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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-14
(45)【発行日】2024-06-24
(54)【発明の名称】透明な可溶化組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/64 20060101AFI20240617BHJP
   A61K 8/60 20060101ALI20240617BHJP
   A61K 8/92 20060101ALI20240617BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20240617BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20240617BHJP
【FI】
A61K8/64
A61K8/60
A61K8/92
A61K8/02
A61Q19/00
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019237982
(22)【出願日】2019-12-27
(65)【公開番号】P2021104985
(43)【公開日】2021-07-26
【審査請求日】2022-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000113470
【氏名又は名称】ポーラ化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】畑野 利江
【審査官】駒木 亮一
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-098199(JP,A)
【文献】特開2015-028028(JP,A)
【文献】特開2019-206561(JP,A)
【文献】特開平10-067647(JP,A)
【文献】特開2000-017297(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Japio-GPG/FX
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーファクチンおよび/またはその塩、
アルキルグリコシド、並びに、
精油および/または油性香料、
とを含有する、透明な可溶化組成物であって、
サーファクチンおよび/またはその塩の含有量が、組成物全体に対して0.3~2質量%であり、
アルキルグリコシドの含有量が、組成物全体に対して0.5~5質量%であり、
精油および/または油性香料の含有量が、組成物全体に対して0.001~5質量%であり、
前記可溶化組成物のpHが6.5~7.5である、可溶化組成物。
【請求項2】
サーファクチンおよび/またはその塩、並びにアルキルグリコシドの組み合わせのHLB
が13~18である、請求項1に記載の可溶化組成物。
【請求項3】
サーファクチンおよび/またはその塩、並びにアルキルグリコシドの組み合わせの含有量が、精油および/または油性香料に対して4倍以上である、請求項1または2に記載の
可溶化組成物。
【請求項4】
サーファクチンおよび/またはその塩と、アルキルグリコシドの含有量比(質量比)が、6:4~3:7である、請求項1~のいずれか一項に記載の可溶化組成物。
【請求項5】
アルキルグリコシドが、炭素数8~35の炭化水素鎖を有する、請求項1~のいずれか
一項に記載の可溶化組成物。
【請求項6】
アルキルグリコシドが、下記一般式(1)で表されるアルキルグリコシドである、請求項1~のいずれか一項に記載の可溶化組成物。
【化1】


(式中、Gは糖残基を表し、Rは独立して水素原子または炭素数1~3のアルキル基を表し、nは1~4の整数を表す。)
【請求項7】
可溶化組成物が皮膚外用剤である、請求項1~のいずれか一項に記載の可溶化組成物。
【請求項8】
皮膚外用剤が化粧料である、請求項に記載の可溶化組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧料等に好適な、透明な可溶化組成物等に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧料等の皮膚外用剤において、親油性の成分と、親水性の成分とを同時に皮膚に投与できる利点から、可溶化剤形は広く用いられている(特許文献1)。また、可溶化剤形は、透明であることから、美観に優れ、透明感のある仕上りを供する等の利点を有する。
一般的に、精油や油性香料は、多くの鉱物油やエステル油等に比べ、可溶化しづらいことが知られている。また、天然由来の界面活性剤は、合成系と比較して可溶化能力が低いことも一般的に知られている。したがって、天然系オーガニック処方において、様々な精油や油性香料を透明に可溶化する界面活性剤骨格をグリフィン(Griffin)法創出することは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-256476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、天然由来の成分を含む化粧料等への要望は高い。したがって、本発明は、天然由来の界面活性剤を使用し、精油や油性香料を透明に可溶化する技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決すべく検討を行ったところ、特定の天然由来の界面活性剤を配合することで、精油や油性香料を透明に可溶化できることを見出し、本発明を完成した。また、本発明は、経時安定性にも優れる。
すなわち、本発明の要旨は以下に関する。
【0006】
[1] サーファクチンおよび/またはその塩、
アルキルグリコシド、並びに、
精油および/または油性香料、
とを含有する、透明な可溶化組成物。
[2] サーファクチンおよび/またはその塩、並びにアルキルグリコシドの組み合わせのHLBが13~18である、[1]に記載の可溶化組成物。
[3] 可溶化組成物のpHが6.5以上である、[1]または[2]に記載の可溶化組成物。
[4] サーファクチンおよび/またはその塩の含有量が、組成物全体に対して0.1~5質量%である、[1]~[3]のいずれかに記載の可溶化組成物。
[5] アルキルグリコシドの含有量が、組成物全体に対して0.01~20質量%である、[1]~[4]のいずれかに記載の可溶化組成物。
[6] サーファクチンおよび/またはその塩、並びにアルキルグリコシドの組み合わせの含有量が、精油および/または油性香料に対して4倍以上である、[1]~[5]のいずれかに記載の可溶化組成物。
[7] サーファクチンおよび/またはその塩と、アルキルグリコシドの含有量比(質量比)が、6:4~3:7である、[1]~[6]のいずれかに記載の可溶化組成物。
[8] アルキルグリコシドが、炭素数8~35の炭化水素鎖を有する、[1]~[7]の
いずれかに記載の可溶化組成物。
[9] アルキルグリコシドが、下記一般式(1)で表されるアルキルグリコシドである、[1]~[8]のいずれかに記載の可溶化組成物。
【0007】
【化1】
【0008】
(式中、Gは糖残基を表し、Rは独立して水素原子または炭素数1~3のアルキル基を表し、nは1~4の整数を表す。)
【0009】
[10] 可溶化組成物が皮膚外用剤である、[1]~[9]のいずれかに記載の可溶化組成物。
[11] 皮膚外用剤が化粧料である、[10]に記載の可溶化組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、天然由来の界面活性剤を使用し、精油や油性香料を透明に可溶化する技術を提供することができる。
すなわち、本発明により、天然由来の界面活性剤を使用し、精油や油性香料を含有する、化粧料等に適した、透明な可溶化組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について説明する。
<透明な可溶化組成物>
本発明の一態様は、サーファクチンおよび/またはその塩、アルキルグリコシド、並びに、精油および/または油性香料、とを含有する、透明な可溶化組成物(以下、「本発明の水中油型乳化組成物」ということがある)に関する。
【0012】
本発明者らは、天然由来の界面活性剤を使用し、精油や油性香料を透明に可溶化する技術を求めて各種検討を行った。
その中で、本発明者らは、HLB(Hydrophile-Lipophile Balance)の異なる天然由来の界面活性剤を組合せ、様々な精油や油性香料を透明に可溶化し、且つ、安定性に優れる界面活性剤骨格の創出に成功した。このような知見に基づき、本発明を完成した。
また、本骨格における組成物は、界面活性剤総量が少なくても可溶化できるため、他の天然由来組成物と比較して、使用時の泡立ちや白化等が飛躍的に抑えられ、心地よく使用することができる。
【0013】
本発明の可溶化組成物は、透明の外観を呈しており、いわゆるミセル、またはマイクロエマルションであるものを指す。
本明細書において、「透明」とは、均一、且つ濁り、オリ、分離を認めない溶液であることをいう。例えば、実施例で示したように、製造後に、目視で透明またはほぼ透明であり、濁り、オリ、分離等が生じていないことが確認できる場合は、透明な組成物であると
判断できる。また、例えば、目視での濁り、オリ、分離が認められず、且つ濁度計を用いて測定した濁度が100 NTU以下である場合、透明であると判断してもよい。
【0014】
≪第一の界面活性剤≫
本発明の可溶化組成物において、第一の界面活性剤として、サーファクチンおよびその塩を含む。
【0015】
第一の界面活性剤として用い得るサーファクチンは、環状ペプチドを有するバイオサーファクタントである。サーファクチンは、本発明の効果を奏する限り、限定されず、公知のサーファクチンを用いることができる。サーファクチンは、納豆菌の生産する環状ペプチドであってよい。環状ペプチドとしては、例えば、2-Deamino-3-(10-methylundecyl)-cyclo[L-Ser*-L-Glu-L-Leu-D-Leu-L-Val-L-Asp-D-Leu-L-Leu-](*光学活性点を示す)が挙げられる。また、炭化水素鎖がC9-18アルキル基であるもの、上記環状ペプチドの末端のL-Leu-がロイシン、イソロイシン、バリンから選択されるもの等が挙げられる。
【0016】
サーファクチンの塩としては、限定されないが、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等が挙げられ、ナトリウム塩を好ましく本発明に用い得る。第一の界面活性剤として、サーファクチンおよびその塩から選択される1種、または2種以上を本発明に使用し得る。
サーファクチンおよびその塩は、細菌等から抽出・精製した天然物であっても、化学合成したものを用いてもよく、市販品(株式会社カネカ等により製造される)を用いてもよい。
【0017】
≪第二の界面活性剤≫
本発明の可溶化組成物において、第二の界面活性剤として、アルキルグリコシドを含む。第二の界面活性剤として、アルキルグリコシドから選択される1種、または2種以上を本発明に使用し得る。
【0018】
アルキルグリコシドは、脂肪族アルコールが糖とグリコシド結合によって結合したものであり、炭化水素鎖と糖残基を有する化合物である。
アルキルグリコシドを構成する炭化水素鎖は、直鎖状または分岐状のいずれであってもよく、飽和または不飽和のいずれであってもよいが、好ましくは直鎖状または分岐状の飽和炭化水素が挙げられる。また、当該炭化水素鎖の炭素数については、特に制限されないが、例えば8~35、10~22、12~20または12~16が挙げられる。
【0019】
アルキルグリコシドを構成する糖残基は、単糖、オリゴ糖、または多糖のいずれであってもよい。糖の縮合度(すなわち、糖残基を構成する単糖の数)としては、例えば、1~10、1~5、1~3、1または2、または1(すなわち、糖が単糖)であってよい。糖として、具体的には、グルコース、ガラクトース、キシロース、マンノース、リキソース、アラビノース、およびフルクトース等の単糖;マルトース、キシロビオース、イソマルトース、セロビオース、ラクトース、ゲンチオビース、マルトトリオース、イソマルトトリオース、セロトリオース、マルトテトラオース、マルトペンタオース、マルトヘキサオース、マルトヘプタオース、イソマルトテトラオース、イソマルトペンタオース、イソマルトヘキサオース、およびイソマルトヘプタース等のオリゴ糖または多糖等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは単糖、2糖、または3糖である。より好ましくは、グルコース、ガラクトース、マルトース、マルトトリオースが挙げられる
【0020】
本発明に用いられ得るアルキルグリコシドの一態様としては、一般式(1)で表されるアルキルグリコシドが挙げられる。
【0021】
【化2】
【0022】
(式中、Gは糖残基を表し、Rは独立して水素原子または炭素数1~3のアルキル基を表し、nは1~4の整数を表す。)
【0023】
一般式(1)で表されるアルキルグリコシドは、糖残基Gと脂肪族アルコールとが縮合した構造を有する。
糖残基Gは、一般式(1)で表されるアルキルグリコシドにおける親水部であり、単糖類または多糖類の残基である。
好ましい単糖類としては、グルコース、ガラクトース、キシロース、マンノース、リキソース、アラビノース、およびフルクトース等が挙げられる。多糖類は、好ましくは二糖~七糖であり、マルトース、キシロビオース、イソマルトース、セロビオース、ラクトース、ゲンチオビース、マルトトリオース、イソマルトトリオース、セロトリオース、マルトテトラオース、マルトペンタオース、マルトヘキサオース、マルトヘプタオース、イソマルトテトラオース、イソマルトペンタオース、イソマルトヘキサオース、およびイソマルトヘプタース等が挙げられる。これらの糖類のうち、グルコース、ガラクトース、マルトース、およびマルトトリオースがさらに好ましく、マルトースおよびマルトトリオースが特に好ましい。なお、糖残基は、α体とβ体のいずれでもよい。
一般式(1)において、糖残基Gは、好ましくは末端の糖の1位の水酸基で、脂肪族アルコールと結合(縮合)している。
【0024】
一般式(1)において、脂肪鎖は一般式(1)で表されるアルキルグリコシドにおける疎水部である。
脂肪鎖の部分は、分岐鎖があってもなくてもよいが、好ましくは分岐鎖を有する。すなわち、一般式(1)においてRは、独立して水素原子または炭素数1~3のアルキル基を表すが、好ましくは炭素数1~3のアルキル基であり、より好ましくはメチル基である。
【0025】
一般式(1)で表されるアルキルグリコシドとしては、下記一般式(2)で表される化合物がより好ましい。
なお、一般式(2)中、Nは1~7の整数を表す。Rは、独立して水素原子または炭素数1~3のアルキル基を表し、より好ましくはメチル基である。nは、1~4の整数を表し、より好ましくは2または3である。
一般式(2)で表されるアルキルグリコシドの具体例としては、マルトースとヘキサヒドロファルネソールのグリコシド体(Mal2Far)(N=2,n=2,R=メチル)、マルトトリオースとヘキサヒドロファルネソールのグリコシド体(Mal3Far)(N=3,n=2,R=メチル)、マルトトリオースとジヒドロフィトールのグリコシド体(Mal3Phyt)(N=3,n=3,R=メチル)等が挙げられる。
【0026】
【化3】
【0027】
一般式(1)で表されるアルキルグリコシドは、例えば、臭化糖を用いるグリコシル化法、フッ化糖を用いるグリコシル化法、トリクロロアセトイミデートを用いるグリコシル化法、アセチル化糖を用いるグリコシル化法等、種々の周知の方法により取得することができ、より具体的には特許3882067号、特許4817435号、特許5207420号、特開2013-129660号公報、特開2012-17318号公報等に記載の合成工程が挙げられる。
【0028】
本発明に用いられ得るアルキルグリコシドの別の一態様としては、アルキルグルコシドが挙げられる。アルキルグルコシドの炭化水素鎖としては、直鎖状または分岐状のいずれであってもよく、飽和または不飽和のいずれであってもよいが、好ましくは直鎖状または分岐状の飽和炭化水素が挙げられる。また、当該炭化水素鎖の炭素数については、特に制限されないが、例えば8~22、または10~16が挙げられる。
限定されないが、アルキルグルコシドとしては、オクチルグルコシド、ノニルグルコシド、デシルグルコシド、ドデシルグルコシド、ラウリルグルコシド、ミリスチルグルコシド、パルミチルグルコシド、ステアリルグルコシド、オレイルグルコシド等が挙げられる。
【0029】
本態様において第一の界面活性剤の含有量は、組成物全体に対して、好ましくは0.1~5質量%であり、より好ましくは0.1~3質量%、さらに好ましくは0.3~2質量%である。また、本態様において第二の界面活性剤の含有量は、組成物全体に対して、好ましくは0.01~20質量%であり、より好ましくは0.1~10質量%、さらに好ましくは0.5~5質量%である。
【0030】
さらに、第一および第二の界面活性剤の合計含有量は、組成物全体に対して、好ましくは0.2~25質量%であり、より好ましくは0.5~10質量%、さらに好ましくは1.0~5質量%である。可溶化安定性の観点から0.2質量%以上が好ましく、処方の自由度の観点から25質量%以下が好ましい。
【0031】
また、本態様において用いる第一の界面活性剤と第二の界面活性剤との質量比は、好ましくは6:4~3:7であり、より好ましくは5:5~4:6である。本発明における特定の2種の界面活性剤を組み合わせて、好ましくはこのような質量比で用いることにより、油性成分を含有しても安定な可溶化組成物を得ることができる。
【0032】
本発明の可溶化組成物においては、サーファクチンおよび/またはその塩、並びにアルキルグリコシドといった、それぞれ異なるHLBを有する界面活性剤を組み合わせることで、適切なHLB値が得られ、透明な可溶化組成物が得られる。
本発明の可溶化組成物においては、サーファクチンおよび/またはその塩、並びにアルキルグリコシドの組み合わせのHLBは、13以上、13超、14以上、14超、14.5以上、14.5超、15以上または15超であってよく、18以下、18未満、17以下、17未満、16.5以下、16.5未満、16以下、または16未満であってよく、これらの矛盾しない組み合わせであってよい。
HLBが、例えば、13~18、または14.5~16であってよい。HLBは、各界面活性剤のHLB、上記の界面活性剤の含有量等に基づいて、調整し得る。サーファクチンおよび/またはその塩のHLBは、限定されないが、例えば、16~19、17~18、または18付近であってよい。アルキルグリコシドのHLBは、限定されないが、例えば、11~14、12~13、または13付近であってよい。
なお、上記HLB値は、下記グリフィン(Griffin)法により算出したものである。
HLB=20×(親水基の分子量/全体の分子量)
【0033】
本発明の可溶化組成物のpHとしては、例えば、25℃において、pH6.0~10、6.5~8.0、または6.5~7.5の範囲であってよい。より高い透明性、保存安定性を得る観点から、pH6.5以上であることが好ましい。pHは公知のpH調整剤を用いて調節することができる。
【0034】
≪精油および油性香料≫
精油とは、植物に含まれる水に不溶~難溶性の有機化合物の混合物であり、一般に揮発性の有機化合物を含み、原料に応じて芳香性を有する。本発明に用いる精油は、常法により製造したもの、市販のものを使用できる。
なお、本発明における精油の採取部位は特に限定されず、花、枝、葉、根、実、蕾等が挙げられるが、全草を用いることもできる。
また、本発明における精油の抽出方法は特に限定されず、水蒸気蒸留法、溶媒抽出法、圧搾法、吸着・吸収法、浸出法、植物を傷付け滲出する液を回収する方法等が挙げられるが、水蒸気蒸留法が好ましい。
【0035】
油性香料とは、油溶性を示す香料であり、合成、天然を問わず、使用できる。また、常法により製造したもの、市販のものを使用できる。
【0036】
精油および油性香料として、限定されないが、例えば、アセチルセドレン、アミルシンナムアルデヒド、アリルアミルグリコレート、β-イオノン、イソイースーパー、イソブチルキノリン、イリス油、イロン、インドール、イランイラン油、ウンデカナール、ウンデセナール、γ-ウンデカラクトン、エストラゴール、オイゲノール、オークモス、オポポナックスレジノイド、オレンジ油、オイゲノール、オーランチオール、ガラクソリッド、カルバクロール、L-カルボン、カンファー、キャノン、キャロットシード油、クローブ油、ケイヒ酸メチル、ゲラニオール、ゲラニルニトリル、酢酸イソボルニル、酢酸ゲラニル、酢酸ジメチルベンジルカルビニル、酢酸スチラリル、酢酸セドリル、酢酸テレピネル、酢酸p-t-ブチルシクロヘキシル、酢酸ベチベリル、酢酸ベンジル、酢酸リナリル、サリチル酸イソペンチル、サリチル酸ベンジル、サンダルウッド油、サンタロール、シクラメンアルデヒド、シクロペンタデカノリド、ジヒドロジャスモン酸メチル、ジヒドロミルセノール、ジャスミンアブソリュート、ジャスミンラクトン、cis-ジャスモン、シトラール、シトロネノール、シトロネラール、シナモンバーク油、1,8-シネオール、シンナムアルデヒド、スチラックスレジノイド、セダーウッド油、セドレン、セドロール、セロリシード油、タイム油、ダマスコン、ダマセノン、チモール、チュベローズアブソリュート、デカナール、デカラクトン、テルピネオール、γ-テルピネン、トリプラール、ネロール、ノナナール、2,6-ノナジエノール、ノナラクトン、パチョリアルコール、バニラアブソリュート、バニリン、バジル油、パチョリ油、ヒドロキシシトロネラール、α-ピネン、ピペリトン、フェネチルアルコール、フェニルアセトアルデヒド、プチグレン油、ヘキシルシンナムアルデヒド、cis-3-ヘキセノール、ペルーバルサム、ベチバー油、ベチベロール、ペパーミント油、ペパー油、ヘリオトロピン、ベルガモット油、ベンジルベンゾエート、ボルネオール、ミルレジノイド、ムスクケトン、メチルノニルアセトアルデヒド、γ-メチルヨノン、メントール、L-メントール、L-メントン、ユーカリ油、β-ヨノン、ライム油、ラベンダー油、D-リモネン、リナロール、リラール、リリアール、レモン油、ローズアブソリュート、ローズオキシド、ローズ油、ローズマリー油等が例示できる。
精油および油性香料は、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0037】
精油および油性香料の含有量は、単独または組み合わせた合計量として、組成物全体に対して、好ましくは0.001~5質量%であり、より好ましくは0.01~1質量%、さらに好ましくは0.1~0.5質量%である。可溶化安定性の観点から5質量%以下が好ましく、組成物における効果の観点から0.001質量%以上が好ましい。
【0038】
≪その他の成分≫
また、本発明の可溶化組成物は、その効果を損なわない限りにおいて、その他の任意成分を含有することができる。
任意成分としては、通常皮膚外用剤に配合し得る成分であれば特に限定されず、油剤、溶媒、多価アルコール、必須成分以外の界面活性剤(カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、シリコーン系界面活性剤等)、各種有効成分、保湿剤、pH調整剤、増粘剤、防腐剤、粉体類、有機変性粘土鉱物、抗菌剤、紫外線散乱・吸収剤等が挙げられる。抗菌剤としては、カプリリルグリコール、カプリル酸グリセリル、エチルヘキシルグリセリン、カプリルヒドロキサム酸等の天然抗菌物質が好ましく挙げられる。任意成分としては、1種、または2種以上を組み合わせて、本発明に使用し得る。
有効成分としては、保湿成分、美白成分、シワ改善成分、抗炎症成分、動植物由来の抽出物等が挙げられ、1種のみを含有させてもよく、2種以上含有されていてもよい。
【0039】
任意成分として、限定されないが、例えば、マカデミアナッツ油、アボガド油、トウモロコシ油、オリーブ油、ナタネ油、ゴマ油、ヒマシ油、サフラワー油、綿実油、ホホバ油、ヤシ油、パーム油、液状ラノリン、硬化ヤシ油、硬化油、モクロウ、硬化ヒマシ油、ミツロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、イボタロウ、ラノリン、還元ラノリン、硬質ラノリン、ホホバロウ等のオイル、ワックス類;流動パラフィン、スクワラン、プリスタン、オゾケライト、パラフィン、セレシン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等の炭化水素類;オレイン酸、イソステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、イソパルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ウンデシレン酸等の高級脂肪酸類;セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、オクチルドデカノール、ミリスチルアルコール、セトステアリルアルコール等の高級アルコール等;イソオクタン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、イソステアリン酸ヘキシルデシル、アジピン酸ジイソプロピル、セバチン酸ジ-2-エチルヘキシル、乳酸セチル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ-2-エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ-2-エチルヘキサン酸グリセリン、トリ-2-エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ-2-エチルヘキサン酸ペンタンエリトリット等の合成エステル油類;ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等の鎖状ポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサンシロキサン等の環状ポリシロキサン、アミノ変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等の変性ポリシロキサン等のシリコーン油等の油剤類;ポリエチレングリコール、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジグリセリン、イソプレングリコール、1,2-ペンタンジオール等の多価アルコール類;ピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム等の保湿成分類;表面を処理されていてもよい、マイカ、タルク、カオリン、合成雲母、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、無水ケイ酸(シリカ)、酸化アルミニウム、硫酸バリウム等の粉体類;表面を処理されていてもよい、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化コバルト、群青、紺青、酸化チタン、酸化亜鉛の無機顔料類;表面を処理されていてもよい、雲母チタン、魚燐箔、オキシ塩化ビスマス等のパール剤類;レーキ化され
ていてもよい赤色202号、赤色228号、赤色226号、黄色4号、青色404号、黄色5号、赤色505号、赤色230号、赤色223号、橙色201号、赤色213号、黄色204号、黄色203号、青色1号、緑色201号、紫色201号、赤色204号等の有機色素類;ポリエチレン末、ポリメタクリル酸メチル、ナイロン粉末、オルガノポリシロキサンエラストマー等の有機粉体類;パラアミノ安息香酸系紫外線吸収剤、アントラニル酸系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、桂皮酸系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、糖系紫外線吸収剤、2-(2’-ヒドロキシ-5’-t-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、4-メトキシ-4’-t-ブチルジベンゾイルメタン等の紫外線吸収剤類;水等の水性媒体;エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール類等が好ましく例示できる。
【0040】
なお、これらの任意成分は、本発明における任意の工程またはその前後で添加することができる。
本発明の可溶化組成物の製造方法は、上記必須の構成成分を有する以外は、常法の可溶化法に基づき、製造可能である。
【0041】
≪皮膚外用剤および化粧料≫
本発明の皮膚外用剤は、本発明の可溶化組成物を含み、例えば、医薬、医薬部外品を含む化粧料等とするのに好適である。特に好ましいのは化粧料である。剤形は、可溶化剤形であれば特段の限定はなく、例えば、ローション、エッセンス等とすることが好ましく例示される。
本発明の可溶化組成物を用いる以外、皮膚外用剤、医薬、医薬部外品を含む化粧料の製造は、従来公知の製造方法を用いて行うことができる。
【実施例
【0042】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の例示であり、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
【0043】
表1に示す処方で、実施例および比較例の可溶化組成物をそれぞれ調製した。具体的には、精油以外の成分を80℃に加熱して均一化し、精油を加えた後、30℃まで撹拌しながら冷却した。
【0044】
実施例および比較例の可溶化組成物について、目視による溶解状態の確認試験を行った。判定基準は以下のとおりである。
(透明性)
◎:透明状態である、〇:ほぼ透明状態である、△:わずかな濁りまたは分離を認める、×:濁りまたは分離を認める。
(オリ)
〇:製造後0℃24時間経過後にオリを認めない、×:オリを認める。
また、pHメーターでpHを測定した。
【0045】
【表1】
【0046】
天然由来の界面活性剤として、サーファクチン、およびアルキルグリコシドであるMal2Farを含む実施例1の可溶化組成物は、透明性に優れた可溶化組成物であった。また、製造後24時間後にオリを認めず、経時安定性にも優れていた。
また、サーファクチン、およびアルキルグリコシドであるデシルグルコシドを含む実施例2の可溶化組成物も、透明性に優れた可溶化組成物であった。また、製造後24時間後にオリを認めず、経時安定性にも優れていた。
一方、天然由来の界面活性剤であるが、Mal2Farおよびデシルグルコシドを含む比較例1の組成物は、HLBは適当な範囲であるにも関わらず、透明性および経時安定性が不十分であった。
天然由来の界面活性剤としてサーファクチン、および合成界面活性剤であるモノラウリン酸ポリグリセリルを含む比較例2の組成物は、透明性および経時安定性が不十分であった。
天然由来の界面活性剤としてMal2Far、および合成界面活性剤であるショ糖脂肪酸エステルを含む比較例3の組成物は、透明性および経時安定性が不十分であった。
したがって、本発明の可溶化組成物は、精油や油性香料、天然由来の界面活性剤を使用した組成物であり、且つ、透明性、経時安定性に優れた可溶化組成物であることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、化粧料、医薬部外品、医薬品等に応用できる。