両規制体7a間に挟まれる位置に開口部1fの奥部の壁面に開口入口1f1に向かって膨出して形成されている。
【0041】
両規制体7aは、図8および図10に示すように、開口部1f内側に縦長の長円形状の開口入口1f1の曲線部分に沿ってリブのように形成され、図9図11および図12に示すように、本来嵌め込まれるべきではない第1クランプ4の取付部41が無理に嵌め込まれたときに、第1クランプ4の取付部41の両ロック体43に両規制体7aそれぞれが当接し、図11中に1点鎖線で示す両ロック体43が、図11中の矢印に示すように押し込まれて突出することができない状態(図11中に2点鎖線で示す状態)になり、両ロック体43が突出方向と反対方向に押し込まれたままになる。
【0042】
そのため、第1クランプ4の両ロック体43が突出することが規制され、開口部1fの開口入口1f1の内側周縁に両ロック体43の上端が係止せずに第1クランプ4が固定状態にロックされることはなく、第1クランプ4が開口部1fから簡単に抜け得る状態となり、第1クランプ4の開口部1fへの嵌め込みが阻害される。
【0043】
このとき、本来嵌め込まれるべき第2クランプ5の取付部51が開口部1fに嵌め込まれると、図13に示すように、第2クランプ5の取付部51の両ロック体53が両規制体7aに当接することがなく、取付部51を開口部1fに嵌め込んだ後には第2クランプ5の両ロック体53が付勢力によって外方に向かって突出し、開口部1fの開口入口1f1の内側周縁に突出状態の両ロック体53の上端が係止して第2クランプ5が開口部1fから抜けることなく固定状態にロックされる。
【0044】
また、第1クランプ4の取付部41の基部42の先端面には、第2クランプ5の基部52のように凹部が形成されずに平坦であるため、図11に示すように、第1クランプ4が開口部1fに誤って嵌め込まれると、取付部41の基部42の平坦な先端面が規制リブ7bに当接し、取付部41を開口部1fにそれ以上嵌め込みできなくなり、第1クランプ4の取付部41の開口部1fへの嵌め込みが阻害される。
【0045】
一方、第2クランプ5の取付部51の基部52の先端面には、規制リブ7bが嵌挿する凹部52aが形成されているため、図13に示すように、第2クランプ5が開口部1fに嵌め込まれると、取付部51の基部52の先端面の凹部52aに規制リブ7bが嵌挿して、ストッパ体54が開口部1fの開口入口1f1の外面周縁に当接するまで取付部51を開口部1fに完全に嵌め込むことができ、突出状態の両ロック体53の上端が開口部1fの開口入口1f1の内側周縁に係止することと相まって、第2クランプ5が開口部1fから抜けることなく固定状態にロックされる。
【0046】
ところで、図10に示すように、下面カバー1bに上面カバー1aを合体させるための被係合部1dの補強リブ1d1と同一直線(図10中の1点鎖線の直線)上に並ぶように、両規制体7aおよび規制リブ7bを形成しているため、規制体7aや規制リブ7bが下面カバー1bを樹脂成型するときに金型の抜き方向の邪魔になることがなく、下面カバー1bの成型加工を容易に行うことができる。
【0047】
また、図13に示すように、正常に嵌め込まれた第2クランプ5を開口部1fから取り外すことを想定して、図12に示すように、開口部1f内側の許容空間1f2が外部に連通した状態で広がり、外部からドライバなどの工具を当該許容空間1f2内に挿入可能な作業用の空間が形成されており、当該作業用の空間内に挿入した工具により、突出状態の両ロック体53を付勢力に抗して突出方向と反対側に押し込で、両ロック体53の上端の開口入口1f1の内側周縁との係止を解除操作することが可能になるため、第2クランプ5を開口部1fから容易に取り外すことができる。なお、開口部1eにも同様の作業用の空間が形成されている。
【0048】
したがって、上記した実施形態によれば、コネクタホルダ1の開口部1fの内側に阻害部7としての規制体7aおよび規制リブ7bを設けたため、本来嵌め込むべきではない形状や寸法の異なる第1クランプ4を開口部b1fに無理に嵌め込もうとすると、阻害部7の規制体7aおよび規制リブ7bにより、第1クランプ4の取付部41の開口部1fへの嵌め込みを阻害することができ、本来嵌め込むべきではない第1クランプ4の取付部41の回帰うぶ1fへの嵌め込みを、簡単な構成で確実に防止することが可能になり、第1クランプ1の誤組み付けを未然に、かつ、より確実に防止することができる。
【0049】
また、阻害部7としての規制体7aは、本来嵌め込むべきではない第1クランプ4の取付部41の両ロック体43に当接して両ロック体43の突出を規制するように形成されているため、本来嵌め込むべきではない第1クランプ4の取付部41の開口部1fへの嵌め込みを確実に阻害することができる。
【0050】
さらに、本来嵌め込むべきではない第1クランプ4を誤って開口部1fに嵌め込んだときに、阻害部7としての規制リブ7bが、第1クランプ4の取付部41の基部42の平坦な先端面に当接することにより、当該取付部の開口部への嵌め込みが阻害されるため、本来嵌め込むべきではない第1クランプ4の取付部41の開口部1fへの嵌め込みを確実に阻害することができる。
【0051】
また、開口部1fの内側の許容空間1f2に外部から工具を挿入可能な作業の空間を設けたため、開口部の内部にドライバなどの工具を挿入して正常に嵌め込まれている第2クランプ5の取付部51のロックを解除操作することができ、正常に嵌め込まれた第2クランプ5を簡単に取り外すことができる。
【0052】
また、下面カバー1bに上面カバー1aを合体させるための被係合部1dの補強リブ1d1と同一直線上に並ぶように、両規制体7aおよび規制リブ7bを形成したため、規制体7aや規制リブ7bが下面カバー1bを樹脂成型するときに金型の抜き方向の邪魔になることがなく、下面カバー1bの成型加工を容易に行うことが可能になる。
【0053】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行なうことが可能である。
【0054】
例えば、上記した実施形態では、阻害部7として両規制体7aのほかに規制リブ7bを設けた利を示したが、阻害部7は両規制体7aだけで構成されていてもよく、必ずしも規制リブ7bを設けなくてもよい。また、阻害部7は規制リブ7bのみで構成されていてもよい。
【0055】
また、上記した実施形態では、開口部1fにのみ本来嵌め込むべきではない第1クランプ4の取付部41の嵌め込みを阻害する阻害部7を設けた例について説明したが、開口部1eに本来嵌め込むべきではない第2クランプ5の取付部52の嵌め込みを阻害する阻害部を設けてもよい。
【0056】
また、阻害部7は、上記した規制体7aや規制リブ7bに限定されるものではなく、本利嵌め込まれるべきではないクランプの取付部の嵌め込みを阻害できるものであればよい。
【0057】
また、上記した実施形態では、開口部1fの内側の許容空間1f2に作業用の空間を設けた場合について説明したが、この作業用の空間は、規制体7aや規制リブ7bの両側に広がるものではなく、すくなくとも片側に広がる空間であって、外部から工具を挿入して正常に嵌め込まれたクランプのロックを解除操作できる空間であればよい。
【0058】
また、上記した実施形態では、コネクタホルダ1をクランプ固定物として利用する例を示したが、電気接続箱(ジャンクションボックス)やその他の構造物を利用する場合にも、本発明を同様に適用することができる。
【0059】
また、クランプにより固定するものは、上記したワイハーネスWH1,WH2に限定されるものではなく、車両を構成するその他のワイヤハーネスや電気ケーブル等の車両構成物であってもよい。
【0060】
そして、本発明は、車両に設けられ、車両構成物を保持するクランプが固定されるクランプ固定物に対して適用することができる。
【符号の説明】
【0061】
1 …コネクタホルダ(クランプ固定物)
1f …開口部
1f1…開口入口
1f2…許容空間
4 …第1クランプ
5 …第2クランプ
41,51…取付部
43,53…ロック体
7 …阻害部
7a …規制体
7b …規制リブ
WH1,WH2…ワイヤハーネス(車両構成物)
図1
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