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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-14
(45)【発行日】2024-06-24
(54)【発明の名称】車両用灯具および車両システム
(51)【国際特許分類】
   B60Q 1/14 20060101AFI20240617BHJP
   F21S 41/151 20180101ALI20240617BHJP
   F21S 41/25 20180101ALI20240617BHJP
   F21S 41/663 20180101ALI20240617BHJP
   F21S 41/675 20180101ALI20240617BHJP
   B60Q 1/24 20060101ALI20240617BHJP
   B62J 6/023 20200101ALI20240617BHJP
   B62J 6/026 20200101ALI20240617BHJP
   F21W 102/145 20180101ALN20240617BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20240617BHJP
【FI】
B60Q1/14 Z
F21S41/151
F21S41/25
F21S41/663
F21S41/675
B60Q1/24
B62J6/023
B62J6/026
F21W102:145
F21Y115:10
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020153908
(22)【出願日】2020-09-14
(65)【公開番号】P2022047882
(43)【公開日】2022-03-25
【審査請求日】2023-07-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】校條 洋輔
【審査官】塩治 雅也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/039051(WO,A1)
【文献】特開2016-064723(JP,A)
【文献】特開2017-076552(JP,A)
【文献】特開平07-032936(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0169001(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21K 9/00- 9/90
F21S 2/00-45/70
B60Q 1/00- 1/56
B60Q 1/24
B62J 6/023
B62J 6/026
F21W 102/145
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
曲がる方向に向かって車体を傾けることでコーナーを走行する車両に設けられた車両用灯具であって、
光源と、
前記光源からの光を灯具前方へ照射することにより、一方向に並列して形成される複数の領域から構成される所定の配光パターンを形成する光学部材と、
前記車両外部の対象物が検知された場合には、前記複数の領域のうち前記対象物を含む少なくとも一つの第一領域に前記光を照射しないように前記所定の配光パターンを調節する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記車体がコーナリング状態にある場合には、前記車体の傾き情報を取得し、
前記傾き情報に基づいて、前記少なくとも一つの第一領域に水平方向に沿った基準線を超えない第二領域が存在するか否かを判断し、
前記第二領域が存在すると判断された場合には、前記第二領域内に前記対象物が含まれていても前記第二領域には前記光を照射する、
ように構成されている、車両用灯具。
【請求項2】
前記対象物は、少なくとも一つの灯具が搭載された車両であり、
前記基準線は、前記少なくとも一つの灯具の上端を通過するように規定される、請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記光源は、並列配置された複数の発光素子を含み、
前記複数の領域は、前記複数の発光素子からの光によって水平方向に沿って並列して形成され、
前記制御部は、前記複数の発光素子のうち前記第二領域を形成する発光素子を点灯させる一方で、前記少なくとも一つの第一領域のうち前記第二領域以外の領域を形成する発光素子を消灯することで前記所定の配光パターンを形成する、請求項1又は2に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記光学部材は、回転リフレクタ、ガルバノミラー、およびポリゴンミラーのうち少なくとも一つから構成されており、
前記制御部は、前記基準線に基づいて、前記回転リフレクタ、前記ガルバノミラー、および前記ポリゴンミラーのうち少なくとも一つによる前記光の走査方向と前記光源からの光の出射タイミングとを制御することにより、前記第二領域に前記光を照射する一方で、前記少なくとも一つの第一領域のうち前記第二領域以外の領域に前記光を照射しないように前記所定の配光パターンを形成する、請求項1又は2に記載の車両用灯具。
【請求項5】
曲がる方向に向かって車体を傾けることでコーナーを走行する車両に設けられた車両システムであって、
光源と、前記光源からの光を灯具前方へ照射することにより、一方向に並列して形成される複数の領域から構成される所定の配光パターンを形成する光学部材と、を有する灯具と、
前記車両外部の対象物を検知するセンサと、
前記センサにより前記対象物が検知された場合には、前記複数の領域のうち前記対象物を含む少なくとも一つの第一領域に前記光を照射しないように前記所定の配光パターンを調節する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記センサにより取得された前記対象物の位置情報に基づいて、水平方向に沿った基準線を決定し、
前記車体がコーナリング状態にある場合には、前記車体の傾き情報を取得し、
前記傾き情報に基づいて、前記少なくとも一つの第一領域に水平方向に沿った基準線を超えない第二領域が存在するか否かを判断し、
前記第二領域が存在すると判断された場合には、前記第二領域内に前記対象物が含まれていても前記第二領域には前記光を照射する、
ように構成されている、車両システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具および車両システムに関する。
【背景技術】
【0002】
二輪車用の前照灯として、ハイビーム・ロービームの光源がある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際出願公報WO2019/039051
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
四輪車においては、前照灯から照射される配光パターンを水平方向に並列された複数の領域から構成し、車両外部の対象物に応じて当該複数の領域のうち一部の領域を非照射とすることで、例えば対向車にグレアを与えない配光パターンを形成するシステムが提案されている。二輪車では、右左折をする際に運転者が重心を移動させ、曲がる方向に向かって車体を傾けてバンク角を大きくしながらコーナーを走行するため、バンク角に伴って前照灯が形成する配光パターンも水平方向から傾く。水平方向から傾いた配光パターンにおいて、対向車などの対象物に対してグレアを与えないように四輪車と同様のシステムを採用しようとすると、本来は非照射にする必要のない範囲まで非照射範囲を拡大せざるを得ない場合がある。
【0005】
本発明は、車体が傾いた状態で形成される配光パターンにおいて対象物に光を照射しない非照射範囲をできる限り小さくすることが可能な車両用灯具および車両システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の一側面に係る車両用灯具は、
曲がる方向に向かって車体を傾けることでコーナーを走行する車両に設けられた車両用灯具であって、
光源と、
前記光源からの光を灯具前方へ照射することにより、一方向に並列して形成される複数の領域から構成される所定の配光パターンを形成する光学部材と、
前記車両外部の対象物が検知された場合には、前記複数の領域のうち前記対象物を含む少なくとも一つの第一領域に前記光を照射しないように前記所定の配光パターンを調節する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記車体がコーナリング状態にある場合には、前記車体の傾き情報を取得し、
前記傾き情報に基づいて、前記少なくとも一つの第一領域に水平方向に沿った基準線を超えない第二領域が存在するか否かを判断し、
前記第二領域が存在すると判断された場合には、前記第二領域内に前記対象物が含まれていても前記第二領域には前記光を照射する、ように構成されている。
【0007】
また、本発明の一側面に係る車両システムは、
曲がる方向に向かって車体を傾けることでコーナーを走行する車両に設けられた車両システムであって、
光源と、前記光源からの光を灯具前方へ照射することにより、一方向に並列して形成される複数の領域から構成される所定の配光パターンを形成する光学部材と、を有する灯具と、
前記車両外部の対象物を検知するセンサと、
前記センサにより前記対象物が検知された場合には、前記複数の領域のうち前記対象物を含む少なくとも一つの第一領域に前記光を照射しないように前記所定の配光パターンを調節する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記センサにより取得された前記対象物の位置情報に基づいて、水平方向に沿った基準線を決定し、
前記車体がコーナリング状態にある場合には、前記車体の傾き情報を取得し、
前記傾き情報に基づいて、前記少なくとも一つの第一領域に水平方向に沿った基準線を超えない第二領域が存在するか否かを判断し、
前記第二領域が存在すると判断された場合には、前記第二領域内に前記対象物が含まれていても前記第二領域には前記光を照射する、ように構成されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、車体が傾いた状態で形成される配光パターンにおいて対象物に光を照射しない非照射範囲をできる限り小さくすることが可能な車両用灯具および車両システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第一実施形態に係るヘッドランプ(車両用灯具)を備えた車両の斜視図である。
図2】車両に搭載された車両システムのブロック図である。
図3】ヘッドランプが備えるハイビーム用灯具ユニットの構成を示す断面図である。
図4図3のハイビーム用灯具ユニットが備える光源ユニットの構成を示す斜視図である。
図5】直進時のハイビーム用配光パターンを説明する図である。
図6】コーナリング時のハイビーム用配光パターンを説明する図である。
図7】第二実施形態に係るヘッドランプが備えるハイビーム用灯具ユニットの構成を示す断面図である。
図8図7のハイビーム用灯具ユニットが備える光学部材の構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、本実施形態における、「左右方向」、「前後方向」、「上下方向」とは、図1に示す車両100について、説明の便宜上、設定された相対的な方向である。
【0011】
(第一実施形態)
図1は、第一実施形態における車両の一例として自動二輪車100を示している。自動二輪車100は、曲がる方向に向かって車体を傾けることで道路のコーナー(カーブ)に沿って走行することが可能な車両である。本実施形態の車両は、この自動二輪車100のように、曲がる方向に向かって車体を傾けることでコーナーを走行可能な車両であればよく、車輪の数は限定されない。したがって、例えば自動三輪車、自動四輪車などであっても、この自動二輪車100と同様に走行可能であれば本実施形態の車両に含まれる。
【0012】
図1に示すように、自動二輪車100の前部には、本実施形態に係るヘッドランプ1(車両用灯具の一例)が搭載されている。ヘッドランプ1は、車両前方を照射可能な灯具であり、ロービーム用灯具ユニット2と、ハイビーム用灯具ユニット3と、を備えている。なお、本実施形態では、一個のヘッドランプ1を備える自動二輪車100を例示しているが、例えば左右に一個ずつのヘッドランプを備える自動二輪車であってもよい。
【0013】
図2は、自動二輪車100に搭載された車両システム50のブロック図である。図2に示すように、車両システム50は、ヘッドランプ1と、各種センサ6~8と、を備えている。ヘッドランプ1は、ロービーム用灯具ユニット2およびハイビーム用灯具ユニット3の動作を制御するランプ制御部5を有している。ランプ制御部5には、ロービーム用灯具ユニット2およびハイビーム用灯具ユニット3が接続されている。各種センサ6~8には、自動二輪車100の傾き状態を検知するバンク角センサ6と、車両外部の環境情報を検知する外部センサ7と、自動二輪車100の速度を検知する速度センサ8が含まれる。バンク角センサ6、外部センサ7及び速度センサ8は、ランプ制御部5に接続されている。
【0014】
バンク角センサ6は、自動二輪車100の車体が鉛直線に対して左右に傾斜したときの傾斜角を検知することが可能なセンサである。バンク角センサ6は、例えばジャイロセンサで構成されている。なお、車体の傾斜角は、例えば車体に搭載されるカメラで撮影した画像に基づいて算出するようにしてもよい。
【0015】
外部センサ7は、自動二輪車100の周辺環境(例えば障害物、他車(前走車、対向車)、歩行者、道路形状、交通標識等)を含む自車両の外部の情報を取得することが可能なセンサである。外部センサ7は、例えばLiDAR(Light Detection and RangingまたはLaser Imaging Detection and Ranging)、カメラ、レーダ等の少なくとも一つで構成されている。
【0016】
バンク角センサ6、外部センサ7および速度センサ8によって検知された各情報は、ランプ制御部5へ送信される。ランプ制御部5は、各センサ6~8から送信されてきた情報に基づいて、ロービーム用灯具ユニット2およびハイビーム用灯具ユニット3の動作を制御する。例えば、ランプ制御部5は、各センサの検知情報に基づいてヘッドランプ1(ロービーム用灯具ユニット2およびハイビーム用灯具ユニット3)を制御し、車両前方に形成される配光パターン(ロービーム用配光パターンおよびハイビーム用配光パターン)を調整することが可能である。
【0017】
図3は、ハイビーム用灯具ユニット3が収容されたヘッドランプ1の概略構成を示す垂直断面図である。図3に示すように、ヘッドランプ1は、車両前方側に開口部を有するランプボディ11と、ランプボディ11の開口部を覆うように取り付けられた透明の前面カバー12と、を備えている。ランプボディ11と前面カバー12とによって形成される灯室13の内部に、ハイビーム用灯具ユニット3、ランプ制御部5、バンク角センサ6、および外部センサ(例えばLiDAR)7等が収容されている。なお、図3の断面図では図示されていないが、ロービーム用灯具ユニット2もハイビーム用灯具ユニット3と同様にヘッドランプ1の灯室13内に収容されている。
【0018】
ハイビーム用灯具ユニット3は、いわゆるプロジェクタ型の灯具であり、投影レンズ22(光学部材の一例)と、ハイビーム照射用の光源26を有する光源ユニット24と、投影レンズ22および光源ユニット24を保持するホルダ28と、を備えている。投影レンズ22は、前方側表面が凸面で後方側表面が平面の平凸非球面レンズであり、車両前後方向に延びる光軸Ax上に配置されている。投影レンズ22は、その周縁部がホルダ28の前端側に保持されている。投影レンズ22は、光源26からの光を灯具前方へ照射することにより、複数の部分領域から構成される所定の配光パターンを形成する。
【0019】
光源ユニット24は、光源26が光軸Ax方向における前方を向くように配置されて、ホルダ28の後端側に保持されている。光源26は、ランプ制御部5に電気的に接続されている。ホルダ28は、図示しない支持部材を介してランプボディ11に取り付けられている。
【0020】
図4は、光源ユニット24の概略構造を示す斜視図である。光源ユニット24は、光源26と、支持プレート40と、ヒートシンク42と、を有している。光源26は、例えば発光ダイオード(LED)などの発光素子で構成される複数の個別光源30を有する。光源26は、例えば、横9列縦1行で、左右方向(光軸Axに直交する方向)に並列配置される個別光源30a~30iを有し、支持プレート40の前方側表面に固定されている。個別光源30a~30iは、LEDアレイとして構成されている。各々の個別光源30a~30iは、ランプ制御部5と電気的に接続されている。個別光源30a~30iは、後述するADB(Adaptive Driving Beam)モードにおいて、ランプ制御部5により互いに独立に光の照射が制御される。なお、個別光源30の数や配置は特に限定されない。
【0021】
ヒートシンク42は、光源26から発せられる熱を放散させるための部材であり、支持プレート40の車両後方側表面に保持されている。光源ユニット24は、支持プレート40を介してホルダ28に固定されている。
【0022】
次に、自動二輪車100に搭載されたヘッドランプ1によって形成される配光パターンについて、図5及び図6を参照して説明する。
図5は、自動二輪車100の車体が直進状態にあるとき、すなわち、自動二輪車100が路面に対して車体を垂直にした状態で走行しているときに灯具前方に形成される配光パターン(ハイビーム用配光パターンPHおよびロービーム用配光パターンPL)である。自動二輪車100の車体が直進状態にある場合とは、例えば、車体が垂直である場合に対して車体の傾きが±10度以内であることを含む。図6は、自動二輪車100の車体がコーナリング状態にあるとき、例えば、右向きのコーナーを走行するために路面に対して車体を右に傾けた状態で走行しているときに灯具前方に形成される配光パターン(本例ではハイビーム用配光パターンPHのみを示す)である。ハイビーム用配光パターンPHは、ハイビーム用灯具ユニット3によって形成される配光パターンである。ロービーム用配光パターンPLは、ロービーム用灯具ユニット2によって形成される配光パターンである。
【0023】
図5および図6では、灯具前方の所定位置、例えば灯具前方100mの位置に配置された仮想鉛直スクリーン上に形成される配光パターンを示している。また、自動二輪車100とは別に示されている車両は、自動二輪車100の右側前方を走行する対向車CVである。自動二輪車100と対向車CVとは、それぞれ個別の座標系に表示している。対向車CVは、道路座標系X0-Y0上に表示している。自動二輪車100は、二輪車座標系X1-Y1上に表示している。自動二輪車100が直進状態で走行している図5の場合には、道路座標系X0-Y0と二輪車座標系X1-Y1とが一致して表示される。自動二輪車100がコーナリング状態で走行している図6の場合には、自動二輪車100が傾いた角度分だけ道路座標系X0-Y0と二輪車座標系X1-Y1とが相違して表示される。なお、H-Hは水平方向、V-Vは垂直方向を表す。
【0024】
図5および図6に示すように、ハイビーム用配光パターンPHは、複数の縦長状の部分パターンPHa~PHiが水平方向に並列して形成される配光パターンである。各部分パターンPHa~PHiは、個別光源30a~30iから出射される光によってそれぞれ形成される。部分パターンPHaは個別光源30aによって形成されるパターンである。同様に、部分パターンPHbは個別光源30bによって形成され、部分パターンPHcは個別光源30cによって形成され、部分パターンPHdは個別光源30dによって形成され、部分パターンPHeは個別光源30eによって形成され、部分パターンPHfは個別光源30fによって形成され、部分パターンPHgは個別光源30gによって形成され、部分パターンPHhは個別光源30hによって形成され、部分パターンPHiは個別光源30iによって形成されるパターンである。ハイビーム用配光パターンPHは、ADBモードにおいて各部分パターンPHa~PHiの形成と非形成との組み合わせにより、自車や対向車あるいは前走車の状況に応じて異なる態様のハイビーム用配光パターンとして形成される。
【0025】
次に、ランプ制御部5により実行されるADBモードについて説明する。ランプ制御部5は、例えば外部センサ7が取得する環境情報に基づいて、対向車の存否および対向車の存在位置(自動二輪車100から対向車までの距離、仮想鉛直スクリーンにおける対向車の位置座標など)を含む対向車の状況を検知する。また、ランプ制御部5は、例えばバンク角センサ6が取得する車体の傾斜角情報に基づいて、自車の状況を検知する。また、ランプ制御部5は、例えば速度センサ8が取得する速度情報に基づいて、自車の走行と停止とを含む、自車の状況を検知する。ランプ制御部5は、外部センサ7、バンク角センサ6、および速度センサ8が取得する情報に基づいて、各個別光源30の点消灯を個別に制御する。ランプ制御部5は、個別光源30のうち対向車等の対象物が存在しない領域に対応する個別光源30を点灯状態にして、対向車等の対象物が存在する領域に対応する個別光源30を消灯状態にする。
【0026】
例えば、図5において、ランプ制御部5は、外部センサ7および速度センサ8が取得する情報に基づいて、対向車CVの存在方向(対向車CVにおける左右側部位置)や自動二輪車100から対向車CVまでの距離等を算出する。また、ランプ制御部5は、バンク角センサ6が取得する情報に基づいて自車の走行傾斜角度を算出する。ランプ制御部5は、外部センサ7、バンク角センサ6等により取得された情報に基づいて、対向車CVに光が照射されないようにするための遮光範囲Aを規定する。遮光範囲Aは、道路座標系X0-Y0において対向車CVの左側部を通りY0軸方向に延びる境界線xaと、対向車CVの右側部を通りY0軸方向に延びる境界線xbと、の間がX0軸方向の範囲として規定される。また、遮光範囲Aは、境界線xa,xbが二輪車座標系X1-Y1におけるハイビーム用配光パターンPHの上部境界と交差する点を通りX0軸方向に延びる境界線yaと、境界線xa,xbが二輪車座標系X1-Y1のX1軸と交差する点を通りX0軸方向に延びる境界線ybと、の間がY0軸方向の範囲として規定される。なお、遮光範囲Aは、対向車CVよりもやや大きな範囲あるいは対向車CVよりもやや小さな範囲として規定されてもよい。
【0027】
道路座標系X0-Y0と二輪車座標系X1-Y1とが一致している図5の例の場合、道路座標系X0-Y0における遮光範囲A内の各点の座標値は、二輪車座標系X1-Y1におけるハイビーム用配光パターンPH内の同じ座標値に対応付けられる。ランプ制御部5は、規定された遮光範囲Aに基づいて、二輪車座標系X1-Y1においてハイビーム用配光パターンPHにおける対向車CVの存在しない領域に対応する部分パターンを特定する。ランプ制御部5は、図5において、対向車CVが存在しない部分パターンとして、部分パターンPHa~PHf,PHiを特定する。ランプ制御部5は、特定された部分パターンPHa~PHf,PHiを照射領域と判断する。ランプ制御部5は、この照射領域(部分パターンPHa~PHf,PHi)に対応する個別光源30a~30f,30iを点灯状態にする。一方で、ランプ制御部5は、規定された遮光範囲Aに基づいて、二輪車座標系X1-Y1においてハイビーム用配光パターンPHにおける対向車CVの存在する領域に対応する部分パターンPHg,PHh(第一領域の一例)を特定し、特定された部分パターンPHg,PHhを非照射領域(遮光領域)と判断する。ランプ制御部5は、この非照射領域(部分パターンPHg,PHh)に対応する個別光源30g,30hを消灯状態にする。
【0028】
これにより、自動二輪車100が直進状態で走行している場合には、対向車CVに光を照射しないための遮光範囲Aを含むように、対向車CVが存在する領域に対応する部分パターンPHgとPHhとが非照射領域とされたハイビーム用配光パターンPHが形成される。なお、「非照射領域」には、対向車の運転者にグレアを与えない程度に低照度で光を照射する領域が含まれてもよい。
【0029】
次に、図6に示すように、自動二輪車100がコーナリング状態にある場合、例えば、路面に対して車体を右に角度θ傾けた場合には、二輪車座標系X1-Y1は、道路座標系X0-Y0に対して角度θだけ傾斜した状態になる。このため、道路座標系X0-Y0を走行する対向車CVは、自動二輪車100から見たときに角度θだけ左へ傾斜した状態になる。なお、図6では、道路座標系X0-Y0が紙面の水平方向および垂直方向に沿うように表示されている。
【0030】
図6に示す例の場合においても、ランプ制御部5は、バンク角センサ6、外部センサ7、速度センサ8等により取得された情報に基づいて、自動二輪車100及び対向車CVに関する各種情報を算出する。例えば、ランプ制御部5は、自動二輪車100が右に角度θ傾斜したことによって、ハイビーム用配光パターンPHの位置がどのように変化したか算出する。具体的には、ランプ制御部5は、上記自動二輪車100が直進状態の場合において非照射領域と規定された部分パターンPHg及びPHhのそれぞれの左側上端位置である左上点P1及びP2が、自動二輪車100が右に角度θ傾斜したことによって、どの位置に移動したか算出する。
【0031】
道路座標系X0-Y0において、部分パターンPHgの左側上端位置である左上点P1の座標値を(x01,y01)、部分パターンPHhの左側上端位置である左上点P2の座標値を(x02,y02)と規定する。また、自動二輪車100が右に角度θ傾斜したことにより、左上点P1の位置が左上点P3の位置に移動し、左上点P2の位置が左上点P4の位置に移動したとする。道路座標系X0-Y0において、左上点P3の座標値を(x03,y03)、左上点P4の座標値を(x04,y04)と規定する。
【0032】
ランプ制御部5は、左上点P1の座標値(x01,y01)と自動二輪車100の右傾斜角度θとに基づいて、左上点P3の座標値(x03,y03)を算出する。左上点P3の座標値x03は、x03=x01cosθ+y01sinθにより算出することができる。左上点P3の座標値y03は、y03=-x01sinθ+y01cosθにより算出することができる。
【0033】
また、ランプ制御部5は、左上点P2の座標値(x02,y02)と自動二輪車100の右傾斜角度θとに基づいて、左上点P4の座標値(x04,y04)を算出する。左上点P4の座標値x04は、x04=x02cosθ+y02sinθにより算出することができる。左上点P4の座標値y04は、y04=-x02sinθ+y02cosθにより算出することができる。
【0034】
左上点P3は、自動二輪車100が路面に対して車体を右に傾斜させた場合における部分パターンPHgの最も上方に位置する点(最大のy座標値になる点)である。左上点P4は、自動二輪車100が路面に対して車体を右に傾斜させた場合における部分パターンPHhの最も上方に位置する点(最大のy座標値になる点)である。左上点P3及びP4の座標値は、車体の傾斜角度に応じて変化する値である。
【0035】
次に、ランプ制御部5は、対向車CVに搭載されているヘッドランプP5の上端のy軸座標値を算出する。ヘッドランプP5の上端のy軸座標値は、道路座標系X0-Y0における座標値(y05)として算出する。ランプ制御部5は、算出されたヘッドランプP5のy軸座標値(y05)に基づいて、ヘッドランプP5の上端を通過し水平方向Hに沿った基準線Tを設定する。
【0036】
次に、ランプ制御部5は、上記自動二輪車100が直進状態の場合において非照射領域と規定された部分パターンPHg及びPHhのうち部分パターンPHgの左上点P3の座標値y03(-x01sinθ+y01cosθ)が、設定された基準線Tの高さh(座標値y05)を超えているか判断する。また、ランプ制御部5は、部分パターンPHhの左上点P4の座標値y04(-x02sinθ+y02cosθ)が、設定された基準線Tの高さh(座標値y05)を超えているか判断する。図6に示す例において、部分パターンPHgの左上点P3の座標値y03は基準線Tの高さhを超えている。一方、部分パターンPHhの左上点P4の座標値y04は基準線Tの高さhを超えていない。
【0037】
次に、ランプ制御部5は、基準線Tを超えていない部分パターンPHh(第二領域の一例)を対向車CVに対してグレアを与えない部分パターンであると判断する。ランプ制御部5は、例えば、部分パターンPHh内に対向車CVの一部分が含まれている場合であっても、その一部分は対向車CVのヘッドランプP5よりも下側の部分であるため、部分パターンPHhの光がその一部分に照射されても対向車CVの運転者にとってグレアにならないと判断する。そして、ランプ制御部5は、対向車CVの運転者にとってグレアにならないと判断された部分パターンPHhを、光源26の光を照射させる照射領域に設定する。これに対して、ランプ制御部5は、基準線Tを超えている部分パターンPHgを対向車CVに対してグレアを与える部分パターンであると判断する。そして、ランプ制御部5は、部分パターンPHgを光源26の光を照射させない非照射領域(遮光領域)に設定する。これは、自動二輪車100が直進状態のときに設定された部分パターンPHgに関する非照射領域の設定を維持することになる。
【0038】
次に、ランプ制御部5は、非照射領域(部分パターンPHg)に対応する個別光源30gを消灯状態にする。一方、ランプ制御部5は、部分パターンPHg以外の部分パターンPHa~PHf、PHh、およびPHiに対応する個別光源30a~30f,30h,30iを点灯状態にする。これにより、自動二輪車100がコーナリング状態で走行している場合において、自動二輪車100に対して傾いた状態になる対向車CVにグレアを与える光を照射しないようにしつつ、より広い領域にグレアを与えない光を照射することが可能なハイビーム用配光パターンPHが形成される。
【0039】
道路座標系X0-Y0に対する二輪車座標系X1-Y1の傾斜角θは、路面に対する車体の傾きが大きいほど大きくなる。このため、路面に対する自動二輪車100の右方向への傾きが大きいほど、部分パターンPHgの左上点P3の座標値(x03,y03)は、車体が路面に対して垂直に走行しているときの部分パターンPHgの左上点P1の座標値(x01,y01)から右下方向へ大きく変化する。同様に、部分パターンPHhの左上点P4の座標値(x04,y04)は、車体が路面に対して垂直に走行しているときの部分パターンPHhの左上点P2の座標値(x02,y02)から右下方向へ大きく変化する。これにより、自動二輪車100が車体を右に角度θ傾けた場合には、ハイビーム用配光パターンPHのうち自動二輪車100の右方向に形成される部分パターンPHe~PHiの位置が右下方向に移動し、対向車CVにグレアを与える非照射領域と判断される部分パターンの範囲が、図5に示す非照射領域の範囲(部分パターンPHg,PHh)に比べて部分パターンPHh分だけ小さくなる。
【0040】
なお、自動二輪車100の傾き状態が変わることにより、対向車CVのヘッドランプP5よりも上側の一部分が新たに部分パターンPHfの領域内に含まれることになる場合には、ランプ制御部5は、部分パターンPHfを対向車CVにグレアを与える部分パターンであると判断する。そして、ランプ制御部5は、部分パターンPHfを非照射領域(遮光領域)に設定して、対応する個別光源30fを消灯状態にする。
【0041】
以上説明したように、本実施形態に係る車両用灯具(ヘッドランプ)1は、曲がる方向に向かって車体を傾けることでコーナーを走行する自動二輪車100に設けられ、光源26と、光源26からの光をヘッドランプ1前方へ照射することにより、一方向に並列して形成される複数の部分パターンPHa~PHiから構成される所定のハイビーム用配光パターンPHを形成する投影レンズ22(光学部材の一例)と、車両外部の対向車CV(対象物の一例)が検知された場合には、複数の部分パターンPHa~PHiのうち対向車CVを含む第一領域に光源26からの光を照射しないようにハイビーム用配光パターンPHを調節するランプ制御部5と、を備えている。そして、ランプ制御部5は、車体がコーナリング状態にある場合には、車体の傾き情報を取得し、取得した傾き情報に基づいて、第一領域中に水平方向に沿った基準線Tを超えない第二領域が存在するか否かを判断し、第二領域が存在すると判断された場合には、第二領域内に対向車CVが含まれていても第二領域には光源26からの光を照射する、ように構成されている。例えば、対向車CVの一部分に光源26からの光が照射されたとしてもその照射された光が対向車CVの運転者にとってグレアにならなければその対向車CVの一部分に光源26からの光を照射することができ、より広いハイビーム用配光パターンPHを形成することが可能である。上記車両用灯具1の構成によれば、取得した車体の傾き情報に基づいて、基準線Tの位置を対向車CVの運転者にグレアを与えない位置に設定することが可能である。したがって、自動二輪車100の車体が傾いた状態で形成されるハイビーム用配光パターンPHにおいて、対向車CVに光を照射しない非照射範囲をできる限り小さくすることができる。なお、遮光対象物は対向車CVに限られず、例えば前走車であってもよい。前走車に対して同様の制御を行った場合にもハイビーム用配光パターンPHにおける非照射範囲をできる限り小さくすることができる。
【0042】
また、車両用灯具1によれば、対向車CVは少なくとも一つの灯具(図6のヘッドランプP5)が搭載された車両であり、基準線TはヘッドランプP5の上端を通過するように規定されている。このように、対向車CVに搭載されたヘッドランプP5の位置を基準として基準線Tが規定されるので、対向車CVへのグレアの発生を確実に防止することが可能である。また、対向車CVとして自動四輪車だけに限らず、例えば少なくとも一つのヘッドランプを搭載した自動三輪車、自動二輪車等にも適用することができるので、これらの対向車両に対してもグレアの発生を確実に防止することが可能である。
【0043】
また、車両用灯具1によれば、光源26は、並列配置された発光素子からなる複数の個別光源30a~30iを含み、部分パターンPHa~PHiは、各個別光源30a~30iからの光によって水平方向に沿って並列して形成され、ランプ制御部5は、個別光源30a~30iのうち基準線Tを超えない第二領域を形成する個別光源を点灯させる一方で、対向車CVを含む第一領域のうち第二領域以外の領域を形成する個別光源を消灯することで所定のハイビーム用配光パターンPHを形成する。このため、例えばLEDアレイ等を用いた簡便な光源26の構成で、ハイビーム用配光パターンPHにおける部分パターンPHa~PHiの照射領域と非照射領域との切り替えを実現することができる。
【0044】
なお、上記の実施形態では、基準線TはヘッドランプP5の上端を通過するように規定される例を説明したが、この例に限られない。たとえば、ヘッドランプ1と、外部センサ7と、ランプ制御部5とを備えた車両システム50において、基準線Tは、外部センサ7により取得された対向車CVの位置情報に基づいて決定するようにしてもよい。すなわち、外部センサ7により対向車CVの位置情報、特に、対向車CVの運転者の位置情報を取得し、当該運転者に干渉しない高さを高さhとして基準線Tを決定し得る。この構成によっても、上記車両用灯具1と同様に、自動二輪車100の車体が傾いた状態で形成されるハイビーム用配光パターンPHにおいて、対向車CVに光を照射しない非照射範囲をできる限り小さくすることができる。
【0045】
また、上記実施形態では、自動二輪車100が路面に対して車体を右に傾けた場合について説明したが、例えば自動二輪車100が路面に対して車体を左に傾けた場合にも、ランプ制御部5は同様にしてハイビーム用配光パターンPHの照射領域と非照射領域を設定することができる。具体的には、車体が左に傾いた場合には、ランプ制御部5は、部分パターンの右側上端位置である右上点の座標値を特定して、対向車CVに光を照射しない非照射範囲を小さくするように照射領域と非照射領域を設定する。
【0046】
また、上記実施形態では、コーナリング時の照射領域と非照射領域を設定する場合、直進時の非照射領域として特定された部分パターンPHg,PHhの左側上端位置である左上点P1,P2が車体の傾斜によりどの位置に移動したかに基づいて設定しているが、これに限られない。例えば、自動二輪車100の車体が右に傾斜した場合には、先ず、自動二輪車100の右側に形成される部分パターンPHe~PHiのそれぞれの左側上端位置である左上点の座標値を算出し、算出された各座標値が対向車CVの遮光範囲A内に含まれるか否かを判断する。そして、遮光範囲A内に含まれると判断された場合には、その座標値が基準線Tを超えているか否かを判断して、超えていると判断されたときはその部分パターンを非照射領域に設定し、超えていないと判断されたときはその部分パターン内に対向車CVが含まれていても照射領域に設定するようにしてもよい。
【0047】
(第二実施形態)
次に、図7および図8を参照して、第二実施形態に係るヘッドランプ101が備えるハイビーム用灯具ユニット103の構成を説明する。
図7に示すように、ハイビーム用灯具ユニット103は、プロジェクタ型の灯具である。ハイビーム用灯具ユニット103は、回転リフレクタ111(光学部材の一例)と、LED113(光源の一例)と、回転リフレクタ111の前方に配置された投影レンズ115(光学部材の一例)と、を備えている。なお、LED113の代わりにEL素子やLD素子などの半導体発光素子を光源として用いることも可能である。特に後述する配光パターンの一部を非照射にするための制御には、点消灯が短時間に精度よく行える光源が好ましい。投影レンズ115の形状は、要求される配光パターンや照度分布などの配光特性に応じて適宜選択すればよいが、非球面レンズや自由曲面レンズが用いられる。本実施形態では、投影レンズ115として凸状の非球面レンズを用いている。
【0048】
回転リフレクタ111は、不図示のモータなどの駆動源により回転軸Rを中心に一方向に回転する。また、回転リフレクタ111は、LED113から出射された光を回転しながら反射し、所望の配光パターンを形成するように構成される反射面を備えている。
【0049】
図8に示すように、回転リフレクタ111は、形状の同じ3枚のブレード111aと、筒状の回転部111bと、を備えている。ブレード111aは、反射面として機能し、回転部111bの周囲に設けられている。回転リフレクタ111の回転軸Rは、光軸Axに対して斜めになっており、光軸AxとLED113とを含む平面内に設けられている。
【0050】
ブレード111aは、回転軸Rを中心とする周方向に向かうにつれて、光軸Axと反射面とが成す角が変化するように捩られた形状を有している。これにより、図9に示すようにLED113の光を用いた走査が可能になる。具体的には、回転リフレクタ111は、120度回転することで、LED113の光によって前方を一方向(水平方向)に1回走査できるように構成されている。すなわち、1枚のブレード111aがLED113の前を通過することで、車両前方の所望の領域がLED113の光によって1回走査されることになる。
【0051】
第二実施形態においても、ランプ制御部5は、自動二輪車100の車体が傾斜することによってハイビーム用配光パターンPHの位置がどのように変化したか算出する。そして、変化後のハイビーム用配光パターンPHにおいて、対向車CV(対象物)にグレアを与えないように変化した部分パターン(第二領域)に対しては光源の光を照射するようにハイビーム用配光パターンPHを調節する。
【0052】
具体的には、ランプ制御部5は、自動二輪車100が直進状態のときに非照射領域と規定された部分パターンPHg及びPHhのそれぞれの左側上端位置である左上点P1及びP2の座標値が、自動二輪車100が右に角度θ傾斜することによってどの位置に移動したか算出する。自動二輪車100が右に角度θ傾斜することによって左上点P1及びP2の座標値が例えば左上点P3及びP4の座標値に移動したとすると、次いで、ランプ制御部5は、左上点P3及びP4の座標値が、対向車CVのヘッドランプP5を通る位置として設定された基準線Tの高さhを超えているか否か判断する。次いで、ランプ制御部5は、例えば左上点P4が基準線Tの高さhを超えない点であると判断された場合、左上点P4に対応する部分パターンPHhを対向車CVに対してグレアを与えない部分パターンであると判断して、部分パターンPHhを照射領域に設定する。一方、ランプ制御部5は、例えば左上点P3が基準線Tの高さhを超える点である判断された場合、左上点P3に対応する部分パターンPHgを対向車CVに対してグレアを与える部分パターンであると判断して、部分パターンPHgに関する非照射領域の設定を維持する。次いで、ランプ制御部5は、LED113の点消灯のタイミングを回転リフレクタ111の回転と同期させることで、ハイビーム用配光パターンPHのうち非照射領域にLED113からの光が照射されないように、LED113や回転リフレクタ111の動作を制御する。
【0053】
このように、回転リフレクタ111を備えたスキャン光学系のハイビーム用灯具ユニット103においても、LEDアレイを備えた第一実施形態に係るハイビーム用灯具ユニット3と同様に、車体が傾いた場合に部分パターンの左上点の座標値を算出し、その座標値が対向車CVのヘッドランプP5を通る基準線Tの高さhを超えていない場合には、その左上点に対応する部分パターンを照射領域に設定することで、対向車CVに光を照射しない非照射範囲をできる限り小さくすることができる。
【0054】
なお、回転リフレクタ111に代えて、ガルバノミラーやポリゴンミラーを備えたスキャン光学系のハイビーム用灯具ユニットを採用してもよい。この場合も、上記の同様の制御を行うことで、第一実施形態および第二実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0055】
以上、本発明の実施形態について説明をしたが、本発明の技術的範囲が本実施形態の説明によって限定的に解釈されるべきではないのは言うまでもない。本実施形態は単なる一例であって、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内において、様々な実施形態の変更が可能であることが当業者によって理解されるところである。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲に記載された発明の範囲およびその均等の範囲に基づいて定められるべきである。
【0056】
上記の各実施形態では、ランプ制御部5、バンク角センサ6および外部センサ7が、ヘッドランプ1の灯室内に収容されている構成を開示しているが、この例に限られない。ランプ制御部5、バンク角センサ6および外部センサ7が、ヘッドランプ1とは別体で配置されていてもよい。
【符号の説明】
【0057】
1,101:ヘッドランプ(車両用灯具の一例)、2:ロービーム用灯具ユニット、3,103:ハイビーム用灯具ユニット、5:ランプ制御部、6:バンク角センサ、7:外部センサ、8:速度センサ、22,115:投影レンズ(光学部材の一例)、26:光源、30(30a~30i):個別光源、50:車両システム、100:自動二輪車(車両の一例)、111:回転リフレクタ(光学部材の一例)、111a:ブレード、111b:回転部、113:LED(光源の一例)、A:遮光範囲、CV:対向車、P1,P2,P3,P4:左上点、P5:ヘッドランプ、PH:ハイビーム用配光パターン、PHa~PHi:部分パターン、PL:ロービーム用配光パターン、基準線:T
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8