(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-14
(45)【発行日】2024-06-24
(54)【発明の名称】検査システム及び検査方法
(51)【国際特許分類】
G01S 13/90 20060101AFI20240617BHJP
G01S 7/03 20060101ALI20240617BHJP
H01Q 21/08 20060101ALI20240617BHJP
H01Q 3/06 20060101ALI20240617BHJP
H01Q 3/26 20060101ALI20240617BHJP
【FI】
G01S13/90
G01S7/03 230
H01Q21/08
H01Q3/06
H01Q3/26
(21)【出願番号】P 2020204923
(22)【出願日】2020-12-10
【審査請求日】2023-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】朱 旭
(72)【発明者】
【氏名】森 浩樹
【審査官】▲高▼場 正光
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2006/0006995(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0265117(US,A1)
【文献】特開2004-198312(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104535998(CN,A)
【文献】特開2020-085461(JP,A)
【文献】特開2016-011921(JP,A)
【文献】特表2009-526223(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00 - G01S 7/42
G01S 13/00 - G01S 13/95
H01Q 3/00 - H01Q 3/46
H01Q 21/00 - H01Q 25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナ装置と、処理部と、を備える検査システムであって、
前記アンテナ装置は、
第1送信アンテナと、第1受信アンテナ及び第2受信アンテナとを含むアンテナパネルと、
前記アンテナパネル上の一点を中心軸として前記アンテナパネルを回転させる回転装置と、を備え、
前記アンテナパネルの回転角度が第1角度の時に第1電波が前記第1送信アンテナから放出され、前記第1電波の反射電波が前記第1受信アンテナと前記第2受信アンテナとで受信され、
前記アンテナパネルの回転角度が前記第1角度とは異なる第2角度の時に第2電波が前記第1送信アンテナから放出され、前記第2電波の反射電波が前記第1受信アンテナと前記第2受信アンテナとで受信され、
前記中心軸から前記第1送信アンテナまでの距離は、前記第1受信アンテナと前記第2受信アンテナを含む前記アンテナパネルに含まれるすべての受信アンテナの前記中心軸からの距離のいずれよりも大きく、
前記処理部は、
前記第1受信アンテナ及び前記第2受信アンテナで受信した前記第1電波の反射電波と前記第1受信アンテナ及び前記第2受信アンテナで受信した前記第2電波の反射電波とに基づくイメージングによりレーダ画像を得て、撮像部から取得した対象画像
と、前記レーダ画像と、検査システムによるイメージング位置を示すマークと、を
含む生成画像を生成する、検査システム。
【請求項2】
アンテナ装置と、処理部と、を備える検査システムであって、
前記アンテナ装置は、
第1送信アンテナと、第1受信アンテナ及び第2受信アンテナとを含むアンテナパネルと、
前記アンテナパネル上の一点を中心軸として前記アンテナパネルを回転させる回転装置と、を備え、
前記アンテナパネルの回転角度が第1角度の時に第1電波が前記第1送信アンテナから放出され、前記第1電波の反射電波が前記第1受信アンテナと前記第2受信アンテナとで受信され、
前記アンテナパネルの回転角度が前記第1角度とは異なる第2角度の時に第2電波が前記第1送信アンテナから放出され、前記第2電波の反射電波が前記第1受信アンテナと前記第2受信アンテナとで受信され、
前記処理部は、
前記第1受信アンテナ及び前記第2受信アンテナで受信した前記第1電波の反射電波と前記第1受信アンテナ及び前記第2受信アンテナで受信した前記第2電波の反射電波とに基づくイメージングによりレーダ画像を得て、撮像部から取得した対象画像
と、前記レーダ画像と、検査システムによるイメージング位置を示すマークと、を
含む生成画像を生成する、検査システム。
【請求項3】
前記中心軸からの前記第1送信アンテナまでの距離は、前記第1受信アンテナと前記第2受信アンテナを含む、前記アンテナパネルに含まれるすべての受信アンテナの前記中心軸からの距離のいずれよりも大きい、請求項2に記載の検査システム。
【請求項4】
前記中心軸からの前記第1送信アンテナまでの距離は、前記第1受信アンテナと前記第2受信アンテナを含む、前記アンテナパネルに含まれるすべての受信アンテナの前記中心軸からの距離のいずれよりも小さい、請求項2に記載の検査システム。
【請求項5】
少なくとも前記第1送信アンテナと前記第1受信アンテナと前記第2受信アンテナとは、前記アンテナパネル上で直線状に配置される、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の検査システム。
【請求項6】
前記アンテナパネルは、さらに第3受信アンテナと第4受信アンテナとを含み、
前記第1送信アンテナと前記第1乃至第4受信アンテナは4つのアームを有する十字形状に配置され、
前記4つのアームの各々に少なくとも1個の受信アンテナが配置される、請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の検査システム。
【請求項7】
前記アンテナパネルは第2送信アンテナをさらに含み、
前記アンテナパネルの回転角度が前記第1角度の時に前記第1電波が前記第2送信アンテナからさらに放出され、前記第1電波の反射電波が前記第1受信アンテナと前記第2受信アンテナとでさらに受信され、
前記アンテナパネルの回転角度が前記第2角度の時に前記第2電波が前記第2送信アンテナからさらに放出され、前記第2電波の反射電波が前記第1受信アンテナと前記第2受信アンテナでさらに受信される、請求項1乃至請求項6のいずれか一項記載の検査システム。
【請求項8】
前記アンテナパネルは第2送信アンテナをさらに含み、
前記アンテナパネルの回転角度が前記第1角度の時に前記第1電波が前記第2送信アンテナからさらに放出され、前記第1電波の反射電波が前記第1受信アンテナと前記第2受信アンテナとでさらに受信され、
前記アンテナパネルの回転角度が前記第2角度の時に前記第2電波が前記第2送信アンテナからさらに放出され、前記第2電波の反射電波が前記第1受信アンテナと前記第2受信アンテナでさらに受信され、
前記中心軸からの前記第1送信アンテナまでの距離と前記中心軸からの前記第2送信アンテナまでの距離は、前記第1受信アンテナと前記第2受信アンテナを含む、前記アンテナパネルに含まれるすべての受信アンテナの前記中心軸からの距離のいずれよりも大きい、請求項1又は請求項2に記載の検査システム。
【請求項9】
前記アンテナパネルは第2送信アンテナをさらに含み、
前記アンテナパネルの回転角度が前記第1角度の時に前記第1電波が前記第2送信アンテナからさらに放出され、前記第1電波の反射電波が前記第1受信アンテナと前記第2受信アンテナとでさらに受信され、
前記アンテナパネルの回転角度が前記第2角度の時に前記第2電波が前記第2送信アンテナからさらに放出され、前記第2電波の反射電波が前記第1受信アンテナと前記第2受信アンテナでさらに受信され、
前記中心軸からの前記第1送信アンテナまでの距離又は前記中心軸からの前記第2送信アンテナまでの距離は、前記第1受信アンテナと前記第2受信アンテナを含む、前記アンテナパネルに含まれるすべての受信アンテナの前記中心軸からの距離のいずれよりも小さい、請求項2に記載の検査システム。
【請求項10】
少なくとも前記第1送信アンテナと前記第2送信アンテナと前記第1受信アンテナと前記第2受信アンテナとは、前記アンテナパネル上で直線状に配置される、請求項7乃至請求項9のいずれか一項に記載の検査システム。
【請求項11】
前記アンテナパネルは、さらに第2送信アンテナと第3受信アンテナと第4受信アンテナとを含み、
前記第1送信アンテナと前記第2送信アンテナと前記第1乃至第4受信アンテナは4つのアームを有する十字形状に配置され、
前記中心軸からの前記第1送信アンテナまでの距離又は前記中心軸からの前記第2送信アンテナまでの距離は、前記第1乃至第4受信アンテナを含む、前記アンテナパネルに含まれるすべての受信アンテナの前記中心軸からの距離のいずれよりも小さく、
前記4つのアームの各々に少なくとも1個の受信アンテナが配置される、請求項2記載の検査システム。
【請求項12】
前記アンテナパネルは、さらに第2送信アンテナと第3受信アンテナを含み、
前記第1送信アンテナと前記第2送信アンテナと前記第1乃至第3受信アンテナは3つのアームを有するY字形状に配置され、
前記中心軸からの前記第1送信アンテナまでの距離又は前記中心軸からの前記第2送信アンテナまでの距離は、前記第1乃至第3受信アンテナを含む、前記アンテナパネルに含まれるすべての受信アンテナの前記中心軸からの距離のいずれよりも小さく、
前記3つのアームの各々に少なくとも1個の受信アンテナが配置される、請求項2記載の検査システム。
【請求項13】
前記アンテナパネル上で隣接するアンテナの間隔は前記第1電波または前記第2電波の1波長の長さと略等しい請求項1乃至請求項12のいずれか一項に記載の検査システム。
【請求項14】
前記第1受信アンテナと前記第2受信アンテナの受信信号を処理して、前記第1電波を反射する物体及び前記第2電波を反射する物体の情報を出力する電子回路をさらに具備する、請求項1乃至請求項13のいずれか一項記載の検査システム。
【請求項15】
前記アンテナ装置は携帯型である、請求項1乃至請求項14のいずれか一項に記載の検査システム。
【請求項16】
前記第1電波と前記第2電波の放出を開始するスイッチと、前記第1電波と前記第2電波の放出を終了するスイッチの少なくとも一方を備える、請求項1乃至請求項15のいずれか一項に記載の検査システム。
【請求項17】
前記第1電波と前記第2電波の放出と終了を指示するスイッチを備え、前記スイッチが操作された後に前記処理部は前記生成画像を処理する、請求項1乃至請求項15のいずれか一項に記載の検査システム。
【請求項18】
受信手段と、出力手段と、を備える検査システムであって、
第1送信アンテナと、第1受信アンテナ及び第2受信アンテナとを含むアンテナパネルの回転角度が第1角度の時に第1電波が前記第1送信アンテナから放出され、対象物で前記第1電波が反射され
、
前記アンテナパネルの回転角度が前記第1角度とは異なる第2角度の時に第2電波が前記第1送信アンテナから放出され、前記対象物で前記第2電波が反射され、
前記受信手段は、前記第1受信アンテナと前記第2受信アンテナとで受信された前記第1電波の反射電波の情報と、前記第1受信アンテナと前記第2受信アンテナとで受信された前記第2電波の反射電波の情報と
、を受信
し、
前記出力手段は、撮像部から取得した前記対象物の画像
と、前記第1電波の反射
電波の情報と前記第2電波の反射
電波の情報
とに基づく
イメージングによるレーダ画像と、
検査システムによるイメージング位置を示すマークと、を
含む生成画像を出力
し、
前記アンテナパネルの回転中心から前記第1送信アンテナまでの距離は、前記第1受信アンテナと前記第2受信アンテナを含む前記アンテナパネルに含まれるすべての受信アンテナの前記回転中心からの距離のいずれよりも大きい、検査システム。
【請求項19】
第1送信アンテナと、第1受信アンテナ及び第2受信アンテナとを含むアンテナパネルの回転角度が第1角度の時に第1電波が前記第1送信アンテナから放出され、対象物で前記第1電波が反射され、前記第1受信アンテナと前記第2受信アンテナとで受信された前記第1電波の反射電波の情報を受信することと、
前記アンテナパネルの回転角度が前記第1角度とは異なる第2角度の時に第2電波が前記第1送信アンテナから放出され、前記対象物で前記第2電波が反射され、前記第1受信アンテナと前記第2受信アンテナとで受信された前記第2電波の反射電波の情報を受信することと、
撮像部から取得した前記対象物の画像
と、前記第1電波の反射
電波の情報と前記第2電波の反射
電波の情報
とに基づく
イメージングによるレーダ画像と、
イメージング位置を示すマークと、を
含む生成画像を出力することと、を備え、
前記アンテナパネルの回転中心から前記第1送信アンテナまでの距離は、前記第1受信アンテナと前記第2受信アンテナを含む前記アンテナパネルに含まれるすべての受信アンテナの前記回転中心からの距離のいずれよりも大きい、検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、検査システム及び検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電波を用いて検査対象者(以下、単に対象者と称される)の所持品を検査する検査装置がある。このような検査装置は、対象者の多数の点に向けて電波を放出し、対象者からの反射波を受信し、受信信号の振幅に基づいて所持品のイメージングを行う。
【0003】
高精細なイメージングを行うためには、対象者の非常に多くの点に電波を放出する必要があるため、検査装置はアレイアンテナを利用する。
【0004】
アレイアンテナは1次元アレイアンテナ(リニアアレイアンテナとも称される)と2次元アレイアンテナ(エリアアレイアンテナとも称される)を含む。
【0005】
エリアアレイアンテナを用いる検査装置は、多数のアンテナを電子スイッチにより切り替えて送受信を行うため、大型化するとともに、コストが高くなる。さらに、この検査装置は、多数のアンテナから電波を放出するので、1回の検査時間が長く、歩行している対象者を立ち止まらせることなく検査するウォークスルー検査を実施できない。
【0006】
リニアアレイアアンテナを用いる検査装置は、アンテナの配列方向に交差する方向にリニアアレイアンテナを機械的に移動し、対象者の全身に電波を放出する。この装置は、リニアアレイアンテナを一方向に移動して対象者を走査した後、リニアアレイアンテナを逆方向に移動し、リニアアレイアンテナを初期位置へ復帰させる。復帰の移動中にも電波を送受信すると、移動方向を変えたことによるバックラッシュの影響でイメージング精度が劣化になる。そのため、復帰の移動中は電波を送受信できず、この装置も、1回の検査時間が長く、ウォークスルー検査を実施できない。
【0007】
さらに、アレイアンテナを用いるイメージングのためには、アンテナ間隔は送受信する電波の1/2波長としなければならないので、アレイアンテナは多数のアンテナを必要とする。そのため、アレイアンテナは大型化し、検査装置を小型化することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国特許第9715012号明細書
【文献】米国特許第10330785号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、電波を用いて対象者を検査する検査システム及び検査方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
実施形態によれば、検査システムは、アンテナ装置と、処理部と、を備える。アンテナ装置は、第1送信アンテナと、第1受信アンテナ及び第2受信アンテナとを含むアンテナパネルと、アンテナパネル上の一点を中心軸としてアンテナパネルを回転させる回転装置と、を具備する。アンテナパネルの回転角度が第1角度の時に第1電波が第1送信アンテナから放出され、第1電波の反射電波が第1受信アンテナと第2受信アンテナとで受信される。アンテナパネルの回転角度が第1角度とは異なる第2角度の時に第2電波が第1送信アンテナから放出され、第2電波の反射電波が第1受信アンテナと第2受信アンテナとで受信される。中心軸から第1送信アンテナまでの距離は、第1受信アンテナと第2受信アンテナを含むアンテナパネルに含まれるすべての受信アンテナの中心軸からの距離のいずれよりも大きい。処理部は、第1受信アンテナ及び第2受信アンテナで受信した第1電波の反射電波と第1受信アンテナ及び第2受信アンテナで受信した第2電波の反射電波とに基づくイメージングによりレーダ画像を得て、撮像部から取得した対象画像と、レーダ画像と、検査システムによるイメージグ位置を示すマークと、を含む生成画像を生成する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施形態によるアンテナパネルから構成される仮想アレイアンテナの一例を示す図。
【
図2】第1実施形態によるアンテナパネルから構成される他の仮想アレイアンテナの一例を示す図。
【
図3】第1実施形態によるアンテナパネルから構成されるさらに他の仮想アレイアンテナの一例を示す図。
【
図4】第1実施形態によるアンテナパネルの回転の一例を示す図。
【
図5】第1実施形態によるアンテナパネルが回転することにより構成される2次元仮想アレイアンテナの一例を示す図。
【
図6】第1実施形態によるアンテナパネルの検査エリアの側方への配置例を示す図。
【
図7】第1実施形態によるアンテナパネルの検査エリアの前方への配置例を示す図。
【
図8】第1実施形態によるアンテナパネルの検査エリアの下方への配置例を示す図。
【
図9】第1実施形態による検査システムの一例を示す図。
【
図10】第1実施形態による検査システムの処理の流れの一例を示すフローチャート。
【
図11】検査システムにおける表示の一例を示す図。
【
図12】第1変形例によるハンドヘルドスキャナの検査の一例を示す図。
【
図13】第1変形例によるハンドヘルドスキャナの検査の他の例を示す図。
【
図14】第1変形例による検査システムの処理の流れの一例を示すフローチャート。
【
図15】第2変形例によるアンテナパネルから構成される仮想アレイアンテナの一例を示す図。
【
図16】第2変形例によるアンテナパネルから構成される他の仮想アレイアンテナの一例を示す図。
【
図17】第2変形例によるアンテナパネルから構成されるさらに他の仮想アレイアンテナの一例を示す図。
【
図18】第2変形例によるアンテナパネルの回転の一例を示す図。
【
図19】第2変形例によるアンテナパネルが回転することにより構成される2次元仮想アレイアンテナの一例を示す図。
【
図20】第3変形例によるアンテナパネルの一例を示す図。
【
図21】第4変形例によるアンテナパネルの一例を示す図。
【
図22】第5変形例によるアンテナパネルの一例を示す図。
【
図23】第6変形例によるアンテナパネルの一例を示す図。
【
図24】第7変形例によるアンテナパネルの一例を示す図。
【
図25】第8変形例によるアンテナパネルの一例を示す図。
【
図26】第1実施形態によるアンテナパネルが90°回転することにより構成される2次元仮想アレイアンテナの一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、実施形態を説明する。以下の説明は、実施形態の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、実施形態の技術的思想は、以下に説明する構成要素の構造、形状、配置、材質等に限定されるものではない。当業者が容易に想到し得る変形は、当然に開示の範囲に含まれる。説明をより明確にするため、図面において、各要素のサイズ、厚み、平面寸法又は形状等を実際の実施態様に対して変更して模式的に表す場合もある。複数の図面において、互いの寸法の関係や比率が異なる要素が含まれることもある。複数の図面において、対応する要素には同じ参照数字を付して重複する説明を省略する場合もある。いくつかの要素に複数の呼称を付す場合があるが、これら呼称の例はあくまで例示であり、これらの要素に他の呼称を付すことを否定するものではない。また、複数の呼称が付されていない要素についても、他の呼称を付すことを否定するものではない。なお、以下の説明において、「接続」は直接接続のみならず、他の要素を介して接続されることも意味する。
【0013】
以下、図面を参照しながら本実施の形態について詳細に説明する。
【0014】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態によるアンテナパネル10の一例の平面図を示す。
【0015】
アンテナパネル10は、基板11上に配置された直線状のアレイアンテナを含む。
図1は、直線状の基板11を示すが、基板11の形状は、必ずしもアレイアンテナの形状と対応している必要はない。基板11上に回路モジュール(図示省略)が配置されていてもよい。アレイアンテナと回路モジュールが配置される基板11の形状は、矩形状であってもよい。回路モジュールは、送信回路や受信回路の集積回路を含む。アレイアンテナは、少なくとも1個(第1実施形態では2個)の送信アンテナTx1、Tx2と少なくとも1個(第1実施形態では7個)の受信アンテナRx1、Rx2、Rx3、Rx4、Rx5、Rx6、Rx7を含む。例えば、アレイアンテナは、1個の送信アンテナと少なくとも1個の受信アンテナを含んでもよいし、アレイアンテナは、少なくとも1個の送信アンテナと1個の受信アンテナを含んでもよいし、アレイアンテナは、1個の送信アンテナと1個の受信アンテナを含んでもよい。
【0016】
送信アンテナTx1、受信アンテナRx1-Rx7、及び送信アンテナTx2は、この順番に1本のラインに沿って等間隔に配置される。すなわち、送信アンテナTx1、Tx2は、受信アンテナRx1-Rx7の両外側にそれぞれ配置される。送信アンテナTx1、受信アンテナRx1-Rx7、及び送信アンテナTx2の中の隣接する2個のアンテナの間隔は、送受信される電波の1波長の長さである。例えば、実施形態で用いられる電波は、波長が1ミリメートルから30ミリメートルの波を含む。なお、波長が1ミリメートルから10ミリメートルの電波はミリ波、波長が10ミリメートルから100ミリメートルの電波はマイクロ波とも称される。
【0017】
送信アンテナTx1又はTx2はパルス状の電波(送信パルスと称される)を放出する。送信パルスは電波の照射エリアに存在する物体で反射される。受信アンテナRx1-Rx7は物体からの反射波を受信する。受信アンテナRx1-Rx7の受信信号は合成開口処理される。これにより、受信アンテナRx1-Rx7の受信信号は、送信アンテナTx1又はTx2と受信アンテナRx1-Rx7の中点にそれぞれ位置する仮想アンテナの受信信号と等価となり、これらの仮想アンテナからなる仮想アレイアンテナが構成される。
【0018】
仮想アレイアンテナを構成するために、先ず、送信アンテナTx1が送信パルスを放出する。受信アンテナRx1-Rx7は、送信アンテナTx1から放出された送信パルスの反射電波を受信する。受信アンテナRx1-Rx7の受信信号が合成開口処理されると、
図1に示すように、送信アンテナTx1と受信アンテナRx1-Rx7の中点にそれぞれ位置する仮想アンテナv1-v7を含む仮想アレイアンテナ12が構成される。
【0019】
例えば、送信アンテナTx1から放出された送信パルスの反射波を受信した受信アンテナRx1から出力される受信信号を合成開口処理することにより、送信アンテナTx1と受信アンテナRx1の中点に位置する仮想アンテナv1が構成される。送信アンテナTx1から放出された送信パルスの反射波を受信した受信アンテナRx7から出力される受信信号を合成開口処理することにより、送信アンテナTx1と受信アンテナRx7との中点、すなわち受信アンテナRx3と受信アンテナRx4の中点に位置する仮想アンテナv7が構成される。他の仮想アンテナv2-v6も、同様に構成される。
【0020】
仮想アレイアンテナ12のアンテナ間隔は、アレイアンテナのアンテナ間隔の半分である。すなわち、仮想アンテナv1-v7の中の隣接する2つの仮想アンテナの間隔は、送受信される電波の波長の1/2の長さである。
【0021】
送信アンテナTx1の送信パルスの受信信号の合成開口処理が終わると、送信アンテナTx2が送信パルスを放出する。受信アンテナRx1-Rx7は、送信アンテナTx2から放出された送信パルスの反射体による反射電波を受信する。受信アンテナRx1-Rx7の受信信号が合成開口処理されると、
図2に示すように、送信アンテナTx2と受信アンテナRx1-Rx7の中点にそれぞれ位置する仮想アンテナv17-v11を含む仮想アレイアンテナ14が構成される。
【0022】
例えば、送信アンテナTx2から放出された送信パルスの反射波を受信した受信アンテナRx1から出力される受信信号を合成開口処理することにより、送信アンテナTx2と受信アンテナRx1の中点、すなわち受信アンテナRx4と受信アンテナRx5の中点に位置する仮想アンテナv17が構成される。送信アンテナTx2から放出された送信パルスの反射波を受信した受信アンテナRx7から出力される受信信号を合成開口処理することにより、送信アンテナTx2と受信アンテナRx7の中点に位置する仮想アンテナv11が構成される。他の仮想アンテナv12-v16も、同様に構成される。
【0023】
仮想アンテナv11-v17の中の隣接する2つの仮想アンテナの間隔も、送受信される電波の波長の1/2の長さである。
【0024】
図3は、送信アンテナTx1と受信アンテナRx1-Rx7とのペアが送信パルスの送受信を行い、送信アンテナTx2と受信アンテナRx1-Rx7とのペアが送信パルスの送受信を行った場合に構成される仮想アレイアンテナ16を示す。
【0025】
仮想アレイアンテナ16は、送信アンテナTx1の送信パルスを受信した受信アンテナRx1-Rx7の受信信号を合成開口処理したことにより得られる仮想アンテナv21-v27(
図1の仮想アンテナv1-v7と等価)と、送信アンテナTx2の送信パルスを受信した受信アンテナRx1-Rx7の受信信号を合成開口処理したことにより得られる仮想アンテナv37-v31(
図2の仮想アンテナv17-v11と等価)を含む。
【0026】
仮想アンテナv27と仮想アンテナv37の間隔は、送受信される電波の1波長の長さである。
【0027】
図3に示す仮想アレイアンテナ16は1次元アレイアンテナである。2次元領域の検査対象のイメージングのためには、2次元アレイアンテナの受信信号が必要である。そのため、従来では、1次元アレイアンテナを一方向に移動することにより、1次元アレイアンテナから2次元アレイアンテナの受信信号と等価な信号を得ていた。この手法はバックラッシュの影響により、イメージング時間を短縮すると、イメージング精度が劣化する問題があった。そのため、この実施形態では、1次元アレイアンテナを回転することにより、1次元アレイアンテナから2次元アレイアンテナの受信信号と等価な信号を得る。
【0028】
図4は、第1実施形態のアンテナパネル10の一例の斜視図を示す。基板11の表面には、送信アンテナTx1、Tx2と受信アンテナRx1-Rx7が配置される。基板11の裏面には、基板11に直交する回転軸18が取り付けられている。回転軸18は、基板11上のアレイアンテナ上の一点に取り付けられる。例えば、回転軸18は、アレイアンテナの中心、ここでは第4受信アンテナRx4の位置、に取り付けられる。回転軸18からの第1送信アンテナTx1又は第2送信アンテナTx2までの距離は、アンテナパネルに含まれるすべての受信アンテナRx1-Rx7の回転軸18からの距離のいずれよりも長い。
回転軸18は、図示しないモータに接続される。モータは回転軸18を介してアンテナパネル10を断続的に、例えば、5°づつ回転する。すなわち、アンテナパネル10はアレイアンテナの長さ方向の中点を中心としてパネル面で回転する。断続回転の角度は、5°に限らず、自由に設定することができる。
【0029】
アンテナパネル10の初期位置(回転角度が0°)の時、送信アンテナTx1から送信パルスが放出され、受信アンテナRx1-Rx7の受信信号が合成開口処理されることにより、仮想アレイアンテナ16の半分を構成する仮想アンテナv21-v27の受信信号が得られる。次に、送信アンテナTx2から送信パルスが放出され、受信アンテナRx1-Rx7の受信信号が合成開口処理されることにより、仮想アレイアンテナ16の残りの半分を構成する仮想アンテナv37-v31の受信信号が得られる。
【0030】
アンテナパネル10が回転開始し、5°回転すると、アンテナパネル10の回転は一時停止する。この時も、送信アンテナTx1と送信アンテナTx2から送信パルスが順次放出され、受信アンテナRx1-Rx7の受信信号が合成開口処理されることにより、仮想アレイアンテナ16を構成する仮想アンテナv21-v27とv37-v31の受信信号が得られる。
【0031】
以下、同様に、モータはアンテナパネル10が5°回転する毎に、アンテナパネル10の回転は一時停止し、送信アンテナTx1と送信アンテナTx2から送信パルスが順次放出され、受信アンテナRx1-Rx7の受信信号が合成開口処理されることにより、仮想アレイアンテナ16を構成する仮想アンテナv21-v27とv37-v31の受信信号が得られる。
【0032】
このように1波長間隔の7個の受信アンテナRx1-Rx7を含むアンテナパネル10が基板11上のアレイアンテナの長さ方向の中点を回転中心として180°回転し、一定角度回転する毎に、送信パルスが送受信され合成開口処理が行われると、円形の合成開口を有する2次元仮想アレイアンテナが構成される。
【0033】
図5は、2次元仮想アレイアンテナの一例を示す。
図5に示す2次元仮想アレイアンテナは、1/2波長間隔の7重の同心円の360°の全円周上に一定間隔で配置された仮想アンテナからなる。仮想アンテナの円周方向の間隔は、モータによるアンテナパネル10の断続回転の1回の回転角度に応じる。
図5のような仮想アンテナアレイを用いて送信パルスを送受信することにより、送信パルスの照射エリアのイメージングが可能である。
【0034】
図6、
図7、
図8は、アンテナパネル10の配置例を示す。検査装置は、例えば対象者が危険物を隠し持っているか否かを判定する。検査装置の一例は、空港、駅、ショッピングモール、コンサートホール、展示会場等の不特定多数の人が集まる施設で拳銃、爆薬等の危険物を所持する人を検出するスクリーニングシステムがある。人は歩行するので、検査エリアに長時間滞在しないことがあり、歩行中の対象者が所持する危険物を短時間で正確に検出することが望まれている。
【0035】
対象者に送信パルスを放出すると、電波の伝搬路上に存在する物体で電波は反射される。ある距離で反射された電波の反射強度を測定することにより、その距離に存在する物体が人体であるか、又は拳銃、爆薬等の危険物であるかを判定できる。
【0036】
図6は、対象者を側方から検査する検査装置におけるアンテナパネル10の配置例を示す。対象者58の左右方向をX軸方向とし、対象者58の上下方向をY軸方向とし、対象者58の歩行方向をZ軸方向とする。検査エリアを通過する際、歩行者は危険物を所持しているか否か検査される。
【0037】
不特定多数の人が通過するエリアが検査エリアとされる。検査エリアの側面の壁52にアンテナパネル10とモータ(不図示)が配置される。あるいは、検査エリアの側面に検査用のゲートが設けられ、そのゲートにアンテナパネル10とモータが配置されてもよい。さらに、アンテナパネル10とモータは検査エリアの片側の側面に限らず、検査エリアの両側面に配置されてもよい。
【0038】
アンテナパネル10の基板面は、Y-Z平面に位置する。アンテナパネル10の回転軸18の方向は、X軸方向である。このため、アンテナパネル10は、Y-Z平面、すなわち対象者58の側面で回転する。アンテナパネル10が対象者58の側面で回転することにより構成される2次元仮想アレイアンテナの受信信号により、X軸方向のある距離に位置するY-Z平面の反射物体の2次元イメージング、又はX軸方向の複数の距離に位置するY-Z平面の反射物体の複数の2次元画像を合成して3次元イメージングを行うことができる。
【0039】
検査エリアに常時対象者が存在しない可能性が高い場合は、アンテナパネル10は常時回転する必要はない。このような場合には、検査エリアに対象者が存在するタイミングのみ、アンテナパネル10を回転し、送信パルスを送受信してもよい。そのため、検査エリアへの対象者58の侵入を検出するセンサを設けてもよい。センサの例は、超音波センサ、赤外線センサ等である。センサの代わりに、カメラを用いてもよい。すなわち、検査エリアを撮影するように壁52にカメラ56を設け、撮影画像を画像処理して人物を検出することにより、検査エリアへの対象者の侵入を検出してもよい。
【0040】
図7は、対象者を前方から検査する検査装置におけるアンテナパネル10の配置例を示す。検査エリアの前方にアンテナパネル10が配置される。あるいは、検査エリアの前方に検査用のゲートが設けられ、そのゲートにアンテナパネル10が配置されてもよい。さらに、アンテナパネル10は検査エリアの前方に限らず、検査エリアの前方と後方に配置されてもよい。
【0041】
アンテナパネル10の基板面は、X-Y平面に位置する。アンテナパネル10の回転軸18の方向は、Z軸方向である。このため、アンテナパネル10は、X-Y平面、すなわち対象者58の前面で回転する。アンテナパネル10が対象者58の前面で回転することにより構成される2次元仮想アレイアンテナの受信信号により、Z軸方向のある距離に位置するX-Y平面の反射物体の2次元イメージング、又はZ軸方向の複数の距離に位置するX-Y平面の反射
物体の複数の2次元画像を合成して3次元イメージングを行うことができる。
【0042】
図8は、対象者を下方から検査する検査装置におけるアンテナパネル10の配置例を示す。この検査装置は、対象者58が靴の中に隠している危険物を検出する。検査エリアの床下にアンテナパネル10が配置される。
【0043】
アンテナパネル10の基板面は、X-Z平面に位置する。アンテナパネル10の回転軸18の方向は、Y軸方向である。このため、アンテナパネル10は、X-Z平面、すなわち対象者58の歩行面で回転する。アンテナパネル10が対象者58の歩行面で回転することにより構成される2次元仮想アレイアンテナの受信信号により、Y軸方向のある距離に位置するX-Z平面の反射物体の2次元イメージング、又はY軸方向の複数の距離に位置するX-Z平面の反射物体の複数の2次元画像を合成して3次元イメージングを行うことができる。
【0044】
図9は、第1実施形態による検査装置の電気的構成の一例を示すブロック図である。検査装置は、アンテナパネル102(
図1等に示したアンテナパネル10と等価である)、回転装置104、カメラ106(
図6等に示したカメラ56と等価である)、ディスプレイ108、スピーカ110、通信装置112、CPU114、ROM116、及びRAM118を含む。アンテナパネル102、回転装置104、カメラ106、ディスプレイ108、スピーカ110、通信装置112、CPU114、ROM116、及びRAM118は、バスライン130に接続される。
【0045】
アンテナパネル102は、検査エリアに電波を放出する送信アンテナ122(
図1等に示した送信アンテナTx1,Tx2と等価である)、検査エリアからの反射波を受信する受信アンテナ124(
図1等に示した受信アンテナRx1-Rx7と等価である)、送信回路126、及び受信回路128を含む。送信回路126は、送信パルスを放出させるための高周波信号を送信アンテナ122に供給する。受信回路128は、受信アンテナ124で受信した反射波に応じた受信信号を出力する。
【0046】
回転装置104は、アンテナパネル102を回転するモータを含む。アンテナパネル102の回転軸(
図9では図示されないが、
図4等に示される回転軸18と等価である)は回転装置104に取り付けられる。
【0047】
カメラ106は、検査エリアへの対象者の侵入を検出するために、検査エリアを撮影する。カメラ106は、撮影画像を画像処理して人物を検出することにより、検査エリアへの対象者の侵入を検出する信号処理も行ってもよい。カメラの代わりに検査エリアへの対象者の侵入を検出するセンサを用いてもよい。
【0048】
ディスプレイ108は、検査結果を表示する。検出結果は、カメラ106が撮影したカメラ画像に重畳して表示されてもよい。スピーカ110は、検査結果に応じてアラーム音等を出力する。
【0049】
通信装置112は、他の機器とデータを通信する。通信の例は、有線LAN、無線LANN、又は近距離無線通信(ブルートゥース(登録商標)等)がある。
【0050】
ROM116は、CPU114の動作プログラムを記憶する。
【0051】
RAM118は、CPU114の動作中のデータ等を一時的に格納するワーキングメモリとして機能する。
【0052】
CPU114は、動作プログラムを実行することにより、合成開口処理部132、危険物判定処理部134、画像合成処理部136として機能する。CPU114は、カメラ106の撮影画像を画像処理して人物を検出することにより、検査エリアへの対象者の侵入を検出する信号処理部を備えてもよい。
【0053】
合成開口処理部132は、受信アンテナ124の受信信号を受信し、受信信号を合成開口処理して、仮想アンテナアレイを構成する。
【0054】
危険物判定処理部134は、合成開口処理部132の出力から物体による電波の反射強度を求める。人間の皮膚における電波の反射強度と金属や爆薬等の危険物における電波の反射強度とは異なるので、危険物判定処理部134は、電波の反射強度に基づき、対象者が危険物を所持しているか否かを判定する。危険物判定処理部134は、反射物体の情報である判定結果を出力する。さらに、危険物判定処理部134は、電波の反射強度に基づき、危険物のイメージングを行ってもよい。
【0055】
危険物判定処理部134が危険物のイメージングを行う場合は、画像合成処理部136は、カメラ106が撮影した対象者の画像から対象者の輪郭を抽出し、抽出した輪郭画像に、危険物のイメージング結果を重畳した合成画像を生成してもよい。危険物判定処理部134が危険物のイメージングを行わない場合は、画像合成処理部136は省かれる。
【0056】
図示しないが、検査装置は、設定情報や検査開始/終了等を指示入力するキーボードを備えてもよい。
【0057】
検査装置は、CPU114、カメラ106、ディスプレイ108、スピーカ110等を含まず、検査装置は、アンテナパネル102と回転装置104のみを含むように構成されてもよい。その場合、CPU114、カメラ106、ディスプレイ108、スピーカ110等は検査装置とは別の装置に含まれ、アンテナパネル102からの受信信号が通信装置112により別の装置に送られ、CPU114に入力されてもよい。別の装置は、クラウドサーバとして構成されてもよい。
【0058】
検査装置による検査の一例を説明する。
図10は、検査装置のCPU114の処理の一例を示すフローチャートである。
【0059】
CPU114は、カメラ106を動作させる(ステップ142)。カメラ106は、検査エリアを撮影する。ここでは、カメラ106の撮影画像を画像処理して人物を検出することにより検査エリアへの対象者の侵入を検出する信号処理部は、カメラ106ではなく、CPU114が備えるとする。そのため、ステップ142で、CPU114は、カメラから出力されたカメラ信号をRAM118に書きこむ。
【0060】
CPU114は、カメラ画像を画像処理して、カメラ画像は人物を含むか否かを判定する(ステップ144)
カメラ画像は人物を含まない場合(ステップ144のNo)、CPU114は、判定ステップ144を繰り返し実行する。
【0061】
カメラ画像は人物を含む場合(ステップ144のYes)、検査エリアに対象者が侵入したことを意味する。そのため、CPU114は、回転装置104を駆動して、アンテナパネル102を一定角度、例えば5°だけ回転させる(ステップ146)。アンテナパネル102が一定角度だけ回転すると、アンテナパネル102の回転は一時停止する。
【0062】
アンテナパネル102の回転の一時停止中に、CPU114は、送信アンテナから送信パルスを放出させ(ステップ148)、受信アンテナからの受信信号を取り込む(ステップ150)。送信アンテナが複数、例えば2個ある場合は、CPU114は、ステップ148、ステップ150を送信アンテナの数だけ繰り返す。これにより、CPU114は、送信アンテナTx1から送信パルスを放出させ(ステップ148)、その時の受信アンテナRx1-Rx7の受信信号を取り込み(ステップ150)、送信アンテナTx2から送信パルスを放出させ(ステップ148)、その時の受信アンテナRx1-Rx7の受信信号を取り込む(ステップ150)。
【0063】
図5に示すような2次元仮想アレイアンテナを構成するためには、アンテナパネル102を180°回転する必要がある。そのため、CPU114は、アンテナパネル102が180°回転したかを判定する(ステップ152)。
【0064】
アンテナパネル102の回転角度が180°に達していない場合(ステップ152のNo)、CPU114は、ステップ146の回転処理を再び実行する。
【0065】
アンテナパネル102が180°回転した場合(ステップ152のYes)、2次元仮想アレイアンテナを構成する全ての仮想アンテナの受信信号を得るためのアンテナパネル102の受信信号が取り込まれたことになるので、CPU114は、アンテナパネル102の受信信号を合成開口処理する(ステップ154)。
【0066】
CPU114は、合成開口処理の結果、アンテナパネル102からの各距離における電波の反射強度を求めることができ、検査エリアにおけるアンテナパネル102と平行な面における物体をイメージングするレーダ画像を得ることができる。
【0067】
CPU114は、合成開口処理の結果に基づいて、危険物判定処理を行う(ステップ156)。CPU114は、検査エリア内に存在し、電波を反射した物体が人体の一部であるか、又は危険物であるかを、物体の反射強度に基づいて判定できる。CPU114は、危険物が検査エリアに存在することを判定した場合、スピーカ110からアラーム音を出力させてもよい。
【0068】
CPU114は、カメラ106で撮影した対象者のカメラ画像と、合成開口処理により求めたレーダ画像を、画像合成処理により合成し、対象者の輪郭に危険物を表示する合成画像をディスプレイ108で表示させる(ステップ158)。
【0069】
これにより、検査者は、ディスプレイ108の画面を観察することにより対象者が危険物を所持しているかを判断することができる。
【0070】
図11は、ステップ158における合成画像の表示例を示す。
図11(a)は、
図6に示すように、対象者を側方から検査する場合の表示例を示す。
図11(b)は、
図7に示すように、対象者を前方から検査する場合の表示例を示す。合成画像は、拳銃等の危険物画像160を含む。
【0071】
第1実施形態によれば、アレイアンテナを、アレイアンテナを含む平面で回転し、受信信号を合成開口処理することにより、実際のアンテナ数より多い数の仮想アンテナを含む仮想アレイアンテナを構成することができる。実際のアレイアンテナのアンテナ間隔は1/2波長よりも長いので、アンテナ間の干渉が生じることがない。また、アレイアンテナは1回転すると、初期位置に戻るので、スキャン後、アレイアンテナを逆方向に回転して初期位置に復帰させる必要が無い。このため、歩行中の対象者を立ち止まらせることなく、連続して検査でき、短時間で検査を実行できる。
【0072】
以下、第1実施形態の変形例を説明する。
(第1変形例)
図6-
図8に示したアレイアンテナの配置例は、施設に固定される検査装置の配置例である。第1変形例として、携帯可能な検査装置を説明する。
【0073】
図12は、可動の携帯型のハンドヘルドスキャナ174を示す。ハンドヘルドスキャナ174の構成は、
図9に示した検査装置の構成と同様であるので、図示は省略する。ハンドヘルドスキャナ174は、
図9に示される検査装置の要素の中のディスプレイ108以外の要素を含む。
図9では、カメラ106は、検査装置の外部の壁等に設けられているが、ハンドヘルドスキャナ174はカメラ106も内蔵する。さらに、ハンドヘルドスキャナ174は、検査者172がスキャンの開始/終了をハンドヘルドスキャナ174に指示するための開始/終了スイッチを備える。
【0074】
図9に示されるディスプレイ108は外部装置180に含まれる。外部装置180も
図9に示される通信装置112と同様な通信装置を含み、ハンドヘルドスキャナ174と無線、又は有線により通信する。外部装置180は、対象者の輪郭に危険物を表示する合成画像を表示する。
【0075】
対象者170の近傍に立つ検査者172は、アンテナパネル102を対象者170に向けてハンドヘルドスキャナ174を持つ。この状態で、アンテナパネル102が回転し、対象者170に送信パルスが照射されることにより、対象者170のイメージングが行われる。
【0076】
ハンドヘルドスキャナ174が小型の場合、十分な範囲のイメージングが行えない場合がある。この場合は、検査者172は、手を上下させてイメージング範囲を変えることにより。ハンドヘルドスキャナ174で対象者170を上下方向にスキャンしてもよい。
【0077】
スキャン方向は、上下方向に限られない。
図13は、対象者170を中心として周囲の円方向にスキャンする例を示す。検査者172は、アンテナパネル102が対象者170に向いた状態でハンドヘルドスキャナ174を持ったまま、対象者170の周囲を歩いて、周囲の各方向からイメージングを行ってもよい。
【0078】
外部装置180は、合成画像にハンドヘルドスキャナ174によるイメージング位置を示すインジケータマーク182を表示してもよい。検査者172は、インジケータマーク182によりハンドヘルドスキャナ174の位置を確認でき、所望の範囲をイメージングできるようにハンドヘルドスキャナ174の位置を調整することができる。
【0079】
図14は、第1変形例の検査装置による検査の一例を示すフローチャートである。
【0080】
開始スイッチが押されると、ハンドヘルドスキャナ174が含むCPU114は、回転装置104を駆動して、アンテナパネル102を一定角度、例えば5°だけ回転させる(ステップ204)。
【0081】
CPU114は、送信アンテナから送信パルスを放出させ(ステップ206)、受信アンテナからの受信信号を取り込む(ステップ208)。
【0082】
CPU114は、アンテナパネル102が180°回転したかを判定する(ステップ210)。
【0083】
アンテナパネル102の回転角度が180°に達していない場合(ステップ210のNo)、CPU114は、ステップ204の回転処理を再び実行する。
【0084】
アンテナパネル102が180°回転した場合(ステップ210のYes)、CPU114は、アンテナパネル102の受信信号を合成開口処理する(ステップ212)。
【0085】
CPU114は、合成開口処理の結果に基づいて、危険物判定処理を行う(ステップ214)。
【0086】
CPU114は、スキャンの終了が指示されたか、すなわち終了スイッチが押されたかを判定する(ステップ216)。
【0087】
スキャンの終了が指示されない場合(ステップ216のNo)、CPU114は、ステップ204の回転処理を再び実行する。
【0088】
スキャンの終了が指示された場合(ステップ216のYes)、カメラ106で撮影した対象者のカメラ画像の現在の検査位置に合成開口処理により求めたレーダ画像を重畳した合成画像を外部装置180に送信し、外部装置180で表示させる(ステップ218)。
【0089】
これにより、検査者は、外部装置180の画面を観察することにより対象者が危険物を所持しているかを判断することができる。
【0090】
(第2変形例)
第1実施形態のアンテナパネルは、アレイアンテナの中心が回転中心である。そのため、アンテナパネルが180°回転することにより、
図5に示すように、360°全円周上に位置する円形の合成開口を有する仮想アンテナを生成できる。
【0091】
第2変形例として、アレイアンテナの端部を回転中心とするアンテナパネルを説明する。
【0092】
図15は、第2変形例によるアンテナパネル20の一例の平面図を示す。
【0093】
アンテナパネル20は、基板21上に配置された直線状のアレイアンテナを含む。
図15は、直線状の基板21を示すが、基板21の形状は、必ずしもアレイアンテナの形状と対応している必要はない。基板21上に回路モジュール(図示省略)が配置されていてもよい。アレイアンテナと回路モジュールが配置される基板21の形状は、矩形状であってもよい。アレイアンテナは、少なくとも1個(ここでは2個)の送信アンテナTx1、Tx2と少なくとも1個(ここでは4個)の受信アンテナRx1、Rx2、Rx3、Rx4を含む。
【0094】
第1実施形態と同様に、送信アンテナTx1、受信アンテナRx1-Rx4、及び送信アンテナTx2は、この順番に1本のラインに沿って等間隔に配置される。すなわち、送信アンテナTx1、Tx2は、受信アンテナRx1-Rx4の両外側にそれぞれ配置される。送信アンテナTx1、受信アンテナRx1-Rx4、及び送信アンテナTx2の中の隣接する2個のアンテナの間隔は、送受信される電波の1波長の長さである。
【0095】
送信アンテナTx1が送信パルスを放出した時の受信アンテナRx1-Rx4の受信信号が合成開口処理されると、
図15に示すように、送信アンテナTx1と受信アンテナRx1-Rx4の中点にそれぞれ位置する仮想アンテナv1-v4を含む仮想アレイアンテナ22が構成される。
【0096】
送信アンテナTx2が送信パルスを放出した時の受信アンテナRx1-Rx4の受信信号が合成開口処理されると、
図16に示すように、送信アンテナTx2と受信アンテナRx1-Rx4の中点にそれぞれ位置する仮想アンテナv14-v11を含む仮想アレイアンテナ24が構成される。
【0097】
仮想アレイアンテナ22と仮想アレイアンテナ24の仮想アンテナの間隔は、基板21上のアレイアンテナのアンテナ間隔の半分である。すなわち、仮想アンテナv1-v4の中の隣接する2つの仮想アンテナの間隔と、仮想アンテナv14-v11の中の隣接する2つの仮想アンテナの間隔は、送受信される電波の波長の1/2の長さである。
【0098】
図17は、第1及び送信アンテナTx1、Tx2と受信アンテナRx1-Rx7の各ペアが送信パルスの送受信を行った場合に構成される仮想アレイアンテナ26を示す。仮想アレイアンテナ26は、送信アンテナTx1の送信パルスを受信した受信アンテナRx1-Rx4の受信信号を合成開口処理したことにより得られる仮想アンテナv21-v24(
図15の仮想アンテナv1-v4と等価)と、送信アンテナTx2の送信パルスを受信した受信アンテナRx1-Rx4の受信信号を合成開口処理したことにより得られる仮想アンテナv34-v31(
図16の仮想アンテナv14-v11と等価)を含む。
【0099】
仮想アンテナv24と仮想アンテナv34の間隔は、送受信される電波の1波長の長さである。
【0100】
図18は、第2変形例のアンテナパネル20の一例の斜視図を示す。基板21の表面には、送信アンテナTx1、Tx2と受信アンテナRx1-Rx4が配置される。基板21の裏面には、基板21に直交する回転軸28が取り付けられている。回転軸28は、基板21上のアレイアンテナの一端に位置する送信アンテナTx1又は送信アンテナTx2(ここでは送信アンテナTx2)の位置に取り付けられる。回転軸28からの第1送信アンテナTx1までの距離は、アンテナパネルに含まれるすべての受信アンテナRx1-Rx4の回転軸18からの距離のいずれよりも短い。モータは回転軸28を介してアンテナパネル20を断続的に、例えば、5°づつ回転する。すなわち、アンテナパネル20はアレイアンテナの端部を中心として回転する。
【0101】
アンテナパネル20の回転角度が0°の時、送信アンテナTx1から送信パルスが放出され、受信アンテナRx1-Rx4の受信信号が合成開口処理されることにより、仮想アレイアンテナ26の半分を構成する仮想アンテナv21-v24の受信信号が得られる。次に、送信アンテナTx2から送信パルスが放出され、受信アンテナRx1-Rx4の受信信号が合成開口処理されることにより、仮想アレイアンテナ26の残りの半分を構成する仮想アンテナv34-v31の受信信号が得られる。
【0102】
アンテナパネル20が5°回転すると、アンテナパネル20の回転は一時停止する。この時も、送信アンテナTx1と送信アンテナTx2から送信パルスが順次放出され、受信アンテナRx1-Rx4の受信信号が合成開口処理されることにより、仮想アレイアンテナ26を構成する仮想アンテナv21-v24とv34-v31の受信信号が得られる。
【0103】
以下、同様に、モータはアンテナパネル20を5°回転する毎に、アンテナパネル20の回転は一時停止し、送信アンテナTx1と送信アンテナTx2から送信パルスが順次放出され、受信アンテナRx1-Rx4の受信信号が合成開口処理されることにより、仮想アレイアンテナ26を構成する仮想アンテナv21-v24とv34-v31の受信信号が得られる。
【0104】
このように1波長間隔の4個の受信アンテナRx1-Rx4を含むアンテナパネル20が長さ方向の端部を回転中心として360°回転し、一定角度回転する毎に、送信パルスが送受信され合成開口処理が行われると、円形の合成開口を有する2次元仮想アレイアンテナが構成される。
【0105】
図19は、2次元仮想アレイアンテナの一例を示す。
図19に示す2次元仮想アレイアンテナは、1/2波長間隔の4重の同心円の360°の全円周上と、1/2波長間隔の4重の同心円の360°の全円周上に一定間隔で配置された仮想アンテナからなる。内側の4重の同心円の最外側の円と、外側の4重の同心円の最内側の円との間隔は1波長である。仮想アンテナの円周方向の間隔は、モータによるアンテナパネル20の断続回転の1回の回転角度に応じる。
【0106】
第1実施形態のアンテナパネル10は、180°回転すると、
図5のような2次元仮想アレイアンテナを構成することができる。第2変形例のアンテナパネルは、その倍の360°回転しないと、
図19のような2次元仮想アレイアンテナを構成することができない。しかし、第1実施形態のアンテナパネル10は、円形の合成開口を有する仮想アレイアンテナの直径に対応する7個の受信アンテナを必要とするが、第2変形例のアンテナパネルは、円形の合成開口を有する仮想アレイアンテナの半径に対応する4個の受信アンテナしか必要としない。そのため、第2変形例は、回転に要する時間は係るが、アンテナ数が少ないので、コストが安い。
【0107】
(第3変形例)
上述のアンテナパネルは、180°又は360°の回転により、同心円の360°の全円周上に仮想アンテナが一定間隔で配置されてなる2次元仮想アレイアンテナを構成する。次に、この回転角度を180°より小さくできる第3、第4変形例を説明する。
【0108】
図20(a)は、第3変形例によるアンテナパネル222の一例の平面図を示す。
【0109】
アンテナパネル222は、基板223に配置された十字形状のアレイアンテナを含む。
図20は、十字形状の基板223を示すが、基板223の形状は、必ずしもアレイアンテナの形状と対応している必要はない。十字形状のアレイアンテナは、角度が90°ずれる4個のアーム222a、222b、222c、222dを含む。第1アーム222aは、2個の送信アンテナTx1、Tx2と4個の受信アンテナRx1、Rx2、Rx3、Rx4を含む。第2アーム222bは、2個の送信アンテナTx1、Tx3と4個の受信アンテナRx11、Rx12、Rx13、Rx14を含む。第3アーム222cは、2個の送信アンテナTx1、Tx4と4個の受信アンテナRx21、Rx22、Rx23、Rx24を含む。第4アーム222dは、2個の送信アンテナTx1、Tx5と4個の受信アンテナRx31、Rx32、Rx33、Rx34を含む。
【0110】
各アーム222a-222dにおいて、2個の送信アンテナは、4個の受信アンテナを挟むように配置されている。各アーム222a-222dにおいて、十字形状のアレイアンテナの中心に位置する1個の送信アンテナTx1は共通となっている。
【0111】
各アーム222a-222dにおいて、2個の送信アンテナと2個の受信アンテナの中の隣接する2個のアンテナの間隔は、送受信される電波の1波長の長さである。そのため、各アーム222a-222dにおいて、4個の受信アンテナの受信信号は、合成開口処理されると、2個の送信アンテナと4個の受信アンテナの中点にそれぞれ位置する仮想アンテナの受信信号と等価となる。
【0112】
例えば、第1アーム222aにおいて、送信アンテナTx1から放出された送信パルスの反射波を受信する受信アンテナRx1-Rx4の受信信号が合成開口処理されると、仮想アンテナv1-v4の受信信号が得られる。次に、送信アンテナTx2から放出された送信パルスの反射信号を受信する受信アンテナRx1-Rx4の受信信号が合成開口処理されると、仮想アンテナv5-v8の受信信号が得られる。
【0113】
回転軸は、十字形状のアレイアンテナの中心、すなわち送信アンテナTx1の位置、に取り付けられる。
【0114】
アンテナパネル222が90°回転すると、
図20(b)に示すように、
図19に示す第2変形例と同様に、8重の同心円の360°の全円周上に仮想アンテナが一定間隔で配置されてなる2次元仮想アレイアンテナが構成される。外側の4重の同心円の間隔は1/2波長である。内側の4重の同心円の間隔は1/2波長間隔である。外側の同心円の最内周の円と内側の同心円の最外周の円の間隔は1波長である。
【0115】
360°の全円周上に仮想アンテナが一定間隔で配置されてなる2次元仮想アレイアンテナを構成するためには、第2変形例では、直線状のアンテナパネル20を360°回転する必要があった。第3変形例では、十字形状のアレイアンテナの中心でアンテナパネル222が回転するので、90°回転するだけで、360°の全円周上に仮想アンテナが一定間隔で配置されてなる2次元仮想アレイアンテナを構成することができる。第3変形例は、第2変形例に比べて回転に要する時間を1/4に短縮できる。なお、第3変形例は、12個の受信アンテナを必要とする。第2変形例は、4個の受信アンテナで足り、コストは安い。
【0116】
(第4変形例)
図21(a)は、第4変形例によるアンテナパネル224の一例の平面図を示す。
【0117】
アンテナパネル224は、基板225に配置された三又形状又はY字形状(以下、Y字形状と称される)のアレイアンテナを含む。
図21は、Y字形状の基板225を示すが、基板225の形状は、必ずしもアレイアンテナの形状と対応している必要はない。Y字形状のアレイアンテナは、角度が120°ずれる3個のアーム224a、224b、224cを含む。第1アーム224aは、2個の送信アンテナTx1、Tx2と4個の受信アンテナRx1、Rx2、Rx3、Rx4を含む。第2アーム224bは、2個の送信アンテナTx1、Tx3と4個の受信アンテナRx11、Rx12、Rx13、Rx14を含む。第3アーム224cは、2個の送信アンテナTx1、Tx4と4個の受信アンテナRx21、Rx22、Rx23、Rx24を含む。
【0118】
各アーム224a-224cにおいて、2個の送信アンテナは、4個の受信アンテナを挟むように配置されている。各アーム224a-224cにおいて、Y字形状のアレイアンテナの中心に位置する1個の送信アンテナTx1は共通となっている。
【0119】
各アーム224a-224cにおいて、2個の送信アンテナと2個の受信アンテナの中の隣接する2個のアンテナの間隔は、送受信される電波の1波長の長さである。そのため、各アーム224a-224cにおいて、4個の受信アンテナの受信信号は、2個の送信アンテナと受信アンテナの中点にそれぞれ位置する仮想アンテナの受信信号と等価となる。
【0120】
例えば、第1アーム224aにおいて、送信アンテナTx1から放出された送信パルスを受信する受信アンテナRx1-Rx4の受信信号が合成開口処理されると、仮想アンテナv1-v4の受信信号が得られる。次に、送信アンテナTx2から放出された送信パルスの反射信号を受信する受信アンテナRx1-Rx4の受信信号が合成開口処理されると、仮想アンテナv5-v8の受信信号が得られる。
【0121】
回転軸は、Y字形状のアレイアンテナの中心、すなわち送信アンテナTx1の位置、に取り付けられる。
【0122】
アンテナパネル224が120°回転すると、
図21(b)に示すように、
図20(b)に示す第3変形例と同様に、8重の同心円の360°の全円周上に仮想アンテナが一定間隔で配置されてなる2次元仮想アレイアンテナが構成される。外側の4重の同心円の間隔は1/2波長である。内側の4重の同心円の間隔は1/2波長間隔である。外側の同心円の最内周の円と内側の同心円の最外周の円の間隔は1波長である。
【0123】
第3変形例と第4変形例を比較する。360°の全円周上に仮想アンテナが一定間隔で配置されてなる2次元仮想アレイアンテナを構成するためには、第3変形例では、十字形状のアレイアンテナを含むアンテナパネル222を90°回転する。第4変形例では、Y字形状のアレイアンテナの中心でアンテナパネル224を120°回転する。このように、回転角度は第3変形例の方が第4変形例よりも小さい。しかし、仮想アレイアンテナの数が等しい(8個)条件で、第4変形例のアレイアンテナを構成するアンテナ数(16個)は、第3変形例のアレイアンテナを構成するアンテナ数(21個)より少ない。
【0124】
(第5変形例)
上述のアンテナパネルは、2個の送信アンテナを用いている。次に、1個の送信アンテナを用いる第5、第6変形例を説明する。
【0125】
図22(a)は、第5変形例によるアンテナパネル226の一例の平面図を示す。
【0126】
アンテナパネル226は、基板227上に配置された直線状のアレイアンテナを含む。
図22は、直線状の基板227を示すが、基板227の形状は、必ずしもアレイアンテナの形状と対応している必要はない。アレイアンテナは、1個の送信アンテナTx1と少なくとも1個(ここでは7個)の受信アンテナRx1、Rx2、Rx3、Rx4、Rx5、Rx6、Rx7を含む。基板227上に回路モジュール(図示省略)が配置されていてもよい。
【0127】
送信アンテナTx1と受信アンテナRx1-Rx7は、1本のラインに沿って等間隔で配置される。アンテナ間隔は、送受信される電波の1波長の長さである。受信アンテナRx1-Rx7は、受信アレイアンテナを構成する。送信アンテナTx1は、受信アレイアンテナの一端の受信アンテナ(ここでは、Rx1)の外側に配置される。
【0128】
送信アンテナTx1が送信パルスを放出した時の受信アンテナRx1-Rx7の受信信号が合成開口処理されると、送信アンテナTx1と受信アンテナRx1-Rx7の中点にそれぞれ位置する仮想アンテナv1-v7を含む仮想アレイアンテナ228が構成される。仮想アンテナv1-v7の中の隣接する2つの仮想アンテナの間隔は、送受信される電波の波長の1/2の長さである。
【0129】
回転軸は、基板227上のアレイアンテナの中心点、ここでは受信アンテナRx3とRx4の中点の位置、に取り付けられる。
【0130】
アンテナパネル226が360°回転すると、
図22(b)に示すように、半波長間隔の6重の同心円の360°の全円周上に仮想アンテナが一定間隔で配置されてなる2次元仮想アレイアンテナが構成される。
【0131】
(第6変形例)
図23(a)は、第6変形例によるアンテナパネル232の一例の平面図を示す。
【0132】
アンテナパネル232は、基板233に配置された十字形状のアレイアンテナを含む。
図23は、十字形状の基板233を示すが、基板233の形状は、必ずしもアレイアンテナの形状と対応している必要はない。十字形状のアレイアンテナは、4個のアーム232a、232b、232c、232dを含む。第1アーム232aは、1個の送信アンテナTxと5個の受信アンテナRx1、Rx2、Rx3、Rx4、Rx5を含む。第2アーム232bは、1個の送信アンテナTxと5個の受信アンテナRx11、Rx12、Rx13、Rx14、Rx15を含む。第3アーム232cは、1個の送信アンテナTxと5個の受信アンテナRx21、Rx22、Rx23、Rx24、Rx25を含む。第4アーム232dは、1個の送信アンテナTxと5個の受信アンテナRx31、Rx32、Rx33、Rx34、Rx35を含む。
【0133】
各アーム232a-232dにおいて、送信アンテナTxの外側に5個の受信アンテナが配置されている。各アーム232a-232dにおいて、十字形状のアレイアンテナの中心に位置する1個の送信アンテナTxは共通となっている。
【0134】
各アーム232a-232dにおいて、送信アンテナと5個の受信アンテナの中の隣接する2個のアンテナの間隔は、送受信される電波の1波長の長さである。そのため、各アーム232a-232dにおいて、5個の受信アンテナの受信信号は、合成開口処理されると、送信アンテナと5個の受信アンテナの中点にそれぞれ位置する仮想アンテナの受信信号と等価となる。
【0135】
例えば、第1アーム232aにおいて、送信アンテナTx1から放出された送信パルスの反射波を受信する受信アンテナRx1-Rx5の受信信号が合成開口処理されると、仮想アンテナv1-v5の受信信号が得られる。
【0136】
回転軸は、十字形状のアレイアンテナの中心、すなわち送信アンテナTxの位置、に取り付けられる。
【0137】
アンテナパネル232が90°回転すると、
図23(b)に示すように、1/2波長間隔の5重の同心円の360°の全円周上に仮想アンテナが一定間隔で配置されてなる2次元仮想アレイアンテナが構成される。
【0138】
(第7変形例)
図24は、第7変形例によるアンテナパネルの一例の平面図を示す。第1実施形態では、送信アンテナTx1、受信アンテナRx1-Rx7、及び送信アンテナTx2は、基板11上の1本のラインに沿って配置される。第7変形例では、送信アンテナTx1、受信アンテナRx1-Rx7、送信アンテナTx2は、複数のラインに沿って配置される。
【0139】
図24(a)に示すアンテナパネル10Aでは、基板上に第1ラインと第2ラインが定義される。第1ラインと第2ラインは平行である。送信アンテナTx1、Tx2が第1ラインに沿って配置され、受信アンテナRx1-Rx7が第2ラインに沿って配置される。
【0140】
図24(b)に示すアンテナパネル10Bでは、基板上に第1ラインと第2ラインと第3ラインが定義される。第1ラインと第2ラインは平行であり、第2ラインと第3ラインは平行である。送信アンテナTx1が第1ライン上に配置され、受信アンテナRx1-Rx7が第2ラインに沿って配置され、送信アンテナTx2が第3ライン上に配置される。
【0141】
いずれの場合でも、回転軸は、受信アレイアンテナの中心、すなわち受信アンテナRx4の位置に固定される。
【0142】
(第8変形例)
図25は、第8変形例によるアンテナパネルの他の例の平面図を示す。上述のアンテナパネルでは、単一の基板上にアレイアンテナが配置されている。
図25に示す第8変形例では、送信アンテナTx1、受信アンテナRx1-Rx7、及び送信アンテナTx2は、異なる基板に配置される。
【0143】
図25(a)に示すアンテナパネル10Cでは、基板11上に直線状のサブ基板11A、11Bが配置される。受信アンテナRx1-Rx7がサブ基板11A上に配置され、送信アンテナTx1、Tx2がサブ基板11B上に配置される。受信アンテナRx1-Rx7は1本のラインに沿って等間隔に配置される。送信アンテナTx1、Tx2は1本のラインに沿って等間隔に配置される。受信アンテナRx1-Rx7が配置されるラインは送信アンテナTx1、Tx2が配置されるラインと平行である。
【0144】
図25(b)に示すアンテナパネル10Dでは、基板11上に、直線状のサブ基板11Cと、正方形状のサブ基板11D、11Eが配置される。基板11上に第1ラインと第2ラインと第3ラインが定義される。第1ラインと第2ラインは平行である。第2ラインと第3ラインは平行である。サブ基板11Dは、第1ライン上に配置され、サブ基板11Cは、第2ライン上に配置され、サブ基板11Eは、第3ライン上に配置される。すなわち、受信アンテナRx1-Rx7はサブ基板11C上の1本のラインに沿って配置され、送信アンテナTx1はサブ基板11Dに配置され、送信アンテナTx2はサブ基板11Eに配置される。すなわち、送信アンテナTx1が配置されるサブ基板11Dと送信アンテナTx2が配置されるサブ基板11Eは、受信アンテナRx1-Rx7が配置されるサブ基板11Cの両側で長さ方向の異なる位置に配置される。
【0145】
いずれの場合でも、回転軸は、受信アレイアンテナの中心、すなわち受信アンテナRx4の位置に固定される。
【0146】
上述した実施形態と変形例をさらに変形すること、及び実施形態と変形例を組み合わせることも可能である。
【0147】
例えば、複数の受信アンテナを設けることなく、1個の送信アンテナと1個の受信アンテナからアンテナパネルを構成してもよい。その場合、回転軸はアンテナパネルの端部に取り付けてもよいし、中心部に取り付けてもよい。
【0148】
上述のアンテナパネルで、送信アンテナと受信アンテナを入れ替えてもよい。例えば、第1実施形態のアンテナパネルは、2個の受信アンテナと、7個の送信アンテナを備えてもよい。
【0149】
仮想アレイアンテナの合成開口の形状は、円に限られない。例えば、仮想アレイアンテナの合成開口の形状は半円、扇型でもよい。例えば、第2変形例のアンテナパネル20を180°回転すると、半円形の合成開口を持つ仮想アレイアンテナが構成される。第2変形例のアンテナパネル20を90°回転すると、中心角が90°の扇型の合成開口を持つ仮想アレイアンテナが構成される。第1実施形態のアンテナパネル10を90°回転すると、
図26に示すように、中心角度が90°の扇型の2つの合成開口SA1、SA2を有する仮想アレイアンテナが構成される。第1の扇型の合成開口SA1は、0°から90°の角度範囲に位置し、第2の扇型の合成開口SA2は、180°から270°の角度範囲に位置する。
【0150】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0151】
10,102…アンテナパネル、11…基板、12…仮想アレイアンテナ、18…回転軸、104…回転装置、56,106…カメラ、114…CPU