(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-14
(45)【発行日】2024-06-24
(54)【発明の名称】半導体回路、及び半導体回路の故障判定方法
(51)【国際特許分類】
H03K 17/00 20060101AFI20240617BHJP
H03K 17/687 20060101ALI20240617BHJP
【FI】
H03K17/00 B
H03K17/687 E
(21)【出願番号】P 2020157803
(22)【出願日】2020-09-18
【審査請求日】2022-07-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【氏名又は名称】赤岡 明
(74)【代理人】
【識別番号】100125151
【氏名又は名称】新畠 弘之
(72)【発明者】
【氏名】菖蒲谷 信幸
(72)【発明者】
【氏名】野稲 泰一
【審査官】竹内 亨
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2008/0143340(US,A1)
【文献】特開2020-061820(JP,A)
【文献】国際公開第2019/240004(WO,A1)
【文献】特開2009-254199(JP,A)
【文献】特開平10-257779(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03K 17/00-17/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端が高電位側の第1ノードに接続され、他端が負荷の一端が接続される第2ノードに
接続される第1スイッチング素子と、一端が前記第1ノードに接続され、他端が前記負荷
の他端が接続される第3ノードに接続される第2スイッチング素子と、一端が低電位側の
第4ノードに接続され、他端が前記第2ノードに接続される第3スイッチング素子と、一
端が前記第4ノードに接続され、他端が前記第3ノードに接続される第4スイッチング素
子と、を有する駆動回路と、
前記第2ノード、及び前記第3ノードそれぞれの電位と所定の電位とを比較する比較回
路と、
前記比較回路の出力に基づき、少なくとも、
前記第2ノード、及び前記第3ノード
の間が断線して
いるかを判定可能である判定回路と、
前記駆動回路を制御する制御回路と、
を、
備え、
前記制御回路は、制御信号に基づき、前記駆動回路を、前記第2ノード、及び前記第3ノードそれぞれの電位を低電位にする第1状態から、
前記第1スイッチング素子と前記第2スイッチング素子のどちらか一方のみを接続状態とし、前記第3スイッチング素子及び前記第4スイッチング素子を非接続状態とする第2状態に遷移させ、
前記比較回路は、前記第1状態から前記第2状態に遷移することで、前記第2ノード、及び前記第3ノードそれぞれの電位が前記所定の電位を超えて変動したか否かを判定し、
前記判定回路は、前記第2ノード、及び前記第3ノードの一方のみが前記所定の電位を
超えて変動した場合に、前記第2ノード、及び前記第3ノードの間が断線していると判定
する、半導体回路。
【請求項2】
一端が高電位側の第1ノードに接続され、他端が負荷の一端が接続される第2ノードに
接続される第1スイッチング素子と、一端が前記第1ノードに接続され、他端が前記負荷
の他端が接続される第3ノードに接続される第2スイッチング素子と、一端が低電位側の
第4ノードに接続され、他端が前記第2ノードに接続される第3スイッチング素子と、一
端が前記第4ノードに接続され、他端が前記第3ノードに接続される第4スイッチング素
子と、を有する駆動回路と、
前記第2ノード、及び前記第3ノードそれぞれの電位と所定の電位とを比較する比較回
路と、
前記比較回路の出力に基づき、少なくと
も、前記第2ノード、及び前記第3ノード
の間が断線して
いるか否かを判定可能である判定回路と、
前記駆動回路を制御する制御回路と、
を、
備え、
前記制御回路は、制御信号に基づき、前記駆動回路を、前記第2ノード、及び前記第3ノードそれぞれの電位を高電位にする第1状態から、
前記第3スイッチング素子と前記第4スイッチング素子のどちらか一方のみを接続状態とし、前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子を非接続状態とする第2状態に遷移させ、
前記比較回路は、前記第1状態から前記第2状態に遷移することで、前記第2ノード、及び前記第3ノードそれぞれの電位が前記所定の電位を超えて変動したか否かを判定し、
前記判定回路は、前記第2ノード、及び前記第3ノードの一方のみが前記所定の電位を
超えて変動した場合に、前記第2ノード、及び前記第3ノードの間が断線していると判定
する、半導体回路。
【請求項3】
一端が高電位側の第1ノードに接続され、他端が負荷の一端が接続される第2ノードに
接続される第1スイッチング素子と、一端が前記第1ノードに接続され、他端が前記負荷
の他端が接続される第3ノードに接続される第2スイッチング素子と、一端が低電位側の
第4ノードに接続され、他端が前記第2ノードに接続される第3スイッチング素子と、一
端が前記第4ノードに接続され、他端が前記第3ノードに接続される第4スイッチング素
子と、を有する駆動回路を備えた半導体回路の故障判定方法であって、
前記第2ノード、及び前記第3ノードそれぞれの電位と所定の電位とを比較する比較工
程と、
前記比較工程での結果に基づき、少なくとも、前記第2ノード、及び前記第3ノードの
間が断線しているかを
判定可能である判定工程と、
前記駆動回路を制御する制御工程と、
を備え、
前記制御工程では、前記第2ノード、及び前記第3ノードそれぞれの電位を低電位にする第1状態から、
前記第1スイッチング素子と前記第2スイッチング素子のどちらか一方のみを接続状態とし、前記第3スイッチング素子及び前記第4スイッチング素子を非接続状態とする第2状態に遷移させ、
前記比較工程では、前記第1状態から前記第2状態に遷移することで、前記第2ノード、及び前記第3ノードそれぞれの電位が前記所定の電位を超えて変動したか否かを判定し、
前記判定工程では、前記第2ノード、及び前記第3ノードの一方のみが前記所定の電位を超えて変動した場合に、前記第2ノード、及び前記第3ノードの間が断線していると判定する、半導体回路の故障判定方法。
【請求項4】
一端が高電位側の第1ノードに接続され、他端が負荷の一端が接続される第2ノードに
接続される第1スイッチング素子と、一端が前記第1ノードに接続され、他端が前記負荷
の他端が接続される第3ノードに接続される第2スイッチング素子と、一端が低電位側の
第4ノードに接続され、他端が前記第2ノードに接続される第3スイッチング素子と、一
端が前記第4ノードに接続され、他端が前記第3ノードに接続される第4スイッチング素
子と、を有する駆動回路を備えた半導体回路の故障判定方法であって、
前記第2ノード、及び前記第3ノードそれぞれの電位と所定の電位とを比較する比較工
程と、
前記比較工程での結果に基づき、少なくとも、前記第2ノード、及び前記第3ノードの
間が断線しているかを
判定可能である判定工程と、
前記駆動回路を制御する制御工程と、
を備え、
前記制御工程では、前記第2ノード、及び前記第3ノードそれぞれの電位を低電位にする第1状態から、
前記第3スイッチング素子と前記第4スイッチング素子のどちらか一方のみを接続状態とし、前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子を非接続状態とする第2状態に遷移させ、
前記比較工程では、前記第1状態から前記第2状態に遷移することで、前記第2ノード、及び前記第3ノードそれぞれの電位が前記所定の電位を超えて変動したか否かを判定し、
前記判定工程では、前記第2ノード、及び前記第3ノードの一方のみが前記所定の電位を超えて変動した場合に、前記第2ノード、及び前記第3ノードの間が断線していると判定する、半導体回路の故障判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体回路、及び半導体回路の故障判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体回路内のHブリッジ回路により駆動されるモータ等の負荷は断線する場合がある。このため、負荷の断線の有無を判定することが行われる。さらに、Hブリッジ回路内のノード間が短絡することにより、故障が生じる恐れがある。
【0003】
ところが、負荷の断線とノード間の短絡とを判定可能にすると、検知回路が大規模化してしまう恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、半導体回路および周辺回路の故障原因をより簡易に判定可能な半導体回路、及び半導体回路の故障判定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態に係る半導体回路は、駆動回路と、判定回路と、制御回路と、を備える。駆動回路は、一端が高電位側に接続され、他端が負荷の一端に接続される第1スイッチング素子と、一端が高電位側に接続され、他端が負荷の他端に接続される第2スイッチング素子と、一端が低電位側に接続され、他端が負荷の一端に接続される第3スイッチング素子と、一端が低電位側に接続され、他端が負荷の他端に接続される第4スイッチング素子と、を有する。比較回路は、負荷の一端又は他端の電位と所定の電位を比較する。判定回路は、比較回路の出力に基づき、負荷を含む駆動回路の状態を判定する。制御回路は、駆動回路を制御する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】一実施形態に係る半導体回路の構成を示すブロック図。
【
図2】故障検知動作時のトランジスタの接続及び非接続の状態を示す図。
【
図4】判定回路におけるモータの断線検知の判定動作を模式的に示す図。
【
図6】状態から状態の間に、印可される電圧と、計測される電圧の関係を示す図。
【
図7】
図6と異なる近似パラメータおいて、状態から状態の間に、印可される電圧と、計測される電圧の関係を示す図。
【
図9】
図2と異なるトランジスタの接続及び非接続の状態を示す図。
【
図11】近似回路に印可される電圧を模式的に示す図で。
【
図12】状態遷移の間に、印可される電圧と、計測される電圧との関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態に係る半導体回路、及び半導体回路の故障判定方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態は、本発明の実施形態の一例であって、本発明はこれらの実施形態に限定して解釈されるものではない。また、本実施形態で参照する図面において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号又は類似の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。また、図面の寸法比率は説明の都合上実際の比率とは異なる場合や、構成の一部が図面から省略される場合がある。
【0009】
(一実施形態)
図1は、一実施形態に係る半導体回路1の構成を示すブロック図である。本実施形態に係る半導体回路1は、故障原因を検出可能な回路であり、Hブリッジ回路10と、モータ20と、検知回路30と、判定回路40と、制御回路50とを、備える。
【0010】
Hブリッジ回路10は、トランジスタ101~104を有する。Hブリッジ回路10は、例えばPWM制御され、モータ20を駆動するための電流を生成する。
図1に示すトランジスタ101~104は、NチャネルDMOS(Double―Diffused MOSFET)トランジスタであるがこれに限定されない。例えば、DMOS以外のオン、オフ制御が可能なスイッチング素子を用いてもよい。なお、Hブリッジ回路10が駆動回路に対応する。また、トランジスタ101~104のそれぞれがスイッチング素子に対応する。
【0011】
トランジスタ101は、一端(ドレイン)が端子Tvbを介して電源電圧Vbである高電位側電源に接続され、他端(ソース)がモータ20の一端に接続される。また、制御端子(ゲート)に制御回路50の出力端子が接続され、制御信号Sg1が入力される。
【0012】
トランジスタ102は、一端(ドレイン)が端子Tvb1を介して高電位側電源に接続され、他端(ソース)はモータ20の他端に接続される。また、制御端子(ゲート)に制御回路50の出力端子が接続され、制御信号Sg2が入力される。
【0013】
トランジスタ103は、一端(ドレイン)がモータ20の一端に接続され、他端が低電位側電圧(接地電位)Gndに接続される。また、制御端子(ゲート)に制御回路50の出力端子が接続され、制御信号Sg3が入力される。
【0014】
トランジスタ104は、一端(ドレイン)がモータ20の他端に接続され、他端が低電位側電圧Gndに接続される。また、制御端子(ゲート)に制御回路50の出力端子が接続され、制御信号Sg4が入力される。
【0015】
端子T1は、トランジスタ101のソースとトランジスタ103のドレインの接続点(ノードn2)に接続される。端子T1と接地電位Gndの間には、不図示の容量が接続される。
同様に、端子T2は、トランジスタ102のソースとトランジスタ104のドレインの接続点(ノードn3)に接続される。端子T2と接地電位Gndの間には、不図示の容量が接続される。
【0016】
モータ20は、例えばDCモータである。モータ20は、遊技機、プリンタ、コンピュータ、デジタルカメラ、産業用ロボット等に適用される。なお、本実施形態に係るモータ20が負荷に対応する。負荷は、モータ20に限定されない。例えば、負荷は、Hブリッジ回路10により駆動される電子機器であればよい。
【0017】
検知回路30は、ノードn2及びn3の電圧を検知する。この検知回路30は、比較回路201、202を有する。比較回路201は、非反転端子がノードn3に接続され、反転端子が制御回路50の出力端子に接続される。比較回路201の出力端子は、判定回路40に接続される。
【0018】
比較回路201は、モータ20の他端の電圧と、制御回路50から供給されるしきい値電圧Sthを比較する。そして、比較回路201は、モータ20の他端の電圧が、しきい値電圧Sth以上であれば真値(例えば1)を、しきい値電圧Sth未満であれば偽値(例えば0)を、判定回路40に出力する。
【0019】
比較回路202は、非反転端子がノードn2に接続され、反転端子が制御回路50の出力端子に接続される。比較回路202の出力端子は、判定回路40に接続される。
【0020】
比較回路202は、モータ20の一端の電圧と、制御回路50から供給されるしきい値電圧Sthとを比較する。そして、比較回路202は、モータ20の一端の電圧が、しきい値電圧Sth以上であれば真値(例えば1)を、しきい値電圧Sth未満であれば偽値(例えば0)を、判定回路40に出力する。
【0021】
判定回路40は、制御信号Sg1~Sg4の組合せと、検知回路30の出力信号の組合せに基づき、半導体回路1の故障検知を行う。判定回路40は、後述するように、故障検知としてモータ20の断線検知、及び、Hブリッジ回路10内の短絡検知を行う。詳細は後述するが、判定回路40は、ノードn2及びノードn3間の断線検知を行う。また、判定回路40は、、ノードn1とノードn2の間、ノードn1とノードn3の間、ノードn2とノードn4の間、及びノードn3とノードn4の間、の短絡検知を行う。
【0022】
判定回路40は、故障判定をすると故障を示す判定信号Snを制御回路50に出力する。例えば、判定回路40は、断線と判定すると、判定信号Sn_Disを制御回路50に出力する。また、判定回路40は、ノードn1とノードn2の間の短絡と判定すると、判定信号Sn_n1n2を制御回路50に出力し、ノードn1とノードn3の間の短絡と判定すると、判定信号Sn_n1n3を制御回路50に出力し、ノードn2とノードn4の間の短絡と判定すると、判定信号Sn_n2n4を制御回路50に出力し、ノードn3とノードn4の間の短絡と判定すると、判定信号Sn_n3n4を制御回路50に出力する。そして、判定回路40は、故障を検出しなかった場合に、故障が検知できなかったことを示す判定信号Ssを制御回路50に出力する。
【0023】
制御回路50は、制御信号Sg1~Sg4をHブリッジ回路10に出力し、Hブリッジ回路10を駆動制御する。制御回路50は、故障を示す判定信号Snを取得すると、例えばトランジスタ101~104を非接続状態にする制御信号Sg1~Sg4をHブリッジ回路10に出力し、Hブリッジ回路10の駆動を停止する。この場合、後続する故障検知動作も停止する。これにより、故障が拡大することが抑制される。
【0024】
また、制御回路50は、故障を示す判定信号Snに基づき、故障原因を示す情報を含む信号を、例えばモニタなどの外部装置に出力してもよい。一方で、制御回路50は、判定信号Ssを取得した場合には、Hブリッジ回路10の通常の駆動制御に移行する。
【0025】
[断線検知]
まず、
図2乃至
図6に基づき、ノードn2及びノードn3間の断線検知動作について説明する。
図2は、故障検知動作時の状態t0~t4までのトランジスタ101~104の接続(ON)及び非接続(OFF)の状態を示す図である。
【0026】
図3は、故障検知動作時の状態t0~t4の制御信号Sg1~Sg4を示す図である。
図3の横軸は時間経過を示し、縦軸は制御信号Sg1~Sg4の信号値を示す。制御信号Sg1~Sg4は、ハイレベルでトランジスタ101~104を接続状態とし、ロウレベルでトランジスタ101~104を非接続状態とする。制御信号Sg1~Sg4の組合せは、時間経過にしたがい変化し、Hブリッジ回路10は状態t0から状態t4に順に遷移する。
【0027】
図4は、判定回路40におけるモータ20の断線検知の判定動作を模式的に示す図である。断線の検知動作は、状態t1で開始し、状態t4で終了する。
【0028】
図5は、端子T1及びT2間の近似回路20aを模式的に示す図である。近似回路20aは、例えばリアクタンスL、抵抗R、及び容量Cの組合せで表される。電圧L10は、状態t1から状態t2の間に、ノードn2に印可される電圧の時間変化を示している。縦軸は電圧値を示し、横軸は時間を示す。半導体回路1が正常動作をしている場合、ノードn2に、状態t1では接地電位Gndが印可され、状態t2では電源電圧Vbが印可される。
【0029】
図6は、状態t1から状態t2の間に、ノードn2に印可される電圧L10と、ノードn3で計測される電圧L20の関係の一例を示す図である。時点T20よりも前が状態t1であり、時点T20以後が状態t2である。縦軸は電圧値を示し、横軸は時間を示す。端子T1及びT2間の近似パラメータがL=2mH,R=100Ω、C=0.1μFである場合の応答を示す。すなわち、半導体回路1が正常動作をしている場合、比較回路202には、電圧L10及びしきい値電圧Sthが供給される。端子T1及びT2間の近似パラメータには、リアクタンスL、及び容量Cが含まれるため、ステップ状の電圧L10が印可されると過渡応答により電圧L20は、印可の時点からしばらく変動し、やがて電圧L10に収束する。また、ノードn3で計測される電圧L20aは、ノードn2及びノードn3間が断線している場合の例を示している。ノードn2及びノードn3間が断線している場合、ノードn2に印可される電圧L10は、ノードn3に印可されないため、電圧L20aは、初期電圧である0ボルトを維持する。また、比較回路201には、電圧L20及びしきい値電圧Sthが供給される。
【0030】
図7は、
図6と異なる近似パラメータおいて、状態t1から状態t2の間に、ノードn2に印可される電圧L10と、ノードn3で計測される電圧L20の関係を示す図である。例えばリアクタンスLは、L=2mHよりも大きな値であり、容量CLは、CL=2mHよりも大きな値である。縦軸は電圧値を示し、横軸は時間を示す。端子T1及び端子T2間のLRC近似パラメータが変わると、しきい値電圧Sthを超えるまでに要する時間などの応答が変化する。例えば、リアクタンスL、及び容量Cが大きくなるに従い、例えば電圧L20が電圧L10を超えるまでに要する時間が増加し、電圧L10に収束するまでの時間が増加する。また
図6と同様に、ノードn3で計測される電圧L20aは、ノードn2及びノードn3間が断線している場合の例を示している。
【0031】
図2に示すように、状態t0では、制御信号Sg1~Sg4は、全てロウレベルである。これにより、トランジスタ101~104は、全て非接続状態である。状態t0では、モータ20は停止状態(disable)である。なお、モータ20の動作状況や電源電圧Vbの印可状態により、モータ定数、端子容量が異なる。モータ定数、端子容量が異なると端子T1及びT2間の近似パラメータが変更され、端子T1、T2に接続される外付け容量の蓄積電荷をほぼ0にするまでの時間も変動する。このため、端子T1、T2に接続される外付け容量の蓄積電荷を安定的にほぼ0にするように、判定回路40の検知動作の開始を任意のタイミングに設定可能である。
【0032】
判定回路40は、状態t1から検知動作を開始する。状態t1では、トランジスタ101、102は非接続状態であり、トランジスタ103、104は接続状態である。このため、端子T1、T2に接続される外付け容量は、蓄積電荷がほぼ0となる。これにより、ノードn2、n3の電位は接地電位Gndとなる。したがって、比較回路201、202の非反転入力端子には接地電位Gndが供給される。このため、比較回路201、202は、偽値を出力する。
【0033】
状態t2では、トランジスタ101は接続状態であり、トランジスタ102、103、104は非接続状態である。比較回路201は、電圧L20がしきい値電圧Sthを超えれば、真値を出力する。一方で、比較回路201は、電圧L20がしきい値電圧Sth未満であれば、偽値を出力する。なお、しきい値電圧Sthは、電圧L20の変動が測定できる値であれば、任意の値でよい。例えば、電源電圧Vbの10~50%の値などである。
【0034】
状態t1から状態t2に遷移すると、ノードn2にはステップ状の電位L10が印可される。この場合、ノードn2、n3間が断線していない場合、ノードn3には電圧L20が印可される。この場合、状態t1において、端子T1、T2に接続される外付け容量の蓄積電荷をほぼ接地電位Gndにしているので、電圧L20の応答特性は安定する。例えば、外付け容量の蓄積電荷をほぼ接地電位Gndにした後に、電圧L10を印可すると、電圧L20は常に同様の電圧変動を示す。これにより、ノードn2、n3間が断線していない場合、状態t2では、所定の時間が経過すると比較回路201の出力は安定的に真値となる。
【0035】
一方で、ノードn2、n3間が断線している場合にも、状態t1から状態t2に遷移すると、ノードn2にはステップ状の電位L10が印可される。しかし、ノードn3の電位は接地電位Gndに維持される。このため、状態t2では、所定の時間が経過しても、比較回路201の出力は偽値に維持される。
【0036】
ところで、外付け容量の蓄積電荷をほぼ接地電位Gndにしない場合には、外付け容量の蓄積電荷が残り、ノードn3の電位がしきい値電圧Sth以上の高電位に維持される場合が生じ得る。これにより、ノードn2、n3間が断線している場合にも、電圧L20aがしきい値電圧Sthを超え、判定回路40の誤判定が生じ得る。しかし、予め外付け容量の蓄積電荷をほぼ接地電位Gndにしているので、ノードn2、n3間が断線している場合には、ノードn3の電位は接地電位Gndに安定的に維持され、誤判定が抑制される。
【0037】
判定回路40は、比較回路201の出力が、状態t1で偽値であり、状態t2で真値であれば、ノードn2、n3間は断線していないと判定する。判定回路40は、状態t1から状態t2に遷移することに応じて、ノードn2の電位がしきい値電圧Sthを超えた場合に、ノードn2、n3間は断線していないと判定する。
【0038】
一方で、判定回路40は、比較回路201の出力が状態t1で偽値であり、状態t2で偽値に維持されれば、ノードn2、n3間は断線していると判定する。このように、判定回路40は、状態t1から状態t2に遷移することに応じて、ノードn2の電位がしきい値電圧Sthを超えていない場合に、ノードn2、n3間は断線していると判定する。
【0039】
状態t1及びt2での断線検知動作を状態t3及びt4でも同様に行うことが可能である。
状態t3では、トランジスタ101、102は非接続状態であり、トランジスタ103、104は接続状態である。したがって、比較回路201、202の非反転入力端子に接地電位Gndが供給される。このため、比較回路201、202は、偽値を出力する。
【0040】
状態t4では、トランジスタ102は接続状態であり、トランジスタ101、103、104は非接続状態である。
【0041】
比較回路202は、電圧L20がしきい値電圧Sthを超えれば、真値を出力する。一方で、比較回路202は、電圧L20がしきい値電圧Sth未満であれば、偽値を出力する。
【0042】
判定回路40は、比較回路202の出力が状態t3で偽値であり、状態t4で真値であれば、ノードn2、n3間は断線していないと判定する。
一方で、判定回路40は、比較回路202の出力が、状態t3で偽値であり、状態t4で偽値に維持されれば、ノードn2、n3間は断線していると判定する。このように、断線の検知は、態t1から状態t2への遷移、又は状態t3から状態t4への遷移の一方のみの動作で検知可能である。
【0043】
[短絡検知]
次に、状態t1から状態t4の遷移の中での短絡検知について説明する。半導体回路1は、ノードn1とノードn2の間、ノードn1とノードn3の間、ノードn2とノードn4の間、及びノードn3とノードn4の間、の短絡の検知を行う。
【0044】
ノードn1とノードn3の間が短絡している場合、状態t1において、比較回路201の非反転入力端子には、電圧Vbが供給される。比較回路201は真値を出力する。これにより、判定回路40は、ノードn1、n3の間は短絡していると判定する。
【0045】
ノードn3、n4の間が短絡している場合、状態t2において、比較回路201の非反転入力端子には電圧Gndが供給される。比較回路201は偽値を出力する。これにより、判定回路40は、ノードn3、n4の間は短絡していると判定する。また、ノードn3、n4の間が短絡している場合、状態t0においても、既にノードn3が接地電位Gndになっているので、ノードn2及びノードn3間の断線と区別可能である。
【0046】
ノードn1、n2の間が短絡している場合、状態t3において、比較回路202の非反転入力端子には、電圧Vbが供給される。比較回路202は真値を出力する。これにより、判定回路40は、ノードn1、n2の間は短絡していると判定する。
【0047】
ノードn2、n4の間が短絡している場合、状態t4において、比較回路202の非反転入力端子には電圧Gndが供給される。比較回路202は偽値を出力する。これにより、判定回路40は、ノードn2、n4の間は短絡していると判定する。このように、状態t1から状態t4の遷移の中での各短絡の箇所を検知することが可能となる。
【0048】
図8は、制御回路50の制御例を模式的に示す図である。横軸は時間を示している。制御回路50は、電源電圧Vbの印可を開始すると共に判定動作T12を行う。また、モータ駆動T14の直前に判定動作T12を行う。さらに、制御回路50は、モータ停止T16後、再度モータ駆動14の直前に判定動作T12を行う。判定動作T12は、制御コマンドに基づき、
図2で示す、一連の処理を実行する。より具体的には、制御回路50は、制御コマンドとして、
図2示す、一連の処理を実行する制御信号Sg1~Sg4の組合せを順に出力し、判定回路40に、制御信号Sg1~Sg4の組合せに応じた故障判定を行わせる。上述のように、制御回路50は、制御コマンドにしたがった判定動作の中で、故障を示す判定信号Snを取得すると、トランジスタ101~104を非接続状態にする制御信号Sg1~Sg4をHブリッジ回路10に出力し、Hブリッジ回路10の駆動を停止する。一方で、制御回路50は、制御コマンドにしたがった判定動作の中で、故障が検知できなかったことを示す判定信号Ssを取得すると、通常のモータ駆動を開始する。これにより、常に、断線故障の無い状態で、モータ20を駆動することが可能となる。
【0049】
[外付け容量の電位を電源電位Vbにする場合の検知方法]
外付け容量の電位を電源電位Vbにする場合の検知方法について説明する。
図1の半導体回路1では、状態t1において、トランジスタ103,104を接続状態にすることで、外付け容量の電位を接地電位Gndにしていたが、以下の検知方法では、外付け容量の電位を電源電位Vbにすることで相違する。
【0050】
[断線検知]
まず、
図9乃至
図12に基づき、ノードn2、n3間の断線検知動作について説明する。
図9は、故障検知動作時の状態t10~t14までのトランジスタ101~104の接続(ON)及び非接続(OFF)の状態を示す図である。
【0051】
図10は、故障検知動作時の状態t10~t14の制御信号Sg1~Sg4を示す図である。
図10の横軸は時間経過を示し、縦軸は制御信号Sg1~Sg4の信号値を示す。制御信号Sg1~Sg4は、ハイレベルでトランジスタ101~104を接続状態とし、ロウレベルでトランジスタ101~104を非接続状態とする。
【0052】
図11は、近似回路20aに印可される電圧L12を模式的に示す図である。
電圧L12は、状態t11から状態t12の間に、ノードn2に印可される電圧の時間変化を示している。縦軸は電圧値を示し、横軸は時間を示す。半導体回路1が正常動作をしている場合、ノードn2に、状態t11では電源電圧Vbが印可され、状態t12では接地電位Gndが印可される。
【0053】
図12は、状態t11から状態t12の間に、ノードn2に印可される電圧L12と、ノードn3で計測される電圧L24の関係を示す図である。縦軸は電圧値を示し、横軸は時間を示す。端子T1及びT2間の近似パラメータがL=2mH,R=100Ω、C=0.1μFである場合の応答を示す。すなわち、半導体回路1が正常動作をしている場合、比較回路202には、電圧L12及びしきい値電圧Sthが供給される。また、比較回路201には、電圧L24及びしきい値電圧Sthが供給される。
【0054】
図9に示すように、状態t10では、制御信号Sg1~Sg4は、全てロウレベルである。これにより、トランジスタ101~104は、全て非接続状態である。状態t0では、モータ20は停止状態である。
【0055】
判定回路40は、状態t11から検知動作を開始する。状態t11では、トランジスタ101、102は接続状態であり、トランジスタ103、104は非接続状態である。このため、端子T1及び端子T2に接続される外付け容量は、電源電圧Vbに対応する電荷が蓄積される。これにより、ノードn2、n3の電位は電源電圧Vbとなる。したがって、比較回路201、202の非反転入力端子には電源電圧Vbが供給される。このため、比較回路201、202は真値を出力する。
【0056】
状態t12では、トランジスタ103は接続状態であり、トランジスタ101、102、104は非接続状態である。比較回路201は、電圧L24がしきい値電圧Sth未満となれば、偽値を出力する。一方で、比較回路201は、電圧L24がしきい値電圧Sth以上であれば、真値を出力する。しきい値電圧Sthは、電圧L24の変動が測定できる値であれば、任意の値でよい。例えば、電源電圧Vbの10~50%の値などである。
【0057】
状態t11から状態t12に遷移すると、ノードn2にはステップ状の電位L12が印可される。この場合、ノードn2、n3間が断線していない場合、ノードn3には電圧L24が印可される。この場合、状態t11において、端子T1及び端子T2に接続される外付け容量に電源電圧Vbに対応する電荷が蓄積されいるので、電圧L24の再現性は安定する。このため、ノードn2、n3間が断線していない場合、状態t12では、所定の時間が経過すると比較回路201の出力は偽値となる。
【0058】
一方で、ノードn2、n3間が断線している場合にも、状態t11から状態t12に遷移すると、ノードn2にはステップ状の電位L12が印可される。しかし、ノードn3の電位は電源電圧Vbに維持される。このため、状態t12では、所定の時間が経過しても、比較回路201の出力は真値に維持される。
【0059】
判定回路40は、比較回路201の出力が、状態t11で真値であり、状態t12で偽値であれば、ノードn2、n3間は断線していないと判定する。判定回路40は、状態t11から状態t12に遷移することに応じて、ノードn2の電位がしきい値電圧Sthを超えて変位した場合に、ノードn2、n3間は断線していないと判定する。
【0060】
一方で、判定回路40は、比較回路201の出力が、状態t11で真値であり、状態t2で真値に維持されれば、ノードn2、n3間は断線していると判定する。判定回路40は、t11状態から状態t12に遷移することに応じて、ノードn2の電位がしきい値電圧Sthを超えて変位しない場合に、ノードn2、n3間は断線していると判定する。
【0061】
状態t11及びt12での断線検知動作を状態t13及びt14でも同様に行うことが可能である。
状態t13では、トランジスタ101、102は、接続状態であり、トランジスタ103、104は、非接続状態である。比較回路201、202の非反転入力端子に電源電圧Vbが供給される。このため、比較回路201、202は真値を出力する。
【0062】
状態t14では、トランジスタ104は、接続状態であり、トランジスタ101、102、103は、非接続状態である。比較回路202は、電圧L24がしきい値電圧Sth未満となれば、偽値を出力する。一方で、比較回路202は、電圧L20がしきい値電圧Sth以上であれば、真値を出力する。
【0063】
判定回路40は、比較回路202の出力が、状態t13で真値であり、状態t24で偽値であれば、ノードn2、n3間は断線していないと判定する。
【0064】
一方で、判定回路40は、比較回路202の出力が、状態t13で真値であり、状態t4で真値に維持されれば、ノードn2、n3間は断線していると判定する。このように、断線の検知は、態t11からt12への遷移、又は状態t13からt14への遷移の一方のみの動作で検知可能である。
【0065】
[短絡検知]
次に、状態t11から状態t14の遷移の中での短絡検知について説明する。半導体回路1は、ノードn1とノードn2の間、ノードn1とノードn3の間、ノードn2とノードn4の間、及びノードn3とノードn4の間、の短絡の検知を行う。
【0066】
ノードn3、n4の間が短絡している場合、状態t11において、比較回路201の非反転入力端子には、接地電位Gndが供給される。比較回路201は偽値を出力する。これにより、判定回路40は、ノードn3、n4の間は短絡していると判定する。
【0067】
ノードn1、n3の間が短絡している場合、状態t12において、比較回路201の非反転入力端子には電源電圧Vbが印可される。比較回路201は真値を出力する。これにより、判定回路40は、ノードn1、n3の間は短絡していると判定する。
【0068】
ノードn2、n4の間が短絡している場合、状態t13において、比較回路202の非反転入力端子には、接地電位Gndが供給される。比較回路202は偽値を出力する。これにより、判定回路40は、ノードn2、n4の間が短絡していると判定する。
【0069】
状態t14において、ノードn1、n2の間が短絡している場合、比較回路202の非反転入力端子には電源電圧Vbが供給される。比較回路202は真値を出力する。これにより、判定回路40は、ノードn1、n2の間は短絡していると判定する。このように、状態t11から状態t14の遷移の中での各短絡の箇所を検知することが可能となる。
【0070】
以上説明したように、本実施形態によれば、Hブリッジ回路10に接続されるモータ20の一端又は他端の電位と所定の電位を比較する比較回路201,202を備えることとした。これにより、モータ20の他端の電位が所定の電位を超えるか否かを測定することが可能となり、判定回路40は、モータ20の一端の電位を変動さえた場合に応じて、モータ20の他端の電位が所定の電位を超える場合にモータ20は断線していないと判定可能となる。同様に、判定回路40は、モータ20の他端の電位を変動さえた場合に応じて、モータ20の一端の電位が所定の電位を超える場合にモータ20は断線していないと判定可能となる。
【0071】
以上、いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例としてのみ提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図したものではない。本明細書で説明した新規な装置、方法及びプログラムは、その他の様々な形態で実施することができる。また、本明細書で説明した装置、方法及びプログラムの形態に対し、発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の省略、置換、変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0072】
1:半導体回路、10:Hブリッジ回路、20:モータ、30:検知回路、40:判定回路、50:制御回路、101、102、103、104:トランジスタ、202:比較回路、210:比較回路。