(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-14
(45)【発行日】2024-06-24
(54)【発明の名称】軸筒及び筆記具
(51)【国際特許分類】
B43K 3/00 20060101AFI20240617BHJP
【FI】
B43K3/00 H
B43K3/00 Z
(21)【出願番号】P 2020217639
(22)【出願日】2020-12-25
【審査請求日】2023-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100187159
【氏名又は名称】前川 英明
(74)【代理人】
【識別番号】100196047
【氏名又は名称】柳本 陽征
(72)【発明者】
【氏名】木暮 正広
(72)【発明者】
【氏名】加藤 寛
【審査官】中澤 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】実開昭56-176880(JP,U)
【文献】特開2013-001011(JP,A)
【文献】特開2009-251678(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筆記具用の軸筒であって、
内筒と、
前記内筒の外側に配置された外筒と、
前記内筒と前記外筒との間に配置され、軸方向に配列された複数の中間部材と、を含み、
前記複数の中間部材の少なくとも1つは金属を含む、軸筒。
【請求項2】
前記複数の中間部材の少なくとも1つは、外面に少なくとも1つの溝を有する、請求項1に記載の軸筒。
【請求項3】
前記複数の中間部材を互いに入れ替えることにより、前記軸筒の重心位置を3通り以上に変更可能である、請求項1又は2に記載の軸筒。
【請求項4】
前軸と、前記前軸の後方に配置された後軸とを含み、
前記中間部材は、前記前軸及び前記後軸に配置されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の軸筒。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の軸筒を備えた、筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸筒及び筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、グリップ部分を外グリップと内グリップの2重構造にし、内グリップの外面に装飾を施して、意匠性を向上させた筆記具が知られている。特許文献1には、前軸と後軸とを含む軸筒を有する筆記具が開示されている。前軸は、小径の把持部を有しており、この把持部には内グリップが外嵌されている。内グリップの外側には、外グリップが配置されている。内グリップは、複数のグリップ体を含んでおり、各グリップ体の外面には、表示部が設けられている。この筆記具では、複数のグリップ体の外面で構成された表示部により、連続する1つの模様を表示することが可能であり、これにより意匠性が向上する利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
筆記具においては、筆記の快適性の向上が求められている。中でも、筆記具の重量、重心の位置等の重量に関する特性は、筆記の快適性に大きく寄与する。ここで、使用者が筆記具を用いて快適に筆記できるための重量に関する特性は、各使用者の好みに依存する。したがって、筆記具における重量に関する特性を各使用者の好みに応じて変更できることが望まれる。
【0005】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、各使用者の好みに応じて重量に関する特性を変更できる軸筒及び筆記具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による軸筒は、
筆記具用の軸筒であって、
内筒と、
前記内筒の外側に配置された外筒と、
前記内筒と前記外筒との間に配置され、軸方向に配列された複数の中間部材と、を含み、
前記複数の中間部材の少なくとも1つは金属を含む。
【0007】
本発明による軸筒において、
前記複数の中間部材の少なくとも1つは、外面に少なくとも1つの溝を有してもよい。
【0008】
本発明による軸筒において、
前記複数の中間部材を互いに入れ替えることにより、前記軸筒の重心位置を3通り以上に変更可能であってもよい。
【0009】
本発明による軸筒において、
前軸と、前記前軸の後方に配置された後軸とを含み、
前記中間部材は、前記前軸及び前記後軸に配置されてもよい。
【0010】
本発明による筆記具は、上述の軸筒を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、各使用者の好みに応じて重量に関する特性を変更できる軸筒及び筆記具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係る軸筒を備えた筆記具を示す図である。
【
図2】
図2は、
図1の筆記具の前軸を拡大して示す縦断面図である。
【
図3】
図3は、
図2のIII-III線に対応する横断面図である。
【
図5】
図5は、本発明の第2実施形態に係る軸筒を備えた筆記具を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。なお、本明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
【0014】
また、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件ならびにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「同一」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。
【0015】
本明細書では、筆記具の中心軸線Aが延びる方向(長手方向、縦断面図における上下方向)を軸方向da、軸方向daと直交する方向を径方向、中心軸線A周りの円周に沿った方向を周方向とする。また、軸方向daに沿って、筆記する際に紙面等の被筆記面に近接する側を前方とし、被筆記面から離間する側を後方とする。すなわち、ペン先側が前方であり、ペン先と反対側が後方である。
【0016】
本明細書では、筆記具がシャープペンシルである例について説明する。なお、これに限られず、本発明は、軸筒を有する全ての筆記具に適用することができる。例えば、本発明の筆記具は、ボールペン、万年筆、サインペン、マーカーペン、毛筆等の他の筆記具であってもよい。また、本発明の筆記具は、タッチパネル等の位置検出機能を有する入力面に対して入力を行うための、静電容量式スタイラスペン、電磁誘導式スタイラスペン、感圧式スタイラスペン等の電子入力用の筆記具であってもよい。
【0017】
第1実施形態
図1は、本発明の第1実施形態に係る軸筒20を備えた筆記具10を示す図であり、
図2は、筆記具10の前軸30を拡大して示す縦断面図であり、
図3は、
図2のIII-III線に対応する横断面図であり、
図4は、筆記具10の軸筒20の分解図である。
【0018】
筆記具10は、軸筒20と、芯操出ユニット70と、を備える。軸筒20は、前軸30と、前軸30の後方に配置された後軸50と、前軸30の前方に配置された先端部材25と、を有している。先端部材25の前端には、筆記用の芯80が通過可能な前端開口部27が設けられている。芯操出ユニット70は、使用者の操作により、芯80を先端部材25の前端開口部27から前方へ繰り出す機構を有している。本実施形態の芯操出ユニット70は、ノック体71と、芯パイプ72と、チャック73と、コネクタ74と、弾発部材75と、受け部材76と、締具77と、芯ホルダー78と、を含んでいる。
【0019】
ノック体71は、芯80を繰り出す際に使用者により前方へ押圧される部材である。芯パイプ72は、内部に芯80を貯留する部材である。また、本実施形態では、芯パイプ72は、使用者がノック体71を前方に押圧した際に、押圧力をノック体71からコネクタ74へ伝達する機能も有する。このような芯パイプ72は、例えば樹脂で形成される。チャック73は、芯80を把持する部材である。チャック73は、芯パイプ72及びコネクタ74と一体的に前後に移動することが可能である。コネクタ74は、芯パイプ72とチャック73とを接続する部材である。図示された例では、コネクタ74の後端部は、芯パイプ72の前端部内に挿入されており、これにより、コネクタ74が芯パイプ72に対して固定されている。また、チャック73の後端部は、コネクタ74の前端部内に挿入されており、これにより、チャック73がコネクタ74に対して固定されている。
【0020】
コネクタ74の前方には、弾発部材75が配置されている。弾発部材75の前方には、受け部材76が配置されており、弾発部材75は、コネクタ74の前端部と、受け部材76との間に、圧縮状態で配置されている。受け部材76は、弾発部材75の弾発力を受ける部材であり、弾発部材75の弾発力により前方へ押圧され、先端部材25の内面に形成された段部に当接している。締具77は、チャック73の前方部分に対して径方向の外側に位置する環状の部品である。締具77の後端部が受け部材76に当接することにより、締具77の後方への移動が規制されている。芯ホルダー78は、チャック73の前方に配置されており、芯80の外面に当接して芯80を保持する部材である。芯ホルダー78は、ゴム等の弾性部材で形成されており、チャック73が芯80を把持していないときに、芯80が軸方向daに移動することを抑制する。
【0021】
本実施形態の芯操出ユニット70は、重量体79をさらに有している。重量体79は、芯パイプ72を取り囲むようにして芯パイプ72の外側に配置されるとともに軸方向daに延びる筒状の部材である。芯パイプ72は、比較的密度の大きい材料、例えば金属材料、で形成されている。重量体79と芯パイプ72との間には隙間が形成されており、重量体79は、芯パイプ72に対して軸方向daに移動可能である。とりわけ、使用者が筆記具10を軸方向daに沿って振ることにより、重量体79は、芯パイプ72に対して軸方向daに移動する。コネクタ74の後端部は、重量体79からの押圧力を受ける受け部を有しており、重量体79が前方に移動してコネクタ74の後端部に衝突すると、重量体79からコネクタ74に対して作用する衝撃荷重により、コネクタ74が前方へ移動する。
【0022】
芯操出ユニット70により芯80を繰り出す際には、使用者により、ノック体71が前方へ向けて押圧される。これにより、芯パイプ72、コネクタ74及びチャック73が、弾発部材75の弾発力に抗して、前方へ移動する。また、芯操出ユニット70が重量体79を有している場合には、使用者が筆記具10を軸方向daに沿って振り、重量体79が前方に移動してコネクタ74の後端部に衝突することによっても、芯パイプ72、コネクタ74及びチャック73が、弾発部材75の弾発力に抗して、前方へ移動する。
【0023】
チャック73の前方部分の外面は、ノック体71が前方へ押圧されていないときには、締具77に内側から当接している。したがって、チャック73の前方部分が径方向の外側に開くことが抑制されている。これにより、チャック73の前方部分が芯80を把持する。チャック73が前方へ移動すると、チャック73に把持された芯80が前方へ移動し、芯80が先端部材25の前端開口部27から前方へ繰り出される。チャック73がさらに前方へ移動すると、チャック73の前方部分が締具77に対して前方へ移動する。これにより、チャック73の前方部分が径方向の外側に開き、チャック73の前方部分に把持されていた芯80が解放される。このとき、芯80は、芯ホルダー78により保持される。
【0024】
使用者によるノック体71の押圧が解除される、又は、重量体79によるコネクタ74の押圧が解除されると、弾発部材75の弾発力により、芯パイプ72、コネクタ74及びチャック73が、後方へ移動する。これにより、チャック73の前方部分が締具77の内側へ移動し、締具77に当接して芯80を把持する。このとき、芯80は、芯ホルダー78により保持されているので、芯80の後方への移動が抑制される。本実施形態の筆記具では、このようにして、芯80が先端部材25の前端開口部27から前方へ繰り出される。なお、重量体79を省略し、ノック体71の押圧によってのみ、芯80が繰り出されるようにしてもよい。
【0025】
次に、筆記具10の軸筒20についてさらに説明する。軸筒20は、前軸30と、前軸30の後方に配置された後軸50と、前軸30の前方に配置された先端部材25と、を有している。前軸30は、内筒31と、内筒31の外側に配置された外筒37と、を含んでいる。後軸50の外面には、転がり止めとして機能する凸部59が設けられている。本実施形態の筆記具10は、内筒31と外筒37との間に配置され、軸方向daに配列された複数の中間部材40を有している。
【0026】
内筒31は、小径部32と、小径部32の後方に位置する前方大径部33と、前方大径部33の後方に位置する鍔部34と、鍔部34の後方に位置する後方大径部35と、を含んでいる。前方大径部33及び後方大径部35は、小径部32の外径よりも大きな外径を有している。小径部32と前方大径部33との間には、段部36が形成されている。鍔部34は、前方大径部33及び後方大径部35の外径よりも大きな外径を有している。後軸50の前端部は、後方大径部35に外嵌するとともに、鍔部34に対して後方から当接している。内筒31は、例えば樹脂で形成される。
【0027】
外筒37は、筆記具10を用いて筆記を行う際に、使用者により把持されることが意図された部材である。外筒37の前端部には、内方へ向けて突出する内鍔部38が形成されている。本実施形態では、内鍔部38が、先端部材25の後端と、内筒31の小径部32の前方部分の外面に形成された段部と、の間に挟持されることにより、外筒37の前端部が内筒31に対して固定されている。なお、内鍔部38は、先端部材25の後端と中間部材40との間に挟持されてもよい。外筒37の後端部は、前方大径部33に外嵌するとともに、鍔部34に対して前方から当接している。
【0028】
外部から、外筒37を介して中間部材40を視認することができるよう、外筒37は、透視性を有する材料で形成されることが好ましい。外筒37は、透視性を有する無色の材料で形成されてもよいし、透視性を有する有色の材料で形成されてもよい。また、外筒37は、ゴムやエラストマー等の弾性材料で形成されてもよい。外筒37が弾性材料で形成されている場合、使用者に把持される際のグリップ性を向上させることができる。
図1に示された例では、外筒37が透視性を有する材料で形成されており、外筒37内に配置された内筒31及び中間部材40が外筒37を介して視認されている。
【0029】
中間部材40は、内筒31の小径部32と外筒37との間に配置されている。本実施形態では、内筒31と外筒37との間に3つの中間部材40が配置されている。なお、これに限られず、内筒31と外筒37との間に、2つの中間部材40が配置されてもよいし、4つ以上の中間部材40が配置されてもよい。中間部材40は、小径部32を取り囲むようにして小径部32の外側に配置されるとともに軸方向daに延びる筒状の部材である。中間部材40と小径部32との間には隙間が形成されている。この場合、小径部32に対して中間部材40を簡単に取り付けることができるとともに、中間部材40を小径部32に対して回転させることが可能になる。なお、最も前方に位置する中間部材40は、外筒37の内鍔部38に当接して、前方への移動が規制されている。また、最も後方に位置する中間部材40は、内筒31の段部36に当接して、後方への移動が規制されている。
【0030】
内筒31は、先端部材25に対して着脱可能に固定されている。本実施形態では、内筒31の前端部の外面には、雄ネジ部が形成されており、先端部材25の後端部の内面には、雌ネジ部が形成されている。そして、内筒31の雄ネジ部が先端部材25の雌ネジ部に螺合することにより、内筒31が先端部材25に対して着脱可能に固定されている。この場合、内筒31から先端部材25を取り外し、次いで外筒37を前方に移動させて内筒31から外筒37を取り外すことにより、各中間部材40の内筒31に対する着脱が可能になる。これにより、使用者は、いずれかの中間部材40を他の中間部材40に交換したり、異なる位置に配置された複数の中間部材を互いに交換したりすることができる。
【0031】
本実施形態では、複数の中間部材40は、互いに同一の外径、内径及び長さを有している。このような中間部材40によれば、中間部材40の位置を互いに交換することが容易になる。また、複数の中間部材40の間に、中心軸線Aからの径方向の高さの差異が生じることを抑制することができる。したがって、とりわけ外筒37が弾性材料で形成されている際に、使用者が外筒37を把持した際に、複数の中間部材40の間の高さの差に起因した違和感を減少させることができる。さらに、外部から視認した際の複数の中間部材40の寸法が概ね同じであることにより、優れた美観を有する筆記具10を実現することが可能になる。
【0032】
中間部材40の外面は、任意の意匠を有する意匠部を有してもよい。意匠部は、例えば、任意の色彩、模様、絵、写真、文字、記号及びそれらの組み合わせ、を有する。中間部材40が、外面に意匠部を有することにより、使用者が筆記具10に好みの意匠を付与することができる。これにより、当該筆記具10の意匠性が向上するとともに、意匠部に表示された意匠に基いて、当該筆記具10を他の筆記具と区別することが可能になる。
【0033】
複数の中間部材40の少なくとも1つは金属を含んでいる。本実施の形態では、複数の中間部材40の少なくとも1つは、金属材料からなる金属部材42である。とりわけ、複数の中間部材40は、金属を含む中間部材40と、金属を含まない中間部材40と、を有している。本実施の形態では、複数の中間部材40は、金属材料からなる金属部材42と、非金属材料からなる非金属部材46と、を含んでいる。複数の中間部材40の少なくとも1つに含まれる金属、とりわけ金属部材42を構成する金属としては、例えば、黄銅、ステンレス、鉄、アルミニウムを用いることができる。また、非金属部材46を構成する非金属材料としては、例えば、スチレン系、オレフィン系などの熱可塑性エラストマー、シリコーンゴム、PP、PET、ABSなどの熱可塑性樹脂や高比重樹脂を用いることができる。
【0034】
以下の説明では、金属を含む中間部材40が金属材料からなる金属部材42である例について説明する。しかし、金属を含む中間部材40は、金属材料からなる金属部材42に限られない。したがって、以下の説明において、「金属部材42」は、「金属を含む中間部材40」と読み替えることが可能である。
【0035】
金属部材42を構成する金属材料の密度と、非金属部材46を構成する非金属材料の密度とは、互いに異なる。上述のように、本実施形態では、複数の中間部材40は、互いに同一の外径、内径及び長さを有している。したがって、金属部材42の重量と、非金属部材46の重量とは、互いに異なる。この場合、金属部材42及び非金属部材46の数を変更することにより、軸筒20(筆記具10)の全体の重量を変更することができる。例えば、複数の中間部材40に含まれる金属部材42の数を増やすことにより、軸筒20の全体の重量を増やすことができる。これにより、使用者は、筆記具10の全体の重量を所望の重量に変更することができる。
【0036】
また、金属部材42及び非金属部材46の数や、金属部材42及び非金属部材46の配置位置を変更することにより、軸筒20(筆記具10)の重心の位置を変更することができる。例えば、金属部材42を前方に配置することにより、軸筒20の重心の位置を前方に移動させることができる。これにより、使用者は、筆記具10の重心の位置を所望の位置に変更することができる。
【0037】
とりわけ、本実施形態では、複数の中間部材40を互いに入れ替えることにより、軸筒20(筆記具10)の重心位置を3通り以上に変更可能である。例えば、軸筒20が2つの中間部材40を有している場合には、前方側に金属部材42が配置され後方側に非金属部材46が配置される、前方側に非金属部材46が配置され後方側に金属部材42が配置される、及び、前方側にも後方側にも金属部材42が配置される、の3通りの配置が可能である。したがって、この場合には、複数の中間部材40を互いに入れ替えることにより、軸筒20の重心位置を3通りに変更可能である。軸筒20が3つ以上の中間部材40を有している場合には、軸筒20の重心位置を7通り以上に変更可能である。このような軸筒20によれば、軸筒20の重心位置を、使用者の好みに応じてより適切に調整することが可能になる。
【0038】
さらに、金属部材42及び非金属部材46の数や、金属部材42及び非金属部材46の配置位置を変更することにより、筆記具10の回転モーメントの大きさを変更することができる。ここでの回転モーメントとは、中心軸線Aと交差する方向、とりわけ中心軸線Aと直交する方向、に延びる軸線周りに筆記具10を回転させようとした際に必要な回転モーメントを指す。すなわち、回転モーメントが小さい場合には、筆記具10を回転させるために必要な力が小さくなり、回転モーメントが大きい場合には、筆記具10を回転させるために必要な力が大きくなる。例えば、金属部材42を重心から離れた位置に配置することにより、筆記具10を回転させるために必要な力を大きくすることができる。
【0039】
複数の中間部材40の少なくとも1つは、その外面に少なくとも1つの溝44を有している。とりわけ外筒37が弾性材料で形成されていると、使用者が外筒37を把持した際に、外筒37が中間部材40に貼り付くことがある。この場合、貼り付いた箇所の色が変化することから、外部から中間部材40を視認した際に、貼り付いた箇所と他の箇所とが互いに区別されて視認され得る。これにより、筆記具10の意匠性が低下し得る。これに対して、中間部材40が、その外面に少なくとも1つの溝44を有している場合、外筒37が中間部材40に貼り付いたとしても、貼り付いた箇所に溝44を介して空気が流れ込み、外筒37が中間部材40から容易に剥がれる。したがって、筆記具10の意匠性の低下を抑制することができる。
【0040】
本実施形態では、金属部材42の外面に溝44が形成されている。とりわけ金属部材42の外面が光沢面を有している場合、外筒37が中間部材40に貼り付きやすい。したがって、金属部材42の外面に溝44を形成することにより、筆記具10の意匠性の低下をより効果的に抑制することができる。なお、これに限られず、非金属部材46の外面にも溝44が形成されてもよい。溝44を除く金属部材42の外面の表面粗さは、光沢性と貼付性を考慮して、算術平均粗さRaで2μm以上10μm以下であることが好ましく、3μm以上8μm以下であることがより好ましい。なお、算術平均粗さRaは、JIS B 0601(1994)に基づき測定することができる。
【0041】
とりわけ、溝44は、周方向に直線状に延びている。また、本実施形態では、1つの中間部材40(金属部材42)に、3本の溝44が形成されている。これに限られず、溝44は、軸方向daに延びてもよいし、軸方向da及び周方向の両方に対して傾斜した方向に延びてもよい。また、溝44は、曲線状や、折れ線状等の他の形状を有してもよい。さらに、1つの中間部材40に、1本、2本又は4本以上の溝44が形成されてもよい。
【0042】
図2及び
図4によく示されているように、中間部材40は、内面の前端及び後端に、面取り部48を有している。内筒31の小径部32と段部36との接続部分における外面には、応力の集中を抑制すること等を目的として、応力集中緩和部が設けられることがある。応力集中抑制部は、
図2及び
図4に示した断面において、軸方向da及び径方向の両方に対して傾斜する傾斜面、又は、小径部32から段部36へ滑らかに接続する円弧状の面で構成され得る。中間部材40がこのような面取り部48を有していると、中間部材40と応力集中緩和部とが互いに当接することにより、中間部材40の移動が妨げられることを抑制することができる。とりわけ、中間部材40が金属部材42である場合は、応力集中緩和部と当接した際に、中間部材40自体が変形して当接の影響を吸収することが期待できない。したがって、中間部材40が金属部材42である場合に、面取り部48がより効果を発揮し得る。
【0043】
次に、主に
図4を参照して、筆記具10の組み立て方法について説明する。
【0044】
まず、前軸30の内筒31に複数の中間部材40を取り付ける。とりわけ、図示された例では、内筒31の小径部32を取り囲むようにして、小径部32の外側に3つの中間部材40を順に配置する。各中間部材40を小径部32の前端から後方へ向けてスライドさせることにより、各中間部材40を内筒31に取り付けることができる。最も後方に位置する中間部材40は、内筒31の段部36に当接して、後方への移動が規制される。複数の中間部材40の少なくとも1つは金属を含んでいる。とりわけ、複数の中間部材40の少なくとも1つは、金属材料からなる金属部材42である。図示された例では、3つの中間部材40のうち2つの中間部材40が金属部材42であり、1つの中間部材40が非金属部材46である。このとき、使用者の好みに応じて、金属部材42の数及び配置位置を自由に変更することができる。
【0045】
次に、内筒31に外筒37を取り付ける。とりわけ、図示された例では、複数の中間部材40を取り囲むようにして、複数の中間部材40の外側に外筒37を配置する。外筒37を内筒31の前方から後方へ向けてスライドさせることにより、外筒37を内筒31に取り付けることができる。このとき、外筒37の後端部は、内筒31の前方大径部33に外嵌するとともに、鍔部34に対して前方から当接する。その後、内筒31に先端部材25を取り付ける。内筒31の前端部の外面に設けられた雄ネジ部を、先端部材25の後端部の内面に設けられた雌ネジ部に螺合させることにより、内筒31に先端部材25を取り付けることができる。
【0046】
なお、上述の工程を逆順で行うことにより、筆記具10から中間部材40を取り外すことができる。
【0047】
本実施形態の軸筒20は、筆記具10用の軸筒20であって、内筒31と、内筒31の外側に配置された外筒37と、内筒31と外筒37との間に配置され、軸方向daに配列された複数の中間部材40と、を含み、複数の中間部材40の少なくとも1つは金属を含む。
【0048】
本実施形態の筆記具10は、上述の軸筒20を備える。
【0049】
このような軸筒20及び筆記具10によれば、使用者が、軸筒20の全体の重量又は筆記具10の全体の重量を、所望の重量に変更することができる。また、使用者が、軸筒20の重心の位置又は筆記具10の重心の位置を、所望の位置に変更することができる。さらに、使用者が、軸筒20の回転モーメントの大きさ又は筆記具10の回転モーメントの大きさを、所望の大きさに変更することができる。すなわち、軸筒20(筆記具10)の重量、重心の位置及び回転モーメントの大きさを、使用者の好みに応じて変更することができる。これにより、筆記具10による筆記の快適性を効果的に向上させることができる。
【0050】
本実施形態の軸筒20では、複数の中間部材40の少なくとも1つは、外面に少なくとも1つの溝44を有する。
【0051】
このような軸筒20によれば、外筒37が中間部材40に貼り付いた場合に、貼り付いた箇所に溝44を介して空気が流れ込み、外筒37が中間部材40から容易に剥がれる。したがって、筆記具10の意匠性の低下を抑制することができる。
【0052】
本実施形態の軸筒20では、複数の中間部材40を互いに入れ替えることにより、軸筒20の重心位置を3通り以上に変更可能である。
【0053】
このような軸筒20によれば、軸筒20の重心位置を、使用者の好みに応じてより適切に調整することが可能になる。
【0054】
第2実施形態
図5~
図7を参照して、第2実施形態について説明する。以下の説明および以下の説明で用いる図面では、第1実施形態と同様に構成され得る部分について、第1実施形態における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いることとし、重複する説明を省略する。
【0055】
図5は、本発明の第2実施形態に係る軸筒20を備えた筆記具10を示す図であり、
図6は、筆記具10を示す縦断面図であり、
図7は、筆記具10の軸筒20の分解図である。
【0056】
前軸30において、内筒31と外筒37との間には、複数の中間部材40が配置されている。前軸30の構成は、第1実施形態と同様であるので、詳細な説明は省略する。本実施形態では、後軸50にも、複数の中間部材40が配置されている。換言すると、中間部材40は、前軸30及び後軸50の両方に配置されている。後軸50は、内筒51と、内筒51の外側に配置された外筒57と、を含んでいる。筆記具10は、後軸50の内筒51と外筒57との間に配置され、軸方向daに配列された複数の中間部材40を有している。
【0057】
後軸50の内筒51の前端部は、前軸30の内筒31の後端部に連結されている。とりわけ、内筒51の前端部の外面に設けられた雄ネジ部が、前軸30の内筒31の後端部の内面に設けられた雌ネジ部に螺合することにより、内筒51が内筒31に連結されている。内筒51の後方部分の外面には、段部56が形成されている。内筒51は、例えば樹脂で形成される。
【0058】
外筒57の前端部は、前軸30の内筒31の後方大径部35に外嵌するとともに、鍔部34に対して後方から当接している。外筒57は、前軸30の外筒37と同様に、外部から、外筒57を介して中間部材40を視認することができるよう、透視性を有する材料で形成されてもよい。外筒57は、透視性を有する無色の材料で形成されてもよいし、透視性を有する有色の材料で形成されてもよい。
図5に示された例では、外筒37及び外筒57が透視性を有する材料で形成されており、外筒37内に配置された内筒31及び中間部材40が外筒37を介して視認されるとともに、外筒57内に配置された内筒51及び中間部材40が外筒57を介して視認されている。
【0059】
後軸50において、内筒51と外筒57との間に中間部材40が配置されている。図示された例では、内筒51と外筒57との間に3つの中間部材40が配置されている。なお、これに限られず、内筒51と外筒57との間に、1つ又は2つの中間部材40が配置されてもよいし、4つ以上の中間部材40が配置されてもよい。中間部材40は、内筒51を取り囲むようにして内筒51の外側に配置されるとともに軸方向daに延びる筒状の部材である。中間部材40と内筒51との間には隙間が形成されている。この場合、内筒51に対して中間部材40を簡単に取り付けることができるとともに、中間部材40を内筒51に対して回転させることが可能になる。なお、後軸50において最も前方に位置する中間部材40は、前軸30の内筒31の後端に当接して、前方への移動が規制されている。また、後軸50において最も後方に位置する中間部材40は、段部56に当接して、後方への移動が規制されている。中間部材40は、第1実施形態における中間部材40と同様に構成され得るので、詳細な説明は省略する。
【0060】
前軸30及び後軸50に配置された複数の中間部材40の少なくとも1つは金属を含んでいる。例えば、前軸30に3つの中間部材40が配置され、後軸50に3つの中間部材40が配置されている場合、6つの中間部材40の少なくとも1つが金属を含んでいる。これに限られず、前軸30に配置された複数の中間部材40の少なくとも1つが金属を含むとともに、後軸50に配置された複数の中間部材40の少なくとも1つが金属を含んでもよい。
図5~
図7に示された例では、前軸30に配置された3つの中間部材40のうち2つの中間部材40が金属部材42であり、後軸50に配置された3つの中間部材40のうち1つの中間部材40が金属部材42である。なお、前軸30に配置される中間部材40と、後軸50に配置される中間部材40とは、互いに同一の外径、内径及び長さを有していてもよい。この場合、前軸30に配置される中間部材40と、後軸50に配置される中間部材40とを互いに入れ替えることが容易になる。
【0061】
次に、主に
図7を参照して、筆記具10の組み立て方法について説明する。
【0062】
一例として、まず、第1実施形態と同様にして、前軸30に複数の中間部材40を取り付ける。その後、後軸50に複数の中間部材40を取り付ける。なお、これに限られず、まず、後軸50に複数の中間部材40を取り付け、その後、前軸30に複数の中間部材40を取り付けてもよい。また、前軸30に複数の中間部材40を取り付ける工程と後軸50に複数の中間部材40を取り付ける工程とを同時に行ってもよい。
【0063】
後軸50に複数の中間部材40を取り付ける際には、まず、後軸50の内筒51に複数の中間部材40を取り付ける。とりわけ、図示された例では、内筒51を取り囲むようにして、内筒51の外側に3つの中間部材40を順に配置する。各中間部材40を内筒51の前端から後方へ向けてスライドさせることにより、各中間部材40を内筒51に取り付けることができる。最も後方に位置する中間部材40は、内筒51の段部56に当接して、後方への移動が規制される。図示された例では、後軸50に配置される3つの中間部材40のうち、1つの中間部材40が金属部材42であり、2つの中間部材40が非金属部材46である。このとき、使用者の好みに応じて、金属部材42の数及び配置位置を自由に変更することができる。
【0064】
次に、内筒51に外筒57を取り付ける。とりわけ、図示された例では、複数の中間部材40を取り囲むようにして、複数の中間部材40の外側に外筒57を配置する。外筒57を内筒51の前方から後方へ向けてスライドさせることにより、外筒57を内筒51に取り付けることができる。その後、前軸30の内筒31と後軸50の内筒51とを連結する。内筒51の前端部の外面に設けられた雄ネジ部を、内筒31の後端部の内面に設けられた雌ネジ部に螺合させることにより、内筒31と内筒51とを連結することができる。
【0065】
なお、上述の工程を逆順で行うことにより、筆記具10から中間部材40を取り外すことができる。
【0066】
本実施形態の軸筒20は、前軸30と、前軸30の後方に配置された後軸50とを含み、中間部材40は、前軸30及び後軸50に配置されている。
【0067】
このような軸筒20によれば、中間部材40が、前軸30及び後軸50の両方に配置されているので、軸筒20(筆記具10)の重量、重心の位置及び回転モーメントの大きさの変更の自由度をさらに向上させることができる。これにより、筆記具10による筆記の快適性をさらに向上させることができる。
【符号の説明】
【0068】
10 筆記具
20 軸筒
25 先端部材
27 前端開口部
30 前軸
31 内筒
32 小径部
33 前方大径部
34 鍔部
35 後方大径部
36 段部
37 外筒
38 内鍔部
40 中間部材
42 金属部材
44 溝
46 非金属部材
48 面取り部
50 後軸
51 内筒
56 段部
57 外筒
59 凸部
70 芯操出ユニット
71 ノック体
72 芯パイプ
73 チャック
74 コネクタ
75 弾発部材
76 受け部材
77 締具
78 芯ホルダー
79 重量体
80 芯
A 中心軸線
da 軸方向