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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-14
(45)【発行日】2024-06-24
(54)【発明の名称】人工角膜
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/14 20060101AFI20240617BHJP
【FI】
A61F2/14
【請求項の数】 38
(21)【出願番号】P 2020569749
(86)(22)【出願日】2019-06-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-21
(86)【国際出願番号】 US2019037296
(87)【国際公開番号】W WO2019241699
(87)【国際公開日】2019-12-19
【審査請求日】2021-02-05
【審判番号】
【審判請求日】2023-01-17
(31)【優先権主張番号】62/684,901
(32)【優先日】2018-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391028362
【氏名又は名称】ダブリュ.エル.ゴア アンド アソシエイツ,インコーポレイティド
【氏名又は名称原語表記】W.L. GORE & ASSOCIATES, INCORPORATED
(73)【特許権者】
【識別番号】508280195
【氏名又は名称】ザ ジョンズ ホプキンス ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(72)【発明者】
【氏名】ゴパラン ブイ.バラジ
(72)【発明者】
【氏名】アヌラーグ シン
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ビー.シュミーデル
(72)【発明者】
【氏名】エセン ケー.アクペク
【合議体】
【審判長】佐々木 正章
【審判官】井上 哲男
【審判官】安井 寿儀
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-523266(JP,A)
【文献】米国特許第5300115(US,A)
【文献】特表2013-540521(JP,A)
【文献】特表2002-533159(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/14
A61F 9/01
A61F 9/013
A61F 2/142
A61B 3/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前側及び後側を有する本体と、該本体の周りに延在する環状フランジとを含む光学要素、並びに
該光学要素に結合された組織統合スカート
を含んでなる人工角膜であって、
該本体の該前側は前部光学面を含み、該後側は後部光学面を含み、該組織統合スカートは組織の内殖を促進するように構成され、かつ、該組織統合スカートは、該光学要素の該前側と該後側との間で画定される該環状フランジの周囲の少なくとも一部が該組織統合スカートで覆われるように該光学要素に結合されており、さらに該組織統合スカートは、該光学要素の最外周縁である周壁に沿って、かつ、該環状フランジの前面に沿って、該光学要素に結合されていることを特徴とする、人工角膜。
【請求項2】
前記環状フランジは、第一のフランジ構成要素及び該第一のフランジ構成要素の後方に位置する第二のフランジ構成要素を含み、前記第一のフランジ構成要素は第一の前面及び周辺面を画定し、前記第二のフランジ構成要素は、前記周辺面によって前記第一の前面からオフセットされた第二の前面を画定している、請求項1記載の人工角膜。
【請求項3】
前記組織統合スカートは、前記第一の前面、前記周辺面及び前記第二の前面のそれぞれに結合されている、請求項2記載の人工角膜。
【請求項4】
前記環状フランジの第一の前面及び第二の前面は非平行である、請求項2又は3記載の人工角膜。
【請求項5】
前記環状フランジは不均一な厚さを有する、請求項2~4のいずれか1項記載の人工角膜。
【請求項6】
前記第一のフランジ構成要素及び前記第二のフランジ構成要素はそれぞれ、前記本体の周りを半径方向外向きに延在している、請求項2~5のいずれか1項記載の人工角膜。
【請求項7】
前記第二のフランジ構成要素は前記第一のフランジ構成要素よりも半径方向外向きに延在している、請求項2~5のいずれか1項記載の人工角膜。
【請求項8】
前記第二のフランジは少なくとも1つのアパチャを含み、該アパチャはそれを通って組織が増殖することを可能にするように構成されている、請求項2~5のいずれか1項記載の人工角膜。
【請求項9】
前記少なくとも1つのアパチャはマイクロドリリングによって形成される、請求項8記載の人工角膜。
【請求項10】
前記第二のフランジは、前記少なくとも1つのアパチャを形成する微細構造を有する材料を含む、請求項8記載の人工角膜。
【請求項11】
前記後部光学面は、前記環状フランジの後面からオフセットされている、請求項1~10のいずれか1項記載の人工角膜。
【請求項12】
前記後部光学面と前記環状フランジの後面との間のオフセットは、前記後部光学面を横切る組織の増殖に抵抗するのを助けるバリアとして構成されている、請求項11記載の人工角膜。
【請求項13】
前記本体の後側は、前記組織統合スカートによる被覆がない、請求項1~12のいずれか1項記載の人工角膜。
【請求項14】
前記組織統合スカートは前記光学要素の前側の一部を覆っている、請求項1~13のいずれか1項記載の人工角膜。
【請求項15】
前側及び後側を有する本体を含み、組織の内殖に抵抗するように構成された光学要素と、
該本体の周りに延在している環状フランジと、
組織の内殖が可能になるように構成された組織統合スカートと
を含んでなる光学要素であって、
該本体の前側は前部光学面を含み、該後側は後部光学面を含み、
該環状フランジは、第一のフランジ構成要素及び該第一のフランジ構成要素の後方に位置する第二のフランジ構成要素を含み、該第一のフランジ構成要素と該第二のフランジ構成要素との間に該本体の周辺面が画定され、該第一のフランジ構成要素は後部フランジ面を画定し、該第二のフランジ構成要素は、該周辺面によって該後部フランジ面からオフセットされた前部フランジ面を画定しており、かつ
該組織統合スカートは該周辺面に結合されており、さらに該組織統合スカートは、該光学要素の最外周縁である周壁に沿って、かつ、該環状フランジの前面に沿って、該光学要素に結合されている
ことを特徴とする、人工角膜。
【請求項16】
さらに前記組織統合スカートが、前記前部フランジ面に、前記後部フランジ面に、又は前記前部フランジ面と前記後部フランジ面の両方に、結合されている、請求項15記載の人工角膜。
【請求項17】
前記前部光学面は凸状である、請求項1~16のいずれか1項記載の人工角膜。
【請求項18】
前記後部光学面は凹状である、請求項1~17のいずれか1項記載の人工角膜。
【請求項19】
前記光学要素はフルオロポリマーを含む、請求項1~18のいずれか1項記載の人工角膜。
【請求項20】
前記フルオロポリマーは親水性になるように処理されている、請求項19記載の人工角膜。
【請求項21】
前記フルオロポリマーは親水性である、請求項20記載の人工角膜。
【請求項22】
前記光学要素はテトラフルオロエチレン(TFE)とペルフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)とのコポリマーを含む、請求項1~21のいずれか1項記載の人工角膜。
【請求項23】
前記人工角膜は折り畳み可能である、請求項1~22のいずれか1項記載の人工角膜。
【請求項24】
前記人工角膜は、前記人工角膜との相互作用が関与する眼内圧測定によって眼の眼内圧を現場で測定することができるように構成されている、請求項1~23のいずれか1項記載の人工角膜。
【請求項25】
外部からの力が目に直接作用したときに、前記人工角膜が天然角膜組織と界面形成している眼の領域の変形応答を測定することによって、眼の眼内圧を現場で測定することができるように構成されている、請求項24記載の人工角膜。
【請求項26】
前記外部からの力は、測定される界面領域に接触している物体によって加えられる、請求項25記載の人工角膜。
【請求項27】
前記人工角膜の屈折率は1.3~1.4の範囲内にある、請求項1~26のいずれか1項記載の人工角膜。
【請求項28】
前記光学要素は組織の内殖に抵抗するように構成されている、請求項1~27のいずれか1項記載の人工角膜。
【請求項29】
前記前部光学面は、それに対する組織付着を可能にすると同時に、組織の内殖に抵抗するように構成されている、請求項1~28のいずれか1項記載の人工角膜。
【請求項30】
前記前部光学面は、組織の内殖に抵抗しながら、前記前部光学面への組織の付着を可能にするように構成された微細構造を含む、請求項29記載の人工角膜。
【請求項31】
前記前部光学面は、角膜上皮成長層によって少なくとも部分的に覆われ、前記角膜上皮成長層は、前記前部光学面上での角膜上皮細胞の組織化単層の形成及び維持を促進及び支持するように構成されている、請求項29記載の人工角膜。
【請求項32】
前記光学要素は、組織の内殖に抵抗するように構成された微細構造を有する材料から形成されている、請求項1~31のいずれか1項記載の人工角膜。
【請求項33】
前記光学要素は、組織の内殖に抵抗するように構成された材料でコーティングされている、請求項1~32のいずれか1項記載の人工角膜。
【請求項34】
前記組織統合スカートは、組織の内殖を可能にするように構成された微細構造を有する材料から形成されている、請求項1~33のいずれか1項記載の人工角膜。
【請求項35】
前側及び後側を有する本体と、該本体の周りに延在する環状フランジとを含み、さらに該本体の後側に後部光学面を含む光学要素を提供すること、
組織の内殖を促進するように構成されている組織統合スカートを提供すること、及び
該光学要素の前側と後側の間に画定された該環状フランジの周囲の一部が該組織統合スカートによって覆われるように、該組織統合スカートを該光学要素に結合すること
を含んでなる、人工角膜を形成する方法であって、該組織統合スカートは、該光学要素の最外周縁である周壁に沿って、かつ、該環状フランジの前面に沿って、該光学要素に結合されることを特徴とする、方法。
【請求項36】
前記後部光学面を前記環状フランジの後面から長手方向にオフセットさせる、請求項35記載の方法。
【請求項37】
さらに前記組織統合スカートを、前記光学要素の前側の一部が前記組織統合スカートによって覆われるように、前記光学要素に結合させる、請求項35又は36記載の方法。
【請求項38】
前記光学要素は組織の内殖に抵抗するように構成され、前記光学要素の前側は、組織の内殖に抵抗しながら、組織の付着を可能にするように構成されている、請求項35~37のいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に人工角膜に関する。本開示の人工角膜は角膜代替物としての移植に適している。
【背景技術】
【0002】
角膜は、一般に、光を屈折させて網膜に集束させると共に、眼の眼内構成要素に対する保護バリアとして機能する。角膜は、網膜への光学的に透明な窓であるはずのものが不透明になる原因となりうる多くの疾患、遺伝性障害及び外傷を受けやすい。
【0003】
損傷又は罹患した角膜を、ドナーの眼から採取した生組織の角膜で置き換えるための外科的処置が存在するが、ドナーの角膜は利用できない場合があり、損傷した眼の潜在的な状態は、ドナーの角膜の不全又は拒絶の可能性が高い場合があり、及び/又は、患者の生理機能は、ドナーの角膜の不全又は拒絶の可能性が高い場合がある。
【0004】
ドナー角膜の移植が実行可能でない場合に、人工角膜の移植が潜在的な代替治療になる。人工角膜又は角膜プロテーゼは、損傷又は罹患した角膜の一部又は全部を置き換えるために患者の眼に移植できる人工角膜である。角膜プロテーゼが直面している主な課題は、生体統合の合併症及び眼からのデバイスの突出であった。その他の合併症としては、感染症、プロテーゼ後膜の形成、炎症、緑内障、機械的耐久性の欠如及び光学的汚染が挙げられる。
【0005】
デバイス拒絶の問題を解決するための幾つかのアプローチが試みられてきた。1つのアプローチは、コア及びスカートタイプの構造を有する角膜プロテーゼ設計を含む。コア及びスカートタイプのデバイスは、一般に、視覚的回復のための非孔質光学コアと、スカートを取り巻く眼組織との生体統合のためのスカートを有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、今日まで、従来のコア及びスカートタイプの構造は、最適なデバイス固定及び長期の光学的開通性を示さなかった。したがって、長期の光学的開通性を示すことができる改良された人工角膜が望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
1つの例(「例1」)によれば、人工角膜は、前側及び後側を有する本体と、該本体の周りに延在する環状フランジとを含む光学要素、並びに該光学要素に結合された組織統合スカートを含んでなる人工角膜であって、該本体の該前側は前部光学面を含み、該後側は後部光学面を含み、該組織統合スカートは組織の内殖を促進するように構成され、かつ、該組織統合スカートは、該光学要素の該前側と該後側との間で画定される該環状フランジの周囲の少なくとも一部が該組織統合スカートで覆われるように該光学要素に結合されていることを特徴とする。
【0008】
別の例(「例2」)によれば、例1に加えて、前記環状フランジは、第一のフランジ構成要素及び該第一のフランジ構成要素の後方に位置する第二のフランジ構成要素を含み、前記第一のフランジ構成要素は第一の前面及び周辺面を画定し、前記第二のフランジ構成要素は、前記周辺面によって前記第一の前面からオフセットされた第二の前面を画定している。
【0009】
別の例(「例3」)によれば、例2に加えて、前記組織統合スカートは、前記第一の前面、前記周辺面及び前記第二の前面のそれぞれに結合されている。
【0010】
別の例(「例4」)によれば、例1又は例3に加えて、前記環状フランジの第一の前面及び第二の前面は非平行である。
【0011】
別の例(「例5」)によれば、例2~4のいずれかに加えて、前記環状フランジは不均一な厚さを有する。
【0012】
別の例(「例6」)によれば、例2~5のいずれかに加えて、前記第一のフランジ構成要素及び前記第二のフランジ構成要素はそれぞれ、前記本体の周りを半径方向外向きに延在している。
【0013】
別の例(「例7」)によれば、例2~5のいずれかに加えて、前記第二のフランジ構成要素は前記第一のフランジ構成要素よりも半径方向外向きに延在している。
【0014】
別の例(「例8」)によれば、例2~5のいずれかに加えて、前記第二のフランジは少なくとも1つのアパチャを含み、該アパチャはそれを通って組織が増殖することを可能にするように構成されている。
【0015】
別の例(「例9」)によれば、例8に加えて、前記少なくとも1つのアパチャはマイクロドリリングによって形成される。
【0016】
別の例(「例10」)によれば、例8に加えて、前記第二のフランジは、前記少なくとも1つのアパチャを形成する微細構造を有する材料を含む。
【0017】
別の例(「例11」)によれば、例1~10のいずれかに加えて、前記後部光学面は、前記環状フランジの後面からオフセットされている。
【0018】
別の例(「例12」)によれば、例11に加えて、前記後部光学面と前記環状フランジの後面との間のオフセットは、前記後部光学面を横切る組織の増殖に抵抗するのを助けるバリアとして構成されている。
【0019】
別の例(「例13」)によれば、例1~12のいずれかに加えて、前記本体の後側は、前記組織統合スカートによる被覆がない。
【0020】
別の例(「例14」)によれば、例1~13のいずれかに加えて、前記組織統合スカートは前記光学要素の前側の一部を覆っている。
【0021】
1つの例(「例15」)によれば、人工角膜は、前側及び後側を有する本体を含み、組織の内殖に抵抗するように構成された光学要素と、該本体の周りに延在している環状フランジと、組織の内殖が可能になるように構成された組織統合スカートとを含んでなる光学要素であって、該本体の前側は前部光学面を含み、該後側は後部光学面を含み、該環状フランジは、第一のフランジ構成要素及び該第一のフランジ構成要素の後方に位置する第二のフランジ構成要素を含み、該第一のフランジ構成要素と該第二のフランジ構成要素との間に該本体の周辺面が画定され、該第一のフランジ構成要素は後部フランジ面を画定し、該第二のフランジ構成要素は、該周辺面によって該後部フランジ面からオフセットされた前部フランジ面を画定しており、かつ、該組織統合スカートは該周辺面に結合されていることを特徴とする。
【0022】
別の例(「例16」)によれば、例15に加えて、前記統合スカートは、前記前部フランジ面、前記後部フランジ面又は前記前部フランジ面と前記後部フランジ面の両方にさらに結合されている。
【0023】
別の例(「例17」)によれば、例1~16のいずれかに加えて、前記前部光学面は凸状である。
【0024】
別の例(「例18」)によれば、例1~17のいずれかに加えて、前記後部光学面は凹状である。
【0025】
別の例(「例19」)によれば、例1~18のいずれかに加えて、前記光学要素はフルオロポリマーを含む。
【0026】
別の例(「例20」)によれば、例19に加えて、前記フルオロポリマーは、それを親水性にするように処理されている。
【0027】
別の例(「例21」)によれば、例20に加えて、前記フルオロポリマーは親水性である。
【0028】
別の例(「例22」)によれば、例1~21のいずれかに加えて、前記光学要素はテトラフルオロエチレン(TFE)とペルフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)とのコポリマーを含む。
【0029】
別の例(「例23」)によれば、例1~22のいずれかに加えて、前記人工角膜は折り畳み可能である。
【0030】
別の例(「例24」)によれば、例1~23のいずれかに加えて、前記人工角膜は、前記人工角膜との相互作用が関与する眼内圧測定によって眼の眼内圧を現場で測定することができるように構成されている。
【0031】
別の例(「例25」)によれば、例24に加えて、前記人工角膜は、外部からの力が目に直接作用したときに、前記人工角膜が天然の角膜組織と界面形成している眼の領域の変形応答を測定することによって、眼の眼内圧を現場で測定することができるように構成されている。
【0032】
別の例(「例26」)によれば、例25に加えて、外部からの力は、測定される界面領域に接触している物体によって加えられる。
【0033】
別の例(「例27」)によれば、例1~26のいずれかに加えて、前記人工角膜の屈折率は1.3~1.4の範囲内にある。
【0034】
別の例(「例28」)によれば、例1~27のいずれかに加えて、前記光学要素は組織の内殖に抵抗するように構成されている。
【0035】
別の例(「例29」)によれば、例1~28のいずれかに加えて、前記前部光学面は、それに対する組織付着を可能にすると同時に、組織の内殖に抵抗するように構成されている。
【0036】
別の例(「例30」)によれば、例29に加えて、前記前部光学面は、組織の内殖に抵抗しながら、前記前部光学面への組織の付着を可能にするように構成された微細構造を含む。
【0037】
別の例(「例31」)によれば、例29に加えて、前記前部光学面は、角膜上皮成長層によって少なくとも部分的に覆われ、前記角膜上皮成長層は、前記前部光学面上での角膜上皮細胞の組織化単層の形成及び維持を促進及び支持するように構成されている。
【0038】
別の例(「例32」)によれば、例1~31のいずれかに加えて、前記光学要素は、組織の内殖に抵抗するように構成された微細構造を有する材料から形成されている。
【0039】
別の例(「例33」)によれば、例1~32のいずれかに加えて、前記光学要素は、組織の内殖に抵抗するように構成された材料でコーティングされている。
【0040】
別の例(「例34」)によれば、例1~33のいずれかに加えて、前記組織統合スカートは、組織の内殖を可能にするように構成された微細構造を有する材料から形成されている。
【0041】
1つの例(「例35」)によれば、人工角膜を形成する方法は、前側及び後側を有する本体と、該本体の周りに延在する環状フランジとを含み、さらに該本体の後側に後部光学面を含む光学要素を提供すること、組織の内殖を促進するように構成されている組織統合スカートを提供すること、及び、該光学要素の前側と後側の間に画定された該環状フランジの周囲の一部が該組織統合スカートによって覆われるように、該組織統合スカートを該光学要素に結合することを含んでなる。
【0042】
別の例(「例36」)によれば、例35に加えて、前記後部光学面を前記環状フランジの後面から長手方向にオフセットさせる。
【0043】
別の例(「例37」)によれば、例35又は例36に加えて、さらに前記組織統合スカートを、前記光学要素の前側の一部が前記組織統合スカートによって覆われるように、前記光学要素に結合させる。
【0044】
別の例(「例38」)によれば、例35~37のいずれかに加えて、前記光学要素は組織の内殖に抵抗するように構成され、前記光学要素の前側は、組織の内殖に抵抗しながら、組織の付着を可能にするように構成されている。
【0045】
1つの例(「例39」)によれば、人工角膜を移植する方法は、請求項1~34のいずれか1項記載の人工角膜を提供すること、患者の角膜から角膜組織の断片を除去して、人工角膜を取り付けることができる既存の角膜組織の組織床を形成すること、前記人工角膜の後側が目の内部の上に浮遊されるように人工角膜を移植すること、及び、移植された人工角膜を前記組織床の既存の角膜組織に機械的に固定することを含む。
【0046】
別の例(「例40」)によれば、例39に加えて、角膜組織の断片の除去は、患者の角膜から角膜組織の全厚断片を除去することを含み、前記人工角膜の移植は、前記人工角膜の後側が前記組織床の既存の角膜組織によって支持されないように前記人工角膜を移植することを含む。
【0047】
複数の実施形態が開示されているが、さらに他の実施形態は、例示的な例を示しそして記載する以下の詳細な説明から当業者に明らかになるであろう。したがって、図面及び詳細な説明は、本質的に例示的であり、限定的なものではないものと考えられるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0048】
添付の図面は、本開示のさらなる理解を提供するために含まれ、本明細書に組み込まれ、その一部を構成し、実施形態を示し、記載とともに、本開示の原理を説明するのに役立つ。
【0049】
図1図1は、幾つかの実施形態による人工角膜構造の図である。
【0050】
図2図2は、幾つかの実施形態による、図1の人工角膜構造の背面斜視図である。
【0051】
図3図3は、幾つかの実施形態による、図1の人工角膜構造の上面図である。
【0052】
図4図4は、幾つかの実施形態による、図3の線4-4に沿って取られた図1の人工角膜構造の断面図である。
【0053】
図5図5は、幾つかの実施形態による、図4の人工角膜の断面図であり、組織統合要素が除去された状態である。
【0054】
図6図6は、幾つかの実施形態による人工角膜構造の断面図である。
【0055】
図7図7は、幾つかの実施形態による人工角膜の図である。
【0056】
図8図8は、幾つかの実施形態による図7の人工角膜構造の背面斜視図である。
【0057】
図9図9は、幾つかの実施形態による図7の人工角膜構造の上面図である。
【0058】
図10図10は、幾つかの実施形態による図9の線10-10に沿って取られた人工角膜構造の断面図である。
【0059】
図11図11は、幾つかの実施形態による図10の人工角膜の断面図であり、組織統合要素が除去された状態である。
【0060】
図12図12は、幾つかの実施形態による人工角膜構造の図である。
【0061】
図13図13は、図12の人工角膜の断面図である。
【0062】
図14図14は、幾つかの実施形態による人工角膜構造の図である。
【0063】
図15図15は、幾つかの実施形態による図14の人工角膜構造の背面斜視図である。
【0064】
図16図16は、幾つかの実施形態による図14の人工角膜構造の上面図である。
【0065】
図17図17A~17Cは、幾つかの実施形態による図16の線17~17に沿って取られた人工角膜構造の断面図である。
【0066】
図18図18は、幾つかの実施形態による図17A~17Cの人工角膜コアの断面図であり、組織統合要素が除去された状態である。
【0067】
図19図19は、幾つかの実施形態による人工角膜構造の断面図である。
【0068】
図20図20は、幾つかの実施形態による、人工角膜の視度の測定値と眼圧との間の関係を示すグラフ表示である。
【発明を実施するための形態】
【0069】
当業者は、本開示の様々な態様が、意図された機能を発揮するように構成された任意の数の方法及び装置によって実現されうることを容易に理解するであろう。本明細書で参照される添付の図面は、必ずしも一定の縮尺で描かれているわけではなく、本開示の様々な態様を説明するために誇張されている場合があり、その点で、図面は限定として解釈されるべきではないことにも留意されたい。
【0070】
本開示の様々な態様は、人工角膜デバイス、システム、ならびに、製造及び移植方法を対象とする。より具体的には、本開示は、コア及びスカート構造を含む人工角膜を製造及び使用するためのデバイス、システム及び方法に関する。人工角膜100は、罹患した角膜、損傷した角膜又はさもなければ交換が必要な角膜の合成代替物として機能するインプラント可能なメディカルデバイスである。様々な実施形態において、人工角膜は、光学要素と、該光学要素に結合された組織統合要素とを含む。様々な実施形態において、光学要素は、合成物であり、ポリマー材料を含む。様々な実施形態において、組織統合要素は、合成物であり、ポリマー材料を含む。組織統合要素は、人工角膜の眼への生物学的統合を促進にするように構成され、一方、光学要素は既存の角膜の機能的代替物として動作する。
【0071】
幾つかの実施形態において、組織統合要素は、組織の内殖及び組織統合要素の材料への組織の付着を可能にするように構成されている。幾つかの実施形態において、光学要素の1つ以上の指定された部分又は領域は、組織の内殖及び付着に抵抗するように構成されうる。例えば、幾つかの実施形態において、光学要素の1つ以上の光学面(例えば、後部光学面)は、組織の内殖及び付着に抵抗するように構成されうる。追加的又は代替的に、幾つかの実施形態において、光学要素の1つ以上の指定された部分又は領域は、組織の内殖に抵抗するように構成されながら、組織の付着を可能にするように構成されうる。すなわち、幾つかの実施形態において、光学要素の材料の1つ以上の部分又は領域は、組織の付着を可能にするように構成されうる。例えば、幾つかの実施形態において、光学要素の光学面(例えば、前部光学面)は、組織の内殖に抵抗しながら、組織の付着を可能にするように構成されうる。
【0072】
組織の内殖は、一般に、材料の表面を超えた材料中への細胞侵入を意味すると理解することができる(例えば、材料はベース材料及び/又はコーティングを含むことができる)。組織の内殖は、一般に、生物学的細胞が成長するか、さもなければ細孔又はボイドを通って前進することを可能にするのに十分なサイズの細孔又はボイドを含む材料の微細構造に関連する。したがって、組織の内殖は、組織が材料の表面を横切って成長する(そして材料の表面上に存在する)ことができるだけでなく、組織が材料の表面を超えて材料中に実質的に侵入することもできることを意味する。他方、本明細書で使用されるときに、「組織付着」という用語は、一般に、材料の表面を超えて又は実質的に材料の表面を超えて材料中に細胞が侵入することのない、材料の表面への細胞接着又は付着を意味すると理解されうる。付着は、表面電荷、表面粗さ及び/又は化学結合が原因となることができる。例えば、材料は、滑らかではなく、その上及びその中に存在する組織を支持することができるピーク、谷、隆起及び/又はチャネルを含む組織化表面を有することができる。幾つかの例において、材料の微細構造は非孔質であることができ、一方、他の例において、微細構造は、それを通る細胞の前進に対応するのに不十分なサイズの細孔又はボイドを含むことができる。したがって、表面は、その上に存在し、そこに成長する組織を支持するように構成されるが、組織は、材料の表面を超えて(例えば、ピーク、谷、隆起及び/又はチャネルを超えて)材料中に実質的に侵入することができない。組織の内殖に抵抗しながら組織の付着を可能にすることにより、上皮組織などの組織は、実質的に材料中に侵入することなく、材料の表面を横切って増殖及び成長することができる。光学要素の1つ以上の領域又は部分の中への組織の実質的な侵入を回避することは、組織の内殖が光学要素の材料の光学性能を低下させるか又はさもなければ汚染する可能性があるときに、光学要素の光学性能を汚染する可能性を最小限に抑えるのに役立つ。さらに、組織が光学要素の1つ以上の領域又は部分の中に実質的に侵入する可能性を最小限に抑えることにより、表面に付着した組織を続いて医師により表面から除去できるが、光学要素に実質的に侵入した組織は除去するのが(可能な場合であっても)困難である。幾つかの例において、光学表面を横切って成長する組織細胞は、組織化されていない方法で構成されるようになり、光学要素を通して見たときに画像の満足いかない歪みを引き起こす可能性がある。これらの例において、細胞は、それらが付着している光学要素の表面から定期的にこすり落とされなければならないことがある。細胞の表面への付着に限定し、表面を超えた材料中への侵入を最小限に抑えることで、医師は、表面から細胞をこすり落とすなどして、光学要素から細胞を除去することができる。幾つかの実施形態において、組織の光学表面への付着は、メソプラント(例えば、外部環境と内部環境との間でインターフェースするデバイス)をインプラントに転化又は変換するのに役立ち、それによって感染症及びデバイスの突出のリスクを最小限に抑える。
【0073】
幾つかの実施形態による人工角膜100は図1に示されている。示されるように、人工角膜100は、光学要素200及び組織統合要素300(組織統合スカートとも呼ばれる)を含む。人工角膜100は、前側102と該前側102の反対側の後側104とを有する。移植されると、前側102は、一般に、外部環境に面するか、そうでなければ外部環境に露出され、一方、後側104は、生来の眼の内部に面する。したがって、移植されると、人工角膜100は、眼の内部と外部環境との間にバリアを形成しうる。人工角膜100は、一般に円形、楕円形又は卵形に対応する前面プロファイルを含むことができる。人工角膜の縁形状が湾曲又は非湾曲前部及び後部光学面に対応し得るように、前部又は後部光学面(以下で詳細に説明)の1つ以上は湾曲していても又は非湾曲であってもよい。
【0074】
幾つかの例において、人工角膜100の人工角膜の周囲に概して延在している人工角膜100の外周面106は規則的又は不規則な形状(例えば、スカラップ、スポーク、星型など)であることができ、そして一般に、人工角膜の周囲に延在している。人工角膜100は、前部光学面108及び後部光学面110を含む。以下でより詳細に論じるように、人工角膜100の前部光学面及び後部光学面108及び110は、一般に、光学要素200の前部光学面及び後部光学面に対応し、したがって、当業者が理解するように、それに応じて成形される。例えば、図1、2及び4に示されるように、前側102は一般に凸状であり、後側104は一般に凹状である。
【0075】
図4は、図3の線4-4に沿って取られた人工角膜100の断面図を示す。示されるように、人工角膜は、光学要素200及び組織統合要素300を含む。組織統合要素300は、その周壁又は表面208に沿ってそしてその前面220に沿って、光学要素200に結合されて示される。
【0076】
図1~5に示される光学要素200は、患者の眼の中に移植されたときに網膜への光学的に透明な窓として機能するディスク状の部材である。図5は、組織統合要素が除去された状態で光学要素200を示している。光学要素200は、一般に、図示のようにディスク状であることができる本体202を含む。したがって、本体202は、円形又は楕円形を含むことができ、平坦であっても又は湾曲していてもよいことが理解される。様々な実施形態において、本体202は、合成生体適合性材料から形成されている。
【0077】
例えば、本体202は、限定するわけではないが、テトラフルオロエチレン(TFE)とペルフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)、ペルフルオロエチルビニルエーテル(PEVE)及びペルフルオロプロピルビニルエーテル(PPVE)などのペルフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)とのコポリマー、TFEとヘキサフルオロプロピレン(FEP)とのコポリマー、好ましくはコモノマーとしてTFEを含むペルフルオロポリマー、ペルフルオロアルコキシポリマー(PFA)、ペルフルオロポリエーテルから選ばれるフルオロポリマーを含む多くの適切な材料から形成されることができ、又は、シリコーン、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、ハイドロゲル、ポリウレタン又はそれらの任意の適切で適当な組み合わせを含むことができる。
【0078】
幾つかの例において、本体202は、TFEとPMVEとのコポリマーを含む材料から形成することができ、これは、実質的に非架橋性でありながら、すなわち、架橋性モノマー及び硬化剤を含まない一方で、優れた機械的特性を有するようにユニークに形成される。コポリマーは、40~80質量%のPMVE単位を含み、補完的に、60~20質量%のTFE単位を含む。架橋系がないため、材料は高純度であり、幾つかの熱硬化性TFE/PMVEエラストマーとは異なり、インプラント可能な生体材料として理想的に適している。利点としては、優れた生体適合性、高い引張強度、高い透明度、高い耐摩耗性、高純度、十分な弾性、及び、コポリマーの熱可塑性でかつ非架橋性構造による加工の容易さが挙げられる。コポリマーは熱可塑性で非晶性である。また、強度が高く、多孔質PTFEをそれ自体又は他の多孔質物質に室温又は高温で結合するのに特に適した結合剤として使用できる。また、非孔質PTFEなどのポリマーを含む非孔質材料を結合するのにも使用できる。米国特許第7,049,380号明細書は、TFEとPMVEとのそのようなコポリマーをさらに例示及び記載しており、その全体を参照により本明細書に取り込む。
【0079】
幾つかの実施形態において、本体202は、組織の内殖を最小化、阻害又はさらには防止するように構成されている。幾つかの実施形態において、本体202の微細構造は、組織の内殖を最小化、阻害又は防止するように構成されている。追加的又は代替的に、本体202に適用されるコーティングは、本体202中への組織の内殖を最小化、阻害又は防止するように構成されている。しかしながら、幾つかの例において、本体202の1つ以上の表面(例えば、前部光学面210)への組織の付着は許容される。幾つかの例において、前部光学面210は、組織の内殖(例えば、前部光学面210の表面を超えた材料中への組織の侵入)に抵抗しながら、組織付着を支持するように構成されうる。幾つかの実施形態において、1つ以上の表面調整プロセス及び/又は材料コーティングプロセスを利用して、光学要素200の前部光学面210への組織の付着及び増殖を促進するのを助けることができる。例えば、1つ以上の既知の機械的及び/又は化学的調整プロセスを使用して、表面を状態調整する(例えば、表面が滑らかでない表面組織を有するように状態調整する)ことができる。
【0080】
幾つかの例において、本体202は、1.3~1.4の範囲内など、1.2~1.6の範囲内の屈折率を有することができる。幾つかの例において、本体は、50%を超える、より好ましくは80%を超える可視光透過範囲(400~700nmの波長)での光透過率をすることができる。架橋剤、生物活性物質(例えば、成長因子、サイトカイン、ヘパリン、抗生物質又は他の薬物)、ホルモン、紫外線吸収剤、色素、他の治療剤などの添加剤を、デバイスの望ましい性能に応じて、本体202を形成する材料に取り込むことができる。
【0081】
様々な実施形態において、本体202は、光学要素200が、正常に機能する角膜の合成代替物として動作するという点で、光学的に透明である。幾つかの例において、1つ以上の光学部分などの本体202の1つ以上の部分は、光学的に透明である。例えば、以下でより詳細に論じられるように、光学要素200と組織統合要素300との間の結合領域の内部に位置する本体202の少なくとも一部は、光学的に透明である。
【0082】
様々な実施形態において、光学要素200の本体202は、前側204、後側206、及び、前側と後側204と206との間に延在している周辺面208を含む。幾つかの実施形態において、前側204は、一般に、外部環境に面しているか、又は、そうでなければ外部環境に露出されて、一方、後側206は眼(例えば、眼組織及び眼の内部)に面している。様々な例において、前側204は一般に凸状に湾曲しており、一方、後側206は一般に凹状に湾曲している。周辺面208は、本体202の周りに周方向に延在し、前側と後側204と206との間の遷移部を形成する表面である。周辺面208は規則的又は不規則(例えば、スコラップ)であり、前側及び後側204及び206の1つ以上の表面に対して垂直又は実質的に垂直に延在している1つ以上の部分を含むことができる。周辺面208は線形又は非線形であることができ、複数の表面(周辺面208を集合的に画定するサブ表面など)を含むことができる。周辺面208は、一般に、組織統合要素300が本体202に結合される結合領域の少なくとも一部を形成又は画定する。すなわち、幾つかの実施形態において、組織統合要素300は周辺面208によって少なくとも部分的に画定される結合領域(例えば、前側と後側204と206との間に延在している表面を有する本体202の一部)に沿って光学要素200に結合される。
【0083】
様々な例において、光学要素200の本体202の前側204は、前部光学面210などの前部光学面を含む。様々な実施形態において、前部光学面210は、視力の範囲で画像の形成に寄与する。前部光学面210は、網膜への光の光路における一次屈折面として動作する。様々な例において、前部光学面210は、人工角膜100の光学要素200の本体202と外部環境との間の界面として動作し、人工角膜100の前側102の少なくとも一部を画定し、そして光学要素200の本体202の前側204の少なくとも一部を画定している。前部光学面210は、人工角膜100の前部光学面108に対応する。様々な例において、前部光学面210は、高い光透過を可能にする表面である。様々な例において、前部光学面210は、一般に、湾曲しているか、又は非線形である。例えば、図5に示されるように、前部光学面210は凸状である。
【0084】
幾つかの例において、光学要素200は、前方突起、又は、本体202から前方に延在している本体202の突起を含む。例えば、図5に示されるように、光学要素200は、前方突起212を含む。前方突起212は、本体202の前側204のすべて又はすべてより少ない突起であることができる。したがって、以下でさらに論じ、図5に示されるように、様々な例において、本体202の前側204は、互いに長手方向にオフセットされた複数の表面を含むことができる。様々な例において、前部光学面210は、前方突起212の前面に対応する。したがって、複数の前面を含む例において、前部光学面210は、本体202の前面204の一部のみを画定する。しかしながら、他の幾つかの例において、前部光学面210は、本体202の前側204全体にわたって延在し、本体202の前側204を画定している。
【0085】
幾つかの実施形態において、前方突起212は、本体202の前側204上の突起物として形成される。他の例において、前方突起212は、追加的又は代替的に、本体202の前側204において、環状の周方向に延在する凹部を形成することによって形成される。すなわち、幾つかの例において、材料の環状リングは本体202の前側204から除去されて、本体202の前側204の周りに環状の周方向に延在している凹部を形成する。さらに他の例において、前方突起212は、本体202の周りに周方向に延在している環状フランジ218を形成することによって追加的又は代替的に形成され、ここで、環状フランジ218の前面220は、前部光学面210に対して凹んでいるか、又はさもなければ後方にオフセットされている。別の言い方をすれば、幾つかの例において、光学要素200の前側204は、少なくとも第一の前面及び該第一の前面に対してオフセットされた第二の前面を含むように、段状になっている。幾つかの例において、前部光学面は、ゼロ(0)~200ミクロンの範囲内で、環状フランジ218の前面220からオフセットされている。図5に示されるように、第一の表面又は段差224は、前部光学面210と環状フランジ218の前面220との間に延在している。
【0086】
様々な実施形態において、光学要素200の本体202の後側206は、後部光学面210などの後部光学面を含む。様々な例において、後部光学面210は、人工角膜100の光学要素200の本体202と眼の内部との界面として機能し、そして人工角膜100の後側104の少なくとも一部及び光学要素200の本体202の後側206の少なくとも一部を画定する。後部光学面214は、人工角膜100の後部光学面110に対応する。様々な例において、後部光学面214は、高い光透過が可能な表面である。幾つかの実施形態において、後部光学面214は、引っかき傷、くぼみ又はガウジなどの表面欠陥又は不完全部がない。様々な例において、後部光学面210は、一般に、湾曲しているか、又は非線形である。例えば、図5に示されるように、後部光学面210は凹状である。
【0087】
幾つかの例において、光学要素200は、後方突起、又は、本体202から後方に延在している本体202の突起を含む。例えば、図5に示されるように、光学要素200は、後方突起216を含む。後方突起216は、本体202の後側206のすべて又はそれより少ない突起であることができる。したがって、以下でさらに論じ、図5に示されるように、様々な例において、本体202の後側206は、互いに長手方向にオフセットされた突起を含むことができる。様々な例において、後部光学面210は、後方突起216の後面に対応する。したがって、複数の後面を含む例において、後部光学面214は、本体202の後側206の一部のみを画定する。しかしながら、他の幾つかの例において、後部光学面210は、本体202の後側206全体にわたって延在し、本体202の後側206を画定する。
【0088】
幾つかの例において、後方突起216は、本体202の後側206上の突起物として形成される。他の例において、後方突起216は、追加的又は代替的に、本体202の後側206において環状の周方向に延在している凹部を形成することによって形成される。すなわち、幾つかの例において、材料の環状リングは本体202の後側206から除去されて、本体202の後側206の周りに環状の周方向に延在している凹部を形成する。さらに他の例において、後方突起216は、追加的又は代替的に、本体202の周りに、環状フランジ218などの周方向に延在している環状フランジを形成することによって形成され、ここで、環状フランジの後面は、後部光学面214に対して凹んでいるか、又はさもなければ前方にオフセットされている。別の言い方をすれば、光学要素200の後側206は、少なくとも第一の後面及び該第一の後面に対してオフセットされた第二の後面を含むように、場合により段状(例えば、不連続)になっている。幾つかの例において、後部光学面214は、ゼロ(0)~1(1ミリメートル)の範囲内で、環状フランジ218の後面222からオフセットされている。
【0089】
様々な例において、前部光学面210は前面220からオフセットされており、その結果、光学要素200上の組織統合スカートの配置及び位置配向及び保持を容易にする。幾つかの例において、そのようなオフセットは、一般に、組織統合スカートの厚さに対応するが、それは必須ではない、様々な例において、後部光学面214は、後面222からオフセットされており、その結果、周辺面208の周りに位置する角膜組織が光学要素の後側を横切って成長して後部光学面214を覆うのを防止するのを容易にする。幾つかの例において、後部光学面214上の角膜組織又は他の関連する眼組織の存在は、光学要素200の光学性能を低下させるか、又はさもなければ汚染する傾向を有する可能性がある。様々な例において、後部光学面214は、当初に炎症を起こしたり又は腫れたりする可能性のある、隣接する角膜組織の期待される厚さを超える量で後面222からオフセットされていることができる。
【0090】
幾つかの例において、オフセットされた第一の後面及び第二の後面を含む光学要素は、光学要素の後側を横切る組織の内殖をさらに抑制するように動作する。すなわち、幾つかの例において、第一の(例えば、光学的)後面と第二の後面との間に延在している段差又は表面は、第二の後面から第一の後面への組織の増殖又は伝播を防ぐように動作する。例えば、そのような段差は、第二の後面を横切って成長する(例えば、光学要素の周辺から成長する)組織が第一の後面上及びそれを横切って成長するのを防ぐのを助けるバリアとして動作する。図4及び5に示されるように、後部光学面214と環状フランジ218の後面222との間に位置する表面又は段差226は、組織が後面222から後部光学面214に増殖するのを防止又はさもなければ抑制するように動作する。このような構成は、生物学的組織の存在による後部光学面214の汚染を最小限に抑制し、又はさもなければ汚染を回避するように動作する。様々な例において、後部光学面214は、それを横切る組織の増殖(例えば、付着及び/又は内殖を含む)を防止するためにコーティングで処理されている。
【0091】
幾つかの例において、前方突起及び後方突起212及び216は、同様のサイズ及び/又は形状である。例えば、図5に示されるように、前方突起及び後方突起212及び216は、一般に円形である。幾つかの例において、前方突起及び後方突起212及び216は、異なるサイズ及び/又は形状である。例えば、図5に示されるように、後方突起216は、前方突起212よりも本体202からより多く突出している。同様に、示されるように、後方突起216は、前方突起212よりも大きい直径を有する(又はさもなければより半径方向に拡張性である)。
【0092】
幾つかの例において、前方突起、本体の一部及び後方突起の一部は、光学要素200の本体202のコア部分を形成する。幾つかの例において、本体202のコア部分は、光学要素200の本体202の残りの部分とは異なる材料から形成されている。幾つかのそのような例において、本体202のコアは、本明細書に記載のとおりの光学的に透明な組織内殖阻害材料から形成されうる。
【0093】
特定の実施形態において、光学要素200の本体202の後側206は、図6に示されるように、後方突起216を含まない。
【0094】
上記のように、様々な実施形態において、光学要素200は、環状フランジ218などの周方向環状フランジ(又はフランジ部分)を含む。幾つかの実施形態において、環状フランジ218は、光学要素の本体202の部分として画定されることができ、該光学要素は前方突起及び後方突起212及び216のうちの1つ以上の半径方向外向きに延在している。様々な実施形態において、環状フランジ218は、さらに以下で論じられるように、組織統合要素300を本体202に結合するための領域と、人工角膜100を眼の組織に最初に固定するために1つ以上の固定要素(例えば、1つ以上の縫合糸)を通過させることができる要素との両方として動作する。様々な例において、環状フランジ218は、前面220、後面222及び前面220と後面222の間に延在している表面によって画定される。様々な例において、前面220と後面222との間に延在している表面は、上記の本体202の周辺面208に対応する。
【0095】
周辺面208は、前面220及び後面222の1つ以上に垂直に又は実質的に垂直に延在している1つ以上の部分を含むことができる。追加又は代替的に、周辺面208は、人工角膜100の中心軸に対して平行に又は実質的に平行であることができ、上記のように、線形又は非線形であることができ、周辺面208を集合的に画定する複数の表面(例えば、サブ表面)を含むことができる。幾つかの実施形態において、人工角膜100の中心軸は、前部及び後部光学面108及び110の1つ以上に垂直に延在し、1つ以上の前部光学面及び後部光学面108及び110の中心点又は頂点と交差する。このため、幾つかの例において、周辺面208は、人工角膜100の前部及び後部光学面108及び110のうちの1つ以上の頂点に垂直に又は実質的に垂直に延在している。
【0096】
光学要素200は、圧縮成形プロセス又は他の既知のプロセスによって形成することができる。例えば、幾つかの実施形態において、光学要素200を形成するポリマー材料は、一般に、予め形成されたモールド内で加熱及び圧縮され、これにより、加熱されたポリマー材料は、本明細書に記載されているとおりの光学要素200の所望の形状に非常に類似する予め形成されたモールドの形状を採用する。幾つかの実施形態において、光学要素200が形成された後に、光学要素200は、1つ以上の仕上げプロセスにかけられることができる。例えば、以下でより詳細に論じられるように、光学要素200又は人工角膜100は、1つ以上の関連する光学面が精密に成形される1つ以上の精密成形プロセスに供されうる。他の仕上げプロセスの例としては、限定するわけではないが、成形後表面平滑化(例えば、表面欠陥の除去)、研磨、湿潤化、トリミング及び/又は滅菌(化学、熱及び/又は蒸気滅菌など)が挙げられる。
【0097】
再び図4に戻ると、人工角膜100は、環状フランジ218に結合された組織統合要素300と共に示されている。組織統合要素300は、人工角膜100の眼の周囲組織への結合を容易にするように構成された機械的固定機構又は要素として動作する。幾つかの例において、組織統合要素300は、組織が組織統合要素300の材料内及び材料を横切って成長することができるように構成され、これは、眼内の人工角膜100の位置を維持するのに役立つ。
【0098】
様々な例において、組織統合要素300は微孔質であり、周囲の組織の内殖及び付着を促進するように構成されている。幾つかの例において、組織統合要素300は、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)などの多孔質ポリマー材料の1つ以上の層又はシートを含むか、又はさもなければそれから形成される。しかしながら、これらの層又はシートは他のポリマーから形成されることができ、該ポリマーとしては、限定するわけではないが、ポリウレタン、ポリスルホン、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリヘキサフルオロプロピレン(PHFP)、ペルフルオロアルコキシポリマー(PFA)、ポリオレフィン、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、アクリルコポリマー、ハイドロゲル、シリコーン及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が挙げられる。これらの材料は、シート、ニット、織布又は不織布の多孔質形態にすることができる。幾つかの例において、層又はシートは、熱処理及び/又は接着剤及び/又は高圧圧縮及び/又は当業者に知られている他のラミネート化方法などによって、ラミネート化されるか、又はさもなければ機械的に結合される。
【0099】
幾つかの例において、組織統合要素300を形成するポリマー材料の層もしくはシート又は組織統合要素300自体は、層状ポリマー材料の微細構造(したがって材料特性)を変更するための1つ以上のプロセスに供される。幾つかの例において、そのようなプロセスとしては、限定するわけではないが、材料コーティングプロセス、表面事前条件調整プロセス及び/又は穿孔プロセスが挙げられる。材料コーティングプロセスを利用して、金属塩(例えば、炭酸銀)及び/又は有機化合物(例えば、クロルヘキシジンジアセテート)などの1つ以上の薬物又は抗微生物性コーティングをポリマー材料に適用することができる。幾つかの実施形態において、材料コーティングプロセスを利用して、上記の議論と一貫する組織統合要素300への組織の付着及び組織統合要素300を横切る増殖を促進するのを助けることができる。一般にポリマー表面は本質的に疎水性であるため、ポリマーマトリックスの即時湿潤を可能にする親水性コーティングは、1つ以上のプラズマ処理(又は化学修飾湿潤)プロセスを介して適用することもできる。例えば、ポリマー材料の表面は、親水剤で変性されることができ、それにより、その疎水性を低下させ、その湿潤性を改善することができる。より具体的には、ポリマー材料は、表面を活性化するためにプラズマで前処理され、親水性ポリマーに暴露され、ポリマー材料の表面上の親水性コーティングを架橋するためにプラズマで再び処理されうる。
【0100】
幾つかの例において、1つ以上の表面事前条件調整プロセスを追加的又は代替的に利用して、好ましい微細構造(例えば、しわ、折り目又は他の幾何学的な面外構造又は起伏のある構造)を示す組織統合要素300の層を形成することができ、2014年8月21日に出願された米国特許出願公開番号第2016/0167291号、シリアル番号第14/907,668号明細書で記載されているとおりであり、その全内容を参照により本明細書に取り込む。同様に、1つ以上のプラズマ処理を利用して、所望の表面構造(例えば、スタッコ様)を達成することができる。そのような表面事前条件調整は、手術後のより大胆な初期炎症段階を促進し、人工角膜100とそれが界面形成する眼組織との間の初期の安定した界面を提供することができる。さらに、幾つかの例において、1つ以上の穿孔プロセスを追加的又は代替的に利用して、組織統合要素300内に複数の穿孔又は細孔を形成することができ、これは組織の内殖をさらに促進することができる。
【0101】
幾つかの実施形態において、抗酸化成分を含む1つ以上の表面コーティングを、光学要素200及び組織統合要素300の1つ以上に適用して、手術後の創傷治癒中に自然に発生する身体の炎症反応を軽減することができる。その表面は、抗増殖性化合物(例えば、マイトマイシンC、5-フルオラシル)で変性して、眼における周囲組織応答を緩和することができる。
【0102】
様々な例において、組織統合要素300のポリマー材料は、光学要素200に適用する前に、微細構造を変性するための1つ以上のプロセスに供される。例えば、組織統合要素300のポリマー材料は、2014年11月29日に出願されたシリアル番号第11/000,414号である米国特許出願公開番号第2006/0047311号明細書(その全内容を参照により本明細書に取り込む)に説明されているように、ポリマー材料を光学要素200に適用する前に、(例えば、組織統合の促進のために)材料に表面構造を与えるためのプラズマ処理プロセスに供されることができる。幾つかの例において、ポリマー材料を処理した後に、ポリマー材料のサイズが決定され、光学要素200に適用される。幾つかの例において、ポリマー材料は、当業者に理解されるように、1つ以上のレーザ切断又は他の適切な切断プロセスなどによってあるサイズに切断される。
【0103】
組織統合要素300は、光学要素200の光学性能を損なうことなく光学要素200に結合されることを理解されたい。すなわち、以下でより詳細に論じられるように、組織統合要素300は、光学要素200に結合されたときに、光学要素200の前部光学面及び後部光学面108及び110が組織統合要素300によって遮られないままであるようにサイズ設定及び形状設定される。したがって、組織統合要素300は、光学要素200と結合されたときに、前部光学面及び後部光学面108及び110のうちの1つ以上の周りに周方向に延在する環状形状の部材であることができる。
【0104】
図4に示されるように、組織統合要素300は、前部光学面及び後部光学面108及び110を横切って延在することなく、そして後面222を横切って延在することなく、周辺面208及び前面220に沿って光学要素200に結合される。幾つかの実施形態において、したがって、周辺面208は、本体202の第一の組織統合要素の結合領域を形成又は画定する。同様に、幾つかの実施形態において、環状フランジ218の前面220は、本体202の第二の組織統合要素300の結合領域を形成又は画定する。
【0105】
図に示されるように、環状フランジ218の周囲に沿って組織統合要素300を光学要素200に結合することにより、従来のデバイス及び設計とは異なる方法で前側204と後側206との間の人工角膜100の周辺面に沿った組織統合及びデバイス固定が提供される。組織統合要素300が光学要素200の前側204の一部に沿って延在するように組織統合要素300を光学要素200に結合することにより、人工角膜100の前面に沿って部分的に組織統合及びデバイス固定が提供される。同様に、組織統合要素300が周辺面208に沿って延在するように組織統合要素300を光学要素200に結合することにより、人工角膜100の前側102と後側104との間に延在する人工角膜100の周囲に沿った組織統合及びデバイス固定が提供される。人工角膜100は、内部眼環境を外部環境と接続するメソプラントであるときに、より良いデバイス固定及び生体統合は、細菌、ウイルス、真菌類又は他の微生物などの外来媒体から内部眼環境を隔離するより良いシールを提供するのに役立ち、これはデバイス保持の可能性を高め、そしてデバイス突出の可能性を低めるのに役立つ。
【0106】
幾つかの例において、組織統合要素300は、任意の既知の取り付け方法に従って、光学要素200に適用されることができ、取り付け方法としては、限定するわけではないが、接着剤、熱結合、圧力又は成形が挙げられる。幾つかの例において、ポリマー材料は、CO2レーザを使用してレーザ切断される。具体的には、前部光学面210に隣接して配置される組織統合要素300の内径の切断半径は、光学要素200上の組織統合要素300の配置が組織統合要素300と表面224との間の有意なギャップなしに達成されうるようなサイズにされる。このような例において、組織統合要素300は、ラミネーションフィクスチャにおいて光学要素と同心のカットホールを備えて配置される。前部光学面210及び後部光学面214の光学的曲率を成形するために、レンズが光学要素200の上部及び下部に使用され、成形及びラミネート化は、5psiを超える圧力をレンズに加えることによって同時に達成される。組織統合要素300の周辺面208へのラミネート化は、組織統合要素300の前面220への第一のラミネート化の後に組織統合要素300の外径を切断し、組織統合要素300のポリマー材料を周辺面208上で折り畳み、周辺面208に接触している組織統合要素300のポリマー材料を周辺面208の周りで半径方向に拘束することによって同様の方法で達成される。その後に、幾つかの例において、完成したラミネート化アセンブリを上部ラミネート化及び側部ラミネート化のためにオーブン内に175℃でそれぞれ20分間配置する。
【0107】
様々な例において、組織統合要素300は、光学要素200に適用された後に、微細構造を変更するために1つ以上のプロセスに追加的又は代替的に供される。例えば、組織統合要素300が光学要素200に適用された後に、組織統合要素300及び/又は光学要素200のポリマー材料は、組織統合要素300のポリマー材料が眼液に湿潤可能であるように、1つ以上の湿潤化プロセス(例えば、親水性処理)に供されることができる。このような構成は、美容術及び迅速な生体統合性を提供するのに役立つ。様々な例において、湿潤可能であることにより、組織統合要素300はまた、ほぼ透明になり、その結果、人工角膜100が外観において天然の角膜に類似する。幾つかの例において、湿潤可能な組織統合スカートの追加の利点は、それが眼液及び細胞外マトリックスのより容易かつより速い侵入を提供することである。そのような構成は、一般に、より速い生体統合を促進し、それは次いで、感染症及び突出の可能性を低下させる。
【0108】
幾つかの例において、人工角膜100は、所望の形状を達成するために1つ以上のプロセスに供されることができる。幾つかの例において、これらのプロセスは、患者の角膜に作られた貫通形状に一致する所望の形状を達成することができる。幾つかの例において、これらのプロセスは、人工角膜100の1つ以上の光学面の所望の形状及び/又は輪郭を達成することができる(例えば、適切な光屈折のために)。そのようなプロセスとしては、上記の説明と一貫する二次成形手順を介して光学要素に直接転写される特定の曲率半径に作られたガラスレンズの使用が挙げられる。他の例において、屈折面は、ステンレス鋼又は他の適切な材料を使用した、機械加工された表面を使用することによって、追加的又は代替的に達成される。幾つかの例において、そのような表面はまた、患者の目に特有の固有の光学的歪みを相殺する特別な曲率を有するようにすることもできる。
【0109】
上記のように、幾つかの例において、組織統合要素300は、光学要素200の前側204の一部が組織統合要素300によって覆われるか又はさもなければ隠されるように、光学要素200に適用される。具体的に、幾つかの例において、組織統合要素300は、環状フランジ218の前面220に少なくとも適用される。幾つかのそのような例において、環状フランジ218の前面220に適用された組織統合要素300の部分の厚さは、前方突起212が環状フランジ218の前面220を超えて突出する量に対応する。すなわち、様々な例において、組織統合要素300は、人工角膜100の前側102が滑らかになるように光学要素200の前面204に適用される。そのような例において、人工角膜100の前部光学面108と、光学要素200の前側に適用された組織統合要素300の部分との間の遷移部は滑らかである(例えば、突起、ギャップなどがない)。前部光学面108と組織統合要素300との間の滑らかな遷移部は、移植された人工角膜100の前側102が不快感又は刺激を引き起こさず、又は、患者の解剖学的構造の他の部分(例えば、患者のまぶたなど)に干渉しないことを提供する。さらに、人工角膜100の前側102の一部に沿った組織統合要素300の組み込みは、人工角膜の前側102の一部に沿った組織内殖の増殖を促進する。組織統合要素300が環状フランジ218の周辺面208全体に適用されるように図4に示されているが、幾つかの例において、組織統合要素300は、周辺面208のすべてよりも少ない部分に適用されうることが理解されるべきである。
【0110】
幾つかの実施形態において、周辺面208は、組織統合要素300のポリマー材料を収容するために段状であるか又はさもなければ部分的に凹んでいることができる。幾つかの実施形態において、しかしながら、組織統合要素300が環状フランジ218の前面220から後面222まで延在しているように、組織統合要素300のポリマー材料は光学要素の周辺面208に適用される。そのような構成は、人工角膜100の周辺の組織内殖を提供する。
【0111】
幾つかの例において、環状フランジ218の前面220に結合された組織統合要素300のポリマー材料の部分及び光学要素200の周辺面208に結合された組織統合要素300のポリマー材料の部分は、一緒になって、単一のモノリシック部材を形成する。幾つかの例において、組織統合要素300は、それが取り付けられるか又は結合される光学要素の表面の相対的な向きを反映するように事前形成又は事前構成されうる。他の例において、組織統合要素300は、それが取り付け又は結合されているときに、それが取り付け又は結合されている光学要素の表面の相対的な向きに一致するように操作できるという点で順応性である。
【0112】
幾つかの実施形態において、組織統合要素300は、光学要素200に独立して別々に結合される複数の区別されるセクションを含むことができる。例えば、組織統合要素300の第一のセクション又は部分は環状フランジ218の前面220に適用されることができ、一方、組織統合要素300の第二の区別されるセクション又は部分は光学要素200の周辺面208に適用される。幾つかの例において、これらの区別されるセクション又は部分は、光学要素200の意図された部分の連続的な被覆を容易にするようにして互いに隣接するか又はさもなければ接触するように適用されうる。したがって、幾つかの例において、ポリマー材料の複数の区別されるセクションは、一般に滑らかで連続的な組織統合要素300を形成するように光学要素200に適用されうる。
【0113】
組織統合要素300は、ポリマー材料の複数の層を含むか又はさもなければそれらから構成されることができることを理解されたい。幾つかの例において、これらの層は、濡れ性、透過性、厚さ、順応性、接着性、透明性などの組織統合要素300の1つ以上の材料特性を最適化するように互いに対して配向されうる。幾つかのこのような例において、様々な層は、当業者が理解するような1つ以上の結合、接着又はラミネート化プロセスを介して一緒に結合することができる。
【0114】
様々な例において、環状フランジ218の前面220を覆っている組織統合要素300の部分の表面状態は、光学要素200の周辺面208を覆っている組織統合要素300の部分の表面状態とは異なる。そのような構成は、組織増殖の異なる程度及び速度を促進するように動作する。例えば、幾つかの例において、前面220に結合された組織統合スカートの部分は、迅速な上皮化及びそれへの付着を促進するように処理されることができ、、一方、周辺面208に付着された組織統合要素300の部分は、上皮細胞の成長を遅らせ、間質の内殖を促進するように処理されうる。
【0115】
様々な実施形態において、組織統合要素300は、光学要素200の後側206が覆われていないか又はさもなければ露出されたままであるように、光学要素200に適用される。すなわち、様々な例において、光学要素200の後側206は、組織統合要素300による被覆がないままである。例えば、図4に示されるように、組織統合要素300は、人工角膜100の後側104(後部光学面214及び環状フランジ218の後面222を含む)が露出されるか又はさもなければ固定材料により覆われないように、光学要素200に適用される。したがって、様々な例において、組織統合要素300は、組織統合要素300が後部光学面214及び環状フランジ218の後面222を含む光学要素200の後側206に接触しないように、光学要素200に適用される。別の言い方をすれば、様々な例において、組織統合要素300は、後側206(後部光学面214及び後面222を含む)が組織統合要素300との接触がないままであるように、光学要素200に適用され、後側206は眼(例えば、眼の内部及び/又は眼の組織床)に曝されている。組織統合要素300を後部光学面214上に配置することは、光透過を阻害し、光学的汚染を引き起こす可能性がある。
【0116】
しかしながら、当業者は、様々な例において、組織統合要素300が後面222を横切って部分的又は完全に配置されうることを理解すべきである。
【0117】
図7図11は、別の人工角膜100の例を示す。図7~11の人工角膜100は、光学要素200と、該光学要素200に結合された組織統合要素300とを含む。図11に示されるように、光学要素200は、本体202が前部光学面及び後部光学面210及び214を画定する前方突起及び後方突起212及び216を含むという点で、図5に関して上で論じられた本体202と同様の本体202を含む。しかしながら、図7図11に示される本体202の環状フランジ218は、図1~5に示される本体の環状フランジとは異なる。特に、図11に示されるように、環状フランジ218は、第一のフランジ構成要素228(図11)及び第二のフランジ構成要素230(図11)によって画定され、これらのそれぞれは、例えば、フランジ部分、フランジ層、フランジセグメント又はフランジ特徴部としてさらに説明されうる。第一のフランジ構成要素228は、前方突起及び後方突起212及び216のうちの1つ以上の半径方向外向きに延在している光学要素200の本体202の第一の環状部分として定義されることができ、第二のフランジ構成要素230は、前方突起及び後方突起212及び216のうちの1つ以上の半径方向外向きに延在し、第一のフランジ構成要素228の半径方向外向きに延在している部分を含む、光学要素200の本体202の第二の環状部分と定義されうる。様々な実施形態において、第二のフランジ構成要素230は、第一のフランジ構成要素228の後方に位置する。
【0118】
様々な実施形態において、第一のフランジ構成要素及び第二のフランジ構成要素228及び230は、環状フランジ218を画定する単一のモノリシック本体を形成する。したがって、第一のフランジ構成要素及び第二のフランジ構成要素228及び230は互いに一体であることができることが理解されるべきであるが、別個の接続された部品もまた考えられる。同様に、環状フランジ218は、第一のフランジ構成要素及び第二のフランジ構成要素228及び230が前方突起及び後方突起212及び216と一体になるように、本体202の他の部分(例えば、前方突起及び後方突起212及び216)と一体であり、本体202を集合的に画定することができる。
【0119】
第一のフランジ構成要素228は、前面220及び周辺面208を含むことができる(例えば、図1~5の光学要素に関して上で論じたのと同様に)。第二のフランジ構成要素230は、前面232、後面234、及び、前面232と後面234の間に位置するか、又はさもなければそれらの間で遷移部を形成する周縁又は周辺面236を含むことができる。幾つかの実施形態において、第二のフランジ構成要素230の周縁236(周辺面236とも呼ばれる)及び光学要素200の周縁(又は最外周縁)は同じである。様々な実施形態において、第一のフランジ構成要素及び第二のフランジ構成要素228及び230は、第一のフランジ構成要素228の前面220が第二のフランジ構成要素230の前面232の前方に位置するように配向される。逆に、第二のフランジ構成要素230の後面234は、第一のフランジ構成要素228の後面222の後方に位置する。幾つかの実施形態において、遷移部238は、それぞれ第一のフランジ構成要素及び第二のフランジ構成要素228及び230の後面222と後面234との間に画定される。遷移部238は、当業者に理解されるべきであるように、滑らかで連続的であることが、あるいは、段状又は不連続的であることができる。図11に示されるように、第二のフランジ構成要素230の周辺面236は、第一のフランジ構成要素228の周辺面208よりもさらに半径方向外向きに延在している。さらに、図11に示されるように、第一のフランジ構成要素228の後面222は、後面222が後面234と後部光学面214との間の環状凹部を画定するように、後面234及び後部光学面214のそれぞれの前方に位置する。
【0120】
図10に示されるように、組織統合要素300は、組織統合要素300の第一の部分が第一のフランジ構成要素228に結合され、組織統合要素300の第二の部分が第二のフランジ構成要素230に結合されるように、環状フランジ構成要素218に結合される。特に、組織統合要素300は、第一のフランジ構成要素228の前面及び周辺面220及び208のそれぞれ、そして、第二のフランジ構成要素230の前面232に結合されている。しかしながら、組織統合要素300は、第二のフランジ構成要素230の周辺面236にさらに結合されうることが理解されるべきである。図11に示されるように、組織統合要素300は、第一のフランジ構成要素及び第二のフランジ構成要素の後面222及び234にそれぞれ結合されていない。
【0121】
図7~11に示される本体202の構成は、幾つかの点で有利であることができる。例えば、幾つかの例によれば、本体202の構成は、人工角膜100の移植後に眼の天然の角膜組織を支持するための追加の表面を提供し、これは、うまい生体統合を助ける。例えば、天然組織は、組織統合要素300内及び上に成長することが許容され、それは第一のフランジ構成要素228の前面220及び周辺面208に結合され、また、組織統合要素300は第二のフランジ構成要素230の前面232に結合されている。
【0122】
様々な実施形態において、環状フランジ218の第一のフランジ構成要素228は、以下でさらに論じられるように、人工角膜100を眼の組織に最初に固定するために、1つ以上の締結要素(例えば、1つ以上の縫合糸)を通過させることができる要素としてさらに動作する。
【0123】
図12及び13は別の人工角膜100の例を示している。図12及び13の人工角膜100は、光学要素200と、該光学要素200に結合された組織統合要素300とを含む。図13に示されるように、光学要素は、以下の点で図5、10及び11に関して上で論じられた本体202とは異なる本体を含む。図5、10及び11に示された本体202は、前部光学面210を画定する前方突起212を含むが、図13に示されるとおりの後部光学面214は前方突起によって画定されない。図12及び図13に示される本体202の環状フランジ218は、第一のフランジ構成要素228(図13)及び第二のフランジ構成要素230(図13)によって画定され、これらのそれぞれは、例えば、フランジ部分、フランジ層、フランジセグメント又はフランジ特徴部としてさらに記載されうる。第一のフランジ構成要素228は、図7~11に関して上で論じた第一のフランジ構成要素228と同様であり、前方突起212から半径方向外向きに延在している光学要素202の本体202の第一の環状部分として画定されうる。しかしながら、図12及び13に示される第二のフランジ構成要素230は、図7~11に示される本体の第二のフランジ構成要素230とは異なる。特に、図12及び13に示されるように、第二のフランジ230は、第二のフランジ230の前面から第二のフランジ230の後面まで通過する少なくとも1つのアパチャ256を含む。アパチャ256は、細胞が成長、増殖又はさもなければそれを通して前進するのに十分なサイズの直径を有する。アパチャ256は、人工角膜100の眼の周囲組織への結合を促進する。幾つかの例において、アパチャ256は、組織成長が第二のフランジ230を通って広がる(すなわち、増殖する)ことができるように構成され、これは、眼内の人工角膜100の位置を維持するのに役立つ。
【0124】
様々な実施形態において、第一のフランジ構成要素及び第二のフランジ構成要素228及び230は、環状フランジ218を画定する単一のモノリシック本体を形成する。したがって、第一のフランジ構成要素及び第二のフランジ構成要素228及び230は互いに一体であることができることが理解されるべきであるが、別個の接続された部品であることも考えられる。同様に、環状フランジ218は、本体202の他の部分と一体であることができるが、別個の接続された部分であることも考えられる。幾つかの実施形態において、第二のフランジ230は、第一のフランジ228及び/又は本体202と同じ材料を含む。他の実施形態において、第二のフランジ230は、第一のフランジ228及び本体202とは異なる材料を含む。マイクロドリル技術、例えば、超音波ドリル、粉末ブラスト又は研磨ウォータージェット機械加工(AWJM)などの機械的マイクロドリル、レーザ加工などの熱マイクロドリル、ウェットエッチング、深掘り反応性イオンエッチング(DRIE)又はプラズマエッチングを含む化学マイクロドリル、スパークアシスト化学彫刻(SACE)、振動アシストマイクロマシニング、レーザ誘起プラズママイクロマシニング(LIPMM)及び水アシストマイクロマシニングなどのハイブリッドマイクロドリル技術により、アパチャ256を第二のフランジに形成することができる。他の実施形態において、第二のフランジ230は、第一のフランジ228及び本体202とは異なる材料を含み、アパチャ256は、第二のフランジ230の材料の特徴である。すなわち、第二のフランジ230の材料自体の微細構造は、アパチャ256を形成するための十分なサイズの細孔を含む。特定の実施形態において、アパチャ256は、約75pm~約600pmの直径を有する。特定の実施形態において、アパチャ256は、約200pm~約300pmの直径を有する。特定の実施形態において、アパチャ256は、約300pmの直径を有する。
【0125】
図12及び13の人工角膜100の第一のフランジ構成要素及び第二のフランジ構成要素228及び230の表面は図7~11の人工角膜100について上で説明したものと同様である。
【0126】
図13に示されるように、組織統合要素300は第一のフランジ構成要素228に結合されている。特に、組織統合要素300は、第一のフランジ構成要素228の前面及び周辺面のそれぞれに結合されている。組織統合要素300は、しかしながら、第二のフランジ構成要素230の前面及び周辺面の一方又は両方にさらに結合されうることが理解あれるべきである。
【0127】
幾つかの実施形態において、前方突起212を有する、図7~11に示されるものと同様の人工角膜100は、第二のフランジ230にアパチャ256を含む。
【0128】
図12及び13に示されるような第二のフランジ構成要素230の構成は、人工角膜の厚さにわたる組織成長を提供し、人工角膜の長期の機械的固定を提供するという点で有利である可能性がある。幾つかの実施形態において、組織は組織統合要素300中に成長し得るが、人工角膜の厚さにわたって組織成長を有することは、より高いレベルの固定及び保持を提供しうる。
【0129】
図14~18は、別の人工角膜100の例を示す。図14~18の人工角膜は、光学要素200と、該光学要素200に結合された組織統合要素300を含む。図18に示されるように、光学要素200は、前部光学面及び後部光学面210及び214を含む本体202を含む。しかしながら、本明細書で論じられる他の構成とは異なり、本体202は、組織統合要素が結合される半径方向に延在している環状フランジを含まず、代わりに、中に天然の角膜組織を収容するように構成された周方向に延在している凹部240を画定する。周方向に延在している凹部240は、図17A~17Cに示されるように、組織統合要素300を収容するように同様に構成される。図17A~17C及び18を引き続き参照すると、周方向に延在している凹部240は、第一の表面242、該第一の表面242の反対側の第二の表面244、及び、第一の表面242と第二の表面244との間に位置し、それらを横切って延在している第三の表面246を含む複数の表面によって画定される。
【0130】
幾つかの実施形態において、図18に示される光学要素200は、前部光学面及び後部光学面210及び214と、それぞれがその周囲の半径方向外向きに延在している前部フランジ248及び後部フランジ250を含む複数のフランジとを有する本体202を含むものと記載することができる。前部フランジ及び後部フランジ248及び250は、周方向に延在している凹部240がそれらの間に画定されるように、光学要素200の長手方向軸に沿って互いにオフセットされている。幾つかの実施形態において、第三の表面246は本体202の周辺面に対応すると理解され、一方、第一の表面242は前部フランジ248の後面に対応すると理解され、一方、第二の表面244は、後部フランジ250の前面に対応すると理解されることができる。幾つかの実施形態において、前部フランジ248の前面252及び前部光学面210は、集合的に、図14~18に示される光学要素200の前側を画定する。同様に、幾つかの実施形態において、後部フランジ250の後面254及び後部光学面214は、集合的に、図14~18に示される光学要素200の後側を画定する。
【0131】
図17Aに示されるように、組織統合要素300は、第一の表面、第二の表面及び第三の表面242、244及び246のそれぞれに結合され、その結果、患者の眼に移植されると、角膜又は他の関連する眼組織は第一の表面、第二の表面及び第三の表面242、244及び246のそれぞれに沿って組織統合要素300中に成長することができる。
【0132】
図17Bに示されるように、組織統合要素300は、第二の表面及び第三の表面244及び246に結合され、その結果、患者の眼に移植されると、角膜又は他の関連する眼組織は第二の表面及び第三表面244及び246のそれぞれに沿って組織統合要素300中に成長することができるが、そのような構成では、組織の内殖に耐性がある第一の表面242は、位置合わせ縁として機能し、患者の眼内で人工角膜を位置合わせする。
【0133】
図17Cに示されるように、組織統合要素300は、第三の表面246にのみ結合され、その結果、患者の眼に移植されると、角膜又は他の関連する眼組織は、第三の表面に沿って組織統合要素300中に成長することができるが、そのような構成では組織の内殖に耐性がある第一の表面及び第二の表面242及び244は、位置合わせ縁として機能し、患者の眼内で人工角膜を位置合わせする。
【0134】
様々な例において、本明細書に例示及び記載される人工角膜は、トレフィン又はレーザなどの外科的切断器具を使用して、組織の全厚断片が罹患又は損傷した角膜から除去される貫通角膜移植外科的処置と併せて移植される。様々な例において、罹患又は損傷した角膜の円形の全厚プラグが除去され、人工角膜100を取り付けることができる角膜組織の組織床が残される。そのような構成では、人工角膜100の後側104の一部又は全部が眼の内部の上に浮遊される。すなわち、人工角膜100の後側104の一部又は全部は、眼の既存の角膜組織によって支持されていない。角膜の全厚切除を伴う場合には、角膜は一般に上皮から内皮まで除去される。
【0135】
本明細書に例示及び記載されている人工角膜100はまた、デスメ膜剥離及び自動内皮角膜移植術(DSAEK)などの部分的な厚さの外科的処置と組み合わせて移植されるように構成され、組織の全厚未満の断片が罹患した又は損傷した角膜から除去され、健康な角膜組織の残留床を残す。これらの実施形態において、前部角膜の罹患部分が切除され、人工角膜100が健康な角膜組織の残存床上に配置される。
【0136】
様々な例において、本明細書で論じられる人工角膜は、移植を容易にするのを助けるために一時的に折り畳まれ、変形されうるように構成される。すなわち、多くの従来の設計とは異なり、人工角膜(例えば、光学要素200の本体202を含む)は、順応性があり、剛性がないように構成されている。例えば、移植手順の間に、医師は、適切な配向を達成するために、及び/又は、天然の組織床に人工角膜を適切に着座させるために、人工角膜を折り畳むか又は変形させる必要がある場合がある。幾つかの場合において、独立した拘束部材を利用して、移植手順の前及び手順中に人工角膜の変形を一時的に維持することができる。様々な例において、人工角膜100は、組織床内又は組織床上に解放されるとき、及び/又は組織床に固定されるときに変形していない幾何形状をとるのに十分な弾力性がある。順応性及び非剛性となるように人工角膜を構成することにより、人工角膜が移植されている間に、従来の方法に従って眼の眼内圧を監視することもできる。
【0137】
例えば、人工角膜は順応性がある(例えば、天然の角膜に匹敵する順応性の尺度を有する)ので、人工角膜が移植される眼の眼内圧は、既知の眼圧測定法を通して決定することができ、該眼圧測定法としては、限定するわけではないが、圧平眼圧測定、ゴールドマン眼圧測定、動的輪郭眼圧測定、電子圧痕眼圧測定、リバウンド眼圧測定、気道眼圧測定、圧痕又は印象眼圧測定及び非接触眼圧測定が挙げられる。本明細書で論じられる人工角膜と組み合わせて使用される場合に、これらの方法は、眼の外部の力によって作用されたときの人工角膜と天然角膜組織との間の界面に沿った変形応答を測定することを含む。例えば、測定は、光学要素と天然角膜組織(例えば、角膜輪部)が係わるか又は界面形成する光学要素の周囲に沿った1つ以上の位置で行われることができる。これには、純粋に天然の角膜組織が含まれる場合もあれば、又は、天然角膜組織が人工角膜にオーバーラップする領域が含まれる場合もある。眼圧測定装置によって送達される外力としては、空気圧及び/又は眼の測定領域に接触する物体によって加えられる外力を挙げることができる。眼の他の領域(例えば、強膜)との相互作用を介して眼内圧を測定するための他の方法が存在し、人工角膜と天然角膜組織との界面に沿って眼内圧を測定することを含む眼圧測定と区別されるものと理解されるべきである。剛性の従来の人工角膜設計はそれ自体十分に変形可能ではなく、天然の眼組織及びそのような従来の剛性の人工角膜設計に沿った界面も十分に変形可能でないために、眼圧測定は従来の剛性人工角膜設計では不可能であることを理解されたい。
【0138】
図19は、人工角膜100の実施形態を示している。図19の人工角膜100は、図13のものと同様であるが、2つの重要な違いがある。第一に、示されるように、図19の第二のフランジ構成要素230はアパチャ256を含まない。第二に、図19に示される実施形態は、角膜上皮細胞成長層258をさらに含む。角膜上皮細胞成長層258は、光学要素200の前側204を横切る角膜上皮細胞の組織化単層の形成及び維持を促進及び支持するように構成されている。角膜上皮細胞成長層258は、人工角膜100の前側102が滑らかになるように、光学要素200の前側204に堆積される。そのような例において、角膜上皮細胞成長層258と、光学要素200の前側に適用される組織統合要素300の部分との間の遷移部は滑らかである(例えば、突起、ギャップなどがない)。上皮細胞成長層258と組織統合要素300との間の滑らかな遷移部は、移植された人工角膜100の前側102が不快感又は刺激を引き起こさず、又は、患者の解剖学的構造の他の部分(例えば、患者のまぶた)に干渉しないことを提供する。さらに、組織統合要素300は、人工角膜の前側102の一部に沿った組織内殖の増殖を促進するが、上皮細胞成長層258は、光学要素200の前側204上に角膜上皮細胞の組織化単層の形成を促進する。組織統合要素300は、図19において、環状フランジ218の周辺面208全体に適用されるものとして示されているが、幾つかの例において、組織統合要素300は、周辺面208のすべてよりも少ない部分に適用されうることが理解されるべきである。同様に、上皮細胞成長層258は、図19において、組織統合要素300によって覆われていない光学要素200の前側204全体にわたって適用されるものとして示されているが、幾つかの例において、上皮細胞成長層258は、組織統合要素300によって覆われていない光学要素200の前側204のすべてよりも少ない部分に適用されうる。上記の例に関連して記載されているが、上皮細胞成長層258は、本明細書に開示及び記載されている人工角膜の任意の例に組み込むことができる。
【0139】
幾つかの実施形態において、上皮細胞成長層258は、1つ以上のプラズマコーティング(正又は負に帯電)、糖タンパク質、コラーゲン及びゼラチン及び/又はプロテオグリカンを含む。有用な糖タンパク質としては、例えば、フィブロネクチン、ラミニン及びビトロネクチンが挙げられる。有用なコラーゲンタイプとしては、例えば、タイプI、タイプII、タイプIII、タイプIV及びタイプVが挙げられる。有用なプロテオグリカンとしては、例えば、バーシカン、パーレカン、ニューロカン、アグリカン及びブレビカンが挙げられる。特定の実施形態において、上皮細胞成長層は分子の混合物を含み、マトリックスを形成する。上皮細胞成長層258の組成は、角膜上皮細胞の組織化単層が光学要素200の前側204を横切って成長及び増殖するように促進されるように選ばれる。
【0140】
ここで図20に目を向けると、本明細書で論じる人工角膜が移植されたときに、上記で論じた眼圧測定法に従って決定された眼内圧と視度との間の実験的関係のグラフ表示である。眼内の健康な眼圧は、10~20ミリメートル水銀柱(mmHg)の範囲内である。示されているように、移植されたときに、人工角膜は、10.1ミリメートル水銀柱(mmHg)で約48.2ジオプターの視度、そして20.3ミリメートル水銀柱(mmHg)で約49ジオプターの視度に関連付けられる。図20中の線の傾きは、測定領域の順応性又は弾性に対応し、ミリメートル水銀柱(mmHg)あたりのジオプターの単位で表される。図20に示すグラフは、人工角膜と天然角膜組織との間の界面領域の順応性を示しており、これは、ミリメートル水銀柱あたり約0.064ジオプターである。界面領域の順応性は、少なくとも部分的に、測定された界面領域及びその周囲に位置する天然角膜組織及び人工角膜材料の順応性に基づく。したがって、本明細書で論じられる人工角膜は、従来の剛性な人工角膜設計では達成できない界面領域での正確な眼球眼圧測定を容易にするのに十分な順応性を有することを理解されたい。
【0141】
幾つかの実施形態において、順応性又は弾性の人工角膜は、ゼロより大きく、ミリメートル水銀柱あたり最大約0.075ジオプターの順応性又は弾性を有することができる。人工角膜の剛性は、ジオプター/mmHgの傾きが減少するにつれて増加すると理解され、人工角膜の剛性は、ジオプター/mmHgの傾きが増加するにつれて減少すると理解される。したがって、図20には示されていないが、傾きがミリメートル水銀柱(mmHg)あたりゼロ(0)ジオプターに近づくと、対応する人工角膜は最小又はゼロ弾性に近づく。これは多くの従来の人工角膜設計に一貫する弾性である。その結果、少なくとも10~20ミリメートル(mmHg)の範囲内でミリメートル水銀柱(mmHg)あたりゼロ(0)ジオプターに近い傾きに関連する人工角膜は、人工角膜又は剛性の人工角膜に隣接する天然角膜組織が眼内圧を正確に測定するための試験条件下で十分に変形できないため、剛性の人工角膜との相互作用を介した眼内圧の測定の精度を低下させる。
【0142】
逆に、少なくとも10~20ミリメートル(mmHg)水銀柱(mmHg)の範囲内で0.075ジオプター/ミリメートル水銀柱(mmHg)を超えて増加する傾斜は、健康な患者の眼内圧の予想される正常な毎日の変動の経過の間に知覚可能な視力変化の影響をますます受けやすくなる。例えば、患者の眼内圧が1日の経過の間に、10~15ミリメートル水銀柱(mmHg)の間で変動すると予想される場合に、順応性又は弾性が0.075ジオプター/ミリメートル水銀柱(mmHg)である人工角膜は約0.375ジオプターの視力差を経験すると予想される。比較すると、0.05ジオプター/ミリメートル水銀柱(mmHg)の順応性又は弾性を有する人工角膜は、同じ条件下で約0.25ジオプターの視力差を経験すると予想されるが、0.095ジオプター/ミリメートル水銀柱(mmHg)の順応性又は弾性を有する人工角膜は、同じ条件下で約0.475ジオプターの視力差を経験すると予想される。
【0143】
予想される眼内圧変動下で知覚可能な視力変化の可能性を最小限に抑えながら、十分に順応性のある人工角膜を提供することが望ましい。したがって、人工角膜の順応性又は弾性は、患者の予想される眼内圧変動に基づいて選択されるべきであることを理解されたい。
【0144】
幾つかの例において、外科的移植方法は、人工角膜の直径に対して、宿主角膜に作られた骨穿孔開窓される孔をアンダーサイズすることを必要とする。幾つかの例において、これは、切除される宿主角膜が外傷(例えば、切開)を経験したときに成長する量を考慮するためのものである。幾つかの例において、そのようなアンダーサイジングはまた、術後の部分的な角膜融解による後退を考慮するように機能する。さらに、このようなアンダーサイジングは、縫合後に創傷を気密及び液密にすることを可能にし、病原体の侵入による感染リスクを回避するのに役立つ。
【0145】
様々な例において、人工角膜が既存の角膜組織の組織床内に適切に配置及び配向された後に、人工角膜は、既存の角膜組織に機械的に結合される。様々な例において、1つ以上の縫合糸は、人工角膜を既存の角膜組織に機械的に固定するために利用される。他の幾つかの例において、眼科用接着剤を追加的又は代替的に利用して、人工角膜を既存の角膜組織に機械的に結合することができる。縫合の場合に、特定の外科的縫合技術(例えば、中断された、中断されない、組み合わされた、単一、二重など)は、当業者によって理解されるように、幾つかの外科的適応症に基づいて変化しうる。1つ以上の縫合糸による既存の角膜組織への人工角膜の固定を含む様々な例において、縫合糸は、一般に、人工角膜100の光学要素200の環状フランジ218内に延在している。幾つかの例において、1つ以上の縫合糸は、環状フランジ218の一部のみを通って延在している。例えば、1つ以上の縫合糸は、人工角膜100の前側102に入り、周辺面208及び該周辺面208を覆う任意の組織統合スカート材料を通って人工角膜100を出て、次いで、既存の角膜組織に入る。幾つかの例において、1つ以上の縫合糸は、追加的又は代替的に、環状フランジ218(第一のフランジ構成要素及び第二のフランジ構成要素228及び230のうちの1つ以上を含む)を通って完全に延在している。例えば、1つ以上の縫合糸は、人工角膜100の前側102に入り、環状フランジ218の後面222から出て、次いで、既存の角膜組織に入る。そのような1つの例において、環状フランジ218の後面222を出る縫合糸は、環状フランジ218の後面222が載っている既存の角膜組織に入ることができる。
【0146】
当業者は、1つ以上の縫合糸が、追加的又は代替的に、環状フランジの周辺面208及び該周辺面208を覆う任意の組織統合スカート材料を通って環状フランジに入り、続いて、環状フランジの周辺面208及び該周辺面208を覆う任意の組織統合スカート材料を通って出ることができることを理解すべきである。追加又は代替として、幾つかの例において、1つ以上の縫合糸は、環状フランジの周辺面208及び該周辺面208を覆う任意の組織統合スカート材料を通って環状フランジに入り、続いて、環状フランジ218の後面222を出ることができる。当業者はまた、人工角膜100の既存の角膜組織への機械的固定又は取り付け(例えば、縫合)が一時的又は永久的でありうることを理解すべきである。例えば、幾つかの例において、縫合糸は、移植手順の後にデバイスの機械的固定を提供するが、組織統合要素300中へのその後の組織の内殖は、取り付けのための恒久的な機構として機能する。
【0147】
様々な実施形態において、人工角膜100を既存の角膜組織に固定することは、当業者が理解するように、角膜組織が組織統合要素300中に成長する間に、人工角膜100と既存の角膜組織との間の相対位置を維持するように機能する。同様に、当業者が理解するように、人工角膜100を既存の角膜組織に固定することは、角膜組織が組織統合要素300中に成長する間に、既存の角膜組織と人工角膜100との間の接触を維持するように機能する。このような構成はまた、目の内部を外部環境及び細菌の侵入の可能性からシールする。
【0148】
様々な例において、縫合糸は、ナイロン、ポリプロピレン、シルク、ポリエステル及びePTFEなどのフルオロポリマー及び本明細書で論じられる他のコポリマーを含む、任意の適切な生体適合性材料を含むことができる。
【0149】
上記の実施形態は、スカートが前面の一部のみを覆う構成を含むが、幾つかの例において、スカートは、前部光学面を含む前側全体を覆うことができる。このような構成は、外部環境に露出される人工角膜の前面全体にわたる上皮組織の増殖及び統合を促進するのに役立ち、それはさらなる生体統合に役立つ。さらに、このような構成は、光学的濡れ性を高め、汚染を最小限に抑えるのに役立つ。しかしながら、特定の場合において、人工角膜の前面全体にわたる上皮組織の成長が望ましくないことがある。例えば、特定の例において、罹患した組織は、明確な屈折面となるための適切な形態を欠いている。したがって、そのような場合において、再生された上皮組織は不明瞭であり、光学的汚染につながる可能性があるため、回避されるべきである。
【0150】
本出願の本発明の範囲は、一般的に及び特定の例の両方に関して上記に記載されてきた。本開示の範囲から逸脱することなく、実施例において様々な修正及び変形を行うことができることは、当業者に明らかであろう。同様に、ここで論じられる例で論じられる様々な構成要素は組み合わせることができる。したがって、実施例は、本発明の範囲の修正及び変形を網羅することが意図されている。
図1
図2
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図17A
図17B
図17C
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