(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-14
(45)【発行日】2024-06-24
(54)【発明の名称】射出成形機
(51)【国際特許分類】
B29C 45/76 20060101AFI20240617BHJP
B22D 17/32 20060101ALI20240617BHJP
【FI】
B29C45/76
B22D17/32 H
(21)【出願番号】P 2020219368
(22)【出願日】2020-12-28
【審査請求日】2023-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 みのり
(72)【発明者】
【氏名】松永 拓也
【審査官】小山 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-293868(JP,A)
【文献】特開2018-075830(JP,A)
【文献】特開2004-175120(JP,A)
【文献】特開平05-057765(JP,A)
【文献】特開2007-144781(JP,A)
【文献】特開平06-285938(JP,A)
【文献】特開平08-309816(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00-45/84
B29C 33/00-33/76
B22D 17/00-17/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出成形機を制御する制御装置を備え、
前記制御装置は、
第1物理量の第1実績値が第1設定値に一致するように、前記第1物理量を制御する動作制御部と、
前記動作制御部によって前記第1物理量を制御したときの、前記第1物理量と
相関性のある且つ成形品の良否評価に用いる第2物理量の第2実績値を取得する実績値取得部と、
複数のショットにおける、前記第1物理量の制御結果と、前記実績値取得部が取得した前記第2実績値との組み合わせデータをそれぞれ記憶するデータ記憶部と、
前記データ記憶部に記憶した複数の前記組み合わせデータに基づき、前記第2物理量を制御するための第2制御ゲインを算出するゲイン算出部と、
を含む、射出成形機。
【請求項2】
射出成形機を制御する制御装置を備え、
前記制御装置は、
第1物理量の第1実績値が第1設定値に一致するように、前記第1物理量を制御する動作制御部と、
前記動作制御部によって前記第1物理量を制御したときの、前記第1物理量とは異なる第2物理量の第2実績値を取得する実績値取得部と、
複数のショットにおける、前記第1物理量の制御結果と、前記実績値取得部が取得した前記第2実績値との組み合わせデータをそれぞれ記憶するデータ記憶部と、
前記データ記憶部に記憶した複数の前記組み合わせデータに基づき、前記第2物理量を制御するための第2制御ゲインを算出するゲイン算出部と、
を含み、
前記第1物理量は、シリンダ温度、充填速度、又は金型温度であり、
前記第2物理量は、成形品の色である、射出成形機。
【請求項3】
射出成形機を制御する制御装置を備え、
前記制御装置は、
第1物理量の第1実績値が第1設定値に一致するように、前記第1物理量を制御する動作制御部と、
前記動作制御部によって前記第1物理量を制御したときの、前記第1物理量とは異なる第2物理量の第2実績値を取得する実績値取得部と、
複数のショットにおける、前記第1物理量の制御結果と、前記実績値取得部が取得した前記第2実績値との組み合わせデータをそれぞれ記憶するデータ記憶部と、
前記データ記憶部に記憶した複数の前記組み合わせデータに基づき、前記第2物理量を制御するための第2制御ゲインを算出するゲイン算出部と、
を含み、
前記第1物理量は、シリンダ温度、スクリュ回転数、又はスクリュ背圧であり、
前記第2物理量は、計量モータトルクの波形の特徴量である、射出成形機。
【請求項4】
射出成形機を制御する制御装置を備え、
前記制御装置は、
第1物理量の第1実績値が第1設定値に一致するように、前記第1物理量を制御する動作制御部と、
前記動作制御部によって前記第1物理量を制御したときの、前記第1物理量とは異なる第2物理量の第2実績値を取得する実績値取得部と、
複数のショットにおける、前記第1物理量の制御結果と、前記実績値取得部が取得した前記第2実績値との組み合わせデータをそれぞれ記憶するデータ記憶部と、
前記データ記憶部に記憶した複数の前記組み合わせデータに基づき、前記第2物理量を制御するための第2制御ゲインを算出するゲイン算出部と、
を含み、
前記第1物理量は、保圧圧力、保圧時間、V/P切換位置、充填速度、シリンダ温度、又は型締力であり、
前記第2物理量は、成形品の重量、成形品の寸法、型内圧、最小クッション位置、又は充填圧力の波形の特徴量である、射出成形機。
【請求項5】
前記動作制御部は、前記第2物理量の前記第2実績値が第2設定値に一致するように、前記第2物理量を前記第2制御ゲインで制御する、請求項1
~4のいずれか1項に記載の射出成形機。
【請求項6】
前記制御装置は、前記第2物理量の前記第2実績値が第2設定値に一致するように、前記第2制御ゲインに基づき、前記第1物理量の前記第1設定値を調節する条件設定部を更に含む、請求項1
~5のいずれか1項に記載の射出成形機。
【請求項7】
前記動作制御部は、前記第1実績値が、前記条件設定部によって調節された前記第1設定値に一致するように、前記第1物理量を制御する、請求項
6に記載の射出成形機。
【請求項8】
前記制御装置は、前記第2実績値が第2設定値に設定時間内に収束するか否かに基づき、前記ゲイン算出部によって算出した前記第2制御ゲインが適切か否かを判断する適否判断部を更に含む、請求項1~
7のいずれか1項に記載の射出成形機。
【請求項9】
前記制御装置は、前記第2物理量の前記第2実績値が第2設定値に一致するように、前記第2制御ゲインに基づき、前記第1物理量の前記第1設定値を調節する条件設定部を含み、
前記データ記憶部は、前記条件設定部によって前記第1設定値を調節した後のショットにおける前記組み合わせデータを記憶し、
前記制御装置は、前記適否判断部によって前記第2制御ゲインが不適切と判断すると、前記データ記憶部に記憶した複数の前記組み合わせデータに基づき前記第2制御ゲインを補正するゲイン補正部を更に含む、請求項
8に記載の射出成形機。
【請求項10】
前記条件設定部は、前記ゲイン補正部によって補正した後の前記第2制御ゲインを用いて、前記第2実績値が前記第2設定値に一致するように、前記第1設定値を調節する、請求項
9に記載の射出成形機。
【請求項11】
前記データ記憶部は、前記ゲイン算出部によって前記第2制御ゲインを算出した後のショットにおける前記組み合わせデータを記憶し、
前記制御装置は、前記データ記憶部に記憶した複数の前記組み合わせデータに基づき前記第2制御ゲインを更新するゲイン更新部を更に含む、請求項1~
10のいずれか1項に記載の射出成形機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の射出成形機は、射出・保圧圧力設定部からの設定値に対し、圧力センサからの検出値をフィードバックして条件出しを行い、条件出しにおいて良品が得られた時の1ショット分の型内圧センサの検出パターンを型内圧設定値として記憶部に記憶させる。この射出成形機は、実成形においては、圧力センサからの検出値をフィードバックすると共に、記憶部に記憶された型内圧設定値と型内圧センサからの型内圧検出値との差をフィードバックして、射出・保圧圧力設定部からの設定値を調整する。射出成形機は、射出・保圧圧力フィードバックループをマイナーループとして型内圧フィードバックを行って射出・保圧の指令値を調節する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、記憶部に記憶された型内圧設定値と型内圧センサからの型内圧検出値との差をフィードバックして、射出・保圧圧力設定部からの設定値を調整する。その設定値を調節するのに用いられる制御ゲインは、固定されていた。それゆえ、金型装置、成形材料(例えば樹脂)、又は周辺環境が変わると、型内圧検出値が型内圧設定値に収束することなく、発散してしまう、又はふらついてしまう等の問題があった。
【0005】
本発明の一態様は、金型装置、成形材料、又は周辺環境が変わるときに、成形品の品質管理に用いられる物理量の実績値を設定値に収束する、技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態の射出成形機は、射出成形機を制御する制御装置を備える。前記制御装置は、第1物理量の第1実績値が第1設定値に一致するように、前記第1物理量を制御する動作制御部と、前記動作制御部によって前記第1物理量を制御したときの、前記第1物理量と相関性のある且つ成形品の良否評価に用いる第2物理量の第2実績値を取得する実績値取得部と、複数のショットにおける、前記第1物理量の制御結果と、前記実績値取得部が取得した前記第2実績値との組み合わせデータをそれぞれ記憶するデータ記憶部と、前記データ記憶部に記憶した複数の前記組み合わせデータに基づき、前記第2物理量を制御するための第2制御ゲインを算出するゲイン算出部と、を含む。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、金型装置、成形材料、又は周辺環境が変わるときに、成形品の品質管理に用いられる物理量を制御するための制御ゲインの初期値を算出でき、当該物理量の実績値を設定値に収束できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る射出成形機の型開完了時の状態を示す図である。
【
図2】
図2は、一実施形態に係る射出成形機の型締時の状態を示す図である。
【
図3】
図3は、制御装置の構成要素の一例を機能ブロックで示す図である。
【
図4】
図4は、制御装置の処理の一例を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、量産成形中の処理の一例を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、量産成形中の処理の別の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、各図面において同一の又は対応する構成には同一の符号を付し、説明を省略することがある。
【0010】
(射出成形機)
図1は、一実施形態に係る射出成形機の型開完了時の状態を示す図である。
図2は、一実施形態に係る射出成形機の型締時の状態を示す図である。本明細書において、X軸方向、Y軸方向およびZ軸方向は互いに垂直な方向である。X軸方向およびY軸方向は水平方向を表し、Z軸方向は鉛直方向を表す。型締装置100が横型である場合、X軸方向は型開閉方向であり、Y軸方向は射出成形機10の幅方向である。Y軸方向負側を操作側と呼び、Y軸方向正側を反操作側と呼ぶ。
【0011】
図1~
図2に示すように、射出成形機10は、金型装置800を開閉する型締装置100と、金型装置800で成形された成形品を突き出すエジェクタ装置200と、金型装置800に成形材料を射出する射出装置300と、金型装置800に対し射出装置300を進退させる移動装置400と、射出成形機10の各構成要素を制御する制御装置700と、射出成形機10の各構成要素を支持するフレーム900とを有する。フレーム900は、型締装置100を支持する型締装置フレーム910と、射出装置300を支持する射出装置フレーム920とを含む。型締装置フレーム910および射出装置フレーム920は、それぞれ、レベリングアジャスタ930を介して床2に設置される。射出装置フレーム920の内部空間に、制御装置700が配置される。以下、射出成形機10の各構成要素について説明する。
【0012】
(型締装置)
型締装置100の説明では、型閉時の可動プラテン120の移動方向(例えばX軸正方向)を前方とし、型開時の可動プラテン120の移動方向(例えばX軸負方向)を後方として説明する。
【0013】
型締装置100は、金型装置800の型閉、昇圧、型締、脱圧および型開を行う。金型装置800は、固定金型810と可動金型820とを含む。
【0014】
型締装置100は例えば横型であって、型開閉方向が水平方向である。型締装置100は、固定金型810が取付けられる固定プラテン110と、可動金型820が取付けられる可動プラテン120と、固定プラテン110に対し可動プラテン120を型開閉方向に移動させる移動機構102と、を有する。
【0015】
固定プラテン110は、型締装置フレーム910に対し固定される。固定プラテン110における可動プラテン120との対向面に固定金型810が取付けられる。
【0016】
可動プラテン120は、型締装置フレーム910に対し型開閉方向に移動自在に配置される。型締装置フレーム910上には、可動プラテン120を案内するガイド101が敷設される。可動プラテン120における固定プラテン110との対向面に可動金型820が取付けられる。
【0017】
移動機構102は、固定プラテン110に対し可動プラテン120を進退させることにより、金型装置800の型閉、昇圧、型締、脱圧、および型開を行う。移動機構102は、固定プラテン110と間隔をおいて配置されるトグルサポート130と、固定プラテン110とトグルサポート130を連結するタイバー140と、トグルサポート130に対して可動プラテン120を型開閉方向に移動させるトグル機構150と、トグル機構150を作動させる型締モータ160と、型締モータ160の回転運動を直線運動に変換する運動変換機構170と、固定プラテン110とトグルサポート130の間隔を調整する型厚調整機構180と、を有する。
【0018】
トグルサポート130は、固定プラテン110と間隔をおいて配設され、型締装置フレーム910上に型開閉方向に移動自在に載置される。尚、トグルサポート130は、型締装置フレーム910上に敷設されるガイドに沿って移動自在に配置されてもよい。トグルサポート130のガイドは、可動プラテン120のガイド101と共通のものでもよい。
【0019】
尚、本実施形態では、固定プラテン110が型締装置フレーム910に対し固定され、トグルサポート130が型締装置フレーム910に対し型開閉方向に移動自在に配置されるが、トグルサポート130が型締装置フレーム910に対し固定され、固定プラテン110が型締装置フレーム910に対し型開閉方向に移動自在に配置されてもよい。
【0020】
タイバー140は、固定プラテン110とトグルサポート130とを型開閉方向に間隔Lをおいて連結する。タイバー140は、複数本(例えば4本)用いられてよい。複数本のタイバー140は、型開閉方向に平行に配置され、型締力に応じて伸びる。少なくとも1本のタイバー140には、タイバー140の歪を検出するタイバー歪検出器141が設けられてよい。タイバー歪検出器141は、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。タイバー歪検出器141の検出結果は、型締力の検出などに用いられる。
【0021】
尚、本実施形態では、型締力を検出する型締力検出器として、タイバー歪検出器141が用いられるが、本発明はこれに限定されない。型締力検出器は、歪ゲージ式に限定されず、圧電式、容量式、油圧式、電磁式などでもよく、その取付け位置もタイバー140に限定されない。
【0022】
トグル機構150は、可動プラテン120とトグルサポート130との間に配置され、トグルサポート130に対し可動プラテン120を型開閉方向に移動させる。トグル機構150は、型開閉方向に移動するクロスヘッド151と、クロスヘッド151の移動によって屈伸する一対のリンク群と、を有する。一対のリンク群は、それぞれ、ピンなどで屈伸自在に連結される第1リンク152と第2リンク153とを有する。第1リンク152は可動プラテン120に対しピンなどで揺動自在に取付けられる。第2リンク153はトグルサポート130に対しピンなどで揺動自在に取付けられる。第2リンク153は、第3リンク154を介してクロスヘッド151に取付けられる。トグルサポート130に対しクロスヘッド151を進退させると、第1リンク152と第2リンク153とが屈伸し、トグルサポート130に対し可動プラテン120が進退する。
【0023】
尚、トグル機構150の構成は、
図1および
図2に示す構成に限定されない。例えば
図1および
図2では、各リンク群の節点の数が5つであるが、4つでもよく、第3リンク154の一端部が、第1リンク152と第2リンク153との節点に結合されてもよい。
【0024】
型締モータ160は、トグルサポート130に取付けられており、トグル機構150を作動させる。型締モータ160は、トグルサポート130に対しクロスヘッド151を進退させることにより、第1リンク152と第2リンク153とを屈伸させ、トグルサポート130に対し可動プラテン120を進退させる。型締モータ160は、運動変換機構170に直結されるが、ベルトやプーリなどを介して運動変換機構170に連結されてもよい。
【0025】
運動変換機構170は、型締モータ160の回転運動をクロスヘッド151の直線運動に変換する。運動変換機構170は、ねじ軸と、ねじ軸に螺合するねじナットとを含む。ねじ軸と、ねじナットとの間には、ボールまたはローラが介在してよい。
【0026】
型締装置100は、制御装置700による制御下で、型閉工程、昇圧工程、型締工程、脱圧工程、および型開工程などを行う。
【0027】
型閉工程では、型締モータ160を駆動してクロスヘッド151を設定移動速度で型閉完了位置まで前進させることにより、可動プラテン120を前進させ、可動金型820を固定金型810にタッチさせる。クロスヘッド151の位置や移動速度は、例えば型締モータエンコーダ161などを用いて検出する。型締モータエンコーダ161は、型締モータ160の回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。
【0028】
尚、クロスヘッド151の位置を検出するクロスヘッド位置検出器、およびクロスヘッド151の移動速度を検出するクロスヘッド移動速度検出器は、型締モータエンコーダ161に限定されず、一般的なものを使用できる。また、可動プラテン120の位置を検出する可動プラテン位置検出器、および可動プラテン120の移動速度を検出する可動プラテン移動速度検出器は、型締モータエンコーダ161に限定されず、一般的なものを使用できる。
【0029】
昇圧工程では、型締モータ160をさらに駆動してクロスヘッド151を型閉完了位置から型締位置までさらに前進させることで型締力を生じさせる。
【0030】
型締工程では、型締モータ160を駆動して、クロスヘッド151の位置を型締位置に維持する。型締工程では、昇圧工程で発生させた型締力が維持される。型締工程では、可動金型820と固定金型810との間にキャビティ空間801(
図2参照)が形成され、射出装置300がキャビティ空間801に液状の成形材料を充填する。充填された成形材料が固化されることで、成形品が得られる。
【0031】
キャビティ空間801の数は、1つでもよいし、複数でもよい。後者の場合、複数の成形品が同時に得られる。キャビティ空間801の一部にインサート材が配置され、キャビティ空間801の他の一部に成形材料が充填されてもよい。インサート材と成形材料とが一体化した成形品が得られる。
【0032】
脱圧工程では、型締モータ160を駆動してクロスヘッド151を型締位置から型開開始位置まで後退させることにより、可動プラテン120を後退させ、型締力を減少させる。型開開始位置と、型閉完了位置とは、同じ位置であってよい。
【0033】
型開工程では、型締モータ160を駆動してクロスヘッド151を設定移動速度で型開開始位置から型開完了位置まで後退させることにより、可動プラテン120を後退させ、可動金型820を固定金型810から離間させる。その後、エジェクタ装置200が可動金型820から成形品を突き出す。
【0034】
型閉工程、昇圧工程および型締工程における設定条件は、一連の設定条件として、まとめて設定される。例えば、型閉工程および昇圧工程におけるクロスヘッド151の移動速度や位置(型閉開始位置、移動速度切換位置、型閉完了位置、および型締位置を含む)、型締力は、一連の設定条件として、まとめて設定される。型閉開始位置、移動速度切換位置、型閉完了位置、および型締位置は、後側から前方に向けてこの順で並び、移動速度が設定される区間の始点や終点を表す。区間毎に、移動速度が設定される。移動速度切換位置は、1つでもよいし、複数でもよい。移動速度切換位置は、設定されなくてもよい。型締位置と型締力とは、いずれか一方のみが設定されてもよい。
【0035】
脱圧工程および型開工程における設定条件も同様に設定される。例えば、脱圧工程および型開工程におけるクロスヘッド151の移動速度や位置(型開開始位置、移動速度切換位置、および型開完了位置)は、一連の設定条件として、まとめて設定される。型開開始位置、移動速度切換位置、および型開完了位置は、前側から後方に向けて、この順で並び、移動速度が設定される区間の始点や終点を表す。区間毎に、移動速度が設定される。移動速度切換位置は、1つでもよいし、複数でもよい。移動速度切換位置は、設定されなくてもよい。型開開始位置と型閉完了位置とは同じ位置であってよい。また、型開完了位置と型閉開始位置とは同じ位置であってよい。
【0036】
尚、クロスヘッド151の移動速度や位置などの代わりに、可動プラテン120の移動速度や位置などが設定されてもよい。また、クロスヘッドの位置(例えば型締位置)や可動プラテンの位置の代わりに、型締力が設定されてもよい。
【0037】
ところで、トグル機構150は、型締モータ160の駆動力を増幅して可動プラテン120に伝える。その増幅倍率は、トグル倍率とも呼ばれる。トグル倍率は、第1リンク152と第2リンク153とのなす角θ(以下、「リンク角度θ」とも呼ぶ)に応じて変化する。リンク角度θは、クロスヘッド151の位置から求められる。リンク角度θが180°のとき、トグル倍率が最大になる。
【0038】
金型装置800の交換や金型装置800の温度変化などにより金型装置800の厚さが変化した場合、型締時に所定の型締力が得られるように、型厚調整が行われる。型厚調整では、例えば可動金型820が固定金型810にタッチする型タッチの時点でトグル機構150のリンク角度θが所定の角度になるように、固定プラテン110とトグルサポート130との間隔Lを調整する。
【0039】
型締装置100は、型厚調整機構180を有する。型厚調整機構180は、固定プラテン110とトグルサポート130との間隔Lを調整することで、型厚調整を行う。なお、型厚調整のタイミングは、例えば成形サイクル終了から次の成形サイクル開始までの間に行われる。型厚調整機構180は、例えば、タイバー140の後端部に形成されるねじ軸181と、トグルサポート130に回転自在に且つ進退不能に保持されるねじナット182と、ねじ軸181に螺合するねじナット182を回転させる型厚調整モータ183とを有する。
【0040】
ねじ軸181およびねじナット182は、タイバー140ごとに設けられる。型厚調整モータ183の回転駆動力は、回転駆動力伝達部185を介して複数のねじナット182に伝達されてよい。複数のねじナット182を同期して回転できる。尚、回転駆動力伝達部185の伝達経路を変更することで、複数のねじナット182を個別に回転することも可能である。
【0041】
回転駆動力伝達部185は、例えば歯車などで構成される。この場合、各ねじナット182の外周に従動歯車が形成され、型厚調整モータ183の出力軸には駆動歯車が取付けられ、複数の従動歯車および駆動歯車と噛み合う中間歯車がトグルサポート130の中央部に回転自在に保持される。尚、回転駆動力伝達部185は、歯車の代わりに、ベルトやプーリなどで構成されてもよい。
【0042】
型厚調整機構180の動作は、制御装置700によって制御される。制御装置700は、型厚調整モータ183を駆動して、ねじナット182を回転させる。その結果、トグルサポート130のタイバー140に対する位置が調整され、固定プラテン110とトグルサポート130との間隔Lが調整される。尚、複数の型厚調整機構が組合わせて用いられてもよい。
【0043】
間隔Lは、型厚調整モータエンコーダ184を用いて検出する。型厚調整モータエンコーダ184は、型厚調整モータ183の回転量や回転方向を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。型厚調整モータエンコーダ184の検出結果は、トグルサポート130の位置や間隔Lの監視や制御に用いられる。尚、トグルサポート130の位置を検出するトグルサポート位置検出器、および間隔Lを検出する間隔検出器は、型厚調整モータエンコーダ184に限定されず、一般的なものを使用できる。
【0044】
型締装置100は、金型装置800の温度を調節する金型温調器を有してもよい。金型装置800は、その内部に、温調媒体の流路を有する。金型温調器は、金型装置800の流路に供給する温調媒体の温度を調節することで、金型装置800の温度を調節する。
【0045】
尚、本実施形態の型締装置100は、型開閉方向が水平方向である横型であるが、型開閉方向が上下方向である竪型でもよい。
【0046】
尚、本実施形態の型締装置100は、駆動源として、型締モータ160を有するが、型締モータ160の代わりに、油圧シリンダを有してもよい。また、型締装置100は、型開閉用にリニアモータを有し、型締用に電磁石を有してもよい。
【0047】
(エジェクタ装置)
エジェクタ装置200の説明では、型締装置100の説明と同様に、型閉時の可動プラテン120の移動方向(例えばX軸正方向)を前方とし、型開時の可動プラテン120の移動方向(例えばX軸負方向)を後方として説明する。
【0048】
エジェクタ装置200は、可動プラテン120に取付けられ、可動プラテン120と共に進退する。エジェクタ装置200は、金型装置800から成形品を突き出すエジェクタロッド210と、エジェクタロッド210を可動プラテン120の移動方向(X軸方向)に移動させる駆動機構220とを有する。
【0049】
エジェクタロッド210は、可動プラテン120の貫通穴に進退自在に配置される。エジェクタロッド210の前端部は、可動金型820のエジェクタプレート826と接触する。エジェクタロッド210の前端部は、エジェクタプレート826と連結されていても、連結されていなくてもよい。
【0050】
駆動機構220は、例えば、エジェクタモータと、エジェクタモータの回転運動をエジェクタロッド210の直線運動に変換する運動変換機構とを有する。運動変換機構は、ねじ軸と、ねじ軸に螺合するねじナットとを含む。ねじ軸と、ねじナットとの間には、ボールまたはローラが介在してよい。
【0051】
エジェクタ装置200は、制御装置700による制御下で、突き出し工程を行う。突き出し工程では、エジェクタロッド210を設定移動速度で待機位置から突き出し位置まで前進させることにより、エジェクタプレート826を前進させ、成形品を突き出す。その後、エジェクタモータを駆動してエジェクタロッド210を設定移動速度で後退させ、エジェクタプレート826を元の待機位置まで後退させる。
【0052】
エジェクタロッド210の位置や移動速度は、例えばエジェクタモータエンコーダを用いて検出する。エジェクタモータエンコーダは、エジェクタモータの回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。尚、エジェクタロッド210の位置を検出するエジェクタロッド位置検出器、およびエジェクタロッド210の移動速度を検出するエジェクタロッド移動速度検出器は、エジェクタモータエンコーダに限定されず、一般的なものを使用できる。
【0053】
(射出装置)
射出装置300の説明では、型締装置100の説明やエジェクタ装置200の説明とは異なり、充填時のスクリュ330の移動方向(例えばX軸負方向)を前方とし、計量時のスクリュ330の移動方向(例えばX軸正方向)を後方として説明する。
【0054】
射出装置300はスライドベース301に設置され、スライドベース301は射出装置フレーム920に対し進退自在に配置される。射出装置300は、金型装置800に対し進退自在に配置される。射出装置300は、金型装置800にタッチし、金型装置800内のキャビティ空間801に成形材料を充填する。射出装置300は、例えば、成形材料を加熱するシリンダ310と、シリンダ310の前端部に設けられるノズル320と、シリンダ310内に進退自在に且つ回転自在に配置されるスクリュ330と、スクリュ330を回転させる計量モータ340と、スクリュ330を進退させる射出モータ350と、射出モータ350とスクリュ330の間で伝達される荷重を検出する荷重検出器360と、を有する。
【0055】
シリンダ310は、供給口311から内部に供給された成形材料を加熱する。成形材料は、例えば樹脂などを含む。成形材料は、例えばペレット状に形成され、固体の状態で供給口311に供給される。供給口311はシリンダ310の後部に形成される。シリンダ310の後部の外周には、水冷シリンダなどの冷却器312が設けられる。冷却器312よりも前方において、シリンダ310の外周には、バンドヒータなどの加熱器313と温度検出器314とが設けられる。
【0056】
シリンダ310は、シリンダ310の軸方向(例えばX軸方向)に複数のゾーンに区分される。複数のゾーンのそれぞれに加熱器313と温度検出器314とが設けられる。複数のゾーンのそれぞれに設定温度が設定され、温度検出器314の検出温度が設定温度になるように、制御装置700が加熱器313を制御する。
【0057】
ノズル320は、シリンダ310の前端部に設けられ、金型装置800に対し押し付けられる。ノズル320の外周には、加熱器313と温度検出器314とが設けられる。ノズル320の検出温度が設定温度になるように、制御装置700が加熱器313を制御する。
【0058】
スクリュ330は、シリンダ310内に回転自在に且つ進退自在に配置される。スクリュ330を回転させると、スクリュ330の螺旋状の溝に沿って成形材料が前方に送られる。成形材料は、前方に送られながら、シリンダ310からの熱によって徐々に溶融される。液状の成形材料がスクリュ330の前方に送られシリンダ310の前部に蓄積されるにつれ、スクリュ330が後退させられる。その後、スクリュ330を前進させると、スクリュ330前方に蓄積された液状の成形材料がノズル320から射出され、金型装置800内に充填される。
【0059】
スクリュ330の前部には、スクリュ330を前方に押すときにスクリュ330の前方から後方に向かう成形材料の逆流を防止する逆流防止弁として、逆流防止リング331が進退自在に取付けられる。
【0060】
逆流防止リング331は、スクリュ330を前進させるときに、スクリュ330前方の成形材料の圧力によって後方に押され、成形材料の流路を塞ぐ閉塞位置(
図2参照)までスクリュ330に対し相対的に後退する。これにより、スクリュ330前方に蓄積された成形材料が後方に逆流するのを防止する。
【0061】
一方、逆流防止リング331は、スクリュ330を回転させるときに、スクリュ330の螺旋状の溝に沿って前方に送られる成形材料の圧力によって前方に押され、成形材料の流路を開放する開放位置(
図1参照)までスクリュ330に対し相対的に前進する。これにより、スクリュ330の前方に成形材料が送られる。
【0062】
逆流防止リング331は、スクリュ330と共に回転する共回りタイプと、スクリュ330と共に回転しない非共回りタイプのいずれでもよい。
【0063】
尚、射出装置300は、スクリュ330に対し逆流防止リング331を開放位置と閉塞位置との間で進退させる駆動源を有していてもよい。
【0064】
計量モータ340は、スクリュ330を回転させる。スクリュ330を回転させる駆動源は、計量モータ340には限定されず、例えば油圧ポンプなどでもよい。
【0065】
射出モータ350は、スクリュ330を進退させる。射出モータ350とスクリュ330との間には、射出モータ350の回転運動をスクリュ330の直線運動に変換する運動変換機構などが設けられる。運動変換機構は、例えばねじ軸と、ねじ軸に螺合するねじナットとを有する。ねじ軸とねじナットの間には、ボールやローラなどが設けられてよい。スクリュ330を進退させる駆動源は、射出モータ350には限定されず、例えば油圧シリンダなどでもよい。
【0066】
荷重検出器360は、射出モータ350とスクリュ330との間で伝達される荷重を検出する。検出した荷重は、制御装置700で圧力に換算される。荷重検出器360は、射出モータ350とスクリュ330との間の荷重の伝達経路に設けられ、荷重検出器360に作用する荷重を検出する。
【0067】
荷重検出器360は、検出した荷重の信号を制御装置700に送る。荷重検出器360によって検出される荷重は、スクリュ330と成形材料との間で作用する圧力に換算され、スクリュ330が成形材料から受ける圧力、スクリュ330に対する背圧、スクリュ330から成形材料に作用する圧力などの制御や監視に用いられる。
【0068】
尚、成形材料の圧力を検出する圧力検出器は、荷重検出器360に限定されず、一般的なものを使用できる。例えば、ノズル圧センサ、又は型内圧センサが用いられてもよい。ノズル圧センサは、ノズル320に設置される。型内圧センサは、金型装置800の内部に設置される。
【0069】
射出装置300は、制御装置700による制御下で、計量工程、充填工程および保圧工程などを行う。充填工程と保圧工程とをまとめて射出工程と呼んでもよい。
【0070】
計量工程では、計量モータ340を駆動してスクリュ330を設定回転速度で回転させ、スクリュ330の螺旋状の溝に沿って成形材料を前方に送る。これに伴い、成形材料が徐々に溶融される。液状の成形材料がスクリュ330の前方に送られシリンダ310の前部に蓄積されるにつれ、スクリュ330が後退させられる。スクリュ330の回転速度は、例えば計量モータエンコーダ341を用いて検出する。計量モータエンコーダ341は、計量モータ340の回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。尚、スクリュ330の回転速度を検出するスクリュ回転速度検出器は、計量モータエンコーダ341に限定されず、一般的なものを使用できる。
【0071】
計量工程では、スクリュ330の急激な後退を制限すべく、射出モータ350を駆動してスクリュ330に対して設定背圧を加えてよい。スクリュ330に対する背圧は、例えば荷重検出器360を用いて検出する。スクリュ330が計量完了位置まで後退し、スクリュ330の前方に所定量の成形材料が蓄積されると、計量工程が完了する。
【0072】
計量工程におけるスクリュ330の位置および回転速度は、一連の設定条件として、まとめて設定される。例えば、計量開始位置、回転速度切換位置および計量完了位置が設定される。これらの位置は、前側から後方に向けてこの順で並び、回転速度が設定される区間の始点や終点を表す。区間毎に、回転速度が設定される。回転速度切換位置は、1つでもよいし、複数でもよい。回転速度切換位置は、設定されなくてもよい。また、区間毎に背圧が設定される。
【0073】
充填工程では、射出モータ350を駆動してスクリュ330を設定移動速度で前進させ、スクリュ330の前方に蓄積された液状の成形材料を金型装置800内のキャビティ空間801に充填させる。スクリュ330の位置や移動速度は、例えば射出モータエンコーダ351を用いて検出する。射出モータエンコーダ351は、射出モータ350の回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。スクリュ330の位置が設定位置に達すると、充填工程から保圧工程への切換(所謂、V/P切換)が行われる。V/P切換が行われる位置をV/P切換位置とも呼ぶ。スクリュ330の設定移動速度は、スクリュ330の位置や時間などに応じて変更されてもよい。
【0074】
充填工程におけるスクリュ330の位置および移動速度は、一連の設定条件として、まとめて設定される。例えば、充填開始位置(「射出開始位置」とも呼ぶ。)、移動速度切換位置およびV/P切換位置が設定される。これらの位置は、後側から前方に向けてこの順で並び、移動速度が設定される区間の始点や終点を表す。区間毎に、移動速度が設定される。移動速度切換位置は、1つでもよいし、複数でもよい。移動速度切換位置は、設定されなくてもよい。
【0075】
スクリュ330の移動速度が設定される区間毎に、スクリュ330の圧力の上限値が設定される。スクリュ330の圧力は、荷重検出器360によって検出される。スクリュ330の圧力が設定圧力以下である場合、スクリュ330は設定移動速度で前進される。一方、スクリュ330の圧力が設定圧力を超える場合、金型保護を目的として、スクリュ330の圧力が設定圧力以下となるように、スクリュ330は設定移動速度よりも遅い移動速度で前進される。
【0076】
尚、充填工程においてスクリュ330の位置がV/P切換位置に達した後、V/P切換位置にスクリュ330を一時停止させ、その後にV/P切換が行われてもよい。V/P切換の直前において、スクリュ330の停止の代わりに、スクリュ330の微速前進または微速後退が行われてもよい。また、スクリュ330の位置を検出するスクリュ位置検出器、およびスクリュ330の移動速度を検出するスクリュ移動速度検出器は、射出モータエンコーダ351に限定されず、一般的なものを使用できる。
【0077】
保圧工程では、射出モータ350を駆動してスクリュ330を前方に押し、スクリュ330の前端部における成形材料の圧力(以下、「保持圧力」とも呼ぶ。)を設定圧に保ち、シリンダ310内に残る成形材料を金型装置800に向けて押す。金型装置800内での冷却収縮による不足分の成形材料を補充できる。保持圧力は、例えば荷重検出器360を用いて検出する。保持圧力の設定値は、保圧工程の開始からの経過時間などに応じて変更されてもよい。保圧工程における保持圧力および保持圧力を保持する保持時間は、それぞれ複数設定されてよく、一連の設定条件として、まとめて設定されてよい。
【0078】
保圧工程では金型装置800内のキャビティ空間801の成形材料が徐々に冷却され、保圧工程完了時にはキャビティ空間801の入口が固化した成形材料で塞がれる。この状態はゲートシールと呼ばれ、キャビティ空間801からの成形材料の逆流が防止される。保圧工程後、冷却工程が開始される。冷却工程では、キャビティ空間801内の成形材料の固化が行われる。成形サイクル時間の短縮を目的として、冷却工程中に計量工程が行われてよい。
【0079】
尚、本実施形態の射出装置300は、インライン・スクリュ方式であるが、プリプラ方式などでもよい。プリプラ方式の射出装置は、可塑化シリンダ内で溶融された成形材料を射出シリンダに供給し、射出シリンダから金型装置内に成形材料を射出する。可塑化シリンダ内には、スクリュが回転自在に且つ進退不能に配置され、またはスクリュが回転自在に且つ進退自在に配置される。一方、射出シリンダ内には、プランジャが進退自在に配置される。
【0080】
また、本実施形態の射出装置300は、シリンダ310の軸方向が水平方向である横型であるが、シリンダ310の軸方向が上下方向である竪型であってもよい。竪型の射出装置300と組み合わされる型締装置は、竪型でも横型でもよい。同様に、横型の射出装置300と組み合わされる型締装置は、横型でも竪型でもよい。
【0081】
(移動装置)
移動装置400の説明では、射出装置300の説明と同様に、充填時のスクリュ330の移動方向(例えばX軸負方向)を前方とし、計量時のスクリュ330の移動方向(例えばX軸正方向)を後方として説明する。
【0082】
移動装置400は、金型装置800に対し射出装置300を進退させる。また、移動装置400は、金型装置800に対しノズル320を押し付け、ノズルタッチ圧力を生じさせる。移動装置400は、液圧ポンプ410、駆動源としてのモータ420、液圧アクチュエータとしての液圧シリンダ430などを含む。
【0083】
液圧ポンプ410は、第1ポート411と、第2ポート412とを有する。液圧ポンプ410は、両方向回転可能なポンプであり、モータ420の回転方向を切換えることにより、第1ポート411および第2ポート412のいずれか一方から作動液(例えば油)を吸入し他方から吐出して液圧を発生させる。尚、液圧ポンプ410はタンクから作動液を吸引して第1ポート411および第2ポート412のいずれか一方から作動液を吐出することもできる。
【0084】
モータ420は、液圧ポンプ410を作動させる。モータ420は、制御装置700からの制御信号に応じた回転方向および回転トルクで液圧ポンプ410を駆動する。モータ420は、電動モータであってよく、電動サーボモータであってよい。
【0085】
液圧シリンダ430は、シリンダ本体431、ピストン432、およびピストンロッド433を有する。シリンダ本体431は、射出装置300に対して固定される。ピストン432は、シリンダ本体431の内部を、第1室としての前室435と、第2室としての後室436とに区画する。ピストンロッド433は、固定プラテン110に対して固定される。
【0086】
液圧シリンダ430の前室435は、第1流路401を介して、液圧ポンプ410の第1ポート411と接続される。第1ポート411から吐出された作動液が第1流路401を介して前室435に供給されることで、射出装置300が前方に押される。射出装置300が前進され、ノズル320が固定金型810に押し付けられる。前室435は、液圧ポンプ410から供給される作動液の圧力によってノズル320のノズルタッチ圧力を生じさせる圧力室として機能する。
【0087】
一方、液圧シリンダ430の後室436は、第2流路402を介して液圧ポンプ410の第2ポート412と接続される。第2ポート412から吐出された作動液が第2流路402を介して液圧シリンダ430の後室436に供給されることで、射出装置300が後方に押される。射出装置300が後退され、ノズル320が固定金型810から離間される。
【0088】
尚、本実施形態では移動装置400は液圧シリンダ430を含むが、本発明はこれに限定されない。例えば、液圧シリンダ430の代わりに、電動モータと、その電動モータの回転運動を射出装置300の直線運動に変換する運動変換機構とが用いられてもよい。
【0089】
(制御装置)
制御装置700は、例えばコンピュータで構成され、
図1~
図2に示すようにCPU(Central Processing Unit)701と、メモリなどの記憶媒体702と、入力インターフェース703と、出力インターフェース704とを有する。制御装置700は、記憶媒体702に記憶されたプログラムをCPU701に実行させることにより、各種の制御を行う。また、制御装置700は、入力インターフェース703で外部からの信号を受信し、出力インターフェース704で外部に信号を送信する。
【0090】
制御装置700は、計量工程、型閉工程、昇圧工程、型締工程、充填工程、保圧工程、冷却工程、脱圧工程、型開工程、および突き出し工程などを繰り返し行うことにより、成形品を繰り返し製造する。成形品を得るための一連の動作、例えば計量工程の開始から次の計量工程の開始までの動作を「ショット」または「成形サイクル」とも呼ぶ。また、1回のショットに要する時間を「成形サイクル時間」または「サイクル時間」とも呼ぶ。
【0091】
一回の成形サイクルは、例えば、計量工程、型閉工程、昇圧工程、型締工程、充填工程、保圧工程、冷却工程、脱圧工程、型開工程、および突き出し工程をこの順で有する。ここでの順番は、各工程の開始の順番である。充填工程、保圧工程、および冷却工程は、型締工程の間に行われる。型締工程の開始は充填工程の開始と一致してもよい。脱圧工程の完了は型開工程の開始と一致する。
【0092】
尚、成形サイクル時間の短縮を目的として、同時に複数の工程を行ってもよい。例えば、計量工程は、前回の成形サイクルの冷却工程中に行われてもよく、型締工程の間に行われてよい。この場合、型閉工程が成形サイクルの最初に行われることとしてもよい。また、充填工程は、型閉工程中に開始されてもよい。また、突き出し工程は、型開工程中に開始されてもよい。ノズル320の流路を開閉する開閉弁が設けられる場合、型開工程は、計量工程中に開始されてもよい。計量工程中に型開工程が開始されても、開閉弁がノズル320の流路を閉じていれば、ノズル320から成形材料が漏れないためである。
【0093】
尚、一回の成形サイクルは、計量工程、型閉工程、昇圧工程、型締工程、充填工程、保圧工程、冷却工程、脱圧工程、型開工程、および突き出し工程以外の工程を有してもよい。
【0094】
例えば、保圧工程の完了後、計量工程の開始前に、スクリュ330を予め設定された計量開始位置まで後退させる計量前サックバック工程が行われてもよい。計量工程の開始前にスクリュ330の前方に蓄積された成形材料の圧力を削減でき、計量工程の開始時のスクリュ330の急激な後退を防止できる。
【0095】
また、計量工程の完了後、充填工程の開始前に、スクリュ330を予め設定された充填開始位置(「射出開始位置」とも呼ぶ。)まで後退させる計量後サックバック工程が行われてもよい。充填工程の開始前にスクリュ330の前方に蓄積された成形材料の圧力を削減でき、充填工程の開始前のノズル320からの成形材料の漏出を防止できる。
【0096】
制御装置700は、ユーザによる入力操作を受け付ける操作装置750や画面を表示する表示装置760と接続されている。操作装置750および表示装置760は、例えばタッチパネル770で構成され、一体化されてよい。表示装置760としてのタッチパネル770は、制御装置700による制御下で、画面を表示する。タッチパネル770の画面には、例えば、射出成形機10の設定、現在の射出成形機10の状態等の情報が表示されてもよい。また、タッチパネル770の画面には、例えば、ユーザによる入力操作を受け付けるボタン、入力欄等の操作部が表示されてもよい。操作装置750としてのタッチパネル770は、ユーザによる画面上の入力操作を検出し、入力操作に応じた信号を制御装置700に出力する。これにより、例えば、ユーザは、画面に表示される情報を確認しながら、画面に設けられた操作部を操作して、射出成形機10の設定(設定値の入力を含む)等を行うことができる。また、ユーザが画面に設けられた操作部を操作することにより、操作部に対応する射出成形機10の動作を行わせることができる。なお、射出成形機10の動作は、例えば、型締装置100、エジェクタ装置200、射出装置300、移動装置400等の動作(停止も含む)であってもよい。また、射出成形機10の動作は、表示装置760としてのタッチパネル770に表示される画面の切り替え等であってもよい。
【0097】
尚、本実施形態の操作装置750および表示装置760は、タッチパネル770として一体化されているものとして説明したが、独立に設けられてもよい。また、操作装置750は、複数設けられてもよい。操作装置750および表示装置760は、型締装置100(より詳細には固定プラテン110)の操作側(Y軸負方向)に配置される。
【0098】
(成形品の品質管理)
図3は、制御装置の構成要素の一例を機能ブロックで示す図である。
図3に図示される各機能ブロックは概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。各機能ブロックの全部または一部を、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することが可能である。各機能ブロックにて行われる各処理機能は、その全部または任意の一部が、CPUにて実行されるプログラムにて実現され、あるいは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現されうる。
【0099】
図3に示すように、制御装置700は、例えば、第1物理量の第1実績値が第1設定値に一致するように、第1物理量を制御する動作制御部711を含む。第1物理量は、例えば、成形条件であり、良品の成形品が得られるようにユーザが設定する条件である。第1設定値は、例えば、ユーザによる画面上の入力操作に従って決められる。第1設定値は、後述する条件設定部715によって設定してもよい。条件設定部715は、ユーザの入力した第1設定値を補正する。
【0100】
第1物理量は、例えば、射出条件、及び/又は型締条件を含む。射出条件は、特に限定されないが、例えば、保圧圧力、保圧時間、V/P切換位置、充填速度、シリンダ温度、スクリュ回転数、又はスクリュ背圧である。保圧圧力とは、保圧工程における保持圧力のことである。保圧時間とは、保圧工程における保持圧力を保持する保持時間のことである。充填速度とは、充填工程におけるスクリュ330の前進速度のことである。シリンダ温度とは、シリンダ310の温度のことである。スクリュ回転数とは、計量工程におけるスクリュ330の回転数のことである。スクリュ背圧とは、計量工程におけるスクリュ330に対する背圧のことである。型締条件は、特に限定されないが、例えば、金型温度、又は型締力である。金型温度とは、金型装置800の温度のことである。
【0101】
金型装置800毎に、複数の成形条件の組み合わせが決められる。複数の成形条件の組み合わせデータを、以下、成形条件データセットとも呼ぶ。成形条件データセットは、金型装置800毎に予め記憶媒体702に記憶され、金型装置800の交換時などに記憶媒体702から読み出される。読み出された成形条件データセットは、画面上に表示され、ショットの制御に用いられる。
【0102】
動作制御部711は、読み出された成形条件データセットに従って、第1物理量の第1実績値が第1設定値に一致するように、第1物理量を制御する。第1物理量の制御は、例えばフィードバック制御である。第1物理量のフィードバック制御には、第1制御ゲインが用いられる。第1制御ゲインは、比例ゲイン、積分ゲイン、及び微分ゲインのうちの少なくとも1つを含む。なお、第1物理量の制御には、第1制御ゲインが用いられなくてもよい。
【0103】
動作制御部711は、読み出された成形条件データセットに従って、射出成形機10を制御する。例えば、動作制御部711は、読み出された射出条件に従って、射出装置300を制御する。また、動作制御部711は、読み出された型締条件に従って、型締装置100を制御する。
【0104】
制御装置700は、動作制御部711によって第1物理量を制御したときの、第1物理量とは異なる第2物理量の第2実績値を取得する実績値取得部712を含む。第2物理量は、例えば、成形結果であり、成形品の品質管理に用いられるものである。第2実績値は、射出成形機10の一部である検出器で検出してもよいし、射出成形機10とは別に設けられる検出器で検出してもよい。後者の検出器は、例えば、成形品の重量を検出する重量検出器、又は成形品の色を検出する色検出器などである。
【0105】
第2物理量は、成形品の形状の管理に用いられるものと、成形品の色の管理に用いられるものとに大別される。成形品の形状の管理に用いられるものは、特に限定されないが、例えば、成形品の重量、成形品の寸法、型内圧、最小クッション位置、又は充填圧力の波形の特徴量である。
【0106】
最小クッション位置とは、射出工程中にスクリュ330が最も前進した位置のことである。スクリュ330の位置は、機械的な前進限位置からの距離として表される。最小クッション位置が小さくなるほど、シリンダ310から金型装置800に充填される樹脂の体積が大きくなり、成形品の重量が大きくなる。従って、最小クッション位置を管理すれば、成形品の形状を管理できる。
【0107】
充填圧力の波形の特徴量は、例えば、充填圧力のピーク値、積分値、又は傾きである。充填圧力の波形の特徴量は、金型装置800の内部に充填される樹脂の体積を反映している。従って、充填圧力の波形の特徴量を管理すれば、成形品の形状を管理できる。
【0108】
成形品の色の管理に用いられるものは、特に限定されないが、例えば、成形品の色そのもの、又は計量モータトルクの波形の特徴量である。成形品の色そのものは、例えば色度座標で表される。計量モータトルクとは、計量工程における計量モータ340のトルクのことである。
【0109】
計量モータトルクの波形の特徴量は、例えば、計量モータトルクのピーク値、積分値、又は傾きである。計量モータトルクの波形の特徴量は、樹脂の混ざり方を反映している。樹脂の混ざり方が変わると、成形品の色が変わる。従って、計量モータトルクの波形の特徴量を管理すれば、成形品の色を管理できる。
【0110】
ところで、金型装置800の交換時などに、ユーザは、金型装置800に紐づけた成形条件データセットを読み出し、試し形成を行う。試し成形では、読み出した第1設定値を調節し、成形品を成形し、成形品を評価し、良品が得られる第1設定値を決める。試し成形のことを、段取りとも呼ぶ。
【0111】
制御装置700は、複数のショットにおける、第1物理量の制御結果と、実績値取得部712が取得した第2実績値との組み合わせデータをそれぞれ記憶するデータ記憶部713を含む。第1物理量の制御結果は、例えば第1設定値であるが、第1実績値であってもよい。
【0112】
第1物理量と第2物理量の組み合わせを、表1に示す。
【0113】
【表1】
表1に示すように、第2物理量が成形品の形状の管理に用いられるものである場合には、第1物理量として成形品の形状に影響を与える物理量が選ばれる。また、表1に示すように、第2物理量が成形品の色の管理に用いられるものである場合には、第1物理量として成形品の色に影響を与える物理量が選ばれる。
【0114】
表1において、「相関」が正であることは、第1物理量が大きくなるほど第2物理量が大きくなることを意味する。また、表1において、「相関」が負であることは、第1物理量が大きくなるほど第2物理量が小さくなることを意味する。
【0115】
例えば、第1物理量が保圧圧力であり、且つ第2物理量が成形品の重量である場合、相関は正である。保圧圧力が大きくなるほど、スクリュ330を前方に押す力が大きくなる。その結果、金型装置800の内部に充填される樹脂の体積が大きくなり、成形品の重量が大きくなる。なお、金型装置800の内部に充填される樹脂の体積が大きくなると、成形品の寸法も大きくなる。従って、第1物理量が保圧圧力であり、且つ第2物理量が成形品の寸法である場合も、相関は正である。
【0116】
第1物理量が保圧時間であり、且つ第2物理量が成形品の重量である場合、相関は正である。保圧時間が大きくなるほど、スクリュ330を前方に押す時間が長くなる。その結果、金型装置800の内部に充填される樹脂の体積が大きくなり、成形品の重量が大きくなる。なお、金型装置800の内部に充填される樹脂の体積が大きくなると、成形品の寸法も大きくなる。従って、第1物理量が保圧時間であり、且つ第2物理量が成形品の寸法である場合も、相関は正である。
【0117】
第1物理量がV/P切換位置であり、且つ第2物理量が成形品の重量である場合、相関は負である。V/P切換位置が大きくなるほど、つまり、V/P切換位置が後方になるほど、充填工程におけるスクリュ330の前進距離が短くなる。その結果、充填工程で金型装置800の内部に充填される樹脂の体積が小さくなり、成形品の重量が小さくなる。なお、金型装置800の内部に充填される樹脂の体積が小さくなると、成形品の寸法も小さくなる。従って、第1物理量がV/P切換位置であり、且つ第2物理量が成形品の寸法である場合も、相関は負である。
【0118】
第1物理量が充填速度であり、且つ第2物理量が成形品の重量である場合、相関は正である。充填速度が大きくなるほど、樹脂が金型装置800の内部で冷える前にキャビティ空間801に到達しやすい。それゆえ、充填工程で金型装置800の内部に充填される樹脂の体積が大きくなり、成形品の重量が大きくなる。なお、金型装置800の内部に充填される樹脂の体積が大きくなると、成形品の寸法も大きくなる。従って、第1物理量が充填速度であり、且つ第2物理量が成形品の寸法である場合も、相関は正である。
【0119】
第1物理量がシリンダ温度であり、且つ第2物理量が成形品の重量である場合、相関は負である。シリンダ温度が高いほど、樹脂の温度が高く、樹脂の密度が低い。樹脂の密度が低くなれば、金型装置800の内部に充填されて固化した後の成形品の体積が小さくなり、成形品の重量が小さくなる。従って、第1物理量がシリンダ温度であり、且つ第2物理量が成形品の寸法である場合も、相関は負である。
【0120】
第1物理量が型締力であり、且つ第2物理量が成形品の重量である場合、相関は負である。型締力は、樹脂の充填圧によって固定金型810と可動金型820が開くのを抑制する。樹脂の充填中に固定金型810と可動金型820が開くと、樹脂が漏れ出し、いわゆるバリが発生し、成形品の重量が大きくなる。型締力が大きいほど、樹脂の漏れが小さく、成形品の重量が小さくなる。なお、型締力が大きいほど、樹脂の漏れが小さく、成形品の寸法も小さくなる。従って、第1物理量が型締力であり、且つ第2物理量が成形品の寸法である場合も、相関は負である。
【0121】
第1物理量が保圧圧力であり、且つ第2物理量が型内圧である場合、相関は正である。保圧圧力が大きくなるほど、スクリュ330を前方に押す力が大きくなる。その結果、金型装置800の内部に充填される樹脂の体積が大きくなり、型内圧が大きくなる。
【0122】
第1物理量が保圧時間であり、且つ第2物理量が型内圧である場合、相関は正である。保圧時間が大きくなるほど、スクリュ330を前方に押す時間が長くなる。その結果、金型装置800の内部に充填される樹脂の体積が大きくなり、型内圧が大きくなる。
【0123】
第1物理量がV/P切換位置であり、且つ第2物理量が型内圧である場合、相関は負である。V/P切換位置が大きくなるほど、つまり、V/P切換位置が後方になるほど、充填工程におけるスクリュ330の前進距離が短くなる。その結果、充填工程で金型装置800の内部に充填される樹脂の体積が小さくなり、型内圧が小さくなる。
【0124】
第1物理量が充填速度であり、且つ第2物理量が型内圧である場合、相関は正である。充填速度が大きくなるほど、樹脂が金型装置800の内部で冷える前にキャビティ空間801に到達しやすい。それゆえ、充填工程で金型装置800の内部に充填される樹脂の体積が大きくなり、型内圧が大きくなる。
【0125】
第1物理量がシリンダ温度であり、且つ第2物理量が型内圧である場合、相関は負である。シリンダ温度が高いほど、樹脂の温度が高く、樹脂の密度が低い。樹脂の密度が低くなれば、金型装置800の内部に充填されて固化した後の成形品の体積が小さくなり、型内圧が小さくなる。
【0126】
第1物理量が型締力であり、且つ第2物理量が型内圧である場合、相関は負である。型締力は、樹脂の充填圧によって固定金型810と可動金型820が開くのを抑制し、樹脂が漏れ出すのを抑制する。型締力が大きいほど、樹脂の漏れが小さい。樹脂の漏れが小さいほど、金型装置800の内部に充填される樹脂の体積が小さくなり、型内圧が小さくなる。
【0127】
第1物理量が保圧圧力であり、且つ第2物理量が最小クッション位置である場合、相関は負である。保圧圧力が大きくなるほど、スクリュ330を前方に押す力が大きくなる。その結果、スクリュ330が前方に移動しやすく、最小クッション位置が小さくなる。
【0128】
第1物理量が保圧時間であり、且つ第2物理量が最小クッション位置である場合、相関は負である。保圧時間が大きくなるほど、スクリュ330を前方に押す時間が長くなる。その結果、スクリュ330が前方に移動しやすく、最小クッション位置が小さくなる。
【0129】
第1物理量がV/P切換位置であり、且つ第2物理量が最小クッション位置である場合、相関は正である。V/P切換位置が大きくなるほど、つまり、V/P切換位置が後方になるほど、充填工程におけるスクリュ330の前進距離が短くなる。その結果、最小クッション位置が大きくなる。
【0130】
第1物理量がシリンダ温度であり、且つ第2物理量が最小クッション位置である場合、相関は負である。シリンダ温度が高いほど、樹脂の温度が高く、樹脂の密度が低い。樹脂の密度が低くなれば、金型装置800の内部に充填されて固化した後の成形品の体積が大きくなり、最小クッション位置が小さくなる。
【0131】
第1物理量が型締力であり、且つ第2物理量が最小クッション位置である場合、相関は正である。型締力は、樹脂の充填圧によって固定金型810と可動金型820が開くのを抑制し、樹脂が漏れ出すのを抑制する。型締力が大きいほど、樹脂の漏れが小さい。樹脂の漏れが小さいほど、金型装置800の内部に充填される樹脂の体積が小さくなり、最小クッション位置が大きくなる。
【0132】
第1物理量がV/P切換位置であり、且つ第2物理量が充填圧のピーク値である場合、相関は負である。V/P切換位置が大きくなるほど、つまり、V/P切換位置が後方になるほど、充填工程におけるスクリュ330の前進距離が短くなる。その結果、充填工程で金型装置800の内部に充填される樹脂の体積が小さくなり、充填圧のピーク値が小さくなる。
【0133】
第1物理量が充填速度であり、且つ第2物理量が充填圧のピーク値である場合、相関は正である。充填速度が大きくなるほど、樹脂が金型装置800の内部で冷える前にキャビティ空間801に到達しやすい。それゆえ、充填工程で金型装置800の内部に充填される樹脂の体積が大きくなり、充填圧のピーク値が大きくなる。
【0134】
第1物理量がシリンダ温度であり、且つ第2物理量が充填圧のピーク値である場合、相関は負である。シリンダ温度が高いほど、樹脂の温度が高く、樹脂の密度が低い。樹脂の密度が低くなれば、金型装置800の内部に充填されて固化した後の成形品の体積が小さくなり、充填圧のピーク値が小さくなる。
【0135】
第1物理量が型締力であり、且つ第2物理量が充填圧のピーク値である場合、相関は負である。型締力は、樹脂の充填圧によって固定金型810と可動金型820が開くのを抑制し、樹脂が漏れ出すのを抑制する。型締力が大きいほど、樹脂の漏れが小さい。樹脂の漏れが小さいほど、金型装置800の内部に充填される樹脂の体積が小さくなり、充填圧のピーク値が小さくなる。
【0136】
なお、第1物理量がスクリュ回転数、スクリュ背圧、又はシリンダ温度であり、且つ第2物理量が計量モータトルクの波形の特徴量であってもよい。スクリュ回転数、スクリュ背圧、又はシリンダ温度が変わると、樹脂の混ざり方が変わり、計量モータトルクの波形の特徴量が変わる。また、樹脂の混ざり方が変わるので、成形品の色が変わる。
【0137】
また、第1物理量が充填速度、金型温度、又はシリンダ温度であり、且つ第2物理量が成形品の色そのものであってもよい。充填速度が変わると、金型装置800の内部における樹脂の流速が変わり、成形品の色が変わる。また、金型温度、又はシリンダ温度が変わると、金型装置800の内部における樹脂の固化時間が変わり、成形品の色が変わる。
【0138】
本実施形態では1つの第2物理量と1つの第1物理量とが紐づけられるが、本開示の技術はこれに限定されない。1つの第2物理量に対して、複数の第1物理量が紐づけられてもよい。同様に、1つの第1物理量に対して、複数の第2物理量が紐づけられてもよい。
【0139】
データ記憶部713が記憶する、第1物理量と第2物理量との組み合わせデータを、以下、単に「組み合わせデータ」とも呼ぶ。組み合わせデータは、例えば試し成形の際に、複数得られる。
【0140】
例えば、試し成形の際に、第1設定値を変更しながらショットを複数回実施し、第1設定値ごとに第2実績値を取得することで、第1設定値と第2実績値との組み合わせデータが複数得られる。複数の組み合わせデータは、異なる複数の設定値を含む。
【0141】
あるいは、試し成形の際に、第1設定値を固定してショットを複数回実施し、第1実績値ごとに第2実績値を取得することで、第1実績値と第2実績値との組み合わせデータが複数得られる。複数の組み合わせデータは、異なる複数の実績値を含む。
【0142】
複数の組み合わせデータから、第1物理量をどの程度どちらの方向に変えると、第2物理量がどの程度どちらの方向に変わるのかが分かる。
【0143】
そこで、制御装置700は、データ記憶部713に記憶した複数の組み合わせデータに基づき、第2物理量を制御するための第2制御ゲインを算出するゲイン算出部714を含む。ゲイン算出部714は、例えば第2制御ゲインの初期値を算出する。複数の組み合わせデータは、異なる複数の第1設定値を含んでもよいし、異なる複数の第1実績値を含んでもよい。第2制御ゲインの初期値は、金型装置800が交換される度に、一度リセットされ、あらためて算出される。
【0144】
ゲイン算出部714は、例えば、金型装置800が交換されたか否かを、動作制御部711が実際に使用する成形条件データセットが切り替えられたか否かで判断する。そして、ゲイン算出部714は、金型装置800が交換されたと判断すると、第2制御ゲインの初期値をリセットし、第2制御ゲインの初期値をあらためて算出する。
【0145】
本実施形態によれば、上記の通り、ゲイン算出部714が第2制御ゲインを算出する。従って、金型装置800が変わっても、変わった後の金型装置800に適合する第2制御ゲインを算出でき、第2実績値を第2設定値に収束できる。第2実績値を第2設定値に収束する効果は、金型装置800が変わるときだけではなく、成形材料が変わるとき、又は周辺環境が変わるときにも得られる。成形材料である樹脂の変化は、樹脂の組成の変化と、樹脂のロットの変化とを含む。周辺環境の変化は、気温の変化を含む。
【0146】
ゲイン算出部714は、例えば比例ゲイン、積分ゲイン、及び微分ゲインから選ばれる1つ以上を算出する。比例ゲインは、第2実績値と第2設定値の偏差に比例して、第1設定値を変動させる。積分ゲインは、第2実績値と第2設定値の偏差を積分した積分値に比例して、第1設定値を変動させる。微分ゲインは、第2実績値と第2設定値の偏差を微分した微分値に比例して、第1設定値を変動させる。
【0147】
ゲイン算出部714は、例えば、第2実績値が許容範囲内に収まるまでの整定時間が設定時間以下になるように、第2制御ゲインの初期値を算出する。許容範囲と設定時間は、それぞれ、第2物理量と第1物理量の組み合わせなどで決められる。また、許容範囲は、第2設定値を基準に決められる。許容範囲は、下限値と上限値を含み、下限値と上限値の間に第2設定値を含む。時間は、ショット数で表されてもよい。
【0148】
動作制御部711は、第2物理量の第2実績値が第2設定値に一致するように、第2物理量を第2制御ゲインの初期値で制御する。金型装置800が変わっても、変わった後の金型装置800に適合する第2制御ゲインを使用でき、第2実績値を第2設定値に収束できる。この効果は、金型装置800が変わるときだけではなく、樹脂が変わるとき、又は周辺環境が変わるときにも得られる。
【0149】
制御装置700は、第2実績値が第2設定値に一致するように、第2制御ゲインの初期値に基づき、第1設定値を調節する条件設定部715を含む。例えば、条件設定部715は、第2制御ゲインの初期値を用いて、第1設定値をフィードバック制御する。金型装置800が変わっても、変わった後の金型装置800に適合する第2制御ゲインを用いて第1設定値を調節できる。この効果は、金型装置800が変わるときだけではなく、樹脂が変わるとき、又は周辺環境が変わるときにも得られる。
【0150】
動作制御部711は、第1実績値が、条件設定部715によって調節された第1設定値に一致するように、第1物理量を制御する。金型装置800が変わっても、変わった後の金型装置800に適合する第1設定値を使用でき、第2実績値を第2設定値に収束できる。この効果は、金型装置800が変わるときだけではなく、樹脂が変わるとき、又は周辺環境が変わるときにも得られる。
【0151】
データ記憶部713は、条件設定部715によって第1設定値を調節した後のショットにおける組み合わせデータを記憶する。後述するように、記憶した組み合わせデータを用いて、初期値が適切か否かを判断できる。また、例えば、量産成形の途中で樹脂又は周辺環境が変わっても、第2制御ゲインを補正できる。
【0152】
制御装置700は、第2実績値が第2設定値に設定時間内に収束するか否かに基づき、ゲイン算出部714によって算出した第2制御ゲインの初期値が適切か否かを判断する適否判断部716を含む。設定時間内に第2実績値が許容範囲に収束した場合に、初期値が適切であると判断される。また、設定時間内に第2実績値が許容範囲に収束しなかった場合に、初期値が不適切であると判断される。
【0153】
制御装置700は、適否判断部716によって第2制御ゲインの初期値が不適切と判断すると、データ記憶部713に記憶した複数の組み合わせデータに基づき第2制御ゲインを補正するゲイン補正部717を含む。ゲイン補正部717は、例えば、第2実績値が許容範囲内に収まるまでの整定時間が設定時間以下になるように、第2制御ゲインを補正する。時間は、ショット数で表されてもよい。
【0154】
条件設定部715は、ゲイン補正部717によって補正した後の第2制御ゲインを用いて、第2実績値が第2設定値に一致するように、第1設定値を調節する。量産成形の途中で樹脂又は周辺環境が変わっても、変わった後の樹脂又は周辺環境に適合する第2制御ゲインを用いて、第1設定値を調節できる。
【0155】
動作制御部711は、第1実績値が、条件設定部715によって調節された第1設定値に一致するように、第1物理量を制御する。従って、量産成形の途中で樹脂又は周辺環境が変わり、第2実績値が許容範囲から外れても、再び、第2実績値を第2設定値に収束できる。
【0156】
制御装置700は、データ記憶部713に記憶した複数の組み合わせデータに基づき第2制御ゲインを更新するゲイン更新部718を含んでもよい。ゲイン更新部718は、例えば第2実績値が第2設定値に設定時間内に収束しなかった場合に、第2実績値が許容範囲内に収まるまでの整定時間が設定時間以下になるように、第2制御ゲインを補正する。時間は、ショット数で表されてもよい。
【0157】
図4は、制御装置の処理の一例を示すフローチャートである。
図4に示すように、制御装置700は、試し成形、実績値取得及びデータ記憶(ステップS101)と、初期値算出(ステップS102)と、量産成形、実績値取得及びデータ記憶(ステップS103)とを実施する。
【0158】
動作制御部711が試し成形を行う間、第1設定値、ひいては第1実績値が繰り返し変更され、実績値取得部712が第2実績値を繰り返し取得し、データ記憶部713が複数の組み合わせデータを記憶する。複数の組み合わせデータは、異なる複数の第1設定値を含んでもよいし、異なる複数の第1実績値を含んでもよい。複数の組み合わせデータから、第1物理量をどの程度どちらの方向に変えると、第2物理量がどの程度どちらの方向に変わるのかが分かる。
【0159】
次に、ゲイン算出部714が、試し成形の間に得られた複数の組み合わせデータを用いて、第2制御ゲインの初期値を算出する。
【0160】
次に、動作制御部711が量産成形を行う間、実績値取得部712が第2実績値を取得し、データ記憶部713が組み合わせデータを記憶する。
【0161】
図5は、量産成形中の処理の一例を示すフローチャートである。
図5に示す処理は、量産成形中に繰り返し実施される。
図5に示すように、条件設定部715は、第2実績値と第2設定値の偏差の算出(ステップS201)と、第1設定値の調節(ステップS202)とを実施する。条件設定部715は、
図4のステップS102で算出した第2制御ゲインの初期値を用いて、第1設定値を調節する。
【0162】
図6は、量産成形中の処理の一例を示すフローチャートである。
図6に示す処理は、量産成形中に繰り返し実施される。
図6に示すように、先ず、適否判断部716は第2制御ゲインの初期値が適切であるか否かを判断する(ステップS301)。第2制御ゲインの初期値が適切である場合、ゲイン補正部717が第2制御ゲインを補正することなく維持する(ステップS302)。一方、第2制御ゲインの初期値が不適切である場合、ゲイン補正部717が第2制御ゲインを補正する(ステップS303)。
【0163】
以上、本発明に係る射出成形機の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態などに限定されない。特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更、修正、置換、付加、削除、及び組み合わせが可能である。それらについても当然に本発明の技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0164】
10 射出成形機
700 制御装置
711 動作制御部
712 実績値取得部
713 データ記憶部
714 ゲイン算出部