(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-14
(45)【発行日】2024-06-24
(54)【発明の名称】熱処理装置および熱処理システム
(51)【国際特許分類】
H01L 21/31 20060101AFI20240617BHJP
【FI】
H01L21/31 E
(21)【出願番号】P 2020020874
(22)【出願日】2020-02-10
【審査請求日】2022-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100108523
【氏名又は名称】中川 雅博
(74)【代理人】
【識別番号】100098305
【氏名又は名称】福島 祥人
(74)【代理人】
【識別番号】100125704
【氏名又は名称】坂根 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100187931
【氏名又は名称】澤村 英幸
(72)【発明者】
【氏名】福本 靖博
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 幸彦
(72)【発明者】
【氏名】寳壁 俊之
(72)【発明者】
【氏名】小畑 勇太郎
【審査官】河合 俊英
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-034230(JP,A)
【文献】特開2008-186934(JP,A)
【文献】特開2010-056561(JP,A)
【文献】特開2001-267312(JP,A)
【文献】特開2010-016215(JP,A)
【文献】特開2019-057672(JP,A)
【文献】特開2001-102370(JP,A)
【文献】特開平08-313855(JP,A)
【文献】特開平04-056146(JP,A)
【文献】特開2011-026830(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を加熱する加熱面を有する第1の加熱部と、
前記加熱面が露出するように前記第1の加熱部を収容する基台部と、
排気口を有し、前記加熱面の上方に処理空間を形成するように構成された蓋部と、
前記蓋部を加熱する第2の加熱部と、
前記蓋部と前記加熱面との間に前記処理空間が形成される第1の位置と前記処理空間が開放される第2の位置との間で前記蓋部を上下方向に移動させる駆動部とを備え、
前記蓋部は、前記処理空間の外周部を取り囲むように連続的または断続的に形成された外気導入口を有し、
前記蓋部の前記外気導入口および前記排気口は、前記蓋部が前記第1の位置にある場合に前記外気導入口から前記蓋部の下面に沿って前記排気口に向けて気体の流れが形成されるように構成され、
前記蓋部は、
前記処理空間の上部を覆うカバー部と、
前記処理空間の外周部を取り囲む周壁部とを含み、
前記排気口は前記カバー部に形成され、
前記外気導入口は前記周壁部に形成され、
前記周壁部は、
前記カバー部の外周部から下方に向かって形成された外壁部と、
前記外壁部の内側に設けられた内壁部と、
前記外壁部と前記内壁部とを連結する連結部材とを含み、
前記外気導入口は、前記外壁部の内周面と前記内壁部の外周面との間に形成された、熱処理装置。
【請求項2】
前記周壁部は、前記内壁部の下部に設けられ、前記処理空間の外周部を取り囲むように形成された当接部をさらに含み、
前記蓋部は、前記第1の位置にある場合に、前記当接部の下端面と前記基台部の上面との間に隙間が形成されないように構成された、請求項1記載の熱処理装置。
【請求項3】
前記第2の加熱部は、前記カバー部に設けられた、請求項1または2記載の熱処理装置。
【請求項4】
基板を加熱する加熱面を有する第1の加熱部と、
前記加熱面が露出するように前記第1の加熱部を収容する基台部と、
排気口を有し、前記加熱面の上方に処理空間を形成するように構成された蓋部と、
前記蓋部を加熱する第2の加熱部と、
前記蓋部と前記加熱面との間に前記処理空間が形成される第1の位置と前記処理空間が開放される第2の位置との間で前記蓋部を上下方向に移動させる駆動部と、
前記第2の位置において前記駆動部と前記蓋部とを接続し、前記第1の位置において前記駆動部と前記蓋部との接続が切り離されるように設けられた接続部とを備え、
前記蓋部は、前記処理空間の外周部を取り囲むように連続的または断続的に形成された外気導入口を有し、
前記蓋部の前記外気導入口および前記排気口は、前記蓋部が前記第1の位置にある場合に前記外気導入口から前記蓋部の下面に沿って前記排気口に向けて気体の流れが形成されるように構成された、熱処理装置。
【請求項5】
前記接続部は、前記駆動部により上下方向に移動する係合部と、
前記蓋部に設けられ、前記係合部が係合可能な被係合部とを含み、
前記第1の位置で前記被係合部への前記係合部の係合が外れ、前記第2の位置で重力により前記係合部が前記被係合部に係合する、請求項4記載の熱処理装置。
【請求項6】
前記第1の加熱部の前記加熱面には、基板の周縁部に重なる円環状の溝部が形成された、請求項1~
5のいずれか一項に記載の熱処理装置。
【請求項7】
前記第1の加熱部の前記加熱面には、基板の周縁部が前記溝部に重なるように基板を導くガイド部材が形成された、請求項
6記載の熱処理装置。
【請求項8】
前記ガイド部材は、前記溝部の外周部と部分的に重なるように配置された、請求項
7記載の熱処理装置。
【請求項9】
基板を加熱する加熱面を有する第1の加熱部と、
前記加熱面が露出するように前記第1の加熱部を収容する基台部と、
排気口を有し、前記加熱面の上方に処理空間を形成するように構成された蓋部と、
前記蓋部を加熱する第2の加熱部と、
前記蓋部と前記加熱面との間に前記処理空間が形成される第1の位置と前記処理空間が開放される第2の位置との間で前記蓋部を上下方向に移動させる駆動部とを備え、
前記蓋部は、前記処理空間の外周部を取り囲むように連続的または断続的に形成された外気導入口を有し、
前記蓋部の前記外気導入口および前記排気口は、前記蓋部が前記第1の位置にある場合に前記外気導入口から前記蓋部の下面に沿って前記排気口に向けて気体の流れが形成されるように構成され、
前記第1の加熱部の前記加熱面には、基板の周縁部に重なる円環状の溝部と、基板の周縁部が前記溝部に重なるように基板を導くガイド部材とが形成され、
前記ガイド部材は、
円柱形状を有する土台部と、
前記土台部の上部に設けられ、下方から上方に向かって直径が漸次減少する錐体部とを含む、熱処理装置。
【請求項10】
請求項1~
9のいずれか一項に記載の熱処理装置と、
前記熱処理装置の前記排気口から気体が導かれる排気管と、
前記排気管を通過した気体を気体成分と液体成分とに分離する気液分離部とを備える、熱処理システム。
【請求項11】
前記排気管内に設けられ、冷却媒体を循環させるための冷却配管をさらに備える、請求項
10記載の熱処理システム。
【請求項12】
前記冷却配管は、螺旋形状を有する、請求項
11記載の熱処理システム。
【請求項13】
前記気液分離部における気体成分の流れを規制する整流板をさらに備える、請求項
10~
12のいずれか一項に記載の熱処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を熱処理する熱処理装置および熱処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
塗布膜が形成された基板を熱処理するために熱処理装置が用いられる。例えば、特許文献1には、第1および第2のベークグループを備えた基板処理装置が記載されている。第1および第2のベークグループの各々は、5個のベークユニットにより構成される。各ベークユニットは、ホットプレート、蓋部材および排気支管を含む。
【0003】
ホットプレートには、処理対象の基板が載置される。ホットプレートは、載置された基板を所定の処理温度に加熱する。蓋部材は、ホットプレートを覆うように配置され、熱処理雰囲気の気体を基板の塗布膜から生じた昇華物とともに収集する。排気支管は、蓋部材に接続され、蓋部材により収集された排気ガスを排出する。
【0004】
第1のベークグループの各ベークユニットから排出された排気ガスは、複数の排気支管が接続された排気管を通して下流に流れ、第2のベークグループの各ベークユニットから排出された排気ガスと合流する。この場合、第1のベークグループの各ベークユニットから排出された排気ガスの温度が低下することが抑制される。これにより、排気管への昇華物の析出が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、ポリイミド膜等の比較的高い粘度を有する塗布膜が基板に形成されることがある。しかしながら、塗布膜の粘度が高い場合、特許文献1のベークユニットにおいては、基板の熱処理により塗布膜から発生する昇華物がベークユニットから十分に排出されないことがある。この場合、ベークユニットに滞留する昇華物が基板に付着することにより、基板に欠陥が発生する。
【0007】
本発明の目的は、塗布膜の粘度が高い場合でも昇華物を排出することが可能な熱処理装置および熱処理システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)第1の発明に係る熱処理装置は、基板を加熱する加熱面を有する第1の加熱部と、加熱面が露出するように第1の加熱部を収容する基台部と、排気口を有し、加熱面の上方に処理空間を形成するように構成された蓋部と、蓋部を加熱する第2の加熱部と、蓋部と加熱面との間に処理空間が形成される第1の位置と処理空間が開放される第2の位置との間で蓋部を上下方向に移動させる駆動部とを備え、蓋部は、処理空間の外周部を取り囲むように連続的または断続的に形成された外気導入口を有し、蓋部の外気導入口および排気口は、蓋部が第1の位置にある場合に外気導入口から蓋部の下面に沿って排気口に向けて気体の流れが形成されるように構成される。
【0009】
この熱処理装置においては、加熱面が露出するように基台部により第1の加熱部が収容される。蓋部が、駆動部により第1の位置と第2の位置との間で上下方向に移動される。第1の位置においては、蓋部と加熱面との間に処理空間が形成される。第2の位置においては、処理空間が開放される。処理空間において、第1の加熱部により基板が加熱されることにより、基板に形成された塗布膜から昇華物が発生する。このような場合でも、蓋部が第2の加熱部により加熱されることにより、発生した昇華物が結露となることが防止される。
【0010】
また、蓋部には処理空間の外周部を取り囲むように連続的または断続的に外気導入口が形成され、蓋部が第1の位置にある場合に、外気導入口から蓋部の下面に沿って排気口に向けて気体の流れが形成される。そのため、発生した昇華物が処理空間内に滞留することなく、導入された外気により排気口から押し出される。これにより、塗布膜の粘度が高い場合でも昇華物を排出することができる。
【0011】
また、蓋部は、処理空間の上部を覆うカバー部と、処理空間の外周部を取り囲む周壁部とを含み、排気口はカバー部に形成され、外気導入口は周壁部に形成される。この場合、外気導入口から蓋部の下面に沿って排気口に向かう気体の流れを容易に形成することができる。
【0012】
また、周壁部は、カバー部の外周部から下方に向かって形成された外壁部と、外壁部の内側に設けられた内壁部と、外壁部と内壁部とを連結する連結部材とを含み、外気導入口は、外壁部の内周面と内壁部の外周面との間に形成される。この場合、外気導入口から蓋部の下面に沿って排気口に向かう気体の流れをより容易に形成することができる。
【0013】
(2)周壁部は、内壁部の下部に設けられ、処理空間の外周部を取り囲むように形成された当接部をさらに含み、蓋部は、第1の位置にある場合に、当接部の下端面と基台部の上面との間に隙間が形成されないように構成されてもよい。この場合、当接部の下端面と基台部の上面との間から外気が導入されないので、外気導入口から蓋部の下面に沿って排気口に向かう大容量の気体の流れが形成される。これにより、昇華物をより効率よく排出することができる。
【0014】
(3)第2の加熱部は、カバー部に設けられてもよい。この場合、カバー部が加熱されるので、カバー部に昇華物が付着した場合でも、昇華物が凝縮して結露が発生することがより容易に防止される。
【0015】
(4)第2の発明に係る熱処理装置は、基板を加熱する加熱面を有する第1の加熱部と、加熱面が露出するように第1の加熱部を収容する基台部と、排気口を有し、加熱面の上方に処理空間を形成するように構成された蓋部と、蓋部を加熱する第2の加熱部と、蓋部と加熱面との間に処理空間が形成される第1の位置と処理空間が開放される第2の位置との間で蓋部を上下方向に移動させる駆動部と、第2の位置において駆動部と蓋部とを接続し、第1の位置において駆動部と蓋部との接続が切り離されるように設けられた接続部とを備え、蓋部は、処理空間の外周部を取り囲むように連続的または断続的に形成された外気導入口を有し、蓋部の外気導入口および排気口は、蓋部が第1の位置にある場合に外気導入口から蓋部の下面に沿って排気口に向けて気体の流れが形成されるように構成される。この構成によれば、蓋部のあおり角度の調整機構を設けない場合でも、蓋部が自重により基台部上に水平に載置される。そのため、蓋部と基台部との間に隙間が形成されない。これにより、蓋部と基台部との密閉度を容易に向上させることができる。その結果、外気導入口から導入される気体により昇華物をより効率よく排出することができる。
【0016】
(5)接続部は、駆動部により上下方向に移動する係合部と、蓋部に設けられ、係合部が係合可能な被係合部とを含み、第1の位置で被係合部への係合部の係合が外れ、第2の位置で重力により係合部が被係合部に係合してもよい。この場合、簡単な構成で、第2の位置において駆動部と蓋部とを接続し、第1の位置において駆動部と蓋部との接続を切り離すことができる。
【0017】
(6)第1の加熱部の加熱面には、基板の周縁部に重なる円環状の溝部が形成されてもよい。この構成によれば、熱処理により基板の表面の周縁部の塗布膜が裏面に回り込んだ場合でも、回り込んだ塗布膜が加熱面に付着することが防止される。
【0018】
(7)第1の加熱部の加熱面には、基板の周縁部が溝部に重なるように基板を導くガイド部材が形成されてもよい。この場合、基板の周縁部が溝部に重なるように加熱部上に基板を搬入することができる。
【0019】
(8)ガイド部材は、溝部の外周部と部分的に重なるように配置されてもよい。この場合、基板の周縁部がより確実に溝部に重なるように加熱部上に基板を搬入することができる。
【0020】
(9)第3の発明に係る熱処理装置は、基板を加熱する加熱面を有する第1の加熱部と、加熱面が露出するように第1の加熱部を収容する基台部と、排気口を有し、加熱面の上方に処理空間を形成するように構成された蓋部と、蓋部を加熱する第2の加熱部と、蓋部と加熱面との間に処理空間が形成される第1の位置と処理空間が開放される第2の位置との間で蓋部を上下方向に移動させる駆動部とを備え、蓋部は、処理空間の外周部を取り囲むように連続的または断続的に形成された外気導入口を有し、蓋部の外気導入口および排気口は、蓋部が第1の位置にある場合に外気導入口から蓋部の下面に沿って排気口に向けて気体の流れが形成されるように構成され、第1の加熱部の加熱面には、基板の周縁部に重なる円環状の溝部と、基板の周縁部が溝部に重なるように基板を導くガイド部材とが形成され、ガイド部材は、円柱形状を有する土台部と、土台部の上部に設けられ、下方から上方に向かって直径が漸次減少する錐体部とを含む。この場合、基板の周縁部がガイド部材に乗り上げたまま加熱部上に基板が搬入されることが防止される。
【0021】
(10)第4の発明に係る熱処理システムは、第1~第4のいずれかの発明に係る熱処理装置と、熱処理装置の排気口から気体が導かれる排気管と、排気管を通過した気体を気体成分と液体成分とに分離する気液分離部とを備える。
【0022】
この熱処理システムにおいては、上記の熱処理装置により、塗布膜の粘度が高い場合でも昇華物を排出することができる。また、熱処理装置の排気口から排気管に気体が導かれ、排気管を通過した気体が気液分離部により気体成分と液体成分とに分離される。この場合、気体成分と液体成分とを別個に回収することができる。また、液体成分が排気設備に導かれることが防止される。これにより、排気設備の保守の頻度を少なくするとともに、保守の周期を長くすることができる。
【0023】
(11)熱処理システムは、排気管内に設けられ、冷却媒体を循環させるための冷却配管をさらに備えてもよい。この場合、熱処理装置から排出された気体に含まれる昇華物が排気管内で冷却されることにより液化される。これにより、排気管を通過した気体を効率よく気体成分と液体成分とに分離することができる。
【0024】
(12)冷却配管は、螺旋形状を有してもよい。この場合、熱処理装置から排出された気体に含まれる昇華物が排気管内で十分に冷却されることにより、より効率よく液化することができる。
【0025】
(13)熱処理システムは、気液分離部における気体成分の流れを規制する整流板をさらに備えてもよい。この場合、気液分離部内を流れる気体成分の流速のばらつきが緩和される。そのため、気体成分が気液分離部内に滞留することが防止される。これにより、大容量の排気を行う場合でも、排気効率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、塗布膜の粘度が高い場合でも昇華物を排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る熱処理装置の構成を示す断面図である。
【
図2】本発明の一実施の形態に係る熱処理装置の構成を示す断面図である。
【
図4】
図1の熱処理装置を含む熱処理システムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(1)熱処理装置の構成
以下、本発明の実施の形態に係る熱処理装置および熱処理システムについて図面を用いて説明する。なお、以下の説明において、基板とは、半導体基板、液晶表示装置もしくは有機EL(Electro Luminescence)表示装置等のFPD(Flat Panel Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板または太陽電池用基板等をいう。
【0029】
図1および
図2は、本発明の一実施の形態に係る熱処理装置の構成を示す断面図である。
図1および
図2に示すように、熱処理装置100は、基台部10、加熱部20、蓋部30、加熱部40、排気支管50および昇降装置60を含む。基台部10は、底面部11および周壁部12を含む。底面部11は、例えば円板形状を有する。底面部11には、上下方向に貫通する複数(本例では3個)の貫通孔13が形成される。周壁部12は、例えば円筒形状を有し、底面部11の外周部から上方に突出する。
【0030】
加熱部20は、例えば円板形状を有するホットプレートを含み、加熱面21である上面が露出するように基台部10の底面部11および周壁部12により取り囲まれた空間内に収容される。加熱部20には、上下方向に貫通する複数の貫通孔22が形成される。複数の貫通孔22は、基台部10の複数の貫通孔13にそれぞれ対応する。
【0031】
加熱面21には、処理対象の基板Wを支持可能に構成された複数(本例では3個)の支持部材23が設けられる。
図1および
図2では、2個の支持部材23が現れている。各支持部材23は、例えばセラミックにより形成された半球状のプロキシミティボールであり、例えば100μmの高さを有する。
【0032】
加熱面21には、複数(本例では6個)のガイド部材24が加熱部20の外周に沿って略等間隔で設けられる。
図1および
図2では、4個のガイド部材24が現れている。また、加熱面21には、複数の支持部材23の上端部に支持された基板Wの周縁部に重なるように、円環形状を有する溝部25が形成される。溝部25の幅は例えば5mmであり、溝部25の深さは例えば1mmである。複数のガイド部材24および溝部25の詳細については後述する。
【0033】
蓋部30は、外気導入口31および排気口32を含み、加熱部20の加熱面21の上方に処理空間Vを形成する。外気導入口31は、処理空間Vの外周部を取り囲むように連続的または断続的に形成される。蓋部30は、処理空間Vが閉塞される閉塞位置と、処理空間Vが開放される開放位置との間で上下方向に移動可能に構成される。外気導入口31および排気口32は、蓋部30が閉塞位置にある場合に外気導入口31から蓋部30の下面に沿って排気口32に向けて気体の流れが形成されるように構成される。蓋部30の詳細については後述する。
【0034】
加熱部40は、シリコンラバーヒータ等の加熱素子を含み、蓋部30を例えば約100℃に加熱する。排気支管50は、蓋部30の排気口32に接続され、処理空間V内の雰囲気を図示しない排気設備に排出する。
【0035】
昇降装置60は、複数の昇降ピン61および駆動部62を含む。複数の昇降ピン61は、基台部10の複数の貫通孔13にそれぞれ対応するとともに、加熱部20の複数の貫通孔22にそれぞれ対応する。各昇降ピン61は、基台部10の下方から対応する貫通孔13,22に挿通され、上昇位置と下降位置との間で上下方向に移動可能に構成される。上昇位置は、各昇降ピン61の上端部が加熱部20の加熱面21よりも上方にある位置である。下降位置は、各昇降ピン61の上端部が加熱部20の加熱面21よりも下方にある位置である。
【0036】
駆動部62は、例えばエアシリンダを含み、複数の昇降ピン61を上昇位置と下降位置との間で上下方向に移動させる。また、駆動部62は、蓋部30を閉塞位置と開放位置との間で上下方向に移動させる。
図1の例では、複数の昇降ピン61は上昇位置にあり、蓋部30は開放位置にある。
図2の例では、複数の昇降ピン61は下降位置にあり、蓋部30は閉塞位置にある。本例では、開放位置においては駆動部62と蓋部30とが接続され、閉塞位置においては駆動部62と蓋部30との接続が切り離される。昇降装置60の詳細については後述する。
【0037】
(2)蓋部および昇降装置の構成
図1および
図2に示すように、蓋部30は、内蓋部70および外蓋部80を含む。内蓋部70は、カバー部71および周壁部72を含む。カバー部71は、処理空間Vの上部を覆うように配置される。本例では、カバー部71は、傘状を有し、中央の頂点部から外周部に向かって下方に傾斜する。排気口32は、カバー部71の頂点に設けられる。加熱部40は、排気口32を取り囲むようにカバー部71の上面に取り付けられる。カバー部71の下面は、例えばポリテトラフルオロエチレン等の樹脂により被覆される。
【0038】
周壁部72は、処理空間Vの外周部を取り囲むように設けられ、外壁部72a、内壁部72bおよび当接部72cを含む。外壁部72aは、例えば円筒形状を有し、カバー部71の外周部から下方に突出する。内壁部72bは、例えば略円筒形状を有する整流部材であり、外壁部72aの内側に配置される。外壁部72aの内周面と内壁部72bの外周面との間に、全周にわたって外気が導入可能な外気導入口31が形成される。
【0039】
当接部72cは、例えば円環形状を有し、ポリテトラフルオロエチレン等の樹脂により形成される。当接部72cは、内壁部72bの下部に接合されるとともに、等角度間隔に設けられた複数の連結部材73により外壁部72aに固定される。蓋部30が閉塞位置にあるときには、当接部72cの下端面は基台部10の上面と当接する。一方、蓋部30が開放位置にあるときには、当接部72cの下端面は基台部10の上面と離間する。
【0040】
外蓋部80は、カバー部81および周壁部82を含み、図示しない締結部材により内蓋部70に締結される。カバー部81は、内蓋部70のカバー部71の上方を覆うように配置される。本例では、カバー部81は、傘状を有し、中央の頂点部から外周部に向かって下方に傾斜する。周壁部82は、例えば円筒形状を有し、内蓋部70の外壁部72aを取り囲むようにカバー部81の外周部から下方に突出する。カバー部81の頂点部には、例えば円形状の開口部83が形成される。排気支管50は、外蓋部80の開口部83を通して、上方から内蓋部70の排気口32に接続される。
【0041】
昇降装置60は、複数の昇降ピン61および駆動部62に加えて、アーム部63、一対のアーム部64および複数(本例では4個)のボルト部材65をさらに含む。
図1および
図2では、2個のボルト部材65が現れている。アーム部63は水平に延びる。アーム部63の両端部は下方に屈曲し、外蓋部80のカバー部81に取り付けられる。本例では、アーム部63は、昇降装置60の駆動部62に係合される被係合部として用いられる。
【0042】
一対のアーム部64および複数のボルト部材65は、アーム部63に係合する係合部として用いられる。上記の係合部と被係合部とにより、駆動部62と蓋部30とを接続するための接続部が構成される。
【0043】
具体的には、紙面の前後方向に並ぶように配置された2個のボルト部材65が、下方からアーム部63の水平部分の一端部を貫通した状態で、一方のアーム部64の下部に螺合される。同様に、紙面の前後方向に並ぶように配置された他の2個のボルト部材65が、下方からアーム部63の水平部分の他端部を貫通した状態で、他方のアーム部64の下部に螺合される。
【0044】
上記の接続によれば、開放位置においては、アーム部63の水平部分の下面が複数のボルト部材65の頭部に接触する。したがって、アーム部63が重力により複数のボルト部材65に係合される。一方、閉塞位置においては、アーム部63の水平部分の下面が複数のボルト部材65の頭部から離間することにより、アーム部63への複数のボルト部材65の係合が外れる。なお、本例では、複数の昇降ピン61および一対のアーム部64は共通の駆動部62により移動されるが、別個の駆動部により移動されてもよい。
【0045】
(3)熱処理装置の動作
以下、
図1および
図2を用いて熱処理装置100の動作を説明する。熱処理装置100への基板Wの搬入時には、
図1に示すように、複数の昇降ピン61が上昇位置に移動されるとともに、蓋部30が開放位置に移動される。これにより、処理空間Vが開放される。この状態で、図示しない基板搬送装置から複数の昇降ピン61の上端部に基板Wが渡される。本例では、基板Wには、ポリイミド膜等の比較的高い粘度を有する塗布膜が形成されている。
【0046】
次に、
図2に示すように、複数の昇降ピン61が下降位置に移動されるとともに、蓋部30が閉塞位置に移動される。この場合、蓋部30の当接部72cの下端面が基台部10の上面に当接することにより、処理空間Vが閉塞される。また、複数の昇降ピン61の上端部から複数の支持部材23の上端部に基板Wが渡される。
【0047】
本例では、蓋部30が下降することにより閉塞位置に移動した後、一対のアーム部64が1mm程度さらに下降する。そのため、上記のように、アーム部63への複数のボルト部材65の係合が外れる。したがって、蓋部30のあおり角度の調整機構を設けない場合でも、蓋部30が自重により基台部10上に水平に載置される。これにより、当接部72cの下端面と基台部10の上面との間に隙間が形成されないように、蓋部30と基台部10との密閉度を容易に向上させることができる。
【0048】
図3は、ガイド部材24の拡大断面図である。
図3には、1つのガイド部材24が示されるが、他のガイド部材24も
図3のガイド部材24と同様の構成を有する。
図3に示すように、各ガイド部材24は、土台部24aおよび錐体部24bを含む。
図3では、土台部24aと錐体部24bとの境界が点線で示される。土台部24aは、円柱形状を有する。錐体部24bは、土台部24aの上部に設けられ、下方から上方に向かって直径が漸次減少する円錐台形状を有する。この場合、錐体部24bの側面は傾斜する。
【0049】
熱処理装置100への基板Wの搬入時に、加熱部20の加熱面21の中心と基板Wの中心とが比較的大きくずれていることがある。このような場合、搬入された基板Wは、いずれかのガイド部材24の錐体部24bの傾斜した側面に接触することにより、当該錐体部24bの側面に沿って下方に導かれる。これにより、加熱面21の中心と基板Wの中心とが近づいた状態で基板Wが複数の支持部材23の上端部に支持される。
【0050】
本例では、各ガイド部材24は、溝部25の外周部と部分的に重なるように配置される。そのため、基板Wの周縁部が溝部25と確実に重なるように各ガイド部材24により基板Wを導くことができる。また、各ガイド部材24の土台部24aは円柱形状を有する。したがって、基板Wの周縁部がいずれかのガイド部材24に乗り上げたまま複数の支持部材23の上端部に支持されることが防止される。
【0051】
続いて、加熱部20により基板Wの塗布膜に熱処理が行われる。塗布膜の粘度が高い場合には、熱処理により基板Wの表面の周縁部の塗布膜が裏面に回り込むことがある。この場合でも、本例では、上記のように、複数の支持部材23の上端部に支持された基板Wの周縁部は、加熱部20の加熱面21に形成された溝部25に重なる。そのため、基板Wの裏面に回り込んだ塗布膜が加熱面21に付着することが防止される。
【0052】
熱処理においては、
図2に太い一点鎖線の矢印で示すように、基板Wの塗布膜から昇華物が発生し、上昇する。ここで、上昇した昇華物が内蓋部70のカバー部71の下面に付着して冷却されると、結露が発生することがある。発生した結露が基板W上に落下すると、基板Wに欠陥が発生する。また、結露が基板Wの周辺に落下すると、熱処理装置100内が汚染する。
【0053】
そこで、内蓋部70が加熱部40により加熱される。これにより、塗布膜から発生した昇華物が凝縮して結露が発生することが防止される。また、処理空間V内の雰囲気が排気口32を通して排気支管50により排出される。本例では、内蓋部70の外壁部72aの内周面と内壁部72bの外周面との間の外気導入口31を通して熱処理装置100の外部から処理空間V内に外気が導入される。この場合、
図2に太い二点鎖線の矢印で示すように、内蓋部70のカバー部71の下面に沿って外気が導かれる。
【0054】
上記の構成によれば、塗布膜の粘度が高い場合でも、
図2に太い点線の矢印で示すように、塗布膜から発生した昇華物が処理空間V内の雰囲気とともに排気支管50を通して排出される。特に、本例では、基台部10と蓋部30との間が密閉されるので、基台部10と蓋部30との間から外気を導入させることなく、外気導入口31を通して大量の外気を処理空間V内に導入させることが可能になる。これにより、塗布膜から発生した昇華物を処理空間V内の雰囲気とともに排気支管50を通して効率よく排出することができる。
【0055】
熱処理の終了後、
図1に示すように、複数の昇降ピン61が上昇位置に移動されるとともに、蓋部30が開放位置に移動される。本例では、蓋部30が閉塞位置にある状態で一対のアーム部64が1mm程度上昇することにより、アーム部63が複数のボルト部材65に係合される。この状態で、一対のアーム部64がさらに上昇することにより、蓋部30が開放位置に移動され、処理空間Vが開放される。その後、複数の昇降ピン61の上端部から図示しない基板搬送装置に基板Wが渡されることにより、熱処理装置100から基板Wが搬出される。
【0056】
(4)熱処理システム
図4は、
図1の熱処理装置100を含む熱処理システムの構成を示す図である。
図4に示すように、熱処理システム200は、複数(本例では3個)の熱処理装置100、制御部110、排気管120、冷却配管130および気液分離部140を備える。複数の熱処理装置100は、上下方向に積層するように配置される。制御部110は、CPU(中央演算処理装置)を含み、各熱処理装置100の動作を制御する。
【0057】
排気管120は、上下方向に延びるように設けられる。排気管120には、複数の熱処理装置100の排気支管50が接続される。冷却配管130は、螺旋状にかつ上下方向に延びるように排気管120内に設けられる。冷却配管130の一端部および他端部は、排気管120から引き出され、チラー等の図示しない冷却媒体供給部に接続される。
図4に白抜きの矢印で示すように、冷却配管130内には純水等の冷却媒体が循環される。
【0058】
気液分離部140は、内部空間V0を有し、当該内部空間V0において気体と液体とを分離可能に排気管120の下部に接続される。気液分離部140には、内部空間V0の下部を除いて内部空間V0を分離するように上下方向に延びる整流板141が設けられる。これにより、内部空間V0は、整流板141の一方の面に接する上流空間V1と、整流板141の他方の面に接する下流空間V2とに分離される。上流空間と下流空間V2とは、下部において互いに連通する。
【0059】
気液分離部140には、下流空間V2につながる排気管142が設けられる。排気管142は、図示しない排気設備に接続される。また、気液分離部140には、下流空間V2につながりかつ排気管142の下方に位置する排液管143が設けられる。排液管143は、図示しない排液設備に接続される。
【0060】
以下、熱処理システム200の動作について説明する。各熱処理装置100において基板Wの塗布膜から発生した昇華物を含む気体は、
図4に太い実線の矢印で示すように、排気支管50から排出され、排気管120に導入される。排気管120に導入された気体は、冷却配管130を流れる冷却媒体により冷却される。この場合、気体の一部は、凝縮することにより液体成分(結露)となる。液体成分は、主として基板Wの塗布膜の原料(本例ではポリイミド)を含む。
【0061】
排気管120内における気体成分および液体成分は、
図4に太い点線の矢印で示すように、排気管120を上方から下方に流れ、気液分離部140に導かれる。気液分離部140に導かれた気体成分は、
図4に太い一点鎖線の矢印で示すように、整流板141により整流されつつ上流空間V1を下方に流れた後、下流空間V2を上方に流れ、排気管142を通して排気設備に回収される。一方、気液分離部140に導かれた液体成分は、内部空間V0の下部に貯留された後、
図4に太い二点鎖線の矢印で示すように、排液管143を通して排液設備に回収される。
【0062】
上記の構成によれば、各熱処理装置100から排出される気体を気液分離部140により気体成分と液体成分とに分離して別個に回収することができる。内部空間V0においては、整流板141により気体成分の流速のばらつきが緩和される。そのため、気体成分が内部空間V0に滞留することが防止される。これにより、大容量の排気を行う場合でも、排気効率を向上させることができる。
【0063】
また、内部空間V0においては、整流板141により気体成分の流れが規制されるので、気体成分の流速が低下する。この場合、内部空間V0の下部に貯留された液体成分が巻き上げられることおよび飛散することが防止される。したがって、液体成分が排気管142を通って排気設備に流れることがほとんどない。その結果、排気設備の保守の頻度を少なくするとともに、保守の周期を長くすることができる。
【0064】
(5)効果
本実施の形態に係る熱処理装置100においては、加熱面21が露出するように基台部10により加熱部20が収容される。蓋部30が、駆動部62により閉塞位置と開放位置との間で上下方向に移動される。閉塞位置においては、蓋部30と加熱面21との間に処理空間Vが形成される。開放位置においては、処理空間Vが開放される。処理空間Vにおいて、加熱部20により基板Wが加熱されることにより、基板Wに形成された塗布膜から昇華物が発生する。このような場合でも、蓋部30が加熱部40により加熱されることにより、発生した昇華物が結露となることが防止される。
【0065】
また、蓋部30には処理空間Vの外周部を取り囲むように連続的または断続的に外気導入口31が形成され、蓋部30が閉塞位置にある場合に、外気導入口31から蓋部30の下面に沿って排気口32に向けて気体の流れが形成される。特に、本実施の形態においては、処理空間Vの外周部を取り囲む内蓋部70の周壁部72に外気導入口31が形成され、処理空間Vの上部を覆う内蓋部70のカバー部71に排気口32が形成される。この場合、外気導入口31から蓋部30の下面に沿って排気口32に向かう気体の流れを容易に形成することができる。
【0066】
上記の構成によれば、発生した昇華物が処理空間V内に滞留することなく、導入された外気により排気口32から押し出される。これにより、塗布膜の粘度が高い場合でも昇華物を排出することができる。
【0067】
(6)他の実施の形態
(a)上記実施の形態において、蓋部30は外蓋部80を含むが、実施の形態はこれに限定されない。蓋部30が昇降装置60により上下方向に移動可能に構成される限り、蓋部30は外蓋部80を含まなくてもよい。
【0068】
また、内蓋部70は内壁部72bおよび当接部72cを含むが、実施の形態はこれに限定されない。外壁部72aに外気導入口31が形成され、当該外気導入口31からカバー部71の下面に沿って排気口32に向かう気体の流れを形成可能である場合、内蓋部70は内壁部72bおよび当接部72cを含まなくてもよい。
【0069】
あるいは、内壁部72bおよび当接部72cは、上下方向に移動可能に内蓋部70に設けられずに、基台部10の上面に固定されてもよい。この場合でも、外壁部72aの内周面と内壁部72bの外周面との間に外気導入口31を形成することが可能である。この構成においては、蓋部30が閉塞位置に移動した場合でも、蓋部30は基台部10と当接しない。
【0070】
(b)上記実施の形態において、加熱部40が内蓋部70のカバー部71の上面に設けられるが、実施の形態はこれに限定されない。加熱部40は、内蓋部70を十分に加熱可能である場合には、外蓋部80のカバー部81の下面等の他の部材に設けられてもよい。
【0071】
(c)上記実施の形態において、開放位置で駆動部62と蓋部30とを接続し、閉塞位置で駆動部62と蓋部30との接続を切り離す接続部が設けられるが、実施の形態はこれに限定されない。蓋部30が十分に水平にアーム部63に取り付けられている場合、蓋部30のあおり角度の調整機構が設けられている場合、または蓋部30が基台部10と当接しないように構成されている場合等には、接続部は設けられなくてもよい。
【0072】
(d)上記実施の形態において、加熱部20の加熱面21に複数のガイド部材24および溝部25が形成されるが、実施の形態はこれに限定されない。十分に高い位置合わせの精度で熱処理装置100に基板Wが搬入される場合には、加熱部20の加熱面21に複数のガイド部材24が設けられなくてもよい。また、基板Wの裏面に回り込んだ塗布膜が加熱部20に付着しない場合には、加熱部20の加熱面21に溝部25が形成されなくてもよい。
【0073】
(e)上記実施の形態において、冷却配管130が排気管120内で螺旋状を有するが、実施の形態はこれに限定されない。気体が排気管120内で十分に冷却される場合には、冷却配管130は排気管120内で直線状等の他の形状を有してもよい。また、気体が排気管120内で十分に自然冷却される場合には、冷却配管130は設けられなくてもよい。
【0074】
(f)上記実施の形態において、気液分離部140に整流板141が設けられるが、実施の形態はこれに限定されない。気液分離部140における気体成分の流速が比較的小さい場合には、気液分離部140に整流板141が設けられなくてもよい。
【0075】
(g)上記実施の形態において、熱処理システム200は複数の熱処理装置100を含むが、実施の形態はこれに限定されない。熱処理システム200は1個の熱処理装置100を含んでもよい。
【0076】
(h)上記実施の形態において、熱処理システム200は各熱処理装置100を制御する制御部110を含むが、実施の形態はこれに限定されない。各熱処理装置100が熱処理システム200の外部の情報処理装置により制御可能に構成されている場合には、熱処理システム200は制御部110を含まなくてもよい。
【0077】
(7)請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応関係
以下、請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応の例について説明する。上記実施の形態においては、基板Wが基板の例であり、加熱面21が加熱面の例であり、加熱部20,40がそれぞれ第1および第2の加熱部の例であり、基台部10が基台部の例である。排気口32が排気口の例であり、処理空間Vが処理空間の例であり、蓋部30が蓋部の例であり、駆動部62が駆動部の例であり、外気導入口31が外気導入口の例である。
【0078】
熱処理装置100が熱処理装置の例であり、カバー部71がカバー部の例であり、周壁部72が周壁部の例であり、外壁部72aが外壁部の例であり、内壁部72bが内壁部の例である。連結部材73が連結部材の例であり、当接部72cが当接部の例であり、アーム部63,64およびボルト部材65が接続部の例であり、アーム部64およびボルト部材65が係合部の例である。
【0079】
アーム部63が被係合部の例であり、溝部25が溝部の例であり、ガイド部材24がガイド部材の例であり、土台部24aが土台部の例であり、錐体部24bが錐体部の例であり、排気管120が排気管の例である。気液分離部140が気液分離部の例であり、熱処理システム200が熱処理システムの例であり、冷却配管130が冷却配管の例であり、整流板141が整流板の例である。
(8)参考形態
(8-1)第1の参考形態に係る熱処理装置は、基板を加熱する加熱面を有する第1の加熱部と、加熱面が露出するように第1の加熱部を収容する基台部と、排気口を有し、加熱面の上方に処理空間を形成するように構成された蓋部と、蓋部を加熱する第2の加熱部と、蓋部と加熱面との間に処理空間が形成される第1の位置と処理空間が開放される第2の位置との間で蓋部を上下方向に移動させる駆動部とを備え、蓋部は、処理空間の外周部を取り囲むように連続的または断続的に形成された外気導入口を有し、蓋部の外気導入口および排気口は、蓋部が第1の位置にある場合に外気導入口から蓋部の下面に沿って排気口に向けて気体の流れが形成されるように構成される。
この熱処理装置においては、加熱面が露出するように基台部により第1の加熱部が収容される。蓋部が、駆動部により第1の位置と第2の位置との間で上下方向に移動される。第1の位置においては、蓋部と加熱面との間に処理空間が形成される。第2の位置においては、処理空間が開放される。処理空間において、第1の加熱部により基板が加熱されることにより、基板に形成された塗布膜から昇華物が発生する。このような場合でも、蓋部が第2の加熱部により加熱されることにより、発生した昇華物が結露となることが防止される。
また、蓋部には処理空間の外周部を取り囲むように連続的または断続的に外気導入口が形成され、蓋部が第1の位置にある場合に、外気導入口から蓋部の下面に沿って排気口に向けて気体の流れが形成される。そのため、発生した昇華物が処理空間内に滞留することなく、導入された外気により排気口から押し出される。これにより、塗布膜の粘度が高い場合でも昇華物を排出することができる。
(8-2)蓋部は、処理空間の上部を覆うカバー部と、処理空間の外周部を取り囲む周壁部とを含み、排気口はカバー部に形成され、外気導入口は周壁部に形成されてもよい。この場合、外気導入口から蓋部の下面に沿って排気口に向かう気体の流れを容易に形成することができる。
(8-3)周壁部は、カバー部の外周部から下方に向かって形成された外壁部と、外壁部の内側に設けられた内壁部と、外壁部と内壁部とを連結する連結部材とを含み、外気導入口は、外壁部の内周面と内壁部の外周面との間に形成されてもよい。この場合、外気導入口から蓋部の下面に沿って排気口に向かう気体の流れをより容易に形成することができる。
(8-4)周壁部は、内壁部の下部に設けられ、処理空間の外周部を取り囲むように形成された当接部をさらに含み、蓋部は、第1の位置にある場合に、当接部の下端面と基台部の上面との間に隙間が形成されないように構成されてもよい。この場合、当接部の下端面と基台部の上面との間から外気が導入されないので、外気導入口から蓋部の下面に沿って排気口に向かう大容量の気体の流れが形成される。これにより、昇華物をより効率よく排出することができる。
(8-5)第2の加熱部は、カバー部に設けられてもよい。この場合、カバー部が加熱されるので、カバー部に昇華物が付着した場合でも、昇華物が凝縮して結露が発生することがより容易に防止される。
(8-6)熱処理装置は、第2の位置において駆動部と蓋部とを接続し、第1の位置において駆動部と蓋部との接続が切り離されるように設けられた接続部をさらに備えてもよい。この構成によれば、蓋部のあおり角度の調整機構を設けない場合でも、蓋部が自重により基台部上に水平に載置される。そのため、蓋部と基台部との間に隙間が形成されない。これにより、蓋部と基台部との密閉度を容易に向上させることができる。その結果、外気導入口から導入される気体により昇華物をより効率よく排出することができる。
(8-7)接続部は、駆動部により上下方向に移動する係合部と、蓋部に設けられ、係合部が係合可能な被係合部とを含み、第1の位置で被係合部への係合部の係合が外れ、第2の位置で重力により係合部が被係合部に係合してもよい。この場合、簡単な構成で、第2の位置において駆動部と蓋部とを接続し、第1の位置において駆動部と蓋部との接続を切り離すことができる。
(8-8)第1の加熱部の加熱面には、基板の周縁部に重なる円環状の溝部が形成されてもよい。この構成によれば、熱処理により基板の表面の周縁部の塗布膜が裏面に回り込んだ場合でも、回り込んだ塗布膜が加熱面に付着することが防止される。
(8-9)第1の加熱部の加熱面には、基板の周縁部が溝部に重なるように基板を導くガイド部材が形成されてもよい。この場合、基板の周縁部が溝部に重なるように加熱部上に基板を搬入することができる。
(8-10)ガイド部材は、溝部の外周部と部分的に重なるように配置されてもよい。この場合、基板の周縁部がより確実に溝部に重なるように加熱部上に基板を搬入することができる。
(8-11)ガイド部材は、円柱形状を有する土台部と、土台部の上部に設けられ、下方から上方に向かって直径が漸次減少する錐体部とを含んでもよい。この場合、基板の周縁部がガイド部材に乗り上げたまま加熱部上に基板が搬入されることが防止される。
(8-12)第2の参考形態に係る熱処理システムは、第1の参考形態に係る熱処理装置と、熱処理装置の排気口から気体が導かれる排気管と、排気管を通過した気体を気体成分と液体成分とに分離する気液分離部とを備える。
この熱処理システムにおいては、上記の熱処理装置により、塗布膜の粘度が高い場合でも昇華物を排出することができる。また、熱処理装置の排気口から排気管に気体が導かれ、排気管を通過した気体が気液分離部により気体成分と液体成分とに分離される。この場合、気体成分と液体成分とを別個に回収することができる。また、液体成分が排気設備に導かれることが防止される。これにより、排気設備の保守の頻度を少なくするとともに、保守の周期を長くすることができる。
(8-13)熱処理システムは、排気管内に設けられ、冷却媒体を循環させるための冷却配管をさらに備えてもよい。この場合、熱処理装置から排出された気体に含まれる昇華物が排気管内で冷却されることにより液化される。これにより、排気管を通過した気体を効率よく気体成分と液体成分とに分離することができる。
(8-14)冷却配管は、螺旋形状を有してもよい。この場合、熱処理装置から排出された気体に含まれる昇華物が排気管内で十分に冷却されることにより、より効率よく液化することができる。
(8-15)熱処理システムは、気液分離部における気体成分の流れを規制する整流板をさらに備えてもよい。この場合、気液分離部内を流れる気体成分の流速のばらつきが緩和される。そのため、気体成分が気液分離部内に滞留することが防止される。これにより、大容量の排気を行う場合でも、排気効率を向上させることができる。
【符号の説明】
【0080】
10…基台部,11…底面部,12,72,82…周壁部,13,22…貫通孔,20,40…加熱部,23…支持部材,24…ガイド部材,24a…土台部,24b…錐体部,25…溝部,30…蓋部,31…外気導入口,32…排気口,50…排気支管,60…昇降装置,61…昇降ピン,62…駆動部,63,64…アーム部,65…ボルト部材,70…内蓋部,71,81…カバー部,72a…外壁部,72b…内壁部,72c…当接部,73…連結部材,80…外蓋部,83…開口部,100…熱処理装置,110…制御部,120,142…排気管,130…冷却配管,140…気液分離部,141…整流板,143…排液管,200…熱処理システム,V…処理空間,V0…内部空間,V1…上流空間,V2…下流空間,W…基板