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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-14
(45)【発行日】2024-06-24
(54)【発明の名称】半導体レーザ装置及びレーザ装置
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/02208 20210101AFI20240617BHJP
   H01S 5/40 20060101ALI20240617BHJP
   G02B 6/42 20060101ALI20240617BHJP
   H01S 3/067 20060101ALI20240617BHJP
   H01S 3/0941 20060101ALI20240617BHJP
   H01S 5/02253 20210101ALI20240617BHJP
   H01S 5/02255 20210101ALI20240617BHJP
【FI】
H01S5/02208
H01S5/40
G02B6/42
H01S3/067
H01S3/0941
H01S5/02253
H01S5/02255
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020131813
(22)【出願日】2020-08-03
(65)【公開番号】P2022028425
(43)【公開日】2022-02-16
【審査請求日】2023-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(74)【代理人】
【識別番号】100160093
【弁理士】
【氏名又は名称】小室 敏雄
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】高橋 行彦
【審査官】佐藤 美紗子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0019576(US,A1)
【文献】特開2017-147420(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0031850(US,A1)
【文献】特開2019-216172(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00-5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の段部を有する階段状のマウント部材と、
前記マウント部材の段部の各々に複数搭載された、第1方向に向けてレーザ光を射出する半導体レーザ素子と、
前記マウント部材の段部の各々に前記半導体レーザ素子に対応して複数設けられ、対応する前記半導体レーザ素子から射出されるレーザ光をコリメートしつつ前記第1方向と交差する第2方向に向けて反射するコリメート光学系と、
前記コリメート光学系によって反射されたレーザ光を合成する合成光学系と、
を備え
前記第1方向は、前記段部の表面と、前記複数の段部のうちの互いに隣り合った2つの段部の間に位置する段差面との双方に沿う方向である、
導体レーザ装置。
【請求項2】
前記マウント部材の段部の各々に複数設けられる前記コリメート光学系の少なくとも1つは、
対応する前記半導体レーザ素子から射出されるレーザ光の前記第1方向及び前記第2方向に垂直な第3方向の成分をコリメートする第1コリメートレンズと、
対応する前記半導体レーザ素子から射出されるレーザ光の前記第2方向の成分をコリメートしつつ前記第2方向に向けて反射するコリメートミラーと、
を備える、請求項1記載の半導体レーザ装置。
【請求項3】
前記マウント部材の段部の各々に複数設けられる前記コリメート光学系の残りの少なくとも1つは、
対応する前記半導体レーザ素子から射出されるレーザ光の前記第3方向の成分をコリメートする第1コリメートレンズと、
対応する前記半導体レーザ素子から射出されるレーザ光の前記第2方向の成分をコリメートする第2コリメートレンズと、
前記第2コリメートレンズでコリメートされたレーザ光を前記第2方向に向けて反射する反射ミラーと、
を備える請求項2記載の半導体レーザ装置。
【請求項4】
前記半導体レーザ素子は、前記第2方向に直線状に配列されている、請求項3記載の半導体レーザ装置。
【請求項5】
前記マウント部材の段部の各々に複数設けられる前記コリメート光学系は、前記第1コリメートレンズと、前記コリメートミラーとをそれぞれ備えており、
前記半導体レーザ素子は、レーザ光の射出端から前記コリメートミラーまでの距離が同じになるように配置されている、
請求項2記載の半導体レーザ装置。
【請求項6】
複数の段部を有する階段状のマウント部材と、
前記マウント部材の段部の各々に搭載された第1半導体レーザ素子と、
前記マウント部材の段部の各々に搭載された第2半導体レーザ素子と、
前記マウント部材の段部の各々に前記第1半導体レーザ素子に対応して設けられた第1ファスト軸コリメートレンズと、
前記マウント部材の段部の各々に前記第2半導体レーザ素子に対応して設けられた第2ファスト軸コリメートレンズと、
前記マウント部材の段部の各々に前記第1半導体レーザ素子に対応して設けられた、スロー軸コリメートミラーと、
前記マウント部材の段部の各々に前記第2半導体レーザ素子に対応して設けられた、スロー軸コリメートレンズと、
前記マウント部材の段部の各々に前記第2半導体レーザ素子に対応して設けられた反射ミラーと、
前記スロー軸コリメートミラー及び前記反射ミラーで反射されたレーザ光を合成する合成光学系と、
を備える半導体レーザ装置。
【請求項7】
前記合成光学系は、前記スロー軸コリメートミラー及び前記反射ミラーの何れか一方で反射されたレーザ光の偏光状態を変える偏光素子と、
前記偏光素子を介したレーザ光と、前記スロー軸コリメートミラー及び前記反射ミラーの何れか他方で反射されたレーザ光とを合成する偏光合波光学系と、
を備える請求項6記載の半導体レーザ装置。
【請求項8】
前記合成光学系で合成されたレーザ光を、光ファイバのコアに集光する集光光学系を備える、請求項1から請求項7の何れか一項に記載の半導体レーザ装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8の何れか一項に記載の半導体レーザ装置と、
前記半導体レーザ装置から出力されるレーザ光を光学的に結合させるコンバイナと、
前記コンバイナで結合されたレーザ光を外部に出力する出力端と、
を備えるレーザ装置。
【請求項10】
請求項1から請求項8の何れか一項に記載の半導体レーザ装置と、
コアに希土類が添加された増幅用ファイバと、
前記半導体レーザ装置から出力されるレーザ光を励起光として前記増幅用ファイバに結合させるコンバイナと、
前記増幅用ファイバで増幅された光を外部に出力する出力端と、
を備えるレーザ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体レーザ装置及びレーザ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体レーザ装置は、概して、半導体レーザ素子、コリメートレンズ、及び集光光学系を備えており、半導体レーザから射出されたレーザ光を、コリメートレンズによってコリメートした後に集光光学系によって集光して外部に出力する。高出力が要求される半導体レーザ装置は、要求される出力に応じた数だけ半導体レーザ素子及びコリメートレンズが設けられる。
【0003】
以下の特許文献1,2には、階段状に形成されたマウントの各段部に、半導体レーザ素子並びにF軸(ファスト軸)コリメートレンズ及びS軸(スロー軸)コリメートレンズが1つずつ設けられた半導体レーザ装置が開示されている。この半導体レーザ装置では、各段部に設けられた半導体レーザ素子から射出されたレーザ光を、各段部に設けられたコリメートレンズで個別にコリメートした後に、集光光学系によって集光して1本の光ファイバに結合させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-85493号公報
【文献】特開2016-164671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した特許文献1,2に開示された半導体レーザ装置において、高出力化のために半導体レーザ素子の実装数を増やそうとすると、マウントの段部の数を増加させる必要がある。すると、半導体レーザ装置の高さ方向の寸法が大きくなってしまうという問題がある。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、高さ方向の寸法を小さくしつつ高出力化が可能な半導体レーザ装置及びレーザ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の第1態様による半導体レーザ装置(1,2)は、複数の段部(ST)を有する階段状のマウント部材(10)と、前記マウント部材の段部の各々に複数搭載された、第1方向(+Z方向)に向けてレーザ光を射出する半導体レーザ素子(11)と、前記マウント部材の段部の各々に前記半導体レーザ素子に対応して複数設けられ、対応する前記半導体レーザ素子から射出されるレーザ光をコリメートしつつ前記第1方向と交差する第2方向(+X方向)に向けて反射するコリメート光学系(12、13)と、前記コリメート光学系によって反射されたレーザ光を合成する合成光学系(14)と、を備える。
【0008】
本発明の第1態様による半導体レーザ装置では、複数の段部を有する階段状のマウント部材の段部の各々に、第1方向に向けてレーザ光を射出する半導体レーザ素子が複数搭載されており、マウント部材の段部の各々に、半導体レーザ素子に対応するコリメート光学系が複数設けられている。マウント部材の段部の各々に複数搭載された半導体レーザ素子から射出されたレーザ光は、それぞれ対応するコリメート光学系でコリメートされつつ第1方向と交差する第2方向に向けて反射され、合成光学系で合成される。本発明の第1態様による半導体レーザ装置では、マウント部材の段部に複数の半導体レーザ素子を搭載することにより、段部の数を少なくすることができるため、高さ方向の寸法を小さくしつつ高出力化が可能である。
【0009】
また、本発明の第1態様による半導体レーザ装置は、前記マウント部材の段部の各々に複数設けられる前記コリメート光学系の少なくとも1つ(12)は、対応する前記半導体レーザ素子から射出されるレーザ光の前記第1方向及び前記第2方向に垂直な第3方向(Y方向)の成分をコリメートする第1コリメートレンズ(12a)と、対応する前記半導体レーザ素子から射出されるレーザ光の前記第2方向の成分をコリメートしつつ前記第2方向に向けて反射するコリメートミラー(12b)と、を備える。
【0010】
また、本発明の第1態様による半導体レーザ装置は、前記マウント部材の段部の各々に複数設けられる前記コリメート光学系の残りの少なくとも1つ(13)は、対応する前記半導体レーザ素子から射出されるレーザ光の前記第3方向の成分をコリメートする第1コリメートレンズ(13a)と、対応する前記半導体レーザ素子から射出されるレーザ光の前記第2方向の成分をコリメートする第2コリメートレンズ(13b)と、前記第2コリメートレンズでコリメートされたレーザ光を前記第2方向に向けて反射する反射ミラー(13c)と、を備える。
【0011】
また、本発明の第1態様による半導体レーザ装置は、前記半導体レーザ素子が、前記第2方向に直線状に配列されている。
【0012】
或いは、本発明の第1態様による半導体レーザ装置は、前記マウント部材の段部の各々に複数設けられる前記コリメート光学系が、前記第1コリメートレンズ(12a、13a)と、前記コリメートミラー(12b、13d)とをそれぞれ備えており、前記半導体レーザ素子が、レーザ光の射出端から前記コリメートミラーまでの距離が同じになるように配置されている。
【0013】
上記課題を解決するために、本発明の第2態様による半導体レーザ装置(1)は、複数の段部(ST)を有する階段状のマウント部材(10)と、前記マウント部材の段部の各々に搭載された第1半導体レーザ素子(11a)と、前記マウント部材の段部の各々に搭載された第2半導体レーザ素子(11b)と、前記マウント部材の段部の各々に前記第1半導体レーザ素子に対応して設けられた第1ファスト軸コリメートレンズ(12a)と、前記マウント部材の段部の各々に前記第2半導体レーザ素子に対応して設けられた第2ファスト軸コリメートレンズ(13a)と、前記マウント部材の段部の各々に前記第1半導体レーザ素子に対応して設けられた、スロー軸コリメートミラー(12b)と、前記マウント部材の段部の各々に前記第2半導体レーザ素子に対応して設けられた、スロー軸コリメートレンズ(13b)と、前記マウント部材の段部の各々に前記第2半導体レーザ素子に対応して設けられた反射ミラー(13c)と、前記スロー軸コリメートミラー及び前記反射ミラーで反射されたレーザ光を合成する合成光学系(14)と、を備える。
【0014】
また、本発明の第2態様による半導体レーザ装置は、前記合成光学系が、前記スロー軸コリメートミラー及び前記反射ミラーの何れか一方で反射されたレーザ光の偏光状態を変える偏光素子(14a)と、前記偏光素子を介したレーザ光と、前記スロー軸コリメートミラー及び前記反射ミラーの何れか他方で反射されたレーザ光とを合成する偏光合波光学系(14b、14c)と、を備える。
【0015】
また、本発明の第1,第2態様による半導体レーザ装置は、前記合成光学系で合成されたレーザ光を、光ファイバのコアに集光する集光光学系(15)を備える。
【0016】
本発明の第1態様によるレーザ装置(70)は、上記の何れかに記載の半導体レーザ装置(1、2)と、前記半導体レーザ装置から出力されるレーザ光を光学的に結合させるコンバイナ(72)と、前記コンバイナで結合されたレーザ光を外部に出力する出力端(74)と、を備える。
【0017】
本発明の第2態様によるレーザ装置(60)は、上記の何れに記載の半導体レーザ装置(1、2)と、コアに希土類が添加された増幅用ファイバ(64)と、前記半導体レーザ装置から出力されるレーザ光を励起光として前記増幅用ファイバに結合させるコンバイナ(62)と、前記増幅用ファイバで増幅された光を外部に出力する出力端(67)と、を備える。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、高さ方向の寸法を小さくしつつ高出力化が可能であるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1実施形態による半導体レーザ装置の斜視図である。
図2】本発明の第1実施形態による半導体レーザ装置の平面図である。
図3】本発明の第1実施形態による半導体レーザ装置の側面図である。
図4】本発明の第1実施形態による半導体レーザ装置の特徴部分を抜き出した平面図である。
図5】本発明の第2実施形態による半導体レーザ装置の平面図である。
図6】本発明の第2実施形態による半導体レーザ装置の特徴部分を抜き出した平面図である。
図7】光モジュールの第1構成例を示す側面透視図である。
図8】光モジュールの第2構成例を示す斜視図である。
図9】第2構成例に係る光モジュールの平面透視図である。
図10図8図9に示す光モジュールを複数備える光モジュールユニットを示す斜視図である。
図11】本発明の第1実施形態によるレーザ装置の要部構成を示す図である。
図12】本発明の第2実施形態によるレーザ装置の要部構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の実施形態による半導体レーザ装置及びレーザ装置について詳細に説明する。尚、以下では理解を容易にするために、図中に設定したXYZ直交座標系(原点の位置は適宜変更する)を必要に応じて参照しつつ各部材の位置関係について説明する。また、以下で参照する図面では、理解を容易にするために、必要に応じて各部材の寸法を適宜変えて図示している。
【0021】
〔半導体レーザ装置〕
〈第1実施形態〉
図1は、本発明の第1実施形態による半導体レーザ装置の斜視図であり、図2は、同半導体レーザ装置の平面図であり、図3は、同半導体レーザ装置の側面図である。また、図4は、同半導体レーザ装置の特徴部分を抜き出した平面図である。図1図3に示す通り、本実施形態の半導体レーザ装置1は、マウント10(マウント部材)、2N個(本実施形態ではN=6)の半導体レーザ素子11、N個のコリメート光学系12、N個のコリメート光学系13、合成光学系14、及び集光光学系15を備える。このような半導体レーザ装置1は、2N個の半導体レーザ素子11から射出されるレーザ光を、光ファイバFBを介して外部に出力するものである。
【0022】
尚、図1図3中に示すXYZ直交座標系は、Z軸の+Z方向(第1方向)が半導体レーザ素子11から射出されるレーザ光の射出方向に設定されている。また、このXYZ直交座標系のX軸(第2方向)は、半導体レーザ素子11のpn接合面に平行な方向(スロー軸)と平行になるよう設定され、Y軸(第3方向)は、半導体レーザ素子11のpn接合面に垂直な方向(ファスト軸)と平行になるよう設定されている。
【0023】
マウント10は、上述した半導体レーザ素子11、コリメート光学系12、コリメート光学系13、合成光学系14、及び集光光学系15が搭載される第1面10aと、その反対側の面である第2面10bとを有する平面形状が矩形形状の略板状部材である。マウント10の第1面10aには、N個の段部STが階段状に形成されており、第2面10bは平面とされている。
【0024】
マウント10に形成された段部STは、-X方向に進むにつれて+Y方向に進むように(高くなるように)に構成されている。言い換えると、マウント10に形成された段部STは、+X方向に進むにつれて-Y方向に進むように(低くなるように)に構成されている。段部STのY方向の間隔は、ある段部STに設けられたコリメート光学系12,13が、他の段部STに設けられたコリメート光学系12,13を介したレーザ光を遮らないように調整されている。
【0025】
マウント10は、半導体レーザ素子11の放熱効率を高めるために熱伝導率が高く、且つ温度変化によって生ずる応力を極力低減するために熱膨張率が小さい材料を用いて形成される。例えば、窒化アルミニウム(AlN)等のセラミックス、或いはモリブデン(Mo)等の金属が適している。
【0026】
半導体レーザ素子11は、レーザ光の射出端を+Z側に向けてマウント10の段部STの-Z側に2個ずつ搭載されている。半導体レーザ素子11をマウント10の段部STの各々に2個ずつ搭載するのは、半導体レーザ素子11が搭載される段部STの数を減らすことによって半導体レーザ装置1の高さ方向(Y方向)の寸法を小さくするためである。半導体レーザ素子11は、Z方向におけるレーザ光の射出端の位置が一致するように、X方向に直線状に配列されている。尚、半導体レーザ素子11は、直列接続されている。
【0027】
半導体レーザ素子11は、不図示の駆動回路から駆動電流が供給された場合に、レーザ光を+Z方向に向けて射出する。半導体レーザ素子11から射出されるレーザ光の波長は、例えば0.9μm帯である。尚、マウント10の1つの段部STに搭載された2つの半導体レーザ素子11を区別する必要がある場合には、各々を「半導体レーザ素子11a」,「半導体レーザ素子11b」という。「半導体レーザ素子11a」は、射出したレーザ光がコリメート光学系12によってコリメートされるものであり、「半導体レーザ素子11b」は、射出したレーザ光がコリメート光学系13によってコリメートされるものである。
【0028】
コリメート光学系12は、半導体レーザ素子11a(第1半導体素子)に対応して設けられており、対応する半導体レーザ素子11aから射出されるレーザ光をコリメートしつつ+X方向に向けて反射する。コリメート光学系12は、コリメートレンズ12a(第1コリメートレンズ、第1ファスト軸コリメートレンズ)及びコリメートミラー12b(スロー軸コリメートミラー)を備える。
【0029】
コリメートレンズ12aは、半導体レーザ素子11aの+Z側に配置されており、半導体レーザ素子11aから射出されるレーザ光のファスト軸の成分をコリメートするFACレンズ(ファスト軸コリメートレンズ)である。尚、コリメートレンズ12aは、半導体レーザ素子11aから射出されるレーザ光のスロー軸の成分をコリメートしない。
【0030】
コリメートミラー12bは、コリメートレンズ12aの+Z側であって、半導体レーザ素子11aの射出端から一定の距離だけ離れた位置に配置されている。コリメートミラー12bは、コリメートレンズ12aを介したレーザ光のスロー軸の成分をコリメートしつつ、+X方向に向けて反射する。コリメートミラー12bは、例えば、図4に示す通り、反射面が放射面(ZX平面における断面形状が放物線となる面)とされたミラーである。尚、コリメートミラー12bは、半導体レーザ素子11aから射出されるレーザ光のファスト軸の成分をコリメートしない。
【0031】
コリメート光学系13は、半導体レーザ素子11b(第2半導体素子)に対応して設けられており、対応する半導体レーザ素子11bから射出されるレーザ光をコリメートしつつ+X方向に向けて反射する。コリメート光学系13は、コリメートレンズ13a(第1コリメートレンズ、第2ファスト軸コリメートレンズ)、コリメートレンズ13b(第2コリメートレンズ、スロー軸コリメートレンズ)、及び反射ミラー13cを備える。
【0032】
コリメートレンズ13aは、半導体レーザ素子11bの+Z側に配置されており、半導体レーザ素子11bから射出されるレーザ光のファスト軸の成分をコリメートするFACレンズ(ファスト軸コリメートレンズ)である。尚、コリメートレンズ13aは、コリメートレンズ12aと同様に、半導体レーザ素子11bから射出されるレーザ光のスロー軸の成分をコリメートしない。
【0033】
コリメートレンズ13bは、コリメートレンズ13aの+Z側であって、半導体レーザ素子11bの射出端から一定の距離だけ離れた位置に配置されている。この距離は、半導体レーザ素子11aの射出端からコリメートミラー12bまでの距離と同程度の距離である。コリメートレンズ13bは、コリメートレンズ13aを介したレーザ光のスロー軸の成分をコリメートする。尚、コリメートレンズ13bは、コリメートミラー12bと同様に、半導体レーザ素子11bから射出されるレーザ光のファスト軸の成分をコリメートしない。
【0034】
反射ミラー13cは、コリメートレンズ13bの+Z側に配置されており、コリメートレンズ13bを介したレーザ光を+X方向に向けて反射する。ここで、反射ミラー13cは、反射ミラー13cで+X方向に反射されたレーザ光が、コリメートミラー12bで遮られることがないように、コリメートミラー12bよりも+Z側に配置されている。尚、反射ミラー13cは、図4に示す通り、Z軸からX軸の方向に45°の傾きをもって配置された平面状の反射面を有するミラーである。
【0035】
合成光学系14は、マウント10の+Z側における第1面10a上に設けられ、コリメート光学系12(コリメートミラー12b)によって反射されたレーザ光と、コリメート光学系13(反射ミラー13c)によって反射されたレーザ光とを合成する。合成光学系14は、例えば、1/2波長板14a(偏光素子)、反射ミラー14b(偏光合波光学系)、及び偏光ビームスプリッタ14c(偏光合波光学系)を備えており、上記のレーザ光を偏波合成する。
【0036】
1/2波長板14aは、マウント10の第1面10aにおいて、コリメートミラー12bの+X側に配置されており、コリメートミラー12bで反射されたレーザ光の偏光状態を変える。例えば、コリメートミラー12bで+X方向に向けて反射されたレーザ光の偏光状態がZ軸に平行な直線偏光であるとすると、1/2波長板14aは、偏光方向を90°回転させて偏光状態がY軸に平行な直線偏光に変える。
【0037】
反射ミラー14bは、1/2波長板14aの+X側に配置されており、1/2波長板14aを介したレーザ光を+Z方向に向けて反射する。尚、反射ミラー14bは、図4に示す通り、X軸からZ軸の方向に45°の傾きをもって配置された平面状の反射面を有するミラーである。
【0038】
偏光ビームスプリッタ14cは、マウント10の第1面10aにおいて、反射ミラー13cの+X側であって、反射ミラー14bの+Z側の位置に配置されている。偏光ビームスプリッタ14cは、入射する光をその偏光状態に応じて透過又は反射させる。例えば、偏光ビームスプリッタ14cは、Z軸に平行な直線偏光を透過させ、Y軸に平行な直線偏光を反射させる。
【0039】
ここで、コリメートミラー12b及び反射ミラー13cで+X方向に向けて反射されたレーザ光の偏光状態が共にZ軸に平行な直線偏光であったとする。コリメートミラー12bで+X方向に向けて反射されたレーザ光は、1/2波長板14aでY軸に平行な直線偏光にされてから反射ミラー14bで反射されて偏光ビームスプリッタ14cに入射するため、偏光ビームスプリッタ14cで反射されて+X方向に進む。一方、反射ミラー13cで+X方向に向けて反射されたレーザ光は、偏光ビームスプリッタ14cを透過して+X方向に進む。このようにして、コリメートミラー12b及び反射ミラー13cでX方向に向けて反射されたレーザ光が合成される。
【0040】
集光光学系15は、マウント10の第1面10a上において、合成光学系14と光ファイバFBの入射端面との間に配置され、合成光学系14で合成されたレーザ光を光ファイバFBのコアに集光する。集光光学系15は、シリンドリカルレンズ15a及びシリンドリカルレンズ15bを備える。シリンドリカルレンズ15aは、合成光学系14が備える偏光ビームスプリッタ14cの+X側に配置されており、合成光学系14で合成されたレーザ光のファスト軸の成分(Y方向の成分)を集光する。シリンドリカルレンズ15bは、シリンドリカルレンズ15aの+X側に配置されており、シリンドリカルレンズ15aを介したレーザ光のスロー軸の成分(Z方向の成分)を集光する。
【0041】
尚、光ファイバFBは、半導体レーザ素子11から射出されるレーザ光の進行方向に対して直交する向きに配置され、その入射端面が、例えば、シリンドリカルレンズ15bの焦点位置に配置されるよう位置決めされる。この光ファイバFBは、半導体レーザ素子11の各々から射出されるレーザ光を、半導体レーザ装置1の外部に導くものである。尚、光ファイバFBとしては、用途に応じて任意のものを用いることができる。例えば、シングルコアファイバ、マルチコアファイバ、シングルクラッドファイバ、ダブルクラッドファイバ、その他の光ファイバを用いることができる。
【0042】
以上説明したコリメート光学系12,13、合成光学系14、及び集光光学系15に設けられる透過型の光学部品におけるレーザ光の入射面及び射出面には、誘電体多層膜による反射防止コート(ARコート)が形成されている。また、コリメート光学系12,13、合成光学系14、及び集光光学系15に設けられる反射型の光学部品の反射面には、誘電体多層膜又は金属薄膜による反射コートが形成されている。
【0043】
例えば、コリメート光学系12のコリメートレンズ12a、コリメート光学系13のコリメートレンズ13a,13b、合成光学系14の1/2波長板14a及び偏光ビームスプリッタ14c、並びに集光光学系15のシリンドリカルレンズ15a,15bにおけるレーザ光の入射面及び射出面には反射防止コートが形成されている。また、コリメート光学系12のコリメートミラー12b、コリメート光学系13の反射ミラー13c、及び合成光学系14の反射ミラー14bの反射面には、反射コートが形成されている。
【0044】
上記構成の半導体レーザ装置1に対し、不図示の駆動回路から駆動電流が供給されると、供給された駆動電流は直列接続された半導体レーザ素子11に流れ、これら半導体レーザ素子11から+Z方向に向けてレーザ光が射出される。半導体レーザ素子11のうち、半導体レーザ素子11aから+Z方向に向けて射出されたレーザ光は、図4に示す通り、コリメート光学系12をなすコリメートレンズ12aに入射してファスト軸の成分がコリメートされる。コリメートレンズ12aを介したレーザ光は、コリメート光学系12をなすコリメートミラー12bに入射してスロー軸の成分がコリメートされつつ+X方向に向けて反射される。
【0045】
半導体レーザ素子11のうち、半導体レーザ素子11bから+Z方向に向けて射出されたレーザ光は、図4に示す通り、コリメート光学系13をなすコリメートレンズ13aに入射してファスト軸の成分がコリメートされる。コリメートレンズ13aを介したレーザ光は、コリメート光学系13をなすコリメートレンズ13bに入射してスロー軸の成分がコリメートされる。コリメートレンズ13bを介したレーザ光は、コリメート光学系13をなす反射ミラー13cによって+X方向に向けて反射される。
【0046】
コリメート光学系12のコリメートミラー12bで+X方向に向けて反射されたレーザ光が、合成光学系14の1/2波長板14aに入射すると偏光状態が変わる。1/2波長板14aを介したレーザ光は、反射ミラー14bで反射されて偏光ビームスプリッタ14cに入射して+X方向に向けて反射される。これに対し、コリメート光学系13の反射ミラー13cで+X方向に向けて反射されたレーザ光は、偏光ビームスプリッタ14cを透過して+X方向に進む。このようにして、コリメートミラー12b及び反射ミラー13cでX方向に向けて反射されたレーザ光が合成される。
【0047】
合成光学系14で合成されたレーザ光は、集光光学系15に入射し、シリンドリカルレンズ15aによってファスト軸の成分(Y方向の成分)が集光され、シリンドリカルレンズ15bによってスロー軸の成分(Z方向の成分)が集光される。このように集光されたレーザ光は、光ファイバFBの入射端面からコア内に入射し、コアを伝播する。このようにして、半導体レーザ素子11の各々から射出されたレーザ光は、光ファイバFBを介して半導体レーザ装置1の外部に導かれる。
【0048】
以上の通り、本実施形態では、マウント10に設けられた段部STの各々に、+Z方向に向けてレーザ光を射出する半導体レーザ素子11a,11bを搭載し、半導体レーザ素子11a,11bに対応してコリメート光学系12,13をそれぞれ設けている。そして、コリメート光学系12,13によって+X方向に反射されたレーザ光を合成光学系14で合成し、集光光学系15で集光して光ファイバFBのコアに入射させている。これにより、マウント10の段部STの数を減らすことができるため、高さ方向の寸法を小さくしつつ高出力化が可能である。
【0049】
〈第2実施形態〉
図5は、本発明の第2実施形態による半導体レーザ装置の平面図である。また、図6は、同半導体レーザ装置の特徴部分を抜き出した平面図である。尚,図5,6においては、図1図4に示した構成に相当する構成については同一の符号を付してある。本実施形態の半導体レーザ装置2が図1図4に示す半導体レーザ装置1と異なる点は、コリメート光学系13の構成及び半導体レーザ素子11bの配置である。
【0050】
図5,6に示す通り、本実施形態の半導体レーザ装置2に設けられるコリメート光学系13は、コリメート光学系12と同様の構成であり、コリメートレンズ13a及びコリメートミラー13dを備える。コリメートミラー13dは、図1図4に示すコリメートミラー12bと同様のものであり、コリメートレンズ13aを介したレーザ光のスロー軸の成分をコリメートしつつ、+X方向に向けて反射する。
【0051】
コリメートミラー13dは、コリメートレンズ13aの+Z側であって、半導体レーザ素子11bの射出端から一定の距離だけ離れた位置に配置されている。コリメートミラー13dがコリメートミラー12bと同じ特性を有するものである場合には、スロー軸の成分をコリメートするために必要となる光源(点光源)までの距離は同じになる。このため、半導体レーザ素子11bは、半導体レーザ素子11bの射出端からコリメートミラー13dまでの距離が、半導体レーザ素子11aの射出端からコリメートミラー12bまでの距離と同じになるように配置されている。
【0052】
以上の通り、本実施形態の半導体レーザ装置2は、コリメート光学系13の構成及び半導体レーザ素子11bの配置が異なるだけであり、その他は図1図4に示す半導体レーザ装置1と同様である。このため、本実施形態においても、マウント10の段部STの数を減らすことができ、高さ方向の寸法を小さくしつつ高出力化が可能である。また、本実施形態では、コリメート光学系13がコリメートレンズ13a及びコリメートミラー13dから構成されており、図1~4に示すコリメートレンズ13bが不要になるため、第1実施形態よりも光学部材の数を減らすことができる。その結果、光学部材の実装、調心等に要する工数を低減することが可能になる。
【0053】
〔光モジュール〕
以上説明した第1実施形態による半導体レーザ装置1及び第2実施形態による半導体レーザ装置2は、取り扱いを容易にするため、信頼性を向上させるため、堅牢性を高めるため、その他の目的で筐体に収容されてモジュール化されることが多い。以下、半導体レーザ装置をモジュール化した光モジュールの構成例について説明する。
【0054】
〈第1構成例〉
図7は、光モジュールの第1構成例を示す側面透視図である。第1構成例に係る光モジュールM1は、前述した第1実施形態による半導体レーザ装置1を筐体に収容してモジュール化したものである。尚、光モジュールM1は、前述した第2実施形態による半導体レーザ装置2を筐体に収容してモジュール化したものであっても良い。
【0055】
光モジュールM1は、筐体本体21、蓋部材22、及び一対のコネクタ23を備える概ね直方体形状のモジュールである。筐体本体21は、半導体レーザ装置1のマウント10と、マウント10と一体となってマウント10の外周を囲う枠体24とからなる。枠体24は、放熱効率を高めるために熱伝導率が高い銅(Cu)等の金属で形成されている。尚、枠体24の表面には、ハンダの濡れ性をよくするために、金メッキが施されているのが望ましい。
【0056】
枠体24は、蓋部材22が配置される側(+Y側)の端部において、内周面側に全周に亘って切り欠き24aを有する。この切り欠き24aに蓋部材22の外周部が嵌められる。また、枠体24には、光ファイバFBを筐体本体21の内側から筐体本体21の外側に導出するための貫通孔、一対のコネクタ23を筐体本体21の内側から筐体本体21の外側に導出するための貫通孔が形成されている。
【0057】
また、枠体24は、蓋部材22が配置される側とは反対側(-Y側)の端部において、±Z方向に張り出す張出部24bを有する。図7では、-Z方向に張り出す3つの張出部24bが示されている。この張出部24bは、ボルトBT1の挿通孔を有しており、ボルト締結により枠体24を支持部材に固定するために用いられる。
【0058】
蓋部材22は、平面視形状が枠体24の平面視形状と同様の形状であり、平面視での大きさが枠体24の平面視での大きさよりも僅かに小さな矩形形状の板状部材である。蓋部材22は、枠体24と同様に、放熱効率を高めるために熱伝導率が高い銅(Cu)等の金属で形成されている。蓋部材22の外周部が、枠体24の切り欠き24aに嵌められると、半導体レーザ装置1の各種光学部品は、筐体本体21と蓋部材22とによって仕切られる空間に収容される。
【0059】
一対のコネクタ23は、半導体レーザ装置1に設けられた複数の半導体レーザ素子11に対して駆動電流を供給するものである。前述の通り、複数の半導体レーザ素子11は直列接続されている。このため、一対のコネクタ23の一方は、外部から供給される駆動電流を筐体本体21の内部に供給するコネクタであり、他方は、直列接続された半導体レーザ素子11を流れた駆動電流を、外部に導くコネクタである。
【0060】
このような構成の光モジュールM1は、例えば、図7に示す通り、ボルトBT1によって冷却板CP等の冷却機構にボルト締結された状態で用いられる。一対のコネクタ23を介して半導体レーザ素子11に駆動電流が供給されると、半導体レーザ素子11からはレーザ光が射出され、半導体レーザ素子11は発熱する。半導体レーザ素子11から発せられた熱は、筐体本体21(マウント10及び枠体24)を介して冷却板CPに伝わる。このようにして半導体レーザ素子11の放熱が行われる。
【0061】
〈第2構成例〉
図8は、光モジュールの第2構成例を示す斜視図であり、図9は、同光モジュールの平面透視図である。第2構成例に係る光モジュールM2は、前述した第1実施形態による半導体レーザ装置1を筐体に収容して水冷可能なようにモジュール化したものである。尚、光モジュールM2は、前述した第2実施形態による半導体レーザ装置2を筐体に収容して水冷可能なようにモジュール化したものであっても良い。
【0062】
光モジュールM2は、筐体本体31、第1蓋部材(図示省略)、第2蓋部材32、及び一対のコネクタ33を備える概ね直方体形状のモジュールである。筐体本体31は、半導体レーザ装置1のマウント10と、マウント10と一体となってマウント10の外周を囲う枠体34とからなる。筐体本体31の一部をなすマウント10の第2面10b側(図1図3参照)には、図9に示す通り、冷却媒体(例えば、温調された冷却水)を循環させるための流路WP1が形成されている。この流路WP1は、複数回折れ曲がって延在し、一方の端部に入口E1を有するとともに他方の端部に出口E2を有する流路である。
【0063】
筐体本体31の一部をなす枠体34は、放熱効率を高めるために熱伝導率が高い銅(Cu)等の金属で形成されている。尚、枠体34の表面には、ハンダの濡れ性をよくするために、金メッキが施されているのが望ましい。枠体34は、第1蓋部材(図7に示す蓋部材22と同様の部材)が配置される側(+Y側)の端部において、内周面側に全周に亘って切り欠き34aを有する。この切り欠き34aに第1蓋部材の外周部が嵌められる。
【0064】
また、枠体34には、光ファイバFBを筐体本体31の内側から筐体本体31の外側に導出するための貫通孔、一対のコネクタ33を筐体本体31の内側から筐体本体31の外側に導出するための貫通孔が形成されている。加えて、枠体34には、流路WP1の入口E1に取り付けられる継手35を配置するための貫通孔、流路WP1の出口E2に取り付けられる継手36を配置するための貫通孔が形成されている。
【0065】
第2蓋部材32は、例えば、枠体34と同様の金属で形成された三角柱状体である。この第2蓋部材32は、マウント10の第2面10b側に形成された流路WP1を覆った状態で、筐体本体31に形成される凹部31aに嵌め込まれて筐体本体31にリン銅ロウ、銀ロウ等の接着剤等により固定される。流路WP1が第2蓋部材32で覆われることにより、流路WP1からの冷却媒体の漏洩が抑制される。
【0066】
一対のコネクタ33は、半導体レーザ装置1に設けられた複数の半導体レーザ素子11に対して駆動電流を供給するものである。前述の通り、複数の半導体レーザ素子11は直列接続されている。このため、一対のコネクタ33の一方は、外部から供給される駆動電流を筐体本体31の内部に供給するコネクタであり、他方は、直列接続された半導体レーザ素子11を流れた駆動電流を,外部に導くコネクタである。
【0067】
このような構成の光モジュールM2は、例えば、冷却媒体が継手35を介して流路WP1の入口E1に供給されつつ、流路WP1を循環した冷却媒体が出口E2から継手36を介して外部に排出される状態で用いられる。一対のコネクタ33を介して半導体レーザ素子11に駆動電流が供給されると、半導体レーザ素子11からはレーザ光が射出され、半導体レーザ素子11は発熱する。半導体レーザ素子11から発せられた熱は、マウント10を介して冷却媒体に伝わる。このようにして半導体レーザ素子11の放熱が行われる。
【0068】
図10は、図8図9に示す光モジュールを複数備える光モジュールユニットを示す斜視図である。尚、図10では、一部を断面図として図示している。図10に示す光モジュールユニットMUは、複数(図10に示す例では、12個)の光モジュールM2と、マニホールド40とを備える。複数の光モジュールM2は、互いに隣り合うものが互いに離間するように、高さ方向(Y方向)に並列されている。光モジュールM2の各々は、ボルトBT2によってマニホールド40に固定されている。
【0069】
図10に示す通り、マニホールド40は、冷却媒体が流通する第1流路41と第2流路42とが内部に形成された略直方体形状の部材である。第1流路41は、光モジュールM2の流路WP1に供給される冷却媒体が流通する流路である。第2流路42は、光モジュールM2の流路WP1を流通した後の冷却媒体が流通する流路である。
【0070】
第1流路41は、Y方向に延びる直線状の流路である。第1流路41の長手方向の中央部の側面には貫通孔が形成されており、この貫通孔に継手51が取り付けられている。継手51は筒状に形成されており、継手51を介して外部から冷却媒体が第1流路41へ流入する。また、第1流路41の継手51が設けられる側とは反対側の側面には、複数の貫通孔43が形成されている。光モジュールM2の各々に取り付けられた継手35がそれぞれの貫通孔43に挿入されることによって、第1流路41と光モジュールM2の流路WP1の入口E1とが接続される。即ち、光モジュールM2の各々が有する流路WP1は、第1流路41によって並列に接続される。
【0071】
第2流路42は、第1流路41と平行して形成されたY方向に延びる直線状の流路である。第2流路42の長手方向の中央部の側面には貫通孔が形成されており、この貫通孔に継手52が取り付けられている。継手52は筒状に形成されており、継手52を介して冷却媒体が第2流路42から外部へ流出する。また、第2流路42の継手52が設けられる側とは反対側の側面には、複数の貫通孔44形成されている。光モジュールM2の各々に取り付けられた継手36がそれぞれの貫通孔44に挿入されることによって、第2流路42と光モジュールM2の流路WP1の出口E2とが接続される。即ち、光モジュールM2の各々が有する流路WP1は、第2流路42によって並列に接続される。
【0072】
このような構成の光モジュールユニットMUでは、例えば、外部から供給される冷却媒体が継手51を介してマニホールド40の第1流路41に流入する。第1流路41に流入した冷却媒体は、第1流路41に形成された複数の貫通孔43に挿入された継手35を介して、各光モジュールM2の流路WP1の入口E1に供給される。入口E1に供給された冷却媒体は、各光モジュールM2の流路WP1を循環して出口E2から排出される。出口E2から排出された冷却媒体は、マニホールド40の第2流路42に形成された複数の貫通孔44に挿入された継手36を介して第2流路42に流入する。第2流路42に流入した冷却媒体は、継手52を介して外部に流出する。
【0073】
光モジュールユニットMUは、上述の通り、冷却媒体が、各光モジュールM2の流路WP1を循環している状態で用いられる。光モジュールユニットMUに設けられた各光モジュールM2に設けられた一対のコネクタ33を介して半導体レーザ素子11に駆動電流が供給されると、半導体レーザ素子11からはレーザ光が射出され、半導体レーザ素子11は発熱する。半導体レーザ素子11から発せられた熱は、マウント10を介して冷却媒体に伝わる。このようにして、各光モジュールM2において半導体レーザ素子11の放熱が行われる。
【0074】
〔レーザ装置〕
〈第1実施形態〉
図11は、本発明の第1実施形態によるレーザ装置の要部構成を示す図である。図11に示す通り、本実施形態のレーザ装置60は、励起光源61、コンバイナ62、共振器用ファイバ63、増幅用ファイバ64、共振器用ファイバ65、デリバリファイバ66、及び出力端67を備える。このようなレーザ装置60は、いわゆる前方励起型のファイバレーザ装置である。
【0075】
ここで、共振器用ファイバ63、増幅用ファイバ64、及び共振器用ファイバ65は、共振器Rを構成している。共振器Rは、励起光源61が出力する励起光によってレーザ光である信号光を生成する。尚、本明細書では、増幅用ファイバ64から見て、励起光源61側を「前方」といい、出力端67側を「後方」という場合がある。
【0076】
また、図11では、各種ファイバの融着接続部を×印で示している。この融着接続部は、実際には、補強部(図示省略)の内部に配置されて保護される。補強部は、例えば、光ファイバを収容可能な溝が形成されたファイバ収容体と、融着接続部がファイバ収容体の溝に収容された状態で各種ファイバをファイバ収容体に固定する樹脂とを備えるものである。尚、図11以外の図においても、各種ファイバの融着接続部を×印で示している。
【0077】
励起光源61は、複数の光モジュールユニットMUを備えており、励起光(前方励起光)を出力する。光モジュールユニットMUは、例えば、図10に示すものを用いることができる。励起光源61に設けられる光モジュールユニットMUの数は、レーザ装置60の出力端67から出力されるレーザ光のパワーに応じて任意の数とすることができる。コンバイナ62は、励起光源61に設けられた光モジュールユニットMUの各々が出力した励起光を、共振器Rの前方の端部(共振器用ファイバ63の前方の端部)に結合させる。
【0078】
共振器用ファイバ63の前方の端部は、コンバイナ62に融着接続されており、共振器用ファイバ63の後方の端部は、増幅用ファイバ64の前方の端部に融着接続されている。共振器用ファイバ63のコア内には、HR-FBG(High Reflectivity-Fiber Bragg Grating)63aが形成されている。HR-FBG63aは、励起状態にされた増幅用ファイバ64の活性元素が放出する光のうち、信号光の波長の光をほぼ100%の反射率で反射するように調整されている。HR-FBG63aは、その長手方向に沿って一定の周期で高屈折率の部分が繰り返される構造となっている。
【0079】
増幅用ファイバ64は、1種類又は2種類以上の活性元素が添加されたコアと、コアを覆う第1クラッドと、第1クラッドを覆う第2クラッドと、第2クラッドを覆う保護被覆とを有する。つまり、増幅用ファイバ64は、ダブルクラッドファイバである。コアに添加される活性元素としては、例えばエルビウム(Er)、イッテルビウム(Yb)、或いはネオジム(Nd)等の希土類元素が使用される。これらの活性元素は、励起状態で光を放出する。
【0080】
コア及び第1クラッドとしてはシリカガラス等を用いることができる。第2クラッドとしては、ポリマー等の樹脂を用いることができる。保護被覆としては、アクリル樹脂やシリコーン樹脂等の樹脂材料を用いることができる。増幅用ファイバ64は、シングルモードファイバである。尚、増幅用ファイバ64として、マルチモードファイバやフューモードファイバを用いることもできる。フューモードファイバが伝播するモードの数は、例えば、2以上25以下である。
【0081】
共振器用ファイバ65の前方の端部は、増幅用ファイバ64の後方の端部に融着接続されており、共振器用ファイバ65の後方の端部は、デリバリファイバ66の前方の端部に融着接続されている。共振器用ファイバ65のコア内には、OC-FBG(Output Coupler-Fiber Bragg Grating)65aが形成されている。OC-FBG65aは、HR-FBG63aとほぼ同様の構造を有しているが、HR-FBG63aよりも低い反射率で、光を反射するように調整されている。例えば、OC-FBG65aは、信号光の波長の光に対する反射率が10~20%程度となるように調整されている。
【0082】
増幅用ファイバ64内では、HR-FBG63a及びOC-FBG65aで反射した信号光が、増幅用ファイバ64の長手方向で往復する。信号光は、この往復に伴って増幅されてレーザ光となる。このように、共振器R内では、光が増幅されて信号光(レーザ光)が生成される。
【0083】
デリバリファイバ66は、共振器R内で生成されたレーザ光を伝送する。デリバリファイバ66は、コアと、コアを囲うクラッドと、クラッドを覆う被覆と備える。デリバリファイバ66としては、例えば、シングルモードファイバを用いることができる。尚、デリバリファイバ66は、例えば、マルチモードファイバであっても、フューモードファイバであっても良い。
【0084】
出力端67は、デリバリファイバ66の後方の端部に接続されており、デリバリファイバ66によって伝送されてきたレーザ光を射出する。出力端67は、デリバリファイバ66によって伝送されてきたレーザ光を透過する柱状体(光透過柱状部材)を備える。この部材は、いわゆるエンドキャップと呼ばれる。
【0085】
本実施形態のレーザ装置60は、例えば、図10に示す光モジュールユニットMUを複数備える。各々の光モジュールユニットMUは、例えば、高さ方向の寸法を小さくしつつ高出力化が可能な第1実施形態の半導体レーザ装置1をモジュール化した光モジュールM2を複数備えている。このため、本実施形態のレーザ装置60では、励起光源61を小型化しつつ高出力化が可能である。
【0086】
〈第2実施形態〉
図12は、本発明の第2実施形態によるレーザ装置の要部構成を示す図である。図12に示す通り、本実施形態のレーザ装置70は、レーザ光源71、コンバイナ72、デリバリファイバ73、及び出力端74を備える。
【0087】
レーザ光源71は、複数の光モジュールユニットMUを備えており、レーザ光を出力する。光モジュールユニットMUは、例えば、図10に示すものを用いることができる。レーザ光源71に設けられる光モジュールユニットMUの数は、レーザ装置70の出力端74から出力されるレーザ光のパワーに応じて任意の数とすることができる。コンバイナ72は、レーザ光源71に設けられた光モジュールユニットMUの各々が出力したレーザ光を、デリバリファイバ73に結合させる。
【0088】
デリバリファイバ73は、コンバイナ72で結合されたレーザ光を伝送する。デリバリファイバ73は、コアと、コアを囲うクラッドと、クラッドを覆う被覆と備える。デリバリファイバ73としては、例えば、シングルモードファイバを用いることができる。尚、デリバリファイバ73は、例えば、マルチモードファイバであっても、フューモードファイバであっても良い。出力端74は、デリバリファイバ73の後方の端部に接続されており、デリバリファイバ73によって伝送されてきたレーザ光を射出する。
【0089】
本実施形態のレーザ装置70は、例えば、図10に示す光モジュールユニットMUを複数備える。各々の光モジュールユニットMUは、例えば、高さ方向の寸法を小さくしつつ高出力化が可能な第1実施形態の半導体レーザ装置1をモジュール化した光モジュールM2を複数備えている。このため、本実施形態のレーザ装置70では、レーザ光源71を小型化しつつ高出力化が可能である。
【0090】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に制限されることなく、本発明の範囲内で自由に変更が可能である。例えば、上記実施形態では、マウント10に6段の段部STが形成されている例について説明した。しかしながら、マウント10に形成される段部STは、6段より少なくても良く、6段より多くても良い。
【0091】
また、上記実施形態では、マウント10に設けられた段部STの各々に半導体レーザ素子11が2つずつ搭載されている例について説明した。しかしながら、マウント10に設けられた段部STの各々には、3つ以上の半導体レーザ素子11が搭載されていても良い。尚、マウント10の段部STの各々に3つ以上の半導体レーザ素子11が搭載されている場合であっても、各々の半導体レーザ素子11から射出されたレーザ光は、合成光学系14で1つに合成されることになる。
【0092】
また、上述した実施形態では、合成光学系14が、コリメート光学系12(コリメートミラー12b)によって反射されたレーザ光と、コリメート光学系13(反射ミラー13c)によって反射されたレーザ光とを偏波合成する例について説明した。しかしながら、合成光学系14が行うレーザ光の合成方法は、偏波合成に制限される訳ではなく、波長合成等の他の合成方法を用いることができる。
【0093】
また、上述した第1実施形態では、半導体レーザ装置1に設けられたコリメートミラー12bで+X方向に向けて反射されたレーザ光の偏光方向を1/2波長板14aによって変え、反射ミラー13cで+X方向に向けて反射されたレーザ光と合成する例について説明した。しかしながら、これとは逆に、半導体レーザ装置1に設けられた反射ミラー13cで+X方向に向けて反射されたレーザ光の偏光方向を1/2波長板14aによって変え、コリメートミラー12bで+X方向に向けて反射されたレーザ光と合成するようにしても良い。
【0094】
同様に、上述した第2実施形態では、半導体レーザ装置2に設けられたコリメートミラー12bで+X方向に向けて反射されたレーザ光の偏光方向を1/2波長板14aによって変え、コリメートミラー13dで+X方向に向けて反射されたレーザ光と合成する例について説明した。しかしながら、これとは逆に、半導体レーザ装置2に設けられたコリメートミラー13dで+X方向に向けて反射されたレーザ光の偏光方向を1/2波長板14aによって変え、コリメートミラー12bで+X方向に向けて反射されたレーザ光と合成するようにしても良い。
【0095】
また、図11に示すレーザ装置60及び図12に示すレーザ装置70は、1つの出力端67,74を有するものであったが、出力端67,74の先にさらに光ファイバ等を接続してもよい。また、出力端67,74の先にビームコンバイナを接続し、複数のレーザ装置からのレーザ光を束ねるように構成されていてもよい。
【0096】
また、レーザ装置は、MOPA(Master Oscillator Power Amplifier)方式のファイバレーザ装置であっても良い。更に、レーザ装置は、半導体レーザ(DDL:Direct Diode Laser)やディスクレーザのように、共振器が光ファイバ以外で構成され、共振器から射出されるレーザ光を光ファイバに集光するレーザ装置であっても良い。
【符号の説明】
【0097】
1,2…半導体レーザ装置、10…マウント、11…半導体レーザ素子、12…コリメート光学系、12a…コリメートレンズ、12b…コリメートミラー、13…コリメート光学系、13a,13b…コリメートレンズ、13c…反射ミラー、13d…コリメートミラー、14…合成光学系、14a…1/2波長板、14b…反射ミラー、14c…偏光ビームスプリッタ、15…集光光学系、60…レーザ装置、62…コンバイナ、64…増幅用ファイバ、67…出力端、70…レーザ装置、72…コンバイナ、74…出力端、ST…段部
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