(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-14
(45)【発行日】2024-06-24
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
B65H 5/38 20060101AFI20240617BHJP
B65H 29/58 20060101ALI20240617BHJP
【FI】
B65H5/38
B65H29/58 B
(21)【出願番号】P 2020052460
(22)【出願日】2020-03-24
【審査請求日】2023-03-20
(31)【優先権主張番号】P 2019130430
(32)【優先日】2019-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】弁理士法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小久保 洋
(72)【発明者】
【氏名】竹澤 宏章
(72)【発明者】
【氏名】吉田 篤史
(72)【発明者】
【氏名】小柳 倫明
【審査官】鵜飼 博人
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-145534(JP,A)
【文献】特開2004-151256(JP,A)
【文献】特開2012-181387(JP,A)
【文献】特開平07-232459(JP,A)
【文献】特開2001-316026(JP,A)
【文献】特開平06-250463(JP,A)
【文献】特開2006-290516(JP,A)
【文献】特開2018-184229(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 83/00- 85/00
B65H 29/54- 29/70
B65H 5/00
B65H 5/04
B65H 5/08- 5/20
B65H 5/24- 5/38
B65H 29/52
G03G 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートに画像を形成する画像形成手段と、
前記画像形成手段によって画像が形成され第1搬送路を介して受け取ったシートを第1方向に搬送した後、前記第1方向とは反対の第2方向に搬送することで反転させる反転手段と、
前記第1方向における前記反転手段の上流側で前記第1搬送路から分岐した第2搬送路に設けられ、前記反転手段によって反転したシートを前記第2搬送路を介して前記画像形成手段に向けて搬送する搬送手段と、
前記第2搬送路を形成し、前記搬送手段によって前記第2方向に搬送されるシートの第1面を案内する第1ガイド面
を有する第1ガイド部材と、
前記反転手段から前記第1方向に送り出されたシートの前記第1面とは反対の第2面を案内する第2ガイド面
を有する第2ガイド部材と、
前記反転手段がシートを反転する場合に、前記反転手段から前記第1方向に送り出されたシートの一部を受け入れる搬送空間と、を有し、
前記第2ガイド面と対向するシートの厚み方向において、前記第1ガイド面と前記第2ガイド面は前記第2搬送路と前記搬送空間との間に設けられ、
前記第2ガイド部材は、前記第1ガイド部材に対して相対移動可能であり、前記第2搬送路が開放される場合に、前記第1ガイド
部材の移動に伴って前記第2ガイド
部材が移動する、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記厚さ方向に見て、前記第1ガイド面と前記第2ガイド面とが互いに重なっている、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記反転手段から前記第1方向に送り出されたシートの前記一部を、前記第1方向に垂直なシートの幅方向から見て湾曲させた状態とするように屈曲した曲面ガイドを有し、
前記第2ガイド面は、前記曲面ガイドによって湾曲したシートの外側の面に対向する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記第2搬送路は、前記画像形成手段の下方において水平方向における一方側から他方側に延びており、
前記搬送空間は、前記第2搬送路の下方に設けられており、
前記曲面ガイドは、前記反転手段から鉛直方向に関して下方側に送り出されるシートの先端を、水平方向における前記他方側に向けて案内する第1屈曲部と、前記第1屈曲部によって案内されるシートの先端を、鉛直方向に関して上方側に向けて案内する第2屈曲部と、を有し、
前記第2ガイド面は、前記第2屈曲部によって案内されるシートの先端を、水平方向における前記一方側に向かうように案内する、
ことを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記第2ガイド面は、前記幅方向から見て前記第1ガイド面に沿って延びる第1の部分と、前記第1の部分及び前記曲面ガイドの間に位置する第2の部分と、を有し、
前記第2の部分は、前記曲面ガイドにより湾曲したシートの外側の面に対向し、前記曲面ガイドにより形成される湾曲と同じ方向にシートを湾曲させながらシートの先端を前記第1の部分へ向けて案内するように、前記第1の部分に対して傾斜している、
ことを特徴とする請求項3又は4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記搬送空間は、前記第2搬送路の下方に設けられており、
前記第1ガイド面は、前記第2搬送路を通過するシートの下側の面に対向し、
前記第2搬送路は、前記第1ガイド面が前記第2搬送路を形成している状態から、前記第1ガイド面が鉛直方向における下方側に向かって回動することで開放される、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記第1ガイド部材は、前記第2搬送路におけるシート搬送方向に沿った方向に延びる第1軸を中心に回動し、
前記第2ガイド部材は、前記第1軸の軸線方向に交差する方向に延びた第2軸を中心に回動する、
ことを特徴とする請求項
1乃至6のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記第2ガイド部材を、シートの前記第2面を案内するための所定位置へ向けて付勢する付勢手段を有し、
前記第2搬送路が開放された状態から前記第1ガイド部材が前記第2搬送路を形成する位置へ向けて移動する際に、前記付勢手段の付勢力により前記第2ガイド部材が前記所定位置に移動する、
ことを特徴とする請求項
1乃至7のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記第1ガイド部材に設けられ、前記第2搬送路が開放される場合の前記第1ガイド部材の移動に伴って前記第2ガイド部材を押圧して前記第1ガイド部材の移動軌跡から前記第2ガイド部材を退避させるための押圧部を有する、
ことを特徴とする請求項
1乃至8のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記搬送手段は、前記反転手段から前記第2方向に送り出されるシートを受け取って搬送する第1ローラ対と、前記第1ローラ対からシートを受け取って搬送する第2ローラ対と、を含み、
前記第1ガイド面は、前記第1ローラ対と前記第2ローラ対との間でシートを案内する、
ことを特徴とする請求項1乃至
9のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートに画像を形成する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、複写機、複合機等の画像形成装置には、記録材として用いるシートを両面印刷又はフェイスダウン排出等の目的で反転させるために、スイッチバック搬送を行う反転ローラ対等の反転搬送機構が設けられている。両面印刷の場合、反転ローラ対によりスイッチバックしたシートは、両面印刷用の再搬送路を介して、既に画像形成された第1面とこれから画像形成される第2面とが反転した状態で画像形成部に再給送される。
【0003】
このような反転搬送機構又は再搬送路においてシート詰まり(ジャム)が発生した場合、搬送路を構成する部材の一部を移動させて搬送路を開放し、ジャムシートの除去(ジャム処理)を行う必要が生じる。特許文献1には、反転搬送用の縦搬送路を構成する案内壁を開放する動作に伴って縦搬送路にスライド片が突出する構成により、除去対象のシートが落下することを防ぐ技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、記録材として多様なシートを使用可能な画像形成装置の需要が高まっており、搬送方向の長さが一般的な定型サイズよりも長いシート(長尺シート)への対応が求められている。ここで、反転ローラ対がシートのスイッチバック搬送を行うときは、上流側搬送路から受け取ったシートを挟持したままで所定の位置まで搬送した後に、搬送方向を反転させて再搬送路に送り込む。そのため、例えば長尺シートのような長いシートに対応するには、反転ローラ対から送り出されるシートの部分を一時的に待避させるスペースを、想定されるシートの長さに応じて確保する必要がある。しかし、長いシートに対応可能な構成においてジャム処理を行うことを考えたときに、ジャムシートの除去を容易に行うことを可能とする画像形成装置の構成は知られていなかった。
【0006】
そこで、本発明は、長いシートに対応しつつ、ジャムシートの除去を容易に行うことを可能とする画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、シートに画像を形成する画像形成手段と、前記画像形成手段によって画像が形成され第1搬送路を介して受け取ったシートを第1方向に搬送した後、前記第1方向とは反対の第2方向に搬送することで反転させる反転手段と、前記第1方向における前記反転手段の上流側で前記第1搬送路から分岐した第2搬送路に設けられ、前記反転手段によって反転したシートを前記第2搬送路を介して前記画像形成手段に向けて搬送する搬送手段と、前記第2搬送路を形成し、前記搬送手段によって前記第2方向に搬送されるシートの第1面を案内する第1ガイド面を有する第1ガイド部材と、前記反転手段から前記第1方向に送り出されたシートの前記第1面とは反対の第2面を案内する第2ガイド面を有する第2ガイド部材と、前記反転手段がシートを反転する場合に、前記反転手段から前記第1方向に送り出されたシートの一部を受け入れる搬送空間と、を有し、前記第2ガイド面と対向するシートの厚み方向において、前記第1ガイド面と前記第2ガイド面は前記第2搬送路と前記搬送空間との間に設けられ、前記第2ガイド部材は、前記第1ガイド部材に対して相対移動可能であり、前記第2搬送路が開放される場合に、前記第1ガイド部材の移動に伴って前記第2ガイド部材が移動する、ことを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、長いシートに対応しつつ、ジャムシートの除去を容易に行うことを可能とする画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の実施形態に係る画像形成装置の概略図。
【
図3】上記反転機構によるシートの反転動作について説明するための図。
【
図4】上記反転機構によるシートの反転動作について説明するための図。
【
図5】上記反転機構によるシートの反転動作について説明するための図。
【
図6】実施形態に係る反転待避部について説明するための図。
【
図8】実施例1に係る反転機構におけるジャム処理について説明するための図。
【
図10】実施例2に係る反転機構におけるジャム処理について説明するための図。
【
図14】実施例4に係る反転機構におけるジャム処理について説明するための図(a~d)。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための例示的な形態について、図面を参照しながら説明する。
【0011】
(画像形成装置)
まず、本開示の実施形態に係る画像形成装置の構造について説明する。
図1は、本実施形態における画像形成装置であるレーザビームプリンタ(以下プリンタと称す)100の構造を示す断面図である。プリンタ100は、装置本体としての筐体101を備え、筐体101にはエンジン部を構成する各機構と、エンジン制御部103a及びプリンタコントローラ103bを収納する制御ボード収納部103とが内蔵されている。エンジン制御部103aは、エンジン部を構成する各機構の動作を制御する。プリンタコントローラ103bは、外部コンピュータから受け取った印刷データを展開し、エンジン制御部103aを統括制御して印刷ジョブを実行する。
【0012】
本実施形態においてエンジン部を構成する機構とは、光学現像処理機構120、121、122、123、中間転写機構152、二次転写部140、定着処理機構160、給送搬送機構110、排出機構170、反転機構200、両面搬送機構220を指す。
【0013】
光学現像処理機構120、121、122、123は、電子写真プロセスにおける帯電、露光及び現像の工程を行って単色の可視像(トナー像)を作成するステーションである。中間転写機構152は、光学現像処理機構120、121、122、123が作成した可視像を一次転写して中間転写体150に担持させ、フルカラーのトナー像を作成する機構である。二次転写部140は、中間転写体150に担持されたトナー像を記録材であるシートPに二次転写する機構である。定着処理機構160は、シートPに転写されたトナー像に定着処理を施してシートPに画像を定着させる機構である。
【0014】
給送搬送機構110は、二次転写部140へ向けてシートPを給送及び搬送する機構である。排出機構170は、二次転写部140及び定着処理機構160を通過することで画像が形成されたシートの排出又は搬送方向の振り分けを行う機構である。反転機構200は、シートをスイッチバックさせる際に一時的に待避させる待避部としての反転待避部210を有し、両面印刷の場合にシートPの反転搬送を行う機構である。両面搬送機構220は、反転機構200によって反転した状態のシートPを二次転写部140へ再び搬送する機構である。
【0015】
画像形成装置の基本的な動作について説明する。光学現像処理機構120、121、122、123の各レーザスキャナ部107は、プリンタコントローラ103bから供給されたイメージデータに応じて不図示の半導体レーザ108から発射されるレーザ光をオン、オフ駆動するレーザドライバを有する。半導体レーザ108から発射されたレーザ光は回転多面鏡により主走査方向に走査される。主走査方向に振られたレーザ光は、反射ポリゴンミラー109を介して感光ドラム105に導かれ、感光ドラム105を主走査方向に露光する。一方、一次帯電器111により帯電され、上記のようにレーザ光による走査露光によって感光ドラム105の表面に形成された静電潜像は、現像器112により供給されるトナーによってトナー像に可視像化される。
【0016】
その後、感光ドラム105に担持されるトナー像は、中間転写機構152に設けられた中間転写体150にトナー像とは逆特性の電圧を印加することで転写(一次転写)される。カラー画像形成時には、各光学現像処理機構120~123において形成されるイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの単色トナー像が中間転写体150に順次転写され、フルカラーの可視像が中間転写体150の表面に形成される。
【0017】
給送搬送機構110は、このようなトナー像の作成動作に並行して、収納庫110aに収納されているシート束からシートPを1枚ずつ分離しながら搬送し、二次転写部140まで搬送する。給送搬送機構110から二次転写部140及び定着処理機構160を経由して排出機構170に到る経路は、シートに対して画像形成が行われる主搬送パス190である。
【0018】
次に、中間転写体150の表面に担持された可視像は、二次転写ローラ対151によって構成される二次転写部140において、給送搬送機構110によって搬送されるシートPに転写される(二次転写)。二次転写ローラ対151は、シートPを中間転写体150に圧接させると同時に、トナーと逆特性のバイアスを印加されることで二次転写を行う。
【0019】
二次転写部を通過したシートPは定着処理機構160へ搬送される。定着処理機構160は、シートPを挟持して搬送する加熱ローラ161及び加圧ローラ162と、加熱ローラ161を介してシート上のトナー像を加熱するための熱源(例えばハロゲンランプ)と、を有する。加熱ローラ161及び加圧ローラ162によって構成される定着ニップをシートPが通過することによって、シートPに転写されたトナーが加熱されて溶融し、その後冷えて固まることで、シートPに定着した画像が得られる。
【0020】
定着処理機構160を通過したシートPは、排出機構170へ搬送される。排出機構170では、シートPに両面印刷を行うか否かに応じてシートPの搬送経路が切り替わる。片面印刷の場合、シートPは第1切替フラップ173により排出ローラ対171へ向けて案内され、排出ローラ対171によりプリンタ100の外部に排出される。
【0021】
両面印刷において第1面に画像形成されたシートPは、第1切替フラップ173により反転入口ローラ対172に案内され、反転入口ローラ対172を経由して反転機構200へ搬送される。反転機構200は、反転待避部210を用いてシートPを一時的に待避させながらスイッチバック搬送を行って両面搬送機構220に搬送する。
【0022】
両面搬送機構220は、二次転写部140よりも上流側で給送搬送機構110に合流しており、反転機構200によって第1面と第2面とが入れ替わった状態のシートPを給送搬送機構110に再び搬送する。反転機構200においてスイッチバックされる前のシートが搬送される搬送パス(後述の上流搬送パス201、
図2参照)は、本実施例の第1搬送路である。反転機構200によってスイッチバックされたシートPが、反転機構200及び両面搬送機構220において主搬送パス190へ向けて再び搬送される経路である両面搬送パス202は、本実施形態の第2搬送路である。そして、シートPが二次転写部140及び定着処理機構160を通過することで第2面に画像が形成された後、今度はシートPが排出ローラ対171に案内され、排出ローラ対171によりプリンタ100の外部に排出される。
【0023】
なお、記録材として用いるシートPには、一般的な普通紙、再生紙、光沢紙、コート紙(樹脂コート等の表面処理が施された紙)、薄紙、厚紙等の種々のシートを使用できる。また、本実施形態では、搬送方向の長さが一般的な定型サイズよりも長い長尺シート(例えば、A3シートの長辺である420mmより長いシート)を記録材として使用可能である。なお、長尺シートは必ずしも図示した収納庫110aに収納されるとは限らず、例えば筐体101の側方に突出する手差しトレイに長尺シートをセットし、給送ローラによって1枚ずつ給送搬送機構110に供給するようにしてもよい。
【0024】
また、プリンタ100には、ユーザインタフェースとなる操作部180が設けられている。操作部180は、ユーザに情報を表示する液晶パネル等の表示装置と、ユーザがプリンタ100に対して指令やデータを入力可能な物理キー又は液晶パネルのタッチパネル機能部等の入力装置と、を備える。ユーザは、操作部180を操作することで、例えば今回の印刷ジョブに用いるシートが長尺シートか否かの設定を変更可能である。プリンタコントローラ103bは、操作部180から受け取った情報に基づいてエンジン制御部103aを制御することで印刷ジョブを実行する。
【0025】
以上説明したタンデム型・中間転写方式の電子写真機構(光学現像処理機構120、121、122、123、中間転写機構152、二次転写部140、定着処理機構160)は、シートに画像を形成する画像形成手段の一例である。以下で説明する技術を適用するにあたり、例えば、感光体に形成したトナー像を中間転写体を経由せずにシートに転写する直接転写方式の電子写真機構を画像形成手段として用いてもよい。また、電子写真機構に限らず、インクジェット方式の印刷ユニットやオフセット印刷機構を画像形成手段として用いてもよい。
【0026】
(反転機構)
次に、反転機構200について説明する。
図2は反転機構200の周辺を本体正面から見た際の概略図である。反転機構200は、上流搬送パス201、両面搬送パス202、反転ローラ対230、両面切替フラップ231、反転待避部210、及び両面搬送ローラ対206、207を備えている。上流搬送パス201は、上記の第1切替フラップ173(
図1)によって反転入口ローラ対172に案内されたシートが通過する搬送路である。両面搬送パス202は、反転ローラ対230によって反転したシートが通過する搬送路であり、両面搬送機構220を介して主搬送パス190との合流部まで連通している。
【0027】
反転ローラ対230は、上流搬送パス201における搬送方向に関して、上流搬送パス201と両面搬送パス202とが合流する場所よりも下流(鉛直方向に関して下方)に設けられている。つまり、本実施例の第2搬送路である両面搬送パス202は、反転前の搬送方向(第1方向)における反転ローラ対230の上流側で本実施例の第1搬送路である上流搬送パス201から分岐している。反転ローラ対230は、例えば正転及び逆転が可能なモータに駆動連結されることで、シートの搬送方向を切替可能に構成される。両面切替フラップ231は、上流搬送パス201と両面搬送パス202とが合流する場所に設けられ、反転ローラ対230によって反転したシートが上流搬送パス201に逆流することを規制する。
【0028】
両面搬送パス202には、両面搬送ローラ対206、207が設けられている。本実施形態の搬送手段である両面搬送ローラ対206、207は、反転ローラ対230によって反転されて両面搬送パス202に送り込まれるシートを、両面搬送パス202を介して両面搬送機構220へ向けて搬送する。
【0029】
反転待避部210は、上流搬送パス201における搬送方向に関して反転ローラ対230の下流側に設けられている。反転待避部210は、反転ローラ対230がシートをスイッチバックさせる際にシートの一部を一時的に待避させるための待避領域を形成している。
【0030】
なお、本実施形態において、
図1に示すように、主搬送パス190及び両面搬送パス202はいずれも略水平方向に延びている。
図2に示す範囲においても、両面搬送パス202は水平方向における一方側(図中左側)から他方側(図中右側)に向かって延びている。鉛直方向に関して、両面搬送パス202は主搬送パス190の下方に設けられており、さらに反転待避部210は両面搬送パス202の下方に設けられている。本実施形態において、反転待避部210の上方に位置する定着処理機構160及び排出機構170は、いずれも鉛直方向に見たときに少なくとも部分的に反転待避部210と重なる配置関係にある。また、反転待避部210及び収納庫110aは、水平方向に並んで配置され、かつ、鉛直方向における占有範囲が重複している。このような配置は、反転待避部210を配置することによるプリンタ100の大型化を抑制することに有効である。
【0031】
反転機構200におけるシートPの基本的な動作について説明する。
図3、
図4、
図5は、反転機構200でのシートPの動作を示した概略図である。
【0032】
反転入口ローラ対172から反転機構200に搬送されたシートP(破線)は、上流搬送パス201を搬送されて反転ローラ対230に受け渡される(
図3)。反転ローラ対230は、反転入口ローラ対172からシートPを受け取るときの順送方向A(第1方向)へのシートPの搬送を継続する。このとき、反転ローラ対230から順送方向Aに送り出される部分のシートPは、反転待避部210に収容されることで待避した状態となる。
【0033】
順送方向AにおけるシートPの後端が両面切替フラップ231を通過したところで、反転ローラ対230は一時停止する。その後、両面切替フラップ231を矢印B方向に回転させ、シートPの上流搬送パス201の逆流を規制して両面搬送パス202に案内するように、両面切替フラップ231の向きを切り換える(
図4)。両面切替フラップ231の向きを切り換えた後、反転ローラ対230は搬送方向を逆送方向C(第2方向)に切り替えてシートPを搬送する。これにより、シートPは両面搬送パス202に搬入され、両面搬送ローラ対206、207によって搬送される(
図5)。
【0034】
なお、以上では反転機構200によって反転したシートを両面搬送パス202を介して搬送する場合について説明したが、反転機構200はフェイスダウン排出を行う場合にも用いられる。フェイスダウン排出とは、片面印刷の場合に画像が形成された面を下にしてシートを排出する動作を指す。本実施形態の場合、
図1に示すように反転入口ローラ対172の上流側に第2切替フラップ174が設けられており、フェイスダウン排出を行う場合には反転機構200によって反転したシートが第2切替フラップ174によって排出ローラ対171に案内される。
【0035】
(反転待避部)
次に、本実施形態の反転待避部210について説明する。
図6は反転待避部210を本体正面から見た際の概略図である。
【0036】
反転待避部210は、反転ローラ対230から送り出されるシートを待避させる待避領域(破線部分)を囲むように配置されたガイド部材によって構成される。反転待避部210は、反転ローラ対230の順送方向Aに関して、反転ローラ対230から近い順に第1屈曲部203、第2屈曲部204、第3屈曲部205の3つの屈曲部を有する搬送空間である。第1屈曲部は搬送ガイド203a、203b、203cによって構成されており、第2屈曲部204と第3屈曲部205は搬送ガイド208によって構成されている。
【0037】
反転ローラ対230から反転待避部210に送り込まれるシートPの先端は、これら第1屈曲部203、第2屈曲部204及び第3屈曲部205に接触しながら案内される。具体的には、反転ローラ対230から下方に向かって送り出されるシートPの先端は、第1屈曲部203によって、水平方向に関して両面搬送パス202におけるシート搬送方向の上流側から下流側に向かう方向に案内される。次に、シートPの先端は、第2屈曲部204によって鉛直方向に関して上方側に案内され、さらに第3屈曲部205によって水平方向に関して両面搬送パス202におけるシート搬送方向とは反対側に案内される。従って、長尺シートのような比較的長いシートを反転ローラ対230によってスイッチバックさせるときは、シートは反転待避部210の内側でこれらの屈曲部に沿って湾曲した状態で退避する。つまり、搬送ガイド203a、203b、203c、208は、反転途中のシートを湾曲させた状態で待避させるように屈曲したガイド形状を構成する本実施例の曲面ガイドである。なお、物理的に分離可能なガイド部材とガイド形状の屈曲部との対応関係は本実施形態で例示したものに限らず、適宜変更可能である。
【0038】
ここで、反転待避部210の占有空間を大きくすることなく、より長いシートを反転待避部210において待避させることを図る場合に、両面搬送パス202におけるジャム処理の作業性が課題となることを説明する。
【0039】
図6に示すように、反転待避部210の上方において、両面搬送パス202は上面ガイド202a及び下面ガイド202bによって構成されている。上面ガイド202aは、第1ローラ対としての両面搬送ローラ対206から第2ローラ対としての両面搬送ローラ対207に向かって両面搬送パス202を通過するシートの上面に対向する。下面ガイド202bは、両面搬送ローラ対206から両面搬送ローラ対207に向かって両面搬送パス202を通過するシートの下側の面に対向する。
【0040】
シート詰まりが発生して両面搬送パス202からシートを除去する場合、両面搬送パス202を構成する上面ガイド202a及び下面ガイド202bの一方を移動させて両面搬送パス202を開放することになる。しかし、両面搬送パス202の上方には定着処理機構160等の構成が配置される場合が多く、上面ガイド202aを上方(矢印U)に移動させることは制約が多い。そのため、下面ガイド202bを下方(矢印D)に移動させることで両面搬送パス202を開放することが好ましい。
【0041】
本実施形態では、下面ガイド202bがプリンタ100の枠体に対して回動可能に支持されており、
図6の状態から下方(矢印D)に回動させることで両面搬送パス202を開放可能であるものとする。なお、搬送ガイド203a、203b、203c、208は、いずれも画像形成装置1の枠体に対して下面ガイド202bとは独立に支持されており、下面ガイド202bを開閉してもこれらの搬送ガイドは移動しない。
【0042】
ところで、下面ガイド202bが通常の使用状態の位置から下方に移動可能である一方で、より長いシートを反転待避部210において待避させるには、下面ガイド202bに近い領域についても待避領域として活用することが必要となる。例えば、
図4に示すシートPよりも長いシートを反転待避部210に待避させようとすると、
図4に示す構成では、シートの先端部が第3屈曲部205から余ることになる。そこで、反転待避部210のサイズを大きくすることなく、長いシートに対応するために第3屈曲部205を上方に移動させた場合(
図6に破線で表した第3屈曲部205)、下面ガイド202bの下方への移動に干渉する可能性がある。
【0043】
このような干渉を回避する方法として、例えば第3屈曲部205を移動可能な構成とし、下面ガイド202bを開放する場合には同時に第3屈曲部205も移動させるというものが考えられる。しかし、この構成では移動可能なガイド部材が増えることで構成が複雑となり、また、ジャム処理の操作が煩雑なものとなる。他の方法として、下面ガイド202bを開放可能に構成する範囲を第3屈曲部205と干渉しないように狭くすることも考えられるが、開放可能な範囲が狭くなる程、ジャムシートの除去が困難な場合が発生しやすくなる。
【0044】
そこで、以下で説明する実施例では、下面ガイド202bを構成する部材に、第3屈曲部205のように反転待避部210において待避しているシートを案内するためのガイド面を一体に設ける。このような構成により、長尺シートに対応しつつ、ジャムシートの除去を容易に行うことが可能となる。
【実施例1】
【0045】
図7は実施例1に係る反転機構200の概略図であり、
図8は実施例1の構成におけるジャム処理の様子を表している。
図7に示すように、本実施例に係る下面ガイド202bは、上面ガイド202aに対向して両面搬送パス202を形成する表側ガイド面b1に加えて、反転待避部210が形成する待避領域に対向する裏側ガイド面b2を備えている。表側ガイド面b1は、両面搬送パス202を通過しているシートP1の第1面(両面搬送パス202を通過しているときのシートの下面)を案内する機能を有する。一方、裏側ガイド面b2は反転待避部210において待避しているシートP2の第1面とは反対の第2面を案内する機能を有する。
【0046】
表側ガイド面b1は本実施例の第1ガイド面であり、裏側ガイド面b2は本実施例の第2ガイド面である。つまり、下面ガイド202bは、一方の面に第1ガイド面を有し他方の面に第2ガイド面を有する板状部材として構成された本実施例のガイド体209である。この構成では、下面ガイド202bの裏側(下方側)で、両面搬送パス202におけるシート搬送方向とは反対側に向かって延びる待避状態のシートを案内する機能を下面ガイド202bに持たせている。そのため、本実施例では上記の第3屈曲部205(例えば
図6参照)を省略することが可能である。
【0047】
従って、本実施例では下面ガイド202bを例えば
図8に示す回動軸b0を中心に下方に回動(矢印R)させたとしても、下面ガイド202bが第3屈曲部205と干渉することがない。これにより、下面ガイド202bを閉じた状態では、裏側ガイド面b2によって長尺シートに対応することが可能となる一方で、下面ガイド202bを下方に回動させて開く単純な動作によって両面搬送パス202が開放される。従って、本実施例の構成により、長尺シートに対応しつつ、容易にジャム処理を行うことが可能となる。
【0048】
なお、裏側ガイド面b2は、
図7において図中左方に向けて移動するシートの先端を案内するガイド面としての役割を有するため、シートに接触可能な部分がシート先端の移動方向(図中左方)に関して平滑に形成されている。例えば、裏側ガイド面b2の全体がシート先端の移動方向及びこれに垂直なシートの幅方向に関して平滑な面で構成されるものは、シート先端を案内するガイド面として好適である。シート先端の移動方向に沿って延びる複数のリブによってシートに接触可能な部分が構成されるものも、シート先端を案内するガイド面として好適である。また、図中左方に向けて移動するシート先端が引っ掛かるような凸形状が、幅方向に関してシートが通過し得る領域(最大シート幅)の内側にあることは好ましくないが、そのような形状が最大シート幅の外側にあることはガイド面としての機能を妨げない。
【0049】
また、本実施例に係る下面ガイド202bは、両面搬送パス202におけるシート搬送方向に関して当該ガイドの下流側の端部に設けられた回動軸b0を中心に上下に回動するものとして説明しているが、ガイドの移動構成はこれに限らない。例えば、下面ガイド202bが、両面搬送パス202におけるシート搬送方向に関して当該ガイドの上流側の端部に設けられた回動軸を中心に上下に回動する構成としてもよい。また、例えば下面ガイド202bを
図7の状態から下方に取外すことで両面搬送パス202を開放する構成としてもよい。
【0050】
また、本実施例の搬送ガイド208には第3屈曲部205を設けていないが、下面ガイド202bをジャム処理に必要な回動角度まで回動させたときに下面ガイド202bと干渉しない配置であれば第3屈曲部205を設けてもよい。
【実施例2】
【0051】
図9は実施例2に係る反転機構200の概略図であり、
図10は実施例2の構成におけるジャム処理の様子を表している。
図9に示すように、実施例1と同様に、下面ガイド202bは、上面ガイド202aに対向して両面搬送パス202を形成する表側ガイド面b1を備えている。また、下面ガイド202bは、プリンタ100の枠体により回動可能に支持され、
図9に示す通常の使用状態における位置から下方に回動することで両面搬送パス202が開放される。
【0052】
ここで、実施例1と異なり、反転待避部210が形成する待避領域に対向する第2ガイド面としての裏側ガイド面(c1、c2)は、下面ガイド202bとは別個の板状部材であるパス下ガイド202cに設けられている。パス下ガイド202cは、ネジ止め、接着等の任意の方法で、下面ガイド202bに対して固定されている。つまり、本実施例のガイド体209は、第1のガイド部材としての下面ガイド202bと、第1のガイド部材に取付けられた第2のガイド部材としてのパス下ガイド202cとによって構成される。
【0053】
図10に示すように、両面搬送パス202についてジャム処理を行う場合には、ガイド体209を回動軸b0を中心に下方に回動(矢印R)させればよい。これにより、通常は反転待避部210において待避するシートを案内するパス下ガイド202cが、両面搬送パス202の下面ガイド202bと共に回動する。つまり、ガイド体209を閉じた状態では、パス下ガイド202cの裏側ガイド面(c1、c2)によって長尺シートに対応することが可能となる一方で、ガイド体209を下方に開く単純な動作によって容易にジャム処理を行うことが可能となる。
【0054】
なお、
図9に示すように、本実施例に係る第2ガイド面を構成するパス下ガイド202cの裏側ガイド面は、互いに隣接する第1領域c1及び第2領域c2によって構成されている。第2ガイド面の第1の部分である第1領域c1は、シートの幅方向に見たときに、下面ガイド202bの表側ガイド面b1の裏側に位置し、表側ガイド面b1に沿って延びている。第1領域c1は、反転待避部210に送り込まれるシートの先端を、両面搬送パス202におけるシート搬送方向(図中右方)とは反対方向に案内する。
【0055】
これに対し、第2ガイド面の第2の部分である第2領域c2は、第1領域c1と搬送ガイド208との間に位置し、反転待避部210を構成する屈曲した搬送ガイド208と共にシートを湾曲させながら案内する機能を有する。具体的には、第2領域c2は、第1領域c1との境界から離れるほど(つまり、両面搬送パス202におけるシート搬送方向の下流に向かうほど)、両面搬送パスにおけるシートの厚さ方向に関して当該パスから離れるように第1領域c1に対して傾斜している。このように、ガイド体209の一部であるパス下ガイド202cに、待避させる対象の長尺シートを湾曲させる機能を持たせることで、より円滑な待避動作を実現することができる。
【実施例3】
【0056】
図11は実施例3に係る反転機構200の概略図である。本実施例に係るガイド体209は、下面ガイド202bの裏側ガイド面b2が、パス下ガイド202cのガイド面(c1、c2)と共に反転待避部210において待避するシートを案内する第2ガイド面として機能する。つまり、実施例2(
図9)に比べてさらに長い長尺シートを待避させる場合に、長尺シートの先端が下面ガイド202bの裏側に引っ掛かることなく円滑に案内されるように構成されている。
【0057】
両面搬送パス202についてジャム処理を行う場合には、実施例2と同様にガイド体209を回動軸b0を中心に下方に回動(矢印R)させればよい。これにより、ガイド体209を閉じた状態では、長尺シートに対応することが可能となる一方で、ガイド体209を下方に開く単純な動作によって容易にジャム処理を行うことが可能となる。
【実施例4】
【0058】
実施例4として、両面搬送パス202を搬送されるシートをガイドするガイド面を備えた第1ガイド部材の移動方向と、反転待避部210のシートをガイドするガイド面を備えた第2ガイド部材の移動方向とが異なる形態について説明する。
【0059】
図12は実施例4に係る反転機構200の概略図である。
図13は実施例4に係る反転機構200を
図12における右側から見た場合の斜視図である。
図14(a~d)は実施例4の構成におけるジャム処理の様子を表している。
【0060】
図12に示すように、実施例1と同様に、下面ガイド202bは、上面ガイド202aに対向して両面搬送パス202を形成する第1ガイド面としての表側ガイド面b1を備えている。また、下面ガイド202bとは別個の板状部材であるパス下ガイド202cも設けられている。パス下ガイド202cには、表側ガイド面b1の少なくとも一部と重なるように、反転待避部210に送り込まれるシートを案内するための裏側ガイド面d1が設けられている。下面ガイド202b及びパス下ガイド202cは、プリンタ100の枠体により移動可能に支持され、
図12に示す通常の使用状態における位置から下方に回動することで両面搬送パス202が開放される。
【0061】
ここで
図13に示すように、本実施例は実施例2とは異なり、下面ガイド202b及びパス下ガイド202cの回動軸229が装置本体の奥側に設けられている。つまり、本実施例の第1ガイド部材である下面ガイド202bは、第1軸としての回動軸229を中心に回動可能であり、回動軸229は、両面搬送パス202におけるシート搬送方向(本実施例では略水平方向)に沿った方向に延びている。なお、プリンタ100の手前側とは、反転機構200によるシートの搬送方向に垂直な幅方向の一方側であって、ユーザがジャム処理を行う際に装置本体(筐体101)に対して開閉する開閉扉が設けられた側であり、奥側はその反対側である。
【0062】
従って、両面搬送パス202を開放するときは、下面ガイド202b及びパス下ガイド202cの手前側を下方に移動させるように、下面ガイド202b及びパス下ガイド202cを
図13に示す矢印D方向へ向かって回動させる。これにより、
図14(a)、(b)に示すように両面搬送パス202が開放される。このように本実施例では、両面搬送パス202のシート搬送方向に関する下面ガイド202bの略全体を下方に開くことが可能となる。このことは、シートの幅方向に延びる回動軸を中心に回動するために回動軸付近の開放空間を確保することが難しい他の実施例に比べて、両面搬送パス202の開放空間をより広い範囲で確保してジャム処理を容易にできる利点がある。
【0063】
また、本実施例では、両面搬送ローラ対206、207の各々について、ローラ対の一方のローラ(上側ローラ206a,207a)を装置本体に配置し、ローラ対の他方のローラ(下側ローラ206b,207b)を下面ガイド202bに配置している。このため、両面搬送パス202を開放するために下面ガイド202bを矢印D方向へ向かって回動させたときには、下側ローラ206b,207bが上側ローラ206a,207aから下方に離間し、ジャム処理をより容易に行うことが可能である。
図12に示すように下面ガイド202bを閉じると、下側ローラ206b,207bは上側ローラ206a,207aと当接し、両面搬送ローラ対206,207がシートを挟持して搬送するためのニップ部が形成される。
【0064】
なお、上述の実施例1~3の構成においても、1つ以上の両面搬送ローラ対について、ローラ対の一方のローラを装置本体側に配置し、他方のローラを下面ガイド202b(又はこれと一体に回動する部材)に配置してもよい。
【0065】
(搬送ガイド208の移動)
ここで、前述の開放空間をより大きくするために、本実施例では、下面ガイド202b及びパス下ガイド202cの下方にある搬送ガイド208を移動可能な構成としている。
図12に示すように、下面ガイド202bが両面搬送パス202を形成する通常の使用位置にある状態で、鉛直方向に見て例では、下面ガイド202b及びパス下ガイド202cの少なくとも一部が搬送ガイド208と重なっている。そのため、開放空間を広げるためには、搬送ガイド208が下面ガイド202b及びパス下ガイド202cの移動軌跡(本実施例の場合は回動軌跡)から退避できるように構成することが有効となる。
【0066】
本実施例の搬送ガイド208は、プリンタ100の装置本体に対して移動可能(本実施例では、回動可能)な回動ガイド208aと、装置本体に固定された固定ガイド208bと、を有している。回動ガイド208aのガイド面d2は、反転待避部210に送り込まれたシートの第2面を案内する本実施例の第2ガイド面として機能する。
【0067】
回動ガイド208aは、シートの幅方向に延びる回動軸240を中心にして回動可能である。回動軸240は、第1軸としての下面ガイド202bの回動軸229(
図13)の軸線方向に交差する方向に延びる第2軸であり、本実施例では、回動軸229,240の軸線方向は互いに直交する方向である。
【0068】
回動ガイド208aは、
図12に示す通常の使用時の所定位置(起立位置)と、起立位置よりも低い位置(退避位置)と、に移動できる。即ち、回動ガイド208aが起立位置(
図12)のとき、回動ガイド208aのガイド面d2は回動軸240より上方に延びている。回動ガイド208aが起立位置から退避位置(
図14(b))に回動するとき、ガイド面d2の回動軸240より上方に延びていた部分がより下方に移動し、回動ガイド208aの最大高さが低くなる。
【0069】
従って
図14(a)、(b)に示すように、下面ガイド202b及びパス下ガイド202cを下方へ移動させる際に、回動ガイド208aを反時計回りに回動させることで、パス下ガイド202cを回動軸240の高さに近い高さまで下げることができる。言い換えると、回動ガイド208aが起立位置から退避位置に退避することで、通常の使用時の位置(起立位置)にある場合の回動ガイド208aの占有空間を利用して、第1ガイド部材としての下面ガイド202bの回動角度を広げることができる。このため、下面ガイド202bと上面ガイド202aとの間の開放空間をより広く確保してジャム処理を容易にすることができる。
【0070】
ところで、回動ガイド208aが下面ガイド202b及びパス下ガイド202cとは独立に操作される構成では、両面搬送パス202のジャムシートを除去する場合にユーザがガイドを開く操作を2回行うことになる。即ち、この場合、通常の使用状態から、ユーザは回動ガイド208aを起立位置から退避位置に回動操作した後、下面ガイド202b及びパス下ガイド202cを下方に回動させて両面搬送パス202を開放することになる。
【0071】
これに対し、本実施例では、下面ガイド202b及びパス下ガイド202cの開放動作に連動して回動ガイド208aが起立位置から退避位置に移動する構成とした。このような連動構成により、ユーザは下面ガイド202b及びパス下ガイド202cを移動させる1動作で回動ガイド208aを同時に行うことができ、ジャム処理の操作を簡単にすることができる。また、後述するように、下面ガイド202b及びパス下ガイド202cを閉じる動作にも連動して回動ガイド208aが退避位置から起立位置に復帰する構成としている。このため、ジャム処理の終了時にユーザが回動ガイド208aの位置を戻し忘れることを防ぐことができる。
【0072】
回動ガイド208aを下面ガイド202b及びパス下ガイド202cの開閉に連動させるための構成を説明する。
【0073】
図12及び
図13に示すように、下面ガイド202bの下部にはコロ部材235が設けられている。コロ部材235は、下面ガイド202b及びパス下ガイド202cが下方に開かれる場合に、回動ガイド208aの背面(ガイド面d2とは反対側の面)と回転しながら接触するように配置されている。コロ部材235は、第1ガイド部材を開放する動作に伴って第2ガイド部材を押圧して所定位置から移動させる押圧部として機能する。
【0074】
また、回動ガイド208aには係合部材232が設けられている。係合部材232は、下面ガイド202b及びパス下ガイド202cと一体に設けられた被係合部233と係合することで、回動ガイド208aと下面ガイド202bとを相対移動可能に連結している。つまり、係合部材232及び被係合部233は、第1ガイド部材と第2ガイド部材とを相対移動可能に連結する連結部として機能する。
【0075】
本実施例の係合部材232は、スライダリンクを採用している。即ち、係合部材232は、回動ガイド208aに固定されたリンクガイド234の長穴に係合するスライド部232bと、被係合部233に係合するフック部232aとによって構成される。スライド部232bは、リンクガイド234の長穴に沿ってスライド可能である。またフック部232aは、スライド部232bがリンクガイド234の長穴に係合した状態のまま、リンクガイド234に対して回動可能である。スライド部232b及びリンクガイド234の長穴は、互いに異なる回動軸229,240を中心に回動する回動ガイド208aと下面ガイド202b及びパス下ガイド202cとの位置関係の変化を吸収する機能を有する。
【0076】
また、回動ガイド208aには付勢手段としての付勢バネ236が取付けられている。付勢バネ236は、回動ガイド208aと装置本体の枠体とを接続する引張バネであり、回動ガイド208aを起立位置に保持するように付勢している。
【0077】
両面搬送パス202を開閉する際の具体的な回動ガイド208aの動作を
図14(a~d)を用いて説明する。
図14(a)は両面搬送パス202を開放し始めたときの様子を表し、
図14(b)は両面搬送パス202を最も開放したとき(開放状態)の様子を表す。
図14(c)は開放状態から両面搬送パス202を閉じている途中の状態を表し、
図14(d)は両面搬送パス202が閉じる直前の状態を表している。
【0078】
図14(a)に示すように両面搬送パス202を開放するために下面ガイド202b及びパス下ガイド202cを下方に回動させると、コロ部材235が矢印Eの位置で回動ガイド208aに接触し、回動ガイド208aを押し下げる。これにより、回動ガイド208aは、回動軸240を中心に図中反時計回りに回動して退避位置に移動し、
図14(b)に示す状態となる。つまり、本実施例においても、第2ガイド面としての回動ガイド208aのガイド面d2は、両面搬送パス202を開放するための第1ガイド面(下面ガイド202bの表側ガイド面b1)の移動に伴って移動する。
【0079】
図14(b)の開放状態から両面搬送パス202を閉じる場合、下面ガイド202bの上昇に伴って、被係合部233及びフック部232aの係合を介して回動ガイド208aが持ち上げられる。これにより、
図14(c)に示すように回動ガイド208aは退避位置から起立位置に向かって図中時計回り方向に回動する。この間、スライド部232bがリンクガイド234の長穴に沿ってスライドすることで、係合部材232は下面ガイド202bと回動ガイド208aの相対位置の変化を吸収しつつ回動ガイド208aを持ち上げるための力を伝達する。これにより、両面搬送パス202を閉じるための第1ガイド面の移動に伴って、第2ガイド面としての回動ガイド208aのガイド面d2が円滑に移動する。
【0080】
図14(d)に示すように、両面搬送パス202が閉じた状態に近づくと、付勢バネ236の付勢力によって回動ガイド208aは通常の使用時の位置である起立位置に向かって付勢される。つまり、両面搬送パス202を閉じる動作の途中までは回動ガイド208aは下面ガイド202bに引っ張られて回動する。これに対し、両面搬送パス202が閉じる直前になると、付勢バネ236の付勢力により、回動ガイド208aは下面ガイド202bからの力によらずに起立位置まで自動的に戻り、両面搬送パス202が閉じた後(
図12)も起立位置に保持される。
【0081】
さらに、付勢バネ236は回動ガイド208aの位置に応じて付勢力が変化する構成を採用している。すなわち、回動ガイド208aが
図12に示す起立位置又は起立位置に近い位置にある状態では、付勢バネ236の弾発力により、回動ガイド208aには回動軸240を中心とする起立位置に向かう方向(図中時計回り方向)のモーメントが作用する。
【0082】
これに対し、回動ガイド208aが起立位置から退避位置に向かって回動していくにつれて、自重によって回動ガイド208aに作用する退避位置に向かう方向(図中反時計回り方向)のモーメントが大きくなる。また、回動ガイド208aが起立位置から退避位置に向かって回動していくにつれて、付勢バネ236の弾発力によって回動ガイド208aに作用する図中時計回り方向のモーメントの大きさは小さくなる。そのため、回動ガイド208aが起立位置(所定位置)から退避位置に向かって回動していくと、自重によるモーメントと付勢バネ236によるモーメントが相殺する構成となっている。
【0083】
このように、回動ガイド208aが起立位置から所定角度以上回動した状態で、付勢バネ236が回動ガイド208aを持ちあげる力と回動パスの自重が相殺される構成とすることで、以下の利点が得られる。まず、両面搬送パス202を上に持ち上げながら閉じるときに、回動ガイド208aの自重が係合部材232や被係合部233に作用しにくくなるため、スライド部232b及びリンクガイド234の長穴がこじって動かなくなるリスクを低減することができる。また、両面搬送パス202を持ちあげる動作において回動ガイド208aの自重が作用しにくくなるため、回動ガイド208aを連動させながら下面ガイド202bを閉じる際のユーザの操作負担を低減することが可能となる。
【0084】
例えば、回動ガイド208aの起立位置から退避位置までの回動範囲内に、回動ガイド208aに作用するモーメント(自重及び付勢バネ236によるモーメントの合計)の向きが反転する地点がある構成(トグル構成)としてもよい。具体的には、回動ガイド208aが起立位置から10°~30°又はそれ以上の角度で回動した状態で、自重によるモーメントと及び付勢バネ236によるモーメントが概ね釣り合った状態とすると好適である。
【0085】
ここで、自重によるモーメントと及び付勢バネ236によるモーメントが概ね釣り合った状態とは、回動ガイド208aに作用するモーメントの大きさが、回動ガイド208aが起立位置にある場合に比べて十分に小さいことを指す。例えば、両面搬送パス202が最大まで開放された
図14(b)の状態において回動ガイド208aに作用する図中時計回り方向又は反時計回り方向のモーメントの大きさが、
図12の状態で回動ガイド208aに作用するモーメントの大きさの2分の1以下であると好ましく、4分の1以下であるとより好ましい。
【0086】
(変形例)
なお、本実施例において、回動ガイド208aは両面搬送パス202を開放する動作及び閉じる動作のいずれにも連動して移動するものとして説明したが、例えば回動ガイド208aが両面搬送パス202の開放動作にのみ連動するようにしてもよい。また、例えば、回動ガイド208aが両面搬送パス202の開閉とは独立して操作される構成として、回動ガイド208aの連動機構を省略して簡素な構成としてもよい。
【0087】
また、例えば係合部材232及び被係合部233を省略し、コロ部材235と付勢バネ236によって回動ガイド208aを両面搬送パス202の開閉動作に連動させることも可能である。その場合、付勢バネ236は、回動ガイド208aの回動範囲の全域において、回動ガイド208aを自重に打ち克って起立位置へ向けて付勢するように設置される。
【符号の説明】
【0088】
100…画像形成装置(プリンタ)/120、121、122、123、152、140、160…画像形成手段(光学現像処理機構、中間転写機構、二次転写部、定着処理機構)/201…第1搬送路(上流搬送パス)/202…第2搬送路(両面搬送パス)/202b…第1ガイド部材(下面ガイド)/203a,203b,203c,208…曲面ガイド(搬送ガイド)/203…第1屈曲部/204…第2屈曲部/206…搬送手段、第1ローラ対(両面搬送ローラ対)/207…搬送手段、第2ローラ対(両面搬送ローラ対)/208a…第2ガイド部材(回動ガイド)/209…ガイド体/210…待避部(反転待避部)/229…第1軸(回動軸)//230…反転手段(反転ローラ対)/236…付勢手段(付勢バネ)/240…第2軸(回動軸)/b1…第1ガイド面/b2,d2…第2ガイド面/c1…第2ガイド面、第1の部分(裏側ガイド面の第1領域)/c2…第2ガイド面、第2の部分(裏側ガイド面の第2領域)