(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-14
(45)【発行日】2024-06-24
(54)【発明の名称】介護支援装置及び制御プログラム
(51)【国際特許分類】
G16H 20/00 20180101AFI20240617BHJP
【FI】
G16H20/00
(21)【出願番号】P 2020018036
(22)【出願日】2020-02-05
【審査請求日】2022-03-07
【審判番号】
【審判請求日】2023-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000191009
【氏名又は名称】新東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】水谷 学世
(72)【発明者】
【氏名】白木 正孝
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 誉久
【合議体】
【審判長】伏本 正典
【審判官】佐藤 智康
【審判官】緑川 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-126174(JP,A)
【文献】特表2017-517327(JP,A)
【文献】特開2019-202156(JP,A)
【文献】特開2019-208876(JP,A)
【文献】特開2011-120874(JP,A)
【文献】国際公開第2018/142451(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被介護者の排泄物に関する情報を検出する第1センサと、
前記被介護者の睡眠状態に関する情報を検出する第2センサと、
コントローラと、
開口部を有し、前記第1センサ、前記第2センサ及び前記コントローラを収容する筐体と、を備え、
前記第2センサは、加速度センサ及び温度センサを含み、
前記コントローラは、
前記第1センサの検出値を用いて前記被介護者による排泄を検知する検知処理と、
前記第2センサの検出値を用いて前記被介護者の睡眠状態を特定する特定処理と、
前記被介護者の排泄を検知し
たとき、前記被介護者の睡眠状態が
浅い状態又は覚醒状態であると特定した場合、排泄が行われた旨を示す出力情報を出力する出力処理と、を実行し、
前記筐体において、前記第1センサと前記開口部との距離は、前記第2センサと前記開口部との距離よりも小さい、
ことを特徴とする介護支援装置。
【請求項2】
被介護者の排泄物に関する情報を検出する第1センサと、
前記被介護者の睡眠状態に関する情報を検出する第2センサと、
コントローラと、
開口部を有し、前記第1センサ、前記第2センサ及び前記コントローラを収容する筐体と、を備え、
前記第2センサは、加速度センサ及び温度センサを含み、
前記コントローラは、
前記第1センサの検出値を用いて前記被介護者による排泄を検知する検知処理と、
前記第2センサの検出値を用いて前記被介護者の睡眠状態を特定する特定処理と、
前記被介護者の排泄を検知した
とき、排泄が行われた旨を示す出力情報を、前記被介護者の前記睡眠状態に関する情報とともに出力する出力処理と、を実行し、
前記筐体において、前記第1センサと前記開口部との距離は、前記第2センサと前記開口部との距離よりも小さい、
ことを特徴とする介護支援装置。
【請求項3】
前記コントローラは、
前記出力処理の実行後、前記被介護者の睡眠状態が
浅い状態又は覚醒状態となったタイミングで前記出力情報を出力する第2出力処理、を更に実行する、
請求項2に記載の介護支援装置。
【請求項4】
前記コントローラは、
前記出力処理において、前記被介護者の排泄が検知されてから予め定められた期間が経過した後、前記出力情報を出力する、
請求項1~3までの何れか1項に記載の介護支援装置。
【請求項5】
前記コントローラは、
予め定められたプログラムに従って前記各処理を実行する少なくとも1つのプロセッサと、
前記プログラムを格納した少なくとも1つのメモリと、を備えている、
ことを特徴とする請求項1~4までの何れか1項に記載の介護支援装置。
【請求項6】
請求項1~5の何れか1項に記載の介護支援装置を制御する制御プログラムであって、前記コントローラに前記各処理を実行させることを特徴とする制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、介護支援装置及び制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
介護者を支援するための技術が提案されている。例えば特許文献1には、製品着用者の排泄行動に基づいて当該衛生用品に関連する情報を介護者のモバイル装置で提供することが記載されている。また、特許文献2には、おむつにセンサと失禁検出手段を設けて、センサ1からの信号により失禁の確認を行うことが記載されている。特許文献2に記載の装置は、失禁確認が行われると、看護者に通知し、おむつ交換を促す。
【0003】
また、特許文献3には、オムツに温度センサ及び加速度センサを設け、オムツの脱落の検知、装着者の異変の検知、及び床ずれ予防などを行う健康管理システムが記載されている。特許文献3に記載のシステムは、温度センサを用いて温度を監視することで、オムツの着脱の監視及び装着者の病気の監視を行うとともに、加速度センサを用いて装着者の体動を検出することで、装着者の無体動期間を検出し、オムツの処置の最適な実施時間帯を処置者に連絡する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2015-534153号公報(2015年11月26日公開)
【文献】特開平10-234761号公報(1998年9月8日公開)
【文献】特開2012-105839号公報(2012年6月7日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、介護において被介護者の睡眠を妨げることなく排泄ケアを行うことができれば好適である。特許文献1及び2に記載の技術では、介護者を支援することができるものの、被介護者の睡眠状態を考慮した排泄ケアを行うことは困難であった。また、特許文献3に記載の技術では、加速度センサにより体動を検出するものの、加速度センサの検出結果により被介護者の睡眠状態(睡眠の深さ)を判断することは困難であった。そのため、特許文献3に記載の技術では、被介護者の睡眠状態を考慮したタイミングでの排泄ケアは困難であった。
【0006】
本発明の一態様は、被介護者の睡眠状態を考慮したタイミングでの排泄ケアを支援する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の態様1に係る介護支援装置は、被介護者の排泄物に関する情報を検出する第1センサと、前記被介護者の睡眠状態に関する情報を検出する第2センサと、コントローラと、を備え、前記第2センサは、加速度センサ及び温度センサを含み、前記コントローラは、前記第1センサの検出値を用いて前記被介護者による排泄を検知する検知処理と、前記第2センサの検出値を用いて前記被介護者の睡眠状態を特定する特定処理と、前記被介護者の排泄を検知し、かつ、前記被介護者の睡眠状態が深い状態でないと特定した場合、排泄が行われた旨を示す出力情報を出力する出力処理と、を実行する、ことを特徴とする。
【0008】
上記の構成によれば、介護支援装置は、加速度センサ及び温度センサを含む第2センサの検出値を用いて被介護者の睡眠状態を特定し、被介護者が排泄し、かつ、被介護者の睡眠状態が深い状態でない場合に、排泄が行われた旨を示す出力情報を出力する。これにより、被介護者の睡眠状態を考慮したタイミングでの排泄ケアを支援することができる。
【0009】
本発明の態様2に係る介護支援装置は、被介護者の排泄物に関する情報を検出する第1センサと、前記被介護者の睡眠状態に関する情報を検出する第2センサと、コントローラと、を備え、前記第2センサは、加速度センサ及び温度センサを含み、前記コントローラは、前記第1センサの検出値を用いて前記被介護者による排泄を検知する検知処理と、前記第2センサの検出値を用いて前記被介護者の睡眠状態を特定する特定処理と、前記被介護者の排泄を検知した場合、排泄が行われた旨を示す出力情報を、前記被介護者の前記睡眠状態に関する情報とともに出力する出力処理と、を実行する、ことを特徴とする。
【0010】
上記の構成によれば、介護支援装置は、加速度センサ及び温度センサを含む第2センサの検出値を用いて被介護者の睡眠状態を特定し、被介護者の排泄を検知した場合、排泄が行われた旨を示す出力情報を、前記被介護者の前記睡眠状態に関する情報とともに出力する。これにより、被介護者の睡眠状態を考慮したタイミングでの排泄ケアを支援することができる。
【0011】
本発明の態様3に係る介護支援装置は、前記態様2において、コントローラは、前記被介護者の排泄を検知した場合、当該被介護者の睡眠状態が深い状態でなくなったタイミングで前記出力情報を出力する第2出力処理、を更に実行してもよい。
【0012】
上記の構成によれば、介護支援装置は、被介護者の睡眠状態が深い状態でなくなったタイミングで出力情報を出力する。これにより、被介護者の睡眠状態が深くないタイミングでの排泄ケアを支援することができる。
【0013】
本発明の態様4に係る介護支援装置は、前記態様1~3において、前記コントローラは、前記出力処理において、前記被介護者の排泄が検知されてから予め定められた期間が経過した後、前記出力情報を出力してもよい。
【0014】
上記の構成によれば、介護支援装置が出力する出力情報は、排泄直後の被介護者の動きを考慮しない情報となる。これにより、被介護者の睡眠中に排泄に伴う体の動きが検出された場合であっても、被介護者が睡眠中でないと特定されてしまうことが防止される。
【0015】
本発明の態様5に係る介護支援装置は、前記態様1~4において、開口部を有し、前記第1センサ、前記第2センサ、及び前記コントローラを収容する筐体、を更に備え、前記第1センサと前記開口部との距離は、前記第2センサと前記開口部との距離よりも小さくてもよい。
【0016】
上記の構成によれば、開口部から遠い位置に第1センサが配置される場合に比べて、被介護者の排泄を検知し易くすることができる。
【0017】
本発明の態様6に係る介護支援装置は、前記態様1~5において、前記コントローラは、予め定められたプログラムに従って前記各処理を実行する少なくとも1つのプロセッサと、前記プログラムを格納した少なくとも1つのメモリと、を備えていてもよい。
【0018】
上記の構成によれば、介護支援装置は、加速度センサ及び温度センサを含む第2センサの検出値を用いて被介護者の睡眠状態を特定し、特定した睡眠状態に基づいて被介護者に関する出力情報の出力制御を行う。これにより、被介護者の睡眠状態を考慮したタイミングでの排泄ケアを支援することができる。
【0019】
本発明の態様7に係る制御プログラムは、前記態様1~6のいずれかに記載の介護支援装置を制御する制御プログラムであって、前記コントローラに前記各処理を実行させることを特徴とする。
【0020】
本発明の範疇には、態様7に係る制御プログラム及びそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も含まれる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の一態様によれば、被介護者の睡眠状態を考慮したタイミングでの排泄ケアを支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施形態1に係る介護支援システムの概要を示す図である。
【
図2】本発明の実施形態1に係る介護支援装置が使用される様子を概略的に示す図である。
【
図3】本発明の実施形態1に係る介護支援装置の機能構成を例示するブロック図である。
【
図4】本発明の実施形態1に係る介護支援装置の構成を示す断面図である。
【
図5】本発明の実施形態1に係る介護支援装置が行う処理の流れを例示するフローチャートである。
【
図6】本発明の実施形態1に係るセンサの検出値を例示する図である。
【
図7】介護者端末に表示される画面を例示する図である。
【
図8】本発明の実施形態2に係る介護支援装置が行う処理の流れを例示するフローチャートである。
【
図9】本発明の実施形態3に係る介護支援装置が行う処理の流れを例示するフローチャートである。
【
図10】本発明の実施形態3に係るセンサの検出値を例示する図である。
【
図11】本発明の実施形態3に係るセンサの検出値を例示する図である。
【
図12】本発明の実施形態4に係る介護支援装置が行う処理の流れを例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一実施形態について説明する。
【0024】
(構成)
図1は、本実施形態に係る介護支援システム1の概要を示す図である。介護支援システム1は、介護を支援するためのシステムである。介護支援システム1は特に、被介護者の排泄ケアを支援するためのサービスを提供する。介護支援システム1は、介護支援装置10、管理装置20、介護者端末30、及び中継装置40を含む。介護支援装置10、管理装置20、介護者端末30及び中継装置40はネットワークN1を介して接続される。ネットワークN1は、例えば有線LAN(Local Area Network)、無線LAN、インターネット、又はこれらの組み合わせであってもよい。
【0025】
図1には、図面が煩雑になるのを防ぐため、介護支援装置10、介護者端末30及び中継装置40をそれぞれ1台ずつ図示しているが、複数の介護支援装置10、複数の介護者端末30、及び複数の中継装置40が介護支援システム1に含まれてもよい。
【0026】
介護支援装置10は、被介護者の排泄を検知する機能及び睡眠状態を特定する機能を備える。介護支援装置10は、例えば被介護者に装着されて用いられる。管理装置20は例えば、サーバ、又はPC(Personal Computer)等の装置である。管理装置20は、介護支援装置10から被介護者に関する情報を収集し、介護を支援するための情報を介護者端末30に提供する。介護者端末30は、介護者により使用される端末である。介護者端末30は例えば、PC、タブレットPC、スマートフォン及びフィーチャーフォン等の携帯電話機、又は携帯情報端末(PDA:Personal Digital Assistant)である。中継装置40は、介護支援装置10と管理装置20との間のデータの遣り取りを中継する装置である。
【0027】
図2は、介護支援装置10が使用される様子を概略的に示す図である。本実施形態において、介護支援装置10は、小型のウェアラブルなセンサモジュールである。介護支援装置10は、被介護者の身体B1と、身体B1に装着されるオムツ又は下着等の装着物C1との間に挟まれることにより被介護者に装着される。
【0028】
図3は、介護支援装置10の機能構成を例示するブロック図である。介護支援装置10は、第1センサ110、第2センサ120、及びコントローラ130を備える。第1センサ110は、被介護者の排泄物に関する情報を検出する。排泄物とは、生物から出される物質をいう。排泄物は例えば、大便、小便、又はガス(屁)である。本実施形態において、排泄物に関する情報は、排泄物の特徴を表す情報をいう。排泄物に関する情報は例えば、湿度、ガスの濃度、又はガスの成分を表す情報である。
【0029】
第2センサ120は、被介護者の睡眠状態に関する情報を検出する。睡眠状態は、例えば、睡眠していない状態(覚醒状態)、睡眠が深い状態、又は睡眠が浅い状態である。本実施形態において、睡眠状態に関する情報は、睡眠状態を特定するために用いられる情報をいう。睡眠状態に関する情報は例えば、温度(被介護者の体温)、又は加速度である。第2センサ120は、加速度センサ及び温度センサを含む。なお、第2センサ120は赤外線センサ等の他のセンサを含んでもよい。
【0030】
コントローラ130は、検知部131、特定部132、及び出力部133を含む。検知部131は、第1センサ110の検出値を用いて被介護者による排泄を検知する検知処理を実行する。
【0031】
特定部132は、第2センサ120の検出値を用いて、被介護者の睡眠状態を特定する特定処理を実行する。本実施形態では、被介護者の体の動き(以下「体動」という)が加速度センサ又は赤外線センサ等により検出された場合、特定部132は、被介護者が睡眠中でないと特定する。また、深い睡眠状態における被介護者の体温は、被介護者が深い睡眠状態でない場合よりも低い。そのため、例えば、被介護者が睡眠中であると特定された場合において、温度センサにより検出される被介護者の体温が閾値以下である場合、特定部132は被介護者の睡眠状態が深い状態であると特定する。
【0032】
出力部133は、被介護者の排泄を検知し、かつ、前記被介護者の睡眠状態が深い状態でないと特定した場合、排泄が行われた旨を示す出力情報を出力する出力処理を実行する。出力情報は例えば、介護支援装置10を識別する識別情報、被介護者を示す情報(被介護者の氏名、部屋番号、等)、及び、排泄があった旨を示す情報を含む。
【0033】
図4は、介護支援装置10の構成を例示する断面図である。介護支援装置10は、ガスセンサ111、温湿度センサ112、加速度センサ121、コントローラ130、通信モジュール140、電源150、基板160、及び筐体170を備える。
【0034】
ガスセンサ111は、ガスの濃度を検出するセンサである。ガスセンサ111の検出値は、例えば2バイトの数値であり、ガスの濃度が高いほど高い数値となる。温湿度センサ112は、温度及び湿度を検出するセンサである。ガスセンサ111及び温湿度センサ112は、第1センサ110の例である。すなわち、本実施形態において、第1センサ110は、ガスセンサ111及び温湿度センサ112を含む。
【0035】
加速度センサ121は加速度を検出する。加速度センサ121が検出する加速度は例えば、被介護者のつま先から頭方向の軸(体軸)に対する角加速度、又は体軸方向の直線加速度である。温湿度センサ112及び加速度センサ121は、第2センサ120の例である。すなわち、本実施形態において、第2センサ120は、加速度センサ121及び温湿度センサ112を含む。また、本実施形態では、温湿度センサ112は、本発明に係る第1センサ及び第2センサとして兼用される。
【0036】
コントローラ130は、予め定められたプログラムに従って各処理を実行する少なくとも1つのプロセッサと、プログラムを格納した少なくとも1つのメモリとを備える。プロセッサは、介護支援装置10を制御するプロセッサであり、例えば、マイクロプロセッサ、デジタルシグナルプロセッサ、マイクロコントローラ、又はこれらの組み合わせ等である。メモリは、例えば半導体RAM(random access memory)、フラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、又はこれらの組み合わせである。メモリには、介護支援装置10の動作をプロセッサに実行させるための制御プログラムが格納されている。プロセッサは、メモリに格納された制御プログラムをメモリ上に展開し、展開した制御プログラムに含まれる各命令を実行する。
【0037】
通信モジュール140は、予め定められた無線又は有線の通信規格に従って他の装置と通信を行う。通信モジュール140は例えば、中継装置40と近距離無線通信(Wi-Fi(登録商標)又はBluetooth(登録商標)等)を行う。中継装置40は、介護支援装置10から受信したデータを管理装置20へ送信する。
【0038】
電源150は、介護支援装置10の各部に電力を供給する。ガスセンサ111、温湿度センサ112、加速度センサ121、コントローラ130、通信モジュール140、及び電源150は、基板160に取り付けられている。筐体170は、基板160及び基板160に取り付けられた各部を収容する。すなわち、筐体170は、第1センサ110、第2センサ120及びコントローラ130を収容する。
【0039】
筐体170は、開口部170a~170dを有する。筐体170の内部において、ガスセンサ111及び温湿度センサ112は、加速度センサ121よりも開口部170c及び170dに近い位置に配置されている。すなわち、本実施形態において、第1センサ110と開口部170cとの距離は、第2センサ120と開口部170cとの距離よりも小さい。また、第1センサ110と開口部170dとの距離は、第2センサ120と開口部170dとの距離よりも小さい。
【0040】
介護支援装置10は、電源150が設けられている側が被介護者の上半身側に位置するような向きで、被介護者の身体B1と装着物C1との間に装着される。このように装着された場合、ガスセンサ111及び温湿度センサ112は、被介護者の下半身側に配置される。排泄物から発生するガスは、筐体170の開口部170a~170dから介護支援装置10の内部に取り込まれ、ガスセンサ111により検出される。
【0041】
(動作)
図5は、コントローラ130が行う処理の流れを例示するフローチャートである。なお、一部のステップは並行して、又は、順序を替えて実行されてもよい。ステップS101において、コントローラ130は電源がONであるかを判定する。電源がONである場合(ステップS101;YES)、コントローラ130はステップS102の処理に進む。一方、電源がONでない場合(ステップS101;NO)、コントローラ130は
図5の処理を終了する。
【0042】
ステップS102において、コントローラ130は、被介護者が介護支援装置10を装着しているかを判定する。この判定は例えば、温湿度センサ112により検出される温度が閾値以上であるか否かを判定することにより行われる。例えば、温湿度センサ112が検出した温度が閾値以上である場合、コントローラ130は、介護支援装置10が被介護者により装着されていると判定する。一方、温湿度センサ112が検出した温度が閾値未満である場合、コントローラ130は、介護支援装置10が被介護者により装着されていないと判定する。なお、ステップS102の判定方法はこれに限定されるものではなく、他の種々の手法が採用され得る。
【0043】
ステップS103において、コントローラ130は、第1センサ110の検出値を解析し、被介護者が排泄したかを判定する。コントローラ130は、例えば、第1センサ110の検出値の波形の形状を解析することにより、排泄の有無を判定してもよい。
【0044】
図6は、排便があった場合のガスセンサ111の検出値及び温湿度センサ112の湿度の検出値の波形を例示する図である。図において、横軸は時刻を示し、縦軸はセンサの検出値を示す。
図6の例では、排便があった時刻t11からガスセンサ111の検出値が上昇し、その後検出値はほぼ一定の値となる。また、温湿度センサ112により検出される湿度は徐々に上昇する。コントローラ130は例えば、第1センサ110の検出値の波形が
図6の波形に類似する形状であるかを判定することにより、排泄の有無を判定する。
【0045】
また、コントローラ130は、排泄の有無の判定を、学習済モデルを用いた機械学習により行ってもよい。この場合、コントローラ130又は他の装置(例えば、管理装置20)が、第1センサ110の信号値を表す検出データと、検出データに対応する判定結果との組を用いて、検出データと判定結果との相関関係を機械学習させた学習済モデルを生成する。その後、コントローラ130(又は他の装置)は、学習済モデルを用いて判定結果を推定する。学習済モデルは例えば、CNN(Convolution al Neural Network、畳み込みニューラルネットワーク)構造を有するモデルで実現可能である。検出データは例えば、第1センサ110の信号値の波形を表す画像データ、及び信号値の時系列データを含む。
【0046】
学習済モデルは、例えば管理装置20に記憶される。この場合、コントローラ130は、管理装置20に入力データを送信し、入力データの応答として管理装置20から送信されてくる出力データを受信する。コントローラ130は、受信した出力データに基づいて排泄の有無を判定する。
【0047】
この場合、第1センサ110の信号値を表すデータが入力データとして学習済モデルに入力される。学習済モデルは例えば、畳み込み層、プーリング層、結合層とから成る。畳み込み層において、入力データはフィルタリングによる情報の畳み込みがなされる。畳み込みを経たデータは、プーリング層においてプーリング処理が施される。これにより、データ中の特徴の位置変化に対するモデルの認識能力が向上する。プーリング処理を経たデータは、結合層で処理されることによって、学習済モデルの出力データ、すなわち、排泄物の有無の判定結果の形式に変換されて出力される。
【0048】
すなわち、学習済モデルに入力された入力データを、上記の各層をこれらの順に通過させることにより、排泄の有無の判定結果が出力される。なお、学習済モデルは、CNN構造を有するモデルに限られない。学習済モデルとして、例えば、MTRNN(Multi Timescale RNN)、LSTM(Long Short Term Memory)等のRNN(Recurrent Neural Network)、ARIMA(AutoRegressive, Integrated and Moving Average)モデル等が用いられてもよい。
【0049】
また、判定処理で用いられる機械学習のアルゴリズムは教師あり学習のアルゴリズムに限らず、教師なし学習、又は強化学習等の他の機械学習用のアルゴリズムであってもよい。また、機械学習用のアルゴリズムが用いられるのに限られず、ルールベースのアルゴリズムを用いた判定処理が行われてもよい。
【0050】
被介護者の排泄の有無を判定する方法は、第1センサ110の検出値を用いて行われるものであればよく、種々の方法が適用され得る。例えば、第1センサ110の検出値が閾値以上であるかを判定することにより行われてもよい。例えば、第1センサ110の検出値が閾値以上である場合、コントローラ130は排便があったと判定する一方、第1センサ110の検出値が閾値未満である場合、コントローラ130は、排便がされていないと判定してもよい。また、判定方法の他の例として、例えば、第1センサ110の検出値が閾値以上である期間が所定期間以上継続したかを判定することにより行われてもよい。この場合、第1センサ110の検出値が閾値以上である期間が所定期間以上継続した場合に、コントローラ130は、排便があったと判定してもよい。
【0051】
図5の説明に戻る。ステップS103において、排泄があったと判定した場合(ステップS103;YES)、コントローラ130はステップS104の処理に進む。一方、排泄がないと判定した場合(ステップS103;NO)、コントローラ130はステップS107の処理に進む。
【0052】
ステップS104及びステップS105において、コントローラ130は、被介護者の睡眠状態を特定する。被介護者の睡眠状態は、第2センサ120の検出値を用いて特定される。まず、ステップS104において、コントローラ130は、被介護者が睡眠中であるかを加速度センサ121の検出値を用いて判定する。例えば、加速度センサ121により検出された加速度が予め定められた条件を満たす場合(例えば、閾値以上の加速度が検出された場合、等)、コントローラ130は、被介護者が睡眠中でない(すなわち覚醒している)と判定する。睡眠中でないと判定した場合(ステップS104;NO)、コントローラ130は、ステップS106の処理に進む。一方、被介護者が睡眠中であると判定した場合(ステップS104;YES)、コントローラ130は、ステップS105の処理に進む。
【0053】
ステップS105において、コントローラ130は、被介護者の睡眠状態が深い状態であるかを、温湿度センサ112による温度の検出値を用いて判定する。例えば、温湿度センサ112により検出された温度が予め定められた条件を満たす場合(例えば、閾値以下である場合)、コントローラ130は、睡眠状態が深い状態であると判定する。判定で用いられる閾値は、例えば被介護者毎に予め設定される。
【0054】
ステップS105において、被介護者が深い睡眠状態であると判定した場合(ステップS105;YES)、コントローラ130はステップS107の処理に進む。一方、被介護者が深い睡眠状態でないと判定した場合(ステップS105;NO)、コントローラ130はステップS106の処理に進む。
【0055】
ステップS106において、コントローラ130は、排泄が行われた旨を示す出力情報を管理装置20に送信することにより出力する。管理装置20は、介護支援装置10から出力情報を受信し、受信した出力情報に対応する介護者端末30へ、被介護者に関する情報を送信する。すなわち、実施形態1では、出力部133は、被介護者の排泄を検知し(ステップS103;YES)、かつ、被介護者の睡眠状態が深い状態でないと特定した場合(ステップS105;NO)、排泄が行われた旨を示す出力情報を出力する。
【0056】
介護者端末30は、管理装置20から被介護者に関する情報を受信すると、受信した情報に基づいて、排泄があった旨を示すメッセージ又はアイコン等を自装置のディスプレイに表示する等して、被介護者が排泄した旨を示す情報を出力する。介護者は、介護者端末30のディスプレイ等を視認することにより、被介護者が排泄した旨を把握する。
【0057】
図7は介護者端末30のディスプレイに表示される画面を例示する図である。図において、画面SC1には、被介護者の名前のリストが表示される。画面SC1において、被介護者の名前の近傍には、排泄ケアが必要であるか否かを示すアイコンI1~I9が表示される。
図7において、アイコンI1~I4は排泄ケアが不要である旨を示す。アイコンI5~I9は排泄ケアが必要である旨を示す。また、アイコンI1~I9において、介護支援装置10からの出力情報を取得してからの経過時間がアイコンの周囲を囲むバーにより表されている。この場合、バーの長さ(弧の長さ)が長いほど経過時間が長い旨が示されている。
【0058】
図5の説明に戻る。ステップS107において、コントローラ130は、第1センサ110及び第2センサ120の検出値(以下「センサデータ」という)を介護支援装置10のメモリに記録する。コントローラ130は例えば、メモリに記録されたセンサデータを、予め定められたタイミング(例えば、1時間毎、1日毎、等)で管理装置20に送信する。このとき、コントローラ130が特定した被介護者の排泄の有無、及び睡眠状態を示すデータ(以下「サイクルデータ」という)がセンサデータとあわせて管理装置20に送信されてもよい。管理装置20は、1又は複数の介護支援装置10から受信したセンサデータ及びサイクルデータを収集し、記録する。管理装置20は、収集したセンサデータ及びサイクルデータを用いて解析処理等の各種の処理を実行する。管理装置20は例えば、サイクルデータを介護者端末30に送信し、介護者端末30がサイクルデータの表す被介護者の睡眠状態等をディスプレイに表示する。
【0059】
ところで、被介護者、特に認知症を患う高齢者は睡眠障害を発症しやすく、排泄ケアと同様に睡眠に対するケアも重要である。本実施形態では、被介護者の排泄を検知し、かつ、被介護者の睡眠状態が深い状態でない場合、介護者端末30に出力情報が送信され、介護者へ通知が行われる。一方、被介護者の睡眠状態が深い場合には、介護者への通知は行われない。これにより、本実施形態によれば、被介護者の睡眠状態を考慮したタイミングでの排泄ケアを支援することができる。例えば、被介護者が入眠していない(覚醒している)場合又は睡眠が浅い場合など、被介護者の睡眠を妨げないタイミングで介護者が排泄ケアを行うことができ、被介護者の健康、及びQOL(quality of life)の向上に寄与することができる。また、本実施形態によれば、不要なオムツ交換がなくなるため、介護者の作業効率が向上する。
【0060】
また、本実施形態では、被介護者の睡眠及び排泄に関する情報が介護者に提供される。介護者は、それらの情報を基に、被介護者の睡眠と排泄のサイクルを考慮した日中の活動の計画を立てることができる。
【0061】
また、本実施形態では、介護支援装置10は小型でウェアラブルであり、被介護者への装着が容易である。また、介護支援システム1では、被介護者が介護支援装置10を装着すればよく、介護者への作業負担が小さく、メンテナンスも容易である。また、センサデータ等が管理装置20に蓄積されるため、睡眠及び排泄の詳細な記録をペーパーレスで管理及び活用することができる。
【0062】
また、本実施形態では、加速度センサ121及び温湿度センサ112により被介護者の睡眠状態を特定する。すなわち、介護支援装置10に加速度センサ121及び温湿度センサ112を設けるだけでよく、簡易な構成で睡眠状態を特定することができる。
【0063】
また、本実施形態では、ガスセンサ111及び温湿度センサ112が、加速度センサ121よりも開口部170c及び170dに近い位置に配置されている。そのため、排泄物から発生して開口部170c及び170dから筐体170に入りこむガスを検出し易い。
【0064】
図5のステップS105において、コントローラ130は、温湿度センサ112により検出された温度を判定することにより、被介護者の睡眠状態が深い状態であるかを判定した。ステップS105において、コントローラ130が、被介護者の睡眠状態が深くなっていく状態であるかを、温湿度センサ112が検出した温度により判定してもよい。被介護者の睡眠状態が深くなっていく場合、被介護者の体温は徐々に下がっていく。そのため、コントローラ130は例えば、温湿度センサ112が検出した温度の時間の経過に伴う変化が予め定められた条件(例えば、温度が徐々に下がっていく、等)を満たす場合、被介護者の睡眠状態が深くなっていくと判定する。
【0065】
この場合、コントローラ130は、被介護者の睡眠状態が深い場合、又は、被介護者の睡眠状態が深くなっていくと判定した場合、被介護者の睡眠を妨げないよう、介護者への通知を行わない。一方、それ以外の場合(被介護者の睡眠状態が深くない場合であって、かつ、睡眠状態が深くなっていく途中でない場合)、コントローラ130は、介護者へ通知を行う。
【0066】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0067】
実施形態2は、出力部133が行う出力処理の内容が実施形態1と異なる。実施形態2では、出力部133は、被介護者の排泄を検知した場合、排泄が行われた旨を示す出力情報を、被介護者の睡眠状態に関する情報とともに出力する。
【0068】
図8は、コントローラ130が行う処理の流れを例示するフローチャートである。
図8に示す処理は、上述の実施形態1に係る
図5のステップS104~S106の処理に代えて、ステップS111及びS112の処理を含む。なお、一部のステップは並行して、又は順序を替えて実行されてもよい。
【0069】
ステップS111において、コントローラ130は、第2センサ120の検出値を用いて被介護者の睡眠状態を特定する。被介護者の睡眠状態の特定方法は上述した実施形態と同様である。すなわち、コントローラ130は、加速度センサ121により検出された加速度に基づいて被介護者が睡眠中であるかを特定するとともに、温湿度センサ112により検出された温度に基づいて被介護者の睡眠状態が深い状態であるかを特定する。コントローラ130は例えば、加速度センサ121の検出値が閾値以上である場合、被介護者が睡眠中でないと特定する。また、コントローラ130は例えば、温湿度センサ112の検出値が閾値以下である場合、被介護者の睡眠状態が深い状態であると判定する。
【0070】
ステップS112において、出力部133は、排泄が行われた旨を示す出力情報を、被介護者の睡眠状態に関する情報とともに出力する。出力情報は例えば、介護支援装置10を識別する識別情報、被介護者を示す情報(被介護者の氏名、部屋番号、等)、又は排泄があった旨を示す情報を含む。また、睡眠状態に関する情報は、被介護者の睡眠状態(覚醒中、深い睡眠状態、又は浅い睡眠状態)を示す情報である。
【0071】
出力部133は、出力情報を管理装置20に送信することにより出力情報を出力する。管理装置20は、介護支援装置10から出力情報を受信し、受信した出力情報に対応する介護者端末30へ、被介護者に関する情報を送信する。介護者端末30は、管理装置20から被介護者に関する情報を受信し、受信した情報に基づいて、排泄があった旨を示すメッセージ等を自装置のディスプレイに表示する等して、排泄があった旨を示す情報を出力する。介護者は、介護者端末30のディスプレイ等を視認することにより、被介護者が排泄した旨、及び被介護者の睡眠状態を把握する。
【0072】
本実施形態では、被介護者の排泄を検知した場合、被介護者の睡眠状態に関する情報が介護者端末30に送信される。介護者は、被介護者の睡眠状態を特定し、被介護者の睡眠状態が深い場合には排泄ケアを行わない、といったように、提供される情報を用いて排泄ケアのタイミングを決定する。これにより、本実施形態によれば、被介護者の睡眠状態を考慮したタイミングでの排泄ケアを支援することができる。
【0073】
上述の実施形態2において、コントローラ130は、被介護者の排泄を検知した場合、被介護者の睡眠状態が深い状態でなくなったタイミングで、出力情報を出力する第2出力処理を実行してもよい。この場合、コントローラ130は、被介護者の排泄を検知した場合であって、被介護者の睡眠状態が深い状態である場合、排泄を検知したタイミングにおいて出力情報を出力するとともに、被介護者の睡眠状態が深い状態でなくなったタイミングで、再度出力情報を出力する。
【0074】
この場合、被介護者が排泄した場合であって、被介護者の睡眠状態が深い状態である場合、介護支援装置10は、被介護者の睡眠状態が深い状態でなくなったタイミングで出力情報を出力する。これにより、被介護者の睡眠状態を考慮したタイミングでの排泄ケアを支援することができる。
【0075】
〔実施形態3〕
本発明の他の実施形態について以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0076】
図9は、コントローラ130が行う処理の流れを例示するフローチャートである。
図9に示す処理が上述した実施形態1に係る
図5の処理と異なる点は、ステップS103の処理の後に、ステップS121の処理を含む点である。なお、一部のステップは並行して、又は順序を替えて実行されてもよい。
【0077】
ステップS121において、コントローラ130は、緊急で処置する必要があるかを、ガスセンサ111の検出値及び温湿度センサ112の検出値により判定する。緊急で処置する必要がある場合とは、例えば、尿がオムツから溢れてしまった場合、又は、水様便が排泄された場合である。一方、緊急な処置が不要な場合とは例えば、排泄物が通常の硬さの便、又はおならの場合である。この判定は例えば、ガスセンサ111の検出値の時間的変化及び温湿度センサ112の検出値の時間的変化を解析することにより行われる。
【0078】
図10及び
図11は、緊急の処理が必要な排泄があった場合のガスセンサ111の検出値及び温湿度センサ112の湿度の検出値の波形を例示する図である。図において、横軸は時刻を示し、縦軸はセンサの検出値を示す。
図10は、時刻t21において排尿があり、尿がオムツから溢れてしまった場合における各センサの検出値の波形を示す。
図11は、時刻t31において水様便が排泄された場合における各センサの検出値の波形を示す。コントローラ130は、第1センサ110の検出値の波形が
図10又は
図11の波形に類似する形状であるかを判定することにより、緊急の処置が必要であるかを判定してもよい。
【0079】
また、コントローラ130は、緊急な処理が必要であるか否かを、学習済モデルを用いた機械学習により行ってもよい。この場合、コントローラ130又は他の装置(例えば、管理装置20)が、第1センサ110の信号値を表す検出データと、検出データに対応する判定結果との組を用いて、検出データと判定結果との相関関係を機械学習させた学習済モデルを生成する。その後、コントローラ130(又は他の装置)は、学習済モデルを用いて判定結果を推定する。学習済モデルは例えば、CNN構造を有するモデルで実現可能である。検出データは例えば、第1センサ110の信号値の波形を表す画像データ、又は、信号値の時系列データである。
【0080】
この場合、第1センサ110の信号値を表すデータが入力データとして学習済モデルに入力される。入力データは、学習済モデルの出力データ、すなわち、排泄物の有無の判定結果の形式に変換されて出力される。
【0081】
また、緊急の処理が必要であるかを判定する方法は、第1センサ110の検出値を用いて行われるものであればよく、種々の方法が適用され得る。例えば、第1センサ110の検出値が閾値以上である期間が所定期間以上継続したかを判定することにより行われてもよい。この場合、第1センサ110の検出値が閾値以上である期間が所定期間以上継続した場合に、コントローラ130は、緊急の処置が必要であると判定してもよい。
【0082】
図9の説明に戻る。ステップS121において緊急の処置が必要であると判定した場合(ステップS121;YES)、コントローラ130はステップS106の処理に進む。一方、緊急の処置が必要でないと判定した場合(ステップS121;NO)、コントローラ130はステップS104の処理に進む。
【0083】
ステップS106において、コントローラ130は出力情報を出力する。出力情報は例えば、介護支援装置10を識別する識別情報、被介護者を示す情報(被介護者の氏名、部屋番号、等)、排泄があった旨を示す情報、緊急の処理が必要であるか否かを示す情報、及び、排泄された便又は尿の特徴(例えば、水様便)を示す情報を含む。
【0084】
コントローラ130は、出力情報を管理装置20に送信することにより、出力情報を出力する。管理装置20は、介護支援装置10から出力情報を受信し、受信した出力情報に対応する介護者端末30へ、被介護者に関する情報を送信する。介護者端末30は、管理装置20から被介護者に関する情報を受信し、受信した情報に基づいて、排泄があった旨を示すメッセージ等を自装置のディスプレイに表示する等して、被介護者に関する情報を出力する。
【0085】
本実施形態では、被介護者の排泄について緊急の処置が必要である場合に、被介護者の睡眠状態が深い状態であるか否かに関わらず、介護者へ通知が行われる。そのため、緊急の処置が必要である場合の排泄ケアを支援することができる。
【0086】
〔実施形態4〕
本発明の他の実施形態について以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0087】
実施形態4は、出力部133が行う出力処理の内容が、上述の実施形態1と異なっている。実施形態3において、出力部133は、出力処理において、被介護者の排泄が検知されてから予め定められた期間(以下「期間T1」という)が経過した後、出力情報の出力を行う。すなわち、出力部113は、期間T1が経過するまで、出力情報の出力を行わない。例えば、出力部133は、特定部132を制御し、被介護者の排泄が検知されてから期間T1が経過するまで待機し、期間T1が経過してから睡眠状態の判定処理を行わせる。
【0088】
図12は、コントローラ130が行う処理の流れを例示するフローチャートである。
図12に示す処理は、上述の実施形態1に係る
図5のステップS103とS104との間に、ステップS131の処理を含む。なお、一部のステップは並行して、又は順序を替えて実行されてもよい。
【0089】
ステップS131において、コントローラ130は被介護者の排泄が検知されてから期間T1が経過したかを判定する。期間T1が経過している場合(ステップS131;YES)、コントローラ130はステップS104の処理に進む。一方、期間T1が経過していない場合(ステップS131;NO)、コントローラ130はステップS107の処理に進む。
【0090】
実施形態4では、介護支援装置10は、排泄の直後に被介護者の体の動きがあったとしても、出力情報を出力しない。例えば被介護者が睡眠中に排泄を行い、この排泄に伴う体動が発生した場合であっても、実施形態4では介護者端末30への通知が行われない。すなわち、実施形態4では、被介護者が排泄に伴って体を動かした場合であっても、被介護者が深い睡眠状態でないと誤って判定されてしまうことが防止される。
【0091】
〔変形例〕
上述の実施形態1では、第1センサとしてガスセンサ111及び温湿度センサ112が用いられる構成を例示したが、第1センサは上述した実施形態で示したものに限られない。第1センサは排泄の有無の判定に用いられる情報を検出するものであればよく、例えば、ガスの成分を検出するセンサ、又は、パッドの重量変化を検知するセンサであってもよい。また、第1センサとして用いられるセンサの数は1つであってもよく、複数であってもよい。また、介護支援装置10がひとつの種類のセンサを複数備えていてもよい。例えば、介護支援装置10が複数のガスセンサを備えていてもよい。
【0092】
上述の実施形態1では、第2センサとして温湿度センサ112及び加速度センサ121が用いられる構成を例示したが、第2センサは上述した実施形態で示したものに限られない。第2センサは、被介護者の睡眠状態に関する情報を検出するものであればよく、例えば、被介護者の動きを検知する赤外線センサ、又は被介護者の呼吸の強弱を検知するセンサであってもよい。
【0093】
上述の実施形態では、筐体170が開口部170a~170dを有する場合の構成を例示したが、開口部の数は上述した実施形態で示したものに限られない。例えば、介護支援装置10の筐体は、1つの開口部を有していてもよい。
【0094】
上述の実施形態1では、
図2に例示したように、介護支援装置10が被介護者に装着される小型のセンサモジュールである場合を説明した。介護支援装置10の構成は上述した実施形態で示したものに限られない。例えば、複数の装置が協働することにより上述の実施形態に係る介護支援装置10の各機能が実現される構成であってもよい。より具体的には例えば、ガスセンサと温湿度センサとがそれぞれ別体の装置に設けられていてもよい。また、例えば、被介護者が入居する室内に赤外線センサ及びガスセンサを設置し、介護支援装置10が、これらのセンサの検出値から被介護者の睡眠状態及び排泄の有無を特定してもよい。
【0095】
〔ソフトウェアによる実現例〕
介護支援装置10の制御ブロック(特に検知部131、特定部132、及び出力部133)は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、ソフトウェアによって実現してもよい。
【0096】
後者の場合、介護支援装置10は、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するコンピュータを備えている。このコンピュータは、例えば1つ以上のプロセッサを備えていると共に、上記プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を備えている。そして、上記コンピュータにおいて、上記プロセッサが上記プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。上記プロセッサとしては、例えばCPU(Central Processing Unit)を用いることができる。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、ROM(Read Only Memory)等の他、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などをさらに備えていてもよい。また、上記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明の一態様は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0097】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0098】
1 介護支援システム
10 介護支援装置
20 管理装置
30 介護者端末
40 中継装置
110 第1センサ
111 ガスセンサ
112 温湿度センサ
120 第2センサ
121 加速度センサ
130 コントローラ
131 検知部
132 特定部
133 出力部
140 通信モジュール
150 電源
160 基板
170 筐体
170a、170b、170c、170d 開口部