(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-14
(45)【発行日】2024-06-24
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/56 20060101AFI20240617BHJP
A61F 13/47 20060101ALI20240617BHJP
【FI】
A61F13/56 100
A61F13/47 100
(21)【出願番号】P 2020162098
(22)【出願日】2020-09-28
【審査請求日】2023-05-22
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】倉持 美帆子
【審査官】原田 愛子
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-116919(JP,A)
【文献】特開2016-112217(JP,A)
【文献】特開2008-289631(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/56
A61F 13/47
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透液性のトップシートと、不透液性のバックシートと、前記トップシートと前記バックシートとの間に設けられた吸収体とを有する細長形状の本体を備えた吸収性物品であって、
前記本体から側方にそれぞれ延出する一対のウィングを備え、
前記一対のウィングのそれぞれに、該ウィングを装着者の腿に貼着するための粘着部が形成されて
おり、
前記粘着部が、幅方向に沿って延びるストライプ状に、且つ前後方向に不連続に形成されている、吸収性物品。
【請求項2】
前記一対のウィングの前記トップシート側にそれぞれ、
前記粘着部が形成されている、請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記粘着部が、前記ウィングの幅方向の端縁から5~15mmの範囲に設けられていない、請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記粘着部の平面視面積が、前記ウィングの面積に対して10~50%である、請求項1から3のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記ウィングの前方及び/又は後方に、前記ウィングと前記本体との境界線又はその近傍に、前後方向に沿って切込みが形成されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記ウィングが、伸縮性部材から形成されている、請求項1から5のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記本体の両側部の前記トップシート側に、前後方向に沿って、柔軟部材が配置されている、請求項1から6のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項8】
前記ウィングが、前記バックシートを含まず且つ前記バックシートと直接接合されていない、請求項1から7のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
吸収性物品として、生理用ナプキン、失禁パッド、おりものシート等が知られている。このような吸収性物品は、装着者の股下に当てがわれるものであり、装着時には多かれ少なかれ装着者に違和感を生じさせる。そのため、吸収性物品の装着時の違和感を低減し、使用感若しくは装着感を向上させるための様々な手段が検討されている。
【0003】
特許文献1には、ウィングを備えた吸収性物品において、ウィングの折返し部に、折返し部の両端に至らない長さの切込み部を形成し、この切込み部の拡開によってヨレやたわみを吸収し、使用感を向上させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、装着者が体、特に脚を動かす際、例えば歩行動作時等には、脚が吸収性物品本体に対して相対的に前後に動くことになるので、脚の内面の付け根に吸収性物品本体の側部が接触して前後方向に擦れることが多い。そのため、特許文献1に記載されているような、単にヨレやたわみを吸収するための構成だけでは、使用感若しくは装着感の向上を図ることは難しい。
【0006】
上記に鑑みて、本発明の一態様は、体を動かした際にも優れた装着感を付与できる吸収性物品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一の態様は、透液性のトップシートと、不透液性のバックシートと、前記トップシートと前記バックシートとの間に設けられた吸収体とを有する細長形状の本体を備えた吸収性物品であって、前記本体から側方にそれぞれ延出する一対のウィングを備え、前記一対のウィングのそれぞれに、当該ウィングを装着者の腿に貼着するための粘着部が形成されている。
【0008】
上記第一の態様によれば、一対のウィングのそれぞれに、当該ウィングを装着者の腿に貼着するための粘着部が形成されているので、装着者は、ウィングをそれぞれ腿の内面に固定させることができる。そのため、装着者が歩行動作等において脚を動かした場合には、ウィングは脚の動きに追随して動くことができる。そして、ウィングに引っ張られて吸収性物品本体の側部の肌側も動くため、吸収性物品本体の両側部と脚の付け根の内面との間での相対的な動きが減少し、両者の間での擦れを減少できる。よって、装着者が体を動かす際の装着感を向上できる。
【0009】
本発明の第二の態様は、前記一対のウィングの前記トップシート側にそれぞれ、粘着部が形成されている。
【0010】
上記第二の態様おける一対のウィングにはトップシート側に粘着部が形成されているので、装着時には、ショーツからはみ出す一対のウィングを、下着の非肌側へ折り返さずにそのまま、より簡単な手順で、粘着部によって脚(腿)の内面に粘着させることができる。
【0011】
本発明の第三の態様では、前記粘着部が、前記ウィングの幅方向の端縁から5~15mmの範囲に設けられていない。
【0012】
上記第三の態様によれば、粘着部が所定位置に設けられていないことで、ウィングを脚の内面に貼り付けた後に、ウィングの幅方向端部を両面から挟むように持ってウィングの位置を直すことが容易となる一方で、ウィングの幅方向端部が腿の表面から浮いてその浮いた部分がもう一方の脚に当たる等して生じ得る違和感を防止できる。
【0013】
本発明の第四の態様では、前記粘着部の平面視面積が、前記ウィングの面積に対して10~50%である。
【0014】
上記第四の態様によれば、粘着部が所定の面積を有するので、ウィングをより確実に腿に固定できる一方、過度に大きな面積の粘着部によって装着者に不快感を生じさせることを防止できる。
【0015】
本発明の第五の態様では、前記ウィングの前方及び/又は後方に、前記ウィングと前記本体との境界線又はその近傍に、前後方向に沿って切込みが形成されている。
【0016】
上記第五の態様によれば、切込みによって、吸収性物品本体の両側部の肌側が、装着者の脚及びウィングに追随して動く作用を維持しつつも、脚が前方又は後方に大きく動いた際に、吸収性物品本体の前方又は後方が捩れることを防止できる。
【0017】
本発明の第六の態様では、前記ウィングが、伸縮性部材から形成されている。
【0018】
上記第六の態様によれば、伸縮性部材によって、吸収性物品本体の両側部の肌側が、装着者の脚及びウィングに追随して動く作用を維持しつつも、脚が前方又は後方に大きく動いた際に、吸収性物品本体の前後の部分が捩れることを防止できる。また、脚を広げる動作等をした場合にウィングが幅方向に引っ張られても、粘着部が肌から外れにくく、粘着部と接触した肌の部分が引っ張られることによる違和感も減らすことができる。
【0019】
本発明の第七の態様は、前記本体の両側部の前記トップシート側に、前後方向に沿って、柔軟部材が配置されている。
【0020】
上記第七の態様によれば、柔軟部材があることで、装着者の肌が吸収性物品本体の側部に押し付けられても、柔らかい感触を得ることができ、違和感が大きく低減される。
【0021】
本発明の第八の態様は、前記ウィングが、前記バックシートを含まず且つ前記バックシートと直接接合されていない。
【0022】
上記第八の態様によれば、ウィングがバックシートを含まないことで、例えばウィングを、吸収性物品の側部の肌側に前後方向にわたって配置されたサイドシートのみで構成することができる。さらにウィングがバックシートに直接接合されていないことで、脚を動かした際に、ウィングを構成している肌側のサイドシートのみが脚の動きに追随し、バックシートが脚に引っ張られにくくなる。言わばサイドシートとバックシートとの動きの連動が抑えられるので、ウィングの肌側が脚の動きに追随して擦れを防止する作用を奏しつつ、吸収性物品本体の捩れを低減できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の一態様によれば、体を動かした際にも優れた装着感を付与できる吸収性物品を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の一形態による吸収性物品の平面図である。
【
図3】
図1の吸収性物品を装着した状態を示す図である。
【
図6】第1変形例による吸収性物品の平面図である。
【
図7】第2変形例による吸収性物品の平面図である。
【
図8】第3変形例による吸収性物品の平面図である。
【
図10】さらに別の変形例による吸収性物品の断面図である。
【
図11】第4変形例による吸収性物品の平面図である。
【
図13】第4変形例による吸収性物品を装着した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、各図面において、特に説明がない限り、同一の又は対応する構成については同一の符号を付して説明を省略する場合がある。また、図面は、発明の理解を助けるための模式的なものである。
【0026】
(吸収性物品の基本構造)
まず、本発明の実施形態による吸収性物品の基本構造について、生理用ナプキンの例を用いて説明する。
図1に、吸収性物品1の平面図を示す。また、
図2に、
図1のI-I線断面図を示す。
【0027】
図1及び
図2に示すように、吸収性物品1は、不透液性のバックシート2と、透液性のトップシート3と、バックシート2とトップシート3との間に配置された吸収体4とを備えた、扁平状の本体(吸収性物品本体)8を有する。吸収性物品1の装着時には、トップシート3側が肌に対向する側(肌側若しくは表側)となり、バックシート2側が下着に対向する側(下着側若しくは裏側)となる。
図1の平面図は、吸収性物品1の肌側から見た図である。
【0028】
また、本明細書においては、
図1に示すように、吸収性物品1を装着した時に装着者の身体の前後方向に対応する方向を、吸収性物品1の前後方向D1とし、この前後方向D1に直交する方向を吸収性物品1の幅方向D2とする。本体8は、平面視で前後方向D1に長い細長形状を有しており、前後方向D1に所定の長さを有し、前後方向D1に直交する幅D2に所定の幅を有するものである。
【0029】
図1に示す形態では、本体8は、前後方向D1に延びる中心線(前後方向中心線)に対して略線対称の平面視形状を有しているが、本体8の形状は線対称でなくともよい。また、吸収性物品1全体の形状も、前後方向中心線に対して略線対称であってよい。さらに、吸収性物品1及び本体8の形状以外の構成(吸収体4の厚みや密度、圧搾溝の大きさ及び位置、ウィングやフラップの形状及び大きさ等を含む)は、中心線を対称軸として略対称であってもよいし、非対称であってもよい。
【0030】
吸収性物品1は、装着時に装着者の股間に主として対向させる中間領域Mと、中間領域Mの前方に隣接する前方領域Fと、中間領域Mの後方に隣接する後方領域Rとを有する。中間領域Mは、体液排出口対向領域Qを含む。体液排出口対向領域Qは、装着時に装着者の膣口、尿道口等の体液排出口及びその周辺領域に対向する領域である。体液排出口対向領域Qの中心は、長方向中心線上に位置し、長さ(前後方向向D1の長さ)10~50mm及び幅(幅方向D2の長さ)5~40mmの領域とすることができる。体液排出口対向領域Qは、
図1では、膣口に対向する領域として楕円状に描かれている。しかし、体液排出口対向領域Qの上述の大きさ及び形状は、本形態による吸収性物品1を説明するための例示にすぎない。
【0031】
バックシート2は、少なくとも遮水性を有するシートであってよく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン樹脂製のシートであってよい。また、ポリエチレンシート等に不織布を積層したラミネート不織布や、さらには防水フィルムを介在させて実質的に不透液性を確保した不織布の積層シート等を用いることができる。また、ムレ防止の観点から透湿性を有するものが用いられることがさらに望ましい。このような遮水・透湿性シート材としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を溶融混練してシートを成形した後、一軸又は二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シート等を用いることができる。バックシート2は、吸収性物品1の外形形状と同じ外形形状を有するシートであってよい。
【0032】
トップシート3は、経血、おりもの、尿等の体液を速やかに透過させる透液性のシートとすることができる。トップシート3としては、有孔又は無孔の不織布や多孔性プラスチックシート等が好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン、ポリエステル、ポリアミド等の合成繊維、レーヨン、キュプラ等の再生繊維、及びこれらの混紡繊維、並びに綿等の天然繊維を単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。また、不織布の加工法としては、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等が挙げられる。これらの加工法のうち、スパンレース法は柔軟性、スパンボンド法はドレープ性に富む不織布を製造できる点で好ましく、サーマルボンド法は嵩高でソフトな不織布を製造できる点で好ましい。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維、サイドバイサイド型繊維、分割型繊維等の複合繊維を用いることもできる。
【0033】
吸収体4は、体液を吸収して保持できる材料であれば限定されないが、綿状パルプと吸水性ポリマーとを含むことが好ましい。吸水性ポリマーとしては、高吸水ポリマー粒状粉(superabsorbent polymer(SAP))、高吸水ポリマー繊維(superabsorbent fiber(SAF))、及びこれらの組合せを用いることができる。パルプとしては、木材から得られる化学パルプ、溶解パルプ等のセルロース繊維、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維からなるものが挙げられる。化学パルプの原料材としては、広葉樹材、針葉樹材等が用いられるが、繊維長が長いこと等から針葉樹材が好適に使用される。
【0034】
また、吸収体4には合成繊維を混合してもよい。合成繊維としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ナイロン等のポリアミド、及びこれらの共重合体を使用でき、これらのうちの2種を混合して使用することもできる。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維、サイドバイサイド型繊維、分割型繊維などの複合繊維も用いることができる。なお、疎水性繊維を親水化剤で表面処理し、体液に対する親和性を付与したものを用いることもできる。吸収体4は、積繊又はエアレイド法によって製造されたものが好ましい。
【0035】
吸収体4は、バックシート2及びトップシート3から前後方向D1にはみ出ない形状及び大きさを有していてよい。そして、前後方向D1の両端縁においては、バックシート2の縁部とトップシート3の縁部とが、接着剤、ヒートシール等によって接合されていてよい。また、吸収体4は、少なくともバックシート2から幅方向D2にはみ出ない形状及び大きさを有していてよい。
【0036】
吸収性物品1には、本体8の両側部、すなわち幅方向D2の両端部のトップシート3側(装着時に装着者の肌に対向する側、若しくは肌側)に、前後方向D1にわたって一対のサイドシート7、7が配置されている。サイドシート7、7はそれぞれ、トップシート3の肌側の面の側部に接合されていてよい。サイドシート7、7は、中間領域Mにおいて幅方向D2の外方へ延出し、同様に中間領域Mにおいて幅方向D2に延出したバックシート2と接合されて、ウィング10、10(後に詳述)を形成していてもよい(
図2)。
【0037】
また、吸収性物品本体8には、トップシート3側からバックシート2側へと凹む圧搾溝、若しくはエンボスEBが形成されていてよい。圧搾溝EBは、装着時に吸収性物品本体8の変形を促したり、体液の移動をコントロールしたりする機能を有する。
【0038】
(ウィング及び粘着部)
図1及び
図2に示すように、吸収性物品1は、幅方向D2外方に延出した一対のウィング10、10を備えている。ウィング10、10は、おおよそ体液排出口対向領域Qを含む領域若しくは中間領域Mの両側部にそれぞれ形成されていてよい。なお、前方領域Fは、ウィング10の前方の起点となる位置から吸収性物品1の前端縁までの領域であってよく、また後方領域Rは、ウィング10の後方の起点となる位置から吸収性物品1の後端縁までの領域であってよい。
【0039】
図1及び
図2に示す形態では、ウィング10、10にはそれぞれ、トップシート3側(肌側)に粘着部20、20が形成されている。このようなトップシート3側に粘着部20、20を備えたウィング10、10は、粘着部20、20によって脚(腿)の内面にそれぞれ粘着させることができる。
【0040】
図3に、
図1及び
図2に示す形態による吸収性物品1を装着した状態の例を示す。
図3に示すように、吸収性物品1のウィング10、10は下着Sからはみ出しており、このようなはみ出したウィング10、10は折り返さず、粘着部20、20によって、脚T、Tの付け根付近の内面にそれぞれ貼り付けられている。これにより、ウィング10、10を下着Sではなく、脚(腿)T、Tに固定することができる。よって、装着者の動作時、例えば脚T、Tを前後に動かした際、ウィング10、10は、脚T、Tの動きに追随して動くことができる。そして、ウィング10、10の動きに伴って吸収性物品1の両側部の肌側も動くので、吸収性物品1の両側部と装着者の脚の付け根付近の内面との間に生じる擦れを低減できる、又はなくすことができる。よって、擦れによる違和感を低減できる、又はなくすことができ、装着感を向上できる。
【0041】
また、
図1に示すように、ウィング10、10は、吸収性物品1の両側部に配置されたサイドシート7、7の幅方向D2外方への延出部からなっていて、吸収性物品1の側部からウィング10までが一体的に形成されている。そのため、吸収性物品の装着時に装着者の肌に当たりやすいサイドシート7、7の幅方向D2の内側部分は、ウィング10、10の動きと連動するため、サイドシート7、7の幅方向D2の内側部分と装着者の肌との間での擦れを低減できる。
【0042】
ウィング10、10の形状及びサイズは、装着者の脚にそれぞれ粘着して固定できる形状であれば、特に限定されない。ウィング10の幅方向D2の長さWは30~60mmであってよい。ウィング10の幅方向D2の長さWを上記範囲とすることで、粘着部20を脚の付け根から所定距離離した位置に形成できるとともに、個装の際に折り畳むことも容易である。
【0043】
ウィング10の前後方向D1の長さLは、25~50mmであってよい。ウィング10の前後方向D1の長さLを上記範囲とすることで、粘着部20が形成される範囲を前後方向D1に確保できるとともに、ウィング10が過度に広い範囲で脚に接触することによる違和感を低減できる。なお、ウィングの前後方向D1の長さLは、
図1に示すように、ウィング10の付け根(ウィングと本体との境界)にて測定される長さであってよい。
【0044】
粘着部20、20の構成は、ウィング10、10の肌側に形成されていて装着時に脚に粘着できるのであれば、特に限定されない。粘着部20には、従来、バックシート2に形成される粘着部に用いられる公知の粘着剤、例えばホットメルトタイプの粘着剤を用いることができる。その主成分としては、スチレン系ポリマー、粘着付与剤、及び可塑剤、並びにこれらの組合せを用いることができる。但し、皮膚に対して刺激のない又は低刺激性の粘着剤を用いることが好ましい。また、粘着部20は、粘着剤を塗布することによって形成してもよいし、粘着剤の層を備えてなる粘着剤シートを粘着面が肌側を向くように被着させることによって形成してもよい。本形態で用いられる粘着剤には、保湿成分、香料、消臭剤等が添加されていてもよい。
【0045】
粘着部20はウィング10の肌側の全面に形成されていてもよいし、
図1に示すようにウィング10の肌側の面の一部の領域に形成されていてもよい。但し、粘着部20は、ウィング10の幅方向D2の端縁から所定の距離w
eの間には設けられていないことが好ましい。距離w
eは、5~15mmであると好ましい。w
eを5mm以上とすることで、ウィング10の幅方向D2を挟むように持って、一旦貼り付けたウィング10の位置を直すことができる。また、w
eを15mm以下とすることで、貼り付けられていないウィング10の部分が脚から浮いて、浮いた部分が、ウィング10が貼り付けられた脚とは別の脚に接触して違和感が生じることを回避できる。
【0046】
粘着部20は、ウィング10の基端及びその付近、すなわち吸収性物品本体8とウィング10との境界及びその付近に形成されていないことが好ましい。より具体的には、粘着部20が、吸収性物品本体8とウィング10との境界から所定の距離wpの間に形成されていないことが好ましい。ウィング10の基端付近は、ウィング10を脚に粘着させた際(貼り付けた際)、脚の付け根により近い場所に対向する。ウィング10の基端付近に粘着部20が形成されていないことで、装着者の脚の付け根に近い場所に粘着部20が配置されることを避けることができ、脚への刺激を低減できる。上記距離wpは、ウィング10の幅方向D2の長さにもよるが、20~50mmであると好ましい。
【0047】
一方のウィング10に設けられている粘着部20の平面視の面積率、すなわちウィング10の全面積に対する粘着部20の面積の10~50%であってよい。上記値を10%以上とすることで、ウィング10をより確実に脚に貼り付けることができる。また、粘着部のべたつきを気にしやすい装着者であっても、上記値を50%以下とすることで、粘着部20の面積が過度に大きくならず、粘着部20がべたつく感触を低減できる。なお、粘着部20は、1つの連続した部分でなく、2以上の不連続な部分を含む場合には、上記面積率は、ウィング10の全面積に対する、1つのウィング10に形成されている粘着部20の面積の合計の割合とすることができる。
【0048】
また、片側のウィング10の粘着部20の面積(粘着部20が不連続になっている場合には粘着部20の面積の合計)は、150~1,500mm2であると好ましい。
【0049】
(粘着部の変形例)
図4に、粘着部20の平面視形状の変形例を示す。粘着部20は、ウィング10の肌側の面の一部の領域に形成されていてよいが、例えば
図4(a)に示すように、前後方向D1にわたって、すなわちウィング10の前方の端縁から後方の端縁まで連続して形成することができる。
図4(a)の例の場合には、粘着部20の粘着力が向上し、装着者の脚の前後の動きにより確実に追随できる。
図4(a)のような粘着部20は、前後方向D1の長さが短いウィング10において好ましい。
【0050】
また、粘着部20は必ずしも連続して形成されていなくともよく、不連続な領域の集合体として形成されていてもよい。粘着部20が不連続になっていることで、肌への負担を軽減し、ムレ等を防ぐことができる。また、粘着部20の材料を低減できるので、経済的に好ましい。粘着部20は、例えば
図4(b)に示すように、幅方向D2に沿って延びるストライプ状に形成されており、粘着部20は前後方向D1に不連続になっている。装着者の脚が前方又は後方に大きく動かされた場合、粘着部20が接触している肌は、粘着部20によって前方又は後方に引き摺られるような力を受けやすいが、粘着部20が前後方向D1に不連続になっていることで、肌が上記のような力を受けることを軽減できる。
【0051】
さらに、粘着部20は、幅方向D2にも、前後方向D1にも不連続になっていてよい。粘着部20は、例えば
図4(c)に示すように、ドット状の粘着部の集合体となっていてもよい。
【0052】
(ウィングの変形例)
図5に、一対のウィング10、10の形状の変形例を示す。
図5(a)に示すウィング10、10は、
図1に示すものよりも、前後方向D1の長さが小さくなっている。そのため、形成される粘着部20の前後方向D1の長さも小さくできるので、このような前後方向D1の長さが短いウィング10、10は、粘着部20の感触が気になる装着者のための吸収性物品において好適に用いることができる。また、ウィング10、10を湾曲している脚の内面に貼り付けてもウィング10、10が歪みにくいので、脚の細い(脚の表面の曲率が大きい)装着者のための吸収性物品としても好適に用いられる。
【0053】
一方、ウィング10、10は、
図5(b)に示すように、前後方向D1の長さが幅方向D2の長さよりも長い形状を有していてもよい。このような形状のウィング10、10であれば、前後方向D1に長い粘着部20を形成でき、その場合には、装着者の脚の内面に沿ってより確実にウィング10、10を固定できる。よって、本例は、脚の太い(脚の表面の曲率が小さい)装着者のための吸収物品において好適に用いることができる。なお、
図5(b)に示すような前後方向D1の長さが長いウィング10、10の場合、粘着部20は、前後方向D1に分割して(不連続に)形成すると、粘着部がべたつく感触を低減するという観点から、好ましい。
【0054】
さらに、
図5(c)に示すように、一対のウィング10、10のそれぞれが、前後方向D1に分割されていてもよい。すなわち、幅方向D2の片側から2以上の延出部が形成されていてよい。その場合、粘着部20は、延出部ごとに形成される。このような構成により、ウィング10を、脚の丸み(曲率)に対応させて配置することができるので、脚を前方又は後方に大きく動かした場合にも、各延出部の動きを独立させることができるので、ウィング10自体が捩れる可能性を低減できる。
【0055】
(第1変形例)
図6に、第1変形例による吸収性物品101を示す。吸収性物品101の基本的な構成は
図1に示す吸収性物品1と同様であるが、ウィング10、10と本体8との境界に、前後方向D1に延びる切込みが形成されている点で、吸収性物品1(
図1)と相違する。
図6に示すように、ウィング10、10にはそれぞれ、前方端縁から後方に延びる切込みC
F、C
Fが形成され、後方端縁から前方に延びる切込みC
R、C
Rが形成されている。
図6に示す例では、前方及び後方の両方に切込みが形成されているが、ウィング10に形成される切込みは、前方の切込みC
F及び後方の切込みC
Rのどちらかのみあってもよい。また、切込みC
F、C
F及び切込みC
R、C
R、は、必ずしもウィング10、10と本体8との境界に形成されていなくともよく、当該境界の近傍に、例えば境界から幅方向D2に10mm離れた位置までの領域内に、形成されていてもよい。
【0056】
脚を大きく前後に動かした場合には、ウィング10、10の前方及び/又は後方が引っ張れ、それに伴い吸収性物品本体8の前後が引っ張れて捩れやすくなる場合がある。吸収性物品本体8の前後が歪む若しくは捩れると、動きの少ない股下の前方及び後方の部分に対して擦れが生じる可能性があるが、本例では、そのような可能性を低減できる。すなわち、前方の切込みCF、CF及び/又は後方の切込みCR、CRが形成されていることによって、吸収性物品本体8の両側部での擦れを低減するという作用を奏しつつ、吸収性物品本体8の前後の部分でも擦れを防止できる。
【0057】
なお、前方の切込みCFの長さaF、及び後方の切込みCRの長さaRは、いずれも10~20mm程度であってよい。長さaF及び長さaRは、ウィング10の前後方向D1の長さ及び形状、並びに吸収性物品101の用途に応じて決められるが、ウィング10の本体8との接続部分の長さawが20~30mmになるように決定されることが好ましい。
【0058】
(第2変形例)
図7に、第2変形例による吸収性物品201の平面図を示す。吸収性物品201の基本的な構成は
図1に示す吸収性物品1と同様であるが、ウィング10s、10sがそれぞれ、伸縮性部材を用いて構成されている点で吸収性物品1(
図1)と相違する。
【0059】
ウィング10s、10sに用いられる伸縮性部材は、少なくとも幅方向D2に伸縮性を有する部材であってよい。また、伸縮性部材は、幅方向D2のみならず前後方向D1にも伸縮性を有すると好ましい。伸縮性部材は、伸縮性フィルムを含むことが好ましく、例えば伸縮性フィルムを伸縮した状態で不織布を貼り付けて形成されたシートであってもよいし、伸縮性繊維を含む不織布から形成されたシートであってもよいし、伸縮性ホットメルトを使用してなるシートであってもよい。
【0060】
ウィング10s、10sが伸縮性部材から形成されていることで、吸収性物品本体8の両側部の肌側が、装着者の脚の動きに連動して動く作用を維持しつつも、脚が前方又は後方に大きく動いた際には、伸縮部材の伸縮によってウィング10、10の位置が前方又は後方に移動し過ぎないようにできる。これにより、吸収性物品本体8の前方部分及び後方部分での捩れを防止でき、肌との擦れも防止できる。また、脚を広げる動作等をした場合に、ウィング10s、10sが腿に追随して幅方向D2に大きく引っ張られることがあるが、ウィング10s、10s自体が伸長するので、粘着部20が肌から外れにくく、また粘着部20と接触した肌の部分が引っ張られて引き攣れることも低減でき、違和感を減らすことができる。
【0061】
なお、第2変形例による吸収性物品201の場合、ウィング10s、10sの非肌側にはバックシート2を配置させず、すなわちバックシート2は、両側方から延出させない。例えば、伸縮性部材からなるウィング10s、10sの基端が、例えば、サイドシート7とバックシート2とで挟んで接合されていてもよい。
【0062】
(第3変形例)
図8に、第3変形例による吸収性物品301の平面図を示す。また、
図9に、
図8のII-II線断面図を示す。吸収性物品301の基本的な構成は
図1に示す吸収性物品1と同様であるが、本体8の両側部に、前後方向D1に沿って、柔軟部材30、30がそれぞれ形成されている点で、吸収性物品1(
図1)と相違する。
図9に示すように、柔軟部材30、30は、両側部において、トップシート3とサイドシート7との間に形成されているが、サイドシート7の肌側に形成されていてもよい。
【0063】
柔軟部材30、30は、柱状(円柱状、角柱状等)のスポンジ様部材であってもよいし、柔軟性の高い不織布を丸めて柱状にした部材であってもよい。柔軟部材30、30が設けられていることで、装着者が動いた時に脚に当たりやすい本体8の両側部の柔軟性を向上させることができ、装着の仕方により多少擦れが生じた場合であっても違和感を低減できる。
【0064】
柔軟部材30、30は、前後方向D1で、少なくとも中央領域Mと重なるように設けられていると好ましく、中央領域M内に設けられていることがより好ましい。
【0065】
また、柔軟部材30、30が形成されている場合、
図10に示すように、バックシート2がサイドシート7に接合されない構成とすることもできる。その場合、ウィング10、10は、サイドシート7、7から形成されており、その基端において、本体8の両側部に柔軟部材30、30を介してそれぞれ接続されている。サイドシート7、7は、
図10に示すように、本体8に接続されていないことが好ましい。より具体的には、サイドシート7、7は、バックシート2にもトップシート3にも直接接合されていないことが好ましい。この構成では、ウィング10、10が、肌側では本体8の両側部と連続しているが、非肌側では本体8の両側部と直接接合されていないので、本体8の両側部の肌側はウィング10の動きに追随しやすいが、非肌側ではウィング10の動きへの追随が弱くなっている。そのため、脚の動きに伴って吸収性物品本体8の両側部が動き、擦れを低減する作用を維持できるとともに、脚が大きく動かされた際にバックシート2が過度に引っ張られて、吸収性物品本体8が捩れる可能性を低減できる。
【0066】
(第4変形例)
図11に、第4変形例による吸収性物品401の平面図を示す。また、
図12に、
図11のIII-III線断面図を示す。吸収性物品401の基本的な構成は
図1に示す吸収性物品1と同様であるが、本例では、粘着部がウィング10、10の非肌側に設けられている点で吸収性物品1(
図1)と相違する。
【0067】
図13に、吸収性物品401が装着された状態の例を示す。
図13に示すように、吸収性物品1のウィング10、10は下着Sからはみ出しており、このようなはみ出したウィング10、10を脚(腿)T、Tの付け根付近の内面にそれぞれ貼り付ける点では、
図3に示す例と同様であるが、吸収性物品401のウィング10、10は、それぞれ端部から肌側に折り返し、粘着部20、20を腿の内面に対向させる。そして、粘着部20、20によって、ウィング10、10をそれぞれ脚T、Tの付け根付近にそれぞれ貼り付けることができる。これにより、ウィング10、10を下着Sではなく、脚(腿)T、Tに固定することができる。よって、吸収性物品1と同様に、装着者の動作時、例えば脚T、Tを前後に動かした際、ウィング10、10は、脚T、Tの動きに追随して動くことができる。そして、ウィング10、10の動きに伴って吸収性物品1の両側部の肌側も動くので、吸収性物品1の両側部と装着者の脚の付け根付近の内面との間に生じる擦れを低減できる、又はなくすことができる。よって、擦れによる違和感を低減できる、又はなくすことができ、装着感を向上できる。
【0068】
以上においては、本形態による吸収性物品を生理用ナプキンの例に基づき説明したが、本形態による吸収性物品は、軽失禁用パッド、パンティライナー等であってもよい。また、上述の特徴は、吸収性物品の構成及び用途に応じて、任意に組み合わせることができる。
【0069】
また、上述のいずれの例でも、一対のウィング10、10に、装着者の腿にウィングを貼着するための粘着部20、20を備えている。よって、歩行動作時、立ち座り動作時、脚組みをする若しくは止める動作時にも、ウィングが追随し、また従来であれば肌との擦れが生じやすい吸収性物品本体8の両側部も追随して動くので、擦れが生じにくく、良好な装着感を得ることができる。本形態におけるウィング10、10自体の構成は、従来のものと同様であってよく、特別な形状、サイズのウィングを用いる必要はない。よって、ウィング10、10を形成するための特別なコストは発生せず、吸収性物品1は安価に製造することができる。
【符号の説明】
【0070】
1、101、201、301、401 吸収性物品
2 バックシート
3 トップシート
4 吸収体
7 サイドシート
8 吸収性物品本体
10、10s ウィング
20 粘着部
30 柔軟部材
CF、CR 切込み
D1 前後方向
D2 幅方向
EB 圧搾溝
F 前方領域
M 中間領域
R 後方領域
Q 体液排出口対向領域