(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-14
(45)【発行日】2024-06-24
(54)【発明の名称】水溶性層を有するプラグを使用したコーティングプロセス中における構成要素の孔の保護
(51)【国際特許分類】
C23C 30/00 20060101AFI20240617BHJP
B22D 31/00 20060101ALI20240617BHJP
F01D 25/00 20060101ALI20240617BHJP
C23C 4/02 20060101ALN20240617BHJP
【FI】
C23C30/00 E
B22D31/00 Z
F01D25/00 L
F01D25/00 X
C23C4/02
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019149012
(22)【出願日】2019-08-15
【審査請求日】2022-08-08
(32)【優先日】2018-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515322297
【氏名又は名称】ゼネラル エレクトリック テクノロジー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】General Electric Technology GmbH
【住所又は居所原語表記】Brown Boveri Strasse 8, 5400 Baden, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【氏名又は名称】黒川 俊久
(74)【代理人】
【識別番号】100151286
【氏名又は名称】澤木 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【氏名又は名称】小倉 博
(72)【発明者】
【氏名】ヤン・ツゥイ
(72)【発明者】
【氏名】スリカンス・カンドゥルドゥ コッティリンガム
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン・マシュー ロマス
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン・リー トリッソン
【審査官】隅川 佳星
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-306760(JP,A)
【文献】特開2003-342707(JP,A)
【文献】特開2003-343205(JP,A)
【文献】特開2005-007278(JP,A)
【文献】特開2015-132261(JP,A)
【文献】特開2016-108582(JP,A)
【文献】特開2017-096255(JP,A)
【文献】米国特許第06454156(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0193980(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0052200(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0079288(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第105464723(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 31/00
C23C 4/00 - 4/18
C23C 30/00
F01D 1/00 - 1/38
5/00 - 5/34
F02C 7/00 - 7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーティング(240)プロセス中に構成要素(170)の孔(162)を維持するためのプラグ(210)であって、当該プラグ(210)が、
水不溶性コア(212)と、
前記水不溶性コア(212)の外側表面(174、216、219、222)の少なくとも一部を囲む水溶性層(214)であって、前記水溶性層(214)が、前記コーティング(240)プロセス中に前記孔(162)の内部表面と係合する水溶性層(214)と
を備える、プラグ(210)。
【請求項2】
前記水不溶性コア(212)が、鋼、金属合金又は超合金のうちの1つを含む、請求項1に記載のプラグ(210)。
【請求項3】
前記水溶性層(214)が、a)アルミナ、ジルコン、リン酸水素ナトリウム及び糖、又はb)ポリエチレングリコール、塩化ナトリウム、雲母粉末及び可塑剤のうちの1つを含む、請求項1に記載のプラグ(210)。
【請求項4】
前記水不溶性コア(212)及び前記水溶性
層(214)が、細長い本体(218)を形成する、請求項1に記載のプラグ(210)。
【請求項5】
前記細長い本体(218)が、円筒形状を有する、請求項4に記載のプラグ(210)。
【請求項6】
前記細長い本体(218)が、その少なくとも一端(220)で先細にされている、請求項4に記載のプラグ(210)。
【請求項7】
前記水溶性層(214)が、前記孔(162)と嵌合するように構成された第1の部分(230)と、前記構成要素(170)の外側表面(174、216、219、222)に当接するための前記孔(162)よりも大きい寸法を有する第2の部分(232)とを含む、請求項1に記載のプラグ(210)。
【請求項8】
前記水不溶性コア(212)が、当該プラグ(210)の断面積の35~95%を占める、請求項1に記載のプラグ(210)。
【請求項9】
当該プラグ(210)の断面形状が、前記構成要素(170)の外側表面(174、216、219、222)にある前記孔(162)の内部断面形状と嵌合するように構成される、請求項1に記載のプラグ(210)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、構成要素のコーティングに関し、より具体的には、水不溶性コア上に水溶性層を有するプラグを使用してコーティングプロセス中に構成要素の孔を保護する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービン構成要素などの産業機械は、多くの場合、材料の能力を高めるために構成要素の壁に冷却孔を含む。冷却孔は、構成要素の冷却チャンバと流体連通し、冷却チャンバが冷却孔を通して冷却剤を構成要素の外側表面に送達する。ガスタービンバケットやノズルなどの構成要素は、断熱および酸化防止のために、典型的には局所的にまたはその表面全体にわたってボンドコーティングおよび/または遮熱コーティング(TBC)でコーティングされている。
【0003】
構成要素の元の製造中、通常、コーティングが最初に構成要素上に適用され、次に冷却孔がコーティングおよび構成要素の壁厚に直接ドリル加工されて構成要素の冷却チャンバに達する。あるいは、鋳造プロセスでは、使い捨てのプラグを鋳造金型の所定の位置に配置して冷却孔を作成することができる。例えば、水溶性セラミックのコアプラグが鋳造中に冷却孔を作成するために使用されている。
【0004】
例えば、しばらく使用した後の構成要素のサービス中、コーティングの修理または交換が必要になる場合がある。この場合、冷却孔はすでに所定の位置にある。冷却孔が再コーティング中に塞がれると、冷却孔および構成要素の有効性が低下することがある。現在の冷却孔の修理技術には、再コーティングの前にマスキングエポキシを適用して冷却孔を埋めることが含まれる。マスキングエポキシは、再コーティングプロセス後に冷却孔から取り除く必要がある。マスキングエポキシの適用および除去は、時間と労力がかかり、かつ高価である。このプロセスは、冷却孔を許容できないほど拡大する可能性もある。
【発明の概要】
【0005】
本開示の第1の態様は、コーティングプロセス中に構成要素の孔を維持するためのプラグを提供し、プラグは、水不溶性コアと、水不溶性コアの外側表面の少なくとも一部を囲む水溶性層であって、水溶性層は、コーティングプロセス中に孔の内部表面と係合する水溶性層とを備える。
【0006】
本開示の第2の態様は、コーティングプロセス中に構成要素の孔を保護する方法を提供し、方法は、プラグを孔に載置することであって、プラグは、水不溶性コア、および金属コアの外側表面の少なくとも一部を囲む水溶性層を含むことと、プラグおよび構成要素の少なくとも一部の上にコーティングを適用することと、構成要素を水に浸漬して水溶性層を溶解し、水不溶性コアの除去を可能にすることと、孔の上からコーティングを、かつ孔の中から水不溶性コアを除去することとを含む。
【0007】
本開示の例示的な態様は、本明細書で説明される問題および/または検討されていない他の問題を解決するように設計される。
【0008】
本開示のこれらのおよび他の特徴は、本開示の様々な実施形態を示す添付の図面と併せて、本開示の様々な態様の以下の詳細な説明から、より容易に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】ガスタービンシステムの形態の例示的な産業機械の概略図である。
【
図2】
図1のガスタービンシステムと共に使用することができる例示的なガスタービンアセンブリの断面図である。
【
図3】本開示の実施形態を採用することができるタービンロータブレードの形態の例示的な構成要素の斜視図である。
【
図4】
図3の線A-Aに沿った構成要素の一対の孔の断面図である。
【
図5】本開示の実施形態による、
図4の構成要素の一対の孔にプラグを載置する断面図である。
【
図6】本開示の実施形態による、水不溶性コアおよびその上の水溶性層を含むプラグの断面図である。
【
図7】本開示の実施形態による、
図6のプラグを作製するための押出物の断面図である。
【
図8】本開示の実施形態による、プラグを有する構成要素の一対の孔の上にコーティングを適用する断面図である。
【
図9】本開示の実施形態による、プラグを有する構成要素の一対の孔の上に別のコーティングを適用する断面図である。
【
図10】本開示の実施形態による、構成要素を水に浸漬してプラグ上の水溶性層を溶解する断面図である。
【
図11】本開示の実施形態による、構成要素の一対の孔から水不溶性コアを除去する断面図である。
【
図12】本開示の実施形態による、一対の孔およびその上の新しいコーティングを有する構成要素の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示の図面は、必ずしも原寸に比例しないことに留意されたい。図面は、本開示の典型的な態様だけを示すことを目的としており、したがって、本開示の範囲を限定するものと考えるべきではない。図面では、図面間で類似する符号は類似する要素を表す。
【0011】
最初の問題として、本開示を明確に説明するために、関連する機械構成要素を参照して説明するときに、特定の専門用語を選択することが必要になる。これを行う場合、可能な限り、一般的な工業専門用語が、その受け入れられた意味と同じ意味で使用および採用される。別途記載のない限り、このような専門用語は、本出願の文脈および添付の特許請求の範囲と一致する広義の解釈を与えられるべきである。当業者であれば、多くの場合、特定の構成要素がいくつかの異なるまたは重複する用語を使用して参照されることがあることを理解するであろう。単一の部品であるとして本明細書に記載され得るものは、複数の構成要素からなるものとして別の文脈を含み、かつ別の文脈で参照されてもよい。あるいは、複数の構成要素を含むものとして本明細書に記載され得るものは、単一の部品として他の場所で参照されてもよい。
【0012】
ある要素または層が別の要素または層に対して「上に」、「係合される」、「係合解除される」、「接続される」、または「結合される」と言及される場合には、他の要素または層に対して直接的に上に、係合され、接続され、または結合されてもよいし、あるいは介在する要素または層が存在してもよい。逆に、ある要素が、別の要素または層に対して「直接上に」、「直接係合される」、「直接接続される」または「直接結合される」と言及される場合には、介在する要素または層は存在しなくてもよい。要素間の関係について説明するために使用される他の語も、同様に解釈されるべきである(例えば、「~の間に」に対して「直接~の間に」、「~に隣接して」に対して「直接~に隣接して」など)。本明細書で使用する場合、「および/または」という用語は、関連する列挙された項目のいずれかおよび1つまたは複数のすべての組合せを含む。
【0013】
図1は、例示的な産業機械の概略図を示し、その構成要素は、本開示の実施形態による方法の主題であり得る。この例では、機械は、燃焼またはガスタービンシステムの形態のターボ機械100を含む。ターボ機械100は、圧縮機102と、燃焼器104とを含む。燃焼器104は、燃焼領域106と、燃料ノズルアセンブリ108とを含む。ターボ機械100はまた、タービン110と、共通の圧縮機/タービンシャフト112(ロータ112と呼ばれることもある)とを含む。一実施形態では、燃焼タービンシステムは、ゼネラルエレクトリック社(米国サウスカロライナ州グリーンビル)から市販されているMS7001FBエンジン(7FBエンジンと呼ばれることもある)である。本開示は、いかなる特定の産業機械に限定されず、またいかなる特定の燃焼タービンシステムにも限定されるものではなく、例えば、ゼネラルエレクトリック社のMS7001FA(7FA)、MS9001FA(9FA)、7HAおよび9HAエンジンモデルを含む他のエンジンと関連して実装することができる。さらに、本開示は、いかなる特定のターボ機械に限定されるものではなく、例えば、蒸気タービン、ジェットエンジン、圧縮機、ターボファンなどに適用可能とすることができる。
【0014】
動作中、空気は圧縮機102を通って流れ、圧縮空気が燃焼器104に供給される。具体的には、圧縮空気は、燃焼器104と一体の燃料ノズルアセンブリ108に供給される。アセンブリ108は、燃焼領域106と流れ連通している。燃料ノズルアセンブリ108はまた、燃料源(
図1には図示せず)と流れ連通しており、燃料および空気を燃焼領域106に導く。燃焼器104は、燃料を点火して燃焼させる。燃焼器104は、ガス流熱エネルギーが機械的回転エネルギーに変換されるタービンアセンブリ110と流れ連通している。タービンアセンブリ110は、ロータ112に回転可能に結合し、ロータ112を駆動するタービン111を含む。圧縮機102はまた、ロータ112に回転可能に結合される。例示的な実施形態では、複数の燃焼器104および燃料ノズルアセンブリ108が存在する。
【0015】
図2は、
図1のガスタービンシステムと共に使用することができるターボ機械100(
図1)の例示的なタービンアセンブリ110の断面図を示す。タービンアセンブリ110のタービン111は、ターボ機械100の静止ケーシング122に結合され、回転ブレード124の列に軸方向に隣接するノズルまたはベーン120の列を含む。ノズルまたはベーン126は、半径方向外側プラットフォーム128および半径方向内側プラットフォーム130によってタービンアセンブリ110に保持され得る。タービンアセンブリ110のブレード124の列は、ロータ112に結合され、ロータと共に回転する回転ブレード132を含む。回転ブレード132は、ロータ112に結合された半径方向内向きプラットフォーム134(ブレードの根元にある)と、半径方向外向き先端シュラウド136(ブレードの先端にある)とを含むことができる。本明細書で使用する場合、「ブレード」または「高温ガス経路構成要素」という用語は、別途記載のない限り、静止ベーンまたはブレード126および回転ブレード132を集合的に指すものとする。
【0016】
図3は、本開示の教示を採用することができるターボ機械100の例示的な構成要素170を示す。
図3は、タービンロータブレード132の斜視図を示しているが、本開示の実施形態が適用され得る構成要素は大きく異なり、任意の産業機械に由来し得ることを強調する。タービンロータブレード132は、ロータブレード132がロータ112(
図2)に取り付けられる根元140を含む。根元140は、ロータ112(
図2)のロータホイール144(
図2)の周囲にある対応するダブテールスロットに装着するように構成されたダブテール142を含むことができる。根元140は、ダブテール142と、翼形部150と根元140の接合部に配置され、タービンアセンブリ110を通る流路の内側境界の一部を画定するプラットフォーム148との間に延びるシャンク146をさらに含むことができる。翼形部150は、作動流体の流れを遮断してロータディスクを回転させるロータブレード132の能動構成要素であることが理解されよう。ロータブレード132の翼形部150は、対向する前縁156と後縁158との間にそれぞれ軸方向に延びる、凹状正圧側(PS)外側壁152と、円周方向または横方向に対向する凸状負圧側(SS)外側壁154とを含むことがわかる。側壁156および158もまた、プラットフォーム148から外側先端160に半径方向に延びる。
【0017】
図4は、
図3の線A-Aに沿った構成要素170の壁168および内部の一対の例示的な孔162の拡大断面図を示す。本明細書では孔162を冷却孔として説明するが、本開示の教示は、異なる機能を有する孔に適用することができることを強調する。当技術分野で理解されるように、冷却剤172は、冷却孔162に送達されて壁168、構成要素170およびその外側表面174を冷却する。当技術分野で理解されるように、構成要素170、例えば、翼形部150(
図3)は、冷却剤172、例えば、空気をその外側表面174の多数の冷却孔162に供給する冷却チャンバ176を内部に含むことができる。冷却チャンバ176および冷却孔162は、多種多様な経路およびレイアウトを有し得る。構成要素170はまた、例えば、熱および酸化条件などのターボ機械100の内部環境から構成要素を保護するために、ボンドコーティング180およびその上の遮熱コーティング(TBC)182(本明細書でより詳細に説明される)を含むことができる。
【0018】
本開示の実施形態は、ロータブレード132に関して説明されるが、その表面に冷却孔または他の孔を有し、コーティングプロセス中に保護を必要とする実質的にあらゆる構成要素、例えば、静止ベーン126(
図2)および他の構成要素に等しく適用可能である。構成要素170は、例えば、高温ガス経路構成要素のための任意の現在知られているまたは今後開発される金属または合金を含むことができる。例えば、構成要素170は、鉄基、コバルト基および/またはニッケル基超合金を含んでもよい。本明細書で使用する場合、「超合金」は、限定はしないが、Rene108、CM247、Haynes合金、Incalloy、MP98T、TMS合金、CMSX単結晶合金のような高い機械的強度、高い熱クリープ変形抵抗など、従来の合金と比較して多数の優れた物理的特性を有する合金を指す。一実施形態では、本開示の教示が特に有利であり得る超合金は、高いガンマプライム(γ’)値を有する超合金である。「ガンマプライム」(γ’)は、ニッケル基合金の主要な強化相である。例示的な高ガンマプライム超合金は、限定はしないが、Rene108、N5、GTD444、MarM247およびIN738を含む。
【0019】
上述のように、本開示は、コーティングプロセス中に構成要素170の孔162を保護する方法を提供する。特に、使用期間が経過した後、構成要素170は、例えば、摩耗しているか、または構成要素170をターボ機械100の内部環境にさらす可能性のある破片を内部に含む場合があるその外側コーティング180、182の修理または交換を必要とし得る。本明細書で述べたように、孔162が再コーティング中に塞がれると、孔、例えば、冷却孔としての有効性、および構成要素に非常に重大な悪影響が生じる。さらに、孔のサイズが変化すると、例えば、冷却孔としての有効性にも影響する可能性がある。方法は、使用済みの構成要素170について説明され得るが、新しいまたは使用済みの構成要素と共に採用され得る。孔はすでに所定の位置にあり、必要に応じて構成されており、構成要素の元の製造中とは対照的にドリル加工などの機械加工による変更を必要としない、または可能にしないため、使用済みの構成要素170に特に適用可能である。
【0020】
本開示の実施形態によれば、
図5に示すように、プラグ210は、1つまたは複数の孔162に載置されてコーティングプロセス中に孔を保護する。
図5は、古いコーティング180、182が除去され、外側表面174が再コーティングのために準備された、例えば、残留物が洗浄された、所望の形状に形成されたなどの後の構成要素170の一対の例示的な孔162の断面図を示す。
図5におよび
図6の単一のプラグの断面図に示すように、プラグ210は、水不溶性コア212と、水不溶性コア212の外側表面216の少なくとも一部を囲む水溶性層214とを含むことができる。説明されるように、水溶性層214は、コーティングプロセス中に孔162の内部表面と係合する。
【0021】
水溶性層214は、多種多様な形態をとることができる。一実施形態では、水溶性層214は、水溶性セラミックを含むことができる。一例では、水溶性セラミックは、アルミナ、ジルコン、リン酸水素ナトリウムおよび糖を含んでもよい。1つの特定の実施形態では、水溶性層214は、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,024,787号に記載されている配合物のいずれかを含むことができる。例えば、水溶性セラミック層は、約60~70重量%のアルミナ(Al
2O
3)粉末、約15~25重量%のジルコン(ZrSiO
4)粉末、約5~15重量%のリン酸水素ナトリウム(Na
2HPO
4)および約5重量%の糖を含み得る。層の水不溶性コア212への適用を支援するためにろう付け結合剤ゲルを採用してもよいが、プラグ210から水分を除去する後の熱プロセス中に除去され得る。別の実施形態では、水溶性層214は、ポリエチレングリコール、塩化ナトリウム、雲母粉末およびポリエチレンやパラフィンなどの可塑剤を含んでもよい。他の配合物も可能であり、本開示の範囲内で考慮される。水溶性層214は、水不溶性コア212(
図5~
図8)の全長を囲むことができるが、孔162が水溶性層214と嵌合するコアを囲むだけでよい。例えば、
図9は、水不溶性コア212の一部のみが水溶性層214によって囲まれている、すなわち、孔162がプラグと嵌合するプラグ210を示す。
図10の非限定的な例に示すように、水溶性層214はまた、水不溶性コア212の端部220を囲むことができる。
【0022】
水不溶性コア212は、水に溶解せず、十分に硬く、かつコーティングプロセス中に予想され得るどんな環境にも耐えることができる任意の材料を含むことができる。
図7に示す一実施形態では、プラグ210は、シールド金属アーク溶接(SMAW)電極(手動金属アーク溶接(MMAまたはMMAW)またはスティック溶接としても知られる)と同様に形成されてもよい。この分野で理解されているように、SMAW電極は、金属コアを含み、フラックスがコアを囲んでいる。プラグ210は、水溶性層材料を押出プレスでペースト状に供給し、水不溶性コア212をダイに通し、したがって水溶性層214を水不溶性コア212に取り付けることによって作製することができる。
図7は、この手法によって形成されたプラグの長さの断面図を示す。押出後、プラグの長さを熱プロセスにさらして水分を除去し、材料を共に焼結することができる。
図7に示すように、任意の所望の長さのプラグ210を得られた押出物から切断することができる。いずれにしても、プラグ210は、孔162を収容するのに望ましい任意の長さを有することができる細長い本体218(
図6)を含む。プラグ210がこのように形成される場合、水不溶性コア212は、鋼、金属合金および超合金を含んでもよい。
【0023】
別の実施形態では、プラグ210は、水溶性層214を水不溶性コア212に接着させることができる任意の方法、例えば、噴霧、成形などによって形成されてもよい。この場合、水不溶性コア212は、コーティングプロセス中に予想され得るどんな環境にも耐えることができる、十分に硬い材料、例えば、合金鋼、ステンレス鋼、超合金などを含むことができる。ここでも、プラグ210は、孔162を収容するのに望ましい任意の長さを有することができる細長い本体218(
図6)を含むことができる。
【0024】
プラグ210の細長い本体218、特に、水溶性層214の外側表面219は、所望の任意の断面形状を有することができる。典型的には、プラグ210は、構成要素170の外側表面174にある孔162の内部断面形状と嵌合するように構成された断面形状を有する。例えば、プラグ210は、円筒形状、すなわち、円形断面を有するロッド形状であってもよく、孔162は円形である。プラグ210の細長い本体218はまた、孔162との嵌合を確実にし、および/またはその上に所望のコーティングの形成を可能にするために、任意の他の形状を有してもよい。公差は、例えば、スリップフィット、締まりばめなど、所望の任意のレベルにすることができる。水不溶性コア212および水溶性層214は、同じ断面形状を有していてもよく、または異なっていてもよい。さらに、水溶性層214の厚さは、ユーザが選択することができる。例えば、水不溶性コア212は、プラグ210の断面積の約35~95%を占め、水溶性層214が断面積の残りを消費する。
【0025】
図6に示すように、細長い本体218は、その少なくとも一端220で先細にされてもよい。すなわち、細長い本体218の端部220の表面は、その外側表面222に対して垂直ではない。限定はしないが、尖った端部、丸みを帯びた端部、弾丸形状の端部など、他の形状も可能である。プラグ210の挿入、除去、または適用中のコーティング240、242(
図8および
図9)の制御、例えば、流れ方向、厚さなどを支援するために、異なる形状の端部220が望ましい場合がある。
【0026】
図5および
図6を参照すると、プラグ210を孔162に載置することは、水不溶性コア212の端部228が適用されるコーティング240、242(
図8および
図9)の厚さよりも大きい距離だけ孔162から延びるようにプラグを載置することを含み得る。この機能を提供するために、水溶性層214は、孔162と嵌合するように構成された第1の部分230と、構成要素170の外側表面174に当接するための孔162よりも大きい寸法を有する第2の部分232とを含むことができる。このようにして、孔162に対するプラグ210の一部を挿入することができ、水不溶性コア212の端部228は、コーティングが適用された後(
図8~
図9)、コーティング240、242(
図8および
図9)の厚さよりも大きい距離だけ孔162から延びることができる。また、孔162へのプラグ210の深さが制御されるため、プラグを除去することができない状況を回避することができる。ここで、第2の部分232は、水不溶性コア212を使用後に除去することができるように配置するような寸法である。第2の部分232は、材料を除去することによって、例えば、エッチングまたは機械加工によって形成することができ、または第2の部分232は、材料を細長い本体218に追加することによって、例えば、コーティングまたは他の追加の材料によって形成することができる。水溶性層214は、すなわち、コーティングプロセス中に孔162の内部表面と係合する。
【0027】
図8および
図9を参照すると、方法の次のステップにおいて、コーティングがプラグ210および構成要素170の少なくとも一部の上に適用される。この例では、2つのコーティング240、242が適用されているが、これはすべての場合に必要なわけではない。
図8に示す非限定的な例では、このプロセスは、ボンドコーティング240を適用することを含む。ボンドコーティング240は、限定はしないが、ニッケルまたは白金アルミナイド、ニッケルクロムアルミニウムイットリウム(NiCrAlY)またはニッケルコバルトクロムアルミニウムイットリウム(NiCoCrAlY)などの任意の現在知られているまたは今後開発されるボンドコート材料を含んでもよい。
図9に示す非限定的な例では、このプロセスはまた、または代替的に、遮熱コーティング(TBC)242を適用することを含み得る。TBC242は、限定はしないが、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、ムライトおよびアルミナなどの任意の現在知られているまたは今後開発されるTBC材料を含んでもよい。TBC242は、熱成長酸化物などの追加の層も含むことができる。
図9に示すように、このプロセスはまた、コーティングを構成要素170の外側表面174に結合するために、ボンドコーティング240およびTBC242を指定の期間、例えば、約600℃で熱処理することを含み得る。水不溶性コア212および水溶性層214の各々は、この熱処理に耐えるように構成されなければならない。
【0028】
図10に示すように、コーティングされると、構成要素170は水250に浸漬されて水溶性層214を溶解し、水不溶性コア212の除去を可能にする(
図11参照)。水溶性層214は、冷却チャンバ176から入る水を介して水250にさらされてもよい。水250は、水溶性層214の溶解を支援するために循環され得る。水溶性層214を溶解するのに必要な浸漬の期間、すなわち、時間は、例えば、水溶性層214の厚さ、水溶性層214の材料、水の流量などに依存し得る。
【0029】
図11に示すように、水溶性層214が溶解すると、水不溶性コア212は孔162内に緩く位置する。すなわち、水溶性層214は、もはや孔162の内部表面に係合しない。
図11は、例えば、任意の既知の方法による孔162の上からのコーティング240、242の除去、および孔162の中からの水不溶性コア212の除去を示す。水溶性層214の第2の部分232(
図6)は、水不溶性コア212の端部228をコーティング240、242の厚さよりも大きい距離だけ孔162から延びるように配置するため、水不溶性コア212は、例えば、手で、構成要素を反転させることによって、または容易に入手可能なツールによって簡単に除去することができる。
【0030】
図12に示すように、プラグ210はコーティングプロセス中に孔162を確実に保護し、孔162は何らかの方法で再加工する必要がない。孔162は、当初の設計通り、または使用後の形状を維持しており、新しいコーティング240、242が適用されている。プラグ210の使用は、従来のマスキング手法よりも速く、簡単で、かつ安価であり、いくつかのコーティングプロセスで観察される可能性のある様々な腐食性および/または酸化性環境で使用することができる。
【0031】
上記の図面は、本開示のいくつかの実施形態による関連する処理のいくつかを示す。これに関して、各図面は、説明された方法の実施形態に関連するプロセスを表してもよい。いくつかの代替的な実施では、図面で説明した動作は、図で示した順序から外れて生じてもよいし、あるいは、例えば、関連する動作に応じて、実際には実質的に同時に、または逆の順序で実行されてもよいことにも留意されたい。また、当業者であれば、付加的なステップを追加することができることを認識するであろう。
【0032】
本明細書で使用される専門用語は、単に特定の実施形態を説明するためのものに過ぎず、本開示を限定するものではない。本明細書で使用する場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「この(the)」は、特に明示しない限り、複数形も含むことが意図される。「備える(comprise)」および/または「備えている(comprising)」という用語は、本明細書で使用する場合、記載した特徴、整数、ステップ、動作、要素、および/または構成要素が存在することを明示するが、1つまたは複数の他の特徴、整数、ステップ、動作、要素、構成要素、および/またはそれらの組が存在することまたは追加することを除外しないことがさらに理解されよう。「任意の(optional)」または「任意に(optionally)」は、続いて記載された事象または状況が生じてもよいし、また生じなくてもよいことを意味し、かつ、その説明が、事象が起こる場合と、事象が起こらない場合と、を含むことを意味する。
【0033】
本明細書および特許請求の範囲を通してここで使用される、近似を表す文言は、関連する基本的機能に変化をもたらすことなく、差し支えない程度に変動できる任意の量的表現を修飾するために適用することができる。したがって、「およそ」、「約」および「実質的に」などの用語で修飾された値は、明記された厳密な値に限定されるものではない。少なくともいくつかの例では、近似を表す文言は、値を測定するための機器の精度に対応することができる。ここで、ならびに本明細書および特許請求の範囲を通して、範囲の限定は組合せおよび/または置き換えが可能であり、文脈および文言が特に指示しない限り、このような範囲は識別され、それに包含されるすべての部分範囲を含む。範囲の特定の値に適用される「約」は、両方の値に適用され、値を測定する機器の精度に特に依存しない限り、記載された値の+/-10%を示すことができる。
【0034】
下記の特許請求の範囲におけるミーンズプラスファンクションまたはステッププラスファンクションの要素すべての、対応する構造、材料、動作および均等物は、具体的に請求された他の請求要素と組み合わせてその機能を遂行するための、一切の構造、材料または動作を包含することが意図されている。本開示の記述は、例示および説明の目的で提示されたもので、網羅的であることも、または本開示を開示した形態に限定することも意図されていない。多くの変更および変形は、本開示の範囲および趣旨から逸脱することなく、当業者には明らかであろう。本開示の原理および実際の応用を最もよく説明し、想定される特定の使用に適するように様々な変更を伴う様々な実施形態の開示を他の当業者が理解できるようにするために、実施形態を選択し説明した。
【符号の説明】
【0035】
100 ターボ機械
102 圧縮機
104 燃焼器
106 燃焼領域
108 燃料ノズルアセンブリ
110 タービンアセンブリ、タービン
111 タービン
112 ロータ、圧縮機/タービンシャフト
120 ノズル、ベーン
122 静止ケーシング
124 回転ブレード
126 ノズル、静止ベーン、ブレード
128 半径方向外側プラットフォーム
130 半径方向内側プラットフォーム
132 回転ブレード、タービンロータブレード
134 半径方向内向きプラットフォーム
136 半径方向外向き先端シュラウド
140 根元
142 ダブテール
144 ロータホイール
146 シャンク
148 プラットフォーム
150 翼形部
152 凹状正圧側(PS)外側壁
154 凸状負圧側(SS)外側壁
156 前縁、側壁
158 後縁、側壁
160 外側先端
162 冷却孔
168 壁
170 構成要素
172 冷却剤
174 外側表面
176 冷却チャンバ
180 ボンドコーティング、古いコーティング、外側コーティング
182 遮熱コーティング(TBC)、古いコーティング、外側コーティング
210 プラグ
212 水不溶性コア
214 水溶性層
216 外側表面
218 細長い本体
219 外側表面
220 端部、一端
222 外側表面
228 端部
230 第1の部分
232 第2の部分
240 ボンドコーティング、新しいコーティング
242 遮熱コーティング(TBC)、新しいコーティング
250 水