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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-14
(45)【発行日】2024-06-24
(54)【発明の名称】車両室内照明装置
(51)【国際特許分類】
   B60Q 3/60 20170101AFI20240617BHJP
   B60Q 3/252 20170101ALI20240617BHJP
   B60Q 3/54 20170101ALI20240617BHJP
   B60Q 3/74 20170101ALI20240617BHJP
   B60Q 3/76 20170101ALI20240617BHJP
   F21S 2/00 20160101ALI20240617BHJP
   F21V 5/00 20180101ALI20240617BHJP
   F21V 5/02 20060101ALI20240617BHJP
   F21V 5/04 20060101ALI20240617BHJP
   F21V 5/08 20060101ALI20240617BHJP
   F21V 23/04 20060101ALI20240617BHJP
   F21W 106/00 20180101ALN20240617BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20240617BHJP
【FI】
B60Q3/60
B60Q3/252
B60Q3/54
B60Q3/74
B60Q3/76
F21S2/00 330
F21V5/00 320
F21V5/00 600
F21V5/02 100
F21V5/04 100
F21V5/04 650
F21V5/08
F21V23/04 100
F21W106:00
F21Y115:10
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019171747
(22)【出願日】2019-09-20
(65)【公開番号】P2021046173
(43)【公開日】2021-03-25
【審査請求日】2022-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000251060
【氏名又は名称】林テレンプ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100142608
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 由佳
(74)【代理人】
【識別番号】100154771
【弁理士】
【氏名又は名称】中田 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100150566
【弁理士】
【氏名又は名称】谷口 洋樹
(74)【代理人】
【識別番号】100213470
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 真二
(72)【発明者】
【氏名】小島 鉄温
(72)【発明者】
【氏名】川嶋 英治
【審査官】東 勝之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0241121(US,A1)
【文献】実開昭63-004009(JP,U)
【文献】特開2010-067948(JP,A)
【文献】特開2012-243493(JP,A)
【文献】特許第4916410(JP,B2)
【文献】実開平01-097492(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 3/60
F21S 2/00
F21V 5/04
F21V 5/02
F21V 5/08
F21V 23/04
F21V 5/00
B60Q 3/252
B60Q 3/76
B60Q 3/54
B60Q 3/74
F21W 106/00
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一の光源と、
前記光源から出光した光を集光して出光する、集光レンズと、
前記集光レンズから出光した光を車室内に投射する投射レンズとを備え、
前記投射レンズの裏面は、平坦面からなる平面部と、所定間隔で設けられた切り込み状のプリズム部とからなり、
車両のルーフに設置されて、前記投射レンズが、前記平面部に入光した光と、前記プリズム部に入光した光を別の方向に出光させることにより、前記光源から出光した光を車室内の複数のエリアに照射する、
車両室内照明装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両室内照明装置において、
前記投射レンズは透光性の母材と、該母材中に分散された光拡散材料とを含む、
車両室内照明装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の車両室内照明装置において、バニティランプ、マップランプおよびドームランプを兼ね備える、車両室内照明装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の車両室内照明装置において、光源の点灯及び消灯を制御するスイッチ構造を備える、車両室内照明装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両の室内を照明する照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両の室内には、各種の照明装置が設置されている。そのうち、ルーフに設置される照明には、車室内を全体的に照明するドームランプ、運転者の手元を照らすマップランプ、サンバイザ使用時に点灯するバニティランプなどがある。これらは、従来個々別々の光源を用いて点灯されてきたが、省エネルギー、省スペース、意匠性の向上などを目的として、複数の照明機能を有する照明装置の設置が検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1は、第1光源部と導光板を備えたルームランプ部と、第2光源部とレンズを備えたマップランプ部とを有し、ミラーによりバニティランプとしての機能も発揮し得る車両室内照明装置を開示しており、二つの光源部を単一の放熱部材に搭載することにより、照明装置の小型軽量化、および部品数の低減が達成されることを記載している。
【0004】
特許文献2は、光源を具備する照射部と、前記照射部を支持するレンズホルダと、回動操作により光源の点灯制御を選択するスイッチと、前記レンズホルダ及びスイッチを支持するハウジングとを備え、レンズホルダがハウジングに対し、2つの回転軸で支持されている室内照明灯を記載しており、1個の照明灯を用いて前部座席の搭乗者の手元から後部座席後ろの荷物室まで、広い範囲を照明し得ることを記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第4831109号
【文献】特許第4916410号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
現在省エネルギー、省スペース化の観点、ならびに車室内の美観向上と、操作の簡便化等の観点から、少ない光源で、各種の機能を発揮し得る照明装置が求められている。特許文献1は、照明装置がルームランプ、マップランプ、バニティランプの三種の機能を備えることを記載しているが、二つの光源を必要とし、ランプごとに点灯制御やミラー制御操作を必要とする。特許文献2に記載の照明灯は、単一の車室内の広範囲の部位を照明可能なものであるが、照明はレンズホルダの向きを調整することによって行うので、各種のランプの機能を同時に発揮することはできない。
【0007】
本発明は、単一の光源で、車室内の複数のエリアを照明でき、エリアごとに照度を調整可能な車両室内照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の車両室内照明装置は、
光源と、
前記光源から出光した光を集光して出光する、集光レンズと、
前記集光レンズから出光した光を車室内に投射する投射レンズとを備え、
前記投射レンズの裏面は、平坦面からなる平面部と、所定間隔で設けられた切り込み状のプリズム部とからなり、
前記投射レンズが、前記平面部および前記プリズム部に入光した光を、車室内の複数のエリアに照射する、
車両室内用照明装置である。
【0009】
上記車両室内照明装置によれば、平面部に入光した光と、プリズム部に入光した光を別の方向に出光させることにより、単一の光源と、単一の投射レンズを用いて、車室内の複数のエリアを照明することができる。その際、平面部と、プリズム部の面積比を調整することにより、異なる照明エリアの照度比を調整できる。
【0010】
上記車両室内照明装置において、前記投射レンズは、透光性の母材と、該母材中に分散された光拡散材料とを含むものであってもよい。この場合、母材中の拡散材料の濃度を調整することにより、異なる照明エリアにおける照度比を調整できる。
【0011】
上記車両室内照明装置は、バニティランプ、マップランプおよびドームランプを兼ね備える照明装置であってもよい。本発明の照明装置によれば、機械的な切り替えや、光源の変更を行うことなく、三種類のルームランプの照明エリアを単一の光源で照明できる。また、投射レンズ裏面の平面部とプリズム部の面積比や、拡散材の濃度を調整することにより、三つのエリアの照度比を調整できる。
【0012】
上記車両室内照明装置は、光源の点灯および消灯を制御する、静電タッチ式スイッチなどのスイッチ構造をそなえた照明装置であってもよい。スイッチ構造を用い、照明装置を簡便に操作することができる。
【0013】
上記車両室内照明装置は、前記投射レンズを車両の内装部材に対して保持するベゼルを有するものであってもよい。これにより、車室内における照明装置の意匠性を向上することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、単一の光源を用いて車室内の複数のエリアを照明でき、照明の用途に応じて、照度比を調整できるので、複数の照明ランプの機能を単一の照明装置で実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る照明装置をルーフに設置した、自動車の運転席近傍を示す概略側面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る照明装置を設置したルーフを後方下方から見た図である。
図3】本発明の一実施形態に係る照明装置を示す概略縦断面図である。
図4図3に枠IVで示す部分の拡大図である。
図5】本発明の一実施形態に係る照明装置が、マップランプ、バニティランプおよび、ドームランプの三つを兼ねる作用を説明するための概念図である。
図6】本発明の一実施形態に係る照明装置により照明された、車室内の照度分布を示す図である。
図7】本発明の一実施形態に係る照明装置の投射レンズの部分拡大断面図である。
図8】実施例に基づき、照明装置の投射レンズ内の拡散材濃度と、車室内の照射状態の関係を説明するための図である。
図9図8にZ2で示す領域における照度と、照明装置の投射レンズ内の拡散材濃度との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の車両室内照明装置について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る照明装置10を設置した自動車100の運転席20近傍を示す概略図である。照明装置10は、運転席20の直上でルーフ30に設置されており、従来ではマップランプが照射ターゲットとするハンドル40近傍の領域(以下、マップランプ照射領域とする)A1、従来ではバニティランプが照射ターゲットとする運転者側の領域(以下、バニティランプ照射領域とする)A2において、異なる照度の光を照射するよう構成されている。また矢印で示すように、照明装置10は、より広範囲を照射するドームランプとしての機能も有する。
【0017】
図2は、照明装置10を設置したルーフ30を後方下方から見た概略図である。車室内には、照明装置10の投射レンズ1と、投射レンズ1を保持するベゼル2が露出している。
【0018】
図3は、照明装置10を前後方向に沿って断面した概略縦断面図である。照明装置は、光源4と、集光レンズ5と、投射レンズ1とを備える。光源4は、本実施形態では、基板4aと、これに設置された発光ダイオード(LED)4bとを有し、集光レンズ5を保持するハウジング3上に設置されている。投射レンズ1はベゼル2によって保持され、ベゼル2はハウジング3に装着されるとともに、ルーフライニング30aおよび、ブラケット6に挿入固定されている。照明装置10は、ブラケット6を介してルーフパネル(図示せず)に固定される。光源4から照射された光は、集光レンズ5によって投射レンズ1に集光され、投射レンズ1を透過して車室内に照射される。
【0019】
照明装置10は、点灯・消灯の制御のために、回転スイッチ、プッシュスイッチや静電タッチ式スイッチなどのスイッチ機構を用いて行ってもよい。図3の照明装置10は、静電タッチ式スイッチ用の金属端子7を備えている。静電タッチ式スイッチを用いれば、製品をコンパクトに設計することができ、照明装置の操作も簡便化し得るため好ましい。
【0020】
図4は、図3に枠IVで示した部分の拡大図である。投射レンズ1は、入光面側に平坦面からなる平面部1aと、平坦面に所定間隔で三角溝状の切り込みを設けることにより形成されたプリズム部1bとを備えており、平面部1aに対向する出射面1cは、曲面状に形成されている。図4と次の図5に基づいて、照明装置10の機能を説明する。
【0021】
投射レンズ1の平面部1aに入射した光Laは、下方に進行し、透過光(下方向透過光)Lcとなって出射され、マップランプ照射領域A1を照射する。他方、プリズム部1bに入光した光Lbは、斜め下方(斜め後方)に進行し、透過光(斜め方向透過光)Ldとなって、バニティランプ照射領域A2を照射する。また、投射レンズ1内で拡散(散乱)し、出射面1c全面から出光した拡散光Leは、シート上面S1、ダッシュボードの上面S2、コンソール上面S3、ドアアッパー上面S4を含めた車室内全体を照射するので、照明装置10は、ドームランプとしても機能する。その際、投射レンズ1の透明基材中に拡散材を分散させることにより、散乱光Leの強度を高めることができる。
【0022】
図6は、後述の実施例において、ルーフ30に設置した照明装置10から照射される光をシート上面S1、ダッシュボードの上面S2、コンソールS3、ドアアッパーの上面S4、およびマップランプ照射領域1、バニティランプ照射領域A2における照度分布を光学解析シミュレーションによって求めた結果を示す図である。解析用ソフトウェアとしてはLightToolsを使用した。なお、RGB図を白黒化して表示したため、赤色部が黒く表示されているが、光量は周縁部に向けて低下する。図6より、本発明の照明装置10で、マップランプ照射領域A1とバニティランプ照射領域A2に光が照射されるとともに、ドームランプとしてシート上面S1、ダッシュボードの上面S2、コンソール上面S3、ドアアッパー上面S4にも拡散光が照射されていることが示されている。
【0023】
上記本発明の照明装置10において、光源4としては、例えばLED(例えば白色LEDまたは電球色LED)などを用いることができる。集光レンズおよび投射レンズは、透明樹脂で形成することができ、例えば、アクリル、ポリカーボネート等で形成することができ、例えば、射出成型により形成することができる。投射レンズ1の母材中に拡散させる光拡散材としては、例えばシリコーン粒子などを用いることができる。図3のハウジング3、ベゼル2、およびブラケット6は、ポリプロピレンまたはABS樹脂などを用いて形成でき、例えば、射出成型により形成できる。金属端子7は、例えばプレス成型されたリン青銅から形成してもよい。なお、図3には図示されていないが、意匠性向上のため、ポリカーボネートまたはABS樹脂等に金属メッキを施したリング状部材を、ベゼルの周囲に設置してもよい。
【0024】
図4の投射レンズ1のプリズム部1bの形状、間隔、および拡散材の濃度は、照明装置10の使用される車種や設置位置等に応じて適宜選択することができる。一般的な乗用車においては、例えば、図7に示すプリズム部1bに垂直な断面において、プリズム部1bの頂角θは、20°~45°程度とすればよい。平坦部1aの幅W1と、プリズム部1bの幅W2は、それぞれ0.05~0.5mm、0.03~0.5mm程度とすればよい。拡散部材の濃度は、例えば0.1~0.5wt%程度とすればよい。
【実施例1】
【0025】
図3に示す構成の照明装置10において、光源4のLED4bとしては日亜化学製の白色LEDを、投射レンズ1としては直径16mm、最大厚み5.0mmのアクリルレンズを使用し、図4の平面部1aとプリズム部1b(頂角30°)の幅W1、W2、およびシリコーン粒子製の拡散材の濃度を表1に示すように変化させて、自動車のルーフに設置し、図6に示す各部分について、光学解析により照射光の照度を確認した。その結果を表2に示す。
【0026】
【表1】
【0027】
【表2】
【0028】
上記の結果より、マップランプ照射領域(A1)、バニティランプ照射領域(A2)、およびシート上面(S1)、ダッシュボード上面(S2)、コンソール上面(S3)、ドアアッパー上面(S4)を含むドームランプ照射領域における照度、ならびに異なる領域間の照度比が投射レンズ裏面の平面部とプリズム部の面積比、および拡散材の濃度によって変化していることがわかる。
【0029】
拡散材濃度以外の条件が同じ実施例1、4、5、6の結果を用い、ドームランプ照射領域を図8に示すように、三つのゾーンに区分して評価する。マップランプ照射領域の中心に向けた光軸AXからの開き角φ1が0~15°となる第1ゾーンZ1(シート上面S1)では、拡散材の濃度と照度が反比例している。これは、光軸方向の光が強くなり、光軸AXをそれた部位を含むゾーン全体で平均照度は小さくなるためであると考えられる。光軸AXからの開き角φ2が15~30°となる第2ゾーンZ2(コンソール上面S3)では、図9に示すように、拡散材の濃度に対し、照度が二次曲線を描いている。他方、光軸AXからの開き角φ3が30°以上となる第3ゾーンZ3(ダッシュボード上面S2、ドアアッパー上面S4)では、拡散材の濃度と照度が比例している。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の車両室内照明装置は、自動車等の車両における、マップランプ、バニティランプ、ドームランプ等の従来の照明装置を置換し、光源数の低減による省エネルギー、省スペース化、操作の簡便化に寄与することができる。
【符号の説明】
【0031】
1 投射レンズ
1a 平坦部
1b プリズム部
1c 出光部
2 ベゼル
3 ハウジング
4 光源
5 集光レンズ
10 照明装置
20 運転席
30 ルーフ
30a ルーフライニング
40 ハンドル
100 自動車
A1 マップランプ照射領域
A2 バニティランプ照射領域
D 運転者
S1 シート上面
S2 ダッシュボード上面
S3 コンソール上面
S4 ドアアッパー上面

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9