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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-14
(45)【発行日】2024-06-24
(54)【発明の名称】検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/89 20060101AFI20240617BHJP
   G01N 21/956 20060101ALI20240617BHJP
【FI】
G01N21/89 Z
G01N21/956 B
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020059464
(22)【出願日】2020-03-30
(65)【公開番号】P2021156808
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】305021292
【氏名又は名称】第一実業ビスウィル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001531
【氏名又は名称】弁理士法人タス・マイスター
(74)【代理人】
【識別番号】100104662
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智司
(74)【代理人】
【識別番号】100184631
【弁理士】
【氏名又は名称】大久保 隆
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 浩一
(72)【発明者】
【氏名】松田 晋也
(72)【発明者】
【氏名】加藤 秋久
【審査官】田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-160016(JP,A)
【文献】特表2004-502168(JP,A)
【文献】特開2010-230514(JP,A)
【文献】特開2019-184589(JP,A)
【文献】特開2020-115110(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84-21/958
G01B 11/00-11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
設定された搬送方向に被検査物を搬送し、該被検査物の少なくとも前記搬送方向前端面又は後端面を被検査面として検査する検査装置であって、
前記搬送方向に沿って移動する透明なシート状の搬送シートを有し、該搬送シート上に載置された前記被検査物を前記搬送シートの移動によって前記搬送方向に搬送する搬送機構と、
前記搬送シートによって形成される搬送路上の所定の検査位置において、前記搬送シートを境として前記被検査物と同じ側に配設されて、前記被検査物の前記被検査面を照明する第1照明機構、及び前記被検査物とは反対側に配設されて、前記被検査物の前記被検査面を照明する第2照明機構と、
前記被検査物と同じ側に配設され、前記検査位置にある前記被検査物の前記被検査面を撮像する撮像カメラとを備え、
前記第1照明機構は、前記被検査物の被検査面を照明する複数の第1発光器、及び該複数の第1発光器を支持する第1支持体を備え、
前記第1支持体は、少なくとも、前記搬送路に近い第1発光器を、他の一群の第1発光器よりも前記検査位置から離隔した位置で支持するように構成されるとともに、離隔した第1発光器と他の一群の第1発光器との間に、前記検査位置とは反対側の背面から前記被検査物の被検査面を観察できる空間を備え、
前記撮像カメラは、前記第1支持体の前記背面側に配設され、前記第1支持体の空間を通して前記被検査物の被検査面を撮像するように構成され、
更に、前記第2照明機構は、前記搬送シートを挟んで面対称となる位置に配設されるとともに、前記被検査物の被検査面を照明する複数の第2発光器、及び該複数の第2発光器を支持する第2支持体を備えてなり、
前記第1照明機構の前記搬送路に近い第1発光器、及び第2照明機構の前記搬送路に近い第2発光器は、その1/2ビーム角が30°~80°の範囲内の角度を有し、
前記第1照明機構の他の第1発光器、及び前記第2照明機構の他の第2発光器は、その1/2ビーム角が10°~25°の範囲内の角度を有し、
前記撮像カメラは、その撮像光軸が、前記搬送路と直交する面内にあり、且つ前記搬送路と10°~35°の範囲の角度で交差するように配設されるとともに、
前記第1照明機構の前記搬送路に近い第1発光器、及び第2照明機構の前記搬送路に近い第2発光器は、その照明光軸が、前記搬送路と3°~20°の範囲の角度で交差するように配設されていることを特徴とする検査装置。
【請求項2】
前記第1照明機構の前記搬送路に近い第1発光器と、他の第1発光器と、第2照明機構の前記搬送路に近い第2発光器と、他の第2発光器とを別々に調光可能に構成されていることを特徴とする請求項1記載の検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品など微小な被検査対象物の端面の外観性状を精度よく検査可能な検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品等の外観的な性状を検査する装置の一つとして、従来、下記特許文献1(特開平5-288527号公報)に開示されるような検査装置が知られている。この検査装置は、テーブル上に載置されたプリント基板をXY方向に移動させる手段と、ドーム状に配設された複数のLEDを有し、前記プリント基板上の被検査部を照明する照明手段と、照明手段の頂部に形成された穴からプリント基板上の被検査部を撮像するテレビカメラとを備えている。
【0003】
この検査装置によれば、前記照明手段によってプリント基板上の被検査部が照明され、当該被検査部の画像が前記テレビカメラによって撮像される。そして、このようにして撮像された画像データを解析することにより、前記被検査部の外観的な性状の良否が判別される。
【0004】
従来、このような検査装置は、被検査物を移動させる手段、被検査物を照明する手段、並びに被検査物の画像を撮像する手段を備えるという点で、その基本的な構成は変わらないものの、検査対象物である被検査物の形状や検査部位に応じて設計、変形された態様が採用されている。
【0005】
例えば、6面体をした電子部品(例えば、コンデンサなど)の端面を検査する場合、この電子部品を適宜搬送機構によって所定の搬送方向に搬送し、その搬送途中の所定位置に設定された検査位置で、電子部品の前端面を照明機構によって搬送方向前方から照明するとともに、適宜撮像カメラにより、斜め前方から当該電子部品の前端面を撮像するといった態様が採られる。
【0006】
この場合、照明機構としては、LEDがドーム状に配設された上述の照明手段を、搬送機構の搬送方向と直交する垂直面で分割した態様が採られ、その搬送方向前側の部分で電子部品の前端面を照明するように構成される。
【0007】
また、照明機構は、LEDが配置されない個所に、貫通孔が穿孔されており、撮像カメラはこの貫通孔を通して、前記電子部品の前端面を撮像する。
【0008】
ところで、電子部品の前端面の外観性状を検査する場合に、これを高精度に検査するには、搬送方向と撮像カメラの撮像光軸とのなす角度(仰角)が可能な限り小さくなるように撮像カメラを配設して、電子部品の前端面をでき得る限りその正面から撮像するのが好ましい。前端面を正面から撮像することで、得られる画像データが最大のものとなり、より高精度な解析を行うことができる。
【0009】
また、前記照明機構は、電子部品の前端面に対し、その照明光軸ができるだけ直角に近いものとなるような位置、言い換えれば、可能な限り搬送機構の搬送路に近い位置にLEDが配設されているのが好ましい。このように、搬送路に近い位置にLEDを設けることで、撮像光軸の仰角が可能な限り小さくなるように配設された撮像カメラに、前記前端面からより多くの反射光を取り込むことができ、これにより当該撮像カメラによって撮像される画像がより鮮明なものとなる。斯くして、このように鮮明な画像を得ることによって、この画像を基にした解析の精度を高めることができる。
【0010】
近年では、前記電子部品はその微小化が加速し、従前、断面が3mm×2mmであったものが、0.4mm×0.2mmの断面のものまで小型化が進んでおり、このような微小化に対応するためにも、上述したような、撮像カメラとLEDの配置が好ましい。
【0011】
ところが、撮像カメラの撮像光軸の仰角をできるだけ小さく設定し、LEDを可能な限り搬送機構の搬送路に近い位置に配設した構成を採用すると、撮像カメラの撮像光軸とLEDとが干渉しあう位置関係となり、電子部品を撮像するための貫通孔を照明機構に設けることができない、即ち、電子部品を撮像することができないという問題があった。
【0012】
そこで、本願発明者等は、このような問題に鑑み、下記特許文献2に開示されるような検査装置を既に提案している。
【0013】
この検査装置は、設定された搬送方向に電子部品などの被検査物を搬送し、当該被検査物の少なくとも前記搬送方向前端面又は後端面を被検査面として検査する検査装置であって、前記搬送方向に沿った搬送路を有し、該搬送路上の前記被検査物を前記搬送方向に搬送する搬送機構と、前記搬送路を境として前記被検査物と同じ側に配設され、前記搬送路上の予め設定された検査位置において、前記搬送機構によって搬送される前記被検査物の前記被検査面を照明する照明機構と、同じく前記被検査物と同じ側に配設され、前記検査位置にある前記被検査物の前記被検査面を撮像する撮像カメラとを少なくとも備えている。
【0014】
そして、前記照明機構は、前記被検査物の被検査面を照明する複数の発光器と、該複数の発光器を支持する支持体とを備え、当該支持体は、少なくとも、前記搬送路に近い発光器を、他の一群の発光器よりも前記検査位置から離隔した位置で支持するように構成されるとともに、前記離隔した発光器と他の一群の発光器との間に、前記検査位置とは反対側の背面から前記被検査物の被検査面を観察できる空間を備え、前記撮像カメラは、前記支持体の前記背面側に配設され、前記支持体の空間を通して前記被検査物の被検査面を撮像するように構成される。
【0015】
この検査装置によれば、被検査物は、搬送機構によってその搬送路上を搬送され、当該搬送路上の検査位置において、照明機構によってその被検査面が照明された状態で、前記撮像カメラによって当該被検査面が撮像される。
【0016】
そして、前記照明機構は、少なくとも、前記搬送路に近い発光器を、他の一群の発光器よりも前記検査位置から離隔した位置に配設したので、当該搬送路に近い発光器を可能な限り前記搬送機構の搬送路に近づけた状態で、これと前記他の一群の発光器との間に適切な間隔を設定することができ、この部分に、前記被検査物の被検査面を撮像するための空間を設けることができる。
【0017】
そして、このような構成とすることで、前記撮像カメラを、その撮像光軸と前記搬送路とのなす角度(仰角)が可能な限り小さくなるように、即ち、可能な限り前記搬送路に近づけた状態に配置することができ、このように配設された撮像カメラにより、でき得る限りその正面から前記被検査物の被検査面を撮像することができる。これにより、前記撮像カメラによって撮像される前記被検査面の画像をより大きな画像としてとらえることができ、この結果、前記被検査面の外観性状を高精度に検査することができる。
【0018】
また、上述のように、前記搬送路に近い発光器を可能な限り前記搬送路に近づけた状態で配置することができるので、前記被検査面からより多くの反射光を前記撮像カメラに取り込むことができ、これにより当該撮像カメラによって撮像される画像をより鮮明なものとすることができる。かくして、被検査面の鮮明な画像を得ることで、当該被検査面の外観性状を高精度に検査することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【文献】特開平5-288527号公報
【文献】特開2014-160016号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
ところが、上記特許文献2に開示された検査は上述のような良好な効果を奏するものの、以下の点において、更なる改良が求められていた。
【0021】
上述したコンデンサなどの電子部品の分野では、その電気的な特性を検査するために、電極部の端面に検査用のプローブを接触させる態様が採られているが、このようなプローブの接触によって、当該電極部の端面にプローブの接触痕が生じる場合がある。この接触痕は、プローブが接触することにより、他の部分よりもむしろ平坦になることによって発現されるもので、これ自体は外観上の不良に属するものではなく、また、品質面からしても、不良に属するものではない。
【0022】
一方、電極部に形成される傷、欠け及び剥がれについては、外観上の不良と判断され、また、傷については、品質上大きな問題にはならないものの、欠け、剥がれについては、電極部の欠損であるので品質面から不良と判断される。
【0023】
したがって、当該電子部品に係る外観検査分野では、歩留まりの向上を図る観点から、品質面から問題となる欠けや剥がれについてのみ、これを検出することが可能な検査装置の開発が求められている。
【0024】
本発明は、以上のような背景の下でなされたものであり、電子部品の電極部に存在する欠けや剥がれについてのみ、これを検出することが可能な検査装置の提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
上記課題を解決するための本発明は、
設定された搬送方向に被検査物を搬送し、該被検査物の少なくとも前記搬送方向前端面又は後端面を被検査面として検査する検査装置であって、
前記搬送方向に沿って移動する透明なシート状の搬送シートを有し、該搬送シート上に載置された前記被検査物を前記搬送シートの移動によって前記搬送方向に搬送する搬送機構と、
前記搬送シートによって形成される搬送路上の所定の検査位置において、前記搬送シートを境として前記被検査物と同じ側に配設されて、前記被検査物の前記被検査面を照明する第1照明機構、及び前記被検査物とは反対側に配設されて、前記被検査物の前記被検査面を照明する第2照明機構と、
前記被検査物と同じ側に配設され、前記検査位置にある前記被検査物の前記被検査面を撮像する撮像カメラとを備え、
前記第1照明機構は、前記被検査物の被検査面を照明する複数の第1発光器、及び該複数の第1発光器を支持する第1支持体を備え、
前記第1支持体は、少なくとも、前記搬送路に近い第1発光器を、他の一群の第1発光器よりも前記検査位置から離隔した位置で支持するように構成されるとともに、離隔した第1発光器と他の一群の第1発光器との間に、前記検査位置とは反対側の背面から前記被検査物の被検査面を観察できる空間を備え、
前記撮像カメラは、前記第1支持体の前記背面側に配設され、前記第1支持体の空間を通して前記被検査物の被検査面を撮像するように構成され、
更に、前記第2照明機構は、前記搬送シートを挟んで面対称となる位置に配設されるとともに、前記被検査物の被検査面を照明する複数の第2発光器、及び該複数の第2発光器を支持する第2支持体を備えてなり、
前記第1照明機構の前記搬送路に近い第1発光器、及び第2照明機構の前記搬送路に近い第2発光器は、その1/2ビーム角が30°~80°の範囲内の角度を有し、
前記第1照明機構の他の第1発光器、及び前記第2照明機構の他の第2発光器は、その1/2ビーム角が10°~25°の範囲内の角度を有する検査装置に係る。
【0026】
尚、この検査装置に、好適に適用される検査対象物は、基体部、及びこの基体部の少なくとも端面を含む一部分が金属層によって被覆された電極部から構成される電子分品であって、基体部は電極部よりも光の反射率が低い材料から構成された電子部品であり、この検査装置では、当該電極部の端面(被検査面)が検査される。
【0027】
この検査装置によれば、被検査物は、搬送機構の透明な搬送シート上に載置された状態で当該搬送シートの移動によって搬送される。そして、その搬送路上の所定の検査位置において、第1照明機構の前記搬送路に近い第1発光器(第1B発光器)及び他の一群の第1発光器(第1A発光器)、並びに第2照明機構の前記搬送路に近い第2発光器(第2B発光器)及び他の一群の第2発光器(第2A発光器)により、その被検査面が照明された状態で、前記撮像カメラによって当該被検査面が撮像される。尚、第2A発光器及び第2B発光器から照射された光は、透明な前記搬送シートを透過することによって、前記被検査物の被検査面を照明する。
【0028】
前記第1照明機構では、少なくとも、前記第1B発光器を前記第1A発光器よりも前記検査位置から離隔した位置に配設したので、当該第1B発光器を可能な限り前記搬送機構の搬送路に近づけた状態で、これと前記第1A発光器との間に適切な間隔を設定することができ、この部分に、前記被検査物の被検査面を撮像するための空間を設けることができる。
【0029】
そして、このような構成とすることで、前記撮像カメラを、その撮像光軸と前記搬送路とのなす角度(仰角)が可能な限り小さくなるように、即ち、可能な限り前記搬送路に近づけた状態に配置することができ、このように配設された撮像カメラにより、でき得る限りその正面から前記被検査物の被検査面を撮像することができる。これにより、前記撮像カメラによって撮像される前記被検査面の画像をより大きな画像としてとらえることができ、この結果、前記被検査面の外観性状を高精度に検査することができる。
【0030】
また、前記第1照明機構の前記第1B発光器、及び第2照明機構の第2B発光器は、それぞれその1/2ビーム角が30°~80°の範囲内の角度を有し、一方、第1照明機構の第1A発光器、及び第2照明機構の第2A発光器は、それぞれその1/2ビーム角が10°~25°の範囲内の角度を有している。即ち、前記第1A発光器及び第2A発光器は、それぞれ比較的指向性の高い光を照射する発光器であり、前記第1B発光器及び第2B発光器は、比較的指向性を持たない光を照射する発光器である。尚、前記1/2ビーム角とは、発光器から照射される最大光度を有する光軸を中心として、最大光度の1/2の光度を有する光の照射方向の内角を意味する。
【0031】
そして、この第1照明機構及び第2照明機構によれば、電極部の端面に傷、接触痕、並びに欠け及び剥がれが存在する場合に、以下の作用により、前記撮像カメラによって撮像される画像について、欠け及び剥がれのみを強調した画像とすることができ、これにより、被検査物に関し、欠け及び剥がれのみについてその良否を判別することが可能となる。
【0032】
即ち、前記被検査面には、上側の前記第1B発光器、及び下側の第2B発光器から、比較的指向性を持たない光が照射されるとともに、上側の第1A発光器及び下側の第2A発光器から、指向性を有する光が斜め方向から照射される。このため、被検査面に傷や接触痕が存在する場合には、上下両側から照射される比較的指向性を持たない光と指向性を有する光とが相俟って、これらの光により、傷や接触痕を形成する凹部内の全域が照明され、その結果、傷や接触痕を形成する凹部の全域から反射された光が前記撮像カメラに入光されることになる。これにより、被検査面に傷や接触痕が存在する場合でも、前記撮像カメラによって撮像される画像は、傷や接触痕が捨象された画像となる。
【0033】
一方、被検査面に欠けや剥がれが存在し、同部において基体部が露出されている場合には、基体部は、金属層から構成される電極部に比べて光の反射率が低いため、前記撮像カメラに入光される前記被検査面からの反射光量は、欠けや剥がれに対応した部分の反射光量が低いものとなる。この結果、前記撮像カメラによって撮像される画像は、欠けや剥がれに対応した部分が暗くなった画像となる。したがって、得られた画像を処理して当該暗部を検出することによって、欠けや剥がれについての不良を検出することができる。以上により、被検査面に欠けや剥がれが存在する場合には、この欠けや剥がれのみを不良として検出することができる。
【0034】
また、上述のように、前記第1B発光器及び第2B発光器を可能な限り前記搬送路に近づけた状態で配置することができるので、前記被検査面からより多くの反射光を前記撮像カメラに取り込むことができ、これにより当該撮像カメラによって撮像される画像をより鮮明なものとすることができる。斯くして、被検査面の鮮明な画像を得ることで、当該被検査面の外観性状を高精度に検査することができる。
【0035】
尚、前記第1A発光器、第1B発光器、第2A発光器及び第2B発光器としてはLEDを代表的に例示することができるが、前記被検査面を検査に必要な十分な光量で照明できるものであれば、何らLEDに限定されるものではない。
【0036】
以上のように、上記構成を備えた本発明の検査装置によれば、被検査物の外観性状を高精度に検査することができるとともに、品質上問題にはならない傷や接触痕を検出することなく、品質上問題となる欠け及び剥がれのみを不良として検出することができる。
【0037】
また、上記検査装置において、前記撮像カメラは、その撮像光軸が、前記搬送路と直交する面内にあり、且つ前記搬送路と10°~35°の範囲の角度で交差するように配設されるとともに、前記第1照明機構の第1B発光器、及び第2照明機構の第2B発光器は、その照明光軸が、前記搬送路と3°~20°の範囲の角度で交差するように配設されているのが好ましい。
【0038】
前記撮像カメラの撮像光軸と、前記第1B発光器及び第2B発光器の照明光軸とを、それぞれ上記範囲の角度に設定することで、前記撮像カメラによって撮像される前記被検査物の画像をより適切なものとすることができ、前記被検査物の被検査面を高精度に検査することができる。
【0039】
また、上記検査装置において、前記第1照明機構の第1A発光器、第1B発光器、第2照明機構の第2A発光器、第2B発光器は、これらを別々に調光可能に構成されているのが好ましい。
【0040】
前記第1A発光器、第1B発光器、第2A発光器及び第2B発光器の強度(照度)を別々に調整可能にすることで、前記撮像カメラによって撮像される前記被検査物画像の輝度をその全域において均一にすることができる。即ち、例えば、前記第1B発光器は、前記第1A発光器よりも前記検査位置から遠ざかっているため、この第1B発光器によって照明される部分の前記被検査面の輝度は、前記第1A発光器によって照明される部分の輝度よりも低くなるが、第1B発光器の強度を高めることで、被検査面全域の輝度をほぼ均一にすることができる。また、被検査面の形状によっては、これに起因して被検査面の輝度が不均一になることがあるが、被検査面の形状に応じて各発光器の強度を調節することで、被検査面全域の輝度をほぼ均一にすることができる。
【発明の効果】
【0041】
以上詳述したように、本発明に係る検査装置によれば、前記被検査物の外観性状を高精度に検査することができるとともに、品質上の問題にはならない傷や接触痕を検出することなく、品質上問題となる欠け及び剥がれのみを不良として検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】本発明の一実施形態に係る検査装置を示した正面図である。
図2図1の拡大図であって、第1及び第2の照明機構を断面で示した拡大図である。
図3図2における矢視B-B方向の側面図である。
図4図2における矢視C-C方向の側面図である。
図5】(a)は被検査物の平面図であり、(b)はその矢視D方向の側面図である。
図6】(a)及び(b)は本実施形態に係るLEDの1/2ビーム角について説明するための説明図である。
図7】本実施形態の変形例に係る検査装置を示した正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、本発明の具体的な実施の形態について、図面を参照しながら説明する。尚、図1は、本発明の一実施形態に係る検査装置を示した正面図であり、図2は、図1を拡大して示した正断面図である。また、図3は、図2における矢視B-B方向の側面図であり、図4は、図2における矢視C-C方向の側面図である。
【0044】
図1及び図2に示すように、本例の検査装置1は、被検査物Wを搬送方向である矢示A方向に搬送する搬送機構2と、この搬送機構2によって搬送される被検査物Wの前端面(搬送方向前側の端面)Wを検査位置Pにおいて照明する第1照明機構5及び第2照明機構25と、検査位置Pにある被検査物Wの前端面Wを撮像する撮像カメラ4とを備える。
【0045】
尚、本例では、図5に示した6面体形状の電子部品を被検査物Wとし、その前端面Wを被検査面としている。この電子部品は、基体部W、及びこの基体部Wの両端部に形成された電極部Wから構成され、電極部Wは基体部Wを金属層によって被覆することによって形成されている。そして、基体部Wは、セラミックなど、電極部Wよりも光の反射率が低い材料から構成されている。
【0046】
[搬送機構]
前記搬送機構2は、透明な硝子板から構成される円板状且つシート状をした搬送シートとしての回転テーブル3と、この回転テーブル3を矢示A方向に水平回転させる駆動モータ(図示せず)とを備えており、前端面Wが搬送方向に向くように回転テーブル3上に供給された被検査物Wを前記回転テーブル3の回転によって前記搬送方向に搬送する。尚、当然のことながら、回転テーブル3によって搬送される被検査物Wの搬送路は円弧状の経路となる。
【0047】
[撮像カメラ]
前記撮像カメラ4は、被検査物Wの前端面Wの2次元画像を撮像するカメラであり、前記検査位置Pにおいて、その撮像光軸が、前記搬送経路の接線を含む垂直面内に位置し、且つ回転テーブル3の上面、即ち搬送路となす角度が10°~35°の範囲の角度となるように配設されている。
【0048】
[第1照明機構]
図2図4に示すように、前記第1照明機構5は、第1A支持体6と、この第1A支持体6の前記搬送方向下流側の端面9に固設された第1B支持体13と、前記第1A支持体6に支持された第1A発光器としての複数のLED12と、前記第1B支持体13に支持された第1B発光器としての同じく複数のLED16とから構成され、前記検査位置Pより搬送方向下流側、且つ前記回転テーブル3の上方に配設される。
【0049】
前記第1A支持体6は、その前記搬送方向上流側の端面7から下面8にかけて形成された凹曲面10を備えており、この凹曲面10上に前記複数のLED12が固設されている。これらLED12は、図4に示すように、ほぼ同心円の3つの円弧列上に位置するように前記凹曲面10上に配設され、本例では最外周の円弧列に17個のLED12が配設され、これより中心側の円弧列に13個のLED12が配設され、最も中心側の円弧列に9個のLED12が配設されている。
【0050】
また、第1A支持体6の下面8には、その前記搬送方向下流側の端面9及び前記凹曲面10に開口する凹溝11が形成されており、前記第1B支持体13が、端面9側の開口部の上部側を残してこれを塞ぐように、当該端面9に固設されている。
【0051】
一方、前記第1B支持体13の前記搬送方向上流側の端面14には、複数(本例では4個)のLED16が水平となる一列に配設されており、このLED16は、前記LED12よりも前記回転テーブル3の搬送経路に近い位置にあり、しかも、前記LED12よりも前記検査位置Pから前記搬送方向に離隔した位置に配置されている。
【0052】
また、前記第1A支持体6の端面9には、前記第1B支持体13の上面と前記凹溝11の内面とによって開口が形成されており、撮像光軸の角度が上記角度に設定された前記撮像カメラ4により、この開口を通して、前記被検査物Wの前端面Wを撮像することができるようになっている。
【0053】
斯くして、前記回転テーブル3の搬送経路と近い位置に配設される前記第1B発光器としてのLED16を、前記第1A発光器としての他の一群のLED12よりも前記検査位置Pから前記搬送方向に離隔した位置に配置したので、LED16とLED12との間に間隔を設けることができ、前記第1A支持体6に形成した凹溝11と前記第1B支持体13の上面との間に、前記被検査物Wの前端面Wを撮像するための空間を形成することが可能となった。
【0054】
尚、前記回転テーブル3の搬送路の直上に当たる前記第1B支持体13の下面15には、前記回転テーブル3によって搬送される被検査物Wが通過可能な隙間が形成されている。
【0055】
また、前記LED12は1/2ビーム角が10°~25°の範囲内の角度を有し、前記LED16は1/2ビーム角が30°~80°の範囲内の角度を有している。即ち、LED12は比較的指向性の高い光を照射し、LED16は比較的指向性を持たない光を照射する。尚、前記1/2ビーム角とは、発光器から照射される最大光度を有する光軸を中心として、最大光度の1/2の光度を有する光の照射方向の内角を意味する。
【0056】
図6に1/2ビーム角の定義を示している。図6(a)はLED12の場合を図示しており、LED12の最大光度を有する光軸12aを中心として、最大光度の1/2の光度を有する光12b,12bの照射方向の内角θaがLED12の1/2ビーム角である。同様に図6(b)はLED16の場合を図示しており、LED16の最大光度を有する光軸16aを中心として、最大光度の1/2の光度を有する光16b,16bの照射方向の内角θbがLED16の1/2ビーム角である。
【0057】
また、LED16は、その光軸16aが前記搬送路と3°~20°の範囲内の角度で交差するように配設されている。
【0058】
また、前記LED12の内、最外周の円弧列に配列される一群(LED群G1)と、他の円弧列に配置される一群(LED群G2)と、更にLED16の一群(LED群G3)とは、それぞれその発光強度を別々に調光可能となっている。
【0059】
[第2照明機構]
前記第2照明機構25は、前記第1照明機構5と同じ構成を備えるもので、前記回転テーブル3の下方に、前記第1照明機構5とは面対称の位置関係となるように配設されている。以下、重複した説明にはなるが、この第2照明機構25の構成について説明する。
【0060】
前記第2照明機構25は、第2A支持体26と、この第2A支持体26の前記搬送方向下流側の端面29に固設された第2B支持体33と、前記第2A支持体26に支持された第2A発光器としての複数のLED32と、前記第2B支持体33に支持された第2B発光器としての同じく複数のLED36とから構成される。
【0061】
前記第2A支持体26は、その前記搬送方向上流側の端面27から下面28にかけて形成された凹曲面30を備えており、この凹曲面30上に前記複数のLED32が固設されている。これらLED32は、図4に示すように、ほぼ同心円の3つの円弧列上に位置するように前記凹曲面30上に配設され、本例では最外周の円弧列に17個のLED32が配設され、これより中心側の円弧列に13個のLED32が配設され、最も中心側の円弧列に9個のLED32が配設されている。
【0062】
また、第2A支持体26の下面28には、その前記搬送方向下流側の端面29及び前記凹曲面30に開口する凹溝31が形成されており、前記第2B支持体33が、端面29側の開口部の上部側を残してこれを塞ぐように、当該端面29に固設されている。
【0063】
一方、前記第2B支持体33の前記搬送方向上流側の端面34には、複数(本例では4個)のLED36が水平となる一列に配設されており、このLED36は、前記LED32よりも前記回転テーブル3の搬送経路に近い位置にあり、しかも、前記LED32よりも前記検査位置Pから前記搬送方向に離隔した位置に配置されている。
【0064】
また、前記LED32は1/2ビーム角(図6(a)に示すθa)が10°~25°の範囲内の角度を有しており、比較的指向性の高い光を照射する。また、前記LED36は1/2ビーム角(図6(b)に示すθb)が30°~80°の範囲内の角度を有しており、比較的指向性を持たない光を照射する。また、LED36は、図6(b)に示した光軸36aが前記搬送路と3°~20°の範囲内の角度で交差するように配設されている。
【0065】
また、前記LED32の内、最外周の円弧列に配列される一群(LED群G4)と、他の円弧列に配置される一群(LED群G5)と、更にLED36の一群(LED群G6)とは、それぞれその発光強度を別々に調光可能となっている。
【0066】
以上の構成を備えた本例の検査装置1によれば、前記駆動モータ(図示せず)により駆動されて回転する回転テーブル3上に、複数の被検査物Wが、その前端面Wを搬送方向に向けた姿勢で順次所定間隔をあけて供給され、供給された被検査物Wは、前記回転テーブル3によって、前記検査位置Pを経由するように搬送される。
【0067】
前記検査位置Pに達した被検査物Wは、被検査面であるその前端面Wが、前記第1照明機構5のLED12,16から照射される光によって照明されるとともに、前記第2照明機構25のLED32,36から照射され、回転テーブル3を透過した光によって照明される。かくして、このように上下に配置された第1照明機構5及び第2照明機構25によって前記前端面Wを照明しているので、被検査面たる前記前端面Wは、高い照度で均質に照明される。
【0068】
そして、このように均質に照明された被検査物Wの前端面Wが前記撮像カメラ4によって撮像され、撮像された画像データが、図示しない判別装置によって解析され、当該前端面Wの外観性状の良否が判別される。
【0069】
尚、本例の検査装置1では、第1照明機構5のLED16及び第2照明機構25のLED36を、その照明光軸16a,36aが前記搬送路と3°~20°の範囲の角度で交差するように配設したので、前記被検査物Wの前端面Wをほぼ正面から照明することができる。
【0070】
また、第1照明機構5のLED16を、LED12よりも前記検査位置Pから離隔した位置に設けたので、LED16とLED12との間に適切な間隔を設定することができ、この部分に、前記被検査物Wの前端面Wを撮像するための空間を形成することができる。そして、このような空間を形成することによって、前記撮像カメラ4を、その撮像光軸と前記搬送路とのなす角度(仰角)が10°~35°の範囲の角度となるように配設することができ、これを可能な限り前記搬送路に近づけた状態に配置することができる。
【0071】
斯くして、このように配設した撮像カメラ4によれば、前記被検査物Wの前端面Wをでき得る限りその正面から撮像することができ、前記撮像カメラ4によって撮像される前記前端面Wの画像をより大きな画像としてとらえることができ、この結果、前記前端面Wの外観性状を高精度に検査することができる。
【0072】
また、上述したように、前記LED16及び36によって、前記被検査物Wの前端面Wをほぼ正面から照明するようにしたので、前記前端面Wからより多くの反射光を前記撮像カメラ4に取り込むことができ、これにより当該撮像カメラ4によって撮像される画像をより鮮明なものとすることができる。斯くして、前記前端面Wの鮮明な画像を得ることで、当該前端面Wの外観性状をより高精度に検査することができる。
【0073】
また、この検査装置1によれば、電極部Wの端面Wに傷、接触痕、並びに欠け及び剥がれが存在する場合に、以下の作用により、前記撮像カメラ4によって撮像される画像について、欠け及び剥がれのみを強調した画像とすることができ、これにより、被検査物Wに関し、欠け及び剥がれのみについてその良否を判別することができる。
【0074】
即ち、前記被検査面Wには、回転テーブル3の上方に配設される第1照明機構5のLED16、及び下方に配設される第2照明機構25のLED36から、比較的指向性を持たない光が照射されるとともに、第1照明機構5のLED12及び第2照明機構25のLED32から、指向性を有する光が斜め方向から照射される。このため、被検査面Wに傷や接触痕が存在する場合には、上下両側から照射される比較的指向性を持たない光と指向性を有する光とが相俟って、これらの光により、傷や接触痕を形成する凹部内の全域が照明され、その結果、傷や接触痕を形成する凹部の全域から反射された光が前記撮像カメラに入光されることになる。これにより、被検査面Wに傷や接触痕が存在する場合でも、前記撮像カメラ4によって撮像される画像は、傷や接触痕が捨象された画像となる。
【0075】
一方、被検査面Wに欠けや剥がれが存在し、同部において基体部Wが露出されている場合には、基体部Wは、金属層から構成される電極部Wに比べて光の反射率が低いため、前記撮像カメラ4に入光される前記被検査面Wからの反射光量は、欠けや剥がれに対応した部分の反射光量が低いものとなる。この結果、前記撮像カメラ4によって撮像される画像は、欠けや剥がれに対応した部分が暗くなった画像となる。したがって、得られた画像を処理して当該暗部を検出することによって、欠けや剥がれについての不良を検出することができる。以上により、被検査面Wに欠けや剥がれが存在する場合には、この欠けや剥がれのみを不良として検出することができる。
【0076】
また、本例の前記第1照明機構5及び第2照明機構25では、前記LED群G1,G2,G3,G4,G5及びG6をそれぞれ別々に調光することができるようになっているので、前記LED群G1,G2,G3,G4,G5及びG6を適宜適切に調光することで、当該前端面Wを均質に照明することができる。また、被検査面である前記前端面Wの形状に応じて調光することもでき、被検査面の形状により、これに起因して被検査面の輝度が不均一になる場合には、当該被検査面の形状に応じて各LED群G1,G2,G3,G4,G5及びG6の強度を調節することで、被検査面全域の輝度をほぼ均一にすることができる。
【0077】
このように、本例の検査装置1によれば、前記被検査物Wの前端面Waの外観性状を高精度に検査することができ、また、品質上問題にはならない傷や接触痕を検出することなく、品質上問題となる欠け及び剥がれのみを不良として検出することができる。
【0078】
以上、本発明の具体的な実施形態について説明したが、本発明が採り得る具体的な態様は、何らこれに限定されるものではない。例えば、上例では、被検査物Wの搬送方向前端面Wを検査するようにしたが、図8に示すように、被検査物Wの後端面Wを検査するようにしてもよい。この検査装置50は、前記搬送装置2の搬送方向をA方向からE方向に反転させたものである。このため、図8において、検査装置1と同じ構成要素については同一の符号を付しており、各構成要素の構成及び作用については、検査装置1のものと同一であるのでその説明は省略する。
【符号の説明】
【0079】
1 検査装置
2 搬送機構
3 回転テーブル
4 撮像カメラ
5 第1照明機構
6 第1支持体
12 第1B発光器
16 第1A発光器
25 第2照明機構
26 第2支持体
32 第2B発光器
36 第2A発光器
W 被検査物
基体部
電極部
被検査面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7