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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-14
(45)【発行日】2024-06-24
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/00 20060101AFI20240617BHJP
   B41J 29/393 20060101ALI20240617BHJP
   B41J 29/38 20060101ALI20240617BHJP
   H04N 1/00 20060101ALI20240617BHJP
【FI】
G03G15/00 303
B41J29/393 105
B41J29/38 202
H04N1/00 002A
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020115788
(22)【出願日】2020-07-03
(65)【公開番号】P2022013311
(43)【公開日】2022-01-18
【審査請求日】2023-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099324
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 正剛
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 隆祐
(72)【発明者】
【氏名】岩舘 慎之介
【審査官】金田 理香
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-225170(JP,A)
【文献】特開2017-194511(JP,A)
【文献】特開2007-333765(JP,A)
【文献】特開2011-112704(JP,A)
【文献】特開2005-167551(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0336666(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 29/00-29/70
G03G 13/34
15/00
15/36
21/00-21/02
21/14
21/20
H04N 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成条件に基づいてシートに画像を形成する画像形成手段と、
前記画像形成手段により前記シートに形成された前記画像形成条件の調整用画像を読み取る読取手段と、
前記画像形成手段に印刷ジョブに応じて画像を形成させ、該印刷ジョブによる画像形成に対して割り込んで処理される割込印刷ジョブが要求されると、前記画像形成手段に、前記印刷ジョブによる処理に割り込んで前記割込印刷ジョブに応じた画像を形成させる制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記画像形成条件の調整が無効に設定されている前記割込印刷ジョブによる処理が終了して前記印刷ジョブに処理が復帰する前に、前記画像形成手段によりシートに前記調整用画像を形成した調整用チャートを作成し、前記読取手段による前記調整用チャートの調整用画像の読取結果に基づいて前記画像形成条件を調整して中断した印刷ジョブによる画像形成を再開し、前記画像形成条件の調整が有効に設定されている前記割込印刷ジョブによる処理が終了すると、前記画像形成条件の調整を行わずに中断した印刷ジョブによる画像形成を再開することを特徴とする、
画像形成装置。
【請求項2】
前記印刷ジョブは、前記画像形成条件の調整が有効に設定されていることを特徴とする、
請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記印刷ジョブに処理が復帰する前に、第1所定枚数の前記調整用チャートを作成して前記画像形成条件を調整することを特徴とする、
請求項1又は2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記割込印刷ジョブにより画像を形成する枚数が第2所定枚数よりも少ない場合、前記調整用チャートの調整用画像の読取結果に基づく前記画像形成条件の調整を行わないことを特徴とする、
請求項1~3のいずれか1項記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記印刷ジョブに前記画像形成条件の調整が有効に設定されている場合に、所定の調整間隔で、前記調整用チャートの調整用画像の読取結果に基づいて前記画像形成条件を調整することを特徴とする、
請求項1~4のいずれか1項記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記印刷ジョブに前記画像形成条件の調整が有効に設定されている場合に、シートに前記印刷ジョブに応じた画像とともに前記調整用画像を形成した成果物から前記読取手段が該調整用画像を読み取った読取結果に基づいて、前記画像形成条件を調整することを特徴とする、
請求項1~4のいずれか1項記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記画像形成条件の調整により、シートに形成する画像の幾何特性を補正することを特徴とする、
請求項1~6のいずれか1項記載の画像形成装置。
【請求項8】
印刷条件に基づいてシートに画像を印刷し、前記シートを搬送パスへ搬送する印刷手段と、
前記搬送パスに設けられ、前記印刷手段によりテスト画像が印刷されて前記搬送パスを搬送される前記シートから、前記テスト画像を読み取る読取手段と、
制御手段と、を備え、
前記制御手段は、第1画像と前記テスト画像を印刷する第1印刷ジョブを行う場合、前記読取手段により前記テスト画像を読み取った読取結果に基づいて前記第1印刷ジョブによる画像を印刷するための印刷条件を生成し、
前記制御手段は、実行中の前記第1印刷ジョブに割り込んで、前記テスト画像を印刷せずに第2画像を印刷する第2印刷ジョブを行う場合、前記第2印刷ジョブの終了から前記第1印刷ジョブの再開までの間に、前記印刷手段により前記第1印刷ジョブによる画像が形成されるシートとは異なるシートにテスト画像を印刷させ、
前記制御手段は、前記第1印刷ジョブの再開の前に、前記読取手段により前記異なるシートに形成されたテスト画像を読み取った読取結果に基づいて、前記第1印刷ジョブを再開して印刷するための印刷条件を生成し、
前記制御手段は、実行中の前記第1印刷ジョブに割り込んで、第2画像と前記テスト画像を印刷する第2印刷ジョブを行う場合、前記第2印刷ジョブの終了から前記第1印刷ジョブの再開までの間に、前記印刷手段により前記第1印刷ジョブによる画像が形成されるシートとは異なるシートにテスト画像を印刷させず、前記第1印刷ジョブを再開して印刷するための印刷条件を生成しないことを特徴とする、
画像形成装置。
【請求項9】
前記制御手段は、前記第2印刷ジョブに基づいて前記第2画像が印刷されるシートの枚数が所定の閾値未満である場合、別のテスト画像を印刷せずに前記第1印刷ジョブを再開するように前記印刷手段を制御することを特徴とする、
請求項8記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記制御手段は、同じシートに前記第1画像と前記テスト画像を印刷するように前記印刷手段を制御することを特徴とする、
請求項8記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記制御手段は、前記第1印刷ジョブで前記第1画像が印刷されたシートの枚数が所定枚数に達する毎に、前記テスト画像を印刷するように前記印刷手段を制御することを特徴とする、
請求項8記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記印刷条件は、前記印刷手段により印刷される画像の位置を調整するための条件であることを特徴とする、
請求項8記載の画像形成装置。
【請求項13】
前記印刷条件は、前記印刷手段により印刷される画像の傾きを調整するための条件であることを特徴とする、
請求項8記載の画像形成装置。
【請求項14】
前記印刷条件は、前記印刷手段により印刷される画像の濃度を調整するための条件であることを特徴とする、
請求項8記載の画像形成装置。
【請求項15】
前記テスト画像は、前記シートの断裁領域に印刷されることを特徴とする、
請求項8記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタ、複写機、ファクシミリ、複合機等の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
商用の印刷機で生成される成果物は、画質の安定化が求められる。そのために画像形成装置では、成果物の画質を自動的に安定化するための自動調整が行われる。自動調整として、例えば、シートに形成される画像の幾何特性を自動的に安定化させるものが知られている。この自動調整により、例えば給紙デッキ毎に対応して、シートに形成される画像の幾何特性を理想的な幾何特性へ補正するための補正値が生成される。印字時には、シートを給紙した給紙デッキに対応する補正値に応じて、画像の幾何特性が制御される。
【0003】
特許文献1には、シートに形成される画像の幾何特性の安定化を図った画像形成装置が開示される。この画像形成装置は、幾何特性の安定化のために、シートに調整用画像を印刷して調整用チャートを作成する。調整用チャートは、シートの搬送経路に設けられたセンサにより調整用画像が読み取られる。画像形成装置は、調整用画像の読取結果に基づいてシートに形成される画像の幾何特性を検知し、当該検知された幾何特性を理想的な幾何特性に補正するために印字位置や画像の傾き等を調整する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-11285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
調整用チャートは、所定枚数の印刷が行われる毎に作成される。この調整用チャートの読取結果から画像形成条件(前述の例ではシートに形成される画像の幾何特性の補正値)が求められる。自動調整は、ユーザにより有効/無効の設定が可能となっている。自動調整が無効に設定されている場合、ジョブに応じた印字中に自動調整が実行されないために、画像形成条件は更新されない。
【0006】
自動調整の有効/無効の設定は、ジョブ毎に行うことができる。例えば、自動調整が有効に設定された印刷ジョブにより印刷を行っている途中で、自動調整が無効に設定された割込印刷ジョブが指示される場合がある。この場合、画像形成条件は、割込印刷ジョブの実行中に更新されない。そのために、割込印刷ジョブの終了後に割り込まれた印刷ジョブを再開した際には、画像形成条件が割込印刷ジョブの実行前の古い画像形成条件のままであり、割込印刷ジョブ後の再開時の画質が割込印刷ジョブ前の画質と異なってしまう。これにより、例えば、割込印刷ジョブ前の画像の濃度が割込印刷ジョブ後の画像の濃度と異なってしまう可能性がある。あるいは、例えば、シートに形成される画像の幾何特性が理想的な幾何特性に制御できない可能性がある。特に、両面印刷においては表裏の印字位置にズレが生じる可能性がある。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、割込印刷ジョブを実行した場合であってもシートに形成される画像の品質を安定させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の画像形成装置は、画像形成条件に基づいてシートに画像を形成する画像形成手段と、前記画像形成手段により前記シートに形成された前記画像形成条件の調整用画像を読み取る読取手段と、前記画像形成手段に印刷ジョブに応じて画像を形成させ、該印刷ジョブによる画像形成に対して割り込んで処理される割込印刷ジョブが要求されると、前記画像形成手段に、前記印刷ジョブによる処理に割り込んで前記割込印刷ジョブに応じた画像を形成させる制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記画像形成条件の調整が無効に設定されている前記割込印刷ジョブによる処理が終了して前記印刷ジョブに処理が復帰する前に、前記画像形成手段によりシートに前記調整用画像を形成した調整用チャートを作成し、前記読取手段による前記調整用チャートの調整用画像の読取結果に基づいて前記画像形成条件を調整して中断した印刷ジョブによる画像形成を再開し、前記画像形成条件の調整が有効に設定されている前記割込印刷ジョブによる処理が終了すると、前記画像形成条件の調整を行わずに中断した印刷ジョブによる画像形成を再開することを特徴とする。
また、本発明の画像形成装置は、印刷条件に基づいてシートに画像を印刷し、前記シートを搬送パスへ搬送する印刷手段と、前記搬送パスに設けられ、前記印刷手段によりテスト画像が印刷されて前記搬送パスを搬送される前記シートから、前記テスト画像を読み取る読取手段と、制御手段と、を備え、前記制御手段は、第1画像と前記テスト画像を印刷する第1印刷ジョブを行う場合、前記読取手段により前記テスト画像を読み取った読取結果に基づいて前記第1印刷ジョブによる画像を印刷するための印刷条件を生成し、前記制御手段は、実行中の前記第1印刷ジョブに割り込んで、前記テスト画像を印刷せずに第2画像を印刷する第2印刷ジョブを行う場合、前記第2印刷ジョブの終了から前記第1印刷ジョブの再開までの間に、前記印刷手段により前記第1印刷ジョブによる画像が形成されるシートとは異なるシートにテスト画像を印刷させ、前記制御手段は、前記第1印刷ジョブの再開の前に、前記読取手段により前記異なるシートに形成されたテスト画像を読み取った読取結果に基づいて、前記第1印刷ジョブを再開して印刷するための印刷条件を生成し、前記制御手段は、実行中の前記第1印刷ジョブに割り込んで、第2画像と前記テスト画像を印刷する第2印刷ジョブを行う場合、前記第2印刷ジョブの終了から前記第1印刷ジョブの再開までの間に、前記印刷手段により前記第1印刷ジョブによる画像が形成されるシートとは異なるシートにテスト画像を印刷させず、前記第1印刷ジョブを再開して印刷するための印刷条件を生成しないことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、割込印刷ジョブを実行した場合であってもシートに形成される画像の品質を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】画像処理システムの構成図。
図2】システム構成図。
図3】画像形成装置の構成図。
図4】CISの説明図。
図5】(a)~(f)は、設定画面の例示図。
図6】ジョブ情報の例示図。
図7】表裏オート調整情報の例示図
図8】調整用チャートの例示図。
図9】(a)、(b)は、表裏オート調整の説明図。
図10】印刷処理を表すフローチャート。
図11】印刷処理を表すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して実施の形態を詳細に説明する。
【0012】
(画像処理システム)
図1は、本実施形態の画像形成装置を含む画像処理システムの構成図である。画像処理システムは、画像形成装置101と外部コントローラ102とを備える。画像形成装置101は、例えば複合機、マルチファンクションペリフェラル(MFP)等である。外部コントローラ102は、例えば画像処理コントローラ、デジタルフロントエンド(DFE)、プリントサーバ等である。
【0013】
画像形成装置101と外部コントローラ102とは、内部LAN(Local Area Network)105とビデオケーブル106とを介して、通信可能に接続される。外部コントローラ102は、外部LAN104を介して、クライアントPC(Personal Computer)103に接続される。外部コントローラ102は、クライアントPC103から印刷指示(印刷ジョブ)を取得する。
【0014】
クライアントPC103には、画像データを外部コントローラ102で処理可能な印刷記述言語に変換する機能を有するプリンタドライバがインストールされている。ユーザは、各種アプリケーションによりプリンタドライバを介して印刷を指示することができる。プリンタドライバは、ユーザからの印刷ジョブに基づいて、外部コントローラ102に対して画像データを送信する。外部コントローラ102は、クライアントPC103から画像データを含む印刷ジョブを受け付けて、データ解析やラスタライズ処理を行い、画像形成装置101に対して画像データに基づく印刷(画像形成)を指示する。
【0015】
画像形成装置101は、印刷装置107を含む複数の異なる機能を有する装置が接続されて構成され、製本等の複雑な印刷処理が可能である。本実施形態の画像形成装置101は、印刷装置107とフィニッシャ109とを備える。印刷装置107は、本体の下部に設けられる給紙部から給送されるシートに対して現像剤(例えばトナー)を用いて画像を形成する。印刷装置107は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の画像を形成する。シートには、各色の画像が重畳されたフルカラーの画像が形成される。画像が形成されたシートは、印刷装置107からフィニッシャ109へ搬送される。フィニッシャ109は、画像が形成されたシートを積載する。
【0016】
この画像処理システムは、画像形成装置101に外部コントローラ102が接続された構成であるが、画像形成装置101と外部コントローラ102とが一体に構成されてもよい。例えば、画像形成装置101が外部LAN104を介してクライアントPC103から直接画像データを含む印刷ジョブを取得する構成であってもよい。この場合、画像形成装置101は、外部コントローラ102で行われているデータ解析やラスタライズ処理を行うことになる。
【0017】
(システム構成)
図2は、画像処理システムの動作を制御するシステム構成図である。ここでは、画像形成装置101、外部コントローラ102、及びクライアントPC103のそれぞれについて、動作を制御するコントローラについて説明する。
【0018】
・印刷装置
印刷装置107は、他の装置と通信するために、通信インタフェース(I/F)217、LAN I/F218、及びビデオI/F220を備える。印刷装置107は、印刷装置107の動作を制御するためにCPU(Central Processing Unit)222、メモリ223、ストレージ221、画像読取部231、及び画像処理部232を備える。印刷装置107は、画像を形成するために露光部227、作像部228、定着部229、及び給紙部230を備える。印刷装置107は、ユーザインタフェースとして操作部224及びディスプレイ225を備える。これらの構成部品は、システムバス233を介して相互に通信可能に接続される。
【0019】
通信I/F217は、通信ケーブル249を介してフィニッシャ109に接続され、フィニッシャ109との間の通信を制御する。印刷装置107とフィニッシャ109とにより協働で動作する場合には、通信I/F217を介して情報やデータが送受信される。LAN I/F218は、内部LAN105を介して外部コントローラ102に接続され、外部コントローラ102との間の通信を制御する。印刷装置107は、LAN I/F218を介して外部コントローラ102から印刷設定を受信する。ビデオI/F220は、ビデオケーブル106を介して外部コントローラ102に接続され、外部コントローラ102との間の通信を制御する。印刷装置107は、ビデオI/F220を介して外部コントローラ102から形成する画像を表す画像データを受信する。
【0020】
CPU222は、ストレージ221に格納されるコンピュータプログラムを実行することで、画像処理や印刷の制御を包括的に行う。メモリ223は、CPU222が各種処理を実行する際のワークエリアを提供する。画像形成処理を行う場合、CPU222は、露光部227、作像部228、定着部229、及び給紙部230を制御する。
【0021】
露光部227は、感光体、感光体を帯電する帯電ワイヤ、感光体に静電潜像を形成するために帯電ワイヤによって帯電された感光体を露光する光源を備える。なお、感光体は、例えば、ベルト状の弾性部材の表面に感光層が形成された感光ベルト、又はシリンダの表面に感光層が形成された感光ドラムである。また、帯電ワイヤの代わりに、帯電ローラでもよい。露光部227は、帯電ワイヤによって感光体の表面を均一な負電位に帯電させる。露光部227は、画像データに基づくレーザ光を光源から出力する。レーザ光は一様に帯電された感光体の表面を走査する。これによって、感光体は、レーザ光が照射された位置の電位が変動し、表面に静電潜像が形成される。感光体は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色に対応して4つ設けられる。4つの感光体にそれぞれ異なる色の画像に対応した静電潜像が形成される。
【0022】
作像部228は、感光体に形成したトナー像をシートに転写する。作像部228は、現像器、転写ユニット、トナー補給部を備える。現像器は、現像シリンダから負極性に帯電したトナーを感光体の表面に形成されている静電潜像に付着させてトナー像を形成する。現像器は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色に対応して4つ設けられる。現像器は、対応する色のトナーにより感光体上の静電潜像を可視像化する。
【0023】
転写ユニットは、中間転写ベルトを有しており、感光体から中間転写ベルトにトナー像を転写する。中間転写ベルトを挟んで感光体に対向する位置には一次転写ローラが設けられる。一次転写ローラに正電位が印加されることで、4つの感光体のそれぞれからトナー像が中間転写ベルトに重畳して転写される。これにより中間転写ベルトにフルカラーのトナー像が形成される。中間転写ベルトに形成されたトナー像は、後述の二次転写ローラによりシートに転写される。二次転写ローラは、正電位が印加されることで、中間転写ベルトからシートにフルカラーのトナー像を転写する。
【0024】
定着部229は、シートに、転写されたトナー像を定着する。定着部229は、ヒータ及びローラ対を有する。定着部229は、ヒータ及びローラ対によりシート上のトナー像を加熱及び加圧することでシートにトナー像を溶融固着させる。これによりシートに画像が形成される。給紙部230は、搬送経路に搬送ローラと各種センサを備え、シートの給送動作を制御する。
【0025】
画像読取部231は、CPU222の指示に基づいて、搬送されるシートに形成された画像を読み取る。CPU222は、例えば画像形成条件の調整を行う場合に、画像読取部231により、シートに形成される画像形成条件の調整用画像を読み取る。操作部224は、ユーザからの各種設定の入力や操作の指示を受け付ける入力装置である。操作部224は、例えば各種入力キーやタッチパネルである。ディスプレイ225は、画像形成装置101の設定情報や印刷ジョブの処理状況(ステータス情報)を表示する出力装置である。
【0026】
・フィニッシャ
フィニッシャ109は、例えば印刷装置107から出力された成果物にステープル処理を実行する。フィニッシャ109は、通信I/F241、CPU242、メモリ243、及び排紙制御部244を備える。これらの構成部品は、システムバス245を介して相互に通信可能に接続される。通信I/F241は、通信ケーブル249を介して印刷装置107に接続され、印刷装置107との間の通信を制御する。フィニッシャ109と印刷装置107とにより協働で動作する場合には、通信I/F241を介して情報やデータが送受信される。CPU242は、メモリ243に格納された制御プログラムを実行し、排紙に必要な各種制御を行う。メモリ243は、制御プログラムを格納する。また、メモリ243は、CPU242が各種処理を実行する際のワークエリアを提供する。排紙制御部244は、CPU242からの指示に基づいて、搬送されたシートを排出する。
【0027】
・外部コントローラ
外部コントローラ102は、他の装置と通信するために、LAN I/F213、LAN I/F214、及びビデオI/F215を備える。外部コントローラ102は、外部コントローラ102の動作を制御するためにCPU208、メモリ209、及びストレージ210を備える。外部コントローラ102は、ユーザインタフェースとしてキーボード211及びディスプレイ212を備える。これらの構成部品は、システムバス216を介して相互に通信可能に接続される。
【0028】
LAN I/F213は、外部LAN104を介してクライアントPC103に接続され、クライアントPC103との間の通信を制御する。外部コントローラ102は、クライアントPC103からLAN I/F213により印刷ジョブを取得する。LAN I/F214は、内部LAN105を介して印刷装置107に接続され、印刷装置107との間の通信を制御する。外部コントローラ102は、LAN I/F214を介して印刷装置107へ印刷設定を送信する。ビデオI/F215は、ビデオケーブル106を介して印刷装置107に接続され、印刷装置107との間の通信を制御する。外部コントローラ102は、ビデオI/F215を介して印刷装置107へ画像データを送信する。
【0029】
CPU208は、ストレージ210に格納されるコンピュータプログラムを実行することで、クライアントPC103から送信される画像データの受信、RIP処理、画像形成装置101への画像データの送信等の処理を包括的に行う。メモリ209は、CPU208が各種処理を実行する際のワークエリアを提供する。キーボード211は、ユーザからの各種設定の入力や操作の指示を受け付ける入力装置である。ディスプレイ212は、外部コントローラ102の実行アプリケーションの情報を静止画や動画により表示する出力装置である。
【0030】
・クライアントPC
クライアントPC103は、CPU201、メモリ202、ストレージ203、キーボード204、ディスプレイ205、及びLAN I/F206を備える。これらの構成部品は、システムバス207を介して相互に通信可能に接続される。
【0031】
CPU201は、ストレージ203に格納されたコンピュータプログラムを実行することで、クライアントPC103の動作を制御する。本実施形態では、CPU201は、画像データの作成や印刷ジョブの送信処理を行う。メモリ202は、CPU201が各種処理を実行する際のワークエリアを提供する。キーボード204及びディスプレイ205は、ユーザインタフェースである。キーボード204は、ユーザによる指示を受け付ける入力装置である。ディスプレイ205には、クライアントPC103の実行アプリケーションの情報を静止画や動画により表示する出力装置である。LAN I/F206は、外部LAN104を介して外部コントローラ102に接続され、外部コントローラ102との間の通信を制御する。クライアントPC103は、外部コントローラ102へLAN I/F206により画像データを含む印刷ジョブを送信する。
【0032】
なお、外部コントローラ102と画像形成装置101とは、内部LAN105とビデオケーブル106とにより接続されているが、印刷に必要なデータの送受信が行える構成であればよく、例えば、ビデオケーブルのみで接続されていてもよい。メモリ202、メモリ209、メモリ223、及びメモリ243はそれぞれ、データやプログラムを保持するための記憶装置であればよい。これらのメモリには、例えば、揮発性のRAM(Random Access Memory)、不揮発性のROM(Read Only Memory)、ストレージ、USB(Universal Serial Bus)メモリを用いることができる。
【0033】
(画像形成装置の構成)
図3は、画像形成装置101の構成図である。印刷装置107の上部には、ディスプレイ225が設けられる。ディスプレイ225は、画像形成装置101の印刷状況や設定のための情報を表示する。印刷装置107で画像が形成されたシートは、後段に設けられるフィニッシャ109へ搬送される。
【0034】
印刷装置107は、給紙部230として、複数の給紙デッキ301、302及び搬送経路303を備える。各給紙デッキ301、302には、異なる種類のシートを収容することが可能である。各給紙デッキ301、302に収容されるシートは、最上位の一枚が分離して搬送経路303へ給送される。印刷装置107は、露光部227として、画像を形成するための画像形成部304、305、306、307を備える。印刷装置107は、カラー画像を形成する。そのために、画像形成部304は、ブラック(K)の画像(トナー像)を形成する。画像形成部305は、シアン(C)の画像(トナー像)を形成する。画像形成部306は、マゼンタ(M)の画像(トナー像)を形成する。画像形成部307は、イエロー(Y)の画像(トナー像)を形成する。
【0035】
印刷装置107は、作像部228として、各画像形成部304、305、306、307からトナー像が転写される中間転写ベルト308及び二次転写ローラ309を備える。中間転写ベルト308は、図中時計回りに回転しており、画像形成部307、画像形成部306、画像形成部305、画像形成部304の順にトナー像が重畳して転写される。これにより中間転写ベルト308にフルカラーのトナー像が形成される。中間転写ベルト308は、回転することでトナー像を二次転写ローラ309へ搬送する。トナー像が二次転写ローラ309に搬送されるタイミングに合わせて、シートが二次転写ローラ309へ搬送される。二次転写ローラ309は、搬送されてきたシートに中間転写ベルト308上のトナー像を転写する。
【0036】
印刷装置107は、定着部229として、第1定着器311及び第2定着器313を備える。第1定着器311と第2定着器313とは同じ構成であり、トナー像をシートに定着させる。そのために第1定着器311及び第2定着器313は、それぞれ、加圧ローラ及び加熱ローラを備える。シートは、加圧ローラと加熱ローラとの間を通過することで、加熱及び加圧され、トナー像が溶融、圧着される。第2定着器313を通過したシートは、搬送経路314へ搬送される。なお、第2定着器313は、第1定着器311よりもシートの搬送方向で下流側に配置され、第1定着器311により定着処理されたシート上の画像に対するグロスの付加や、定着性の確保に用いられる。そのために第2定着器313は、シートの種類や画像形成処理の内容によっては使用されないことがある。第1定着器311で定着処理されたシートを第2定着器313を介さずに搬送するために、搬送経路312が設けられる。
【0037】
搬送経路314と搬送経路312とが合流した後に、搬送経路315と反転経路316とが設けられる。両面印刷が指示される場合、シートは、反転経路316へ搬送される。反転経路316に搬送されたシートは、反転経路316で搬送方向が反転して両面搬送経路317へ搬送される。反転経路316及び両面搬送経路317により、シートは、画像が形成された面(第1面)が反転される。シートは両面搬送経路317により搬送経路303へ搬送され、二次転写ローラ309及び定着部229を通過することで、第1面とは異なる第2面へ画像が形成される。
【0038】
片面印刷の場合、或いは両面印刷で両面に画像が形成された場合、シートは、搬送経路315へ搬送される。シートの搬送方向で搬送経路315の下流側には搬送経路323が配置される。搬送経路323には、画像読取部231として、CIS(Contact Image Sensor)321、322が、搬送経路323を挟んで対向して配置される。図4は、CIS321、322の説明図である。CIS321は、搬送経路323を搬送されるシートの上面の画像を読み取る光学センサである。CIS322は、搬送経路323を搬送されるシートの下面の画像を読み取る光学センサである。
【0039】
CIS321は、光源となるLED(Light Emitting Diode)350、受光部となる読取センサ351、及び白色基準板352を備える。LED350は、搬送経路323を搬送されるシートが読取位置に到達したタイミングで、シートの上面に光を照射する。読取センサ351は、シートの搬送方向に直交する方向に複数の受光素子(光電変換素子)を備える。そのために、シートの搬送方向に直交する方向が、CIS321の主走査方向となる。読取センサ351は、シートによる反射光を受光する。読取センサ351の複数の受光素子は、受光した反射光の強度に基づいて出力値(電気信号)を出力する。複数の受光素子から出力された出力値(電気信号)はCPU222へ送信される。このようにしてシートに形成された画像が読み取られる。
白色基準板352は、CIS321のシェーディング補正時に用いられる校正部材(基準部材)である。シェーディング補正時にLED350及び読取センサ351は、白色基準板352を読み取ることができる位置に移動する。あるいは、シェーディング補正時に白色基準板352がLED350及び読取センサ351の読取位置へ移動する。白色基準板352の読取結果に基づいてCIS321のシェーディング補正が行われる。そのために、CIS321は、シェーディング補正時には、シートに形成された画像を読み取ることができない。
【0040】
CIS322は、CIS321と同様に、LED353、読取センサ354、及び白色基準板355を備える。CIS322は、CIS321と同様に動作して、搬送経路323を搬送されるシートが読取位置に到達したタイミングで、シートの下面に形成された画像を読み取る。なお、CIS321、322の他に、画像読取部231は、CCDやCMOSセンサにより実現することもできる。
【0041】
本実施形態の印刷装置107は、シートの両面に画像形成条件を調整するための調整用画像が形成可能である。調整用画像が形成されたシートを調整用チャートという。印刷装置107は、調整用画像をシートに印刷して調整用チャートを作成し、CIS321及びCIS322により調整用画像を読み取る。CIS321及びCIS322による調整用チャートの読取画像(読取結果)はメモリ223に格納される。CPU222は、メモリ223を参照して、CIS321及びCIS322による読取画像を解析し、画像形成条件にフィードバックして、画像形成条件を調整する。
【0042】
例えば、印刷装置107の機内温度が上昇すると、印刷装置107の機内温度が低いときに比較してシートに形成される画像の幾何特性が変動する。ここで、画像の幾何特性とは、例えば、直角度、シートに対する画像の印字位置などである。印刷装置107は、調整用チャートを作成し、CIS321、322の読取結果に基づいて幾何特性を検知する。CPU222は、検知した幾何特性が理想的な幾何特性になるように、画像データにアフィン変換を行う。印刷装置107は、CPU222により変換された画像データに基づいてシートに画像を形成することで、シートに形成される画像の幾何特性を制御できる。これにより印刷装置107は、機内温度の変動によって引き起こされる画像の幾何特性の変動を抑制することができる。
【0043】
調整用チャートに形成される調整用画像は、幾何特性を検知するための画像以外にも、画像濃度を検知するための画像、或いは色ずれを検知するための画像であってもよい。画像濃度を検知するための調整用画像が形成された場合、CPU222は、CIS321(又はCIS322)の読取結果に基づいて画像濃度の変動を抑制するための画像形成条件を生成する。CPU222が画像形成条件に基づいて露光部227の光源の強度を制御することで、印刷装置107の画像濃度が理想的な画像濃度へ調整される。或いは、CPU222は、CIS321(又はCIS322)の読取結果に基づいて画像濃度の変動を抑制するための1次元の階調補正テーブルを生成する。CPU222は、階調補正テーブルに基づいて画像データを変換する。印刷装置107はCPU222により変換された画像データに基づいてシートに画像を形成することで、印刷装置107の画像濃度が理想的な画像濃度へ調整される。
【0044】
また、色ずれを検知するための調整用画像が形成された場合、CPU222は、CIS321(又はCIS322)の読取結果に基づいて色ずれを検知する。CPU222は、検知された色ずれに基づいて、露光部227により感光体に形成される画像の位置を制御することで、色ずれを補正する。
【0045】
調整用画像は、ユーザ画像とは異なるシートに調整用チャートとして印刷される形式、ユーザ画像と同じシートに印刷される形式、のいずれであってもよい。調整用チャートとして印刷される場合、CPU222は、受信した画像データから、印刷枚数が所定枚数Nに達する度にNページ目のユーザ画像とN+1ページ目のユーザ画像との間に調整用チャートが挿入された画像データを作成する。ユーザ画像と同じシートに調整用画像が形成される場合、調整用画像はシートの断裁領域に形成されることが好ましい。これは断裁処理が行われることで調整用画像が成果物から除去されるためである。ここで、ユーザ画像とはクライアントPC103から転送された画像データに含まれる画像である。
【0046】
調整用チャートがユーザ画像の印刷されたシートと異なる場合、当該調整用チャートは、印刷ジョブに応じた成果物(ユーザ画像の印刷されたシート束)に混入しないように除外される。そのために印刷装置107は、フラッパ324、排出経路326、搬送センサ327、及び排出トレイ328を備える。CIS321、322により画像(調整用画像)が読み取られた調整用チャートは、フラッパ324により排出経路326に搬送される。排出経路326に搬送されたシートは排出トレイ328に排出される。
【0047】
シートが調整用チャートではない場合、該シートはフラッパ324により搬送経路323から下流搬送経路325へ搬送される。下流搬送経路325に搬送されたシートは、フィニッシャ109に受け渡される。なお、印刷装置107は、フィニッシャ109から搬送ジャムの発生の通知を取得した場合に、調整用チャートであるか否かにかかわらず、フラッパ324を排出経路326側に切り替えて、機内のすべてのシート(残留紙)を排出トレイ328へ排出する。残留紙が排出トレイ328に排出されることで、ユーザによるジャム処理の負荷が軽減される。
【0048】
フィニッシャ109は、印刷装置107から受け渡されたシートを積載することができる。フィニッシャ109は、搬送経路331及びシートを積載するスタックトレイ332を備える。搬送経路331には、搬送センサ333、334、335、336が設けられる。印刷装置107から搬送されたシートは、搬送経路331を経由して、スタックトレイ332に積載される。搬送センサ333、334、335、336は、搬送経路331を搬送されるシートの通過を検知する。CPU242は、シートの搬送を開始してから所定時間経過してもシートの搬送方向の先端あるいは後端が搬送センサ333、334、335、336に検知されない場合、フィニッシャ109内で搬送ジャム(搬送異常)が発生したと判断する。この場合、CPU242は、印刷装置107へ搬送ジャムが発生したことを通知する。
【0049】
(表裏オート調整の設定方法)
本実施形態の自動調整は、画像形成装置101が幾何特性の補正値の更新を印刷中に自動的に行う表裏オート調整を例に説明される。図5は、表裏オート調整を設定するための設定画面の例示図である。設定画面は、CPU222によりディスプレイ225に表示される。ユーザは、操作部224により設定画面から表裏オート調整を設定することができる。ユーザは、印刷の実行を指示する前に表裏オート調整の設定を行う。
【0050】
図5(a)は、初期画面である。ユーザが初期画面からソフトキーである「応用モード」を選択すると、CPU222は、ディスプレイ225に図5(b)の応用モードの選択画面を表示する。ユーザが応用モードの選択画面からソフトキーである「調整」を選択すると、CPU222は、ディスプレイ225に図5(c)の表裏オート調整の設定画面を表示する。ユーザが表裏オート調整の設定画面からソフトキーである「設定する」を選択すると、CPU222は、ディスプレイ225に図5(d)の調整頻度選択画面を表示する。
【0051】
ユーザが調整頻度選択画面からソフトキーである「所定間隔」を選択すると、CPU222は、ディスプレイ225に図5(e)の調整間隔設定画面を表示する。ユーザが調整間隔設定画面のテンキーにより枚数を入力してソフトキーである「OK」を押下することで、表裏オート調整が有効になる。図5(e)の例では、調整間隔の枚数に10枚が設定されている。調整間隔で設定された枚数毎に調整用チャートが作成される。即ち、調整間隔で設定された枚数毎に調整用チャートによる表裏オート調整が行われて画像形成条件(幾何特性)が調整される。なお、ユーザが表裏オート調整の設定画面からソフトキーである「解除する」を選択すると、表裏オート調整が無効となる。また、ユーザが調整頻度選択画面からソフトキーである「リアルタイム」を選択すると、CPU222は、全ページに調整用画像を形成する動作モードを設定する。この場合、ユーザ画像と同じシートに形成された調整用画像により表裏オート調整が行われる。
【0052】
表裏オート調整が設定されると、CPU222は、ディスプレイ225に初期画面を表示する。図5(f)は、初期画面が表示されたディスプレイ225であり、印字ボタン601及び割込ボタン602を備える。ユーザが印字ボタン601を押下すると、CPU222は、印刷を実行する。表裏オート調整が有効である場合、CPU222は、調整間隔に設定された枚数毎に調整用チャートを作成する。表裏オート調整が無効である場合、調整用チャートは作成されず、表裏オート調整が行われない。
【0053】
割込処理である割込印刷ジョブの場合にも、表裏オート調整が設定可能である。印刷中にユーザが割込ボタン602を押下することで割込印刷ジョブの設定が行われる。割込ボタン602の押下後、ユーザは、表裏オート調整を有効にして調整間隔を所定の枚数(例えば5枚)に設定して印字ボタン601を押下する。これにより割込印刷ジョブによる印刷中に5枚毎に調整用チャートが作成される。
【0054】
(印刷ジョブ実行時の情報)
図6は、印刷ジョブの実行時にメモリ223に格納されるジョブ情報の例示図である。ジョブ情報は、印刷ジョブ或いは割込印刷ジョブの入力に応じてCPU222によりメモリ223に格納される。
【0055】
ジョブ情報は、ジョブIDにより管理される。ジョブ情報は、給紙デッキID、調整間隔の枚数、表裏オート調整フラグ、割込印刷フラグ、及び前のジョブIDを含む。給紙デッキIDは、当該印刷ジョブでシートを給紙する給紙デッキを示す。調整間隔の枚数は、調整間隔設定画面により設定された枚数である。表裏オート調整フラグは、表裏オート調整の設定状態(有効/無効)を示す。例えば、表裏オート調整が有効であれば表裏オート調整フラグは「1」、無効であれば表裏オート調整フラグは「0」に設定される。割込印刷フラグは、当該ジョブが割込印刷ジョブであるか否かを示す。例えば、割込印刷ジョブであれば割込印刷フラグは「1」、割込印刷ジョブでなければ割込印刷フラグは「0」に設定される。前のジョブIDは、当該ジョブが割込印刷ジョブである場合に、割り込む前に実行されていた印刷ジョブのジョブIDである。前のジョブIDは、印字ボタン601の押下によりジョブ情報に設定される。
【0056】
表裏オート調整で調整される画像形成条件(幾何特性の補正値)は、給紙デッキ毎に設定される。給紙デッキ毎の画像形成条件(幾何特性の補正値)は、例えば表裏オート調整情報としてメモリ223に格納される。図7は、表裏オート調整情報の例示図である。本実施形態では、表裏オート調整により表裏レジ調整(幾何特性の調整)が行われる場合について説明する。
【0057】
表裏オート調整情報は、給紙デッキIDにより、どの給紙デッキに対する表裏オート調整情報であるかが識別される。表裏オート調整情報は、給紙デッキ毎の表裏レジ調整値(補正値)を含む。表裏レジ調整値は、表裏面それぞれの画像の書き出し位置を調整(オフセット)する値である。表裏レジ調整値は、ここでは表裏レジ主走査オフセット値802及び表裏レジ副走査オフセット値803である。例えば、給紙デッキ301(第1給紙デッキ)からシートを給紙するジョブの場合、CPU222は、第1給紙デッキID801の表裏レジ主走査オフセット値802及び表裏レジ副走査オフセット値803を読み出して、画像の書き出し位置をオフセットする。CPU222は、例えば、印刷ジョブに含まれる画像データを表裏レジ主走査オフセット値802及び表裏レジ副走査オフセット値803に基づいてアフィン変換し、当該変換された画像データに基づいて印刷装置107に画像を形成させる。なお、表裏レジ主走査オフセット値802及び表裏レジ副走査オフセット値803は、調整用画像の読取結果に基づいて更新される。
【0058】
(調整用画像)
図8は、表裏オート調整においてシートに印刷された調整用チャートの例示図である。表裏オート調整が有効に設定されている場合、調整間隔に設定された枚数毎に、シートに調整用画像が印刷されて調整用チャートが作成される。調整用チャートは、表面の調整用画像がCIS321により読み取られ、裏目の調整用画像がCIS322により読み取られる。CPU222は、CIS321、322による調整用画像の読取結果に基づいて、基準位置からの調整用画像のズレ量を算出して、主走査方向及び副走査方向のそれぞれの補正値(表裏レジ主走査オフセット値及び表裏レジ副走査オフセット値)を決定する。ここで、副走査方向は主走査方向に直交する方向である。また副走査方向は印刷装置107の内部をシートが搬送される搬送方向に相当する。CPU222は、決定した補正値によりメモリ223の表裏オート調整情報を更新する。例えば給紙デッキ301から給紙する場合、CPU222は、決定した補正値により、表裏レジ主走査オフセット値802及び表裏レジ副走査オフセット値803を更新する。
【0059】
なお、調整頻度選択画面において「リアルタイム」が選択されている場合にユーザ画像とともに形成される調整用画像も図8に示す調整用画像となる。ユーザ画像の4隅に調整用画像が形成されることになる。ユーザ画像とともに形成される調整用画像についても、調整用チャートと同様に、CIS321、322による読取結果に基づいて、補正値が決定される。
【0060】
(表裏オート調整)
図9は、表裏オート調整が有効に設定された印刷ジョブ(ジョブA)に対して、表裏オート調整が無効に設定された割込印刷ジョブ(ジョブB)が割り込んで処理される場合に行われる調整用チャートを用いた表裏オート調整の説明図である。ジョブAの3ページ目と4ページ目との間にジョブBが割り込み処理される。ここでは表裏オート調整が有効に設定されるとともに、調整頻度として「リアルタイム」が選択されているものとする。
【0061】
図9(a)に示すように、ジョブAの3ページ目まで表裏オート調整が行われており、表裏補正値が更新される。これにより、シートに形成される画像の幾何特性が安定している。ジョブAの4ページ目の印刷が行われる前に、ジョブBによる印刷が割り込み処理される。ここでは、ジョブBにより10ページ分の印刷が行われる。ジョブAの4ページ目の印刷時には、3ページ目の処理により算出された表裏補正値が用いられるものとする。しかし、ジョブBの実行の前後では、印刷装置107の機内温度等の環境条件が変動する可能性がある。そのために、割込印刷ジョブ(ジョブB)終了後の再開後の1ページ目であるジョブAの4ページ目に印刷された画像の幾何特性(例えば印字位置)は、許容範囲内に制御できない可能性がある。つまり、補正値が最後に更新されてから4ページ目の画像が印刷されるまでにシートに形成される画像の幾何特性が変化してしまい、4ページ目の画像が印刷されるときの補正値が適切な補正値とならない可能性がある。
【0062】
そこで本実施形態では、図9(b)に示すように、表裏オート調整が無効に設定された割込印刷ジョブ(ジョブB)の終了後に、成果物とはならない調整用チャートを用いて表裏オート調整を行う。割り込まれた印刷ジョブ(ジョブA)への処理の復帰前に調整用チャートを用いて表裏オート調整を行うことで、割り込まれた印刷ジョブ(ジョブA)の処理の再開時に適切な補正値で印刷が行われる。調整用チャートは1枚以上であれば何枚であってもよい。
【0063】
図10及び図11は、印刷処理を表すフローチャートである。この処理は、印刷装置107が、操作部224やクライアントPC103から印刷ジョブの開始指示を受け付けることで開始される。
【0064】
CPU222は、印刷ジョブを受け付けると、まず、メモリ223から当該印刷ジョブのジョブ情報を取得する(S501)。CPU222は、取得したジョブ情報に含まれる給紙デッキIDに基づいて当該給紙デッキの表裏オート調整情報を参照し、画像形成条件を決定する(S502)。CPU222は、取得したジョブ情報により表裏オート調整が有効に設定されているか否かを判断する(S503)。
【0065】
表裏オート調整が有効に設定されている場合(S503:Y)、CPU222は、調整用画像を印刷するか否かを判断する(S504)。CPU222は、印刷した枚数が調整間隔枚数に到達しているか否かによりこの判断を行う。調整用画像を印刷する場合(S504:Y)、CPU222は、調整用チャートを作成し、画像読取部231による該調整用チャートの調整用画像の読取結果を取得する(S505)。CPU222は、調整用画像の読取結果に基づいて、給紙した給紙デッキに設定されている表裏オート調整情報を更新する(S506)。調整用画像を印刷しない場合(S504:N)、CPU222は、印刷ジョブに応じたユーザ画像の印刷処理を行う(S511)。
【0066】
その後、CPU222は、印刷ジョブで指示された全ページの印刷が終了したか否かを判断する(S507)。全ページの印刷が終了した場合(S507:Y)、CPU222は、ジョブ情報の割込印刷フラグがオンに設定されているか否かを判断する(S508)。割込印刷フラグがオンに設定されていない場合(S508:N)、CPU222は、処理を終了する。
【0067】
割込印刷フラグがオンに設定されている場合(S508:Y)、全ページの印刷が終了した印刷ジョブは割込印刷ジョブである。この場合、割込印刷ジョブで割り込まれた印刷ジョブに処理を戻す必要がある。そのためにCPU222は、ジョブ情報により前のジョブIDを確認して、前の印刷ジョブのジョブ情報を取得する(S509)。CPU222は、S503の処理に戻って印刷ジョブの残りページの印刷処理を行う。
【0068】
印刷処理が終了していない場合(S507:N)、CPU222は、次の印刷ジョブに対して割込印刷の要求があるか否かを判断する(S513)。割込印刷の要求がある場合(S513:Y)、CPU222は、メモリ223から割込印刷ジョブのジョブ情報を取得する(S514)。CPU222は、取得したジョブ情報に含まれる給紙デッキIDに基づいて当該給紙デッキの表裏オート調整情報を参照し、画像形成条件を決定する(S515)。CPU222は、S503の処理に戻って割込印刷ジョブによる印刷処理を行う。割込印刷の要求がない場合(S513:N)、CPU222は、処理中の印刷ジョブに基づいて、S504以降の処理を繰り返し行う。
【0069】
表裏オート調整が無効に設定されている場合(S503:N)、CPU222は、印刷ジョブに応じたユーザ画像の印刷処理を行う(S516)。その後、CPU222は、印刷ジョブで指示された全ページの印刷が終了したか否かを判断する(S517)。全ページの印刷が終了した場合(S517:Y)、CPU222は、ジョブ情報の割込印刷フラグがオンに設定されているか否かを判断する(S518)。割込印刷フラグがオンに設定されていない場合(S518:N)、CPU222は、処理を終了する。
【0070】
割込印刷フラグがオンに設定されている場合(S518:Y)、全ページの印刷が終了した印刷ジョブは割込印刷ジョブである。この場合、割込印刷ジョブで割り込まれた印刷ジョブに処理を戻す必要がある。この場合、割込印刷ジョブが表裏オート調整を無効に設定されているために、CPU222は表裏オート調整を行って幾何特性を調整する必要がある。そのためにCPU222は、調整用チャートを作成する(S519)。CPU222は、画像読取部231による調整用チャートの調整用画像の読取結果を取得する(S520)。CPU222は、調整用画像の読取結果に基づいて、給紙デッキに設定されている表裏オート調整情報を更新する(S521)。表裏オート調整情報が更新される給紙デッキは、割込印刷ジョブにより処理が中断された印刷ジョブでシートを給紙する給紙デッキである。
【0071】
S521の処理において表裏オート調整情報が更新された後、CPU222は、S501の処理に戻って、割込印刷ジョブで割り込まれた印刷ジョブの残りページの印刷処理を行う。
【0072】
印刷処理が終了していない場合(S517:N)、CPU222は、次の印刷ジョブに対して割込印刷の要求があるか否かを判断する(S525)。割込印刷の要求がある場合(S525:Y)、CPU222は、メモリ223から割込印刷ジョブのジョブ情報を取得する(S526)。CPU222は、取得したジョブ情報に含まれる給紙デッキIDに基づいて当該給紙デッキの表裏オート調整情報を参照し、画像形成条件を決定する(S527)。CPU222は、S503の処理に戻って割込印刷ジョブによる印刷処理を行う。割込印刷要求がない場合(S525:N)、CPU222は、処理中の印刷ジョブに基づいて、S516以降の処理を繰り返し行う。
【0073】
このように、表裏オート調整が設定されていない割込印刷ジョブがあった場合でも、割り込まれた印刷ジョブを再開する前に調整用チャートによる表裏オート調整が行われる。そのために、割込処理中に幾何特性にズレのような画像形成条件の変化が生じていても、成果物に影響を与えず、常に適切な画像形成条件による印刷が可能となる。本実施形態の自動調整は、シートに形成される画像の幾何特性を補正する表裏オート調整を例に説明したが、他の画像形成条件を自動的に調整する他の自動制御に置き換えて同じ処理を行ってもよい。
【0074】
(変形例)
なお、割込印刷ジョブで印刷される枚数が所定枚数(例えば3枚)よりも少ない場合、割込印刷ジョブの実行前後で環境条件の変化が小さい。この場合、調整用チャートを用いて画像形成条件の調整を行ってもよいが、調整用チャートがヤレ紙となってしまい、資源が浪費されてしまう。そのために割込印刷ジョブで印刷される枚数が所定枚数よりも少ない場合には、復帰時に自動調整を行わずに、割込印刷ジョブの直前の画像形成条件をそのまま使用してもよい。これは、割込印刷ジョブの直前の画像形成条件をそのまま使用しても画質への影響が少ないためである。つまり印刷装置107は、割込印刷ジョブで印刷される枚数が所定枚数よりも少ない場合に、画像形成条件の調整を行わずに元の印刷ジョブに復帰する。割込印刷ジョブで印刷される枚数が所定枚数よりも多い場合に、画像形成条件の調整を行って元の印刷ジョブに復帰する。これにより調整用チャートが不要となりヤレ紙を削減することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11