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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-14
(45)【発行日】2024-06-24
(54)【発明の名称】モータロータ装置およびモータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/2706 20220101AFI20240617BHJP
【FI】
H02K1/2706
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020543490
(86)(22)【出願日】2019-01-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-07-08
(86)【国際出願番号】 CN2019070286
(87)【国際公開番号】W WO2019227932
(87)【国際公開日】2019-12-05
【審査請求日】2020-09-17
【審判番号】
【審判請求日】2022-07-22
(31)【優先権主張番号】201810535274.9
(32)【優先日】2018-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】504161984
【氏名又は名称】ホアウェイ・テクノロジーズ・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウ、シャオペン
(72)【発明者】
【氏名】ワン、イボ
(72)【発明者】
【氏名】ダジャク、グラクク
【合議体】
【審判長】北村 英隆
【審判官】柿崎 拓
【審判官】米倉 秀明
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-278696(JP,A)
【文献】特開2012-213268(JP,A)
【文献】特開2014-100048(JP,A)
【文献】特開2015-144501(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103683603(CN,A)
【文献】実開昭58-87476(JP,U)
【文献】特開2011-135728(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K1/27
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータロータ装置であって、
ロータコアおよび結合要素を有し、前記結合要素は、前記ロータコアに埋め込まれ、
前記ロータコアには第1の空気副溝が設けられ、前記第1の空気副溝は複数の第1の歯および複数の第1のスロットを有し、前記複数の第1の歯および前記複数の第1のスロットは交互に配置され、前記結合要素は複数の第2の歯および複数の第2のスロットを有し、前記複数の第2の歯および前記複数の第2のスロットは交互に配置され、
前記第1の歯は前記第2の歯と係合し、前記第1のスロットは前記第2のスロットと係合し、前記第1の歯は第1の中空部分であり、前記第1の中空部分は前記第2の歯の第2の中実部分を収容するように構成され、前記第1のスロットはロータコアの第1の中実部分であり、前記第1の中実部分は前記結合要素の前記第2のスロットの第2の中空部分を埋めるように構成され、
前記ロータコアは、第2の空気副溝をさらに有し、前記第2の空気副溝および前記第1の空気副溝は、第1の空気溝を形成するように頭から尾に接続され、前記第1の空気副溝と第2の空気副溝が接続され、
前記第2の空気副溝は、第1の永久磁石を収容するように構成され、
前記第1の空気副溝と前記ロータコアの外周面との間に第1の磁気ブリッジが形成され、
前記結合要素は非磁性高硬度材料であり、
前記第1の歯は前記第1のスロットに隣接し、T字型の鋸歯を形成する、モータロータ装置。
【請求項2】
前記ロータコアには、前記ロータコアの半径方向において、前記第1の空気溝と前記ロータコアの外周面との間に第2の空気溝がさらに設けられ、前記第2の空気溝は、第2の永久磁石を収容するように構成され、
前記第2の空気溝と前記ロータコアの外周面との間に第2の磁気ブリッジが形成される、請求項1に記載のモータロータ装置。
【請求項3】
第1の支持構造は前記第1の空気溝および前記第2の空気溝を有し、前記ロータコアは複数の第1の支持構造を有する、請求項2に記載のモータロータ装置。
【請求項4】
前記結合要素はアルミニウム材料またはセラミック材料である、請求項1から3のいずれか1項に記載のモータロータ装置。
【請求項5】
モータであって、
請求項1から4のいずれか1項に記載のモータロータ装置を有するモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2018年5月29日に中国特許庁に出願され、「モータロータ装置およびモータ」と題する中国特許出願番号201810535274.9の優先権を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本願は、電気機械装置の分野に関し、特に、モータロータ装置およびモータに関する。
【背景技術】
【0003】
車両の数が年々増加するにつれて、より多くのオイルが消費され、環境保護はますます切迫している。これにより、車両産業は省エネルギーと環境保護の概念と共に開発することを余儀なくされ、したがって、電気車両が登場する。ますます普及している電気車両は、通常、高出力密度の永久磁石同期モータを使用する。永久磁石同期モータは、実際には交流電流モータである。永久磁石がモータのロータに設置され、永久回転磁場を生成する。120度の位相差を持つ三相交流がモータステータに供給され、回転磁場を生成する。ステータ磁場はロータ磁場と相互作用して、永久磁石モータを駆動して回転させる。
【0004】
モータの出力密度とトルク密度を上げるために、永久磁石トルクまたは磁気リラクタンストルクを増加してよい。磁気リラクタンストルクは、モータのステータの磁気回路とロータの磁気回路に直接関連する。モータの突出率は、ロータ内の空気領域の数を増やすことで増加し得、それにより磁気リラクタンストルクが増加する。
【0005】
ロータ内の空気領域の数を増やすことで磁気リラクタンストルクの含有量が増加するが、空気領域間、または空気領域とロータの外周面との間に磁気ブリッジが形成される。その結果、高速回転するモータロータによって発生する遠心力が磁気ブリッジに作用し、ロータコアの磁気ブリッジが応力により損傷しやすくなり、ロータの堅牢性が低下してモータの最大速度が低下し、比較的高速に到達することが制限される。これが、電気車両の最大速度が燃料車両の最大速度よりもはるかに小さい理由である。
【発明の概要】
【0006】
本願は、モータロータ装置とモータを提供する。モータロータ装置は、ロータが高速で回転するときに発生する遠心力を効果的に吸収することができる。これにより、遠心力により発生する応力を磁気ブリッジに分散させ、高速回転するロータの堅牢性を確保し、モータの最大速度をある程度上げることができる。
【0007】
本願の第1の態様は、モータロータ装置を提供し、モータロータ装置は、ロータコアおよび結合要素を含む。結合要素は、ロータコアに埋め込まれており、結合要素は、アルミニウム材料またはセラミック材料などの非磁性高硬度材料で形成されている。非磁性材料で形成される結合要素は、磁場の分布に影響を与えない。
【0008】
ロータコアには、第1の空気副溝が設けられ、第1の空気副溝は、第1の歯および第1のスロットを含む。第1の歯の形状および第1のスロットの形状は、第1の空気副溝のエッジ形状である。これに対応して、結合要素および第1の空気副溝は同一の形状を有し、結合要素は第2の歯および第2のスロットを含む。
【0009】
第1の空気副溝の第1の歯は、結合要素の第2の歯と係合し、第1の空気副溝の第1のスロットは、結合要素の第2のスロットと係合する。
【0010】
本願では、ロータコアで空気溝を用いることで突出率を増加させることができるため、磁気リラクタンストルクの含有量を増加させることができ、永久磁石の使用量を低減し、レアアース資源の使用量を低減して、モータの製造コストを低減する。本願では、非磁性高硬度材料で形成された結合要素が、ロータコアの空気副溝と係合する。即ち、結合要素は、歯とスロットを備えた第1の空気副溝と係合して、支持構造を形成する。支持構造により、ロータの高速で回転するときに発生する遠心力を効果的に吸収できる。これにより、ロータの磁気ブリッジへの応力が著しく低減され、高速で回転するロータの堅牢性が確保され、モータの速度が可能な限り増加させる。
【0011】
本願の実施形態の第1の態様を参照して、本願の実施形態の第1の態様の第1の実装において、ロータコアにはさらに第2の空気副溝が設けられている。第2の空気副溝および第1の空気副溝は、第1の空気溝を形成するために頭から尾に接続されており、 第1の空気副溝と第2の空気副溝は接続されており、第2の空気副溝は、永久磁石を収容するように構成される。永久磁石は、硬質磁石とも呼ばれ、他のオブジェクトによって磁化されたり、消磁されたりする傾向がない。また、永久磁石の極性は変化せず、永久磁石は比較的安定した特性を持っている。
【0012】
本願における第2の空気副溝は、永久磁場を生成する永久磁石を収容するように構成されている。永久磁石は、永久磁場を生成することができ、永久磁場は、ステータ上の回転磁場によって引き付けられるため、永久磁場は回転磁場と共に回転し、ロータを駆動して回転させる。しかしながら、非磁性材料で形成され、第1の空気副溝と適合する結合要素は、永久磁石の磁場分布に影響を与えない。
【0013】
本願の実施形態の第1の態様または第1の態様の第1の実装を参照して、本願の実施形態の第1の態様の第2の実装では、ロータコアにはさらに第2の空気溝が設けられ、第2の空気溝は永久磁石を収容するように構成される。
【0014】
本願では、複数の空気溝を配置することにより、モータのd軸磁気回路とq軸磁気回路とを変化させることができ、その結果、モータの突出率を増加させ、磁気リラクタンストルクの含有量を増加させることができ、永久磁石の使用量を低減させる。
【0015】
本願の実施形態の第1の態様から第1の態様の第2の実装のいずれかを参照して、本願の実施形態の第1の態様の第3の実装では、第1の支持構造は、第1の空気溝および第2の空気溝を含み、さらに他の同様の空気溝を含み得、ロータコアは複数の第1の支持構造を含み、複数の支持構造は完全なロータコアを形成する。第1の空気副溝の歯スロット構造と、磁気リラクタンスの含有量を低減するように構成された空気溝が、ロータコアに均一に分布される。
【0016】
本願では、ロータコアに分布された複数の支持構造により、高速で回転するロータによって発生し、もともと磁気ブリッジに作用していた力を大いに分散させることができる。
【0017】
本願の実施形態の第1の態様から第1の態様の第3の実装のいずれかを参照して、本願の実施形態の第1の態様の第4の実装では、第1の空気副溝はさらに、複数の第1の歯および複数の第1のスロットを含み、複数の第1の歯および複数の第1のスロットは交互に配置され、結合要素はさらに、複数の第2の歯および複数の第2のスロットを含み、複数の第2の歯および複数の第2のスロットは交互に配置される。
【0018】
本願では、複数の歯を複数のスロットと適合させることによって結合要素が空気溝に接続される。そのような構造は、磁気リラクタンストルクを犠牲にし、従来型の永久磁石モータでより多くの永久磁石を使用することにより、高速で回転するロータの堅牢性を確保するという問題を解決し、その結果、永久磁石の使用量を低減し、高速で回転するロータの堅牢性をも確保することができ、同時に効率と出力密度を確保する。
【0019】
本願の実施形態の第1の態様から第1の態様の第4の実装のいずれかを参照して、本願の実施形態の第1の態様の第5の実装では、第1の歯および第1のスロットは、長方形または三角形の形状であり得る。
【0020】
本願では、様々な適用シナリオまたはプロセス要件に基づいて、歯とスロットとの形状を柔軟に選択できる。これは、解決手段の柔軟性と実用性を表している。
【0021】
本願の実施形態の第1の態様から第1の態様の第5の実装のいずれかを参照して、本願の実施形態の第1の態様の第6の実装では、第1の空気溝と第2の空気溝との間に第1の磁気ブリッジが形成され、第1の空気溝とロータコアの外周面との間に第2の磁気ブリッジが形成され、第2の空気溝とロータコアの外周面との間に第3の磁気ブリッジが形成される。磁気ブリッジはロータコアの一部であり、高速で回転するロータによって発生する応力により損傷しやすくなる。本願では、歯スロット構造を使用しており、もともと磁気ブリッジに作用する応力を吸収することができる。モータの速度は堅牢性のために制限されておらず、モータの速度はある程度上げることができる。
【0022】
本願の実施形態におけるモータは、第1の態様から第1の態様の第6の実装のいずれかによるモータロータ装置を含む。
【0023】
上述の技術的解決手段から、本願には次の利点があることが分かる。
【0024】
本願は、モータロータ装置を提供する。モータロータ装置は、ロータコアおよび結合要素を含む。結合要素は、ロータコアに配置される。ロータコアには第1の空気溝が設けられ、第1の空気溝は第1の空気副溝を含み、第1の空気副溝は第1の歯と第1のスロットを含む。結合要素は、第2の歯および第2のスロットを含む。第1の歯は第2のスロットと係合しており、第1のスロットは第2の歯と係合している。上述の構造を使用することにより、結合要素がロータコアの第1の空気副溝と係合して軸受面を形成し、その結果、高速で回転するロータによって発生する遠心力を効果的に吸収し、磁気ブリッジへの遠心力によって発生する応力が分散される。これにより、高速で回転するロータの堅牢性を確保し、モータの最大速度をある程度増加させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】モータ駆動車両の簡略概略図である。
【0026】
図2】モータの概略構造図である。
【0027】
図3】本願の実施形態における、モータロータ装置の部分構造の概略図である。
【0028】
図4】本願の実施形態における、結合要素の概略構造図である。
【0029】
図5】本願の実施形態における、他のモータロータ装置の部分構造の概略図である。
【0030】
図6】本願の実施形態における、2つの支持構造を含む構造の概略図である。
【0031】
図7】本願の実施形態における、複数の歯および複数のスロットを含むモータロータ装置の概略構造図である。
【0032】
図8】第1の空気副溝の拡大概略図である。
【0033】
図9】本願の実施形態における、複数の歯および複数のスロットを含む結合要素の概略構造図である。
【0034】
図10】本願の実施形態における、ロータコアの磁気ブリッジの概略構造図である。
【0035】
図11】本願の実施形態における、長方形形状の歯およびスロットの概略構造図である。
【0036】
図12】本願の実施形態における、三角形の形状の歯およびスロットの概略構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本願は、モータロータ装置を提供する。結合要素は、ロータコアの第1の空気副溝と係合して軸受面を形成し、これにより、高速で回転するロータによって生成される遠心力を効果的に吸収でき、磁気ブリッジに作用した遠心力は分散される。これにより、高速で回転するロータの堅牢性を確保し、モータの最大速度をある程度増加させることができる。
【0038】
ますます普及している電気車両は、現代社会における省エネルギーと環境保護の概念に適合する。したがって、電気車両の性能の向上は解決すべき主な問題となる。図1は、モータ駆動車両の簡略概略図である。永久磁石同期モータは、電気車両の主な駆動モータとして機能し得、電気車両の駆動トルクを生成して、動力源を提供する。モータはモータコントローラユニット(MCU)によって駆動され、駆動力を出力し、モータコントローラユニットは、集積回路のアクティブな操作を使用して、特定の方向、速度、角度、および応答時間に基づいて作動するようにモータを制御する。モータは機械的な構造を使用して減速機に接続され、減速機を使用して電気車両を駆動するための駆動力を車輪に出力する。
【0039】
図2は、典型的なモータの概略構造図である。モータの有効部分は、ロータコア201、永久磁石202、ステータコア203、およびステータコイル204を含み得ることが分かる。ステータコイル204は、ステータコア203のスロットに設置され、ステータコイル204とステータコア203とでステータを形成する。三相電流がステータコイル204に入力され、回転磁場を生成する。
【0040】
永久磁石202は、ロータコア201に設置され、永久磁石202とロータコア201とによりロータが形成される。永久磁石202は、永久磁場を生成することができ、永久磁場は、ステータ上の回転磁場によって引き付けられ、その結果、永久磁場は、回転磁場と共に回転し、永久磁場は、ロータを駆動して回転させる。永久磁場の回転周波数は、ステータ磁場の回転周波数と同一である。
【0041】
トルクは、機械要素を回転させる力のモーメントを指し、ニュートンメートルで測定される。機械要素は、トルクの作用下で特定の程度のねじれ変形を被るので、したがって、トルクは場合によってはトルクとも呼ばれる。トルクは、様々な機械式駆動シャフトの基本的な負荷形式であり、電力機械の作業能力、エネルギー消費、効率、動作寿命、および安全性能と密接に関連する。永久磁石同期モータのトルク方程式は次のとおりである。T=3/2p[φpmqs-(Lqs-Lds)iqsds
【0042】
永久磁石同期モータの制御において、直流電流モータと同様の制御特性を得るために、オプションでモータロータに座標系を設けてよく、座標系はロータと同期して回転する。図2は、トルク方程式のパラメータの意味を説明するために使用される。図に示されるように、d軸は永久磁石の中心線を表し、q軸は隣接する2つの永久磁石の中心線を表し、iは電流を表し、Lはインダクタンスを表し、Φpmqsは永久磁石トルクの含有量を表し、Φpmはモータロータの永久磁石磁気リンケージを表し、(L-L)iqsdsは磁気リラクタンストルクの含有量を表す。永久磁石同期モータのトルクは、永久磁石トルクΦpmqsと、磁気リラクタンストルク(L-L)iqsdsとの、2つの部分を含むことがトルク方程式から分かる。
【0043】
永久磁石トルクを増加させる方法は、より多くの永久磁石を使用することである。特定の範囲では、永久磁石の使用率が高いほど、または永久磁石の特性が高いほど、モータの性能が優れていることを示す。しかしながら、結果として、より多くのレアアース資源が使用され、環境に損傷を与え、モータのコストが大幅に増加する。したがって、より多くの永久磁石を使用して永久磁石トルクを増加させることは非現実的である。しかしながら、磁気リラクタンストルクの含有量を増加させることで、全体のトルクを増加させることができる。
【0044】
磁気リラクタンストルクの含有量は、モータステータの磁気回路の設計とモータロータの磁気回路の設計を使用することにより増加され得る。設計の鍵は、LとLとの間の差を増加させること、即ち、モータの突出率を増加させることである。これは、ロータに空気領域を追加することで実装できる。しかしながら、ロータに空気領域を追加する方法は、通常、高速で回転するモータロータの堅牢性を低下させ、モータロータの最大速度は高くない。その結果、電気車両の最大速度は、燃料車両の速度よりもはるかに小さい。
【0045】
高速で回転するロータの堅牢性が比較的低いという不都合を解決するために、本願の実施形態は、モータロータ装置を提供する。モータロータ装置は、ロータコアおよび結合要素を含む。結合要素は、ロータコアに配置され、結合要素は、ロータコアの空気溝と係合するように構成される。
【0046】
本願の実施形態は、空気溝が歯スロット形状の結合要素と係合する支持構造を提供する。支持構造はモータのロータコアに位置する。図3は、本願の実施形態における、支持構造を含むロータコアの概略断面図である。ロータコア201には、第1の空気溝30aが設けられている。第1の空気溝30aは第1の空気副溝301aを含み、第1の空気副溝301aは第1の歯3011aおよび第1のスロット3011bを含む。第1の歯3011aは中空部分であり、第1のスロット3011bはロータコアの中実部分である。第1の歯3011aの形状は、第1のスロット3011bの形状と同一であり、第1の歯3011aは、第1のスロット3011bに隣接して、T字形の鋸歯を形成している。
【0047】
第1の空気副溝301aは、結合要素を収容するように構成される。結合要素は、非磁性の高機械強度材料である。結合要素の概略構造図を図4に示す。結合要素401および第1の空気副溝301aは、同一の形状を有する。結合要素401は、第1の空気副溝301aと係合して支持構造を形成し、ロータが高速で回転するときに発生する遠心力を分散させる。
【0048】
具体的には、結合要素401は、第2の歯4011aおよび第2のスロット4011bを含む。第2の歯4011aは中実部分であり、第2のスロット4011bは中空部分である。結合要素401の第2の歯4011aと第1の空気副溝301aの第1の歯3011aとは同一の形状を有する。結合要素401の第2の歯4011aは、第1の空気副溝301aの第1の歯3011aの中空部分を埋める。結合要素401の第2のスロット4011bおよび第1の空気副溝301aの第1のスロット3011bは、同一の形状を有する。結合要素401の第2のスロット4011bの中空部分は、第1の空気副溝301aの第1のスロット3011bの中実部分を収容するように構成され、第2のスロット4011bと第1のスロット3011bとは互いに係合する。
【0049】
ロータコア201には、さらに、第2の空気副溝302aが設けられている。第2の空気副溝302aは、永久磁石を収容するように構成される。永久磁石は、モータにロータ磁場を生成し、ステータ磁場と作用することによって永久磁石トルクを生成するように構成される。永久磁石は通常、レアアース資源から作られる。例えば、永久磁石モータは通常、ネオジム鉄ホウ素永久磁石を使用して磁場を生成する。
【0050】
第2の空気副溝302aの形状およびサイズは、永久磁石の形状およびサイズに基づいて決定されてもよい。例えば、永久磁石が棒形状である場合、第2の空気副溝302aは、永久磁石の棒形状を収容可能な長方形形状又は他の形状である。
【0051】
本願のこの実施形態では、空気溝は、モータの磁気リラクタンストルクの含有量を増加させるために配置される。したがって、総トルクの含有量が一定の場合には、永久磁石トルク成分を適切に低減でき、即ち、永久磁石の使用量を低減できる。また、第1の空気副溝301aと結合要素401とを互いに係合させた構造を、高速で回転するロータが発生する遠心力を分散させることに使用し、ロータの堅牢性を高め、ロータが特定の高速で回転できることを確保し得る。
【0052】
オプションで、前述の実施形態に基づいて、本願の実施形態で提供されるモータロータ装置の他の実施形態では、前述のモータロータ装置は、第2の空気溝303aをさらに含む。図5に示すように、第2の空気溝303aは、第1の空気溝の上方に位置し、第1の空気溝30aとロータコア201の外周面との間に挟まれている。第2の空気溝303aおよび第1の空気溝30aは、ロータの半径方向に沿って配置されている。第2の空気溝303aは、少なくとも1つの永久磁石を収容する。
【0053】
モータロータ装置は、いくつかの空気領域、例えば、空気領域304aおよび空気領域305aをさらに備えることができる。空気は空気領域に充填されており、モータのd軸磁気回路とq軸磁気回路とを変化させ、モータの突出率を上げて、磁気リラクタンストルクの含有量を増加させ、永久磁石の使用を低減する。
【0054】
モータロータの第1の空気溝30a(第1の空気副溝301aおよび第2の空気副溝302aを含む)、第2の空気溝303a、空気領域304、および空気領域305は、第1の支持構造を形成する。第1の支持構造は、ロータコアの3次元構造の一部である。断面から見ると、第1の支持構造は、ロータコアの端面上の扇型の一部である。
【0055】
本願のこの実施形態では、二重層の空気溝を備えたトポロジー構造は、モータの突出率を大幅に増加させることができ、それにより磁気リラクタンストルクの含有量を増加させる。このように、モータの出力とトルクとがそれぞれ従来型の永久磁石同期モータの出力とトルクと同一である場合、永久磁石の約80%を低減することができる。
【0056】
前述の実施形態に基づいて、本願の実施形態で提供されるモータロータ装置の他の実施形態では、前述のモータロータ装置は複数の第1の支持構造を含み、全ての支持構造は同一のサイズおよび同一の形状を有する。図6に示すように、説明のために2つの支持構造が例として使用されている。モータロータ装置は、第1の支持構造10および第2の支持構造20を含む。第1の支持構造10は、第1の空気溝30a(第1の空気副溝301aおよび第2の空気副溝302aを含む)、第2の空気溝303a、空気領域304a、および空気領域305aを含む。これに対応して、第2の支持構造20は、第3の空気溝30b(第3の空気副溝301bおよび第4の空気副溝302bを含む)、第4の空気溝303b、空気領域304b、および空気領域305bを含む。
【0057】
第2の支持構造20は、半径方向を中心に使用して第1の支持構造10と対称に配置されている。具体的には、第1の空気溝30aは第3の空気溝30bと対称に配置され、第2の空気溝303aは第4の空気溝303bと対称に配置され、空気領域304aは、空気領域304bと対称に配置され、空気領域305aも、空気領域305bと対称に配置される。
【0058】
図6の実施形態に基づいて、本願の実施形態で提供されるモータロータ装置の他の実施形態では、第1の空気副溝は、複数の第1の歯および複数の第1のスロットをさらに含む。具体的には、図7に示されるモータロータ装置は、複数の第1の歯3011aおよび複数の第1のスロット3011bは、鋸歯形状を形成するように交互に配置される。
【0059】
より具体的には、図8は、図7の第1の空気副溝301aの拡大概略図である。第1の空気副溝301aは、第1の歯3011aと、第1の歯と同様の歯3012a、3013a、および3014aとを含む。第1の空気副溝301aは、第1のスロット3011bと、第1のスロットと同様のスロット3012b、3013b、および3014bとをさらに含む。
【0060】
隣接する2つの歯の間の部分がスロットであり、隣接する2つのスロットの間の部分が歯である。具体的には、例えば、歯3011aと歯3012aとの間の部分がスロット3011bであり、スロット3011bとスロット3012bとの間の部分が歯3012aである。
【0061】
第1の歯は中空部分であり、中空部分は、結合要素の第2の歯の中実部分を収容するように構成される。第1のスロットは、ロータコアの中実部分であり、中実部分は、結合要素の第2のスロットの中空部分を埋めるように構成される。
【0062】
複数の歯と複数のスロットとが交互に配置された第1の空気副溝は、第1の空気副溝と同一の形状を有する結合要素に対応する。結合要素401は、複数の第2の歯4011aおよび複数の第2のスロット4011bをさらに含む。図9は、結合要素の概略構造図である。結合要素は、複数の第2の歯4011aおよび複数の第2のスロット4011bを含む。具体的には、結合要素は、第2の歯と同様の第2の歯4011aおよび歯4012a、4013a、および4014aを含み、第2のスロットと同様の第2のスロット4011bおよびスロット4012b、4013b、および4014bを含む。
【0063】
また、第2の歯4011aは、第2のスロット4011bと交互に配置され、鋸歯形状を形成する。即ち、結合要素の隣接する2つの歯の間の部分がスロットであり、隣接する2つのスロットの間の部分が歯である。具体的には、例えば、歯4011aと歯4012aとの間の部分がスロット4011bであり、スロット4011bとスロット4012bとの間の部分が歯4012aである。
【0064】
第2の歯4011aは中実部分であり、中実部分は、第1の空気副溝301aの第1の歯3011aを埋めるように構成される。第2のスロット4011bは中空部分であり、中空部分は、第1の空気副溝301aの第1のスロット3011bの中実部分を収容するように構成される。第1の空気副溝301aの第1の歯3011aは、結合要素の第2の歯4011aと係合し、第1の空気副溝の第1のスロット3011bは、結合要素の第2のスロット4011bと係合する。他の歯および他のスロットは、それぞれ同一の方式でそれぞれと係合する。歯とスロットの複数のグループが力受面を形成し、高速で回転するロータによって生成される遠心力を分散する。
【0065】
図10は、ロータコアの磁気ブリッジの概略構造図である。図に示すように、第2の空気副溝302aと第4の空気副溝302bの間のコア部分は磁気ブリッジであり、第2の空気溝303aと第4の空気溝303bの間のコア部分は磁気ブリッジであり、ロータコアの外周面と第1の空気副溝301a、第2の空気溝303a、第3の空気副溝301b、第3の空気溝303bとの間のそれぞれのコア部分も磁気ブリッジである。図中の1で表す矢印は、高速で回転するロータによって磁気ブリッジに発生する遠心力の概略図を表す。第1の空気副溝301aおよび第3の空気副溝301b上の矢印は、歯をスロットと係合させることによって形成される軸受面が、ロータによって生成される遠心力を吸収できることを表す。
【0066】
多数の実験により、そのような歯スロット構造は、磁気ブリッジに作用する必要がある遠心力を効果的に吸収できることが証明されている。実験データは、モータが16800rpmの速度で回転するとき、ロータコアの外周面と、第1の空気副溝301a、第2空気溝303a、第2の空気溝30bの第3の空気副溝301b、および第3の空気溝303bのそれぞれとの間の磁気ブリッジに作用する応力が340Mpaのみであることを示しており、第2の空気副溝302aと第3の空気副溝301bとの間の磁気ブリッジに作用する応力は370Mpaのみであり、これは、一般的なシリコン鋼板の応力よりも小さい。
【0067】
本願のこの実施形態では、複数の歯スロット構造が磁気ブリッジに作用する応力を大幅に低減し、それにより高速で回転するロータの堅牢性を確保し、モータの最大速度を増加させることができる。
【0068】
オプションで、図7に対応する実施形態に基づいて、本願の実施形態の他の実施形態で提供されるモータロータ装置では、第1の歯および第1のスロットは、長方形または三角形の形状であってもよい。長方形の歯スロット構造が図11に示される。第1の空気副溝と第4の空気副溝の端部は、長方形の歯スロット構造である。これに対応して、結合要素は歯スロット構造でもある。同様に、三角形の歯スロット構造が図12に示されており、結合要素も三角形の歯スロット構造である。
【0069】
本願の実施形態では、T字型の歯スロット構造、長方形の歯スロット構造、または三角形の歯スロット構造に関わらず、高速で回転するロータによって磁気ブリッジに作用する遠心力を効果的に吸収することができる。複数の歯スロット構造は、この解決手段の柔軟性と実用性を表す。
【0070】
前述の実施形態の全てまたはいくつかは、ソフトウェア、ハードウェア、ファームウェア、またはこれらの任意の組み合わせを用いることにより実装され得る。ソフトウェアを使用して実施形態を実装する場合、実施形態の全てまたはいくつかは、コンピュータプログラム製品の形式で実装することができる。
【0071】
コンピュータプログラム製品は、1または複数のコンピュータ命令を含む。コンピュータプログラム命令がコンピュータ上にロードされて実行されるとき、本発明の実施形態に係る手順または機能が、全てまたは部分的に生成される。コンピュータは、汎用コンピュータ、特定用途向けコンピュータ、コンピュータネットワーク、または他のプログラマブル装置であってよい。コンピュータ命令は、コンピュータ可読記憶媒体に記憶されてよく、または、コンピュータ可読記憶媒体から他のコンピュータ可読記憶媒体に送信されてよい。例えば、コンピュータ命令は、あるウェブサイト、コンピュータ、サーバまたはデータセンタから、他のウェブサイト、コンピュータ、サーバまたはデータセンタへ、有線(例えば、同軸ケーブル、光ファイバまたはデジタル加入者線(Digital Subscriber Line、DSL))または無線(例えば、赤外線、電波またはマイクロ波)方式で送信されてよい。コンピュータ可読記憶媒体は、コンピュータによってアクセス可能な任意の使用可能な媒体、または1または複数の使用可能な媒体によって統合されたサーバまたはデータセンタなどのデータ記憶装置とすることができる。使用可能な媒体は、磁気媒体(例えば、フロッピーディスク、ハードディスクまたは磁気テープ)、光媒体(例えば、DVD)または半導体媒体(例えば、ソリッドステートドライブ、Solid State Disk (SSD))などであってよい。
【0072】
簡便かつ簡潔な説明を目的として、上述のシステム、装置およびユニットの詳細な動作プロセスについては、上述の方法の実施形態における対応するプロセスを参照されたいことが、当業者には明確に理解され得る。詳細は、ここでは改めて説明されない。
【0073】
本願において提供された、いくつかの実施形態では、開示されたシステム、装置、および方法が他の方式で実装されてよいことを理解されたい。例えば、説明される装置の実施形態は、単なる例に過ぎない。例えば、ユニットの分割は、論理的な機能の分割に過ぎず、実際の実装では、他の分割であってよい。例えば、複数のユニット又はコンポーネントは、組み合わされてよい、又は、他のシステムに統合されてよい、又は、いくつかの特徴が無視されまたは実行されなくてよい。また、表示または説明される、相互連結、直接連結、または通信接続は、いくつかのインタフェースを使用することによって実装され得る。間接的な連結、又は、装置間若しくはユニット間の通信接続は、電気的、機械的又は他の形式で実装されてよい。
【0074】
離れた部分として説明されたユニットは、物理的に離れていてもいなくてもよく、またユニットとして表示された部分が物理的ユニットであってもなくてもよく、1か所に位置してもよく、又は複数のネットワークユニットに配置されてもよい。これらのユニットのいくつかまたは全てが、実施形態の解決手段の目的を達成するために、実際の要件に基づいて選択されてよい。
【0075】
また、本願の実施形態の機能ユニットは1つの処理ユニットに統合されてよく、または、ユニットのそれぞれが物理的に単独で存在してよく、または、2またはそれより多くのユニットが1つのユニットに統合される。上述の統合ユニットはハードウェアの形式で実装されてよく、又はソフトウェア機能ユニットの形式で実装されてもよい。
【0076】
統合ユニットがソフトウェア機能ユニットの形で実装され、独立した製品として販売または使用される場合、統合ユニットは、コンピュータ可読記憶媒体に記憶され得る。そのような理解に基づいて、本願の本質的な技術的解決手段、先行技術に貢献する部分、または技術的解決手段の全てまたはいくつかは、ソフトウェア製品の形式で実装することができる。ソフトウェア製品は記憶媒体に記憶され、コンピュータデバイス(パーソナルコンピュータ、サーバ、又はネットワークデバイスなどであってよい)に命令して、本願の実施形態において説明された方法の段階の全て又はいくつかを実行するためのいくつかの命令を含む。前述の記憶媒体には、USBフラッシュドライブ、リムーバブルハードディスク、読み取り専用メモリ(Read-Only Memory、ROM)、ランダムアクセスメモリ(Random Access Memory、RAM)、磁気ディスク、または光ディスクなどのプログラムコードを保存できる任意の媒体が含まれる。
【0077】
前述の実施形態は、本願の技術的解決手段を説明することを意図しているに過ぎず、本願を限定するものではない。本願が前述の実施形態を参照して詳細に説明されているが、当業者であれば、自らがさらに、本願の実施形態の技術的解決手段の趣旨および範囲から逸脱することなく、前述の実施形態において説明されている技術的解決手段に対する複数の変更を行い得るか、またはこれらのいくつかの技術的特徴に対して等価な置き換えを行い得ることを理解するはずである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12