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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-14
(45)【発行日】2024-06-24
(54)【発明の名称】試薬庫および自動分析装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/00 20060101AFI20240617BHJP
【FI】
G01N35/00 C
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020163827
(22)【出願日】2020-09-29
(65)【公開番号】P2022056049
(43)【公開日】2022-04-08
【審査請求日】2023-08-01
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】飯田 晋
【審査官】山口 剛
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-237021(JP,A)
【文献】特開2012-112730(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00 - 35/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の試薬容器を載置する載置テーブルと、
前記載置テーブルを格納可能に形成され、底部に外気と連通する第1の孔が設けられた筐体と、
プローブを挿入可能な第2の孔を有し、前記筐体の開口を覆う蓋と、
前記筐体の内底と前記載置テーブルとにより形成される第1の空間および前記蓋と前記載置テーブルとにより形成される第2の空間の境界付近に設けられ、上方への風を発生させることにより、前記第1の孔から前記第1の空間へ外気を吸気し、前記第1の空間の空気を前記第2の空間へと送り出し、前記第2の孔から前記第2の空間の空気を排気する送風手段と
を具備する、試薬庫。
【請求項2】
前記筐体の内底は、外周に沿って凸部が形成され、
前記凸部は、前記載置テーブルと前記筐体内の側面との間を通る空気の流れを制限する、
請求項1に記載の試薬庫。
【請求項3】
複数の試薬容器を載置する載置テーブルと、
前記載置テーブルを格納可能に形成される筐体と、
プローブを挿入可能なプローブ孔を有し、前記筐体の開口を覆う蓋と、
前記筐体の内底と前記載置テーブルとにより形成される第1の空間の空気を、前記蓋と前記載置テーブルとにより形成される第2の空間へと送り出し、前記プローブ孔から前記第2の空間の前記空気を排気する送風手段と
を具備
前記筐体の内底は、外周に沿って凸部が形成され、
前記凸部は、前記載置テーブルと前記筐体内の側面との間を通る空気の流れを制限する、試薬庫。
【請求項4】
前記載置テーブルは、開口部を有し、
前記送風手段は、前記開口部に面するように配置され、前記開口部を介して、前記第1の空間の空気を、前記第2の空間へと送り出す、
請求項1から請求項2までのいずれか一項に記載の試薬庫。
【請求項5】
前記載置テーブルは、複数の孔を有し、
前記送風手段は、前記複数の孔を介して、前記第2の空間の空気を、前記第1の空間へと送り出す、
請求項1から請求項までのいずれか一項に記載の試薬庫。
【請求項6】
前記第1の空間を冷却する冷却手段
を更に具備する、
請求項1から請求項までのいずれか一項に記載の試薬庫。
【請求項7】
前記筐体の内底は、前記筐体内の液体を排出可能な排出孔を有し、
前記送風手段は、前記排出孔から外気を吸気する、
請求項1から請求項までのいずれか一項に記載の試薬庫。
【請求項8】
前記第1の空間を冷却する冷却手段
を更に具備し、
前記筐体の内底は、吸気孔を有し、
前記送風手段は、前記吸気孔から外気を吸気し、
前記冷却手段は、吸気された前記外気を冷却することによって、前記第1の空間内に結露を発生させる、
請求項1から請求項までのいずれか一項に記載の試薬庫。
【請求項9】
前記筐体から離隔して配置され、前記排出孔の口径よりも大きい口径を有し、前記液体を前記筐体外へ誘導する管状部材
を更に具備する、
請求項に記載の試薬庫。
【請求項10】
複数の試薬容器を収納可能な試薬庫と、
前記複数の試薬容器の少なくともいずれかに収容される試薬を吸引するプローブと
を具備し、
前記試薬庫は、
前記複数の試薬容器を載置する載置テーブルと、
前記載置テーブルを格納可能に形成され、底部に外気と連通する第1の孔が設けられた筐体と、
プローブを挿入可能な第2の孔を有し、前記筐体の開口を覆う蓋と、
前記筐体の内底と前記載置テーブルとにより形成される第1の空間および前記蓋と前記載置テーブルとにより形成される第2の空間の境界付近に設けられ、上方への風を発生させることにより、前記第1の孔から前記第1の空間へ外気を給気し、前記第1の空間の空気を前記第2の空間へと送り出し、前記第2の孔から前記第2の空間の空気を排気する送風手段と
を備える、自動分析装置。
【請求項11】
複数の試薬容器を収納可能な試薬庫と、
前記複数の試薬容器の少なくともいずれかに収容される試薬を吸引するプローブと
を具備し、
前記試薬庫は、
前記複数の試薬容器を載置する載置テーブルと、
前記載置テーブルを格納可能に形成される筐体と、
プローブを挿入可能なプローブ孔を有し、前記筐体の開口を覆う蓋と、
前記筐体の内底と前記載置テーブルとにより形成される第1の空間の空気を、前記蓋と前記載置テーブルとにより形成される第2の空間へと送り出す送風手段と
を備え、
前記筐体の内底は、外周に沿って凸部が形成され、
前記凸部は、前記載置テーブルと前記筐体内の側面との間を通る空気の流れを制限する、自動分析装置。
【請求項12】
複数の試薬容器を載置する載置テーブルと、
前記載置テーブルを格納可能に形成される筐体と、
プローブを挿入可能なプローブ孔を有し、前記筐体の開口を覆う蓋と、
前記筐体の内底と前記載置テーブルとにより形成される第1の空間の空気を、前記蓋と前記載置テーブルとにより形成される第2の空間へと送り出し、前記プローブ孔から前記第2の空間の前記空気を排気する送風手段と
を具備
前記載置テーブルは、開口部を有し、
前記送風手段は、前記開口部に面するように配置され、前記開口部を介して、前記第1の空間の空気を、前記第2の空間へと送り出す、試薬庫。
【請求項13】
複数の試薬容器を載置する載置テーブルと、
前記載置テーブルを格納可能に形成される筐体と、
プローブを挿入可能なプローブ孔を有し、前記筐体の開口を覆う蓋と、
前記筐体の内底と前記載置テーブルとにより形成される第1の空間の空気を、前記蓋と前記載置テーブルとにより形成される第2の空間へと送り出し、前記プローブ孔から前記第2の空間の前記空気を排気する送風手段と
を具備
前記載置テーブルは、複数の孔を有し、
前記送風手段は、前記複数の孔を介して、前記第2の空間の空気を、前記第1の空間へと送り出す、試薬庫。
【請求項14】
複数の試薬容器を載置する載置テーブルと、
前記載置テーブルを格納可能に形成される筐体と、
プローブを挿入可能なプローブ孔を有し、前記筐体の開口を覆う蓋と、
前記筐体の内底と前記載置テーブルとにより形成される第1の空間の空気を、前記蓋と前記載置テーブルとにより形成される第2の空間へと送り出し、前記プローブ孔から前記第2の空間の前記空気を排気する送風手段と
を具備
前記筐体の内底は、前記筐体内の液体を排出可能な排出孔を有し、
前記送風手段は、前記排出孔から外気を吸気し、
前記筐体から離隔して配置され、前記排出孔の口径よりも大きい口径を有し、前記液体を前記筐体外へ誘導する管状部材
を更に具備する、試薬庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、試薬庫および自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
臨床検査用の自動分析装置では、血液および尿などの生体試料(以下、試料と称する)と試薬とを一定量混合して反応させ、この混合液に光を当てて得られる透過光または散乱光の光量を測定することで、測定対象物質の濃度、活性値、および変化に掛かる時間などを求めている。
【0003】
試薬は試薬容器に収容され、自動分析装置に設けられる試薬庫で保冷されている。また、試薬庫には試薬庫カバーが設けられ、試薬庫カバーにはプローブを進入可能なプローブ孔が設けられている。試薬庫で保冷される試薬は、測定に基づくタイミングで試薬分注プローブにより試薬容器から吸引され、反応容器へ吐出される。
【0004】
ところで、自動分析装置の設置場所によっては、試薬庫内の温度よりも外気の温度が高いことによって、試薬庫内において、プローブ孔から流入する外気に起因する結露が発生し易くなる可能性がある。そこで、従来の自動分析装置では、例えば、プローブ孔を開閉可能な機構を試薬庫カバーに設ける構成やエアコンディショナーを設けて試薬庫内の内圧を高める構成などが用いられていた。
【0005】
しかしながら、自動分析装置に上記構成を設けることにより、製造コストの増加、メンテナンス性の低下、および自動分析装置の構造が複雑になるとう問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2019-200161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、簡易な構成で、プローブ孔から試薬庫内への外気の流入を制限することである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態に係る試薬庫は、載置テーブルと、筐体と、蓋と、送風手段とを備える。載置テーブルは、複数の試薬容器を載置する。筐体は、載置テーブルを格納可能に形成される。蓋は、プローブを挿入可能なプローブ孔を有し、筐体の開口を覆う。送風手段は、筐体の内底と載置テーブルとにより形成される第1の空間の空気を、蓋と載置テーブルとにより形成される第2の空間へと送り出し、プローブ孔から第2の空間の空気を排気する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態に係る自動分析装置の構成例を示すブロック図である。
図2図2は、図1の分析機構の構成を例示する図である。
図3図3は、図2の試薬庫におけるA1-A1線の断面を、当該断面に垂直な方向から見た試薬庫の断面図である。
図4図4は、図2の試薬庫におけるA2-A2線の断面を、当該断面に垂直な方向から見た試薬庫の断面図である。
図5図5は、図3および図4の試薬庫におけるB1-B1線の断面を、当該断面に垂直な方向から見た試薬庫の断面図である。
図6図6は、図3および図4の試薬庫におけるB2-B2線の断面を、当該断面に垂直な方向から見た試薬庫の断面図である。
図7図7は、図2の試薬庫内の対流を例示する図である。
図8図8は、実施形態に係る試薬庫のその他の構成例を示す断面図である。
図9図9は、実施形態における、試薬庫に設けられる吸気孔の構成例を示す断面図である。
図10図10は、実施形態における、試薬庫に設けられる吸気孔のその他の構成例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、自動分析装置の実施形態について詳細に説明する。
【0011】
図1は、実施形態に係る自動分析装置の構成例を示すブロック図である。例えば、図1に示すように、本実施形態に係る自動分析装置1は、分析機構2、解析回路3、駆動機構4、入力インタフェース5、出力インタフェース6、通信インタフェース7、記憶回路8、及び制御回路9を備える。
【0012】
分析機構2は、標準試料、又は被検試料等の試料と、この試料に設定される各検査項目で用いられる試薬とを混合する。分析機構2は、試料と試薬との混合液を測定し、例えば吸光度又は散乱光強度等で表される標準データ、及び被検データを生成する。
【0013】
解析回路3は、分析機構2により生成される標準データ、及び被検データを解析することで、検量データ、及び分析データ等を生成するプロセッサである。解析回路3は、記憶回路8から動作プログラムを読み出し、読み出した動作プログラムに従って検量データ、及び分析データ等を生成する。例えば、解析回路3は、標準データに基づき、標準データと標準試料について予め設定された標準値との関係を示す検量データを生成する。また、解析回路3は、被検データと、この被検データに対応する検査項目の検量データとに基づき、濃度値、酵素の活性値、及び変化にかかる時間として表される分析データを生成する。解析回路3は生成した検量データ、及び分析データ等を制御回路9へ出力する。
【0014】
駆動機構4は、制御回路9の制御に従い、分析機構2を駆動させる。駆動機構4は、例えば、ギア、ステッピングモータ、ベルトコンベア、及びリードスクリュー等により実現される。
【0015】
入力インタフェース5は、例えば、操作者から、又は病院内ネットワークNWを介して測定を依頼された試料に係る各検査項目の分析パラメータ等の設定を受け付ける。入力インタフェース5は、例えば、マウス、キーボード、及び、操作面へ触れることで指示が入力されるタッチパッド等により実現される。入力インタフェース5は、制御回路9に接続され、操作者から入力される操作指示を電気信号へ変換し、電気信号を制御回路9へ出力する。なお、本明細書において入力インタフェース5はマウス、及びキーボード等の物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、自動分析装置1とは別体に設けられた外部の入力機器から入力される操作指示に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を制御回路9へ出力する電気信号の処理回路も入力インタフェース5の例に含まれる。
【0016】
出力インタフェース6は、制御回路9に接続され、制御回路9から供給される信号を出力する。出力インタフェース6は、例えば、表示回路、印刷回路、及び音声デバイス等により実現される。表示回路には、例えば、CRTディスプレイ、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、LEDディスプレイ、及びプラズマディスプレイ等が含まれる。なお、表示対象を表すデータをビデオ信号に変換し、ビデオ信号を外部へ出力する処理回路も表示回路に含まれる。印刷回路は、例えば、プリンタ等を含む。なお、印刷対象を表すデータを外部へ出力する出力回路も印刷回路に含まれる。音声デバイスは、例えば、スピーカ等を含む。なお、音声信号を外部へ出力する出力回路も音声デバイスに含まれる。
【0017】
通信インタフェース7は、例えば、病院内ネットワークNWと接続する。通信インタフェース7は、病院内ネットワークNWを介してHIS(Hospital Information System)とデータ通信を行う。なお、通信インタフェース7は、病院内ネットワークNWと接続する検査部門システム(Laboratory Information System:LIS)を介してHISとデータ通信を行っても構わない。
【0018】
記憶回路8は、磁気的、若しくは光学的記録媒体、又は半導体メモリ等の、プロセッサにより読み取り可能な記録媒体等を含む。なお、記憶回路8は、必ずしも単一の記憶装置により実現される必要は無い。例えば、記憶回路8は、複数の記憶装置により実現されても構わない。
【0019】
記憶回路8は、解析回路3で実行される動作プログラム、及び制御回路9に備わる機能を実現するための動作プログラムを記憶している。記憶回路8は、解析回路3により生成される検量データを検査項目毎に記憶する。記憶回路8は、解析回路3により生成される分析データを被検試料毎に記憶する。記憶回路8は、操作者から入力された検査オーダ、又は通信インタフェース7が病院内ネットワークNWを介して受信した検査オーダを記憶する。
【0020】
制御回路9は、自動分析装置1の中枢として機能するプロセッサである。制御回路9は、記憶回路8に記憶されている動作プログラムを実行することで、この動作プログラムに対応する機能を実現する。例えば、制御回路9は、動作プログラムを実行することで、システム制御機能91を有する。なお、本実施形態では、単一のプロセッサによってシステム制御機能91が実現される場合を説明するが、これに限定されない。例えば、複数の独立したプロセッサを組み合わせて制御回路を構成し、各プロセッサが動作プログラムを実行することによりシステム制御機能91を実現しても構わない。
【0021】
システム制御機能91は、入力インタフェース5から入力される入力情報に基づき、自動分析装置1における各部を統括して制御する機能である。
【0022】
図2は、図1の分析機構の構成を例示する図である。例えば、図2に示すように、分析機構2は、反応ディスク201、恒温部202、ラックサンプラ203、及び試薬庫204を備える。
【0023】
反応ディスク201は、反応容器2011を所定の経路に沿って搬送する。具体的には、反応ディスク201は、複数の反応容器2011を、環状に配列させて保持する。反応ディスク201は、駆動機構4により、既定の時間間隔で回動と停止とが交互に繰り返される。反応容器2011は、例えば、ガラスにより形成されている。
【0024】
恒温部202は、所定の温度に設定された熱媒体を貯留し、貯留する熱媒体に反応容器2011を浸漬させることで、反応容器2011に収容される混合液を昇温する。
【0025】
ラックサンプラ203は、測定を依頼された試料を収容する複数の試料容器を保持可能な試料ラック2031を、移動可能に支持する。図2に示す例では、5本の試料容器を並列して保持可能な試料ラック2031が示されている。
【0026】
ラックサンプラ203には、試料ラック2031が投入される投入位置から、測定が完了した試料ラック2031を回収する回収位置まで試料ラック2031を搬送する搬送領域が設けられている。搬送領域では、長手方向に整列された複数の試料ラック2031が、駆動機構4により、方向D1へ移動される。
【0027】
また、ラックサンプラ203には、試料ラック2031で保持される試料容器を所定のサンプル吸引位置へ移動させるため、試料ラック2031を搬送領域から引き込む引き込み領域が設けられている。サンプル吸引位置は、例えば、サンプル分注プローブ207の回動軌道と、ラックサンプラ203で支持されて試料ラック2031で保持される試料容器の開口部の移動軌道とが交差する位置に設けられる。引き込み領域では、搬送されてきた試料ラック2031が、駆動機構4により、方向D2へ移動される。
【0028】
また、ラックサンプラ203には、試料が吸引された試料容器を保持する試料ラック2031を搬送領域へ戻すための戻し領域が設けられている。戻し領域では、試料ラック2031が、駆動機構4により、方向D3へ移動される。
【0029】
試薬庫204は、標準試料、及び被検試料に含まれる所定の成分と反応する試薬を収容する試薬容器100を複数保冷する。試薬庫204内には、回転テーブルが回転自在に設けられている。回転テーブルは、取り外し可能な試薬ラックを保持する。試薬ラックは、複数の試薬容器100を円環状に載置して保持する。また、試薬庫204は、着脱自在な試薬庫カバー2041により覆われている。試薬容器100は、例えば、柱状のガラス製の容器である。より具体的には、試薬容器100は、円柱状、又は所定の円筒内に収容可能な多角柱状のガラス製の容器である。
【0030】
また、図2に示される分析機構2は、サンプル分注アーム206、サンプル分注プローブ207、試薬分注アーム208、試薬分注プローブ209、攪拌ユニット210、測光ユニット211、及び洗浄ユニット212を備える。
【0031】
サンプル分注アーム206は、反応ディスク201とラックサンプラ203との間に設けられている。サンプル分注アーム206は、駆動機構4により、鉛直方向に上下動自在、かつ、水平方向に回動自在に設けられている。サンプル分注アーム206は、一端にサンプル分注プローブ207を保持する。
【0032】
サンプル分注プローブ207は、サンプル分注アーム206の回動に伴い、円弧状の回動軌道に沿って回動する。この回動軌道上には、ラックサンプラ203上の試料ラック2031で保持される試料容器の開口部が位置するようになっている。また、サンプル分注プローブ207の回動軌道上には、サンプル分注プローブ207が吸引した試料を反応容器2011へ吐出するためのサンプル吐出位置が設けられている。サンプル吐出位置は、例えば、サンプル分注プローブ207の回動軌道と、反応ディスク201に保持されている反応容器2011の移動軌道との交点に相当する。
【0033】
サンプル分注プローブ207は、駆動機構4によって駆動され、ラックサンプラ203上の試料ラック2031で保持される試料容器の開口部の直上、又は、サンプル吐出位置において上下方向に移動する。また、サンプル分注プローブ207は、制御回路9の制御に従い、直下に位置する試料容器から試料を吸引する。また、サンプル分注プローブ207は、制御回路9の制御に従い、吸引した試料を、サンプル吐出位置の直下に位置する反応容器2011へ吐出する。
【0034】
試薬分注アーム208は、反応ディスク201と試薬庫204との間に設けられている。試薬分注アーム208は、駆動機構4により、鉛直方向に上下動自在、かつ、水平方向に回動自在に設けられている。試薬分注アーム208は、一端に試薬分注プローブ209を保持する。
【0035】
試薬分注プローブ209は、試薬分注アーム208の回動に伴い、円弧状の回動軌道に沿って回動する。この回動軌道上には、試薬吸引位置が設けられている。試薬吸引位置は、例えば、試薬分注プローブ209の回動軌道と、回転テーブルに円環状に載置される試薬容器100の開口部の移動軌道とが交差する位置に設けられる。また、試薬分注プローブ209の回動軌道上には、試薬分注プローブ209が吸引した試薬を反応容器2011へ吐出するための試薬吐出位置が設定されている。試薬吐出位置は、例えば、試薬分注プローブ209の回動軌道と、反応ディスク201に保持されている反応容器2011の移動軌道との交点に相当する。
【0036】
試薬分注プローブ209は、駆動機構4によって駆動され、回動軌道上の試薬吸引位置、又は試薬吐出位置において上下方向に移動する。また、試薬分注プローブ209は、制御回路9の制御に従い、試薬吸引位置で停止している試薬容器から試薬を吸引する。すなわち、試薬分注プローブ209は、吸引部の一例である。また、試薬分注プローブ209は、制御回路9の制御に従い、吸引した試薬を、試薬吐出位置の直下に位置する反応容器2011へ吐出する。
【0037】
攪拌ユニット210は、反応ディスク201の外周近傍に設けられている。攪拌ユニット210は、攪拌子を有し、攪拌子により、反応ディスク201上の攪拌位置に位置する反応容器2011内に収容されている試料及び試薬を攪拌する。
【0038】
測光ユニット211は、反応容器2011内に吐出された試料と試薬との混合液における所定の成分を光学的に測定する。測光ユニット211は、光源、及び光検出器を有する。測光ユニット211は、制御回路9の制御に従い、光源から光を照射する。照射された光は、反応容器2011の第1側壁から入射され、第1側壁と対向する第2側壁から出射される。測光ユニット211は、反応容器2011から出射された光を、光検出器により検出する。
【0039】
具体的には、例えば、光検出器は、反応容器2011内の標準試料と試薬との混合液を通過した光を検出し、検出した光の強度に基づき、吸光度等により表される標準データを生成する。また、光検出器は、反応容器2011内の被検試料と試薬との混合液を通過した光を検出し、検出した光の強度に基づき、吸光度等により表される被検データを生成する。測光ユニット211は、生成した標準データ、及び被検データを解析回路3へ出力する。なお、光検出器は、反応容器2011内の混合液で散乱された散乱光を検出し、散乱光強度により表される標準データ及び被検データを生成しても構わない。
【0040】
洗浄ユニット212は、測光ユニット211で混合液の測定が終了した反応容器2011の内部を洗浄する。
【0041】
以上、本実施形態に係る自動分析装置1の基本的な構成について説明した。次に、試薬容器100が保冷される試薬庫204の詳細について、図3乃至図6を用いて説明する。
【0042】
図3は、図2の試薬庫におけるA1-A1線の断面を、当該断面に垂直な方向から見た試薬庫の断面図である。図4は、図2の試薬庫におけるA2-A2線の断面を、当該断面に垂直な方向から見た試薬庫の断面図である。図5は、図3および図4の試薬庫におけるB1-B1線の断面を、当該断面に垂直な方向から見た試薬庫の断面図である。図6は、図3および図4の試薬庫におけるB2-B2線の断面を、当該断面に垂直な方向から見た試薬庫の断面図である。
【0043】
図3乃至図6に示される試薬庫204は、試薬庫カバー2041、筐体2042、テーブル回転機構2043、試薬ラック2044、ファン2045、及び冷却素子2046を有する。テーブル回転機構2043は、回転テーブル20431、第1の支持部20432、及び第1の対流分離板20433を備える。試薬ラック2044は、試薬載置部20441、第2の支持部20442、第2の対流分離板20443、及び固定部20444を備える。ファン2045は、プロペラ20451及び枠部20452を備える。
【0044】
試薬庫カバー2041は、筐体2042の開口を覆う蓋である。試薬庫カバー2041には、試薬分注プローブ209を進入可能な第1の試薬吸引口20411および第2の試薬吸引口20412が設けられている。第1の試薬吸引口20411および第2の試薬吸引口20412は、試薬庫カバー2041を貫通する孔である。この孔の径は、例えば、試薬庫カバー2041の表面から裏面にかけて大きくなっている。即ち、この孔は、逆テーパ状に形成されている。第1の試薬吸引口20411および第2の試薬吸引口20412は、試薬分注プローブ209の回動軌道と、試薬容器100の開口部の移動軌道とが交差する位置に設けられる。尚、試薬吸引口は、プローブ孔と呼ばれてもよい。
【0045】
筐体2042は、上端に開口部を有し、内部にテーブル回転機構2043、試薬ラック2044、及びファン2045を収容可能に形成されている。筐体2042の開口部は、試薬庫カバー2041により覆われている。筐体2042の内面部は、熱伝導性に優れたアルミニウム等の材料により形成されている。また、筐体2042は、内面部を覆うように形成される、断熱材から成る断熱部を有する。
【0046】
筐体2042は、内底の外周に沿って凸部20421が形成されている。凸部20421の高さは、内底から回転テーブル20431までの高さを基準として設定される。例えば、凸部20421は、回転テーブル20431がかろうじて接触しない高さである。凸部20421の幅は、筐体2042内の側面からの長さに相当し、試薬庫204内の温度分布に応じて、任意に設定可能である。筐体2042に凸部20421を設けることによって、回転テーブル20431と筐体2042内の側面との間を通る空気の流れを制限することができる。
【0047】
また、筐体2042の内底には、筐体2042内の液体を排出する排出孔20422が設けられている。筐体2042の内底は、排出孔20422の位置が低くなるように傾斜や傾斜を有する溝が設けられていてもよい。また、排出孔20422は、複数設けられてもよい。また、排出孔20422は、外気と連通しており、ファン2045の稼働時には、試薬庫204内へ外気を吸引する吸気孔の役割を果たす。尚、排出孔20422が外気と連通していない場合、筐体2042の内底および内底の側面において、別途吸気孔が設けられてもよい。筐体2042の内底の側面に吸気孔が設けられる例については後述される。
【0048】
テーブル回転機構2043は、制御回路9の制御に従い、試薬容器100を第1の試薬吸引口20411又は第2の試薬吸引口20412へ搬送する。テーブル回転機構2043は、回転軸20434に固定されている。よって、回転軸20434が回動または停止することに伴い、テーブル回転機構2043も回動または停止する。
【0049】
回転テーブル20431は、試薬ラック2044が載置される台である。すなわち、回転テーブル20431は、試薬ラック2044を介して複数の試薬容器100を載置する載置テーブルの一例である。また、回転テーブル20431は、試薬庫204内における、回転テーブル20431より下方の第1の空間と、回転テーブル20431より上方の第2の空間とを分離する役割を持つ。
【0050】
回転テーブル20431には、図3および図4に示すように、第1の空間から第2の空間へ通気させる通風口204311と、図4に示すように、第2の空間から第1の空間へ通気させる第1の通気孔204312とが設けられている。通風口204311のサイズは、ファン2045の開口部を基準に設定される。具体的には、通風口204311のサイズは、ファン2045の開口部と略同じである。第1の通気孔204312は、回転テーブル20431に複数設けられる。第1の通気孔204312のサイズおよび数は、試薬庫204内の温度分布に応じ、任意に設定可能である。尚、通風口204311は、開口部と呼ばれてもよい。
【0051】
第1の支持部20432は、回転テーブル20431の任意の円周上から上方へ向かって延設されている。任意の円周は、例えば、その円周内に少なくともファン2045が収まるサイズである。第1の支持部20432の高さは、少なくともファン2045が収まる高さであり、試薬ラック2044に載置される試薬容器100の高さに応じて設定されている。
【0052】
第1の支持部20432には、円周方向に、予め設定された間隔で第1の通過孔204321が形成されている。第1の通過孔204321が形成される位置は、円周上に配列される試薬容器100の位置に基づいている。具体的には、第1の通過孔204321は、図6に示すように、試薬庫204の中心と試薬容器100の中心とを結んだ線分上に設けられる。第1の通過孔204321の形状は、試薬庫204の高さ方向に長い形状を有することが望ましい。尚、第1の通過孔204321の大きさは、試薬庫204内の温度分布に応じて、任意に設定可能である。
【0053】
第1の対流分離板20433は、第1の支持部20432の上端から筐体2042の中心方向へ、回転テーブル20431と平行に設けられる。第1の対流分離板20433は、試薬庫カバー2041と回転テーブル20431とにより形成される空間を分離するための部材である。試薬庫カバー2041と回転テーブル20431とにより形成される空間は、第1の対流分離板20433によって、例えば、第1の対流分離板20433よりも上方の空間と、第1の対流分離板20433よりも下方の空間とに分離される。第1の対流分離板20433よりも下方の空間の高さは、基準となる試薬容器100の高さに基づいて設定されている。例えば、第1の対流分離板20433よりも下方の空間の高さは、試薬ラック2044に載置された試薬容器100の高さよりも高く設定されている。第1の対流分離板20433を設けることにより、ファン2045によって給気された冷気が、第1の対流分離板20433より上方の空間に直接拡散されず、第1の対流分離板20433より下方の空間に一旦留めることができる。冷気が第1の対流分離板20433より下方の空間に一旦留まることにより、試薬容器100の内の冷却を要する部分に効率良く冷気を送るができる。尚、第1の対流分離板20433には、中心付近において、後述する固定軸20453を貫通させるための孔が設けられている。
【0054】
回転軸20434は、回転テーブル20431の略中心に固定されている。回転軸20434は、図示しないモータと接続し、モータの動力を回転テーブル20431へと伝える。モータが制御回路9の制御に従って駆動されると、回転軸20434により伝達されるモータの動力により、テーブル回転機構2043の全体が、回転軸20434を中心として回動および停止を繰り返す。
【0055】
試薬ラック2044は、回転テーブル20431上に載置される。具体的には、試薬ラック2044は、回転テーブル20431における、回転テーブル20431上に形成された第1の支持部20432よりも外側の環状部分に載置される。図2乃至図6では、回転テーブル20431に一つの試薬ラック2044が載置される場合を例にしている。なお、試薬ラック2044は、複数に分割されていてもよい。例えば、三つに分割される場合、中心角が120度の三つの試薬ラックとなる。
【0056】
試薬載置部20441は、試薬容器100が載置される台である。試薬載置部20441において、試薬容器100が載置される位置は予め設定されている。図2乃至図6では、複数の試薬容器100が二重の円環状に載置される場合を例に示している。なお、試薬容器100は、二重の円環状に載置されることに限定されず、一重、又は三重等の円環状に載置されても構わない。
【0057】
試薬容器100の載置位置は、円周上に隣り合う試薬容器100同士が予め設定された間隔を維持して載置されるように設定されている。載置位置が規則正しく設定されることで、試薬庫204内の温度分布に偏りが生じにくくなる。
【0058】
内側に設けられる円環状の載置位置は、この載置位置に載置される試薬容器100が、外側の円周上に配列される試薬容器100の間から筐体2042の内壁と面するように設定されている。これにより、内側の円周上に配列される試薬容器100の間を通過した冷気が外側の円周上に配列される試薬容器100に直接ぶつかるようになる。
【0059】
試薬載置部20441に直接載置される試薬容器100の形状は、予め設定されている。例えば、図6では、円柱形状の試薬容器100が試薬載置部20441に直接載置されるように設定されている。なお、試薬載置部20441に直接載置可能な試薬容器100の形状は、円柱形状に限定されず、多角柱形状であっても構わない。
【0060】
試薬載置部20441に直接載置可能な試薬容器100の形状が予め設定されていたとしても、その形状の容器のみが載置可能という訳ではない。試薬載置部20441の載置形状に対応したアダプタ(補助器具)を容器に取り付け、アダプタを取り付けた容器を試薬載置部20441に載置してもよい。このようなアダプタを用意することにより、アダプタを取り付け可能であれば、種々の形状の容器に対応することが可能となる。アダプタの機能は、試薬容器100の形状を補うものに限らず、試薬容器100の高さを補うものとして用いてもよい。
【0061】
試薬載置部20441には、図4および図6に示すように、回転テーブル20431より上方の第2の空間から、回転テーブル20431より下方の第1の空間へ通気させる第2の通気孔204411が設けられている。第2の通気孔204411のサイズは、回転テーブル20431上に設けられた第1の通気孔204312を基準に設定される。例えば、第2の通気孔204411のサイズは、第1の通気孔204312のサイズと同じである。また、第2の通気孔204411の数は、第1の通気孔204312の数と同じである。
【0062】
第2の支持部20442は、試薬載置部20441の内周から上方へ向かって延設されている。第2の支持部20442の高さは、第1の支持部20432の高さに応じて設定されている。
【0063】
第2の支持部20442には、円周方向に、予め設定された間隔で第2の通過孔204421が形成されている。第2の通過孔204421が形成される位置は、円周上に配列される試薬容器100の位置に基づいている。具体的には、第2の通過孔204421は、図6に示すように、試薬庫204の中心と各々の試薬容器100の中心とを結んだ線分上に設けられる。第2の通過孔204421の形状は、試薬庫204の高さ方向に長い形状を有することが望ましい。具体的には、第2の通過孔204421の形状は、第1の通過孔204321と略同じである。尚、第2の通過孔204421は、第1の通過孔204321を塞がなければ形状を問わない。例えば、図6では、第2の通過孔204421は、第1の通過孔204321と同じ数だけ設けられているが、第1の通過孔204321を塞がなければその数を減らしてもよい。
【0064】
第2の対流分離板20443は、第2の支持部20442の任意の位置から、筐体2042内の側面方向へ、試薬載置部20441と平行に設けられる。第2の対流分離板20443は、試薬庫カバー2041と試薬載置部20441とにより形成される空間を分離するための部材である。試薬庫カバー2041と試薬載置部20441とにより形成される空間は、第2の対流分離板20443によって、例えば、第2の対流分離板20443よりも上方の空間と、第2の対流分離板20443よりも下方の空間とに分離される。第2の対流分離板20443よりも下方の空間の高さは、基準となる試薬容器100の高さに基づいて設定されている。例えば、第2の対流分離板20443よりも下方の空間の高さは、試薬容器100のうち、試薬を収容している本体を含むように設定されている。これにより、第2の対流分離板20443よりも下方の空間では、試薬容器100のうち、冷却を要する部分が存在することになる。
【0065】
第2の対流分離板20443には、試薬載置部20441に載置される試薬容器100の開口部を、試薬庫204の上面側へ突出させるための突出孔204431(図3および図5を参照)および突出孔204432(図4および図5を参照)が形成されている。例えば、図5に示されるように、突出孔204431が形成される位置は、試薬載置部20441で設定されている試薬容器100の外周側の載置位置と対応し、突出孔204432が形成される位置は、試薬載置部20441で設定されている試薬容器100の内周側の載置位置と対応する。突出孔204431および突出孔204432の形状は、試薬載置部20441で設定されている直接載置可能な試薬容器100の形状と対応する。
【0066】
例えば、試薬載置部20441において円柱形状の試薬容器100が二重の円環状に載置されるように設定されている場合、第2の対流分離板20443は、設定される試薬容器100よりも若干大径の円形状の突出孔が二重の円環状に設けられる。一方、例えば、試薬載置部20441において多角柱形状の試薬容器100が一重の円環状に載置されるように設定されている場合、第2の対流分離板20443は、設定される試薬容器100よりも若干大きい多角形状の突出孔が一重の円環状に設けられる。
【0067】
また、第2の対流分離板20443には、第2の対流分離板20443よりも上方の空間へ冷気を逃がすための溝部が形成されている。例えば、第2の対流分離板20443には、図4および図5に示すように、通気溝204433が複数形成されている。通気溝204433は、第2の対流分離板20443と筐体2042の内壁との間に隙間を形成させるための溝である。通気溝204433は、例えば、第2の対流分離板20443の突出孔204432から半径方向外側の分離板端部が、筐体2042の中心方向に略方形形状に削られてなる。これにより、通気溝204433と筐体2042の内壁との間には、空気を通過させるための隙間が形成される。
【0068】
なお、通気溝204433の形状は略方形形状に限定されず、通過する空気に偏り、及び乱れを生じさせない形状であれば任意に設定可能である。また、通気溝204433の幅、及び数は、試薬庫204内の温度分布に応じ、任意に設定可能である。また、通気溝204433が設けられる位置は、試薬容器100の外側載置位置から半径方向外側のテーブル端部に限定されず、通過する空気に偏り、及び乱れを生じさせない位置であれば任意に設定可能である。また、上記と同じ目的の孔を、溝部の代わりに、或いは溝部と共に、第2の対流分離板20443上に複数設けてもよい。
【0069】
固定部20444は、第2の支持部20442のいずれかに設けられ、試薬ラック2044をテーブル回転機構2043に固定させる。例えば、固定部20444は、第1の対流分離板20433に設けられた被固定部(図示せず)と嵌合することにより、試薬ラック2044をテーブル回転機構2043に固定させる。
【0070】
ファン2045は、制御回路9の制御に従って駆動され、予め設定された方向へ空気を送り出す送風手段の一例である。ファン2045は、一方の面が固定軸20453に固定され、他方の面が回転テーブル20431および通風口204311に面している。ファン2045の他方の面と回転テーブル20431とは、互いがかろうじて接触しない程度に離隔されている。ファン2045は、枠部20452により開口部が形成される。ファン2045の開口部にはプロペラ20451が配置される。ファン2045は、回転テーブル20431よりも下方の第1の空間内の空気を、回転テーブル20431よりも上方の第2の空間内へ送り出すように、プロペラ20451を回転させる。
【0071】
プロペラ20451は、回転テーブル20431よりも下方の第1の空間内の空気を、回転テーブル20431よりも上方の第2の空間内へ送り出す方向へ回転する。プロペラ20451のサイズ、枚数、および回転速度は、試薬庫204内の温度分布に応じて、任意に設定可能である。
【0072】
枠部20452は、開口部にプロペラ20451を収容する。また、枠部20452は、プロペラ20451を回転させるためのモータが収容されていてもよい。開口部のサイズは、プロペラ20451のサイズに応じて任意設定かのうである。図6では、枠部20452の外形は、方形状となっているが、これに限らない。例えば、枠部20452の外形は円形でもよい。
【0073】
固定軸20453は、下端が枠部20452の略中心に固定され、上端が筐体2042の一部に固定されている(図示せず)。固定軸20453は、第1の対流分離板20433に設けられた孔を貫通しているが、テーブル回転機構2043の回動には影響しない構造となっている。例えば、固定軸20453は、第1の対流分離板20433に設けられた孔に接触しないように、或いは第1の対流分離板20433に設けられた孔に取り付けられた軸受けによりテーブル回転機構2043の回動の影響を受けないようになっている。
【0074】
冷却素子2046は、制御回路9の制御に従って駆動され、冷却効果を発生させる半導体素子であり、冷却手段の一例である。冷却素子2046は、例えば、冷気が滞留する試薬容器100の底面に複数設けられる。具体的には、冷却素子2046は、筐体2042の内底に内蔵されている。冷却素子2046で内底が冷却されることにより、回転テーブル20431より下方の第1の空間を冷却する。
【0075】
次に、以上のように構成される試薬庫204内で発生する対流について図7を用いて説明する。図7は、図2の試薬庫内の対流を例示する図である。図7では、回転テーブル20431より下方の第1の空間S1と、回転テーブル20431より上方の第2の空間S2とが示されている。
【0076】
まず、操作者は、試薬庫カバー2041を開き、予め試薬容器100が挿入された試薬ラック2044を、回転テーブル20431上に載置する。この時、試薬ラック2044における試薬容器100の載置位置には、試薬容器100が全て載置されていることが望ましい。試薬ラック2044が試薬庫204内に載置した後、操作者は、試薬庫カバー2041を閉じる。
【0077】
試薬庫カバー2041が閉じられると、所定のタイミングでファン2045のプロペラ20451が回転する(以降では、「ファン2045が回転する」旨で説明する)。なお、試薬庫カバー2041が閉じられている間において、ファン2045を回転させるタイミングに限定はなく、例えば、ファン2045は、常に回転していても構わない。また、試薬庫カバー2041が開けられたことで試薬庫204内の温度が上昇している場合、或いは上昇傾向にある場合には、制御回路9は、冷却素子2046のパワーをブーストし、ファン2045の回転数を上げるように制御しても構わない。
【0078】
ファン2045が回転すると、第1の空間S1の空気がファン2045に吸引され、吸引された空気は、第1の対流分離板20433と回転テーブル20431とに囲まれた空間へ送り出される。この時、第1の空間S1の空気は冷却素子2046により冷却されているため、第1の対流分離板20433と回転テーブル20431とに囲まれた空間へ送り出される空気は冷気となっている。また、図7の矢印AR1で示されるように、第1の空間S1内では、ファン2045により空気が排気されることに伴って、排出孔20422から外気が吸気される。よって、この第1の空間S1は、ファン2045によって強制排気および自然吸気されることから、負圧となる。
【0079】
図7の矢印AR2で示されるように、第1の対流分離板20433と回転テーブル20431とに囲まれた空間へ送り出された空気は、第1の通過孔204321および第2の通過孔204421を通って、第2の対流分離板20443と試薬載置部20441とに囲まれた空間へ流れ込む。第2の対流分離板20443と試薬載置部20441とに囲まれた空間には、試薬容器100が露出して載置されているため、流れ込んだ空気(冷気)が試薬容器100を冷却する。
【0080】
図7の矢印AR3で示されるように、第2の対流分離板20443と試薬載置部20441とに囲まれた空間へ流れ込んだ空気は、通気溝204433を通って、試薬庫カバー2041と面する空間へ流れ込み、第2の試薬吸引口20412から試薬庫204の外部へと流出する。これにより、第2の空間S2では、ファン2045により空気が吸気されることに伴って、第2の試薬吸引口20412から第2の空間S2の空気が排気される。よって、この第2の空間S2は、ファン2045によって強制吸気および自然排気されることから、正圧となる。尚、図7では図示されていないが、第1の試薬吸引口20411からも空気が排気されてよい。
【0081】
また、図7の矢印AR4で示されるように、第2の対流分離板20443と試薬載置部20441とに囲まれた空間へ流れ込んだ空気は、第2の通気孔204411および第1の通気孔204312を通って、第1の空間S1へと流れ込む。第1の空間S1へ流れ込んだ空気は、冷却素子2046によって再び冷却され、ファン2045によって再び第2の空間S2へと排気される。
【0082】
図8は、実施形態に係る試薬庫のその他の構成例を示す断面図である。図8の試薬庫204は、排出孔20422の直下に、排出孔20422から排出される液体を筐体2042外へ誘導する管状部材2047を備える。管状部材2047は、筐体2042から離隔して配置される。管状部材2047が筐体2042から離隔して配置されることにより、管状部材2047と筐体2042との隙間を介して、試薬庫204へ外気を流入させることができる。管状部材2047と筐体2042との距離は、任意に設定されてよい。もし管状部材2047内が外気と連通している場合、管状部材2047は、筐体2042に直接接続されてよい。管状部材2047を筐体2042に直接接続する場合、例えば、筐体2042にブラケットを設け、当該ブラケットに管状部材2047を取り付けるようにしてもよい。
【0083】
管状部材2047の上端は、排出孔20422の口径よりも大きい口径を有する。管状部材2047の下端は、上端と同じ口径でもよいし、上端よりも小さい口径でもよい。管状部材2047は、例えば漏斗に相当する。管状部材2047の下端には、例えば、チューブが接続され、筐体2042内の液体を廃液ボトルへ誘導する。
【0084】
以上説明したように、本実施形態に係る試薬庫204では、試薬ラック2044が載置される回転テーブル20431により、試薬庫204内の空間が第1の空間と第2の空間とに分離される。そして、回転テーブル20431の至近に設けられたファン2045によって、回転テーブル20431に設けられた通風口204311を介して、第1の空間の空気を第2の空間へと送り出す。これにより、略密閉状態である第1の空間および第2の空間は、それぞれ負圧および正圧となる。
【0085】
回転テーブル20431より上方の第2の空間が正圧になると、試薬庫カバー2041に設けられた第1の試薬吸引口20411および第2の試薬吸引口20412からの外気の流入を制限することができる。第1の試薬吸引口20411および第2の試薬吸引口20412からの外気の流入が制限されることにより、例えば、第1の試薬吸引口20411および第2の試薬吸引口20412で発生しうる結露を抑制することができる。また例えば、冷却されていない外気を第2の空間へ直接流入することが低減できるため、第2の空間にある試薬容器100の冷却効果を向上させることができる。
【0086】
回転テーブル20431より下方の第1の空間が負圧になると、筐体2042の内底に設けられた排出孔20422から外気が流入する。第1の空間に進入した外気は、筐体2042の内底に内蔵された冷却素子2046により冷却される。外気が冷却されることにより、第1の空間内には結露が発生しうる。一方で、第2の空間には冷却された外気が送り込まれるため、第2の空間内では結露の発生が抑制される。
【0087】
なお、上記の説明では、第2の空間が正圧になることについて説明したがこれに限らない。具体的には、第2の空間内において、第1の試薬吸引口20411および第2の試薬吸引口20412からの外気の流入を制限できればよいため、試薬庫204外の気圧と第2の空間内の気圧とがバランスしていればよい。換言すると、第2の空間は、負圧にならなければよい。
【0088】
以上の実施形態では、試薬庫204の筐体2042に設けられる吸気孔を、筐体2042の内底に設けられた排出孔と共用していたが、これに限らない。例えば、筐体2042の内底および内底の側面に吸気孔が設けられてもよい。以下では、筐体2042の内底の側面に吸気孔が設けられる例について図9および図10を用いて説明する。
【0089】
図9は、実施形態における、試薬庫に設けられる吸気孔の構成例を示す断面図である。図9に示されるように、吸気孔204211は、筐体2042の内底に形成された凸部20421に設けられる。吸気孔204211は、外気と連通しており、ファン2045の稼働時には、試薬庫204内へ外気を吸引する。また、吸気孔204211は、複数設けられてもよい。尚、筐体2042に吸気孔204211が設けられる場合、排出孔20422は、吸気孔の役割を持たなくてもよい。
【0090】
図10は、実施形態における、試薬庫に設けられる吸気孔のその他の構成例を示す断面図である。図10に示されるように、吸気孔204211にはL字管状部材2048を備えてもよい。L字管状部材2048は、例えば、一方の直線部分が、筐体2042の外部から吸気孔204211に接続される。このとき、L字管状部材2048の他方の直線部分は、開口部が上方を向くように設けられる。これにより、L字管状部材2048内で発生した結露に起因する液体を外部に流出させず、筐体2042内へ流入させることができる。
【0091】
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、簡易な構成で、プローブ孔から試薬庫内への外気の流入を制限することができる。
【0092】
実施形態の説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(central processing unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC))、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサは記憶回路に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、記憶回路にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、上記各実施形態の各プロセッサは、プロセッサ毎に単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。さらに、上記各実施形態における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。
【0093】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0094】
100 試薬容器
201 反応ディスク
2011 反応容器
202 恒温部
203 ラックサンプラ
2031 試料ラック
204 試薬庫
2041 試薬庫カバー
20411 第1の試薬吸引口
20412 第2の試薬吸引口
2042 筐体
20421 凸部
204211 吸気孔
20422 排出孔
2043 テーブル回転機構
20431 回転テーブル
204311 通風口
204312 第1の通気孔
20432 第1の支持部
204321 第1の通過孔
20433 第1の対流分離板
20434 回転軸
2044 試薬ラック
20441 試薬載置部
204411 第2の通気孔
20442 第2の支持部
204421 第2の通過孔
20443 第2の対流分離板
204431 突出孔
204432 突出孔
204433 通気溝
20444 固定部
2045 ファン
20451 プロペラ
20452 枠部
20453 固定軸
2046 冷却素子
2047 管状部材
2048 L字管状部材
206 サンプル分注アーム
207 サンプル分注プローブ
208 試薬分注アーム
209 試薬分注プローブ
210 攪拌ユニット
211 測光ユニット
212 洗浄ユニット
AR1,AR2,AR3,AR4 矢印
S1 第1の空間
S2 第2の空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10