(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-14
(45)【発行日】2024-06-24
(54)【発明の名称】内視鏡用処置具
(51)【国際特許分類】
A61B 17/29 20060101AFI20240617BHJP
A61B 1/018 20060101ALI20240617BHJP
A61B 1/01 20060101ALI20240617BHJP
【FI】
A61B17/29
A61B1/018 515
A61B1/01 512
(21)【出願番号】P 2020167618
(22)【出願日】2020-10-02
【審査請求日】2023-09-04
(73)【特許権者】
【識別番号】516259332
【氏名又は名称】レイクR&D株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100160370
【氏名又は名称】佐々木 鈴
(72)【発明者】
【氏名】西村 幸
【審査官】槻木澤 昌司
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-103354(JP,A)
【文献】特開2002-119514(JP,A)
【文献】特開平09-010220(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0083072(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/28-17/295
A61B 1/018
A61B 1/01
A61B 10/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
体腔内に挿入される内視鏡システムの挿入部のチャネル内に挿脱されるコイルシースと、
前記コイルシース内に進退可能に配置された操作ワイヤと、
前記コイルシースおよび前記操作ワイヤの各基端側に連結され前記操作ワイヤを進退操作する操作部と、
前記コイルシースの先端部に設けられた筒部と前記筒部より先端側に延在する対向一対の腕部とを有する先端処置部支持部材と、
生体組織の患部の処置を行う先端処置部と、
該先端処置部を目的部位に誘導するためのガイドワイヤとを備え、
前記先端処置部は、先端側部分である一対
の鉗子用カップ部と、基端側で各鉗子用カップ部を支える支棹部とを含む一対の先端処置片を有し、前記支棹部同士のX状交差部が前記先端処置部支持部材の一対の前記腕部間に軸支され、さらに、一対の前記支棹部の基端部が前記操作ワイヤの進退と連動して開閉することにより、一対の前記鉗子用カップ部が開閉する構成であり、
前記先端処置部支持部材の前記筒部または前記コイルシースの前記筒部に隣接する部位に固定して設けられ前記ガイドワイヤを相対移動可能に連結する連結部材である第1のガイドワイヤ連結部材と、
一方の前記鉗子用カップ部の両側部を含む背面部をガイドワイヤ挿通ギャップを有して取り巻いて設けられ前記ガイドワイヤを挿通させる連結部材である第2のガイドワイヤ連結部材を備え、
前記ガイドワイヤ挿通ギャップは、前記ガイドワイヤが前記鉗子用カップ部の背面部中心位置からいずれかの側方位置へ位置ずれ可能に形成されている
ことを特徴とする内視鏡用処置具。
【請求項2】
前記第1のガイドワイヤ連結部材は、大きい貫通孔と小さい貫通孔を隣接して有し、前記大きい貫通孔に前記先端処置部支持部材の前記筒部または前記コイルシースの前記筒部に隣接する部位を挿通固定され、前記小さい貫通孔に前記ガイドワイヤが進退可能に挿通された構成である
ことを特徴とする請求項1に記載の内視鏡用処置具。
【請求項3】
前記第2のガイドワイヤ連結部材は、一側部が固定部となっているリング形状であり前記固定部を一方の前記鉗子用カップ部の合わせ面の基部に固定されてなるものであって、前記合わせ面の基部にはカップ幅方向に凹部が設けられ、前記凹部に前記固定部が嵌入された状態に固定され、前記固定部以外の部分が前記鉗子用カップ部の両側部を含む背面部をガイドワイヤ挿通ギャップを有して取り巻いている構成である
ことを特徴とする請求項1または2に記載の内視鏡用処置具。
【請求項4】
前記鉗子用カップ部の合わせ面の基部に形成された前記凹部は、前記固定部の厚みよりも所要寸法よりも深く形成され、
前記凹部に前記固定部が収容され、さらに前記固定部に重ねられかつ前記鉗子用カップ部の合わせ面の基部に形成された係止部に係止され前記固定部を前記凹部に固定させ
るロック部材を備えている
ことを特徴とする請求項3に記載の内視鏡用処置具。
【請求項5】
前記第2のガイドワイヤ連結部材は、前記凹部のカップ長方向の寸法に等しい短円筒の一側が扁平とされ、
該扁平な短円筒の一側が前記固定部となっている
ことを特徴とする請求項3または4に記載の内視鏡用処置具。
【請求項6】
前記第1のガイドワイヤ連結部材は、前記第2のガイドワイヤ連結部材に対し、前記コイルシースの中心線の周りに最大で90度の位相を有するように設けられている
ことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の内視鏡用処置具。
【請求項7】
前記第1のガイドワイヤ連結部材は、前記第2のガイドワイヤ連結部材に対し、前記コイルシースの中心線の周りに同一位相となるように設けられている
ことを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の内視鏡用処置具。
【請求項8】
前記第1のガイドワイヤ連結部材および/または前記第2のガイドワイヤ連結部材は、プラスチックまたは金属材料よりなる
ことを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の内視鏡用処置具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体腔内に挿入される内視鏡の挿入部の先端開口から突出して胆管、膵管等の細い管腔等に先行挿入されるガイドワイヤにより案内され、生検鉗子や把持鉗子等として使用され生体組織の挟み採る先端処置部を有する内視鏡用処置具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉗子として使用する内視鏡用処置具は、内視鏡チャネルに挿脱されるコイルシースと、コイルシース内に進退可能に配置された操作ワイヤと、コイルシースおよび操作ワイヤの各基端側に連結され操作ワイヤを進退操作する操作部と、コイルシースの先端部に設けられた先端処置部支持部材と、先端処置部支持部材の一対の腕部間にて支持される先端処置部とを備えている。
【0003】
先端処置部は、鉗子用カップ部と鉗子用カップ部を支持する支棹部とを有する一対の先端処置片を備え、支棹部同士をX状に交差してX状交差部に設ける軸孔に、一対の腕部に両端支持される回転軸が挿通され、一対の鉗子用カップ部が操作ワイヤの進退と連動して開閉し生体組織(患部組織)の挟み採るようになっている。
【0004】
内視鏡システムは、内視鏡チャネルが挿入部の先端部側面に開口を有しかつマイクロカメラが挿入部の先端面と開口の近傍に備えられ、先端面のマイクロカメラで確認しつつ挿入部の先端部を太い体腔内を細い管腔との合流部に対応するように挿入し、内視鏡チャネル内に挿通した内視鏡用処置具の先端部(一対の鉗子用カップ部)を挿入部の先端開口より細い十二指腸、胆管、膵管等の管腔内に挿入させて生体組織の一部(患部組織)の挟み採る。
【0005】
しかし、細く柔軟性がある内視鏡用処置具の先端部である一対の鉗子用カップ部(例えばφ1.7~3mm)を、マイクロカメラで確認できず、入口に括約筋が存在する場合や細く曲がりくねった部分もある管腔内に導入することは難しいので、誘導操作容易なガイドワイヤ(例えばφ0.7mm)を先端処置部に平行に隣接させて内視鏡チャネル内に挿通し、ガイドワイヤを細い管腔内に先行挿入させ、次いで、ガイドワイヤを案内として内視鏡用処置具の先端部を細い管腔内に挿入することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】実公平6-21449号公報
【文献】特開平9-10220号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1によれば、先端処置部支持枠にガイドワイヤ連結部材(突出部18及び透孔12b)が設けられており、鉗子の先端とガイドワイヤとの離間距離が大きくなることが、胆管へ先に挿入されたガイドワイヤを案内として鉗子を胆管へ挿入しようとしても挿入にはかなりの困難が伴うものとなっている。また、ガイドワイヤ連結部材を一か所にしか備えていないことから、ガイドワイヤが鉗子カップに挟まってしまうことが考えられ、ガイドワイヤの先端が意図した方向に向かず、胆管等の細い管腔への挿入が困難となることが考えられる。
【0008】
特許文献2によれば、カップにガイドワイヤ連結部材が設けられているので、鉗子の先端からガイドワイヤが離れすぎることは防止できるものの、カップの中をガイドワイヤが通っているので、処置の邪魔になる。また、カップが開くときにガイドワイヤが一体的に開く方向に曲がろうとする)のでガイドワイヤの腰の強さにより、カップが開きにくい。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、ガイドワイヤが一対の鉗子用カップ部間に挟まれることがないとともに一対の鉗子用カップ部の開閉をガイドワイヤが阻害することがなく、一対の鉗子用カップ部が大きく開くことができる内視鏡用処置具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様に係る内視鏡用処置具は、上記目的を達成するため、体腔内に挿入される内視鏡システムの挿入部のチャネル内に挿脱されるコイルシースと、前記コイルシース内に進退可能に配置された操作ワイヤと、前記コイルシースおよび前記操作ワイヤの各基端側に連結され前記操作ワイヤを進退操作する操作部と、前記コイルシースの先端部に設けられた筒部と前記筒部より先端側に延在する対向一対の腕部とを有する先端処置部支持部材と、生体組織の患部の処置を行う先端処置部と、該先端処置部を目的部位に誘導するためのガイドワイヤとを備えてなる。
【0011】
そして、前記先端処置部は、先端側部分である一対の鉗子用カップ部と、基端側で各鉗子用カップ部を支える支棹部とを含む一対の先端処置片を有し、前記支棹部同士のX状交差部が前記先端処置部支持部材の一対の前記腕部間に軸支され、さらに、一対の前記支棹部の基端部が前記操作ワイヤの進退と連動して開閉することにより、一対の前記鉗子用カップ部が開閉する構成である。
【0012】
さらに、前記先端処置部支持部材の前記筒部または前記コイルシースの前記筒部に隣接する部位に固定して設けられ前記ガイドワイヤを相対移動可能に連結する連結部材である第1のガイドワイヤ連結部材と、一方の前記鉗子用カップ部の両側部を含む背面部をガイドワイヤ挿通ギャップを有して取り巻いて設けられ前記ガイドワイヤを挿通させる連結部材である第2のガイドワイヤ連結部材を備え、前記ガイドワイヤ挿通ギャップは、前記ガイドワイヤが前記鉗子用カップ部の背面部中心位置からいずれかの側方位置へ位置ずれ可能に形成されている構成である。
【0013】
本発明の第2の態様に係る内視鏡用処置具は、第1の態様の構成に加え、前記第1のガイドワイヤ連結部材は、大きい貫通孔と小さい貫通孔を隣接して有し、前記大きい貫通孔に前記先端処置部支持部材の前記筒部または前記コイルシースの前記筒部に隣接する部位を挿通固定され、前記小さい貫通孔に前記ガイドワイヤが進退可能に挿通された構成である。
【0014】
本発明の第3の態様に係る内視鏡用処置具は、第1または2の態様の構成に加え、前記第2のガイドワイヤ連結部材は、一側部が固定部となっているリング形状であり前記固定部を一方の前記鉗子用カップ部の合わせ面の基部に固定されてなるものであって、前記合わせ面の基部にはカップ幅方向に凹部が設けられ、前記凹部に前記固定部が嵌入された状態に固定され、前記固定部以外の部分が前記鉗子用カップ部の両側部を含む背面部をガイドワイヤ挿通ギャップを有して取り巻いている構成である。
【0015】
本発明の第4の態様に係る内視鏡用処置具は、第3の態様の構成に加え、前記鉗子用カップ部の合わせ面の基部に形成された前記凹部は、前記固定部の厚みよりも所要寸法よりも深く形成され、前記凹部に前記固定部が収容され、さらに前記固定部に重ねられかつ前記鉗子用カップ部の合わせ面の基部に形成された係止部に係止され前記固定部を前記凹部に固定させるロック部材を備えている構成である。
【0016】
本発明の第5の態様に係る内視鏡用処置具は、第3または4の態様の構成に加え、前記第2のガイドワイヤ連結部材は、前記凹部のカップ長方向の寸法に等しい短円筒の一側が扁平とされ、該扁平な短円筒の一側が前記固定部となっている構成である。
【0017】
本発明の第6の態様に係る内視鏡用処置具は、第1ないし5のいずれか1つの態様の構成に加え、前記第1のガイドワイヤ連結部材は、前記第2のガイドワイヤ連結部材に対し、前記コイルシースの中心線の周りに最大で90度の位相を有するように設けられている構成である。
【0018】
本発明の第7の態様に係る内視鏡用処置具は、第1ないし6のいずれか1つの態様の構成に加え、前記第1のガイドワイヤ連結部材は、前記第2のガイドワイヤ連結部材に対し、前記コイルシースの中心線の周りに同一位相となるように設けられている構成である。
【0019】
本発明の第8の態様に係る内視鏡用処置具は、第1ないし7のいずれか1つの態様の構成に加え、前記第1のガイドワイヤ連結部材および/または前記第2のガイドワイヤ連結部材は、プラスチックまたは金属材料よりなる構成である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ガイドワイヤが一対の鉗子用カップ部に挟まれることがないとともに一対の鉗子用カップ部の開閉をガイドワイヤが阻害することがなく、一対の鉗子用カップ部が大きく開くことができる内視鏡用処置具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施形態1に係る内視鏡用処置具を含む内視鏡システムを説明するための図である。
【
図2】本発明の実施形態1に係る内視鏡用処置具の全体図である。
【
図3】本発明の実施形態1の内視鏡用処置具の先端部に係り、
図3(A)は内視鏡用処置具の先端部を示す正面図、
図3(B)はガイドワイヤを除外した状態の内視鏡用処置具の先端部の斜視図である。
【
図4】本発明の実施形態1の内視鏡用処置具の要部に係り、
図4(A)は
図3(B)におけるIVa-IVa矢視図、
図4(B)は
図3(A)におけるIVb-IVb断面矢視図、
図4(C)は
図3(A)におけるIVc-IVc断面図である。
【
図5】本発明の実施形態1の内視鏡用処置具の先端処置部の一方を構成する第2のガイドワイヤ連結部材を備えた鉗子用カップ部に係り、
図5(A)は斜視図、
図5(B)は正面図である。
【
図6】本発明の実施形態2の内視鏡用処置具の先端部に係り、
図6(A)は正面図、
図6(B)は側面図、
図6(C)は
図6(B)におけるVIc-VIc断面図、
図6(D)は
図6(B)におけるVId-VId断面図である。
【
図7】本発明の実施形態1の内視鏡用処置具の先端処置部の変形例に係り、一方を構成する第2のガイドワイヤ連結部材を備えた鉗子用カップ部斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る内視鏡用処置具に係る実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明において、先端処置部が位置する側を先端側、操作部が位置する側を基端側と呼ぶ。
【0023】
[実施形態1]
[内視鏡システム]
図1は実施形態1に係る内視鏡用処置具が適用される内視鏡システム1を示す。内視鏡システム1は、生体の体腔内に挿入するための例えばφ5-8mmの太さの挿入部2と、基端部に設けられ挿入部2の先端を上下左右方向に湾曲操作するためのダイヤルを有する内視鏡操作部3と、挿入部2と内視鏡操作部3との間を接続するように配置された処置具導入部4とを備えている。
【0024】
内視鏡システム1は、処置具導入部4から挿入部2の先端に向かって長手方向に形成された内視鏡チャネル5内に、先端処置部としての一対の先端処置片15,16を含むシース11と、ガイドワイヤ25とを含む内視鏡用処置具10を挿通し、先端処置片15,16を胆管等の管腔内に挿入して鉗子として使用し生体組織を採取等の処置を行う挿通し操作部13より操作するように構成されている。
【0025】
[内視鏡用処置具の基本的構成]
図2は実施形態1に係る内視鏡用処置具10を示す。内視鏡用処置具10は、一対の先端処置片15,16の各先端側部分15a,16aが鉗子用カップ部15a,16aとなっており、一対の鉗子用カップ部15a,16a(先端側部分)を前方に向かって互いに開閉し、一対の鉗子用カップ部15a,16aにより、体腔内の生体組織を採取等の処置を行うものである。
【0026】
内視鏡用処置具10は、内視鏡チャネル5に挿脱される可撓性を有する細長いシース11と、シース11内に進退可能に配置された操作ワイヤ12と、操作ワイヤ12を進退操作する操作部13と、シース11の先端に固定連結された先端処置部支持部材14と、先端処置部支持部材14に支持軸18で回動可能に支持される先端処置部としての一対の先端処置片15,16と、先端処置片15,16を目的部位に誘導するためのガイドワイヤ25を備える。
【0027】
シース11は、例えば外径がφ1.7~3mmで長さが500~2000mmの、可撓性を有しかつ適度の腰の強さ(屈曲耐性)を有する細長筒状体である。本実施形態のシース11は、コイルシース11aと、コイルシース11aの外面に被さる樹脂製外被11bとで構成されている。樹脂製外被11bは、PTFE、PEEK、PPS、ポリエチレン、またはポリイミド、等よりなり可撓性・電気絶縁性を有する。コイルシース11aは、例えば断面形状が矩形であるステンレス線等の金属材を密着巻きしてなるコイルシース11aが用いられることが好ましい。
【0028】
操作ワイヤ12は、シース11内に進退可能に緩く配置され、回転追従性が大きなトルクワイヤからなる。操作ワイヤ12は、例えば、全長がステンレス製であるか、またはステンレス製の基端側部分とナイチノール(ニッケルチタン合金)製の先端側部分とをステンレスパイプで接続してなるものであっても良い。
【0029】
操作部13は操作部本体13aとスライダ13bとを有する。操作部本体13aはコイルシース11aの基端に先端部が連結されている。スライダ13bは、操作部本体13aの側面部に設けられたスリットに対応する範囲で操作部本体13aに被嵌してスライドするように設けられ、操作部本体13aの先端面から内部に導入された操作ワイヤ12の基端と連結されている。
【0030】
操作部13は、操作部本体13aとスライダ13bとを相対的にスライド操作(進退操作)することによって、操作ワイヤ12をコイルシース11aに相対移動させることができ、スライダ13bを図中の左方向(先端側)に移動させることにより操作ワイヤ12を先端側にコイルシース11aに相対移動させ一対の先端処置片15,16を開くことができ、また、スライダ13bを図中の右方向(基端側)に移動させることにより操作ワイヤ12を基端側にコイルシース11aに相対移動させ一対の先端処置片15,16を閉じることができるように構成されている。もって、操作部13は、操作ワイヤ12をコイルシース11aに相対的に進退操作することができ、さらに、操作ワイヤ12の進退操作を介して一対の先端処置片15,16を開閉することができるよう構成されている。
【0031】
図3(A),(B)に示すように、先端処置部支持部材14は、コイルシース11aの先端部に被嵌・連結された筒部14aと、筒部14aより先端側の対向位置より延在する一対の腕部14bとを有する。一対の先端処置片15,16は先端処置部支持部材14に開閉可能に支持される。
【0032】
一対の先端処置片15,16は、一対の先端処置片15,16の支棹部15b,16bのX状交差部が先端処置部支持部材14の一対の腕部14b,14bの先端部間に位置される。
【0033】
支持軸18は、一対の腕部14b,14bの先端部に設けられた一対の軸受用孔に嵌合され両端固定されている。支持軸18は、先端処置部支持部材14の一対の腕部14b,14b間に位置されるX状交差部を軸支している。
【0034】
一対の先端処置片15,16の支棹部15b,16bの各基端部は、一対の開閉作動用リンク19,20の各先端部とピン軸で連結されている。さらに、一対の開閉作動用リンク19,20の各基端部は、進退伝動リンク21の先端部とピン軸で連結され、進退伝動リンク21は操作ワイヤ12と連結されている。先端処置片15,16の支棹部15b,16bと開閉作動用リンク19,20は菱形に連鎖している。さらに、一対の開閉作動用リンク19,20と開閉作動用リンク19とが連結されている。
【0035】
したがって、操作ワイヤ12を進退操作することにより、一対の先端処置片15,16の鉗子用カップ部15a,16aを前方に向かって扇状に開閉することができ、一対の鉗子用カップ部15a,16aにより、体腔内の生体組織を採取しまたは生体組織を挟んで生体組織の採取等の処置を行えるよう構成されている。
【0036】
ガイドワイヤ25は、コイルシース11aとともに内視鏡チャネル5内に挿通されかつコイルシース11aとは独立して進退可能に配置され、一対の鉗子用カップ部15a,16aに先行して内視鏡チャネル5の先端開口より体腔(不図示)から突出されさらに細径の管腔(不図示)内に先行挿入された状態になった後に一対の鉗子用カップ部15a,16aを目的部位(管腔内)に誘導する役目を果たす。なお、ガイドワイヤ25の先端部は、若干屈曲してもよく、その場合には、ガイドワイヤ25の基端を捩じると、これにより、管腔の分岐部で進入を選択した方の管腔に屈曲部が向きを変えることができ、また曲がりくねった管腔内を進入できる。
【0037】
[内視鏡用処置具10の特徴的構成]
図3(A),(B)、
図4(A)-(C)、
図5(A),(B)に示すように、内視鏡用処置具10は、ガイドワイヤ25を挿通しかつ相対移動可能に連結する第1のガイドワイヤ連結部材26と第2のガイドワイヤ連結部材27とを備えている。第1のガイドワイヤ連結部材26は、先端処置部支持部材14の筒部14aまたはコイルシース11aの筒部14aに隣接する部位に固定して設けられ、ガイドワイヤ25を相対移動可能に連結する連結部材である。第2のガイドワイヤ連結部材27は、一方の鉗子用カップ部15aの両側部を含む背面部をガイドワイヤ挿通ギャップ28を有して取り巻いて設けられガイドワイヤ25を相対移動可能に挿通させる連結部材である。
【0038】
第1のガイドワイヤ連結部材26は、先端処置部支持部材14の筒部14aと、ガイドワイヤ25とを相対移動可能に連結する金属製またはプラスチック製の部材である。また、図示とは相違するが、第1のガイドワイヤ連結部材26は、コイルシース11aの筒部14aに隣接する部位と、ガイドワイヤ25とを相対移動可能に連結する構成であってよい。
【0039】
第1のガイドワイヤ連結部材26は、大きい貫通孔26aと小さい貫通孔26bとを有し、大きい貫通孔26aに先端処置部支持部材14の筒部14aまたはコイルシース11aを挿通し溶接、ロウ付け、接着剤により固定され、一方、小さい貫通孔26bにガイドワイヤ25が進退可能に挿通された構成である。
【0040】
第2のガイドワイヤ連結部材27は金属製またはプラスチック製でありリング形状に設けられる。第2のガイドワイヤ連結部材27は、一側部が一方の鉗子用カップ部15aの合わせ面の基部に重ねられる固定部27aとなっているとともに、残りの部分が鉗子用カップ部15aに対し両側部を含む背面部を取り巻く枠部27bとなっている。
【0041】
第2のガイドワイヤ連結部材27は、図示のものでは、短円筒体の一側を平面状に変形させた形態であり、この平面状に変形した矩形部分が固定部27aであり、残りの部分の枠部27bが円弧壁となっている。鉗子用カップ部15aとこれを取り巻く枠部27bとの間にはガイドワイヤ挿通ギャップ28を有している。
【0042】
ガイドワイヤ挿通ギャップ28は、ガイドワイヤ25の長手方向より視たときの形状が三日月形であるが、この三日月形に限定されるものではなく、例えば鉗子用カップ部15aの背面部と側面部とでギャップ寸法がガイドワイヤ25をゆるゆるに挿通しうるように同一寸法であってもよい。機能的に述べると、ガイドワイヤ25が、鉗子用カップ部15aの背面部中心位置に位置する状態(ガイドワイヤ挿通ギャップ28の長さ方向の中央位置)から、鉗子用カップ部15aのいずれの側方位置にも位置ずれを許容するよう(図中Y方向へ位置ずれ可能)に形成されていれば足りる。
【0043】
この実施の形態では、
図4(A)に示すように、ガイドワイヤ25の中心線の周りの、第1のガイドワイヤ連結部材26と、第2のガイドワイヤ連結部材27との位相ずれ角αを有する。好適な位相ずれ角αは45-90度である。
図4(A)ではα=45度となるように設定されている。このため、ガイドワイヤ25は、第1のガイドワイヤ連結部材26から基端側ではコイルシース11aと平行状態であり、第1のガイドワイヤ連結部材26から先端側では屈曲していて、第2のガイドワイヤ連結部材27の内側のガイドワイヤ挿通ギャップ28に斜めに挿通されている。
【0044】
第2のガイドワイヤ連結部材27の固定部27aは、一方の鉗子用カップ部15aの合わせ面の基部に、カップ幅方向全幅の矩形溝となるように設けられた凹部29に嵌入されロック部材30により固定され、枠部27bは、鉗子用カップ部15a,16aの両側部を含む背面部をガイドワイヤ挿通ギャップ28を有して取り巻いている。
【0045】
鉗子用カップ部15a,16aの合わせ面の基部に形成された凹部29の深さは、第2のガイドワイヤ連結部材27の固定部27aの厚みよりも所要寸法よりも深く形成され、凹部29に固定部27aに収容され、固定部27aに重ねられかつ鉗子用カップ部15a,16aの合わせ面の基部に形成された係止部31に係止されるロック部材30を備えている。
【0046】
[作用について]
上記構成の内視鏡用処置具10によれば、ガイドワイヤ25を先端処置部に平行に隣接させて内視鏡チャネル内に挿通し、ガイドワイヤ25を細い管腔内に先行挿入させ、次いで、ガイドワイヤ25を案内として一対の鉗子用カップ部15a,16aを細い管腔内に挿入する。このとき、狭い管腔の壁面に腰の強いガイドワイヤ25が当接する状態が生じるとともに、一対の鉗子用カップ部15a,16aの中のガイドワイヤ25と係合している一方の鉗子用カップ部15の背面側も管腔の壁面に当接する状況になる。次いで、操作ワイヤ12が先端方向に移動されると、ガイドワイヤ挿通ギャップ28の長さ方向の中央位置から、鉗子用カップ部15aのいずれの側方位置にも位置ずれを許容するようになっているから、当該鉗子用カップ部15の背面部が管腔の壁面に対し離れる方向に突っ張って移動することができ、しかもガイドワイヤが一対の鉗子用カップ部間に挟まれることがなく、一対の鉗子用カップ部15a,16aが開き角が大きく開くことができる。
【0047】
[一対の鉗子用カップ部15a,16aが大きく開くことについて]
一対の先端処置片15,16は、元々、操作ワイヤ12の先端方向への移動が最大になるときに180度開くように機械的に構成されている。しかし、一方の鉗子用カップ部15aの背面部に係合するガイドワイヤ25が存在するので、狭い管腔内に進入するガイドワイヤ25の位置と、ガイドワイヤ25により狭い管腔内に案内される一対の鉗子用カップ部15a,16aの位置との配置関係により、一対の鉗子用カップ部15a,16aの一方または両方が管腔の壁面に当接し、その際にガイドワイヤ25がガイドワイヤ挿通ギャップ28内をずれることができれば一対の鉗子用カップ部15a,16aの一方または両方の管腔の壁面への当接圧力が緩和される方向に微妙に位置変動が生じ、これによって一対の鉗子用カップ部15a,16aが開くことのできる角度が変わってきて、最も良好な場合では180度開けた状態になる。一方、最も悪い場合でも、一方の鉗子用カップ部15aの他方の鉗子用カップ部16aとの合わせ面のからの開き角が45度となるように開くことができる。すなわち、一対の先端処置片15,16は、狭い管腔内における位置取り最も悪い状態になるときでも、90度開けた状態になる。
【0048】
これは、(1)ガイドワイヤ挿通ギャップ28が一方の先端処置片15の一方の側面部から背面部の周りを他方の側面部までガイドワイヤ25が円弧移動可能に設けられていること、(2)ガイドワイヤ25が、ガイドワイヤ挿通ギャップ28内において鉗子用カップ部15aの背面部中心位置に位置する状態から、狭い管腔内における一対の鉗子用カップ部15a,16aの開動作時に、ガイドワイヤ25との間の作用力の働く方向により、ガイドワイヤ挿通ギャップ28内において鉗子用カップ部15aのいずれの側方位置にも位置ずれを許容されるようになっていること、(3)ガイドワイヤ25の中心線の周りの、第1のガイドワイヤ連結部材26と、第2のガイドワイヤ連結部材27との位相ずれが位相ずれ角αが45-90度に設定されていて、第1のガイドワイヤ連結部材26と第2のガイドワイヤ連結部材27との間で屈曲してガイドワイヤ挿通ギャップ28に斜めに挿通されること、の奏合効果によるものである。
【0049】
[実施形態2]
図6は、内視鏡用処置具10Aは、第2のガイドワイヤ連結部材27Aについては、一側部が一方の鉗子用カップ部15aの合わせ面の基部に重ねられる固定部27aと、鉗子用カップ部15aに対し両側部を含む背面部を取り巻く枠部27bとを有し、実施形態1の第2のガイドワイヤ連結部材27と同一である。第1のガイドワイヤ連結部材26Aについては、実施形態1の第1のガイドワイヤ連結部材26とは相違している。
【0050】
相違点としては、コイルシース11aの中心線の周りの、第1のガイドワイヤ連結部材26Aと、第2のガイドワイヤ連結部材27Aとの位相ずれが0度に設定されていることである。すなわち、ガイドワイヤ25Aが、第1のガイドワイヤ連結部材26Aの小さい貫通孔26bに挿通されてから、真っ直ぐに鉗子用カップ部15aと第2のガイドワイヤ連結部材27Aのガイドワイヤ挿通ギャップ28Aの中央部に通されている。第1のガイドワイヤ連結部材26Aと、第2のガイドワイヤ連結部材27Aとの位相ずれが0度に設定されているので、ガイドワイヤ25Aの腰の強さが実施形態1に比して一対の鉗子用カップ部15a,16aの開動作に若干大きく否定的影響を与える。
【0051】
[一対の鉗子用カップ部15a,16aが大きく開くことについて]
操作ワイヤ12の進退操作の繰り返しにより腰の強いガイドワイヤ25Aが狭い管腔に出し入れされ、ガイドワイヤ25Aが管腔壁面に当接する状態が生じ、この状態で一対の鉗子用カップ部15a,16aが開かれる場合に、(1)ガイドワイヤ挿通ギャップ28Aが一方の先端処置片15の一方の側面部から背面部の周りを他方の側面部までガイドワイヤ25Aが円弧移動可能に設けられていること、(2)ガイドワイヤ25Aが、ガイドワイヤ挿通ギャップ28A内において鉗子用カップ部15aの背面部中心位置に位置する状態から、狭い管腔内における一対の鉗子用カップ部15a,16aの開動作時に、ガイドワイヤ25Aとの間の作用力の働く方向により、ガイドワイヤ挿通ギャップ28A内において鉗子用カップ部15aのいずれの側方位置にも位置ずれを許容されるようになっていること、の奏合効果により、一対の鉗子用カップ部15a,16aが開き角が最小でも90度開くことができる。
【0052】
したがって、ガイドワイヤ25Aがガイドワイヤ挿通ギャップ28A内においていずれかの側方へ位置ずれ可能であることから、操作ワイヤ12が先端方向に移動されるときに、一対の鉗子用カップ部15a,16aが開き角が最小でも90度開くことができることに繋がっている。
【0053】
実施形態2のその他の構成は、実施形態1と同一であり、説明を省略する。
【0054】
[変形例]
図7は、先端処置片15Aと、先端処置片15Aに設けられる第2のガイドワイヤ連結部材27Bを固定する固定構造に関する変形例である。この変形例においても、鉗子用カップ部15aの合わせ面の基部に形成された凹部29Aは、実施の形態1の場合と同様に、第2のガイドワイヤ連結部材27Bの固定部27aの厚さの2倍の同一の深さに設けられており、第2のガイドワイヤ連結部材27Bの固定部27aが嵌入される。ロック部材30Aは、第2のガイドワイヤ連結部材27Bの固定部27aの全面に重なる矩形部を有し、さらに、鉗子用カップ部15aの合わせ面の基部に形成された係止部31A,31Bに係止される。この他の変形例として、例えば、第2のガイドワイヤ連結部材自身を先端処置片に設けられる凹部に強制嵌着する固定構造であってもよく、この場合には、鉗子用カップ部15aの合わせ面の基部に形成される凹部の深さは第2のガイドワイヤ連結部材の固定部の厚さと同一の深さとすることができる。
【0055】
本発明によれば、狭い管腔の壁面に腰の強いガイドワイヤが当接する状況にあって、一対の鉗子用カップ部が開くときにガイドワイヤと係合している一方の鉗子用カップ部が管腔の壁面に当接する状況になるとき、一方の鉗子用カップ部が管腔の壁面に突っ張って離れる方向に移動することができる自由度がありしかもガイドワイヤが一対の鉗子用カップ部間に挟まれることがないとともに一対の鉗子用カップ部の開閉をガイドワイヤが阻害することがなく、一対の鉗子用カップ部が大きく開くことができる内視鏡用処置具を提供することができる。
【符号の説明】
【0056】
1…内視鏡システム、
2…挿入部、
3…内視鏡操作部、
4…処置具導入部、
5…内視鏡チャネル、
10,10A…内視鏡用処置具、
11…シース、
11a…コイルシース、
11b…樹脂製外被、
12…操作ワイヤ、
13…操作部、
13a…操作部本体、
13b…スライダ、
14…先端処置部支持部材、
14a…筒部、
14b…腕部、
15,16…先端処置片
15a,16a…鉗子用カップ部
15b,16b…支棹部、
18…支持軸、
19,20…開閉作動用リンク、
21…進退伝動リンク、
25,25A…ガイドワイヤ、
26,26A…第1のガイドワイヤ連結部材、
26a…大きい貫通孔、
26b…小さい貫通孔、
27,27A,27B…第2のガイドワイヤ連結部材、
27a…固定部、
27b…枠部、
28,28A…ガイドワイヤ挿通ギャップ、
29,29A…凹部、
30,30A…ロック部材、
31,31A,31B…係止部。