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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-14
(45)【発行日】2024-06-24
(54)【発明の名称】半導体製造装置及び半導体製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20240617BHJP
   B24B 37/013 20120101ALI20240617BHJP
   B24B 49/10 20060101ALI20240617BHJP
【FI】
H01L21/304 622S
B24B37/013
B24B49/10
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020138861
(22)【出願日】2020-08-19
(65)【公開番号】P2022034918
(43)【公開日】2022-03-04
【審査請求日】2023-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119035
【弁理士】
【氏名又は名称】池上 徹真
(74)【代理人】
【識別番号】100141036
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 章
(74)【代理人】
【識別番号】100178984
【弁理士】
【氏名又は名称】高下 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】三木 勉
【審査官】境 周一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-163100(JP,A)
【文献】特開2019-048344(JP,A)
【文献】特表2018-508123(JP,A)
【文献】特開平06-045299(JP,A)
【文献】特開2001-015467(JP,A)
【文献】特開2008-277450(JP,A)
【文献】特表2015-519740(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0263512(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0076985(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0256978(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0288572(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B24B 37/013
B24B 49/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェハに形成された膜の、第1研磨音の測定を行う音測定部と、
前記膜の、理論上の研磨終点に対応する第1時間を含む所定時間帯の以前の第2時間と、前記第2時間より前の第3時間と、の間に測定された前記第1研磨音の第1音圧予測値を得るための第1回帰モデルの作成を行う回帰モデル作成部と、
前記第1回帰モデルを用いて、前記所定時間帯における前記第1音圧予測値の第1計算を行う音圧予測値計算部と、
前記第1研磨音の第1音圧実測値と前記第1音圧予測値の差分である第1残差の第2計算を行う残差計算部と、
前記第1残差を用いて前記膜の研磨終点の判定を行う終点判定部と、
を備える半導体製造装置。
【請求項2】
前記回帰モデル作成部は、研磨される前記ウェハ毎に前記第1回帰モデルの作成を行う請求項1記載の半導体製造装置。
【請求項3】
前記音圧予測値計算部は、前記音測定部が前記測定を行う度に前記第1計算を行い、
前記残差計算部は、前記音圧予測値計算部が前記第1計算を行う度に前記第1残差の前記第2計算を行い、
前記終点判定部は、前記残差計算部が前記第1残差の前記第2計算を行う度に前記判定を行う、
請求項1又は請求項2記載の半導体製造装置。
【請求項4】
前記回帰モデル作成部は、前記ウェハに形成された前記膜の、前記理論上の前記研磨終点に対応する前記第1時間を含む前記所定時間帯の以前の前記第2時間と、前記第2時間より前の前記第3時間と、の間に測定された前記第1研磨音の第2音圧予測値を得るための第2回帰モデルの作成をさらに行い、
前記音圧予測値計算部は、前記第2回帰モデルを用いて、前記所定時間帯における前記第2音圧予測値の第3計算を行い、
前記残差計算部は、前記第1研磨音の第1音圧実測値と前記第2音圧予測値の差分である第2残差の第4計算を行い、
前記終点判定部は、前記第1残差及び前記第2残差を用いて、前記膜の研磨終点の判定を行う、
請求項1乃至請求項3いずれか一項記載の半導体製造装置。
【請求項5】
前記回帰モデル作成部は、前記第2時間と前記第3時間の間の第4時間と、前記第3時間と、の間に測定された前記第1研磨音を用いて前記第1回帰モデルの作成を行い、
(第4時間-第3時間)/(第2時間-第3時間)≦0.5である、
請求項1乃至請求項4いずれか一項記載の半導体製造装置。
【請求項6】
ウェハに形成された膜の第1研磨音の測定を行い、
前記膜の、理論上の研磨終点に対応する第1時間を含む所定時間帯の以前の第2時間と、前記第2時間より前の第3時間と、の間に測定された前記第1研磨音の第1音圧予測値を得るための第1回帰モデルの作成を行い、
前記第1回帰モデルを用いて、前記所定時間帯における前記第1音圧予測値の第1計算を行い、
前記第1研磨音の第1音圧実測値と前記第1音圧予測値の差分である第1残差の第2計算を行い、
前記第1残差を用いて前記膜の研磨終点の判定を行う、
半導体製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体製造装置及び半導体製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ウェハの表面を研磨する場合には、所定の方法で膜の研磨終点を検知する。半導体製造工程において、研磨に要求される精度は、ますます高いものになりつつある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-163100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
実施形態の目的は、研磨終点を精度良く判定可能な半導体製造装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の半導体製造装置は、ウェハに形成された膜の、第1研磨音の測定を行う音測定部と、膜の、理論上の研磨終点に対応する第1時間を含む所定時間帯の以前の第2時間と、第2時間より前の第3時間と、の間に測定された第1研磨音の第1音圧予測値を得るための第1回帰モデルの作成を行う回帰モデル作成部と、第1回帰モデルを用いて、所定時間帯における第1音圧予測値の第1計算を行う音圧予測値計算部と、第1研磨音の第1音圧実測値と第1音圧予測値の差分である第1残差の第2計算を行う残差計算部と、第1残差を用いて膜の研磨終点の判定を行う終点判定部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】実施形態の半導体製造装置の要部の模式図である。
図2】膜の研磨終点の一例を説明するための模式図である。
図3】実施形態の半導体製造方法のフローチャートである。
図4】実施形態の半導体製造装置において用いられる回帰モデルを説明する模式図である。
図5】実施形態の半導体製造装置において行われる終点検出を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を用いて実施形態を説明する。なお、図面中、同一又は類似の箇所には、同一又は類似の符号を付している。
【0008】
(実施形態)
実施形態の半導体製造装置は、ウェハに形成された膜の第1研磨音の測定を行う音測定部と、第1研磨音の第1音圧予測値を得るための第1回帰モデルの作成を行う音圧予測回帰モデル作成部と、第1回帰モデルを用いて第1音圧予測値の第1計算を行う音圧予測値計算部と、第1研磨音の第1音圧実測値と第1音圧予測値の差分である第1残差の第2計算を行う残差計算部と、第1残差を用いて膜の研磨終点の判定を行う終点判定部と、を備える。
【0009】
実施形態の半導体製造方法は、ウェハに形成された膜の第1研磨音の第1音圧予測値を得るための第1回帰モデルの作成を行い、前記第1回帰モデルを用いて前記第1音圧予測値の第1計算を行い、前記第1研磨音の測定を行い、前記第1研磨音の第1音圧実測値と前記第1音圧予測値の差分である第1残差の第2計算を行い、前記第1残差を用いて前記膜の研磨終点の判定を行う。
【0010】
図1は、実施形態の半導体製造装置100の要部の模式図である。図2は、膜の研磨終点の一例を説明するための模式図である。
【0011】
半導体製造装置100は、トップリング2と、研磨パッド4と、ターンテーブル6と、音測定部8と、スラリー供給ノズル10と、制御装置50と、装置管理システム61と、マスタ情報登録データベース(記憶部)62と、を備える。
【0012】
制御装置50は、音響データ収集部51と、音圧実測値計算部52と、音圧予測回帰モデル作成部53と、音圧予測値計算部54と、残差計算部55と、終点判定部56と、装置制御信号送信部57と、処理条件情報受信部59と、を有する。
【0013】
実施形態の半導体製造装置100は、例えば、ウェハWに形成された膜Mを化学的機械的に研磨するCMP(Chemical Mechanical Polishing)装置及びかかるCMP装置を制御するシステムを含む装置である。なお、実施形態の半導体製造装置100においては、CMP装置が複数配置されていてもかまわない。
【0014】
ウェハWは、例えば、半導体基板である。より具体的には、ウェハWは、例えば、Si(シリコン)基板である。ウェハWの表面には、膜Mが形成されている。例えば、膜Mは、図2に示したように、膜Mと膜Mを有する。膜Mは、例えばSiN(窒化シリコン膜)である。膜Mは、例えばTEOS(Tetraethyl orthosilicate:オルトケイ酸テトラエチル)膜である。
【0015】
例えば、半導体製造装置(CMP装置)100は、CMP加工により、膜Mを除去し、膜Mを露出させる。この場合、例えば、膜Mは研磨対象膜として機能し、膜Mはストッパ膜として機能する。理想的には、半導体製造装置(CMP装置)100は、膜Mの除去が完了したときにCMP加工を終了することが好ましい。すなわち、研磨対象膜としての膜Mとストッパ膜としての膜Mの界面が、研磨終点となることが好ましい。実施形態の半導体製造装置100及び半導体製造方法は、例えば、このような研磨終点の判定に用いられるものである。
【0016】
なお、実施形態の半導体製造装置100及び半導体製造方法が適用される膜Mの構成は、上記のものに限定されるものではない。例えば、膜Mと膜Mを構成する物質は、上記のものに限定されない。また、図2では、膜Mの方が膜Mよりも厚いものとして図示されているが、実際の寸法はこれに限定されない。さらに、図2では、ウェハWと膜Mと膜Mがそれぞれ平面的な形状であるものとして図示されているが、実際の形状はこれに限定されない。例えば、ウェハWと膜Mとの界面、及び、膜Mと膜Mとの界面が、平坦ではなく、凹凸を持つように構成されていてもよい。また、膜MとウェハWの間に図示しない別の膜が設けられていてもかまわない。
【0017】
ターンテーブル6は、例えばターンテーブル6に内蔵されたモータ等により、例えば水平面内において回転可能なテーブルである。
【0018】
研磨パッド4は、ターンテーブル6の上に設けられている。研磨パッド4は、膜Mを研磨するために用いられる。研磨パッド4は、例えばポリウレタン製のパッドである。しかし、研磨パッド4の材質は、これに限定されるものではない。
【0019】
トップリング2は、研磨パッド4の上方に設けられる。例えば、トップリング2の下面に、ウェハWが保持される。トップリング2は、例えばトップリング2に内蔵されたモータ等により、水平面内において回転することが可能である。そのため、トップリング2は、ウェハWを、膜Mが下方を向いた状態で保持しつつ、水平面内に回転させることが可能である。
【0020】
音測定部8は、例えば研磨パッド4とトップリング2に保持されたウェハWとの接触面の近傍に配置されている。音測定部8は、研磨(CMP加工)がおこなわれる期間中に生じる研磨音を測定する。図1においては、研磨音をNで示している。音測定部8は、例えばマイクロフォンである。音測定部8は、例えば、10Hz以上かつ20kHz未満の周波数帯域の音を測定可能である。しかし、音測定部8が測定可能な音の周波数の範囲は、上記のものに限定されるものではない。音測定部8は、例えば、10Hzより下の周波数帯域の音、および/または、20kHz以上の周波数帯域の音を測定可能に構成されていてもよい。
【0021】
スラリー供給ノズル10は、研磨パッド4の上に設けられている。スラリー供給ノズル10は、研磨に用いられるスラリーSを、研磨パッド4に供給する。
【0022】
制御装置50、音響データ収集部51、音圧実測値計算部52、音圧予測回帰モデル作成部53、音圧予測値計算部54、残差計算部55、終点判定部56、装置制御信号送信部57、処理条件情報受信部59、及び装置管理システム61は、例えば、それぞれが電子回路として構成されてもよいし、コンピュータ等のハードウェアとプログラム等のソフトウェアとを組み合わせることで構成されてもよい。
【0023】
マスタ情報登録データベース62は、例えば、記憶デバイスである。ここで、記憶デバイスは、例えば、半導体メモリ、又は、ハードディスクである。なお、マスタ情報登録データベース62は、1つの記憶デバイスを含んでいてもかまわないし、複数の記憶デバイスを含んでいてもかまわない。また、マスタ情報登録データベース62は、例えば、ネットワーク上のサーバであってもよい。この場合、制御装置50は、有線接続または無線接続により、ネットワークを介して、サーバとしてのマスタ情報登録データベース62に保存されているデータにアクセスする。
【0024】
図3は、実施形態の半導体製造方法のフローチャートである。
【0025】
まず、ターンテーブル6の上に設けられた研磨パッド4に、スラリー供給ノズル10からスラリーSを供給する。次に、ターンテーブル6を回転し、ウェハWを保持したトップリング2を回転する。次に、ターンテーブル6と研磨パッド4を接近させると、ウェハWと研磨パッド4が接触する。これにより、ウェハWの表面に形成された膜Mの研磨が開始される。
【0026】
次に、音測定部8は、膜Mの研磨が行われる期間中に生じる研磨音を測定する。測定された研磨音は、音響データ収集部51により収集され(S10)、その後に音圧実測値計算部52に送られる。音圧実測値計算部52は、例えばFFT(Fast Fourier Transform)等のフーリエ変換を用いることにより、周波数分析を行う(S14)。これにより、音圧実測値計算部52は、音響データ収集部51により収集された研磨音の、周波数毎の音圧実測値を算出する。ここで、「音圧」とは、周波数毎の成分の大きさ又はレベル(音圧レベル)のことである。この、周波数毎の音圧実測値の算出を、膜Mの研磨を進めると共に行う。時間が経過するに伴い膜Mの研磨が進行するため、膜Mの研磨進行に伴う、周波数毎の音圧実測値の時間変化が測定される(S18)。なお、測定された周波数毎の音圧実測値は、例えば、マスタ情報登録データベース62に保存されてもかまわないし、図1において図示しない他の記憶装置に保存されていてもかまわない。
【0027】
次に、音圧予測回帰モデル作成部53は、膜Mの研磨進行に伴う周波数毎の音圧実測値の時間変化から、研磨終点の判定に用いる特徴周波数帯を選定する(S22)。特徴周波数帯は、例えば、膜Mと膜Mを構成する物質、膜Mと膜Mの寸法、および膜Mと膜Mに基づいて選定される。ただし、特徴周波数帯は、上記のファクターに限られず、種々のファクターを考慮して選定してよい。また、特徴周波数帯の選定は、制御装置50(音圧予測回帰モデル作成部53)によって自動的に行われてもかまわないし、オペレータによって行われてもかまわない。
【0028】
次に、音圧予測回帰モデル作成部53は、半導体製造装置100が設置された環境等に応じて生じるノイズに伴う音圧を除去し、例えば移動平均等による平滑化処理を行い、フィルタリング処理を行いSN比を向上させた上で、(S26、S30)、選定された特徴周波数帯における音圧の時間変化の波形を取得する(S34)。なおこれらの処理は、例えば、音圧実測値計算部52により行われる。
【0029】
次に、音圧予測回帰モデル作成部53は、回帰分析(regression analysis)を行い、膜Mの研磨音の音圧予測値を得るための回帰モデルの作成を行う(S38)。
【0030】
図4は、実施形態の半導体製造装置100において用いられる回帰モデルを説明する模式図である。回帰モデルとしては、例えば、図4(a)に示したような、多項式を用いた回帰モデル、ロジスティック曲線を用いた回帰モデル、ゴンペルツ曲線を用いた回帰モデル、指数関数を用いた回帰モデル等が挙げられる。上記の回帰モデルは、例えばマスタ情報登録データベース62に記憶されている。なお、実施形態の半導体製造装置において用いることができる回帰モデルは、勿論上記の回帰モデルに限定されるものではない。
【0031】
音圧予測回帰モデル作成部53は、例えば、音圧実測値計算部52によって計算された音圧実測値に対して、マスタ情報登録データベース62に記憶された回帰モデルのうち少なくとも1つを用いて、回帰分析を行う。音圧予測回帰モデル作成部53は、例えば、用いられた回帰モデルにおいて、計算された音圧データを予測する上で好ましい係数を決定する。
【0032】
次に、音圧予測値計算部54は、上記の回帰モデル及び決定された係数を用いて、音圧予測値の計算を行う(S42)。研磨時間の経過に対する、音圧予測値の一例及び音圧実測値の一例を、図4(b)に示す。また、音圧実測値の一例を縦軸にプロットし、それぞれの音圧実測値に対応する音圧予測値の一例を横軸にプロットしたグラフを、図4(c)に示す。図4(c)において引かれた直線は、音圧実測値と音圧予測値が等しいと仮定された場合の直線である。この直線で、多くの音圧実測値が良好にフィッティングできた場合には、その回帰モデルでうまく音圧が予測できていると考えることが出来る。
【0033】
次に、残差計算部55は、音圧実測値と音圧実測値の差分である、残差を計算する(S46)。
【0034】
次に、終点判定部56は、残差計算部55によって計算された残差を用いて、膜Mの研磨終点の判定を行う。
【0035】
研磨終点に達していると判断されれば、例えば制御装置50は、研磨処理を停止する。そして、音響データ収集を終了する。一方、研磨終点に達していないと判断されれば、さらに半導体製造装置100は、研磨終点に達していると判断されるまで、膜Mの研磨を継続する。
【0036】
上述の操作は、例えば、制御装置50(装置制御信号送信部57)によって自動的に制御されてもかまわないし、オペレータによって制御されてもかまわない。また、研磨の品種工程の情報は、例えば装置管理システム61から処理条件情報受信部59に送信され、制御装置50内において適宜用いられる。
【0037】
なお、膜Mの研磨終点に達したと判断された後、次のウェハに形成された膜Mの研磨を行う場合には(実質的に同じ条件でCMP加工をする場合には)、すでに用いられた回帰モデル及び決定された係数を用いてもかまわない。しかし、あらためて音測定部8により研磨音を測定した上で、回帰モデルの選択をして、係数を再度決定してもよい。すなわち、音圧予測回帰モデル作成部53は、研磨されるウェハ毎に(CMP加工毎に)回帰モデルの作成を行ってもよい。ここで、ウェハ毎に作成される回帰モデルとしては、ウェハ毎に異なった回帰モデルを用いてもかまわない。また、同じ回帰モデル(例えばゴンペルツ曲線をつかった回帰モデル)で、係数が異なるものであってもかまわない。
【0038】
図5は、実施形態の半導体製造方法を説明する模式図である。図5(a)は、比較形態としての半導体製造方法における膜の研磨終点の判定を行う方法を説明する模式図である。図5(a)には、縦軸に音圧実測値、横軸に対応する研磨時間をとったグラフを示している。
【0039】
図5(a)に示したグラフにおいては、音圧実測値は時間t付近から、研磨時間の経過と共にほぼ単調に増加している。時間t付近から、音圧実測値は研磨時間の経過と共に減少する。そして、時間t付近で音圧実測値は極小値(local minimum)をとる。時間t付近から、音圧実測値は時間t付近まで、研磨時間経過と共に増加する。
【0040】
時間tは、例えば、研磨開始直後の音圧実測値を処理から除外するために設定される、時間である。なお、時間tは、設定されていなくてもかまわない。
【0041】
時間tは、例えば、研磨対象となる膜Mの膜厚と、半導体製造装置100で設定される研磨のレートから計算される、膜Mと膜Mとの膜界面に対応する時間であり、理論上の研磨終点である。これに対して、膜Mと膜Mの物質、寸法、凹凸形状等に起因する研磨進行度のばらつきを考慮するために、膜界面を含んだ領域(所定領域)に対応する時間帯(所定時間帯)を定義する。時間tは、所定時間帯における時間経過的に早い側の時間であり、時間tは、所定時間帯における時間経過的に遅い側の時間である。
【0042】
例えば、時間tと時間tの間は、膜Mの研磨が進むことにより、膜Mと膜Mの両方が表面にあらわれていると考えることが可能である。ここで、一般に膜Mと膜Mの界面は、必ずしも厳密に平らに形成されているとは限らない。この場合、例えば、研磨が進んで膜Mと膜Mの界面に近づいていくと、膜Mが残っている部分と、膜Mが表面に露出した部分の両方があらわれる。そして、膜Mが残っている部分は削られていき、やがて研磨の対象となっている面の全てが膜Mになる。あるいは、膜Mの研磨中であっても、膜Mと膜Mを構成する物質によっては、そのときの音圧実測値が、膜Mが存在することによる影響を受ける場合がある。従って、時間tと時間tの間に得られる音圧実測値は、膜Mの研磨に由来する成分と、膜Mの研磨に由来する成分とを含んでいると考えることができる。
【0043】
違う言い方をすれば、時間tと時間tの間に得られる音圧実測値においては、膜Mの研磨に由来する成分が支配的だと考えられるのに対して、時間tと時間tの間に得られる音圧実測値においては、膜Mの研磨に由来する成分と膜Mの研磨に由来する成分とが混在していると考えられる。比較形態では、図5(a)に示すように、時間tと時間tの間の音圧実測値の変化分に基づいて研磨終点の判定を行う。しかし、図5(a)に示されるように、時間tと時間tの間の音圧実測値の変化分は比較的小さい。この場合、例えば、ノイズの影響を受けやすい。また、たとえ同じ膜構成を有していても、音圧の実測値の変化量にはバラつきが生じる。そのため、研磨終点の判定が困難な場合が発生し得る。
【0044】
なお、どの程度膜Mが残った状態で研磨終点と判定するかは、ウェハの種類や研磨の目的により異なることになる。例えば、膜Mを完全に除去するのではなく、膜Mが少し残った状態で研磨終点と判定することもありえる。
【0045】
図5(b)は、実施形態の半導体製造装置における膜の研磨終点の判定を行う方法を説明する模式図である。実施形態の半導体製造装置においては、例えば、理論上の研磨終点である時間tを含む所定時間帯(tとtの間の時間帯)に達するより前に測定された研磨音による音圧実測値を用いて、回帰モデルの作成を行う。より具体的には、時間tと時間tの間に測定された研磨音による音圧実測値を用いて、回帰モデルの作成を行う。そして、t以降の時間は、作成された回帰モデルを用いて、点線で示したような音圧予測値を計算していく。すなわち、実施形態では、膜Mの研磨に由来する成分が支配的だと考えられる時間領域において作成された回帰モデルを用いて、研磨終点の判定を行う。言い換えると、実施形態の回帰モデルにおいては、膜Mの研磨に由来する成分の影響が、排除または低減されている。あるいは、実施形態の回帰モデルにおいては、膜Mと膜Mとの膜界面の影響が排除または低減されているとも考えることができる。
【0046】
なお、時間tと時間tよりも前の時間tとの間に測定された研磨音による音圧実測値を用いても良い。時間tより前に得られた音圧実測値に基づいて回帰モデルを作成することで、回帰モデルにおいて、膜Mの研磨に由来する成分の影響をより確実に排除または低減することができる。
【0047】
時間t1は、例えば、0.3≦(t-t)/(t-t)≦0.7を満たすように設定してもよい。この場合、膜Mの研磨に由来する成分の影響をより確実に排除または低減することができる。また、回帰モデルを作成してから、時間tに達するまでの時間的余裕をより多く確保できるため、例えば、音圧予測値計算部54等による処理のために必要となる時間を、より確実に確保することができる。時間t1は、適宜、変更してもよい。例えば、膜Mの研磨に由来する成分の影響をより確実に排除または低減する必要がある場合、時間t1を、(t-t)/(t-t)<0.3を満たすように設定してもよい、あるいは、回帰モデルの作成に用いるデータをより多く収集する必要がある場合、時間t1を、0.7<(t-t)/(t-t)を満たすように設定してもよい。
【0048】
実施形態の半導体製造装置は、音圧実測値が膜Mと膜Mとの膜界面の影響を受け始める所定領域に対応する所定時間帯(時間tと時間tの間)よりも前に、膜Mと膜Mとの膜界面の影響が排除または低減された回帰モデルを作成し、所定時間帯(時間tと時間tの間)において、当該回帰モデルと音圧実測値との残差を評価することで、研磨終点の判定を行う。すなわち、実施形態においては、膜界面そのものをモデル化することで音圧実測値を評価することに代えて、膜界面の影響が排除または低減された回帰モデルを生成し、当該回帰モデルから計算される音圧予測値と音圧実測値との乖離状態を評価することで、研磨終点の判定を行う。
【0049】
図5(c)に、図5(b)に示した音圧実測値と音圧予測値の差分である残差の2乗を、研磨時間に対してプロットしたグラフを示す。例えば、時間tで残差の2乗が極大値(local maximum)となっている場合、時間tで研磨の終点に到達したものと判定することが出来る。
【0050】
実施形態の半導体製造装置は、図5(c)に示すように、例えば、音圧実測値と回帰モデルを用いた音圧予測値との残差の2乗の変化分に基づいて研磨終点の判定を行う。従って、図5(a)に示す比較例と比べて、よりSN比が高い状態で、研磨終点の判定をすることができる。
【0051】
なお、ここでは残差の2乗を計算して研磨終点の判定をおこなっている。しかし、例えば残差の微分を用いて判定してもよく、研磨終点の判定における残差の参照方式は、特に限定されるものではない。
【0052】
例えば、ウェハに形成された膜Mの研磨終点の判定を行う場合、音圧予測値計算部54は、音測定部8が研磨音の測定を行う度に、上記の回帰モデル及び係数を用いて音圧予測値の計算を行っても良い。また、残差計算部55は、音圧予測値計算部54が上記の音圧予測値の計算を行う度に、残差の計算を行っても良い。さらに、終点判定部56は、残差計算部が上記の残差の計算を行う度に、研磨終点の判定を行っても良い。言い換えると、膜Mの研磨終点の判定は、膜Mの研磨を行いながら、リアルタイムに行われても良い。
【0053】
また、例えば、音圧予測回帰モデル作成部53は、複数の回帰モデルについて、計算された音圧データを予測する上で好ましい係数を決定してもよい。図5(b)に示したグラフを例にして説明すると、音圧予測回帰モデル作成部53は、時間tと時間tの間に測定された研磨音による音圧実測値を用いて、例えば2個の回帰モデルを作成してもよい。この場合、音圧予測値計算部54は、例えば、上記の2個の回帰モデルそれぞれで予測される音圧予測値を計算する。また、残差計算部は、例えば、それぞれの回帰モデルで予測された音圧予測値を用いて、それぞれの残差を計算する。そして、終点判定部56は、例えば、上記のそれぞれの残差を用いて、2個の回帰モデルのいずれか一方を選択した上で、研磨終点の判定を行う。なお、「2個の回帰モデル」とは、それぞれ異なった回帰モデル(例えば、ロジスティック曲線を用いた回帰モデルとゴンペルツ曲線を用いた回帰モデル)であってもかまわない。また、同じ回帰モデル(例えばゴンペルツ曲線をつかった回帰モデル)で、係数が異なるものであってもかまわない。また、3個以上の回帰モデルを適用してもかまわない。また、回帰モデルの選択は、終点判定部56が行わなくてもかまわない。さらに、2個の回帰モデルのいずれか一方を選択せずに、両方の回帰モデルを用いて研磨終点の判定を行ってもかまわない。
【0054】
次に、実施形態の半導体製造装置及び半導体製造方法の作用効果を記載する。
【0055】
ウェハに形成された膜の研磨終点の判定を精度よく行うために、膜の研磨音を用いて行うことが考えられる。しかし、例えば、形成された膜にばらつきが存在する。そのため、研磨音から計算される音圧実測値の変化量が、ウェハごとに異なってしまう可能性がある。また、スラリーSの投下量、トップリング2によるウェハWの回転速度、ターンテーブル6の回転速度、研磨パッド4の種類や摩耗度等の、研磨条件によっても、音圧実測値の変化量が大きく異なってしまうという問題があった。
【0056】
そこで、実施形態の半導体製造装置は、ウェハに形成された膜の研磨音の測定を行う音測定部8と、音圧予測値を得るための回帰モデルの作成を行う音圧予測回帰モデル作成部53と、回帰モデルを用いて音圧予測値の計算を行う音圧予測値計算部54と、音圧実測値と音圧予測値の差分である残差の計算を行う残差計算部55と、残差を用いて膜の研磨終点の判定を行う終点判定部56と、を備える。
【0057】
回帰モデルを用いて音圧予測値を計算し、音圧実測値と音圧予測値の差分である残差を計算して判定を行うことにより、SN比を向上させた上で研磨終点の判定を行うことが出来る。このことは、例えば、図5において示したとおりである。よって、研磨終点を精度良く判定可能な半導体製造装置の提供が可能となる。
【0058】
また、音圧予測回帰モデル作成部53は、研磨されるウェハ毎に回帰モデルの作成を行ってもよい。これにより、形成された膜のばらつきや研磨パッドの状態等の研磨条件により、音圧実測値の変化量が大きく異なってしまう場合であっても、対応することができる。
【0059】
また、音圧予測値計算部54は、音測定部8が研磨音の測定を行う度に、上記の回帰モデル及び係数を用いて音圧予測値の計算を行い、残差計算部55は、音圧予測値計算部54が計算を行う度に残差の計算を行い、終点判定部56は、残差計算部が上記の残差の計算を行う度に、研磨終点の判定を行っても良い。言い換えると、膜の研磨終点の判定は、膜の研磨を行いながら、リアルタイムに行われても良い。この場合、膜の研磨終点の判定をより厳密に行い、研磨のより厳密な制御が可能となりえる。また、上記の通り、一般に膜Mと膜Mの界面は、必ずしも厳密に平らに形成されているとは限らないため、どの程度膜Mが残った状態で研磨終点と判定するかは、ウェハの種類や研磨の目的により異なってくる。実施形態の半導体製造装置によれば、このような場合にも、研磨終点をより厳密に制御出来る。
【0060】
また、音圧予測回帰モデル作成部53は、音圧予測値を得るための複数の回帰モデルを作成し、音圧予測値計算部54は、それぞれの回帰モデルを用いて音圧予測値を計算し、残差計算部55は、それぞれの音圧予測値を用いて残差の計算を行い、終点判定部56は、複数の回帰モデルのいずれか一方を選択して膜の研磨終点の判定を行ってもよい。例えば、膜構造や研磨条件等によっては、膜の研磨を開始して、ある程度膜を研磨したところではじめてどの回帰モデルが適切であったかが明らかになることがある。この場合、暫定的に複数の回帰モデルを用いることで、研磨終点の判定を、より柔軟に行うことができる。なお、例えば、複数の回帰モデルを全て用いて、膜の研磨終点の判定をすることも出来る。
【0061】
また、音圧予測回帰モデル作成部53は、膜の研磨終点に対応する時間tを含む、所定時間帯(tとtの間の時間帯)の以前の時間(例えばt)と、tより前のtと、の間に測定された研磨音による音圧実測値を用いて、回帰モデルの作成を行ってもよい。言い換えると、膜の界面及びその近傍における音圧実測値(例えばtとtの間の時間帯)は、回帰モデルの作成に用いないようにしてもよい。この場合、膜の界面及びその近傍を除いて作成した回帰モデルを用いて、膜の界面付近において、音圧実測値が当該回帰モデルによる音圧予測値からどの程度乖離するか、という観点に基づいて膜の研磨終点の判定を行うことができる。膜の界面及びその近傍における音圧の変化は、バラツキが大きく、安定した回帰モデルを作成しづらい。膜の界面及びその近傍から離れた部分の音圧実測値を用いることで、安定した回帰モデルを作成することができる。
【0062】
また、時間tは、例えば、0.3≦(t-t)/(t-t)≦0.7を満たすような時間としてもよい。この場合、研磨終点付近の情報を出来るだけ回帰モデルに取り込まないようにして、回帰モデルにより求められる音圧予測値の制度をより向上させることができる。
【0063】
本発明のいくつかの実施形態及び実施例を説明したが、これらの実施形態及び実施例は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことが出来る。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0064】
2 トップリング
4 研磨パッド
6 ターンテーブル
8 音測定部
10 スラリー供給ノズル
50 制御装置
51 音響データ収集部
52 音圧実測値計算部
53 音圧予測回帰モデル作成部
54 音圧予測値計算部
55 残差計算部
56 終点判定部
57 装置制御信号送信部
59 処理条件情報受信
61 装置管理システム
62 マスタ情報登録データベース
100 半導体製造装置
N 音
S スラリー
W ウェハ
時間(第3時間)
時間(第4時間)
時間(第1時間)
時間(第2時間)
図1
図2
図3
図4
図5