(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-14
(45)【発行日】2024-06-24
(54)【発明の名称】便座装置
(51)【国際特許分類】
A47K 13/00 20060101AFI20240617BHJP
A47K 13/14 20060101ALI20240617BHJP
【FI】
A47K13/00
A47K13/14
(21)【出願番号】P 2020175109
(22)【出願日】2020-10-19
【審査請求日】2023-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小池 英也
(72)【発明者】
【氏名】伊良皆 なな子
【審査官】村川 雄一
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-151183(JP,A)
【文献】特開2004-180698(JP,A)
【文献】特開2016-146921(JP,A)
【文献】特開2003-041644(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0216342(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第108784504(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 13/00 - 17/02
E03D 9/00 - 9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
便座カバーを着脱自在に取り付ける便座と、
所定の機能を発揮可能な機能部と、
前記便座に前記便座カバーが取り付けられていない状態に対応して前記機能部の制御を実行する第1モードと、前記便座に前記便座カバーが取り付けられた状態に対応して前記第1モードにおける前記機能部の機能の発揮形態とは異なる発揮形態で前記機能部の機能を発揮させる制御を実行する第2モードとの何れかを選択的に実行可能である制御部とを備え、
前記機能部は、前記第1モードと前記第2モードとでは異なる形態で局部を洗浄する機能を発揮する局部洗浄部を有してい
る便座装置。
【請求項2】
便座カバーを着脱自在に取り付ける便座と、
所定の機能を発揮可能な機能部と、
前記便座に前記便座カバーが取り付けられていない状態に対応して前記機能部の制御を実行する第1モードと、前記便座に前記便座カバーが取り付けられた状態に対応して前記第1モードにおける前記機能部の機能の発揮形態とは異なる発揮形態で前記機能部の機能を発揮させる制御を実行する第2モードとの何れかを選択的に実行可能である制御部とを備え、
前記機能部は、前記第1モードと前記第2モードとでは異なる形態で前記便座を加温する機能を発揮する便座加温部を有し
、
前記便座加温部は、通電量に応じて発熱量が変化するヒータを有し、
前記制御部は、前記第2モードにおいて、昇温時の前記ヒータへの通電量を前記第1モードにおける昇温時の前記ヒータへの通電量よりも大きくする制御を実行する便座装置。
【請求項3】
便座カバーを着脱自在に取り付ける便座と、
所定の機能を発揮可能な機能部と、
前記便座に前記便座カバーが取り付けられていない状態に対応して前記機能部の制御を実行する第1モードと、前記便座に前記便座カバーが取り付けられた状態に対応して前記第1モードにおける前記機能部の機能の発揮形態とは異なる発揮形態で前記機能部の機能を発揮させる制御を実行する第2モードとの何れかを選択的に実行可能である制御部とを備え、
前記機能部は、前記第1モードと前記第2モードとでは異なる形態で前記便座への着座の有無を検知する機能を発揮する着座検知部を有してい
る便座装置。
【請求項4】
便座カバーを着脱自在に取り付ける便座と、
所定の機能を発揮可能な機能部と、
前記便座に前記便座カバーが取り付けられていない状態に対応して前記機能部の制御を実行する第1モードと、前記便座に前記便座カバーが取り付けられた状態に対応して前記第1モードにおける前記機能部の機能の発揮形態とは異なる発揮形態で前記機能部の機能を発揮させる制御を実行する第2モードとの何れかを選択的に実行可能である制御部とを備え、
前記第2モードは、複数種類の前記便座カバーに応じて複数設定されてい
る便座装置。
【請求項5】
前記便座カバーが前記便座に取り付けられているか否かを検知する検知部を更に備えており、
前記制御部は、前記検知部の検知結果に応じて、前記第1モードと前記第2モードとの何れかを選択する請求項1
から請求項4のいずれか一項に記載の便座装置。
【請求項6】
前記第1モードと前記第2モードを切り替えるための手動操作を受ける操作部を更に備えており、
前記制御部は、前記操作部が受ける手動操作に応じて、前記第1モードと前記第2モードとの何れかを選択する請求項1
から請求項5のいずれか一項に記載の便座装置。
【請求項7】
前記機能部は、前記第1モードと前記第2モードとでは異なる形態で前記便座を開閉する機能を発揮する便座開閉部を有している請求項1から
請求項6のいずれか一項に記載の便座装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、便座装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は従来の便座装置を開示している。この便座装置の便座は機能部としてのヒータを有している。ヒータは、例えば冬季に便座を使用する場合に、便座を適度に暖める、という機能を発揮する。便座には便座カバーが着脱可能に取り付けられる。便座カバーは吸排気層を形成している。吸排気層は内部に空気を保持する。便座装置は、便座に便座カバーを取り付けることによって、ヒータ機能による熱が便座の表面から外気に放出されるのを低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1において、便座に便座カバーを取り付けた状態でヒータ機能を発揮させた場合、着座面となる便座カバーの表面にはヒータの熱が伝わりにくい。このため、便座カバーを取り付けた状態においては、ヒータは機能部としての機能を十分に発揮できないおそれがある。
【0005】
本開示は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、機能部の機能を良好に発揮させることができる便座装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施形態に係る便座装置は、便座カバーを着脱自在に取り付ける便座と、所定の機能を発揮可能な機能部と、前記便座に前記便座カバーが取り付けられていない状態に対応して前記機能部の制御を実行する第1モードと、前記便座に前記便座カバーが取り付けられた状態に対応して前記第1モードにおける前記機能部の機能の発揮形態とは異なる発揮形態で前記機能部の機能を発揮させる制御を実行する第2モードとの何れかを選択的に実行可能である制御部とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態1に係る便座装置を模式的に示す側面図である。
【
図2】実施形態1に係る便座装置の電気的構成例を示すブロック図である。
【
図3】実施形態1に係る便座装置において、便座に便座カバーを取り付けた状態を一部破断して示す部分拡大側面図である。
【
図4】実施形態1に係る便座装置において、昇降装置によって上昇した状態を模式的に示す側面図である。
【
図5】実施形態2に係る便座装置の電気的構成例を示すブロック図である。
【
図6】実施形態2に係る便座装置において、カバー検知部の構成を模式的に示す説明図である。
【
図7】実施形態3に係る便座装置の電気的構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示の便座装置を具体化した実施形態1から実施形態3について、図面を参照しつつ説明する。以下の説明において、前後方向、左右方向、上下方向とは、便座装置を着座状態で使用する使用者から見た前後方向、左右方向、上下方向をそれぞれ示すものとする。
【0009】
<実施形態1>
実施形態1に係る便座装置1は、
図1に示すように、便器100の上方に設置される。便座装置1は、装置本体2、便座3、及び便蓋4を備えている。
図2に示すように、便座装置1は、電気構成的には、着座検知部10、局部洗浄部20、便座加温部30、便座開閉部40、昇降部50、操作部60、及び制御部70を備えて構成されている。これらのうち、着座検知部10、局部洗浄部20、便座加温部30、便座開閉部40、及び昇降部50は、本開示に係る機能部の例示である。便座装置1は、制御部70に対して、着座検知部10、局部洗浄部20、便座加温部30、便座開閉部40、昇降部50、及び操作部60がそれぞれ接続されている。便座装置1は、各部の動作制御等を制御部70によって制御する構成である。
【0010】
装置本体2は、便器100の後部に配置されて便器100に固定される。装置本体2は、便座3及び便蓋4を回転自在に支持する。装置本体2は、その内部に、局部洗浄部20、便座開閉部40、昇降部50、制御部70等を収納している。
【0011】
便座3は、後述する便座カバー5を着脱自在に取り付ける。便座3は開閉自在に設けられている。便座3は、閉じた状態(
図1参照)において便器100の上面に沿った倒伏姿勢で配置される。この状態における便座3の上面3Aは、便座装置1の使用者が便座3に直接着座する場合に着座面となる面である。
【0012】
便座3は、開いた状態(
図4参照)において便器100の上方に向けてわずかに後方に傾斜した起立姿勢で配置される。便座3は、閉じた状態と開いた状態に回転する。本実施形態の場合、便座3は、操作部60から入力された信号に基づいて、装置本体2内に組み込まれた便座開閉部40のモータ(図示せず)が駆動することによって、閉じた状態と開いた状態に自動的に回転する。便座3は内部に空間を形成している。便座3内の空間には、着座検知部10の着座センサ11、及び便座加温部30のヒータ31が収納されている。
【0013】
便座3は、便座カバー5を着脱自在に取り付けることができる。便座カバー5は、使用者の好みに応じて、粘着材等によって便座3の上面3Aに取り付けられる。便座カバー5は、便座3に用いられる材料よりも柔らかい材料を用いてなる。本実施形態の場合、便座カバー5は、ポリウレタン等の軟質樹脂を発泡成形してなり、所定の質量を有している。便座カバー5は、平滑なスキン層と発泡層とが一体化された樹脂成形品として形成される。詳細には、便座カバー5は、成形型の金型面に未発泡の樹脂材料を予め吹き付けてスキン層を形成したのち、成形型のキャビティ内に樹脂材料を注入して発泡させることによって形成される。
図3に示すように、便座カバー5は所定の厚みで形成されている。これによって、便座カバー5は、所定のクッション性を有するとともに、所定の断熱性を有している。
【0014】
便蓋4は、便座3の上方において開閉自在に設けられている。便蓋4は、閉じた状態において、便器100の上面に沿った倒伏姿勢で配置される。便蓋4は、開いた状態において、便器100の上方に向けてわずかに後方に傾斜した起立姿勢で配置される。本実施形態の場合、便蓋4は、操作部60から入力された信号や人体検知センサの検知信号に基づいて、装置本体2内に組み込まれた図示しないモータが駆動することによって、閉じた状態と開いた状態に自動的に回転する。
【0015】
着座検知部10は使用者の着座を検知する機能を発揮する。便座装置1は、着座検知部10による着座の有無の判定結果に基づいて、上述の各種機能部の機能が適宜発揮される。
図1に示すように、着座検知部10は、便座3に組み付けられた着座センサ11を有して構成されている。本実施形態の場合、着座センサ11は静電容量式のセンサを採用している。着座センサ11は、人体等の導体や誘電体の接近を静電容量の変化を利用して検知する。着座センサ11は、検知面を便座3の上面3A側に向けて配置されている。着座センサ11は、使用者が着座状態にある場合、離座状態にある場合のそれぞれにおいて静電容量の大きさが異なることを利用して、使用者が着座しているか否かを検知する。
【0016】
局部洗浄部20は、使用者の局部を洗浄する機能を発揮する。局部洗浄部20は、着座検知部10によって使用者の着座が検知されている場合に、局部洗浄機能を発揮することができる。局部洗浄部20は、操作部60からの制御信号に基づいて局部を洗浄する。局部洗浄部20は、
図3に示すように、洗浄水を吐出する洗浄ノズル21を備えている。局部洗浄部20は、洗浄ノズル21を装置本体2から便器100内に向けて進退可能である。洗浄ノズル21は洗浄時に便器100内に進出し、先端部から局部に向けて洗浄水を吐出して洗浄する。洗浄ノズル21は、便器100内への進出量を変更可能である。これによって、局部洗浄部20は、洗浄水の吐出位置を調整することができる。
【0017】
便座加温部30は便座3を加温する機能を発揮する。便座加温部30は、使用者による操作部60の操作に応じた設定温度で、便座3を加温する。便座加温部30はヒータ31を有して構成されている。
図1に示すように、ヒータ31は、便座3内の空間に収納されている。ヒータ31は、通電により発熱するニクロム線とアルミシートからなる発熱体により構成されている。ヒータ31は、通電量に応じて発熱量が変化する。便座加温部30は、ヒータ31の発熱による温度変化をサーミスタ等の図示しない温度センサによって検知して便座3の温度調整を実行する。
【0018】
便座開閉部40は便座3を開閉する機能を発揮する。
図1に示すように、便座3は、後端部において軸C周りに回転自在に装置本体2に支持されている。便座開閉部40は、装置本体2内に配置された図示しない電動モータの駆動によって便座3を軸C周りに回転させる。
【0019】
昇降部50は便座装置1を便器100に対して昇降させる機能を発揮する。
図4に示すように、昇降部50は、便座装置1を上昇させることによって、装置本体2の下面を便器100の上面から離す。これによって、便器100の清掃時における利便性を高めることができる。昇降部50は、装置本体2内に配置された図示しない電動モータの駆動によって便座装置1を昇降させる。
【0020】
操作部60は、便座装置1の各種機能の作動、機能の発揮形態の調整等を行うための入力装置である。操作部60は、使用者の操作に応じた操作信号を制御部70へ送信する。
図1に示すように、本実施形態に係る操作部60は、便座装置1とは別体に設けられて赤外線通信によって操作信号を送信する。操作部60は箱状に形成されている。操作部60は、操作面となる一面に複数の操作ボタンが設けられている。
【0021】
制御部70は、着座検知部10、局部洗浄部20、便座加温部30、便座開閉部40、昇降部50等、便座装置1の各機能部の制御を実行する。制御部70は、操作部60から送信される信号に基づく制御を実行する。制御部70は、例えばマイクロコンピュータを主体とし、CPU(Central Processing Unit)などの演算装置等を有して構成される。
【0022】
図2に示すように、制御部70はメモリ80を有している。メモリ80は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を有して構成される。メモリ80には、後述するノーマルモードデータ81、及びカバー有モードデータ82等が格納されている。メモリ80には、着座検知部10、局部洗浄部20等の便座装置1における各機能部を制御可能なシステムプログラム等が予め格納されている。メモリ80は、操作部60の操作によって設定された各機能部における各種設定を記憶可能である。
【0023】
制御部70は、ノーマルモード、及びカバー有モードの2つのモードを選択的に実行可能である。ノーマルモード及びカバー有モードは、それぞれ第1モード及び第2モードの例示である。ノーマルモードは、便座3に便座カバー5が取り付けられていない状態で便座装置1を使用する際のモードである。カバー有モードは、便座3に便座カバー5が取り付けられた状態で便座装置1を使用する際のモードである。本実施形態の場合、ノーマルモード及びカバー有モードの2つのモードの選択は、使用者による操作部60の操作によって手動で行われる。すなわち、操作部60は、ノーマルモードとカバー有モードを切り替えるための手動操作を受ける。制御部70は、操作部60が受ける手動操作に応じて、ノーマルモードとカバー有モードとの何れかを選択する。
【0024】
制御部70によるノーマルモードの制御は、メモリ80に格納されているノーマルモードデータ81を参照して実行される。ノーマルモードデータ81は、便座3に便座カバー5が取り付けられていない状態で便座装置1が使用される場合に、着座検知部10、局部洗浄部20、便座加温部30、便座開閉部40、昇降部50等の便座装置1における各機能部の機能を好適に発揮させるためのデータである。
【0025】
制御部70によるカバー有モードの制御は、メモリ80に格納されているカバー有モードデータ82を参照して実行される。カバー有モードデータ82は、便座3に便座カバー5が取り付けられた状態で便座装置1が使用される場合に、便座装置1の各機能部の機能を好適に発揮させるためのデータである。カバー有モードでは、制御部70は、カバー有モードデータ82を参照することによって、ノーマルモードにおける各機能部の機能の発揮形態とは異なる形態で、各機能部の機能を発揮させる。
【0026】
例えば、機能部としての着座検知部10の機能は、着座センサ11の静電容量の大きさの変化によって着座の有無を検知する機能である。ノーマルモードにおける着座とは、便座3の上面3Aへの着座を想定したものである。これに対し、カバー有モードにおける着座とは、便座カバー5への着座を想定したものである。便座3に直接着座した場合と、便座カバー5上に着座した場合とでは、使用者と着座センサ11との間の距離が便座カバー5の厚み分異なっている。したがって、便座カバー5がある場合とない場合とでは、着座時に着座センサ11によって計測される静電容量の大きさが異なる。このため、便座カバー5を取り付けた状態で着座の有無を検知する場合、便座3に直接着座した際に計測される静電容量の大きさを基準にすると誤検知のおそれがある。制御部70は、カバー有モードデータ82を参照することによって、着座検知部10に対して、使用者との間に便座カバー5が介在する場合に計測される静電容量の大きさを基準にして着座検知させる制御を実行する。すなわち、カバー有モードにおいて、着座検知部10による着座検知機能の発揮形態は、判定基準となる静電容量の大きさがノーマルモードにおける基準値よりも小さい形態である。これによって、便座カバー5の厚み分静電容量の大きさが低下するのが補正され、着座の有無を好適に検知できる。
【0027】
同様に、局部洗浄部20の機能は、洗浄ノズル21から洗浄水を吐出して局部を洗浄する機能である。
図3において、二点鎖線は便座3の上面3Aに直接着座した状態の使用者を表しており、細線の実線は便座カバー5の上面5Aに着座した状態の使用者を表している。各線上の「X」は、それぞれの状態における洗浄の目標位置を例示するものである。この
図3に示すように、便座3に直接着座した場合と、便座カバー5上に着座した場合とでは、使用者の着座位置は便座カバー5の厚み分異なっている。したがって、便座カバー5がある場合とない場合とでは、洗浄水を吐出する目標Xの位置が異なっている。このため、便座カバー5を取り付けた状態で局部洗浄を行う場合に、便座3に直接着座した際の目標Xの位置に洗浄水を吐出すると、適切に洗浄できないおそれがある。制御部70は、カバー有モードデータ82を参照することによって、局部洗浄部20に対して、便座カバー5上に着座した場合に想定される目標Xの位置を基準位置として洗浄ノズル21を進出させる制御を実行する。すなわち、カバー有モードにおいて、局部洗浄部20による局部洗浄機能の発揮形態は、洗浄ノズル21の便器100内への進出量がノーマルモードにおける進出量よりも大きい形態である。これによって、便座カバー5の厚み分の位置ずれが補正され、目標Xに向けて洗浄水が好適に吐出される。
【0028】
便座加温部30の機能は便座3を加温する機能である。上述のように、便座カバー5は軟質樹脂を発泡成形してなり、所定の厚み及び所定の断熱性を有している。このため、ノーマルモードと同様の通電量でヒータ31に通電した場合、便座カバー5の上面5Aにおける昇温速度が遅くなってしまうとともに、昇温後は熱がこもりやすく更に温度が上昇してしまうおそれがある。制御部70は、カバー有モードデータ82を参照することによって、便座加温部30に対して、昇温時のヒータ31への通電量をノーマルモードにおける通電量よりも大きくし、保温時のヒータ31への通電量をノーマルモードにおける通電量よりも小さくする制御を実行する。すなわち、カバー有モードにおいて、便座加温部30による便座3の加温機能の発揮形態は、昇温時のヒータ31への通電量がノーマルモードにおける通電量よりも大きく、保温時のヒータ31への通電量がノーマルモードにおける通電量よりも小さい形態である。これによって、ノーマルモードにおける便座3の上面3Aの昇温時間と同等の時間で便座カバー5の上面5Aを速やかに昇温することができるとともに、ノーマルモードにおける便座3の上面3Aの保温温度と同等の温度で便座カバー5の上面5Aの温度を維持することができる。
【0029】
便座開閉部40の機能は便座3を開閉する機能である。上述のように、便座カバー5は軟質樹脂を発泡成形してなり、所定の質量を有している。このため、便座開閉の駆動源となるモータは、便座カバー5の質量分、便座開時には駆動負荷が増加し、便座閉時には駆動負荷が小さくなる。このため、ノーマルモードと同様の通電量でモータに通電した場合、便座3のみを開閉する場合と比較して、便座開時の速度は遅くなり、便座閉時の速度は速くなってしまう。制御部70は、カバー有モードデータ82を参照することによって、便座開閉部40に対して、便座開時のモータへの通電量をノーマルモードにおける通電量よりも大きくし、便座閉時のモータへの通電量をノーマルモードにおける通電量よりも小さくする制御を実行する。すなわち、カバー有モードにおいて、便座開閉部40による便座3の開閉機能の発揮形態は、便座開時の駆動源の出力がノーマルモードにおける出力よりも大きく、便座閉時の駆動源の出力がノーマルモードにおける出力よりも小さい形態である。これによって、ノーマルモードにおける便座3の開閉速度と同等の速度で、便座カバー5が取り付けられた便座3を開閉することができる。
【0030】
昇降部50の機能は、便座装置1を昇降させる機能である。上述のように、便座カバー5は軟質樹脂を発泡成形してなり、所定の質量を有している。このため、昇降の駆動源となるモータは、便座カバー5の質量分、上昇時には駆動負荷が増加し、下降閉時には駆動負荷が小さくなる。このため、ノーマルモードと同様の通電量でモータに通電した場合、便座カバー5が取り付けられていない状態の便座装置1を昇降する場合と比較して、上昇時の速度は遅くなり、下降時の速度は速くなってしまう。制御部70は、カバー有モードデータ82を参照することによって、昇降部50に対して、上昇時のモータへの通電量をノーマルモードにおける通電量よりも大きくし、下降時のモータへの通電量をノーマルモードにおける通電量よりも小さくする制御を実行する。すなわち、カバー有モードにおいて、昇降部50による便座装置1の昇降機能の発揮形態は、上昇時の駆動源の出力がノーマルモードにおける出力よりも大きく、下降時の駆動源の出力がノーマルモードにおける出力よりも小さい形態である。これによって、ノーマルモードにおける便座装置1の昇降速度と同等の速度で、便座カバー5が取り付けられた状態の便座装置1を開閉することができる。
【0031】
以上のように、実施形態1に係る便座装置1は、便座3と、機能部としての着座検知部10、局部洗浄部20、便座加温部30、便座開閉部40、及び昇降部50と、制御部70と、を備えている。便座3は、便座カバー5を着脱自在に取り付ける。機能部としての着座検知部10、局部洗浄部20、便座加温部30、便座開閉部40、及び昇降部50は、それぞれ所定の機能を発揮可能である。制御部70は、これら各機能部の制御を実行する。制御部70は、第1モードとしてのノーマルモード、及び第2モードとしてのカバー有モードを選択的に実行可能である。ノーマルモードは、便座3に便座カバー5が取り付けられていない状態に対応して各機能部の制御を実行するモードである。カバー有モードは、便座3に便座カバー5が取り付けられた状態に対応して、ノーマルモードにおける各機能部の機能の発揮形態とは異なる発揮形態で、各機能部の機能を発揮させる制御を実行するモードである。
【0032】
この構成によれば、便座カバー5の便座3への取り付けの有無に関わらず、便座装置1の各機能部の機能を良好に発揮させることができる。
【0033】
<実施形態2>
実施形態2に係る便座装置は、
図5に示すように、カバー検知部160を備えている点において実施形態1の便座装置と相違する。以下の説明において、実施形態1と同様の構成には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0034】
カバー検知部160は、本開示に係る検知部の例示である。カバー検知部160は、便座カバー5が便座3に取り付けられているか否かを検知する。本実施形態の場合、ノーマルモードとカバー有モードの選択は、カバー検知部160による便座カバー5の検知の有無に応じて自動で行われる。
【0035】
図6に示すように、カバー検知部160は、カバー検知センサ161と、被検出体162とを有して構成されている。カバー検知センサ161は便座3に設けられている。カバー検知センサ161は、高周波発振型の近接センサを採用しており、磁性体の近接の有無を検知可能である。被検出体162は便座カバー5に設けられている。被検出体162は、鉄等の磁性体を有して構成されている。カバー検知センサ161は、便座カバー5が便座3に取り付けられることによって、被検出体162の磁性を検知する。カバー検知部160は、検知結果に応じた信号を制御部70に送信する。制御部70は、カバー検知部160の検知結果に応じて、ノーマルモードとカバー有モードとを選択して実行する。
【0036】
実施形態2の便座装置において、便座3に便座カバー5が取り付けられると、カバー検知センサ161によって被検出体162の磁性が検知される。カバー検知部160は便座カバー5を検知したことを示す検知信号を制御部70に送信する。これによって、制御部70は、カバー有モードを選択して実行するようになる。
【0037】
このように、実施形態2の便座装置は、ノーマルモードとカバー有モードの選択を自動的に行うことができる。このため、実施形態2の便座装置は、ノーマルモードとカバー有モードとを手動で選択する手間を省くことができるとともに、切り替え忘れを回避できる。
【0038】
<実施形態3>
実施形態3に係る便座装置は、
図7に示すように、複数種類のカバー有モードが設定されている点において、実施形態1及び実施形態2と相違する。以下の説明において、実施形態1及び実施形態2と同様の構成には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0039】
図7に示すように、実施形態3に係る便座装置において、メモリ280には、ノーマルモードデータ81と、第1カバー有モードデータ82A及び第2カバー有モードデータ82Bと、が格納されている。2つのカバー有モードデータ82A,82Bは、例えば質量が異なる等、異なる仕様の2種類の便座カバーに対応して設定されている。
【0040】
図7に示すように、実施形態3に係る便座装置はカバー検知部260を備えている。本実施形態の場合、ノーマルモードと、第1カバー有モード及び第2カバー有モードの2種類のカバー有モードと、の選択は、カバー検知部260による便座カバー5の検知の有無、及びカバー検知部260によって検出した2種類の便座カバー(図示せず)のそれぞれの固有情報に応じて自動で行われる。実施形態3の便座装置において、ノーマルモード、第1カバー有モード及び第2カバー有モードの選択は、実施形態1のように手動で行われてもよい。
【0041】
詳細には、本実施形態の場合、カバー検知部260は、図示しない質量検知センサを有して構成されている。質量検知センサは、質量変化によって便座3に便座カバーが取り付けられたか否かを検知する。質量検知センサは、便座カバーが取り付けられたことを検知した場合には、測定した質量の違いによって、2種類の便座カバーのいずれが取り付けられたかを判断する。すなわち、カバー検知部260は、異なる種類の便座カバーの固有情報として、質量を検出する。制御部70は、カバー検知部260の検知結果に応じて、ノーマルモードデータ81と、第1カバー有モードデータ82A及び第2カバー有モードデータ82Bのいずれかを選択して、ノーマルモード、第1カバー有モード及び第2カバー有モードのいずれかのモードで便座装置の制御を実行する。
【0042】
このように、実施形態3の便座装置は、異なる仕様の複数種類の便座カバーが取り付けられた場合でも、それぞれの便座カバーに合わせて、便座装置の機能部の機能を良好に発揮させることができる。
【0043】
<他の実施形態>
本開示は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本開示の技術的範囲に含まれる。
【0044】
(1)機能部は、上記実施形態に例示したものに限定されない。本開示に係る機能部とは、便座に便座カバーが取り付けられることによってその機能に影響が及ぼされるものを全般的に含む。機能部は、上記実施形態に例示した各機能部及びその他の機能部のうちの少なくとも1つが備えられていればよい。
【0045】
(2)カバー検知部を備える場合、カバー検知部の構成は、実施形態2のように、便座カバー側に設けられた磁性を有する被検出体と、この被検出体の磁性を検知する磁性センサとを有する構成や、実施形態3のように、便座に便座カバーが取り付けられたことによる質量変化を検知する質量検知センサを有する構成に限定されない。
【0046】
(3)カバー検知部による便座カバーの検知形態は、例えば、光電センサによって便座カバーの有無を検知する形態、着座検知用の静電容量式センサによって使用者が着座した際の静電容量の変化量に基づいて検知する形態、ヒータの温調用サーミスタによって検出される温度の変化する速度に基づいて便座カバーの有無を検知する形態、便座カバーの着脱によって電気的接点の状態が変化するスイッチによって検知する形態等、種々の構成を採用することができる。
【0047】
(4)便座に異なる仕様の複数種類の便座カバーが取り付けられる場合、その種類は2種類に限定されず、3種類以上であってもよい。
【符号の説明】
【0048】
1…便座装置、3…便座、5…便座カバー、10…着座検知部(機能部)、20…局部洗浄部(機能部)、30…便座加温部(機能部)、40…便座開閉部(機能部)、50…昇降部(機能部)、70…制御部、160,260…カバー検知部(検知部)