(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-14
(45)【発行日】2024-06-24
(54)【発明の名称】医用画像表示装置及び医用画像表示方法
(51)【国際特許分類】
A61B 6/46 20240101AFI20240617BHJP
A61B 6/00 20240101ALI20240617BHJP
A61B 6/02 20060101ALI20240617BHJP
【FI】
A61B6/46 506B
A61B6/00 530Z
A61B6/02 501Z
(21)【出願番号】P 2020161140
(22)【出願日】2020-09-25
【審査請求日】2023-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118876
【氏名又は名称】鈴木 順生
(74)【代理人】
【識別番号】100202429
【氏名又は名称】石原 信人
(72)【発明者】
【氏名】小林 由昌
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 考宏
【審査官】蔵田 真彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-057528(JP,A)
【文献】特開2008-212508(JP,A)
【文献】国際公開第2006/022327(WO,A1)
【文献】特表2012-512669(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影された被検体の医用画像を取得する画像取得部と、
前記被検体の医用画像に基づいて、当該被検体の領域を抽出する領域抽出部と、
前記被検体の領域に基づいて、前記被検体の医用画像と同一表示領域内に表示される別画像の表示態様を決定する表示態様決定部と、
決定された前記表示態様に基づいて、前記被検体の医用画像と前記別画像とを同一表示領域内に表示する表示制御部と、
を備え
、
前記被検体の医用画像は、複数のスライス画像をデータとして含んでおり、
前記表示制御部は、複数のスライス画像のうち表示するスライス画像をユーザが選択するスライダーを、前記別画像として表示し、
前記表示態様決定部は、前記被検体の医用画像として表示しているスライス画像ごとに、前記別画像の表示態様を決定する、医用画像表示装置。
【請求項2】
前記表示態様決定部は、前記別画像が前記被検体の領域と重ならないように、前記別画像の表示態様を決定する、請求項1に記載の医用画像表示装置。
【請求項3】
前記表示態様決定部は、前記別画像の表示態様として、前記別画像を縮小し又は拡大する、請求項2に記載の医用画像表示装置。
【請求項4】
前記表示態様決定部は、前記別画像の表示態様として、前記別画像の表示方式を変更する、請求項2に記載の医用画像表示装置。
【請求項5】
前記表示制御部は、前記別画像を表示すべき領域に指示ポインタが位置した場合には、前記別画像を表示するが、前記別画像を表示すべき領域に指示ポインタが位置しない場合には、前記別画像を表示しない、請求項1に記載の医用画像表示装置。
【請求項6】
前記表示制御部は、前記別画像よりも小さい再生指示画像を、前記同一表示領域内に前記被検体の医用画像とともに表示し、前記再生指示画像に指示ポインタが位置した場合又は前記再生指示画像を用いて前記別画像の再生指示が入力された場合に、前記別画像を表示する、請求項1に記載の医用画像表示装置。
【請求項7】
前記表示制御部は、前記別画像として、前記複数のスライス画像の中から前記被検体の医用画像として表示しているスライス画像を特定する情報も表示する、請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の医用画像表示装置。
【請求項8】
前記表示制御部は、前記被検体の医用画像を撮影する際に前記被検体を通過しない直接線が到達した領域である直接線領域に、前記別画像を表示する、請求項1乃至請求項
7のいずれかに記載の医用画像表示装置。
【請求項9】
医用画像表示装置を制御して医用画像を表示する医用画像表示方法であって、
画像取得部が、撮影された被検体の医用画像を取得する工程と、
領域抽出部が、前記被検体の医用画像に基づいて、当該被検体の領域を抽出する工程と、
表示態様決定部が、前記被検体の領域に基づいて、前記被検体の医用画像と同一表示領域内に表示される別画像の表示態様を決定する工程と、
表示制御部が、決定された前記表示態様に基づいて、前記被検体の医用画像と前記別画像とを同一表示領域内に表示する工程と、
を備え
、
前記被検体の医用画像は、複数のスライス画像をデータとして含んでおり、
前記表示制御部は、複数のスライス画像のうち表示するスライス画像をユーザが選択するスライダーを、前記別画像として表示し、
前記表示態様決定部は、前記被検体の医用画像として表示しているスライス画像ごとに、前記別画像の表示態様を決定する、医用画像表示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、医用画像表示装置及び医用画像表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
被検体の検査において、X線診断装置によるトモシンセシス撮影が行われている。このトモシンセシス撮影において、被検体が例えば乳房である場合には、X線診断装置は、乳房に対するX線の照射角度を変化させつつ、複数の投影データを収集する。次に、X線診断装置は、収集した複数の投影データに基づく再構成処理により、3次元の医用画像を生成する。そして、医師等のユーザは、3次元の医用画像に含まれる複数のスライス画像(断層画像)を順次読影して、病変の観察と診断を行う。このように乳房の検査をするX線診断装置は、マンモグラフィ装置とも呼ばれる。
【0003】
トモシンセシス撮影により生成された3次元の医用画像は、医用画像表示装置にて表示される。この医用画像表示装置は、表示画面に表示するスライス画像をユーザが変更できるように、スライダーと呼ばれるGUI(Graphical User Interface)が、医用画像とは別個の別画像として表示される。ユーザは、このスライダーをマウス等のポインティングデバイスで上下又は左右に動かすことにより、複数のスライス画像の中から、表示画面に表示されるスライス画像を変更できる。
【0004】
しかし、このスライダーを乳房の画像に重畳させてしまうと、乳房の画像の視認性を低下させてしまう。すなわち、乳房の大きさは千差万別であり、大きな乳房の画像の場合、表示されたスライダーで、乳房が隠れてしまう。このため、乳房の視認性を向上させた医用画像表示装置が望まれている。これは、被検体が乳房の場合に限ったものではなく、また、表示される医用画像を制御操作するために表示される別画像も、スライダーに限ったものでもない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-107009号公報
【文献】特開2010-157005号公報
【文献】特開2014-207006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、同一表示領域内に被検体の医用画像と別画像とを表示する場合における、医用画像の視認性を向上させることである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態による解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態に係る医用画像表示装置は、撮影された被検体の医用画像を取得する画像取得部と、前記被検体の医用画像に基づいて、当該被検体の領域を抽出する領域抽出部と、前記被検体の領域に基づいて、前記被検体の医用画像と同一表示領域内に表示される別画像の表示態様を決定する表示態様決定部と、決定された前記表示態様に基づいて、前記被検体の医用画像と前記別画像とを同一表示領域内に表示する表示制御部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態に係る医用画像処理システムの全体的な構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】
図1の医用画像処理システムにおけるX線診断装置の内部構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】
図1の医用画像処理システムにおける医用画像表示装置が実行する、第1実施形態の医用画像表示処理の内容の一例を示すフローチャートである。
【
図4】
図3の医用画像表示処理により表示画面に表示される被検体診断画像の一例を示す図である(別画像の表示態様として大きさを調整した場合)。
【
図5】
図4に示す被検体診断画像において、別画像の表示態様(大きさ)を調整する前の状態を示す図。
【
図6】
図3の医用画像表示処理により表示画面に表示される被検体診断画像の一例を示す図である(別画像の表示態様として表示位置を調整した場合)。
【
図7】
図3の医用画像表示処理による表示画面に表示される被検体診断画像において、被検体の領域が小さい場合を例示する図。
【
図8】
図7に示す被検体診断画像において、別画像の大きさをデフォルトよりも大きくした場合を例示する図。
【
図9】
図3の医用画像表示処理により表示画面に表示される被検体診断画像の一例を示す図である(別画像の表示態様として表示方式を変更した場合)。
【
図10】
図9に示す被検体診断画像において、ユーザによる再生指示画像の操作により、別画像が表示された状態を示す図。
【
図11】
図3の医用画像表示処理により表示画面に表示される被検体診断画像の一例を示す図である(別画像が非表示の状態)。
【
図12】
図11に示す被検体診断画像において、ユーザによる入力インターフェースの操作により、別画像が表示された状態を示す図。
【
図13】
図1の医用画像処理システムにおける医用画像表示装置が実行する、第2実施形態の医用画像表示処理の内容の一例を示すフローチャートである。
【
図14】
図13の医用画像表示処理により表示画面に表示される被検体診断画像の一例を示す図である(最も大きい被検体の領域を有するスライス画像が表示された状態)。
【
図15】
図14に示す被検体診断画像において、ユーザによる入力インターフェースの操作により、別のスライス画像に移動した後の被検体診断画像の一例を示す図。
【
図16】医用画像と別個に表示される別画像がエコースキャンガイドである場合における、被検体診断画像の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、医用画像表示装置及び医用画像表示方法の実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合のみ行うこととする。
【0010】
〔第1実施形態〕
まず、第1実施形態に係る医用画像処理システムについて説明する。なお、以下においては、被検体が乳房Pである場合を例に医用画像処理システムを説明するが、被検体は乳房Pに限るものではなく、種々の部位を被検体とすることができる。
【0011】
図1は、第1実施形態に係る医用画像処理システム1の構成の一例を示すブロック図である。この
図1に示すように、第1実施形態に係る医用画像処理システム1は、X線診断装置10と、画像保管装置20と、医用画像表示装置30とを備えて構成されている。これら、X線診断装置10と、画像保管装置20と、医用画像表示装置30は、ネットワークNWを介して相互に接続される。
【0012】
X線診断装置10は、被検体から医用データを収集する装置である。具体的には、X線診断装置10は、被検体の乳房Pをトモシンセシス撮影することにより、3次元の医用画像に関するデータを収集する。なお、X線診断装置10の構成については後述する。
【0013】
画像保管装置20は、X線診断装置10によって収集された医用画像に関するデータを保管する装置である。例えば、画像保管装置20は、ネットワークNWを介してX線診断装置10から3次元の医用画像に関するデータを取得し、取得した医用画像に関するデータを装置内又は装置外に設けられたメモリに記憶させる。例えば、画像保管装置20は、サーバ装置等のコンピュータ機器によって実現される。
【0014】
医用画像表示装置30は、ネットワークNWを介して画像保管装置20から3次元の医用画像に関するデータを取得し、取得した医用画像に関するデータに基づく種々の処理を実行する。例えば、医用画像表示装置30は、3次元の医用画像に関するデータに基づいて合成2D画像を生成する。例えば、医用画像表示装置30は、ワークステーション等のコンピュータ機器によって実現される。
【0015】
なお、ネットワークNWを介して接続可能であれば、X線診断装置10、画像保管装置20及び医用画像表示装置30が設置される場所は任意である。例えば、医用画像表示装置30は、X線診断装置10と異なる病院に設置されてもよい。即ち、ネットワークNWは、院内で閉じたローカルネットワークにより構成されてもよいし、インターネットを介したネットワークでもよい。
【0016】
また、医用画像表示装置30は、必ずしも独立した装置である必要はなく、例えば、X線診断装置10に一体となって内蔵されていてもよいし、画像保管装置20に一体となって内蔵されていてもよい。さらには、
図1においてはX線診断装置10を1つ示しているが、医用画像処理システム1は複数のX線診断装置10を含んでもよい。
【0017】
図1に示すように、医用画像表示装置30は、入力インターフェース31と、表示画面32と、メモリ33と、処理回路34とを有する。
【0018】
入力インターフェース31は、操作者であるユーザからの各種の入力操作を受け付け、受け付けた入力操作を電気信号に変換して処理回路34に出力する。例えば、入力インターフェース31は、マウスやキーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、操作面へ触れることで入力操作を行うタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチスクリーン、光学センサを用いた非接触入力回路、音声入力回路等により実現される。なお、入力インターフェース31は、医用画像表示装置30本体と無線通信可能なタブレット端末等で構成されることにしても構わない。また、入力インターフェース31は、マウスやキーボード等の物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、医用画像表示装置30とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を処理回路34へ出力する電気信号の処理回路も入力インターフェース31の例に含まれる。
【0019】
表示画面32は、各種の情報を表示する。例えば、表示画面32は、入力インターフェース31を介してユーザから各種指示や各種設定等を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)を表示する。また、表示画面32は、被検体の乳房Pについて収集された各種の画像データを表示する。例えば、表示画面32は、3次元の医用画像に関するデータに含まれる複数のスライス画像を順次表示させる。また、表示画面32は、3次元の医用画像に関するデータに基づいて生成された合成2D画像を表示させる。例えば、表示画面32は、液晶表示画面やCRT(Cathode Ray Tube)表示画面である。表示画面32は、デスクトップ型でもよいし、医用画像表示装置30本体と無線通信可能なタブレット端末等で構成されることにしても構わない。
【0020】
メモリ33は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等により実現される。例えば、メモリ33は、画像保管装置20から取得した乳房Pの3次元の医用画像に関するデータや、処理回路34が生成した合成2D画像を記憶する。また、例えば、メモリ33は、医用画像表示装置30に含まれる回路がその機能を実現するためのプログラムを記憶する。なお、メモリ33は、医用画像表示装置30とネットワークNWを介して接続されたサーバ群(クラウド)により実現されることとしてもよい。また、メモリ33は、本実施形態における記憶部の一例である。
【0021】
処理回路34は、制御機能341、画像取得機能342、領域抽出機能343、表示態様決定機能344、表示制御機能345及び画像変更機能346を実行することで、医用画像表示装置30全体の動作を制御する。ここで、本実施形態において、画像取得機能342は画像取得部の一例であり、領域抽出機能343は領域抽出部の一例であり、表示態様決定機能344は表示態様決定部の一例であり、表示制御機能345は表示制御部の一例であり、画像変更機能346は画像変更部の一例である。
【0022】
例えば、処理回路34は、制御機能341に対応するプログラムをメモリ33から読み出して実行することにより、この医用画像表示装置30の全体的な制御を行う。また、処理回路34による制御機能341は、入力インターフェース31を介して操作者から受け付けた入力操作に基づいて、処理回路34の各種機能を制御する。さらに、処理回路34による制御機能341は、ネットワークNWを介したデータの送受信を制御する。
【0023】
また、例えば、処理回路34は、画像取得機能342に対応するプログラムをメモリ33から読み出して実行することにより、撮影された乳房Pの医用画像をメモリ33や画像保管装置20から取得する。また、処理回路34は、領域抽出機能343に対応するプログラムをメモリ33から読み出して実行することにより、乳房Pの医用画像に基づいて、乳房の領域を抽出する。さらに、処理回路34は、表示態様決定機能344に対応するプログラムをメモリ33から読み出して実行することにより、乳房Pの領域に基づいて、乳房の医用画像と同一表示領域内に表示される別画像の表示態様を決定する。また、処理回路34は、表示制御機能345に対応するプログラムをメモリ33から読み出して実行することにより、決定された表示態様に基づいて、乳房Pの医用画像と別画像とを同一表示領域内に表示する。さらに、処理回路34は、画像変更機能346に対応するプログラムをメモリ33から読み出して実行することにより、ユーザから表示するスライス画像の変更を受け付ける。
【0024】
図1に示す医用画像表示装置30においては、各処理機能がコンピュータによって実行可能なプログラムの形態でメモリ33へ記憶されている。処理回路34は、メモリ33か
らプログラムを読み出して実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路34は、読み出したプログラムに対応する機能を有することとなる。なお、
図1においては単一の処理回路34にて、制御機能341、画像取得機能342、領域抽出機能343、表示態様決定機能344及び表示制御機能345が実現するものとして説明したが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路34を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより機能を実現するものとしても構わない。また、処理回路34が有する各処理機能は、単一又は複数の処理回路に適宜に分散又は統合されて実現されてもよい。
【0025】
次に、X線診断装置10について説明する。X線診断装置10は、被検体の乳房Pに対するトモシンセシス撮影を実行して、3次元の医用画像に関するデータを収集する。以下では、X線診断装置10がマンモグラフィ装置であるものとして説明する。
【0026】
図2は、本実施形態に係る医用画像処理システム1におけるX線診断装置10の構成の一例を示すブロック図である。この
図2に示すように、X線診断装置10は、基台101と、スタンド102とを有する。スタンド102は、基台101上に立設され、撮影台103と、圧迫板104と、X線管105と、X線絞り器106と、X線検出器107と、信号処理回路108とを支持する。ここで、スタンド102は、撮影台103と、圧迫板104と、X線検出器107及び信号処理回路108とを、上下方向へ移動可能に支持する。
【0027】
撮影台103は、被検体の乳房Pを支持する台であり、乳房Pが載せられる支持面を有する。圧迫板104は、撮影台103の上方に配置され、撮影台103に対して平行に対向するように設けられる。ここで、圧迫板104は、撮影台103に接離する方向へ移動可能に設けられる。例えば、圧迫板104は、撮影台103に接近する方向に移動することで、撮影台103上に支持されている乳房Pを圧迫する。圧迫板104によって圧迫された乳房は薄く押し広げられ、乳房内の乳腺の重なりが減少する。
【0028】
X線管105は、熱電子を発生する陰極(フィラメント)と、熱電子の衝突を受けてX線を発生する陽極(ターゲット)とを有する真空管である。X線管105は、X線高電圧装置111から供給される高電圧を用いて、陰極から陽極に向けて熱電子を照射することにより、X線を発生する。ここで、X線管105は、乳房PへのX線の照射角度を変化させるよう移動可能に構成される。
【0029】
X線絞り器106は、X線管105と圧迫板104との間に配置され、X線管105が発生させたX線を制御する。例えば、X線絞り器106は、X線の照射範囲を絞り込むコリメータと、X線を調節するフィルタとを有する。
【0030】
X線絞り器106におけるコリメータは、例えば、スライド可能な4枚の絞り羽根を有し、これら絞り羽根をスライドさせることで、X線管105が発生させたX線を絞り込んで乳房Pに照射させる。ここで、絞り羽根は、鉛などで構成された板状部材であり、X線の照射範囲を調整するためにX線管105のX線照射口付近に設けられる。
【0031】
X線絞り器106におけるフィルタは、被検体に対する被曝線量の低減とX線画像データの画質向上を目的として、その材質や厚みによって透過するX線の線質を変化させ、被検体に吸収されやすい軟線成分を低減したり、画像のコントラスト低下を招く高エネルギー成分を低減したりする。また、フィルタは、その材質や厚み、位置などによってX線の線量及び照射範囲を変化させ、乳房Pへ照射されるX線が予め定められた分布になるようにX線を減衰させる。
【0032】
例えば、X線絞り器106は、モータ及びアクチュエータ等の駆動機構を有し、後述す
る処理回路114による制御の下、駆動機構を動作させることによりX線の照射を制御する。例えば、X線絞り器106は、処理回路114から受け付けた制御信号に応じて駆動電圧を駆動機構に付加することにより、コリメータの絞り羽根の開度を調整して、乳房Pに対して照射されるX線の照射範囲を制御する。また、例えば、X線絞り器106は、処理回路114から受け付けた制御信号に応じて駆動電圧を駆動機構に付加することにより、フィルタの位置を調整することで、乳房Pに対して照射されるX線の線量の分布を制御する。
【0033】
X線検出器107は、例えば、マトリクス状に配列された検出素子を有するX線平面検出器(Flat Panel Detector:FPD)である。X線検出器107は、X線管105から照射されて乳房Pを透過したX線を検出し、検出したX線量に対応した検出信号を信号処理回路108へと出力する。なお、X線検出器107は、グリッド、シンチレータアレイ及び光センサアレイを有する間接変換型の検出器であってもよいし、入射したX線を電気信号に変換する半導体素子を有する直接変換型の検出器であっても構わない。
【0034】
例えば、X線検出器107は、X線管105から照射されたX線パルスを検出し、検出したX線量に対応した検出信号を生成する。ここで、X線検出器107は、生成した検出信号を保持する。また、X線検出器107は、X線パルスの照射後に検出信号を信号処理回路108に対して出力する。そして、信号処理回路108は、X線検出器107から出力された検出信号に基づいて投影データを生成し、メモリ112に格納する。
【0035】
また、
図2に示すように、X線診断装置10は、入力インターフェース109と、昇降駆動装置110と、X線高電圧装置111と、メモリ112と、表示画面113と、処理回路114とを、さらに備えている。
【0036】
入力インターフェース109は、操作者であるユーザからの各種の入力操作を受け付け、受け付けた入力操作を電気信号に変換して処理回路114に出力する。例えば、入力インターフェース109は、マウスやキーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、操作面へ触れることで入力操作を行うタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチスクリーン、光学センサを用いた非接触入力回路、音声入力回路等により実現される。なお、入力インターフェース109は、処理回路114と無線通信可能なタブレット端末等で構成されることにしても構わない。また、入力インターフェース109は、マウスやキーボード等の物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、X線診断装置10本体とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を処理回路114へ出力する電気信号の処理回路も入力インターフェース109の例に含まれる。
【0037】
昇降駆動装置110は、撮影台103及び圧迫板104に接続される。例えば、昇降駆動装置110は、撮影台103を上下方向へ昇降させる。また、例えば、昇降駆動装置110は、圧迫板104を上下方向(撮影台103に対して接離する方向)へ昇降させる。例えば、昇降駆動装置110は、モータ及びアクチュエータ等の駆動機構を有し、処理回路114による制御の下、駆動機構を動作させることにより、撮影台103及び圧迫板104の昇降を制御する。
【0038】
X線高電圧装置111は、処理回路114による制御の下、X線管105に高電圧を供給する。例えば、X線高電圧装置111は、変圧器(トランス)及び整流器等の電気回路を有し、X線管105に印加する高電圧を発生する高電圧発生装置と、X線管105が照射するX線に応じた出力電圧の制御を行うX線制御装置とを有する。なお、高電圧発生装置は、変圧器方式であってもよいし、インバータ方式であってもよい。
【0039】
メモリ112は、例えば、RAM、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等により実現される。例えば、メモリ112は、信号処理回路108が生成した投影データや、処理回路114が生成した3次元の医用画像に関するデータを記憶する。また、例えば、メモリ112は、X線診断装置10に含まれる回路がその機能を実現するためのプログラムを記憶する。なお、メモリ112は、X線診断装置10とネットワークNWを介して接続されたサーバ群(クラウド)により実現されることとしてもよい。
【0040】
表示画面113は、各種の情報を表示する。例えば、表示画面113は、入力インターフェース109を介して操作者から各種指示や各種設定等を受け付けるためのGUIを表示する。また、表示画面113は、乳房Pについて収集された各種の画像データを表示する。例えば、表示画面113は、3次元の医用画像に関するデータに含まれる複数のスライス画像を順次表示させる。また、例えば、表示画面113は、医用画像表示装置30により生成された合成2D画像を表示させる。例えば、表示画面113は、液晶表示画面やCRT表示画面である。表示画面113は、デスクトップ型でもよいし、X線診断装置10本体と無線通信可能なタブレット端末等で構成されることにしても構わない。
【0041】
処理回路114は、制御機能114a及び表示制御機能114bを実行することで、X線診断装置10全体の動作を制御する。
【0042】
例えば、処理回路114は、制御機能114aに対応するプログラムをメモリ112から読み出して実行することにより、入力インターフェース109を介して操作者から受け付けた入力操作に基づいて、処理回路114の各種機能を制御する。
【0043】
また、制御機能114aは、3次元の医用画像に関するデータの収集を制御する。具体的には、まず、制御機能114aは、乳房Pに対するトモシンセシス撮影を実行して、複数の投影データを収集する。次に、制御機能114aは、収集した投影データに対して、対数変換処理やオフセット補正、感度補正、ビームハードニング補正等の補正処理を行なって、補正済みの投影データを生成する。そして、制御機能114aは、補正済みの投影データに基づいて3次元の医用画像に関するデータを再構成する。
【0044】
なお、制御機能114aは、MLO(Mediolateral-Oblique:内外斜位)画像やCC(Cranio-Caudal:頭尾)画像等のマンモグラフィ画像を収集することもできる。具体的には、制御機能114aは、撮影台103及び圧迫板104の位置をMLO方向やCC方向で固定し、乳房Pに対するX線照射角度を一定に保った状態でX線を照射することにより、MLO画像やCC画像等のマンモグラフィ画像を収集する。
【0045】
また、制御機能114aは、ネットワークNWを介したデータの送受信を制御する。例えば、制御機能114aは、被検体の乳房Pをトモシンセシス撮影して得られた3次元の医用画像に関するデータを、画像保管装置20に対して送信する。また、処理回路34は、表示制御機能114bに対応するプログラムをメモリ112から読み出して実行することにより、各種の画像データを表示画面113に表示する。
【0046】
図2に示すX線診断装置10においては、各処理機能がコンピュータによって実行可能なプログラムの形態でメモリ112へ記憶されている。信号処理回路108及び処理回路114は、メモリ112からプログラムを読み出して実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、プログラムを読み出した状態の信号処理回路108及び処理回路114は、読み出したプログラムに対応する機能を有することとなる。なお、
図2においては単一の処理回路114にて、制御機能114a及び表示制御機能114bが実現するものとして説明したが、複数の独立したプロセッサを組み合
わせて処理回路114を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより機能を実現するものとしても構わない。また、処理回路114が有する各処理機能は、単一又は複数の処理回路に適宜に分散又は統合されて実現されてもよい。
【0047】
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、あるいは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサはメモリ33又はメモリ112に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。
【0048】
なお、
図1及び
図2においては、単一のメモリ33又はメモリ112が各処理機能に対応するプログラムを記憶するものとして説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、複数のメモリ33を分散して配置し、処理回路34は、個別のメモリ33から対応するプログラムを読み出す構成としても構わない。同様に、複数のメモリ112を分散して配置し、処理回路114は、個別のメモリ112から対応するプログラムを読み出す構成としても構わない。また、メモリ33及びメモリ112にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。
【0049】
また、処理回路34及び処理回路114は、ネットワークNWを介して接続された外部装置のプロセッサを利用して、機能を実現することとしてもよい。例えば、処理回路34は、メモリ33から各機能に対応するプログラムを読み出して実行するとともに、医用画像表示装置30とネットワークNWを介して接続されたサーバ群(クラウド)を計算資源として利用することにより、
図1に示す各機能を実現する。
【0050】
以上、医用画像表示装置30を含んだ医用画像処理システム1について説明した。かかる構成のもと、医用画像処理システム1における医用画像表示装置30は、処理回路34の処理によって、トモシンセシス撮影による被検体の医用画像に基づいて、視認性に優れた被検体診断画像を表示する。
【0051】
図3は、本実施形態に係る医用画像処理システム1における医用画像表示装置30が実行する医用画像表示処理の内容の一例を説明するフローチャートを示す図である。この医用画像表示処理は、ユーザが、例えば入力インターフェース31を操作して、医用画像の表示を医用画像表示装置30に指示した場合に実行される処理である。また、この医用画像表示処理の実行が指示される前提として、表示すべき被検体を特定する情報が、医用画像表示装置30に入力されているものとする。
【0052】
この
図3に示すように、まず、医用画像表示装置30は、撮影された被検体の医用画像を取得する(ステップS10)。本実施形態においては、例えば、処理回路34の画像取得機能342が、画像保管装置20又はメモリ33から、被検体の医用画像を取得する。ここでは、取得される医用画像は、乳房Pをトモシンセシス撮影することにより生成された3次元の医用画像であり、複数のスライス画像を含んで医用画像のデータが構成されている。また、これらスライス画像は水平方向の断層画像であり、複数のスライス画像が垂直方向に積層されて、医用画像を構成しているものとする。
【0053】
次に、医用画像表示装置30は、ステップS10で取得した医用画像のうち、表示画面32に表示すべきスライス画像を特定する(ステップS12)。本実施形態においては、例えば、処理回路34の画像取得機能342が、複数のスライス画像の中から、表示すべきスライス画像を特定し、そのスライス画像に関するデータを取得する。例えば、3次元の医用画像が44枚のスライス画像を含んで構成されていると仮定すると、その真ん中に位置する22枚目のスライス画像を、表示画面32に表示する初期画像として特定する。或いは、この医用画像表示処理を開始する前に、又は、この医用画像表示処理の中で、ユーザが、初期画像として表示画面32に表示するスライス画像を指定できるようにしてもよい。
【0054】
次に、医用画像表示装置30は、ステップS12で取得した被検体の医用画像であるスライス画像に基づいて、この被検体の領域を抽出する(ステップS14)。本実施形態においては、例えば、処理回路34の領域抽出機能343が、被検体の医用画像の画像解析を行い、被検体のスキンラインを検出する。そして、このスキンラインにより規定される領域を、被検体の領域として定義する。
【0055】
図4は、この医用画像表示処理を実行することにより、表示画面32に表示される被検体診断画像の一例を示す図である。ステップS12においては、この被検体診断画像におけるスキンラインSLを検出して、被検体である乳房Pの領域を抽出する。ここで、スキンラインSLは、被検体である乳房Pと、この乳房Pの外側の直接線領域との境界を画定している。直接線領域は、被検体を通過しないX線が直接線として到達した領域である。ステップS12においては、この直接線領域と被検体との境界となるスキンラインを検出する。
【0056】
次に、
図3に示すように、医用画像表示装置30は、ステップS12で抽出した被検体の領域に基づいて、この被検体の医用画像と同一表示領域内に表示される別画像の表示態様を決定する(ステップS16)。本実施形態においては、例えば、処理回路34の表示態様決定機能344が、被検体である乳房Pの領域に基づいて、この乳房Pと一緒に表示される別画像の表示態様を決定する。
【0057】
別画像は、表示画面32に表示される被検体の医用画像を、ユーザが制御操作するための画像である。本実施形態の例においては、被検体をトモシンセシス撮影することにより複数のスライス画像を含む形態で医用画像が構成されていることから、別画像は、どのスライス画像を表示画面32に表示するかをユーザが選択するスライダーとして表示されている。
【0058】
図4に示す被検体診断画像の例においては、スライダーSD1が、被検体である乳房Pの表示領域DA1に表示されている。この例では、スライダーSD1は、上下方向に延びるスライドバーBAR1と、このスライドバーBAR1上に表示された摘まみ部NB1とを備えて構成されている。摘まみ部NB1は、複数のスライス画像のうち、現在表示されている画像がどのスライス画像であるかを表す役割を有している。すなわち、スライドバーBAR1上の摘まみ部NB1の位置が、表示されているスライス画像が全体のどの位置にあるかを示している。
【0059】
また、ユーザは、この摘まみ部NB1を、入力インターフェース31としてのマウス等のポインティングデバイスを用いて移動することにより、表示画面32に表示されるスライス画像を変更することができる。例えば、ユーザがポインティングデバイスを操作して、摘まみ部NB1をスライドバーBAR1の上方に移動した場合には、表示画面32に表示されるスライス画像も、垂直方向に積層された複数のスライス画像のうち、より上方に位置するスライス画像に移動する。逆に、摘まみ部NB1をスライドバーBAR1の下方に移動した場合には、表示画面32に表示されるスライス画像も、垂直方向に積層された複数のスライス画像のうち、より下方に位置するスライス画像に移動する。
【0060】
さらに、本実施形態においては、スライダーSD1の近傍に、別画像として、スライス番号表示部NM1が表示される。このスライス番号表示部NM1には、この被検体の医用画像に含まれるスライス画像の全枚数と、現在表示されているスライス画像がその中の何枚目の画像であるのかが、数値で表示される。このスライス番号表示部NM1を見ることにより、ユーザは、表示画面32に表示されているスライス画像を特定する情報を得ることができる。
図4の例では、スライス画像の全枚数が44枚であり、その中の22枚目のスライス画像が表示画面32に表示されていることを表している。何枚目の画像であるかは、複数のスライス画像を下から順番に数えた枚数でもよいし、逆に、上から順に数えた枚数でもよい。
【0061】
ステップS16においては、この別画像が被検体である乳房Pの領域と重ならないように、別画像の表示態様を決定する。具体的には、別画像の表示する大きさを調整して、被検体の領域と重ならないようにする。例えば、被検体である乳房Pの大きさが大きければ、別画像の大きさを縮小して、直接線領域に別画像が収まるようにする。逆に、被検体である乳房Pの大きさが小さければ、別画像の大きさを拡大して、直接線領域に別画像が収まるようにする。つまり、被検体の画像と重ならない限りにおいて、別画像の大きさを可能な限り大きくして、別画像の視認性と操作性を向上させる。
【0062】
図5は、大きさを調整する前の状態の別画像を含む被検体診断画像を示す図である。この
図5に示すように、別画像であるスライダーSD1とスライス番号表示部NM1とが、被検体である乳房Pの一部と重畳している。このため、別画像の存在が邪魔となり、ユーザは、乳房Pの読影を円滑に行えない可能性がある。本実施形態においては、このような重畳領域が発生しないように、別画像の大きさを調整することにより、被検体の医用画像の視認性を向上させている。
【0063】
次に、
図3に示すように、医用画像表示装置30は、ステップS16で決定した表示態様に基づいて、被検体の医用画像と別画像とを同一表示領域内に表示する(ステップS18)。本実施形態においては、例えば、処理回路34の表示制御機能345が、ステップS16で決定した表示態様にて、被検体である乳房Pと別画像とを、同一の表示領域DA1に表示する。
【0064】
このステップS18が実行されることにより、
図4に示すような、被検体である乳房Pと、スライダーSD1とスライス番号表示部NM1とを含む別画像とが、同一の表示領域DA1に表示される。上述したように、別画像の表示態様の1つである別画像の大きさは、ステップS16において調整されていることから、この調整された大きさで別画像を表示することにより、別画像が被検体である乳房Pと重ならないように、同一の表示領域DA1に表示することができる。
【0065】
次に、医用画像表示装置30は、ユーザから表示するスライス画像の変更が指示されたか否かを判断する(ステップS20)。本実施形態においては、例えば、処理回路34の画像変更機能346が、ユーザからのスライス画像の変更指示を受け付けるとともに、この変更指示が受け付けられたか否かを判断する。上述したように、表示するスライス画像は、別画像であるスライダーSD1をユーザが操作することにより、選択することができる。このため、ユーザは、このスライダーSD1の摘まみ部NB1を操作して、医用画像表示装置30に表示するスライス画像の変更を指示入力する。
【0066】
ユーザから表示するスライス画像の変更が指示されていない場合(ステップS20:No)には、医用画像表示装置30は、同じスライス画像を表示し続ける。一方、ユーザから表示するスライス画像の変更が指示された場合(ステップS20:Yes)には、上述したステップS12に戻り、このステップS12以降の処理を繰り返す。
【0067】
すなわち、ユーザに指定されたスライス画像のデータに基づいて、被検体の領域を抽出し、この抽出した被検体の領域に基づいて、別画像の表示態様を決定し、この決定された表示態様に基づいて被検体の医用画像と別画像とを同一表示領域内に表示する。これにより、ユーザが医用画像を構成するスライス画像を変更したとしても、別画像が医用画像に重なることなく、医用画像と別画像とを同一の表示領域DA1に表示させることができる。つまり、スライス画像ごとに、別画像の大きさが調整されることから、乳房Pの大きさが変化しても、適切な大きさのスライダーSD1とスライス番号表示部NM1とを表示させることができる。
【0068】
なお、ステップS16における別画像の表示態様の決定において、別画像の表示態様が調整されるが、この別画像の表示態様の調整は、大きさに限られるものではない。例えば、別画像の表示位置を調整することもできる。
図6に例示する被検体診断画像のように、被検体である乳房Pが表示領域DA1の領域内で偏りがある場合には、別画像の大きさを調整するのではなく、或いは、別画像の大きさを調整するとともに、別画像の表示位置を調整するようにしてもよい。
【0069】
図6の例では、被検体診断画像の表示領域DA1における右下の領域には、別画像を表示するための領域が存在しない。逆に、被検体診断画像の表示領域DA1における右上の領域には、別画像を表示するための十分な領域が存在する。このため、スライダーSD1とスライス番号表示部NM1とから構成された別画像の表示する位置を、被検体診断画像の表示領域DA1における右上に変更する。換言すれば、ステップS16の表示態様の決定では、被検体の大きさや形に応じて、別画像が被検の医用画像と重ならないように、別画像の大きさと表示位置の少なくとも一方を調整して決定することができる。
【0070】
また、被検体である乳房Pが小さい場合には、その分、直接線領域は大きくなる。例えば、
図7に示す被検体診断画像のように、スライダーSD1とスライス番号表示部NM1から構成される別画像を、デフォルトの大きさで表示しただけでは、直接線領域は大きく余ることとなる。このため、
図8に示すように、デフォルトの大きさよりも別画像を拡大して、スライダーSD1とスライス番号表示部NM1を大きく表示領域DA1の領域内に表示するようにしてもよい。これにより、乳房Pである被検体の視認性をそのまま維持しつつ、別画像の視認性や操作性も向上させることができる。
【0071】
また、
図9の被検体診断画像に示すように、別画像の表示態様として、別画像が医用画像の領域と重ならないように、別画像の表示方式を変更するようにしてもよい。この
図9の例では、別画像であるスライダーSD1を表示せずに、このスライダーSD1よりも小さい再生指示画像RP1を表示領域DA1の領域内に表示するようにしている。すなわち、別画像であるスライダーSD1よりも小さい面積の再生指示画像RP1を、被検体の医用画像である乳房Pとともに、表示領域DA1の領域内に表示する。そして、ユーザが入力インターフェース31の一例であるポインティングデバイスを操作して、指示ポインタがこの再生指示画像RP1に位置した場合に、
図10に示すように、スライダーSD1が表示されるよう制御する。
【0072】
或いは、ユーザが入力インターフェース31の一例であるポインティングデバイスを操作して、再生指示画像RP1を用いて別画像の再生指示を入力した場合に、
図10に示すようなスライダーSD1が表示されるようにしてもよい。例えば、ユーザがポインティングデバイスを操作して、指示ポインタがこの再生指示画像RP1上に位置している状態で、ダブルクリックをした場合に、別画像の再生指示が医用画像表示装置30に入力され、スライダーSD1が表示されるようにしてもよい。
【0073】
一旦表示されたスライダーSD1は、例えば、ユーザがポインティングデバイスの右クリックをすることにより、再度、消去することができる。これにより、被検体診断画像は、
図10の状態から
図9の状態に戻ることになる。このため、被検体である乳房Pが大きくとも、医用画像を読影する際の被検体の視認性を確保することができる。また、これと同時に、別画像であるスライダーSD1が再生表示された場合には、被検体の医用画像と一時的に重なっても被検体の読影には影響を与えず、しかも、別画像の視認性と操作性を担保することができる。
【0074】
この
図9及び
図10の例では、スライス番号表示部NM1が別画像として固定的に表示されているが、このスライス番号表示部NM1も、再生指示が入力されるまでは、表示されないようにしてもよい。つまり、ユーザが医用画像の読影を行う際には、被検体診断画像には、再生指示画像RP1が表示されており、再生指示画像RP1に指示ポインタが位置した場合、又は、再生指示画像RP1を用いて別画像の再生指示が入力された場合に、別画像として、スライダーSD1とスライス番号表示部NM1が表示されるようにしてもよい。
【0075】
また、別画像を表示すべき領域に指示ポインタが位置した場合には、別画像を表示するが、別画像を表示すべき領域に指示ポインタが位置しない場合には、別画像を表示しないようにすることもできる。例えば、
図11に示す被検体診断画像のように、ユーザが被検体である乳房Pの読影をする場合には、ユーザは、入力インターフェース31の一例であるポインティングデバイスを操作して、指示ポインタIP1が、別画像を表示すべき領域の外に位置するように移動する。この
図11の例では、被検体の医用画像の外部、すなわち、直接線領域のうち、別画像を表示すべき領域ではない領域に、指示ポインタIP1が位置している。無論、この指示ポインタIP1が被検体である乳房Pの画像領域に、指示ポインタIP1が位置する場合でも、別画像は表示されない。
【0076】
表示画面32に表示されるスライス画像を変更したいとユーザが考えた場合、そのユーザは、ポインティングデバイスを操作して、
図12に示すように、指示ポインタIP1を、別画像が表示されるべき領域に移動する。本実施形態においては、被検体診断画像が表示されている画面における右下の領域が、別画像であるスライダーSD1とスライス番号表示部NM1が表示される領域であるので、ユーザは、画面の右下の領域に、指示ポインタIP1を移動する。すると、この領域に表示されるべき別画像であるスライダーSD1とスライス番号表示部NM1とが表示領域DA1に表示される。ユーザは、このスライダーSD1の摘まみ部NB1を操作して、表示されるスライス画像を変更することができる。
【0077】
以上述べたように、本実施形態に係る医用画像表示装置30を備える医用画像処理システム1によれば、乳房Pなどの被検体の大きさや表示される位置に応じて、ユーザが医用画像を制御操作するための別画像を、医用画像の読影の妨げにならないように同一の表示領域DA1に表示させることができる。このため、ユーザの医用画像に対する視認性を向上させて、迅速で的確な診断に寄与することができる。
【0078】
〔第2実施形態〕
上述した第1実施形態に係る医用画像処理システム1においては、医用画像表示装置30は、ユーザが医用画像であるスライス画像を変更する都度、そのスライス画像における被検体の領域を抽出して、別画像の表示態様を調整して決定することとしたが、第2実施形態においては、複数のスライス画像のち最も大きい被検体の領域に基づいて、別画像の表示態様を予め調整して決定しておき、表示するスライス画像が変更されても別画像の表示態様は変更されないようにした。つまり、第2実施形態に係る医用画像処理システム1における医用画像表示装置30においては、ユーザが表示画面32に表示されるスライス画像を変更したとしても、スライダーSD1とスライス番号表示部NM1とから構成される別画像の大きさや表示位置は変わらないこととなり、ユーザの操作性を向上させている。以下、上述した第1実施形態と異なる部分を説明する。
【0079】
図13は、本実施形態に係る医用画像処理システム1における医用画像表示装置30が実行する医用画像表示処理の内容を説明するフローチャートを示す図であり、上述した第1実施形態の
図3に対応する図である。本実施形態においても、この医用画像表示処理は、ユーザが、例えば入力インターフェース31を操作して、医用画像の表示を医用画像表示装置30に指示した場合に実行される処理である。
【0080】
この
図13に示す医用画像表示処理において、ステップS10及びステップS12は、上述した第1実施形態と同様である。そして、ステップS12に続くステップS30において、医用画像表示装置30は、医用画像を構成する複数のスライス画像のすべてのスライス画像について被検体の領域を抽出する(ステップS30)。本実施形態においては、例えば、処理回路34の領域抽出機能343が、すべてのスライス画像について画像解析を行い、被検体のスキンラインSLを検出する。そして、それぞれのスライス画像において、このスキンラインSLにより規定される領域を、被検体の領域として定義する。
【0081】
次に、医用画像表示装置30は、ステップS30で抽出した複数のスライス画像の中から、最も大きい被検体の領域を有するスライス画像に基づいて、別画像の表示態様を決定する(ステップS32)。本実施形態においては、例えば、処理回路34の表示態様決定機能344が、すべてのスライス画像の中から最も大きい乳房Pの領域を有するスライス画像を特定し、この特定したスライス画像における乳房Pの領域に基づいて、この乳房Pと一緒に表示される別画像の表示態様を決定する。換言すれば、複数のスライス画像のうち、最も直接線領域が小さいスライス画像に基づいて、別画像の表示態様を調整して決定する。別画像の表示態様の調整と決定に、種々の手法があるのは、上述した第1実施形態と同様である。
【0082】
次に、医用画像表示装置30は、ステップS32で決定した表示態様に基づいて、表示すべきスライス画像における被検体の医用画像と別画像とを同一表示領域内に表示する(ステップS34)。本実施形態においては、例えば、処理回路34の表示制御機能345が、ステップS32で決定した表示態様にて、被検体である乳房Pと別画像とを、同一の表示領域DA1の領域内に表示する。
【0083】
このステップS32が実行されることにより、
図14に示すような、被検体である乳房Pと、別画像であるスライダーSD1とスライス番号表示部NM1とを含む別画像とが、同一の表示領域DA1に表示される。この
図14の例では、表示画面32に表示すべきスライス画像として22枚目のスライス画像が指定されており、この22枚目のスライス画像における乳房Pが、複数のスライス画像の中で最も被検体の領域が大きかった場合を示している。このように、最も大きい領域を有する被検体を含むスライス画像に基づいて、別画像の表示態様を決定しているので、被検体の医用画像と別画像とを重ならないように、被検体診断画像を表示画面32に表示させることができる。
【0084】
次に、医用画像表示装置30は、ユーザから表示するスライス画像の変更が指示されたか否かを判断する(ステップS20)。このステップS20の処理は、上述した第1実施形態と同様である。
【0085】
このステップS20において、ユーザから表示するスライス画像の変更が指示された場合(ステップS20:Yes)には、医用画像表示装置30は、表示画面32に表示するスライス画像を特定し、このスライス画像のデータを取得する(ステップS36)。このステップS36の処理は、上述したステップS12と同様である。そして、表示するスライス画像を特定した後、上述したステップS34に戻り、既にステップS32で決定している表示態様に基づいて、表示すべきスライス画像における被検体の医用画像と別画像とを同一の表示領域DA1に表示する。つまり、本実施形態においては、一旦決定された表示態様は、表示するスライス画像が変更されたとしても変更されない。
【0086】
図15は、
図14に示した被検体診断画像から、表示するスライス画像を変更した場合の被検体診断画像を示す図である。この
図15の例においては、22枚目のスライス画像から5枚目のスライス画像に、ユーザが表示するスライス画像を変更した状態を示している。この
図15に示すように、本実施形態に係る医用画像表示装置30においては、表示するスライス画像を変更した結果、被検体の領域が小さくなったとしても、スライダーSD1とスライス番号表示部NM1とから構成される別画像の表示態様は変更されない。このため、被検体診断画像における直接線領域の面積は大きくなるが、表示するスライス画像を変更するたびに、表示される別画像の表示態様が変更されてしまうことを回避できる。このため、別画像に基づいて表示画像の制御操作をしているユーザの操作の一貫性を担保することができる。
【0087】
以上のように、本実施形態に係る医用画像処理システム1によれば、医用画像表示装置30の表示画面32に表示される被検体診断画像の別画像は、ユーザがスライス画像を変更したとしても、その表示態様が変化しない。このため、別画像を用いて表示される医用画像の制御操作をしているユーザにおける別画像の操作性を向上させることができる。また、複数のスライス画像のうち最も被検体の領域が大きいスライス画像に基づいて、別画像の表示態様を決定しているので、複数のスライス画像のそれぞれにおいて、被検体の医用画像と別画像とが重なることはなく、被検体の医用画像の視認性を担保することができる。
【0088】
なお、上述した各実施形態においては、被検体が乳房Pである場合を例として、医用画像処理システム1を説明したが、乳房P以外が被検体である場合でも、本発明を適用することができる。つまり、本発明が適用されるモダリティは、マンモグラフィ装置に限られるものではなく、一般のX線撮影装置や、X線テレビ寝台など、表示される医用画像の制御操作のための別画像が必要となる、あらゆる医用画像処理システム1に本発明を適用することができる。
【0089】
また、トモシンセシス撮影をするX線診断装置10を備える医用画像処理システム1に限らず、別画像を表示する必要性のある医用画像処理システム1に本発明は適用することができる。例えば、
図16に示すように、被検体が乳房Pである場合、上下方向(CC方向)から撮影したX線画像IM1と斜め方向(MLO方向)から撮影したX線画像IM2とに基づいて、病変のおよその位置を表示するエコースキャンガイドESGを表示する医用画像処理システム1が存在する。
【0090】
このような医用画像処理システム1においては、医用画像表示装置30に表示されたエコースキャンガイドESGに基づいて、ユーザは、病変と思われる部分の概略的な位置を視覚的に把握することができる。このため、超音波検査を別途行う場合に、病変の近傍位置の検査を注意深く行うことができ、超音波検査の精度向上が図られる。このようなエコースキャンガイドESGが別画像として表示される医用画像表示装置30においても、上述した各実施形態を適用することができる。つまり、別画像がエコースキャンガイドESGであっても、医用画像と重畳しないように、エコースキャンガイドESGを表示し、医用画像の視認性の向上を図ることができる。
【0091】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0092】
1…医用画像処理システム、10…X線診断装置、20…画像保管装置、30…医用画像表示装置、31…入力インターフェース、32…表示画面、33…メモリ、34…処理回路、341…制御機能、342…画像取得機能、343…領域抽出機能、344…表示態様決定機能、345…表示制御機能、346…画像変更機能、BAR1…スライドバー、DA1…表示領域、ESG…エコースキャンガイド、IM1…X線画像、IM2…X線画像、IP1…指示ポインタ、NB1…摘まみ部、NM1…スライス番号表示部、NW…ネットワーク、P…乳房、RP1…再生指示画像、SD1…スライダー、SL…スキンライン