(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-14
(45)【発行日】2024-06-24
(54)【発明の名称】養液栽培装置及びプレート搬送方法
(51)【国際特許分類】
A01G 31/04 20060101AFI20240617BHJP
【FI】
A01G31/04 A
(21)【出願番号】P 2020143395
(22)【出願日】2020-08-27
【審査請求日】2023-02-02
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000108719
【氏名又は名称】タキロンシーアイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001885
【氏名又は名称】弁理士法人IPRコンサルタント
(72)【発明者】
【氏名】吉良 瑞穂
【審査官】坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-126069(JP,A)
【文献】国際公開第2011/125965(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 31/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレートを搬送方向の上流側から下流側に搬送する搬送装置を有し、
前記搬送装置は、前記プレートの下面を支持するプレート支持面と、
下流側へのプレートの搬送に伴ってプレートを上方に変位させるプレート変位手段と、を有し、
前記プレート変位手段は、前記プレート支持面よりも上方に位置するプレート変位部を備え、
前記プレートは、一のプレートと、前記一のプレートの上流側に連結係合される他のプレートと、を有し、
前記一のプレートと前記他のプレートとは上下方向の変位により係合又は係合解除する構成を有する
養液栽培装置であって、
前記養液栽培装置は、搬送方向に並んで配設される複数の回転体を有し、
前記プレート支持面は、前記複数の回転体の上端を結ぶ仮想面を含んで構成され、
前記回転体は回転中心に支軸を有し、
前記プレート変位手段は、切欠きを具備する板部を備え、
前記プレート変位手段の板部の切欠きに、前記回転体の支軸が挿通されること、
を特徴とする養液栽培装置。
【請求項2】
前記一のプレートと前記他のプレートとは、上方に延びる凸状の係合片と下方に開く係合凹部との上下方向の変位、又は、下方に延びる凸状の係合片と上方に開く係合凹部との上下方向の変位、により、係合又は係合解除すること、
を特徴とする請求項1に記載の養液栽培装置。
【請求項3】
プレートを搬送方向の上流側から下流側に搬送する搬送方法であって、
前記プレートの下面を支持するプレート支持面と、前記プレートを上方に変位させるプレート変位手段とを備えるプレート搬送装置、を有し、
前記プレート変位手段は、前記プレート支持面よりも上方に位置するプレート変位部を備え、
前記プレートは前記プレート支持面上を搬送され、
前記プレートの下面を前記プレート変位部に支持させることで、前記プレートの上流側端部を上方に変位させ、
前記プレートは、一のプレートと、当該一のプレートの上流側に連結係合される他のプレートと、を有し、
前記一のプレートと前記他のプレートとは上下方向の変位により係合又は係合解除する構成を有し、
前記プレート搬送装置は、搬送方向に並んで配設される複数の回転体を有し、
前記プレート支持面は、前記複数の回転体の上端を結ぶ仮想面を含んで構成され、
前記回転体は回転中心に支軸を有し、
前記プレート変位手段は、切欠きを具備する板部を備え、
前記プレート変位手段の板部の切欠きに、前記回転体の支軸が挿通されること、
を特徴とするプレート搬送方法。
【請求項4】
前記
一のプレートと前記他のプレートとは、上方に延びる凸状の係合片と下方に開く係合凹部との上下方向の変位、又は、下方に延びる凸状の係合片と上方に開く係合凹部との上下方向の変位、により、係合又は係合解除すること、
を特徴とする請求項3に記載の
プレート搬送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として植物栽培用のプレートを搬送するプレート搬送装置に関し、更に、これを用いた養液栽培装置及びプレート搬送方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
水耕栽培装置に関して、例えば、長手全幅の前辺に設けられたフック型突出部と、後辺に設けられたフック受け部とを備え、これら部材が噛み合うことでトレー同士が連結される、略矩形状の栽培トレーが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
この栽培トレーにおいては、フック型突出部は先端がテーパー状を為しているため、複数のトレーを育成ラックに搭載して順に押し出すと、先に搭載したトレーの後辺を押し上げて、フック受け部に掛かり、育成ラックに設けられたローラ上で数十台が容易に連結されるが、フック型突出部においてフック受け部が掛かる部位は上向きの溝をなしている。この上向きの溝には、ゴミが溜まりやすく、不衛生であるという問題があった。
【0004】
これに対し、本出願人は、特願2020-085899号において、連結箇所にゴミが溜まりにくい植物栽培用プレートを提供することを目的として、長尺の水槽の一端側に配設され、植物の成長とともに前記水槽の他端側にスライドされ、複数個が連結される植物栽培用のプレートを発明した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のプレートを連結させて水槽の一端から他端にスライドさせた際、他端における収穫時にプレート同士の連結を容易かつ確実に解除させるという観点からは、改善の余地があった。
【0007】
そこで、本発明の目的は、上記のような課題を解決するために問題に鑑みて創作されたものであり、プレートを搬送装置の一端(上流側)から他端(下流側)にスライド乃至は搬送させた際、下流側においてプレートの回収作業が容易であり、また、プレートを連結係合させてスライド乃至は搬送させた際には、下流側においてプレート同士の連結係合が容易かつ確実に解除できプレートの回収作業が容易なプレート搬送装置を提供することにある。また、本発明の目的は、かかるプレート搬送装置を用いた養液栽培装置、及びプレートの搬送方法の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決すべく、本発明は、
プレートを搬送方向の上流側から下流側に搬送する搬送装置であって、
プレートの下面を支持するプレート支持面と、
下流側へのプレートの搬送に伴ってプレートを上方に変位させるプレート変位手段と、を有し、
前記プレート変位手段は、前記プレート支持面よりも上方に位置するプレート変位部を備えること、
を特徴とするプレート搬送装置、
を提供する。
【0009】
このような構成を有する本発明のプレート搬送装置では、下流側へのプレートの搬送に伴ってプレートを上方に変位させるプレート変位手段を具備し、当該プレート変位手段が、プレートの下面を支持するプレート支持面よりも上方に位置するプレート変位部を備えることから、プレートが上方を向いてプレート支持面との間に隙間ができ、プレートの回収作業が容易にできる。
【0010】
上記の本発明のプレート搬送装置においては、
前記プレートは、一のプレートと、前記一のプレートの上流側に係合される他のプレートと、を有し、
前記一のプレートと前記他のプレートとは上下方向の変位により係合解除する構成を有すること、
が好ましい。
【0011】
このような構成を有する本発明のプレート搬送装置においては、上記のプレート変位手段及びプレート変位部を有するとともに、前記プレートは、一のプレートと、前記一のプレートの上流側に係合される他のプレートと、を有し、前記一のプレートと前記他のプレートとは上下方向の変位により係合解除する構成を有するため、連結したプレートが互いに上下方向において変位し、連結したプレート同士が自動的に係合解除され、より容易かつ確実に解除できる。
【0012】
また、本発明のプレート搬送装置においては、
前記プレート変位部は、下流側に向かって上方に延びる上延部を備えること、
が好ましい。
【0013】
ここでいう「上延部」とは、下流側に向かって上方に向かう部分であればよく、例えば湾曲状(湾曲部)であっても傾斜状(傾斜部)であってもよく、また、プレートと接触する部分は、点状、線状及び面状のいずれであってもよい。
このような構成を有する本発明のプレート搬送装置においては、上流側から下流側に搬送されるプレートを上方にスムーズに変位させることができ、プレートの回収作業や連結したプレート同士の係合解除がより容易かつ確実となる。
【0014】
また、上記の本発明のプレート搬送装置においては、
前記上延部は、上流側において、前記プレート支持面より下方、又は、同じ高さ位置まで延設されていること、
が好ましい。
【0015】
このような構成を有する本発明のプレート搬送装置においては、上流側から下流側に搬送されるプレートを、特にプレート支持面に対して、上方にスムーズに変位させることができ、プレートの回収作業や連結したプレート同士の係合解除がより容易かつ確実となる。
【0016】
また、上記の本発明のプレート搬送装置においては、
搬送方向に並んで配設される複数の回転体を有し、
前記プレート支持面は、前記複数の回転体の上端を結ぶ仮想面を含んで構成され、
前記回転体は回転中心に支軸を有し、
前記プレート変位手段は、切欠きを具備する板部を備え、
前記プレート変位手段の板部の切欠きに、前記回転体の支軸が挿通されること、
が好ましい。
【0017】
このような構成を有する本発明のプレート搬送装置においては、上記プレート変位手段が簡易な構造を有しているため、既存の搬送装置にも着脱自在に取り付けることができ、したがって、本発明のプレート搬送装置は汎用性を有することができる。
【0018】
本発明は、上記の本発明のプレート搬送装置を有すること、を特徴とする養液栽培装置も提供する。したがって、本発明の養液栽培装置は、上記の本発明のプレート搬送装置の有する作用効果を奏するものである。
【0019】
また、本発明は、
プレートを搬送方向の上流側から下流側に搬送する搬送方法であって、
前記プレートの下面を支持するプレート支持面と、前記プレートを上方に変位させるプレート変位手段とを備えるプレート搬送装置、を有し、
前記プレート変位手段は、前記プレート支持面よりも上方に位置するプレート変位部を備え、
前記プレートは前記プレート支持面上を搬送され、
前記プレートの下面を前記プレート変位部に支持させることで、前記プレートの上流側端部を上方に変位させること、
を特徴とするプレート搬送方法、
も提供する。
【0020】
このような構成を有する本発明のプレート搬送方法では、下流側へのプレートの搬送に伴ってプレートを上方に変位させるプレート変位手段を具備し、当該プレート変位手段が、プレートの下面を支持するプレート支持面よりも上方に位置するプレート変位部を使用することから、プレートが上方を向いてプレート支持面との間に隙間ができ、プレートの回収作業が容易にできる。
【0021】
上記の本発明のプレート搬送方法においては、
前記プレートは、一のプレートと、当該一のプレートの上流側に係合される他のプレートとを有し、
前記一のプレートと、前記他のプレートとは係合され、
前記一のプレートと前記他のプレートとは上下方向の変位により係合解除する構成を有し、
前記一のプレートの上流側端部が上方に変位することで、前記プレートの上流側端部を上方に変位させて、前記他のプレートとの係合が解除されること、
が好ましい。
【0022】
このような構成を有する本発明のプレート搬送方法においては、上記のプレート変位手段及びプレート変位部を有するとともに、前記プレートは、一のプレートと、前記一のプレートの上流側に係合される他のプレートと、を有し、前記一のプレートと前記他のプレートとは上下方向の変位により係合解除する構成を有するため、連結したプレートが互いに上下方向において変位し、連結したプレート同士が自動的に係合解除され、より容易かつ確実に解除できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、プレートを搬送装置の一端(上流側)から他端(下流側)にスライド乃至は搬送させた際、下流側においてプレートの回収作業が容易であり、また、プレートを連結係合させてスライド乃至は搬送させた際には、下流側においてプレート同士の連結係合が容易かつ確実に解除できプレートの回収作業が容易なプレート搬送装置、これを用いた養液栽培装置、並びに、プレート搬送方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明において用いられるプレート搬送装置1の一実施形態を概念的に示す概略側面図である。
【
図2】プレート搬送装置1に用いられるプレート変位手段6の一実施形態を示す概略側面図である。
【
図3】プレート搬送装置1において、プレート変位手段6がプレート4を上方に変位させる様子を概念的に示す概略側面図である。
【
図4】プレート搬送装置1に用いられるプレート変位手段6の変形例を示す概略側面図である。
【
図5】プレート搬送装置1に用いられるプレート変位手段6の他の変形例を示す概略側面図である。
【
図6】プレート搬送装置1において、
図5に示すプレート変位手段6がプレート4を上方に変位させる様子を概念的に示す概略側面図である。
【
図7】プレート搬送装置1において他のプレート4A,4Bを用いた実施形態を概念的に示す概略側面図である。
【
図8】プレート4A,4Bが連結・係合する様子を概念的に説明するための一部概略側面図である。
【
図9】プレート搬送装置1において、
図5に示すプレート変位手段6がプレート4Aを上方に変位させてプレート4Bとの係合を解除する様子を概念的に示す概略側面図である。
【
図10】
図7に示すプレート4A,4Bにおいて、係合片12の幅W1、係合凹部14の幅W2及び係合片12の高さH1を示す図である。
【
図11】
図2に示すプレート変位手段6において、プレート支持面Pからプレート変位手段6のプレート変位部である上延部8の上端までの距離(高さ)H2と、上延部8の傾斜部8aの傾斜角αを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係るプレート搬送装置及びプレート搬送方法の代表的な実施形態を、図を参照しながら詳細に説明する。但し、本発明は図示されるものに限られるものではない。図面は本発明を概念的に説明するためのものであるから、理解容易のために寸法、比又は数を誇張又は簡略化して表している場合もある。更に、同一又は同等の部材には同一符号を付し、重複する説明を省略することがある。
【0026】
ここでは、説明の便宜上、次のように座標軸を定める。つまり、プレート搬送装置1において、鉛直方向をZ軸に定め、プレートのスライド方向(つまり、搬送方向における上流側から下流側に向かう方向)をX軸に定める。また、Z軸とX軸とに直交する方向をY軸とする。また、上下又は高低はZ軸方向を、前後はX軸方向を、左右はY軸方向を、それぞれ表すものとする。
【0027】
1.プレート搬送装置について
(1)プレート搬送装置
本発明のプレート搬送装置は、プレートの下面を支持するプレート支持面と、下流側へのプレートの搬送に伴ってプレートを上方に変位させるプレート変位手段と、を有し、前記プレート変位手段は、前記プレート支持面よりも上方に位置するプレート変位部を備えること、を特徴とする。
【0028】
図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係るプレート搬送装置1を説明する。このプレート搬送装置1は、
図1に示すように、複数の回転体(ローラ)2によってプレート4を搬送方向Xの上流側から下流側にスライドさせて搬送するものであって、搬送方向Xに並んで配設される複数の回転体(ローラ)2を有し、これら複数個のローラ2の全体の上側において、複数のローラ2の上端を結ぶ仮想面を含んでプレート支持面Pが構成される。また、ローラ2は回転中心にY軸(幅)方向に延びる支軸を有する。
【0029】
なお、プレート搬送装置1のその他の構成は、従来公知のものであってよく、例えば、ローラ2は略円柱状の形状を有して中心軸に設けられた回転軸(図示せず)を中心に回転することができる。なお、プレート4をスムーズに搬送するためにはローラ2のような回転体を用いることが好ましいが、プレート4を搬送できるのであれば、Y軸(幅)方向に延びる回転しない棒状部材であってもよい。また、プレート4を搬送する手段は手動でよく、ローラ2の少なくとも一部がモータ等の駆動装置に機械的に接続され、駆動装置は電源に電気的に接続されている機械装置であってもよい。
【0030】
そして、本実施形態のプレート搬送装置1は、
図2に示すような、下流側へのプレート4の搬送に伴ってプレート4をプレート支持面Pから上方に変位させるプレート変位手段6を有することを特徴とする。
【0031】
図2に示すように、本実施形態のプレート変位手段6は、所定の厚みを有し、三角形状の上側部分(上延部8)及び矩形状の下側部分で構成された略ホームベース状の板状体である。このプレート変位手段6は、上側部分に、搬送方向Xに沿って鉛直方向Zの上方に向かって傾斜する傾斜部8aと、傾斜部8aに連続して、搬送方向Xに沿って鉛直方向Zの下方に向かって傾斜する傾斜部8bと、を有している。傾斜部8aと傾斜部8bのなす角度は適宜選択できるが鈍角であるのが好ましい。
【0032】
また、プレート変位手段6の下側部分は、略矩形であり、隣接するローラ2の回転軸がそれぞれ挿入され、位置Qにおいて回転し得るように切欠き(スリット)10a(10a1,10a2),10bが設けられた板部で構成されている。即ち、プレート変位手段6の板部の切欠き10a,10bに、ローラ2の支軸が挿通される。
【0033】
第一の切欠き10aは、板部の下端から鉛直方向Zの上向きに切欠かれた鉛直方向切欠き部10a1と、該鉛直方向切欠き部10a1から搬送方向Xの上流側に向かって切欠かれた搬送方向切欠き部10a2で形成することができる。また、第二の切欠き10bは、板部の側部から搬送方向Xの上流側に向かって切欠かれた搬送方向切欠き部(10b)で形成することができる。
【0034】
プレート変位手段6を搬送方向Xの下方に変位させることで、既設のローラ2の支軸が鉛直方向Zの上向きに切欠かれた鉛直方向切欠き部10a1に挿入され、容易に取り付けることができる。また、プレート変位手段6を搬送方向Xの下流側に変位させることで、ローラ2の支軸が搬送方向Xの上流側に向かって切欠かれた搬送方向切欠き部10a2、10bに挿入され、安定して取り付けることが可能となる。
【0035】
より安定して取り付けるためには、少なくとも2つ以上の搬送方向切欠き部を有することが好ましい。尚、搬送方向切欠き部は、下流側に向かって切欠かれていても良いが、プレート4がプレート変位手段6を押す力に対抗できるよう上流側に向かって切欠かれていることが好ましい。
【0036】
ここで、
図3に示すように、上延部8における傾斜部8aは、プレート変位手段6がプレート搬送装置1に装着された際に、プレート支持面Pよりも上方に位置する部分から、プレート支持面Pのやや下方(又は略同じ高さ位置)まで延設されている。
【0037】
したがって、このプレート変位手段6をプレート搬送装置1に装着すれば、搬送方向Xに沿ってプレート4が上流側から下流側に搬送されてきた際、プレート変位手段6の上延部8によってプレート4の下面が支持され、プレート4の下流側端部が上方に確実に変位させることができ、プレート4の回収作業が容易となる。
【0038】
また、傾斜部8bが搬送方向X及び下方に向かって傾斜して形成されることで、プレート4を傾斜部8bに当接させながら下方に滑らせることができるため、プレート変位手段6を通過する際のプレート4への衝撃を抑制し、プレート4の破損を防ぐことができる。また植物栽培用のプレートとして使用する場合は、植物へのダメージを抑えることができる。
【0039】
図3においては、プレート変位手段6の上側部分である上延部8のみを表しており、この上延部8は、搬送方向Xに沿って上流側から下流側に搬送されてきたプレート4を上方に変位させるプレート変位部に相当する(もしくは、傾斜部8a,8bを含む上延部8全体をプレート変位部と称してもよい。)。
【0040】
なお、プレート4及びプレート変位手段6は、全体として板状をなしており、例えば樹脂や金属等のある程度の剛性を有する材料で形成されていればよく、なかでも樹脂成形品で構成されているのが好ましい。
【0041】
(2)プレート変位手段の変形例
ここで、
図2に示すプレート変位手段6の変形例を、
図4及び5に示す。
図4及び5は、それぞれプレート搬送装置1に用いられるプレート変位手段6の第一の変形例及び第二の変形例を示す概略側面図である。なお、
図2に示すプレート変位手段6と同じ構造及び機能等については説明を省略する。
【0042】
第一の変形例に係るプレート変位手段6は、所定の厚みを有し、
図4に示すように、湾曲状乃至はドーム状の上側部分(上延部8)及び矩形状の下側部分で構成された板状体である。このプレート変位手段6は、上側部分に、搬送方向Xに沿って鉛直方向Zの上方に向かって凸状に湾曲する湾曲部8cを有している。
【0043】
上延部8における湾曲部8cは、プレート変位手段6がプレート搬送装置1に装着された際に、プレート支持面Pよりも上方に位置する部分から、プレート支持面Pのやや下方(又は略同じ高さ位置)まで延設されているため、搬送方向Xに沿ってプレート4が上流側から下流側に搬送されてきた際、プレート変位部としてプレート4を上方に確実に変位させることができ、プレート4の回収作業が容易となる。
【0044】
次に、第二の変形例に係るプレート変位手段6は、所定の厚みを有し、
図5に示すように、全体として円形状であり、中心軸Cからみて上側部分に湾曲状の上延部8を有する板状体である。
【0045】
理解の容易のため、第二の変形例に係るプレート変位手段6をプレート搬送装置1に装着し、プレート4を上方に変位させる様子を概念的に
図6に示す。
図6に示すように、プレート変位手段6がプレート搬送装置1に装着された際に、ローラ2の回転軸と同じ位置にあり、このような構成によれば、ローラ2のひとつに替えてこのプレート変位手段6を使用することができる。また、その場合は板状体ではなく、円筒体を用いることもできる。
【0046】
そして、上延部8における湾曲部8dは、プレート支持面Pよりも上方に位置する部分から、プレート支持面Pのやや下方(又は略同じ高さ位置)まで延設されているため、搬送方向Xに沿ってプレート4が上流側から下流側に搬送されてきた際、プレート変位部としてプレート4を上方に確実に変位させることができ、プレート4の回収作業が容易となる。
【0047】
(3)プレートの変形例
ここで、プレート4としては、上記従来技術の欄で述べた特願2020-085899号において本出願人が提案した連結・係合可能なプレートを用いることができる。
図7は、プレート搬送装置1において他のプレート4A,4Bを用いた実施形態を概念的に示している。
【0048】
この変形例によれば、プレート4A,4Bは、同一形状を有しており、プレート搬送装置1の上流側から下流側にかけて、互いに接近して連結・係合して搬送される。即ち、この変形例では、プレートが、一のプレート4Aと、一のプレート4Aの上流側に係合される他のプレート4Bと、を含み、プレート4Aとプレート4Bとは上下方向の変位により係合解除する構成を有している。
【0049】
プレート4A,4Bは、下流側の部分において、上方に延びる凸状の係合片12を有し、また、上流側の部分において、プレート4A,4Bの主面よりも上方の位置において、下方に開く係合凹部14を有している。そのため、プレート4Bが、プレート4Aに接近すると、
図8(A)及び(B)に示すように、プレート4Bの係合片12がプレート4Aの係合凹部14に入り込み、両者は連結・係合する。なお、プレートの係合凹部と係合片との係合機構は、上下方向の変位により係合解除する構成を有していれば特に限定されず、例えば、下方に延びる凸状の係合片を上方に開く係合凹部に係合してもよい。
【0050】
ついで、この変形例においては、
図9に示すように、プレート搬送装置1において、
図2に示すプレート変位手段6を具備する場合、プレート変位手段6によってプレート4Aの上流側端部が上方に変位し、プレート4Aの係合凹部14がプレート4Bの係合片12から離れることにより、プレート4A,4Bの係合が解除され、プレート4Aの回収作業が容易となる。
【0051】
2.プレート搬送方法
本発明のプレート搬送方法の一実施形態は、例えば
図3に示す本発明の一実施形態に係るプレート搬送装置1を用い、プレート4をプレート支持面P上において搬送し、プレート4の下面をプレート変位手段6のプレート変位部である上延部8で支持することによって、プレート4の上流側端部を上方に変位させるものである。
【0052】
また、本発明のプレート搬送方法は、
図7に示すような、互いに着脱自在に連結・係合可能なプレート4A,4Bを用いる場合にも好適に適用できる。即ち、
図7においては、一のプレート4Aと、プレート4Aの上流側に係合される他のプレート4Bとを使用し、プレート4Aと、プレート4Bとは係合され、一のプレート4Aと他のプレート4Bとは上下方向の変位により係合解除する構成を有している。
【0053】
この態様においては、プレート変位手段6の上延部8によってプレート4Aの上流側端部が上方に変位し、上流側に位置する他のプレート4Bとの係合が解除され、プレート4Aの回収作業が容易となる。続いて、プレート4Bの更に上流側に別のプレートが連結・係合している際には、搬送方向Xに沿ってプレート変位手段6に到達したプレートから順に上方に変位するため、順にプレートの回収作業が容易となる。
【0054】
このとき、プレート4Aはプレート変位手段6を乗り越えて搬送することができるため、プレート4Aを回収できなかった場合でも、プレート4Aはプレート4Bには干渉せず、後続のプレートの搬送に支障をきたさないようにすることができる。
【0055】
3.養液栽培装置
本発明は、上記の本発明のプレート搬送装置及びプレート搬送方法を用いた養液栽培装置にも関する。この場合、プレート4(4A,4B)として、植物栽培用のプレートを用いればよい。
【0056】
植物栽培用のプレートの構成は、上記の本発明のプレート搬送装置及びプレート搬送方法において説明したプレート4(4A,4B)の構造に加えて、植物保持孔や通気口が設けられているが、詳細な構成については従来公知のものであってよい。例えば、上記の従来技術の欄で記載した特願2020-085899号において本出願人が開示しているプレートを用いることも有効である。
【0057】
以上、本発明の一実施形態について図面を参照しつつ説明してきたが、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載の精神及び教示を逸脱しない範囲でその他の改良例や変形例、更には詳細な設計変更が存在する。そして、かかる改良例や変形例、設計変更は全て本発明の技術的範囲に含まれることは、当業者にとっては容易に理解されるところである。
【0058】
例えば、本発明のプレート搬送装置の各構成部材の材質や形状及び寸法は、本発明の効果を損なわない範囲で適宜設定することができるが、
図7に示すプレート4A,4Bの場合、
図10に示す係合片12の幅W1、係合凹部14の幅W2及び係合片12の高さ(係合高さ(深さ))H1は、下記の範囲であることが好ましい。
・係合片12の幅W1: 1.0~3.0mm
・係合凹部14の幅W2: 1.0~3.0mm(W1<W2)
・係合片12の高さH1: 3.0~16.0mm
【0059】
また、
図2に示すプレート変位手段6の場合、
図11に示すプレート支持面Pからプレート変位手段6のプレート変位部である上延部8の上端までの距離(高さ)H2と、上延部8の傾斜部8aの傾斜角(即ち、プレート支持面P乃至は水平面に対する傾斜角)αは、それぞれ以下の範囲であることが好ましい。
・プレート支持面Pから上延部8の上端までの高さH2: 10~30mm
・上延部8の傾斜部8aの傾斜角α: 5~80°(好ましくは10~68°)
【0060】
プレート4(4A,4B)の搬送乃至はスライドを補助する回転体(ローラ)2は、プレート搬送装置1に設けられていてもよいが、プレート4(4A,4B)の下部に設けられていてもよく、また、回転体(ローラ)自体が回転する態様でも回転軸に連結される支軸ごと回転する態様であってもよい。
【0061】
また、
図7に示すプレート4A,4Bの場合、両者の係合方式(上流側及び下流側のいずれが雄型又は雌型か等)は、自由に選択可能であるし、プレート変位手段6は、板体であっても回転体であってもよい。
【符号の説明】
【0062】
1・・・プレート搬送装置、
2・・・ローラ、
4,4A,4B・・・プレート、
6・・・プレート変位手段、
8・・・上延部、
8a,8b・・・傾斜部、
8c,8d・・・湾曲部、
10a,10b・・・切欠き、
12・・・係合片、
14・・・係合凹部。