(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-14
(45)【発行日】2024-06-24
(54)【発明の名称】消毒保管庫
(51)【国際特許分類】
A61L 2/06 20060101AFI20240617BHJP
A47L 19/00 20060101ALI20240617BHJP
F25D 11/00 20060101ALI20240617BHJP
F25B 1/00 20060101ALI20240617BHJP
F25B 5/02 20060101ALI20240617BHJP
F25B 47/02 20060101ALI20240617BHJP
F25D 21/06 20060101ALI20240617BHJP
F25D 21/10 20060101ALI20240617BHJP
【FI】
A61L2/06
A47L19/00 B
F25D11/00 101B
F25B1/00 311C
F25B5/02 B
F25B1/00 331Z
F25B47/02 510A
F25D21/06 J
F25D21/10 A
F25B1/00 391
(21)【出願番号】P 2020050386
(22)【出願日】2020-03-21
【審査請求日】2023-02-10
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000194893
【氏名又は名称】ホシザキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141645
【氏名又は名称】山田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100076048
【氏名又は名称】山本 喜幾
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 泰光
(72)【発明者】
【氏名】石川 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】與語 勇一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 佑哉
(72)【発明者】
【氏名】黒木 亜美
(72)【発明者】
【氏名】平野 明彦
(72)【発明者】
【氏名】若槻 勇二
(72)【発明者】
【氏名】高木 友裕
【審査官】森 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-115569(JP,A)
【文献】特開2017-009147(JP,A)
【文献】特開2000-230767(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 2/06
A47L 19/00
F25D 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
庫内に収容した保管物を、ヒータ(11)およびファン(12)により生起される加熱空気によって加熱して消毒乾燥する消毒保管庫において、
圧縮機(28)、凝縮器(29)、膨張手段(30,31)および蒸発器(32,33)を、この順で冷媒が循環するように接続した冷凍装置(27)を備え、
前記冷凍装置(27)は、庫内空気と熱交換可能な前記蒸発器(32,33)を複数有し、
前記圧縮機(28)から吐出される冷媒の温度を検出する吐出側温度検出手段(51)と、
前記ヒータ(11)、ファン(12)および冷凍装置(27)を制御する制御装置(55)と、
前記凝縮器(29)と蒸発器(32,33)とを接続する冷媒管(36)に一端が接続し、他端が前記蒸発器(32,33)と圧縮機(28)とを接続する冷媒管(38)に接続する液バイパス管(49)と、
前記液バイパス管(49)に介挿されたバイパス弁(48)と、
前記液バイパス管(49)における前記バイパス弁(48)より下流側から分岐して圧縮機(28)に接続するバイパス管路(49b)と、を備え、
前記制御装置(55)は、前記冷凍装置(27)による冷却運転に際し、前記吐出側温度検出手段(51)で検出される冷媒温度が、冷媒バイパス用高負荷温度の場合は、前記バイパス弁(48)を開放し、前記凝縮器(29)で凝縮された冷媒を、液バイパス管(49)を介して蒸発器(32,33)と圧縮機(28)とを接続する冷媒管(38)および圧縮機(28)にバイパスするように冷凍装置(27)を制御するよう構成した
ことを特徴とする消毒保管庫。
【請求項2】
庫内に収容した保管物を、ヒータ(11)およびファン(12)により生起される加熱空気によって加熱して消毒乾燥する消毒保管庫において、
圧縮機(28)、凝縮器(29)、膨張手段(30,31)および蒸発器(32,33)を、この順で冷媒が循環するように接続した冷凍装置(27)を備え、
前記冷凍装置(27)は、庫内空気と熱交換可能な前記蒸発器(32,33)を複数有し、
前記圧縮機(28)から吐出される冷媒の温度を検出する吐出側温度検出手段(51)と、
前記ヒータ(11)、ファン(12)および冷凍装置(27)を制御する制御装置(55)と、
前記凝縮器(29)と蒸発器(32,33)とを接続する冷媒管(36)に一端が接続し、他端が蒸発器(32,33)と圧縮機(28)とを接続する冷媒管(38)に接続する液バイパス管(49)と、
前記液バイパス管(49)に介挿されたバイパス弁(48)と、
前記蒸発器(32,33)と圧縮機(28)とを接続する冷媒管(38)に設けた補助凝縮器(61)と、を備え、
前記制御装置(55)は、前記冷凍装置(27)による冷却運転に際し、前記吐出側温度検出手段(51)で検出される冷媒温度が、冷媒バイパス用高負荷温度の場合は、前記バイパス弁(48)を開放し、前記凝縮器(29)で凝縮された冷媒を、前記液バイパス管(49)を介して蒸発器(32,33)と圧縮機(28)とを接続する冷媒管(38)にバイパスするように冷凍装置(27)を制御するよう構成した
ことを特徴とする消毒保管庫。
【請求項3】
前記制御装置(55)は、前記冷凍装置(27)による冷却運転に際して前記吐出側温度検出手段(51)で検出される冷媒温度が、前記冷媒バイパス用高負荷温度より低い冷媒調節用高負荷温度の場合は、前記複数の蒸発器(32,33)における冷媒の入口側の夫々に設けた開閉弁(42,43)の何れかを閉成して、冷媒が循環する蒸発器(32,33)の数を制限するよう構成した請求項1~
2の何れか一項に記載の消毒保管庫。
【請求項4】
前記蒸発器(32,33)は、前記ファン(12)の作動により空気が流れる位置に配置されている請求項1~
3の何れか一項に記載の消毒保管庫。
【請求項5】
前記凝縮器(29)と蒸発器(32,33)とを接続する冷媒管(36)を流れる冷媒と、前記蒸発器(32,33)と圧縮機(28)とを接続する冷媒管(38)を流れる冷媒との間で熱交換させる熱交換部(39)を設けた請求項1~
4の何れか一項に記載の消毒保管庫。
【請求項6】
前記制御装置(55)は、前記冷凍装置(27)による冷却運転中に除霜開始条件が成立した場合に、前記複数の蒸発器(32,33)における冷媒の入口側の夫々に設けた開閉弁(42,43)を閉成して蒸発器(32,33)への冷媒の供給を除霜時間の間に亘って停止する除霜運転を、複数の蒸発器(32,33)で順に行わせ得るよう構成した請求項1~
5の何れか一項に記載の消毒保管庫。
【請求項7】
前記制御装置(55)は、前記冷凍装置(27)による冷却運転の終了条件が成立した後、前記凝縮器(29)と蒸発器(32,33)とを接続する冷媒管(36)に設けた開閉弁(42,43)を閉成した状態で、前記圧縮機(28)を駆動するポンプダウン運転を行わせ得るよう構成した請求項1~
6の何れか一項に記載の消毒保管庫。
【請求項8】
前記加熱空気により保管物を消毒乾燥する加熱運転の終了および前記冷凍装置(27)による冷却運転の開始を制御するタイマ装置(57)を備えた請求項1~
7の何れか一項に記載の消毒保管庫。
【請求項9】
前記冷凍装置(27)による冷却運転の終了時刻を設定可能な終了時刻設定手段(62)と、
庫内の温度を検出する庫内温度検出手段(26)および庫外の温度を検出する庫外温度検出手段(56)とを備え、
前記制御装置(55)は、前記加熱空気により保管物を消毒乾燥する加熱運転の終了後に、前記庫内温度検出手段(26)および庫外温度検出手段(56)で検出される庫内温度および庫外温度に基づき、現在の庫内温度が冷却運転を行った場合に冷却完了温度となるまでに要する冷却運転時間を算出して、前記終了時刻設定手段(62)に設定された終了時刻から冷却運転時間だけ逆算した時刻を冷却運転の開始時刻として更新し、
前記制御装置(55)は、現在時刻が前記開始時刻であるか、または開始時刻を過ぎていると判定した場合に、前記冷凍装置(27)による冷却運転を開始させるよう構成した請求項1~
8の何れか一項に記載の消毒保管庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、庫内に収容した保管物を加熱空気により消毒および乾燥を行う消毒保管庫に関するものである。
【背景技術】
【0002】
病院や学校その他レストラン等の厨房施設では、洗浄が終わり濡れた状態の食器や箸、その他ナイフやフォーク等の金属什器等の保管物を庫内に収容して、消毒状態で乾燥させる消毒保管庫が好適に使用されている。消毒保管庫は、電気ヒータに代表される加熱源および送風ファンを備え、該送風ファンを運転して加熱源と熱交換した加熱空気を、保管物を収容した保管室(庫内)に循環させ、該保管物を加熱空気で高温に加熱して殺菌消毒と乾燥とを行うようになっている。
【0003】
前記消毒保管庫は、保管物を乾燥する過程で消毒するので極めて衛生的である。ところで、厨房施設等では、消毒乾燥が終了した保管物を取り出し、該保管物に冷たい料理を盛り付ける等の配膳に使いたい、という需要が存在する。しかし、乾燥終了後の保管物は高温状態であるので、冷たい料理を盛り付ける等の配膳には適さない問題がある。そこで、加熱乾燥機能に加えて冷却機能を付帯させ、保管物の消毒乾燥をした後に、該保管物を配膳に必要な温度まで冷却する消毒保管庫が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に開示の消毒保管庫は、保管室内に外部空気を取り入れて一次冷却を行った後に、冷凍機により二次冷却を行うよう構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示の消毒保管庫では、外部空気を取入口から保管室内へ導入して一次冷却しているが、冷却媒体が常温の空気であるために保管物の冷却に時間を要する難点がある。また、保管室内に取り入れられる外部空気は浮遊菌(雑菌)や埃その他夾雑物を含んでいるから、消毒した保管物を再汚染することになる。このため、消毒保管庫の前記取入口に細かいメッシュのフィルタを配置しているが、圧力損失を生じて外部空気の取込み量が減少して一次冷却の効果が低下する恐れがある。また、フィルタを定期交換したり、一次冷却に際して前記取入口を開放すると共に消毒乾燥および二次冷却の際には取入口を閉成するダンパを設けたりする必要があって、製作費用や維持費用が嵩む難点も指摘される。また、一次冷却が不十分であると、二次冷却に際して冷凍機の圧縮機が過負荷となって効率的な冷却をなし得なくなる難点も指摘される。
【0006】
すなわち本発明は、前述した従来技術に内在する前記課題に鑑み、これを好適に解決するべく提案されたものであって、外気を取り入れることなく庫内の保管物を効果的に冷却することができる消毒保管庫を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、請求項1の発明に係る消毒保管庫は、
庫内に収容した保管物を、ヒータおよびファンにより生起される加熱空気によって加熱して消毒乾燥する消毒保管庫において、
圧縮機、凝縮器、膨張手段および蒸発器を、この順で冷媒が循環するように接続した冷凍装置を備え、
前記冷凍装置は、庫内空気と熱交換可能な前記蒸発器を複数有し、
前記圧縮機から吐出される冷媒の温度を検出する吐出側温度検出手段と、
前記ヒータ、ファンおよび冷凍装置を制御する制御装置と、
前記凝縮器と蒸発器とを接続する冷媒管に一端が接続し、他端が前記蒸発器と圧縮機とを接続する冷媒管に接続する液バイパス管と、
前記液バイパス管に介挿されたバイパス弁と、
前記液バイパス管における前記バイパス弁より下流側から分岐して圧縮機に接続するバイパス管路と、を備え、
前記制御装置は、前記冷凍装置による冷却運転に際し、前記吐出側温度検出手段で検出される冷媒温度が、冷媒バイパス用高負荷温度の場合は、前記バイパス弁を開放し、前記凝縮器で凝縮された冷媒を、液バイパス管を介して蒸発器と圧縮機とを接続する冷媒管および圧縮機にバイパスするように冷凍装置を制御するよう構成したことを要旨とする。
請求項1の発明では、庫内に外気を導入することなく冷凍装置による冷却運転を開始して、保管物を衛生的に冷却することができる。また、冷凍装置は、複数の蒸発器を備えているので、庫内を短時間で効率的に冷却することができる。更に、冷凍装置は、圧縮機から吐出される冷媒温度に基づいて圧縮機の負荷を抑制するように制御されるので、圧縮機が過負荷となることなく効率的な冷却運転を行い得る。また、凝縮器で凝縮された冷媒によって圧縮機に吸入される冷媒および圧縮機を冷却し得るようにしたので、庫内が高温状態での冷却運転の初期においても、圧縮機の温度が、正常に運転可能な上限値を超えてしまうのを防いで、圧縮機の負荷を抑制し得る。
【0008】
請求項4に係る発明は、
前記蒸発器は、前記ファンの作動により空気が流れる位置に配置されていることを要旨とする。
請求項4の発明では、加熱運転時に用いるファンを、冷却運転に際して蒸発器に空気を送るファンとして共用し得るので、部品点数の増加を抑えることができる。
【0009】
本願には、次のような技術的思想が含まれている。
庫内に収容した保管物を、ヒータおよびファンにより生起される加熱空気によって加熱して消毒乾燥する消毒保管庫において、
圧縮機、凝縮器、膨張手段および蒸発器を、この順で冷媒が循環するように接続した冷凍装置を備え、
前記冷凍装置は、庫内空気と熱交換可能な前記蒸発器を複数有し、
前記圧縮機から吐出される冷媒の温度を検出する吐出側温度検出手段と、
前記ヒータ、ファンおよび冷凍装置を制御する制御装置と、
前記凝縮器と蒸発器とを接続する冷媒管に一端が接続し、他端が蒸発器と圧縮機とを接続する冷媒管に接続する液バイパス管と、
前記液バイパス管に介挿されたバイパス弁と、を備え、
前記制御装置は、前記冷凍装置による冷却運転に際し、前記吐出側温度検出手段で検出される冷媒温度が、冷媒バイパス用高負荷温度の場合は、前記バイパス弁を開放し、前記凝縮器で凝縮された冷媒を、前記液バイパス管を介して蒸発器と圧縮機とを接続する冷媒管にバイパスするように冷凍装置を制御するよう構成したことを要旨とする。
この構成では、庫内に外気を導入することなく冷凍装置による冷却運転を開始して、保管物を衛生的に冷却することができる。また、冷凍装置は、複数の蒸発器を備えているので、庫内を短時間で効率的に冷却することができる。更に、冷凍装置は、圧縮機から吐出される冷媒温度に基づいて圧縮機の負荷を抑制するように制御されるので、圧縮機が過負荷となることなく効率的な冷却運転を行い得る。また、凝縮器で凝縮された冷媒によって圧縮機に吸入される冷媒を冷却し得るようにしたので、庫内が高温状態での冷却運転の初期においても、圧縮機の温度が、正常に運転可能な上限値を超えてしまうのを防いで、圧縮機の負荷を抑制し得る。
【0010】
本願には、次のような技術的思想が含まれている。
庫内に収容した保管物を、ヒータおよびファンにより生起される加熱空気によって加熱して消毒乾燥する消毒保管庫において、
圧縮機、凝縮器、膨張手段および蒸発器を、この順で冷媒が循環するように接続した冷凍装置を備え、
前記冷凍装置は、庫内空気と熱交換可能な前記蒸発器を複数有し、
前記圧縮機から吐出される冷媒の温度を検出する吐出側温度検出手段と、
前記ヒータ、ファンおよび冷凍装置を制御する制御装置と、
前記凝縮器と蒸発器とを接続する冷媒管に一端が接続し、他端が蒸発器と圧縮機とを接続する冷媒管に接続する液バイパス管と、
前記液バイパス管に介挿されたバイパス弁と、を備え、
前記制御装置は、前記冷凍装置による冷却運転に際し、前記吐出側温度検出手段で検出される冷媒温度が、冷媒バイパス用高負荷温度の場合は、前記バイパス弁を開放し、前記凝縮器で凝縮された冷媒を、前記液バイパス管を介して蒸発器と圧縮機とを接続する冷媒管にバイパスするように冷凍装置を制御するよう構成し、
前記制御装置は、前記加熱空気により保管物を消毒乾燥する加熱運転を開始する前に、前記凝縮器と蒸発器とを接続する冷媒管に設けた開閉弁を閉成した状態で、前記圧縮機を駆動するポンプダウン運転を行わせ得るよう構成したことを要旨とする。
この構成では、庫内に外気を導入することなく冷凍装置による冷却運転を開始して、保管物を衛生的に冷却することができる。また、冷凍装置は、複数の蒸発器を備えているので、庫内を短時間で効率的に冷却することができる。更に、冷凍装置は、圧縮機から吐出される冷媒温度に基づいて圧縮機の負荷を抑制するように制御されるので、圧縮機が過負荷となることなく効率的な冷却運転を行い得る。また、凝縮器で凝縮された冷媒によって圧縮機に吸入される冷媒を冷却し得るようにしたので、庫内が高温状態での冷却運転の初期においても、圧縮機の温度が、正常に運転可能な上限値を超えてしまうのを防いで、圧縮機の負荷を抑制し得る。更に、停電等によって冷却運転後のポンプダウン運転が行われなかった場合であっても、加熱運転前にポンプダウン運転を行うことで、加熱運転に際して冷媒および冷凍機油が熱劣化するのを抑えることができると共に、冷凍回路内の圧力上昇を抑えることができる。
本願には、次のような技術的思想が含まれている。
前記凝縮器と蒸発器とを接続する冷媒管に一端が接続し、他端が圧縮機に接続する液バイパス管と、
前記液バイパス管に介挿されたバイパス弁と、を備え、
前記制御装置は、前記冷凍装置による冷却運転に際して前記吐出側温度検出手段で検出される冷媒温度が、冷媒バイパス用高負荷温度の場合は、前記バイパス弁を開放し、前記凝縮器で凝縮された冷媒を、前記液バイパス管を介して圧縮機にバイパスするよう構成したことを要旨とする。
この構成では、凝縮器で凝縮された冷媒によって圧縮機を冷却し得るようにしたので、庫内が高温状態での冷却運転の初期においても、圧縮機の温度が、正常に運転可能な上限値を超えてしまうのを防いで、圧縮機の負荷を抑制し得る。
【0012】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、請求項2の発明に係る消毒保管庫は、
庫内に収容した保管物を、ヒータおよびファンにより生起される加熱空気によって加熱して消毒乾燥する消毒保管庫において、
圧縮機、凝縮器、膨張手段および蒸発器を、この順で冷媒が循環するように接続した冷凍装置を備え、
前記冷凍装置は、庫内空気と熱交換可能な前記蒸発器を複数有し、
前記圧縮機から吐出される冷媒の温度を検出する吐出側温度検出手段と、
前記ヒータ、ファンおよび冷凍装置を制御する制御装置と、
前記凝縮器と蒸発器とを接続する冷媒管に一端が接続し、他端が蒸発器と圧縮機とを接続する冷媒管に接続する液バイパス管と、
前記液バイパス管に介挿されたバイパス弁と、
前記蒸発器と圧縮機とを接続する冷媒管に設けた補助凝縮器と、を備え、
前記制御装置は、前記冷凍装置による冷却運転に際し、前記吐出側温度検出手段で検出される冷媒温度が、冷媒バイパス用高負荷温度の場合は、前記バイパス弁を開放し、前記凝縮器で凝縮された冷媒を、前記液バイパス管を介して蒸発器と圧縮機とを接続する冷媒管にバイパスするように冷凍装置を制御するよう構成したことを要旨とする。
請求項2の発明では、庫内に外気を導入することなく冷凍装置による冷却運転を開始して、保管物を衛生的に冷却することができる。また、冷凍装置は、複数の蒸発器を備えているので、庫内を短時間で効率的に冷却することができる。更に、冷凍装置は、圧縮機から吐出される冷媒温度に基づいて圧縮機の負荷を抑制するように制御されるので、圧縮機が過負荷となることなく効率的な冷却運転を行い得る。また、凝縮器で凝縮された冷媒によって圧縮機に吸入される冷媒を冷却し得るようにしたので、庫内が高温状態での冷却運転の初期においても、圧縮機の温度が、正常に運転可能な上限値を超えてしまうのを防いで、圧縮機の負荷を抑制し得る。更に、蒸発器において保管物と熱交換して過熱された冷媒を補助凝縮器によって冷却することができ、圧縮機の過熱を抑制し得る。
請求項3に係る発明は、
前記制御装置は、前記冷凍装置による冷却運転に際して前記吐出側温度検出手段で検出される冷媒温度が、前記冷媒バイパス用高負荷温度より低い冷媒調節用高負荷温度の場合は、前記複数の蒸発器における冷媒の入口側の夫々に設けた開閉弁の何れかを閉成して、冷媒が循環する蒸発器の数を制限するよう構成したことを要旨とする。
請求項3の発明では、圧縮機に高負荷が加わった場合に、蒸発器から圧縮機に戻る冷媒量を減少させるようにしたので、圧縮機に加わる負荷を低減することができる。
【0013】
請求項5に係る発明は、
前記凝縮器と蒸発器とを接続する冷媒管を流れる冷媒と、前記蒸発器と圧縮機とを接続する冷媒管を流れる冷媒との間で熱交換させる熱交換部を設けたことを要旨とする。
請求項5の発明では、熱交換部によって圧縮機に戻る冷媒を冷却することができ、圧縮機の過熱を抑制することができる。
【0014】
請求項6に係る発明は、
前記制御装置は、前記冷凍装置による冷却運転中に除霜開始条件が成立した場合に、前記複数の蒸発器における冷媒の入口側の夫々に設けた開閉弁を閉成して蒸発器への冷媒の供給を除霜時間の間に亘って停止する除霜運転を、複数の蒸発器で順に行わせ得るよう構成したことを要旨とする。
請求項6の発明では、複数の内の何れかの蒸発器で庫内を冷却しつつ、他の蒸発器に付着する霜が大きく成長して冷却能力が低下するのを防ぐことができる。
【0015】
請求項7に係る発明は、
前記制御装置は、前記冷凍装置による冷却運転の終了条件が成立した後、前記凝縮器と蒸発器とを接続する冷媒管に設けた開閉弁を閉成した状態で、前記圧縮機を駆動するポンプダウン運転を行わせ得るよう構成したことを要旨とする。
請求項7の発明では、冷却運転の終了条件が成立した後に、ポンプダウン運転を行って蒸発器に残留する冷媒および該冷媒に含まれる冷凍機油を凝縮器と圧縮機に回収し得るようにしたので、その後の加熱運転に際して冷媒および冷凍機油が熱劣化するのを抑えることができる。また、加熱運転に際して冷凍回路内の冷媒が加熱されて膨張することもなく、冷凍回路内の圧力上昇を抑えることができる。
【0016】
本願には、次のような技術的思想が含まれている。
前記制御装置は、前記加熱空気により保管物を消毒乾燥する加熱運転を開始する前に、前記凝縮器と蒸発器とを接続する冷媒管に設けた開閉弁を閉成した状態で、前記圧縮機を駆動するポンプダウン運転を行わせ得るよう構成したことを要旨とする。
この構成では、停電等によって冷却運転後のポンプダウン運転が行われなかった場合であっても、加熱運転前にポンプダウン運転を行うことで、加熱運転に際して冷媒および冷凍機油が熱劣化するのを抑えることができると共に、冷凍回路内の圧力上昇を抑えることができる。
【0017】
請求項8に係る発明は、
前記加熱空気により保管物を消毒乾燥する加熱運転の終了および前記冷凍装置による冷却運転の開始を制御するタイマ装置を備えたことを要旨とする。
請求項8の発明では、タイマ装置によって冷却運転を自動で開始させることができ、作業者の負担を軽減することができる。
【0018】
本願には、次のような技術的思想が含まれている。
前記蒸発器と圧縮機とを接続する冷媒管に、補助凝縮器を設けたことを要旨とする。
この構成では、蒸発器において保管物と熱交換して過熱された冷媒を補助凝縮器によって冷却することができ、圧縮機の過熱を抑制し得る。
【0019】
請求項9に係る発明は、
前記冷凍装置による冷却運転の終了時刻を設定可能な終了時刻設定手段と、
庫内の温度を検出する庫内温度検出手段および庫外の温度を検出する庫外温度検出手段とを備え、
前記制御装置は、前記加熱空気により保管物を消毒乾燥する加熱運転の終了後に、前記庫内温度検出手段および庫外温度検出手段で検出される庫内温度および庫外温度に基づき、現在の庫内温度が冷却運転を行った場合に冷却完了温度となるまでに要する冷却運転時間を算出して、前記終了時刻設定手段に設定された終了時刻から冷却運転時間だけ逆算した時刻を冷却運転の開始時刻として更新し、
前記制御装置は、現在時刻が前記開始時刻であるか、または開始時刻を過ぎていると判定した場合に、前記冷凍装置による冷却運転を開始させるよう構成したことを要旨とする。
請求項9の発明では、庫内温度や庫外温度の変化に応じて、冷却運転時間を必要最小限の長さに変更することができるので、冷凍装置をムダに運転するのを防ぎ、電気使用量を削減することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る消毒保管庫によれば、庫内に外気を取り入れることなく保管物を衛生的かつ効果的に冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】実施例に係る消毒保管庫を示す概略斜視図である。
【
図2】実施例に係る消毒保管庫を示す概略縦断正面図である。
【
図3】実施例に係る冷凍装置の冷凍回路を示す概略図である。
【
図4】実施例に係る消毒保管庫の制御ブロック図である。
【
図5】実施例に係るタイマ装置の設定に基づく消毒保管庫のタイミングチャート図である。
【
図6】第1の別実施例に係る冷凍装置の冷凍回路を示す概略図である。
【
図7】第2の別実施例に消毒保管庫の制御ブロック図である。
【
図8】第2の別実施例に係る消毒保管庫の冷却運転の開始時刻を算出する際の庫内温度と庫外温度との関係を示す説明図である。
【
図9】第2の別実施例に係る消毒保管庫のフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明に係る消毒保管庫につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照しながら以下説明する。実施例では、保管物である食器等を収容した食器籠を載置する棚が、上下複数段に設けられた食器カートを庫内に収容し、庫内で熱風を循環させることによって、食器カートに載せた食器籠内の食器等を消毒乾燥するカートイン仕様の消毒保管庫を挙げて説明するが、消毒保管庫は、庫内に設けた棚に食器籠を載置するよう構成した消毒保管庫等、その他の構成のものであってもよい。
【実施例】
【0023】
図1、
図2は、実施例の消毒保管庫を示す概略図である。消毒保管庫は、外装と内装との間にグラスウールや発泡ウレタン等の断熱材を設けた断熱構造の箱体10と、この箱体10の内部(すなわち庫内)で熱風(加熱空気)を循環させる熱風循環手段11,12と、この熱風循環手段11,12から送出される熱風の移動経路13を庫内の上面および両側面に沿うように形成する送風ガイド14と、を備える。また、箱体10の前面に食器カート15の出入口10aが設けられると共に、該出入口10aを開閉可能な扉16が箱体10に配設されている。
【0024】
前記食器カート15は、厨房等の食器洗浄エリアで洗浄された食器等を消毒保管庫に搬送するために用いられる。
図2に示すように、食器カート15は、上下に開口する矩形枠状の上枠17および下枠18と、上下方向に延在して上枠17・下枠18の各四隅を繋ぐ4つの柱19と、各柱19の内側に支持された上下複数段の棚20とを備えると共に、車輪を有するキャスター21が下枠18の下面の四隅に取り付けられている。すなわち、食器カート15は、各棚20に食器等を収容した食器籠を保持可能であり、また複数のキャスター21によって移動自在に構成されている。なお、棚20は、前後方向に延在する複数の棒体20aを左右方向に互いに離間するよう並べた柵状に形成されて、板厚方向(上下方向)への空気の通過を許容するよう構成してある。
【0025】
前記送風ガイド14は、
図2に示すように、庫内の上面に対して平行な上板22と、庫内の側面に対して平行な左右の側板23,23と、各側板23の前端および後端から庫内の対応する側面に向けて延出する延出板24,24とを備えている。そして、送風ガイド14の上板22と庫内の上面との間に、下向きコ字状の移動経路13のうち左右方向に延在する上流部13aが形成されている。また、送風ガイド14の側板23,23および延出板24,24と庫内の側面とで囲まれる内側に、移動経路13のうち上下方向に延在する下流部13bが形成されている。また、送風ガイド14における両側板23,23は、下流部13bの下流端を閉塞するように構成されている。
【0026】
前記熱風循環手段11,12は、庫内の空気を加熱するヒータ11と、該ヒータ11により加熱された空気(熱風)を送風するシロッコファン等からなるファン12とから構成される。ヒータ11は、前記移動経路13の上流部13aにおいて、後述する吸込口22aが内側に位置するように環状に形成されている。また、ファン12は、庫外に配置したモータ12aと、該モータ12aで回転駆動される羽根車12bとからなり、該羽根車12bが、上流部13aにおけるヒータ11の内側に配置されて、該羽根車12bを回転駆動することで、ヒータ11で加熱された熱風を左右両側へ送出するよう構成される。
【0027】
図2に示すように、庫内には、前記食器カート15を収容可能な収容空間25が、前記送風ガイド14の内側に形成されている。庫内の底面は、消毒保管庫が設置される厨房等の床面からの食器カート15の乗り上げが可能な高さ(キャスター21の車輪の回転中心より下側)に位置している。なお、箱体10に対して食器カート15を出し入れする際に、厨房等の床面に、庫内底面に向けて上方傾斜する傾斜面を有するスロープ部材を配置したり、床面を掘り下げた凹部に箱体底部を収容するように箱体10を配置して庫内底面と床面とを同一高さにしたりすることで、食器カート15の箱体10に対する出し入れを容易にすることができる。
【0028】
図2に示すように、前記送風ガイド14には、左右の側板23,23における食器カート15の各棚20の間の高さ位置に、前記移動経路13から収容空間25側への空気(熱風)の吹出口23aが形成されている。また、送風ガイド14には、上板22における熱風循環手段11,12(12b)の下方位置に、収容空間25から移動経路13側への空気(熱風)の吸込口22aが形成されている。このため、
図2に矢印で示すように、熱風循環手段11,12から移動経路13の上流部13aに沿って左右方向に送出される熱風は、移動経路13の下流部13b,13b内を下方へ移動し、その下方への移動途中で送風ガイド14の吹出口23aを介して収容空間25に吹き出されて上昇して、この収容空間25の上端から送風ガイド14の吸込口22aを介して熱風循環手段11,12(12b)が位置する上流部13aに帰還する。なお、吸込口22aの近傍に、庫内温度を検出する庫内温度センサ(庫内温度検出手段)26が配設されている。
【0029】
消毒保管庫は、庫内(収容空間25)を冷却する冷凍装置27を備えている。冷凍装置27は、
図3に示すように、冷媒を圧縮する圧縮機28と、圧縮機28から圧送された冷媒を冷却して液化させる凝縮器29と、凝縮器29にて液化させた液化冷媒を膨張させて低圧の液化冷媒とする膨張手段としての膨張弁30,31と、膨張弁30,31により膨張させた液化冷媒を気化させる蒸発器32,33とを備えている。冷凍装置27は、圧縮機28、凝縮器29、膨張弁30,31および蒸発器32,32を冷媒管34によって環状に接続して、冷媒がこの順で循環する冷凍回路を構成している。実施例の冷凍装置27は、冷凍回路において並列の関係で接続された複数(実施例では2つ)の蒸発器32,33を備え、該蒸発器32,33が、前記移動経路13の上流部13aにおいて、羽根車12bとヒータ11との間に配置されて、羽根車12bの作動(回転)によって送られる空気との熱交換を行い得るよう構成される。実施例では、庫内の空気を冷却する第1蒸発器32と第2蒸発器33とが、羽根車12bを挟んで配置され、第1蒸発器32と第2蒸発器33とにより冷却された空気(冷風)を羽根車12bによって送風するよう構成される。すなわち、蒸発器32,33は、前記ヒータ11とによって熱風を生起させるファン12の作動により空気が流れる位置に配置されて、熱風により保管物を消毒乾燥する加熱運転と、冷凍装置27による冷風での冷却運転とで、ファン12を共用し得るよう構成される。なお、第1蒸発器32の上流側に配設される膨張弁30を第1膨張弁30と指称すると共に、第2蒸発器33の上流側に配設される膨張弁31を第2膨張弁31と指称する。
【0030】
図3に示すように、前記冷媒管34は、圧縮機28と凝縮器29とを接続する第1接続管路35と、凝縮器29と膨張弁30,31とを接続する第2接続管路36と、膨張弁30,31と蒸発器32,33とを接続する第3接続管路37,37と、蒸発器32,33と圧縮機28とを接続する第4接続管路38とを備える。冷凍回路には、凝縮器29と膨張弁30,31とを接続する第2接続管路36(凝縮器29と蒸発器32,33とを接続する冷媒管(高圧側の冷媒管))と、蒸発器32,33と圧縮機28とを接続する第4接続管路38(蒸発器32,33と圧縮機28とを接続する冷媒管(低圧側の冷媒管))とを、所定長さに亘って近接または接触するように配置した熱交換部(負荷抑制手段)39が設けられ、該熱交換部39において、第2接続管路36を流れる液冷媒と第4接続管路38を流れるガス冷媒とが熱交換可能に構成される。熱交換部39の長さは、圧縮機28からの冷媒の吐出側での冷媒温度を検出する後述の吐出側温度センサ51の検出温度が、予め設定された規定温度以下に収まる範囲で、庫内の温度が高いときの冷却能力の低下を抑えることができる長さ(例えば、250mm)に設定される。
【0031】
図3に示すように、前記第2接続管路36には、凝縮器29から流出する高圧の液冷媒に含まれる水分を除去するドライヤ40および管路内の液冷媒の流れを目視可能なサイトグラス41が、前記熱交換部39より上流側において直列に接続されている。また、第2接続管路36は、熱交換部39の下流側において、第1管路36aと第2管路36bとに分岐し、第1管路36aが、第1電磁弁(負荷抑制手段)42を介して第1膨張弁30の入口側に接続されると共に、第2管路36bが、第2電磁弁(負荷抑制手段)43を介して第2膨張弁31の入口側に接続されている。第1電磁弁42および第2電磁弁43は、第1および第2蒸発器32,33への冷媒の入口側に配設される開閉弁であって、各電磁弁42,43を夫々独立して開閉することで、第1および第2蒸発器32,33への冷媒の供給および供給遮断を選択的に行い得るよう構成される。前記第4接続管路38の上流部は、第1蒸発器32の出口側に接続される第1流出管路38aと、第2蒸発器33の出口側に接続される第2流出管路38bとに分岐されている。第1流出管路38aに、第1蒸発器32から流出する冷媒ガスの温度を検出する第1感温筒44が配設され、該第1感温筒44の検出温度に基づいて第1膨張弁30の開度が調節される。また、第2流出管路38bに、第2蒸発器33から流出する冷媒ガスの温度を検出する第2感温筒45が配設され、該第2感温筒45の検出温度に基づいて第2膨張弁31の開度が調節される。第4接続管路38には、前記熱交換部39より下流側にチェック弁46が接続されて、該チェック弁46より下流側から上流側へ冷媒が逆流するのを防止するよう構成される。また、前記圧縮機28とチェック弁46との間の第4接続管路38に、容器内に流入した冷媒を気体と液体とに分離させ、ガス冷媒を圧縮機28に戻すためのアキュームレータ47が接続されている。
【0032】
図3に示すように、前記第2接続管路36におけるサイトグラス41と熱交換部39との間に、液バイパス管(負荷抑制手段)49の入口側(一端)が接続されると共に、該液バイパス管49には、電磁弁などのバイパス弁(負荷抑制手段)48が介挿されている。液バイパス管49は、バイパス弁48より下流側において第1バイパス管路49aと第2バイパス管路(バイパス管路)49bとに分岐し、第1バイパス管路49aの出口側(他端)が前記チェック弁46とアキュームレータ47との間の第4接続管路38に接続されると共に、第2バイパス管路49bの出口側が前記圧縮機28に接続される。すなわち、バイパス弁48を開放して凝縮器29から流出する低温の液化冷媒を、第1バイパス管路49aを介して第4接続管路38に供給する(所謂、液バイパスする)ことで該第4接続管路内の冷媒ガスを冷却すると共に、第2バイパス管路49bを介して圧縮機28に供給する(所謂、液インジェクションする)ことで該圧縮機内部を冷却するよう構成される。また、冷凍装置27は、凝縮器29に風を送って冷媒の凝縮、すなわち温熱の放出を促進する凝縮器用ファン50を備える。
【0033】
消毒保管庫は、吐出側温度センサ(吐出側温度検出手段)51と、高圧圧力センサ(高圧圧力検出手段)52と、吸入側温度センサ(吸入側温度検出手段)53と、低圧圧力センサ(低圧圧力検出手段)54と、を有している。吐出側温度センサ51は、圧縮機28の吐出口周辺に設けられ、圧縮機28から吐出される冷媒の温度である吐出温度を検出する。高圧圧力センサ52は、圧縮機28の吐出口周辺に設けられ、圧縮機28から吐出される冷媒の圧力である高圧圧力を検出する。吸入側温度センサ53は、圧縮機28の吸入口周辺に設けられ、圧縮機28に吸入される冷媒の温度である吸入温度を検出する。低圧圧力センサ54は、圧縮機28の吸入口周辺に設けられ、圧縮機28に吸入される冷媒の圧力である低圧圧力を検出する。
【0034】
消毒保管庫は、前記熱風循環手段11,12および冷凍装置27を制御する制御装置55を有している。
図4に示す如く、制御装置55には、ヒータ11、ファン12、圧縮機28、第1電磁弁42、第2電磁弁43、バイパス弁48および凝縮器用ファン50などの各種アクチュエータが接続されると共に、庫内温度センサ26、吐出側温度センサ51、高圧圧力センサ52、吸入側温度センサ53および低圧圧力センサ54などの各種センサが接続されている。そして、制御装置55は、各種センサ26,51,52,53,54での検出情報(温度や圧力など)に基づいて、各種アクチュエータ11,12,28,42,43,48,50の動作を制御する。
【0035】
前記制御装置55は、庫内温度センサ26で検出される庫内温度に基づいてヒータ11をON-OFF制御することで、収容空間25の温度を、予め設定された設定温度T(例えば、90℃)に保持する。また制御装置55は、後述するタイマ装置57に設定した加熱時間だけ庫内温度を設定温度Tに保持した後に、ヒータ11をOFF制御し、熱風により保管物を消毒乾燥する加熱運転を終了させるよう構成される。
【0036】
前記制御装置55は、前記加熱運転を終了した後に、前記冷凍装置27による冷却運転を開始して庫内を冷却するよう構成される。実施例では、圧縮機28を駆動(ON)すると共に前記ファン12を作動(ON)することで、前記蒸発器32,33で冷却された冷風を庫内に循環して保管物を冷却する。冷凍装置27は、冷却運転において圧縮機28の負荷を抑制する負荷抑制手段39,42,43,48,49を備え、制御装置55は、冷凍装置27による冷却運転に際し、前記吐出側温度センサ51で検出される冷媒の吐出温度に基づいて、負荷抑制手段39,42,43,48,49により圧縮機28の負荷を抑制するように冷凍装置27を制御する。
【0037】
前記制御装置55は、前記冷凍装置27による冷却運転に際して、前記吐出側温度センサ51で検出される冷媒の吐出温度が、前記圧縮機28に高負荷が加わっている第1の高負荷温度(冷媒バイパス用高負荷温度)の場合は、前記バイパス弁48を開放し、前記凝縮器29で凝縮された冷媒を、前記液バイパス管49を介して第4接続管路38および圧縮機28にバイパスするよう構成される。また制御装置55は、バイパス弁48を開放した状態で、前記吐出側温度センサ51で検出される冷媒の吐出温度が、予め設定されたバイパス終了温度まで低下したことを条件としてバイパス弁48を閉成して、凝縮器29で凝縮された冷媒の第4接続管路38および圧縮機28へのバイパスを停止するよう構成される。なお、第1の高負荷温度とは、圧縮機28が正常に運転可能な温度の上限値であって、例えば80℃であり、バイパス終了温度は、第1の高負荷温度より5℃度だけ低い温度である。
【0038】
前記制御装置55は、前記冷凍装置27による冷却運転に際し、前記吐出側温度センサ51で検出される冷媒の吐出温度が、圧縮機28に高負荷が加わっている第2の高負荷温度(冷媒調節用高負荷温度)の場合は、前記第1電磁弁42および第2電磁弁43の何れか一方を閉成し、蒸発器32,33から圧縮機28に戻る冷媒量を減少させるよう構成される。すなわち、2つの内の何れか一方の蒸発器32,33への冷媒の供給を停止して圧縮機28に戻る冷媒量を減少することで、圧縮機28の高負荷を低減するよう構成される。また制御装置55は、一方の蒸発器32,33のみから圧縮機28へ冷媒が戻る状態において、前記吐出側温度センサ51で検出される冷媒の吐出温度が、予め設定された調節終了温度まで低下したことを条件として全ての電磁弁42,43を開放するよう構成される。なお、前記第2の高負荷温度は、前記バイパス終了温度より低い値に設定されると共に、調節終了温度は、第2の高負荷温度より低い値に設定される。
【0039】
前記制御装置55は、前記冷凍装置27による冷却運転に際し、所定の除霜開始条件が成立すると除霜運転を行う。除霜開始条件としては、「前回の除霜運転が終了してから一定時間が経過したこと」、「予め設定されている時刻に達したこと」、「使用者によって除霜の開始操作がされたこと」等とすることができ、該除霜開始条件は適宜に決定可能である。実施例の消毒保管庫では、除霜開始条件が成立すると、制御装置55は、前記第1電磁弁42または第2電磁弁43の何れか一方を、予め設定された除霜時間の間に亘って閉成し、対応する蒸発器32,33への冷媒の供給を一時的に停止する除霜運転を、第1蒸発器32と第2蒸発器33とで交互に行わせるよう構成される。すなわち、第1蒸発器32および第2蒸発器33の何れか一方への冷媒の供給が停止されたもとで、前記ファン12の作動によって空気が流れることで、冷媒が流れない蒸発器32,33の除霜が行われるようになっている。
【0040】
前記制御装置55は、前記冷凍装置27による冷却運転の終了条件(後述)が成立した後、前記パイパス弁48,第1および第2電磁弁42,43を閉成した状態で、前記圧縮機28を駆動するポンプダウン運転(PD)を行い得るよう構成される。実施例では、冷却運転の終了条件が成立した後、圧縮機28の駆動を継続し、前記低圧圧力センサ54の検出圧力が、予め設定されたポンプダウン終了圧力まで低下した際に、制御装置55は圧縮機28の駆動を停止するよう構成される。すなわち、冷却運転の終了条件が成立した後にポンプダウン運転を行うことで、蒸発器32,33に残留する冷媒および該冷媒に含まれる冷凍機油を凝縮器29と圧縮機28に回収することができるようになっている。また、実施例の消毒保管庫では、前記ヒータ11およびファン12により生起した加熱空気により保管物を加熱する加熱運転を開始する前に、前記制御装置55は、前記ポンプダウン運転を行い得るよう構成される。なお、実施例では、制御装置55は、冷却運転の終了条件が成立した後のポンプダウン運転は、該終了条件が成立したことを条件として開始し、加熱運転開始前のポンプダウン運転は、低圧圧力センサ54の検出圧力が、予め設定されたポンプダウン開始圧力であることを条件に開始するよう構成される。このポンプダウン開始圧力とは、冷却運転後のポンプダウン運転が行われずに、蒸発器32,33や第4接続管路38に冷媒が残留している状態での圧力である。また、加熱運転の開始前に行われたポンプダウン運転は、低圧圧力センサ54の検出圧力がポンプダウン終了圧力まで低下した際に停止される。
【0041】
実施例の消毒保管庫は、前記加熱運転の終了および前記冷凍装置27による冷却運転の開始を制御するタイマ装置57が設けられる(
図4参照)。タイマ装置57は、制御装置55に接続されるタイマ設定部58と、制御装置55に設けられた計時部59とを備える。タイマ設定部58は、基準クロックを生成するクロック回路と、基準クロックに基づき時間を計時する時間計時手段と、タイマ時刻を設定するタイマ時刻設定手段と、時間計時手段にて計時した現在時刻がタイマ時刻設定手段にて設定したタイマ時刻に到達すると、駆動制御信号を出力する信号出力部とを備える。実施例のタイマ設定部58は、タイマ時刻設定手段によって、加熱開始タイマ時刻および冷却開始タイマ時刻を設定することができ、加熱開始タイマ時刻に到達すると、制御装置55に、駆動制御信号としての加熱運転開始信号を出力し、冷却開始タイマ時刻に到達すると、制御装置55に、駆動制御信号としての冷却運転開始信号を出力するよう構成される(
図5参照)。そして、制御装置55は、加熱運転開始信号が出力されると、前記ヒータ11とファン12とによる加熱運転を開始し、冷却運転開始信号が出力されると、前記冷凍装置27による冷却運転を開始(圧縮機28およびファン12をON)するよう構成される。
【0042】
前記計時部59は、前記加熱運転を行う加熱時間を設定可能に構成され、制御装置55は、前記庫内温度センサ26で検出される庫内温度が、前記設定温度Tを最初に越えた条件が満たされたときに、計時部59の加熱時間の計時を開始するよう設定される。そして、制御装置55は、計時部59による加熱時間の計時終了と同時に、庫内温度センサ26の検出温度に基づく制御に優先してヒータ11をOFF制御し、加熱運転を終了させる。なお、実施例では、消毒保管庫において加熱運転および冷却運転を行っていない状態で、制御装置55に接続する運転ボタンを押圧することで、該運転ボタンの押圧により状態が切り替わるスイッチからの信号に基づいて、消毒保管庫は、加熱運転および冷却運転が可能な運転待機状態となり、前記タイマ設定部58の時間計時手段による計時が開始するよう構成される。また、冷却運転を行っている状態で、前記運転ボタンを押圧すことにより状態が切り替わったスイッチからの信号(冷却運転終了信号)に基づいて、制御装置55は、冷却運転を終了するよう構成される。実施例では、運転ボタンの押圧によりスイッチから冷却運転終了信号が出力(制御装置55へ信号が入力)されることが、冷却運転の終了条件の成立となる。なお、冷却運転後にポンプダウン運転を行う実施例の消毒保管庫では、冷却運転の終了条件の成立によって、ファン12のみをOFF制御し、ポンプダウン運転の終了条件の成立(ポンプダウン終了圧力の検出)によって圧縮機28をOFF制御する。
【0043】
〔実施例の作用〕
次に、実施例に係る消毒保管庫の作用について説明する。なお、前記タイマ設定部58に、加熱開始タイマ時刻、冷却開始タイマ時刻が設定されているものとする。
【0044】
消毒保管庫において、前記収容空間25に、保管物を収容した複数の食器籠を棚20に載置した食器カート15を収容したもとで、運転ボタンを押圧すると、タイマ設定部58の時間計時手段による計時が開始される。時間計時手段にて時間を計時した現在時刻が、タイマ時刻設定手段にて設定した加熱開始タイマ時刻に到達すると、信号出力部から加熱運転開始信号が出力され、前記制御装置55は、該加熱運転開始信号に基づいて前記ヒータ11とファン12とによる加熱運転を開始する(
図5参照)。すなわち、ヒータ11およびファン12がON制御されて、熱風を移動経路13と収容空間25とで循環させ、該収容空間25の内部を昇温させる。前記庫内温度センサ26が、予め設定された設定温度Tを検出すると、前記計時部59の計時を開始する。以後は、庫内温度センサ26による検出温度に基づいて、制御装置55は、ヒータ11をON-OFF制御して、収容空間25の温度を設定温度Tに保持する。そして、制御装置55は、計時部59の計時終了と同時に、前記庫内温度センサ26の検出温度に基づく制御に優先してヒータ11をOFF制御し、保管物を消毒乾燥する加熱運転を終了させる。
【0045】
なお、制御装置55は、加熱運転開始時に、前記低圧圧力センサ54がポンプダウン開始圧力を検出していない場合、ポンプダウン運転を行うことなく加熱運転を開始する。これに対し、低圧圧力センサ54がポンプダウン開始圧力を検出している場合は、ポンプダウン運転(PD)を行った後に加熱運転を開始する。すなわち、加熱運転を開始する前に、前記蒸発器32,33や第4接続管路38に残留する冷媒を凝縮器29と圧縮機28に回収する。
【0046】
前記加熱運転の終了後、前記時間計時手段にて時間を計時した現在時刻が、タイマ時刻設定手段にて設定した冷却開始タイマ時刻に到達すると、信号出力部から冷却運転開始信号が出力され、前記制御装置55は、該冷却運転開始信号に基づいて前記冷凍装置27による冷却運転を開始する(
図5参照)。すなわち、圧縮機28およびファン12をON制御する。なお、冷却運転に際して前記バイパス弁48は閉成していると共に、前記電磁弁42,43は開放しており、圧縮機28から吐出されて凝縮器29で凝縮された冷媒(液冷媒)は、前記蒸発器32,33に供給される。これにより、蒸発器32,33を流れる冷媒との間で熱交換した冷風が、前記移動経路13と収容空間25とで循環し、該収容空間25の内部を冷却させる。そして、冷却運転中に前記運転ボタンが押圧されて冷却運転終了信号が出力される(終了条件が成立する)と、制御装置55は、ファン12をOFF制御することで、保管物を冷却する冷却運転を終了させる。また、制御装置55は、冷却運転の終了条件が成立すると、圧縮機28を駆動したままファン12のみをOFF制御すると共に、前記バイパス弁48、第1および第2電磁弁42,43を閉成してポンプダウン運転(PD)を行う。このポンプダウン運転により、前記蒸発器32,33や第4接続管路38に残留する冷媒は凝縮器29と圧縮機28に回収される。そして、制御装置55は、前記低圧圧力センサ54がポンプダウン終了圧力を検出すると、ポンプダウン運転を終了(圧縮機28-OFF、ファン12-OFF、電磁弁42,43-開放)し、消毒保管庫の運転を停止する。
【0047】
実施例の消毒保管庫は、加熱運転の終了後に、収容空間(庫内)25に外気を導入することなく冷凍装置27による冷却運転を開始して保管物を冷却するよう構成したので、保管物を衛生的に冷却することができる。また、冷凍装置27は、複数の蒸発器32,33を備えているので、収容空間25を短時間で効率的に冷却することができる。更に、加熱運転時に用いるファン12を、冷却運転に際して蒸発器32,33に空気を送るファンとして共用しているので、部品点数の増加を抑えることができる。更にまた、冷気は、送風ガイド14の複数の吹出口23aから各棚20の間に吹き出されるから、加熱運転時と同様に冷却運転に際しても収容空間25の温度分布を均一化させることができる。
【0048】
ここで、加熱運転の終了直後に冷却運転を開始すると、前記収容空間25が高温であるため、前記蒸発器32,33で熱交換した冷媒も高温となることから、該冷媒が戻る前記圧縮機28が過熱される。そして、前記吐出側温度センサ51で検出される冷媒の吐出温度が、圧縮機28が高負荷となる第1の高負荷温度になると、前記制御装置55は、前記バイパス弁48を開放し、前記凝縮器29で凝縮された冷媒を、液バイパス管49を介して第4接続管路38および圧縮機28にバイパスする。これにより、圧縮機28に吸入される冷媒の温度を低下させると共に、圧縮機28の内部を冷却することができ、該圧縮機28の温度を素早く低下させて高負荷状態を解消することができる。すなわち、加熱運転の終了直後に開始された冷却運転の初期においても、液バイパス管49およびバイパス弁48からなる負荷抑制手段によって圧縮機28に加わる負荷を抑制して、圧縮機28の温度が、正常に運転可能な上限値を超えてしまうのを防ぐことができる。前記吐出側温度センサ51で検出される冷媒の吐出温度が、バイパス終了温度になると、制御装置55は、前記バイパス弁48を閉成する。これにより、凝縮器29で凝縮された冷媒が蒸発器32,33に供給され、該蒸発器32,33を流れる冷媒との間で熱交換した冷風による収容空間25の冷却が行われる。
【0049】
前記2つの蒸発器32,33に冷媒が供給されている状態で、前記吐出側温度センサ51で検出される冷媒の吐出温度が、前記第2の高負荷温度になると、前記制御装置55は、冷媒が循環する蒸発器32,33の数を制限するよう、前記第1電磁弁42および第2電磁弁43の何れか一方を閉成するよう制御する。これにより、蒸発器32,33を介して圧縮機28に戻る冷媒量が減少し、該圧縮機28に加わる負荷を低減することができる。すなわち、冷凍装置27の冷却運転中において、電磁弁42,43からなる負荷抑制手段によって、圧縮機28に加わる負荷を抑制することができる。そして、吐出側温度センサ51で検出される冷媒の吐出温度が、前記調節終了温度になると、制御装置55は、全ての電磁弁42,43を開放するよう制御する。すなわち、前記収容空間25の温度が高い状態での冷却運転では、2基の蒸発器32,33を用いて冷却運転すると、圧縮機28に戻る温度の高い冷媒の量が多くなり、圧縮機28に加わる負荷が大きくなって効率的な運転ができなくなるおそれがあるが、1基の蒸発器32,33のみで冷却運転を行うことで圧縮機28に加わる負荷を低減することができる。また、圧縮機28に加わる負荷が小さくなれば(冷媒の吐出温度が調節終了温度以下になれば)、2基の蒸発器32,33で冷却運転を行うので、冷却速度を速くすることができる。
【0050】
実施例の消毒保管庫は、前記第2接続管路36を流れる冷媒と、前記第4接続管路38を流れる冷媒との間で熱交換させる前記熱交換部39を設けている。従って、冷却運転中において前記収容空間25の温度(保管物の温度)が高く、冷凍回路を流れる冷媒の温度が、蒸発器出口温度>凝縮器出口温度の関係となっている場合は、熱交換部39によって圧縮機28に戻る冷媒(ガス冷媒)を冷却することができ、圧縮機28の過熱を抑制することができる。また、冷却運転によって収容空間25の温度が低下し、冷凍回路を流れる冷媒の温度が、蒸発器出口温度<凝縮器出口温度の関係になると、凝縮器29から流出した冷媒(液冷媒)を過冷却することができ、蒸発器32,33での冷却能力を向上することができる。
【0051】
ここで、実施例の消毒保管庫のように、前記ヒータ11と蒸発器32,33とを同一空間(上流部13a)に配置した構成では、加熱運転に際してヒータ11によって蒸発器32,33が加熱されるため、該蒸発器32,33に冷媒が残っていたり、該冷媒に冷凍機油が含まれている場合、加熱運転によって蒸発器32,33に残留する冷媒や冷凍機油が加熱されることによって熱劣化するおそれがある。また、蒸発器32,33に残留する冷媒が膨張して圧力が異常上昇するおそれもある。しかしながら、実施例の消毒保管庫は、冷却運転の終了条件が成立した後に、ポンプダウン運転を行い、蒸発器32,33に残留する冷媒および該冷媒に含まれる冷凍機油を凝縮器29と圧縮機28に回収するようにしたので、その後の加熱運転に際し、蒸発器32,33がヒータ11で加熱されても、冷媒および冷凍機油が熱劣化するのを抑えることができる。また、加熱運転に際して冷凍回路内の冷媒が加熱されて膨張することもなく、冷凍回路内の圧力上昇を抑えることができる。これにより、冷却運転開始の始動性が向上する。
【0052】
また、実施例の消毒保管庫は、前記加熱運転を開始する前にポンプダウン運転を行い得るよう構成したので、停電等によって冷却運転後のポンプダウン運転が行われなかった場合であっても、加熱運転前にポンプダウン運転を行うことで、加熱運転に際して冷媒および冷凍機油が熱劣化するのを抑えることができると共に、冷凍回路内の圧力上昇を抑えて冷却運転開始の始動性を向上することができる。
【0053】
実施例の消毒保管庫は、前記冷却運転中に除霜開始条件が成立すると、前記制御装置55は、前記第1電磁弁42または第2電磁弁43の何れか一方を、予め設定された除霜時間の間に亘って閉成し、対応する蒸発器32,33への冷媒の供給を一時的に停止する除霜運転を、第1蒸発器32と第2蒸発器33とで交互に行わせる。すなわち、第1蒸発器32および第2蒸発器33の何れか一方への冷媒の供給が停止されたもとで、前記ファン12の作動によって空気が流れることで、冷媒が流れない蒸発器32,33の除霜が行われる。これにより、蒸発器32,33に付着する霜が大きく成長して蒸発器32,33での冷却能力が低下するのを防ぐことができる。また、一方の蒸発器32,33の除霜中であっても、他方の蒸発器32,33での冷却運転によって収容空間25を冷却することができる。
【0054】
ここで、前記収容空間25に食器カート15を収容した後、直ちに加熱運転を開始することなく、予め決められた予定時刻から開始する要請があった場合、従来は、予定時刻に作業者が消毒保管庫の設置場所まで行って、手動操作で加熱運転を開始させる煩雑な作業が必要となったり、加熱運転の開始操作を忘れてしまう問題があった。しかし、実施例の消毒保管庫は、前記タイマ装置57によって、加熱運転および冷却運転を自動で開始し得るよう構成したので、作業者の負担を軽減することができると共に、加熱運転の開始操作を忘れてしまうことも抑制することができる。すなわち、収容空間25に食器カート15を収容した際に、タイマ装置57に各種開始タイマ時刻を設定し、運転ボタンを押圧して消毒保管庫を運転待機状態としておけば、予定時刻にわざわざ消毒保管庫の設置場所まで行く必要もない。また、作業者に手間を掛けさせることなく、夜間等の電気料金が低い時間帯に加熱運転や冷却運転を開始させることもでき、電気料金を安く抑えることができる。更に、時間帯によっては冷却運転時の騒音等が問題となる施設等では、騒音が問題にならない時間帯に運転するように設定することが可能である。更にまた、複数の消毒保管庫を使用している施設において、各消毒保管庫の夫々に加熱開始タイマ時刻および冷却開始タイマ時刻を設定しておけば、複数の消毒保管庫を決められた順で作業者が操作して加熱運転を開始させる必要がなくなり、作業者の負担を軽減し得る。
【0055】
〔別実施例〕
図6~
図9は、消毒保管庫の別実施例を示すものであって、別実施例については、実施例の構成と異なる部分についてのみ説明する。また、実施例で説明した同一部材には、同じ符号を付すものとする。
【0056】
〔第1の別実施例〕
図6は、第1の別実施例に係る消毒保管庫の冷凍装置60を示すものであって、前記第1流出管路38aと第2流出管路38bとの合流部と、前記熱交換部39との間の第4接続管路38(冷媒管34)に、補助凝縮器(負荷抑制手段)61が設けられている。補助凝縮器61は、前記凝縮器用ファン50の作動によって空気が流れる位置に配置され、補助凝縮器61を流通する冷媒を、該補助凝縮器61によって冷却し得るよう構成される。すなわち、冷凍装置60による冷却運転に際して収容空間25が高温の場合に、蒸発器32,33において保管物等と熱交換して過熱された冷媒を補助凝縮器61によって冷却することができ、圧縮機28の過熱を抑制し得る。
【0057】
なお、第1の別実施例において、蒸発器32,33から流出した冷媒を、補助凝縮器61をバイパスして熱交換部39の上流側に供給するバイパス回路を付加すると共に、該バイパス回路に電磁弁を設ける。そして、前記庫内温度センサ26が、予め設定された低負荷温度を検出した場合に、バイパス回路の電磁弁を制御装置55によって開放制御する構成を採用することができる。前記低負荷温度は、蒸発器32,33から圧縮機28に戻る冷媒によって、該圧縮機28に高負荷が加わらない温度であればよい。また、第1の別実施例において、補助凝縮器61を空冷する専用のファンを設けてもよいし、該補助凝縮器61を水冷式とすることもできる。
【0058】
〔第2の別実施例〕
図7は、第2の別実施例に係る消毒保管庫の制御ブロック図であって、前記制御装置55に、前記箱体10の外部(庫外)の温度を検出する庫外温度センサ(庫外温度検出手段)56が接続されている。また、制御装置55には、前記冷凍装置27による冷却運転の終了時刻(例えば、保管物を使用に供する時刻)を設定可能なタイマ等の終了時刻設定手段62が接続されている。そして、制御装置55は、前記庫内温度センサ26で検出される庫内温度と、前記庫外温度センサ56で検出される庫外温度とに基づき、演算部63で現在の庫内温度が冷却運転を行った場合に冷却完了温度となるまでに要する冷却運転時間を算出し、前記終了時刻設定手段62に設定された終了時刻から冷却運転時間だけ逆算した時刻を冷却運転の開始時刻として更新し、現在時刻が前記開始時刻であるか、または開始時刻を過ぎていると判定した場合に、前記冷凍装置27による冷却運転を開始させるよう構成される。なお、制御装置55は、図示しないタイマによって、現在の時刻を認識し得るよう構成されると共に、消毒保管庫の運転ボタンを押圧することで加熱運転が開始され、収容空間25の温度を設定温度Tに、内蔵した計時部に設定された加熱時間だけ保持した後に加熱運転を終了させる。そして、加熱運転の終了後に、後述する冷却運転開始処理に基づいて冷却運転を開始する。
【0059】
前記制御装置55の記憶部64には、冷凍装置27の冷却能力や収容空間25の容量等の既知の条件と、庫内温度および庫外温度の関係に応じて、実験によって求められた冷却運転時間の情報が記憶されている。
図8は、庫内温度と庫外温度との関係から求められる冷却運転時間の情報の一例を示すものであって、
図8では、冷却完了温度が10℃に設定された場合を示している。例えば、庫内温度が80℃で、庫外温度が10℃であれば、冷却完了温度となるまでに要する冷却運転時間は180分であり、・・・庫内温度が40℃で、庫外温度が30℃であれば、冷却完了温度となるまでに要する冷却運転時間は300分となる。なお、
図8に示す情報は、一例であり、
図8に示す庫内温度および庫外温度の温度間隔は、10℃や20℃間隔でなく、より細かな間隔に基づいて求められた冷却運転時間の情報であってもよい。また、前記既知の条件、庫内温度および庫外温度の関係に基づいて冷却運転時間を算出可能な演算式を記憶部64に記憶しておき、該演算式に庫内温度および庫外温度を代入して冷却運転時間を算出することも可能である。
【0060】
図9は、第2の別実施例において、制御装置55が実行する冷却運転開始処理を示すフローチャートである。冷却運転開始処理では、加熱運転が終了したか否かを判定し(ステップS10)し、ステップS10の判定結果が否定の場合は冷却運転開始処理を終了する。ステップS10の判定結果が肯定の場合には、制御装置55は、ステップS11に移行する。ステップS11では、前記ファン12をONすると共に、前記庫内温度センサ26で検出される庫内温度と、前記庫外温度センサ56で検出される庫外温度とに基づき、演算部63で現在の庫内温度が冷却完了温度となるまでに要する冷却運転時間を前記情報に基づいて算出し、前記終了時刻設定手段62に設定された終了時刻から冷却運転時間だけ逆算した時刻を、冷却運転時間として設定(記憶部64に記憶)する。なお、ファン12は、所定時間後(例えば2分後)にOFFする。
【0061】
前記制御装置55は、ステップS12において、現在時刻が、ステップS11で設定された開始時刻になったか、または該開始時刻を過ぎているか否かを判定し、該ステップS12の判定結果が肯定であれば、ステップS16に移行して冷却運転を開始する。また、ステップS12の判定結果が否定、すなわち、ステップS11で設定された冷却運転の開始時刻になっていない場合、制御装置55は、該開始時刻になるまで待機する(ステップS13)。そして、開始時刻になると、制御装置55は、再びファン12をONすると共に、庫内温度センサ26および庫外温度センサ56で検出される庫内温度および庫外温度に基づき、演算部63で現在の庫内温度が冷却完了温度となるまでに要する冷却運転時間を前記情報に基づいて算出し、前記終了時刻設定手段62に設定された終了時刻から冷却運転時間だけ逆算した時刻を、冷却運転時間として更新して記憶部64に記憶する(ステップS14)。また、ファン12は、所定時間後(例えば2分後)にOFFする。
【0062】
次に、ステップS15に移行し、制御装置55は、該ステップS15において、現在時刻が、ステップS14で更新された開始時刻になったか、または該開始時刻を過ぎているか否かを判定し、該ステップS15の判定結果が肯定であれば、ステップS16に移行して冷却運転を開始する。また、ステップS15の判定結果が否定、すなわち、ステップS14で更新された冷却運転の開始時刻になっていない場合、制御装置55は、ステップS13に戻って開始時刻になるまで待機する。制御装置55は、冷却運転を開始すると、冷却運転開始処理を終了する。
【0063】
ここで、実施例のように冷却運転の終了を手動作動(運転ボタンの押圧)によって行う場合、またはタイマによって冷却運転を継続する時間を設定する場合では、庫外温度が想定している温度より低い場合や、冷却運転の開始時における保管物の温度が低い場合等の要因により、保管物が冷却完了温度まで早期に冷却されてしまう場合がある。この場合であっても、手動操作により冷却運転を終了させるまで、またはタイマに設定した冷却運転を継続する時間が経過するまでは冷却運転が継続され、ムダな冷却運転により電気使用量が増える難点がある。
【0064】
これに対し、第2の別実施例では、庫内温度および庫外温度に基づいて、現在の庫内温度が冷却運転を行った場合に冷却完了温度となるまでに要する冷却運転時間を算出して、終了時刻設定手段62に設定された終了時刻から冷却運転時間だけ逆算した時刻を冷却運転の開始時刻として更新し、この更新した開始時刻から冷却運転を開始するよう構成したので、冷却運転を最適な時刻から開始することができる。すなわち、庫外温度や収容空間25に収容された保管物の温度(庫内温度)の変化に応じて、冷却運転時間を必要最小限の長さに変更することができるので、冷凍装置27をムダに運転するのを防ぎ、電気使用量を削減することができる。また、更新した開始時刻となるまでは冷却運転を待機するので、この待機中における自然放冷によって放熱された熱量分を冷やす必要がなくなることにより、更に冷却運転時間を短くすることができる効果も見込める。更に、庫内温度と庫外温度とから冷却運転時間を算出する前に、前記ファン12を作動して庫内の温度分布を均一化するので、庫内温度センサ26により適正な庫内温度を検出することができる。
【0065】
〔変更例〕
本願は、前述した各実施例の構成に限定されるものでなく、その他の構成を適宜に採用することができる。
(1) 実施例では、冷凍装置が2つの蒸発器を備える構成としたが、該蒸発器の数は3つ以上であってもよい。また、3つ以上の蒸発器を備える構成では、吐出側温度センサで検出される冷媒温度によって冷媒が循環する蒸発器の数を制限する場合に、圧縮機ヘ戻る冷媒量が減少するものであればよく、同時に複数の蒸発器への冷媒の供給を停止するものであってもよい。
(2) 実施例では、液バイパス管を分岐して凝縮器から流出する低温の液化冷媒を、第4接続管路および圧縮機に供給するよう構成したが、第4接続管路および圧縮機の何れか一方にのみ液化冷媒を供給する構成を採用することができる。すなわち、実施例における第1バイパス管を省略したり、第2バイパス管を省略する構成を採用することができ、第1バイパス管および第2バイパス管の何れか一方を省略する構成であっても、圧縮機の温度が、正常に運転可能な上限値を超えてしまうのを防ぐことができる。
(3) 実施例では、凝縮器から流出する低温の液化冷媒を液バイパスしたり液インジェクションしたりする構成と、冷媒が循環する蒸発器の数を制限する構成とを併用するようにしたが、何れか一方の構成のみを採用することができる。すなわち、実施例の冷凍装置において、液バイパス管およびバイパス弁を省略した構成または第1および第2電磁弁を省略する構成を採用し得る。
(4) 実施例では、冷却運転の終了を、手動操作により行うよう構成したが、タイマ装置の計時部に冷却時間を設定し、冷却開始タイマ時刻に到達したときに計時部で冷却時間の計時を開始し、該計時部が冷却時間を計時することで冷却運転を自動的に終了する構成を採用することができる。すなわち、加熱運転の開始、終了および冷却運転の開始、終了の何れも、タイマ装置で制御する構成を採用することができる。また、加熱運転について、手動操作によって開始させる構成を採用することもできる。
(5) 実施例では、タイマ装置を構成する計時部を制御装置に設けたが、該計時部をタイマ設定部に設ける構成を採用することができる。
(6) 第2の別実施例では、専用の終了時刻設定手段を制御装置に接続したが、実施例のタイマ装置において、冷却運転の終了時刻を設定可能に構成すれば、当該タイマ装置を終了時刻設定手段として用いることができる。そして、タイマ装置を終了時刻設定手段として用いる構成では、該タイマ装置で設定された冷却開始タイマ時刻となったときに、庫内温度および庫外温度に基づいて、現在の庫内温度が冷却運転を行った場合に冷却完了温度となるまでに要する冷却運転時間を算出して、終了時刻設定手段としてのタイマ装置に設定された終了時刻から冷却運転時間だけ逆算した時刻を、新たな冷却開始タイマ時刻として更新するよう構成することができる。
(7) 膨張手段は、膨張弁に限らずキャピラリーチューブ等であってもよい。
(8) 各実施例や変更例に記載した各構成については、本発明の主旨の範囲内において組み合わせた構成を採用し得る。
【符号の説明】
【0066】
11 ヒータ,12 ファン,26 庫内温度センサ(庫内温度検出手段)
27 冷凍装置,28 圧縮機,29 凝縮器,30 第1膨張弁(膨張手段)
31 第2膨張弁(膨張手段),32 第1蒸発器(蒸発器),33 第2蒸発器(蒸発器)
36 第2接続管路(冷媒管),38 第4接続管路(冷媒管),39 熱交換部
42 第1電磁弁(開閉弁),43 第2電磁弁(開閉弁),48 バイパス弁
49 液バイパス管,49b 第2バイパス管路(バイパス管路)
51 吐出側温度センサ(吐出側温度検出手段),55 制御装置
56 庫外温度センサ(庫外温度検出手段),57 タイマ装置,61 補助凝縮器
62 終了時刻設定手段