(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-14
(45)【発行日】2024-06-24
(54)【発明の名称】撮像素子およびその制御方法、撮像装置
(51)【国際特許分類】
H04N 25/772 20230101AFI20240617BHJP
H04N 25/633 20230101ALI20240617BHJP
【FI】
H04N25/772
H04N25/633
(21)【出願番号】P 2020069090
(22)【出願日】2020-04-07
【審査請求日】2023-03-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(72)【発明者】
【氏名】石井 美絵
(72)【発明者】
【氏名】竹田 伸弘
【審査官】鈴木 明
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/147199(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 25/00-25/79
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光電変換部をそれぞれ有する
遮光されていない複数の画素部と、
前記複数の画素部を有する領域に対して端部領域に設けられる遮光された複数の画素部と、
前記光電変換部で蓄積された電荷に基づく信号
と前記遮光された複数の画素部の信号を読み出す複数の読み出し回路部と、を備え、
前記複数の読み出し回路部の各々は、前記信号をデジタル信号に変換する回路を有し、
前記遮光されていない複数の画素部における第1の画素部が有する第1の光電変換部、および前記第1の画素部に隣接する前記
遮光されていない複数の画素部における第2の画素部が有する第2の光電変換部は、前記複数の読み出し回路部における第1の読み出し回路部を共有し、
前記遮光されていない画素部が有する第3の光電変換部、および当該画素部に隣接する前記遮光された画素部が有する第4の光電変換部は、前記複数の読み出し回路部における第2の読み出し回路部を共有し、
前記第1の読み出し回路部は、前記第1の光電変換部で蓄積された電荷に基づく信号、および前記第2の光電変換部で蓄積された電荷に基づく信号を読み出し、
前記第1の光電変換部と第2の光電変換部は隣り合う位置に配置され
、前記第3の光電変換部と第4の光電変換部は隣り合う位置に配置されており、
前記第1の読み出し回路部は、前記第1の光電変換部に対応する第1の位置と前記第2の光電変換部に対応する第2の位置との間に配置されている
ことを特徴とする撮像素子。
【請求項2】
第1の基板と第2の基板とをさらに備え、
前記第1の基板と前記第2の基板とが積層された構成であり、
前記第1の基板には、前記
遮光されていない複数の画素部および前記遮光された複数の画素部が配列され、
前記第2の基板には、前記複数の読み出し回路部が配列される
ことを特徴とする請求項1に記載の撮像素子。
【請求項3】
前記複数の画素部の各々は前記複数の光電変換部にそれぞれ蓄積された電荷を保持する複数の電荷保持部を備え、
前記第1および第2の光電変換部は、1つの前記電荷保持部を含む回路部を共有する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の撮像素子。
【請求項4】
前記電荷保持部を含む回路部は前記電荷保持部およびスイッチ素子を有し、前記第1の読み出し回路部に接続されている
ことを特徴とする請求項3に記載の撮像素子。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の撮像素子を備える
ことを特徴とする撮像装置。
【請求項6】
前記撮像素子の駆動制御を行う制御手段を備える
ことを特徴とする請求項5に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記制御手段は、第1の期間で偶数列または奇数列に属する画素部の信号を読み出してから第2の期間で奇数列または偶数列に属する画素部の信号を読み出す制御を行う
ことを特徴とする請求項6に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記
遮光されていない複数の画素部のうち、第1の画素部と第2および第3の画素部が隣接し、第4の画素部と前記第2および第3の画素部が隣接しており、
前記制御手段は、第1の期間で前記第2および第3の画素部の信号を読み出してから、第2の期間で前記1および第4の画素部の信号を読み出す制御を行う
ことを特徴とする請求項6に記載の撮像装置。
【請求項9】
前記制御手段は、第1の期間で奇数行または偶数行に属する画素部の信号を読み出してから第2の期間で偶数行または奇数行に属する画素部の信号を読み出す制御を行う
ことを特徴とする請求項6に記載の撮像装置。
【請求項10】
複数の光電変換部をそれぞれ有する
遮光されていない複数の画素部と、
前記複数の画素部を有する領域に対して端部領域に設けられる遮光された複数の画素部と、
前記光電変換部で蓄積された電荷に基づく信号
と前記遮光された複数の画素部の信号を読み出す複数の読み出し回路部と、を有し、
前記複数の読み出し回路部の各々は、前記信号をデジタル信号に変換する回路を有し、
前記遮光されていない複数の画素部における第1の画素部が有する第1の光電変換部、および前記第1の画素部に隣接する前記
遮光されていない複数の画素部における第2の画素部が有する第2の光電変換部は、前記複数の読み出し回路部における第1の読み出し回路部を共有し、
前記遮光されていない画素部が有する第3の光電変換部、および当該画素部に隣接する前記遮光された画素部が有する第4の光電変換部は、前記複数の読み出し回路部における第2の読み出し回路部を共有し、
前記第1の光電変換部と第2の光電変換部は隣り合う位置に配置され
、前記第3の光電変換部と第4の光電変換部は隣り合う位置に配置されており、
前記第1の読み出し回路部は、前記第1の光電変換部に対応する第1の位置と前記第2の光電変換部に対応する第2の位置との間に配置されている撮像素子にて実行される制御方法であって、
前記第1および第2の光電変換部にてそれぞれ電荷を蓄積する工程と、
前記第1の読み出し回路部により、前記第1の光電変換部で蓄積された電荷に基づく信号、および前記第2の光電変換部で蓄積された電荷に基づく信号の読み出しを行う工程と、
前記第2の読み出し回路部により、前記第3の光電変換部で蓄積された電荷に基づく信号、および前記第4の光電変換部の信号の読み出しを行う工程と、を有する
ことを特徴とする制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の光電変換部を有する画素部を多数配列した固体撮像素子における電荷読み出しの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
撮像により取得された画像信号のアナログ-デジタル(AD)変換方式として、高速な読み出しを行う画素並列AD方式がある。特許文献1には、画素ごとにAD変換部を備える構成が開示されている。画素信号とスロープ型の参照信号との比較を行う比較器と、その後段にてデジタルのカウント値を画素信号として保持するラッチ部が設けられる。
【0003】
また特許文献2には、撮像素子で取得された信号により焦点検出が可能な機能を有する撮像素子について開示されている。1つのマイクロレンズに対応する2つの光電変換部はそれぞれ、撮像レンズの異なる瞳面領域からの光を受光する。2つの光電変換部の出力を比較することによって焦点検出が行われる。また、2つの光電変換部の出力信号を加算することで通常の撮像画像を取得することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2016/136448号
【文献】特許3774597号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の技術を組み合わせて、画素ごとにAD変換部を備える撮像装置において、瞳分割型の画素構成を適用する場合を想定する。例えば、1つのマイクロレンズに対応する単位画素は、2つの光電変換部と、共通の読み出し回路として1つのAD変換部とを備える。この場合、焦点検出を行う読み出しモード時に、単位画素の2つの光電変換部からの信号を順次AD変換して読み出すと、2つの光電変換部の間で蓄積時刻に差が生じてしまう。これは、動体の被写体に対する焦点検出性能の低下等の原因となる。
【0006】
一方、単位画素が2つの光電変換部と2つのAD変換部を備える場合には、AD変換部の回路面積が増大し、単位画素の限られた面積内にAD変換部を配することが困難になる。特に、AD変換された画素信号を保持するためのラッチ部は通常、1ビットあたり十数個のトランジスタを配置する必要がある。例えば14ビットのラッチ部を新たに配置する場合、数百個のトランジスタが増加するので広い回路面積が必要となる。
本発明は、複数の光電変換部を有する画素部から信号を読み出す回路部の数の増加を抑制しつつ、露光時間差が低減された信号を取得可能な撮像素子の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態の撮像素子は、複数の光電変換部をそれぞれ有する遮光されていない複数の画素部と、前記複数の画素部を有する領域に対して端部領域に設けられる遮光された複数の画素部と、前記光電変換部で蓄積された電荷に基づく信号と前記遮光された複数の画素部の信号を読み出す複数の読み出し回路部と、を備え、前記複数の読み出し回路部の各々は、前記信号をデジタル信号に変換する回路を有し、前記遮光されていない複数の画素部における第1の画素部が有する第1の光電変換部、および前記第1の画素部に隣接する前記遮光されていない複数の画素部における第2の画素部が有する第2の光電変換部は、前記複数の読み出し回路部における第1の読み出し回路部を共有する。前記遮光されていない画素部が有する第3の光電変換部、および当該画素部に隣接する前記遮光された画素部が有する第4の光電変換部は、前記複数の読み出し回路部における第2の読み出し回路部を共有する。前記第1の読み出し回路部は、前記第1の光電変換部で蓄積された電荷に基づく信号、および前記第2の光電変換部で蓄積された電荷に基づく信号を読み出す。前記第1の光電変換部と第2の光電変換部は隣り合う位置に配置され、前記第3の光電変換部と第4の光電変換部は隣り合う位置に配置されており、前記第1の読み出し回路部は、前記第1の光電変換部に対応する第1の位置と前記第2の光電変換部に対応する第2の位置との間に配置されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、複数の光電変換部を有する画素部から信号を読み出す回路部の数の増加を抑制しつつ、露光時間差が低減された信号を取得可能な撮像素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態における撮像装置の概略構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明の実施形態における撮像素子が有する画素の構成例を示す模式図である。
【
図3】第1実施形態における撮像素子の構成例を示す平面図である。
【
図4】第1実施形態における撮像素子の画素と読み出し回路部の構成を説明する図である。
【
図5】第1実施形態における信号読み出し動作例を示すタイミングチャートである。
【
図6】第1実施形態における画素信号の読み出し順序の例を示す図である。
【
図7】第1実施形態の変形例における撮像素子の画素と読み出し回路部の構成を説明する図である。
【
図8】第2実施形態における撮像素子の構成例を示す平面図である。
【
図9】第2実施形態における撮像素子の画素と読み出し回路部の構成を説明する図である。
【
図10】第2実施形態における画素信号の読み出し順序の例を示す図である。
【
図11】第3実施形態における撮像素子の構成例を示す平面図である。
【
図12】第3実施形態における撮像素子の画素と読み出し回路部の構成を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の各実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。水平方向および垂直方向にて、複数の光電変換部を有する画素部を配列した構成を有する撮像素子と、該撮像素子を備える撮像装置の例を示す。
【0011】
<第1実施形態>
図1は、本実施形態に係る撮像装置100の概略構成を示すブロック図である。撮像装置100の撮像光学系は、撮像レンズ101、絞り102を備える。光軸(Z軸方向)にて撮像レンズ101および絞り102を通過した光は、撮像レンズ101の焦点位置近傍に結像する。なお、撮像レンズ101は1枚のレンズとして図示されているが、実際には複数のレンズからなるレンズ群で構成される。
【0012】
撮像素子103は撮像レンズ101により結像された被写体像に対する光電変換を行い、信号として取り込む。信号処理回路104は、撮像素子103から出力される信号に対して信号増幅、基準レベル調整等の各種の補正、データの並べ替え等の処理を行う。なお、基準レベル調整等の、一部の信号処理については、撮像素子103内に信号処理部を設けてもよい。タイミング発生回路105は撮像素子103や信号処理回路104に駆動タイミング信号を出力する。
【0013】
全体制御・演算回路(以下、制御部という)106はCPU(中央演算処理装置)を備え、撮像素子103や信号処理回路104等を含む撮像装置100全体の統括的な駆動および制御を行う。CPUは所定の制御プログラムにしたがって各種処理を実行する。
【0014】
信号処理回路104から出力された画像信号に対して制御部106は、所定の画像処理や欠陥補正等を施す。メモリ回路107および記録回路108は、制御部106から出力された画像信号等を記録保持する不揮発性メモリあるいはメモリカード等の記録媒体を有する。
【0015】
操作回路109は撮像装置100が備える操作部材や入力デバイスからの信号を受け付け、操作指示信号を制御部106へ出力することで制御部106に対してユーザの指示を反映させる。表示回路110は撮影後の画像やライブビュー画像、各種設定画面等を表示部の画面上に表示する処理を行う。
【0016】
次に
図2および
図3を参照して、撮像素子103の構成について説明する。
図2は、撮像素子103の受光部およびマイクロレンズアレイを光軸方向から観察した場合の模式図である。マイクロレンズアレイを形成する個々のマイクロレンズ202に対応する1つの画素部を単位画素200と定義する。単位画素200は複数の光電変換部201を有する。光電変換部201はフォトダイオード(以下、PDともいう)により構成される。本実施形態では単位画素にて光電変換部201が水平方向(X軸方向)に2個配置されており、第1の光電変換部201A、第2の光電変換部201Bと定義する。またX軸方向と直交する垂直方向をY軸方向と定義する。
【0017】
1つのマイクロレンズ202に対応する2つのPDを配置した構成によって、各光電変換部201A,201Bは2つに分割された射出瞳部分領域の光を各々受光可能である。異なる射出瞳部分領域の光を受光した2つの光電変換部の各信号を比較することで、撮像レンズ101の焦点検出を行うことができる。
【0018】
瞳分割された光電変換部201Aの信号は、X軸方向に並んだ複数の単位画素200から取得され、これらの出力信号群で構成された被写体像の信号をA像信号と定義する。また瞳分割された光電変換部201Bの信号は、X軸方向に並んだ複数の単位画素200から取得され、これらの出力信号群で構成された被写体像の信号をB像信号と定義する。信号処理回路104および制御部106は、A像信号とB像信号に対して相関演算を行って、像のずれ量(瞳分割位相差)を検出する。さらに像のずれ量に対して撮像レンズ101の焦点位置と光学系から決まる変換係数を乗じることで、画面内の任意の被写体位置に対応した焦点位置を算出することができる。制御部106は算出した焦点位置情報に基づいて撮像レンズ101のフォーカスレンズの駆動制御を行う。これにより撮像面位相差AF(自動焦点調節)が可能となる。また、A像信号とB像信号とを加算したA+B像信号を取得することにより、通常の撮影画像信号に用いることができる。
【0019】
図3は、撮像素子103の構成例を説明するブロック図である。撮像素子103は、画素領域基板301と読み出し回路基板302を備え、読み出し回路基板302の上部に画素領域基板301が積層された構成である。各基板の配線は、シリコン貫通電極等を用いて電気的に接続される。
【0020】
画素領域基板301は、画素領域303と、複数の画素駆動回路304,305を備える。画素領域303には多数の単位画素200が行列状に配置され、被写体からの光を受光する。画素駆動回路304,305は単位画素の駆動および走査を行う回路である。画素駆動回路304は主に行方向の駆動および走査を行い、画素駆動回路305は列方向の駆動および走査を行う。
【0021】
一方、読み出し回路基板302は、複数の読み出し回路部310からなる読み出し回路領域306と、制御回路307、デジタル信号処理回路308、デジタル信号出力回路309を備える。
【0022】
制御回路307はタイミング発生回路(TG)を含み、画素領域基板301の画素駆動回路304,305と、読み出し回路部310やデジタル信号処理回路308、デジタル信号出力回路309に信号を送り、それらの駆動を制御する。画素駆動回路304,305は、画素領域303の各単位画素200に駆動信号を送り、単位画素200の電荷リセットや蓄積、転送、読み出し回路部310への出力等の駆動を制御する。読み出し回路部310は制御回路307の制御により、画素群の出力信号を取得してアナログ-デジタル(AD)変換を行う。AD変換後のデジタル信号は、デジタル信号処理回路308を介してデジタル信号出力回路309から撮像素子103の外部に順次出力される。
【0023】
図3に示すように、1つの読み出し回路部310は、単位画素200の面積とほぼ同一の面積を有しており、おおよそ単位画素数と同数の読み出し回路を備える構成である。
図3では画素領域303にて6×4=24個の単位画素200を図示するが、実際の撮像素子103は数百万、数千万個の単位画素200からなる画素アレイを備える。読み出し回路領域306は数百万、数千万個の読み出し回路部310からなる。
【0024】
単位画素200の数とほぼ同数の読み出し回路部310を有する撮像素子103の場合、画素領域基板301と読み出し回路基板302を積層したときに、対応する位置関係にある単位画素200と読み出し回路部310とが接続される。このように両部分を最短距離で接続することにより、画素部からの出力線を複雑に引き廻すことなく撮像素子103を構成することができる。
【0025】
ここで、焦点検出用の駆動において単位画素200が有する光電変換部201Aと光電変換部201Bの信号をそれぞれ読み出す場合を説明する。この場合、光電変換部201AのPDから信号を読み出した後に、光電変換部201BのPDから信号を読み出すと、それぞれのPDの信号において露光時刻に差が生じてしまう。これは、特定の被写体(例えば高速の移動体)に対する焦点検出性能の低下につながる可能性がある。
【0026】
そこで本実施形態では、単位画素200が有する光電変換部201Aと光電変換部201Bを別々の読み出し回路部310に接続する構成とする。この構成により、単位画素200のA像信号とB像信号との露光時刻を揃えることが可能となる。しかし単位画素200が有する光電変換部201A,201Bそれぞれに対応するように読み出し回路部310を配置すると、回路面積が逼迫する。そのため本実施形態では、単位画素が有する光電変換部201A,201Bはそれぞれ、当該単位画素に隣接する単位画素の光電変換部との間で読み出し回路部310を共有する構成とする。この構成により、読み出し回路、すなわちAD変換回路の面積の増大を抑制しつつ、焦点検出用の信号取得における単位画素内の複数のPDの蓄積時刻の同時性を保つことが可能となる。
【0027】
図4および
図5を参照して、単位画素200からの信号読み出し駆動について詳細に説明する。
図4は、撮像素子103の単位画素200と読み出し回路部310の構成を示す図である。本実施形態では、行方向において隣り合う2つの光電変換部が1つの読み出し回路部310を共有する構成について説明する。
【0028】
図4には隣接する単位画素200-1,200-2と2つの読み出し回路部310と、デジタル信号処理回路308を示す。単位画素200-1はPD401Aを含む第1の光電変換部とPD401Bを含む第2の光電変換部を有し、単位画素200-2はPD401Aを含む第1の光電変換部とPD401Bを含む第2の光電変換部を有する。単位画素200-1の第2の光電変換部と、単位画素200-2の第1の光電変換部とが行方向にて隣り合っており、これらの間で1つの読み出し回路部310を共有する構成である。
【0029】
単位画素200-1と200-2は同じ構成を有するので、それらの構成要素の符号には「-1」や「-2」を付記することなく、まとめて説明する。画素領域基板301に形成された単位画素200-1(または200-2)は、シリコン貫通電極409を介して、読み出し回路基板302に形成された読み出し回路部310に接続される。
【0030】
光電変換部を構成するPD401AおよびPD401Bは、撮像レンズ101によって結像された被写体像に対して電荷を発生し、発生した電荷を蓄積する。PD401A、PD401Bで蓄積された電荷は、それぞれMOS(金属酸化膜半導体)トランジスタ402A、402Bを介して電荷保持部であるフローティングディフュージョン部404A、404Bに転送される。以下では、転送用スイッチ素子(MOSトランジスタ)を転送スイッチといい、選択用スイッチ素子(MOSトランジスタ)を選択スイッチという。またフローティングディフュージョン部をFDと表記する。
【0031】
FD404A、404Bに転送された各電荷は、選択スイッチ406A、406Bがオンすると、MOSトランジスタ405A、405Bを介して、電荷に対応した電圧として出力線407に出力される。MOSトランジスタ405A、405Bはソースフォロワアンプを形成する増幅MOSトランジスタである(以下、SFと表記する)。出力線407には電流源408が接続されている。
【0032】
選択スイッチ406A、406Bは画素駆動回路304、305の制御により、画素単位で制御されるMOSトランジスタである。選択スイッチ406A、406Bにより選択された画素信号は一括して出力線407に出力される。
【0033】
MOSトランジスタ403A、403Bはリセットスイッチとして機能する。リセットスイッチ403A、403Bは、FD404A,404Bの電位と、転送スイッチ402A、402Bを介したPD401A、401Bの電位を、所定値VDDにリセットする。
【0034】
転送スイッチ、リセットスイッチ、選択スイッチはそれぞれ、不図示の画素駆動回路304、305に接続されている信号線を介して制御される。
図4には転送スイッチ402Aおよび402B、リセットスイッチ403Aおよび403B、選択スイッチ406Aおよび406Bに対する各制御信号PTX、PRES、PSELを示す。画素駆動回路304からの信号線は行単位で制御可能である。画素駆動回路305から各スイッチのオンとオフを制御する信号線を該当するスイッチに接続してそれぞれ制御することで、所定の単位画素の駆動を制御することができる。
【0035】
次に、読み出し回路部310の回路構成について説明する。複数の読み出し回路部310の回路構成は同じであるので、単位画素200-1の第2の光電変換部と、単位画素200-2の第1の光電変換部とで共有される読み出し回路部310の構成を説明する。アンプ410は出力線407からの入力信号を増幅する。容量部412は信号電圧を保持するために用いられる。制御信号PSHによりオン、オフされるスイッチ411は、容量部412への信号の書き込みを制御する。
【0036】
比較器413は、その一方の入力端子に不図示のスロープ電圧発生回路から供給された参照電圧Vslopeが入力され、他方の入力端子には、容量部412に書き込まれたアンプ410の出力が入力される。比較器413はアンプ410の出力と参照電圧Vslopeとを比較し、その大小関係に応じてローレベルとハイレベルの2値信号のいずれかを出力する。具体的には、比較器413はVslopeがアンプ410の出力に対して小さい場合にローレベルの信号を出力し、Vslopeがアンプ410の出力に対して大きい場合にハイレベルの信号を出力する。
【0037】
カウンタ414は比較器413の後段に位置し、クロック信号CLKに基づいて計数動作を行う。参照電圧Vslopeの遷移開始と同時にクロック信号CLKがカウンタ414に入力される。カウンタ414は比較器413の出力がハイレベルの時にCLKに対応してカウントアップを行い、比較器413の出力がローレベルに反転すると同時にカウントを停止する。
【0038】
カウンタ414の出力は、スイッチ415を介してメモリ416またはメモリ417によって保持される。メモリ416には、FD404のリセットレベルの信号(以下、N信号という)をAD変換したデジタル信号が保持される。またメモリ417には、PD401AまたはPD401Bの信号がFD404のN信号に重畳された信号(以下、S信号という)をAD変換したデジタル信号が保持される。スイッチ415はメモリ416、417のどちらに信号を書き込むかを制御する。
【0039】
CDS(Correlated Double Sampling)回路418はメモリ416、417に保持された信号を取得し、相関二重サンプリング処理を行う。メモリ416、417に保持された信号についてはS信号とN信号との差分が算出される。CDS回路418の出力信号は、制御回路307の制御にしたがって、デジタル信号出力線419を介してデジタル信号処理回路308に入力される。
【0040】
図4に示すように、単位画素200-1のPD401Bの信号と、隣接する単位画素200-2のPD401Aの信号は第1の読み出し回路部310より読み出される。つまり、単位画素200-1の選択スイッチ406Bと、単位画素200-2の選択スイッチ406Aは同一の出力線407に接続されている。単位画素200-1の選択スイッチ406Aは、第1の読み出し回路部310の隣にある第2の読み出し回路部310に接続されており、不図示の隣接画素の選択スイッチ406Bとの間で読み出し回路が共有される。このように、左右に隣接する2つの単位画素は、それぞれが有する2つ光電変換部のうちの一方が1つの読み出し回路部310を共有している。そこで、
図3に示すように光軸方向から見た場合に読み出し回路部310は単位画素200の配置に対して、半画素分ずらして配置するのが好適である。つまり、読み出し回路部310の位置は読み出し回路基板302において、単位画素200―1の光電変換部に対応する第1の位置と単位画素200―2の光電変換部に対応する第2の位置との間(中間位置)である。
【0041】
図3に示す構成の場合、左端列の光電変換部201A、および右端列の光電変換部201Bに対しては、読み出し回路部310を追加する必要があるが、数千万個ある全体の読み出し回路部310の個数を考慮するとその増分はわずかである。また、撮像素子は通常、信号レベルの基準となる信号(黒基準信号)を取得するために、光に反応しないように遮光されたオプティカルブラック画素を備えている。オプティカルブラック画素は画素領域の上下左右の端部領域に設けられることが多い。この場合、画素領域の左端領域、および右端領域にオプティカルブラック画素を設け、その一番端の列の単位画素の光電変換部に対して読み出し回路を設けない構成とすることができる。左右端領域にオプティカルブラック画素領域を設けることで、撮像に使用される、光に反応する画素(開口画素)領域の左端列の光電変換部201A、右端列の光電変換部201Bに対しても、本発明の特徴である構成を適用可能である。つまり隣接する第1および第2の単位画素において、第1の単位画素が有する光電変換部と第2の単位画素が有する光電変換部との間で1つの読み出し回路部310を共有する構成が実現される。
【0042】
以下では、PDの電荷を出力線407に読み出すための回路部であるFD404、SF405、選択スイッチ406、およびリセットスイッチ403を、電荷読み出し部420と呼ぶ。その詳細については変形例にて後述するが、電荷読み出し部420に関しても、左右に隣接する単位画素がそれぞれ備える一方の光電変換部の間で共有することができる。
【0043】
図5は、
図4に示す回路構成を有する撮像素子103の単位画素200からの電荷読み出し動作の一例を示すタイミングチャートである。
図5には制御信号PSEL、PRES、PTX、PSHの各タイミング、参照電圧Vslope、出力線Vl、比較器413の出力COMP、カウンタ414の出力について時間的変化を模式的に示している。時間軸の方向は
図5の右方向であり、時刻としてt500からt513を示す。出力線Vlはアンプ410より出力された電位を示している。
【0044】
単位画素200が有するPD401AとPD401Bの各電荷は同じ駆動パルスにより制御され、それぞれ別の読み出し回路部310よって読み出される。よって電荷読み出し動作の説明においてはA、Bを省略して記載する。また制御信号のレベルに関して、ハイレベルをHiと表記し、ローレベルをLoと表記する。
【0045】
PD401からの信号の読み出しに先立って、時刻t500ではリセットスイッチ403の制御信号PRESがHiとなる。これによって、SF405のゲートはリセット電源電圧にリセットされる。時刻t501では制御信号PSELがHiとなり、SF405が動作状態となる。
【0046】
時刻t502で制御信号PRESがLoとなることでFD404のリセットが解除される。このときのFD404の電位は出力線407にリセット信号レベル(N信号)として読み出されて、読み出し回路部310に入力される。
【0047】
時刻t503で制御信号PSHはHiとなり、スイッチ411はオンとなる。時刻t504で制御信号PSHはLoとなり、スイッチ411はオフとなる。これにより、出力線407に読み出されたN信号はアンプ410で所定のゲインで増幅された後、容量部412に保持される。容量部412に保持されたN信号の電位は比較器413の一方の入力端子に入力される。
【0048】
時刻t504の後、時刻t505からt507までの期間には、不図示のスロープ電圧発生回路により、参照電圧Vslopeが時間経過につれて初期値から減少していく。時刻t505での参照電圧Vslopeの遷移開始と共に、クロック信号CLKがカウンタ414に供給される。CLKの数に応じてカウンタ414の計数値は増加していく。そして時刻t506にて、比較器413に入力された参照電圧VslopeがN信号と同じレベルに到達する。このとき、比較器413の出力COMPはLoとなり、カウンタ414の動作は停止する。つまりカウンタ414の動作が停止したときの計数値は、N信号がAD変換された値であり、第1のメモリ416に保持される。以下、第1のメモリをNメモリと呼ぶ。
【0049】
デジタル化されたN信号がNメモリ416に保持された後の時刻t507で制御信号PTXがHiとなり、次の時刻t508で制御信号PTXがLoとなる。これによりPD401に蓄積された光電荷はFD404に転送される。電荷量に応じたFD404の電位変動はS信号として出力線407に読み出され、読み出し回路部310に入力される。S信号は、光成分およびリセットノイズ成分(N信号相当)を含む信号である。
【0050】
アンプ410はS信号を取得して所定のゲインで増幅を行う。その後、時刻t509で制御信号PSHはHiとなり、時刻t510で制御信号PSHはLoとなる。スイッチ411を順次オン、オフすることにより容量部412に信号電位が保持される。容量部412に保持された電位は比較器413の一方の入力端子に入力される。
【0051】
時刻t510でスイッチ411がオフとなった後、時刻t511から時刻t513までの期間には、スロープ電圧発生回路により、参照電圧Vslopeが時間経過につれて初期値から減少していく。参照電圧Vslopeの遷移開始と共に、CLKがカウンタ414に供給され、CLKの数に応じてカウンタ414の計数値は増加していく。そして時刻t512で参照電圧VslopeがS信号と同じレベルに到達する。このとき、比較器413の出力COMPはLoとなり、カウンタ414の動作が停止する。つまりカウンタ414の動作が停止したときの計数値はS信号がAD変換された値となり、第2のメモリ417に保持される。以下、S信号用のメモリである第2のメモリをSメモリと呼ぶ。
【0052】
CDS回路418はNメモリ416、およびSメモリ417にそれぞれ保持された信号から差動信号レベル(光信号)を算出する。これによりリセットノイズ成分が除去されたS信号が取得される。このS信号は制御回路307の制御により、順次デジタル信号出力線419を介してデジタル信号処理回路308に送られる。デジタル信号処理回路308ではクランプ等の演算処理が行われた後、デジタル信号出力回路309を介して撮像素子103の外部に信号が出力される。
【0053】
単位画素200を構成するPD401AおよびPD401BそれぞれのS信号は同時に読み出すことができる。すなわち、PD401AからのS信号であるS(A)信号と、PD401BからのS信号であるS(B)信号との間で蓄積時刻を揃えることが可能となる。また、S(A)信号とS(B)信号については、例えばデジタル信号処理回路308が加算処理を行って、加算信号である「S(A)+S(B)」信号を生成する。これにより、撮像用の信号を取得することができる。この加算処理については、撮像装置100の備える信号処理回路104が行ってもよい。
【0054】
図5に示す時間ROは、時刻t501から時刻t513までの期間の長さに相当し、単位画素200の画素信号の読み出し時間である。時間ROでの動作が2回繰り返されることで、読み出し回路部310を共有しているPD401のもう一方の電荷読み出しが行われる。こうして最終的に撮像素子103が有する全画素の信号を読み出すことができる。
【0055】
図6は、本実施形態における画素信号の読み出し順序の例を示す図である。一般的な撮像素子と同様、撮像素子103は各単位画素上にR(赤)、G(緑)、B(青)のそれぞれの波長帯域を透過するカラーフィルタが設けられる。例えば、ベイヤ状に配置されたR、Gr、Gb、Bのカラーフィルタの組を2次元配列した構成例を示す。
【0056】
図6(A)は、第1の読み出し時間である1ROの期間で偶数列に属する単位画素の信号を読み出し、続く第2の読み出し時間である2ROの期間で奇数列に属する単位画素の信号を読み出す例を示す。なお必要に応じて、1ROの期間で奇数列に属する単位画素の信号を読み出し、続く2ROの期間で偶数列に属する単位画素の信号を読み出す駆動制御を行ってよい。
【0057】
また、より高速に焦点検出処理を行うには、
図6(B)に示すようにG画素の信号を先に読み出してから、R画素およびB画素の信号を読み出す駆動制御が行われる。つまり最初の読み出し時間である1ROの期間でGr画素とGb画素の各信号が読み出され、続く読み出し時間である2ROの期間で残りのR画素とB画素の各信号が読み出される。各画素信号の読み出し順序の制御については、制御回路307が画素駆動回路304、305を制御することにより可能である。
【0058】
本実施形態にて、単位画素が有する複数の光電変換部は、その隣接画素が有する一方の光電変換部と読み出し回路を共有する構成である。読み出し回路(AD変換回路)の面積の増大を抑制しつつ、単位画素に係る複数のPDの蓄積時刻を揃えることができる。よって、被写体が高速な動体であっても焦点検出処理を精度良く行うことができる。
【0059】
<第1実施形態の変形例>
図7を参照して、第1実施形態の変形例について説明する。変形例では画素領域基板301の効率的なレイアウトを示す。
図7は本変形例の撮像素子103の単位画素200と読み出し回路部310の構成を示す図である。本変形例では、隣り合う単位画素700-と700-2とが、1つの電荷読み出し部720および1つの読み出し回路部310を共有する構成である。
【0060】
電荷読み出し部720は、例えばFD704、リセットスイッチ703、選択スイッチ406B、SF405Bを有する。FD704は、転送スイッチ402Bを介して単位画素700-1のPD401Bと接続されるとともに、転送スイッチ402Aを介して単位画素700-2のPD401Aと接続されている。
【0061】
単位画素700-1のPD401BからFD704に転送された電荷は、選択スイッチ406Bがオンすると、SF405Bを介して、電荷に対応した電圧として出力線707に出力される。また単位画素700-2のPD401AからFD704に転送された電荷は、選択スイッチ406Bがオンすると、SF405Bを介して、電荷に対応した電圧として出力線707に出力される。出力線707は、シリコン貫通電極409を介して、読み出し回路基板302に形成された読み出し回路部310に接続される。この読み出し回路部310は単位画素700-1および700-2で共有され、その構成については
図4にて説明済みである。
【0062】
隣り合う単位画素が備えるPD、つまり単位画素700-1のPD401Bと単位画素700-2のPD401Aとで、FD704を含む電荷読み出し部720を共有する構成である。よって、単位画素ごとにFDを備えることなく、単位画素が備える複数のPDの蓄積時刻を揃える駆動を実現可能である。なお、複数の単位画素間で共有されるFD704に対して、どちらのPD401の電荷を転送するかは、信号PTX(
図7:PTX1,PTX2参照)の制御により決定される。
【0063】
<第2実施形態>
次に本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態では、上下方向(Y軸方向)に隣接する単位画素がそれぞれ備える光電変換部の間で読み出し回路を共有することで、更に焦点検出に好適な駆動を実現可能な構成を示す。以下では第1実施形態との相違点を主に説明し、第1実施形態にて使用した符号を流用することで、同様の事項についての説明を省略する。このような説明の省略方法は後述の実施形態でも同じである。
【0064】
図8は、本実施形態における撮像素子の構成例を示す平面図である。第1実施形態で示した
図3との相違点は、読み出し回路基板302に配置される読み出し回路部810と光電変換部との接続関係である。N行目の第1の単位画素が備える光電変換部201Aと、N+1行目にて第1の単位画素と同列の第2の単位画素が備える光電変換部201Aとが1つの読み出し回路部810を共有する。同様にN行目の第1の単位画素が備える光電変換部201Bと、N+1行目にて第1の単位画素と同列の第2の単位画素が備える光電変換部201Bとが1つの読み出し回路部810を共有する。
【0065】
図8においては、複数の光電変換部間での読み出し回路の共有関係がわかりやすいように複数の単位画素200および読み出し回路部810を図示している。つまり1つの読み出し回路部810は、横方向が半画素分であって縦方向が2画素分の領域からなるように記載しているが、読み出し回路部の配置はこれに限らない。単位画素200を構成する光電変換部201A,201Bの各信号はそれぞれ異なる読み出し回路より読み出される構成となっている。よって、第1実施形態の撮像素子と同様に光電変換部のそれぞれの信号の蓄積時刻を揃えることができる。
【0066】
図9は、本実施形態における撮像素子103の単位画素と読み出し回路部の構成を模式的に示す図である。画素領域基板301にて異なる行に属する単位画素900-1および900-2と、複数の電荷読み出し部902を示す。また読み出し回路基板302における複数の読み出し回路部810a,810bを示す。
【0067】
上下に隣接する単位画素900-1と900-2はそれぞれ、光電変換部901Aと901Bを有する。単位画素900-1の光電変換部901Aと単位画素900-2の光電変換部901Aは1つの読み出し回路部810aを共有する。同様に、単位画素900-1の光電変換部901Bと単位画素900-2の光電変換部901Bは1つの読み出し回路部810bを共有する。
図9では、第1実施形態の変形例で説明した通り、読み出し回路部810だけでなく、FDを含む電荷読み出し部902をも共有する構成を示している。つまり、隣り合う単位画素がそれぞれ有する第1または第2の光電変換部が1つの電荷読み出し部902と1つの読み出し回路部810を共有する構成である。
【0068】
図10を参照して、上下方向における隣接画素間で読み出し回路を共有する構成が焦点検出に好適である理由を説明する。
図10は、本実施形態における画素信号の読み出し順序の例を示す図である。
【0069】
図10(A)は、画素駆動回路304、305の制御により、第1の読み出し時間1ROの期間で奇数行に属する単位画素の信号を読み出し、第2の読み出し時間2ROの期間で偶数行に属する単位画素の信号を読み出す例を示す。
図2のように水平方向に瞳分割された画素構成においては、相関演算を行う際に同一行の信号を取得する仕様が望ましい。本実施形態の構成では同一行の信号を同時期に取得できるので、より高速にかつ精度良く焦点検出を行うことが可能となる。なお必要に応じて、1ROの期間で偶数行に属する単位画素の信号を読み出し、2ROの期間で奇数行に属する単位画素の信号を読み出す駆動制御を行ってもよい。
【0070】
図10(B)は、第1の読み出し時間1ROの期間で、
図8における上側の読み出し回路部810から2行目の画素信号を読み出し、下側の読み出し回路部810から3行目の画素信号を読み出す例を示す。第2の読み出し時間2ROの期間では、
図8における上側の読み出し回路部810から1行目の画素信号を読み出し、下側の読み出し回路部810から4行目の画素信号を読み出す処理が行われる。第1の読み出し時間1ROの期間では隣接するベイヤ配列の画素部の信号を同時期に取得することができ、被写体の色によらず焦点検出を精度良く行うことが可能となる。
【0071】
単位画素が垂直方向に瞳分割された構成においては、
図3のような左右の隣接画素で読み出し回路部を共有する構成が好適である。この場合、単位画素内の複数の光電変換部に対して別々の読み出し回路部から信号を読み出すことが可能であり、かつ、隣接画素の各光電変換部が読み出し回路部、さらには電荷読み出し部を共有する構成が可能である。
【0072】
本実施形態によれば、隣接する単位画素が有する各光電変換部の間で読み出し回路部を共有することで、焦点検出に好適な複数の信号を取得可能である。
【0073】
<第3実施形態>
図11および
図12を参照して、本発明の第3実施形態について説明する。本実施形態では、単位画素が4つの光電変換部を有する例を示す。つまり上下方向と左右方向にそれぞれ瞳分割された構成の撮像素子への適用例について説明する。
【0074】
図11は、本実施形態における撮像素子の構成例を示す平面図である。単位画素1100は横2個×縦2個の4つの光電変換部を有する。各光電変換部は隣接する単位画素が有する光電変換部との間で読み出し回路部1110を共有する。
図11には複数の読み出し回路部1110のうち、4つの読み出し回路部のみ示している。つまり4つの読み出し回路部1110と、1つの単位画素1100(点線枠参照)との対応関係を示している。
【0075】
1つの読み出し回路部1110は、位置の異なる4つの単位画素1100が有する4つの光電変換部の1つから電荷をそれぞれ読み出す構成であり、読み出し時間4ROで全画素の信号読み出しが可能である。また、単位画素数に対して、読み出し回路(AD変換回路)の面積の増大を抑制可能である。
【0076】
図12は、本実施形態における撮像素子103の単位画素と読み出し回路部の構成を模式的に示した図である。単位画素1200-1は4つの光電変換部1201A,1201B,1201C,1201Dを有する。単位画素1200-1内にて、光電変換部1201Aは左上に位置し、光電変換部1201Bは右上に位置し、光電変換部1201Cは左下に位置し、光電変換部1201Dは右下に位置する。他の単位画素1200-2,1200-3,1200-4も、単位画素1200-1と同様の位置関係で4つの光電変換部1201A,1201B,1201C,1201Dを有する。
【0077】
図12に示す画素領域基板301において、単位画素1200-1の右に単位画素1200-2が位置し、単位画素1200-1の下に単位画素1200-3が位置している。単位画素1200-3の右に単位画素1200-4が位置している。また読み出し回路基板302において3つの読み出し回路部1110a,1110b,1110cを示す。
【0078】
単位画素1200-1の光電変換部1201Dと、単位画素1200-2の光電変換部1201Cと、単位画素1200-3の光電変換部1201Bと、単位画素1200-4の光電変換部1201Aは、1つの読み出し回路部1110bを共有する。同様に、他の光電変換部についても、それぞれ異なる隣接画素の光電変換部との間で読み出し回路部を共有する構成である。例えば、単位画素1200-1の光電変換部1201Cと、単位画素1200-3の光電変換部1201Aと、不図示の単位画素の光電変換部1201Dと、不図示の単位画素の光電変換部1201Bは、1つの読み出し回路部1110aを共有する。不図示の単位画素は、単位画素1200-1,1200-3の左にそれぞれ位置する単位画素である。
【0079】
本実施形態では、各単位画素が有する複数の光電変換部の蓄積時刻を揃える駆動が可能となる。また、第1実施形態の変形例で説明した通り、複数の光電変換部の間で読み出し回路部だけでなく、FDを含む電荷読み出し部をさらに共有する構成が可能である。
図12では、単位画素1200-1から1200-4の各光電変換部1201D、1201C、1201B、1201Aが1つの電荷読み出し部1202および読み出し回路部1110bを共有する構成である。
【0080】
各実施形態によれば、読み出し回路基板におけるAD変換回路の面積の増大を抑制しつつ、焦点検出用の信号取得において単位画素における複数の光電変換部の蓄積時刻の同時性を保つことが可能な撮像素子および撮像装置を提供することができる。
【0081】
前記実施形態では第1および第2の基板を積層した構成の撮像素子の例を説明したが、これに限らず本発明は多層基板、両面基板等を用いた各種構成の撮像素子に適用可能である。
【符号の説明】
【0082】
100 撮像装置
103 撮像素子
104 信号処理回路
105 タイミング発生回路
106 全体制御・演算回路