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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-14
(45)【発行日】2024-06-24
(54)【発明の名称】横コイル付きデュアル検出器
(51)【国際特許分類】
   G01V 3/10 20060101AFI20240617BHJP
   G01S 13/86 20060101ALI20240617BHJP
   G01S 13/88 20060101ALI20240617BHJP
【FI】
G01V3/10 F
G01S13/86
G01S13/88 200
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020533021
(86)(22)【出願日】2018-12-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-22
(86)【国際出願番号】 EP2018085038
(87)【国際公開番号】W WO2019115798
(87)【国際公開日】2019-06-20
【審査請求日】2021-06-15
【審判番号】
【審判請求日】2023-04-06
(31)【優先権主張番号】1762289
(32)【優先日】2017-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】517131396
【氏名又は名称】マネスキ、アレッサンドロ
【氏名又は名称原語表記】MANNESCHI,Alessandro
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】マネスキ、アレッサンドロ
【合議体】
【審判長】石井 哲
【審判官】▲高▼見 重雄
【審判官】松本 隆彦
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-527628(JP,A)
【文献】特開平9-33194(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0113648(US,A1)
【文献】米国特許第5119028(US,A)
【文献】米国特許第3758849(US,A)
【文献】欧州特許出願公開第0654685(EP,A2)
【文献】米国特許第9733353(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01V1/00-99/00
G01S7/00-7/42
G01S13/00-13/95
G01R33/00-33/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
デュアル検出器(1)を使用して対象物体を検出する方法であって、前記デュアル検出器(1)は、互いに異なる送信コイル(12)および受信コイル(13)を含む誘導センサを有する検出ヘッド(10)を備え、前記送信コイル(12)及び前記受信コイル(13)はそれぞれループを形成し、前記送信コイル(12)の前記ループは、前記受信コイル(13)の前記ループと少なくとも部分的に重なって1つの結合領域(14)を形成し、前記結合領域(14)は、第1の軸線(X)を規定する第1の長手方向に沿って細長く、
前記デュアル検出器(1)は、走査軸線(X)を規定する走査方向に沿って移動し、前記移動中、前記検出ヘッド(10)は、前記結合領域(14)における前記第1の軸線(X)が前記走査軸線(X)に実質的に平行になるように向けられ
前記デュアル検出器(1)は、送信アンテナ(61)および受信アンテナ(62)を含む地中探知レーダ(60)を備え、前記送信アンテナ(61)および前記受信アンテナ(62)はそれぞれ、前記送信コイル(12)および前記受信コイル(13)における前記ループの1つの中心に収容されていることを特徴とする方法。
【請求項2】
械式リンク(30)によってハンドル(20)に固定された検出ヘッド(10)を備えるデュアル検出器(1)であって
前記検出ヘッド(10)は、
プラットフォーム(11)と、
前記プラットフォーム(11)に固定され、互いに異なる送信コイル(12)と受信コイル(13)とを含む誘導センサであって、前記送信コイル(12)及び前記受信コイル(13)はそれぞれループを形成し、前記送信コイル(12)の前記ループは、前記受信コイル(13)の前記ループと少なくとも部分的に重なって1つの結合領域(14)を形成し、前記結合領域(14)は、第1の軸線(X)を規定する第1の長手方向に沿って細長い、誘導センサと、
を備え、
前記デュアル検出器(1)は、前記ハンドル(20)が前記プラットフォーム(11)に垂直な平面(P)内に延び、前記結合領域(14)の前記第1の軸線(X)が前記平面(P)を横切り、
前記デュアル検出器(1)は、送信アンテナ(61)および受信アンテナ(62)を含む地中探知レーダ(60)を備え、前記送信アンテナ(61)および前記受信アンテナ(62)はそれぞれ、前記送信コイル(12)および前記受信コイル(13)における前記ループの1つの中心に収容されていることを特徴とする、デュアル検出器(1)。
【請求項3】
各々の前記ループが、第2の軸線(X)を規定する第2の長手方向に沿って実質的に細長く、第1の軸線(X)および第2の軸線(X)が実質的に平行である、請求項2に記載のデュアル検出器(1)。
【請求項4】
前記検出ヘッド(10)が細長く、前記第1の軸線(X)に沿って延在している、請求項2または3のいずれか一項に記載のデュアル検出器(1)。
【請求項5】
前記送信コイル(12)および前記受信コイル(13)は、巻線を含み、前記送信コイル(12)は、前記受信コイル(13)よりも巻数が多い、請求項2~4のいずれか一項に記載のデュアル検出器(1)。
【請求項6】
前記送信コイル(12)および前記受信コイル(13)が前記プラットフォーム(11)上に直接印刷されて前記プラットフォーム(11)が回路を形成している、請求項2~5のいずれか一項に記載のデュアル検出器(1)。
【請求項7】
前記送信コイル(12)および前記受信コイル(13)が同極である、請求項2~6のいずれか一項に記載のデュアル検出器(1)。
【請求項8】
前記機械式リンク(30)が第3の軸線(X)を中心に回転するように固定され、前記第3の軸線(X)が前記平面(P)に含まれる、請求項2~7のいずれか一項に記載のデュアル検出器(1)。
【請求項9】
前記第3の軸線(X)は、前記第1の軸線(X)を横切っている、請求項8に記載のデュアル検出器(1)。
【請求項10】
前記機械式リンク(30)が、ピボットリンク、組み込みリンク又はボールジョイントリンクを含む、請求項2~9のいずれか一項に記載のデュアル検出器(1)。
【請求項11】
操作者によって把持されるように構成されたグリップ(42)をさらに備え、前記グリップ(42)は前記平面(P)内で延在している、請求項2~10のいずれか一項に記載のデュアル検出器(1)。
【請求項12】
前記地中探知レーダ(60)の前記送信アンテナ(61)および前記受信アンテナ(62)は、クワッドリッジホーン無線アンテナ、蝶ネクタイアンテナ、長方形の蝶ネクタイアンテナ、アルキメデスのスパイラルアンテナ、対数スパイラルアンテナ、ビバルディアンテナ、前記第1の軸線(X)に垂直な第4の軸線(X)に沿って延在する対数スパイラルアンテナ、のうちの1つである、請求項2~11のいずれか一項に記載のデュアル検出器(1)。
【請求項13】
前記送信アンテナ(61)および前記受信アンテナ(62)は、少なくとも部分的にニッケルまたはクロムで作成されている、請求項2~12のいずれか一項に記載のデュアル検出器(1)。
【請求項14】
前記送信アンテナ(61)および前記受信アンテナ(62)の中央部分が銅で作られ、且つ表面に金で作られた保護層を含む、請求項13に記載のデュアル検出器(1)。
【請求項15】
前記送信アンテナ(61)および前記受信アンテナ(62)は、1ミクロン未満に等しい厚さを有する、請求項14のいずれか一項に記載のデュアル検出器(1)。
【請求項16】
前記送信アンテナ(61)および前記受信アンテナ(62)は、200nmに等しい厚さを有する、請求項2~14のいずれか一項に記載のデュアル検出器(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物体の検出の分野に関し、より詳細には、地面に埋設された地雷などの爆薬の検出に関する。
【背景技術】
【0002】
爆発性電荷を検出するために、誘導センサと地中探知レーダとを収容する検出ヘッドを含むデュアル技術検出器(「デュアル検出器」)を、検出された材料の種類(材料の誘電率の違いとレーダの相対位置に対する誘導センサの金属)に関してこれらの技術が補完的である限り、使用することが知られている。
【0003】
しかしながら、出願人は、使用時に、地面が電磁的観点から中立ではなかったため、巻線間の結合を妨害する可能性があることに気付いた。また、地面が均一な磁性であることはまれであるため、操作者が検出器で地面を走査している間、検出された信号は、金属の破片の存在や地面の構成によってのみ変化する可能性があり、誤警報をトリガすることさえある。
【0004】
さらに、これらの検出器を使用する操作者は、訓練が不十分であり、検出器を適切に保持していないか、不適切な走査動作を実行している可能性がある。次に、検出ヘッドは地面に対して横方向の角度を形成するため、一方のコイルが他方のコイルよりも地面に近くなり、信号の変調が強くなるため、誤警報が発生する危険がある。また、操作者が十分な訓練を受けており、走査動作の任意の時点で検出ヘッドを地面とほぼ平行に保とうとした場合でも、地面の凹凸を考慮してその傾斜を局所的に変更することはできない。
【0005】
これらの困難を克服するために、製造業者はこれらの検出器の感度を下げる傾向がある。ただし、地面に埋もれた対象物を検出できなくなり、操作者の命を危険にさらすことになるリスクがある。
【0006】
米国特許第3758849号明細書は、互いに異なる送信コイルと受信コイルとを含む誘導センサを有する検出ヘッドを備える検出器を使用して、対象物体を検出するための方法を記載している。送信コイルおよび受信コイルは結合領域を形成する。
【0007】
ただし、検出器は固定されており、走査方向に沿って検出器の前を移動するのは走査対象である。したがって、検出器は地面を走査しない。さらに、検出器はデュアル検出器、すなわち、誘導センサに加えて追加の検出手段を備える検出器ではない。
【0008】
米国特許第9733353号明細書は、単一の検出ループを含む検出器を記載している。
【0009】
国際公開第2012/024133号は、スルーバーおよびV字型レーダアンテナを形成するように配置された受信コイルおよび送信コイルによって形成された誘導センサを備えた検出器を記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】米国特許第3758849号明細書
【文献】米国特許第9733353号明細書
【文献】国際公開第2012/024133号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明の目的は、誘導センサと地中探知レーダなどの別のセンサとを収容する検出ヘッドを備え、より高い感度を持ちながら、地面の走査中に発生する可能性のある誤警報を低減することができるデュアル検出器を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このために、本発明は、デュアル検出器を使用して対象物体を検出する方法を提案し、上記検出器は、互いに異なる送信コイルおよび受信コイルを含む誘導センサを有する検出ヘッドを備え、送信コイル及び受信コイルはそれぞれループを形成し、送信コイルのループは、受信コイルのループと少なくとも部分的に重なって結合領域を形成し、結合領域は、第1の軸線を規定する第1の長手方向に沿って細長い。検出器は、走査軸線を規定する走査方向に沿って移動し、移動中、検出ヘッドは、結合領域における第1の軸線が走査軸線に実質的に平行になるように向けられる。
【0013】
第2の態様によれば、本発明は、上述した検出方法での使用に適したデュアル検出器を提案し、検出器は、機械式リンクによってハンドルに固定された検出ヘッドを備え、検出ヘッドは、
プラットフォームと、
プラットフォームに固定され、互いに異なる送信コイルと受信コイルとを含む誘導センサであって、送信コイル及び受信コイルはそれぞれループを形成し、送信コイルのループは、受信コイルのループと少なくとも部分的に重なって結合領域を形成し、結合領域は、第1の軸線を規定する第1の長手方向に沿って細長い、誘導センサと、を備えている。さらに、検出器は、ハンドルがプラットフォームに垂直な平面内に延び、結合領域の第1の軸線が平面を横切っている。
【0014】
上記のデュアル検出器のいくつかの好ましいが非限定的な特徴は、以下のとおり、個別にまたは組み合わせて取得される。
各々のループは、第2の軸線を規定する第2の長手方向に沿って実質的に細長く、第1の軸線および第2の軸線は実質的に平行である。
検出ヘッドは細長く、第1の軸線に沿って延在している。
送信コイルおよび受信コイルは、巻線を含み、送信コイルは、受信コイルよりも巻数が多い。
送信コイルおよび受信コイルがプラットフォーム上に直接印刷されてプラットフォームが回路を形成している。
送信コイルおよび受信コイルは同極である。
機械式リンクが第3の軸線を中心に回転するように固定され、上記第3の軸線が平面に含まれる。
第3の軸線は、第1の軸線を横切っている。
機械式リンクは、ピボットリンク、組み込みリンク又はボールジョイントリンクを含む。
検出器は、操作者によって把持されるように構成されたグリップをさらに備え、上記グリップは平面内で延在している。
検出器は、送信アンテナおよび受信アンテナを含む地中探知レーダをさらに備え、送信アンテナおよび受信アンテナはそれぞれ、送信コイルおよび受信コイルにおけるループの1つの中心に収容されている。
地中探知レーダの送信アンテナおよび受信アンテナは、クワッドリッジホーン無線アンテナ、蝶ネクタイアンテナ、長方形の蝶ネクタイアンテナ、アルキメデスのスパイラルアンテナ、対数スパイラルアンテナ、ビバルディアンテナ、第1の軸線に垂直な第4の軸線に沿って延在する対数スパイラルアンテナ、のうちの1つである。
送信アンテナおよび受信アンテナは、少なくとも部分的にニッケルまたはクロムで作成されている。
送信アンテナおよび受信アンテナの中央部分が銅で作られ、且つ表面に金で作られた保護層を含む。
送信アンテナおよび受信アンテナは、1ミクロン未満、好ましくは約200nmに等しい厚さを有する。
【0015】
本発明の他の特徴、目的、および利点は、以下の詳細な説明を読み、非限定的な例として与えられる添付の図面に関連して、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明による検出器の例示的な実施形態の斜視図である。
図2図1の検出器の分解斜視上面図である。
図3図1の検出器の分解斜視底面図である。
図4a】従来の検出器の送信コイルと受信コイルの向きを、左右の走査方向の関数として概略的に示す。
図4b】本発明による検出器の送信および受信コイルの向きを、左右の走査方向の関数として概略的に示す。
図5a】鋼球が置かれている磁気地面と検出器が接触していて、検出器が左右の走査動作に追従している場合における従来の検出器で測定された信号の振幅を示す。
図5b】鋼球が置かれている磁気地面と検出器が接触していて、検出器が左右の走査動作に追従している場合における本発明による検出器で測定された信号の振幅を示す。
図6a】LI-11型のシミュレータが埋め込まれた磁気地面と検出器が接触し、検出器が左右の走査動作に追従している場合における、従来の検出器で測定された信号の振幅を示す。
図6b】LI-11型のシミュレータが埋め込まれた磁気地面と検出器が接触し、検出器が左右の走査動作に追従している場合における、本発明による検出器で測定された信号の振幅を示す。
図7a】PMA-2型のシミュレータが埋め込まれた磁気地面と検出器が接触し、検出器が左右の走査動作に追従している場合における、従来の検出器で測定された信号の振幅を示す。
図7b】PMA-2型のシミュレータが埋め込まれた磁気地面と検出器が接触し、検出器が左右の走査動作に追従している場合における、本発明による検出器で測定された信号の振幅を示す。
図8a】鋼球が置かれている磁気地面から検出器が5cm離れていて、検出器が左右の走査動作に追従している場合における従来の検出器で測定された信号の振幅を示す。
図8b】鋼球が置かれている磁気地面から検出器が5cm離れていて、検出器が左右の走査動作に追従している場合における本発明による検出器で測定された信号の振幅を示す。
図9a】LI-11型のシミュレータが埋め込まれた磁気地面から検出器が5cm離れていて、検出器が左右の走査動作に追従している場合における従来の検出器で測定された信号の振幅を示す。
図9b】LI-11型のシミュレータが埋め込まれた磁気地面から検出器が5cm離れていて、検出器が左右の走査動作に追従している場合における本発明による検出器で測定された信号の振幅を示す。
図10a】PMA-2型のシミュレータが埋め込まれた磁気地面から検出器が5cm離れていて、検出器が左右の走査動作に追従している場合における従来の検出器で測定された信号の振幅を示す。
図10b】PMA-2型のシミュレータが埋め込まれた磁気地面から検出器が5cm離れていて、検出器が左右の走査動作に追従している場合における本発明による検出器で測定された信号の振幅を示す。
図11a】磁気地面から検出器が5cm離れていて、検出器が横に静的に20°傾いている場合における従来の検出器で測定された信号の振幅を示す。
図11b】磁気地面から検出器が5cm離れていて、検出器が横に静的に20°傾いている場合における本発明による検出器で測定された信号の振幅を示す。
図12a】磁気地面から検出器が5cm離れていて、検出器が横に静的に20°傾いて左右の走査動作に追従している場合における従来の検出器で測定された信号の振幅を示す。
図12b】磁気地面から検出器が5cm離れていて、検出器が横に静的に20°傾いて左右の走査動作に追従している場合における本発明による検出器で測定された信号の振幅を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明によるデュアル検出器1は、機械式リンク30によってハンドル20に固定された検出ヘッド10を備えている。
【0018】
検出ヘッド10は、対象製品を検出するために地面に近づくことを意図した部分に相当する。この目的のため、検出ヘッド10は、
プラットフォーム11と、
プラットフォーム11に固定され、互いに異なる送信コイル12と受信コイル13とを含む誘導センサと、
好ましくは地中探知レーダである別のセンサと、を備えている。
【0019】
送信コイル12および受信コイル13は、同極巻線である。送信コイル12および受信コイル13は、それ自体既知の方法により、300Hz~180kHzの間に含まれる周波数を有する波を送信および受信するように構成されている。それらはそれぞれループを形成し、送信コイル12のループが受信コイル13のループと少なくとも部分的に重なり、結合領域14を形成するように形作られている。この構成により、相互インダクタンスが最小の誘導センサを得ることができる。
【0020】
比較として、送信と受信とを構成する単一のコイルを含み、外部干渉の影響を無効化するために反対方向の直列の2つのループで形成される誘導センサと比較して、送信コイル12および受信コイル13として2つの異なるコイル12、13を使用することにより、信号を増幅することができ、したがって、誤警報のリスクを回避するために検出閾値を下げる必要がない。
【0021】
結合領域は、第1の軸線Xを規定する第1の長手方向に沿って細長い。誤警報のリスクをさらに低減し、同時に検出器1の感度を高めるために、誘導センサは、使用時に、受信コイル12、13が固定されたプラットフォーム11に垂直な平面Pにハンドル20が延在するとともに結合領域14の第1の軸線Xが上記平面Pを横切るように配置される。
【0022】
「横方向」とは、第1の軸線Xが、平面Pと70°~110°の間に含まれる角度、好ましくは90°程度を形成することをここで理解されたい。さらに、送信コイル12のループと受信コイル13のループは対称的な形状であり、第1の軸線Xは、2つのループの交点14a、14bを通過する。
【0023】
部品または要素の「長手方向」により、それに沿って部品または要素がその最大寸法を有する方向が理解されるであろう。
【0024】
換言すれば、走査軸線Xを規定する、すなわち、操作者の前進方向に対して垂直である右/左走査運動に従って行われる、操作者による地面の走査中、検出ヘッド10は、結合領域14が走査運動の方向と実質的に整列するように方向付けられる。このようにして、検出ヘッド10の傾斜および/または地面の凹凸が生じた場合でも、送信コイル12および受信コイル13は常に地面から実質的に等しい距離にあるので、誤警報のリスクは大幅に減少する。さらに、この新しい方向のおかげで、結合領域14が走査軸線Xを横断し、したがって必然的に交差する従来の検出器(図4a)の場合とは異なり、地面の金属くずは必ずしも結合領域14を通過しない。
【0025】
送信コイル12のループおよび受信コイル13のループは両方とも、第2の軸線Xを規定する第2の長手方向に沿って細長い。この第2の軸線Xは、第1の軸線Xに実質的に平行である。換言すれば、送信コイル12のループ、結合領域14、および受信コイル13のループは、同じ長手方向を有し、互いに隣接して延在する。
【0026】
さらに、検出ヘッド10の形状は、送信および受信コイル12、13の構成および空間配向に適合されている。したがって、検出ヘッド10は、ループと同じ方向に沿って細長く、第1の軸線Xに実質的に平行な長手方向に沿って延在する。
【0027】
第1の実施形態では、送信コイル12および受信コイル13は、プラットフォーム11上に直接印刷される。したがって、プラットフォーム11および送信および受信コイル12、13は、プリント回路を形成する。この実施形態は、検出ヘッド10内の誘導センサのコンパクトさおよび検出器1の全体の重量を低減するという利点を有する。ただし、そのコストはかなりのものである。その結果、図2および図3に示される第2の実施形態では、送信コイル12および受信コイル13は巻線を含んでもよく、送信コイル12は受信コイル13よりも巻数が多い。
【0028】
機械式リンク30は、ビルトイン、ピボットまたはボールジョイント型のリンクを含み得る。好ましくは、機械式リンク30は、平面Pに含まれ、第1の軸線Xに垂直な第3の軸線Xの周りで回転が固定される。第3の軸線Xの周りの回転を阻止することにより、操作者は、検出シーケンスの間、結合領域14が走査軸線Xに実質的に平行になるように検出器1を握るように促される。
【0029】
必要に応じて、検出器1は、操作者による検出器1の把持のための手段40をさらに備える。通常、把持手段40は、操作者の腕をスライド可能に受容するように構成されたフープ41と、操作者が把持するように構成されたグリップ42とを備え得る。
【0030】
一実施形態では、グリップ42は、操作者に構造的に検出器1を配置させるために平面Pに延在し、検出シーケンス中に結合領域14が走査軸線Xに実質的に平行に延在するように配向される。
【0031】
ハンドル20は、入れ子式であってもよく、および/または例えばねじ止めによって互いに固定される前に互いに組み立てられるように構成されたいくつかの別個の部分を備えてもよい。
【0032】
それ自体既知の方法で、検出器1は、特に、1つまたは複数の電子カード、メモリ、適切な場合には警報手段および/または表示装置51などの誘導センサ12、13によって検出された信号を処理するように構成されたマイクロプロセッサを含む処理手段50を含む。
【0033】
処理手段50は、全体的または部分的に把持手段40に収容され得る。
【0034】
図5a~図10bは、一方では、従来の検出器1(図Ya、Y∈[5;12])、つまり送信コイルと受信コイルが互いに重なり合っているが、結合領域が走査軸線Xに垂直に延在している誘導センサを含むデュアル検出器1、を使用し、そして他方では、本発明による、すなわち、送信コイル12および受信コイル13の軸線Xが走査軸線Xに平行である検出器1(図Yb、Y∈[5;12])を使用して実行された最初の一連の比較試験を示している。
【0035】
これらの試験は、磁気地面で行われた。第1のケース(図5a、図5b、図8aおよび図8b)では、直径6.5mmの鋼球が磁気地面に置かれた。第2のケース(図6a、図6b、図9a、図9b)では、LI-11型の起爆装置シミュレータが磁気地面に埋め込まれた。第3のケース(図7a、図7b、図10aおよび図10b)では、PMA-2型の起爆装置シミュレータが磁気地面に埋め込まれた。
【0036】
検出ヘッド10は、現場の作業者に推奨される動作に応じて、左右の走査動作に沿って通過している。左右走査運動により、ここでは横方向運動、すなわち、ハンドル20が延在する平面Pに垂直な走査軸線Xに沿う方向が理解される。
【0037】
この最初の一連のテストでは、走査動作中に、検出ヘッド10が地面に接触し(0cm-図5a~図7b)、次に地面から5cmに配置される(図8a~図10b)。検出信号の強度は、各走査動作(右から左)で記録された。
【0038】
従来の検出器および本発明による検出器1を用いて、0cmおよび5cmでの3つの場合について行われた測定の結果を、以下の表に要約する。
【表1】
【0039】
したがって、この一連の比較試験から、走査軸線Xに対する送信コイル12および受信コイル13の向きを変更することにより、0cm(地面と接触)と5cmの信号振幅の比が大幅に減少することがわかる。言い換えると、走査方向が第1の軸線Xに(したがって、結合領域14の長手方向に)平行である場合、地面の種類や地面に置かれた金属の破片や酸化物を含む影響が大幅に減少する。
【0040】
したがって、この構成により、地面の種類と破片が検知に与える影響が少なく、誤警報が少なくなるため、本発明による検出器1の検出感度を大幅に高めることができる。
【0041】
図11a、図11b、図12a、図12bは、地面の不均一性や操作者による不十分な走査動作による誤警報に対するこの構成の影響を示す第2の一連の比較試験を示している。
【0042】
この第2の一連の試験の間、従来の検出器および本発明の検出器1の検出ヘッド10は、地面から5cmで、磁気地面を通過した。2つの検出器のゲインは、同じゲインに対して同じ強度を提するように等化された。ただし、第1のケースでは、検出ヘッド10は地面に対して20°の角度で静的に傾けられ(走査動作なし-図11aおよび図11b)、第2のケースでは、検出ヘッド10は、最初の一連のテストと同じ左右の走査動作を実行することにより、この地面に対して20°の角度で傾けられた(図12aおよび図12b)。この20°の角度では、従来の検出器の場合、送信コイル12と受信コイル13の一方が他方よりも地面から離れていたのに対し、本発明の検出器1では、2つのコイルが同様に地面に対して傾いていたが、それぞれ地面に近い部分と地面から離れた部分があった。
【0043】
従来の検出器および本発明による検出器1を用いて2つの場合について行われた測定の結果は、以下の表に要約されている。
【表2】
【0044】
この第2の一連の比較試験から、走査軸線Xに対する送信コイル12および受信コイル13の向きを変更することにより、検出器1の単純な傾きから生じる信号の振幅が大幅に減少することがわかる。実際、従来の検出器の場合、検出ヘッドを静的に単純に傾斜させたことによる信号の振幅の差は、本発明の検出器1の場合が200mVであるのに対して、350mVである。同様に、傾斜を伴う単純な走査による信号の振幅は、本発明の検出器1の250mVに対して、従来の検出器の場合は400mVである。
【0045】
検出器1は、追加のセンサ、好ましくは地中探知レーダ60を備えている。
【0046】
この場合、レーダ60は、例えば100MHz~8GHzの間に含まれる周波数で、地面で電磁波を送受信するように構成された送信アンテナ61および受信アンテナ62を備える。これらの波が媒体の変化に遭遇すると、波の一部が表面に戻り、受信アンテナ62によって記録される。
【0047】
有利には、走査軸線Xに対する送信コイル12および受信コイル13の向きのおかげで、各ループ内で利用可能な表面はより大きくなる。したがって、送信アンテナ61および受信アンテナ62は、それぞれ送信コイル12および受信コイル13のループの1つの中心に収容することができる。このようにして、レーダ60の最大感度は、誘導センサの最大感度と同じ領域、すなわち、結合領域14にある。つまり、レーダ60のマイクロ波検出ローブと誘導型センサの磁気検出ローブとが一致するため、操作者は、ポインティング中に、検出ヘッド10の中央部で対象物の検出が行われていると考えることができる。
【0048】
送信コイル12および受信コイル13のループが細長い形状を有するので、送信および受信12、13アンテナ61、62は、放射表面、したがって、透過能力を最大化するために、第2の軸線Xに平行な第4の軸線Xに沿って延長することができる。例えば、送信アンテナ61および受信アンテナ62は、放射面およびアンテナの利得を最大化する一方、パルスを増加させないようにアンテナ61、62のスパイラルを形成する各ストランド63の長さを最小化するために長くされた対数スパイラルの形状を有することができる。細長い対数スパイラルアンテナでは、スパイラルのストランド63間の間隔は実際に大きく、対数的に増加する。
【0049】
例えば、アンテナ61、62を形成する細長い対数スパイラルは、80mmに対して約150mmの高さを有し得る。
【0050】
変形として、レーダ60の送信アンテナ61および受信アンテナ62は、以下の、クワッドリッジホーン無線アンテナ、蝶ネクタイアンテナ、長方形の蝶ネクタイアンテナ、アルキメデスのスパイラルアンテナ、対数スパイラルアンテナ、ビバルディアンテナ、の種類うちの1つであり得る。
【0051】
それ自体既知の方法で、送信アンテナ61および受信アンテナ62は、良好な導電体である銅で作ることができる。
【0052】
しかしながら、アンテナの酸化のリスクを低減するために、送信および受信12、13アンテナ61、62は、部分的にニッケルおよび/またはクロムでできており、部分的に銅で形成され得る。実際、ニッケルとクロムは、導電性でありながら、時間の経過とともに酸化しない。
【0053】
例えば、各アンテナ61、62の中心64は、銅でできており、金を含む層によって保護されており、アンテナ61、26の残りの部分65は、ニッケルおよび/またはクロムでできている。各アンテナ61、26の中心64と残りのアンテナ61、62との間に延在する領域は、銅で作られ、ニッケル(および/またはクロム)の層で覆われ得る。
【0054】
さらに、送信コイル12および受信コイル13との相互作用を制限するために、送信アンテナ61および受信アンテナ62の厚さは、コイル12、13の吸収の深さよりも小さい。このようにして、アンテナ61、62は、誘導センサの磁場から見えなくなる。しかしながら、送信アンテナ12および受信アンテナ13の厚さは、アンテナ61、62の十分な堅牢性を保証し、破損のリスクを回避するために、閾値厚さよりも大きくなければならないことに留意されたい。したがって、送信アンテナ61および受信アンテナ62の厚さは、100ナノメートル~1ミクロンの間に含まれるように選択される。例えば、送信アンテナ61および受信アンテナ62は、200nm程度(10%以内)の厚さを有し得る。
【0055】
この厚さのアンテナ61、62を製造するために、特に物理蒸着(PVD)技術を使用することができる。この技法により、実際に、非常に薄い厚さのアンテナ61、62を高い寸法精度で得ることができ、一度にいくつかのアンテナを製造することができる。
図1
図2
図3
図4a
図4b
図5a
図5b
図6a
図6b
図7a
図7b
図8a
図8b
図9a
図9b
図10a
図10b
図11a
図11b
図12a
図12b