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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-14
(45)【発行日】2024-06-24
(54)【発明の名称】電解コンデンサ
(51)【国際特許分類】
   H01G 9/008 20060101AFI20240617BHJP
   H01G 9/10 20060101ALI20240617BHJP
【FI】
H01G9/008 301
H01G9/10 C
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018243035
(22)【出願日】2018-12-26
(65)【公開番号】P2020107663
(43)【公開日】2020-07-09
【審査請求日】2021-10-08
【審判番号】
【審判請求日】2023-06-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000190091
【氏名又は名称】ルビコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】弁理士法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】桜井 美成
【合議体】
【審判長】岩間 直純
【審判官】須原 宏光
【審判官】畑中 博幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-027106(JP,A)
【文献】特開2018-026542(JP,A)
【文献】特開2001-210551(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 9/00
H01G 9/008
H01G 9/04
H01G 9/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
扁平部と第1段差部と丸棒部と引出端子を有するリード端子と、前記扁平部が陽極箔と陰極箔とにそれぞれ接合箇所で接合され前記陽極箔と前記陰極箔とがセパレータを介して巻回されたコンデンサ素子と、前記コンデンサ素子を収納する有底形状のケースと、封口体を備え、前記コンデンサ素子は、前記陽極箔の酸化皮膜を修復可能な酸化皮膜修復物質を含有しているとともに、導電性高分子化合物を含む電解質が導入されており、且つ、前記扁平部は薄板形状であるとともに、前記リード端子が前記封口体の貫通穴にそれぞれ挿通されている構成であり、
前記扁平部は、前記第1段差部に接する第1扁平部と、前記第1扁平部から延設され前記接合箇所を含む第2扁平部を有し、前記リード端子のうち前記陽極箔と接合される陽極リード端子における前記扁平部は、前記丸棒部の外径寸法を超える大きさの部分と前記封口体とが非接触であるとともに、前記丸棒部の外径寸法を超える大きさの部分が前記陽極箔の内側に配されていること
を特徴とする電解コンデンサ。
【請求項2】
前記コンデンサ素子は、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボニル基、カルボキシル基、ニトロ基、スルホン基、アミド基、またはリン酸エステル基からなる親水性の官能基を持つ、前記陽極箔の酸化皮膜を修復可能な前記酸化皮膜修復物質を1種以上含有しているとともに、前記コンデンサ素子における前記導電性高分子化合物の平均粒子径は、1nm以上かつ300nm以下であること
を特徴とする請求項1記載の電解コンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解コンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
電解コンデンサは、リード端子が各々接合している状態の陽極箔と陰極箔とがセパレータを介して巻回されて形成されたコンデンサ素子に、電解質が導入されている構成である。
【0003】
リード端子は、扁平部と第1段差部と丸棒部と第2段差部と引出端子とからなる。
【0004】
従来、封口体を有する構造の電解コンデンサにおいて、リード端子の塑性変形によってリード端子の化成被膜が亀裂することに起因する漏れ電流の抑制を課題として、リード端子の扁平部における、棒状部と二次化成領域との間の中間領域に、ディスペンサーによってアクリル樹脂を塗布して絶縁性樹脂被膜で被覆するとともに、棒状部には絶縁性樹脂被膜で被覆しない構造のリード端子が提案されている(特許文献1:特開2018-022878号公報)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-022878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1記載の方法は、リード端子製造の際や電解コンデンサ製造の際のストレスにより樹脂層が剥がれてしまうといった問題があり、漏れ電流の抑制対策としては不十分である。
【0007】
一例として、電解コンデンサ製造の際、コンデンサ素子に導電性高分子化合物からなる固体電解質を導入するための工程で、リード端子の扁平部、特に丸棒部に近接する肩部に導電性高分子化合物が付着する。そのため、嵌合工程や封口工程で封口体が変形する際にリード端子に外力が加わって前記肩部にストレスが加わることで漏れ電流が大きくなるという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされ、リード端子の扁平部、特に、丸棒部に近接する肩部が封口体と接触しない構造にすることで、封口体の変形に伴うストレスによる漏れ電流を低減できる構造の電解コンデンサを提供することを目的とする。
【0009】
一実施形態として、以下に開示するような解決手段により、前記課題を解決する。
【0010】
本発明の電解コンデンサは、扁平部と第1段差部と丸棒部と引出端子を有するリード端子と、前記扁平部が陽極箔と陰極箔とにそれぞれ接合箇所で接合され前記陽極箔と前記陰極箔とがセパレータを介して巻回されたコンデンサ素子と、前記コンデンサ素子を収納する有底形状のケースと、封口体を備え、前記コンデンサ素子は、前記陽極箔の酸化皮膜を修復可能な酸化皮膜修復物質を含有しているとともに、導電性高分子化合物を含む電解質が導入されており、且つ、前記扁平部は薄板形状であるとともに、前記リード端子が前記封口体の貫通穴にそれぞれ挿通されている構成であり、前記扁平部は、前記第1段差部に接する第1扁平部と、前記第1扁平部から延設され前記接合箇所を含む第2扁平部を有し、前記リード端子のうち前記陽極箔と接合される陽極リード端子における前記扁平部は、前記丸棒部の外径寸法を超える大きさの部分と前記封口体とが非接触であるとともに、前記丸棒部の外径寸法を超える大きさの部分が前記陽極箔の内側に配されていることを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、組立時やリフロー時に封口体の変形に伴うストレスが生じた場合においても、漏れ電流を抑制できる。
【0012】
前記陽極リード端子は、前記第1扁平部の幅寸法が前外径寸法以下の大きさに設定されており、前記第2扁平部の幅寸法が前外径寸法を超える大きさに設定されており、且つ、前記扁平部における前記第1段差部との境界の部分と前記封口体とが非接触であることが好ましい。この構成によれば、漏れ電流を効果的に抑制できるとともに、陽極箔との電気接続が確実かつ十分に行える。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、組立時やリフロー時に封口体の変形に伴うストレスが生じた場合においても、漏れ電流を抑制できる。したがって、漏れ電流を低減した構造の電解コンデンサが実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は本発明の第1の実施形態に係る電解コンデンサの概略構造を示す部分断面図である。
図2図2図1の電解コンデンサの部分拡大図である。
図3図3Aは第1の実施形態におけるリード端子の概略の正面図であり、図3B図3Aのリード端子の概略の側面図である。
図4図4は第1の実施形態におけるリード端子を陽極箔(または陰極箔)に接合した状態の図である。
図5図5は第1の実施形態における陽極リード端子が接合された陽極箔(および陰極リード端子が接合された陰極箔)とセパレータとをそれぞれ重ね合わせて巻回している状態の図である。
図6図6Aは第1の実施形態における化成処理の準備段階の図であり、図6B図6Aの化成処理の準備段階に続く浸漬段階の図であり、図6C図6Bの化成処理の浸漬段階に続く引き上げ段階の図である。
図7図7Aは第1の実施形態における分散液充填処理の準備段階の図であり、図7B図7Aの分散液充填処理の準備段階に続く浸漬段階の図であり、図7C図7Bの分散液充填処理の浸漬段階に続く引き上げ段階の図である。
図8図8Aは第1の実施形態における水溶性高分子化合物導入処理の準備段階の図であり、図8B図8Aの水溶性高分子化合物導入処理の準備段階に続く浸漬段階の図であり、図8C図8Bの水溶性高分子化合物導入処理の浸漬段階に続く引き上げ段階の図である。
図9図9Aは第1の実施形態における嵌合処理の準備段階の図であり、図9B図9Aの嵌合処理の準備段階に続く挿通段階の図であり、図9C図9Bの嵌合処理の挿通段階に続く嵌合段階の図である。
図10図10は第1の実施形態に係るコンデンサ素子の要部を模式的に示す図である。
図11図11Aは第2の実施形態における絶縁膜が形成されたリード端子の概略の正面図であり、図11B図11Aのリード端子の概略の側面図である。
図12図12は第2の実施形態におけるリード端子を陽極箔(または陰極箔)に接合した状態の図である。
図13図13Aは第1の実施形態に係る電解コンデンサの製造手順を示すフローチャート図であり、図13Bは第2の実施形態に係る電解コンデンサの製造手順を示すフローチャート図である。
図14図14Aは比較例におけるリード端子の概略の正面図であり、図14B図14Aのリード端子の概略の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1の実施形態)
以下、図面を参照して、本発明の第1の実施形態について詳しく説明する。図1は、第1の電解コンデンサ1の例を示す概略図であり、部分断面図である。図2は、図1の電解コンデンサ1における破線で囲んだ部分P1を正面側から見たときのリード端子5と封口体3との関係を示す断面図であり、部分拡大図である。電解コンデンサ1は、電解質2eが導入されている巻回型のコンデンサ素子2と、リード端子5及びリード端子6と、貫通穴3cが二箇所に形成された封口体3と、コンデンサ素子2を収納する有底形状のケース4とを備えており、ケース4の開口側が封口体3によって封止されている構成である。
【0016】
ここで、電解コンデンサ1の各部の位置関係を説明し易くするため、図中にX,Y,Zの矢印で向きを示している。電解コンデンサ1を実際に使用する際には、これらの向きに限定されず、どのような向きで使用しても支障ない。なお、実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【0017】
図1の例では、ケース4の開口側の側面に横絞り部4bが形成され、且つ、開口端部4aが曲げられている。ケース4の開口側は、コンデンサ素子2が配設されておらず、封口体3の第1面3aの一部や、リード端子5(6)の引出端子5f(6f)が露出している。封口体3は、ケース4の横絞り部4bと開口端部4aとによって支持固定されている。リード端子5(6)は、丸棒部5d(6d)が封口体3の貫通穴3cに嵌合しており、封口体3によって支持固定されている。
【0018】
ケース4は有底筒状であり、アルミニウム等の金属からなる。封口体3は、水分の浸入や酸化皮膜修復物質の飛散を防止するために高気密性を有し、ケース4の内側形状に合わせた略円柱形状となっている。そして、第1面3aと第2面3bとには、リード端子5の丸棒部5dとリード端子6の丸棒部6dとが各々挿通される貫通穴3cが2個所に形成されている。ここで、第1面3aと第2面3bとは互いに逆向きとなっており、第1面3aを上面とした場合、第2面3bは下面となる。
【0019】
封口体3は、絶縁性ゴム組成物からなる。一例として、封口体3は、イソブチレン・イソプレンゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、フッ素ゴム、又はその他既知のエラストマーからなる。
【0020】
先ず、第1の実施形態に係るコンデンサ素子2の構造等について説明する。なお、コンデンサ素子2の製造手順等の説明については後述する。
【0021】
図10は、第1の実施形態の電解コンデンサ1におけるコンデンサ素子2の要部を模式的に示す図である。陽極箔2aと陰極箔2cとはアルミニウム、タンタル、ニオブ等の弁金属から形成されている。陽極箔2aの表面は、エッチング処理により粗面化された後、化成処理によって酸化皮膜2bが形成されている。陰極箔2cの表面は、陽極箔2aと同様にエッチング処理により粗面化された後、自然酸化皮膜2hが形成されている。陽極箔2aと陰極箔2cとは、一例として、アルミニウムからなる。
【0022】
陽極箔2aと陰極箔2cとの間にはセパレータ2dが配設されている。セパレータ2dは、導電性の高分子や水溶性の高分子と化学的に馴染み易いセルロース繊維、または、耐熱性に優れたナイロン、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等の合成樹脂で形成されたものが適用される。セパレータ2dは、一例として、耐熱性セルロース紙である。
【0023】
第1の実施形態は、陽極箔2aの酸化皮膜2bを修復可能な電解液、水溶性高分子化合物、又はその他既知の酸化皮膜修復物質をコンデンサ素子2に導入することができる。
【0024】
第1の実施形態は、導電性高分子化合物からなる電解質2eがコンデンサ素子2に導入されている。微粒子状の導電性高分子化合物からなる電解質2eは、サイズがナノメートルオーダーとなっている。
【0025】
また、水溶性高分子化合物13がコンデンサ素子2に含浸されている。水溶性高分子化合物13は、陽極箔2aの酸化皮膜2bおよび陰極箔2cの酸化皮膜2hを修復可能な水分を保持しているので、陽極箔2aの酸化皮膜2bを修復できる。
【0026】
電解質2eは、一例として、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)、ポリ(4-スチレンスルホン酸)をドープしたポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT/PSS)、テトラシアノキノジメタン(TCNQ)、ポリピロール(PPy)、ポリアニリン(PANI)、ポリチオフェン(PT)、又はその他既知の導電性高分子化合物を含む。
【0027】
第1の実施形態は、導電性高分子分散液または導電性高分子溶液のいずれかないしは両方から形成された導電性高分子化合物を含むことが好ましい。これによれば、高耐電圧化が可能となり、一例として、耐電圧を100[V]まで高めることができる。
【0028】
電解質2eは、ポリスチレンスルホン酸、トルエンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸のいずれか1種以上をドーパントとした導電性高分子化合物を含むことが好ましい。これによれば、導電性が安定する。
【0029】
コンデンサ素子2は、陽極箔2aの酸化皮膜2bを修復可能なポリアルキレンオキサイド、水溶性シリコーン若しくは分岐ポリエーテル又はこれらの誘導体からなる酸化皮膜修復物質を1種以上含有していることが好ましい。これらは酸素原子を多く有し、高い酸化力を有するため、電解コンデンサ1を長時間使用した場合に、陽極箔2aの酸化皮膜2bに欠損が生じた場合でも高い酸化力を欠損部の修復に使用できるため、漏れ電流を抑制することができる。
【0030】
水溶性高分子化合物13がポリアルキレンオキサイドの場合には、その分子量は100以上かつ1000以下であることが好ましい。分子量が100よりも小さい場合には封口体3を透過して外部に飛散し易くなる傾向がある。一方、分子量が1000よりも大きい場合には低温での等価直列抵抗(ESR)が大きくなる傾向がある。
【0031】
水溶性高分子化合物13が水溶性シリコーン、分岐ポリエーテル、ポリアルキレンオキサイドの誘導体、水溶性シリコーンの誘導体、又は分岐ポリエーテルの誘導体の場合には、その分子量が200以上かつ3000以下であることが好ましい。分子量が200よりも小さい場合には封口体3を透過して外部に飛散し易くなる傾向がある。一方、分子量が3000よりも大きい場合には低温での等価直列抵抗(ESR)が大きくなる傾向がある。
【0032】
コンデンサ素子2は、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボニル基、カルボキシル基、ニトロ基、スルホン基、アミド基、またはリン酸エステル基からなる親水性の官能基を持つ、前記陽極箔の酸化皮膜を修復可能な酸化皮膜修復物質を1種以上含有していることが好ましい。これにより、主鎖に水素結合を発現する結合鎖を含む水溶性高分子化合物13が安定して得られる。
【0033】
コンデンサ素子2は、分子量の異なる2種以上の水溶性高分子化合物の混合体からなる、陽極箔2aの酸化皮膜2bを修復可能な酸化皮膜修復物質を含有していることが好ましい。
【0034】
ここで、電解コンデンサ1に水溶性高分子化合物13が溶解した水溶性高分子溶液を含有させる場合、低温における等価直列抵抗(ESR)を低くするという観点からは、分子量の小さい水溶性高分子化合物を用いるのが好ましい。分子量の大きい高分子は10[℃]以下の低温で凝固が始まるため、凝固が始まる時に固体電解質のネットワークを破壊して電解コンデンサの等価直列抵抗(ESR)の増大を引き起こす虞がある。一方、分子量の小さい水溶性高分子化合物は分子量の大きい水溶性高分子化合物よりも凝固点が低いことから、分子量の小さい水溶性高分子化合物を用いた電解コンデンサ1を10[℃]以下の低温状態においたときに水溶性高分子化合物が凝固しにくくなり、微粒子状の導電性高分子化合物からなる固体電解質のネットワークが破壊され難くなる。従って、等価直列抵抗(ESR)が高くなることを抑制できるとともに、低温での特性安定性に優れた電解コンデンサ1となる。その反面、分子量の小さい水溶性高分子化合物は、封口体3を透過しやすい性質があるため、単独でこれを用いたのでは、水溶性高分子溶液を長期にわたり保持しにくくなることがある。
【0035】
そこで、第1の実施形態は、水溶性高分子化合物13として、分子量の異なる2種類以上の水溶性高分子化合物を用いる。これにより、分子量の小さい水溶性高分子化合物と、当該分子量の小さい水溶性高分子化合物よりも分子量の大きい水溶性高分子化合物とを混合して用いることにより、低温時の凝固ストレスを緩和することで低温における等価直列抵抗(ESR)を低くできる効果と水溶性高分子溶液が封口体3を透過して外部に飛散しにくくなるという効果が両方共に可能となり、その結果、第1の実施形態は、低温特性が良好であり、かつ、長寿命の電解コンデンサ1となる。
【0036】
電解質2eは、一例として、微粒子状の導電性高分子化合物2eからなる。ここで、導電性高分子化合物2eの平均粒子径は、1[nm]以上かつ300[nm]以下である。導電性高分子化合物2eの平均粒子径が1[nm]未満である場合には、微粒子状の導電性高分子化合物を作製するのが困難となる場合がある。一方、導電性高分子化合物2eの平均粒子径が300[nm]よりも大きい場合には、陽極箔2a表面のエッチングピット(凹部)に導電性高分子化合物2eを導入するのが困難となる場合がある。このような観点から言えば、導電性高分子化合物2eの平均粒子径は、2[nm]以上であることがより好ましく、3[nm]以上であることがより一層好ましい。また、導電性高分子化合物2eの平均粒子径は、200[nm]以下であることがより好ましく、100[nm]以下であることがより一層好ましい。
【0037】
引き続き、第1の実施形態に係るリード端子5及びリード端子6について、以下に説明する。
【0038】
図3Aはリード端子5(6)の概略の正面図であり、図3Bはリード端子5(6)の概略の側面図である。リード端子5(6)は、扁平部5a(6a)と第1段差部5c(6c)と丸棒部5d(6d)と第2段差部5e(6e)と引出端子5f(6f)とが連なって一体化している構造体である。
【0039】
リード端子5(6)における引出端子5f(6f)は、一例として、錫めっきされた銅被覆鋼線(CP線)からなる。これにより、外部の基板等への半田付けが容易となる。なお、引出端子5f(6f)は、丸ピンとする場合や角ピンとする場合がある。
【0040】
引出端子5f(6f)は、一例として、第2段差部5e(6e)に既知の溶接技術によって溶接される。扁平部5a(6a)と第1段差部5c(6c)と丸棒部5d(6d)とは、一例として、ホウ酸やアジピン酸等を含む既知の化成液によって予め化成処理されて、酸化皮膜が形成されている。
【0041】
扁平部5a(6a)は、第1段差部5c(6c)に接する第1扁平部5a1(6a1)と、第1扁平部5a1(6a1)から延設される第2扁平部5a2(6a2)とからなる。
【0042】
ここで、リード端子5は陽極箔2aに接合される陽極リード端子であり、リード端子6は陰極箔2cに接合される陰極リード端子である。
【0043】
陽極リード端子5の引出端子5fの長さは、陰極リード端子6の引出端子6fの長さよりも長くなっている。これにより、極性を容易に視認できる。
【0044】
第1の実施形態は、引出端子5fと引出端子6fとの長さの違いを除いて、陽極リード端子5と陰極リード端子6とは、同一形状かつ同一構造としてよい。続いて、陽極リード端子5の構造について、以下に説明する。
【0045】
陽極リード端子5における扁平部5aと第1段差部5cと丸棒部5dとは、一例として、アルミニウムからなり、プレス加工によって成形される。
【0046】
図3Aに示すように、正面視において、第1扁平部5a1の幅寸法(図中のY方向の幅寸法)W1は、丸棒部5dの外径寸法K1以下の大きさに設定されている。つまり、第1扁平部5a1の幅寸法W1の最大値は、丸棒部5dの外径寸法K1の最大値以下の大きさである。
【0047】
また、図3Aに示すように、正面側から見たときの第2扁平部5a2の幅寸法(図中のY方向の幅寸法)W2は、丸棒部5dの外径寸法K1を超える大きさに設定されている。つまり、第2扁平部5a2の幅寸法W2の最大値は、丸棒部5dの外径寸法K1の最大値を超える大きさである。
【0048】
図4は、陽極リード端子5を陽極箔2aに接合した状態の図である。陽極リード端子5は、第2扁平部5a2における複数の接合箇所5b1、5b2、5b3で陽極箔2aと接合されており、電気接続が可能な状態となっている。図4の例では、第2扁平部5a2は、複数の接合箇所5b1、5b2、5b3を通る幅寸法は、いずれも、第1扁平部5a1(6a1)との境界を通る幅寸法よりも大きい。これにより、扁平部5aと陽極箔2aとの接触抵抗を十分に小さくできる。
【0049】
一例として、扁平部5aと陽極箔2aとを重ね合わせて、針等で所定箇所を突き通して、出来たバリ部分をプレス加工して複数の接合箇所5b1,5b2,5b3を所定間隔で形成し、電気接続が可能な状態とする。接合箇所5b1,5b2,5b3は複数個所形成されていれば電気接続状態が安定するので、上記以外に、接続箇所が二箇所の場合や四箇所の場合がある。
【0050】
略円柱形状の丸棒部5dは第1段差部5cよりも外径が一様に大きい。第1段差部5cは丸棒部5dよりも扁平な形状であって、扁平部5aよりも所定方向(図3BのX方向)の厚みが大きい。扁平部5aは薄板形状で所定方向(図3BのX方向)の厚みが小さい。
【0051】
陽極箔2aは扁平部5aよりもさらに薄い箔形状である。図3A図3B図4では、扁平部5aにおける第1段差部5cとの境界V1を破線で示している。
【0052】
続いて、第1の実施形態に係る電解コンデンサ1の製造方法について、以下に説明する。
【0053】
図13Aは、電解コンデンサ1の製造手順を示すフローチャート図である。電解コンデンサ1は、一例として、接合ステップS2、素子形成ステップS3、導入ステップS4、嵌合ステップS5、封口ステップS6、エージングステップS7の順に製造される。
【0054】
なお、電解コンデンサ1の製造手順は、上記の手順に限定されず、上記以外に、導入ステップS4と嵌合ステップS5との順序を入れ替えることが可能である。さらに、上記以外に、エージングステップS7の後に、封口ステップS6を設けることが可能であり、また、エージングステップS7の後に、嵌合ステップS5および封口ステップS6を設けることが可能である。
【0055】
接合ステップS2は、一例として、上述のとおり、扁平部5aと陽極箔2aとを重ね合わせて、針等で所定箇所を突き通して、出来たバリ部分をプレス加工して複数の接合箇所5b1,5b2,5b3を所定間隔で形成し、陽極箔2aと接合して電気接続可能とする。陰極箔2cについても同様である。
【0056】
素子形成ステップS3は、一例として、図5に示すように、陽極箔2aと陰極箔2cとの間にセパレータ2dを挟んで両電極箔を隔離した状態とし、陽極箔2aと陰極箔2cとをセパレータ2dを介して巻回して円筒形状とする。そして、テープまたはフィルム等を円筒形状の外周部に貼り付けて巻回状態を保持する(不図示)。
【0057】
素子形成ステップS3における化成処理は、一例として、図6Aに示すように、化成液11を入れた化成液槽51を準備する。次に、図6Bに示すように、化成処理前段階のコンデンサ素子2iを化成液槽51内の化成液11に浸漬するとともに、引出端子5fと化成液11との間に所定電圧を所定時間印加する。一例として、100[V]の電圧を、5[分]印加して、陽極箔2aの端部に存在する酸化皮膜欠損部及び表面に存在することがある酸化皮膜欠損部を修復する(不図示)。そして、図6Cに示すように、化成液槽51から引き上げて、乾燥し、化成処理された状態のコンデンサ素子2jにする。
【0058】
化成液11は、例えば、アジピン酸アンモニウム、ホウ酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、グルタル酸アンモニウム、アゼライン酸アンモニウム、酒石酸アンモニウム、セバシン酸アンモニウム、ピメリン酸アンモニウム、スベリン酸アンモニウム等の水溶液が挙げられる。
【0059】
導入ステップS4は、化成処理された状態のコンデンサ素子2jに電解質2eを導入する。一例として、電解質2eとして導電性高分子化合物を導入する第1導入処理を行い、その後、電解質2eとして導電性高分子化合物が導入された状態のコンデンサ素子2に、陽極箔2aの酸化皮膜2bを修復可能な水溶性高分子化合物13を導入する第2導入処理を行う。
【0060】
導入ステップS4における第1導入処理は、一例として、図7Aに示すように、分散液12を入れた分散液槽52を準備する。次に、図7Bに示すように、化成処理された状態のコンデンサ素子2jを分散液槽52内の分散液12に浸漬する。そして、図7Cに示すように、分散液槽52から引き上げて、乾燥し、第1導入処理された状態のコンデンサ素子2kにする。
【0061】
第1の実施形態は、電解質2eは、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)、ポリ(4-スチレンスルホン酸)をドープしたポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT/PSS)、テトラシアノキノジメタン(TCNQ)、ポリピロール(PPy)、ポリアニリン(PANI)、ポリチオフェン(PT)、又はその他既知の微粒子状の導電性高分子化合物からなる。
【0062】
導電性高分子化合物2eの平均粒子径は、一例として、1[nm]以上300[nm]以下である。導電性高分子化合物2eの平均粒子径が1[nm]未満である場合には、微粒子状の導電性高分子化合物を作製するのが困難となる場合がある。一方、導電性高分子化合物の平均粒子径が300[nm]よりも大きい場合には、陽極箔2a表面のエッチングピット(凹部)に導電性高分子化合物2eを導入するのが困難となる場合がある。このような観点によれば、導電性高分子化合物2eの平均粒子径は、2[nm]以上であることがより好ましく、また、導電性高分子化合物2eの平均粒子径は、3[nm]以上であることがより一層好ましい。そして、導電性高分子化合物2eの平均粒子径は、200[nm]以下であることがより好ましく、また、導電性高分子化合物2eの平均粒子径は、100[nm]以下であることがより一層好ましい。
【0063】
第1の実施形態は、高分子分散液12における導電性高分子化合物2eの濃度は、一例として、0.1[vol%]以上かつ10[vol%]以下である。導電性高分子化合物2eの濃度が0.1[vol%]よりも低い場合には、導電性高分子化合物2eの量が少なく、所望のコンデンサ特性を発揮できない可能性がある。一方、導電性高分子化合物2eの濃度が10[vol%]よりも高い場合には、分散液12に導電性高分子化合物2eが均質に分散しない可能性がある。このような観点から言えば、導電性高分子化合物2eの濃度は、1[vol%]以上であることが好ましく、また、導電性高分子化合物2eの濃度は、2[vol%]以上であることがより好ましい。そして、導電性高分子化合物2eの濃度は、7[vol%]以下であることが好ましく、また、導電性高分子化合物2eの濃度は、3[vol%]以下であることがより好ましい。
【0064】
導入ステップS4における第2導入処理は、一例として、図8Aに示すように、陽極箔2aの酸化皮膜2bを修復可能な水溶性高分子化合物13を入れた溶液槽53を準備する。次に、図8Bに示すように、第1導入処理された状態のコンデンサ素子2kを溶液槽53内の水溶性高分子化合物13に浸漬する。そして、図8Cに示すように、溶液槽53から引き上げて、第2導入処理された状態のコンデンサ素子2にする。
【0065】
第1の実施形態におけるコンデンサ素子2は、微粒子状の導電性高分子化合物2eが導入されており、尚且つ、陽極箔2aの酸化皮膜2bを修復可能な水溶性高分子化合物13がコンデンサ素子2に含浸している。
【0066】
コンデンサ素子2は、陽極箔2aの酸化皮膜2bを修復可能なポリアルキレンオキサイド、水溶性シリコーン若しくは分岐ポリエーテル又はこれらの誘導体からなる酸化皮膜修復物質を1種以上含有していることが好ましい。これらの水溶性高分子化合物は酸素原子を多く有し、高い酸化力を有するため、電解コンデンサ1を長時間使用した場合においても、その高い酸化力によって、陽極箔2aの酸化皮膜2bの欠損部を修復するので、漏れ電流を抑制できる。
【0067】
嵌合ステップS5は、一例として、図9Aに示すように、ケース4と封口体3とを準備する。次に、図9Bに示すように、第2導入処理された状態のコンデンサ素子2をケース4に収納するとともに、陽極リード端子5の丸棒部5dと、陰極リード端子6の丸棒部6dをそれぞれ封口体3の貫通穴3c、3cに嵌合する。これにより、図9Cに示すように、ケース4と封口体3とが嵌合状態となる。
【0068】
封口ステップS6は、一例として、ケース4の開口側にカシメ加工を施して、ケース4の開口側の側面に横絞り部4bを形成し、尚且つ、開口端部4aを曲げる。このカシメ加工によって、図1に示すように、封口体3を、ケース4の横絞り部4bと開口端部4aとによって支持固定する。つまり、封口体3とコンデンサ素子2とは、有底形状のケース4に収納されており、封口体3は、ケース4の開口側の成形加工によって支持固定されている。
【0069】
エージングステップS7は、ケース4の開口側が封口体3とリード端子5(6)とによって封口された後に、外装スリーブをケース4に取り付ける等して、外装スリーブを熱加工するとともに、エージング処理を行う。エージング処理は、高温条件下で所定時間、電圧印加を行い、水溶性高分子化合物13の酸化皮膜修復作用を用いて、陽極箔2aの接合箇所5b1、5b2、5b3や断面等の金属地金部分と酸化皮膜2bの弱い部分を再化成する。これにより、漏れ電流を安定させる。また、エージング処理には、予期しない初期不良の除去といったデバッキング効果もある。
【0070】
上述した第1の実施形態は、図2に示すように、陽極箔2aに接合される陽極リード端子5は、第1扁平部5a1の幅寸法W1の最大値が丸棒部5dの外径寸法K1の最大値以下の大きさに設定されており、第2扁平部5a2の幅寸法W2の最大値が外径寸法K1の最大値を超える大きさに設定されており、且つ、第2扁平部5a2と封口体3とが非接触である。この構成によれば、導電性高分子化合物2eが陽極リード端子5に付着した状態で組立時やリフロー時に封口体3の変形に伴うストレスが生じた場合においても、漏れ電流を抑制できる。また、一例として、接合箇所5b1、5b2、5b3の数を幅方向に増やしたり、接合箇所5b1、5b2、5b3が占める面積を拡大させたり、カシメ接合と超音波溶接など複数の接合方法を併用したりすることが可能になり、陽極リード端子5と陽極箔2aとの電気接続が確実かつ十分に行える。さらに、一例として、事前の化成処理などにより第2扁平部5a2に酸化皮膜が形成された陽極リード端子5を接合することとした場合には、より確実に漏れ電流を抑制できるとともに、第2扁平部5a2に酸化皮膜が形成された陽極リード端子5と、表面に酸化皮膜が形成された陽極箔2aとの電気接続が確実かつ十分に行える。
【0071】
また、陰極箔2cに接合される陰極リード端子6についても同様に、第1扁平部6a1の幅寸法W1の最大値が丸棒部6dの外径寸法K1の最大値以下の大きさに設定されており、第2扁平部6a2の幅寸法W2の最大値が外径寸法K1の最大値を超える大きさに設定されており、且つ、第2扁平部6a2と封口体3とが非接触である。この構成によれば、陰極リード端子6と陽極リード端子5とで部品の標準化が図れる。また、陰極リード端子6と陰極箔2cとの電気接続が確実かつ十分に行える。さらに、第1扁平部を有していない形状の陰極リード端子を用いた構成と同等以上の漏れ電流の抑制効果が得られる。
【0072】
なお、電解コンデンサ1の製造手順は、上記の手順に限定されず、上記以外に、第2導入処理された状態のコンデンサ素子2をケース4に収納した後で、リード端子5(6)の丸棒部5d(6d)及び第1段差部5c(6c)を、封口体3の貫通穴3cに嵌合する場合がある。また、上記以外に、リード端子5(6)の丸棒部5d(6d)及び第1段差部5c(6c)を、封口体3の貫通穴3cに嵌合した後で、第2導入処理された状態のコンデンサ素子2をケース4に収納する場合がある。
【0073】
(第2の実施形態)
図11Aは第2の実施形態に係る絶縁膜7が形成された陽極リード端子5(および陰極リード端子6)の概略の正面図であり、図11B図11Aの概略の側面図である。第2の実施形態では、上述の第1の実施形態と相違する点を中心に説明する。
【0074】
第2の実施形態は、上述の第1の実施形態に係るリード端子5(6)の所定箇所に、樹脂からなる絶縁膜7が形成される。
【0075】
樹脂からなる絶縁膜7が形成される箇所は、少なくとも第1扁平部5a1(6a1)、第1段差部5c(6c)、丸棒部5d(6d)のいずれかである。絶縁膜7は、一例として、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、又はその他既知の樹脂からなる。
【0076】
一例として、第1扁平部5a1(6a1)に限定して樹脂からなる絶縁膜7が形成されている場合がある。一例として、第1段差部5c(6c)に限定して樹脂からなる絶縁膜7が形成されている場合がある。一例として、丸棒部5d(6d)に限定して樹脂からなる絶縁膜7が形成されている場合がある。これにより、固体電解質2eが陽極リード端子5や陰極リード端子6に付着することを防止できる。
【0077】
一例として、第1扁平部5a1(6a1)と第1段差部5c(6c)とに樹脂からなる絶縁膜7が形成されている場合がある。一例として、第1段差部5c(6c)及び丸棒部5d(6d)に樹脂からなる絶縁膜7が形成されている場合がある。一例として、第1扁平部5a1(6a1)、第1段差部5c(6c)及び丸棒部5d(6d)に樹脂からなる絶縁膜7が形成されている場合がある。これにより、固体電解質2eが陽極リード端子5や陰極リード端子6に付着することを防止できる。
【0078】
一例として、リード端子5(6)の第1段差部5c(6c)における、少なくとも封口体3と接する部分に樹脂からなる絶縁膜7が形成されており、且つ、リード端子5(6)の丸棒部5d(6d)における、少なくとも封口体3と接する部分に樹脂からなる絶縁膜7が形成されている場合がある。一例として、リード端子5(6)の丸棒部5d(6d)における、全周に亘って樹脂からなる絶縁膜7が形成されており、且つ、リード端子5(6)の第1段差部5c(6c)における、封口体3と接する部分に樹脂からなる絶縁膜7が形成されている場合がある。一例として、リード端子5(6)の丸棒部5d(6d)における、全周に亘って樹脂からなる絶縁膜7が形成されており、且つ、リード端子5(6)の第1段差部5c(6c)における、全周に亘って樹脂からなる絶縁膜7が形成されている場合がある。この構成により、樹脂からなる絶縁膜7が、封口体3における貫通穴3cと陽極リード端子5や陰極リード端子6との隙間を塞いで互いに密着した固着状態または融着状態となるので、陽極リード端子5や陰極リード端子6の位置が固定されて扁平部5a(6a)に外力が加わるのを防止する。
【0079】
一例として、上記の構成に加えて、リード端子5(6)の第1扁平部5a1(6a1)が封口体3と接する構成とした場合における、少なくとも封口体3と接する部分に樹脂からなる絶縁膜7が形成されている場合がある。一例として、上記の構成に加えて、リード端子5(6)の第1扁平部5a1(6a1)における、全周に亘って樹脂からなる絶縁膜7が形成されている場合がある。この構成により、樹脂からなる絶縁膜7が、封口体3における貫通穴3cの第2面3b側における陽極リード端子5や陰極リード端子6との隙間を塞いで互いに密着した固着状態または融着状態となるので、陽極リード端子5や陰極リード端子6の位置が固定されて扁平部5a(6a)に外力が加わるのを防止する。
【0080】
ここで、電解コンデンサ1の使用に際し、一例として、陽極リード端子5(および陰極リード端子6)を半田付けする。半田付け方式には、リフロー炉等を使用するリフロー方式、又は、半田槽等を使用するフロー方式があり、若しくは、半田ごてを使用する方法がある。
【0081】
ゴムの線膨張係数は、鋼の線膨張係数の5倍~20倍ある。したがって、封口体3の線膨張係数は、陽極リード端子5及び陰極リード端子6の線膨張係数よりも遥かに大きい。このため、半田付けの際に、加熱によって封口体3が膨張して、封口体3の貫通穴3cにおける、第1段差部5c(6c)と封口体3との間や、丸棒部5d(6d)と封口体3との間に隙間が生じる場合がある。少なくとも第1段差部5c(6c)または丸棒部5d(6d)に絶縁膜7が形成されていることで、外力が加わった際に、絶縁膜7の緩衝作用によって、陽極リード端子5や陰極リード端子6へのストレスが生じ難くなり、漏れ電流を抑制できる。
【0082】
絶縁膜7を構成する絶縁性樹脂のASTM D638に準拠する引張試験にて試験片が示す引張破断伸度が小さすぎると、外力によるストレスを受けた場合に絶縁膜7にクラックが生じやすくなってしまう。そこで、ASTM D638に準拠する引張試験にて試験片が示す引張破断伸度が2[%]以上の絶縁性樹脂からなる絶縁膜7にする。これによって、絶縁膜7に外力が加わってストレスが生じた場合においても、絶縁膜7にクラックが生じ難くなり、漏れ電流を抑制できる。上記引張破断伸度は、好ましくは15[%]以上であり、より好ましくは50[%]以上であり、さらに好ましくは200[%]以上である。なお、ASTM D638と基本的には同様の規格であるISO527またはJIS K7161に対応させて引張破断伸度を規定することも可能である。
【0083】
絶縁膜7は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂からなることが好ましい。この構成によれば、これら樹脂の線膨張係数が、ゴムと鋼との中間レベルの線膨張係数を有しているので、半田付け等の加熱によって封口体3が膨張した場合でも、樹脂からなる絶縁膜7によって、封口体3の貫通穴3cにおける、第1段差部5c(6c)と封口体3との間や、丸棒部5d(6d)と封口体3との間に隙間が生じ難くなり、漏れ電流を抑制できる。
【0084】
絶縁膜7は、熱可塑性樹脂からなることが好ましい。この構成によれば、製造時の熱処理、若しくは、使用時のリフロー、フロー、半田付け、又は熱衝撃等により封口体3が膨張した場合でも、絶縁膜7が軟化し融着して固着状態となるので、絶縁膜7の緩衝作用により第1段差部5c(6c)及び丸棒部5d(6d)へのストレスが生じ難くなり、漏れ電流を抑制できる。
【0085】
絶縁膜7は、リード端子5(6)と封口体3とに、固着または融着していることが好ましい。この構成によれば、製造時の熱処理、若しくは、使用時のリフロー、フロー、半田付け、又は熱衝撃等を経ることで、絶縁膜7が軟化し、封口体3の貫通穴3cにおける、第1段差部5c(6c)と封口体3との間や、丸棒部5d(6d)と封口体3との間に生じる隙間を塞ぎ、その後、融着して固着状態となる。したがって、使用時に漏れ電流が大きくなることを防止でき、繰り返し熱衝撃等が加わった場合でも、その都度、絶縁膜7が軟化し、融着して固着状態となるので、漏れ電流の抑制効果が持続する。
【0086】
また、絶縁膜7が、少なくとも第1扁平部5a1(6a1)、第1段差部5c(6c)、丸棒部5d(6d)のいずれかに予め形成されていることで、製造プロセスにおいて、微量な電解質2eであっても、リード端子5(6)の表面に電解質2eが付着するのを防止することができ、漏れ電流を抑制できる。
【0087】
絶縁膜7は、融点が60[℃]以上の絶縁性樹脂からなることが好ましい。これによれば、熱処理を除いた製造時の温度域では、絶縁膜7が固着状態となっているので、リード端子5(6)の表面に電解質2eが付着するのを防止できる。
【0088】
絶縁膜7は、融点が125[℃]以上の絶縁性樹脂からなることが好ましい。これによれば、使用時の温度域では、絶縁膜7が固着状態となっているので、リード端子5(6)の表面に電解質2eが付着するのを防止できる。
【0089】
絶縁膜7は、融点が150[℃]以上の絶縁性樹脂からなることが好ましい。これによれば、電解コンデンサ1の使用時に電流が重畳され発熱している場合においても、絶縁膜7が固着状態となっているので、リード端子5(6)の表面に電解質2eが付着するのを防止できる。
【0090】
絶縁膜7は、融点が260[℃]以下の絶縁性樹脂からなることが好ましい。これによれば、リード端子5(6)の半田付けとして、例えば、ピーク温度が260[℃]のリフローを実施すると、絶縁膜7が軟化し、その後、融着して固着状態となるので、第1段差部5c(6c)並びに丸棒部5d(6d)と、封口体3の貫通穴3cとに隙間が生じることを防止でき、緩衝作用により第1段差部5c(6c)及び丸棒部5d(6d)へのストレスが生じ難くなるとともに、漏れ電流の抑制効果が持続する。
【0091】
絶縁膜7は、結晶性樹脂からなることが好ましい。これによれば、温度が-20[℃]を下回る低温域、温度が-20[℃]以上かつ100[℃]以下の温度域、及び温度が100[℃]を超える高温域に亘る広範囲の温度域で、絶縁膜7が固着状態となっているので、リード端子5(6)の表面に電解質2eが付着するのを防止できる。上記に加えて、結晶性樹脂は、耐薬品性に優れているので、特に、化成処理等の製造過程で使用される薬品と接触する場合や、電解質導入等の製造過程での酸化皮膜修復物質等と接触する場合においても、絶縁膜7による漏れ電流の抑制効果が持続する。そして、結晶性樹脂は、外力が繰り返し加わることによる歪みや摩耗に対する強度が高いので、製造時や使用時にリード端子5(6)にストレスが加わる場合や、封口体3の膨張・収縮等の変形によってストレスが加わる場合においても、絶縁膜7による漏れ電流の抑制効果が持続する。
【0092】
絶縁膜7は、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合樹脂(FEP)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合樹脂(PFA)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合樹脂(ETFE)、ポリアミド(PA)、ポリイミド(PI)、ポリカーボネート(PC)、液晶ポリマー(LCP)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)のいずれか1種以上の絶縁性樹脂からなることが好ましい。これによれば、耐熱性に優れたものとなる。
【0093】
絶縁膜7は、特に、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合樹脂(FEP)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合樹脂(PFA)、又はテトラフルオロエチレン・エチレン共重合樹脂(ETFE)が好ましい。これによれば、耐熱性及び耐薬品性に優れたものとなる。
【0094】
絶縁性で熱可塑性樹脂からなる絶縁膜7は、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリスチレン(PS)、スチレン・アクリロニトリル共重合体(AS)、スチレン・ブタジエン・アクリロニトリル共重合体(ABS)、ポリエチレン(PE)、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリプロピレン(PP)、ポリアセタール(POM)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、変成アクリル(MS)、酢酸セルロース(CA)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド(PA)、ポリウレタン(PU)、三フッ化塩化エチレン(PCTFE)、四フッ化エチレン(PTFE)、四フッ化エチレン六フッ化プロピレン共重合(FEP)、四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合(PFA)、四フッ化エチレン・エチレン共重合(ETFE)、又はポリフッ化ビニリデン(PVDF)が挙げられる。
【0095】
絶縁性で熱可塑性樹脂からなる絶縁膜7は、特に、ポリスチレン(PS)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド(PA)、四フッ化エチレン(PTFE)、四フッ化エチレン六フッ化プロピレン共重合(FEP)、四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合(PFA)、四フッ化エチレン・エチレン共重合(ETFE)が好ましい。これによれば、リード端子5(6)の曲げ等のストレスに対する追従性及び耐薬品性に優れたものとなる。
【0096】
絶縁膜7は、その厚さが薄いほど貫通穴3cとの嵌合が容易となる。一方、絶縁膜7は、その厚さが薄すぎると、外力によるストレスを受けやすくなってしまう。そこで、第2の実施形態は、絶縁膜7の厚さを0.1[μm]以上にする。絶縁膜7の厚さは、好ましくは1[μm]以上であり、より好ましくは3[μm]以上である。
【0097】
絶縁膜7は、その厚さが厚いほど強度が高くなる。一方、絶縁膜7は、その厚さが厚すぎると、貫通穴3cとの嵌合の容易性が低下してしまう。そこで、第2の実施形態は、絶縁膜7の厚さを500[μm]以下にする。絶縁膜7の厚さは、好ましくは100[μm]以下であり、より好ましくは50[μm]以下である。
【0098】
続いて、第2の実施形態に係る電解コンデンサ1の製造方法について、以下に説明する。第2の実施形態では、上述の第1の実施形態と相違する点を中心に説明する。
【0099】
図13Bは、第2の実施形態に係る電解コンデンサ1の製造手順を示すフローチャート図である。電解コンデンサ1は、一例として絶縁膜形成ステップS1、接合ステップS2、素子形成ステップS3、導入ステップS4、嵌合ステップS5、封口ステップS6、エージングステップS7の順に製造される。
【0100】
なお、電解コンデンサ1の製造手順は、上記の手順に限定されず、上記以外に、絶縁膜形成ステップS1と接合ステップS2との順序を入れ替えることが可能であり、また、上記以外に、素子形成ステップS3の後に、絶縁膜形成ステップS1を設けることが可能である。そして、上記以外に、導入ステップS4と嵌合ステップS5との順序を入れ替えることが可能である。さらに、上記以外に、エージングステップS7の後に、封口ステップS6を設けることが可能であり、また、エージングステップS7の後に、嵌合ステップS5および封口ステップS6を設けることが可能である。
【0101】
第2の実施形態は、絶縁膜形成ステップS1における塗布方法は、転写法、スプレーコート法、ディップコート法、スクリーン印刷法、インクジェット法、バーコート法、又はその他既知の塗布方法、若しくはこれら塗布方法の組み合わせが適用できる。
【0102】
絶縁膜形成ステップS1は、一例として、熱可塑性樹脂が溶解している樹脂溶液を、リード端子5(6)の所定範囲に塗布することで絶縁膜7を形成する。
【0103】
絶縁膜形成ステップS1は、一例として、図11A及び図11Bに示すように、第1扁平部5a1(6a1)、第1段差部5c(6c)及び丸棒部5d(6d)に絶縁膜7を形成する。
【0104】
接合ステップS2は、一例として、図12に示すように、接合部5bと陽極箔2aとを重ね合わせて、針等で所定箇所を突き通して、出来たバリ部分をプレス加工して複数の接合箇所5b1,5b2,5b3を所定間隔で形成し、陽極箔2aと接合して電気接続可能とする。陰極箔2cについても同様である。
【0105】
ここで、リード端子5(6)において、樹脂からなる絶縁膜7が形成される範囲は、陽極箔2a(陰極箔2c)と重ならない範囲となっていることが好ましい。これによれば、接合部5b(6b)と陽極箔2a(陰極箔2c)とを密着でき、リード端子5(6)と陽極箔2a(陰極箔2c)との間の抵抗値を抑えることができる。
【0106】
第2の実施形態における素子形成ステップS3、導入ステップS4、嵌合ステップS5、封口ステップS6、及びエージングステップS7は、上述の第1の実施形態と同じである。
【0107】
第2の実施形態は、導入ステップS4の前段階で、リード端子5(6)の所定箇所に、樹脂からなる絶縁膜7を形成する。これにより、導入ステップS4の第1導入処理において、固体電解質2eがリード端子5(6)の所定箇所に付着することを防止でき、漏れ電流を抑制できる。
【0108】
第2の実施形態は、リード端子5(6)の長手方向における樹脂からなる絶縁膜7が形成される範囲は、封口体3の厚み寸法の0.1倍以上かつ2.5倍以下である。樹脂からなる絶縁膜7が形成される範囲が封口体3の厚み寸法の0.1倍よりも小さい場合には、リード端子5(6)の半田付け時において封口体3の熱膨張によるストレス等の影響で漏れ電流が大きくなる可能性がある。一方、樹脂からなる絶縁膜7が形成される範囲が封口体3の厚み寸法の2.5倍よりも大きい場合には、リード端子5(6)と陽極箔2a(陰極箔2c)との間の抵抗値が大きくなることでコンデンサ特性に影響する可能性がある。
【0109】
このような観点から言えば、リード端子5(6)の長手方向における樹脂からなる絶縁膜7が形成される範囲は封口体3の厚み寸法の0.3倍以上であることが好ましく、また、樹脂からなる絶縁膜7が形成される範囲は封口体3の厚み寸法の0.5倍以上であることがより好ましい。そして、樹脂からなる絶縁膜7が形成される範囲は封口体3の厚み寸法の2.0倍以下であることが好ましく、また、樹脂からなる絶縁膜7が形成される範囲は封口体3の厚み寸法の1.5倍以下であることがより好ましい。
【0110】
リフローでの使用を考慮した場合、樹脂からなる絶縁膜7は、ピーク温度が260℃で時間が10秒のリフローの際の熱により軟化し融着して固着状態となり、貫通穴3cと第1段差部5c(6c)、及び貫通穴3cと丸棒部5d(6d)との間の隙間を塞いで互いに密着した固着状態となる構成が好ましい。この構成により、貫通穴3cと第1段差部5c(6c)、及び貫通穴3cと丸棒部5d(6d)との間に隙間が生じることを防止でき、緩衝作用により第1段差部5c(6c)及び丸棒部5d(6d)へのストレスが生じ難くなるとともに、漏れ電流の抑制効果が持続する。
【0111】
続いて、電解コンデンサ1の実施例1について、以下に説明する。
【0112】
[実施例1]
実施例1は、陽極リード端子5の形状は図3A図3Bに示すとおりであり、また、陰極リード端子6の形状は図14A図14Bに示すとおりである。
【0113】
実施例1における陽極リード端子5は、第1扁平部5a1の幅寸法W1の最大値が丸棒部5dの外径寸法K1の最大値と同じ大きさに設定されており、第2扁平部5a2の幅寸法W2の最大値が外径寸法K1の最大値を超える大きさに設定されている。
【0114】
実施例1における陰極リード端子106は、扁平部106aと第1段差部6cと丸棒部6dと第2段差部6eと引出端子6fとが連なって一体化している構造体である。扁平部106aは、第1段差部6cに接する扁平部のみからなる。つまり、図3Aに示すような第1扁平部を有していない。陰極リード端子106は、扁平部106aの幅寸法W3の最大値が、外径寸法K1の最大値と同じ大きさ又は外径寸法K1の最大値を超える大きさに設定されている。そして、組立時に、扁平部106aは、封口体3と接触している。
【0115】
実施例1は、リード端子5の第2扁平部5a2と、エッチング処理を施して誘電体酸化皮膜2bを形成したアルミニウム箔からなる陽極箔2aとを、複数の接合箇所にてカシメ接合して電気接続可能とした。また、リード端子106の扁平部106aと、エッチング処理を施したアルミニウム箔からなる陰極箔2cとを、複数の接合箇所にてカシメ接合して電気接続可能とした。
【0116】
次に、リード端子5が接合された陽極箔2aと、リード端子106が接合された陰極箔2cとの間にセパレータ2dを介在させて巻回することにより、巻回形のコンデンサ素子2を形成した。
【0117】
次に、コンデンサ素子2を化成液層中のアジピン酸アンモニウム水溶液に浸漬するとともに、陽極2a側のリード端子5と化成液の間に70[V]の電圧を5[分]印加して、陽極箔2aの端部に存在する酸化皮膜欠損部及び陽極箔2a表面の酸化皮膜欠損部を修復し、その後、105[℃]の温度で5[分]乾燥した。
【0118】
次に、コンデンサ素子2における、陽極箔2aと陰極箔2cとの間の空隙に、微粒子状の導電性高分子化合物からなる固体電解質2eを導入した。固体電解質2eの導入工程においては、固体電解質2eを溶媒に分散させた固体電解質分散液12を空隙に充填した後、溶媒を除去することにより、陽極箔2aと陰極箔2cとの間の空隙に固体電解質2eを導入した。
【0119】
次に、陽極箔2aと陰極箔2cとの間の空隙に、液体状の水溶性高分子化合物13を、固体電解質2eを取り囲むように導入した。
【0120】
そして、イソブチレン・イソプレンゴムからなる封口体3を用いて、コンデンサ素子2のリード端子5(リード端子106)における、丸棒部5d(6d)及び第1段差部5c(6c)を、封口体3の貫通穴3c,3cに嵌合するとともに、コンデンサ素子2を金属ケース4に挿入し、その後、金属ケース4の開口端近傍にカシメ加工を施し、封口体3を支持固定した。組立時に、リード端子5の第2扁平部5a2は封口体3と非接触であった。
【0121】
上記のようにして電解コンデンサ1(定格電圧35[V]、静電容量150[μF])を作製した。
【0122】
続いて、上述した実施例1の試作と並行して試作した比較例1の電解コンデンサについて、以下に説明する。
【0123】
[比較例1]
比較例1における陽極リード端子105と陰極リード端子106の形状は図14A図14Bに示すとおりである。陽極リード端子105(陰極リード端子106)は、扁平部105a(106a)と第1段差部5c(6c)と丸棒部5d(6d)と第2段差部5e(6e)と引出端子5f(6f)とが連なって一体化している構造体である。扁平部105a(106a)は、第1段差部5c(6c)に接する扁平部のみからなる。つまり、陽極リード端子105(陰極リード端子106)は、図3Aに示すような第1扁平部を有していない。陽極リード端子105(陰極リード端子106)は、扁平部105a(106a)の幅寸法W3が外径寸法K1以上の大きさに設定されている。そして、組立時に、扁平部105a(扁平部106a)は、封口体3と接触している。
【0124】
実施例1との違いは、比較例1は陽極リード端子105を用いていることである。それ以外は、実施例1と同様の製造条件で比較例1の電解コンデンサを作製した。そして、実施例1と比較例1とについて、直流電圧35[V]を印加した時の漏れ電流値を測定し、評価した。
【0125】
上記のように作製した実施例1と、比較例1の各電解コンデンサについて、35[V]の電圧を印加した時の漏れ電流を測定した。ここで、電圧印加後1分経過した時点の漏れ電流値を1分値と定義し、また、電圧印加後5分経過した時点の漏れ電流値を5分値と定義する。表1にその結果を示す。
【0126】
【表1】
【0127】
表1に示すように、比較例1は電圧印加後の漏れ電流が大きく、1分値は実施例1の16倍、5分値は実施例1の37倍程度だった。一方、実施例1は比較例1に比べて、漏れ電流が大幅に抑制されていた。
【0128】
表1の結果から、実施例1のように、扁平部5aにおける丸棒部5dの外径寸法K1を超える大きさの部分5a1(6a1)が、封口体3と接触しない構成とすることで、組立時に封口体からのストレスが生じた場合においても、漏れ電流を抑制できたものと考えられる。
【0129】
上述の実施例1の構成は適宜変更することができる。一例として、陽極リード端子5に加えて陰極リード端子6を用いる構成とすることで、部品の標準化が図れる。また、陰極リード端子6と陰極箔2cとの電気接続が確実かつ十分に行える。さらに、第1扁平部を有していない形状の陰極リード端子を用いた実施例1と同等以上の漏れ電流の抑制効果が得られる。
【0130】
上述の実施例1は適宜変更することができる。一例として、陽極リード端子5は、少なくとも第1扁平部5a1、第1段差部5c、丸棒部5dのいずれかに、樹脂からなる絶縁膜7を形成する構成とする場合がある。また、陰極リード端子6についても同様である。絶縁膜7が形成されていることで、外力が加わった際に、絶縁膜7の緩衝作用によって、陽極リード端子5や陰極リード端子6へのストレスが生じ難くなり、漏れ電流を抑制できる。
【0131】
本発明は、上述の実施例に限定されることなく、本発明を逸脱しない範囲において種々変更が可能である。
【符号の説明】
【0132】
1 電解コンデンサ
2 コンデンサ素子
2a 陽極箔
2b 酸化皮膜
2c 陰極箔
2d セパレータ
2e 電解質(導電性高分子化合物)
2h 酸化皮膜
3 封口体
3a 第1面
3b 第2面
3c 貫通穴
4 ケース
5 リード端子(陽極リード端子)
6 リード端子(陰極リード端子)
5a、6a 扁平部
5a1、6a1 第1扁平部
5a2、6a2 第2扁平部
5b1、5b2、5b3、6b1、6b2、6b3 接合箇所
5c、6c 第1段差部
5d、6d 丸棒部
5e、6e 第2段差部
5f、6f 引出端子
7 絶縁膜
11 化成液
12 分散液
13 水溶性高分子化合物
K1 丸棒部の外形寸法
W1 第1扁平部の幅寸法
W2 第2扁平部の幅寸法
図1
図2
図3
図4
図5
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図8
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図10
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