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特許7504627把持装置の制御装置、及び、把持装置の制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-14
(45)【発行日】2024-06-24
(54)【発明の名称】把持装置の制御装置、及び、把持装置の制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/08 20060101AFI20240617BHJP
【FI】
B25J15/08 D
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020036537
(22)【出願日】2020-03-04
(65)【公開番号】P2021137903
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2023-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤原 弘章
【審査官】稲垣 浩司
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-51575(JP,A)
【文献】特開2019-111615(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 - 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
把持装置の吸着部で把持対象の物品を吸着した状態を維持させながら、前記吸着部に対して一方側にあり第1駆動部に連結された第1指部と、前記吸着部を挟んで前記第1指部と反対側の他方側にある第2指部とが前記物品に当接し、前記物品を挟むように前記第1駆動部を第1次トルクにより駆動させ、
前記吸着部で前記物品を吸着した状態を維持させながら、前記第1次トルクにて前記第1指部及び前記第2指部が前記物品に当接した状態で前記第1次トルクよりも大きい第2次トルクにより前記第1駆動部を駆動させ、
前記第1次トルク、前記第2次トルク、基準位置に対する前記第1指部の回転軸の角度、前記基準位置に対する前記第2指部の回転軸の角度に基づいて、前記物品の剛性を推定し、
前記吸着部で前記物品を吸着した状態を維持させながら、前記第1次トルク及び前記第2次トルクで前記第1駆動部を駆動させた状態の前記第1指部及び前記第2指部の基準角度に対するそれぞれの角度、及び、前記剛性に応じて前記物品に対する前記第1指部及び前記第2指部のそれぞれの目標トルクを設定し、
前記吸着部で前記物品を吸着した状態を維持しながら、前記第1指部及び前記第2指部を前記目標トルクにて前記第1駆動部を駆動させる、
制御部を有し、
前記物品の前記剛性がある閾値よりも大きい場合、前記制御部は、前記第2次トルクに対して前記目標トルクを大きくし、前記物品の前記剛性が前記ある閾値よりも低い場合、前記制御部は、前記第2次トルクに対して前記目標トルクを小さくする、把持装置の制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記第指部と反対側の他方側にある前記第2指部に連結された第2駆動部を制御し、前記第2駆動部を前記第1次トルクにより駆動させ、
前記第1駆動部を前記第2次トルクにより駆動させるとともに、前記第2駆動部を制御し、前記第2駆動部を前記第2次トルクにより駆動させ、
前記第1次トルク及び前記第2次トルクで前記第1駆動部及び前記第2駆動部をそれぞれ駆動させた状態の前記第1指部及び前記第2指部の前記基準角度に対するそれぞれの角度、及び、前記剛性に応じて前記物品に対する前記第1指部及び前記第2指部のそれぞれの前記目標トルクを設定し、
前記第1指部を前記目標トルクにて前記第1駆動部により駆動させるとともに、前記第2指部を前記目標トルクにて前記第2駆動部により駆動させる、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記第1指部と前記物品とが前記第1次トルクでのトルク制御により当接した状態の前記基準角度に対する前記第1指部の角度、記第2指部と前記物品とが前記第1次トルクでのトルク制御により当接した状態の前記基準角度に対する前記第2指部の角度、及び、前記剛性に応じて、前記第1駆動部に連結された前記第1指部を回動させる前記第2次トルク、及び、前記第2駆動部に連結された前記第2指部を回動させる前記第2次トルクをそれぞれ設定する、請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記第1駆動部に連結された前記第1指部を回動させる前記第2次トルク、及び、前記第2駆動部に連結された前記第2指部を回動させる前記第2次トルクを、前記物品を前記第1指部及び前記第2指部で挟持した状態を維持しながら、前記第1指部及び前記第2指部から前記物品に加えられる前記吸着部の吸着方向に直交する方向に対して略平行な成分の力、又は、前記物品に加えられる回転モーメントを相殺する大きさにそれぞれ設定する、請求項3に記載の制御装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記第1駆動部に連結された前記第1指部を回動させる前記目標トルク、及び、前記第2駆動部に連結された前記第2指部を回動させる前記目標トルクを、前記物品を前記第1指部及び前記第2指部で挟持した状態を維持しながら、前記第1指部及び前記第2指部から前記物品に加えられる前記吸着部の吸着方向に直交する方向に対して略平行な成分の力、又は、前記物品に加えられる回転モーメントを相殺する大きさにそれぞれ設定する、請求項2乃至請求項4のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記第1駆動部及び前記第2駆動部を前記第1次トルクにより駆動させる前に、前記第1指部及び前記第2指部が前記基準角度を維持するように制御する、請求項2乃至請求項5のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記第1次トルク、前記第2次トルク、前記第1次トルク及び前記第2次トルクで前記第1駆動部及び前記第2駆動部をそれぞれ駆動させた状態の前記第1駆動部及び前記第2駆動部の前記基準角度に対する角度に基づいて、前記物品の変形しやすさに関する係数を推定し、前記目標トルクを算出する請求項2乃至請求項6のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項8】
プロセッサに、
把持装置の吸着部で把持対象の物品を吸着した状態を維持させながら、第1駆動部に連結された第1指部と、前記吸着部を挟んで前記第1指部と反対側の他方側にある第2指部とが前記物品に当接し、前記物品を挟むように前記第1駆動部を第1次トルクにより駆動させること、
前記吸着部で前記物品を吸着した状態を維持させながら、前記第1次トルクにて前記第1指部及び前記第2指部が前記物品に当接した状態で前記第1次トルクよりも大きい第2次トルクにより前記第1駆動部を駆動させること、
前記第1次トルク、前記第2次トルク、基準位置に対する前記第1指部の回転軸の角度、前記基準位置に対する前記第2指部の回転軸の角度に基づいて、前記物品の剛性を推定すること、
前記吸着部で前記物品を吸着した状態を維持させながら、前記第1次トルク及び前記第2次トルクで前記第1駆動部を駆動させた状態の前記第1指部及び前記第2指部の基準角度に対するそれぞれの角度、及び、前記剛性に応じて前記物品に対する前記第1指部及び前記第2指部のそれぞれの目標トルクを設定すること、
前記吸着部で前記物品を吸着した状態を維持しながら、前記第1指部及び前記第2指部を前記目標トルクにて前記第1駆動部を駆動させること、
を実行させ
前記物品の前記剛性がある閾値よりも大きい場合、前記第2次トルクに対して前記目標トルクを大きくし、前記物品の前記剛性が前記ある閾値よりも低い場合、前記第2次トルクに対して前記目標トルクを小さくするように前記プロセッサに実行させる、把持装置の制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、把持装置の制御装置、及び、把持装置の制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
把持対象の物品に対して吸着するとともに、複数のモータでそれぞれ駆動される指部で吸着した物品を挟持することで、物品を把持する把持装置がある。把持装置は、指部が本体部に対して、一方側と、一方側と異なる他方側に配置されている。吸着部は、一方側の指部と他方側の指部との間に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-051575号公報
【文献】特開2019-111615号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、物品を吸着した後、その物品を挟持により把持装置に把持させることが可能な、把持装置の制御装置、及び、把持装置の制御プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る把持装置の制御装置は、制御部を有する。制御部は、把持装置の吸着部で把持対象の物品を吸着した状態を維持させながら、前記吸着部に対して一方側にあり第1駆動部に連結された第1指部と、前記吸着部を挟んで前記第1指部と反対側の他方側にある第2指部とが前記物品に当接し、前記物品を挟むように前記第1駆動部を第1次トルクにより駆動させ、前記吸着部で前記物品を吸着した状態を維持させながら、前記第1次トルクにて前記第1指部及び前記第2指部が前記物品に当接した状態で前記第1次トルクよりも大きい第2次トルクにより前記第1駆動部を駆動させ、第1次トルク、第2次トルク、基準位置に対する第1指部の回転軸の角度、基準位置に対する第2指部の回転軸の角度に基づいて、物品の剛性を推定し、前記吸着部で前記物品を吸着した状態を維持させながら、前記第1次トルク及び前記第2次トルクで前記第1駆動部を回動させた状態の前記第1指部及び前記第2指部の基準角度に対するそれぞれの角度、及び、剛性に応じて前記物品に対する前記第1指部及び前記第2指部のそれぞれの目標トルクを設定し、前記吸着部で前記物品を吸着した状態を維持しながら、前記第1指部及び前記第2指部を前記目標トルクにて前記第1駆動部を駆動させる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1及び第2実施形態に係る物品把持システムを示す概略図。
図2】物品を把持する把持装置を示す概略的な斜視図。
図3】物品把持システムのブロック図。
図4】把持装置の吸着機能及び挟持機能を用いて物品を把持した状態の一例を示す概略図。
図5】把持装置の吸着機能及び挟持機能を用いて物品を把持した状態の一例を示す概略図。
図6】把持装置の吸着機能及び挟持機能を用いて物品を把持した状態の一例を示す概略図。
図7】把持装置の挟持機能を用いて物品を把持した状態の一例を示す概略図。
図8】把持装置の吸着機能を用いて物品を把持した状態の一例を示す概略図。
図9】把持装置の吸着機能及び押圧機能を用いて物品を把持した状態の一例を示す概略図。
図10】把持装置の吸着機能及び握持機能を用いて物品を把持した状態の一例を示す概略図。
図11図10に示す把持装置及び物品を斜め下方から見た状態を示す概略図。
図12】物品把持システムを用いて物品を把持する一連の動作の一例を示す概略的なフローチャート。
図13】物品の一例を示す概略図。
図14】物品の形状、大きさから、制御装置により、図4から図11に示す物品の把持計画を決定する一例を示すフローチャート。
図15】第1実施形態に係る、図4から図6に示す吸着機能及び挟持機能を用いて物品を吸着して挟持する場合の把持装置の制御装置の制御フローチャート。
図16図4から図6に示す吸着機能及び挟持機能を用いて物品を吸着して挟持した状態を示す概略図。
図17図4から図6に示す吸着機能及び挟持機能を用いて物品を吸着して挟持した状態を示す概略図。
図18】第2実施形態に係る、図4から図6に示す吸着機能及び挟持機能を用いて物品を吸着して挟持する場合の把持装置の制御装置の制御フローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[第1実施形態]
図1に示すように、物品把持システム100は、物品(荷物)Pを移動させる移動装置2、物品Pを検出する検出装置3、及び、制御装置4を有する。物品把持システム100は、容器C内に単体で置かれた1つの物品P、又は、複数の物品Pから任意の物品Pを把持し、任意箇所(例えば隣接するベルトコンベヤBなど)へと移動させる。
【0008】
移動装置2は、例えば、基台部21、メインアーム22、ツール23、電磁弁24、外配管部25を有する。
【0009】
基台部21は例えば床面に固定される。メインアーム22は基台部21の上面に固定される。ツール23はメインアーム22の先端に固定される。電磁弁24は例えばメインアーム22の任意の側面に固定される。電磁弁24の位置は、ツール23の本体部11に固定されてもよい。
【0010】
外配管部25は例えばエアチューブないし樹脂配管部材である。外配管部25は、図示しないコンプレッサと電磁弁24との間、電磁弁24とツール23との間を接続し、圧縮空気の流路を構成する。電磁弁24は流路の開放(開)と遮断(閉)を切り換える。
【0011】
ツール23は把持装置1と力覚センサ(力覚検出手段)5を有する。力覚センサ5の一端はメインアーム22の先端に取り付けられている。力覚センサ5の他端は把持装置1に取り付けられている。力覚センサ5は、把持装置1に加えられる外力およびモーメントを検出可能である。
【0012】
検出装置3は、1又は複数の物品Pが置かれた状態を検出する。検出装置3は、例えばRGBカメラ、3Dカメラ、その他のセンサのいずれか1つ、または、組み合わせで構成される。
【0013】
図3に示す制御装置4は、検出装置3から得た情報に基づいて物品Pの形状、位置、姿勢、その他の情報を取得する。
【0014】
制御装置4は、計画部41、制御部42、解析部43、主記憶部44、補助記憶部45を有する。制御装置4は、1つの制御端末で構成されていてもよく、または複数の制御端末を組み合わせて構成されてもよい。これらの構成要素は、それぞれ、例えば制御部42のプロセッサ等のハードウエアが、プログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。
【0015】
制御部42には、インターフェース42aが設けられている。インターフェース42aは、制御部42と制御部42の外部との信号を送受信する。制御部42は、インターフェース42aを介して、検出装置3、計画部41、解析部43、主記憶部44、補助記憶部45、移動装置2の各種機器に信号を送信可能であるとともに、検出装置3、計画部41、解析部43、主記憶部44、補助記憶部45、移動装置2の各種機器から信号を受信可能である。
【0016】
解析部43は、検出装置3で得た情報(例えば画像情報I)に基づいて、物品Pの形状、位置、姿勢、その他の情報を取得する。
【0017】
制御部42は、把持装置1、および力覚センサ5からの出力情報を読み取るとともに、計画部41が策定する動作計画を含む把持計画に基づいて、移動装置2のメインアーム22及び把持装置1を動作させる。
【0018】
計画部41は、物品Pの把持計画を策定する。把持計画は、例えばメインアーム22の動作計画を含む。計画部41は、制御部42、及び、解析部43からの出力情報に基づいて、動作計画を含む把持計画を策定するとともに、策定した把持計画から所定の基準に基づいて最優のものを選択し、制御部42を通して、移動装置2へと指令する。
【0019】
制御装置4を構成するコンピュータは、CPUなどのプロセッサを含む制御部42、読み込み専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)等の主記憶部44と、ハードディスクドライブ(HDD)、ソリッドステートドライブ(SSD)、リムーバブルメディア等の補助記憶部45とを備える。主記憶部44には、各種プログラムが格納されている。この場合、制御部42は、例えばCPUなどのプロセッサが主記憶部44のROMに格納された制御プログラムを主記憶部44のRAMに展開して実行する。
【0020】
補助記憶部45には、オペレーティングシステム、各種プログラム、各種情報テーブル等を含む各種データが格納されている。このため、制御部42は、例えば補助記憶部45に記憶されたプログラムを主記憶部44にロードして実行することにより、制御部42による各種の処理を実行可能である。制御部42は、ネットワークを介して取得するプログラムを主記憶部44にロードして実行することにより、制御部42による各種の処理を実行可能である。
【0021】
制御部42によるプログラムは、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC、FPGA等)によっても実行可能である。
【0022】
図2及び図3に示すように、把持装置1は、本体部11、吸着部12、真空発生器13、圧力センサ14、内配管部16、第1指部17a、第2指部17b、第1駆動部18a、および、第2駆動部18bを有する。
【0023】
本体部11には、吸着部12が配設されている。吸着部12は例えば1つ又は複数のゴム製の吸着パッド12aを有する。図2に示す例では4つの吸着パッド12aを有する吸着部12が本体部11に取り付けられている。ここでは、吸着部12での物品Pの吸着方向に直交する4つの吸着パッド12aの図心を吸着部12の図心とする。吸着部12の図心を通り、吸着部12の吸着方向に平行な線を吸着部12の軸線Aとする。
【0024】
本体部11には、真空発生器13、圧力センサ14、内配管部16が内蔵されている。内配管部16は真空発生器13の出力端、圧力センサ14、吸着部12を1つの流路で接続する。圧力センサ14は、物品Pを吸着部12の吸着パッド12aで吸着している状態において、検出圧力が低下する。
本体部11の下方に物品Pを配置した状態で物品Pを把持する場合、吸着部12は本体部11の下方にある。
【0025】
真空発生器13は例えばエジェクタであり、例えば圧力センサ14と併せて本体部11に内蔵される。
【0026】
第1指部17aは、本体部11に対して一方に配設されている。第2指部17bは、本体部11の一方とは吸着部12の軸線を挟んで反対側の他方に配設されている。第1指部17aは略L字型の鉤型形状に形成されている。第1指部17aは、回転軸17a0により、第1駆動部18aの第1モータ19aの回転軸19a1と同期して所定の範囲内で回動する。第2指部17bは、1対の指17b1,17b2を有する。1対の指17b1,17b2はそれぞれ略L字型の鉤型形状に形成されている。第2指部17bの1対の指17b1,17b2は、回転軸17b0により、第2駆動部18bの第2モータ20aの回転軸20a1と同期して所定の範囲内で回動する。
【0027】
第1指部17aは、爪部117aを有する。第2指部17bは、爪部117bを有する。第2指部17bの指17b1は、爪部117b1を有する。第2指部17bの指17b2は、爪部117b2を有する。第1指部17aの爪部117a、第2指部17bの1対の指17b1,17b2の爪部117b1,117b2は、把持対象となる物品Pの例えば角部(エッジ)に接触せず、物品Pの側面Pb又は下面Pcに接触され得る。
【0028】
メインアーム22は、把持装置1の吸着部12の吸着パッド12aを適宜の向きに向けることができる。ここでは、説明の簡略化のため、吸着部12の吸着パッド12aが鉛直方向下向きに向けられた例について説明する。この場合、第1指部17a及び第2指部17bの位置関係は、物品Pを挟持により把持したときに爪部117a,117bが吸着部12の吸着パッド12aよりも下側に位置する。
【0029】
第1指部17aの回転軸17a0、第2指部17bの1対の指17b1,17b2の回転軸17b0は、吸着部12の吸着パッド12aでの物品Pの吸着時における上面(物品Pに吸着部12が吸着される吸着面)Paに対向する位置で、吸着パッド12aよりも物品Pの上面Paから離れた位置で、かつ、物品Pの上面Paに可能な限り近い位置にあることが望ましい。回転軸17a0,17b0は、吸着部12の軸線Aに対して等距離にある。第1指部17aの回転軸17a0、第2指部17bの1対の指17b1,17b2の回転軸17b0は平行で、吸着部12の軸線Aに対して、吸着パッド12aの幅方向及び長手方向(図13参照)の端部よりも遠位にある。
【0030】
第1駆動部18aは、第1モータ19aと、第1トルクセンサ19bと、第1角度センサ19cとを有する。第2駆動部18bは、第2モータ20aと、第2トルクセンサ20bと、第2角度センサ20cとを有する。
【0031】
第1駆動部18aの第1モータ19a、第2駆動部18bの第2モータ20aはサーボモータが望ましいが、これに限定しない。第1モータ19a及び第2モータ20aは、複数のトルク状態を切り換え可能なモータ又は空圧アクチュエータであればよい。第1モータ19aの回転軸19a1、及び、第2モータ20aの回転軸20a1は、現在の位置を保持するためのブレーキ機構又は位置保持機能があればよい。
本実施形態では、第1モータ19a及び第2モータ20aは、サーボモータを用いる例について説明する。第1モータ19a及び第2モータ20aは、定格トルクの範囲内で使用される。
【0032】
トルクセンサ19bは、第1モータ19aの回転軸19a1のトルクを検出する。トルクセンサ20bは、第2モータ20aの回転軸20a1のトルクを検出する。
【0033】
角度センサ19cは、第1モータ19aの回転軸19a1の現在の角度を検出する。角度センサ20cは、第2モータ20aの回転軸20a1の現在の角度を検出する。角度センサ19c,20cには、例えばロータリーエンコーダを用いる。
【0034】
図2中、第1駆動部18aのモータ19aの回転軸19a1は、例えば伝達機構の一例としての、プーリ19a2、タイミングベルト19a3、プーリ19a4を介して第1指部17aの回転軸17a0に連結されている。このため、第1モータ19aの回転軸19a1が回動すると、回転軸19a1に固定されたプーリ19a2が回動し、プーリ19a2に巻回されたタイミングベルト19a3が周方向に移動し、タイミングベルト19a3に巻回され第1指部17aの回転軸17a0に固定されたプーリ19a4が回動する。
第2駆動部18bのモータ20aの回転軸20a1は、例えば伝達機構の一例としての、プーリ20a2、タイミングベルト20a3、プーリ20a4を介して第2指部17bの回転軸17b0に連結されている。第2モータ20aの回転軸20a1を回動させると、回転軸20a1に固定されたプーリ20a2が回動し、プーリ20a2に巻回されたタイミングベルト20a3が周方向に移動し、タイミングベルト20a3に巻回され第2指部17bの回転軸17b0に固定されたプーリ20a4が回動する。
【0035】
第1モータ19aの回転軸19a1と第1指部17aの回転軸17a0とは、例えばプーリ19a2,19a4の直径の比に応じて適宜の比で回転又は回動する。第2モータ20aの回転軸20a1と第2指部17bの回転軸17b0とは、例えばプーリ20a2,20a4の直径の比に応じて適宜の比で回転又は回動する。ここでは、説明の簡略化のため、第1モータ19aの回転軸19a1の現在の角度は、第1指部17aの回転軸17a0の現在の角度と一致するものとする。第2モータ20aの回転軸20a1の現在の角度は、第2指部17bの回転軸17b0の現在の角度と一致するものとする。
【0036】
制御部42には、電磁弁24、力覚センサ5、真空発生器13、圧力センサ14、第1駆動部18a、及び、第2駆動部18bが電気的又は制御装置4が有し得る図示しない通信部を介して接続されている。
【0037】
図4から図11には、把持装置1を用いて物品Pを把持する把持方式を例示する。図4から図11中、吸着部12で物品Pの上面Paを吸着した領域(吸着パッド12aが当接した範囲)を破線の円環で示す。第1指部17a及び第2指部17bが物品Pに当接した位置について、見える部分については実線の円環で、見えない部分については破線の円環で示す。
【0038】
図4から図6には、把持装置1を用いて、略直方体状の物品Pを吸着及び挟持を併用して把持する状態を示す。図4から図6に示す例は、吸着部12が吸着される面Paがあるが、幅方向に沿う大きさ、奥行き方向に沿う大きさ(吸着部12の吸着方向に沿う物品Pの高さ)、側面Pbの形状が異なる。
【0039】
図4に示す例の場合、指部17a,17bの爪部117a,117bは、物品Pの側面Pbにある。
【0040】
図5には、把持装置1を用いて、略直方体状の物品Pを吸着及び挟持を併用して把持する状態を示す。図5に示す例の場合、指部17a,17bの爪部117a,117bは、物品Pの底面又は物品Pの下側にある。
【0041】
図6には、把持装置1を用いて、略楕円柱状の物品Pを吸着及び挟持を併用して把持する状態を示す。図6に示す例は、物品Pの側面Pbが曲面に形成されている。一方、吸着部12で吸着される面Paが略平面と同視できる。この場合、物品Pは、略直方体状である、と同視できる。
【0042】
図4から図6に示すように、物品Pの大きさにより、指部17a,17bの回転軸17a0,17b0に対する回動角度が変化する。
【0043】
図7には、把持装置1を用いて、略直方体状の物品Pを挟持して把持する状態を示す。図7に示す例の場合、指部17a,17bの爪部117a,117bは、物品Pの側面Pbにある。図7に示す例の場合、吸着部12は物品Pの把持に用いていない。
【0044】
図8には、把持装置1を用いて、略直方体状の物品Pを吸着して把持する状態を示す。図8に示す例の場合、指部17a,17bの爪部117a,117bは、一例として本体部11の側方にあり、物品Pの把持に用いていない。なお、図8に示す物品Pの大きさは、図5に示す物品Pと大きさが略同じに描いた。図8に示す例は、図5に示す物品Pに比べて、重量が軽量である。
【0045】
図9には、把持装置1を用いて、略直方体状の物品Pを吸着及び押圧を併用して把持する状態を示す。図9に示す例は、吸着部12から離間した位置で、物品Pの上面Paを第1指部17aの爪部117a及び第2指部17bの爪部117bで押圧して、物品Pに負荷される振動を抑制する。図9に示す例の場合、吸着部12の吸着パッド12a、第1指部17aの爪部117a及び第2指部17bの爪部117bは、例えば同一平面上にある。
【0046】
図4から図6に示す吸着及び挟持を併用して物品Pを把持する例、図8に示す吸着して物品Pを把持する例、図9に示す吸着及び押圧を併用して物品を把持する例は、後述する検出装置3での大きさ及び形状情報に基づいて、物品Pの上面の略中央(図心)付近が吸着されるとともに、上面Paが一方向に長い略矩形状であれば、長辺側に指部17a,17bをあてがって物品Pを把持する姿勢が好適である。
【0047】
図10及び図11には、把持装置1を用いて、略直方体状の物品Pを吸着及び握持を併用して把持する状態を示す。図10及び図11に示す例の場合、指部17a,17bの第1指部17aの爪部117aは、物品Pの上側にある。第2指部17bの爪部117bは、物品Pの下側にある。
【0048】
図4から図11に示すように、本実施形態に係る把持装置1は、幅広いサイズの物品Pを、吸引、挟持又は握持を用いて把持できる。このため、本実施形態に係る把持装置1は、1つの把持装置1を用いて、多種多様な形状、位置、姿勢の物品(対象物)Pを把持可能である。
【0049】
次に、物品把持システム100および把持装置1の動作について図12から図15を用いて説明する。
【0050】
物品把持システム100の制御装置4の制御部42は、検出装置3で例えば容器C内の物品Pを撮影する(ステップS1)。制御部42は、電磁弁24を閉状態に動作させる。制御部42は、真空発生器13を動作させる。このとき、内配管部16は大気圧である。
【0051】
制御部42は、検出装置3で撮影した画像Iを、制御装置4の解析部43で画像処理する(ステップS2)。
【0052】
制御部42は、解析部43で画像処理した情報に基づいて、容器C内に1又は複数の物品Pがあるか否か判断する(ステップS3)。
【0053】
制御部42が容器C内に物品Pがないと判断する(ステップS3-NO)と、制御部42は処理を終了する。制御部42が容器C内に物品Pがある(ステップS3-YES)と判断した場合、制御部42は解析部43の画像処理により、物品Pを1つ1つに分ける(ステップS4)。
【0054】
制御部42は、画像処理により分けた物品Pから1つの物品Pを選択する(ステップS5)。
【0055】
制御部42は、選択した物品Pについて、解析部43での画像処理により、物品Pの形状(大きさを含む)、位置、及び、姿勢に関する情報を得る(ステップS6)。
物品Pに関する情報は、例えば物品Pの上面Paだけの情報でもよい。物品Pの形状に関する情報が物品把持システム100内、又は、物品把持システム100の外部の補助記憶部45に記憶された情報テーブルに登録されている場合、情報テーブルから物品Pの形状に関する情報を取得する。
【0056】
制御部42は、計画部41により、物品Pの形状、位置、姿勢に関する情報に基づいて把持計画を策定する(ステップS7)。
【0057】
ここで、図13に示すように、物品Pの幅方向、奥行き方向(吸着部12の吸着方向に沿う物品Pの高さ方向)、長手方向を取る。ある物品Pについて、上面Pa、側面Pb及び下面Pcが設定される。また、物品Pの側面Pbを挟持するための第1指部17a及び第2指部17bの仮の目標位置を算出し、設定する。
【0058】
制御部42は、把持計画の策定を、図14に示すフローに沿って実行する。
【0059】
制御部42は、物品Pが直方体(立方体を含む)又は略直方体(略立方体を含む)か判断する(ステップS51)。制御部42が、物品Pが直方体又は略直方体でないと判断した(ステップS51-NO)場合、制御部42は、物品Pの形状、位置、及び姿勢に応じて、適宜に把持方式を設定する(ステップS52)。
【0060】
制御部42が、物品Pが直方体又は略直方体であると判断した(ステップS51-YES)場合、制御部42は、物品Pに吸着部12が吸着可能な平面部などの面Pa(図13参照)が存在するか否か判断する(ステップS53)。
【0061】
制御部42が、物品Pに吸着部12が吸着可能な面Paが存在しないと判断した(ステップS53-NO)場合、制御部42は、把持方式を図7に示すような「挟持のみ」に判定する(ステップS54)。
【0062】
制御部42が、物品Pに吸着部12が吸着可能な面Paが存在すると判断した(ステップS53-YES)場合、制御部42は、物品Pの奥行き寸法が一定値以下か否か判断する(ステップS55)。
【0063】
制御部42が、物品Pの奥行き寸法が一定値以下であると判断しなかった(ステップS55-NO)場合、制御部42は、把持方式を図10及び図11に示すような「真空吸着及び握持」に判定する(ステップS56)。
【0064】
制御部42が、物品Pの奥行き寸法が一定値以下であると判断した(ステップS55-YES)場合、制御部42は、物品Pの幅方向が一定値以下か否か判断する(ステップS57)。
【0065】
制御部42が、物品Pの幅寸法が一定値以下であると判断しなかった(ステップS57-NO)場合、制御部42は、把持方式を図4から図6に示すような「真空吸着及び挟持」に判定する(ステップS58)。
【0066】
制御部42が、物品Pの幅寸法が一定値以下であると判断した(ステップS57-YES)場合、制御部42は、物品Pの長手方向寸法が一定値以下か否か判断する(ステップS59)。
【0067】
制御部42が、物品Pの長手方向寸法が一定値以下であると判断しなかった(ステップS59-NO)場合、制御部42は、把持方式を図9に示すような「真空吸着及び押圧」に判定する(ステップS60)。
【0068】
制御部42が、物品Pの長手方向寸法が一定値以下であると判断した(ステップS59-YES)場合、制御部42は、把持方式を図8に示すような「真空吸着のみ」に判定する(ステップS61)。
【0069】
制御部42は、このようにして図4から図11に示す把持方式の1つに、物品Pの把持計画を策定する。
【0070】
制御部42は、物品Pの把持計画を策定した(ステップS7)後、図12に示すように、把持動作を実行する(ステップS8)。ここでは、主に、物品Pに対して把持装置1で、「真空吸着及び挟持」を実行する例について図15を用いて説明する。
【0071】
制御部42は、物品Pを容器C内から例えば隣接するベルトコンベヤBに移動させる、移動装置2の動作計画を策定する(ステップS21)。動作計画は、例えば、容器CからベルトコンベヤBへの移動経路である。
【0072】
制御部42は、電磁弁24を閉から開に切り換える(ステップS22)。このため、把持装置1の吸着部12で物品Pの上面Paを吸着可能となる。
【0073】
制御部42は、第1駆動部18a及び第2駆動部18bを位置制御モードに設定し、第1指部17a及び第2指部17bを待機姿勢とする(ステップS23)。制御部42は、第1指部17a及び第2指部17bの待機姿勢を、第1指部17a及び第2指部17bの基準位置及び基準角度とする。制御部42は、第1駆動部18a及び第2駆動部18bを位置制御し、待機姿勢(基準位置及び基準角度)において、例えば、第1指部17a及び第2指部17bを図16及び図17中の破線で示す位置に配置する。待機姿勢(基準位置及び基準角度)は、図9に示す例のように、吸着パッド12a、第1指部17aの爪部117a、第2指部17bの爪部117bが同一平面上にある状態としてもよい。待機姿勢(基準位置及び基準角度)は、例えば図16及び図17中の破線で示す例、又は図11に示す例のように、常に同じ姿勢としてもよく、把持対象の物品Pの位置、形状、姿勢にあわせて変化させてもよい。例えば、制御部42は、物品Pに対して第1指部17a及び第2指部17bが近接するが、当接しない位置を待機姿勢とすることができる。一例として、把持計画によって策定された第1指部17a及び第2指部17bの仮の目標角度より所定の角度(例えば10~15度程度)開いた姿勢を待機姿勢(基準位置及び基準角度)とすることができる。
【0074】
制御部42は、メインアーム22を動作させ、把持装置1の吸着部12の吸着パッド12aを物品Pの上面Paの目標点(例えば図心となる位置)に動作させる(ステップS24)。なお、把持装置1の本体部11及び吸着部12の軸線Aを仮の目標角度(把持点)まで移動させる途中の任意地点で電磁弁24を「開」としてもよい。
【0075】
制御部42は、圧力センサ14の出力をチェックする(ステップS25)。圧力センサ14の出力(検出圧力)が閾値以下でない場合(ステップS26-NO)、再び圧力センサ14の出力をチェックする(ステップS25)。圧力センサ14の出力が閾値以下である場合(ステップS26-YES)、メインアーム22の動作を停止させる(ステップS27)。このとき、吸着部12で目的の物品Pの上面Paを吸着している。真空発生器13はこのまま動作させるとともに、電磁弁24の開状態を維持する。真空発生器13の動作、及び、電磁弁24の開状態は、後述するステップS11まで維持する。
【0076】
制御部42は、第1駆動部18a及び第2駆動部18bに対する制御を、第1指部17a及び第2指部17bがそれぞれ所定の待機姿勢(基準位置及び基準角度)を維持する位置制御モードからトルク制御モードに切り換える。制御部42は、第1駆動部18a及び第2駆動部18bの目標トルクを第1次トルクT1に設定する(ステップS28)。第1次トルクは、第1指部17a,17bを物品Pに当接させるが、物品Pの当接位置から物品Pを押しこまない程度のトルクである。制御部42は、第1駆動部18aの第1モータ19a及び第2駆動部18bの第2モータ20aをトルク制御しながら同時又は同時期に駆動する。このため、制御部42は、第1指部17a及び第2指部17bを用いて物品Pの側面Pbを挟持する挟持動作に移行する。このとき、第1駆動部18aの第1モータ19aに連動して第1指部17aが回転軸17a0を支軸として回動する。第2駆動部18bの第2モータ20aに連動して第2指部17bが回転軸17b0を支軸として回動する。
【0077】
制御部42は、トルクセンサ19b,20bを用いて第1駆動部18aのモータ19a及び第2駆動部18bのモータ20aを例えばフィードバック制御し、モータ19a,20aの回転軸19a1,20a1のトルクをそれぞれ目標の第1次トルクT1に維持する。制御部42は、角度センサ19c,20cを用いて例えば待機姿勢の基準角度に対する第1駆動部18a及び第2駆動部18bのモータ19a,20aの回転軸19a1,20a1の回動角度を検出する。
【0078】
制御部42は、第1駆動部18aのモータ19aの回転軸19a1の角速度(回転速度)、すなわち、第1指部17aの回転軸17a0の角速度(回転速度)を監視するとともに、第2駆動部18bのモータ20aの回転軸20a1の角速度、すなわち、第2指部17bの回転軸17b0の角速度(回転速度)を監視する(ステップS29)。
【0079】
制御部42は、第1駆動部18aの角速度≒0、又は、角度センサ19cにより検出される角度が適宜の時間において略一定となったか否か判断するとともに、第2駆動部18bの角速度≒0、又は、角度センサ20cにより検出される角度が適宜の時間において略一定となったか否か判断する(ステップS30)。第1指部17aが物品Pに当接する(ステップS30-YES)と、第1駆動部18aのモータ19aの回転軸19a1の角速度≒0となるとともに、角度が略一定となる。このとき、第1指部17aは略停止状態にある。第2指部17bが物品Pに当接する(ステップS30-YES)と、第2駆動部18bのモータ20aの回転軸20a1の角速度≒0となるとともに、角度が略一定となる。このとき、第2指部17bは略停止状態にある。
【0080】
第1駆動部18aの角速度≒0でない場合(ステップS30-NO)、第1指部17aが物品Pに当接していないため、制御部42は、第1駆動部18aのモータ19aの回転軸19a1の第1次トルクT1を維持しながら、回転軸19a1を回動させ続ける。第2駆動部18bのモータ20aの回転軸20a1の角速度≒0でない場合(ステップS30-NO)、第2指部17bが物品Pに当接していないため、制御部42は、第2駆動部18bのモータ20aの回転軸20a1の第1次トルクT1を維持しながら、回転軸20a1を回動させ続ける。そして、制御部42は、第1駆動部18aの角速度、及び、第2駆動部18bの角速度を監視し続ける(ステップS29)。
【0081】
第1駆動部18aの角速度≒0で、第2駆動部18bの角速度≒0である場合、制御部42は、第1駆動部18aが角速度≒0となった角度(例えば待機姿勢など、基準角度に対する角度)θ1aを角度センサ19cで取得して主記憶部44及び/又は補助記憶部45に記憶させるとともに、第2駆動部18bが角速度≒0となった角度(例えば待機姿勢など、基準角度に対する角度)θ1bを角度センサ20cで取得して主記憶部44及び/又は補助記憶部45に記憶させる(ステップS31)。
【0082】
このとき、第1次トルクT1で第1指部17a及び第2指部17bを物品Pの側面Pbに当接させた状態の、待機姿勢(基準位置及び基準角度)に対する第1駆動部18aのモータ19aの回転軸19a1の回転角度θ1a、及び、待機姿勢(基準位置及び基準角度)に対する第2駆動部18bのモータ20aの回転軸20a1の回転角度θ1bにより、制御部42は、物品Pの側面Pbに関する情報を取得可能である。制御部42は、検出装置3を用いて、ステップS6により制御部42に入力される物品Pの形状、位置、姿勢に関する情報と比較可能である。このため、制御部42は、第1指部17a及び第2指部17bと物品Pとの当接位置により取得される物品Pの側面Pbに関する情報と、検出装置3で検出して取得した物品Pの形状、位置、姿勢に関する情報(仮の目標位置を含む)との認識誤差を検出可能である。
【0083】
制御部42は、第1駆動部18aの角度θ1aに応じて、第2次トルクT2a>第1次トルクT1を設定するとともに、第2駆動部18bの角度θ1bに応じて、第2次トルクT2b>第1次トルクT1を設定する(ステップS32)。制御部42は、例えば補助記憶部45に格納された情報テーブルから角度θ1aに対応する第2次トルクT2aを読み出して設定する。制御部42は、例えば補助記憶部45に格納された情報テーブルから角度θ1bに対応する第2次トルクT2bを読み出して設定する。制御部42は、所定の計算式に基づいて、角度θ1aに対応する第2次トルクT2aを設定するとともに、角度θ1bに対応する第2次トルクT2bを設定してもよい。
【0084】
ここで、図16及び図17には、把持装置1の吸着部12で物品Pの上面Paを吸着し、物品Pの奥行き方向と長手方向による両側面Pbを第1指部17a及び第2指部17bで把持した状態を示す。
図16に示す例は、物品Pの側面Pbと本体部11及び吸着部12の軸線との距離が同一の距離D0である。物品Pに対して吸着部12は、長手方向の中央で、かつ、図16に示すように物品Pの上面Paの幅方向の中央の図心に吸着されることが好適である。
吸着部12は、図17に示すように、物品Pの上面Paの幅方向の中央からずれた位置を吸着する場合がある。図17に示す例は、物品Pの1対の側面Pbと本体部11及び吸着部12の軸線Aとの距離が異なる。一例として、第1指部17a側の距離Daが、第2指部17b側の距離Dbよりも大きい。
【0085】
ここでは、図17に示すように、吸着部12が物品Pの上面Paの幅方向の中央からずれた位置に吸着される場合を例にして説明する。
【0086】
この場合、第1指部17a及び第2指部17bの当接位置は、例えば奥行き方向にずれる場合がある。制御部42は、第1駆動部18aの角度θ1a及び第2駆動部18bの角度θ1bに応じて、物品Pの幅方向成分の力Fa,Fbが釣り合うように、第2次トルクT2a,T2bを個別に設定する。制御部42は、物品Pの幅方向成分の力Fa,Fbが釣り合うことに代えて、物品Pの側面Pbに当接する例えば爪部117a,117bの高さに応じて物品Pにかかる回転モーメントが相殺されるように第2次トルクT2a,T2bを個別に設定することがより好適である。
なお、制御部42は、第1次トルクT1において第1指部17aが物品Pの側面Pbに当接した状態での第1指部17aから物品Pの側面Pbに作用する力に比べて、力Faを増大させる。制御部42は、第1次トルクT1において第2指部17bが物品Pの側面Pbに当接した状態での第2指部17bから物品Pの側面Pbに作用する力に比べて、力Fbを増大させる。
【0087】
このため、第2次トルクT2aは、角度θ1aに応じて変化する。したがって、第2次トルクT2aは、第1指部17aが物品Pに当接する当接位置に応じて変化する。第2次トルクT2bは、角度θ1bに応じて変化する。したがって、第2次トルクT2bは、第2指部17bが物品Pに当接する当接位置に応じて変化する。
【0088】
制御部42は、第1駆動部18aの第1モータ19a及び第2駆動部18bの第2モータ20aをトルク制御しながら同時又は同時期に駆動する。制御部42は、トルクセンサ19bを用いて第1駆動部18aのモータ19aを例えばフィードバック制御し、モータ19aの回転軸19a1のトルクをそれぞれ目標の第2次トルクT2aに維持する。制御部42は、角度センサ19cを用いて例えば待機姿勢の基準角度に対する第1駆動部18aのモータ19aの回転軸19a1の回転角度を検出する。制御部42は、トルクセンサ20bを用いて第2駆動部18bのモータ20aを例えばフィードバック制御し、モータ20aの回転軸20a1のトルクをそれぞれ目標の第2次トルクT2bに維持する。制御部42は、角度センサ20cを用いて例えば待機姿勢の基準角度に対する第2駆動部18bのモータ20aの回転軸20a1の回転角度を検出する。
【0089】
制御部42は、第1駆動部18aのモータ19aの回転軸19a1の角速度(回転速度)、すなわち、第1指部17aの回転軸17a0の角速度(回転速度)を監視するとともに、第2駆動部18bのモータ20aの回転軸20a1の角速度、すなわち、第2指部17bの回転軸17b0の角速度(回転速度)を監視する(ステップS33)。
【0090】
制御部42は、第1駆動部18aの角速度≒0、又は、角度センサ19cにより検出される角度が例えば1秒間など適宜の時間において連続的に略一定となったか否か判断するとともに、第2駆動部18bの角速度≒0、又は、角度センサ20cにより検出される角度が適宜の時間において略一定となったか否か判断する(ステップS34)。
【0091】
第1駆動部18aの角速度≒0でなく、第2駆動部18bの角速度≒0でない場合(ステップS34-NO)、又は、角度センサ19cにより検出される角度が適宜の時間において略一定でない場合、第1指部17aが第2次トルクT2aで移動し、第2指部17bが第2次トルクT2bで移動している。このため、制御部42は、第1駆動部18aの角速度、及び、第2駆動部18bの角速度を監視し続ける(ステップS33)。
【0092】
第1駆動部18aの角速度≒0で、第2駆動部18bの角速度≒0である場合(ステップS34-YES)、又は、角度センサ19cにより検出される角度が適宜の時間において略一定となった場合、制御部42は、第1駆動部18aが角速度≒0となった角度(例えば待機姿勢など、基準位置に対する角度)θ2aを角度センサ19cで取得して主記憶部44及び/又は補助記憶部45に記憶させるとともに、第2駆動部18bが角速度≒0となった角度(例えば待機姿勢など、基準位置に対する角度)θ2bを角度センサ20cで取得して主記憶部44及び/又は補助記憶部45に記憶させる(ステップS35)。このとき、第1指部17a及び第2指部17bは略停止状態にある。
【0093】
制御部42は、第1次トルクT1、第2次トルクT2a,T2b、角度θ1a,θ1b,θ2a,θ2bから物品Pの側面Pbの剛性E等、物品Pの側面(外装)Pbの変形しやすさに関する係数kを適宜の計算式に基づいて推定する。制御部42は、係数kを推定可能である場合、物品Pの剛性Eを推定可能である(ステップS36)。
【0094】
物品Pの剛性Eを推定する場合、制御部42は、基準位置に対する第1指部17aの回転軸17a0の角度θ1a,θ2a、基準位置に対する第2指部17bの回転軸17b0の角度θ1b,θ2b、第1指部17aから物品Pの側面Pbへの物品Pの幅方向に対する成分、第2指部17bから物品Pの側面Pbへの物品Pの幅方向に対する成分、を取り出して、圧縮剛性Eとして算出する方法が簡便である。
【0095】
制御部42は、推定した係数k(剛性E)を用いて、物品Pを確実に把持するための第1駆動部18aの目標の第3次トルク(目標トルク)T3aを算出するとともに、第2駆動部18bの目標の第3次トルク(目標トルク)T3bを算出し、設定する(ステップS37)。
【0096】
物品Pの剛性Eがある閾値よりも大きい場合、制御部42は、第2次トルクT2aに対して第3次トルクT3aを大きくするとともに、第2次トルクT2bに対して第3次トルクT3bを大きくする。物品Pの剛性Eがある閾値よりも低い場合、制御部42は、第2次トルクT2aに対して第3次トルクT3aを小さくするとともに、第2次トルクT2bに対して第3次トルクT3bを小さくする。制御部42は、第1駆動部18aの角度θ2a及び第2駆動部18bの角度θ2bに応じて、物品Pの幅方向成分の力Fa,Fbが釣り合うように第3次トルクT3a,T3bを個別に設定する。制御部42は、物品Pにかかる回転モーメントが相殺されるように第3次トルクT3a,T3bを個別に設定することがより好適である。
物品Pの角度θ2a,θ2b及び係数k(剛性E)により、制御部42は、第1駆動部18aに付加する第3次トルクT3aを第2次トルクT2aよりも大きくし、第2駆動部18bに付加する第3次トルクT3bを第2次トルクT2bよりも小さくすることもある。同様に、制御部42は、第1駆動部18aに付加する第3次トルクT3aを第2次トルクT2aよりも小さくし、第2駆動部18bに付加する第3次トルクT3bを第2次トルクT2bよりも大きくすることもある。
【0097】
制御部42は、第1駆動部18aの第1モータ19a及び第2駆動部18bの第2モータ20aをトルク制御しながら同時又は同時期に駆動する。制御部42は、トルクセンサ19bを用いて第1駆動部18aのモータ19aを例えばフィードバック制御し、モータ19aの回転軸19a1のトルクをそれぞれ目標の第3次トルクT3aに維持する。制御部42は、角度センサ19cを用いて例えば待機姿勢の基準角度に対する第1駆動部18aのモータ19aの回転軸19a1の回転角度を検出する。制御部42は、トルクセンサ20bを用いて第2駆動部18bのモータ20aを例えばフィードバック制御し、モータ20aの回転軸20a1のトルクをそれぞれ目標の第3次トルクT3bに維持する。制御部42は、角度センサ20cを用いて例えば待機姿勢の基準角度に対する第2駆動部18bのモータ20aの回転軸20a1の回転角度を検出する。
【0098】
制御部42は、第1駆動部18aのモータ19aの回転軸19a1の角速度(回転速度)、すなわち、第1指部17aの回転軸17a0の角速度(回転速度)を監視するとともに、第2駆動部18bのモータ20aの回転軸20a1の角速度、すなわち、第2指部17bの回転軸17b0の角速度(回転速度)を監視する(ステップS38)。
【0099】
制御部42は、第1駆動部18aの角速度≒0、又は、角度センサ19cにより検出される角度が適宜の時間において略一定となったか否か判断するとともに、第2駆動部18bの角速度≒0、又は、角度センサ20cにより検出される角度が適宜の時間において略一定となったか否か判断する(ステップS39)。
【0100】
第1駆動部18aの角速度≒0でなく、第2駆動部18bの角速度≒0でない場合(ステップS39-NO)、第1指部17aが第3次トルクT3aで移動し、第2指部17bが第3次トルクT3bで移動している。このため、制御部42は、第1駆動部18aの角速度、及び、第2駆動部18bの角速度を監視し続ける(ステップS38)。
【0101】
第1駆動部18aの角速度≒0で、第2駆動部18bの角速度≒0である場合(ステップS39-YES)、制御部42は、第1駆動部18aが角速度≒0となった角度(例えば待機姿勢など、基準位置に対する角度)θ3aを角度センサ19cで取得して主記憶部44及び/又は補助記憶部45に記憶させるとともに、第2駆動部18bが角速度≒0となった角度(例えば待機姿勢など、基準角度に対する角度)θ3bを角度センサ20cで取得して主記憶部44及び/又は補助記憶部45に記憶させる(ステップS40)。このとき、第1指部17a及び第2指部17bは略停止状態にある。角度θ3aは、物品Pに対する第1指部17aの目標位置となる角度である。角度θ3bは、物品Pに対する第2指部17bの目標位置となる角度である。第1駆動部18aのモータ19aの回転軸19a1に第3次トルクT3aを設定することは、角度θ3aを目標位置として動作させることと同じである。第2駆動部18bのモータ20aの回転軸20a1に第3次トルクT3bを設定することは、角度θ3bを目標位置として動作させることと同じである。
【0102】
制御部42は、第1駆動部18a及び第2駆動部18bに対して、トルク制御モードから位置制御モードに切り換える。制御部42は、位置制御モードにおいて、第1指部17aが角度θ3aを維持するように角度センサ19cからの情報を取得しながら位置制御し、第2指部17bが角度θ3bを維持するように角度センサ20cからの情報を取得しながら位置制御する(ステップS41)。このとき、制御部42は、把持装置1の吸着部12で物品Pの上面Paを吸着しながら、第1指部17a及び第2指部17bで物品Pの側面Pbを挟持している。位置制御モードにおいて、物品Pの移動によって第1指部17a及び第2指部17bにかかる負荷荷重が変わった場合でも挟持姿勢を維持する。
【0103】
このように、制御部42は、本実施形態では、把持装置1を動作させ、物品Pの上面Paを吸着した後、トルク制御により3段階の挟持を行い、物品Pの側面(外装)Pbを挟持して把持する。
【0104】
図12に示すように、制御部42は、移動装置2のメインアーム22による物品Pのリリース動作計画を策定する(ステップS9)。制御部42は、物品Pの移動経路を策定する。
【0105】
制御部42は、策定した計画に基づいて移動装置2のメインアーム22を動作させ、物品Pをリリース動作計画に基づいて所定の位置に移動させる(ステップS10)。
【0106】
制御部42は、メインアーム22及びツール23の把持装置1を動作させ、把持装置1から物品Pのリリース動作を実行する(ステップS11)。このとき、制御部42は、電磁弁24を開から閉に切り換えるとともに、第1駆動部18a及び第2駆動部18bを所定の待機姿勢とする。
【0107】
制御部42は、再び容器C内を検出装置3で撮影し、物品Pの選択、把持装置1を用いた把持制御、移動装置2を用いた移動制御、把持装置1を用いた所望の位置へのリリース制御を繰り返す。
【0108】
このようにして、容器C内から1又は複数の物品Pを所望の位置に移動させる。
【0109】
上述した吸着機能及び挟持機能を併用する把持制御において、制御部42は、物品Pの上面Paを真空吸着した後に、第1駆動部18aを動作させて第1指部17aを動作させると同時又は同時期に、第2駆動部18bを動作させて第2指部17bを動作させ、物品Pの側面Pbを挟持する。例えば、第1駆動部18aのモータ19a、及び、第2駆動部18bのモータ20aを、同時又は同時期に、位置制御モード、トルク制御モード、位置制御モードの順に切り換える。制御部42は、第1駆動部18a及び第2駆動部18bを第1次トルクT1でのトルク制御により回動させる前に、第1指部17a及び第2指部17bが基準位置(待機姿勢)に位置した状態を維持するように位置制御する。制御部42は、トルク制御モードにおいて、第1駆動部18a及び第2駆動部18bに対し、第1次トルクT1での初期トルク制御、第2次トルクT2a,T2bでの中間トルク制御、第3次トルクT3a,T3bでの最終トルク制御の順に切り換える。
【0110】
制御部42は、第1指部17a及び第2指部17bを第1次トルクT1での初期トルク制御で物品Pの側面Pbに接触させた後、第1次トルクT1よりも大きい第2次トルクT2a,T2bに変更して第1指部17a及び第2指部17bの角度変化(≒物品の変形量)を取得する。初期トルク制御と中間トルク制御において、トルクの増分と第1指部17a及び第2指部17bの角度θの変化から物品Pの変形しやすさの係数k(剛性E)を推定し、それに応じた最終の第3次トルクT3a,T3bを決定する。最終の第3次トルクT3a,T3bで第1指部17a及び第2指部17bが静止した時点の角度θ3a,θ3bでモータ19a,20aをトルク制御モードから位置制御モードに切り換える。そして、制御部42は、モータ19a,20aを位置制御し続け、第1指部17a及び第2指部17bの現在位置を保持する。このため、把持装置1は、メインアーム22の姿勢変化によらず、把持装置1の第1指部17a及び第2指部17bは、本体部11に対してそのままの角度を保持する。
【0111】
図17に示すように、物品Pの上面Paに対する吸着部12の吸着位置によっては、第1指部17aが物品Pに接する高さ位置と第2指部17bが物品Pに接する高さ位置とがずれることがある。仮に、第1指部17a及び第2指部17bに同じ挟持力を付加すると、位置ずれが影響し、物品Pに回転モーメントが付加され、吸着部12と物品Pの上面Paとの間にせん断力が発生する可能性がある。このため、第1指部17a及び第2指部17bで物品Pの側面Pbを挟持した状態において、物品Pの上面Paに対する吸着部12の吸着位置によっては、物品Pの上面Paから吸着部12を引き剥がす力が付加される可能性がある。本実施形態では、制御部42は、第1指部17aに付加する第2次トルクT2aを、第1指部17aが物品Pに当接した位置に応じて設定し、第2指部17bに付加する第2次トルクT2bを、第2指部17bが物品Pに当接した位置に応じて設定する。このときの第2次トルクT2aは、第1指部17aにより物品Pの側面Pbに幅方向に平行な成分の力(吸着部12の吸着方向に直交する方向に略平行な成分の力)Faを与えるとする。このときの第2次トルクT2bは、第2指部17bにより物品Pの側面Pbに幅方向に平行な成分の力(吸着部12の吸着方向に直交する方向に略平行な成分の力)Fbを与えるとする。力Fa,Fbは、制御部42により、反対向きで、絶対値が同一又は略同一に調整される。このため、力Fa,Fbは、相殺される。したがって、力Fa,Fbが相殺されることによって、吸着部12と物品Pの上面Paとを引き剥がす、力Fa,Fbに略平行な力(せん断力)が吸着部12と物品Pの上面Paとの間に付加されることが抑制される。したがって、本実施形態による把持装置1の制御装置4は、把持装置1に安定して物品Pを把持させることができる。
また、力Fa,Fbの幅方向に平行な成分が異なっていても、第1指部17a及び第2指部17bにより物品Pを挟持した状態において、物品Pに回転モーメントが生じないように、制御部42は、第2次トルクT2a,T2bを設定することができる。第1指部17a及び第2指部17bにより物品Pに付加される回転モーメントが相殺されることによって、吸着部12と物品Pの上面Paとを引き剥がす、力Fa,Fbに略平行な力(せん断力)が吸着部12と物品Pの上面Paとの間に付加されることが抑制される。したがって、本実施形態による把持装置1の制御装置4は、把持装置1に安定して物品Pを把持させることができる。
【0112】
物品Pの剛性Eが多様であっても、制御部42は、第1指部17a及び第2指部17bで物品Pを挟持する状態において、第2次トルクT2a,T2bで制御したときに推定される剛性Eに応じて最終的な挟持力を物品Pの側面Pbに与える第3次トルクT3a,T3bを適宜に設定し、把持装置1による物品Pを確実に把持しながら、物品Pを挟持する力を制御することができる。このため、制御部42は、物品Pの上面Paに対する吸着位置に応じ、また、物品Pの剛性Eに応じて、適切な第3次トルクT3a,T3bで物品Pを挟持させることができる。このため、吸着部12と物品Pの上面Paとを引き剥がす力(せん断力)が吸着部12と物品Pの上面Paとの間に付加されることが抑制される。
【0113】
図16に示すように、物品Pの上面Paに対する吸着部12の吸着位置によっては、第1指部17aが物品Pに接する高さ位置と第2指部17bが物品Pに接する高さ位置とが同じになることがある。この場合、第2次トルクT2a,T2bについて、同一又は略同一のトルクを第1駆動部18aのモータ19a及び第2駆動部18bのモータ20aに負荷し得る。この場合、第1指部17aによる力Fa、第2指部17bによるFbは、制御部42により、反対向きで、絶対値が同一又は略同一に調整される。このため、力Fa,Fbは、相殺される。したがって、力Fa,Fbが相殺されることによって、吸着部12と物品Pの上面Paとを引き剥がす力が吸着部12と物品Pの上面Paとの間に付加されることが抑制される。また、第3次トルクT3a,T3bについて、同一又は略同一のトルクを第1駆動部18aのモータ19a及び第2駆動部18bのモータ20aに負荷し得る。
【0114】
例えば物品Pの剛性Eがある閾値よりも低い場合、物品Pを棄損しないために吸着部12による吸着を用い、第1指部17a及び第2指部17bで挟持する第3次トルクT3a,T3bを極力小さくする。把持安定性の観点から見てもこれは十分条件と言える。第1指部17a及び第2指部17bでの挟持によって物品Pの側面Pbは押される。物品Pの側面Pbは押されている点を底とした曲面を形成する。この状態において、第1指部17a及び第2指部17bは、幅方向に平行な成分だけでなく、奥行き方向に平行な成分の力を生じる。このため、物品Pが意図せず変形するか、又は、制御部42による位置制御状態を崩すように物品Pに負荷を与える場合を除いて、物品Pが把持装置1による吸引及び挟持により把持した状態から落下することが防止される。
【0115】
制御部42は、力覚センサ5の出力を取得可能である。制御部42が力覚センサ5の出力から物品Pが比較的軽量であると判断した場合、制御部42は、推定した剛性Eに基づく第1指部17aの位置制御の目標角度θ3aよりも角度θ1aに僅かに近づけるとともに第2指部17bの位置制御の目標角度θ3bよりも角度θ1bに僅かに近づけるように角度θを新たに設定する。このため、制御部42は、物品Pを確実に把持しながら物品Pへの負荷を低減した状態に、把持装置1を制御することができる。
【0116】
制御部42が図15に示すステップS21からステップS26において、力覚センサ5の出力に基づいて、物品Pがある閾値の重量よりも軽量であると判断した場合、制御部42は、第1指部17a及び第2指部17bの挟持動作(最終的に図16中に破線で示す待機姿勢(基準位置)から図5に示す状態への第1指部17a及び第2指部17bの移動)を省略して吸着把持のみとするように制御可能である(図8参照)。このため、制御部42は、1つの物品Pを容器Cから例えばベルトコンベヤBなど所望の位置に動かすときのタクトタイムを短縮することができる。
【0117】
図17に示すように第1指部17a及び第2指部17bと物品Pの側面Pbとの接触位置が奥行き方向にずれた場合、制御部42は、角度θ1aと角度θ1bとの差がある閾値よりも大きい場合、安定な把持状態を実現することが困難と判定し、物品Pを再度認識し、把持計画を再度実行する制御としても良い。
把持計画を再度実行する場合、制御部42は、物品Pの上面Paに対する真空吸着状態を一旦解除した後、角度θ1aと角度θ1bの関係から推定される物品Pの中心位置からのズレを補正する方向に、メインアーム22を動作させる制御を行うことができる。このため、制御部42は、把持計画を再度実行する場合、より確実に把持装置1による把持を実行させることができる。
【0118】
本実施形態では、第1指部17aが1つのアームを有し、第2指部17bが2つの指17b1,17b2を有する。すなわち、把持装置1は、3つのアームを有する。把持装置1は、第1指部17aが1つのアームを有し、第2指部17bが1つのアームを有する構造であってもよい。また、把持装置1は、第1指部17aが2つのアームを有し、第2指部17bが2つのアームを有する構造であってもよい。把持装置1は、5つ以上のアームを有する構造であってもよい。
【0119】
制御部42は、ステップS36において、例えば補助記憶部45に格納された情報テーブルから、第1次トルクT1、第2次トルクT2a,T2b、角度θ1a,θ1b,θ2a,θ2bの値に対応する係数k(剛性E)を読み出して設定してもよい。
【0120】
制御部42は、ステップS37において、例えば補助記憶部45に格納された情報テーブルから、第1次トルクT1、第2次トルクT2a,T2b、角度θ1a,θ1b,θ2a,θ2bに対応し、物品Pを確実に把持するための第1駆動部18aの目標の第3次トルクT3aを読み出すとともに、第2駆動部18bの目標の第3次トルクT3bを読み出して設定してもよい。このため、ステップS36における係数k(剛性E)の推定は必ずしも必要ではない。
【0121】
上述したように、ここでは、把持装置1を用いて、図4に示すように上面Paを吸着した後、側面Pbを挟持する例について説明した。
【0122】
例えば図5に示す物品Pは、吸着部12で吸着可能な平面状の上面Paを有し、側面Pbには、適宜の奥行き寸法があり、幅寸法が一定値以下である。このため、この場合の物品Pは、真空吸着及び挟持することができる。このとき、図5に示す物品Pは、奥行き寸法が図4及び図6に示す例に比べて小さい。爪部117a,117bでなく、第1指部17aの回転軸17a0と爪部117aとの間の適宜の部位、及び、第2指部17bの回転軸17b0と爪部117bとの間の適宜の部位が側面Pb又は長手方向に延びるエッジ等に当接されることで、図4に示す物品Pと同様に真空吸着及び挟持により把持装置1により把持される。又は、物品Pは、下面Pcから支持されていてもよい。このとき、待機姿勢に対する角度θ1a,θ1bは、図4及び図6に示す例に比べて大きくなり得る。
【0123】
例えば図6に示す物品Pは、吸着部12で吸着可能な平面状の上面Paを有するが、側面Pbが曲面である。側面Pbには、適宜の奥行き寸法がある。物品Pの幅寸法は一定値以下である。この場合の物品Pは、真空吸着及び挟持することができる。このように、図6に示す物品Pは、図4に示す物品Pと同様に真空吸着及び挟持により把持装置1により把持される。このため、略直方体に分類される物品Pは、適宜の曲面を有する場合があり得る。
【0124】
例えば図7に示すように、物品Pの平面状の上面Paが、吸着部12で吸着可能な程度の大きさよりも小さい場合、吸着部12による物品Pの上面Paに対する真空吸着は実施しない。このため、図15に示すフローチャートにおけるステップS22において、電磁弁24を閉状態に維持する。このため、ステップS25及びステップS26を省略する。
【0125】
一方、第1指部17a及び第2指部17bにおける物品Pの側面Pbの挟持において、図15に示すフローチャートに沿って把持を実行する。
【0126】
例えば図8に示すように、物品Pに対する挟持を行わず、物品Pの上面Paを真空吸着する場合、図15中のステップS21からステップS26の処理を行い、ステップS27からステップS41の処理を省略する。制御部42が圧力センサ14の出力が所定の閾値以下であると判断した場合、把持装置1での物品Pの吸着把持が成功している。
【0127】
例えば図9に示すように、物品Pの上面Paを吸着し、第1指部17a及び第2指部17bで押圧する場合、図15に示すステップS21からステップS29まで実行し、ステップS30からステップS40をジャンプする。第1指部17a及び第2指部17bが第1次トルクT1で物品Pの上面Paに当接した後、制御部42は、トルク制御モードから位置制御モードに切り換える。そして、制御部42は、第1指部17a及び第2指部17bで物品Pの上面Paを押圧した状態を維持する。
【0128】
例えば図9に示すように、物品Pの上面Paを吸着し、第1指部17a及び第2指部17bで押圧する場合、図15に示すステップS21からステップS34まで実行し、ステップS35からステップS40をジャンプしてもよい。この場合、制御部42は、目標の第2次トルクT2a,T2bを押圧動作専用の個別の値とすることができる。
【0129】
なお、図10及び図11に示す吸着及び握持により物品Pを把持する場合、上面Paにおける、上面Paと側面Pbとの境界となる位置(縁)の近傍を吸着する。そして、第1指部17aで上面Paを押圧するとともに、第2指部17bで物品Pの下面Pcを支持する。図10及び図11に示すように物品Pを把持する場合、図15に示すフローとは別のフローにより物品Pを把持するが、ここでの説明を省略する。
【0130】
このように、制御部42は、移動装置2を適宜に動作させて、各種の物品Pを把持する。
【0131】
吸着部12は、吸着部12が吸着される物品Pの面Paにあわせて鉛直方向に対して適宜の傾斜角度に傾斜していてもよい。この場合、把持装置1全体が制御部42により、適宜の傾斜角度に傾斜される。吸着部12は、鉛直方向に対して直交する方向に向けられていてもよい。この場合、第1指部17a及び第2指部17bの位置関係は、物品Pを把持したときに上下にあってもよく、左右にあってもよい。
【0132】
なお、本実施形態では、第1駆動部18aと第2駆動部18bとを個別に制御する例について説明したが、第1駆動部18aに第1指部17aだけでなく、第2指部17bが連結されていてもよい。この場合、第2指部17bは制御部42による第1駆動部18aの制御により、第1指部17aと連動して動かされるため、第2駆動部18bは不要となる。このとき、第1駆動部18が1つで第1指部17a及び第2指部17bを動かすため、第2次トルクT2は1つであり、上述したように、第1指部17a及び第2指部17bに第2次トルクT2a,T2bを個別に設定しない。この場合、目標となる第3次トルク(目標トルク)T3a,T3bも個別には設定しないが、第1指部17a及び第2指部17bにより、物品Pに対して適宜の挟持状態を確保する。
【0133】
以上説明したように、把持装置1の制御装置4は、制御部42を有する。制御部42は、把持装置1の吸着部12で把持対象の物品Pを吸着した状態を維持させながら、吸着部12に対して一方側にあり第1駆動部18aに連結された第1指部17aと、吸着部12を挟んで第1指部17aと反対側の他方側にある第2指部17bとが物品Pに当接し、物品Pを挟むように第1駆動部18aを第1次トルクにより回動させ、第1次トルクT1よりも大きい第2次トルクT2aにより第1駆動部18aを回動させ、物品Pに対する第1指部17a及び第2指部17bのそれぞれの目標トルク位置θ3a,θ3bを設定し、吸着部12で物品Pを吸着した状態を維持しながら、第1指部17a及び第2指部17bを目標トルクにて第1駆動部18aを駆動させる。
また、制御部42は、第1駆動部18aに加えて、第指部17aと反対側の他方側にある第2指部17bに連結された第2駆動部18bを制御し、第2駆動部18bを第1次トルクT1により回動させ、第1駆動部18aを第2次トルクT2aにより回動させるとともに、第2駆動部18bを制御し、第2駆動部18bを第2次トルクT2bにより回動させ、第1次トルクT1及び第2次トルクT2a,T2bで第1駆動部18a及び第2駆動部18bをそれぞれ回動させた状態の第1指部17a及び第2指部17bの基準角度に対するそれぞれの角度に応じて物品Pに対する第1指部17a及び第2指部17bのそれぞれの目標トルクT3a,T3bを設定し、第1指部17aを目標トルクT3aにて第1駆動部18aにより駆動させるとともに、第2指部17bを目標トルクT3bにて第2駆動部18bにより駆動させる。
【0134】
把持装置1の制御プログラムは、把持装置1の吸着部12で把持対象の物品Pを吸着した状態を維持させながら、吸着部12に対して一方側にあり第1駆動部18aに連結された第1指部17aと、吸着部12を挟んで第1指部17aと反対側の他方側にある第2指部17bとが物品Pに当接し、物品Pを挟むように第1駆動部18aを第1次トルクにより回動させること、第1次トルクT1よりも大きい第2次トルクT2aにより第1駆動部18aを回動させること、物品Pに対する第1指部17a及び第2指部17bのそれぞれの目標トルクT3a,T3bを設定すること、吸着部12で物品Pを吸着した状態を維持しながら、第1指部17a及び第2指部17bを目標トルクにて第1駆動部18aを駆動させること、をプロセッサに実行させる。
【0135】
したがって、本実施形態によれば、物品Pを真空吸着した後、その物品Pを挟持により把持させることが可能な、把持装置1の制御装置4、及び、把持装置1の制御プログラムを提供することができる。
【0136】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について、図18を用いて説明する。第2実施形態は、制御部42による実行する制御フロー、すなわち、制御プログラムの変形例である。
【0137】
図18に示すように、ステップS8において把持動作を実行する場合、制御部42は、図15で説明したステップS37からステップS41を、ステップS42からステップS45に置き換えることができる。
【0138】
制御部42は、係数k(剛性E)を推定した後、第1駆動部18a及び第2駆動部18bをトルク制御モードから、位置制御モードに切り換える。このとき、制御部42は、位置制御モードにおいて、待機姿勢に対する、角度θ1,θ2a,θ2b、第1次トルクT1,第2次トルクT2a,T2bに基づいて、第1駆動部18aが角度θ3aを目標とするように設定して位置制御し、第2駆動部18bが角度θ3bを目標とするように設定して位置制御する(ステップS42)。
【0139】
制御部42は、角度センサ19cを用いて第1駆動部18aのモータ19aの回転軸19a1の角度を監視するとともに、角度センサ20cを用いて第2駆動部18bのモータ20aの回転軸20a1の角度を監視する(ステップS43)。角度θ3aが角度θ2aと異なる場合、制御部42は、第1駆動部18aの位置制御により第1駆動部18aのモータ19aの回転軸19a1が角度θ2aから角度θ3aとなるようにモータ19aの回転軸19a1を動かす。角度θ3bが角度θ2bと異なる場合、制御部42は、第2駆動部18bの位置制御により第2駆動部18bのモータ20aの回転軸20a1が角度θ2bから角度θ3bとなるようにモータ20aの回転軸20a1を動かす。
【0140】
制御部42は、モータ19aの回転軸19a1が角度θ3aに到達したか否か判断するとともに、モータ20aの回転軸20a1が角度θ3bに到達したか否か判断する(ステップS44)。
【0141】
モータ19aの回転軸19a1が角度θ2aと角度θ3aとの間である場合(ステップS44-NO)、制御部42は、モータ19aの回転軸19a1が角度θ3aに到達するように制御する。モータ20aの回転軸20a1が角度θ2bと角度θ3bとの間である場合(ステップS44-NO)、制御部42は、モータ20aの回転軸20a1が角度θ3bに到達するように制御する。
【0142】
モータ19aの回転軸19a1が角度θ3aに到達したとき(ステップS44-YES)、制御部42は、角度θ3aを維持するように第1駆動部18aのモータ19aの回転軸19a1を制御する(ステップS45)。モータ20aの回転軸20a1が角度θ3bに到達したとき(ステップS44-YES)、制御部42は、角度θ3bを維持するように第2駆動部18bのモータ20aの回転軸20a1を制御する(ステップS45)。
【0143】
このとき、制御部42は、把持装置1の吸着部12で物品Pを吸着しながら、第1指部17a及び第2指部17bで物品Pを挟持している。
【0144】
このような制御フローによっても、第2次トルクT2a,T2bにより、力Fa,Fbが相殺されることによって、吸着部12と物品Pの上面Paとを引き剥がす力が吸着部12と物品Pの上面Paとの間に付加されることが抑制される。
【0145】
制御部42は、第1駆動部18aが角度θ3aに位置し、第2駆動部18bが角度θ3bに位置するとき、物品Pの幅方向成分の力Fa,Fbが釣り合うように個別に設定される。制御部42は、第1駆動部18aが角度θ3aに位置し、第2駆動部18bが角度θ3bに位置する位置制御によっても力Fa,Fbが相殺されるようすることによって、吸着部12と物品Pの上面Paとを引き剥がす力が吸着部12と物品Pの上面Paとの間に付加されることが抑制される。
【0146】
このように、トルク制御モードにおいて、第1駆動部18aに対して、第1次トルクT1、及び、第2次トルクT2aによるトルク制御を行った後、第3次トルクT3aによるトルク制御を行わず、トルク制御モードから位置制御モードに移行して、物品Pの側面Pbを挟持するようにしてもよい。同様に、トルク制御モードにおいて、第2駆動部18bに対して、第1次トルクT1、及び、第2次トルクT2bによるトルク制御を行った後、第3次トルクT3bのトルク制御を行わず、トルク制御モードから位置制御モードに移行して、物品Pの側面Pbを挟持するようにしてもよい。このため、第1次トルクT1及び第2次トルクT2a,T2bで第1駆動部18a及び第2駆動部18bをそれぞれ回動させた状態における第1駆動部18a及び第2駆動部18bの基準位置に対する回転角度に応じて、制御部42は、第3次トルクT3a,T3bを設定せずに、物品Pに対する第1指部17a及び第2指部17bのそれぞれの目標位置である角度θ3a,θ3bを設定してもよい。
【0147】
したがって、本実施形態によれば、物品Pを真空吸着した後、その物品Pを挟持により把持させることが可能な、把持装置の制御装置4、及び、把持装置の制御プログラムを提供することができる。
【0148】
第1実施形態及び第2実施形態において、トルクと、位置もしくは角度とは、どちらかの値が決まれば他方が決まる1対1に対応する関係にある。また、第1次トルクT1及び第2次トルクT2a,T2bに基づいて、目標値となる第3次トルクを定める制御は、第1指部17a及び第2指部17bを第1位置(第1角度θ1)から第2位置(第2角度θ2a,θ2b)として目標値(位置)を定める場合にも実現できる。これらは、最終的に、第1指部17a及び第2指部17bにより物品Pを挟持した状態において、同じ制御結果を得ることができる。すなわち、最終的な第1指部17a及び第2指部17bの目標値は、第1指部17a及び第2指部17bで物品Pを挟持したときに、トルクにより設定しても、位置により設定しても、同じである。このため、第1実施形態に係る、第1駆動部18a及び第2駆動部18bに対する目標トルク(第3次トルク)によるトルク制御と、第1実施形態に係る、第1駆動部18a及び第2駆動部18bに対する目標位置もしくは目標角度の制御(位置制御)とはほぼ同義である。また、目標トルクと目標位置あるいは目標角度とはほぼ同義である。このため、本明細書において、目標トルクは、目標位置あるいは目標角度と同義、又は、目標位置及び目標角度を含む意である。
【0149】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
以下、この出願の特許出願時の特許請求の範囲を付記する。
[付記1]
把持装置の吸着部で把持対象の物品を吸着した状態を維持させながら、前記吸着部に対して一方側にあり第1駆動部に連結された第1指部と、前記吸着部を挟んで前記第1指部と反対側の他方側にある第2指部とが前記物品に当接し、前記物品を挟むように前記第1駆動部を第1次トルクにより回動させ、
前記吸着部で前記物品を吸着した状態を維持させながら、前記第1次トルクにて前記第1指部及び前記第2指部が前記物品に当接した状態で前記第1次トルクよりも大きい第2次トルクにより前記第1駆動部を回動させ、
前記吸着部で前記物品を吸着した状態を維持させながら、前記第1次トルク及び前記第2次トルクで前記第1駆動部を回動させた状態の前記第1指部及び前記第2指部の基準角度に対するそれぞれの角度に応じて前記物品に対する前記第1指部及び前記第2指部のそれぞれの目標トルクを設定し、
前記吸着部で前記物品を吸着した状態を維持しながら、前記第1指部及び前記第2指部を前記目標トルクにて前記第1駆動部を駆動させる、
制御部を有する、把持装置の制御装置。
[付記2]
前記制御部は、
前記第2指部と反対側の他方側にある前記第2指部に連結された第2駆動部を制御し、前記第2駆動部を前記第1次トルクにより回動させ、
前記第1駆動部を前記第2次トルクにより回動させるとともに、前記第2駆動部を制御し、前記第2駆動部を前記第2次トルクにより回動させ、
前記第1次トルク及び前記第2次トルクで前記第1駆動部及び前記第2駆動部をそれぞれ回動させた状態の前記第1指部及び前記第2指部の前記基準角度に対するそれぞれの角度に応じて前記物品に対する前記第1指部及び前記第2指部のそれぞれの前記目標トルクを設定し、
前記第1指部を前記目標トルクにて前記第1駆動部により駆動させるとともに、前記第2指部を前記目標トルクにて前記第2駆動部により駆動させる、
付記1に記載の制御装置。
[付記3]
前記制御部は、前記第1指部と前記物品とが前記第1次トルクでのトルク制御により当接した状態の前記基準角度に対する前記第1指部の角度、及び、前記第2指部と前記物品とが前記第1次トルクでのトルク制御により当接した状態の前記基準角度に対する前記第2指部の角度に応じて、前記第1駆動部に連結された前記第1指部を回動させる前記第2次トルク、及び、前記第2駆動部に連結された前記第2指部を回動させる前記第2次トルクをそれぞれ設定する、付記2に記載の制御装置。
[付記4]
前記制御部は、前記第1駆動部に連結された前記第1指部を回動させる前記第2次トルク、及び、前記第2駆動部に連結された前記第2指部を回動させる前記第2次トルクを、前記物品を前記第1指部及び前記第2指部で挟持した状態を維持しながら、前記第1指部及び前記第2指部から前記物品に加えられる前記吸着部の吸着方向に直交する方向に対して略平行な成分の力、又は、前記物品に加えられる回転モーメントを相殺する大きさにそれぞれ設定する、付記3に記載の制御装置。
[付記5]
前記制御部は、前記第1駆動部に連結された前記第1指部を回動させる前記目標トルク、及び、前記第2駆動部に連結された前記第2指部を回動させる前記目標トルクを、前記物品を前記第1指部及び前記第2指部で挟持した状態を維持しながら、前記第1指部及び前記第2指部から前記物品に加えられる前記吸着部の吸着方向に直交する方向に対して略平行な成分の力、又は、前記物品に加えられる回転モーメントを相殺する大きさにそれぞれ設定する、付記2乃至付記4のいずれか1に記載の制御装置。
[付記6]
前記制御部は、前記第1駆動部及び前記第2駆動部を前記第1次トルクにより回動させる前に、前記第1指部及び前記第2指部が前記基準角度を維持するように制御する、付記2乃至付記5のいずれか1に記載の制御装置。
[付記7]
前記制御部は、前記第1次トルク、前記第2次トルク、前記第1次トルク及び前記第2次トルクで前記第1駆動部及び前記第2駆動部をそれぞれ回動させた状態の前記第1駆動部及び前記第2駆動部の前記基準角度に対する角度に基づいて、前記物品の変形しやすさに関する係数を推定し、前記目標トルクを算出する付記2乃至付記6のいずれか1に記載の制御装置。
[付記8]
プロセッサに、
把持装置の吸着部で把持対象の物品を吸着した状態を維持させながら、第1駆動部に連結された第1指部と、前記吸着部を挟んで前記第1指部と反対側の他方側にある第2指部とが前記物品に当接し、前記物品を挟むように前記第1駆動部を第1次トルクにより回動させること、
前記吸着部で前記物品を吸着した状態を維持させながら、前記第1次トルクにて前記第1指部及び前記第2指部が前記物品に当接した状態で前記第1次トルクよりも大きい第2次トルクにより前記第1駆動部を回動させること、
前記吸着部で前記物品を吸着した状態を維持させながら、前記第1次トルク及び前記第2次トルクで前記第1駆動部を回動させた状態の前記第1指部及び前記第2指部の基準角度に対するそれぞれの角度に応じて前記物品に対する前記第1指部及び前記第2指部のそれぞれの目標トルクを設定すること、
前記吸着部で前記物品を吸着した状態を維持しながら、前記第1指部及び前記第2指部を前記目標トルクにて前記第1駆動部を駆動させること、
を実行させる、把持装置の制御プログラム。
【符号の説明】
【0150】
1…把持装置、2…移動装置、3…検出装置、4…制御装置、11…本体部、12…吸着部、13…真空発生器、14…圧力センサ、17a…第1指部、17a0…回転軸、17b…第2指部、17b0…回転軸、18a…第1駆動部、18b…第2駆動部、19a…第1モータ、19a1…回転軸、19b…トルクセンサ、19c…角度センサ、20a…第2モータ、20a1…回転軸、20b…トルクセンサ、20c…角度センサ、24…電磁弁、41…計画部、42…制御部、43…解析部、44…主記憶部、45…補助記憶部。
図1
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