(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-14
(45)【発行日】2024-06-24
(54)【発明の名称】液体収容容器
(51)【国際特許分類】
B41J 2/175 20060101AFI20240617BHJP
【FI】
B41J2/175 141
B41J2/175 115
B41J2/175 131
B41J2/175 171
B41J2/175 305
B41J2/175 501
(21)【出願番号】P 2020093155
(22)【出願日】2020-05-28
【審査請求日】2023-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村上 武継
(72)【発明者】
【氏名】井利 潤一郎
(72)【発明者】
【氏名】村山 裕之
(72)【発明者】
【氏名】高橋 悟
(72)【発明者】
【氏名】橋本 雄介
(72)【発明者】
【氏名】草野 裕昭
【審査官】小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-151101(JP,A)
【文献】特開2000-334975(JP,A)
【文献】特開2003-312012(JP,A)
【文献】特開2020-001168(JP,A)
【文献】特開2001-212972(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/175
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出する記録ヘッドへ供給路を介して液体を供給可能であり、液体を貯留可能な液体収容容器であって、
少なくとも2つの互いに仕切られた液室と、
前記液室間で液体が往来可能な流路と、
前記流路を開閉可能な弁と、
前記液室に液体を補充可能であり、開閉可能に設けられた補充口と、
前記補充口から液体が補充されない前記液室に設けられ、前記供給路内と前記記録ヘッド内の圧力を調整する圧力調整機構と、を備え
、
前記弁は、内部に空間を有した円筒状であり、円筒の軸を中心に回転可能であり、回転に伴って前記流路を開閉することを特徴とする液体収容容器。
【請求項2】
前記圧力調整機構は、使用時の姿勢において前記液室の下部に設けられ、大気と連通する大気連通口を備えている請求項1に記載の液体収容容器。
【請求項3】
前記補充口の開閉は、前記弁の開閉に伴って行われる請求項1または2に記載の液体収容容器。
【請求項4】
前記補充口が開いている時は、前記弁は閉じている請求項3に記載の液体収容容器。
【請求項5】
前記補充口から液体を補充後、前記補充口が閉じられると前記弁が開く請求項4に記載の液体収容容器。
【請求項6】
液体を吐出する記録ヘッドへ供給路を介して液体を供給可能であり、液体を貯留可能な液体収容容器であって、
少なくとも2つの互いに仕切られた液室と、
前記液室間で液体が往来可能な流路と、
前記流路を開閉可能な弁と、
前記液室に液体を補充可能であり、開閉可能に設けられた補充口と、
前記補充口から液体が補充されない前記液室に設けられ、前記供給路内と前記記録ヘッド内の圧力を調整する圧力調整機構と、を備え、
前記弁は、スライドすることで前記流路を開閉するスライダであり、
前記スライダは、カム機構によって、前記補充口を開閉可能なスライド蓋と連動する
ことを特徴とする液体収容容器。
【請求項7】
前記圧力調整機構は、ラビリンス構造を備えている請求項1ないし
6のいずれか1項に記載の液体収容容器。
【請求項8】
液体の上限と下限とを示すインジケータを備えている請求項1ないし
7のいずれか1項に記載の液体収容容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録装置に装着され、液体を収容する液体収容容器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、インクを貯留するインクタンクと記録ヘッドとの間にサブタンクを設け、サブタンク内の水頭値を管理することで、精度よく印字するインク記録装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の構成では、インクタンクからサブタンクへインクを圧送するための加圧部、液面高さ検知部、インク流路自動開閉弁等多くの機構が必要であり、記録装置として構造が複雑化し大型化、高コスト化するという課題がある。
【0005】
よって本発明は、記録装置の構造が簡易になり、小型化および低コスト化が可能な液体収容容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そのため本発明の液体収容容器は、液体を吐出する記録ヘッドへ供給路を介して液体を供給可能であり、液体を貯留可能な液体収容容器であって、少なくとも2つの互いに仕切られた液室と、前記液室間で液体が往来可能な流路と、前記流路を開閉可能な弁と、
前記液室に液体を補充可能であり、開閉可能に設けられた補充口と、前記補充口から液体が補充されない前記液室に設けられ、前記供給路内と前記記録ヘッド内の圧力を調整する圧力調整機構と、を備え、前記弁は、内部に空間を有した円筒状であり、円筒の軸を中心に回転可能であり、回転に伴って前記流路を開閉することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、記録装置の構造が簡易になり、小型化および低コスト化が可能な液体収容容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】液体収容容器におけるインク補充動作を順に示した図である。
【
図3】液体収容容器におけるインク補充動作を順に示した図である。
【
図4】液体収容容器におけるインク補充動作を順に示した図である。
【
図5】液体収容容器におけるインク補充動作を順に示した図である。
【
図6】液体収容容器におけるインク補充動作を順に示した図である。
【
図8】液体収容容器におけるインク補充動作を順に示した図である。
【
図9】液体収容容器におけるインク補充動作を順に示した図である。
【
図10】液体収容容器におけるインク補充動作を順に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1の実施形態)
以下、図面を参照して本発明の第1の実施形態を説明する。
【0010】
図1(a)、(b)は、本実施形態における液体収容容器100を示した図である。
図1(a)は透視斜視図であり、
図1(b)は、断面図である。液体収容容器100は液体を貯留可能であり、主として2つの液室1a、1bおよび円筒状の回転蓋2で構成されており、回転蓋2は円筒の軸を中心に所定の角度まで回転可能な構造となっている。液体収容容器100が収容する液体としてインクWが収容されている。液体収容容器100の材質はインクWへの耐性、接液性があり、気体透過性がある程度低い、例えばポリエチレン等の材質が望ましい。また容器内部のインク量が視認できるよう、容器の全面もしくは一部が透明もしくは半透明であることが望ましい。
【0011】
液室1aと回転蓋2の内部の空間は、液室1aの孔11aと回転蓋2の孔12aとを通じて繋がったインク流路を形成しているが、回転蓋2の回転角度によっては孔11aと孔12aとが連通せず、流路が遮断される。同様に液室1bと回転蓋2の内部の空間も、孔11b、孔12bとが繋がってインク流路を形成しているが、回転蓋2の回転角度によって連通、遮断が切り替えられる。つまり、回転蓋2は液室1aと液室1bとの連通において弁となっている。回転蓋2の回転角度は、回転蓋2に設けられたツマミ6の可動範囲を液体収容容器100の上面に設けた切欠きで限定することで規制されている。また、回転蓋2の上部には補充口5が設けられており、補充口5は、回転蓋2の回転角度によって閉状態、開状態が切り替えられる。補充口5は、回転蓋2を介して液室1aに液体を補充可能に構成されており、
図1(a)では、補充口5は閉じた状態となっている。
【0012】
液室1aの側面にはインジケータ15が設けられており、インジケータ15は、インクWの液面高さの上限および下限を示している。インジケータ15は、印字等によって徐々に液体収容容器100内のインクWが消費された際に、ユーザーがインク交換するタイミングやインク補充量の目安となる。液室1bの側面にはジョイント16が設けられており、ジョイント16にはチューブが接続され、そのチューブの他端を記録装置のキャリッジ上にある記録ヘッドおよびインク保持室と繋ぐことでインクが供給可能であるインク供給路が形成される。
【0013】
また、使用時の姿勢において液室1bの下部には、圧力調整機構の一部である気体導入部7が設けられており、気体導入部7は常時大気解放されており、インクWが印字等によって消費された際に、気体導入部7から液室1bに気体が入り込む。気体導入部7は、インク静圧の基準位置となり、気体導入部7の位置を基準に高低差によってインク静圧が決まる。よってチューブ内がインクWで満たされていれば、液室1bにおける液面高さの変化に関係なく、チューブで接続されたインク保持室内圧力も安定する。また、気体導入部7では、インクWは表面張力により落下することなく保持されているが、例えば記録装置輸送時の振動等によりインク漏れが生じたときに備え、
図1のようにラビリンス構造20を備えることがより好適な構成である。気体導入部7を大気解放状態とするために、ラビリンス構造20は大気解放された大気連通口21を備える。
【0014】
また、インジケータ15については、液室1bにおけるインク静圧がインクWの消費量によらず一定に保たれるよう、ジョイント16上方に下限位置を設定する。一方で上限位置は、十分なインク補充量を確保して、ユーザーによる頻繁なインク交換を必要としないように、適宜設定すればよい。さらに気体導入部7については、インクWが液ダレを生じることなく、表面張力で保持されるように、適宜形状等を設定すればよい。
【0015】
図2から
図6は、液体収容容器100におけるインク補充動作を順に示した図である。インク補充動作は、回転蓋2の回転角度を段階的に変えることで行われる。
図2に示すように、液体収容容器100内のインクの量が少なくなり、インクの液面がインジケータ15の下限に達したのをユーザーが確認すると、ユーザーによってインクの補充動作が行われる。ただしインク補充のタイミングは液面高さが下限に達する前であれば、任意のタイミングでよく、必ずしも液面高さが下限である必要は無い。
【0016】
図2の状態では、液室1aと回転蓋2内部の空間、液室1bと回転蓋2内部の空間と、がそれぞれ孔11aと孔12a、孔11bと孔12bとが連通することで繋がっており、インクWが各空間を自由に往来でき、大容量インク収容容器として使用することができる。また補充口5は、閉じられた状態となっており、気体導入部7の作用によりインク圧力が調整されて、記録ヘッドおよびインク保持室までのインク供給が可能な状態となっている。
【0017】
その後、ユーザーによってインク補充動作が開始されると、ユーザーは、
図3のように、回転蓋2を時計回りに約45°回転させる。
図3の状態では、孔11aと孔12a、孔11bと孔12bとはそれぞれ遮断され、液室1aと回転蓋2内部の空間と液室1bはそれぞれ独立した状態となっている。また、補充口5は閉じた状態となっている。
【0018】
その後、ユーザーが更に回転蓋2を時計回りに約45°回転させると、
図4の状態となる。ツマミ6が液体収容容器100の上面に設けた切欠きで限定された可動端まで移動する。この際、液室1bは独立した状態のままだが、液室1aの孔11aと回転蓋2の孔12aとは連通し、再び液室1aと回転蓋2の内部の空間とが繋がる。また、
図4の状態では補充口5が開き、インク補充が可能な状態となる。この状態でユーザーによって、補充口5から回転蓋2を介して液室1aにインクが補充される。ユーザーは液室1a側面のインジケータ15を確認しながら
図5のようにインジケータ15の上限までインクを補充する。なお、インクWを補充する量に関して、インクを必ずインジケータ15の上限まで補充する必要は無く、インジケータ15の上限以下であれば任意の量を補充してよい。
【0019】
液室1aにインクWが補充される間、回転蓋2内部の空間と液室1bとは遮断されているため液室1bにインクは補充されない。液室1aにインクWが補充される間は、液室1bから記録ヘッドおよびインク保持室までのインク供給路は開かれたまま、液室1b、供給路内および記録ヘッドは気体導入部7の作用によりインク圧力が調整された状態となっている。よって液室1aにおいて補充口5が開状態となっても、液室1b内でインク逆流が発生したりすることがないため、記録精度を落とすことなく、インク補充中の記録が可能である。
【0020】
その後、ユーザーが
図6のように回転蓋2を反時計回りに約90°回転させ、再び
図2の全閉状態に戻る。液室1a、液室1b、回転蓋2内部の各空間同士が再び繋がり、液室1a、回転蓋2内部に補充されたインクが液室1b内にも移動して、インク補充動作が完了する。
【0021】
このように液体収容容器は、2つの互いに仕切られた液室と、液室間で液体が往来可能な流路と、流路を開閉する弁と、液室に液体を補充する開閉可能な補充口と、補充口から液体が補充されない液室に設けられ記録ヘッド内の圧力の圧力調整機構を備える。これによって、記録装置の構造が簡易であり、小型化および低コスト化が可能な液体収容容器を提供することができる。
【0022】
(第2の実施形態)
以下、図面を参照して本発明の第2の実施形態を説明する。なお、本実施形態の基本的な構成は第1の実施形態と同様であるため、以下では特徴的な構成について説明する。
【0023】
図7(a)、(b)は、本実施形態における液体収容容器200を示した図である。
図7(a)は透視斜視図であり、
図7(b)は、断面図である。液体収容容器200は、液室31aと液室31bとを備えており、液室31aと液室31bとを仕切る壁32には、液室31aと液室31bとを連通する孔33が設けられている。更に、壁32には孔33を開閉可能なスライダ34が設けられている。スライダ34にも孔38が設けられており、壁32の孔33とスライダ34の孔38とが連通することで、液室31aと液室31bとを連通させることができる。
【0024】
スライダ34は、スライダ34の下部に設けられたバネ37で上方に付勢されることで壁32の孔33とスライダ34の孔38とが重なり液室31aと液室31bとが連通している。ここでバネ37の材質はインクWへの耐性、接液性があり、耐食性にも優れる、オーステナイト系ステンレス鋼等の材質が望ましい。液体収容容器200の上部にはカム板36を備えたスライド蓋35が設けられており、スライド蓋35とスライダ34とは連動して動くように構成されている。つまり、スライド蓋35がスライドすることで、カム板36がスライダ34の上部に備えられたカムローラ39と当接してスライダ34を押し下げることで、スライダ34が鉛直方向に移動し、壁32の孔33とスライダ34の孔38との位置がずれて液室31aと液室31bとの連通を遮断する。スライド蓋35の下部の補充口5は、スライド蓋35の水平方向位置によって閉状態、開状態が切り替えられる。スライド蓋35、スライダ34の動作範囲はある程度規制されていることが望ましく、可動端にストッパ等を設けてスライダ34の動作範囲を規制すればよい。
【0025】
図8から
図10は、液体収容容器200におけるインク補充動作を順に示した図である。インク補充動作は、スライド蓋35の開閉に伴って行われる。
図8のようにスライド蓋35が完全に閉じた状態では、液室31aと液室31bとの内部の空間はそれぞれ孔33とスライダ34の孔38とが連通することで繋がっており、液体収容容器200が大容量インク収容容器として使用される。また
図8の状態では、スライド蓋35の下部の補充口5は、閉じた状態となっており、気体導入部7の作用によりインク圧力が調整された状態となっている。液体収容容器200内のインクの量が少なくなり、インクの液面がインジケータ15の下限に達したのをユーザーが確認すると、ユーザーによってインクの補充動作が行われる。
【0026】
インク補充動作が開始されると、ユーザーは
図9のように、スライド蓋35を矢印方向に可動範囲の半分程度スライドさせる。スライド蓋35の移動に連動してスライダ34がカム機構により鉛直下向きに移動し、液室31a、液室31bを仕切る壁32の孔33は遮断され、インク流路が閉状態となり、液室31a、液室31bの内部の各空間同士が独立した状態となる。なお、
図9の状態では、補充口5は閉じた状態となっている。
図9の状態から、ユーザーがスライド蓋35をさらに可動端まで開き
図10のように全開の状態になると、液室31bの内部の空間は独立した状態のまま、液室31aの上部の補充口5が開き、液室31aへのインク補充が可能な状態となる。
【0027】
ユーザーによって補充口5から液室31aにインクが供給され、インジケータ15の上限までインク液面が来ると、ユーザーはインク供給を止める。液室31aにインクWが補充される間、液室31aと液室31bとは遮断されているため液室31bにインクは補充されない。液室31aにインクWが補充される間は、液室31bから記録ヘッドおよびインク保持室までのインク供給路は開かれたまま、液室31b、供給路内および記録ヘッドは気体導入部7の作用によりインク圧力が調整された状態となっている。よって液室31aにおいて補充口5が開状態となっても、液室31b内でインク逆流が発生したりすることがないため、記録精度を落とすことなく、インク補充中の記録が可能である。
【0028】
このようにユーザーによるインク補充後、ユーザーがスライド蓋35を閉じると補充口5は閉じた状態となり、スライダ34が移動することで液室31aと液室31bとが連通してインク補充動作が完了する。
【符号の説明】
【0029】
1a 液室
1b 液室
2 回転蓋
5 補充口
15 インジケータ
34 スライダ
35 スライド蓋
100 液体収容容器
200 液体収容容器