(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-14
(45)【発行日】2024-06-24
(54)【発明の名称】油中水型乳化化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/39 20060101AFI20240617BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20240617BHJP
A61K 8/894 20060101ALI20240617BHJP
A61K 8/891 20060101ALI20240617BHJP
A61K 8/44 20060101ALI20240617BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20240617BHJP
A61K 8/06 20060101ALI20240617BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240617BHJP
【FI】
A61K8/39
A61K8/37
A61K8/894
A61K8/891
A61K8/44
A61K8/34
A61K8/06
A61Q19/00
(21)【出願番号】P 2020183823
(22)【出願日】2020-11-02
【審査請求日】2023-03-16
(73)【特許権者】
【識別番号】390011442
【氏名又は名称】株式会社マンダム
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】山本 ゆう
(72)【発明者】
【氏名】田辺 勇輝
【審査官】田中 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-219425(JP,A)
【文献】L'Oreal, France,Camouflage Ultra Wear High Coverage Concealer,Mintel GNPD [online],2019年09月,Internet <URL:https://portal.mintel.com>,ID#6834761, [検索日:2024.02.08], 全文,全図
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分A~成分E
および成分Gを含有
し、
前記成分Aの含有量が1.0~10.0質量%、
前記成分Bの含有量が10.0~40.0質量%、
前記成分Cの含有量が0.2~3.0質量%、
前記成分Dの含有量が1.0~9.0質量%、
前記成分Eの含有量が10.0~60.0質量%、
前記成分Gの含有量が5.0~40.0質量%、
である、油中水型乳化化粧料。
成分A:ポリエーテル変性シリコーン
成分B:メチルポリシロキサン
成分C:ベヘン酸グリセリルおよびオクタステアリン酸ポリグリセリル-6
成分D:
Nε-ラウロイル-L-リジン
成分E:水
成分G:多価アルコール
【請求項2】
下記成分Fをさらに含有
し、前記成分Fの含有量が0.5~4.0質量%である、請求項1に記載の油中水型乳化化粧料。
成分F:(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油中水型乳化化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
油中水型乳化化粧料のうち、特に油剤としてシリコーン油を含有する油中水型乳化化粧料(「W/Si乳化化粧料」という)が、従来から知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
W/Si乳化化粧料は、これに含まれるシリコーン油の作用によって化粧料の塗布中のすべりの良さ、および、塗布後のつるつるとした感触に特徴がある。一方、W/Si乳化化粧料を、顔に塗布する場合や、保湿用途に用いる場合には、上記の特徴が塗布中のコク感および塗布後のハリ感に欠ける印象を与え、否定的な要因となってしまう場合がある。
【0005】
そこで本発明は、塗布中のコク感および塗布後のハリ感を向上させた、W/Si乳化化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の成分(成分Cおよび成分D)を配合することにより、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は、以下の構成を包含する。
<1>下記成分A~成分Eを含有する、油中水型乳化化粧料:
成分A:ポリエーテル変性シリコーン
成分B:メチルポリシロキサン
成分C:ベヘン酸グリセリルおよびオクタステアリン酸ポリグリセリル-6
成分D:N-アシルアミノ酸および/またはその塩である粉体
成分E:水。
<2>上記成分Dは、Nε-ラウロイル-L-リジンである、請求項1に記載の油中水型乳化化粧料。
<3>下記成分Fをさらに含有する、請求項1または2に記載の油中水型乳化化粧料:
成分F:(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー。
<4>下記成分Gをさらに含有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の油中水型乳化化粧料:
成分G:多価アルコール。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、塗布中のコク感および塗布後のハリ感を向上させた、W/Si乳化化粧料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明は、これらに限定されない。
【0009】
本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上、B以下」を意味する。
【0010】
〔各成分〕
本発明の油中水型乳化化粧料は、成分A:ポリエーテル変性シリコーン、成分B:メチルポリシロキサン、成分C:ベヘン酸グリセリルおよびオクタステアリン酸ポリグリセリル-6、成分D:N-アシルアミノ酸および/またはその塩である粉体、および、成分E:水を含有する。従来のW/Si乳化化粧料には、配合されているシリコーン油に起因して、塗布中のコク感および塗布後のハリ感に欠けるという欠点が生じていた。本発明では、成分Cおよび成分Dを配合することによって、上述の欠点を解消している。
【0011】
本明細書において、「塗布中のコク感」とは、製品を塗布する際に感じられる手応えを意図する。塗布中のコク感がある製品は、塗布中の手応え(抵抗感)が適度にあり、濃度の高い製品を塗布しているという実感を使用者に与える。本明細書において、「塗布後のハリ感」とは、製品を塗布した後に感じられる、肌が伸ばされたような感触を意図する。塗布後のハリ感がある製品は、塗布後のぬるつきや油っぽさが適度に低減されている。
【0012】
以下、本発明の油中水型乳化化粧料に含まれる各成分について、順に説明する。
【0013】
[成分A:ポリエーテル変性シリコーン]
成分Aは、ポリエーテル変性シリコーンである。成分Aは、W/Si乳化系を形成する非イオン系界面活性剤である。成分Aは、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を組合せて用いてもよい。
【0014】
成分Aは、シロキサン骨格(シリコーン鎖)およびポリエーテル基(ポリエーテル鎖)を含む、シリコーン化合物である。成分Aは、ポリエーテル鎖およびシリコーン鎖を主鎖内に含む、ブロック共重合体タイプまたは末端変性タイプのシリコーン化合物であってもよい。あるいは、成分Aは、シロキサン骨格の側鎖としてポリエーテル基が結合した、側鎖変性タイプのシリコーン化合物であってもよい。中でも、乳化安定性を向上する観点から、ポリエーテル基は、シロキサン骨格の側鎖および/または末端に位置していることが好ましく、側鎖に位置していることがより好ましい。
【0015】
シロキサン骨格としては、特に限定されないが、例えば、メチルポリシロキサン(ジメチルポリシロキサン、ジメチコンとも称する)、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサンなどが挙げられる。中でも、メチルポリシロキサンが好ましい。
【0016】
ポリエーテル基としては、特に限定されないが、例えば、ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基、ポリオキシブチレン基などが挙げられる。中でもポリオキシエチレン基が好ましい。成分Aにおけるオキシアルキレン(例えば、オキシエチレン)の平均付加モル数は、特に限定されないが、5~30が好ましく、より好ましくは8~20である。
【0017】
成分Aの具体例としては、例えば、PEG-10ジメチコン、PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、PEG-3ジメチコン、PEG-9メチルエーテルジメチコン、セチルPEG/PPG-10/1ジメチコン、ラウリルPEG/PPG-18/18メチコン、ラウリルPEG-10トリス(トリメチルシロキシ)シリルエチルジメチコン、ポリシリコーン-13、ラウリルPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、PEG/PPG-19/19ジメチコンなどが挙げられる。
【0018】
PEG-10ジメチコンは、INCI名でPEG-10 DIMETHICONEと表示される化合物である。PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコンは、INCI名でPEG-9 POLYDIMETHYLSILOXYETHYL DIMETHICONEと表示される化合物である。PEG-3ジメチコンは、INCI名でPEG-3 DIMETHICONEと表示される化合物である。上記PEG-9メチルエーテルジメチコンは、INCI名でPEG-9 METHYL ETHER DIMETHICONEと表示される化合物である。セチルPEG/PPG-10/1ジメチコンは、INCI名でCETYL PEG/PPG-10/1 DIMETHICONEと表示される化合物である。ラウリルPEG/PPG-18/18メチコンは、INCI名でLAURYL PEG/PPG-18/18 METHICONEと表示される化合物である。ラウリルPEG-10トリス(トリメチルシロキシ)シリルエチルジメチコンは、INCI名でLAURYL PEG-10 TRIS(TRIMETHYLSILOXY)SILYLETHYL DIMETHICONEと表示される化合物である。ポリシリコーン-13は、INCI名でPOLYSILICONE-13と表示される化合物である。ラウリルPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコンは、INCI名でLAURYL PEG-9 POLYDIMETHYLSILOXYETHYL DIMETHICONEと表示される化合物である。PEG/PPG-19/19ジメチコンは、INCI名でPEG/PPG-19/19 DIMETHICONEと表示される化合物である。
【0019】
成分Aの市販品としては、例えば、商品名「KF-6028」(HLB値=4.0、PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、信越化学工業社製)、商品名「KF-6015」(HLB値=4.5、PEG-3ジメチコン、信越化学工業社製)、商品名「KF-6016」(HLB値=4.5、PEG-9メチルエーテルジメチコン、信越化学工業社製)、商品名「KF-6048」(HLB値=3.5、セチルPEG/PPG-10/1ジメチコン、信越化学工業社製)、商品名「KF-6017」(HLB値=4.5、PEG-10ジメチコン、信越化学工業社製)、商品名「KF-6038」(HLB値=3.0、ラウリルPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、信越化学工業社製)、商品名「5200 Formulation Aid」(HLB値=2.0、ラウリルPEG/PPG-18/18メチコン、東レ・ダウコーニング社製)、商品名「ES-5300 Formulation Aid」(HLB値=3.0、ラウリルPEG-10トリス(トリメチルシロキシ)シリルエチルジメチコン、東レ・ダウコーニング社製)、商品名「FZ-2233」(HLB値=2.5、ポリシリコーン-13、東レ・ダウコーニング社製)、商品名「SS2910」(HLB値=4.0、PEG-10ジメチコン、東レ・ダウコーニング社製)、商品名「BY22-008M」(HLB値=2.0、PEG/PPG-19/19ジメチコン、東レ・ダウコーニング社製)、商品名「BY25-337」(HLB値=2.0、PEG/PPG-19/19ジメチコン、東レ・ダウコーニング社製)などが挙げられる。
【0020】
成分Aの含有量の下限値は、本発明の油中水型乳化化粧料100質量%中、1.0質量%以上が好ましく、2.0質量%以上がより好ましい。成分Aの含有量の上限値は、本発明の油中水型乳化化粧料100質量%中、10.0質量%以下が好ましく、5.0質量%以下がより好ましい。上記含有量が上記範囲であることにより、より効果的にW/Si乳化系を形成できる。
【0021】
[成分B:メチルポリシロキサン(ジメチコン)]
成分Bは、メチルポリシロキサンである。成分Bは、W/Si乳化系を形成する油分である。成分Bは、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を組合せて用いてもよい。
【0022】
メチルポリシロキサンは、例えば、INCI名でDIMETHICONEと表示される化合物である。成分Bの市販品としては、例えば、商品名「DOWSIL (TM) SH 200 Fluid 5 cSt」、商品名「DOWSIL (TM) SH 200 C Fluid 50 cSt」、商品名「XIAMETER(登録商標) PMX-200 SILICONE FLUID 1.5Xs」(以上、いずれも東レ・ダウコーニング社製)などが挙げられる。
【0023】
成分Bの含有量の下限値は、本発明の油中水型乳化化粧料100質量%中、10.0質量%以上が好ましく、15.0質量%以上がより好ましい。成分Bの含有量の上限値は、本発明の油中水型乳化化粧料100質量%中、40.0質量%以下が好ましく、35.0質量%以下がより好ましい。上記含有量が上記範囲であることにより、より効果的にW/Si乳化系を形成できる。
【0024】
[成分C:ベヘン酸グリセリルおよびオクタステアリン酸ポリグリセリル-6]
成分Cは、ベヘン酸グリセリルおよびオクタステアリン酸ポリグリセリル-6である。成分Cを配合することにより、本発明の油中水型乳化化粧料は、塗布後のハリ感を与えることができると考えられる。
【0025】
ベヘン酸グリセリルは、例えば、INCI名でGLYCERYL BEHENATEと表示される化合物である。オクタステアリン酸ポリグリセリル-6は、例えば、INCI名でPOLYGLYCERYL-6 OCTASTEARATEと表示される化合物である。成分Cとしては、ベヘン酸グリセリルおよびオクタステアリン酸ポリグリセリル-6を含む、化粧品原料の市販品を使用してもよい。市販品の例としては、商品名「TAISET」(太陽化学社製)が挙げられる。
【0026】
成分Cの含有量(ベヘン酸グリセリルおよびオクタステアリン酸ポリグリセリル-6の含有量の合計)の下限値は、本発明の油中水型乳化化粧料100質量%中、0.2質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましい。成分Cの含有量の上限値は、本発明の油中水型乳化化粧料100質量%中、4.0質量%以下が好ましく、3.0質量%以下がより好ましい。上記含有量が上記範囲であることにより、本発明の油中水型乳化化粧料の塗布後における、ハリ感が与えられる。
【0027】
[成分D:N-アシルアミノ酸および/またはその塩である粉体]
成分Dは、N-アシルアミノ酸および/またはその塩である粉体である。成分Dを配合することにより、本発明の油中水型乳化化粧料は、塗布中のコク感を与えることができると考えられる。成分Dは、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を組合せて用いてもよい。
【0028】
N-アシルアミノ酸は、アミノ酸のアミノ基にアシル基が結合した化合物である。N-アシルアミノ酸は、アシル塩基性アミノ酸であってもよい。アシル塩基性アミノ酸の具体例としては、ラウロイルリジン(ラウロイルリシン)、パルミトイルリジン、カプロイルリジンなどのアシルリジン;ステアロイルオルニチンなどのアシルオルニチン;ラウロイルアルギニンなどのアシルアルギニン;ココイルヒスチジンなどのアシルヒスチジン;などが挙げられる。
【0029】
成分Dは、好ましくは、Nε-ラウロイル-L-リジンである。Nε-ラウロイル-L-リジンは、例えば、INCI名でLAUROYL LYSINEと表示される化合物である。Nε-ラウロイル-L-リジンは、市販品を用いることができる。市販品の例としては、商品名「アミホープLL」(味の素社製)などが挙げられる。
【0030】
成分Dの含有量の下限値は、本発明の油中水型乳化化粧料100質量%中、1.0質量%以上が好ましく、2.0質量%以上がより好ましい。成分Dの含有量の上限値は、本発明の油中水型乳化化粧料100質量%中、10.0質量%以下が好ましく、9.0質量%以下がより好ましい。上記含有量が上記範囲であることにより、本発明の油中水型乳化化粧料の塗布中における、コク感が与えられる。
【0031】
[成分E:水]
成分Eは、水である。成分Eは、W/Si乳化系を形成するための水分である。成分Eは特に限定されないが、精製水が好ましい。成分Eの含有量の下限値は、本発明の油中水型乳化化粧料100質量%中、10.0質量%以上が好ましく、20.0質量%以上がより好ましい。成分Eの含有量の上限値は、本発明の油中水型乳化化粧料100質量%中、60.0質量%以下が好ましく、50.0質量%以下がより好ましい。
【0032】
[成分F:(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー]
成分Fは、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマーである。成分Fは、W/Si乳化系を形成するための増粘剤である。成分Fは、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を組合せて用いてもよい。
【0033】
(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマーは、例えば、INCI名でDIMETHICONE/VINYLDIMETHICONE CROSSPOLYMERと表示される化合物である。成分Fの市販品としては、例えば、商品名「KSG-15」、「KSG-16」、「KSG-1510」、「KSG-1610」(以上、いずれも信越化学工業株式会社製)などが挙げられる。
【0034】
成分Fの含有量の下限値は、本発明の油中水型乳化化粧料100質量%中、0.5質量%以上が好ましく、1.0質量%以上がより好ましい。成分Fの含有量の上限値は、本発明の油中水型乳化化粧料100質量%中、4.0質量%以下が好ましく、3.5質量%以下がより好ましい。上記含有量が上記範囲であることにより、より効果的にW/Si乳化系を形成できる。
【0035】
[成分G:多価アルコール]
成分Gは、多価アルコールである。成分Gは、製品の塗布後に保湿感を与える成分である。成分Gは、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を組合せて用いてもよい。
【0036】
成分Gの具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール(1,2-プロパンジオール)、1,3-プロパンジオール、イソプレングリコール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール(1,3-ブタンジオール)、1,2-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-オクタンジオール、1,2-デカンジオール、グリセリン(1,2,3-プロパントリオール)、ジグリセリン、ポリグリセリン、ソルビトール、マルチトール、ポリオキシエチレンメチルグルコシド、ポリオキシプロピレンメチルグルコシドなどが挙げられる。中でも、炭素数3~6のプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、グリセリン、イソプレングリコール、ポリエチレングリコールが好ましい。
【0037】
成分Gの含有量の下限値は、本発明の油中水型乳化化粧料100質量%中、5.0質量%以上が好ましく、10.0質量%以上がより好ましい。成分Gの含有量の上限値は、本発明の油中水型乳化化粧料100質量%中、40.0質量%以下が好ましく、35.0質量%以下がより好ましい。上記含有量が上記範囲であることにより、製品の塗布後における保湿感がより一層向上する。
【0038】
[任意成分]
任意成分の例としては、低級アルコール;紫外線吸収剤;成分D以外の粉体;酸化防止剤;防腐剤(メチルパラベンなど);香料;着色剤;キレート剤;殺菌剤(イソプロピルメチルフェノールなど);制汗剤(スルホ石炭酸亜鉛など);清涼剤;増粘剤;ビタミン類;中和剤;アミノ酸;pH調整剤;美白剤;抗炎症剤;消臭剤;動植物抽出物;金属封鎖剤(エチレンジアミン四酢酸のナトリウム塩など)などの添加剤が挙げられる。これらの任意成分は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を用いてもよい。また、これらの任意成分の含有量は、目的に応じて適宜決定することができる。
【0039】
〔形態、製造方法および用途〕
本発明の油中水型乳化化粧料は、特に、油剤としてシリコーン油を含有する油中水型乳化化粧料(いわゆる、シリコーン油中水型乳化化粧料、W/Si乳化化粧料)である。本発明の油中水型乳化化粧料の形態としては、例えば、クリーム、ローション、乳液などが挙げられる。
【0040】
本発明の油中水型乳化化粧料は、常法に則って製造することができる。一例として、上記成分を混合し、ホモミキサーまたはディスパーミキサーで撹拌乳化する製造方法が挙げられる。
【0041】
本発明の油中水型乳化化粧料の用途は、特に限定されない。好適な例としては皮膚化粧料が挙げられ、より具体的な例としてはスキンケア化粧料が挙げられる。スキンケア化粧料の例としては、保湿化粧料、美白化粧料、アクネケア用化粧料、アンチエージング化粧料(しわ抑制、たるみ抑制などを目的とする化粧料)などが挙げられる。W/Si乳化化粧料は、油性のメイクに対してなじみが良いため、例えば、メイクの上から使用することにより、保湿効果を付与し、乾燥によるメイク崩れを防止することができる。このため、本発明の油中水型乳化化粧料は、メイクの上から使用する皮膚化粧料としても好ましく用いられる。
【0042】
本発明の油中水型乳化化粧料は、化粧品、医薬部外品、医薬品、雑貨などでありうる。
【0043】
本発明の油中水型乳化化粧料を適用する部位は、特に限定されない。一例として、上記化粧料の適用部位は、顔(額、目元、目じり、頬、口元など)、腕、肘、手の甲、指先、足、膝、かかと、首、脇、背中などである。本発明の油中水型乳化化粧料は、好ましくは、局所的に適用される。局所的な適用部位の例としては、顔(額、目元、目じり、頬、口元など)が挙げられる。
【0044】
上記各項目で記載した内容は、他の項目においても適宜援用できる。本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。したがって、異なる実施形態にそれぞれ開示されている技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても、本発明の技術的範囲に含まれる。
【0045】
本明細書中に記載された学術文献および特許文献のすべてが、本明細書中において参考文献として援用される。
【実施例】
【0046】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は下記実施例のみに限定されるものではない。下記の実施例および比較例における配合量および含有量は、別途記載のない限り、質量基準の量(質量%)である。このとき、各実施例または比較例で調製した油中水型乳化化粧料の全質量を100質量%とする。
【0047】
〔評価項目〕
評価1:塗布中のコク感
実施例および比較例で作製した油中水型乳化化粧料(約0.2g)を、前腕内側部に、指で塗り広げて塗布した。塗布中の感触により、以下の基準で評価した。
<塗布中のコク感>
〇(良好):指に明らかに抵抗感が感じられる。
×(不良):滑る感触(ぬるつき)があり、指に抵抗感がほとんど感じられない。
【0048】
評価2:塗布後のハリ感
上記評価1において油中水型乳化化粧料を塗布しなじませた直後に、塗布部を指で触れた。その際の感触により、以下の基準で評価した。
<塗布後のハリ感>
〇(良好):塗布部の肌が伸ばされたような感触が明らかに感じられる。
×(不良):塗布部の肌が伸ばされたような感触が感じられない。
【0049】
〔実施例1~8、比較例1、2〕
表1の組成に従って、実施例1~8、比較例1、2に係る油中水型乳化化粧料を、常法に則って調製した。なお、実施例4、7および8は参考例とする。
【0050】
【0051】
〔結果〕
実施例1~8に係る油中水型乳化化粧料は、成分Cおよび成分Dの組合せを含有していた。その結果、W/Si系の乳化化粧料であっても、塗布後のハリ感および塗布中のコク感を充分に有していた。比較例1に係る油中水型乳化化粧料は、成分Cを含有していなかった。その結果、塗布後のハリ感が不充分であった。比較例2に係る油中水型乳化化粧料は、成分Dを含有していなかった。その結果、塗布中のコク感が不充分であった。
【0052】
実施例1~3、5~8に係る油中水型乳化化粧料は、塗布後のベタつきを感じなかった。一方、実施例4に係る油中水型乳化化粧料は、塗布後のベタつきを少し感じた。このことから、成分Cの含有量は、3.0質量%以下がより一層好ましいことが分かる。
【0053】
実施例1~6、8に係る油中水型乳化化粧料は、塗布後に軋み感を感じなかった。一方、実施例7に係る油中水型乳化化粧料は、塗布後に軋み感を少し感じた。このことから、成分Dの含有量は、10.0質量%未満(例えば、9.0質量%以下)がより一層好ましいことが分かる。
【0054】
実施例1~7に係る油中水型乳化化粧料は、塗布後に充分な保湿感があった。一方、実施例8に係る油中水型乳化化粧料は、塗布後の保湿感が少し不足していた。このことから、製品の塗布後の保湿感を向上させる観点からは、成分Gを含有させることが好ましいと分かる。
【0055】
〔処方例1〕保湿クリーム
PEG-10ジメチコン 3.0%
メチルポリシロキサン 20.0%
ベヘン酸グリセリルおよびオクタステアリン酸ポリグリセリル-6 1.0%
Nε-ラウロイル-L-リジン 4.0%
精製水 残部
メチルポリシロキサンおよび(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー
6.0%
グリセリン 10.0%
PEG-8 10.0%
塩化ナトリウム 0.5%
クエン酸ナトリウム 0.2%
ヒアルロン酸ナトリウム 0.01%
加水分解コラーゲン 0.001%
エタノール 5.0%
合計 100.0%。
【0056】
〔処方例2〕美白クリーム
PEG-10ジメチコン 3.0%
メチルポリシロキサン 20.0%
ベヘン酸グリセリルおよびオクタステアリン酸ポリグリセリル-6 1.0%
Nε-ラウロイル-L-リジン 4.0%
シリカ 4.0%
精製水 残部
メチルポリシロキサンおよび(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー
6.0%
グリセリン 15.0%
PEG-8 10.0%
グリチルリチン酸ジカリウム 0.1%
トラネキサム酸 1.0%
塩化ナトリウム 0.5%
クエン酸ナトリウム 0.2%
エタノール 3.0%
合計 100.0%。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、塗布中のコク感および塗布後のハリ感を向上させた、シリコーン油を含有する油中水型乳化化粧料の製造に利用することができる。