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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-14
(45)【発行日】2024-06-24
(54)【発明の名称】解析装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/46 20240101AFI20240617BHJP
   A61B 5/055 20060101ALI20240617BHJP
   G16H 30/40 20180101ALI20240617BHJP
   G16H 50/00 20180101ALI20240617BHJP
   A61B 6/50 20240101ALI20240617BHJP
【FI】
A61B6/46 506Z
A61B5/055 380
G16H30/40
G16H50/00
A61B6/46 536Z
A61B6/50 500A
A61B6/50 500B
A61B6/50 500C
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020011162
(22)【出願日】2020-01-27
(65)【公開番号】P2021115278
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2022-12-09
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100202429
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 信人
(72)【発明者】
【氏名】柴田 真理子
(72)【発明者】
【氏名】堀江 康徳
(72)【発明者】
【氏名】束村 智浩
(72)【発明者】
【氏名】藤本 克彦
【審査官】遠藤 直恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-090923(JP,A)
【文献】特開2015-136431(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0070998(US,A1)
【文献】特開2004-113644(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/58
A61B 5/055
G16H 10/00-80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の情報に基づいて、死因に関する複数の第1の解析結果を求める、種類の異なる複数の解析処理部と、
前記複数の解析処理部が求めた前記複数の第1の解析結果の矛盾点の有無を用いて、前記被検体の死因を特定するのを支援する情報である第2の解析結果を求める統合処理部と、
を備える解析装置。
【請求項2】
被検体の情報に基づいて、死因に関する複数の第1の解析結果を求める、種類の異なる複数の解析処理部と、
前記複数の第1の解析結果に基づいて、前記被検体の死因を特定するのを支援する情報である第2の解析結果を求める統合処理部と、
を備える解析装置であって、
前記統合処理部は、前記第2の解析結果の妥当性の強度を表す値も算出する、解析装置
【請求項3】
前記統合処理部は、前記複数の解析処理部が求めた前記第1の解析結果の信頼度に基づいて、第2の解析結果を求める、請求項1又は請求項2に記載の解析装置。
【請求項4】
前記第2の解析結果を出力する第1の出力部を、さらに備える請求項1乃至請求項のいずれかに記載の解析装置。
【請求項5】
前記統合処理部が、前記複数の第1の解析結果に基づいて、死因を特定できない場合には、前記統合処理部は決定不可情報を生成する、請求項1乃至請求項のいずれかに記載の解析装置。
【請求項6】
前記決定不可情報を出力する、第2の出力部を、さらに備える請求項に記載の解析装置。
【請求項7】
被検体の画像が部位別に記憶されている部位別画像記憶部をさらに備えており、
前記種類の異なる複数の解析処理部のそれぞれが、対応する部位の画像を前記部位別画像記憶部から取得して、この取得した前記対応する部位の画像に基づいて、前記第1の解析結果を求める、請求項1乃至請求項のいずれかに記載の解析装置。
【請求項8】
前記複数の解析処理部は、それぞれ、前記対応する部位の画像に加えて、心肺蘇生術実施の有無、死後経過時間、天候情報、及び、生前に訴えた症状のうちの少なくとも1つ含む外部情報に基づいて、前記第1の解析結果を求める、請求項に記載の解析装置。
【請求項9】
被検体の画像を撮像する画像撮像装置に被検体がある状態で、前記複数の解析処理部が前記第1の解析結果を求めるために必要な画像を前記画像撮像装置により撮像したか否かを判定し、画像が不足していると判定した場合には、画像追加の指示を出力する、画像追加判定部を、さらに備える請求項又は請求項に記載の解析装置。
【請求項10】
前記第1の解析結果及び前記第2の解析結果を記憶する解析結果記憶部と、
死後経過時間と天候条件のうちの少なくとも1つを含む被検体分類条件に基づいて、被検体を分類し、それぞれの前記被検体分類条件における標準遺体を構築する、標準遺体構築部と、
をさらに備える請求項1乃至請求項のいずれかに記載の解析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、解析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
死亡した人間の死因を究明する手法として、近年Ai(Autopsy Imaging:死亡時画像診断)が取り入れられている。Aiとは、X線CT(Computed Tomography:コンピュータ断層撮影)装置やMRI(Magnetic Resonance Imaging:磁気共鳴イメージング)等によって撮影された死後画像を用いて、生前生じた病変や創傷等の異常を診断し、死因を究明することである。
【0003】
近年のX線CT装置やMRIは高速撮影が可能であるので、Aiではより正確な死因を究明するために、X線CT装置やMRI等で全身を撮像することが推奨されている。この場合の撮像に要する時間は、通常数分から十数分程度である。しかし、撮像した全身の画像スライス枚数は何千枚と膨大な数になるため、読影医がこれらの画像から死因を判定することは相当困難である。また、これらの膨大な数の画像をモニタ等で表示するのにも時間がかかる。
【0004】
ところで、X線CT装置やMRIの画像から異常陰影を検出し、医師の診断の支援をするCAD(Computer-aided Detection/Diagnosis:コンピュータ支援診断装置)が近年実用化されている。CADは、通常は生きている人間に対して用いられ、頭部・胸部・腹部等の、特定の部位における疾患を診断するために、撮像した画像から当該部位に応じたアルゴリズムを用いて異常陰影を検出する。
【0005】
前述したAiにおいては、死因を究明するために遺体全身の撮像が推奨されており、そのスライス画像枚数は膨大となるため、読影医がこれら全てのスライス画像を見て死因の判定を行うことは困難である。また、遺体には生体と異なる特徴があるため、遺体の読影に慣れていない読影医の場合、誤った死因判定を行う恐れがある。
【0006】
このため、読影による死因特定の困難な画像は、Ai情報センター等の死後画像読影専門の機関に依頼することになるが、今後訪れる多死社会においては、人手が足りずに専門機関が機能不全になる恐れがある。また、死後画像の読影に必要な条件でそもそも撮像がなされていない場合は、専門機関でも画像から死因を判定することは困難なことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2014/188937号
【文献】特開2015-136431号
【文献】特許第5725797号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本実施形態の目的は、被検体の死因の判定を容易化する解析装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本実施形態に係る解析装置は、被検体の情報に基づいて、死因に関する第1の解析結果を求める、種類の異なる複数の解析処理部と、前記複数の第1の解析結果に基づいて、死因に関する第2の解析結果を求める統合処理部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態に係る解析システムの全体構成を示すブロック図。
図2図1に示す解析システムにおける解析装置で実行される解析処理を説明するフローチャートを示す図。
図3】統合処理機能で実行される統合処理の具体例を説明するための部位別テーブルの一例を示す図。
図4】統合処理機能が第1の解析結果に基づいてさらなる解析を行い、死因となる候補を決定して第2の解析結果を生成するために用いられる死因決定テーブルの一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本実施形態に係る解析装置及びその解析装置を備える解析システムを説明する。なお、以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行うこととする。
【0012】
本実施形態に係る解析装置は、複数の種類の異なる解析処理部が被検体の情報に基づいて死因に関する第1の解析結果を導出し、その後、統合処理部が、この第1の解析結果の信頼度や矛盾点の有無を用いて、死因の候補となる第2の解析結果を導出するようにしたものである。以下にその詳細を説明する。
【0013】
図1は、本実施形態に係る解析システム1の全体的な構成を説明するブロック図である。この図1に示す解析システム1は、例えば、病院に設置されるシステムである。この図1に示すように、本実施形態に係る解析システム1は、解析装置2と、画像撮像装置10と、外部情報記憶装置12と、これらを通信可能に接続するネットワークNTとを備えて構成されている。
【0014】
画像撮像装置10は、被検体の画像を撮像するための装置であり、例えば、X線CT装置、MRI等により構成されている。本実施形態においては、特に、画像撮像装置10は、遺体である被検体の部位別にX線画像の撮像を行う。例えば、画像撮像装置10は、被検体の頭部、頚部、胸部、腹部、四肢部の部位の撮像を行い、それぞれの部位のX線画像を生成する。
【0015】
外部情報記憶装置12は、遺体である被検体の外部情報を記憶している。例えば、本実施形態においては、心肺蘇生術実施の有無、死後経過時間、天候情報、及び、生前に訴えた症状のうちの少なくとも1つ含む外部情報が、被検体に対応付けて記憶されている。
【0016】
また、本実施形態においては、解析装置2は、制御回路20と、プログラム記憶回路22と、表示部24と、入力部26と、通信部28と、情報記憶回路30とを備えて構成されている。そして、これらの各構成要素は、内部バス等により相互に協働可能に接続されている。
【0017】
制御回路20は、解析装置2の全体的な制御を行うとともに、その他の様々な演算処理や制御処理などを行う演算装置である。制御回路20は、例えば、プロセッサにより構成される。ここで、プロセッサという文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及び、フィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。
【0018】
プロセッサは、プログラム記憶回路22に保存されたプログラムを読み出して実行することにより各種の機能を実現する。なお、プログラム記憶回路22にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成して構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、プロセッサは、プロセッサ単一の回路として構成されている場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて、1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。さらに、図1における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合して、その機能を実現するようにしてもよい。
【0019】
詳しくは後述するが、本実施形態に係る制御回路20は、プログラム記憶回路22からプログラムを読み込んで実行することにより、画像取得機能20aと、画像追加判定機能20bと、解析処理機能20cと、統合処理機能20dと、第1の出力機能20eと、第2の出力機能20fと、標準遺体構築機能20gとを実現する。
【0020】
プログラム記憶回路22は、制御回路20等で実行される各種のプログラムを記憶して保持する回路である。このプログラム記憶回路22は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等により実現される。
【0021】
表示部24は、各種の情報を表示する。例えば、表示部24は、画像撮像装置10により撮像された被検体の画像や、制御回路20の出力結果等を表示して出力する。また、操作者からの各種操作を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)等を構成することもできる。例えば、表示部24は、液晶ディスプレイやCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ等によって構成される。
【0022】
入力部26は、操作者からの各種の入力操作を受け付け、受け付けた入力操作を電気信号に変換して制御回路20に出力する。例えば、入力部26は、画像撮像装置10を用いた遺体である被検体の撮像の開始や終了、画像撮像装置10を用いて部位別に被検体を撮像する際の条件などを、操作者から受け付ける。例えば、入力部26は、マウスやキーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック等により実現される。
【0023】
通信部28は、病院内のネットワークNTに接続されて、解析装置2と画像撮像装置10と外部情報記憶装置12との間の通信を制御する。すなわち、通信部28を介して、解析装置2は、画像撮像装置10と外部情報記憶装置12に情報交換可能に接続される。
【0024】
情報記憶回路30は、解析装置2における各種の情報をデータとして記憶する回路である。この情報記憶回路30は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等により実現される。詳しくは後述するが、本実施形態においては、情報記憶回路30は、死亡時カルテ記憶回路30aと、部位別画像記憶回路30bと、解析結果記憶回路30cとを構成する。
【0025】
次に、図2を参照しつつ、遺体である被検体の解析処理を解析装置2で実行する場合の処理内容を説明する。図2は、本実施形態における解析装置2で実行される解析処理を説明するフローチャートを示している。この解析処理は、プログラム記憶回路22に記憶されている解析処理プログラムを制御回路20が読み込んで実行することにより実現される。
【0026】
被検体の解析シナリオは、以下のようなものである。つまり、以下のような被検体を例として、本実施形態に係る解析処理を説明する。
・自宅の居間で死亡していた男性。年齢は78歳。
・伏臥位で発見
・冬場で、天気情報によると、一週間前から最高気温が7度の低温(自宅の居間の暖房は未使用の状態)。
・外出時の服装(コート着用)のまま発見される。
・体表の目視で目立った外傷なし。
・発見した家族の証言より、死後1日程度が経過している模様である。
・救急隊により胸部圧迫等の心肺蘇生術実施あり。
・かかりつけ医のカルテより、睡眠時無呼吸症候群と高血圧の治療で通院中である。
【0027】
上記のような遺体(以下、被検体A)が自宅で発見されたとする。近所に住む家族の通報で、自宅に呼ばれた検案医による外表の観察の結果、目立った異常がないことから、事件性はないと判断された。また、家族からの聞き取りにより、睡眠時無呼吸症候群と高血圧の治療で通院中だったということがわかり、脳卒中か急性心筋梗塞のような循環器系疾患による内因死が推定された。家族は剖検を望まなかったため、正確な死因を決定するために、提携先の病院に死後CT検査(オートプシー・イメージング)を依頼することにした。
【0028】
このようなシナリオを用いて、病院での死因究明の手順を説明すると、まず、オートプシー・イメージングの依頼を受けた病院の担当医は、家族の持参した、かかりつけ医の診察券を元に、被検体Aのカルテを取り寄せ、既往歴や生前の検査結果情報(バイタルデータや診断画像)を確認し、死因究明に有効な情報のみ、または全ての情報を、被検体Aの死亡時カルテに入力する。被検体Aの、例えば胎児時から現在までの健康情報が記録された生涯カルテがあれば、それに追加するようにすることもできる。
【0029】
また、家族の証言や検案医の判断による、被検体Aの死後経過時間や、死亡環境のエアコン使用の有無を含めた気温や湿度、発見時の被検体Aの服装、外表観察の結果も入力する。これらの入力された死亡時カルテの情報は、情報記憶回路30における死亡時カルテ記憶回路30aに格納されて記憶される。
【0030】
また、死亡推定時から現在までの天気の情報等も、死亡時カルテに入力してもよい。本実施形態においては、天候情報は、例えば外部情報記憶装置12に格納されており、解析装置2が死亡推定時刻に基づいて自動的に取得するようにしてもよいし、或いは、操作者である担当医が解析装置2に入力するようにしてもよい。本実施形態においては、これらの追加情報も、死亡時カルテに関する情報として、情報記憶回路30における死亡時カルテ記憶回路30aに格納されて記憶される。
【0031】
これらの作業と平行して、担当医や担当診療放射線技師の操作者は、被検体Aの部位別の画像を撮像すべく、死後CT検査の準備も進める。すなわち、担当医や担当診療放射線技師等の操作者は、画像撮像装置10の汚染防止のために被検体Aの遺体を遺体袋に入れる等の処置をした後、被検体Aを画像撮像装置10に送り込む(ステップS1)。例えば、画像撮像装置10がX線CT装置である場合には、このX線CT装置のガントリ内に被検体を送り込む。
【0032】
次に、診療放射線技師は、例えば『Ai検査ガイドライン』http://www.jart.jp/news/tclj8k0000000we0-att/Aiguideline_170310.pdfに示されているオートプシー・イメージング用の撮像範囲、撮像体位、撮像条件に従って、例えば頭部・頚部・胸部・腹部・四肢部等の部位別に、画像撮像装置10を用いた撮像を開始する。この部位別の撮像条件は、例えば、上記の条件が入力された画像撮像装置10の「自動オートプシー・イメージング撮像ボタン」を選択すると自動的に設定されるようにしてもよいし、或いは、担当医や担当診療放射線技師である操作者が被検体である被検体Aの状態を考慮しつつ、手動で解析装置2や画像撮像装置10に入力するようにしてもよい(ステップS2)。また、一般的には、被検体は遺体であるので、患者を診断する際に被検体に照射するX線の線量よりも、遺体の死因を特定する際に被検体に照射するX線の線量は、大きく設定することができる。担当医や担当診療放射線技師である操作者は、この部位別の撮像条件の設定が完了した時点で、入力部26を介して、解析装置2に検査の開始を指示入力する(ステップS3)。
【0033】
検査が始まると、撮像条件が切り替わるタイミング、すなわち撮像する被検体の部位が変わるタイミングで、制御回路20の画像取得機能20aは、撮像した画像を保存するデータベースを切り換える(ステップS4)。本実施形態においては、制御回路20の画像取得機能20aは、撮像した画像を情報記憶回路30の部位別画像記憶回路30bに格納して記憶することから、被検体の部位毎の撮像画像を格納するデータベースは、情報記憶回路30の部位別画像記憶回路30bに形成される。
【0034】
具体的には、制御回路20の画像取得機能20aの制御の下に、頭部の撮像画像のデータは頭部データベース30b1に格納され、頚部の撮像画像のデータは頚部データベース30b2に格納され、胸部の撮像画像のデータは胸部データベース30b3に格納され、腹部の撮像画像のデータは腹部データベース30b4に格納され、四肢部の撮像画像のデータは四肢部データベース30b5に格納される。このように、本実施形態においては、被検体の部位別に、撮像した画像が記憶され、データベース30b1~30b5が形成される。
【0035】
これらのデータベース30b1~30b5へ保存された撮像画像に関するデータは、制御回路20の画像追加判定機能20bにより、X線の線量や撮像範囲等が死後CT検査用の画像として適正かどうかが判断される(ステップS5)。もしも線量が足りない、必要な画像が無いなどの不具合があれば、画像追加判定機能20bは、画像取得機能20aに不足している画像の撮像を追加的に行わせたり(S6’)、警告を出力したりする。例えば、画像追加判定機能20bは、表示部24に警告を表示して操作者に通知する。
【0036】
被検体の死因を追求するのに必要な画像が揃っているかどうかの判断は、画像追加判定機能20bが行うのではなく、制御回路20の画像追加判定機能20bがデータベース統括回路30b6に確認するようにしてもよい。この場合、画像追加判定機能20bは、被検体の撮像が終了する前に、情報記憶回路30におけるデータベース統括回路30b6に問い合わせを行い、死因究明に必要な画像が揃っているかの確認を行う(ステップS5)。すなわち、画像追加判定機能20bは、被検体の画像を撮像する画像撮像装置10に被検体がある状態で、解析処理機能20cが解析を行うために必要な画像が、画像撮像装置10により撮像されたか否かを判定する。そして、画像追加判定機能20bは、画像が不足していると判定した場合には、画像取得機能20aに不足している画像の撮像を追加的に行わせる(S6’)。或いは、制御回路20の画像追加判定機能20bは、必要な画像が不足していると判定した場合には、画像追加の指示を例えば表示部24に出力して、操作者に警告する。
【0037】
死因究明のために必要な情報が揃うと、制御回路20の画像取得機能20aは、撮像終了を医師または診療放射線技師等の操作者に通知し、被検体Aの遺体を画像撮像装置10から取り出して、被検体の画像取得処理を終了する(ステップS6)。画像撮像装置10がX線CT装置である場合には、医師または診療放射線技師等は、X線CT装置におけるガントリから被検体を出して、画像取得処理を終了する。
【0038】
次に、制御回路20の画像取得機能20aが部位別に取得した被検体の画像の解析を、各部位毎に解析処理機能20cが実行する。すなわち、解析処理機能20cは、まず、被検体Aについての死亡時カルテに保存されている検案情報と、気温履歴等の外部情報を取り込む(ステップS7)。具体的には、解析処理機能20cは、死亡時カルテ記憶回路30aから死亡時カルテに関する情報を取得し、死亡時カルテから検案情報と外部情報と取り込む。なお、解析処理機能20cは、外部情報を外部情報記憶装置12から直接取り込むようにすることもできる。
【0039】
本実施形態に係る解析処理機能20cにおいては、被検体の部位毎に画像を解析する解析機能が設けられている。すなわち、解析処理機能20cには、頭部データベース30b1に格納されている被検体の頭部の画像を解析する頭部解析機能20c1と、頚部データベース30b2に格納されている被検体の頚部の画像を解析する頚部解析機能20c2と、胸部データベース30b3に格納されている被検体の胸部の画像を解析する胸部解析機能20c3と、腹部データベース30b4に格納されている被検体の腹部の画像を解析する腹部解析機能20c4と、四肢部データベース30b5に格納されている被検体の四肢部の画像を解析する四肢部解析機能20c5とが形成されている。
【0040】
それぞれの解析機能20c1~20c5が、蘇生術情報または死亡後経過時間情報を読み込み、当該部位に関する異常陰影検出アルゴリズムを用いて画像の解析を行う(ステップS8)。具体的な異常陰影検出アルゴリズムは、例えば、特許第5725797号(読影医用画像処理装置)に開示されているように、既知である。但し、本実施形態では、蘇生術情報または死亡後経過時間情報の他に、外表情報、カルテ情報からの既往歴や遺伝子情報、聞き取りからのバーバル情報、外部情報記憶装置12から取得した気温の履歴情報等も加味して読影するようにしてもよい。
【0041】
ここで、特許第5725797号で開示されている異常陰影検出アルゴリズムでは、頭部解析機能20c1、頚部解析機能20c2、胸部解析機能20c3、腹部解析機能20c4、及び、四肢部解析機能20c5のそれぞれが、各部位の画像に基づいて、解析結果を求め、これを出力することにより、解析処理を終了していた。
【0042】
しかし、本実施形態に係る解析装置2では、統合処理機能20dが、解析処理機能20cが求めた解析結果を第1の解析結果として用いて、最も可能性があると考えられる死因を第2の解析結果として求めて提示する(ステップS9)。例えば、統合処理機能20dは、解析機能20c1~20c5が求めた第1の解析結果の信頼度に基づいて、第1の解析結果を総合的に判定して、第2の解析結果を求める。また、第1の解析結果の信頼度に代えて、或いは、第1の解析結果の信頼度に加えて、解析機能20c1~20c5が求めた第1の解析結果における相互の矛盾の有無を利用して、第2の解析結果を求める。ここで、第2の解析結果の妥当性の強度を、賛成度として表してもよい。この賛成度とは、統合処理機能20dが算出する、第2の解析結果の妥当性の強度を表す値である。
【0043】
図3は、解析処理機能20cで実行される解析処理及び統合処理機能20dで実行される統合処理の具体例を説明するための部位別テーブルの一例を示す図である。図4は、解析処理機能20cが部位別に画像解析を行って第1の解析結果を求め、統合処理機能20dが第1の解析結果に基づいてさらなる解析を行い、死因となる候補を決定するために用いられる死因決定テーブルの一例を示す図である。この図4に示すように、本実施形態における死因決定テーブルは、部位別に、「画像所見」、「整理番号」、「外表所見」、「考えられる死因/重要項目」、「死因関連度」、「エビデンス強度(信頼度)」、「備考」が設けられて、死因を特定するための情報が格納されている。
【0044】
まず、図3に示すように、例えば、頭部データベース30b1から取得した被検体の頭部の画像に基づいて、頭部解析機能20c1は、多数の点状低吸収域があることを検出し、この多数の点状低吸収域を根拠に、第1の解析結果として、ラクナ梗塞(無症候性脳梗塞)と判断する。ラクナ梗塞(無症候性脳梗塞)の場合、「考えられる死因/重要項目」としては急性脳梗塞が予測されるが、通常は多数の点状低吸収域を根拠とするラクナ梗塞は死因となる可能性が低いことが、図4の死因決定テーブルから判断できるため、頭部解析機能20c1は、5段階ある死因関連度としては、3であると判断する。この数字は、図4の死因決定テーブルに予めラクナ梗塞の死因関連度として登録されていてもよいし、或いは、頭部解析機能20c1が他の情報と合わせて計算し判定してもよい(ステップS8-1)。
【0045】
同様な手順で、頚部解析機能20c2は、頚部データベース30b2から取得した被検体の頚部の画像の解析を行う。しかし、頚部解析機能20c2は、画像上の異常を検出せず、頚部には異常なしの判断をする(ステップS8-2)。
【0046】
次に、胸部解析機能20c3は、胸部データベース30b3から取得した検体の胸部の画像の解析を行う。そして、胸部解析機能20c3は、この胸部の画像から、前胸部左右対称に連続する複数の骨折を検出する。しかし、胸部解析機能20c3は、死亡時カルテを参照し、これは「心肺蘇生術によるもの」と判断する。また、胸部解析機能20c3は胸部の画像に、両肺に水平面を形成するすりガラス影を検出する。しかし、胸部解析機能20c3は、このすりガラス影を「死後変化(血液就下)」と判断する。胸部解析機能20c3は、いずれも死因関連度は0と判定する。
【0047】
さらに、胸部解析機能20c3は、胸部の画像に冠動脈内高輝度陰影があることを検出する。これは冠動脈の石灰化であることから、胸部解析機能20c3は、「考えられる死因/重要項目」が「急性心筋梗塞」であると判断する。また、図4の死因決定テーブルにおける冠動脈内高輝度陰影を根拠とする「急性心筋梗塞」は、死因関連度が5であることから、胸部解析機能20c3は、この冠動脈内高輝度陰影に基づく死因関連度は5と判定する。また、胸部解析機能20c3は、胸部の画像から心大血管内高吸収鋳型状構造を検出する。胸部解析機能20c3は、この心大血管内高吸収鋳型状構造を、死後変化・心大血管内豚脂様凝血と判断する。心大血管内豚脂様凝血が見られる場合は、一般的に急死ではないとされていることから、胸部解析機能20c3は、「考えられる死因/重要項目」を「急死ではない」と判定する(ステップS8-3)。
【0048】
腹部解析機能20c4は、腹部データベース30b4から取得した腹部の画像の解析を行う。そして、腹部解析機能20c4は、腹部の画像から、腹部の多量の肝血管内低吸収域(ガス)を検出し、これは死後変化(腐敗)と判断する。また、腹部解析機能20c4は、腹部の画像から、肝実質に直線状の低吸収域があることを検出するが、これは肝臓の断裂で、「単純深在性損傷」であると一応の判断をする。しかし、X線CT装置等の画像撮像装置10における撮像は、非造影撮像であるため、画像が鮮明でないことから、腹部解析機能20c4は、「考えられる死因/重要項目」を「単純深在性損傷の疑い」とする。また、図4の死因決定テーブルにおける肝実質の直線状の低吸収域を根拠とする単純深在性損傷は、死因関連度が4であることから、腹部解析機能20c4は、この肝実質の直線状の低吸収域の死因関連度は4と判定する(ステップS8-4)。
【0049】
四肢部解析機能20c5は、四肢部データベース30b5から取得した四肢部の画像の解析を行う。ここでは、四肢部データベース30b5は、四肢部の画像上の異常を検出せず、四肢部には異常なしの判断をする(ステップS8-5)。
【0050】
上述した頭部解析機能20c1、頚部解析機能20c2、胸部解析機能20c3、腹部解析機能20c4、及び、四肢部解析機能20c5による解析処理が終了した後、統合処理機能20dは、これら頭部解析機能20c1、頚部解析機能20c2、胸部解析機能20c3、腹部解析機能20c4、及び、四肢部解析機能20c5が出力した第1の解析結果に基づいて協議を開始して、死因に関する第2の解析結果を出力する(ステップS9)。
【0051】
例えば、頭部解析機能20c1は、図4の死因決定テーブルを参照すると、頭部の画像の画像所見として、「多数の点状低吸収域」を検出した場合には、「考えられる死因/重要項目」として急性脳梗塞があげられることが分かる。そして、その死因関連度は5段階のうち3であり、エビデンス強度(信頼度)は30であることが分かる。ここで、5段階で評価されている死因関連度は、例えば、大きいほど死因である可能性が高いことを表している。また、エビデンス強度(信頼度)は、その画像所見が検出された場合に、「考えられる死因/重要項目」に該当する可能性が高いのかそれとも低いのかを表しており、0から100の数値で評価されている。本実施形態においては、例えば、エビデンス強度(信頼度)の値が大きいほど、「考えられる死因/重要項目」に該当する可能性が高いことを表している。
【0052】
また、例えば、胸部解析機能20c3は、図4の死因決定テーブルを参照することにより、例えば、胸部の画像の画像所見として、「冠動脈内高輝度陰影」を検出した場合には、「考えられる死因/重要項目」として急性心筋梗塞があげられることがわかる。そして、その死因関連度は5段階のうち5であり、エビデンス強度(信頼度)は50であることが分かる。このように、解析機能20c1~20c5における第1の解析結果と図4の死因決定テーブルとを用いて、統合処理機能20dは、複数の異なる解析処理により導き出された第1の解析結果の協議を行い、死因の候補である第2の解析結果を導き出す。
【0053】
例えば、図3の例においては、統合処理機能20dは、頭部解析機能20c1が、急性脳梗塞という死因を提示しているが、ラクナ梗塞が急性脳梗塞の原因であるというエビデンス強度は30であるのに対し、胸部解析機能20c3が提示した「急死ではない」という判断のエビデンス強度は90であるため、急性脳梗塞により死亡したという判断を却下する。各解析機能同士の協議の結果である「急性脳梗塞により死亡したという判断を却下する」という第2の解析結果の、妥当性の強度を表す賛成度は、例えば80%と示される。この賛成度は、例えば他の項目の死因関連度やエビデンス強度等の関係から算出される。また、統合処理機能20dは、胸部解析機能20c3自体による「急性心筋梗塞」という死因も同様に却下する。腹部解析機能20c4が提示した、多量の肝血管内低吸収域(ガス)が腐敗による死後変化のため、死因関連度はゼロだという判断は、死後1日+低気温という死因時カルテに基づく情報から、統合処理機能20dは、そこまでは腐敗は進まないと判定し、死後変化だという解析結果は却下する。ただし、腹部解析機能20c4が提示した死後変化だという判断も完全には否定できないため、統合処理機能20dの協議の結果である第2の解析結果の、妥当性の強度を表す賛成度は、50%と中間値になる。
【0054】
この結果、腹部解析機能20c4が提示している、「肝臓の単純深在性損傷の疑い」が死因候補として残ることになるが、統合処理機能20dは、これらが外表所見の「体表の軽微な打撲痕」の判断と矛盾するため、判断を「保留」とする。
【0055】
次に、これらの統合処理機能20dによる一連の判断が、死因究明支援結果である第2の解析結果として担当医に提示される(ステップS10)。本実施形態においては、制御回路20の第1の出力機能20eが、統合処理機能20dの判断結果である第2の解析結果を、例えば、表示部24に出力して表示する。なお、第1の出力機能20eの出力先は表示部24に限るものではなく、任意である。例えば、第1の出力機能20eは、プリンタなどの印刷手段に第2の解析結果を出力するようにしてもよい。
【0056】
担当医は、第1の出力機能20eが出力した第2の解析結果に基づいて、肝臓の詳細な検査が必要と判断することができ、造影剤を用いた腹部のX線CT装置による撮像が行われることになる。具体的な遺体の造影方法については、例えば、特許第5575515号(医用画像診断システム及び造影用の送液装置)に開示されているように既知であり、エンバーミング用の装置を使用する等の様々な手法が存在する。
【0057】
造影剤を用いた腹部のX線CT装置による撮像で、「肝臓の単純深在性損傷」が確定されると、これは死因関連度4と比較的高い判定であるため、担当医はこれを死因と決定することになる。肝臓の損傷と比較して体表の打撲痕が軽微であるという矛盾は、被検体Aの体表が厚手のコート等に覆われていたためと推定することができる。最終的な死因の特定は、担当医や検案医や警察官等が総合的に判断して決めるが、これも予め保存されていた情報から、統合処理機能20dが解析処理を行い判断するようにしてもよい。
【0058】
また、ここでは造影剤を用いたX線CT装置による撮像の実行を担当医が決定したが、統合処理機能20dが決定して、自動的に行うようにしてもよい。この場合、死因が決定されるまで、遺体を画像撮像装置10の内部に、例えばX線CT装置のガントリ内に、存知させたまま待機させるようにしてもよい。
【0059】
また、ここでは最後まで解析処理機能20c及び統合処理機能20dが被検体の死因を特定するための読影支援を行うことにしているが、解析処理機能20c及び統合処理機能20dの解析処理では死因が特定できなかった場合には、読影困難例となり、Ai情報センターのような専門機関に死因の特定を依頼することになる(ステップS11)。本実施形態においては、統合処理機能20dは、死因が特定できない旨を表す決定不可情報を生成して、制御回路20の第2の出力機能20fが決定不可情報を表示部24に出力して表示する。なお、第2の出力機能20fの出力先は表示部24に限るものではなく、任意である。例えば、第2の出力機能20fは、プリンタなどの印刷手段に決定不可情報を出力するようにしてもよい。
【0060】
このように、統合処理機能20dが生成した被検体の死因を特定するのを支援する情報である第2の解析結果に基づいて、病院の担当医や担当診療放射線技師は、被検体の死因を究明していくことができるので、必ずしも死因を特定する知識や経験が少ない担当医や担当診療放射線技師であっても、妥当な死因特定を行うことができる。この結果、一般病院では死因を特定するのが困難な例だけが、専門機関に死因特定の依頼がなされることになり、専門機関の負担を軽減することができる。このため、遺体に基づいて死因を特定するための専門機関が人手不足により機能不全に陥ることを、高い確度で防止することができる。
【0061】
さらに、遺体である被検体の死因特定の精度が向上して、例えば、内因死の疑いだった遺体が、外因死だったということがわかれば、事件性を視野に入れた警察の捜査を始めることができる。このため、犯罪を見逃す可能性が少なくなると考えられる。
【0062】
また、本実施形態に係る解析装置2においては、解析処理機能20cが求めた第1の解析結果、及び、統合処理機能20dが求めた第2の解析結果は、情報記憶回路30における解析結果記憶回路30cに格納されてデータベースとして保存される。例えば、遺体の状態というのは、死後経過時間や天候条件などによって、大きく異なる。例えば、同じ死後経過24時間の遺体であっても、遺体周囲の温度が高ければ腐敗は早く進行するが、温度が低ければ腐敗はさほど進行しない。遺体周囲の湿度、風の有無や強弱によっても遺体の状態は異なってくる。
【0063】
このため、制御回路20の標準遺体構築機能20gは、各部位毎に、死後経過時間や天候条件を少なくとも1つを含む被検体分類条件にしたがって、部位別画像記憶回路30bに格納されている部位別の画像、解析処理機能20cが求めた第1の解析結果、及び、統合処理機能20dが求めた第2の解析結果を整理して、「標準遺体」を構築する。被検体分類条件にしたがって分類された、標準的な遺体である「標準遺体」は、遺体に基づいて死因を特定する際の大きな手がかりになるものであり、今後の死因特定の精度向上に寄与すると考えられる。また、このような「標準遺体」に関する情報は、解析処理機能20cや統合処理機能20dの解析精度向上にも寄与するものと考えられる。
【0064】
上述したように、遺体である被検体を部位別に分けてから遺体の撮像を行い、これらの画像に基づいて、各部位ごとに解析処理機能20cが死因の解析を行うようにしたことで、解析処理機能20cが解析を行うポイントを絞りやすくすることができる。また、統合処理機能20dが、種類の異なる複数の解析処理により求められた第1の解析結果をさらに解析する上でも、第1の解析結果の信頼度や矛盾点の有無を整理立てて判定していくことができる。この結果、遺体の真の死因が特定しやすくなる。また、統合処理機能20dにより判定を行う処理時間を短くすることもできると考えられる。
【0065】
なお、本実施形態における頭部解析機能20c1、頚部解析機能20c2、胸部解析機能20c3、腹部解析機能20c4、及び、四肢部解析機能20c5が、死因に関する第1の解析結果を求める、種類の異なる複数の解析処理部を構成しており、本実施形態における統合処理機能20dが、死因に関する第2の解析結果を求める、統合処理部を構成している。
【0066】
また、本実施形態における第1の出力機能20eが、第2の解析結果を出力する第1の出力部を構成しており、本実施形態における第2の出力機能20fが、決定不可情報を出力する第2の出力部を構成している。本実施形態における画像追加判定機能20bが、画像が不足していると判定した場合に画像追加の指示を出力する画像追加判定部を構成している。
【0067】
また、本実施形態における解析結果記憶回路30cが、第1の解析結果及び第2の解析結果を出力する解析結果記憶部を構成しており、本実施形態における標準遺体構築機能20gが、被検体分類条件における標準遺体を構築する標準遺体構築部を構成している。
【0068】
以上、いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例としてのみ提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図したものではない。本明細書で説明した新規な装置および方法は、その他の様々な形態で実施することができる。例えば、画像撮像装置はMRIでもよい。また、管電圧の異なる2種類のX線でCTを撮影するデュアルエナジーCTを用いてもよい。また、詳細な検査は、病理医による解剖でもよい。また、本明細書で説明した装置および方法の形態に対し、発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の省略、置換、変更を行うことができる。添付の特許請求の範囲およびこれに均等な範囲は、発明の範囲や要旨に含まれるこのような形態や変形例を含むように意図されている。
【符号の説明】
【0069】
1…解析システム、2…解析装置、10…画像撮像装置、12…外部情報記憶装置、20…制御回路、20a…画像取得機能、20b…画像追加判定機能、20c…解析処理機能、20c1…頭部解析機能、20c2…頚部解析機能、20c3…胸部解析機能、20c4…腹部解析機能、20c5…四肢部解析機能、20d…統合処理機能、20e…第1の出力機能、20f…第2の出力機能、20g…標準遺体構築機能、22…プログラム記憶回路、24…表示部、26…入力部、28…通信部、30…情報記憶回路、30a…死亡時カルテ記憶回路、30b…部位別画像記憶回路、30b1…頭部データベース、30b2…頚部データベース、30b3…胸部データベース、30b4…腹部データベース、30b5…四肢部データベース、30b6…データベース統括回路、30c…解析結果記憶回路
図1
図2
図3
図4